新規なラクトバチルス・プランタラム及びこれを含む組成物
本発明は、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55(Lactobacillus plantarumCJLP55)KCTC 11401BP、前記乳酸菌を含む腸疾患治療用組成物、および前記乳酸菌を含む免疫増強用組成物を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なラクトバチルス・プランタラム及びこれを含む組成物に係り、より具体的には腸疾患及び免疫疾患の予防治療に有用な新規なラクトバチルス・プランタラム及びこれを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
キムチのような伝統発酵食品に豊富に存在する乳酸菌は、人体の消化管に共生しながら繊維質および複合蛋白質を分解して重要な栄養成分を作る役割を担当しており、このように人を含んだ動物の胃腸管内で宿主の腸内微生物環境を改善して宿主の健康に有益な影響を与える生きている微生物を総称してプロバイオティクス(probiotics)という。プロバイオティクス(probiotics)として効果があるためには経口で摂取して小腸に到達して腸表面に付着して維持されなければならないので、基本的に耐酸性、耐胆汁酸性、および腸上皮細胞付着能力が優秀でなければならない。
【0003】
キムチのような伝統醗酵食品に存在する代表的なプロバイオティクスとしてラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)乳酸菌がある。ラクトバチルス属微生物は、同型または異型発酵をする乳酸桿菌として人を含んだ動物の腸管および乳製品や野菜の発酵過程でよく見ることができる。ラクトバチルス属微生物は、腸内pHを酸性に維持し、大腸菌(E. coli)やクロストリジュウム(Clostridium)のような有害菌の繁殖を抑制し、下痢と便秘を改善するだけでなく、ビタミン合成、抗癌作用、血清コレステロール低下などの役割をすると知られている。乳酸桿菌によって生産されるアシドフィリン(acidophilin)は、赤痢菌、サルモネラ菌、ブドウ状球菌、大腸菌などの成長を阻害することが知られている。また、下痢原因菌の増殖を抑制して腸内菌叢を正常化することで下痢を止める作用をする(非特許文献1及び非特許文献2)。
【0004】
ラクトバチルス属微生物の前記特性を利用して生菌剤および家畜飼料を開発しようとする研究が活発に進行している。家畜の細菌性下痢病は、体重減少、さらには死を誘発する。したがって、これを予防して家畜の生産を高めようと飼料に抗生剤を添加することが一般的に広く行われてきた。しかし、抗生物質に対する耐性菌の出現と畜産物内の残留抗生物質などの問題のために飼料内抗生物質の使用が規制され、有機的な家畜飼養法が推奨されている(特許文献1)(非特許文献3)。
【0005】
また、ラクトバチルス属微生物のような乳酸菌は、免疫増強効果を持つことでも知られている。最近全世界的に環境汚染とインスタント食品摂取の増加などの影響と予測される免疫調節異常と関連したアレルギーおよびアトピー疾患が急激に増加していて、韓国でも同じようにこのような疾患が増加傾向にある。最近ヨーロッパでは乳酸菌を経口投与して病気を治療する微生物治療(bacteriotheraphy)の一環として乳酸菌で病の症状を緩和したり改善する努力が行われている。ラクトバチルス・ラムノサスGG(Lactobacillus rhamnosus GG)を乳児に投与するとアトピー発生が半分に減少したし(非特許文献4)、すでにアトピー湿疹が進行中の子供にラクトバチルス・ラムノサス(Lactobaci llusrhamnosus)とラクトバチルス・ロイテリ(L. reuteri)を投与した場合、湿疹部位および程度が減少したという報告がある(非特許文献5)。
【0006】
このような乳酸菌の免疫増強のメカニズム(mechanism)に対してずっと研究が進行されていて、具体的なメカニズムに対してはまだ明確に明らかになることはなかったが、経口的に導入されて腸内で棲息することで腸管免疫系に影響を及ぼすことが広く知られている。例をあげれば、ヨーグルトを通した乳酸菌摂取はPeyer's patchのリンパ球の抗菌活性を増加させると報告されていて、実験動物および人を対象に実行された研究によれば乳酸菌は、IgAの反応を強化させると報告されている。また、乳酸菌は、先天性免疫および適応性免疫に影響を及ぼす。腸管免疫系の先天免疫反応(innate immunity)では病原菌を認識して死滅させることで感染に対抗して健康を維持する役割をすることが知られている。適応免疫(adaptive immunity)では、病原体を貪食し抗原をTリンパ球に提示する役割をするマクロファージを活性化して多様なサイトカイン、特にインターロイキンIL-12、IL-18の生産を増加させることが知られている。この点に関して、乳酸菌細胞壁構成成分中の一部がマクロファージでNF-κB、STAT信号伝達を活性化させることによってサイトカインの産生を刺激することが知られている。また、乳酸菌は、特化された抗原提示細胞としてリンパ節および消化管の粘膜にたくさん存在する樹状細胞でIL-12、IL-18、T N F-αの産生を増加させるのはもちろんMHC class IIおよびB7-2のようなTリンパ球を活性化させる表面分子の発現も増加させる(非特許文献6)。
【0007】
Tリンパ球は、適応免疫(adaptive immunity)の中心になる。適応免疫は、細胞性免疫のTh1反応と抗体性免疫のTh2反応に分けることができる。Th1およびTh2それぞれの反応では抗原提示細胞が生産するサイトカインが互いに異なり、Th1反応ではIL-12、IL-18、インターフェロン(IFN)生産が優勢で、Th2反応ではPGE2、IL-4、IL-10生産が優勢である。このようなTh1反応およびTh2反応は、適切な均衡が成り立つべきで、均衡がこわれると各種免疫疾患が現れる。Th1細胞は主に感染症と戦う反面、Th2細胞は主にアレルギーと炎症性反応に関与する。これらが正常に作用する時、Th2細胞はホコリおよびその他願わない物質から身体を保護するが、万一、これら細胞が過度な活性を現わす場合IgE抗体生産が過度に増加して人体に対して通常は抗原性でない蛋白質(例:花粉、食物など)にアレルギー反応を誘発させる。したがって、Th1反応とTh2反応は必ず均衡を維持するべきで、万一、この中で一つが過剰や不足になれば病気が誘発される。また、続くストレスによってコルチゾールが持続的に遊離すればTh1反応が低下してTh2反応が増加することになって、癌、アトピー、アレルギーおよび自家免疫疾患が誘発される(非特許文献7)。
【0008】
In vivoで乳酸菌は、Tリンパ球において、Th1サイトカインのIFN-γの産生を刺激するが、Th2サイトカインのIL-4、IL-5の産生を抑制するという報告がなされている(非特許文献8)。また、他の実験では、Th2反応動物モデルの卵アルブミン(Ovalbumin)を投与してTh2反応に偏向したマウス(ovalbumin-primed mice)に乳酸菌を経口投与すると、脾臟細胞でIFN-γが増加したが、IL-4、IL-5およびIgEが減少した。また、卵アルブミン(Ovalbumin)を投与してTh2反応に偏向したマウスから摘出した脾臟細胞を乳酸菌と共に培養したときにもサイトカインおよびIgEの変化が経口投与実験と同様に起こった。しかし、Tリンパ球だけを乳酸菌と共に培養してもIFN-γレベルが有意に増加しなかったので、Tリンパ球のIFN-γ産生には、マクロファージ、樹状細胞のような抗原提示細胞が必ず必要なようである(非特許文献9)。IL-12およびIL-18は、Th0リンパ球をTh1リンパ球に分化させるのに重要なサイトカインとしてマクロファージまたは樹状細胞で産生される。脾臟細胞またはマクロファージは、培養時乳酸菌で処理すれば濃度依存的にIL-12、IL-18およびIFN-αの産生が増加することが知られている。このように乳酸菌は、マクロファージでIL-12、IL-18およびIFN-αの産生を増加させ、従ってTh1細胞への分化を促進してこれらのIFN-γ産生を誘導するので、Th2が優勢な状況でTh1/Th2均衡を合わせる作用をすることができる(非特許文献6)。したがって、乳酸菌は、Th2反応過剰により引き起こされるTh1/Th2不均衡によって誘発される癌、アトピー、アレルギー、および自家免疫疾患のような免疫疾患を予防または治療するのに役に立つと報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国特許公開1998-78358
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Michael and Philippe, Probiotics and prebiotics: Ef fects on diarrhea, The journal of nutrition, Volume 137, March 2007, pages 803S-811S
【非特許文献2】Roberfroid, Prebiotics and probiotics: Are they funct ional foods、American journal of clinical nutrition, Volume 71, June 2000, pages 1682S-1687S
【非特許文献3】McEwen and Fedorka-Cray, Antimicrobial use and resis tance in animals, Clinical infectious Diseases, Volume 34, June 2002, pages S93-S 106
【非特許文献4】Kalliomaki et. al. 、Probiotics in primary prevention of atopic disease: a randomized place bo-controlled trial、Lancet、Volume 357、April 2001、pages 1076-1079
【非特許文献5】Rosenfeldt et. al.、Effect o f probiotic Lactobacillus strains in children with atopic dermatitis、Dermatologic and ocular dis eases、Volume 111、February 2003、pages 389-395
【非特許文献6】Cross et. al.、Anti-allergy properties of fermented f oods: an important immunoregulatory mechanism of lactic acid bacteria、 International Immu nopharmacology、Volume 1、May 2001, pages 891-901
【非特許文献7】Elenkov and Chrousos、 Stress hormones、 Th1/Th2 pat terns、pro/anti-inflammatory cytokines and susceptibility to disease、T rends in Endocrinology and Metabolism、Volume 10、November 1999、pages 359-368
【非特許文献8】Matsuzaki et. al.、The effect of oral feeding of Lact obacillus casei strain Shirota on immunoglobulin E production in mice、Journal of Dairy Science、Volume 81、January 1998、pages 48-53
【非特許文献9】Kato et. al.、Lactic acid bacterium potently induces the production of interleu kin-12 and interferon-gamma by mouse splenoc ytes、International Journal of Immunopharmacology、Volume 21、February 1999,pages 121-131
【非特許文献10】Miraglia et. al、Immune dysregulation in atopic dermati tis、Allergy and Asthma Proceedings、Volume 27、November-December 2006、pages 451-455
【非特許文献11】Remington's Pharmaceutical Sciences (19th ed.、1995)
【非特許文献12】Kim et. al.、Le uconostoc inhae sp. nov.、a lactic acid bacterium isolated from kimchi, International Journal of Systematic and Evolutional Microbiology、Volume53、July 2003、pages 1123-1126
【非特許文献13】Kim et. al.、Leucon ostoc kimchii sp. nov.、a new s pecies from kimchi. International Journal of Systematic and Evolutional Microbiology,Volume50,September 2000,pages 1915-1919
【非特許文献14】Kobayashi et. al.、Studies on biological character istics of Lactobacillus: II. Tolerance of the multiple antibiotic resis tance strain,L. casei PSR3002, to artificial digestive fl uids. Japan J ournal of Microbiology. Volume 29、July 1974、pages 691- 697)
【非特許文献15】Casey et. al.、Isolation and cha racterization of anti-Salm onella lactic acid bacteria from the porcine ga strointestinal tract、Letters in A pplied Microbiology. Volume 39、2004、pages431-438)
【非特許文献16】Kim et. al.、Probiotic properties of Lactobacillus and Bifidobacterium strains isolated from p orcine gastrointestinal tract、Applied Microbiology and Biotechnolog y、Volume 74、April 2007、pages 1103-1111
【非特許文献17】Hirano et. al.、The effect of Lactobacillus rhamnosus on enterohemorrhagic Escherichia coli infection of human intestinal cells in vitro、Microbiology and Immunolog y、Volume 47、2003、pages 405-109
【非特許文献18】Fujiwara et. al. A double-blind trial of Lactobac illus para casei strain KW3110 administration for immunomodulation in p atients with pollen allergy、Allergology International、2005、volume 54、pages 143-149
【非特許文献19】Fujiwara et. al.、The anti-allergic effects of la cti cacid bacteria are strain dependent and mediated by effects on both Th1/Th2 cytokine expression and balance、International Archives of Allergy and I mmunology、2004、Volume135、pages 205-215
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者は、従来知られている乳酸菌に比べてTh2反応過剰によるTh1/Th2不均衡を調節する効果が非常に優秀な新しい乳酸菌を開発するために研究した結果、韓国の伝統発酵食品から新規なラクトバチルス属乳酸菌菌株を分離、同定して本発明を完成することになった。
【0012】
したがって、本発明の目的は、プロバイオティクスとしての基本性質の耐酸性、耐胆汁酸性、腸上皮細胞付着能が優秀なだけでなく、免疫増強効果、特にTh2反応過剰によるTh1/Th2不均衡を調節する効果が優秀な新規なラクトバチルス属乳酸菌菌株を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、前記ラクトバチルス属乳酸菌菌株を含む腸疾患の予防または治療用組成物を提供することである。
【0014】
本発明のまた他の目的は、前記ラクトバチルス属乳酸菌菌株を含む免疫増強用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明は、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55(Lactobacillus plantarumCJLP55)(寄託機関:生命工学研究院遺伝子銀行、寄託日時:2008.10.16、受託番号:KCTC 11401BP)を提供する。
【0016】
また、本発明は、前記ラクトバチルス・プランタラムCJLP55を含む腸疾患の予防または治療用組成物を提供する。
【0017】
また、本発明は、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55を含む免疫増強用組成物を提供する。
【0018】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0019】
本発明にともなうラクトバチルス・プランタラムCJLP55(Lactobacillus plantarum CJLP55)は、韓国の伝統発酵食品から分離および同定されたラクトバチルス・プランタラムの新規な菌株である。前記伝統発酵食品には、キムチ、野菜発酵物、味噌、醤油、清麹醤または塩辛などがあるが、これに限定されることはない。
【0020】
本発明のラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、微生物の同定および分類のための16S rRNA塩基配列分析の結果、ラクトバチルス・プランタラム標準菌株(Lactobacillus plantarum NBRC15891T、GenBank accession number AB326351)と最も高い相同性(99.9%)を現わしてラクトバチルス・プランタラムと最も高い分子系統学的関係を見せた。したがって、前記微生物をラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)と同定して、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55と命名し、生命工学研究院遺伝子銀行に2008年10月16日付で寄託した(受託番号KCTC 11401BP)。ラクトバチルス・プランタラムCJLP55の16S rRNA遺伝子の塩基配列は、本明細書に添付された配列表SEQ ID NO.1で表される。
【0021】
本発明のラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、グラム陽性菌であり好気的条件と嫌気的条件で全部成長が可能な通性嫌気性(facultive anaerobe)であり胞子を形成しないで運動性がなくて細胞の形態は、桿菌状である。ラクトバチルス・プランタラムCJLP55のより具体的な形態および生理学的特性は、当該技術分野の通常の方法により分析した結果下記の表1と同じであることが分かった。
【表1】
【0022】
本発明のラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、長期間安定的に保存するためには水にグリセロール成分を一定量混合して作った保管溶液に菌体を-70℃で保管したり、滅菌された10%脱脂乳に懸濁して凍結乾燥することが好ましい。
【0023】
また、本発明のラクトバチルス・プランタラム CJLP55は、プロバイオティクスとして乳酸菌の一般的な整腸効果および免疫増強効果を持つ。
【0024】
本発明において、'プロバイオティクス(probiotics)'は、人を含んだ動物の胃腸管内で宿主の腸内微生物環境を改善して宿主の健康に有益な影響を与える生きている微生物という意味で理解される。プロバイオティクスは、プロバイオティク活性を持って生きている微生物で単一または複合菌株形態で人や動物に乾燥された細胞形態や発酵産物形態で摂取される場合、宿主の腸内菌叢に有益な影響を及ぼすことができる。このようなプロバイオティク微生物であるためには一番目で、胃液と胆汁での影響を少なく受けながら胃を通過して腸で生存できなければならず、腸内に定着して生存が可能で宿主の腸内菌叢に有益な影響を及ぼすべきである。したがって、胃酸に対する耐酸性、胆汁酸に対する耐胆汁酸性および腸上皮細胞に対する付着性を持たなければならない。二番目で、プロバイオティク微生物であるためには、微生物の安全性に問題があってはならなくて、これと関連しては一般的にゼラチン液化反応検査、フェニルアラニン脱アミン生成検査、アンモニア生成検査、溶血性実験検査などが遂行される。本発明にともなうラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、優秀な耐酸性、胆汁酸に対する耐胆汁酸性及び腸上皮細胞に対する付着性を持つだけでなく、ゼラチン液化反応検査、フェニルアラニン脱アミン生成検査およびアンモニア生成検査で陰性を示し、溶血性実験検査では病原性と関係がないと判定されるα-溶血が確認されて安全なことが分かった。
【0025】
本発明にともなうラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、耐酸性、耐胆汁酸性および腸皮細胞付着性が非常に優秀で整腸効果が予想される。したがって、本発明は、他の側面において、ラクトバチルス・プランタラムCJLP 55を含む腸疾患の予防または治療用組成物を提供する。
【0026】
前記本発明にともなう微生物を含む腸疾患の予防または治療用組成物は、人、および牛、馬、豚のような家畜を含む哺乳動物の腸疾患の予防または治療に利用される。前記'腸疾患'とは、腸有害細菌感染および炎症性腸疾患を全部含み、例えば病原性微生物(大腸菌、サルモネラ、クロストリジウムなど)による感染性下痢、胃腸炎、炎症性腸疾患、神経性腸炎症候群、小腸微生物過成長症、腸急性下痢などを含むが、これに限定されることはない。前記腸疾患治療用組成物に含まれるラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、生菌体または死菌体として存在することができるが、生菌体として存在することが好ましい。一般的に生菌体は、腸内細菌叢の異常発酵によって引き起こされる諸症状を治療して改善する効果があって人および動物に投与すれば腸内の消化管壁に定着して有害菌が定着できないようにする作用をしながら、乳酸を生成して腸内のpHを低くして有害細菌が増殖できないようにする。また、投与された生菌体は、バクテリオシン(bacteriocin)と過酸化物を生成して病原菌の増殖を抑制して栄養分の吸収を担当する腸絨毛の活動を助ける。この他にも、栄養素の吸収と利用を助ける物質を生成して、動物において飼料要求率を改善させて、病原菌が生成する毒性物質を中和する物質を生成したりもする。
【0027】
前記本発明の腸疾患の予防または治療用組成物の投与方法は、特に限定されることはないが、経口で投与することが好ましい。投与量は、腸疾患の種類、疾患の程度、年齢、性別、人種、治療または予防目的などにより変わるが、一般的に成人を基準として一日に1千万細胞〜1000億細胞を投与することができる。
【0028】
また、本発明のラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、整腸効果その他にも従来の乳酸菌に比べて顕著に優秀な免疫増強効果を持つ。ラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、脾臟細胞(splenocyte)でTh1反応を誘導するIL-12の生成を増加させて、Th2反応を誘導するIL-4の生成を抑制する。また、抗原提示細胞としてT細胞免疫反応を調節するマクロファージおよび樹状細胞のような免疫調節性細胞を刺激してTh0リンパ球のTh1リンパ球への分化を誘導するサイトカインの生成を促進させてTh2反応の過剰によるTh1/Th2不均衡を調節できる免疫調節力がある。以下、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55の免疫増強効果に対してより具体的に説明する。
【0029】
ラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、陰性対照群に比べて、卵アルブミン(OVA)を投与してTh2反応に偏向させたマウスの脾臟細胞(spleenocyte)を処理したとき、Th1反応を誘導するサイトカインのIL-12を12.4-12.7倍高く生成し、Th2反応を誘導するサイトカインのIL-4の生成を6.1 - 9.8%水準で抑制した。これは他の典型的な乳酸菌Lactobacillus rhamnosusGG(KCTC5033)、Lactobacillus casei(KCTC 3109)、Lactobacillus sakei CJLS118(KCTC13416)に比べて、本発明の新規な菌株が免疫調節活性の点で顕著に優秀であることを意味する。したがって、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、Th2反応を抑制しTh1反応を促進して、Th2反応の過剰によるTh1/Th2不均衡を調節する免疫調節力があるといえる。
【0030】
また、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55(Lactobacillus plantarum CJLP55)をマクロファージ細胞株RAW264.7および樹状細胞JAWSIIと共に培養したところ、乳酸菌数が増加し、マクロファージ細胞株を刺激して免疫反応を増強させるということが確認された。マクロファージ細胞株RAW264.7と樹状細胞株JAWSIIをラクトバチルス・プランタラムCJLP55で処理した結果、Th1分化誘導サイトカインIL-12、IL-18生成を促進し、Th1分化誘導抑制サイトカインのIL-10はIL-12の生成量に比べて相対的に少なく生成することによってTh1分化誘導を促進することが確認された。したがって、このような実験結果からもラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、Th2反応を抑制しTh1反応を促進して、Th2反応の過剰によるTh1/Th2不均衡を調節する免疫調節力があるといえる。
【0031】
IL-4は、Th2細胞で産生され、特異的に細胞免疫反応の中枢的な役割をし、Th1細胞のサイトカインのIL-12の生産を抑制する抗炎症性サイトカイン(anti-inflammatory cytokine)の機能も持つ。最近、アトピー皮膚炎患者の末梢血液と皮膚病変にはIL-4、IL-5を主に生産するTh2細胞が相対的に増加するということが報告された(非特許文献10)。したがって、Th2反応過剰によるTh1/Th2の不均衡は、アトピーのような疾患を誘発する。また、既に述べたように、Th1反応とTh2反応の中の一つが過剰または不足すれば病気が引き起こされて、Th1反応が低下してTh2反応が増加し、癌、アトピー、アレルギーおよび自家免疫疾患が引き起こされることが知られている(非特許文献7)。したがって、本発明にともなうラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、免疫調節と関連したTh1細胞、Th2細胞、マクロファージおよび樹状細胞が生産するサイトカインを調節してTh2反応過剰によるTh1/Th2の不均衡を調節することによって、アトピー、アレルギーのような病気に対し効果的に作用する可能性があることを期待できるだけでなく、癌および自家免疫疾患の予防または治療にも効果があると期待される。
【0032】
したがって、本発明は、他の側面において、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55を含む免疫増強用組成物を提供する。本発明にともなう免疫増強用組成物は、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55が前記のように免疫反応を増強するのに効果的な乳酸菌であるので、免疫増強効果がある。特に、本発明にともなう免疫増強用組成物は、下記実施例で立証される通り、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55がTh1反応の促進効果を持ちTh2反応過剰によるTh1/Th2の不均衡を調節する効果があるので、Th2反応過剰によるTh1/Th2の不均衡に誘発される疾患の予防または治療に効果がある。したがって、本発明にともなう免疫増強用組成物は、アトピー、アレルギー、癌および自家免疫疾患の予防または治療に効果的に使われることができる。前記自家免疫疾患は喘息、枯草熱などを含むが、これに限定されることはない。
【0033】
前記本発明の免疫増強用組成物の投与方法は、特に限定されるものではないが、経口で投与することが好ましい。投与量は、免疫増強が必要な疾患の種類、疾患の程度、年齢、性別、人種、治療または予防目的などにより変わるが、一般的に成人に対して一日に1千万細胞〜1000億細胞を投与することができる。
【0034】
前記本発明にともなう腸疾患の予防または治療用組成物および免疫増強用組成物は、安全性が立証された本発明のラクトバチルス・プランタラムCJLP55を含むので副作用などの憂慮なしで医薬品、食品、化粧品、飼料、または飼料添加剤として利用することができる。
【0035】
前記本発明にともなう組成物が医薬品として利用される場合には、当該技術分野で知られている通常の薬剤学的剤形で製剤化されることができる。前記医薬品は、好ましくは経口剤形に製剤化されるし、例えば液剤、懸濁剤、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤またはエキス剤のような経口投与用剤形で製剤化されることができる。
【0036】
前記それぞれの剤形で製剤化時、それぞれの剤形の製造に必要な薬剤学的に許容可能な担体または添加剤を付加して製造することができる。代表的な経口投与用剤形で製剤化時前記担体として希釈剤、滑剤、結合剤、崩解剤、甘味剤、安定剤および防腐剤の1種以上を選択して使えるし、添加剤では香料、ビタミン類および抗酸化剤の1種以上を選択して使うことができる。
【0037】
前記担体および添加剤は、薬剤学的に許容可能であれば全部可能で、具体的に希釈剤では乳糖、とうもろこし澱粉、大豆油、微晶質セルロース、またはマンニトール、滑剤ではステアリン酸マグネシウムまたはタルク、結合剤ではポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。また、崩解剤ではカルボキシメチルセルロースカルシウム、澱粉グリコール酸ナトリウム、ポラクリリンカリウムまたはクロスポビドン、甘味剤では白糖、果糖、ソルビトール、または、アスパルテーム、安定剤ではカルボキシメチルセルロースナトリウム、β-シクロデキストリン、白蝋、またはキサンタンゴム、防腐剤ではパラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、または、ソルビン酸カリウムが好ましい。
【0038】
また、前記成分の他にも、公知の添加剤として味覚を改善するために、梅の実香り、レモン香り、パイナップル香り、ハーブ香りなどの天然香料、天然果汁、クロロフィリン、フラボノイドなどの天然色素、果糖、蜂蜜、糖アルコール、砂糖などの甘味成分、または、クエン酸、クエン酸ナトリウムなどの酸味剤、またはこれらの混合物を使うこともできる。
【0039】
このような製剤化方法および製剤化時必要な担体および添加剤に対しては非特許文献11に詳細に記載されている。
【0040】
前記本発明にともなう組成物は、食品として利用することもできる。前記食品は健康機能食品それだけでなく、人間が広く通常的に毎日摂取する一般的な食品を含む。健康機能食品として利用される場合、食品学的に許容可能な担体または添加剤とともに当該技術分野で知られている通常の健康機能食品の剤形で製剤化されることができる。前記健康機能食品は、例えば散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ剤、液剤、エキス剤、茶、ジェリー、または飲み物などで製造されることができる。前記食品学的に許容可能な担体または添加剤は、製造しようと思う剤形の製造に当該技術分野で使用可能になることが知られている任意の担体または添加剤が利用されることができる。
【0041】
前記本発明にともなう組成物は、アトピーの予防または治療効果を持つので、化粧品として利用されることもできる。前記本発明にともなう組成物が化粧品として利用される場合には当該化粧品技術分野で知られている通常の剤形の多様な化粧品で製造されることができる。前記それぞれの剤形で製剤化時、それぞれの剤形の製造に必要な化粧品の製造に許容可能な担体または添加剤を付加して製造することができる。
【0042】
前記本発明にともなう組成物は、飼料添加剤または、飼料として利用される ことができる。
【0043】
飼料添加剤として利用される場合、前記組成物は、20ないし90%高濃縮液や粉末または顆粒形態で製造されることができる。前記飼料添加剤は、クエン酸、フマル酸、アジピン酸、乳酸、リンゴ酸などの有機酸や燐酸ナトリウム、燐酸カリウム、酸性ピロ燐酸塩、ポリ燐酸塩(重合燐酸塩)等の燐酸塩や、ポリフェノール、カテキン、α-トコフェロール、ローズマリー抽出物、ビタミンC、緑茶抽出物、甘草抽出物、キトサン、タンニン酸、フィチン酸などの天然抗酸化剤の一つまたは一つ以上を追加で含むことができる。飼料として利用される場合、前記組成物は、通常の飼料形態で製剤化されるし、通常の飼料成分を共に含むことができる。
【0044】
前記飼料添加剤および飼料は、穀物、例をあげれば粉砕または破砕されたコムギ、燕麦、麦、とうもろこしおよび米;植物性蛋白質飼料、例をあげればアブラナ、豆、およびひまわりを主成分とする飼料;動物性蛋白質飼料、例をあげれば血粉(blood powder)、肉粉、骨粉および魚粉;糖分および乳製品、例をあげれば各種粉乳および乳状粉末で成り立つ乾燥成分などをさらに含めるし、その他にも栄養補充剤、消化および吸収向上剤、成長促進剤などをさらに含むことができる。
【0045】
前記飼料添加剤は、動物に単独で投与したり食用担体中で他の飼料添加剤と組み合わせて投与することもできる。また、前記飼料添加剤は、トップドレッシングとしてまたはこれらを動物飼料に直接混合したりまたは飼料と別途の経口剤形で容易に動物に投与することができる。前記飼料添加剤を動物飼料と別に投与する場合、当該技術分野に良く知られた通り薬剤学的に許容可能な食用担体と組み合わせて、直ちに放出または徐放性剤形で製造することができる。このような食用担体は、固体または液体、例えばとうもろこし澱粉、ラクトース、スクロース、豆フレーク、落花生油、オリーブ油、胡麻油およびプロピレングリコールでありうる。固体担体が使われる場合、飼料添加剤は、錠剤、カプセル剤、散剤、トローチ剤または含糖錠剤または、未分散性形態のトップドレッシングでありうる。液体担体が使われる場合、飼料添加剤は、ゼラチン軟質カプセル剤、またはシロップ剤や懸濁液、エマルジョン剤、または溶液剤の剤形でありうる。
【0046】
前記飼料は、動物の食餌欲求を充足させるのに通常的に使われる任意の蛋白質-含有有機穀粉を含むことができる。このような蛋白質-含有穀粉は、通常的にとうもろこし、豆穀粉、またはとうもろこし/豆穀粉ミックスで主に構成されている。
【0047】
また、前記飼料添加剤および飼料は、補助剤、例えば保存剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤、溶液促進剤などを含有することができる。前記飼料添加剤は、浸透、噴霧または、混合して動物の飼料に添加して利用されることができる。
【0048】
本発明の飼料または飼料添加剤は、哺乳類、家禽および魚類を含む多数の動物食餌に適用することができる。前記哺乳類として豚、牛、羊、ヤギ、実験用齧齒動物および実験用齧齒動物それだけでなく、愛玩動物(例:犬、猫)等に使えるし、前記家禽類として鶏、七面鳥、鴨、ガチョウ、キジおよびウズラなどにも使用できて、前記魚類として鱒などに利用されるが、これに限定されるのではない。
【発明の効果】
【0049】
上述した通り、本発明にともなう新規乳酸菌ラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、プロバイオティクスとして耐酸性、耐胆汁酸性および腸上皮細胞付着性が非常に優秀で整腸効果を持ち、Th1反応を促進する効果があってTh2反応過剰によるTh1/Th2の不均衡を調節する効果がある。したがって、本発明にともなう新規乳酸菌ラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、腸疾患治療用組成物および免疫増強用組成物として利用されるし、特にTh2反応過剰によるTh1/Th2の不均衡に誘発される疾患の予防または治療に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55の耐酸性実験結果を示すグラフである。
【図2】図2は、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55の耐胆汁酸性実験結果を示すグラフである。
【図3】図3は、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55の腸上皮細胞付着能実験結果を示すグラフである。
【図4】図4は、卵アルブミンを投与してTh2反応に偏向したマウスの脾臟細胞をラクトバチルス・プランタラムCJLP55菌株で処理した後Th1反応誘導サイトカインのIL-12の濃度を測定した結果を他の乳酸菌と比較して示すグラフである。
【図5】図5は、卵アルブミンを投与してTh2反応に偏向したマウスの脾臟細胞をラクトバチルス・プランタラムCJLP55菌株で処理した後Th2反応誘導サイトカインのIL-4の濃度を測定した結果を他の乳酸菌と比較して示すグラフである。
【図6】図6は、ラクトバチルス・プランタラムCJLP 55菌株でマクロファージ細胞株RAW264.7を処理した後、IL-12およびIL-10の濃度をELISAで測定した結果を他の乳酸菌と比較して示すグラフである。
【図7】図7は、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55菌株で樹状細胞細胞株JAWSIIを処理した後、IL-12およびIL-10の濃度をELISAで測定した結果を他の乳酸菌と比較して示すグラフである。
【図8】図8は、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55菌株でマクロファージ細胞株RAW264.7を処理した後、IL-12p40およびIL-18mRNAの発現をRT-PCRで測定した結果を他の乳酸菌と比較して示すグラフである。
【図9】図9は、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55菌株で樹状細胞細胞株JAWSIIを処理した後、IL-12p40およびIL-18mRNAの発現をRT-PCRで測定した結果を他の乳酸菌と比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明を下記実施例によってより一層具体的に説明する。しかし、これら実施例は本発明に対する理解を助けるためだけのものであって、どんな意味でも本発明の範囲がこれらによって制限されるのではない。
【0052】
実施例1:微生物ラクトバチルス・プランタラムCJLP55菌株の分離および同定
キムチから分離したラクトバチルス・プランタラムCJLP55菌株を1.5%寒天が含まれたMRS固体培地(Difco,USA)に塗抹して37℃で24時間培養した後、純粋分離したことが確認された集落を白金耳で取ってMRS液体培地(Difco,USA)で37℃で18-24時間培養した。
【0053】
その次に、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55菌株の形態および生理学的特性を、Kimなど(非特許文献12)の方法とAPI50CHおよびAPI50CHLキット(バイオメリオ社製品)を使って決めた。その結果確認されたCJLP55菌株の形態および生理学的特性を前記表1に整理した。
【0054】
また、乳酸菌同定および分類のために16S rRNA遺伝子の塩基配列を分析した。16S rRNA遺伝子の塩基配列決定および分析は、Kimなど(非特許文献13)の方法を使った。その結果確認されたラクトバチルス・プランタラムCJLP55の16SrRNA遺伝子の塩基配列は、後記配列表に記載した(SEQ ID NO:1)。
【0055】
ラクトバチルス・プランタラムCJLP55菌株は、16S rRNA塩基配列分析の結果、ラクトバチルス・プランタラム標準菌株(Lactobacillus plantarum NBRC 1589 1T、GenBank accession number AB326351)と最も高い相同性(99.9%)を現わし、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarm)と同定し、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55と命名し、生命工学研究院遺伝子銀行に2008年10月16日付で寄託した(受託番号KCTC 11401BP)。
【0056】
実施例2: ラクトバチルス・プランタラムCJLP55菌株の人工胃液での耐酸性実験および人工胆汁での耐胆汁性実験
人工胃液での耐酸性実験は、Kobayashiなど(非特許文献14)の実験を変形し て製造した人工胃液を使って行った。具体的に人工胃液は、MRS液体培地を1N HClでpH 2.5になるように調整し、ペブシンを1000ユニット/mlになるように添加した後滅菌して製造した。
【0057】
前記実施例1で分離および同定されたラクトバチルス・プランタラムCJLP55をMRS液体培地で37℃、18時間の間培養した菌体を遠心分離して乳酸菌を沈殿させ、滅菌食塩水(0.85%NaCl)で2回洗浄した後菌体懸濁液を対照培地と人工胃液に各々約107 cfu/ml水準で接種し、37℃で培養しながら接種から0および3時間後に生存菌数を測定した。総菌数は、KH2PO4、Na2HPO、L-システイン、HCl、Tween 80等が含まれた燐酸緩衝液(pH6.8)で10倍に希釈して測定した。
【0058】
人工胆汁での耐胆汁性実験は、Caseyなど(非特許文献15)の方法により行った。前記耐酸性評価で使われたMRS液体培地に雄牛胆汁を0.3%添加した後、前記耐酸性評価方法と同じ方法で、乳酸菌接種後0時間、12時間、24時間後に生存菌数を測定した。
【0059】
前記耐酸性評価および耐胆汁酸性評価で典型的な乳酸菌のLactobacillus casei(KCTC 3109)、Lactobacillus sakei CJLS118(KCTC 13416)、およびLactobaillus rhamnosus GG(KCTC 5033)に対しても同一に比較実験を遂行した。
【0060】
その結果を図1および図2に示した。図1はラクトバチルス・プランタラムCJLP55の耐酸性実験結果を示したグラフである。図2はラクトバチルス・プランタラムCJLP55の耐胆汁酸性実験結果を示したグラフである。
【0061】
図1および図2の結果によれば、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、比較実験した他の乳酸菌に比べて同等以上の耐酸性および耐胆汁酸性を持つことが明らかになった。これは本発明にともなう新規菌株が体内で胃液の影響を受けないで腸まで到達することができるし腸内では胆汁の影響を受けないで生存する可能性があることを現わす。
【0062】
実施例3:ラクトバチルス・プランタラムCJLP55菌株の腸上皮細胞に対する付着能実験
腸上皮細胞付着能試験のための動物細胞としてHT-29を韓国細胞株銀行(KCLB)で譲り受けて使い、実験方法は、キムなど(非特許文献16)とHiranoなど(非特許文献17)の方法を使った。
【0063】
HT-29細胞は、熱非活性化された10%牛胎児血清(FBS)、1% L-グルタミン、ペニシリンG (100 IU/mL)、そしてストレプトマイシン(100 mg/mL)が添加されたRPMI 1640(Gibco、USA)培地を利用して5% CO2存在下で37℃で培養させた。付着能実験と付着抑制能実験のためにHT-29細胞は、ウェル当たり1.0×105細胞/mLの数になるように24ウェル-プレートに播き、隔日で培地を交換して完全に単一層(monolayer)を形成するまで培養して実験に使った。完全単一層を形成したHT-29細胞は、25℃のPBS緩衝溶液を利用して5回洗浄して抗生剤が添加されなかったRPMI 1640培地0.5 mLを添加した。
【0064】
ラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、各々約1.0×109 cfu/mLの濃度になるようにRPMIに懸濁した後前記ウェルプレートに接種して5% CO2存在下で37℃で2時間の間培養を実施した。培養が完了した後付着しなかった乳酸菌の除去と洗浄にともなう付着能力を確認するために、3分間200rpmの速度で攪拌しながらPBS緩衝溶液を使って3回洗浄を実施した。洗浄が完了した後0.2%トリプシン-EDTAを加えて付着している細胞を引き離してペプトン(peptone)水を利用して連続希釈法でMRS-寒天に平板塗抹して37℃で24時間の間培養して菌数を測定した。
【0065】
別に、一部付着確認のために70%アルコールに一日程度漬けて完全殺菌されたカバーグラスをペトリ皿底に載せた後HT-29細胞を培養して上と同量の乳酸菌を添加して実験した。洗浄によって洗い流されないでHT-29細胞に付着したままの乳酸菌株は、乾燥した後Gram染色をして光学顕微鏡で観察して、菌数を測定した。Lactobacillus sakei CJLS118、およびLactobacillus rhamnosusGG(KCTC 5033)に対しても同一に比較実験を遂行した。
【0066】
その結果を図3に示した。図3は、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55の腸上皮細胞付着能実験結果を示すグラフである。
【0067】
図3の結果によれば、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、プロバイオティクス菌株として商業的に良く知られたLactobacillus rhamnosus GG(KCTC 5033)とLactobacillus sakei CJLS118に比べて24時間経過後腸上皮細胞付着能が優秀なことが明らかになったし、特にLactobacillus sakei CJLS118に比べて腸上皮細胞付着能が顕著に高いことが分かった。このような結果は本発明にともなう新規菌株が腸上皮細胞に付着して腸内環境を改善する可能性があることを現わす。
【0068】
実施例4:ラクトバチルス・プランタラムCJLP55菌株の安全性評価
前記実施例1で分離した菌株の安全性を評価するために韓国バイオベンチャー協会団体標準で提示した安全性評価試験法により溶血現象検査、ゼラチン液化反応検査、有害代謝産物(アンモニア)生成確認、フェニルアラニンデアミナーゼ検査を遂行した。
【0069】
その結果を下記表2に示した。
【表2】
【0070】
前記結果によれば、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55(Lactobacillus plantarum CJLP55)は、ゼラチン液化反応、有害代謝産物(アンモニア)生成、フェニルアラニンデアミナーゼ生成に対して陰性であり、溶血現象検査では病原性と関係がないと判定されるα-溶血が確認された。したがって、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、人体に投与できる安全な菌株であることが確認された。
【0071】
実施例5:マウス脾臟細胞処理後IL-12生成促進力評価
ラクトバチルス・プランタラムCJLP55(Lactobacillus plantarum CJLP55)菌株で、卵アルブミンを投与してTh2反応に偏向したマウスの脾臟細胞を処理したときのTh1反応誘導サイトカインのIL-12生成促進力を評価するために、Fujiwaraなど(非特許文献18)とFujiwaraなど(非特許文献19)を参考にして次のように実験を行った。
【0072】
免疫化のために、6週令の雌Balb/cマウス5匹を購入して、alum hydroxide(Sigma) 13 mg/mL溶液1.538 mL、卵アルブミン10 mgおよびPBS 0.4615 mLとよく混合して常温で20分間反応させた混合液をマウス当たり0.2 mL(1 mg OVA+2mg alum)ずつ腹腔に注射し、同じ量を6日目にまた腹腔に注射してブーストした。マウスを13日目に犠牲させて脾臟を摘出し、これから得られた脾臟細胞100μl(4x106細胞/mL)と試験対象菌の死菌50μlと卵アルブミン50μl(4mg/mL)を細胞培養ウェルプレートに加えてDMEM-10培地中で7日間10% CO2培養器で培養した。7日間培養した後、上清液を取ってIL-12 ELISAキットでアッセイ(Biosou rce)を遂行してIL-12の濃度を測定した。
【0073】
前記試験対象菌の死菌は、次のように獲得した。
【0074】
試験対象菌は、MRS液体培地(Difco)に接種して37℃で24時間培養し、13,000rpmで1分間遠心分離して得た菌体を生理食塩水に2回洗浄後菌体だけ取った。回収された菌体は動物細胞株接種試験のために原培養液体積と同一体積の滅菌蒸溜水で100℃で10分間加熱し、13,000rpmで1分間遠心分離をした後回収してDMEM培地に適当量希釈して細胞株培養液体積基準として50μg/mLと5μg/mLの濃度の菌体になるようにした。試験対象菌としてラクトバチルス・プランタラムC J LP55を使い、Lactobaillus rhamnosus GG(KCTC 5033)、Lactobacillus casei(KCTC 3109)、Lactobacillus sakei CJLS118(KCTC 13416)に対しても同じ実験を遂行してその結果を比較した。
【0075】
前記IL-12 ELISAキットを利用したIL-12アッセイは、IL-12 ELISAキットに提供された指示事項により実験を進行し、ELISA readerで測定されたO.D.値を測定してキットに供給したIL-12対照サンプルに対する検量式によりIL-12生成量を換算した。そのようにして得られた測定結果を図4に示した。
【0076】
図4は、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55菌株で卵アルブミンを投与してTh2反応に偏向したマウスの脾臟細胞を処理した後Th1反応誘導サイトカインのIL-12の濃度を測定した結果を他の乳酸菌と比較して示したグラフである。
【0077】
図4の結果によれば、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、Th1反応誘導サイトカインのIL-12の生成を他の乳酸菌に比べて顕著に促進させることが明らかになった。したがって、本発明にともなうラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、Th2反応に偏向したマウスでTh1反応を効果的に誘導するということを確認することができた。
【0078】
実施例6:マウス脾臟細胞処理後IL-4生成抑制力評価
ラクトバチルス・プランタラムCJLP55(Lactobacillus plantarum CJLP 55)菌株で、卵アルブミンを投与してTh2反応に偏向したマウスの脾臟細胞を処理時Th2反応誘導サイトカインのIL-4の生成抑制効果を確認するために、前記実施例5の方法でIL-12キットの代わりにIL-4キット(Biosource)を使うことだけ違って残り条件は同一に実験を行った。そのようにして測定した結果を図5に示した。
【0079】
図5は、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55菌株で卵アルブミンを投与してTh2反応に偏向したマウスの脾臟細胞を処理した後Th2反応誘導サイトカインのIL-4の濃度を測定した結果を他の乳酸菌と比較して示したグラフである。
【0080】
図5に示した結果によれば、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、Th2反応誘導サイトカインのIL-4サイトカインを抑制することによってTh2反応に偏向したマウス脾臟細胞でTh2反応に対する抑制効果があるということを確認することができた。
【0081】
実施例7: マクロファージおよび樹状細胞でTh1リンパ球分化誘導サイトカインIL-12p40およびIL-18の発現とTh1リンパ球分化抑制サイトカインのIL-10発現確認実験
マクロファージおよび樹状細胞のような抗原提示細胞(antigen presenting cell,APC)は、IL-12およびIL-18を生成してTh0リンパ球からTh1リンパ球への分化を誘導して、他の一方ではIL-10を生成してTh1リンパ球への分化誘導を抑制する。本発明にともなう乳酸菌がマクロファージおよび樹状細胞のIL-12、IL-10、IL-18の生成に及ぼす影響を評価するために次のような実験を遂行した。
【0082】
試験対象菌をマクロファージ細胞株のRAW264.7に5×107/mL濃度で処理して37℃、10% CO2培養を48時間の間遂行した後培地を取ってELISA方法でIL-12 p40およびIL-10の濃度を測定した。また、樹状細胞細胞株のJAWSIIにも同じ方法で試験対象菌を接種および培養した後培地を取ってIL-12p40およびIL-10の生成量を測定した。
【0083】
前記試験対象菌としてラクトバチルス・プランタラムCJLP55を使い、陽の対照群としてリポポリサッカライドを使い、Lactobaillus rhamnosus GG(KCTC 5033)、Lactobacillus casei(KCTC 3109)、Lactobacillus sakei CJLS118(KCTC 13416)に対しても同じ実験を遂行してその結果を比較した。
【0084】
前記ELISA方法による濃度測定は、IL-12の濃度を測定できるIL-12p40キット(BD Biosciences、USA)およびIL-10の濃度を測定できるIL-10キット(BD Bios ciences、USA)を利用して製造会社の指針により遂行した。そのようにして測定されたそれぞれの結果を図6および図7に示した。
【0085】
図6は、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55菌株でマクロファージ細胞株RAW264.7を処理した後、IL-12およびIL-10の濃度をELISAで測定した結果を他の乳酸菌と比較して示したグラフである。
【0086】
図7は、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55菌株で樹状細胞細胞株JAWSIIを処理した後、IL-12およびIL-10の濃度をELISAで測定した結果を他の乳酸菌と比較して示したグラフである。
【0087】
図6および7の結果によれば、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、Th1分化誘導サイトカインのIL-12サイトカインを生成させて、Th1分化抑制サイトカインIL-10の生成は、IL-12に比べて顕著に少なく生成させることを確認できるし、他の乳酸菌に比べてIL-12の生成を顕著に増加させるということが分かる。
【0088】
また、遺伝子水準(level)でのIL-12およびIL-18の生成を確認するために試験対象菌でマクロファージ細胞株のRAW264.7を5×107/mL濃度で処理して、37℃、10% CO2培養を6時間の間遂行した後総RNAを抽出してRT-PCR方法でIL-12とIL-18 mRNAの生成量を測定した。樹状細胞細胞株のJAWSIIにも同じ方法で試験対象菌を接種および培養した後RNAを抽出してRT-PCR方法でIL-12とIL-18 mRNAの生成量を測定した。
【0089】
そのようにして、測定されたそれぞれの結果を図8および図9に示した。
【0090】
図8は、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55菌株でマクロファージ細胞株RAW264.7を処理した後、IL-12 p40およびIL-18mRNAの発現をRT-PCRで測定した結果を他の乳酸菌と比較して示したグラフである。
【0091】
図9は、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55菌株で樹状細胞細胞株JAWSIIを処理した後、IL-12p40およびIL-18mRNAの発現をRT-PCRで測定した結果を他の乳酸菌と比較して示したグラフである。
【0092】
図8および9の結果によれば、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、Th1分化誘導サイトカインのIL-12およびIL-18の生成を指示するmRNAの生成を促進させるということが分かった。
【0093】
実施例8: ラクトバチルス・プランタラムCJLP55(Lactobacillus plantarum CJLP55)を含む生菌剤の製造
前記実施例1で同定されたプロバイオティクスのラクトバチルス・プランタラムCJLP55(Lactobacillus plantarum CJLP55)を医薬品、食品、飼料、飼料添加剤、または化粧品の原料で使用するために大量生産して、これを凍結乾燥して生菌剤化した。
【0094】
菌の生産のためにMRS液体培地(Difco)で25% NaOH溶液を使ってpHを6.0で調節しながら37℃で約18時間培養をし、遠心分離を遂行して菌体を回収した。回収した菌体はデキストリン5%と脱脂牛乳10%を凍結保護剤として使って-40℃で凍結後37℃で乾燥した菌体をミキサーで砕いて粉体化した。粉体化した生菌は目標にする菌数に合わせるために適当量の葡萄糖、乳糖、脱脂牛乳などのような賦形剤と混合し、密封できるアルミニウムパウチに入れて保管した。
【0095】
このように製造された生菌剤は飼料の原料で使われる穀物粉と混合したり、錠剤、カプセルなどの医薬品の担体または添加剤などと混合したり、化粧品に使われる原料と混合したりして、医薬品、食品、飼料、化粧品など多様な分野に当該技術分野で通常の方法により活用することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なラクトバチルス・プランタラム及びこれを含む組成物に係り、より具体的には腸疾患及び免疫疾患の予防治療に有用な新規なラクトバチルス・プランタラム及びこれを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
キムチのような伝統発酵食品に豊富に存在する乳酸菌は、人体の消化管に共生しながら繊維質および複合蛋白質を分解して重要な栄養成分を作る役割を担当しており、このように人を含んだ動物の胃腸管内で宿主の腸内微生物環境を改善して宿主の健康に有益な影響を与える生きている微生物を総称してプロバイオティクス(probiotics)という。プロバイオティクス(probiotics)として効果があるためには経口で摂取して小腸に到達して腸表面に付着して維持されなければならないので、基本的に耐酸性、耐胆汁酸性、および腸上皮細胞付着能力が優秀でなければならない。
【0003】
キムチのような伝統醗酵食品に存在する代表的なプロバイオティクスとしてラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)乳酸菌がある。ラクトバチルス属微生物は、同型または異型発酵をする乳酸桿菌として人を含んだ動物の腸管および乳製品や野菜の発酵過程でよく見ることができる。ラクトバチルス属微生物は、腸内pHを酸性に維持し、大腸菌(E. coli)やクロストリジュウム(Clostridium)のような有害菌の繁殖を抑制し、下痢と便秘を改善するだけでなく、ビタミン合成、抗癌作用、血清コレステロール低下などの役割をすると知られている。乳酸桿菌によって生産されるアシドフィリン(acidophilin)は、赤痢菌、サルモネラ菌、ブドウ状球菌、大腸菌などの成長を阻害することが知られている。また、下痢原因菌の増殖を抑制して腸内菌叢を正常化することで下痢を止める作用をする(非特許文献1及び非特許文献2)。
【0004】
ラクトバチルス属微生物の前記特性を利用して生菌剤および家畜飼料を開発しようとする研究が活発に進行している。家畜の細菌性下痢病は、体重減少、さらには死を誘発する。したがって、これを予防して家畜の生産を高めようと飼料に抗生剤を添加することが一般的に広く行われてきた。しかし、抗生物質に対する耐性菌の出現と畜産物内の残留抗生物質などの問題のために飼料内抗生物質の使用が規制され、有機的な家畜飼養法が推奨されている(特許文献1)(非特許文献3)。
【0005】
また、ラクトバチルス属微生物のような乳酸菌は、免疫増強効果を持つことでも知られている。最近全世界的に環境汚染とインスタント食品摂取の増加などの影響と予測される免疫調節異常と関連したアレルギーおよびアトピー疾患が急激に増加していて、韓国でも同じようにこのような疾患が増加傾向にある。最近ヨーロッパでは乳酸菌を経口投与して病気を治療する微生物治療(bacteriotheraphy)の一環として乳酸菌で病の症状を緩和したり改善する努力が行われている。ラクトバチルス・ラムノサスGG(Lactobacillus rhamnosus GG)を乳児に投与するとアトピー発生が半分に減少したし(非特許文献4)、すでにアトピー湿疹が進行中の子供にラクトバチルス・ラムノサス(Lactobaci llusrhamnosus)とラクトバチルス・ロイテリ(L. reuteri)を投与した場合、湿疹部位および程度が減少したという報告がある(非特許文献5)。
【0006】
このような乳酸菌の免疫増強のメカニズム(mechanism)に対してずっと研究が進行されていて、具体的なメカニズムに対してはまだ明確に明らかになることはなかったが、経口的に導入されて腸内で棲息することで腸管免疫系に影響を及ぼすことが広く知られている。例をあげれば、ヨーグルトを通した乳酸菌摂取はPeyer's patchのリンパ球の抗菌活性を増加させると報告されていて、実験動物および人を対象に実行された研究によれば乳酸菌は、IgAの反応を強化させると報告されている。また、乳酸菌は、先天性免疫および適応性免疫に影響を及ぼす。腸管免疫系の先天免疫反応(innate immunity)では病原菌を認識して死滅させることで感染に対抗して健康を維持する役割をすることが知られている。適応免疫(adaptive immunity)では、病原体を貪食し抗原をTリンパ球に提示する役割をするマクロファージを活性化して多様なサイトカイン、特にインターロイキンIL-12、IL-18の生産を増加させることが知られている。この点に関して、乳酸菌細胞壁構成成分中の一部がマクロファージでNF-κB、STAT信号伝達を活性化させることによってサイトカインの産生を刺激することが知られている。また、乳酸菌は、特化された抗原提示細胞としてリンパ節および消化管の粘膜にたくさん存在する樹状細胞でIL-12、IL-18、T N F-αの産生を増加させるのはもちろんMHC class IIおよびB7-2のようなTリンパ球を活性化させる表面分子の発現も増加させる(非特許文献6)。
【0007】
Tリンパ球は、適応免疫(adaptive immunity)の中心になる。適応免疫は、細胞性免疫のTh1反応と抗体性免疫のTh2反応に分けることができる。Th1およびTh2それぞれの反応では抗原提示細胞が生産するサイトカインが互いに異なり、Th1反応ではIL-12、IL-18、インターフェロン(IFN)生産が優勢で、Th2反応ではPGE2、IL-4、IL-10生産が優勢である。このようなTh1反応およびTh2反応は、適切な均衡が成り立つべきで、均衡がこわれると各種免疫疾患が現れる。Th1細胞は主に感染症と戦う反面、Th2細胞は主にアレルギーと炎症性反応に関与する。これらが正常に作用する時、Th2細胞はホコリおよびその他願わない物質から身体を保護するが、万一、これら細胞が過度な活性を現わす場合IgE抗体生産が過度に増加して人体に対して通常は抗原性でない蛋白質(例:花粉、食物など)にアレルギー反応を誘発させる。したがって、Th1反応とTh2反応は必ず均衡を維持するべきで、万一、この中で一つが過剰や不足になれば病気が誘発される。また、続くストレスによってコルチゾールが持続的に遊離すればTh1反応が低下してTh2反応が増加することになって、癌、アトピー、アレルギーおよび自家免疫疾患が誘発される(非特許文献7)。
【0008】
In vivoで乳酸菌は、Tリンパ球において、Th1サイトカインのIFN-γの産生を刺激するが、Th2サイトカインのIL-4、IL-5の産生を抑制するという報告がなされている(非特許文献8)。また、他の実験では、Th2反応動物モデルの卵アルブミン(Ovalbumin)を投与してTh2反応に偏向したマウス(ovalbumin-primed mice)に乳酸菌を経口投与すると、脾臟細胞でIFN-γが増加したが、IL-4、IL-5およびIgEが減少した。また、卵アルブミン(Ovalbumin)を投与してTh2反応に偏向したマウスから摘出した脾臟細胞を乳酸菌と共に培養したときにもサイトカインおよびIgEの変化が経口投与実験と同様に起こった。しかし、Tリンパ球だけを乳酸菌と共に培養してもIFN-γレベルが有意に増加しなかったので、Tリンパ球のIFN-γ産生には、マクロファージ、樹状細胞のような抗原提示細胞が必ず必要なようである(非特許文献9)。IL-12およびIL-18は、Th0リンパ球をTh1リンパ球に分化させるのに重要なサイトカインとしてマクロファージまたは樹状細胞で産生される。脾臟細胞またはマクロファージは、培養時乳酸菌で処理すれば濃度依存的にIL-12、IL-18およびIFN-αの産生が増加することが知られている。このように乳酸菌は、マクロファージでIL-12、IL-18およびIFN-αの産生を増加させ、従ってTh1細胞への分化を促進してこれらのIFN-γ産生を誘導するので、Th2が優勢な状況でTh1/Th2均衡を合わせる作用をすることができる(非特許文献6)。したがって、乳酸菌は、Th2反応過剰により引き起こされるTh1/Th2不均衡によって誘発される癌、アトピー、アレルギー、および自家免疫疾患のような免疫疾患を予防または治療するのに役に立つと報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国特許公開1998-78358
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Michael and Philippe, Probiotics and prebiotics: Ef fects on diarrhea, The journal of nutrition, Volume 137, March 2007, pages 803S-811S
【非特許文献2】Roberfroid, Prebiotics and probiotics: Are they funct ional foods、American journal of clinical nutrition, Volume 71, June 2000, pages 1682S-1687S
【非特許文献3】McEwen and Fedorka-Cray, Antimicrobial use and resis tance in animals, Clinical infectious Diseases, Volume 34, June 2002, pages S93-S 106
【非特許文献4】Kalliomaki et. al. 、Probiotics in primary prevention of atopic disease: a randomized place bo-controlled trial、Lancet、Volume 357、April 2001、pages 1076-1079
【非特許文献5】Rosenfeldt et. al.、Effect o f probiotic Lactobacillus strains in children with atopic dermatitis、Dermatologic and ocular dis eases、Volume 111、February 2003、pages 389-395
【非特許文献6】Cross et. al.、Anti-allergy properties of fermented f oods: an important immunoregulatory mechanism of lactic acid bacteria、 International Immu nopharmacology、Volume 1、May 2001, pages 891-901
【非特許文献7】Elenkov and Chrousos、 Stress hormones、 Th1/Th2 pat terns、pro/anti-inflammatory cytokines and susceptibility to disease、T rends in Endocrinology and Metabolism、Volume 10、November 1999、pages 359-368
【非特許文献8】Matsuzaki et. al.、The effect of oral feeding of Lact obacillus casei strain Shirota on immunoglobulin E production in mice、Journal of Dairy Science、Volume 81、January 1998、pages 48-53
【非特許文献9】Kato et. al.、Lactic acid bacterium potently induces the production of interleu kin-12 and interferon-gamma by mouse splenoc ytes、International Journal of Immunopharmacology、Volume 21、February 1999,pages 121-131
【非特許文献10】Miraglia et. al、Immune dysregulation in atopic dermati tis、Allergy and Asthma Proceedings、Volume 27、November-December 2006、pages 451-455
【非特許文献11】Remington's Pharmaceutical Sciences (19th ed.、1995)
【非特許文献12】Kim et. al.、Le uconostoc inhae sp. nov.、a lactic acid bacterium isolated from kimchi, International Journal of Systematic and Evolutional Microbiology、Volume53、July 2003、pages 1123-1126
【非特許文献13】Kim et. al.、Leucon ostoc kimchii sp. nov.、a new s pecies from kimchi. International Journal of Systematic and Evolutional Microbiology,Volume50,September 2000,pages 1915-1919
【非特許文献14】Kobayashi et. al.、Studies on biological character istics of Lactobacillus: II. Tolerance of the multiple antibiotic resis tance strain,L. casei PSR3002, to artificial digestive fl uids. Japan J ournal of Microbiology. Volume 29、July 1974、pages 691- 697)
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【非特許文献16】Kim et. al.、Probiotic properties of Lactobacillus and Bifidobacterium strains isolated from p orcine gastrointestinal tract、Applied Microbiology and Biotechnolog y、Volume 74、April 2007、pages 1103-1111
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【非特許文献18】Fujiwara et. al. A double-blind trial of Lactobac illus para casei strain KW3110 administration for immunomodulation in p atients with pollen allergy、Allergology International、2005、volume 54、pages 143-149
【非特許文献19】Fujiwara et. al.、The anti-allergic effects of la cti cacid bacteria are strain dependent and mediated by effects on both Th1/Th2 cytokine expression and balance、International Archives of Allergy and I mmunology、2004、Volume135、pages 205-215
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者は、従来知られている乳酸菌に比べてTh2反応過剰によるTh1/Th2不均衡を調節する効果が非常に優秀な新しい乳酸菌を開発するために研究した結果、韓国の伝統発酵食品から新規なラクトバチルス属乳酸菌菌株を分離、同定して本発明を完成することになった。
【0012】
したがって、本発明の目的は、プロバイオティクスとしての基本性質の耐酸性、耐胆汁酸性、腸上皮細胞付着能が優秀なだけでなく、免疫増強効果、特にTh2反応過剰によるTh1/Th2不均衡を調節する効果が優秀な新規なラクトバチルス属乳酸菌菌株を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、前記ラクトバチルス属乳酸菌菌株を含む腸疾患の予防または治療用組成物を提供することである。
【0014】
本発明のまた他の目的は、前記ラクトバチルス属乳酸菌菌株を含む免疫増強用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明は、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55(Lactobacillus plantarumCJLP55)(寄託機関:生命工学研究院遺伝子銀行、寄託日時:2008.10.16、受託番号:KCTC 11401BP)を提供する。
【0016】
また、本発明は、前記ラクトバチルス・プランタラムCJLP55を含む腸疾患の予防または治療用組成物を提供する。
【0017】
また、本発明は、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55を含む免疫増強用組成物を提供する。
【0018】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0019】
本発明にともなうラクトバチルス・プランタラムCJLP55(Lactobacillus plantarum CJLP55)は、韓国の伝統発酵食品から分離および同定されたラクトバチルス・プランタラムの新規な菌株である。前記伝統発酵食品には、キムチ、野菜発酵物、味噌、醤油、清麹醤または塩辛などがあるが、これに限定されることはない。
【0020】
本発明のラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、微生物の同定および分類のための16S rRNA塩基配列分析の結果、ラクトバチルス・プランタラム標準菌株(Lactobacillus plantarum NBRC15891T、GenBank accession number AB326351)と最も高い相同性(99.9%)を現わしてラクトバチルス・プランタラムと最も高い分子系統学的関係を見せた。したがって、前記微生物をラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)と同定して、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55と命名し、生命工学研究院遺伝子銀行に2008年10月16日付で寄託した(受託番号KCTC 11401BP)。ラクトバチルス・プランタラムCJLP55の16S rRNA遺伝子の塩基配列は、本明細書に添付された配列表SEQ ID NO.1で表される。
【0021】
本発明のラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、グラム陽性菌であり好気的条件と嫌気的条件で全部成長が可能な通性嫌気性(facultive anaerobe)であり胞子を形成しないで運動性がなくて細胞の形態は、桿菌状である。ラクトバチルス・プランタラムCJLP55のより具体的な形態および生理学的特性は、当該技術分野の通常の方法により分析した結果下記の表1と同じであることが分かった。
【表1】
【0022】
本発明のラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、長期間安定的に保存するためには水にグリセロール成分を一定量混合して作った保管溶液に菌体を-70℃で保管したり、滅菌された10%脱脂乳に懸濁して凍結乾燥することが好ましい。
【0023】
また、本発明のラクトバチルス・プランタラム CJLP55は、プロバイオティクスとして乳酸菌の一般的な整腸効果および免疫増強効果を持つ。
【0024】
本発明において、'プロバイオティクス(probiotics)'は、人を含んだ動物の胃腸管内で宿主の腸内微生物環境を改善して宿主の健康に有益な影響を与える生きている微生物という意味で理解される。プロバイオティクスは、プロバイオティク活性を持って生きている微生物で単一または複合菌株形態で人や動物に乾燥された細胞形態や発酵産物形態で摂取される場合、宿主の腸内菌叢に有益な影響を及ぼすことができる。このようなプロバイオティク微生物であるためには一番目で、胃液と胆汁での影響を少なく受けながら胃を通過して腸で生存できなければならず、腸内に定着して生存が可能で宿主の腸内菌叢に有益な影響を及ぼすべきである。したがって、胃酸に対する耐酸性、胆汁酸に対する耐胆汁酸性および腸上皮細胞に対する付着性を持たなければならない。二番目で、プロバイオティク微生物であるためには、微生物の安全性に問題があってはならなくて、これと関連しては一般的にゼラチン液化反応検査、フェニルアラニン脱アミン生成検査、アンモニア生成検査、溶血性実験検査などが遂行される。本発明にともなうラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、優秀な耐酸性、胆汁酸に対する耐胆汁酸性及び腸上皮細胞に対する付着性を持つだけでなく、ゼラチン液化反応検査、フェニルアラニン脱アミン生成検査およびアンモニア生成検査で陰性を示し、溶血性実験検査では病原性と関係がないと判定されるα-溶血が確認されて安全なことが分かった。
【0025】
本発明にともなうラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、耐酸性、耐胆汁酸性および腸皮細胞付着性が非常に優秀で整腸効果が予想される。したがって、本発明は、他の側面において、ラクトバチルス・プランタラムCJLP 55を含む腸疾患の予防または治療用組成物を提供する。
【0026】
前記本発明にともなう微生物を含む腸疾患の予防または治療用組成物は、人、および牛、馬、豚のような家畜を含む哺乳動物の腸疾患の予防または治療に利用される。前記'腸疾患'とは、腸有害細菌感染および炎症性腸疾患を全部含み、例えば病原性微生物(大腸菌、サルモネラ、クロストリジウムなど)による感染性下痢、胃腸炎、炎症性腸疾患、神経性腸炎症候群、小腸微生物過成長症、腸急性下痢などを含むが、これに限定されることはない。前記腸疾患治療用組成物に含まれるラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、生菌体または死菌体として存在することができるが、生菌体として存在することが好ましい。一般的に生菌体は、腸内細菌叢の異常発酵によって引き起こされる諸症状を治療して改善する効果があって人および動物に投与すれば腸内の消化管壁に定着して有害菌が定着できないようにする作用をしながら、乳酸を生成して腸内のpHを低くして有害細菌が増殖できないようにする。また、投与された生菌体は、バクテリオシン(bacteriocin)と過酸化物を生成して病原菌の増殖を抑制して栄養分の吸収を担当する腸絨毛の活動を助ける。この他にも、栄養素の吸収と利用を助ける物質を生成して、動物において飼料要求率を改善させて、病原菌が生成する毒性物質を中和する物質を生成したりもする。
【0027】
前記本発明の腸疾患の予防または治療用組成物の投与方法は、特に限定されることはないが、経口で投与することが好ましい。投与量は、腸疾患の種類、疾患の程度、年齢、性別、人種、治療または予防目的などにより変わるが、一般的に成人を基準として一日に1千万細胞〜1000億細胞を投与することができる。
【0028】
また、本発明のラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、整腸効果その他にも従来の乳酸菌に比べて顕著に優秀な免疫増強効果を持つ。ラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、脾臟細胞(splenocyte)でTh1反応を誘導するIL-12の生成を増加させて、Th2反応を誘導するIL-4の生成を抑制する。また、抗原提示細胞としてT細胞免疫反応を調節するマクロファージおよび樹状細胞のような免疫調節性細胞を刺激してTh0リンパ球のTh1リンパ球への分化を誘導するサイトカインの生成を促進させてTh2反応の過剰によるTh1/Th2不均衡を調節できる免疫調節力がある。以下、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55の免疫増強効果に対してより具体的に説明する。
【0029】
ラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、陰性対照群に比べて、卵アルブミン(OVA)を投与してTh2反応に偏向させたマウスの脾臟細胞(spleenocyte)を処理したとき、Th1反応を誘導するサイトカインのIL-12を12.4-12.7倍高く生成し、Th2反応を誘導するサイトカインのIL-4の生成を6.1 - 9.8%水準で抑制した。これは他の典型的な乳酸菌Lactobacillus rhamnosusGG(KCTC5033)、Lactobacillus casei(KCTC 3109)、Lactobacillus sakei CJLS118(KCTC13416)に比べて、本発明の新規な菌株が免疫調節活性の点で顕著に優秀であることを意味する。したがって、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、Th2反応を抑制しTh1反応を促進して、Th2反応の過剰によるTh1/Th2不均衡を調節する免疫調節力があるといえる。
【0030】
また、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55(Lactobacillus plantarum CJLP55)をマクロファージ細胞株RAW264.7および樹状細胞JAWSIIと共に培養したところ、乳酸菌数が増加し、マクロファージ細胞株を刺激して免疫反応を増強させるということが確認された。マクロファージ細胞株RAW264.7と樹状細胞株JAWSIIをラクトバチルス・プランタラムCJLP55で処理した結果、Th1分化誘導サイトカインIL-12、IL-18生成を促進し、Th1分化誘導抑制サイトカインのIL-10はIL-12の生成量に比べて相対的に少なく生成することによってTh1分化誘導を促進することが確認された。したがって、このような実験結果からもラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、Th2反応を抑制しTh1反応を促進して、Th2反応の過剰によるTh1/Th2不均衡を調節する免疫調節力があるといえる。
【0031】
IL-4は、Th2細胞で産生され、特異的に細胞免疫反応の中枢的な役割をし、Th1細胞のサイトカインのIL-12の生産を抑制する抗炎症性サイトカイン(anti-inflammatory cytokine)の機能も持つ。最近、アトピー皮膚炎患者の末梢血液と皮膚病変にはIL-4、IL-5を主に生産するTh2細胞が相対的に増加するということが報告された(非特許文献10)。したがって、Th2反応過剰によるTh1/Th2の不均衡は、アトピーのような疾患を誘発する。また、既に述べたように、Th1反応とTh2反応の中の一つが過剰または不足すれば病気が引き起こされて、Th1反応が低下してTh2反応が増加し、癌、アトピー、アレルギーおよび自家免疫疾患が引き起こされることが知られている(非特許文献7)。したがって、本発明にともなうラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、免疫調節と関連したTh1細胞、Th2細胞、マクロファージおよび樹状細胞が生産するサイトカインを調節してTh2反応過剰によるTh1/Th2の不均衡を調節することによって、アトピー、アレルギーのような病気に対し効果的に作用する可能性があることを期待できるだけでなく、癌および自家免疫疾患の予防または治療にも効果があると期待される。
【0032】
したがって、本発明は、他の側面において、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55を含む免疫増強用組成物を提供する。本発明にともなう免疫増強用組成物は、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55が前記のように免疫反応を増強するのに効果的な乳酸菌であるので、免疫増強効果がある。特に、本発明にともなう免疫増強用組成物は、下記実施例で立証される通り、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55がTh1反応の促進効果を持ちTh2反応過剰によるTh1/Th2の不均衡を調節する効果があるので、Th2反応過剰によるTh1/Th2の不均衡に誘発される疾患の予防または治療に効果がある。したがって、本発明にともなう免疫増強用組成物は、アトピー、アレルギー、癌および自家免疫疾患の予防または治療に効果的に使われることができる。前記自家免疫疾患は喘息、枯草熱などを含むが、これに限定されることはない。
【0033】
前記本発明の免疫増強用組成物の投与方法は、特に限定されるものではないが、経口で投与することが好ましい。投与量は、免疫増強が必要な疾患の種類、疾患の程度、年齢、性別、人種、治療または予防目的などにより変わるが、一般的に成人に対して一日に1千万細胞〜1000億細胞を投与することができる。
【0034】
前記本発明にともなう腸疾患の予防または治療用組成物および免疫増強用組成物は、安全性が立証された本発明のラクトバチルス・プランタラムCJLP55を含むので副作用などの憂慮なしで医薬品、食品、化粧品、飼料、または飼料添加剤として利用することができる。
【0035】
前記本発明にともなう組成物が医薬品として利用される場合には、当該技術分野で知られている通常の薬剤学的剤形で製剤化されることができる。前記医薬品は、好ましくは経口剤形に製剤化されるし、例えば液剤、懸濁剤、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤またはエキス剤のような経口投与用剤形で製剤化されることができる。
【0036】
前記それぞれの剤形で製剤化時、それぞれの剤形の製造に必要な薬剤学的に許容可能な担体または添加剤を付加して製造することができる。代表的な経口投与用剤形で製剤化時前記担体として希釈剤、滑剤、結合剤、崩解剤、甘味剤、安定剤および防腐剤の1種以上を選択して使えるし、添加剤では香料、ビタミン類および抗酸化剤の1種以上を選択して使うことができる。
【0037】
前記担体および添加剤は、薬剤学的に許容可能であれば全部可能で、具体的に希釈剤では乳糖、とうもろこし澱粉、大豆油、微晶質セルロース、またはマンニトール、滑剤ではステアリン酸マグネシウムまたはタルク、結合剤ではポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。また、崩解剤ではカルボキシメチルセルロースカルシウム、澱粉グリコール酸ナトリウム、ポラクリリンカリウムまたはクロスポビドン、甘味剤では白糖、果糖、ソルビトール、または、アスパルテーム、安定剤ではカルボキシメチルセルロースナトリウム、β-シクロデキストリン、白蝋、またはキサンタンゴム、防腐剤ではパラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、または、ソルビン酸カリウムが好ましい。
【0038】
また、前記成分の他にも、公知の添加剤として味覚を改善するために、梅の実香り、レモン香り、パイナップル香り、ハーブ香りなどの天然香料、天然果汁、クロロフィリン、フラボノイドなどの天然色素、果糖、蜂蜜、糖アルコール、砂糖などの甘味成分、または、クエン酸、クエン酸ナトリウムなどの酸味剤、またはこれらの混合物を使うこともできる。
【0039】
このような製剤化方法および製剤化時必要な担体および添加剤に対しては非特許文献11に詳細に記載されている。
【0040】
前記本発明にともなう組成物は、食品として利用することもできる。前記食品は健康機能食品それだけでなく、人間が広く通常的に毎日摂取する一般的な食品を含む。健康機能食品として利用される場合、食品学的に許容可能な担体または添加剤とともに当該技術分野で知られている通常の健康機能食品の剤形で製剤化されることができる。前記健康機能食品は、例えば散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ剤、液剤、エキス剤、茶、ジェリー、または飲み物などで製造されることができる。前記食品学的に許容可能な担体または添加剤は、製造しようと思う剤形の製造に当該技術分野で使用可能になることが知られている任意の担体または添加剤が利用されることができる。
【0041】
前記本発明にともなう組成物は、アトピーの予防または治療効果を持つので、化粧品として利用されることもできる。前記本発明にともなう組成物が化粧品として利用される場合には当該化粧品技術分野で知られている通常の剤形の多様な化粧品で製造されることができる。前記それぞれの剤形で製剤化時、それぞれの剤形の製造に必要な化粧品の製造に許容可能な担体または添加剤を付加して製造することができる。
【0042】
前記本発明にともなう組成物は、飼料添加剤または、飼料として利用される ことができる。
【0043】
飼料添加剤として利用される場合、前記組成物は、20ないし90%高濃縮液や粉末または顆粒形態で製造されることができる。前記飼料添加剤は、クエン酸、フマル酸、アジピン酸、乳酸、リンゴ酸などの有機酸や燐酸ナトリウム、燐酸カリウム、酸性ピロ燐酸塩、ポリ燐酸塩(重合燐酸塩)等の燐酸塩や、ポリフェノール、カテキン、α-トコフェロール、ローズマリー抽出物、ビタミンC、緑茶抽出物、甘草抽出物、キトサン、タンニン酸、フィチン酸などの天然抗酸化剤の一つまたは一つ以上を追加で含むことができる。飼料として利用される場合、前記組成物は、通常の飼料形態で製剤化されるし、通常の飼料成分を共に含むことができる。
【0044】
前記飼料添加剤および飼料は、穀物、例をあげれば粉砕または破砕されたコムギ、燕麦、麦、とうもろこしおよび米;植物性蛋白質飼料、例をあげればアブラナ、豆、およびひまわりを主成分とする飼料;動物性蛋白質飼料、例をあげれば血粉(blood powder)、肉粉、骨粉および魚粉;糖分および乳製品、例をあげれば各種粉乳および乳状粉末で成り立つ乾燥成分などをさらに含めるし、その他にも栄養補充剤、消化および吸収向上剤、成長促進剤などをさらに含むことができる。
【0045】
前記飼料添加剤は、動物に単独で投与したり食用担体中で他の飼料添加剤と組み合わせて投与することもできる。また、前記飼料添加剤は、トップドレッシングとしてまたはこれらを動物飼料に直接混合したりまたは飼料と別途の経口剤形で容易に動物に投与することができる。前記飼料添加剤を動物飼料と別に投与する場合、当該技術分野に良く知られた通り薬剤学的に許容可能な食用担体と組み合わせて、直ちに放出または徐放性剤形で製造することができる。このような食用担体は、固体または液体、例えばとうもろこし澱粉、ラクトース、スクロース、豆フレーク、落花生油、オリーブ油、胡麻油およびプロピレングリコールでありうる。固体担体が使われる場合、飼料添加剤は、錠剤、カプセル剤、散剤、トローチ剤または含糖錠剤または、未分散性形態のトップドレッシングでありうる。液体担体が使われる場合、飼料添加剤は、ゼラチン軟質カプセル剤、またはシロップ剤や懸濁液、エマルジョン剤、または溶液剤の剤形でありうる。
【0046】
前記飼料は、動物の食餌欲求を充足させるのに通常的に使われる任意の蛋白質-含有有機穀粉を含むことができる。このような蛋白質-含有穀粉は、通常的にとうもろこし、豆穀粉、またはとうもろこし/豆穀粉ミックスで主に構成されている。
【0047】
また、前記飼料添加剤および飼料は、補助剤、例えば保存剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤、溶液促進剤などを含有することができる。前記飼料添加剤は、浸透、噴霧または、混合して動物の飼料に添加して利用されることができる。
【0048】
本発明の飼料または飼料添加剤は、哺乳類、家禽および魚類を含む多数の動物食餌に適用することができる。前記哺乳類として豚、牛、羊、ヤギ、実験用齧齒動物および実験用齧齒動物それだけでなく、愛玩動物(例:犬、猫)等に使えるし、前記家禽類として鶏、七面鳥、鴨、ガチョウ、キジおよびウズラなどにも使用できて、前記魚類として鱒などに利用されるが、これに限定されるのではない。
【発明の効果】
【0049】
上述した通り、本発明にともなう新規乳酸菌ラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、プロバイオティクスとして耐酸性、耐胆汁酸性および腸上皮細胞付着性が非常に優秀で整腸効果を持ち、Th1反応を促進する効果があってTh2反応過剰によるTh1/Th2の不均衡を調節する効果がある。したがって、本発明にともなう新規乳酸菌ラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、腸疾患治療用組成物および免疫増強用組成物として利用されるし、特にTh2反応過剰によるTh1/Th2の不均衡に誘発される疾患の予防または治療に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55の耐酸性実験結果を示すグラフである。
【図2】図2は、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55の耐胆汁酸性実験結果を示すグラフである。
【図3】図3は、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55の腸上皮細胞付着能実験結果を示すグラフである。
【図4】図4は、卵アルブミンを投与してTh2反応に偏向したマウスの脾臟細胞をラクトバチルス・プランタラムCJLP55菌株で処理した後Th1反応誘導サイトカインのIL-12の濃度を測定した結果を他の乳酸菌と比較して示すグラフである。
【図5】図5は、卵アルブミンを投与してTh2反応に偏向したマウスの脾臟細胞をラクトバチルス・プランタラムCJLP55菌株で処理した後Th2反応誘導サイトカインのIL-4の濃度を測定した結果を他の乳酸菌と比較して示すグラフである。
【図6】図6は、ラクトバチルス・プランタラムCJLP 55菌株でマクロファージ細胞株RAW264.7を処理した後、IL-12およびIL-10の濃度をELISAで測定した結果を他の乳酸菌と比較して示すグラフである。
【図7】図7は、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55菌株で樹状細胞細胞株JAWSIIを処理した後、IL-12およびIL-10の濃度をELISAで測定した結果を他の乳酸菌と比較して示すグラフである。
【図8】図8は、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55菌株でマクロファージ細胞株RAW264.7を処理した後、IL-12p40およびIL-18mRNAの発現をRT-PCRで測定した結果を他の乳酸菌と比較して示すグラフである。
【図9】図9は、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55菌株で樹状細胞細胞株JAWSIIを処理した後、IL-12p40およびIL-18mRNAの発現をRT-PCRで測定した結果を他の乳酸菌と比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明を下記実施例によってより一層具体的に説明する。しかし、これら実施例は本発明に対する理解を助けるためだけのものであって、どんな意味でも本発明の範囲がこれらによって制限されるのではない。
【0052】
実施例1:微生物ラクトバチルス・プランタラムCJLP55菌株の分離および同定
キムチから分離したラクトバチルス・プランタラムCJLP55菌株を1.5%寒天が含まれたMRS固体培地(Difco,USA)に塗抹して37℃で24時間培養した後、純粋分離したことが確認された集落を白金耳で取ってMRS液体培地(Difco,USA)で37℃で18-24時間培養した。
【0053】
その次に、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55菌株の形態および生理学的特性を、Kimなど(非特許文献12)の方法とAPI50CHおよびAPI50CHLキット(バイオメリオ社製品)を使って決めた。その結果確認されたCJLP55菌株の形態および生理学的特性を前記表1に整理した。
【0054】
また、乳酸菌同定および分類のために16S rRNA遺伝子の塩基配列を分析した。16S rRNA遺伝子の塩基配列決定および分析は、Kimなど(非特許文献13)の方法を使った。その結果確認されたラクトバチルス・プランタラムCJLP55の16SrRNA遺伝子の塩基配列は、後記配列表に記載した(SEQ ID NO:1)。
【0055】
ラクトバチルス・プランタラムCJLP55菌株は、16S rRNA塩基配列分析の結果、ラクトバチルス・プランタラム標準菌株(Lactobacillus plantarum NBRC 1589 1T、GenBank accession number AB326351)と最も高い相同性(99.9%)を現わし、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarm)と同定し、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55と命名し、生命工学研究院遺伝子銀行に2008年10月16日付で寄託した(受託番号KCTC 11401BP)。
【0056】
実施例2: ラクトバチルス・プランタラムCJLP55菌株の人工胃液での耐酸性実験および人工胆汁での耐胆汁性実験
人工胃液での耐酸性実験は、Kobayashiなど(非特許文献14)の実験を変形し て製造した人工胃液を使って行った。具体的に人工胃液は、MRS液体培地を1N HClでpH 2.5になるように調整し、ペブシンを1000ユニット/mlになるように添加した後滅菌して製造した。
【0057】
前記実施例1で分離および同定されたラクトバチルス・プランタラムCJLP55をMRS液体培地で37℃、18時間の間培養した菌体を遠心分離して乳酸菌を沈殿させ、滅菌食塩水(0.85%NaCl)で2回洗浄した後菌体懸濁液を対照培地と人工胃液に各々約107 cfu/ml水準で接種し、37℃で培養しながら接種から0および3時間後に生存菌数を測定した。総菌数は、KH2PO4、Na2HPO、L-システイン、HCl、Tween 80等が含まれた燐酸緩衝液(pH6.8)で10倍に希釈して測定した。
【0058】
人工胆汁での耐胆汁性実験は、Caseyなど(非特許文献15)の方法により行った。前記耐酸性評価で使われたMRS液体培地に雄牛胆汁を0.3%添加した後、前記耐酸性評価方法と同じ方法で、乳酸菌接種後0時間、12時間、24時間後に生存菌数を測定した。
【0059】
前記耐酸性評価および耐胆汁酸性評価で典型的な乳酸菌のLactobacillus casei(KCTC 3109)、Lactobacillus sakei CJLS118(KCTC 13416)、およびLactobaillus rhamnosus GG(KCTC 5033)に対しても同一に比較実験を遂行した。
【0060】
その結果を図1および図2に示した。図1はラクトバチルス・プランタラムCJLP55の耐酸性実験結果を示したグラフである。図2はラクトバチルス・プランタラムCJLP55の耐胆汁酸性実験結果を示したグラフである。
【0061】
図1および図2の結果によれば、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、比較実験した他の乳酸菌に比べて同等以上の耐酸性および耐胆汁酸性を持つことが明らかになった。これは本発明にともなう新規菌株が体内で胃液の影響を受けないで腸まで到達することができるし腸内では胆汁の影響を受けないで生存する可能性があることを現わす。
【0062】
実施例3:ラクトバチルス・プランタラムCJLP55菌株の腸上皮細胞に対する付着能実験
腸上皮細胞付着能試験のための動物細胞としてHT-29を韓国細胞株銀行(KCLB)で譲り受けて使い、実験方法は、キムなど(非特許文献16)とHiranoなど(非特許文献17)の方法を使った。
【0063】
HT-29細胞は、熱非活性化された10%牛胎児血清(FBS)、1% L-グルタミン、ペニシリンG (100 IU/mL)、そしてストレプトマイシン(100 mg/mL)が添加されたRPMI 1640(Gibco、USA)培地を利用して5% CO2存在下で37℃で培養させた。付着能実験と付着抑制能実験のためにHT-29細胞は、ウェル当たり1.0×105細胞/mLの数になるように24ウェル-プレートに播き、隔日で培地を交換して完全に単一層(monolayer)を形成するまで培養して実験に使った。完全単一層を形成したHT-29細胞は、25℃のPBS緩衝溶液を利用して5回洗浄して抗生剤が添加されなかったRPMI 1640培地0.5 mLを添加した。
【0064】
ラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、各々約1.0×109 cfu/mLの濃度になるようにRPMIに懸濁した後前記ウェルプレートに接種して5% CO2存在下で37℃で2時間の間培養を実施した。培養が完了した後付着しなかった乳酸菌の除去と洗浄にともなう付着能力を確認するために、3分間200rpmの速度で攪拌しながらPBS緩衝溶液を使って3回洗浄を実施した。洗浄が完了した後0.2%トリプシン-EDTAを加えて付着している細胞を引き離してペプトン(peptone)水を利用して連続希釈法でMRS-寒天に平板塗抹して37℃で24時間の間培養して菌数を測定した。
【0065】
別に、一部付着確認のために70%アルコールに一日程度漬けて完全殺菌されたカバーグラスをペトリ皿底に載せた後HT-29細胞を培養して上と同量の乳酸菌を添加して実験した。洗浄によって洗い流されないでHT-29細胞に付着したままの乳酸菌株は、乾燥した後Gram染色をして光学顕微鏡で観察して、菌数を測定した。Lactobacillus sakei CJLS118、およびLactobacillus rhamnosusGG(KCTC 5033)に対しても同一に比較実験を遂行した。
【0066】
その結果を図3に示した。図3は、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55の腸上皮細胞付着能実験結果を示すグラフである。
【0067】
図3の結果によれば、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、プロバイオティクス菌株として商業的に良く知られたLactobacillus rhamnosus GG(KCTC 5033)とLactobacillus sakei CJLS118に比べて24時間経過後腸上皮細胞付着能が優秀なことが明らかになったし、特にLactobacillus sakei CJLS118に比べて腸上皮細胞付着能が顕著に高いことが分かった。このような結果は本発明にともなう新規菌株が腸上皮細胞に付着して腸内環境を改善する可能性があることを現わす。
【0068】
実施例4:ラクトバチルス・プランタラムCJLP55菌株の安全性評価
前記実施例1で分離した菌株の安全性を評価するために韓国バイオベンチャー協会団体標準で提示した安全性評価試験法により溶血現象検査、ゼラチン液化反応検査、有害代謝産物(アンモニア)生成確認、フェニルアラニンデアミナーゼ検査を遂行した。
【0069】
その結果を下記表2に示した。
【表2】
【0070】
前記結果によれば、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55(Lactobacillus plantarum CJLP55)は、ゼラチン液化反応、有害代謝産物(アンモニア)生成、フェニルアラニンデアミナーゼ生成に対して陰性であり、溶血現象検査では病原性と関係がないと判定されるα-溶血が確認された。したがって、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、人体に投与できる安全な菌株であることが確認された。
【0071】
実施例5:マウス脾臟細胞処理後IL-12生成促進力評価
ラクトバチルス・プランタラムCJLP55(Lactobacillus plantarum CJLP55)菌株で、卵アルブミンを投与してTh2反応に偏向したマウスの脾臟細胞を処理したときのTh1反応誘導サイトカインのIL-12生成促進力を評価するために、Fujiwaraなど(非特許文献18)とFujiwaraなど(非特許文献19)を参考にして次のように実験を行った。
【0072】
免疫化のために、6週令の雌Balb/cマウス5匹を購入して、alum hydroxide(Sigma) 13 mg/mL溶液1.538 mL、卵アルブミン10 mgおよびPBS 0.4615 mLとよく混合して常温で20分間反応させた混合液をマウス当たり0.2 mL(1 mg OVA+2mg alum)ずつ腹腔に注射し、同じ量を6日目にまた腹腔に注射してブーストした。マウスを13日目に犠牲させて脾臟を摘出し、これから得られた脾臟細胞100μl(4x106細胞/mL)と試験対象菌の死菌50μlと卵アルブミン50μl(4mg/mL)を細胞培養ウェルプレートに加えてDMEM-10培地中で7日間10% CO2培養器で培養した。7日間培養した後、上清液を取ってIL-12 ELISAキットでアッセイ(Biosou rce)を遂行してIL-12の濃度を測定した。
【0073】
前記試験対象菌の死菌は、次のように獲得した。
【0074】
試験対象菌は、MRS液体培地(Difco)に接種して37℃で24時間培養し、13,000rpmで1分間遠心分離して得た菌体を生理食塩水に2回洗浄後菌体だけ取った。回収された菌体は動物細胞株接種試験のために原培養液体積と同一体積の滅菌蒸溜水で100℃で10分間加熱し、13,000rpmで1分間遠心分離をした後回収してDMEM培地に適当量希釈して細胞株培養液体積基準として50μg/mLと5μg/mLの濃度の菌体になるようにした。試験対象菌としてラクトバチルス・プランタラムC J LP55を使い、Lactobaillus rhamnosus GG(KCTC 5033)、Lactobacillus casei(KCTC 3109)、Lactobacillus sakei CJLS118(KCTC 13416)に対しても同じ実験を遂行してその結果を比較した。
【0075】
前記IL-12 ELISAキットを利用したIL-12アッセイは、IL-12 ELISAキットに提供された指示事項により実験を進行し、ELISA readerで測定されたO.D.値を測定してキットに供給したIL-12対照サンプルに対する検量式によりIL-12生成量を換算した。そのようにして得られた測定結果を図4に示した。
【0076】
図4は、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55菌株で卵アルブミンを投与してTh2反応に偏向したマウスの脾臟細胞を処理した後Th1反応誘導サイトカインのIL-12の濃度を測定した結果を他の乳酸菌と比較して示したグラフである。
【0077】
図4の結果によれば、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、Th1反応誘導サイトカインのIL-12の生成を他の乳酸菌に比べて顕著に促進させることが明らかになった。したがって、本発明にともなうラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、Th2反応に偏向したマウスでTh1反応を効果的に誘導するということを確認することができた。
【0078】
実施例6:マウス脾臟細胞処理後IL-4生成抑制力評価
ラクトバチルス・プランタラムCJLP55(Lactobacillus plantarum CJLP 55)菌株で、卵アルブミンを投与してTh2反応に偏向したマウスの脾臟細胞を処理時Th2反応誘導サイトカインのIL-4の生成抑制効果を確認するために、前記実施例5の方法でIL-12キットの代わりにIL-4キット(Biosource)を使うことだけ違って残り条件は同一に実験を行った。そのようにして測定した結果を図5に示した。
【0079】
図5は、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55菌株で卵アルブミンを投与してTh2反応に偏向したマウスの脾臟細胞を処理した後Th2反応誘導サイトカインのIL-4の濃度を測定した結果を他の乳酸菌と比較して示したグラフである。
【0080】
図5に示した結果によれば、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、Th2反応誘導サイトカインのIL-4サイトカインを抑制することによってTh2反応に偏向したマウス脾臟細胞でTh2反応に対する抑制効果があるということを確認することができた。
【0081】
実施例7: マクロファージおよび樹状細胞でTh1リンパ球分化誘導サイトカインIL-12p40およびIL-18の発現とTh1リンパ球分化抑制サイトカインのIL-10発現確認実験
マクロファージおよび樹状細胞のような抗原提示細胞(antigen presenting cell,APC)は、IL-12およびIL-18を生成してTh0リンパ球からTh1リンパ球への分化を誘導して、他の一方ではIL-10を生成してTh1リンパ球への分化誘導を抑制する。本発明にともなう乳酸菌がマクロファージおよび樹状細胞のIL-12、IL-10、IL-18の生成に及ぼす影響を評価するために次のような実験を遂行した。
【0082】
試験対象菌をマクロファージ細胞株のRAW264.7に5×107/mL濃度で処理して37℃、10% CO2培養を48時間の間遂行した後培地を取ってELISA方法でIL-12 p40およびIL-10の濃度を測定した。また、樹状細胞細胞株のJAWSIIにも同じ方法で試験対象菌を接種および培養した後培地を取ってIL-12p40およびIL-10の生成量を測定した。
【0083】
前記試験対象菌としてラクトバチルス・プランタラムCJLP55を使い、陽の対照群としてリポポリサッカライドを使い、Lactobaillus rhamnosus GG(KCTC 5033)、Lactobacillus casei(KCTC 3109)、Lactobacillus sakei CJLS118(KCTC 13416)に対しても同じ実験を遂行してその結果を比較した。
【0084】
前記ELISA方法による濃度測定は、IL-12の濃度を測定できるIL-12p40キット(BD Biosciences、USA)およびIL-10の濃度を測定できるIL-10キット(BD Bios ciences、USA)を利用して製造会社の指針により遂行した。そのようにして測定されたそれぞれの結果を図6および図7に示した。
【0085】
図6は、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55菌株でマクロファージ細胞株RAW264.7を処理した後、IL-12およびIL-10の濃度をELISAで測定した結果を他の乳酸菌と比較して示したグラフである。
【0086】
図7は、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55菌株で樹状細胞細胞株JAWSIIを処理した後、IL-12およびIL-10の濃度をELISAで測定した結果を他の乳酸菌と比較して示したグラフである。
【0087】
図6および7の結果によれば、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、Th1分化誘導サイトカインのIL-12サイトカインを生成させて、Th1分化抑制サイトカインIL-10の生成は、IL-12に比べて顕著に少なく生成させることを確認できるし、他の乳酸菌に比べてIL-12の生成を顕著に増加させるということが分かる。
【0088】
また、遺伝子水準(level)でのIL-12およびIL-18の生成を確認するために試験対象菌でマクロファージ細胞株のRAW264.7を5×107/mL濃度で処理して、37℃、10% CO2培養を6時間の間遂行した後総RNAを抽出してRT-PCR方法でIL-12とIL-18 mRNAの生成量を測定した。樹状細胞細胞株のJAWSIIにも同じ方法で試験対象菌を接種および培養した後RNAを抽出してRT-PCR方法でIL-12とIL-18 mRNAの生成量を測定した。
【0089】
そのようにして、測定されたそれぞれの結果を図8および図9に示した。
【0090】
図8は、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55菌株でマクロファージ細胞株RAW264.7を処理した後、IL-12 p40およびIL-18mRNAの発現をRT-PCRで測定した結果を他の乳酸菌と比較して示したグラフである。
【0091】
図9は、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55菌株で樹状細胞細胞株JAWSIIを処理した後、IL-12p40およびIL-18mRNAの発現をRT-PCRで測定した結果を他の乳酸菌と比較して示したグラフである。
【0092】
図8および9の結果によれば、ラクトバチルス・プランタラムCJLP55は、Th1分化誘導サイトカインのIL-12およびIL-18の生成を指示するmRNAの生成を促進させるということが分かった。
【0093】
実施例8: ラクトバチルス・プランタラムCJLP55(Lactobacillus plantarum CJLP55)を含む生菌剤の製造
前記実施例1で同定されたプロバイオティクスのラクトバチルス・プランタラムCJLP55(Lactobacillus plantarum CJLP55)を医薬品、食品、飼料、飼料添加剤、または化粧品の原料で使用するために大量生産して、これを凍結乾燥して生菌剤化した。
【0094】
菌の生産のためにMRS液体培地(Difco)で25% NaOH溶液を使ってpHを6.0で調節しながら37℃で約18時間培養をし、遠心分離を遂行して菌体を回収した。回収した菌体はデキストリン5%と脱脂牛乳10%を凍結保護剤として使って-40℃で凍結後37℃で乾燥した菌体をミキサーで砕いて粉体化した。粉体化した生菌は目標にする菌数に合わせるために適当量の葡萄糖、乳糖、脱脂牛乳などのような賦形剤と混合し、密封できるアルミニウムパウチに入れて保管した。
【0095】
このように製造された生菌剤は飼料の原料で使われる穀物粉と混合したり、錠剤、カプセルなどの医薬品の担体または添加剤などと混合したり、化粧品に使われる原料と混合したりして、医薬品、食品、飼料、化粧品など多様な分野に当該技術分野で通常の方法により活用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)CJLP55 KCTC 11401BP。
【請求項2】
ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)CJLP55 KCTC 11401BPを含む腸疾患の予防または治療用組成物。
【請求項3】
ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)CJLP55 KCTC 11401BPを含む免疫増強用組成物。
【請求項4】
Th2反応過剰によるTh1/Th2不均衡により誘発される免疫疾患の予防または治療用であることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記免疫疾患が、アレルギー性疾患、アトピー、癌および自家免疫疾患で構成された群から選択されることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
医薬品であることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
食品であることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
飼料または飼料添加剤であることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
化粧品であることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項1】
ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)CJLP55 KCTC 11401BP。
【請求項2】
ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)CJLP55 KCTC 11401BPを含む腸疾患の予防または治療用組成物。
【請求項3】
ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)CJLP55 KCTC 11401BPを含む免疫増強用組成物。
【請求項4】
Th2反応過剰によるTh1/Th2不均衡により誘発される免疫疾患の予防または治療用であることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記免疫疾患が、アレルギー性疾患、アトピー、癌および自家免疫疾患で構成された群から選択されることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
医薬品であることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
食品であることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
飼料または飼料添加剤であることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
化粧品であることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2012−533290(P2012−533290A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520523(P2012−520523)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【国際出願番号】PCT/KR2009/004911
【国際公開番号】WO2011/007922
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(507421681)シージェイ チェイルジェダン コーポレーション (24)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【国際出願番号】PCT/KR2009/004911
【国際公開番号】WO2011/007922
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(507421681)シージェイ チェイルジェダン コーポレーション (24)
【Fターム(参考)】
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