説明

断熱材充填袋体及びその梱包体

【課題】本発明の課題は、難燃性、飛散防止性、金属の腐食性などの優れた断熱材充填袋体及び断熱袋体を提供することである。
【解決手段】無機質繊維を含有する断熱材を、部分熱圧着率が5〜35%、目付け20〜100g/mの難燃剤練り込み型合成繊維不織布の袋に収納し、該袋の周囲端部を接合密封し、接合強度が1N/25mm以上であることを特徴とする断熱材充填袋体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱材充填袋体に関する。更に詳しくは、ガラス繊維、ロックウールなどの無機系繊維からなる断熱材の裁断工程、打ち抜き工程などの作業時に、無機繊維が空気中に飛散することを防止し、作業者が肌に触れチクチクすることなどがないようにするものである。更に、金属製鋼管の断熱に使用する場合も、鋼管の腐食がなく、難燃性を有する断熱材充填袋体を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、石綿、ロックウール、ガラス繊維などは、不燃性、断熱性、価格面などの優れた特徴から、断熱材として多く利用されてきている。
しかし、それらの断熱材は、スリット加工、穴あけ加工、裁断加工などで、空気中に繊維が飛散し、作業者がチクチクするなどの作業性及び環境上の問題が生じていた。
その対策として、飛散防止用ポリエチレンフイルムなどが使用されている。
この飛散防止対策は、フイルムなどの通気性のない袋に断熱材を入れるものであるため、通気性がなく、嵩高い断熱材となり、輸送などにコンパクトな梱包ができない問題があった。そのため、周囲をシールしないで、フイルムで挟むことによって、飛散を完全防止することはできないものの、その量を少なくすることで対応している状況である。
【0003】
特許文献1には、有機繊維不織布と無機繊維マットを重ね、有機繊維側からニードルパンチ加工して、無機繊維の飛散防止がなされている。この方法では緻密化された断熱材が形成され、成形加工性等が向上できたが、飛散防止性が改善できていないことが問題として残っている。
ガラス繊維の飛散防止の表面材としては、アスベスト紙やアスフアルト含浸紙などが使用されていたが、環境上および衛生上の問題でその使用が限定されている。
特許文献2には、アルミナゾルを紙の生産時に昆抄することが提案されているが、アルミナの歩留まりに限界があること、難燃性の効果が不十分であることが記載されている。
【0004】
特許文献3には、シリコーン樹脂を用いることが提案されているが難燃性を充分に得るためには、配合量を多くしなければならないことなどが問題である。
特許文献4は、難燃性の無機粉体とバインダーの併用が提案されている。難燃性を充分にするためには、付着量が多くなり、風合いが硬くなるなどの問題がある。更に、難燃性を得る目的で、熱可塑性合成繊維不織布に難燃剤を付与することが考えられるが、銅製、アルミ製、鉄製などの鋼管の断熱材に使用した場合、腐食するなどの問題が生じている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−221872号公報
【特許文献2】特開昭57−205600号公報
【特許文献3】特開昭54−68470号公報
【特許文献4】特許3256019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上記従来の問題を解決し、金属製鋼管などの腐食をひきおこすことがなく、無機繊維の飛散が防止でき、かつ難燃性を有する、断熱材充填袋体及びコンパクトなその梱包体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、難燃材料を繊維原料に練り
込んだ、難燃性合成繊維からなる不織布を用い、難燃性に優れ、断熱材の飛散が防止で
き、取り扱い性に優れた、特定の不織布用いた袋体を見出し、本発明に到達した。本願で特許請求される発明は、以下の通りである。
(1)無機質繊維を含有する断熱材を、部分熱圧着率が5〜35%、目付け20〜100g/mの難燃剤練り込み型合成繊維不織布の袋に収納し、該袋の周囲端部を接合密封し、接合強度が1N/25mm以上であることを特徴とする断熱材充填袋体。
(2)前記不織布がスパンボンド不織布であり、平均繊維径が10〜30μmであることを特徴とする上記(1)に記載の断熱材充填袋体。
(3)前記不織布が、ポリエステル系繊維又はポリエステル系共重合体繊維からなることを特徴とする上記(1)又は(2)のいずれかに記載の断熱材充填袋体。
(4)前記不織布の袋周囲端部が、難燃性ホットメルト系接着剤で接合密封されていることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の断熱材充填袋体。
(5)前記無機質繊維を含有する断熱材の嵩密度が、5〜300kg/mであることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の断熱材充填袋体。
(6)前記無機質繊維を含有する断熱材が、厚み1〜300mm、幅5〜2000mm、長さ10〜40000mmに成形されていることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の断熱材充填袋体。
(7)前記無機質繊維を含有する断熱材が、丸、四角、三角及び異形形状の部分的打ち抜き加工、またはスリット加工が施されて前記不織布に収納され、該加工個所の端部周囲が、前記不織布で密封被覆されていることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の断熱材充填袋体。
(8)上記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の断熱材充填袋体が、3〜50枚重ねられて、非通気性袋に収納され、脱気され、密封梱包されていることを特徴とする断熱材充填袋体の梱包体。
【発明の効果】
【0008】
本発明の断熱材充填袋体は、以下の特徴を有するものである。
すなわち、折れ、脱落、切断など粉塵が発生し易い無機質繊維からなる断熱材を、長繊維の単繊維がランダム方向に複数積層され、加熱エンボスロール等で熱圧着して得られる緻密な構成の不織布で被覆することにより、空気中に浮遊する粉塵、作業中のチクチク性等を少なくでき、且つ、原料練り込み型の難燃性合繊長繊維不織布を用いることで、金属への腐食が少なく、難燃性に優れた、断熱材充填袋体である。
従って、給湯槽の金属鋼管用断熱材、魔法瓶などの断熱材、冷蔵庫、保冷庫などの断熱材、及び、家屋の壁、屋根下材などの建材用断熱材、自動車内装用などの断熱材に広く使用できる。
また、不織布が適度な通気性を有するため、該断熱材充填袋体を、3〜50枚重ねて、非通気性袋に収納し、脱気し、密封梱包することが出来、その結果、コンパクトな輸送、取り扱いが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の断熱充填袋体は、無機質繊維からなる断熱材とそれを被覆する被覆材とからなる。被覆材として、原料中に難燃剤を練り込んだ難燃性合成長繊維からなる不織布を用いることで、無機系繊維の飛散防止ができ、且つ、金属製の鋼管などの腐食がなく、難燃性を有していることが特徴である。
本発明の第一の特徴は、断熱材の被覆材に、合成繊維ウェブからなる不織布を用いており、該被覆材が熱圧着で一体化された緻密な構成を有することである。不織布としては、スパンボンド法の長繊維不織布が好ましく用いられ、長繊維がランダム方向に多数本積層され、エンボスロールなどの凹凸ロールで部分的に圧着、接合されてなる構成であり、繊維が多層状に形成されており、繊維と繊維の間隙が小さい緻密構造で、数ミクロンの無機繊維の粉塵や短繊維が不織布を構成する繊維内に引っ掛かり、絡まり易く、不織布内に補
足される。その結果、無機繊維の脱落繊維などが外部へ漏れ難い構造となっていることが挙げられる。
【0010】
第二の特徴は、難燃性のポリマーからなる難燃性不織布を採用することである。
そして、その難燃剤が原料ポリマーに練り込まれており、ポリマー自身が難燃性を有し、繊維表面からの遊離が少ない。その結果、難燃剤が外部に遊離せず、金属などの腐食を引き起こさないという利点を有する。
第三の特徴は、適度な通気性を有する不織布で被覆された断熱材充填袋体とすることである。比較的嵩高な断熱材充填袋体の包装袋が、通気性を有する不織布であるため、数枚重ねて非通気性の袋に収納し、脱気処理することで容易に密封圧縮梱包ができ、コンパクトな断熱材充填袋体の梱包体とすることができるという利点を有する。
【0011】
本発明に用いる熱可塑性合繊繊維不織布は、合成樹脂を溶融する溶融紡糸法で得られる長繊維又は短繊維からなる不織布であり、好ましくはスパンボンド方式で得られる長繊維不織布である。繊維径が10〜30μm、好ましくは12〜20μmの繊維から成り、強度、通気性に優れ、磨耗強度が大きいことが好ましい。このような構成繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、共重合ポリエステルなどのポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66、共重合ポリアミド繊維などのポリアミド系繊維、ポリエチレン、ポリプロピレンン、共重合ポリプロピレンなどのオレフイン系繊維、鞘がポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリエステルなどの低融点成分と、芯がポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン6などの高融点成分殻なる芯鞘構造、サイドバイサイド構造などの複合繊維などの合成繊維があげられる。
【0012】
本発明に用いる熱可塑性合繊繊維不織布の難燃性は、原料の樹脂に難燃剤を練り込み難燃性繊維とする事が好ましく行われる。例えば、難燃剤としては、トリメチルホスフエート、トリエチルホスフエート、トリブチルホスフエート、トリフエニルホスフエート、トリクレジルホスフエートなどの非ハロゲンリン酸エステル類、ポリホスフエート、芳香族ポリホスフエートなどの特殊リン酸エステル類、含ハロゲンリン酸エステル類、デカブロモジフエニルオキサイド、オクタブロモジフエニルオキサイドなどのデカブロ系などの臭素系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシュウムなどの無機難燃剤を用いることができる。難燃剤の添加量は、連続して紡糸でき、且つ難燃性を有することが必要である。例えば0.01〜5wt%、好ましくは0.05〜3wt%である。特に、3−メチルホスフイニコプロピオン酸エステルなどの非ハロゲンリン酸エステル類0.3〜3wt%含有させたジメチルテレフタレート・エチレングリコールのエステル共重合体などが好ましく用いられる。
【0013】
本発明の合成繊維不織布の結合方式は、熱圧着法、流体交絡法、ニードルパンチ法などが挙げられるが、熱圧着で一体化することが好ましい。例えば、凹凸を有するエンボスロールと平滑ロール間で加熱、圧着して接合する。加熱温度は、繊維の軟化温度以上の温度から融点以下の温度範囲である。しかし、低融点繊維の熱劣化を考慮した場合、上下ロールの温度差を150℃以下、好ましくは130℃以下が好ましい。熱圧着の圧力は10〜1000kPa/cm、好ましくは50〜700kPa/cmである。
部分熱圧着率は、5〜35%が好ましく、より好ましくは7〜30%である。エンボス模様は、丸状、楕円状、菱形状、円柱状、四角状などの、平行均等配置、千鳥状配置などの均等配置することが好ましい。熱圧着部一個の面積は、0.3〜1.5mm、好ましくは、0.4〜1.2mmであり、熱圧着の間隔は、0.3〜3mm、好ましくは、0.5〜2.5mmの均等配置させる。
部分熱圧着率が10%未満では、接合面積が少なくなり、磨耗強度が低下する。一方、30%超えると、磨耗強度が高くなるが、風合いがペーパーライクとなる。
【0014】
本発明の不織布の平均みかけ密度は、強度、表面磨耗性、風合いなどの点で包装材として使用できることが必要であり、例えば、0.1〜0.5g/cm好ましく、より好ましくは0.12〜0.3g/cmである。
本発明の不織布の目付けは、20〜100g/m、好ましくは、25〜70g/mである。目付けが20g/m未満では、繊維の緻密性が低下して、間隙がひろくなり、被覆しても、断熱材の飛散防止性が低下する。一方、100g/m超えると、断熱材の飛散防止性が向上するが、風合いが硬くなり、厚みが大きくなり、袋体の製袋加工性が低下する。目付けがこの範囲であると、飛散性、柔軟性、加工性が満足できるものであり、特に、不織布を構成する合成繊維が厚み方向に対して層状に多数配列でき、無機繊維の繊維層内での補足効果が高まり、断熱材の飛散防止性が向上する。
本発明の繊維不織布の通気性は、10cc/cm/sec以上、好ましくは20〜300cc/cm/secである。
通気性が10cc/cm/sec未満では、繊維構成が緻密で、飛散防止効果がよくなるが、通気性が低くなり、圧縮、脱気などが難しくなる。
本発明の不織布における通気性は、断熱材の飛散防止効果を発揮させ、かつ、多数の断熱袋体の脱気梱包を効率的に行う上で、上記範囲の通気性が必要となる。
【0015】
本発明の無機質繊維は、石綿、ガラス繊維、ロックウール、セラミックフアイバーなどからなり、断熱性、保温性が好ましい嵩密度として、5〜300kg/m、好ましくは7〜250kg/m、より好ましくは10〜200kg/m無機質の断熱材である。
更に、飛散防止のために、熱硬化性の樹脂、例えば、フエノール系樹脂などの塗布された無機性繊維、および、ニードルパンチ加工で密度を高めたニードルマット、アルミ箔などの金属箔、グラスペーパー、セラミックペーパー等を介在させた積層構成の無機質繊維で輻射効果を高めたもの、金属などの他の素材と無機質繊維を組み合わせたもの、無機質繊維の繊維径、密度、素材の異なるものを組み合わせた断熱材などが使用できる。
【0016】
特に、無機質繊維の繊維径が0.1〜15μm、好ましくは、1〜10μmが好ましく用いられる。0.1μm以下では、飛散し易く、袋体で飛散防止が防ぐ事が困難である。一方、15μm以上では、飛散が少ないが、緻密構成でなく、断熱効果、保温効果が低くなる。
断熱材の厚み、寸法は目的に応じて変えられるが、例えば、厚みが1〜300mm、好ましくは3〜250mmであり、幅が5〜2000mm、好ましくは7〜1500mm、長さ10〜40000mm、好ましくは、20〜35000mmである。
更に、部分的に丸、四角、三角及び異形形状の打ち抜き加工、スリット加工及びテープ形状などに成形加工が施される。従って、断熱材の形状に特に限定されないが、断熱材の周囲は全て、不織布の端部を接合して密封被覆されていることが必要である。
【0017】
本発明の断熱材充填袋体は、成形加工された無機質断熱材を前記不織布の袋に入れて、端部を接合して密封される。
前記不織布の袋端部接合は、接合強度1N/2.5cm以上であれば特に限定されない。
具体的には、例えば、前記不織布の接合部に直接、接着剤、粘着剤などを塗布する方法、又は、前記不織布の融点より低融点のフイルム、不織布を接合部に介在させる方法、ミシン糸を用いる縫製方法、内部加熱方式の超音波ウエルダー法、高周波ウエルダー法、溶断シール法などがある。従って本発明に用いる粘着剤、接着剤、フイルム、接着用不織布は、本発明の難燃性に合格し、本発明の接合強度が得られれば特に限定されない。
例えば、接着剤、粘着剤としては、ポリエチレン系樹脂、ポリエチレン系共重合体、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、エステル系樹脂、エチレンー酢酸ビニル系樹脂などの1種又は2種以上の樹脂が用いられる。特に、樹脂が難燃性を有するか、難燃剤が練りこまれた接着剤、粘着剤などで難燃性に合格する樹脂が好ましく用いられる。
上記接合方法で、難燃性、接着性に優れたポリアミド系樹脂などの難燃性ホットメルト系接着剤を用いる方法が好ましい。
【0018】
次いで、断熱材充填袋体のシール幅は、特に限定されないが、断熱材の取り扱い作業などで破袋しないことが必要であり、安全なのは、シール幅を1mm〜20mm、好ましくは、3mm〜15mmである。
従って、接合強度としては、破袋しないことが条件で、接合強度が、1N/2.5cm以上、好ましくは2N/2.5cm〜200N/2.5cmである。
接合強度が1N/2.5cm未満では、断熱材の取り扱い作業中に破袋する恐れがある。
【0019】
本発明の断熱材充填袋体は、断熱性を高くする目的で、嵩高な無機質繊維構造とされており、輸送する時には、梱包効率を上げることが重要である。そこで、本発明の断熱材充填袋体の梱包体は、通気性の不織布で形成された断熱材充填袋体を3〜50枚重ねて、厚み20〜100μmの非通気性のポリエチレンフイルムなどに入れ、加圧工程、脱気工程で、コンパクトな無機質繊維充填袋体の梱包体とすることが容易にできる。
【実施例】
【0020】
本発明を実施例に基づいて説明する。
測定方法は以下のとおりである。
(1)目付(g/m):縦20cm×横25cmの試料を3カ所切り取り、重量を測定
し、その平均値を単位当たりの質量に換算して求める。
(JIS−L−1906)
(2)平均繊維径(μm):顕微鏡で500倍の拡大写真を取り、10本の平均値で求め
る。
(3)厚み(mm):不織布は荷重10kPaでJIS−L−1906に準拠、ガラス繊
維は2KpaでJIS−L−1906に準拠。
(4)不織布の平均みかけ密度(g/m):目付け/厚み荷重10Kpaから得た。
無機質繊維を含む断熱材の嵩密度(kg/m):目付け/厚み荷重2Kpaから
得た。
(5)通気性:JIS−L−1906フラジュール法に準拠。
(6)発塵性:10cm角の試料表面を金属棒で叩くことにより発塵させる。次いで、発
塵したガラス繊維を吸引ロートに捕集し、顕微鏡を用いて繊維の本数を測
定した。
発塵条件:振とう速度210回/分、時間3分
【0021】
(7)腐食性:銅製金属板を2cm角に切断し、不織布を5cm角2枚切り取り
厚み5mmのガラス板2枚を用いて、
ガラス板/不織布/銅板/不織布/ガラス板に重ねて、荷重
1kg/cmで、温度65℃×湿度85%の恒温高湿槽で7日間処理し
、腐食状態を観察して下記の基準で判定した。
5級:金属片の表面の変色・腐食がまったくない。
4級:金属片の表面の変色が僅かにある。
3級:金属片の表面の変色・腐食が僅かにあるが目立たない。
2級:金属片の表面の変色・腐食が少しある。
1級:金属片の表面の変色・腐食が甚だしい。
【0022】
(8)引張強力(N/5cm):定長引張試験機を用い、試料幅5cm長さ30cmを切
り取り、つかみ間隔20cm、引張速度10cm/mi
nで、引張強力をタテ、ヨコ各々3カ所測定し、最大強
度(タテ+ヨコ)/2の平均値で示す。
(9)接合強度(N):定長引張試験機を用い、試料幅25mm長さ200mmを切り取
り、接合部分を約50mm上下方向に剥離し、180度剥離する
ように各々取り付け、つかみ間隔100mm、引張速度10cm
/minで、剥離強度をタテ、ヨコ各々3カ所測定し最大強度の
平均値で示す。
(10)難燃性:JIS−L−1091 A−3法(水平法)に準じる。
合格:燃焼長さ10cm以下 残炎時間20秒以下
【0023】
[実施例1]
本発明の熱可塑性長繊維不織布は、エチレングリコールとジメチレンテレフタレートに、3−メチルホスフイニコプロピオン酸エステルを1.2wt%添加して共重合した難燃性の共重合ポリエチレンテレフタレートをスパンボンド用紡糸口金から、紡糸温度290℃で平均繊径14μm、目付け50g/m熱可塑性長繊維ウェブを捕集ネット上に形成させ、圧着面積率が、15%エンボスロール、線圧350N/cm、上下温度を220℃/225℃で熱圧着して実施例1の難燃性エステル不織布を得た。
【0024】
次いで、厚み25mm、繊維径4μm、嵩密度80kg/mのガラス繊維のニードルマットを、タテ10cmヨコ20cmの長方形の寸法に切断し、タテ30cmヨコ30cmの寸法に切り取った上記不織布により、上記ガラス繊維のニードルマットを包み込み、3方向の端部を10mm重ねて合わせ本縫い方法でミシン縫製して包装し、本発明の断熱材充填袋体を得た。
得られた断熱材充填袋体の発塵性、腐食性の測定結果を表−1に記載した。
表−1から、本発明の断熱材充填袋体は、発塵性、腐食性、難燃性に優れたものであった。
【0025】
[実施例2]
本発明の熱可塑性長繊維不織布は、エチレングリコールとジメチレンテレフタレートに、3−メチルホスフイニコプロピオン酸エステルを0.5wt%添加し共重合した難燃性共重合ポリエチレンテレフタレートをスパンボンド用紡糸口金から、紡糸温度290℃で平均繊径12μm、目付け30g/m熱可塑性長繊維ウェブを捕集ネット上に形成させ、圧着面積率が、25%エンボスロール、線圧350N/cm、上下温度を220℃/225℃で熱圧着して実施例1の難燃性エステル不織布を得た。
【0026】
次いで、厚み50mm、繊維径7μm、嵩密度12kg/mのガラス繊維にフエノール樹脂で加工して、塗布量10wt%にしたガラス繊維マットをタテ10cmヨコ20cmの長方形の寸法に切断し、タテ35cmヨコ35cmの寸法に切り取った上記不織布により、上記ガラス繊維マットを包み込み、不織布の端部10mm幅に、ホットメルト系のポリアミド系接着剤を塗布量30g/mになるように、ホットメルトガンを用いて接着し、本発明の断熱材充填袋体体を得た。
得られた断熱材充填袋体の発塵性、腐食性の測定結果を表−1に記載した。
表―1から、本発明の断熱材充填袋体は、発塵性、腐食性、難燃性に優れたものであった。
【0027】
[比較例1]
実施例1に用いたガラス繊維のニードルマットを、タテ10cmヨコ20cmの長方形の寸法に切断したガラス繊維マットの断熱材とした。
表−1から、断熱材の発塵は多く発生し問題であった。
【0028】
[比較例2]
ポリエチレンテレフタレートをスパンボンド用紡糸口金から、紡糸温度300℃で平均繊径14μm、目付け50g/m熱可塑性長繊維ウェブを捕集ネット上に形成させ、圧着面積率が、15%エンボスロール、線圧350N/cm、上下温度を230℃/235℃で熱圧着して比較例2のエステル不織布を得た。次いで、実施例1と同様のガラス繊維ニードルマットを用い、タテ30cmヨコ30cmの寸法に切り取った上記不織布により、上記ガラス繊維のニードルマットを包み込み、3方向の端部を5mm重ねて合わせ本縫い方法でミシン縫製して包装し、断熱材充填袋体を得た。
表−1から、得られた断熱材充填袋体は、発塵性、腐食性に優れたものであったが、難燃性は不合格であった。
【0029】
[比較例3]
比較例2のエステル不織布を用いて、難燃剤による難燃加工を行った。
難燃加工は、大京化学製の燐酸グアニジン誘導体からなる難燃剤(大京化学製ビゴール415)を用い含浸加工して塗布量15wt%になるようして難燃性不織布を得た。
次いで、実施例1と同様のガラス繊維ニードルマットを用い、タテ30cmヨコ30cmの寸法に切り取った上記不織布により、上記ガラス繊維のニードルマットを包み込み、3方向の端部を10mm重ねて合わせ本縫い方法でミシン縫製して包装し、断熱材充填袋体を得た。
表−1から、得られた断熱材充填袋体は、発塵性、難燃性に優れたものであったが、金属に対する腐食性は1級で問題であった。
【0030】
【表1】

【0031】
[実施例3]
実施例1の本発明の断熱材充填袋体を10枚重ね、厚み50μm幅60cm長さ100cmのポリエチレン製平袋に挿入にして、プレス機に装着させ、圧縮、脱気してから、幅10mmのポリプロピレン製梱包テープで梱包して、厚み約15cmタテ12cmヨコ22cmの本発明のコンパクトな断熱材充填袋体の梱包体を得た。
【0032】
[実施例4]
実施例2の本発明の断熱材充填袋体を10枚重ね、厚み50μm幅65cm長さ130cmのポリエチレン製平袋に挿入にして、プレス機に装着させ、圧縮、脱気してから、幅10mmのポリプロピレン製梱包テープで梱包して、厚みが約10cmタテ12cmヨコ22cmの本発明のコンパクトな断熱材充填袋体の梱包体を得た。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の断熱材充填袋体は、ガラス繊維、ロックウールなどの無機質繊維などの断熱材を難燃性の不織布で包装してなり、繊維の飛散が防止でき、金属鋼管などの表面を腐食させず、難燃性を有する。
従って、魔法瓶、給湯器、冷凍器、家電製品などの断熱材として広く用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機質繊維を含有する断熱材を、部分熱圧着率が5〜35%、目付け20〜100g/mの難燃剤練り込み型合成繊維不織布の袋に収納し、該袋の周囲端部を接合密封し、接合強度が1N/25mm以上であることを特徴とする断熱材充填袋体。
【請求項2】
前記不織布がスパンボンド不織布であり、平均繊維径が10〜30μmであることを特徴とする請求項1に記載の断熱材充填袋体。
【請求項3】
前記不織布が、ポリエステル系繊維又はポリエステル系共重合体繊維からなることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の断熱材充填袋体。
【請求項4】
前記不織布の袋周囲端部が、難燃性ホットメルト系接着剤で接合密封されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の断熱材充填袋体。
【請求項5】
前記無機質繊維を含有する断熱材の嵩密度が、5〜300kg/mであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の断熱材充填袋体。
【請求項6】
前記無機質繊維を含有する断熱材が、厚み1〜300mm、幅5〜2000mm、長さ10〜40000mmに成形されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の断熱材充填袋体。
【請求項7】
前記無機質繊維を含有する断熱材が、丸、四角、三角及び異形形状の部分的打ち抜き加工、またはスリット加工が施されて前記不織布に収納され、該加工個所の端部周囲が、前記不織布で密封被覆されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の断熱材充填袋体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の断熱材充填袋体が、3〜50枚重ねられて、非通気性袋に収納され、脱気され、密封梱包されていることを特徴とする断熱材充填袋体の梱包体。

【公開番号】特開2009−115286(P2009−115286A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−291966(P2007−291966)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【特許番号】特許第4156014号(P4156014)
【特許公報発行日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【出願人】(507371423)株式会社大和工業所 (2)
【Fターム(参考)】