説明

断熱壁とそれを適用した建物および住宅

【課題】容易に施工可能で断熱性能が良好な断熱壁を提供する。
【解決手段】断熱壁1は、室内空間を構成する既存の建物の内壁2と、内壁2の室内側の面に固定された複数の胴縁6と、芯材12を外被材11で減圧密封して成り外被材11の間に芯材12がある芯材部が互いに隣接する胴縁6と胴縁6との間で内壁2の室内側の面に略接触するように配置された真空断熱材4と、真空断熱材4を室内側から覆い隠すように胴縁6に固定されたボード材8と、ボード材8に貼った壁紙9とからなり、胴縁6が芯材部の厚み以上の厚みを有し、真空断熱材4は外被材11の間に芯材12が無い部分の外被材11同士を密着させて、密着した外被材11同士を熱溶着してなり、外被材11同士が密着する全ての部分の外被材11同士が熱溶着されており、真空断熱材4における熱溶着部の一部のみが胴縁6とボード材8との間に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、建物の壁に真空断熱材を用いた断熱壁と、それを適用した建物および住宅に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化抑制(地球環境保護)の観点より、家電製品や産業機器の省エネルギー化と並び住宅等の建物の省エネルギー化も取り組むべき重要な課題となっている。そのため、様々な断熱材の適用や各種断熱壁が提案されている(例えば、非特許文献1及び特許文献1参照)。
【0003】
非特許文献1に示されているように、昭和55年省エネルギー基準レベルの在来木造住宅(築24年の木造在来軸組工法2階建て住宅)の2階天井及び1階床下の断熱改修を行った場合、天井では小屋裏の既存断熱を残し、その上に新規断熱材を吹き込み、また床では床下から根太間に断熱材を充填し根太下にも同様の断熱材の充填を行う。施工はそれぞれ作業員3名(約5時間)・監督1名、作業員5名(約10時間)・監督2名で行い、約16万円と約37万円の費用がかかっている。
【0004】
図16は、特許文献1により開示されている従来の断熱壁の概略断面図である。図16に示すように、特許文献1における従来の断熱壁は、躯体α上にボード102を形成した下地101上に略台形状の胴縁103を複数本固定し、胴縁103上に片面粘着テープを貼着し、壁下地全面に現場発泡型の合成樹脂発泡体104を吹き付けると共に胴縁103間に空間105ができるように形成し、次に、片面粘着テープを剥すことにより胴縁103の表面を露出させ、胴縁103上に乾式壁材107を施工している。
【非特許文献1】齋藤宏昭ら、”昭和55年省エネルギー基準レベルの在来木造住宅を対象とする実用的断熱改修方法の検証”、独立行政法人 建築研究所、2006年
【特許文献1】特開平7−11717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、実際の断熱改修(非特許文献1)では、2階天井の施工においては作業員3名(約5時間)・監督1名で約16万円の費用を要し、1階床下の施工においては作業員5名(約10時間)・監督2名で約37万円の費用を要する。
【0006】
また特許文献1による従来の断熱壁では、住宅駆体の断熱性能を向上させるため、下地101上に略台形状の胴縁103を複数本固定し、胴縁103上に片面粘着テープを貼着し、壁下地101全面に現場発泡型の合成樹脂発泡体104を吹き付けると共に胴縁103間に空間105ができるように形成する。次に、片面粘着テープを剥すことにより胴縁103の表面を露出させ、胴縁103の表面に貼付した粘着テープによって、胴縁103上に防水シート106と乾式壁材107を施工する。
【0007】
このように、断熱改修については本格的な工事が伴い、簡易に高性能な断熱改修を行うことが困難である。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、容易に施工可能で断熱性能が良好な断熱壁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の断熱壁は、室内空間を構成する面材と、前記面材の室内側の面に固定された複数の胴縁と、芯材を外被材で減圧密封して成り前記外被材の間に前記芯材がある芯材部が互いに隣接する前記胴縁と前記胴縁との間で前記面材の室内側の面に接触または近接するように配置された真空断熱材と、前記真空断熱材を室内側から覆い隠すように前記胴縁に固定されたボード材とからなり、前記胴縁が前記芯材部の厚み以上の厚みを有し、前記真空断熱材における前記外被材の間に前記芯材が無く対向する前記外被材同士が熱溶着された熱溶着部の一部のみが前記胴縁と前記ボード材との間に位置するものである。
【0010】
これにより、室内空間を構成する面材(既存壁または壁下地)の室内側の面の所定位置に複数の胴縁を固定し、次に、真空断熱材(芯材を外被材で減圧密封して成る断熱材)の芯材部(外被材の間に芯材がある部分)が互いに隣接する胴縁と胴縁との間で面材の室内側の面に接触または近接するように、且つ、熱溶着部(外被材の間に芯材が無く対向する外被材同士が溶着された部分)の一部のみが胴縁の室内側の面の少なくとも一部を覆うように、真空断熱材を配置(固定)し、次に、ボード材を、真空断熱材を室内側から覆い隠すように胴縁に固定することにより、現場発泡の発泡断熱材を用いることなく、容易に施工可能で断熱性能が良好な断熱壁を得ることができ、既存壁を断熱壁にする場合は、既存壁を解体する必要はなく、壁紙の張り替えに近いレベルで簡単に断熱強化を行うことができるため、工事期間・工事費用においても非常に有利となる効果が得られる。
【0011】
また、真空断熱材はスチレンフォーム等の汎用の断熱材に比べて断熱性能が非常に優れているため、断熱材部分の厚みを薄くでき、その結果、断熱壁を薄くできる。また、真空断熱材を設ける面材を既存壁にする場合は、断熱壁とすることによる室内側への壁面の出っ張り寸法を小さくできるので、問題なく適用可能な範囲が広く実用的である。
【0012】
また、ボード材を胴縁に固定した後は、真空断熱材の熱溶着部の一部を、胴縁とボード材とで挟んで固定できるので、ボード材を胴縁に固定する前の真空断熱材の固定を、ボード材を胴縁に固定するまでの仮固定にすることができ、ボード材を胴縁に固定する前の真空断熱材の胴縁または面材への固定に、時間の経過により固定または接着の機能が低下するような固定手段を用いることができ、固定手段の選択肢が多く、固定手段の選択によっては、作業性の向上やコスト低減が可能になる。
【0013】
また、胴縁が芯材部の厚み以上の厚みを有するので、ボード材が真空断熱材の芯材部により圧迫されることがない。これにより、ボード材を平面状態に施工することができる。また、ボード材による負荷が芯材部にかかりにくいため、外被材が損傷し難くなり真空断熱材の内圧上昇を低減することが可能となるため、長期間にわたって高断熱性能な断熱壁を維持することができる。
【0014】
また、胴縁と芯材部の厚みの差を、真空断熱材(芯材部)の内圧が大気圧近くまで上昇して、芯材部が膨む場合の芯材部の厚みの増加分以上にすれば、真空断熱材(芯材部)の内圧が大気圧近くまで上昇して、芯材部が膨れ厚くなった時に、ボード材と芯材部との隙間で、芯材部の厚みの増加分を吸収でき、ボード材が芯材部により押されて室内側に膨らむ問題をなくすことが可能となる。
【0015】
なお、面材と芯材部との隙間、またはボード材と芯材部との隙間は、15mm以下であることが好ましく、上記隙間が15mm以下であれば、隙間の空気の対流を抑えることができ、隙間の空気の対流による断熱壁の断熱性の悪化を抑えることができる。
【0016】
また、芯材部が面材とボード材と胴縁とによって形成される空間に位置し、熱溶着部の一部が胴縁の室内側の面の少なくとも一部を覆うように、真空断熱材を配置したので、胴縁がない部分における芯材部(真空断熱材の有効断熱部)が覆う面積の割合を大きくでき、高断熱性能の断熱壁を提供できる。
【0017】
また、芯材部の厚み以上の厚みの複数の胴縁を面材の室内側の面に固定した後に、真空断熱材を配置するので、特に断熱壁を床に適用する場合は、断熱壁の施工時に、施工作業者が、胴縁を活用して芯材部に大きな負荷(体重など)をかけることなく、断熱壁を施工できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の断熱壁は、現場発泡の発泡断熱材を用いることなく、容易に施工可能で断熱性能が良好な断熱壁を得ることができ、既存壁を断熱壁にする場合は、既存壁を解体する必要はなく、壁紙の張り替えに近いレベルで簡単に断熱強化を行うことができるため、工事期間・工事費用においても非常に有利となる効果が得られる。
【0019】
また、断熱壁を薄くできる。また、真空断熱材を固定する面材を既存壁にする場合は、断熱壁とすることによる室内側への壁面の出っ張り寸法を小さくできるので、問題なく適用可能な範囲が広く実用的である。
【0020】
また、ボード材を胴縁に固定する前の真空断熱材の固定を、ボード材を胴縁に固定するまでの仮固定にすることができ、ボード材を胴縁に固定する前の真空断熱材の固定に、時間の経過により固定または接着の機能が低下するような固定手段を用いることができ、固定手段の選択肢が多く、固定手段の選択によっては、作業性の向上やコスト低減が可能になる。
【0021】
また、胴縁が芯材部の厚み以上の厚みを有するので、ボード材を平面状態に施工することができる。また、ボード材による負荷が芯材部にかかりにくいため、外被材が損傷し難くなり真空断熱材の内圧上昇を低減することが可能となるため、長期間にわたって高断熱性能な断熱壁を維持することができる。
【0022】
また、芯材部が面材とボード材と胴縁とによって形成される空間に位置し、熱溶着部の一部が胴縁の室内側の面の少なくとも一部を覆うように、真空断熱材を配置したので、胴縁がない部分における芯材部(真空断熱材の有効断熱部)が覆う面積の割合を大きくでき、高断熱性能の断熱壁を提供できる。
【0023】
また、芯材部の厚み以上の厚みの複数の胴縁を面材の室内側の面に固定した後に、真空断熱材を配置するので、特に断熱壁を床に適用する場合は、断熱壁の施工時に、施工作業者が、胴縁を活用して芯材部に大きな負荷(体重など)をかけることなく、断熱壁を施工できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
請求項1の記載の断熱壁の発明は、室内空間を構成する面材と、前記面材の室内側の面に固定された複数の胴縁と、芯材を外被材で減圧密封して成り前記外被材の間に前記芯材がある芯材部が互いに隣接する前記胴縁と前記胴縁との間で前記面材の室内側の面に接触または近接するように配置された真空断熱材と、前記真空断熱材を室内側から覆い隠すように前記胴縁に固定されたボード材とからなり、前記胴縁が前記芯材部の厚み以上の厚みを有し、前記真空断熱材における前記外被材の間に前記芯材が無く対向する前記外被材同士が熱溶着された熱溶着部の一部のみが前記胴縁と前記ボード材との間に位置するものである。
【0025】
これにより、室内空間を構成する面材(既存壁または壁下地)の室内側の面の所定位置に複数の胴縁を固定し、次に、真空断熱材(芯材を外被材で減圧密封して成る断熱材)の芯材部(外被材の間に芯材がある部分)が互いに隣接する胴縁と胴縁との間で面材の室内側の面に接触または近接するように、且つ、熱溶着部(外被材の間に芯材が無く対向する外被材同士が溶着された部分)の一部のみが胴縁の室内側の面の少なくとも一部を覆うように、真空断熱材を配置(固定)し、次に、ボード材を、真空断熱材を室内側から覆い隠すように胴縁に固定することにより、現場発泡の発泡断熱材を用いることなく、容易に施工可能で断熱性能が良好な断熱壁を得ることができ、既存壁を断熱壁にする場合は、既存壁を解体する必要はなく、壁紙の張り替えに近いレベルで簡単に断熱強化を行うことができるため、工事期間・工事費用においても非常に有利となる効果が得られる。
【0026】
また、真空断熱材はスチレンフォーム等の汎用の断熱材に比べて断熱性能が非常に優れているため、断熱材部分の厚みを薄くでき、その結果、断熱壁を薄くできる。また、真空断熱材を設ける面材を既存壁にする場合は、断熱壁とすることによる室内側への壁面の出っ張り寸法を小さくできるので、問題なく適用可能な範囲が広く実用的である。
【0027】
また、ボード材を胴縁に固定した後は、真空断熱材の熱溶着部の一部を、胴縁とボード材とで挟んで固定できるので、ボード材を胴縁に固定する前の真空断熱材の固定を、ボード材を胴縁に固定するまでの仮固定にすることができ、ボード材を胴縁に固定する前の真空断熱材の胴縁または面材への固定に、時間の経過により固定または接着の機能が低下するような固定手段を用いることができ、固定手段の選択肢が多く、固定手段の選択によっては、作業性の向上やコスト低減が可能になる。
【0028】
また、胴縁が芯材部の厚み以上の厚みを有するので、ボード材が真空断熱材の芯材部により圧迫されることがない。これにより、ボード材を平面状態に施工することができる。また、ボード材による負荷が芯材部にかかりにくいため、外被材が損傷し難くなり真空断熱材の内圧上昇を低減することが可能となるため、長期間にわたって高断熱性能な断熱壁を維持することができる。
【0029】
また、胴縁と芯材部の厚みの差を、真空断熱材(芯材部)の内圧が大気圧近くまで上昇して、芯材部が膨む場合の芯材部の厚みの増加分以上にすれば、真空断熱材(芯材部)の内圧が大気圧近くまで上昇して、芯材部が膨れ厚くなった時に、ボード材と芯材部との隙間で、芯材部の厚みの増加分を吸収でき、ボード材が芯材部により押されて室内側に膨らむ問題をなくすことが可能となる。
【0030】
なお、面材と芯材部との隙間、またはボード材と芯材部との隙間は、15mm以下であることが好ましく、上記隙間が15mm以下であれば、隙間の空気の対流を抑えることができ、隙間の空気の対流による断熱壁の断熱性の悪化を抑えることができる。
【0031】
また、芯材部が面材とボード材と胴縁とによって形成される空間に位置し、熱溶着部の一部が胴縁の室内側の面の少なくとも一部を覆うように、真空断熱材を配置したので、胴縁がない部分における芯材部(真空断熱材の有効断熱部)が覆う面積の割合を大きくでき、高断熱性能の断熱壁を提供できる。
【0032】
また、芯材部の厚み以上の厚みの複数の胴縁を面材の室内側の面に固定した後に、真空断熱材を配置するので、特に断熱壁を床に適用する場合は、断熱壁の施工時に、施工作業者が、胴縁を活用して芯材部に大きな負荷(体重など)をかけることなく、断熱壁を施工できる。
【0033】
請求項2の記載の断熱壁の発明は、請求項1に記載の発明における前記真空断熱材として、熱溶着層同士が対向するガスバリア性でフレキシブルな前記外被材の間に、板状の前記芯材が配置されて、前記外被材の間に前記芯材が無い部分の前記外被材同士を密着させて、前記密着した前記外被材同士を熱溶着してなり、前記外被材同士が密着する全ての部分の前記外被材同士が熱溶着されている真空断熱材を用いたものである。
【0034】
これにより、請求項1に記載の発明の作用効果に加えて、本発明に用いる真空断熱材は、外被材同士が密着する全ての部分の外被材同士が熱溶着されている真空断熱材であり、外被材同士が密着する部分は外被材の間に芯材がある部分の近傍まで熱溶着されているので、外周部分の外被材同士のみ熱溶着された真空断熱材に比べて熱溶着部の幅が広く、それにより胴縁と熱溶着部との接触面積を広くできるため、胴縁と熱溶着部との接触面積を広くして胴縁とボード材とによって真空断熱材をより確実に固定できる。
【0035】
また、熱溶着部が胴縁(とボード材)から受ける押圧力を広い接触面積で受けると、胴縁(とボード材)と熱溶着部との接触部分における単位面積あたりの押圧力が小さくなるため、胴縁(とボード材)と熱溶着部との接触面積を広くして胴縁(とボード材)による真空断熱材の熱溶着部の損傷の可能性を小さくすることができ、外被材同士が密着する部分は外被材の間に芯材がある部分の近傍まで熱溶着されているので、胴縁(とボード材)と熱溶着部との接触で熱溶着部が損傷したり、真空断熱材を芯材部から所定間隔以上離れた熱溶着部を貫通して胴縁に突き刺さる部材で固定したり、ボード材をボード材と芯材部から所定間隔以上離れた熱溶着部と胴縁を貫通して面材に突き刺さる部材で固定した場合でも、熱溶着部の損傷部分や貫通孔ができた部分の芯材側に充分な幅の熱溶着部が残るので、真空断熱材の断熱性能悪化の可能性が少なく、断熱性能の信頼性が高い断熱壁になる。
【0036】
また、外被材同士が密着する部分は外被材の間に芯材がある部分の近傍まで熱溶着されているので、壁の厚みに垂直な方向で外被材の間に芯材がある部分と胴縁との間隔を狭くしても、外被材の損傷で真空断熱材の断熱性能が悪化する可能性が少なく、そのため、芯材部(外被材の間に芯材がある部分)と胴縁との間隔を狭くして断熱壁における真空断熱材の有効断熱部である芯材部の被覆率を高めて断熱壁の全体の断熱性能を高めることができる。
【0037】
請求項3の記載の断熱壁の発明は、請求項2に記載の発明における前記真空断熱材として、複数の前記芯材が、厚み方向に略垂直な方向に互いに所定間隔離して配置されて、前記複数の芯材のそれぞれが独立した空間内に位置するように、隣接する前記芯材と前記芯材との間に前記外被材同士が熱溶着された熱溶着部を設けている真空断熱材を用いたものである。
【0038】
これにより、請求項2に記載の発明の作用効果に加えて、外被材にピンホールができたり外被材が破損(破袋)したりして芯材を減圧密封した空間(芯材部)の内圧が上昇して断熱性能が悪化する場合でも、ピンホールや破損(破袋)の影響を直接受ける特定の芯材を減圧密封した空間(芯材部)内の圧力が高くなって断熱性能が悪化するだけで、断熱性能の悪化が真空断熱材全体に広がらず、真空断熱材としての断熱性の悪化は小さくできる効果が得られる。また、一つの真空断熱材を配置(固定)する作業で、複数の芯材部を配置(固定)できる。
【0039】
請求項4の記載の断熱壁の発明は、請求項3に記載の発明において、前記真空断熱材における互いに隣接する前記芯材部と前記芯材部との間の前記外被材同士が熱溶着された熱溶着部の一部が前記胴縁と前記ボード材との間に位置するものである。
【0040】
これにより、請求項3に記載の発明の作用効果に加えて、互いに隣接する芯材部と芯材部との間の外被材同士が溶着された熱溶着部の一部が胴縁とボード材との間に位置するように構成することにより、互いに隣接する芯材部と芯材部との間の外被材同士が溶着された熱溶着部を有効に活用でき、互いに隣接する芯材部と芯材部との間の外被材同士が溶着された熱溶着部が胴縁とボード材との間に位置していない場合に比べて、胴縁がない部分における芯材部(真空断熱材の有効断熱部)が覆う面積の割合を大きくでき、高断熱性能の断熱壁を提供できる。
【0041】
請求項5の記載の断熱壁の発明は、請求項2から4のいずれか一項に記載の発明において、前記真空断熱材が、前記芯材部から所定間隔以上離れた前記熱溶着部を貫通して前記胴縁に突き刺さる部材で固定されたものである。
【0042】
本発明に用いる真空断熱材は、外被材同士が密着する全ての部分の外被材同士が熱溶着されている真空断熱材であり、外被材同士が密着する部分は外被材の間に芯材がある部分の近傍まで熱溶着されているので、外周部分の外被材同士のみ熱溶着された真空断熱材に比べて熱溶着部の幅が広く、熱溶着部を貫通して胴縁に突き刺さることにより真空断熱材を胴縁に固定する部材(釘、ネジ、タッカー(ステープラー)等)は、芯材部から所定間隔以上離れた熱溶着部を貫通するので、真空断熱材の断熱性能を低下させることなく、真空断熱材を胴縁に固定する部材によってできる貫通孔で真空断熱材の断熱性能を低下させることがほとんどなく、釘、ネジ、タッカー(ステープラー)等の部材で、容易に真空断熱材を胴縁に固定できる。
【0043】
請求項6の記載の断熱壁の発明は、請求項2から5のいずれか一項に記載の発明において、前記ボード材が、前記ボード材と前記胴縁を貫通して前記面材に突き刺さる部材で固定されたものであり、ボード材がボード材を貫通して胴縁に突き刺さる(胴縁を貫通しない)部材で固定される場合よりも、しっかりとボード材を固定できる。
【0044】
なお、ボード材を固定する部材が真空断熱材を貫通する場合は、芯材部から所定間隔以上離れた熱溶着部を貫通するようにする。
【0045】
請求項7の記載の断熱壁の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の発明において、前記面材の室内側の面に前記芯材部が直接接触しないように、前記面材の室内側の面と前記芯材部との間に保護部材を有し、前記胴縁の厚みが前記芯材部と前記保護部材の厚みの合計以上の厚みであるものである。
【0046】
これにより、請求項1から6のいずれか一項に記載の発明の作用効果に加えて、面材の室内側の面と芯材部との直接接触による芯材部の外被材の損傷を防止できる。また、面材の室内側の面に凹凸があり面材の室内側の面に芯材部を直接接触させると芯材部の外被材が損傷する可能性がある場合でも、面材の室内側の面と芯材部との間に保護部材を設けることにより断熱壁を施工できる。保護部材は断熱材を用いることが好ましく、また、保護部材が粘着性や接着性を有していると、保護部材で面材の室内側の面に芯材部を固定でき、施工性が向上する。
【0047】
請求項8の記載の断熱壁の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載の発明において、前記胴縁が、断熱性のある材料からなるものである。
【0048】
これにより、請求項1から7のいずれか一項に記載の発明の作用効果に加えて、胴縁を経由して面材とボード材との間で伝わる熱の量を、胴縁の断熱性により低減することができる。胴縁としては、例えば、コルクや発泡断熱材が使用できる。
【0049】
請求項9に記載の建物の発明は、請求項1から8のいずれか一項に記載の断熱壁を、室内空間を構成する壁、天井、床のいずれかに適用したものであり、断熱性能に優れ、外気温の変動が大きい場合でも、室温の変動を小さくでき、室温を所定温度に保つために、室内の空気を冷却または加熱する場合は、室内の空気を冷却または加熱するためのエネルギーが少なくて済む。
【0050】
請求項10に記載の住宅の発明は、請求項1から8のいずれか一項に記載の断熱壁を、室内空間を構成する壁、天井、床のいずれかに適用したものであり、請求項9に記載の建物の発明の効果に加え、少ない冷暖房エネルギー(冷暖房費)で快適空間を実現できる。
【0051】
ここで、真空断熱材とは、骨材となる気相比率の高い芯材を、ガスバリア性のフィルムからなる外被材で覆って外被材内部を真空に近い減圧状態にして密封したものであり、外被材内部を真空に近い減圧状態にすることにより、気体成分の熱伝導を低減させた断熱材を指す。
【0052】
次に、真空断熱材の構成材料について詳細に説明する。
【0053】
芯材に使用する材料は、気相比率90%前後の多孔体をシート状または板状に加工したものであり、工業的に利用できるものとして、発泡体、粉体、および繊維体等がある。これらは、その使用用途や必要特性に応じて公知の材料を使用することができる。
【0054】
このうち、発泡体としては、ウレタンフォーム、スチレンフォーム、フェノールフォーム等の連続気泡体が利用できる。また、粉体としては、無機系、有機系、およびこれらの混合物を利用できるが、工業的には、乾式シリカ、湿式シリカ、パーライト等を主成分とするものが使用できる。
【0055】
また、繊維体としては、無機系、有機系、およびこれらの混合物が利用できるが、コストと断熱性能の観点から無機繊維が有利である。無機繊維の一例としては、グラスウール、グラスファイバー、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、シリカ繊維、ロックウール等、公知の材料を使用することができる。
【0056】
また、これら、発泡体、粉体、および繊維体等の混合物も適用することができる。
【0057】
ただし、芯材は、厚さが3〜12mm程度で、外被材同士を熱溶着させる時の熱で、気相比率が減少しにくいものが好ましい。
【0058】
外被材に使用するラミネートフィルムは、最内層を熱溶着層とし、中問層にはガスバリア層として、金属箔、或いは金属蒸着層を有し、最外層には表面保護層を設けたラミネートフィルムが適用できる。また、ラミネートフィルムは、金属箔を有するラミネートフィルムと金属蒸着層を有するラミネートフィルムの2種類のラミネートフィルムを組み合わせて適用しても良い。
【0059】
なお、熱溶着層としては、低密度ポリエチレンフィルム、鎖状低密度ポリエチレンフィルム、高密度ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、無延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、エチレンービニルアルコール共重合体フィルム、或いはそれらの混合体等を用いることができる。
【0060】
表面保護層としては、ナイロンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルムの延伸加工品など、公知の材料が利用できる。
【0061】
以下、本発明による実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0062】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における断熱壁の断面図、図2は同実施の形態の断熱壁に用いる真空断熱材の断面図、図3は同実施の形態の断熱壁に用いる真空断熱材の平面図、図4は同実施の形態の断熱壁の面材となる既存の建物の内壁に胴縁を固定した後に真空断熱材を取り付け始めている状態を示す平面図、図5は同実施の形態の断熱壁の面材となる既存の建物の内壁に固定した胴縁に複数の真空断熱材を取り付け終わった状態を示す平面図、図6は同実施の形態の断熱壁の面材となる既存の建物の内壁の左半分にボード材を固定した状態を示す平面図、図7は同実施の形態の断熱壁の面材となる既存の建物の内壁にボード材を固定し終えた状態を示す平面図、図8は同実施の形態の断熱壁のボード材の室内側の面を壁紙で覆った状態を示す平面図である
また、図9は同実施の形態の断熱壁の面材となる既存の建物の内壁に胴縁を固定する工程を示す断面図、図10は同実施の形態の断熱壁の面材となる既存の建物の内壁に胴縁に合わせて真空断熱材を配置する工程を示す断面図、図11は同実施の形態の断熱壁の面材となる既存の建物の内壁に胴縁に合わせて複数の真空断熱材を固定する工程を示す断面図、図12は同実施の形態の断熱壁の面材となる既存の建物の内壁にボード材を固定する工程を示す断面図、図13は同実施の形態の断熱壁のボード材の室内側の面を壁紙で覆う工程を示す断面図である。
【0063】
図1から図13に示すように、本発明の実施の形態1における断熱壁1は、室内空間を構成する面材で断熱改修部位となる既存の建物の内壁2と、内壁2の室内側の面にタッカー5で固定された発泡断熱材からなる複数の胴縁6と、芯材12をガスバリア性でフレキシブルなラミネートフィルムからなる外被材11で減圧密封して成り外被材11の間に芯材12がある芯材部15が互いに隣接する胴縁6と胴縁6との間で内壁2の室内側の面に略接触するように配置されタッカー3で胴縁6に固定された真空断熱材4と、真空断熱材4を室内側から覆い隠すように胴縁6と内壁2とに釘7で固定された石膏ボードからなるボード材8と、ボード材8の室内側の面を覆う壁紙9とからなる。なお、胴縁6は芯材部15の厚み以上の厚みを有している。
【0064】
ここで、略接触とは、ほとんど接触している状態のことであり、目視で接触していることが確認できる程度の接触状態を指す。
【0065】
本実施の形態における内壁2は、室内側からコの字形の金属製の固定具であるタッカーやネジや釘を打ち込み可能な材料からなり所定の厚みを有するものである。もし、内壁2の面材が充分な厚みを有しておらず、タッカー3または釘7が内壁2の面材を貫通する場合は、タッカー3と釘7を打ち込む位置を内壁2の面材の裏側(反室内側)に柱がある部分にすることが好ましい。
【0066】
本実施の形態では、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ウレタン等による発泡断熱材からなる胴縁6を用いているが、コルク等、熱伝導し難くタッカーやネジや釘を打ち込み可能な材料で構成された他の胴縁を用いても構わない。
【0067】
真空断熱材4は、熱溶着層10同士が対向するガスバリア性でフレキシブルな長方形の外被材11の間に、ガラス繊維などの無機繊維の積層体からなる厚さが8mm前後の長方形の板状の二つの芯材12が、厚み方向に略垂直な方向に互いに所定間隔離して配置されて、二つの芯材12のそれぞれが独立した空間内に位置するように、外被材11の間に芯材12がない部分の外被材11同士(隣接する芯材12と芯材12との間の外被材11同士を含む)を密着させて、密着した外被材11同士を熱溶着して熱溶着部16を形成してなり、外被材11同士が密着する全ての部分の外被材11同士が熱溶着されている真空断熱材4である。
【0068】
また、真空断熱材4における外被材11の間に芯材12が無く対向する外被材11同士が熱溶着された熱溶着部16の一部のみが胴縁6とボード材8との間に位置している。
【0069】
また、真空断熱材4における互いに隣接する芯材部15と芯材部15との間の外被材11同士が熱溶着された熱溶着部16の一部が胴縁6とボード材8との間に位置している。
【0070】
また、真空断熱材4は、芯材部15から所定間隔以上離れた熱溶着部16を貫通して胴縁6に突き刺さるタッカー3で固定されている。
【0071】
なお、胴縁6を貫通して内壁2に突き刺さって胴縁6を内壁2の室内側の面に固定するタッカー5の代わりに、内壁2の室内側の面に胴縁6を固定する接着剤を用いてもよいが、その場合は、真空断熱材4を固定するためのタッカー3として、芯材部15から所定間隔以上離れた熱溶着部16と胴縁6を貫通して内壁2に突き刺さるものを用いることが好ましい。
【0072】
また、ボード材8は、ボード材8と芯材部15から所定間隔以上離れた熱溶着部16と胴縁6を貫通して内壁2に突き刺さる釘7で固定されている。
【0073】
本実施の形態の真空断熱材4の芯材12の厚みは8mm前後であるが、8mm前後の厚みに限定するものではなく、厚みは3mmから10mmでもよい。芯材12の厚みが薄いほど、芯材12の周囲に外被材11の皺ができにくく、外被材11同士を芯材12の近くまで容易に熱溶着できるが、芯材12の厚みが薄い分、真空断熱材4の断熱性能は低下する。逆に、芯材12の厚みが厚いほど、芯材12の周囲に外被材11の皺ができやすく、外被材11同士を芯材12の近くまで熱溶着することが難しくなるが、芯材12の厚みが厚い分、真空断熱材4の断熱性能は高くなる。
【0074】
芯材12は、繊維の長手方向が真空断熱材4(芯材12)の厚み方向(伝熱方向)に対して略垂直になっている無機繊維集合体を所定厚みになるように積層したものをバインダーを用いずに無機繊維同士の接触点が架橋部とならずに圧縮時の形状を保持できるよう所定の加熱加圧条件で加熱加圧成形したものを使用している。繊維の長手方向が厚み方向に対して略垂直になるように抄造法で成形したものや、繊維の長手方向が厚み方向に対して略垂直になっている無機繊維集合体を所定厚みになるように積層したものを無機バインダーを用いて成形したもの、繊維の長手方向が厚み方向に対して略垂直になっている無機繊維集合体を所定厚みになるように積層したものに水または酸性の水溶液を噴霧して無機繊維からの溶出物を無機繊維同士の接触点に集めて成形したもの、バインダーの働きをする無機粉体を無機繊維に混合して成形したものでも構わないが、本実施の形態の芯材12よりは、断熱性能が劣る。
【0075】
また、無機材料からなる芯材の方が、有機材料からなる芯材よりも、ガスの発生量が少ないという点で有利であり、繊維材料からなる芯材の方が、粒や粉からなる芯材よりも、製造時や真空断熱材または断熱壁の廃棄の取り扱いの点で有利である。
【0076】
本実施の形態における外被材11は、図2に示すように、熱溶着層10と保護層13との間にガスバリア層14を有するラミネートフィルムからなり、芯材12側の熱溶着層10としてはポリエチレン等が用いられ、ガスバリア層14としては10μm以下のアルミ箔が用いられ、ガスバリア層14の外側の保護層13としてはナイロンまたはポエチレンテレフタレート等が用いられる。なお、保護層13はナイロンまたはポエチレンテレフタレートからなるフィルムを二層重ねて構成することもある。なお、ガスバリア層14としては、アルミ箔等の金属箔の他に、樹脂フィルムの表面に蒸着または塗布または蒸着と塗布の組み合わせによりガスバリア層を形成したものでも構わない。
【0077】
真空断熱材4は、内面に熱溶着層10を有するガスバリア性のラミネートフィルムからなる外被材11内に二つの芯材12を厚み方向に略垂直な方向に互いに所定間隔離して配置して例えば0.1Torr以下の減圧空間内において減圧密封した後、外被材11の外圧を大気圧にして外被材11の外圧と内圧との差圧で外被材11の間に芯材12がない部分の外被材11同士を密着させ、前記差圧で外被材11同士が密着している部分に熱溶着層10が溶融するのに必要な熱を非接触で加えて、密着している外被材11同士を熱溶着する製造方法により得られる。
【0078】
ここで、減圧空間内において外被材11内に芯材12を減圧密封する工程は、例えば0.1Torr以下に減圧された真空包装機の減圧チャンバー内で、芯材12が挿入された袋状の外被材11の開口部を、一対の熱溶着バーで挟んで加熱加圧により熱溶着するものであっても、真空包装機の減圧チャンバー内で、芯材12を覆う二枚の外被材11の外周部同士を全周にわたって一対の熱溶着バーで挟んで加熱加圧により熱溶着するものであっても構わない。
【0079】
また、外被材11内に芯材12を減圧密封する工程と、外被材11の外圧を大気圧にして外被材11の外圧と内圧との差圧で密着している外被材11同士を熱溶着する工程とを、内部空間の真空排気と真空開放が可能なチャンバー内で行っても良いし、減圧空間内において外被材11内に芯材12を減圧密封したものを、減圧空間から取り出すことにより、外被材11の外圧を大気圧にしても良い。
【0080】
また、非接触で加える熱溶着層10が溶融するのに必要な熱は、ヒータの輻射熱と周囲の温度とすることができ、また、非接触で加える熱溶着層10が溶融するのに必要な熱は、外被材11全体を加熱するものであっても構わない。
【0081】
また、真空断熱材4の外周にできる外被材11の外周部同士が熱溶着された外周ヒレ部は、外周ヒレ部の幅が必要以上に広い場合は、芯材12の周囲に所定幅の外被材11同士が熱溶着された熱溶着部が残るように切り落としている。このとき、真空断熱材4の外周ヒレ部の四つの角が、作業者や他の部材(特に他の真空断熱材4)を傷つけないように、真空断熱材4の外周ヒレ部の四つの角を丸くすることが好ましい。
【0082】
また、真空断熱材4は、図3に示すように、外被材11(熱溶着層10)の間に芯材12がある芯材部15と、外被材11(熱溶着層10)の間に芯材12が無く外被材11同士が熱溶着された熱溶着部16とを有しており、本実施の形態で用いる真空断熱材4は、芯材部15が、縦方向に長い長方形で横方向に二つ並んでおり、熱溶着部16が、二つの芯材部15の間に位置する幅約27mmの芯材間熱溶着部17と、真空断熱材4の外周ヒレ部(二つの芯材部15及び芯材間熱溶着部17の外周)に位置する幅約21mmの外周熱溶着部18とからなる。
【0083】
本実施の形態で用いる真空断熱材4は、芯材部15が横方向に二つ並んでいるものであるが、これに限らず、芯材部15が横方向に三つ以上並んでいるものでも、芯材部15が縦方向に二つ以上並んでいるものでも、芯材部15が横方向と縦方向に複数列複数段碁盤目状に配置されているものでも構わない。また、本実施の形態で用いる真空断熱材4は、一種類であるが、複数種類の真空断熱材を組み合わせたり、芯材部が一つの真空断熱材を組み合わせても構わない。
【0084】
本実施の形態では、芯材間熱溶着部17の幅を約27mmとしと外周熱溶着部18の幅を約21mmとしているが、16mm〜30mmであれば良く、芯材12または芯材部15の厚みが厚くなるほど、芯材間熱溶着部17と外周熱溶着部18の幅を広くする必要があり、芯材間熱溶着部17と外周熱溶着部18の幅を狭くするほど、断熱壁1における芯材部15の占める割合が大きくなって断熱壁1の断熱性能が向上するが、外周熱溶着部18の端または熱溶着部16(芯材間熱溶着部17と外周熱溶着部18)を貫通する固定用の部材によってできた貫通孔から外気が芯材12を密閉する空間に侵入して時間の経過によって断熱壁1(または真空断熱材4)の断熱性能が低下する可能性が高くなる。逆に芯材間熱溶着部17と外周熱溶着部18の幅を広くするほど、断熱壁1における芯材部15の占める割合が小さくなって断熱壁1の断熱性能が低下するが、外周熱溶着部18の端または熱溶着部16(芯材間熱溶着部17と外周熱溶着部18)を貫通する固定用の部材によってできた貫通孔から外気が芯材12を密閉する空間に侵入して時間の経過によって断熱壁1(または真空断熱材4)の断熱性能が低下する可能性が低くなる。
【0085】
以下、断熱改修部位となる既存の建物の内壁2を本実施の形態の断熱壁1にする手順を、図4から図13を参照しながら説明する。
【0086】
まず、図4と図9に示すように、室内空間を構成する面材で断熱改修部位となる既存の建物の内壁2の室内側の面の上下の縁に、上下の縁に合わせて横方向(左右方向)に長く真空断熱材4の芯材部15と同じ厚みか芯材部15より若干厚い厚みで、幅が約15mmの発泡断熱材からなる胴縁6を配置して、胴縁6を貫通して内壁2に突き刺さるタッカー5で固定する。
【0087】
また、室内空間を構成する面材で断熱改修部位となる既存の建物の内壁2の室内側の面の左右の縁に、上下の縁に固定した胴縁6の間隔に合わせて縦方向(上下方向)に長く真空断熱材4の芯材部15と同じ厚みか芯材部15より若干厚い厚みで、幅が約15mmの発泡断熱材からなる胴縁6を配置して、胴縁6を貫通して内壁2に突き刺さるタッカー5で固定する。
【0088】
また、室内空間を構成する面材で断熱改修部位となる既存の建物の内壁2の室内側の面の上下左右の縁に固定した胴縁6に囲まれた部分に、上下の縁に固定した胴縁6の間隔に合わせて縦方向(上下方向)に長く真空断熱材4の芯材部15と同じ厚みか芯材部15より若干厚い厚みで、幅が約15mmと約30mmの発泡断熱材からなる胴縁6を交互に配置して、胴縁6を貫通して内壁2に突き刺さるタッカー5で固定する。
【0089】
なお、幅が約30mmの胴縁6は左右に隣接する真空断熱材4の一方の左側の真空断熱材4の右側の外周熱溶着部18と他方の右側の真空断熱材4の左側の外周熱溶着部18を固定する部分にのみ用いる。
【0090】
壁面に垂直な方向が重力方向に対して略垂直になる内壁2に対しては、特にボード材8を胴縁6を介して内壁2に固定する場合は、縦方向(上下方向)に長い胴縁6の割合を横方向(左右方向)に長い胴縁6の割合より少なくするよりは、縦方向(上下方向)に長い胴縁6の割合を横方向(左右方向)に長い胴縁6の割合より多くする方が、安定する。
【0091】
胴縁6をタッカー5で固定する場合は、タッカー5が、胴縁6の幅方向の中央部分で、タッカー5の二つの先端部を結ぶ線が、胴縁6の長手方向に略平行になるように、また、タッカー5が内壁2に対して垂直になるように内壁2に打ち込む。
【0092】
このとき、左右方向に並ぶ複数の胴縁6の間隔は、真空断熱材4の一つの芯材部15の左右の寸法より2〜10mm程度広くなるものとする。
【0093】
なお、タッカー5を打ち込む位置は、後にタッカー3を打ち込む位置と、後に釘7を打ち込む位置から所定間隔離れた位置にする。
【0094】
次に、図4と図10に示すように、既存の建物の内壁2の角部(例えば左下の角部)から、図3に示す真空断熱材4を、芯材部15が横方向(左右方向)に並ぶような向きで、図10に示すように芯材部15の片面が内壁2の室内側の面に略接触し、さらに芯材間熱溶着部17と外周熱溶着部18が胴縁6の室内側の面に広く接触するように芯材間熱溶着部17と外周熱溶着部18を折り曲げて設置位置を決定し、芯材部15の片面が内壁2の室内側の面に略接触した状態で動かないように手で真空断熱材4を押さえながら、芯材間熱溶着部17の中心線上と外周熱溶着部18における胴縁6の室内側の面に接触し芯材部15から所定間隔離れた部分(外周熱溶着部18における胴縁6に密着している部分の幅方向中央部分)をタッカー3で胴縁6に固定する。
【0095】
タッカー3は、タッカー3に近接する芯材部15の縁(辺)とタッカー3の二つの先端部を結ぶ線が、略平行になるように打ち込む。
【0096】
このとき、既存の建物の内壁2の表面の突起物や内壁2の表面に付着した異物で、内壁2に略接触する芯材部15の外被材11が傷つかないように、予め、真空断熱材4を配設する面を平滑面にしておくことが望ましい。
【0097】
その後、同様に、次の真空断熱材4を、図4と図5と図11に示すように、先に固定した真空断熱材4と重ならず、また、先に固定した真空断熱材4とできるだけ間隔をあけないように、段方向(上方向)及び横方向にタッカー3にて固定する。本実施の形態では、図5に示すように、真空断熱材4を縦3段、横4列にわたってタッカー3で胴縁6に固定する。
【0098】
また、熱溶着部16を貫通して胴縁6に突き刺さるタッカー3で、真空断熱材4を胴縁6に固定する場合は、タッカー3がタッカー5に接触しないように注意する。タッカー3がタッカー5に接触しないようにするには、タッカー5とタッカー3の位置を予め決めておいて、そのルール通りにタッカー5とタッカー3を打ち込むようにしたり、タッカー5を打ち込んだ後に、熱溶着部16にタッカー5の位置が分かる印やタッカー3を打ち込むべき位置を示す印を付けて、その熱溶着部16に付けた印をもとにタッカー3を打ち込んだりすれば良い。
【0099】
本実施の形態では、各段の真空断熱材4については芯材間熱溶着部17と左右の外周熱溶着部18に2箇所ずつタッカー3を打ち込み、下段の真空断熱材4については下側の外周熱溶着部18にも各芯材部15の下側に2箇所ずつ合計4箇所タッカー3を打ち込み、上段の真空断熱材4については上側の外周熱溶着部18にも各芯材部15の上側に2箇所ずつ合計4箇所タッカー3を打ち込んでいる。
【0100】
また、内壁2の室内側の面の上下の縁に固定された胴縁6のタッカー5の位置は、各芯材部15を左右に二等分する線上と交差する位置にしており、各芯材部15の上または下側に2箇所ずつ打ち込むタッカー3の位置は、内壁2の室内側の面の上下の縁に固定された胴縁6のタッカー5の位置から左右方向にずらしている。
【0101】
また、内壁2の室内側の面の上下の縁に固定された胴縁6の間に配置される縦方向(上下方向)に長い胴縁6を固定するタッカー5の位置は、各芯材部15の角部の左側または右側で各芯材部15の上下方向中央寄りにしており、芯材間熱溶着部17と左右の外周熱溶着部18に2箇所ずつ打ち込むタッカー3の位置は、縦方向(上下方向)に長い胴縁6のタッカー5の位置よりも各芯材部15の上下方向中央寄りにずらしている。
【0102】
また、胴縁6における真空断熱材4と接触する面は、胴縁6の表面の突起物や胴縁6の表面に付着した異物で、真空断熱材4が傷つかないように、予め、真空断熱材4と接触する面平滑面にしておくことが望ましい。
【0103】
次に、図6と図7と図12に示すように、真空断熱材4を室内側から覆い隠すように、所定寸法の大きさ(本実施の形態では、断熱改修部位となる既存の建物の内壁2を左右に二等分した(断熱壁1を左右に二等分した)大きさ)に切断された石膏ボードからなるボード材8を、2枚、ボード材8と胴縁6を貫通して内壁2に突き刺さる釘7固定する。
【0104】
なお、ボード材8において釘7を打ち込む位置は、釘7が胴縁6の幅方向の略中央を貫通可能な位置に限定しており、具体的には、ボード材8の四隅と、ボード材8の上下の縁を左右方向に4等分する位置と、内壁2の室内側の面の上下の縁に固定された胴縁6の間に配置される縦方向(上下方向)に長い胴縁6とボード材8を上下方向に3等分する線とが交差する位置であり、この条件を満足する位置を避けてタッカー3とタッカー5を打ち込んでいるので、打ち込んだ釘7がタッカー3またはタッカー5に衝突することはない。
【0105】
真空断熱材4の芯材部15がボード材8と接触する場合は、ボード材8における真空断熱材4側の表面の突起物や表面に付着した異物で、芯材部15の外被材11が傷つかないように、予め、ボード材8における真空断熱材4側の表面を平滑面にしておくことが望ましい。
【0106】
次に、図8と図13に示すように、ボード材8の室内側の面を壁紙9で覆って釘7やボード材8の継ぎ目が見えないようにする。
【0107】
本実施の形態では、胴縁6をタッカー5で内壁2に固定しているが、釘やネジを代わりに用いても構わない。また、ボード材8を釘7で胴縁6と内壁2に固定しているが、タッカーやネジを代わりに用いても構わない。
【0108】
本実施の形態の断熱壁1は、室内空間を構成する面材(内壁2)と、面材(内壁2)の室内側の面に固定された複数の胴縁6と、芯材12を外被材11で減圧密封して成り外被材11の間に芯材12がある芯材部15が互いに隣接する胴縁6と胴縁6との間で面材(内壁2)の室内側の面に略接触するように配置された真空断熱材4と、真空断熱材4を室内側から覆い隠すように胴縁6に固定されたボード材8とからなり、胴縁6が芯材部15の厚み以上の厚みを有し、真空断熱材4における外被材11の間に芯材12が無く対向する外被材11同士が熱溶着された熱溶着部16の一部のみが胴縁6とボード材8との間に位置するものである。
【0109】
これにより、室内空間を構成する面材(内壁2)の室内側の面の所定位置に複数の胴縁6を固定し、次に、真空断熱材4の芯材部15が互いに隣接する胴縁6と胴縁6との間で面材(内壁2)の室内側の面に略接触するように、且つ、熱溶着部16の一部のみが胴縁6の室内側の面の少なくとも一部を覆うように、真空断熱材4を配置(固定)し、次に、ボード材8を、真空断熱材4を室内側から覆い隠すように胴縁6に固定することにより、現場発泡の発泡断熱材を用いることなく、容易に施工可能で断熱性能が良好な断熱壁1を得ることができ、既存壁(内壁2)を断熱壁1にする場合は、既存壁(内壁2)を解体する必要はなく、壁紙の張り替えに近いレベルで簡単に断熱強化を行うことができるため、工事期間・工事費用においても非常に有利となる効果が得られる。
【0110】
また、真空断熱材4はスチレンフォーム等の汎用の断熱材に比べて断熱性能が非常に優れているため、断熱材部分の厚みを薄くでき、その結果、断熱壁1を薄くできる。また、真空断熱材4を設ける面材を既存壁(内壁2)にする場合は、断熱壁1とすることによる室内側への壁面の出っ張り寸法を小さくできるので、問題なく適用可能な範囲が広く実用的である。
【0111】
また、ボード材8を胴縁6に固定した後は、真空断熱材4の熱溶着部16の一部を、胴縁6とボード材8とで挟んで固定できるので、ボード材8を胴縁6に固定する前の真空断熱材4の固定を、ボード材8を胴縁6に固定するまでの仮固定にすることができ、ボード材8を胴縁6に固定する前の真空断熱材4の胴縁6または面材(内壁2)への固定に、時間の経過により固定または接着の機能が低下するような固定手段を用いることができ、固定手段の選択肢が多く、固定手段の選択によっては、作業性の向上やコスト低減が可能になる。
【0112】
また、胴縁6が芯材部15の厚み以上の厚みを有するので、ボード材8が真空断熱材4の芯材部15により圧迫されることがない。これにより、ボード材8を平面状態に施工することができる。また、ボード材8による負荷が芯材部15にかかりにくいため、外被材11が損傷し難くなり真空断熱材4の内圧上昇を低減することが可能となるため、長期間にわたって高断熱性能な断熱壁1を維持することができる。
【0113】
また、胴縁6と芯材部15の厚みの差を、真空断熱材4(芯材部15)の内圧が大気圧近くまで上昇して、芯材部15が膨む場合の芯材部15の厚みの増加分以上にすれば、真空断熱材4(芯材部15)の内圧が大気圧近くまで上昇して、芯材部15が膨れ厚くなった時に、ボード材8と芯材部15との隙間で、芯材部15の厚みの増加分を吸収でき、ボード材8が芯材部15により押されて室内側に膨らむ問題をなくすことが可能となる。
【0114】
なお、面材(内壁2)と芯材部15との隙間、またはボード材8と芯材部15との隙間は、15mm以下であることが好ましく、上記隙間が15mm以下であれば、隙間の空気の対流を抑えることができ、隙間の空気の対流による断熱壁1の断熱性の悪化を抑えることができる。
【0115】
また、芯材部15が面材(内壁2)とボード材8と胴縁6とによって形成される空間に位置し、熱溶着部16の一部が胴縁6の室内側の面の少なくとも一部を覆うように、真空断熱材4を配置したので、胴縁6がない部分における芯材部15(真空断熱材4の有効断熱部)が覆う面積の割合を大きくでき、高断熱性能の断熱壁1を提供できる。
【0116】
また、芯材部15の厚み以上の厚みの複数の胴縁6を面材(内壁2)の室内側の面に固定した後に、真空断熱材4を配置するので、特に断熱壁1を住宅(建物)の床に適用する場合は、断熱壁1の施工時に、施工作業者が、胴縁6を活用して芯材部15に大きな負荷(体重など)をかけることなく、断熱壁1を施工できる。
【0117】
また、本実施の形態では、真空断熱材4として、熱溶着層10同士が対向するガスバリア性でフレキシブルな外被材11の間に、板状の芯材12が配置されて、外被材11の間に芯材12が無い部分の外被材11同士を密着させて、密着した外被材11同士を熱溶着してなり、外被材11同士が密着する全ての部分の外被材11同士が熱溶着されている真空断熱材4を用いた。
【0118】
これにより、真空断熱材4は、外被材11同士が密着する部分は外被材11の間に芯材12がある部分の近傍まで熱溶着されているので、外周部分の外被材11同士のみ熱溶着された真空断熱材に比べて熱溶着部16の幅が広く、それにより胴縁6と熱溶着部16との接触面積を広くできるため、胴縁6と熱溶着部16との接触面積を広くして胴縁6とボード材8とによって真空断熱材4をより確実に固定できる。
【0119】
また、熱溶着部16が胴縁6(とボード材8)から受ける押圧力を広い接触面積で受けると、胴縁6(とボード材8)と熱溶着部16との接触部分における単位面積あたりの押圧力が小さくなるため、胴縁6(とボード材8)と熱溶着部16との接触面積を広くして胴縁6(とボード材8)による真空断熱材4の熱溶着部16の損傷の可能性を小さくすることができ、外被材11同士が密着する部分は外被材11の間に芯材12がある部分の近傍まで熱溶着されているので、胴縁6(とボード材8)と熱溶着部16との接触で熱溶着部16が損傷したり、真空断熱材4を芯材部15から所定間隔以上離れた熱溶着部16を貫通して胴縁6に突き刺さる部材(タッカー3)で固定したり、ボード材8をボード材8と芯材部15から所定間隔以上離れた熱溶着部16と胴縁6を貫通して面材(内壁2)に突き刺さる部材(釘7)で固定した場合でも、熱溶着部16の損傷部分や貫通孔ができた部分の芯材12側に充分な幅の熱溶着部16が残るので、真空断熱材4の断熱性能悪化の可能性が少なく、断熱性能の信頼性が高い断熱壁1になる。
【0120】
また、外被材11同士が密着する部分は外被材11の間に芯材12がある部分の近傍まで熱溶着されているので、壁の厚みに垂直な方向で外被材11の間に芯材12がある部分と胴縁6との間隔を狭くしても、外被材11の損傷で真空断熱材4の断熱性能が悪化する可能性が少なく、そのため、芯材部15と胴縁6との間隔を狭くして断熱壁1における真空断熱材4の有効断熱部である芯材部15の被覆率を高めて断熱壁1の全体の断熱性能を高めることができる。
【0121】
また、本実施の形態では、真空断熱材4として、複数の芯材12が、厚み方向に略垂直な方向に互いに所定間隔離して配置されて、複数の芯材12のそれぞれが独立した空間内に位置するように、隣接する芯材12と芯材12との間に外被材11同士が熱溶着された熱溶着部16(芯材間熱溶着部17)を設けている真空断熱材4を用いた。
【0122】
これにより、外被材11にピンホールができたり外被材11が破損(破袋)したりして芯材12を減圧密封した空間(芯材部15)の内圧が上昇して断熱性能が悪化する場合でも、ピンホールや破損(破袋)の影響を直接受ける特定の芯材12を減圧密封した空間(芯材部15)内の圧力が高くなって断熱性能が悪化するだけで、断熱性能の悪化が真空断熱材4全体に広がらず、真空断熱材4としての断熱性の悪化は小さくできる効果が得られる。また、一つの真空断熱材4を配置(固定)する作業で、複数の芯材部15を配置(固定)できる。
【0123】
また、本実施の形態では、真空断熱材4における互いに隣接する芯材部15と芯材部15との間の外被材11同士が熱溶着された熱溶着部16(芯材間熱溶着部17)の一部が胴縁6とボード材8との間に位置しているので、互いに隣接する芯材部15と芯材部15との間の外被材11同士が溶着された熱溶着部16(芯材間熱溶着部17)を有効に活用でき、互いに隣接する芯材部15と芯材部15との間の外被材11同士が溶着された熱溶着部16(芯材間熱溶着部17)が胴縁6とボード材8との間に位置していない場合に比べて、胴縁6がない部分における芯材部15(真空断熱材4の有効断熱部)が覆う面積の割合を大きくでき、高断熱性能の断熱壁1を提供できる。
【0124】
また、本実施の形態では、真空断熱材4が、芯材部15から所定間隔以上離れた熱溶着部16を貫通して胴縁6に突き刺さる部材(タッカー3)で固定されているが、本実施の形態で用いる真空断熱材4は、外被材11同士が密着する全ての部分の外被材11同士が熱溶着されている真空断熱材4であり、外被材11同士が密着する部分は外被材11の間に芯材12がある部分の近傍まで熱溶着されているので、外周部分の外被材11同士のみ熱溶着された真空断熱材に比べて熱溶着部16の幅が広く、熱溶着部16を貫通して胴縁6に突き刺さることにより真空断熱材4を胴縁6に固定する部材(釘、ネジ、タッカー(ステープラー)等)は、芯材部16から所定間隔以上離れた熱溶着部16を貫通するので、真空断熱材4の断熱性能を低下させることなく、真空断熱材4を胴縁6に固定する部材によってできる貫通孔で真空断熱材4の断熱性能を低下させることがほとんどなく、釘、ネジ、タッカー(ステープラー)等の部材で、容易に真空断熱材4を胴縁6に固定できる。
【0125】
また、本実施の形態では、ボード材8が、ボード材8と胴縁6を貫通して面材(内壁2)に突き刺さる部材(釘7)で固定されたものであり、ボード材8がボード材8を貫通して胴縁6に突き刺さる(胴縁6を貫通しない)部材で固定される場合よりも、しっかりとボード材8を固定できる。
【0126】
また、本実施の形態では、胴縁6が、断熱性のある材料で構成したことにより、胴縁6を経由して面材(内壁2)とボード材8との間で伝わる熱の量を、胴縁6の断熱性により低減することができる。
【0127】
また、本実施の形態では、ボード材8に石膏ボードを使用していることにより、安価で優れた耐火性を有することができる効果(断熱改修費用を安くできると共に、火事発生の場合における延焼を防ぐことができる効果)が得られる。また、断熱壁1に、人・物等が接触した場合においても、石膏ボードは十分な厚みと剛性を有するため、その衝撃等により石膏ボードの内部に配置されている真空断熱材4の破袋を防止することができる効果が得られる。
【0128】
(実施の形態2)
図14は本発明の実施の形態2における断熱壁の断面図である。
【0129】
図14に示すように、本発明の実施の形態2における断熱壁1は、実施の形態1の断熱壁1の構成に加えて、面材(内壁2)の室内側の面に芯材部15が直接接触しないように、面材(内壁2)の室内側の面と芯材部15との間に保護部材19を設け、胴縁6の厚みを芯材部15と保護部材19の厚みの合計以上の厚みにしたものであり、その他の構成は実施の形態1の断熱壁1と同様である。
【0130】
保護部材19は面材(内壁2)の室内側の面に取り付けても、芯材部15に取り付けても構わない。保護部材19は、木製、樹脂製、ゴム、断熱材、金属製などで構わない。
【0131】
本実施の形態では、実施の形態1の作用効果に加えて、面材(内壁2)の室内側の面と芯材部15との直接接触による芯材部15の外被材11の損傷を防止できる。また、面材(内壁)の室内側の面に凹凸があり面材(内壁2)の室内側の面に芯材部15を直接接触させると芯材部15の外被材11が損傷する可能性がある場合でも、面材(内壁2)の室内側の面と芯材部15との間に保護部材19を設けることにより断熱壁を施工できる。保護部材19は断熱材、特に発泡系の断熱材を用いることが好ましく、また、保護部材19が粘着性や接着性を有していると、保護部材19で面材(内壁2)の室内側の面に芯材部15を固定でき、特に、実施の形態2における断熱壁1を住宅(建物)の床に適用する場合は、施工性が向上する。
【0132】
(実施の形態3)
図15は本発明の実施の形態3の建物の一例としての住宅の概略縦断面図である。本実施の形態の住宅(建物)20は、実施の形態1または実施の形態2の断熱壁1を、室内空間を構成する壁21、天井22、床23のいずれかに適用したものであり、断熱性能に優れ、外気温の変動が大きい場合でも、室温の変動を小さくでき、室温を所定温度に保つために、室内の空気を冷却または加熱する場合は、室内の空気を冷却または加熱するためのエネルギーが少なくて済む。
【0133】
実施の形態1または実施の形態2の断熱壁1を、室内空間を構成する壁21、天井22、床23のいずれかに適用した建物が、住宅20である場合は、少ない冷暖房エネルギー(冷暖房費)で快適空間を実現できる。
【0134】
断熱壁1を天井22に適用する場合は、ボード材8、胴縁6、真空断熱材4、釘7、タッカー3,5等の構成要素が落下しないようにしっかりと固定する。断熱壁1を床23に適用する場合は、重力方向の荷重に耐えられるように、ボード材8の材料や厚みや構造、胴縁6の材料や構造や幅や隣接する胴縁6同士の間隔を選定する。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明の断熱壁は、容易に施工可能で断熱性能が良好な断熱壁であり、既存の建物の内壁を解体することなくリフォーム(断熱改修)して断熱壁にする場合に最適であるが、新築の建物の壁にも適用可能で、住宅用の建物や商業用の建物、その他、断熱が必要な建物に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】本発明の実施の形態1における断熱壁の断面図
【図2】同実施の形態の断熱壁に用いる真空断熱材の断面図
【図3】同実施の形態の断熱壁に用いる真空断熱材の平面図
【図4】同実施の形態の断熱壁の面材となる既存の建物の内壁に胴縁を固定した後に真空断熱材を取り付け始めている状態を示す平面図
【図5】同実施の形態の断熱壁の面材となる既存の建物の内壁に固定した胴縁に複数の真空断熱材を取り付け終わった状態を示す平面図
【図6】同実施の形態の断熱壁の面材となる既存の建物の内壁の左半分にボード材を固定した状態を示す平面図
【図7】同実施の形態の断熱壁の面材となる既存の建物の内壁にボード材を固定し終えた状態を示す平面図
【図8】同実施の形態の断熱壁のボード材の室内側の面を壁紙で覆った状態を示す平面図
【図9】同実施の形態の断熱壁の面材となる既存の建物の内壁に胴縁を固定する工程を示す断面図
【図10】同実施の形態の断熱壁の面材となる既存の建物の内壁に胴縁に合わせて真空断熱材を配置する工程を示す断面図
【図11】同実施の形態の断熱壁の面材となる既存の建物の内壁に胴縁に合わせて複数の真空断熱材を固定する工程を示す断面図
【図12】同実施の形態の断熱壁の面材となる既存の建物の内壁にボード材を固定する工程を示す断面図
【図13】同実施の形態の断熱壁のボード材の室内側の面を壁紙で覆う工程を示す断面図
【図14】本発明の実施の形態2における断熱壁の断面図
【図15】本発明の実施の形態3の建物の一例としての住宅の概略縦断面図
【図16】従来の断熱壁の概略断面図
【符号の説明】
【0137】
1 断熱壁
2 内壁
3 タッカー
4 真空断熱材
5 タッカー
6 胴縁
7 釘
8 ボード材
10 熱溶着層
11 外被材
12 芯材
15 芯材部
16 熱溶着部
19 保護部材
20 住宅
21 壁
22 天井
23 床

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内空間を構成する面材と、前記面材の室内側の面に固定された複数の胴縁と、芯材を外被材で減圧密封して成り前記外被材の間に前記芯材がある芯材部が互いに隣接する前記胴縁と前記胴縁との間で前記面材の室内側の面に接触または近接するように配置された真空断熱材と、前記真空断熱材を室内側から覆い隠すように前記胴縁に固定されたボード材とからなり、前記胴縁が前記芯材部の厚み以上の厚みを有し、前記真空断熱材における前記外被材の間に前記芯材が無く対向する前記外被材同士が熱溶着された熱溶着部の一部のみが前記胴縁と前記ボード材との間に位置する断熱壁。
【請求項2】
前記真空断熱材は、熱溶着層同士が対向するガスバリア性でフレキシブルな前記外被材の間に、板状の前記芯材が配置されて、前記外被材の間に前記芯材が無い部分の前記外被材同士を密着させて、前記密着した前記外被材同士を熱溶着してなり、前記外被材同士が密着する全ての部分の前記外被材同士が熱溶着されている真空断熱材である請求項1に記載の断熱壁。
【請求項3】
前記真空断熱材は、複数の前記芯材が、厚み方向に略垂直な方向に互いに所定間隔離して配置されて、前記複数の芯材のそれぞれが独立した空間内に位置するように、隣接する前記芯材と前記芯材との間に前記外被材同士が熱溶着された熱溶着部を設けている真空断熱材である請求項2に記載の断熱壁。
【請求項4】
前記真空断熱材における互いに隣接する前記芯材部と前記芯材部との間の前記外被材同士が熱溶着された熱溶着部の一部が前記胴縁と前記ボード材との間に位置する請求項3に記載の断熱壁。
【請求項5】
前記真空断熱材は、前記芯材部から所定間隔以上離れた前記熱溶着部を貫通して前記胴縁に突き刺さる部材で固定される請求項2から4のいずれか一項に記載の断熱壁。
【請求項6】
前記ボード材は、前記ボード材と前記胴縁を貫通して前記面材に突き刺さる部材で固定された請求項2から5のいずれか一項に記載の断熱壁。
【請求項7】
前記面材の室内側の面に前記芯材部が直接接触しないように、前記面材の室内側の面と前記芯材部との間に保護部材を有し、前記胴縁の厚みが前記芯材部と前記保護部材の厚みの合計以上の厚みである請求項1から6のいずれか一項に記載の断熱壁。
【請求項8】
前記胴縁は、断熱性のある材料からなる請求項1から7のいずれか一項に記載の断熱壁。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の断熱壁を、室内空間を構成する壁、天井、床のいずれかに適用した建物。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載の断熱壁を、室内空間を構成する壁、天井、床のいずれかに適用した住宅。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−7333(P2010−7333A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166825(P2008−166825)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「高性能、高機能真空断熱材」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】