説明

新規なベキサロテンアナログ

本発明は、ベキサロテンのアナログおよびその使用法に関する。本発明において、化合物がRXRに効率的に結合する能力に必須のコア構造を有する種々のベキサロテンアナログが記載される。本発明の化合物によって処置される疾患としては、癌、脂質異常症、高脂血症、高コレステロール血症、アテローム硬化症、アテローム発生、高トリグリセリド血症、心不全、心筋梗塞、血管疾患、心血管疾患、高血圧症、肥満、炎症、関節炎、癌、アルツハイマー病、皮膚障害、呼吸器疾患、眼障害、IBD(過敏性腸疾患)、潰瘍性大腸炎およびクローン病が挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、ベキサロテンアナログである新たな化合物、上記化合物を含む組成物、およびこのような組成物の使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
レチノイドには、2つのタイプがあり、それは、すべての生きている生物において天然に生成されるものおよび合成レチノイドとして公知のものである。天然レチノイドは、ビタミンAもしくはカロチノイドのいずかとして、すべての生きている生物において見いだされる(6(非特許文献1))。レチノイドのこれら2つのタイプは、多くの生物学的プロセス(例えば、視覚、細胞増殖および分化、ならびに生殖)に必須である(6(非特許文献1))。イソトレチノイン、エトレチネート、およびベキサロテンのような合成レチノイドはすべて、特定のタイプの皮膚疾患を有する人々を処置するために使用されている(3(非特許文献2))。
【0003】
天然レチノイド(例えば、レチノール(ビタミンA))は、レチナールアルデヒドに合成され、次いで、2つの酸化工程を介してオールtransレチノイン酸へと合成される(2,7)。第1の酸化工程は、アルコールデヒドロゲナーゼおよび短鎖デヒドロゲナーゼ酵素によって、レチノールをレチナールアルデヒドに合成することを包含する。第2の工程は、レチナールアルデヒドを、3種のレチナールデヒドロゲナーゼ酵素を介してオールtransレチノイン酸にすることを包含する(2,7)。これらオールtransレチノイン酸は、シトクロームP 450酵素(Cyp 26)によって、ヒドロキシル化代謝産物へと変換される。この代謝産物は、発生中のマウス胚において重要である。なぜなら、それは、オールtransレチノイン酸への不適切な曝露から組織を保護するからである(2,7)。
【0004】
合成レチノイドは、レチノール(ビタミンA)に由来する(4)。合成レチノイドにはいくつかの種類があるが、各々は、身体において特異的な機能を発揮するようにされた(4)。合成レチノイドは、特定の天然レチノイドの作用を摸倣するために生成された。これは、上記天然レチノイドが、どれも重篤な副作用もしくは異なる輸送機構を有したことが原因で、行われた。例えば、多量の天然レチノイドが食事の間に摂取される場合、それは、非常に毒性であり得る(4)。
【0005】
天然レチノイドおよび合成レチノイドの機構は、2つのタイプの核レチノイドレセプターを必要とする;レチノイン酸(RA)レセプターおよびレチノイドXレセプター。両方のレセプターは、3種の遺伝子(α、β、およびγ)によってコードされる。これら遺伝子から、複数のレセプターアイソフォームが生成され得る(1)。RARは、tRAおよび9−cis−RAを結合して、これらによって活性化されるのに対して、RXRは、9−cis−RAと相互作用するのみである。これらレセプターは、RAR−RXRヘテロダイマーもしくはホモダイマーとして特定のDNA配列もしくはRA応答性エレメントに結合することによって、または他の転写因子と相互作用することによって、レチノイドシグナルを媒介する(1)。上記RXRは、DNAへの上記RARの有効な結合を可能にするために重要であるのみならず、異なるホルモンもしくはビタミン誘導体と一緒に働く他のレセプターへのDNA結合をも増大させる。従って、上記RXRは、核における種々のホルモンシグナルを媒介するにおいて極めて重要な役割を果たす(1)。
【0006】
ベキサロテン(Targretin(登録商標))は、皮膚T細胞リンパ腫を処置するために使用され、そして他のタイプの癌を処置するために適応外の薬物である。ベキサロテンは、レチノイドXレセプターに対して特異的な親和性を有する合成レチノイドアナログである(6(非特許文献1))。ベキサロテンは、現在、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)の処置において有効なFDA承認の薬物であり、乳癌、肺癌、結腸がん、および制御されない細胞増殖の他の疾患の処置に関して調査されている。なぜなら、RXRの活性化およびRXRにより調節される遺伝子の「アップレギュレーション」(もしくは発現)は、これら状態における細胞増殖を遅らせるかもしくは阻止することによる治療効果を有すると思われるからである。ベキサロテンおよびそのアナログのうちの1つはまた、マウスモデルにおける非インスリン依存性糖尿病(NIDDM)の考えられる処置として調査されてきた。RARに対するRXRの、ベキサロテンによる特異的活性化にも関わらず、ベキサロテンの使用には3つの欠点がある。これら欠点は、甲状腺機能低下症(なぜなら、リガンド活性化RXR39による上記TRレセプターの意図しない拮抗作用があり得るからである)、高脂血症、および投与濃度での残余のRARアゴニズム(agonism)の考えられる結果として皮膚毒性を含む。ベキサロテンが、心臓におけるピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ(PDK4)の発現を調節するという証拠もまた存在する。従って、ベキサロテンが細胞増殖を阻害するという治療効果および種々の癌の処置が、甲状腺機能低下症という付随した有害な影響なく実現され得るように、RXRホモダイマーに対してのみ特異的であるベキサロテンのアナログを調製することは必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Shibakura, M., Koyama, T., Saito, T., Shudo, K., Miyasaka, N., Kamiyama, R. and Shinsaku Hirosawa、Blood.(1997)Vol. 90 (4)1545〜1551
【非特許文献2】Heller, E.H. & Shiffman, N.J.、Synthetic retinoids in dermatology. Canadian Medical Association Journal.(1985)Vol. 132(10)1129〜1136
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、新たなベキサロテンアナログ、上記アナログを調製するための方法、および上記アナログを治療実施形態において使用するための方法に関する。上記アナログは、以前に報告されたアナログと比較して、毒性プロフィールが低下したことを除いて、上記アナログのRXRアゴニスト特性を最適化するように選択された構造上の特徴を有する。
【0009】
本発明の特に好ましいアナログは、以下の構造:
【0010】
【化1】

を有し、ここで位置RおよびRの各々における置換基は、以下である:
【0011】
【表1】

より具体的には、本発明のアナログの好ましい例は、式2の化合物であり、ここで、Rは、Fであり、R2は、Hである(すなわち、上記表の化合物9)。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、ヒト結腸癌細胞における哺乳動物ツーハイブリッドスクリーニングアッセイを介した潜在的RXRアゴニストの同定を示す。
【図2】図2は、ヒト結腸癌細胞におけるRXRE−ルシフェラーゼレポーターベースのスクリーニングアッセイを介した潜在的RXRアゴニストの同定を示す。
【図3】図3は、ヒトRXRαリガンド結合ドメインに対するドッキング研究から推定される場合の、化合物1−15、17−18の結合自由エネルギーを示す。各リガンドについて、20の最良の解が示され、平均および標準偏差が、赤紫色の棒で示される。結合すると予測される(されない)リガンドは、(赤色)緑色で示される;結合の適切な基準として、本発明者らは、ベキサロテンの計算された結合自由エネルギーを上回る1kcal/molという値を使用した。
【図4】図4は、9(A)および12(B)のドッキングした構造を示す:両方の場合において、上記ドッキングしたベキサロテン構造も、同様に示される。
【図5】図5は、CTCL細胞における乳酸デヒドロゲナーゼベースのアッセイを利用した細胞傷害性について、ベキサロテンおよび選択されたアナログの評価を示す。
【図6】図6は、CTCL細胞におけるカスパーゼ3/7アッセイを利用したアポトーシス活性について、ベキサロテンおよび選択されたアナログの評価を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(発明の詳細な説明)
本願において、細胞増殖を阻害する種々のベキサロテンアナログが提供される。このようなアナログを作製するための方法および組成物、ならびに治療的組成物におけるそれらの使用が、本明細書に記載される。
【0014】
ベキサロテン(商業的には、Targretin(登録商標)として公知)は、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)の処置について適用される化学療法剤である。それは、もっとも頻繁には、少なくとも1種の以前の全身治療に対して抵抗性であった患者に処方される。ベキサロテンは、上記核レチノイドXレセプターに高い親和性で結合し、ホモダイマー化を誘導することによって働く。しかし、ベキサロテンは、RXRに特異的に結合し、RXRは、他の核レセプター(すなわち、RAR、VDR、TR)のヘテロダイマーパートナーとして必要とされるので、Targretinに関する1つの禁忌は、これらの他のRXRを要する経路を調節不全にするその能力である。より具体的には、ベキサロテンは、標的細胞の核に入ると、すべてのレチノイドXレセプター(ヘテロダイマー化において活性なものを含む)を認識して結合する。従って、ベキサロテンがヘテロダイマーの一部としてRXRに結合する場合、それは、上記ヘテロダイマーを解離させ得、その主なレセプターの機能喪失を生じさせ得、このことは、この薬物療法で処置された患者において有害な副作用をもたらす。
【0015】
本発明において、上記化合物がRXRに効率的に結合する能力に必須のコア構造を有する種々のベキサロテンアナログが記載される。本明細書で合成される特定の例示的化合物は、以下の式:
【0016】
【化2】

を有する。
【0017】
上記式において、R〜Rのうちのいずれかは、水素、C1−6アルキル、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、チオール、ハロゲン、C(R、COH、CO1−6アルキル、SOH、NH、NHC1−6アルキルもしくはN(C1−6アルキル)から独立して選択されるが、ただし、R〜Rのうちの少なくとも1個は、COHである。ハロゲンによって、Fl、Br、ClもしくはIが意味される。位置R〜Rにおいて1個より多くのハロゲン部分が存在する場合、上記ハロゲン部分は、すべて同じであってもよいし、異なっていてもよい。式1の化合物の具体例は、位置R、R、R3、の各々において以下の置換基:
【0018】
【表2】

を有する式1の化合物である。
【0019】
さらに他の実施形態において、本発明の好ましい化合物は、式2の一般式:
【0020】
【化3】

を有する。
【0021】
上記式において、R〜Rのうちのいずれかは、水素、C1−6アルキル、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、チオール、ハロゲン、C(R、COH、CO1−6アルキル、SOH、NH、NHC1−6アルキルもしくはN(C1−6アルキル)から独立して選択される。ハロゲンによって、Fl、Br、Cl、もしくはIが意味される。位置R〜Rにおいて1個より多いハロゲン部分が存在する場合、上記ハロゲン部分は、すべて同じであってもよいし、異なっていてもよい。式2の化合物の具体例は、位置RおよびRの各々において以下の置換基:
【0022】
【表3】

を有する式2の化合物である。
さらに他の実施形態において、本発明の好ましい化合物は、上記R部分のうちの各々がハロゲンである式3の一般式:
【0023】
【化4】

を有する。
【0024】
具体的な例示的実施形態において、式3の化合物は、各RがFである化合物13;各RがClである化合物14、および各RがBrである化合物14によって例示される。
【0025】
さらに他の実施形態において、本発明の好ましい化合物は、式4の一般式:
【0026】
【化5】

を有し、
ここでXおよびZは、−CH−、−N−、−S−、もしくは−O−から各々独立して選択される。具体的な好ましい実施形態において、XおよびZの各々は、CHであり、他の実施形態において、XおよびZの各々は、Nであり、さらに他の実施形態において、Zは、CHもしくはNのいずれかであり、Xは、CHもしくはNのいずれかであるが、ただしZがCHである場合は、XがNであり、そしてZがNである場合は、XがCHである。前述の例示的実施形態のうちのいずれかにおいて、Yは、B(OH)もしくはCOHのいずれかである。式4の例示的な化合物は、XおよびZがともにCHであり、YがB(OH)である化合物16、ならびにXおよびZがともにNであり、YがCOHである化合物17である。
【0027】
さらに他の実施形態において、本発明の好ましい化合物は、式5の一般式:
【0028】
【化6】

を有し、ここでXはCHでありかつYはNであるか、またはXがNでありかつYはCHである。
【0029】
最初のモデリングおよび本発明者らの予備モデリング、ならびに下で示される新規な化合物1〜3および化合物8−9の生物学的アッセイ結果から、ベキサロテンにおけるカルボン酸基の位置においてそれが存在することは、ベキサロテンアナログがRXRに効率的に結合する能力に必須であることが示された。従って、化合物1および化合物2は、RXRには効率的に結合しなかった。化合物3および化合物8は、RXRに結合したが、ベキサロテンより低い親和性を有したのに対して、化合物9は、ベキサロテンよりわずかに大きな親和性を示した。分子モデリングから、化合物4および化合物5におけるカルボン酸基を元に戻すことは、RXRに対する結合親和性を元に戻し、さらに、化合物6および化合物7(カルボン酸基の近位にフッ素原子を有する)は、8および9と同様にRXRに結合することが示唆される。化合物10−15は、当業者が上記カルボン酸の近位にあるハロゲン原子のバリエーションを体系的に評価することを可能にする。化合物16および化合物17は、新規なモチーフを代表し、RXRに結合し得る。最後に、化合物18は興味深い。なぜなら、これは、LGD100268の報告されていない異性体であり、モデリングから、それが高い親和性リガンドであることが示唆されるからである。これら新たな化合物の各々は、ベキサロテンより低いかもしくは大きいRXRアゴニスト活性を示す予備化合物の2つのクラスのうちの1つと関連し得る、RXR選択的アゴニストの一般的クラスに入る。
【0030】
本発明の特に好ましい化合物は、ハロゲン化されていることが見いだされた。従って、本明細書に記載される好ましい化合物の一例は、RがFでありかつRがHである式2の化合物:
【0031】
【化7】

である。
【0032】
獣医学目的および医療目的で動物およびヒトにおける使用について、本発明のアナログは、塩として調製され得る。このような塩は、好ましくは、非毒性の「薬学的に受容可能な塩」である。しかし、他の塩は、本発明のベキサロテンアナログもしくはその薬学的に受容可能な塩の調製において有用であり得る。代表的な有機酸もしくは無機酸としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、過塩素酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、シュウ酸、パモ酸、2−ナフタレンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、サリチル酸、サッカリン酸もしくはトリフルオロ酢酸が挙げられるが、これらに限定されない。代表的な塩基性塩/カチオン塩としては、ベンザチン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン、プロカイン、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、もしくは亜鉛が挙げられるが、これらに限定されない。本発明のベキサロテンアナログもしくはその薬学的に受容可能な塩としては、その分子内塩、またはその溶媒和物もしくは水和物が挙げられ得る。
【0033】
本発明のベキサロテンアナログは、ベキサロテンもしくは他のRXRアゴニストが使用される任意の適応症のための治療剤として使用され得る。例えば、開示される本発明のベキサロテンアナログ、上記アナログを含む組成物、およびこのような組成物と他の治療剤との組み合わせは、過剰増殖障害の処置のための方法において使用される。具体的実施形態において、このような本発明のベキサロテンアナログは、過剰増殖障害の処置において特に有用である。例えば、上記過剰増殖障害は、癌である。RXRアゴニストに応答する任意の癌は、本明細書で記載されるアナログによって処置され得る。単に例示では、上記癌は、乳癌、。呼吸器系の癌、脳の癌、生殖器の癌、消化管の癌、尿路の癌、眼の癌、肝臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、および/もしくはそれらの遠隔転移であり得る。例えば、本明細書に記載されるベキサロテンアナログは、癌(例えば、リンパ腫、肉腫、もしくは白血病)を処置するにおいて有用である。本明細書に記載される化合物によって処置される乳癌は、侵襲性の腺管癌、侵襲性の小葉癌、非浸潤性乳管癌(ductal carcinoma in situ)、もしくは上皮内小葉癌であり得る。呼吸器系の癌(例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、気管支腺腫もしくは胸膜肺芽腫)はまた、本明細書に記載される化合物によって処置され得、同様に脳の癌(例えば、脳幹の腫瘍、視床下部グリオーマ(hypophtalmic glioma)、小脳星細胞腫、大脳星細胞腫、髄芽腫、上衣腫、神経外胚葉性腫瘍もしくは松果体腫瘍)も本明細書に記載される化合物によって処置され得る。上記化合物はまた、前立腺癌もしくは精巣癌である男性生殖器の腫瘍または子宮内膜、子宮頚部、卵巣、膣、外陰部、もそくは子宮の肉腫である女性生殖器の癌の処置において使用され得る。消化管の癌(例えば、肛門癌、結腸癌、結腸直腸癌、食道癌、胆嚢癌、胃癌、膵臓癌、直腸癌、小腸癌もしくは唾液腺癌)はまた、本明細書に記載されるアナログによって処置され得る。上記処置されるべき癌はまた、尿路の癌(例えば、膀胱、陰茎、腎臓、腎盂、尿管もしくは尿道の癌)であり得る。眼の癌(例えば、眼内黒色腫もしくは網膜芽腫)はまた、本発明のアナログによって処置され得る。肝臓癌(例えば、肝細胞癌、線維層板型を伴うかもしくは伴わない肝細胞癌腫、胆管癌または混合型幹細胞腺管癌(mixed hepatocellular cholangiocarcinoma))も、処置され得る。皮膚癌(例えば、扁平上皮癌、カポージ肉腫、悪性黒色腫、メルケル細胞皮膚癌もしくは非黒色腫皮膚癌)が、本明細書に記載される化合物で処置され得る。頭頸部癌(例えば、喉頭癌、下咽頭癌、鼻咽腔癌、口腔咽頭癌、口唇癌もしくは口腔癌)はまた、本発明の化合物で処置され得る。上記化合物は、AIDS、AIDS関連リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキン病もしくは中枢神経系のリンパ腫、軟組織の肉腫、骨肉腫、悪性線維性組織球腫、リンパ肉腫もしくは横紋筋肉腫を処置するために使用され得る。白血病(例えば、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病もしくはヘアリーセル白血病)は、本発明の化合物を使用して処置され得る。これら癌の各々は、本発明のアナログ化合物単独での処置、または他の化学療法剤もしくは抗癌治療と組み合わせた本発明の化合物での処置から利益を受け得る。
【0034】
他の実施形態において、本発明のベキサロテンアナログは、RXRの調節に関わる、および特に、RXRのアゴニズムに関わる他の障害を処置するために使用され得る。このような他の障害は、代表的には、ベキサロテンによって処置可能であるものであり、これら障害としては、例えば、脂質異常症(dyslipidemia)、高脂血症、高コレステロール血症、アテローム硬化症、アテローム発生、高トリグリセリド血症、心不全、心筋梗塞、血管疾患、心血管疾患、高血圧症、肥満、炎症、関節炎、癌、アルツハイマー病、皮膚障害、呼吸器疾患、眼障害、IBD(過敏性腸疾患)、潰瘍性大腸炎およびクローン病などが挙げられる。治療法において、本発明のベキサロテンアナログは、任意の従来の投与経路(静脈内投与、経口投与、皮下投与、眼内投与、筋肉内投与、皮内投与および非経口投与が挙げられるが、これらに限定されない)によって患者に投与され得る。好ましくは、処方物は、経口投与のためである。
【0035】
本発明はまた、本発明のアナログのうちの1つおよび1種以上の他のRXRモジュレーターもしくは他の治療剤を、薬学的に受容可能なキャリアと関連して含む薬学的組成物を提供する。
【0036】
上記生成物の一日投与量は、1日に成人ヒト1人あたり1〜1000mgの広い範囲にわたって変動し得る。経口投与に関しては、上記組成物は、好ましくは、処置されるべき患者への上記投与量の症候的調節のために、上記活性成分の0.01mg、0.05mg、0.1mg、0.5mg、1.0mg、2.5mg、5.0mg、10.0mg、15.0mg、25.0mg、50.0mg、100mg、150mg、200mg、250mgもしくは500mgを含む錠剤の形態で提供される。本発明のアナログは、1日に1〜2回のレジメンで投与され得る。しかし、上記投与量は、上記患者の要求、処置されている状態の重篤度、および使用されている化合物に依存して変動し得る。1日の投与もしくは周期的投与後の投与(post−periodic dosing)のいずれかの使用が、使用され得る。好ましくは、本発明のアナログを含むこれら組成物は、経口投与、非経口投与、鼻内投与、舌下投与もしくは直腸投与のために、または吸入(inhalation or insufflation)による投与のために、単位投与形態(例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、滅菌非経口溶液もしくは懸濁物、定量エアロゾルもしくは液体スプレー、滴剤、アンプル、自己注射器デバイスもしくは坐剤で存在する。あるいは、上記組成物は、1週間に1回もしくは1ヶ月に1回の投与に適した形態;例えば、上記活性化合物の不溶性塩(例えば、デカノエート塩)で提示され得、筋肉内注射用のデポー調製物を提供するように適合され得る。錠剤のような固体組成物を調製するために、主な活性成分が、薬学的キャリア(例えば、従来の錠剤形成成分(例えば、コーンスターチ、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウムもしくはゴム)、および他の薬学的希釈剤(例えば、水)と混合されて、固体の予備処方組成物(preformulation comosition)(本発明の1種以上のアナログもしくはその薬学的に受容可能な塩の均質な混合物を含む)を形成する。これら予備処方組成物を均質という場合、上記組成物が等しく有効な投与形態(例えば、錠剤、丸剤およびカプセル剤)へと容易にさらに分割され得るように、上記組成物全体を通じて均一に上記活性成分が分散していることを意味する。次いで、この固体の予備処方組成物は、0.1〜約500mgの本発明の活性成分を含む上記のタイプの単位投与形態へとさらに分割される。本発明のアナログの錠剤もしくは丸剤は、コーティングされ得るか、または別の方法で化合されて、徐放もしくは長期作用の利点を与える投与形態を提供し得る。例えば、上記錠剤もしくは丸剤は、内部投与成分および外部投与成分を含み得、後者は、前者を覆うエンベロープの形態にある。上記2つの成分は、胃の中での分解に耐えるように作用する腸溶性の層によって分離され得、上記内部成分を十二指腸へとインタクトなまま通過して、放出を遅らせることを可能にする。種々の材料が、このような腸溶性の層もしくはコーティングのために使用され得る。このような材料としては、シェラック、セチルアルコールおよび酢酸セルロースのような材料とともに、多くのポリマー状の酸が挙げられる。
【0037】
他の実施形態において、本発明のアナログは、本発明のアナログが、経口投与もしくは注射による投与のために組み込まれ得る液体形態(水溶液、適切に矯味矯臭されたシロップ剤、水性もしくは油性の懸濁物、および食用油(例えば、綿実油、ごま油、ヤシ油もしくはラッカセイ油)とともに矯味矯臭されたエマルジョン、ならびにエリキシル剤および類似の薬学的ビヒクルが挙げられる)で提供され得る。水性懸濁物に適切な分散剤もしくは懸濁剤としては、合成および天然のゴム(例えば、トラガカント、アカシア、アルギネート、デキストラン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリビニル−ピロリドンもしくはゼラチン)が挙げられる。適切に矯味矯臭された懸濁剤もしくは分散剤における液体形態はまた、上記合成および天然のゴム(例えば、トラガカント、アカシア、メチルセルロースなど)を含み得る。
【0038】
非経口投与に関しては、無菌の懸濁物および溶液が望ましい。一般に適切な保存剤を含む等張性の調製物は、静脈内投与が望ましい場合に使用される。
【0039】
本発明のアナログもしくはその薬学的に受容可能な塩を含む上記組成物は、単一の一日用量において投与されてもよいし、合計の一日投与量が、1日に2回、3回もしくは4回の分割用量において投与されてもよい。
【0040】
錠剤もしくはカプセル剤の形態での経口投与のために、上記活性薬物成分は、経口用の非毒性の薬学的に受容可能な不活性キャリア(例えば、エタノール、グリセロール、水など)と合わされ得る。さらに、所望もしくは必要であれば、適切な結合剤;滑沢剤、崩壊剤および着色剤はまた、上記混合物中に組み込まれ得る。適切な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、天然の糖(例えば、グルコースもしくはβ−ラクトース)、トウモロコシ甘味料、天然および合成のゴム(例えば、アカシア、トラガカント)、もしくはオレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなど)が挙げられるが、これらに限定されない。崩壊剤としては、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンゴムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
本発明のアナログが併用治療の一部として投与される実施形態において、本発明のアナログは、第2の治療剤と同時に、逐次的に、もしくは単一の薬学的組成物中で、共投与(co−administer)され得る。上記化合物が別個に投与される場合、1日あたりに与えられる各化合物の投与の数は、必ずしも同じでなくてもよく、例えば、1種の化合物が活性のより長い持続期間を有し得る場合、それは、より少ない頻度で投与される。
【0042】
本発明のアナログを含む組成物との併用治療において使用され得る例示的な化学療法剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ベキサロテン、シクロホスファミド、メクロレタミン、メルファラン、クロラムブシル、ヘキサメチルメラミン(heamethylmelamine)、チオテパ、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、メトトレキサート、フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、6−メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、エトポシド、エトポシドオルトキノン、およびテニポシド、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ミトキサントロン、ビサントレン(bisanthrene)、アクチノマイシンD、プリカマイシン、ピューロマイシン、およびグラミシジンD、パクリタキセル、コルヒチン、サイトカラシンB、エメチン、メイタンシン、およびアムサクリン、アミノグルテチミド(aminglutethimide)、シスプラチン、カルボプラチン、マイトマイシン、アルトレタミン、シクロホスファミド、ロムスチン(CCNU)、カルムスチン(BCNU)、イリノテカン(CPT−11)、アレムツズマブ、アルトレタミン、アナストロゾール、L−アスパラギナーゼ、アザシチジン、ベバシズマブ、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブスルファン、カルステロン、カペシタビン、セレコキシブ、セツキシマブ、クラドリビン、クロファラビン(clofurabine)、シタラビン、ダカルバジン、デニロイキン・ジフチトクス、ジエチルスチルベストロール(diethlstilbestrol)、ドセタキセル、ドロモスタノロン、エピルビシン、エルロチニブ、エストラムスチン、エトポシド、エチニルエストラジオール、エキセメスタン、フルクスウリジン、5−フルオロウラシル、フルダラビン、フルタミド、フルベストラント、ゲフィニチブ、ゲムシタビン、ゴセレリン、ヒドロキシウレア、イブリツモマブ、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、インターフェロンα(2a,2b)、イリノテカン、レトロゾール、ロイコボリン、ロイブロリド、レバミゾール、メクロレタミン、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、メトキサレン、マイトマイシンC、ミトータン、ミトキサントロン、ナンドロロン、ノフェツモマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、ペメトレキセド、ペガデマーゼ、ぺガスパラガーゼ(pegasparagase)、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、ポリフェプロザン、ポルフィマー、プロカルバジン、キナクリン、リツキシマブ、サルグラモスチム、ストレプトゾシン、タモキシフェン、テモゾロミド、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、トポテカン(topetecan)、トレミフェン、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレチノイン、ウラシルマスタード、バルルビシン、ビノレルビン、およびゾレドロネート。これは例示的なリストに過ぎず、当業者は、本発明のアナログ(これは、ベキサロテンによって処置され得る任意の障害を処置するために適切な治療剤である)が、ベキサロテン(Targretin(登録商標)として商業的に入手可能)によって処置可能な障害を処置するために使用されるすべての治療剤と組み合わせられ得ることを理解する。
【0043】
代謝障害(例えば、脂質異常症、高脂血症、高コレステロール血症、アテローム硬化症、アテローム発生、高トリグリセリド血症、心不全、心筋梗塞、血管疾患、心血管疾患、高血圧症、肥満、炎症、関節炎、癌、アルツハイマー病、皮膚障害、呼吸器疾患、眼障害、IBD(過敏性腸疾患)、潰瘍性大腸炎およびクローン病)の処置において使用され得る他の治療剤は、本発明のベキサロテンアナログと組み合わされ得る。このような治療剤としては、以下が挙げられる:エストロゲン、テストステロン、選択的エストロゲンレセプターモジュレーター、選択的アンドロゲンレセプターモジュレーター、インスリン、インスリン誘導体および摸倣物;インスリン分泌促進薬(例えば、スルホニルウレア(例えば、グリピジドおよびアマリール));インスリン分泌性(insulinotropic)スルホニルウレアレセプターリガンド(例えば、メグリチニド(例えば、ナテグリニドおよびレパグリニド));インスリン感作物質(例えば、プロテインチロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)インヒビター)、GSK3(グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3)インヒビターもしくはRXRリガンド;ビグアニド(例えば、メトホルミン);α−グルコシダーゼインヒビター(例えば、アカルボース);GLP−1(グルカゴン様ペプチド−1)、GLP−1アナログ(例えば、エキセンジン−4)、およびGLP−1摸倣物;DPPIV(ジペプチジルペプチダーゼIV)インヒビター(例えば、イソロイシン−チアゾリジド);DPP728およびLAF237、抗高脂血症薬(例えば、3−ヒドロキシ−3−メチル−グルタリルコエンザイムA(HMG−CoA)レダクターゼインヒビター(例えば、ロバスタチン、ピタバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、メバスタチン、ベロスタチン、フルバスタチン、ダルバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチン、フルインドスタチンおよびリバスタチン))、スクアレンシンターゼインヒビターもしくはFXR(肝臓Xレセプター)ならびにLXR(ファルネソイドXレセプター)リガンド、コレスチラミン、フィブラート、ニコチン酸およびアスピリン。本発明のベキサロテンアナログは、他の活性成分と同時に、その前もしくは後のいずれかで、同じ投与経路もしくは異なる投与経路のいずれかによって別個に、または同じ薬学的処方物中で一緒に投与され得る。
【0044】
投与されるべき最適な投与量は、場合ごとに決定される可能性が高く、当業者によって容易に決定される。このような投与は、代表的には、使用される特定の化合物、調製物の強度、投与様式、および上記疾患状態の進行とともに変動する。さらに、処置される特定の患者と関連する因子(患者の年齢、体重、食餌および投与時間が挙げられる)は、投与量を調節する必要性を生じる。
【0045】
本発明のアナログおよびその薬学的に受容可能な塩はまた、リポソーム送達系(例えば、小さな単層(unilamellar)小胞、大きな単層小胞、および多層(multilamellar)小胞)の形態で投与され得る。リポソームは、種々の脂質(両親媒性脂質(例えば、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、カルジオリピン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトール、ジアシルトリメチルアンモニウムプロパン、ジアシルジメチルアンモニウムプロパン、およびステアリルアミン)、中性脂質(例えば、トリグリセリド)、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない)から形成され得る。
【0046】
薬学的組み合わせキットもまた、本明細書で企図され、上記キットは、a)遊離形態もしくは薬学的に受容可能な塩形態での、本発明のベキサロテンアナログである第1の薬剤、およびb)少なくとも1種の補助薬剤(co−agent)を含む。上記キットは、その投与のための指示書を含み得る。
【実施例】
【0047】
(予備研究)
化合物1〜3を含むベキサロテンアナログの最初のアレイ、およびそれらの対応するケトン誘導体(化合物30〜32)[ならびに8、8b、9、9b、および33a]を、合成およびRXRに選択的に結合するそれらの能力の評価のために目標にした。
【0048】
【化8】

上記RXRレセプタータンパク質への最初の結合について上記合成されたアナログを効率的にスクリーニングするために、哺乳動物細胞ツーハイブリッドアッセイを開発し、使用した。ヒトRXRαの遺伝子を、GAL4のDNA結合ドメイン(RXR−BD)もしくはNF−κBの転写活性化ドメイン(RXR−AD)のいずれかを含むベクターに最初にクローニングした。次いで、ヒト結腸癌細胞(Caco−2)に、リポソーム媒介技術を介して、これら構築物(および適切なコントロール)の両方を感染させた。
【0049】
また、上記細胞に、蛍ルシフェラーゼの遺伝子の上流に上記GAL4 DNA結合部位の5個の直列コピーを含む「レポーター」ベクターを感染させた。このシステムにおいて、RXRに結合し得かつRXRホモダイマー化を誘導し得る任意の化合物は、ルシフェラーゼレポーター遺伝子の誘導を引き起こし、上記遺伝子は、次いで、標準的な市販のルシフェラーゼ酵素キット(Promega Corporation)を使用してアッセイされる。上記ベキサロテンアナログで処理した、上記トランスフェクトされたCaco−2細胞に由来する溶解物中のルシフェラーゼ活性のレベルは、ホモダイマー化のレベル、従って、Caco−2の細胞状況内でRXRに対する上記アナログの親和性の直接的な指標として働く(図1)。
【0050】
上記に示される11個の化合物を、上記哺乳動物ツーハイブリッドアッセイにおいて試験した。ケトン30が、不活性化合物として記録されたこと、そして本発明者らのモデリング研究はまた、化合物1がRXRに対する低親和性リガンドであることを示唆したという事実にも関わらず、ベキサロテンのケトン誘導体(33a)がベキサロテンより活性が一桁小さいという事実、ならびに本発明者らのモデルを検証するための機会が、化合物1の合成および評価を動機付けた。さらに、ベキサロテンアナログ2および31における第2のカルボン酸官能基の付加は、目的の候補を生じた。31の場合、その関心は、上記さらなるカルボン酸基が30において欠いていると報告された選択的結合および活性化を元に戻すか否かに関した。ニトロベキサロテンアナログ(3)およびその対応するケトン誘導体(32)を、最初の目的の2個の標的であった。なぜなら、各化合物は、ベキサロテンにおけるカルボン酸基の本来の位置を保存すると同時に、上記カルボン酸に対してオルト位にある求電子性ニトロ基を付加するからである。最後に、上記フッ化ベキサロテンアナログ8、8b、9、および9bは、目的の最重要な候補であった。なぜなら、他のRXRアゴニストへのフッ素の付加は、増大したアゴニズムを示したからである。
【0051】
上記哺乳動物ツーハイブリッドアッセイを使用するこれら最初のアナログの生物学的評価(図1)から、化合物3、8、および9が、ベキサロテンと同じ規模の活性を示すことが明らかにされた[より重要なことには、上記アナログの最初のアレイは、ある範囲の結合/転写能力を示し:3および8は、ベキサロテンとほぼ同様に結合し、転写を媒介したのに対して、化合物9は、平均して、結合して、ベキサロテンよりも良好に転写を活性化する。さらに、ケトン9bおよび33aはまた、ベキサロテンと比較して、少ない程度の結合および転写を示す。これら予備データから、上記カルボン酸位置を保護するが、上記カルボン酸を有する芳香族環の非水素原子基を置換するさらなるベキサロテンアナログを構築する動機が生じる。記載されるアプローチは、上記分子のアゴニスト特徴を微細に調節することが可能であるはずであり、このようなアナログは、RXRと、他のヘテロダイマー化核レセプターとの特有の相互作用を誘導し、それによって、所望されない副作用(いくらかの患者において観察された甲状腺機能低下症を引き起こすようである上記RXR−TR経路の拮抗作用)を弱め得る。
【0052】
RXRに結合するアゴニストに関する上記ツーハイブリッドスクリーニングに加えて、上記RXRアゴニストを、正しい生物学的に関連するDNAプラットフォーム、すなわち、上記RXRホモダイマーとインビボで特異的に会合するレチノイドXレセプター応答エレメント(RXRE)のそれらの役割に関して試験した。上記RXRE DNA配列は、内因性9−cis RAリガンドに応じて、もしくはRXRが合成レチノイドに結合される場合に、上記RXRホモダイマーにより制御される遺伝子の上流プロモーター領域に存在する。上記RXREが、潜在的なリガンドに対する上記RXRタンパク質の親和性および/もしくは選択性に影響を及ぼし得ることは、考えられる。従って、本発明の考えられるRXRアゴニストの収集のための第2のスクリーニングプロトコルとしては、天然に存在する、細胞のレチノール結合タンパク質II遺伝子に由来する二重反復応答エレメントに基づいてRXREを含むレポーター構築物とともに、野生型ヒトRXRαについての発現ベクターで、ヒトCaco−2細胞をトランスフェクトすることが挙げられる。
【0053】
上記ベキサロテンRXRアゴニストに応答性のCaco−2細胞において首尾よいRXRα/RXREレポーターシステム(図2)を開発した。そしてこれを継続して潜在的RXRリガンドの完全なパネルを試験することにおいて使用する。
【0054】
化合物1〜3、[8および9]ならびに30〜32、[8bおよび9b]の上記生物学的評価(図1および図2)において比較するために、確実なサンプルであるベキサロテンおよびそのケトンアナログ(33a)を、報告された経路に従って合成した(Boehmら,「Synthesis and Structure−Activity Relationships of Novel Retinoid X Receptor−Selective Retinoids」.J.Med.Chem.1994,37,2930−2941):7工程,29%の全体収率のベキサロテンを与えた収束的合成(convergent synthesis)。2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール(33b)から、HClによる2,5−ジクロロ−2,5−ジメチルヘキサン(34)へのSN1変換に関連したベキサロテンへの第1シーケンスの工程、およびトルエンの、その後の三塩化アルミニウム触媒性のFriedel−Craftsアルキル化から1,2,3,4−テトラヒドロ−1,1,4,4,6−ペンタメチルナフタレン(35)を2工程で68%収率において与える(スキーム1)。
【0055】
【化9】

化合物35の矩形プレートはX線回折に適していることが見いだされたので、研究を行った。ベキサロテンの合成を完了するために、粗製のモノ−メチル−テレフタロイルクロリド(36)による35のFriedel−Craftsアシル化から、ケトン(37)を得、これをWittig反応によりアルケンエステル(38)に変換、エステル38を、水酸化カリウムによって鹸化し、続いて、水性の塩酸で酸性化して、ベキサロテン(39)を得た(スキーム2)。
【0056】
【化10】

スキーム1およびスキーム2における化学工程を、アナログ1〜3を作り出すために改変した。例えば、アナログ1を、モノメチルイソフタロイルクロリド(40)による35のFriedel−Craftsアシル化によって合成して、ケトン41を得た。これを、その後、上記アルケンエステル(42)もしくは上記ケトン酸(30)へと変換した。上記アルケンエステル42を、その後、水酸化カリウムで上記カルボン酸アナログ(1)に変換し、続いて、HClで酸性化した(スキーム3)。
【0057】
【化11】

アナログ1は、X線回折に適した結晶を形成した。構造を示す。上記モノ−メチルイソフタロイルクロリドを、過剰のチオニルクロリド中で還流することによって、市販のモノ−メチルイソフタレートから調製し得る。
【0058】
類似の合成様式において、アナログ2およびアナログ31を合成した(スキーム4)。
【0059】
【化12】

化合物35は、酸クロリド(43)で上記Friedel−Craftsアシル化を受けて、ケトンジエステル(44)を46%収率で得た。上記ケトンジエステル44を、ほぼ定量的収率でアナログ31に変換したか、またはそれを、上記アルケンジエステル(45)に変換し、そこからアナログ2へと19%収率において2工程で変換した。上記酸クロリド(43)を、以下のように調製した。トリメチル−1,3,5−ベンゼントリカルボキシレート(46)を、文献の手順(Dimickら,「On the Meaning of Affinity: Cluster Glycoside Effects and Concanavalin A」 J.Am.Chem.Soc.1999,121,10286−10296)に従って、上記モノ−酸ジエステル(47)に変換し、化合物47を、過剰のチオニルクロリド中で還流して、酸クロリド43を得た(スキーム5)。
【0060】
【化13】

スキーム5の化合物47および化合物43を、アナログ2およびアナログ31の合成に使用した。
【0061】
上記カルボン酸に対してオルト位にあるニトロ基を有するアナログ3を、アナログ1およびアナログ2と同様の様式で合成した(スキーム6)。
【0062】
【化14】

再度、化合物35は、酸クロリド(48)で上記Friedel−Craftsアシル化を受けて、ケトンエステル(49)を87%収率で得た。上記ケトンエステル49を、アナログ32へと定量的収率で変換したか、またはそれを上記アルケンエステル(50)へと変換し、そこからアナログ3へと9%収率で、2工程で変換した。メチルトリフェニルホスホニウムブロミドの脱プロトン化を、Wittig反応においてナトリウムアミドで、49を50に変換しようと試みた場合、アルケン生成物は認められなかった。ニトロ−芳香族は、ナトリウムアミド(Gandi,「Reactions of Some Aromatic Nitro Compounds with Alkali Metal Amides」 J.Org.Chem.1979,44,4705−4707)およびイリド(Treynelis,「Ylide Methylation of Aromatic Nitro Compounds」 J.Org.Chem.1966,31,243−247)の両方と反応することが報告されてきたので、Wittig反応においてn−ブチルリチウムを使用することが、11%収率ではあったが、上記アルケン50をケトン49から提供したことは驚くべきことであった。上記酸クロリド(48)を、文献の手順(Keenanら,「Conformational Preferences in a Benzodiazepine Series of Potent Nonpeptide Fibrinogen Receptor Antagonists」 J.Med.Chem.1999,42,545−559)に従って、ジメチル−ニトロ−テレフタレート(48)を上記モノ酸エステル(52)に最初に変換し、次いで、化合物52を過剰のチオニルクロリド中で還流することによって調製した(スキーム7)。
【0063】
【化15】

アナログ16の提唱された合成の進行は、以下のとおりである。化合物35を、ボロン酸エステル酸クロリド(53)で首尾よくアシル化して、上記ケトンボロン酸(54)を47%収率で、水性ワークアップの後に得、54を、還流しているトルエン中での1,3−プロパンジオールでの定量的収率処理において上記ボロン酸エステル(55)に変換した(スキーム8)。
【0064】
【化16】

ケトンボロン酸エステル(55)の結晶は、X線回折に適していた。上記ボロン酸エステル酸クロリド(53)を、以下のように調製した。市販の4−カルボキシフェニルボロン酸(56)を、文献の手順(Takahasiら 「2,5−Diaryl−1,3,2−dioxaborinanes: A New Series of Liquid Crystals」 Bull.Chem.Soc.Jpn.1989,62,3896−3901)に従って96%収率でボロン酸エステル(57)に変換し、57を、過剰のチオニルクロリド中で還流して、酸クロリド(53)を得た(Parry,D.;Papon,J.;Moins,N.;Moreau,M.−F.;Morin,C. 「A Boronated Benzamide As Melanoma−Seeking Agent」 Biorg.Med.Chem.Lett.1997,7,361−364)(スキーム9)。
【0065】
【化17】

アナログ18への進行を、以下のように行った。2,5−ピリジンジカルボン酸(58)を、文献のプロトコル66に従って触媒性硫酸を含むメタノール中での2時間にわたる還流によって、上記モノ−メチルエステル(59)へと優先的にエステル化した(水からの再結晶化後に、42%回収率)。上記モノメチルエステル59を、過剰のチオニルクロリド中で還流して、上記酸クロリド(60)へのその変換をもたらし、60を使用して、過剰な三塩化アルミニウムを含むDCM中の還流によって35へとアシル化した(スキーム10)。
【0066】
【化18】

メタノールからの59の結晶は、X線回折に適していた。上記アシル化反応における上記ケトンエステル(61)の低収率は、還流から生じ得る。なぜなら、50%収率は、室温で行ったその報告された合成において、アルケンの異性体ケトン誘導体(25)について報告されたからである。
【0067】
最後に、化合物8、8b、9、および9bを、上記報告された4−(メトキシカルボニル)−2−フルオロ安息香酸(62)および4−(メトキシカルボニル)−3−フルオロ安息香酸(63)を、それぞれ、酸クロリド64および酸クロリド65に変換することによって合成した。上記酸クロリド64および65を使用して、35をアシル化し、それぞれ、ケトン66およびケトン67を得た。これらを、カルボン酸8bおよびカルボン酸9bまたはアルケン−エステル68およびアルケン−エステル69のいずれかへと変換した。上記アルケンエステル68および69を、フッ化ベキサロテンアナログ8および9へと鹸化した(スキーム11)。化合物8および9の両方は、X線回折研究に適した結晶を形成し、8および9のX線結晶構造を得た。
【0068】
【化19】

上記合成したアナログを、真核生物インビボアッセイにおいて、変異誘発性および毒性について試験した。上記インビボアッセイは、Saccharomyces cerevisiaeを試験株として利用し、復帰変異および相同組み換え修復もしくは遺伝子変換をもたらすDNA損傷を同時に検出する。上記DNAが、上記試験化合物によって変異し、その後修復される場合、上記株は、遺伝子型変化に応じて特定の表現型を示す。これら表現型は、コロニーセクター化およびドロップアウト培地(dropout media)上での増殖としてスコア付けする。これは、農薬および他の毒性物質を試験するために使用される環境保護庁承認アッセイ(Saccharomyces cerevisiaeにおける有糸分裂遺伝子変換)である。明らかに、変異原性化合物は、ヒト治療剤としての有用性は制限される。従って、これらアッセイは、これら化合物の適切性を決定することにおいて重要であった。このアッセイを使用して、化合物1〜3、30〜32、および8、9、8b、ならびに9bを試験した。上記化合物(出発化合物ベキサロテンを含む)を、変異誘発性について漸増濃度においてアッセイした。上記化合物のいずれも、変異誘発性ではなかった。
【0069】
化合物1〜3、8および9のドッキング研究(図3)から、上記哺乳動物ツーハイブリッドアッセイおよびRXREベースのアッセイによって評価される場合、予備実験的に測定された結合との合理的な一致が明らかになった(図1および図2)。上記ドッキング研究のタンパク質構造は、BMS649リガンド87との複合体においてヒトRXRαリガンド結合ドメインのX線構造から理解された;このリガンドのフレームワークは、化合物1〜18に類似している。上記リガンドのカルボン酸基と上記タンパク質との間の水素結合を可能にするために、上記ドッキング研究は、上記タンパク質の残りを剛性に保持しながら、Arg316の側鎖を十分に最適化した。上記計算から、化合物3の親和性を過大評価したとはいえ、化合物1および2が低親和性であり、化合物8および9が高親和性であると推定された。
【0070】
提唱された化合物4〜7、10〜15、17および18のドッキング研究の結果をまた、図3に示す;16のデータは、ボロン酸官能基のパラメーターがないことに起因して、欠如している。15および17を除いて、提唱される化合物は、ベキサロテンに類似もしくはこれより良好な親和性で結合すると推定される。化合物4、10〜12および18は特に重要であり、これらは、最低の自由エネルギーを有すると推測されるが、本発明者らの生物学的アッセイにおいて試験されなかった。
【0071】
上記ドッキング結果の分析から、結合における差異は、大部分は、脱溶媒和および静電エネルギーにおけるバリエーションに起因することが示され;上記ドッキングした複合体の全体的な構造は、非常に類似している。図4は、化合物9(A)および12(B)のドッキング構造を図示する;両方の場合において、最低のエネルギー構造を、ベキサロテンのドッキングされた構造で覆う。図が示すように、上記リガンドの配向および結合様式は、顕著に類似している。結合ポケットは、水素が上記リガンドのカルボキシレート基に結合するArg316残基を除いて、ほぼ完全に疎水性である。本発明者らの予備ドッキング研究から、上記提唱される化合物の結合可能性が示される。このことは、これらアナログの合成および生物学的評価を続行させる動機を提供する。
【0072】
実施例2−ベキサロテンアナログの合成
以下の実施例は、さらなる潜在的RXR選択的アゴニストの合成および精製のさらなる記載を提供する。アナログ4および5は、さらなるカルボン酸基を、RXRに結合し、アゴニストとして作用する能力に必須であるベキサロテンのカルボン酸基に対して近位(オルト位)に置くことによって、RXRのコンフォメーションを調節し得る新規なベキサロテンアナログを表す。アナログ4および5は、それぞれ、報告されたテトラエステル72に由来する、報告されたジエステル70およびトリエステル71から出発することを除いて、アナログ2と類似の様式で合成され得る。
【0073】
【化20】

市販のトリメチル−1,2,4−ベンゼントリカルボキシレートは、N,Nジメチルヒドラジンで選択的にモノ−脱メチル化(mono−demethylate)されて、ジエステル70が得られる。これは、その後、チオニルクロリドで処理されて、酸クロリド73が得られる(スキーム12)。
【0074】
【化21】

次いで、上記酸クロリド73を、化合物35のFriedel−Craftsアシル化において使用して、ケトン74を得る。これは、二酸75に変換されるか、または上記Wittig反応において使用されてアルケン76を得る。上記アルケン76は、アナログ4に変換され得る(スキーム13)。
【0075】
【化22】

トリエステル71を、上記ジエステル70に類似の様式で合成し得(スキーム12)、従って、アナログ5を、4の合成に類似の様式で構築し得る(スキーム13)。
【0076】
ベキサロテンアナログ6および7は、上記カルボン酸基への複数のフッ素原子の付加が、RXRのLBDにおける化合物9と同程度に強い結合をなお示すか否かを探るために重要である。アルギニン残基(Arg387)が、可撓性にhRXR55のLBDへと延びて(約2Å)、LG100268のカルボン酸と塩橋を形成し得るという証拠があり、従って、本発明者らは、フッ素基との水素結合相互作用がアナログ6および7において確立され得るか否かを探索するように促進される。
【0077】
【化23】

アナログ6および7が、化合物62および63の合成について類似の方法論に従って、市販の2,3−ジフルオロ−4−メチル安息香酸(79)もしくは報告された3,5−ジフルオロ−4−メチル安息香酸(80)から得られた上記ジフルオロ−モノメチルテレフタル酸77および78から合成され得ると予測される。例えば、化合物77に着手すると、本発明者らは、77を酸クロリド81に変換する。本発明者らはこれを使用して、化合物35をアシル化し、ケトン82を得る。上記ケトン化合物であるケトン82は、二酸83に変換され得るか、または上記Wittig反応は、ケトン82を上記アルケンエステル84に変換するために行われ得る。次いで、84は、アナログ6に鹸化され得る(スキーム14)。
【0078】
【化24】

アナログ7の合成が、アナログ6に類似の様式で進むことが企図される。
【0079】
アナログ10〜12は、新規なベキサロテンアナログであり、これは、異なるハロゲン原子を、上記カルボン酸基を有する芳香族環に付加するという効果の評価を可能にする。フッ素の付加は、結合の親和性を増大させると予期される。なぜなら、他のRXRアゴニスト分子へのフッ素の付加の報告が証明されたからである。アナログ10、11、および12が、それぞれ、報告された酸85、86、および87から構築されることが企図される。
【0080】
【化25】

アナログ10〜12の合成が、8および9の合成によって例示される同じ方法論(スキーム11)に従うこともまた企図され、化合物12のモデリング結果に関連するさらなる実験的観察は、これらが、高親和性で、強力に活性化するリガンドの観察に対応するかを理解するために行われる。ベキサロテンアナログ13〜15(すべての水素原子を、上記カルボン酸を有する芳香族環上のハロゲン原子で置換している)は、上記モノ−ハロゲン化アナログ8〜12に比較するために有用である。アナログ13〜15の合成が、アナログ9について記載される代表的な合成スキーム(スキーム14)に従って、モノ−メチル−テトラハロゲン化テレフタレート88、89、および90から得られた上記酸クロリドから出発することが企図される。
【0081】
【化26】

上記モノ−メチル−テトラハロゲン化テレフタレート88〜90は、上記モノアジン酸エステル(94)から利用できるはずであり、94が、上記報告されたジメチル−テトラハロゲン化−テレフタレート91、92、および93の報告された(the ported)2,5−ビス−メトキシカルボニルピラジン(95)脱メチル化から利用できるはずであると想定される。新規なベキサロテンアナログ16および17は、重要である。なぜなら、16は、上記ベキサロテンのカルボン酸基を、ボロン酸と置き換え、17は、新規なピラジン環を組み込むからである。本発明者らは、上記アナログ16が、RXRを結合し、アゴニストとして作用すると仮定する。なぜなら、生体活性化合物上のカルボン酸は、ボロン酸で首尾よく置換されており、プロテアソームインヒビターとして証明されたボロン酸を含むFDA承認薬物(ボルテゾミブ)の一例があるからである。アナログ17は、RXRに結合し、アゴニストとして作用すると予測される。なぜなら、構造的に類似のピリジル環を有するいくつかのベキサロテンアナログは、強力なアゴニストであると実証されたからである。上記アナログ17の新規のピラジン環系は、RXRに対して異なるコンフォメーション効果を誘発し得る。なぜなら、上記リガンド結合ドメインにおける密に接触するアミノ酸残基は、上記ピラジン環に対して、上記ピリジル環を含むベキサロテンアナログとは異なる親和性を経験し得るからである。アナログ16の合成は、進んだ中間体55からである。同様に、アナログ17の合成はまた、上記ピラジン酸エステルからであり得る。上記ピラジン酸エステルは、報告された2,5−ビス−メトキシカルボニルピラジン(95)から利用可能であるはずである。
【0082】
【化27】

例えば、上記ケトンボロン酸エステル55とのトリフェニルホスホニウムメチリドのWittig反応は、上記アルケンボロン酸エステル96を提供するはずである。これは、水酸化カリウムによってアナログ16に変換され得る(スキーム15)。
【0083】
【化28】

アナログ17は、化合物94およびチオニルクロリドに由来する上記酸クロリド(97)で構築される。上記酸クロリド97は、化合物35をアシル化して、ケトン(98)を得るはずである。上記ケトンは、上記ケトン酸(99)へと鹸化されるか、または上記アルケンエステル(100)に変換され得、そこから、鹸化されて、アナログ17を得る(スキーム16)。
【0084】
【化29】

アナログ18(LG100268の報告されていない異性体)は、合成に重要であり、RXRの結合およびアゴニズムについて試験するために重要である。なぜなら、上記芳香族環における窒素の位置の切り替えは、RXRの上記リガンド結合ドメイン(LBD)における分子間相互作用をわずかに変化させ得るに過ぎないからである。本発明者らは、アナログ18がLG100268と同様に強力であると予測するが、上記RXR LBDにおける非極性残基の間の相互作用における差異(例えば、上記LG10026855上の窒素原子との、Ile339(イソロイシン)側鎖の近位の相互作用がない)は、アナログ18が結合したRXRのわずかに変化したコンフォメーションを誘導し得、他のレセプターとのその相互作用を調節し得る。
【0085】
【化30】

アナログ18の合成は、アルケン101から予測される。アルケン101は、Wittig反応を介して中間体61から利用可能であるはずである(スキーム17)。
【0086】
【化31】

LG100268の最初に公開された合成において、ジエチル亜鉛およびクロロヨードメタンを、重要なシクロプロパン化工程の試薬として使用したが、後に発表された代替の合成は、シクロプロパン化をもたらすために、ヨウ化トリメチルスルホキソニウムからその場で形成されるジメチルスルホキソニウムメチリドを使用した。従って、アルケン101のシクロプロパン化は、エステル102を与え得、これは、アナログ18へと鹸化され得ると予測される(スキーム18)。
【0087】
【化32】

ケトン61およびアルケン101のカルボン酸誘導体(化合物103および104)が、強力なRXRアゴニストであると報告されたことは、注意すべきである。
【0088】
【化33】

興味深いことには、hRXRβに結合したLG100268の報告された結晶構造から、Loveおよび共同研究者らは、LG100268における四級シクロプロピル炭素の四面体の性質が、RXRおよびRARの両方に結合し得る、より可撓性の9−cis−レチノイン酸より、LG100268をより特異的にRXRに結合させる湾曲を提供する一助となることを示唆する。82。この観察の確証は、化合物105および10683の両方が、強力なRXR選択的アゴニストであるという報告である。101に加えて、アナログ4〜17への途上での上記アルケンエステルのうちの多くが、同様に、シクロプロパンアナログを形成し得るか否かを探索することは、興味深い。
【0089】
選択的RXRアゴニスト(例えば、化合物107および108(UAB30))を設計するための分子モデリングの首尾よい適用についてのいくつかの報告、およびRXRリガンド結合ポケットに結合するエナンチオマー109(R,S)のラセミ混合物の都合のよいエナンチオマー(S)−109を説明するためにモデリングを使用した1つの報告がある。
【0090】
【化34】

大部分の分子モデリング研究は、その天然の9−cis RAリガンド82に結合したRXRαの結晶構造で解明したリガンド結合ポケットの構造を使用するが、他の配位(coordinate)は、合成リガンド(例えば、Worldwide Protein Data Bank(wwPDB)からのLG10026855もしくはBMS64987)に結合したhRXRに利用可能である。
【0091】
分子モデリングは、構造ベースの合理的薬物設計の重要な構成要素であるので、本発明の提唱された化合物のすべて(ボロン酸モデリングパラメーターがないことに起因して16を除く)を、ベキサロテンと比較してそれらの結合親和性を試験するために、自由に利用可能なAutoDockモデリングプログラムを使用して試験した(図3)。
【0092】
実施例3− 生物学的特徴付け
化合物を、哺乳動物ツーハイブリッドスクリーニングにおいて結合し、RXREベースのアッセイにおいてトランス活性化することを同定した後、さらなるアッセイを行って、これらアゴニストによって誘導される細胞傷害性のレベル、アポトーシスを誘導するそれらの能力、およびそれらの変異誘発性を決定する。例えば、上記細胞傷害性を、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)アッセイ(Cytotox 96(登録商標) Non−Radioactive Cytotoxicity Assay,Promega)を行うことによって、上記CTCL細胞においてアッセイする。このアッセイは、コントロールと比較して、細胞培養上清におけるLDHのレベルを比色的に決定する。インタクトな細胞は、細胞ゾルLDHを細胞培養上清に漏らさないが、損傷細胞は漏らしてしまう。従って、上記細胞培養上清中のLDHのレベルは、細胞損傷および細胞傷害性の確立された指標である。LDHレベルは、テトラゾリウム塩が赤いホルマザン化合物へ変化することによって示され、マイクロプレートリーダーによって読み取られる。
【0093】
このアッセイは、本明細書に記載されるアナログのうちのいくつかを使用して既に試験されてきており、ベキサロテンおよび選択されたアナログのこれら細胞傷害性の結果は、図5に示される。RXRを結合し活性化する上記アナログのうちのいくつか(化合物3および化合物8)はまた、公知の細胞傷害性薬剤(例えば、酪酸ナトリウム(NaBu)およびリトコール酸(LCA))に類似の見込みのある細胞障害活性を示す。化合物8b(これは、エタノールビヒクルコントロールと比較して、ほとんど細胞傷害活性を示さない)はまた、RXRを結合しない。このことは、現在のスクリーニングプロトコルにおけるこのアッセイの有用性を示唆する。
【0094】
ベキサロテンがCTCLを効率的に処置すると仮定した。なぜなら、ベキサロテンは、Tリンパ球においてアポトーシスおよび/もしくは細胞傷害性を誘導するからである94。従って、本発明者らは、Promega Caspase Glo(登録商標) 3/7 Assayを使用して、ベキサロテン、およびアポトーシスに関して見込みのあるアナログで処理したCTCL細胞を試験する。このアッセイは、カスパーゼ3およびカスパーゼ7の細胞内活性を同時に決定する。これら2つのカスパーゼは、上流のカスパーゼによって活性化され、アポトーシスの間にこれらが細胞完全性を破壊するという事実によって、「実行カスパーゼ(executioner caspases)」と考えられる。上記試薬は、ルミノメーターでアッセイされる発光生成物へと切断される、これらアポトーシス活性化プロテアーゼの各々に対しての基質を有する。細胞が上記アポトーシス経路をいったん活性化すると、これらプロテアーゼ(および他)は活性化され、細胞死が最終的に起こる。非アポトーシス細胞は、カスパーゼを活性化せず、このアッセイにおいてカスパーゼ活性を示さない。本発明のアナログのうちのいくつかは、このアッセイにおいてアナログを分析されてきた。ベキサロテンおよびアポトーシス活性に関して選択されたアナログの結果を、図6にまとめる。RXRを結合し活性化する上記アナログのうちのいくつか(化合物3および化合物9)はまた、公知のアポトーシス誘導因子(NaBu)に類似のアポトーシス活性を有する。化合物8b(これは、アポトーシス活性をほとんど示さない)はまた、RXRを結合しない。繰り返すと、このことは、現在のスクリーニングプロトコルにおけるこのアッセイの有用性を示唆する。
【0095】
変異誘発性の決定は、ある化合物をヒトの治療的使用に関してさらに追求すべきか否かを決定するために重要である。潜在的なヒトの治療的化合物は、より高価な動物研究が行われる前に変異誘発性化合物を排除するために、上記化合物が動物において試験している前であっても、DNA変異誘発特性に関して早期に試験されるべきである。アポトーシス活性および/もしくは細胞傷害活性を有する化合物は、変異誘発性を決定するために2つのアッセイ(Ames試験およびEPA承認Saccharomyces cerevisiaeアッセイ(上記))において試験される。上記Ames試験(Salmonella Mutagenicity Assayとしても公知)は、薬剤の変異誘発可能性を決定するための標準である。この試験は、一連のSalmonella typhimurium株(その各々は、ヒスチジン生合成遺伝子における異なる変異が原因で、ヒスチジンを合成できない)を利用する。上記株は、上記化合物で試験され、ヒスチジン欠損プレート上での増殖がスコア付けされる。野生型Salmonella株は、上記培地上では増殖しない。なぜなら、それらは、ヒスチジンを合成する能力がないからである。上記株は、上記化合物が復帰変異を示す場合に増殖するのみである。このことは、上記化合物が変異誘発原であることを示す。さらに、上記化合物をラット肝臓ミクロソーム画分で処理して、消化およびその後の肝臓におけるP450酵素の活性を摸倣する;この混合物をまた、上記Ames試験において使用して、P450酵素が無害な化合物から変異誘発性化合物へと上記化合物を活性化するか否かを決定する。このアッセイは、Salmonella株のパネル(その各々は、変異の1つのタイプについて試験する)の評価を可能にし、本発明者らのリード化合物が変異誘発性でないという本発明者らの確信を増大させる。
【0096】
最後に、上記RXRは、多くの他の核レセプターについてのヘテロダイマーパートナーとして働く。RAR−RXRヘテロダイマーの状況において、上記RXR転写活性化機能−2(AF−2)ドメインの役割の研究は、RARリガンド16bの非存在下でRARがRXR活性をサイレントにすることを示唆した。RARリガンド結合の際に、コンフォメーションにおけるアロステリックな変化は、転写コアクチベーター(transcriptional coactivator)と推定的に相互作用し得る活性なRXR AF−2の生成を可能にする。これらの条件下で、RXRは、その特異的リガンドに応答し得、RARリガンドとの相乗作用を介して転写に影響を及ぼし得る。
【0097】
以前の研究から、VDRによる1,25(OH)2D3の結合が、そのRXRヘテロダイマーパートナーを、その同族リガンド16bの効果に対して低感受性にさせることが示された。このことは、上記VDR−RXRヘテロダイマーの状況において、上記RXR AF−2が全体的な活性に寄与することから、そのVDRパートナーの1,25(OH)2D3状態を必然的に決めることを示唆する。さらに、高濃度のRXRリガンドの添加は、上記RXRタンパク質を上記RXR−VDRヘテロダイマー(およびRXR−TR)から離して、RXRホモダイマーの形成に向かって、そらし得る。このことは、治療的なレキシノイド(rexinoid)化合物の潜在的かつ所望でない副作用を生じる。しかし、いくつかのVDREに対して、上記RXRリガンドが、1,25(OH)2D3の存在下で相乗効果的な応答を生じることが観察されてきた。これら状況下で、VDRおよびRXRは、RAR−RXRで観察されたものに類似のAF−2アロステリック調節の機構を使用している可能性がある。従って、本発明者らは、上記ルシフェラーゼレポーター遺伝子に連結されるビタミンD応答性エレメント(VDRE)を使用する別個のアッセイにおいて、RXR結合活性(上記哺乳動物ツーハイブリッドアッセイおよびRXREベースのアッセイにおいて評価される場合)でそれらアナログを評価することを提唱する。このアッセイは、本発明者らの新規なアナログが、上記RXR−VDRヘテロダイマーを介して1,25(OH)2D3の活性の相乗作用を示すかまたは上記活性をアンタゴナイズするかのいずれかであり得るかを本発明者らが評価することを可能にする。このシステムにおいて、ヒト細胞(Caco−2およびCTCL)を、上記VDRE−ルシフェラーゼ構築物でトランスフェクトし、1,25(OH)2D3単独でおよび活性レキシノイドと組み合わせて処理する。上記ルシフェラーゼレポーター遺伝子の活性は、VDR−1,25(OH)2D3媒介性転写シグナル伝達に対する潜在的な抑制もしくは付加的なレキシノイド効果の存在を明らかにする。これら効果は、細胞依存性およびVDRE依存性の両方であり得るので、本発明者らは、上記に列挙された2つのヒト細胞株、ならびに別個のVDREレポーター構築物(上記CYP24 VDRE、上記CYP3A4 VDRE、およびヒトp21 VDREが挙げられる)を利用する。並行アプローチは、TREベースのおよびRAREベースのルシフェラーゼレポーター構築物を使用して、同定されたレキシノイドがTR媒介性転写およびRAR媒介性転写を強化するかもしくは抑制するかのいずれかである能力を調査するために採用される。このアプローチは、他のRXRを要する経路に悪影響を与えず、従って、望ましくない臨床的副作用をもたらす新規なRXRアナログを区別することを可能にする。
【0098】
実施例4−本発明のアナログによる抗癌遺伝子の調節
潜在的な癌治療剤としてのレチノイドおよびレキシノイドの使用は、これらの、腫瘍関連遺伝子の抑制をもたらす遺伝子ネットワークを調節する一方で、化学保護(chemoprotection)と関連した遺伝子を同時に誘導し、所望でない臨床的副作用をもたらし得る遺伝子の調節を同時に最小限にする能力に依存する。本発明のRXRアゴニストは、ヒトCTCL細胞を上記同定された化合物で処理し、続いて、オリゴヌクレオチドマイクロアレイ技術を使用して、本発明者らの新規なアナログによって調節される遺伝子セットの分析によって試験され得る。このアプローチは、ベキサロテンでの処理に応答するヒト乳房細胞における多くの増殖調節遺伝子を首尾よく同定するために既に使用されてきた。実際に、ベキサロテン投与細胞は、遺伝子チップ実験における本発明者らの新規なベキサロテンアナログを評価する場合に、比較のベースとして働く。
【0099】
マイクロアレイ研究によって同定される遺伝子は、RT−PCRの使用を介して確認される。実際に、乳房組織において、アップレギュレーションを介してベキサロテンに対する主要な応答物として既に同定された遺伝子(DEPP、KRT15、RTP801、LOXL2)もしくはダウンレギュレーションを介してベキサロテンに対する主要な応答物として既に同定された遺伝子(COX−2、EGR3、ASNS、CTH)は、細胞培養系においてRT−PCRによって直接アッセイされ得る。ベキサロテンおよび本発明者らのアナログで処理される細胞は、ベキサロテンに対して、アナログ処理に異なる応答を示すこれら標的遺伝子について迅速にスクリーニングしようとする試みにおいて、それら重要な遺伝子のRT−PCRによって容易に評価され得る。
【0100】
DNAマイクロアレイ分析は、ゲノムにおける遺伝子のすべてもしくはサブセットからのmRNAレベルを同時に定量し、コントロールと実験サンプルとの間でこれらのレベルを比較することによって、全ゲノム遺伝子発現(genome−wide gene expression)を評価するための方法である。これら変化は、比較される(例えば、野生型 対 変異株)か、または処理なしの細胞が、試薬で処理した細胞に対して比較される。RNAは、2つの細胞タイプから抽出され、cDNAに変換されるかもしくはcRNAに増幅されるかのいずれかであり、次いで、このメッセージプールは、遺伝子発現変化を評価するために使用される。標識されたメッセージの両方のプールは、DNAマイクロアレイ(もしくは「遺伝子チップ」)にハイブリダイズされる。これらマイクロアレイは、正確な様式で上記アレイ上にスポットされるゲノム中のすべての遺伝子を有する。その結果、このチップ実験は、全ゲノムのノーザンブロットになり、上記細胞におけるすべての遺伝子のメッセージレベルをアッセイする。上記コントロールおよび実験は、同じチップに対してハイブリダイズされるので、上記2つの上記出発mRNAレベルの間で直接比較が行われ得、上記コントロールと比較して、実験において過小発現もしくは過剰発現される遺伝子が探され、両方のcDNAプールのハイブリダイゼーションの強度が分析される。
【0101】
総RNAを、処理されていないか、またはベキサロテンもしくは適切なアナログで処理されたかのいずれかのヒトCTCL細胞から単離する。上記RNAの品質および完全性は、変性ゲル電気泳動および逆転写、続いてPCRを使用するハイブリダイゼーションの前に試験される。高品質のRNAがいったん単離されると、標識されたcRNAが、Genisphere 350キットを用いて生成される。マイクロアレイは、このような試験のために容易に利用可能であり、例えば、ヒトマイクロアレイは、Washington University St.Louis(Human HEEBOマイクロアレイ)から得られ得るか、または代わりにToronto Microarray Centre(Toronto,Canada)から得られ得る。
【0102】
上記マイクロアレイ分析の実現性を実証するために、マイクロアレイ実験を、CTCL細胞を使用して行った。CTCL細胞を、ベキサロテンもしくはエタノールビヒクルコントロールで処理し、総RNAを、BioRad Aurum Total RNA Miniキットを使用して4時間処理した後に抽出した。抽出した総RNAを利用して、Genisphere 350キットを使用してcRNAを生成し、これを使用して、GCAT(Genome Consortium for Active Teaching)から得たヒトHEEBOマイクロアレイスライドにハイブリダイズさせた。上記Genisphere 350キット高感度プロトコルを使用し、代表的な結果を得た(データは示さず)。上記マイクロアレイの予備分析から、CTCL細胞においてベキサロテンによって誘導および抑制されるいくつかの興味深い候補遺伝子が存在することが示される。例えば、腫瘍発生を阻害するかもしくはアポトーシスを誘導することに関与し得るいくつかの遺伝子は、ベキサロテンの処理後にアップレギュレートされる。細胞死関連プロテインキナーゼ(Death associated protein kinase)3(アポトーシスにおいて活性化されるキナーゼ)は、4.3倍アップレギュレートされる;ウロコルチン(腫瘍発生を阻害するタンパク質)は、3.5倍アップレギュレートされる;エンドセリン変換酵素1(神経芽腫における有利な予後と関連する特定のアイソフォームを有するタンパク質)は、4.6倍アップレギュレートされる。同様に、REEP(悪性骨髄性疾患においてヒト5q31の欠失セグメントに存在する遺伝子)は1/2.9にダウンレギュレートされる;RAC GAP1(RACのGTPase活性化タンパク質(悪性細胞移動に必要とされるタンパク質106))は、1/2.6にダウンレギュレートされる;カリオフェリンα1(α5を移入する)(STAT1が核へ移入するために必要とされるタンパク質)は、1/2.5にダウンレギュレートされる。従って、遺伝子チップシステムは、本発明のアナログを試験し、潜在的な差次的遺伝子発現に関して、本発明のアナログとベキサロテンとを比較するために使用され得ることが実証される。
【0103】
(参考文献)
【0104】
【化35】

【図4A】

【図4B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造式:
【化36】

を有する化合物もしくはその薬学的に受容可能な塩であって、
ここでR、R、RおよびRは、水素、ヒドロキシ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、チオール、ハロゲン、COH、CO1−6アルキル、SOH、およびNHからなる群より各々独立して選択される、
化合物もしくはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項2】
、R、RおよびRのうちの少なくとも1つは、COHである、請求項1に記載の化合物もしくは薬学的に受容可能な塩。
【請求項3】
は、COHである、請求項2に記載の化合物もしくは薬学的に受容可能な塩。
【請求項4】
は、ハロゲンである、請求項3に記載の化合物もしくは薬学的に受容可能な塩。
【請求項5】
およびRは、水素である、請求項4に記載の化合物もしくは薬学的に受容可能な塩。
【請求項6】
前記ハロゲンは、F、Br、Cl、およびIからなる群より選択される、請求項4に記載の化合物もしくは薬学的に受容可能な塩。
【請求項7】
は、ハロゲンである、請求項4に記載の化合物もしくは薬学的に受容可能な塩。
【請求項8】
前記ハロゲンは、F、Br、Cl、およびIからなる群より選択され、該ハロゲンは、Rのハロゲンと同じであるか、またはRのハロゲンとは異なる、請求項7に記載の化合物もしくは薬学的に受容可能な塩。
【請求項9】
は、ハロゲンである、請求項7に記載の化合物もしくは薬学的に受容可能な塩。
【請求項10】
前記ハロゲンは、F、Br、Cl、およびIからなる群より選択され、該ハロゲンは、Rおよび/もしくはRのハロゲンと同じであるか、またはRおよび/もしくはRのハロゲンとは異なる、請求項9に記載の化合物もしくは薬学的に受容可能な塩。
【請求項11】
以下の式:
【化37】

の化合物もしくはその薬学的に可能な塩であって、ここでRおよびRは、以下:
【表4】

のように定義される、化合物もしくはその薬学的に可能な塩。
【請求項12】
は、Fであり、Rは、Hである、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
前記化合物は、RXRホモダイマーのみに対して特異的である、請求項1〜12のいずれかに記載の化合物。
【請求項14】
RXRのアゴニストを要する疾患を処置する方法であって、該方法は、このような疾患を有する被験体に、請求項1〜12のいずれかに記載の化合物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項15】
過剰増殖障害を処置する方法であって、該方法は、処置の必要な哺乳動物に、治療上有効な量の、請求項1〜12のいずれかに記載の1種以上の化合物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項16】
前記過剰増殖障害は、癌である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記癌は、乳癌、呼吸器系の癌、血液の癌、脳の癌、生殖器の癌、消化管の癌、尿路の癌、眼の癌、肝臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、甲状腺癌、副甲状腺癌および/もしくは該癌の転移からなる群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記癌は、リンパ腫である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記リンパ腫は、皮膚T細胞リンパ腫である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記疾患は、癌、脂質異常症、高脂血症、高コレステロール血症、アテローム硬化症、アテローム発生、高トリグリセリド血症、心不全、心筋梗塞、血管疾患、心血管疾患、高血圧症、肥満、炎症、関節炎、癌、アルツハイマー病、皮膚障害、呼吸器疾患、眼障害、IBD(過敏性腸疾患)、潰瘍性大腸炎およびクローン病からなる群より選択される、請求項14に記載の方法。脈管形成障害を処置するための方法であって、該方法は、治療の必要な哺乳動物に、治療上有効な量の請求項1に記載の1種以上の化合物を投与する工程を包含する、方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2013−520433(P2013−520433A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554030(P2012−554030)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際出願番号】PCT/US2011/025289
【国際公開番号】WO2011/103321
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(512215990)アリゾナ ボード オブ リージェンツ, ア ボディー コーポレイト オブ ザ ステート オブ アリゾナ, アクティング フォー アンド オン ビハーフ オブ アリゾナ ステート ユニバーシティー (1)
【Fターム(参考)】