説明

新規なチオフェン系染料及びその製造方法

本発明は新規なチオフェン系染料及びその製造方法に関し、本発明の染料化合物は染料増感太陽電池(dye-sensitized solar cell;DSSC)に使用され、従来の染料に比べより向上したモル吸光係数、Jsc(短絡回路光電流密度)及び光電変換効率を示し、太陽電池の効率を大きく向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は染料感応太陽電池(dye-sensitized solar cell;DSSC)に使用されるチオフェン系染料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1991年度スイス国立ローザンヌ高等技術院(EPFL)のマイケルグラツェル(Michael Gratzel)研究チームによって染料感応ナノ粒子酸化チタン太陽電池が開発されて以来、この分野では多くの研究が行われている。染料感応太陽電池は既存のシリコン系太陽電池に比べて効率が高く製造単価が顕著に低いため、既存の非晶質シリコン太陽電池を代替することができる可能性を有している。シリコン太陽電池とは異なり、染料感応太陽電池は可視光線を吸収して電子−ホール対を生成できる染料分子と、生成した電子を伝達する遷移金属酸化物を主構成材料にする光電気化学的太陽電池である。
【0003】
染料感応太陽電池には高い光電変換効率を示すルテニウム金属錯体が幅広く使用されてきたが、このルテニウム金属錯体は価格が非常に高い。
【0004】
最近、吸光効率、酸化還元反応安定性、及び分子内電荷−移動(charge−transfer;CT)吸収の面で優れた物性を示す、金属を含有しない有機染料が、高価なルテニウム金属錯体を代替する太陽電池に用いることができることが発見され、金属を含有しない有機染料に関する研究が重点的に行われている。
【0005】
有機染料は一般にπ−結合ユニットによって結合される電子供与体(electron donor)−電子受容体(electron acceptor)末端基の構造を含む。大部分の有機染料で、アミン誘導体が電子供与体の役割を果たし、2−シアノアクリル酸またはロダニン末端基が電子受容体の役割を果たし、この二つの部位はメタリン単位(metaphosphorus unit)またはチオフェン鎖のようなπ−結合系によって結合される。
【0006】
一般に、電子供与体であるアミン単位の構造的変化は、例えば吸光スペクトルが青色側にシフト(shift)するような電子特性の変化をもたらし、π−結合長さを変化させて吸光スペクトル及び酸化還元電位(redox potential)を調節することができる。
【0007】
しかし、今まで知られた大部分の有機染料はルテニウム金属錯体染料に比べて変換効率及び駆動安定性が低いので、このような電子供与体及び受容体の種類またはπ−結合長を変化させることによって、既存の有機染料化合物に比べて向上したモル吸光係数を有し高い光電変換効率を示す新たな染料を開発しようとする努力が持続的に行われているのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明は従来の金属錯体染料より向上したモル吸光係数及び光電変換効率を示して太陽電池の効率を大きく向上させることができる有機染料、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は前記染料を含み、顕著に向上した光電変換効率を示し、Jsc(短絡回路光電流密度;short circuit photocurrent density)及びモル吸光係数が優れた染料増感光電変換素子、及び効率が顕著に向上した太陽電池を提供することを目的とする。
【0010】
さらに、本発明の特徴及び/または利点の一部は、本明細書に説明され、また一部は本明細書から明らかであり、また本発明を実施する際に学習できるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために本発明は、下記の化学式1で示されるチオフェン系染料;
【化1】

(式中、R1
【化2】

であり、
X、Y、及びZはそれぞれ独立して、水素原子またはC1〜30のアルキル、C1〜30のアルコキシまたはC1〜30のヘテロアルコキシを表わし;
2及びR3はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アミド、シアノ、ヒドロキシル、ニトロ、アシル、C1〜30のアルキル、C1〜30のアルコキシ、C1〜30のアルキルカルボニルまたはC6〜20のアリールを表わし、C1〜30のアルコキシである場合、これらは互いに結合して酸素含有ヘテロ環を形成することができ;
Ar1はC1〜50のアルキル、アルコキシ、ハロゲン原子、アミド、シアノ、ヒドロキシル、ニトロ、アシル、C6〜50のアリールまたはヘテロアリール基で置換されていてもよいC1〜50のアルキル、アルコキシ、C6〜50のアリールまたはヘテロアリールを表わし;
nは1〜10の整数であり、nが2以上である場合、チオフェン単位中のSは、SeまたはNHであってもよい。)を提供する。
【0012】
また、本発明は、下記の化学式2の化合物をn−ブチルリチウムと反応させた後、下記化学式3の化合物と反応させることを含む化学式1で示される染料の製造方法;
【化3】

【化4】

(化学式2及び3中、R1、R2、R3、Ar1、及びnは化学式1で定義した通りであり、H1及びH2はそれぞれ独立して、ハロゲン原子を表わす。)を提供する。
【0013】
また、本発明は、下記の化学式4で示されるチエノチオフェン系染料;
【化5】

(化学式4中、ArはC1〜50のアルキル、アルコキシ、ハロゲン原子、アミド、シアノ、ヒドロキシル、ニトロ、アシル、C6〜50のアリールまたはヘテロアリール基で置換されていてもよいC1〜50のアルキル、アルコキシ、C6〜50のアリールまたはヘテロアリールを表わし;
1は、
【化6】

を表わし;
X、Y、及びZはそれぞれ独立して、水素原子またはC1〜30のアルキル、アルコキシまたはヘテロアルコキシを表わし;
2及びR3はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アミド、シアノ、ヒドロキシル、ニトロ、アシル、C1〜30のアルキル、C1〜30のアルコキシ、C1〜30のアルキルカルボニルまたはC6〜20のアリールを表わし、C1〜30のアルコキシである場合、これらは互いに結合して酸素含有ヘテロ環を形成することができ;
nは1〜10の整数である。)を提供する。
【0014】
また、本発明は、下記化学式5の化合物をn−ブチルリチウムと反応させた後、下記の化学式6の化合物と反応させることを含む化学式4で示される染料の製造方法;
【化7】

【化8】

(化学式5及び6中、R1、R2、R3、Ar、及びnは前記で定義した通りであり、H1及びH2はそれぞれ独立してハロゲン原子を表わす。)を提供する。
【0015】
また、本発明は、下記の化学式7で示されるジチエノチオフェン系染料;
【化9】

(化学式7中、ArはC1〜50のアルキル、アルコキシ、ハロゲン原子、アミド、シアノ、ヒドロキシル、ニトロ、アシル、C6〜50のアリールまたはヘテロアリール基で置換されていてもよいC1〜50のアルキル、アルコキシ、C6〜50のアリールまたはヘテロアリールを表わし;
1
【化10】

を表わし、
X及びYはそれぞれ独立して水素原子またはC1〜30のアルキル、アルコキシまたはヘテロアルコキシを表わし;
2及びR3はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アミド、シアノ、ヒドロキシル、ニトロ、アシル、C1〜30のアルキル、C1〜30のアルコキシ、C1〜30のアルキルカルボニルまたはC6〜20のアリールを表わし、C1〜30のアルコキシである場合にこれらは互いに結合して酸素−含有ヘテロ環を形成することができ;
nは1〜10の整数である。)を提供する。
【0016】
また、本発明は、
(1)下記化学式8の化合物を下記化学式9の化合物と鈴木カップリング反応させて、下記化学式10の化合物を製造し、
(2)化学式10の化合物をジメチルホルムアミド中でPOCl3と反応させて、下記の化学式11の化合物を製造し、
(3)化学式11の化合物をCH3CN中でピペリジンの存在下シアノ酢酸または下記の化学式12の化合物と反応させることを含む化学式7で示されるジチエノチオフェン系染料;

(化学式8〜12中、X、Y、R2、R3、及びArは前記で定義した通りである。)の製造方法を提供する。
【0017】
また本発明は、前記化学式1、4または7で示される化合物を担持させた酸化物半導体微粒子を含むことを特徴とする染料増感光電変換素子を提供する。
【0018】
また本発明は、前記染料増感光電変換素子を含むことを特徴とする染料感応太陽電池を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明のチオフェン系染料は従来の金属錯体染料に比べより向上したモル吸光係数、Jsc(短絡回路光電流密度)、及び光電変換効率を示し、太陽電池の効率を著しく向上させることができ、高価のカラムを使用せずに精製が可能であって染料合成単価を画期的に低くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者らは新たな有機染料構造を有する化学式1、4及び7で示されるチオフェン系染料化合物を酸化物半導体微粒子に担持させ染料感応太陽電池を製造すると、光電変換効率、Jsc(短絡回路光電流密度)及びモル吸光係数が高く既存の染料感応太陽電池に比べより優れた効率を示すことを確認し、本発明を完成した。
【0021】
本発明の有機染料は下記の化学式1で示され、好ましくは下記化合物1〜141の構造を有する。
【化11】

化学式1中、R1、R2、R3、Ar1、及びnは前記で定義した通りであり、Ar1は、一つ以上のハロゲン原子、C1〜C10のアルキル、またはモノ、ジまたはトリフェニルメチルで置換されていてもよい
【化12】

であるのが好ましく、さらに下記化合物1〜141のうちの一つであるのが好ましい;
【0022】
【化13】

【0023】
【化14】

【0024】
【化15】

【0025】
【化16】

【0026】
【化17】

【0027】
【化18】

【0028】
【化19】

【0029】
【化20】

【0030】
【化21】

【0031】
【化22】

【0032】
【化23】

【0033】
【化24】

【0034】
【化25】

【0035】
【化26】

【0036】
【化27】

【0037】
【化28】

【0038】
【化29】


【0039】
また、本発明は前記化学式1で示される染料の製造方法を提供する。化学式1で示される染料は下記の化学式2の化合物をn−ブチルリチウムと反応させた後、下記の化学式3の化合物と反応させることによって製造することができる。
【0040】
【化30】

【0041】
【化31】

【0042】
化学式2及び3中、R1、R2、R3、Ar1、及びnは前記化学式1で定義した通りであり、H1及びH2はそれぞれ独立して、ハロゲン原子を表わす。
【0043】
より具体的には、化学式2の化合物を有機溶媒(例:テトラヒドロフラン(THF))に溶解した後、低温でn−ブチルリチウムと反応させた後、同一温度で化学式3の化合物と反応させて、目的とする化学式1の化合物を得ることができる。
【0044】
化学式1の化合物1の製造に出発物質として使用される化学式2の化合物は、Ar1の種類に依ってそれぞれ通常の方法で製造することができる。
【0045】
また、本発明は、下記の化学式4
【化32】

で示されるチオフェン系染料を提供する。
【0046】
化学式4中、ArはC1〜50のアルキル、アルコキシ、ハロゲン原子、アミド、シアノ、ヒドロキシル、ニトロ、アシル、C6〜50のアリールまたはヘテロアリール基で置換されていてもよいC1〜50のアルキル、アルコキシ、C6〜50のアリールまたはヘテロアリールを表わし、
1
【化33】

を表わし、
X、Y、及びZはそれぞれ独立して、水素原子またはC1〜30のアルキル、アルコキシまたはヘテロアルコキシを表わし、
2及びR3はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アミド、シアノ、ヒドロキシル、ニトロ、アシル、C1〜30のアルキル、C1〜30のアルコキシ、C1〜30のアルキルカルボニルまたはC6〜20のアリールを表わし、C1〜30のアルコキシである場合、これらは互いに結合して酸素含有ヘテロ環を形成することができ、
nは1〜10の整数である。
【0047】
好ましくは、前記Arは独立して
【化34】

(ここで、R’はそれぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキルを表わし、nは0〜5の整数であり、*は結合部を表わす。)であり、それぞれのアリール、ヘテロアリール環中には1つ以上の置換基を有することができ、置換基はそれぞれ独立して、C1〜30のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アミド基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アシル基、アリール基またはヘテロアリール基である。
【0048】
さらに好ましくは、化学式4の化合物は下記化合物142〜157で示される化合物のうちのいずれか一つである。
【0049】
【化35】

【0050】
【化36】

【0051】
【化37】

【0052】
【化38】

【0053】
また、本発明は前記化学式4で示される染料の製造方法を提供する。化学式4で示される染料は下記の化学式5の化合物をn−ブチルリチウムと反応させた後、下記の化学式6の化合物と反応させることによって製造することができる。
【0054】
【化39】

【化40】

化学式5及び6中、R1、R2、R3、Ar、及びnは前記化学式4で定義した通りであり、H1及びH2はそれぞれ独立してハロゲン原子を表わす。
【0055】
より具体的には、化学式5の化合物を有機溶媒(例:テトラヒドロフラン(THF))に溶解した後、低温でn−ブチルリチウムと反応させ、次に同一温度で化学式6の化合物と反応させて、目的とする化学式4の化合物を得ることができる。
【0056】
化学式4の染料の製造に出発物質として使用される化学式5の化合物はArの種類に依ってそれぞれ通常の方法で製造することができる。
【0057】
また、本発明は下記の化学式7で示されるジチエノチオフェン系染料を提供する。
【化41】

化学式7中、ArはC1〜50のアルキル、アルコキシ、ハロゲン原子、アミド、シアノ、ヒドロキシル、ニトロ、アシル、C6〜50のアリールまたはヘテロアリール基で置換されていてもよいC1〜50のアルキル、アルコキシ、C6〜50のアリールまたはヘテロアリールを表わし;
1
【化42】

であり、
X及びYはそれぞれ独立して水素原子またはC1〜30のアルキル、C1〜30のアルコキシまたはC1〜30のヘテロアルコキシを表わし;
2及びR3はそれぞれ独立して、ハロゲン原子、アミド、シアノ、ヒドロキシル、ニトロ、アシル、C1〜30のアルキル、C1〜30のアルコキシ、C1〜30のアルキルカルボニルまたはC6〜20のアリールを表わし、C1〜30のアルコキシである場合にこれらは互いに結合して酸素含有ヘテロ環を形成することができ;
nは1〜10の整数である。
【0058】
好ましくは、前記Arは
【化43】

(式中、R’はそれぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキルを表わし、nは0〜5の整数であり、*は結合部を表わす。各アリール、ヘテロアリール環は1以上の置換基を有し、置換基はそれぞれ独立して、C1〜30のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アミド基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アシル基、C6〜50のアリール基またはヘテロアリール基である)である。
【0059】
さらに好ましくは、本発明の前記化学式7で示される有機染料は下記の化合物158〜180の構造を有する。
【0060】
【化44】

【0061】
【化45】

【0062】
【化46】

【0063】
【化47】

【0064】
また、本発明は前記化学式7で示される染料の製造方法を提供する。化学式7で示される染料は(1)下記の化学式8の化合物を下記の化学式9の化合物と鈴木カップリング反応させて下記の化学式10の化合物を製造し、(2)化学式10の化合物をジメチルホルムアミド中でPOCl3と反応させて下記の化学式11の化合物を製造し、(3)化学式11の化合物をCH3CN中でピペリジンの存在下シアノ酢酸または下記の化学式12の化合物と反応させることによって製造することができる。その具体的な一例を下記反応式aに示す。
【0065】
【化48】

【0066】
【化49】

【0067】
前記化学式8〜12及び反応式a中、R1〜R3、X、Y及びArは前記化学式7で定義した通りである。
【0068】
前記反応式において、化学式7の染料の製造に出発物質として使用される化学式8の化合物は通常の方法で製造するか、市販品を購入することができる。また、化学式9の化合物の基本構造になるジチエノチオフェンは下記反応式bのように製造することができ、このようなジチエノチオフェンの製法は反応時間も比較的短く、カラム精製なしに再結晶できる等合成方法が非常に簡単であるという長所を有する([Chem.Mater.2007、19、4007−4015]及び[J.Mater.Chem.1999、9、1719−1725]参照)。
【0069】
【化50】

【0070】
また、本発明は染料増感光電変換素子を提供する。前記染料増感光電変換素子は酸化物半導体微粒子に前記化学式1、4または7で示される染料を担持させることを特徴とする。本発明の染料増感光電変換素子は前記化学式1、4または7で示される染料を使用すること以外に、従来の太陽電池に使用される染料を用いて増感光電変換素子を製造することもできる。好ましくは、本発明の染料増感光電変換素子は基板上に酸化物半導体微粒子を含む酸化物半導体層を形成し、次に前記薄膜に本発明の染料を担持させて製造する。
【0071】
本発明で酸化物半導体粒子層を有する基板としては、その表面が導電性であるものが好ましく、市販されているものを使用することもできる。具体的な一例としては、ガラス、またはポリエチレンテレフタレートあるいはポリエーテルスルホン等の透明性を有する高分子材料の表面にインジウム、フッ素、アンチモンを塗布した酸化錫等の導電性金属酸化物層や、鋼、銀、金等の金属層を形成したものを利用することができる。この時、導電性は1000Ω以下が好ましく、特に100Ω以下が好ましい。
【0072】
また、酸化物半導体の微粒子としては金属酸化物が好ましい。具体的な例としては、チタン、錫、亜鉛、タングステン、ジルコニウム、ガリウム、インジウム、イットリウム、ニオブ、タンタル、バナジウム等の酸化物を使用することができる。これらのうち、チタン、錫、亜鉛、ニオブ、インジウム等の酸化物が好ましく、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫がさらに好ましく、二酸化チタンが最も好ましい。前記酸化物半導体は単独で使用することもできるが、混合したり半導体表面にコーティングして使用することもできる。
【0073】
また、前記酸化物半導体微粒子の粒径は平均粒径として1〜500nmであり、好ましくは1〜100nmである。また、この酸化物半導体の微粒子は大きな粒径のものと小さな粒径のものを混合したり、多層にして利用することもできる。
【0074】
前記酸化物半導体層は、酸化物半導体微粒子を基板上にスプレーする方法、基板を電極にして電気的に半導体微粒子層を析出させる方法、半導体微粒子のスラリーまたは半導体アルコキシド等の半導体微粒子の前駆体を加水分解することによって得られる微粒子を含有するペーストを基板上に塗布した後、乾燥、硬化あるいは焼成する方法等によって製造することができ、ペーストを基板上に塗布する方法が好ましい。この方法の場合、スラリーは二次凝集している酸化物半導体微粒子を通常の方法によって分散媒中に平均一次粒径が1〜200nmになるように分散させることによって得ることができる。
【0075】
スラリーを分散させる分散媒としては半導体微粒子を分散できるものであれば特に制限はなく、水、エタノール等のアルコール、アセトン、アセチルアセトン等のケトンまたはヘキサン等の炭化水素を利用することができ、これらは混合して使用することができる。このうち、水を利用することがスラリーの粘度変化を少なくするという点で好ましい。また、酸化物半導体微粒子の分散状態を安定化させるために分散安定剤を使用することができる。使用できる分散安定剤の具体的例としては、酢酸、塩酸、硝酸等の酸、またはアセチルアセトン、アクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0076】
スラリーを塗布した基板は焼成することができ、その焼成温度は100℃以上、好ましくは200℃以上である。焼成温度の上限は基材の融点(軟化点)、すなわち900℃であり、好ましくは600℃以下である。本発明で焼成時間は特に限定されないが、4時間以内が好ましい。
【0077】
本発明によれば、基板上の薄膜の厚さは1〜200μmであり、好ましくは1〜50μmである。焼成を実施する場合、酸化物半導体微粒子層が一部溶着するが、そのような溶着は本発明に特に影響しない。
【0078】
また、前記酸化物半導体層に二次処理をすることもできる。一例として、半導体と同一金属のアルコキシド、塩化物、窒素化物、硫化物等の溶液に層を浸漬させて、その後乾燥あるいは再焼成することによって半導体薄膜の性能を向上させることもできる。金属アルコキシドとしては、チタンエトキシド、チタニウムイソプロエポキシド、チタンt−ブトキシド、n−ジブチル−ジアセチル錫等、またはそれらのアルコール溶液が挙げられる。塩化物としては例えば、四塩化チタン、四塩化錫、塩化亜鉛等、またはそれらの水溶液が挙げられる。得られた酸化物半導体層は酸化物半導体の微粒子を含有する。
【0079】
また、本発明の酸化物半導体微粒子層に染料を担持させる方法は特に限定されず、具体的な例として、前記化学式1、4または7で示される染料を溶媒に溶解して得られた溶液、またはその染料を分散して得られた分散液に、前記酸化物半導体層を有する基板を浸漬させる方法が挙げられる。溶液または分散液の濃度は染料に依って適宜決められる。浸漬温度は常温から溶媒の沸点までであり、また浸漬時間は1分から48時間程度である。染料を溶解させる溶媒の具体的な例としては、メタノール、エタノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトン、t−ブタノール等が挙げられる。溶液の染料濃度は通常1×10-6M〜1Mであり、好ましくは1×10-5M〜1×10-1Mである。このように、本発明では酸化物半導体微粒子層を有する染料増感型光電変換素子を得ることができる。
【0080】
本発明の化学式1、4または7で示される染料は、単独で、または数種類を混合して用いることができる。混合する場合には、本発明の染料と共に他の染料や金属錯体染料を混合することもできる。混合できる金属錯体染料は特に制限されないが、ルテニウム錯体またはその四級塩(triarylmethylium salt)、フタロシアニン、ポルフィリン等が挙げられる。混合できる有機染料としては無金属のフタロシアニン、ポルフィリン、シアニン、メロシアニン、オキソノール、トリフェニルメタン系、WO2002/011213号に記載のアクリル酸系染料等のメチン系染料や、キサンテン系、アゾ系、アントラキノン系、ペリレン系等の染料が挙げられる(文献[M.K.Nazeeruddin,A.Kay,I.Rodicio,R.Humphry−Baker,E.Muller,P.Liska,N.Vlachopoulos,M.Gratzel,J.Am.Chem.Soc.,第115券,6382頁(1993年)]参照)。染料を2種以上用いる場合には、染料を半導体層に順次担持させることもでき、混合溶解してから担持させることもできる。
【0081】
本発明の酸化物半導体微粒子層を染料に担持させる時、染料同士の結合を防止するために包接化合物の存在下で行うと良い。前記包接化合物としてはデオキシコール酸、デヒドロデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、コール酸メチルエステル、コール酸ナトリウム等のコール酸類、ポリエチレンオキシド、コール酸等のステロイド系化合物、クラウンエーテル、シクロデキストリン、カリックスアレーン、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。
【0082】
また、染料を担持させた後、4−t−ブチルピリジン等のアミン化合物や酢酸、プロピオン酸等の酸性基を有する化合物等で半導体層の電極表面を処理することができる。処理方法は例えば、アミンのエタノール溶液に、染料を担持した半導体微粒子層を有する基板を浸漬する方法等が用いられる。
【0083】
また、本発明は前記染料感応光電変換素子を含むことを特徴とする染料感応太陽電池を提供する。前記化学式1、4、または7で示される染料を担持した酸化物半導体微粒子層を有する染料増感光電変換素子を使用すること以外に、従来の光電変換素子を使用して太陽電池を製造する通常の方法が適用されるのはもちろんである。具体的な例として、前記酸化物半導体微粒子層に化学式1、4、または7で示される染料を担持させて形成した光電変換素子電極(陰極)、対電極(陽極)、酸化還元電解質、正孔輸送材料またはp型半導体等で構成される。
【0084】
好ましくは、本発明の染料感応太陽電池の具体的な製造方法の一例としては、導電性透明基板上に酸化チタンペーストをコーティングする工程、ペーストをコーティングした基板を焼成して酸化チタン層を形成する工程、酸化チタン層を形成した基板を前記化学式1、4、または7で示される染料が溶解した溶液に含浸させて染料を担持した酸化チタン薄膜電極を形成する工程、酸化チタン薄膜電極の上部に対電極を形成した第2のガラス基板を備える工程、第2ガラス基板及び対電極を貫通するホールを形成する工程、前記対電極及び前記染料を担持した酸化チタン薄膜電極の間に熱可塑性高分子薄膜を配置し、加熱及び加圧することにより前記対電極及び酸化チタン薄膜電極を接合する工程、前記ホールを通して対電極と酸化チタン薄膜電極の間の熱可塑性高分子薄膜に電解質を注入する工程、及び前記熱可塑性高分子薄膜を密封する工程による製造方法が挙げられる。
【0085】
酸化還元電解質、正孔輸送材料、p型半導体等は、液体、凝固体(ゲル及びゲル状)、固体等のいずれでもよい。液状のものとしては、酸化還元電解質、溶解塩、正孔輸送材料、p型半導体等をそれぞれ溶媒に溶解させたものや常温溶解塩等が挙げられる。凝固体(ゲル及びゲル状)の場合には、酸化還元電解質、正孔輸送材料及びp型半導体等をポリマーマトリックスや低分子ゲル化剤等に含有させたもの等が挙げられる。固体のものとしては酸化還元電解質、溶解塩、正孔輸送材料、p型半導体等を使用することができる。
【0086】
正孔輸送材料としてはアミン誘導体やポリアセチレン、ポリアニリン、ポリチオフェン等の導電性高分子、トリフェニレン系化合物等のディスコティック液晶相を用いる材料等を使用することができる。また、p型半導体としてはCuI、CuSCN等を使用することができる。対電極としては、導電性を有し、酸化還元電解質の還元反応の触媒として作用するものが好ましい。例えば、ガラスまたは高分子薄膜に白金、カーボン、ロジウム、ルテニウム等を蒸着したり、導電性微粒子を塗布したものを使用することができる。
【0087】
本発明の太陽電池に利用する酸化還元電解質としては、ハロゲンイオンを対イオンとするハロゲン化合物及びハロゲン分子で構成されるハロゲン酸化還元系電解質、フェロシアン酸塩−フェロシアン酸塩、フェロセン−フェリシニウムイオン、またはコバルト錯体等の金属錯体等の金属酸化還元系電解質、アルキルチオール−アルキルジスルフィド、ビオロゲン染料、ヒドロキノン−キノン等の有機酸化還元系電解質等を用いることができ、ハロゲン酸化還元系電解質が好ましい。ハロゲン化合物−ハロゲン分子で構成されるハロゲン酸化還元系電解質におけるハロゲン分子としては、ヨード分子が好ましい。また、ハロゲンイオンを対イオンとするハロゲン化合物としてはLiI、NaI、KI、CaI2、MgI2、CuI等のハロゲン化金属塩、またはテトラアルキルアンモニウムヨード、イミダゾリウムヨード、ピリジウムヨード等のハロゲンの有機アンモニウム塩、またはI2を使用することができる。
【0088】
また、酸化還元電解質は前記材料を含む溶液として用いることができる。この場合、溶媒としては電気化学的に不活性であるものを使用することができる。具体的には、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、3−メトキシプロピオニトリル、メトキシアセトニトリル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチロラクトン、ジメトキシエタン、ジメチルカーボネート、1,3−ジオキソラン、メチルホルメート、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メトキシ−オキサゾリジン−2−オン、スルホラン、テトラヒドロフラン、水等が挙げられ、特にアセトニトリル、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、3−メトキシプロピオニトリル、エチレングリコール、3−メトキシ−オキサゾリジン−2−オン、ブチロラクトン等が好ましい。前記溶媒は単独でまたは混合して使用することができる。ゲル状のポジテイブ電解質(positive electrolyte)の場合にはオリゴマー及びポリマー等のマトリックスに電解質または電解質溶液を含有させたもの、または、モノマーゲル化剤等に電解質または電解質溶液を含有させたものを使用することができる。酸化還元電解質の濃度は0.01〜99質量%が好ましく、0.1〜30質量%がさらに好ましい。
【0089】
本発明の太陽電池は、基板上の酸化物半導体微粒子に染料を担持した光電変換素子(陰極)にそれと対置するように対電極(陽極)を配置し、その間に酸化還元電解質を含有する溶液を充填することによって得られる。
【0090】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範囲が下記の実施例に限定されるのではない。
【実施例】
【0091】
染料の合成
全ての反応はアルゴン雰囲気下で行われ、全ての溶媒はシグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich)社で購入した適当な試薬を蒸留した。1H NMRスペクトルはバリアン・マーキュリー(Varian Mercury)300スペクトロメーターで測定した。吸光度及び発光スペクトルはそれぞれパーキン・エルマー ラムダ(Perkin−Elmer Lambda) 2S 紫外可視分光光度計(UV−visible spectrophotometer)及びパーキン(Perkin) LS 蛍光分光光度計(fluorescence spectrometer)で測定した。
【0092】
実施例1:化合物1の合成
【化51】

【化52】

【0093】
1−ブロモ−4−ブロモメチルベンゼン(5g、20mmol)をトリエチルホスファイト(25g、150mmol)と共に撹拌機に入れ、120℃で2時間反応させてトリエチル−4−ブロモベンジルホスファイトを合成した。合成したトリエチル−4−ブロモベンジルホスファイト(6.74g、20mmol)、ベンゾフェノン(5.13g、29.16mmol)及びカリウムtert−ブトキシド(3.27g、29.16mmol)を反応器に入れ、テトラヒドロフラン(THF)50mlに溶解して4時間120℃で反応させて1−ブロモ−4−(2,2−ジフェニルビニル)ベンゼンを合成した。合成した1−ブロモ−4−(2,2−ジフェニルビニル)ベンゼン(6.03g、18mmol)をTHF50mlに溶解した後、−78℃で2M n−BuLi(10ml、20mmol)を徐々に滴加した後に1時間低温撹拌した。再び反応物に(Z)−3−(5−ブロモチオフェン−2−イル)−2−シアノアクリル酸(5.16g、20mmol)を−78℃で徐々に滴加し1時間低温で撹拌した後、さらに0℃で30分間撹拌して反応を終結した。
【0094】
反応後、ジクロロメタン及び蒸留水を使用して有機層を抽出した後、溶媒を蒸留器によって除去し、有機層をn−ヘキサンを使用して再結晶を行い、沈殿物をろ過して回収した後、乾燥して精製した(収率52%)。
1H NMR(CDCl3):[ppm]=8.04(s、1H)、7.67(s、1H)、7.60(d、3HH=3.6Hz、2H)、7.52(d、3HH=8.4Hz、2H)、7.43(m、3H)、7.34(m、5H)、7.19(dd、3HH=8Hz、2H)、7.14(s、1H)、7.07(d、3HH=8.4Hz、2H)。
【0095】
実施例2:化合物3の合成
【化53】

【化54】

【0096】
4−ブロモベンズアルデヒド(5g、27mmol)とN1−フェニルベンゼン−1,2−ジアミン(5.47g、29.7mmol)及びオキソン(18.25g、29.7mmol)を反応器に入れてDMF80mlに溶解した後、120℃で10時間撹拌して2−(4−ブロモフェニル)−1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾールを合成した。合成した2−(4−ブロモフェニル)−1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール(6.98g、20mmol)をTHF 50mlに溶解した後、−78℃で2M n−BuLi(11ml、22mmol)を徐々に滴加した後に1時間低温で撹拌した。再び反応物に(Z)−3−(5−ブロモチオフェン−2−イル)−2−シアノアクリル酸(5.16g、20mmol)を−78℃で徐々に滴加し1時間低温で撹拌した後、さらに0℃で30分間撹拌して反応を終結した。
【0097】
反応後、ジクロロメタン及び蒸留水を使用して有機層を抽出した後、溶媒を蒸留器によって除去し、有機層をn−ヘキサンを使用して再結晶を行い、沈殿物をろ過して回収した後に乾燥して精製した(収率48%)。
1H NMR(CDCl3):11.0(s、1H)、8.16(s、1H)、7.70(m、3H)、7.54(dd、3HH=8Hz、4H)、7.3(s、1H)、7.26(m、7H)。
【0098】
実施例3:化合物6の合成
【化55】

【化56】

【0099】
1−ブロモ−4−ヨードベンゼン(5g、17.67mmol)、カルバゾール(2.9g、17.67mmol)、Cu(0.06g、0.88mmol)及びK2CO3(4.88g、35.34mmol)をトルエン30mlに溶解し、120℃で10時間撹拌して9−(4−ブロモフェニル)−9H−カルバゾールを合成した。合成した9−(4−ブロモフェニル)−9H−カルバゾール(4.83g、15mmol)をTHF 50mlに溶解した後、−78℃で2M n−BuLi(7.5ml、15mmol)を徐々に滴加し1時間低温で撹拌した。再び反応物に3−(5’−ブロモ−[2,2’]ビチオフェン−5−イル)−2−シアノアクリル酸(5.44g、16mmol)を−78℃で徐々に滴加し1時間低温で撹拌した後、さらに0℃で30分間撹拌して反応を終結した。
【0100】
反応後、ジクロロメタン及び蒸留水を使用して有機層を抽出した後、溶媒を蒸留器によって除去し、有機層をn−ヘキサンを使用して再結晶を行い、沈殿物をろ過して回収した後に乾燥して精製した(収率60%)。
1H NMR(CDCl3):8.26(d、3HH=8Hz、2H)、8.01(m、3H)、7.68(m、4H)、7.57(d、3HH=4Hz、1H)、7.51(d、3HH=4Hz、1H)7.46(m、5H)7.28(m、2H)。
【0101】
実施例4:化合物8の合成
【化57】

【化58】

【0102】
1,3,5−トリブロモベンゼン(2g、6.35mmol)、N−フェニルナフタレン−1−アミン(2.79g、12.7mmol)、Cu(0.02g、0.31mmol)及びK2CO3(1.75g、12.7mmol)をトルエン30mlに溶解し、120℃で10時間撹拌して5−ブロモ−N1,N3−ジ(ナフタレン−1−イル)−N1,N3−ジフェニルベンゼン−1,3−ジアミンを合成した。合成した5−ブロモ−N1,N3−ジ(ナフタレン−1−イル)−N1,N3−ジフェニルベンゼン−1,3−ジアミン(2.95g、5mmol)をTHF 40mlに溶解した後、−78℃で2M n−BuLi(7.5ml、15mmol)を徐々に滴加し1時間低温で撹拌した。再び反応物に(Z)−3−(5−ブロモチオフェン−2−イル)−2−シアノアクリル酸(5.44g、16mmol)を−78℃で徐々に滴加し1時間低温で撹拌した後、さらに0℃で30分間撹拌して反応を終結した。
【0103】
反応後、ジクロロメタン及び蒸留水を使用して有機層を抽出した後、溶媒を蒸留器によって除去し、有機層をn−ヘキサンを使用して再結晶を行い、沈殿物をろ過して回収した後に乾燥して精製した(収率57%)。
1H NMR(CDCl3):7.98(m、3H)、7.85(d、3HH=8Hz、2H)、7.79(d、3HH=8Hz、2H)、7.42(m、8H)、7.33(m、3H)、7.26(d、3HH=4Hz、1H)、7.10(m、4H)、6.92(d、3HH=4Hz、1H)、6.87(m、7H)、6.58(d、3HH=2Hz、1H)、6.41(s、1H)。
【0104】
実施例5〜7:化合物2、4及び5の合成
前記実施例1〜3それぞれに開示した方法と類似した方法で化合物2、4及び5を製造した。
【0105】
実施例8:化合物142の合成
【化59】

【化60】

【0106】
1−ブロモ−4−ブロモメチルベンゼン(5g、20mmol)をトリエチルホスファイト(25g、150mmol)と共に撹拌機に入れて120℃で2時間反応させ、トリエチル4−ブロモベンジルホスファイトを合成した。合成したトリエチル4−ブロモベンジルホスファイト(6.74g、20mmol)とベンゾフェノン(5.13g、29.16mmol)及びカリウムtert−ブトキシド(3.27g、29.16mmol)を反応器に入れてTHF 50mlに溶解して4時間120℃で反応させ、1−ブロモ−4−(2,2−ジフェニルビニル)ベンゼン(1−1)を合成した。合成した1−ブロモ−4−(2,2−ジフェニルビニル)ベンゼン(1−1)(6.03g、18mmol)をTHF 50mlに溶解した後、−78℃で2M n−BuLi(10ml、20mmol)を徐々に滴加し、1時間低温撹拌した。再び反応物にトリイソプロピルボレート(Triisopropyl borate)(3.76g、20mmol)を−78℃で徐々に滴加し、1時間低温で撹拌した。さらに0℃で30分間撹拌し、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニルボロン酸(1−2)を合成した。合成した4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニルボロン酸(4.5g、15mmol)(1−2)をK2CO3(6.2g、45mmol)及びPd(PPh34(0.86g、0.75mmol)と共にTHF(60ml)に溶解して、(E)−3−(5−ブロモチエノ[3,2−b]チオフェン−2−イル)−2−シアノアクリル酸(5.6g、18mmol)を添加した後、120℃で4時間撹拌し、反応を終結した。反応終結後、ジクロロメタン及び蒸留水を使用して有機層を抽出した後、溶媒は蒸発器を利用して除去し、n−ヘキサンを使用して再結晶を行った後、沈殿物をろ過し乾燥して化合物142を回収した。
【0107】
実施例9:化合物144の合成
【化61】

【化62】

【0108】
1−ブロモ−4−(2,2−ジフェニルビニル)ベンゼン(6.03g、18mmol)と10,,10,,−ジヒドロアクリジン−9(8aH)−オン(4.26g、21.6mmol)を反応容器に入れ、KtBuO(4.84g、43.2mmol)及びPd(OAc)(0.24g、1.08mmol)を添加した後、トルエン(50ml)に溶解して150℃で12時間反応させ、化合物10−(4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル)−10,,10,,−ジヒドロアクリジン−9(8aH)−ウォンオン(3−1)を合成した。合成されした10−(4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル)−10,,10,,−ジヒドロアクリジン−9(8aH)−オン(3−1)(3.2g、7.08mmol)をトリエチル4−ブロモベンジルホスファイト(2.6g、8.49mmol)と共に反応器に入れ、KtBuO(0.95g、8.49mmol)を添加してTHF(50ml)に溶解した後、120℃で4時間撹拌し、化合物(E)−9−(4−ブロモベンジリデン)−10−(4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル)−8a,9,10,,10,,−テトラヒドロアクリジン(3−2)を合成した。合成した化合物(E)−9−(4−ブロモベンジリデン)−10−(4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル)−8a,9,10,,10,,−テトラヒドロアクリジン(3−2)(3.5g、5.78mmol)をTHF 30mlに溶解した後、−78℃で2M n−BuLi(3.45ml、6.9mmol)を徐々に滴加した後、1時間低温撹拌した。反応物にトリイソプロピルボレート(1.29g、6.9mmol)を−78℃で徐々に滴加した後、1時間低温で撹拌後、さらに0℃で30分間撹拌し、化合物(E)−4−((10−(4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル)−10,,10,,−ジヒドロアクリジン−9(8aH)−イリデン)メチル)フェニルボロン酸(3−3)を合成した。合成した化合物(E)−4−((10−(4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル)−10,,10,,−ジヒドロアクリジン−9(8aH)−イリデン)メチル)フェニルボロン酸(3−3)(2.8g、4.9mmol)をK2CO3(2.03g、14.7mmol)及びPd(PPh34(0.86g、0.29mmol)と共にTHF(30ml)に溶解して(E)−3−(5−ブロモチエノ[3,2−b]チオフェン−2−イル)−2−シアノアクリル酸(5.6g、18mmol)を添加した後、120℃で4時間撹拌後、反応を終結した。反応終結後、ジクロロメタン及び蒸留水を使用して有機層を抽出した後、溶媒は蒸発器を利用して除去し、n−ヘキサンを使用して再結晶を行った後、沈殿物をろ過し乾燥して化合物144を回収した。
【0109】
実施例10:化合物146の合成
【化63】

【化64】

【0110】
1−ブロモブタン(5g、36.5mmol)及び10,,10,,−ジヒドロアクリジン−9(8aH)−オン(7.19g、36.5mmol)を反応器に入れ、KtBuO(9.8g、87.6mmol)及びPd(OAc)(0.49g、2.19mmol)を添加した後、トルエン(60ml)に溶解して150℃で12時間反応後、化合物10−ブチル−10,,10,,−ジヒドロアクリジン−9(8aH)−オン(5−1)を合成した。合成した化合物10−ブチル−10,,10,,−ジヒドロアクリジン−9(8aH)−オン(5−1)(4.2g、16.5mmol)をトリエチル4−ブロモベンジルホスファイト(6.08g、19.8mmol)と共に反応器に入れ、KtBuO(2.22g、19.8mmol)を添加してTHF(50ml)に溶解した後、120℃で4時間撹拌後、化合物(Z)−9−(4−ブロモベンジリデン)−10−ブチル−8a,9,10,,10,,−テトラヒドロアクリジン(5−2)を合成した。合成した化合物(Z)−9−(4−ブロモベンジリデン)−10−ブチル−8a,9,10,,10,,−テトラヒドロアクリジン(5−2)(6.09g、15mmol)をTHF 50mlに溶解した後、−78℃で2M n−BuLi(9ml、18mmol)を徐々に滴加した後、1時間低温撹拌した。反応物にトリイソプロピルボレート(3.38g、18mmol)を−78℃で徐々に滴加した後、1時間低温で撹拌後、さらに0℃で30分間撹拌し、化合物(Z)−4−((10−ブチル−10,,10,,−ジヒドロアクリジン−9(8aH)−イリデン)メチル)フェニルボロン酸(5−3)を合成した。合成した化合物(Z)−4−((10−ブチル−10,,10,,−ジヒドロアクリジン−9(8aH)−イリデン)メチル)フェニルボロン酸(5−3)(4.82g、13mmol)、K2CO3(5.39g、39mmol)及びPd(PPh34(0.99g、0.65mmol)と共にTHF(30ml)に溶解して(E)−3−(5−ブロモチエノ[3,2−b]チオフェン−2−イル)−2−シアノアクリル酸(4.08g、13mmol)を添加した後、120℃で4時間撹拌後、反応を終結した。反応終結後、ジクロロメタン及び蒸留水を使用して有機層を抽出した後、溶媒は蒸発器を利用して除去し、n−ヘキサンを使用して再結晶を行った後、沈殿物をろ過し乾燥して化合物146を回収した。
【0111】
実施例11:化合物147の合成
【化65】

【化66】

【0112】
(4−ブロモ−フェニル)−ビス−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)−アミン(0.98g、1.76mmol)、3−ヘキシルチオフェン−2−ボロン酸(0.37g、1.76mmol)、テトラキス−(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.1g、0.088mmol)、カリウムカーボネート(potassium carbonate)(0.73g、5.28mmol)を混合し、DMF(40ml)に溶解した後、窒素雰囲気下で12時間還流させて撹拌した。
【0113】
撹拌後、メチレンクロライド(塩化メチレン)及び水を使用して有機層を抽出し、溶媒を留去し濃縮し(evaporation)た後、カラム精製してN−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)−N−(4−(3−ヘキシルチオフェン−2−イル)フェニル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン(6−1)を合成した。(eluent.M.C:Hx=1:5)1H NMR(CDCl3):[ppm]=0.89(m、3H)、1.29(m、4H)、1.52(m、4H)、2.52(m、2H)、1.47(s、12H)、6.7(d、3JHH=2.4Hz、1H)、6.91(d、3JHH=2.4Hz、1H)、7.09(m、4H)、7.31(m、4H)、7.38(m、4H)、7.58(d、3JHH=11.6Hz、2H)、7.62.(m、4H)。
【0114】
合成したN−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)−N−(4−(3−ヘキシルチオフェン−2−イル)フェニル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン(6−1)(0.91g、1.42mmol)、及びNBS(0.3g、1.7mmol)をTHF(30ml)に溶解した後、4時間窒素雰囲気下で撹拌した。
【0115】
撹拌後、メチレンクロライド(塩化メチレン)及び水を使用して有機層を抽出し、蒸発(evaporation)を行った後、カラム精製してN−(4−(5−ブロモ−3−ヘキシルチオフェン−2−イル)フェニル)−N−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン(6−2)を合成した。(eluent.M.C:Hx=1:5)
【0116】
合成したN−(4−(5−ブロモ−3−ヘキシルチオフェン−2−イル)フェニル)−N−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン(6−2)(1.01g、1.4mmol)、5−(5,5−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−イル)チエノ[3,2−b]チオフェン−2−イルボロン酸(0.42g、1.4mmol)、テトラキス−(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.08g、0.07mmol)、カリウムカーボネート(0.59g、4.26mmol)を入れてTHF(40ml)に溶解し、窒素雰囲気下で12時間還流させて撹拌した。
【0117】
撹拌後、メチレンクロライド(塩化メチレン)及び水を使用して有機層を抽出し、溶媒を留去し濃縮し(evaporation)た後、カラム精製してN−(4−(5−(5−(5,5−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−イル)チエノ[3,2−b]チオフェン−2−イル)−3−ヘキシルチオフェン−2−イル)フェニル)−N−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン(6−3)を合成した。(eluent.M.C:Hx=1:4)
【0118】
合成したN−(4−(5−(5−(5,5−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−イル)チエノ[3,2−b]チオフェン−2−イル)−3−ヘキシルチオフェン−2−イル)フェニル)−N−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン(6−3)(1.07g、1.2mol)をTHF(30ml)に溶解し、トリフルオロ酢酸(0.26ml)、水(1ml)を滴加した後、窒素雰囲気下で4時間撹拌した。
【0119】
撹拌後、メチレンクロライド(塩化メチレン)及び水を使用して有機層を抽出し、溶媒を留去し濃縮し(evaporation)た後、カラム精製して5−(5−(4−(ビス(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)アミノ)フェニル)−4−ヘキシルチオフェン−2−イル)−チエノ[3,2−b]チオフェン−2−カルバルデヒド(6−4)を合成した。(eluent.M.C:Hx=1:1)
【0120】
合成した5−(5−(4−(ビス(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)アミノ)フェニル)−4−ヘキシルチオフェン−2−イル)−チエノ[3,2−b]チオフェン−2−カルバルデヒド(6−4)(0.89g、1.0mmol)、シアン酢酸(0.1g、1.2mmol)、ピペリジン(0.12ml、1.2mmol)をアセトニトリル(30ml)に溶解した後、4時間還流させながら撹拌した。
【0121】
撹拌後、メチレンクロライド(塩化メチレン)及び水を使用して有機層を抽出し、溶媒を留去し濃縮し(evaporation)た後、カラム精製して化合物147を合成した。(eluent.EA:MeOH=10:1)
【0122】
実施例12:化合物148の合成
【化67】

【化68】

【0123】
(4−ブロモ−フェニル)−ビス−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)−アミン(0.98g、1.76mmol)、3’,4−ジヘキシル−2,2’−ビチオフェン−5−イルボロン酸(0.66g、1.76mmol)、テトラキス−(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.1g、0.088mmol)、カリウムカーボネート(炭酸カリウム)(0.73g、5.28mmol)を入れてDMF(40ml)に溶解した後、前記実施例11と同様の方法を使用して化合物148を合成した。
【0124】
実施例13:化学式149の化合物の合成
【化69】

【0125】
前記化学式149−aの化合物をTHFに溶解した後、0〜−100℃でn−ブチルリチウム及びトリアルキルボレートと連続的に反応させた後、得られた反応生成物をTHF中で100〜150℃で化学式149−bの化合物と反応させて化学式149の化合物を得た。
【0126】
実施例14:化学式150の化合物の合成
【化70】

【0127】
化学式150−a化合物をTHFに溶解した後、0〜−100℃でn−ブチルリチウム及びトリアルキルボレートと連続的に反応させた後、得られた反応生成物をTHF中、100〜150℃で化学式150−bの化合物と反応させて化学式150の化合物を得た。
【0128】
実施例15:化合物154の合成
【化71】

【化72】

【0129】
9−(4−ブロモフェニル)−9H−カルバゾール(0.56g、1.76mmol),3’,4−ジヘキシル−2,2’−ビチオフェン−5−イルボロン酸(0.66g、1.76mmol)、テトラキス−(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.1g、0.088mmol)、カリウムカーボネート(炭酸カリウム)(0.73g、5.28mmol)をDMF(40ml)に溶解し、実施例11と同様な方法を使用して化合物154を合成した。
【0130】
実施例16:化合物157の合成
【化73】

【化74】

【0131】
2−(4−ブロモフェニル)−1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール(0.62g、1.76mmol)、3’,4−ジヘキシル−2,2'−ビチオフェン−5−イルボロン酸(0.66g、1.76mmol)、テトラキス−(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.1g、0.088mmol)、カリウムカーボネート(炭酸カリウム)(0.73g、5.28mmol)をDMF(40ml)に溶解した後、実施例11と同様な方法を使用して化合物157を合成した。
【0132】
実施例17:化合物161の合成
【化75】

【化76】

【0133】
(1)合成したジチエノ[2’,3’]チオフェン(7g、35.65mmol)をTHF(50ml)に溶解し、LDA 2M(39ml)を−78℃で徐々に滴加した後、1時間低温で撹拌し、塩化トリメチルスズ 1M(38ml)を−78℃で徐々に滴加した後、1時間低温で撹拌し、さらに0℃で30分撹拌した。撹拌後、メチレンクロライド(塩化メチレン)及び水を使用して有機層を抽出し、溶媒を留去し濃縮し(evaporation)乾燥した。1H NMR(CDCl3):[ppm]=0.58(s、9H)、6.98((d、3JHH=4.8Hz、1H)、7.10(s、1H)、7.18((d、3JHH=4.8Hz、1H)。
【0134】
(2)2−トリメチル(ジチエノ[2’,3’]チオフェン−2−イル)スタンナン(0.48g、1.34mmol)、化合物(1)(0.74g、1.12mmol)Pd(PPh34(0.065g、0.056mmol)をTHF(40ml)に溶解し、窒素雰囲気下で8時間還流した。その後メチレンクロライド(塩化メチレン)及び水を使用して有機層を抽出し、溶媒を留去し濃縮し、カラム精製した。(eluent.M.C:Hx=1:5)1H NMR(CDCl3):[ppm]=0.96(m、6H)、1.29(m、4H)、1.96(m、4H)、2.55(m、8H)、2.62(m、4H)、6.7(m、2H)、6.91(m、2H)、6.96(d、3JHH=4.8Hz、1H)、7.08(d、3JHH=4.8Hz、1H)、7.18(m、4H)、7.28(m、4H)、7.55(m、4H)、7.78(d、3JHH=8.8Hz、2H)。
【0135】
(3)化合物(2)(0.97g、1.2mmol)をDMF(20ml)に溶解し、オキシ塩化リン(0.13ml、1.44mmol)を0℃で徐々に滴加した後、80℃で4時間撹拌した。撹拌後、メチレンクロライド(塩化メチレン)及び水を使用して有機層を抽出し、溶媒を留去し濃縮し、カラム精製した。(eluent.M.C:Hx=1:4)1H NMR(CDCl3):[ppm]=0.96(m、6H)、1.29(m、4H)、1.96(m、4H)、2.55(m、8H)、2.62(m、4H)、6.7(m、2H)、6.91(m、2H)、7.08(s、1H)、7.18(m、4H)、7.28(m、4H)、7.55(m、4H)、7.78(d、3JHH=8.8Hz、2H)、9.48(s、1H)。
【0136】
(4)化合物(3)(0.77mmol)、シアン酢酸(0.08g、0.93mmol)、ピペリジン(0.92ml、0.93mmol)をアセトニトリル(20ml)に溶解し、窒素雰囲気下で4時間還流させた後、メチレンクロライド(塩化メチレン)及び水を使用して有機層を抽出し、溶媒を留去し濃縮し、カラム精製して化合物161を得た。(eluent.EA:EtOH=10:1))1H NMR(DMSO):[ppm]=0.96(m、6H)、1.29(m、4H)、1.44(s、12H)、1.96(m、4H)、2.55(m、8H)、2.62(m、4H)、6.7(m、2H)、6.91(m、2H)、6.96(s、1H)、7.08(s、1H)、7.20(m、4H)、7.28(m、4H)、7.53(m、4H)、7.82(d、3JHH=8.8Hz、2H)、11.51(s、1H)。
【0137】
実施例18:化合物162の合成
【化77】

【化78】

【0138】
(1)合成したジチエノ[2’,3’]チオフェン(7g、35.65mmol)をTHF(50ml)に溶解し、LDA 2M(39ml)を−78℃で徐々に滴加した後、1時間低温で撹拌し、塩化トリメチルスズ1M(38ml)を−78℃で徐々に滴加した後、1時間低温で撹拌し、さらに0℃で30分撹拌した。撹拌後、メチレンクロライド(塩化メチレン)及び水を使用して有機層を抽出し、蒸発(evaporation)を行って乾燥した。1H NMR(CDCl3):[ppm]=0.58(s、9H)、6.98((d、3JHH=4.8Hz、1H)、7.10(s、1H)、7.18((d、3JHH=4.8Hz、1H)。
【0139】
(2)2−トリメチル(ジチエノ[2’,3’]チオフェン−2−イル)スタンナン(0.48g、1.34mmol)、化合物(1)(1g、1.12mmol)、及びPd(PPh34(0.065g、0.056mmol)をTHF(40ml)に溶解し、窒素雰囲気下で8時間還流させた。その後メチレンクロライド(塩化メチレン)及び水を使用して有機層を抽出し、溶媒を留去し濃縮し、カラム精製した。(eluent.M.C:Hx=1:5)1H NMR(CDCl3):[ppm]=0.96(m、6H)、1.29(m、4H)、1.44(s、12H)、1.96(m、4H)、2.55(m、8H)、2.62(m、4H)、6.7(s、1H)、6.91(m、2H)、6.96(d、3JHH=4.8Hz、1H)、7.08(d、3JHH=4.8Hz、1H)、7.18(m、6H)、7.38(m、6H)、7.55(m、4H)、7.82(d、3JHH=8.8Hz、2H)。
【0140】
(3)化合物(2)(1.24g、1.2mmol)をDMF(20ml)に溶解し、オキシ塩化リン(0.13ml、1.44mmol)を0℃で徐々に滴加した後、80℃で4時間撹拌した。撹拌後、メチレンクロライド(塩化メチレン)及び水を使用して有機層を抽出し、溶媒を留去し濃縮し、カラム精製した。(eluent.M.C:Hx=1:4)1H NMR(CDCl3):[ppm]=0.96(m、6H)、1.29(m、4H)、1.44(s、12H)、1.96(m、4H)、2.55(m、8H)、2.62(m、4H)、6.7(s、1H)、6.91(m、2H)、7.08(s、1H)、7.18(m、6H)、7.38(m、6H)、7.54(m、4H)、7.78(d、3JHH=8.8Hz、2H)、9.51(s、1H)。
【0141】
(4)化合物(3)(0.8g、0.77mmol)、シアン酢酸(0.08g、0.93mmol)、ピペリジン(0.92ml、0.93mmol)をアセトニトリル(20ml)に溶解した後、窒素雰囲気下で4時間還流させた。その後メチレンクロライド(塩化メチレン)及び水を使用して有機層を抽出し、溶媒を留去し濃縮し、カラム精製して化合物162を得た。(eluent.EA:EtOH=10:1))1H NMR(DMSO):[ppm]=0.96(m、6H)、1.29(m、4H)、1.44(s、12H)、1.96(m、4H)、2.55(m、8H)、2.62(m、4H)、6.68(s、1H)、6.91(m、2H)、7.08(m、2H)、7.15(m、6H)、7.32(m、6H)、7.55(m、4H)、7.80(d、3JHH=8.8Hz、2H)、11.51(s、1H)
【0142】
実施例19:化合物160の合成
【化79】

【化80】

【0143】
2−トリメチル(ジチエノ[2’,3’]チオフェン−2−イル)スタンナン(0.48g、1.34mmol)、化合物(1)(0.76g、1.12mmol)、及びPd(PPh34(0.065g、0.056mmol)をTHF(40ml)に溶解し、前記合成方法によって合成及び精製をした。具体的な合成及び精製方法は前記実施例17の化合物161の合成方法及び精製方法を準用した。
【0144】
実施例20:化合物175の合成
【化81】

【化82】

【0145】
2−トリメチル(ジチエノ[2’,3’]チオフェン−2−イル)スタンナン(0.48g、1.34mmol)、化合物(1)(0.73g、1.12mmol)、及びPd(PPh34(0.065g、0.056mmol)をTHF(40ml)に溶解した後、前記合成方法によって合成及び精製をした。具体的な合成及び精製方法は前記実施例17の化合物161の合成方法及び精製方法を準用した。
【0146】
実施例21:染料感応太陽電池の製造
本発明による染料化合物の電流−電圧特性を評価するために、12+8μmTiO2透明層を利用して太陽電池を製造した。TiO2ペースト(ソラロニクス(Solaronix)社製、13nmペースト)をスクリーン印刷して12μm厚の第1TiO2層を形成し、光散乱のために他のペースト(CCIC社製、HWP−400)で8μm厚の第2TiO2散乱層を形成した。このTiO2二重層を40mM TiCl4溶液で処理し500℃で30分間乾燥した。処理した薄膜を60℃に冷却した後、本発明の染料化合物1〜6、8、28、95、127、142、147、148、149、150、161、及び162の各溶液(10mMのケノデオキシコール酸含有エタノール中に0.3mM染料)に含浸させた。染料を吸着したTiO2電極を、白金−対電極の間にスペーサとして高温溶融フィルム(サーリン(Surlyn;登録商標)1702、25μm厚さ)を配置し加熱して、密封したサンドイッチ電池と組み合わせた。電解質溶液としてはアセトニトリル中に0.6M 3−ヘキシル−1,2−ジメチルイミダゾリウムヨード、0.04M I2、0.025M LiI、0.05M クアニディウムチオシアネート及び0.28M tert−ブチルピリジンを溶解したものを使用した。
【0147】
実施例22:染料及び染料感応太陽電池の物性測定
前記実施例21で製造した太陽電池の物性を測定した。結果を下記表1に示す。
【表1】

【0148】
前記結果から分かるように、本発明の染料は優れたモル吸光係数、Jsc(短絡回路光電流密度)及び光電変換効率を示して太陽電池の効率を大きく向上させることができる。
【産業上利用の可能性】
【0149】
本発明のチオフェン系染料は従来の金属錯体染料に比べ、より優れたモル吸光係数、Jsc(短絡回路光電流密度)及び光電変換効率を示して太陽電池の効率を大きく向上させることができ、また高価なカラムを使用せずに精製が可能であり、染料合成コストを大幅に低減することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1で示されるチオフェン系染料:
【化1】

(式中、R1
【化2】

であり、
X、Y、及びZはそれぞれ独立して、水素原子またはC1〜30のアルキル、C1〜30のアルコキシまたはC1〜30のヘテロアルコキシを表わし;
2及びR3はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アミド、シアノ、ヒドロキシル、ニトロ、アシル、C1〜30のアルキル、C1〜30のアルコキシ、C1〜30のアルキルカルボニルまたはC6〜20のアリールを表わし、C1〜30のアルコキシである場合、これらは互いに結合して酸素含有ヘテロ環を形成することができ;
Ar1はC1〜50のアルキル、アルコキシ、ハロゲン原子、アミド、シアノ、ヒドロキシル、ニトロ、アシル、C6〜50のアリールまたはヘテロアリール基で置換されていてもよいC1〜50のアルキル、アルコキシ、C6〜50のアリールまたはヘテロアリールを表わし;
nは1〜10の整数であり、nが2以上である場合、チオフェン単位中のSは、SeまたはNHであってもよい。)。
【請求項2】
式中のAr1が、
【化3】

である請求項1に記載のチオフェン系染料。
【請求項3】
前記染料が下記化合物1〜141で示される化合物のうちいずれか一つである請求項1に記載のチオフェン系染料:
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】



【請求項4】
下記化学式2の化合物をn−ブチルリチウムと反応させた後、下記化学式3の化合物と反応させることを含む請求項1記載の化学式1で示されるチオフェン系染料の製造方法:
【化20】

【化21】

(化学式2及び3中、R1、R2、R3、Ar1、及びnは化学式1で定義した通りであり、H1及びH2はそれぞれ独立して、ハロゲン原子を表わす。)。
【請求項5】
下記化学式4で示されるチエノチオフェン系染料:
【化22】

(化学式4中、ArはC1〜50のアルキル、アルコキシ、ハロゲン原子、アミド、シアノ、ヒドロキシル、ニトロ、アシル、C6〜50のアリールまたはヘテロアリール基で置換されていてもよいC1〜50のアルキル、アルコキシ、C6〜50のアリールまたはヘテロアリールを表わし;
1
【化23】

を表わし;
X、Y、及びZはそれぞれ独立して、水素原子またはC1〜30のアルキル、アルコキシまたはヘテロアルコキシを表わし;
2及びR3はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アミド、シアノ、ヒドロキシル、ニトロ、アシル、C1〜30のアルキル、C1〜30のアルコキシ、C1〜30のアルキルカルボニルまたはC6〜20のアリールを表わし、C1〜30のアルコキシである場合、これらは互いに結合して酸素含有ヘテロ環を形成することができ;
nは1〜10の整数である。)。
【請求項6】
Arが、
【化24】

(式中、nが2以上の場合n個のR′はそれぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキルを表わし、nは0〜5の整数を表わし、*は結合部を表わし、各アリール、ヘテロアリール環は1以上の置換基を有し、置換基はそれぞれ独立して、C1〜30のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アミド基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アシル基、アリールまたはヘテロアリールである)である請求項5に記載のチエノチオフェン系染料。
【請求項7】
化学式4の化合物が、下記化合物142〜157で示される化合物のうちのいずれか一つである請求項5に記載のチエノチオフェン系染料:
【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【請求項8】
下記化学式5の化合物をn−ブチルリチウムと反応させた後、下記化学式6の化合物と反応させることを含む請求項5記載の化学式4で示されるチエノチオフェン系染料の製造方法:
【化29】


【化30】

(化学式5及び6中、R1、R2、R3、Ar、及びnは請求項5記載の化学式4で定義した通りであり、H1及びH2はそれぞれ独立してハロゲン原子を表わす。)。
【請求項9】
下記化学式7で示されるジチエノチオフェン系染料:
【化31】

(化学式7中、ArはC1〜50のアルキル、アルコキシ、ハロゲン原子、アミド、シアノ、ヒドロキシル、ニトロ、アシル、C6〜50のアリールまたはヘテロアリール基で置換されていてもよいC1〜50のアルキル、アルコキシ、C6〜50のアリールまたはヘテロアリールを表わし;
1
【化32】

を表わし、
X及びYはそれぞれ独立して水素原子またはC1〜30のアルキル、C1〜30のアルコキシまたはC1〜30のヘテロアルコキシを表わし;
2及びR3はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アミド、シアノ、ヒドロキシル、ニトロ、アシル、C1〜30のアルキル、C1〜30のアルコキシ、C1〜30のアルキルカルボニルまたはC6〜20のアリールを表わし、C1〜30のアルコキシである場合にこれらは互いに結合して酸素含有ヘテロ環を形成することができ;
nは1〜10の整数である。)。
【請求項10】
化学式7中、Arが、
【化33】

(式中、nが2以上の場合n個のR′はそれぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキルを表わし、nは0〜5の整数を表わし、*は結合部を表わし、各アリール、ヘテロアリール環は1以上の置換基を有し、置換基はそれぞれ独立して、C1〜30のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アミド基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アシル基、アリールまたはヘテロアリールである)である請求項9に記載のジチエノチオフェン系染料。
【請求項11】
化学式7で示される染料が下記の化合物158〜180で示される化合物のうちの一つである請求項9に記載のジチエノチオフェン系染料:
【化34】

【化35】

【化36】

【化37】


【請求項12】
(1)下記化学式8の化合物を下記化学式9の化合物と鈴木カップリング反応させて、下記化学式10の化合物を製造し、
(2)化学式10の化合物をジメチルホルムアミド中でPOCl3と反応させて、下記化学式11の化合物を製造し、
(3)化学式11の化合物をCH3CN中でピペリジンの存在下シアノ酢酸または下記の化学式12の化合物と反応させることを含む請求項9の化学式7で示されるジチエノチオフェン系染料の製造方法:
【化38】

(式中、X、Y、R2、R3、及びArは前記請求項9の化学式7で定義した通りである。)。
【請求項13】
請求項1、5または9に記載の染料を担持させた酸化物半導体微粒子を含むことを特徴とする染料増感光電変換素子。
【請求項14】
包接化合物の存在下で、酸化物半導体微粒子にチオフェン系染料を担持させる請求項13に記載の染料増感光電変換素子。
【請求項15】
酸化物半導体微粒子が、二酸化チタンを必須成分として含む請求項13に記載の染料増感光電変換素子。
【請求項16】
酸化物半導体微粒子の平均粒径が1〜500nmである請求項13に記載の染料増感光電変換素子。
【請求項17】
請求項13記載の染料増感光電変換素子を電極として含むことを特徴とする染料感応太陽電池。
【請求項18】
導電性透明基板上に酸化チタンペーストをコーティングする工程、ペーストをコーティングした基板を焼成して酸化チタン層を形成する工程、酸化チタン層を形成した基板を化学式1、4または7で示される染料が溶解した溶液に含浸させて染料を担持した酸化チタン薄膜電極を形成する工程、酸化チタン薄膜電極上部に対電極を形成した第2のガラス基板を備える工程、第2ガラス基板及び対電極を貫通するホールを形成する工程、前記対電極及び前記染料を担持した酸化チタン薄膜電極間に熱可塑性高分子薄膜を配置し、加熱及び加圧することにより対電極及び酸化チタン薄膜電極を接合する工程、前記ホールを通して対電極と酸化チタン薄膜電極の間の熱可塑性高分子薄膜に電解質を注入する工程、及び前記熱可塑性高分子を密封する工程により製造される請求項17に記載の染料感応太陽電池。

【公表番号】特表2011−500882(P2011−500882A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528816(P2010−528816)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【国際出願番号】PCT/KR2008/006056
【国際公開番号】WO2009/051390
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(500013751)東進セミケム株式会社 (72)
【氏名又は名称原語表記】Dongjin Semichem Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】472−2 Gajwa−dong,Seo−ku,Incheon−city 404−250,Korea
【Fターム(参考)】