説明

断熱耐火パネル

【課題】火災等の際、長時間に亘って炎に曝されても、断熱性及び耐火性の低下を抑制することができる断熱耐火パネルを提供すること。
【解決手段】2枚の金属板1,2で芯材3を挟んだ断熱耐火パネルにおいて、2枚の金属板1,2と芯材3の表面と裏面とはそれぞれ接着剤4を介して接着される。そして、少なくとも金属板1と芯材3の表面側との間の接着剤4は、熱によって膨張して遮炎層6を形成する多数の熱膨張性粒子5を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁材や屋根材として用いられる断熱耐火パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、図3(a)に示すような、2枚の金属板1,2で芯材3を挟んだ断熱耐火パネルBが提案されている(特許文献1等参照)。
【0003】
この断熱耐火パネルBは、2枚の金属板1,2がそれぞれ芯材3の表面と裏面とに接着剤9を介して接着されている。芯材3としては、繊維状のロックウールをバインダー樹脂で固めて全体形状が板状となったものが用いられている。なお、芯材3としては、特許文献2に示すように、ウレタン等の発泡樹脂を板状に形成したものを用いることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−256507号公報
【特許文献2】特開平11−107397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した断熱耐火パネルBにおいては、火災等の際、一方の金属板1の表面が長時間に亘って炎に曝され続けると、その金属板1と芯材3とを接着する接着剤9が蒸発する。すると、図3(b)に示すように、芯材3への接着性を失った金属板1が熱伸びして曲がり、この金属板1と芯材3との間に隙間ができる。この隙間に炎が入り込むと、芯材3が高温で加熱されて熱収縮を起こし、断熱耐火パネルBの断熱性及び耐火性が低下してしまう。
【0006】
そこで、上記事情を鑑みて、本発明は、火災等の際、長時間に亘って炎に曝されても、断熱性及び耐火性の低下を抑制することができる断熱耐火パネルを提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の断熱耐火パネルは、2枚の金属板で芯材を挟んだ断熱耐火パネルにおいて、前記2枚の前記金属板と前記芯材の表面と裏面とはそれぞれ接着剤を介して接着され、少なくとも前記金属板と前記芯材の表面側との間の前記接着剤は、熱によって膨張して遮炎層を形成する多数の熱膨張性粒子を含有することを特徴とする。
【0008】
また、前記熱膨張性粒子は、熱によって膨張する熱膨張性黒鉛であることが好ましい。
【0009】
また、前記芯材は、繊維系断熱材であることが好ましい。
【0010】
また、前記芯材は、発泡樹脂であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の断熱耐火パネルは、火災等の際、長時間に亘って炎に曝されても、断熱性及び耐火性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態の断熱耐火パネルの常温状態を示す斜視図である。
【図2】同上の断熱耐火パネルを示す部分断面図であり、(a)は常温状態であり、(b)は被加熱状態であり、(c)は(b)の状態よりさらに時間が経過した被加熱状態である。
【図3】従来の断熱耐火パネルを示す部分断面図であり、(a)は常温状態であり、(b)は被加熱状態である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
【0014】
本実施形態の断熱耐火パネルAは、図1に示すように、2枚の金属板1,2で芯材3を挟んだ所謂サンドイッチパネルである。断熱耐火パネルAは、芯材3の表面に金属板1(以下「表面側金属板1」という)が接着剤4で接着され、芯材3の裏面に金属板2(以下「裏面側金属板2」という)が接着剤4で接着されて形成されている。断熱耐火パネルAの長さ方向の一方の端部には凸部7が設けられており、断熱耐火パネルAの長さ方向の他方の端部には凸部7と嵌合可能な凹部8が設けられている。隣接する断熱耐火パネルA,Aは、互いに凸部7と凹部8とを嵌合させることで接続させることができる。断熱耐火パネルAは、例えば外壁材や屋根材や内壁材として用いられる。
【0015】
金属板1、2としては、亜鉛鉄板、アルミニウム板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム亜鉛合金めっき鋼板、ステンレス鋼板、チタン鋼板等を用いることができる。あるいは、これらの金属板を、一般の塗料で着色したものや、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂などで被覆したものを用いることができる。金属板1、2は、例えば0.27〜1mmの厚みで形成され、両端部ではロール加工や曲げ加工するなどして凸部7と凹部8の外皮を構成する。
【0016】
芯材3は、繊維系断熱材であり、ロックウールやグラスウール等の無機質繊維材をバインダー樹脂でブロック状や棒状や層状や短冊状に成形したものを複数個並べて組み合わせ、全体形状を板状としたものである。芯材3は、繊維方向が、断熱耐火パネルAの金属板1、2の面方向と直角(直交する方向)になるように形成されている。バインダー樹脂としては、例えば、フェノール樹脂や無機系のシリコン等を用いることができる。芯材3は、例えば25〜60mmの厚みで形成される。芯材3は、その両端部がそれぞれ凸部7と凹部8の内部を構成する。なお、芯材3として、ポリイソシアヌレートフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリウレタンフォーム、フェノールフォームなどの発泡樹脂を板状に成形した発泡樹脂ボードを用いてもよい。上記の発泡樹脂は既知の方法で形成されるものであって、例えば、ポリイソシアヌレートフォームの場合は、粗トリレンジイソシアネートなどのポリイソシアネートと、エチレングリコールなどのポリオールと、2−エチルヘキサン酸カリウムなどの三量化触媒と、n−ペンタンや水などの発泡剤とを混合して調製される原料液を加熱発泡する方法などを採用することができる。
【0017】
接着剤4は、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコン等の接着性を有する樹脂に、粘度や引張強度等を調整するフィラーと、熱によって膨張する多数の熱膨張性粒子5を混ぜたものが用いられる。例えば、主剤としてポリオールを用い、硬化剤としてイソシアネートを用い、それに無機系の炭酸カルシウムを混ぜたものに多数の熱膨張性粒子5を混ぜて、接着剤4を形成する。熱膨張性粒子5は、接着剤4の接着性能を低下させない程度の割合で接着剤4中に含有される。詳しくは、本実施形態では、熱膨張性粒子5は、常温状態の重量が接着剤4の全重量に対して20%程度となるように接着剤4に含有されており、そして、接着性を有する樹脂は、その重量が接着剤4の全重量に対して50%程度となるように接着剤4に含有されている。接着剤4は、塗布前にミキシングする等して、多数の熱膨張性粒子5が均一に分散した状態で使用する。
【0018】
熱膨張性粒子5は、黒鉛と、濃硫酸、濃硝酸、濃硫酸、塩素酸カリウム、濃硫酸等とからなる組成の熱膨張性黒鉛である。この熱膨張性黒鉛からなる熱膨張性粒子5として、例えば、伊藤黒鉛工業(株)製9280170を使用することができる。この熱膨張性黒鉛は、常温状態(非加熱状態)で粒径が1〜500μmのものであり、200℃以上に加熱されると20倍〜600倍に膨張するものである。なお、熱膨張性粒子5としては、熱膨張性パーライト(粒径が5〜500μm)等も使用することができる。
【0019】
上述した金属板1,2と芯材3とが接着剤4によって接着されて断熱耐火パネルAが製造される(図2(a)参照)。ここで、接着剤4は、金属板1,2それぞれと芯材3との間に、例えば150〜600g/m2となるように塗布される。
【0020】
以上のようにして製造された断熱耐火パネルAは、火災等が起こって表面側金属板1の表面が長時間高温(例えば200℃以上)の炎に曝された場合、図2(b)に示すように、接着剤4中の接着性を有する樹脂が蒸発して、芯材3への接着性を失った表面側金属板1が折れ曲がる。このとき、表面側金属板1と芯材3との間の接着剤4中の多数の熱膨張性粒子5が熱によって膨張し、隣り合う熱膨張性粒子5同士が結合して、表面側金属板1と芯材3との間に、10〜40mmの厚さの遮炎層6が形成される。この遮炎層6によって芯材3の表面側金属板1側の面略全体が覆われることにより、芯材3が直接炎に曝されることを抑制できる。そのため、芯材3は熱収縮を起こし難く、これによって断熱耐火パネルAの断熱性及び耐火性の低下を抑制できる。なお、表面側金属板1の表面がさらに長時間高温の炎に曝されて、芯材3が熱収縮を起こした場合には、図2(c)に示すように、芯材3の熱収縮に追従して、遮炎層6が拡がり、遮炎層6と芯材3との間に隙間ができないようになっている。
【0021】
さらに、本実施形態では、熱膨張性黒鉛からなる熱膨張性粒子5によって形成される遮炎層6は、断熱性と耐火性とを備えた防火に効果的な炭化層となる。これにより断熱耐火パネルAの被加熱時(高温の炎に曝された際)の断熱性及び耐火性を高めることができる。なお、熱膨張性黒鉛は安価であり、低コストで断熱耐火パネルAの被加熱時の断熱性及び耐火性を高めることができる。また、熱膨張性黒鉛は不活性であるため、接着剤の接着性能を発揮するための化学反応を阻害し難いので、熱膨張性粒子5として好適に用いることができる。本実施形態では、遮炎層6が10〜40mmの厚さで形成されるようにしたことで、熱伸びして曲がった金属板1と芯材3との間の体積よりも、遮炎層6の体積のほうが大きくなってしまって、遮炎層6が金属板1を無理やり押し曲げてしまうことを抑制できる。
【0022】
また、火災等が起こって裏面側金属板2の表面が長時間炎に曝された場合も上述と同様に、裏面側金属板2と芯材3との間に遮炎層6が形成され、これによって芯材3の熱収縮が抑制されて、断熱耐火パネルAの断熱性及び耐火性の低下を抑制できる。
【0023】
以上まとめると、本実施形態の断熱耐火パネルAは、2枚の金属板1,2で芯材3を挟んだ断熱耐火パネルAにおいて、2枚の金属板1,2と芯材3の表面と裏面とがそれぞれ接着剤4を介して接着されるものである。そして、少なくとも金属板1と芯材3の表面側との間の接着剤4は、熱によって膨張して遮炎層6を形成する多数の熱膨張性粒子5を含有することを特徴とする。
【0024】
このような構成とすることで、本実施形態の断熱耐火パネルAでは、一方の金属板1側の表面が長時間に亘って炎に曝された際に、接着剤4に含有されている多数の熱膨張性粒子5が熱によって膨張して、芯材3と金属板1との間に遮炎層6が形成される。この遮炎層6によって芯材3の炎側の表面が覆われることとなり、金属板1が熱伸びで曲がってしまっても、芯材3が炎に直接曝されることを抑制できる。よって、本実施形態の断熱耐火パネルAは、火災等の際、長時間に亘って炎に曝されても、芯材3が熱収縮を起こし難く、断熱性及び耐火性の低下を抑制できるものとなっている。
【0025】
また、本実施形態の断熱耐火パネルAにおいては、熱膨張性粒子5は、熱によって膨張する熱膨張性黒鉛であることを特徴とする。
【0026】
このような構成とすることで、遮炎層6として、断熱性及び耐火性に優れた炭化層が形成される。よって、本実施形態の断熱耐火パネルAでは、この炭化層からなる遮炎層6によって、断熱耐火パネルAの被加熱時の断熱性及び耐火性を高めることができる。
【0027】
また、本実施形態の断熱耐火パネルAにおいては、芯材3は、繊維系断熱材であることを特徴とする。
【0028】
このような構成とすることで、芯材3自体の耐熱性が高くなるので、断熱耐火パネルAの被加熱時の不燃性及び耐火性を高めることができる。
【0029】
また、本実施形態の断熱耐火パネルAにおいては、芯材3は、発泡樹脂であることを特徴とする。
【0030】
このような構成とすることで、芯材3自体の断熱性が高くなるので、断熱耐火パネルAの被加熱時の断熱性を高めることができる。
【0031】
以上、本実施形態の断熱耐火パネルAについて説明したが、熱膨張性粒子5の成分や、接着剤4中の熱膨張性粒子5の割合や、接着剤4の塗布量は、接着剤4の接着性能を確保でき、被加熱時に遮炎層6を十分な厚み及び広さで形成可能な範囲で、適宜設定できる。
【0032】
なお、熱膨張性粒子5は、粒径が小さすぎると膨張率が小さく、粒径が大きすぎると接着剤4に配合した際に沈殿が起こりやすくなるため、粒径が5〜100μmのものを使用することが好適である。
【0033】
以上、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内であれば、適宜の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 金属板(表面側金属板)
2 金属板(裏面側金属板)
3 芯材
4 接着剤
5 熱膨張性粒子
6 遮炎層
A 断熱耐火パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の金属板で芯材を挟んだ断熱耐火パネルにおいて、前記2枚の前記金属板と前記芯材の表面と裏面とはそれぞれ接着剤を介して接着され、少なくとも前記金属板と前記芯材の表面側との間の前記接着剤は、熱によって膨張して遮炎層を形成する多数の熱膨張性粒子を含有することを特徴とする断熱耐火パネル。
【請求項2】
前記熱膨張性粒子は、熱によって膨張する熱膨張性黒鉛であることを特徴とする請求項1に記載の断熱耐火パネル。
【請求項3】
前記芯材は、繊維系断熱材であることを特徴とする請求項1または2に記載の断熱耐火パネル。
【請求項4】
前記芯材は、発泡樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の断熱耐火パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−36246(P2013−36246A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173608(P2011−173608)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000207436)日鉄住金鋼板株式会社 (178)
【Fターム(参考)】