説明

新規なアルミニウム金属石鹸及びこれを含有する硬化性組成物

【課題】エポキシ樹脂へ良好に溶解するアルミニウム金属石鹸を提供する。また、硬化物の透明性が改善された硬化性組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるアルミニウム金属石鹸。


(1)
(但し、RはC1〜4のアルキル基、RはC1〜6の多価炭化水素基、RはC1〜6のアルキレン基、RはC1〜6のアルキル基であり、qは0〜2の整数、mは0〜20の整数、l及びrは1〜3の整数であって、q+rは3である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なアルミニウム金属石鹸及びこれを硬化剤として含有するエポキシ系硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウム金属石鹸にはステアリン酸アルミニウム、ベヘン酸アルミニウム、オクタン酸アルミニウム等多数のものが知られ、顔料の分散性改良剤、顔料の沈降防止剤、塗料の垂れ防止剤、塗料の過剰浸透防止剤、ラッカーやグリース、印刷インキの粘度調節剤、グリースの増稠剤や、クレヨンの硬化剤、ろうそくの硬化剤や流滴防止剤、繊維製品やセメントの防水剤としての用途がある。
【0003】
アルミニウム金属石鹸には、上記のような用途の他にエポキシ樹脂の硬化剤としての用途が知られている。
例えば、特公昭53−29720号公報には(A)分子当り少なくとも一つのケイ素結合水酸基を含有するオルガノシリコン化合物と、(B)分子当り平均一つより多いエポキシ基を含有する化合物、(C)三水酸化アルミニウム、アルミニウムアルコラート、アルミニウムアシレート、アルミニウムアシレートおよびアルコキシドの塩、アルミノシロキシ化合物及びアルミニウムキレートからなる群から選択された触媒量のアルミニウム化合物、及び(D)オルガノヒドロシリコン化合物からなる組成物が開示されている。当該公報の(C)アルミニウム化合物のうち、アルミニウムアシレートがアルミニウム金属石鹸に相当する。当該公報でアルミニウム金属石鹸としては、アルミニウムトリアセテート、アルミニウムトリプロピオネート、アルミニウムトリベンゾエート、アルミニウムトリステアレート、アルミニウムトリブチレート、アルミニウムトリベンゾエート等が好ましいものとして開示されている。

【0004】
特開昭57−42721号公報には、(イ)(a)一般式(3)で示される化合物またはその縮合物、
【0005】
(化1)
Al(OR(OC=OR3−n(3)
【0006】
(式中、RおよびRはそれぞれ置換もしくは非置換の一価炭化水素基を表す。nは0または3以下の正の整数である)
【0007】
(b)前記アルミニウム化合物またはその縮合物(a)とキレート剤とを反応させて得られるアルミニウム化合物、から選択されるアルミニウム化合物、および(ロ)特定の式で表される水酸基含有ケイ素化合物からなるエポキシ樹脂用硬化剤が開示されており、前記アルミニウム化合物は金属石鹸であってもよく、好ましいアルミニウム金属石鹸としてはアルミニウムトリベンゾエートが例示されている。
【0008】
さらに、特公昭60−43371号公報には、ポリオルガノシロキサンか若しくはオルガノシランとエポキシ含有化合物との反応を、アルミニウム金属石鹸を含んでいても良いアルミニウム化合物の存在下に行なうことを特徴とするケイ素−酸素−炭素結合を含有する組成物の製造方法が開示されており、好ましいアルミニウム金属石鹸としてはアルミニウムトリアセテート、アルミニウムトリプロピオネート、アルミニウムジアセテートモノステアレートの如きアルミニウムトリアシレート類、アルミニウムヒドロキシモノブチレートの如きヒドロキシル化アルミニウムアシレート類、アルミニウムエトキシドジステアレートの如きアルコキシ化アルミニウムアシレート類が例示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記のアルミニウム金属石鹸はエポキシ化合物への溶解性が悪く、一旦他の原料とともに有機溶媒へ溶解し、ワニス化しないと硬化物が得られないという問題があった。
【0010】
一方、特公昭57−57491号公報は、β−ジケトン型多座配位子を有するアルミニウム化合物がシラノール性水酸基を有する有機ケイ素化合物との併用で、エポキシ化合物の重合用触媒として使用できることを開示しており、特公昭57−57492号公報は、β−ジケトン型多座配位子を有するアルミニウム化合物がケイ素原子に直接結合した加水分解性基を有する有機ケイ素化合物との併用で、エポキシ化合物の重合用触媒として使用できることを開示している。β−ジケトン型多座配位子を有するアルミニウム化合物は、前述のアルミニウム金属石鹸とは異なり、種々のエポキシ化合物へ直接溶解させることができるため、有機溶媒が不要で、無溶剤型硬化性組成物が得られるという点で優れている。
【0011】
【特許文献1】特公昭53−29720号公報
【特許文献2】特開昭57−42721号公報
【特許文献3】特公昭60−43371号公報
【特許文献4】特公昭57−57491号公報
【特許文献5】特公昭57−57492号公報
【0012】
しかしながら、β−ジケトン型多座配位子を有するアルミニウム化合物には、ビスフェノールAやビスフェノールF等、ビスフェノール骨格を有するエポキシ化合物には良好に溶解するが、それ以外の、例えば脂肪族エポキシ化合物や脂環式エポキシには、加熱をしながら長時間攪拌しないと溶解せず作業効率が悪いという問題があった。また微量のとけ残りが発生する場合があり、硬化物の機械的強度や外観にばらつきが出るという問題があった。加えて長時間加熱してエポキシ化合物へ溶解させるために、得られたエポキシが着色してしまい、外観や光透過率が問題となるコーティング剤やレンズ、レンズシート、光半導体の封止剤といった分野へ応用できないという問題もあった。
【0013】
本発明は、前述のような、エポキシ樹脂用硬化剤としての従来のアルミニウム化合物が有する欠点が無く、エポキシ樹脂へ良好に溶解するアルミニウム金属石鹸を提供することを第一の課題とする。また、硬化物の外観が改善された硬化性組成物を提供することを第二の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の構造を有するアルミニウム金属石鹸は、種々のエポキシ化合物との溶解性が高く、当該アルミニウム金属石鹸をエポキシ用硬化剤として用いれば、極めて外観の優れた硬化物が得られることを見出して本発明を完成したのである。
【0015】
即ち本発明は、下記の一般式(1)で表される新規なアルミニウム金属石鹸及び、
【0016】
【化2】

(1)
【0017】
(但し、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは炭素数1〜6の多価炭化水素基であり、Rは炭素数1〜6のアルキレン基であり、Rは炭素数1〜6のアルキル基であり、qは0〜2の整数、mは0〜20の整数、l及びrは1〜3の整数であって、q+rは3である。)
これと共にカチオン重合性エポキシ化合物、シラノールを有するか若しくは発生させることのできる化合物を含有する硬化性組成物である。
【発明の効果】
【0018】
本発明のアルミニウム金属石鹸は、従来のエポキシ硬化剤用アルミニウム化合物と比較して、エポキシ化合物への溶解性に優れるため、短時間で調合作業を完了でき、作業性が良い。
また、本発明の硬化性組成物は、従来のエポキシ硬化剤用アルミニウム化合物を使用した硬化性組成物と比較して、着色の少ない硬化物が製造できるため、レンズやレンズシート、プリズム、光半導体の封止剤として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
[1]アルミニウム金属石鹸
一般に長鎖脂肪酸やナフテン酸、ロジン酸などの有機酸の金属塩を総称して「石鹸」というが、「金属石鹸」とは有機酸の金属塩のうち、アルカリ金属以外の金属塩をいい、本発明におけるアルミニウム金属石鹸とは、後に述べる特定の有機酸とアルミニウムの金属塩と定義される。
【0020】
[1−1]アルミニウム金属石鹸の製法
本発明のアルミニウム金属石鹸の好ましい製法は、従来公知のアルミニウム金属石鹸の製法がそのまま適用でき、大きく分けて(イ)有機酸のアルカリ石鹸と水溶性アルミニウム塩(塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム)の複分解法と、(ロ)有機酸とアルミニウムアルコキシドを有機溶媒中で反応させる溶媒法がある。
本発明のアルミニウム金属石鹸は通常のアルミニウム金属石鹸とは異なり、水溶性が高いため(ロ)の溶媒法が好ましい。即ち、後に述べる特定の有機酸と、原料となるアルミニウムトリアルコキシドとを、トルエン等の有機溶媒中で加熱して反応させ、反応に伴って原料アルミニウムアルコキシドから発生したアルコールと有機溶媒を留去して、目的物を釜残として得る製法である。
【0021】
[1−2]有機酸
本発明における有機酸は、エーテル結合を有する脂肪族カルボン酸であって、具体的には下記式(2)で表される化合物である。
【0022】
【化3】

(2)
【0023】
(但し、Rは炭素数1〜6の多価炭化水素基であり、Rは炭素数1〜6のアルキレン基であり、Rは炭素数1〜6のアルキル基であり、mは0〜20の整数である。)
【0024】
上記式(2)において、R及びRは炭素数1〜6のアルキレン基であり、入手の容易さから、Rはメチレン基かエチレン基であることが好ましく、Rはエチレン基かプロピレン基であることが好ましい。また、Rは炭素数1〜6のアルキル基であり、これも入手の容易さからメチル基かエチル基が好ましい。mは0〜20の整数であり、好ましいmは1〜4の整数である。
【0025】
上記式(2)で表される化合物の好ましい例は、メトキシ酢酸、エトキシ酢酸、プロポキシ酢酸、イソプロポキシ酢酸、ブトキシ酢酸、イソブトキシ酢酸、sec−ブトキシ酢酸、tert−ブトキシ酢酸、アミロキシ酢酸、3−メチルブトキシ酢酸、2−メチルブトキシ酢酸、1−メチルブトキシ酢酸、2,2−ジメチルプロポキシ酢酸、1,2−ジメチルプロポキシ酢酸、1−エチルプロポキシ酢酸、tert−アミロキシ酢酸、ヘキシロキシ酢酸、シクロヘキシロキシ酢酸、メトキシエトキシ酢酸、エトキシエトキシ酢酸、プロポキシエトキシ酢酸、イソプロポキシエトキシ酢酸、メトキシエトキシエトキシ酢酸、エトキシエトキシエトキシ酢酸、プロポキシエトキシエトキシ酢酸、イソプロポキシエトキシエトキシ酢酸、メトキシプロポキシ酢酸、エトキシプロポキシ酢酸、プロポキシプロポキシ酢酸、イソプロポキシプロポキシ酢酸、片末端メトキシポリエチレングリコールのカーボキシメチルエーテル、片末端エトキシポリエチレングリコールのカーボキシメチルエーテル、片末端メトキシポリプロピレングリコールのカーボキシメチルエーテル、片末端エトキシポリプロピレングリコールのカーボキシメチルエーテル、メトキシプロピオン酸、エトキシプロピオン酸、プロポキシプロピオン酸、イソプロポキシプロピオン酸、ブトキシプロピオン酸、イソブトキシプロピオン酸、sec−ブトキシプロピオン酸、tert−ブトキシプロピオン酸、アミロキシプロピオン酸、3−メチルブトキシプロピオン酸、2−メチルブトキシプロピオン酸、1−メチルブトキシプロピオン酸、2,2−ジメチルプロポキシプロピオン酸、1,2−ジメチルプロポキシプロピオン酸、1−エチルプロポキシプロピオン酸、tert−アミロキシプロピオン酸、ヘキシロキシプロピオン酸、シクロヘキシロキシプロピオン酸、メトキシエトキシプロピオン酸、エトキシエトキシプロピオン酸、プロポキシエトキシプロピオン酸、イソプロポキシエトキシプロピオン酸、メトキシエトキシエトキシプロピオン酸、エトキシエトキシエトキシプロピオン酸、プロポキシエトキシエトキシプロピオン酸、イソプロポキシエトキシエトキシプロピオン酸、メトキシプロポキシプロピオン酸、エトキシプロポキシプロピオン酸、プロポキシプロポキシプロピオン酸、イソプロポキシプロポキシプロピオン酸、片末端メトキシポリエチレングリコールのカーボキシエチルエーテル、片末端エトキシポリエチレングリコールのカーボキシエチルエーテル、片末端メトキシプロピレンレングリコールのカーボキシエチルエーテル、片末端エトキシポリプロピレングリコールのカーボキシエチルエーテルであり、メトキシエトキシ酢酸、メトキシエトキシエトキシ酢酸、メトキシエトキシプロピオン酸、メトキシエトキシエトキシプロピオン酸が特に好ましいものとして挙げられる。
【0026】
[1−3]原料のアルミニウムトリアルコキシド
本発明における原料のアルミニウムトリアルコキシドは、従来公知のアルミニウムトリアルコキシドが使用でき、その好ましい例は下記式(4)で表される化合物である。
【0027】
【化4】


(4)
【0028】
(但し、Rは炭素数1〜4のアルキル基である。)
【0029】
上記式(4)で表される化合物の好ましい例は、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリブトキシドであり、取扱いの容易さから、アルミニウムトリイソプロポキシドが特に好ましい。
【0030】
[1−4]有機溶媒
本発明のアルミニウム金属石鹸を製造する際に用いる有機溶媒は、本発明における有機酸と原料のアルミニウムトリアルコキシドを溶解させることができることと、それら原料および目的物であるアルミニウム金属石鹸と反応しないことが求められ、後者の観点からジエチルアミンやピリジン等のアミン類、アセチルアセトンやアセト酢酸エチル等は好ましくない。有機溶媒の好ましい例は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられる。これらは1種単独または2種以上を組み合わせて用いることが可能である。とりわけ好ましい有機溶媒はトルエン、キシレンである。
【0031】
[1−5]反応条件
本発明のアルミニウム金属石鹸は、モノソープ、ジソープ、トリソープ、またそれらの混合物であって良く、その割合は本発明の有機酸と原料のアルミニウムトリアルコキシドの仕込みモル比によって調節できる。また反応温度は50〜130℃が好ましく、80℃〜110℃がさらに好ましい。
反応の追跡はHPLCやガスクロマトグラフィで行なうことができ、原料アルミニウムトリアルコキシドや有機酸のピーク消失および、目的物であるアルミニウム金属石鹸由来のピーク出現により反応の終点を決定することができる。
【0032】
[1−6]目的化合物の確認
本発明のアルミニウム金属石鹸は、原料として用いる有機酸の種類で大きく異なるが、概ね褐色から淡黄色の、透明感のある飴状の固体であり、本発明のアルミニウム金属石鹸が得られたことは、例えば赤外吸収スペクトルで原料有機酸に帰属される3200〜2600cm−1のブロードなOH伸縮振動や1700cm−1付近の二量体カルボキシルC=O伸縮の吸収が無くなり、1600cm−1付近のCOO逆対称伸縮が生じたことで容易に確認できる。
【0033】
[2]硬化性組成物
本発明の硬化性組成物は(a)本発明のアルミニウム金属石鹸、(b)カチオン重合性エポキシ化合物、(c)シラノールを有するか若しくは発生させることのできる化合物、を必須成分として含んでおり、更に(d)カチオン重合性オキセタン化合物、を含んでいても良い。また、シラノールを有するか若しくは発生させることができるカチオン重合性オキセタン化合物として、(e)ゾル−ゲル法で製造された、オキセタン環とシルセスキオキサン構造を有するポリオルガノシロキサンを含んでいても良い。よって本発明の硬化性組成物を構成する各成分の組み合わせとしては、(a)+(b)+(c)、(a)+(b)+(c)+(d)、(a)+(b)+(c)+(e)、(a)+(b)+(e)又は(a)+(b)+(d)+(e)がある。以下各成分について述べる。
【0034】
[2−1]カチオン重合性エポキシ化合物(b)
本発明におけるカチオン重合性エポキシ化合物(b)は、分子構造、分子量等に特に制限はなく、従来公知のものを使用することができる。
具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールAグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロシクロヘキセンジオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエルスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコール、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖二塩基酸脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテルやフェノール、クレゾール、ブチルフェノール、またこれらにアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ポリブタジエン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイド、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、エチレングリコールグリシジルフェニルエーテル、エチレングリコールベンジルグリシジルエーテル、ジエチレングリコールグリシジルテトラヒドロピラニルエーテル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアセテート、特開平6−166752号公報や米国特許6706840号公報に記載のシリコーンエポキシ等が挙げられ、これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、エポキシ化合物の水素原子の一部又は全てがフッ素で置換されたものも使用できる。
【0035】
[2−2]シラノールを有するか若しくは発生させることのできる化合物(c)
シラノールを有するか若しくは発生させることのできる化合物(c)は、分子構造、分子量等に特に制限はなく、従来公知のものを使用することができる。
具体的には、トリメチルシラノール、ジフェニルシランジオール、トリフェニルシラノール、ジフェニル(メチル)シラノール、フェニル(ビニル)シランジオール、トリ(パラメトキシフェニル)シラノール、トリアセチルシラノール、ジフェニル(エチル)シラノール、ジフェニル(プロピル)シラノール、トリ(パラニトロフェニル)シラノール、フェニルジビニルシラノール、2−ブテニルジフェニルシラノール、ジ(2−ペンテニル)フェニルシラノール、フェニルジプロピルシラノール、パラメチルベンジルジメチルシラノール、トリエチルシラノール、トリメチルシラノール、トリプロピルシラノール、トリブチルシラノール、トリイソブチルシラノールトリフェニル(メトキシ)シラン、ジフェニルジメトキシシラン、トリフェニル(エトキシ)シラン、ジフェニル(メチル)メトキシシラン、フェニル(ビニル)(メチル)(メトキシ)シラン、ジフェニルジエトキシシラン、トリ(パラメトキシフェニル)メトキシシラン、トリアセチル(メトキシ)シラン、ジフェニル(エチル)(エトキシ)シラン、ジフェニル(プロピル)(エトキシ)シラン、ジフェニル(メチル)(アセトキシ)シラン、ジフェニルジプロピオニルオキシシラン、ジフェニル(メチル)(トリフェニルアセトキシ)シラン、トリ(パラニトロフェニル)(メトキシ)シラン、トリアセチル(メトキシ)シラン、フェニルジビニル(プロポキシ)シラン、2−ブテニルジフェニル(メトキシ)シラン、ジ(2−ペンテニル)(フェニル)(エトキシ)シラン、フェニルジプロピル(メトキシ)シラン、トリ(パラメトキシフェニル)(エトキシ)シラン、パラメチルベンジルトリメトキシシラン、トリフルオロアセチルトリメトキシシラン、ジ(パラクロルフェニル)ジエトキシシラン、トリエチル(メトキシ)シラン、トリメチル(メトキシ)シラン、トリプロピル(メトキシ)シラン、トリブチル(エトキシ)シラン、トリイソブチル(アセトキシ)シラン、1,3−ジヒドロキシ−1,3−ジメチル−1,3−ジフェニルジシロキサン、1,5−ジヒドロキシ−1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルトリシロキサン、1,7−ジヒドロキシ−1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルテトラシロキサン、1,3−ジヒドロキシテトラフェニルジシロキサン、1,5−ジヒドロキシヘキサフェニルトリシロキサン、1,7−ジヒドロキシオクタフェニルテトラシロキサン、1,5−ジヒドロキシ−3,3−ジメチル−1,1,5,5−テトラフェニルトリシロキサン、1,3−ジヒドロキシテトラ(ジメチルフェニル)ジシロキサン、1,5−ジヒドロキシヘキサエチルトリシロキサン、1,7−ジヒドロキシオクタプロピルテトラシロキサン、1,3,5−トリヒドロキシ−3−エチル−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサン、1,5−ジヒドロキシ−1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジp−トリルトリシロキサン、ペルオキシシラノ基、o−ニトロベンジルオキシ基、α−ケトシリル基のいずれかを有する有機ケイ素化合物、シラノール基かMe−O−Si結合、Et−O−Si結合、CH3(C=O)O−Si結合を有するシリコーン製品、テトラメトキシシランの縮合物等が挙げられ、これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
[2−3]カチオン重合性オキセタン化合物(d)
カチオン重合性オキセタン化合物(d)は、分子構造、分子量等に特に制限はなく、従来公知のものを使用することができる。
具体的には、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−アリロキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、4−メトキシ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−テトラブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−トリブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブタンジオールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ヘキサンジオールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールFビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カーボネートビスオキセタン、アジペートビスオキセタン、テレフタレートビスオキセタン、シクロヘキサンジカルボン酸ビスオキセタン、3−(3−メチル−3−オキセタンメトキシ)プロピルトリエトキシシラン、3−(3−エチル−3−オキセタンメトキシ)プロピルトリメトキシシラン、特開平6−16804号公報に記載のオキセタンシリコーン等が挙げられ、これらオキセタン系モノマーは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
[2−4]ゾル−ゲル法で製造された、オキセタン環とシルセスキオキサン構造を有するポリオルガノシロキサン(e)
本発明における、ゾル−ゲル法で製造された、オキセタン環とシルセスキオキサン構造を有するポリオルガノシロキサン(e)は、下記の有機含ケイ素化合物(I)の加水分解縮合物であるか、または有機含ケイ素化合物(I)と下記の有機含ケイ素化合物(II)の加水分解縮合物である。
【0038】
[2−4−1]有機含ケイ素化合物(I)
本発明における有機含ケイ素化合物(I)は、オキセタン環とシロキサン結合生成基を有する有機含ケイ素化合物であり、その好ましい例は、下記式(5)で表される化合物である。
【0039】
【化5】

(5)
【0040】
(但し、Rは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、Rは炭素数2〜6のアルキレン基である。Xは加水分解性基であり、Xは互いに同一であっても異なっていても良い。)
【0041】
[2−4−2]有機含ケイ素化合物(II)
本発明における有機含ケイ素化合物(II)はオキセタン環を有せずシロキサン結合生成基を有する有機含ケイ素化合物であり、その好ましい例は、下記式(6)〜(8)で表される化合物である。
【0042】
【化6】

(6)
【0043】
(但し、X’はシロキサン結合生成基であり、RおよびR10はそれぞれアルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基から選択される置換基であり、RおよびRはそれぞれアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であり、nは1〜20の整数である。好ましいnは0以上10以下の整数である。)
【0044】
【化7】

(7)
【0045】
(但し、X’はシロキサン結合生成基であり、RおよびR10はそれぞれアルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基から選択される置換基であり、RおよびRはそれぞれアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であり、R11はアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であり、nは0〜20の整数である。好ましいnは0以上10以下の整数である。)
【0046】
(化8)
12SiX”4−n (8)
(但し、X”はシロキサン結合生成基であり、R12はアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であり、nは1〜3の整数である。)
【0047】
本発明のオキセタン環とシルセスキオキサン構造を有するポリオルガノシロキサンは、1種類の有機含ケイ素化合物(I)を縮合して得られる縮合物でもよく、2種類以上の有機含ケイ素化合物(I)を縮合して得られる縮合物でもよい。また1種類以上の有機含ケイ素化合物(I)と1種類以上の有機含ケイ素化合物(II)を縮合して得られる縮合物でもよい。それぞれの原料の配合割合を原料全体100mol%の内訳で説明する。
【0048】
オキセタン環を有する有機ケイ素化合物(I)は、1〜80mol%が好ましく、5〜40mol%がさらに好ましい。1mol%未満では硬化後にも流動性があるようなゲル状物しか得られず、80mol%を超えると硬化物の黄変が起きる恐れがある。
有機ケイ素化合物(II)は、1〜80mol%が好ましく、5〜60mol%がさらに好ましい。1mol%未満ではオキセタン環を有する有機ケイ素化合物(I)とオキセタン環を有しない有機ケイ素化合物(II)の縮合が円滑に進行しないため均一で透明なポリオルガノシロキサンが得られず、80mol%を超えると硬化させた際に非常に脆い硬化物しか得られない恐れがある。
【0049】
本発明におけるオキセタン環とシルセスキオキサン構造を有するポリオルガノシロキサンは、上記式(5)〜(8)における加水分解性基X、X’、X”が加水分解して形成された三次元の(Si−O−Si)結合を含んでいる。
【0050】
本発明におけるオキセタン環とシルセスキオキサン構造を有するポリオルガノシロキサンは、ハシゴ状、カゴ状又はランダム状の構造を有するシルセスキオキサン化合物を含んでおり、この組成物は、一種類のシルセスキオキサン化合物のみを含有してもよいし、構造又は分子量の異なった二種以上のシルセスキオキサン化合物を含んでもよい。
【0051】
尚、本発明のオキセタン環とシルセスキオキサン構造を有するポリオルガノシロキサンは、有機ケイ素化合物(I)および(II)における加水分解性基のうち90%以上が縮合されていることが好ましく、加水分解性基の実質的に全てが縮合されていることが更に好ましい。残存する加水分解性基の割合が10%を超えると、シルセスキオキサン構造が十分に形成されないため硬化物の強度が低下したり、組成物の貯蔵安定性が低下したりする恐れがある。ここで「シルセスキオキサン構造が十分に形成されている」ことは、例えば、得られたポリオルガノシロキサンの29Si−NMRチャートにおいて−60〜−70ppmにRSi1.5に基づくブロードなピークが観察されることにより確認できる。
【0052】
本発明のオキセタン環を有するポリオルガノシロキサンは、その数平均分子量が600〜5,000であることが好ましく、1,000〜3,000であることが更に好ましい。数平均分子量が600未満であると、この組成物から形成される硬化物において十分な機械的強度が得られない場合がある。一方、数平均分子量が5,000を超えると組成物の粘度が高くなり過ぎて取り扱い性が困難であるとともに、この組成物を注型材として用いる場合において作業性が低下する。尚、本明細書中における数平均分子量は、ゲルパーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の分子量である。
用である。
【0053】
[2−5]その他添加剤
本発明の硬化性組成物には、有機溶剤、有機フィラー、無機フィラー、レベリング剤、消泡剤、シランカップリング剤、帯電防止剤、酸化防止剤、着色剤等の添加剤を配合することができる。
【0054】
[3]組成物の調製
本発明の硬化性組成物は、本質的には本発明のアルミニウム金属石鹸と、カチオン重合性エポキシ化合物、シラノールの三者が共存した直後に硬化が開始されるものである。
よって、一液型硬化性組成物とする場合にはシラノール基が何らかの有機基で保護された、「シラノールを発生させることができる化合物」を使用することが好ましい。
また、二液型硬化性組成物とする場合は、本発明のアルミニウム金属石鹸とカチオン重合性エポキシ化合物からなるA液と、シラノールを有する化合物とカチオン重合性エポキシ化合物からなるB液のように、予めエポキシ化合物へ溶解しておくことが好ましい。なぜならば本発明のアルミニウム金属石鹸もシラノールを有する化合物も、大気からの湿気や酸素の影響で変質するためである。
【0055】
[3−1]一液型硬化性組成物組成物の調製
本発明の一液型硬化性組成物は、前述の(a)+(b)+(c)か、(a)+(b)+(c)+(d)で構成される組成物であり、適宜上述の添加剤を使用することができる。以下に各成分の配合割合について記述するが、その他の添加剤、特に有機溶剤を使用する場合は、「組成物全体」という表現は「不揮発分全体」と読み替えることができる。
【0056】
一液型硬化性組成物を調製する場合の、アルミニウム金属石鹸(a)の配合割合は組成物全体の0.001〜0.5質量%であることが好ましい。
0.001質量%以下では硬化速度が著しく遅く、実質硬化物が得られない場合がある。0.5質量%以上であると棚ライフが極めて短く、使用に耐えない。
【0057】
カチオン重合性エポキシ化合物(b)の配合割合は、一液型硬化性組成物全体の5〜99.99質量%であることが好ましい。この配合割合が5%未満では硬化速度が著しく遅くなり、実質硬化物が得られなくなる場合がある。
【0058】
シラノールを発生させることのできる化合物(c)の配合割合は、一液型硬化性組成物全体の0.01〜10質量%であることが好ましい。0.01%未満では硬化速度が著しく遅くなり、10質量%を超えても効果の向上は見られなくなる。
【0059】
カチオン重合性オキセタン化合物(d)の配合割合は、一液型硬化性組成物全体の0〜95質量%であることが好ましい。カチオン重合性モノマーの配合割合が95質量%を超えると硬化速度が著しく遅くなってしまう。
【0060】
[3−2]二液型硬化性組成物組成物の調製
本発明の二液型硬化性組成物は、[(a)+(b)で構成されるA液]/[(b)+(c)で構成されるB液]、[(a)+(b)+(d)で構成されるA液]/[(b)+(c)で構成されるB液]、[(a)+(b)で構成されるA液]/[(b)+(c)+(d)で構成されるB液]、[(a)+(b)+(d)で構成されるA液]/[(b)+(c)+(d)で構成されるB液]、[(a)+(d)で構成されるA液]/[(b)+(c)で構成されるB液]、[(a)+(b)で構成されるA液]/[(c)+(d)で構成されるB液]、[(a)+(b)で構成されるA液]/[(c)+(e)で構成されるB液]、[(a)+(b)で構成されるA液]/[(b)+(c)+(e)で構成されるB液]、[(a)+(b)で構成されるA液]/[(c)+(d)+(e)で構成されるB液]、[(a)+(b)で構成されるA液]/[(b)+(c)+(d)+(e)で構成されるB液]、[(a)+(b)+(d)で構成されるA液]/[(c)+(e)で構成されるB液]、[(a)+(b)+(d)で構成されるA液]/[(b)+(c)+(e)で構成されるB液]、[(a)+(b)+(d)で構成されるA液]/[(c)+(d)+(e)で構成されるB液]、[(a)+(b)+(d)で構成されるA液]/[(b)+(c)+(d)+(e)で構成されるB液]、[(a)+(d)で構成されるA液]/[(b)+(c)+(e)で構成されるB液]、[(a)+(d)で構成されるA液]/[(b)+(c)+(d)+(e)で構成されるB液、[(a)+(b)で構成されるA液]/[(e)で構成されるB液]、[(a)+(b)で構成されるA液]/[(b)+(e)で構成されるB液]、[(a)+(b)で構成されるA液]/[(d)+(e)で構成されるB液]、[(a)+(b)+(d)で構成されるA液]/[(e)で構成されるB液]、[(a)+(b)+(d)で構成されるA液]/[(b)+(e)で構成されるB液]、[(a)+(b)+(d)で構成されるA液]/[(d)+(e)で構成されるB液]、[(a)+(d)で構成されるA液]/[(b)+(e)で構成されるB液]、[(a)+(d)で構成されるA液]/[(b)+(d)+(e)で構成されるB液]のいずれかの組み合わせを持つ組成物であり、適宜上述の添加剤を使用することができる。以下に各成分の配合割合について記述するが、その他の添加剤、特に有機溶剤を使用する場合は、「組成物全体」という表現は「不揮発分全体」と読み替えることができる。
【0061】
本発明のアルミニウム金属石鹸(a)の配合割合は、室温硬化させるか、加熱により熱硬化させるかで異なる。この場合、加熱とは組成物を50℃以上の環境下に暴露させることを意味する。
室温硬化させる場合のアルミニウム金属石鹸(a)の配合割合は、組成物全体の0.01〜2質量%であることが好ましい。なお、室温硬化させた後50℃以上に加熱して硬化を進めると硬化物の強度が著しく上昇するので好ましい。加熱硬化させる場合のアルミニウム金属石鹸(a)の配合割合は組成物全体の0.001〜0.5質量%であることが好ましい。
加熱硬化させる場合のアルミニウム金属石鹸(a)の配合割合は、組成物全体の0.001〜2質量%であることが好ましい。アルミニウム金属石鹸(a)の配合割合が0.001質量%未満の場合には、熱の作用により活性化しても、開環重合性基の開環反応を十分に進行させることができないことがあり、重合後の耐熱性および強度が不十分となる場合が有る。また、2質量%を超えて配合すると、触媒の作用が強すぎて急激に重合するため、強度のある硬化物や外観の良い硬化物は得られない。この傾向は、脂環式エポキシを選択した場合に顕著で、調合操作自体が危険になることがあり、避けるべきである。
【0062】
カチオン重合性エポキシ化合物(b)の配合割合は、組成物全体の5〜99.99質量%であることが好ましい。この配合割合が5%未満では硬化速度が著しく遅くなり、実質硬化物が得られなくなる場合がある。
【0063】
シラノールを有する化合物(c)の配合割合は、組成物全体の0.01〜10質量%であることが好ましい。0.01%未満では硬化速度が著しく遅くなり、10質量%を超えても効果の向上は見られなくなる。
【0064】
カチオン重合性オキセタン化合物(d)の配合割合は、組成物全体の0〜95質量%であることが好ましい。配合割合が95質量%を超えると硬化速度が著しく遅くなってしまう。
【0065】
ゾル−ゲル法で製造された、オキセタン環とシルセスキオキサン構造を有するポリオルガノシロキサン(e)の配合割合は、組成物全体の0〜90質量%であることが好ましい。このポリオルガノシロキサン(e)を使用する場合には、当該ポリオルガノシロキサン自体がシラノール基か若しくはシラノール基を発生させる化合物であるため、前述例示したシラノールを有するか若しくは発生させることのできる化合物(c)を配合しなくても良い。よって[(a)+(b)で構成されるA液]/[(e)で構成されるB液]、という構成で硬化性組成物になりうるのである。
【0066】
本発明の硬化性組成物は、前述の成分を従来公知の混合機で攪拌して得ることができる。具体的には、反応用フラスコ、チェンジ缶式ミキサー、プラネタリーミキサー、ディスパー、ヘンシェルミキサー、ニーダー、インクロール、押出機、3本ロールミル、サンドミルを使用するのが好ましい。
【0067】
[4]組成物の硬化方法
本発明の硬化性組成物の硬化方法は、一液型か二液型かで異なる。一液型硬化性組成物の硬化方法は加熱による熱硬化であり、加熱とは組成物を50℃以上の環境下に暴露させることを意味する。
【0068】
前述のように、組成物の硬化条件は本発明のアルミニウム金属石鹸(a)の配合量で調節可能であり、室温硬化させたい場合には、アルミニウム金属石鹸(a)の配合量を多くし、熱硬化させたい場合はアルミニウム金属石鹸(a)の配合量を少なくすればよい。
熱硬化させる場合は、加熱温度を好ましくは50〜200℃に、さらに好ましくは75〜180℃にするとよい。硬化時間はアルミニウム金属石鹸(a)の種類、組成物の配合比にもよるが、10分以上加熱することが好ましく、さらに好ましくは1時間以上加熱することが望ましい。また、硬化温度は段階的に上昇されることが好ましく、例えば100℃×3時間の加熱後に、120℃×3時間の加熱を行なうと、単純に110℃×6時間の加熱より機械的強度に優れた硬化物が得られる。また、例えば液状の組成物を固体化する工程である本硬化の後に、得られた硬化物を本硬化より低い温度で加熱する後硬化も、機械的強度に優れた硬化物が得られるため好ましい。
【実施例】
【0069】
本発明を実施例により更に具体的に説明する。
(アルミニウム金属石鹸の実施例1)
攪拌ペラ、バキュームスターラー、窒素導入管、還流冷却器を付属した四つ口フラスコに、東京化成製アルミニウムイソプロポキシド10.21g(0.05モル)、トルエン50mlを仕込んだ。窒素でバブリングをしながら、15分間室温で攪拌した。アルドリッチ製メトキシエトキシ酢酸24.14g(0.18モル)をゆっくりと滴下した。滴下終了後加熱を開始し、6時間還流させた後、室温まで放冷した。減圧下に揮発分を全て留去したところ、褐色透明の飴状の半固体であるアルミニウム金属石鹸aが20.3g得られた。この物質のIRスペクトルを図1に示す。
【0070】
(アルミニウム金属石鹸の実施例2)
攪拌ペラ、バキュームスターラー、窒素導入管、還流冷却器を付属した四つ口フラスコに、東京化成製アルミニウムイソプロポキシド10.21g(0.05モル)、トルエン50mlを仕込んだ。窒素でバブリングをしながら、15分間室温で攪拌した。アルドリッチ製メトキシエトキシエトキシ酢酸32.07g(0.18モル)をゆっくりと滴下した。滴下終了後加熱を開始し、6時間還流させた後、室温まで放冷した。減圧下に揮発分を全て留去したところ、淡黄色透明の飴状の半固体であるアルミニウム金属石鹸bが27.1g得られた。この物質のIRスペクトルを図2に示す。
【0071】
(ポリオルガノシロキサンaの合成例)
攪拌機および温度計を備えた反応器に、イソプロピルアルコール100g、下記式(9)で示される3−(3−メチル−3−オキセタンメトキシ)プロピルトリエトキシシラン115.38g(360mmol)とメチルトリエトキシシラン32.09g(180mmol)、ヘキサメチルジシロキサン14.62g(90mmol)を仕込んだ後、1%塩酸40gを徐々に加えて、25℃で攪拌した。反応の進行をゲルパーミエーションクロマトグラフィにより追跡し、OX−TRIESがほぼ消失した時点(混合物の添加開始から20時間後)で反応完結とした。引き続き、減圧下に溶媒を留去し、無色透明な、粘度4300mPa・sの樹脂Aを得た。
【0072】
【化9】

(9)
【0073】
(実施例3:硬化性組成物の調製)
攪拌ペラ、窒素ガス導入管、温度計、還流冷却管の付属した4つ口フラスコに、エポキシ化合物[3、4-エポキシシクロヘキセニルメチル-3、'4'-エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ダイセル化学工業株式会社製商品名セロキサイド2021P(以下CEL2021Pと略す)]97.7重量部と、実施例1で得られたアルミニウム金属石鹸aを0.3重量部仕込み、窒素ガスを通気しながら40℃で30分攪拌したところ均一無色透明な溶液を得た。この溶液を室温へ戻し、トリメチルシラノール(信越化学工業株式会社製商品名LS−310、以下LS−310と称す)2重量部を加えて溶解させ、無色透明な液状の組成物を得た。
【0074】
(実施例4:硬化性組成物の調製)
実施例2で得られたアルミニウム金属石鹸bを用いた以外は実施例3と同じ操作を行なって、無色透明な液状の組成物を得た。
【0075】
(比較例1:硬化性組成物の調製)
実施例3のアルミニウム金属石鹸aの代わりに、東京化成工業株式会社製アルミニウム(III)アセチルアセトナート(以下Al(AcAc)と称す)を用いたところ、60℃で1時間の加熱攪拌が必要であった。この溶液を室温へ戻し、LS−310を2重量部加えて溶解させ、無色透明な液状の組成物を得た。
【0076】
(実施例5:硬化性組成物の調製)
攪拌ペラ、窒素ガス導入管、温度計、還流冷却管の付属した4つ口フラスコに、CEL2021P47.7重量部と、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(東亞合成株式会社製商品名アロンオキセタンOXT−221)50重量部、実施例1で得られたアルミニウム金属石鹸aを0.3重量部仕込み、窒素ガスを通気しながら40℃で30分攪拌したところ、均一無色透明な溶液を得た。この溶液を室温へ戻し、LS−310を2重量部加えて溶解させ、無色透明な液状の組成物を得た。
【0077】
(実施例6:硬化性組成物の調製)
実施例2で得られたアルミニウム金属石鹸bを用いた以外は実施例5と同じ操作を行なって、無色透明な液状の組成物を得た。
【0078】
(比較例2:硬化性組成物の調製)
実施例5のアルミニウム金属石鹸aの代わりに、東京化成工業株式会社製Al(AcAc)を用いたところ、60℃で1時間の加熱攪拌が必要であった。この溶液を室温へ戻し、LS−310を2重量部加えて溶解させ、無色透明な液状の組成物を得た。
【0079】
(実施例7:硬化性組成物の調製)
攪拌ペラ、窒素ガス導入管、温度計、還流冷却管の付属した4つ口フラスコに、ナガセケミテックス株式会社製EX−216L(シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル)49.7重量部と、実施例1で得られたアルミニウム金属石鹸aを0.3重量部仕込み、窒素ガスを通気しながら40℃で30分攪拌したところ均一無色透明な溶液を得た。この溶液を室温へ戻し、上記合成例のポリオルガノシロキサンa50重量部を加えて溶解させ、無色透明な液状の組成物を得た。
【0080】
(実施例8:硬化性組成物の調製)
実施例2で得られたアルミニウム金属石鹸bを用いた以外は実施例7と同じ操作を行なって、無色透明な液状の組成物を得た。
【0081】
(比較例3:硬化性組成物の調製)
実施例7のアルミニウム金属石鹸aの代わりに、東京化成工業株式会社製アルミニウム(III)アセチルアセトナートを用いたところ、60℃で1時間の加熱攪拌が必要であり、溶液は淡黄色になった。この溶液を室温へ戻し、上記合成例のポリオルガノシロキサンaを加えて溶解させ、淡黄色透明な液状の組成物を得た。
【0082】
[組成物の評価]
硬化性組成物の実施例3〜8、硬化性組成物の比較例1〜3につき、下記の方法により、接着性(引張せん断接着強さ)、光透過性(光透過率)を評価した。実施例の結果を表1へ、比較例の結果を表2へ示した。
【0083】
(1)接着性(引張せん断接着強さ)
試験はJIS−K−6861−1977に準じて実施した。組成物を長さ100mm×幅25mm×厚さ2mmの、アルミでできたテストピースを用い、接着面積が3.125cmになるように貼り合わせ冶具で固定し、下記の条件で硬化させた。25℃、65%RHの環境下に24時間静置した後、東洋精機製作所製ストログラフV20−Cを用い、クロスヘッド速度10mm/minで引張試験を行なった。
[硬化条件]
加熱装置:防爆型乾燥器
硬化条件:120℃で1時間加熱した後、150℃で7時間加熱した。
【0084】
(2)光透過性(光透過率)
組成物を、長さ50mm×幅50mm×厚さ2mmの窪みを有するポリ四フッ化エチレン製型枠へ注入し、下記の条件で硬化させた。このプレートの光透過性を、日本分光株式会社製分光蛍光光度計V−550を用い、400nmの波長の透過率で調べた。これを硬化物作成直後の光透過率とした。
【0085】
【表1】



【0086】
【表2】

【0087】
本発明のアルミニウム金属石鹸を用いた実施例3〜8においては、硬化性組成物の接着性が優れていると共に、硬化物は紫外光に対する光透過性(以下、単に光透過性という)も優れていた。
一方、本発明のアルミニウム金属石鹸を用いなかった比較例1〜3においては、何れも硬化物の光透過性が劣るという問題があった。
[光透過性の比較(単位:%)]
実施例3,4/比較例1=81,84/69
実施例5,6/比較例2=82,86/72
実施例7,8/比較例3=75,78/64

【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明のアルミニウム金属石鹸は、エポキシ系硬化性組成物の硬化剤井として有用である。
本発明のアルミニウム金属石鹸を含有させたエポキシ系硬化性組成物は、接着性に優れると共に硬化物の光透過性が優れるので、レンズやレンズシート、プリズム、光半導体の封止剤のような、高度な光透過性が要求される用途で有用である。
また、外観(透明性)や光透過性が要求される分野に使用されるコーティング剤や接着剤としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】実施例1で得られたアルミニウム金属石鹸aの赤外線吸収スペクトル。
【図2】実施例2で得られたアルミニウム金属石鹸bの赤外線吸収スペクトル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるアルミニウム金属石鹸。
【化1】

(1)
(但し、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは炭素数1〜6の多価炭化水素基であり、Rは炭素数1〜6のアルキレン基であり、Rは炭素数1〜6のアルキル基であり、qは0〜2の整数、mは0〜20の整数、l及びrは1〜3の整数であって、q+rは3である。)
【請求項2】
アルミニウムトリアルコキシドと下記一般式(2)で表されるカルボン酸とを反応させることにより得られる請求項1記載のアルミニウム金属石鹸。
【化2】

(2)
(但し、Rは炭素数1〜6の多価炭化水素基であり、Rは炭素数1〜6のアルキレン基であり、Rは炭素数1〜6のアルキル基であり、mは0〜20の整数であり、lは1〜3の整数である。)
【請求項3】
下記の(a)、(b)及び(c)を含有する硬化性組成物。
(a)請求項1又は請求項2に記載のアルミニウム金属石鹸
(b)カチオン重合性エポキシ化合物
(c)シラノールを有するか若しくは発生させることのできる化合物
【請求項4】
下記の(a)、(b)、(c)及び(d)を含有する硬化性組成物。
(a)請求項1又は請求項2に記載のアルミニウム金属石鹸
(b)カチオン重合性エポキシ化合物
(c)シラノールを有するか若しくは発生させることのできる化合物
(d)カチオン重合性オキセタン化合物
【請求項5】
シラノールを有するか若しくは発生させることのできる化合物が、ゾル−ゲル法で製造された、オキセタン環とシルセスキオキサン構造を有するポリオルガノシロキサンである請求項3又は請求項4に記載の硬化性組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−131601(P2006−131601A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−325739(P2004−325739)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】