説明

新規な化合物、塩基発生剤及び当該塩基発生剤を含有する感光性樹脂組成物

【課題】発生する塩基の強度が高く、エポキシ系化合物等に適用した場合には、塩基発生反応が連鎖的に行われ、反応効率に優れる新規な化合物、塩基発生剤及び当該塩基発生剤を含有する感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】
本発明の塩基発生剤は、所定のカルボン酸と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、イミダゾール類、グアニジン類またはホスファゼン誘導体からなるカルボン酸塩であるので、光によって脱炭酸し、空気中の水の作用により強アルカリを発生する等により塩基性が高く、反応効率が優れる。また、塩基反応性化合物とともに感光性樹脂組成物を構成した場合にあっては、塩基発生剤から発生する塩基とエポキシ系化合物等との反応が連鎖的に進行し、室温レベルでも硬化が速やかに実施されて硬化が十分になされる感光性樹脂組成物となるので、例えば、高感度の光硬化材料やレジスト材料等に好適に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な化合物、塩基発生剤及び当該塩基発生剤を含有する感光性樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、光等の活性エネルギー線によって塩基を発生する新規な化合物、塩基発生剤及び当該塩基発生剤を含有する感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光の照射によって酸を発生する酸発生剤を含有する感光性樹脂組成物が、フォトレジスト材料や光硬化材料等として適用されている。酸発生剤から発生した酸は、触媒や重合開始剤として作用し、また、酸発生剤等を含有した感光性樹脂組成物をフォトレジスト材料として用いてパターンを形成する場合には、例えば酸発生剤に光を照射して触媒等となる強酸を発生させ、樹脂成分を化学変性させる。そして、化学変性された樹脂成分の溶解性の変化により、パターンを形成するようにする。
【0003】
かかるフォトレジスト材料は、解像度及び感度が高いこと、さらには耐エッチング性が高いパターンを形成し得ることが求められており、特に、深紫外線レジスト材料として、酸素プラズマエッチングに耐性を持つパターンを形成し得る材料が求められている。酸発生剤を含有する感光性樹脂組成物からなるフォトレジスト材料は、高感度・高解像性等を目指して、種々のものが提供されているが、光酸発生剤と樹脂材料の組み合わせの種類はある程度限定されてしまうため、酸発生剤を使用しない新たな感光システムが求められていた。
【0004】
加えて、モノマー、オリゴマー、あるいはポリマーの光硬化速度を向上させるために様々な検討がなされており、光の作用で発生するラジカル種を開始剤として、多数のビニルモノマーを重合させるラジカル光重合系の材料が広く開発の対象とされてきた。また、光の作用で酸を発生させ、この酸を触媒とするカチオン重合系の材料も盛んに研究されていた。しかしながら、ラジカル光重合系の材料の場合には、空気中の酸素によって重合反応が阻害され硬化反応が抑制されるので、酸素遮断のための特別な工夫が必要とされていた。また、カチオン重合系の材料の場合には、ラジカル光重合系の材料のような酸素阻害がない一方、光酸発生剤から発生した強酸が硬化後も残存するために、当該強酸の存在を原因とする腐食性や樹脂の変性の可能性が問題とされていた。
【0005】
このような背景から、解像度及び感度が高く、耐エッチング性が高いパターンを形成できるレジスト材料を得るために、また、活性エネルギー線を利用して液状物を迅速に固化させる硬化技術をいっそう高性能化するために、空気中の酸素による阻害効果を受けず、生成する強酸のような腐食性物質を含まず高効率で反応が進行する、新たな感光システムを用いた感光性樹脂組成物が強く望まれていた。
【0006】
前記の問題を克服する手段の1つとして、塩基触媒による重合反応や化学反応を用いる方法、例えば、光の作用によって塩基を発生させ、これを触媒として樹脂を化学変性させる方法を用いて、光によって発生する塩基を触媒とする感光性樹脂組成物をフォトレジスト材料や光硬化材料等へ応用する手段が検討されている。そして、エポキシ基を有する化合物は塩基の作用によって架橋反応を起こして硬化することを利用して、光や熱の作用で開始剤あるいは触媒としてのアミン類をエポキシ樹脂層内で発生させ、次いで加熱処理によって硬化させる方法が提供されている(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−264156号公報
【特許文献2】特開2007−101685号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来提供されている方法にあっては、発生することができる塩基の強度に制限があることや、光の作用で塩基を発生する反応が迅速に行われない等の問題があるため実用性に乏しく、改善が求められていた。
【0009】
本発明は、前記の課題に鑑みてなされたものであり、例えば、エポキシ系化合物等の架橋反応に用いることができ、発生する塩基の強度が高く、エポキシ系化合物等に適用した場合には、塩基発生反応が連鎖的に行われ、反応効率に優れる新規な化合物、塩基発生剤及び当該塩基発生剤を含有する感光性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するために、本発明の第1発明に係る塩基発生剤は、カルボン酸とアルカリ金属またはアルカリ土類金属からなるカルボン酸塩であり、下記式(X)で表され
ることを特徴とする。
【0011】
【化1】

(式(X)中、Ar基は芳香環であり、当該芳香環は置換基としてベンゾイル基、ニトロ基、アルコキシ基、アルキル基を含んでもよく、当該芳香環の置換基は環構造をとることができる。また、R’、R’’は、それぞれ水素原子、アルコキシ基、アルキル基、水酸基、またはアリール基、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属、nは1または2の整数、を示す。)
【0012】
本発明の第2発明に係る塩基発生剤は、カルボン酸(ケトプロフェンを除く。)と塩基類からなるカルボン酸塩であり、下記式(Y)で表されることを特徴とする。
【0013】
【化2】

(式(Y)中、Ar基は芳香環であり、当該芳香環は置換基としてベンゾイル基、ニトロ基、アルコキシ基、アルキル基を含んでもよく、当該芳香環の置換基は環構造をとることができる。また、R’、R’’は、それぞれ水素原子、アルコキシ基、アルキル基、水酸基、またはアリール基、Qは下記式(II)で表されるイミダゾール類からなる塩基類、を示す。)
【0014】
【化3】

(式(II)中、Rはそれぞれ、独立して水素原子、炭素数が1〜4のアルキル基(S等のヘテロ原子を含んでもよい。)、またはフェニル基、を示す。)
【0015】
本発明の第3発明に係る化合物は、カルボン酸と塩基類からなるカルボン酸塩であり、下記式(Z)で表されることを特徴とする。
【0016】
【化4】

(式(Z)中、Ar基は芳香環であり、当該芳香環は置換基としてベンゾイル基、ニトロ基、アルコキシ基、アルキル基を含んでもよく、当該芳香環の置換基は環構造をとることができる。また、R’、R’’は、それぞれ水素原子、アルコキシ基、アルキル基、水酸基、またはアリール基、Gは下記式(IV)で表されるグアニジン類、式(V)で表されるホスファゼン誘導体、のいずれかからなる塩基類、を示す。)
【0017】
【化5】

(式(IV)中、R〜Rはそれぞれ、独立して水素原子、アルキル基またはアリール基(アルキル基は環状構造でもよい。)を示す。)
【0018】
【化6】

(式(V)中、R〜Rはそれぞれ、独立して水素原子、アルキル基またはアリール基
(アルキル基は環状構造でもよい。)を示す。)
【0019】
本発明の第3発明に係る塩基発生剤は、前記した本発明の第3発明に係る化合物からなることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る塩基発生剤は、前記第1発明または第3発明において、前記カルボン酸がケトプロフェンであることを特徴とする。
【0021】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、前記第1発明ないし第3発明のいずれかに記載の塩基発生剤と、塩基反応性化合物とを含有することを特徴とする。
【0022】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、前記感光性樹脂組成物において、前記塩基反応性化合物がエポキシ系化合物及び/またはケイ素系化合物であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の第1発明に係る塩基発生剤は、所定のカルボン酸と、塩基類としてアルカリ金属またはアルカリ土類金属からなるカルボン酸塩であるので、光によって脱炭酸し、その結果、空気中の水の作用により強アルカリを発生するため塩基性が高く(酸解離定数(pKa)が概ね13以上(水溶媒))、反応効率に優れ、塩基反応性化合物とともに感光性樹脂組成物を構成した場合にあっては、エポキシ系化合物等の塩基反応性化合物との反応は連鎖的に進行して、当該化合物との反応効率が格段に高い塩基発生剤となる。
【0024】
本発明の第2発明に係る塩基発生剤は、所定のカルボン酸(ケトプロフェンを除く。)と、塩基類としてイミダゾール類からなるカルボン酸塩であるので、光によって脱炭酸し、その結果、遊離のイミダゾールを生成するため塩基性が高く(酸解離定数(pKa)が12〜13程度(水溶媒))、第1発明と同様に反応効率に優れ、塩基反応性化合物とともに感光性樹脂組成物を構成した場合にあっては、エポキシ系化合物等の塩基反応性化合物との反応は連鎖的に進行して、当該化合物との反応効率が格段に高い塩基発生剤となる。
【0025】
本発明の第3発明に係る化合物ないし塩基発生剤は、所定のカルボン酸と、塩基類としてグアニジン類またはホスファゼン誘導体からなるカルボン酸塩であるので、光によって脱炭酸し、その結果、遊離のグアニジン類ないしはホスファゼン誘導体を生成するため塩基性が高く(酸解離定数(pKa)が13.5を超えて(水溶媒)、第1発明及び第2発明と同様に反応効率に優れ、塩基反応性化合物とともに感光性樹脂組成物を構成した場合にあっては、エポキシ系化合物等の塩基反応性化合物との反応は連鎖的に進行して、当該化合物との反応効率が格段に高い化合物ないし塩基発生剤となる。
【0026】
加えて、本発明の第3発明に係る化合物ないし塩基発生剤は、塩基類としてグアニジン類等を採用している。一般に、アミン、アミジン類の塩基性はpKa(共役酸のpKa、アセトニトリル(CHCN溶媒中))は10(アミン)〜24(アミジン類)であり、この程度の塩基性ではラクトン類や環状シロキサンのアニオン開環重合は起こりにくい一方、グアニジン類やホスファゼン誘導体では、pKaが26〜27程度(アセトニトリル(CHCN)溶媒中)となりアニオン開環重合が起こるため、これを用いるとモノマーが連鎖反応でポリマーに変化するので、塩基反応性化合物であるラクトン類等に適用される塩基発生剤として最適である。また、得られた感光性樹脂化合物も、光硬化材料(UV接着、UVインク、UV粘着、UVコーティングなど)として使用することができる。
【0027】
本発明に係る塩基発生剤は、前記した第1発明または第3発明において、カルボン酸としてケトプロフェンを採用しているので、光脱炭酸を引き起こすカルボン酸の中でケトプロフェンの量子収率が最も高く(Φ=0.75程度)、極めて高効率な塩基発生剤として機能することが期待できる。
【0028】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、前記した本発明の塩基発生剤と、塩基反応性化合物とを含有するので、塩基発生剤から発生する塩基とエポキシ系化合物等との反応が連鎖的に進行し、優れた反応効率を備えるため、室温レベルでも硬化が速やかに実施され、硬化が十分になされる感光性樹脂組成物となる。かかる効果を奏する本発明の感光性樹脂組成物は、例えば、高感度の光硬化材料やレジスト材料等に好適に用いることができる。
【0029】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、当該樹脂組成物を構成する塩基反応性化合物としてエポキシ系化合物あるいはケイ素系化合物を採用しているので、硬化が効率よく実施され、特に、重合性エポキシ系化合物あるいは重合性ケイ素系化合物を採用した場合にあっては、エポキシ基の開環重合、またはシラノール基またはアルコキシシリル基の縮重合によるポリマーを好適に提供することができる。また、エポキシ系化合物等は汎用材料であるため、コスト的にも有利である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例1で得られた塩基発生剤の光分解挙動(波長:254nm)を示した図である。
【図2】実施例1で得られた塩基発生剤の光分解挙動(波長:313nm)を示した図である。
【図3】試験例1において、露光量と残膜率との関係(温度依存性)を示した図である。
【図4】試験例2において、露光量と残膜率との関係(時間依存性)を示した図である。
【図5】試験例3において、露光量と残膜率との関係(濃度依存性)を示した図である。
【図6】試験例4において、露光時間とSiOの生成量との関係を示した図である。
【図7】試験例5において、露光量と残膜率との関係(濃度依存性)を示した図である。
【図8】実施例9で得られた塩基発生剤のUVスペクトル変化を示した図である。
【図9】試験例7において、露光量と残膜率との関係を示した図である。
【図10】試験例8において、露光量と残膜率との関係を示した図である。
【図11】試験例9において、露光量と残膜率との関係を示した図である。
【図12】試験例10において、露光量と残膜率との関係を示した図である。
【図13】試験例11において、露光量と残膜率との関係を示した図である。
【図14】試験例12において、露光量と残膜率との関係を示した図である。
【図15】試験例13において、露光量と残膜率との関係を示した図である。
【図16】試験例14において、露光量と残膜率との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の一態様を説明する。本発明の第1発明に係る塩基発生剤は、カルボン酸と、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属Mからなる、下記式(X)で表されるカルボン酸塩で表される化合物である。
【0032】
【化7】

(式(X)中、Ar基は芳香環であり、当該芳香環は置換基としてベンゾイル基、ニトロ基、アルコキシ基、アルキル基を含んでもよく、当該芳香環の置換基は環構造をとることができる。また、R’、R’’は、それぞれ水素原子、アルコキシ基、アルキル基、水酸基、またはアリール基、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属、nは1または2の整数、を示す。)
【0033】
かかる第1発明の塩基発生剤は、カルボン酸との結合対象としてアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属を使用しており、以下のスキーム1に示されるように、光の照射によって脱炭酸を引き起こし、空気中の水の作用により強アルカリを発生する(MOH中のOHが強塩基として作用する塩基発生剤となる。)。
【0034】
(スキーム1)
【化8】

【0035】
また、本発明の第2発明に係る塩基発生剤は、カルボン酸(ケトプロフェンを除く。)と、塩基類Qからなる、下記式(Y)で表されるカルボン酸塩で表される化合物である。
【0036】
【化9】

(式(Y)中、Ar基は芳香環であり、当該芳香環は置換基としてベンゾイル基、ニトロ基、アルコキシ基、アルキル基を含んでもよく、当該芳香環の置換基は環構造をとることができる。また、R’、R’’は、それぞれ水素原子、アルコキシ基、アルキル基、水酸基、またはアリール基、Qは下記式(II)で表されるイミダゾール類からなる塩基類、を示す。)
【0037】
【化10】

(式(II)中、Rはそれぞれ、独立して水素原子、炭素数が1〜4のアルキル基(S等のヘテロ原子を含んでもよい。)、またはフェニル基、を示す。)
【0038】
第2発明の塩基発生剤は、塩基類としてイミダゾール類を使用しており、光の照射によって脱炭酸し、その結果、遊離のイミダゾール類といった塩基を生成する。スキームで示すと以下のスキーム3のとおりである。
【0039】
(スキーム3)
【化11】

【0040】
また、本発明の第3発明に係る塩基発生剤は、カルボン酸と、塩基類Gからなる、下記式(Z)で表されるカルボン酸塩で表される化合物である。
【0041】
【化12】

(式(Z)中、Ar基は芳香環であり、当該芳香環は置換基としてベンゾイル基、ニトロ基、アルコキシ基、アルキル基を含んでもよく、当該芳香環の置換基は環構造をとることができる。また、R’、R’’は、それぞれ水素原子、アルコキシ基、アルキル基、水酸基、またはアリール基、Gは下記式(IV)で表されるグアニジン類、式(V)で表されるホスファゼン誘導体、のいずれかからなる塩基類、を示す。)
【0042】
【化13】

(式(IV)中、R〜Rはそれぞれ、独立して水素原子、アルキル基またはアリール基(アルキル基は環状構造でもよい。)を示す。)
【0043】
【化14】

(式(V)中、R〜Rはそれぞれ、独立して水素原子、アルキル基またはアリール基(アルキル基は環状構造でもよい。)を示す。)
【0044】
第3発明の塩基発生剤は、塩基類としてグアニジン類やホスファゼン誘導体を使用しており、光の照射によって脱炭酸し、その結果、遊離のグアニジン類ないしはホスファゼン誘導体といった塩基を生成する。スキームで示すと以下のスキーム2’(グアニジン類)及びスキーム3’(ホスファゼン誘導体)のとおりである。
【0045】
(スキーム2’)
【化15】

【0046】
(スキーム3’)
【化16】

【0047】
式(X)、(Y)、または式(Z)で表される本発明の塩基発生剤において、カルボン酸を構成するArは芳香環であり、アリール基、ナフチル基であることが好ましい。また、これらの芳香環は置換基としてベンゾイル基、ニトロ基、アルコキシ基、アルキル基を含むことができる。アルコキシ基及びアルキル基の炭素数は、1〜4とすることが好ましい。なお、かかる芳香環の置換基は環構造をとることができる。
【0048】
また、カルボン酸を構成するR’、R’’は、それぞれ水素原子、アルコキシ基、アルキル基、水酸基、アリール基等の置換基である。アルコキシ基及びアルキル基の炭素数は、1〜4とすることが好ましい。
【0049】
カルボン酸としては、下記式(VI)、式(VII)、式(VIII)で表される化合物(一般に、順に、キサントン酢酸類、チオキサントン酢酸類、ニトロフェニル酢酸と呼ばれる。)を使用するようにしてもよい。これらのカルボン酸は、量子収率(光脱炭酸効率)Φ=0.64程度(式(VI)。式(VII)もほぼ同様)、Φ=0.6程度(式(VIII))と高く、極めて高効率で光化学的に遊離の塩基を発生させることができる。
【0050】
【化17】

【0051】
【化18】

【0052】
【化19】

【0053】
なお、式(VI)及び式(VII)中、R、R、RはCHCOOH、CH(CH)COOHまたはHを示し、かかるCHCOOHまたはCH(CH)COOHはR、R、Rのいずれか1つの基に付され、残りの2つの基にはHが付される。また、式(VIII)中、R、R、RはCHCOOHまたはHを示し、かかるCHCOOHはR、R、Rのいずれか1つの基に付され、残りの2つの基にはHが付される。
【0054】
また、本発明の第1発明または第3発明の塩基発生剤において、対象となるカルボン酸の例としては、例えば、下記式(III)で表されるケトプロフェン(2−(1−カルボキシエチル)ベンゾフェノンともよばれる。)を使用することができる。光脱炭酸を引き起こすカルボン酸の中でケトプロフェンの量子収率が最も高く(Φ=0.75程度)、カルボン酸としてケトプロフェンを使用することにより、極めて高効率な塩基発生剤として機能する。
【0055】
【化20】

【0056】
式(X)で表される第1発明の塩基発生剤を製造するには、所望のカルボン酸と、塩基類の陽イオンを構成するアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属Mを含む化合物(塩基類を含むメトキシド、エトキシド、tert−ブトキシド等の化合物)を混合することにより簡便に製造することができる。
【0057】
次に、式(X)に表される第1発明の塩基発生剤を構成するMとしては、アルカリ金属、アルカリ土類金属が挙げられる。アルカリ金属としては、例えば、ナトリウム(Na)やカリウム(K)、が挙げられる、また、アルカリ土類金属としては、例えば、カルシウム(Ca)やバリウム(Ba)、が挙げられる。
【0058】
また、式(Y)で表される第2発明の塩基発生剤を構成する塩基類Qとしては、下記式(II)で表されるイミダゾール類が挙げられる。
【0059】
【化21】

(式(II)中、Rはそれぞれ、独立して水素原子、炭素数が1〜4のアルキル基(S等のヘテロ原子を含んでもよい。)、またはフェニル基、を示す。)
【0060】
また、塩基類として使用することができる式(II)で表されるイミダゾール類としては、例えば、イミダゾール、下記(II−a)に示す1−メチルイミダゾール、下記(II−b)に示す2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ベンジルイミダゾール、3A,4,5,6,7,7A−ヘキサヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−2−イル メチルスルフィド、2−(4−ブロモフェニル)4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール、DL−イソアマリン等が挙げられる(なお、前記したイミダゾール類に存在する炭素数が1〜4のアルキル基には、S等のヘテロ原子を含んでもよい。)。
【0061】
【化22】

【0062】
【化23】

【0063】
なお、式(Y)で表される第2発明の塩基発生剤にあっては、カルボン酸として式(III)に示したケトプロフェン(2−(1−カルボキシエチル)ベンゾフェノンともよばれる。)は使用しない。
【0064】
式(Y)で表される第2発明の塩基発生剤を製造するには、所望のカルボン酸と、塩基類Qとなる、発生させたいイミダゾール類を混合することにより簡便に製造することができる。
【0065】
そして、式(Z)で表される第3発明の化合物ないし塩基発生剤を構成する塩基類Gとしては、下記式(IV)で表されるグアニジン類、下記式(V)で表されるホスファゼン誘導体が挙げられる。なお、式(IV)におけるR〜R、式(V)におけるR〜Rはそれぞれ、独立して水素原子、アルキル基またはアリール基(アルキル基は環状構造でもよい。)を示すが、アルキル基の炭素数は1〜4とすることが好ましい。
【0066】
【化24】

(式(IV)中、R〜Rはそれぞれ、独立して水素原子、アルキル基またはアリール基(アルキル基は環状構造でもよい。)を示す。)
【0067】
【化25】

(式(V)中、R〜Rはそれぞれ、独立して水素原子、アルキル基またはアリール基(アルキル基は環状構造でもよい。)を示す。)
【0068】
塩基類として使用することができる式(IV)で表されるグアニジン類としては、例えば、グアニジン構造を有する下記式(IV−a)に示すグアニジンや、下記式(IV−b)に示す1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(TMG)、下記式(IV−c)に示す1,5,7−トリアザ−ビシクロ[4.4.0]デシ−5−エン(1,5,7−triaza−bicyclo[4.4.0]dec−5−ene:TBD)、式(IV−d)に示すMTBD、式(IV−e)に示すETBD、式(IV−f)に示すITBD、式(IV−g)または(IV−h)等に示す化合物が挙げられる(式(IV−a)〜式(IV−h)については、プロトン付加体を示す。)。
【0069】
【化26】

【0070】
また、塩基類として使用することができる式(V)で表されるホスファゼン誘導体としては、下記式(V−a)、式(V−b)、式(V−c)、式(V−d)または式(V−e)等に示す化合物が挙げられる(式(V−a)〜式(V−e)については、プロトン付加体を示す。)。
【0071】
【化27】

【0072】
式(Z)で表される第3発明の塩基発生剤を製造するには、所望のカルボン酸と、塩基類Gとなる、発生させたいグアニジン類あるいはホスファゼン誘導体を混合することにより簡便に製造することができる。
【0073】
本発明の塩基発生剤は、前記した式(X)、式(Y)または式(Z)で表される化合物(カルボン酸塩)であるが、当該化合物を構成するカルボン酸の結合対象として、所定のアルカリ金属、アルカリ土類金属や、イミダゾール類、グアニジン類やホスファゼン誘導体を用いているので、酸解離定数(pKa)が式(X)の塩基発生剤であれば概ね13以上(水溶媒中)、式(Y)の塩基発生剤であれば12〜13程度、式(Z)の塩基発生剤であれば13.5を超えて(いずれも水溶媒中)(従来は3級アミンでも10程度)非常に塩基性が高く、重合時の反応効率が高い、優れた塩基発生剤として作用する。例えば、エポキシ系化合物等に適用した場合には、後記するスキーム5等に示すように、塩基が水からプロトンを奪って、水酸化物イオンを発生し、これがエポキシ化合物の連鎖的な重合反応を開始することになるが、水酸化物イオンの発生量は塩基の強度に依存するため、塩基強度が高いほど重合反応効率も高くなる。さらに、例えば、後記するNo.2−1〜No.2−7の塩基反応性化合物は電子吸引性基のα位のプロトンが引き抜かれβ脱離を引き起こし、極性変換が起こる高分子化合物であるが、この時のプロトン引き抜き効率も塩基強度に依存するため、塩基強度が大きいほど脱離反応は起こりやすく、本発明の塩基発生剤を含有した感光性樹脂組成物が、感度の高い感光性樹脂として機能することが期待できる。
【0074】
また、一般に、アミン、アミジン類の塩基性はpKa(共役酸のpKa、アセトニトリル(CHCN溶媒中)は10(アミン)〜24(アミジン類)であり、この程度の塩基性ではラクトン類や環状シロキサンのアニオン開環重合は起こりにくい一方、式(Z)で表される第3発明に係る塩基発生剤を構成するグアニジン類やホスファゼン誘導体では、pKaが26〜27程度(アセトニトリル(CHCN)溶媒中)となりアニオン開環重合が起こるため、これを用いるとモノマーが連鎖反応でポリマーに変化するので、かかる第3発明に係る塩基発生剤は、ラクトン類等に最適な塩基発生剤となり、ラクトン類等に適用して感光性樹脂組成物とした場合には、光硬化材料(UV接着、UVインク、UV粘着、UVコーティングなど)に適用することができる。
【0075】
なお、本発明に係る感光性樹脂組成物における照射光の波長及び露光量の範囲としては、塩基発生剤の種類や量、及び感光性樹脂組成物を構成するエポキシ系樹脂やチオール化合物の種類等に応じて適宜決定すればよいが、例えば、波長として190〜400nm、露光量として100〜10000mJ/cmの範囲内から選択して適用すればよく、後記する増感剤を用いることによりさらに高波長域を使用することも可能である。また、例えば、カルボン酸としてケトプロフェン、キサントン酢酸類、ニトロフェニル酢酸を使用した場合にあっては、ケトプロフェン、ニトロフェニル酢酸では254nm付近、キサントン酢酸類、チオキサントン酢酸類では254nm付近または365nm付近とすればよい。照射光の照射時間は、概ね10秒以上とすればよく、1.5〜20分とすることが好ましい。
【0076】
以下、本発明の塩基発生剤の一例を、塩基類としてアルカリ金属(ナトリウム(Na)、カリウム(K))及びアルカリ土類金属(カルシウム(Ca)、バリウム(Ba))を挙げて、No1−1’〜No6−4’に示す。なお、塩基類として2価のアルカリ土類金属を用いた場合にあっては、式(X)は下記式(X’)のようになる(式(X’)におけるAr、R’、R’’については、前記した式(X)と同様である。)。
【0077】
【化28】

【0078】
【化29】

【0079】
【化30】

【0080】
【化31】

【0081】
【化32】

【0082】
【化33】

【0083】
【化34】

【0084】
次に、本発明の感光性樹脂組成物を説明する。本発明の感光性樹脂組成物は、光によって脱炭酸して、遊離の塩基を発生する本発明の塩基発生剤と、塩基反応性化合物を必須成分として含有する。本発明の感光性樹脂組成物を構成する塩基反応性化合物は、塩基発生剤及び必要により含有する塩基増殖剤により発生した塩基の作用により反応して、架橋等により硬化する化合物であり、例えば、下記No.2−1〜No.5−5の化合物等を使用することができ、特に、例えば、少なくとも1つのエポキシ基を有するエポキシ系化合物、少なくとも1つのアルコキシシリル基やシラノール基等を有しているケイ素系化合物等が挙げられる。かかる塩基反応性化合物は、1種類を単独で用いるようにしてもよく、また、2種類以上を組み合わせて使用するようにしてもよい。また、本発明の塩基発生剤も、1種類を単独で用いるようにしてもよく、また、2種類以上を組み合わせて使用するようにしてもよい。
【0085】
以下、本発明の塩基発生剤を適用した場合のエポキシ系化合物との反応挙動を説明する。なお、下記のスキームにあっては、塩基として便宜的にアミンを用いて説明するものとし、また、R及びR’は、例えば炭素数が1〜12のアルキル基を示すが、特にそれらには限定されない。
【0086】
まず、1級や2級のアミン系では、下記に示したスキーム4のように、例えば、塩基発生剤による1級アミンがエポキシ基に付加すると、中間体1となるが、Hとして脱離可能な水素が窒素原子上に2つあるため、このうち1つのHを失って2へと変化する。一方、変化した2は2級アミンの構造をしているので、もう一度、別のエポキシ系化合物と反応することが可能となり3を生成することになるが、生成した3は3級アミンの構造をしているが、立体的にエポキシ系化合物と反応することはできない。また、反応は逐次的な付加反応として進行するため、エポキシ系化合物が十分に硬化しない場合が多い。
【0087】
(スキーム4)
【化35】

【0088】
一方、第1発明の塩基発生剤のように、塩基類としてアルカリ(アルカリ金属、アルカリ土類金属)を用いると、下記に示したスキーム5のようにエポキシの開環反応は連鎖的に進むので、エポキシ系化合物との反応効率が格段に高くなる。
【0089】
(スキーム5)
【化36】

【0090】
また、3級アミン系や第2発明の塩基発生剤のようなイミダゾール類、第3発明の塩基発生剤のようなグアニジン類、ホスファゼン誘導体にあっては、3級アミンやイミダゾール類、グアニジン類、ホスファゼン誘導体等の塩基が直接付加する場合と、塩基と水からOHが生成し、これがエポキシと反応する場合の2種類が考えられる。塩基が直接付加する場合は、下記に示したスキーム6のように、まず化合物4が生成するが、この場合、窒素原子上には水素が存在しないので、酸素原子上の電荷は消失せず、次のエポキシ系化合物と反応し5を生成することになる。このようにしてエポキシ系化合物との反応は連鎖的に進行するので、1級,2級アミン系のような付加反応機能に比べてエポキシ系化合物との反応効率が格段に高い。
【0091】
(スキーム6)
【化37】

【0092】
一方、塩基と水からOHが生成し、これがエポキシと反応する場合は、下記に示したスキーム7のように、生成したOHから6が生成するが、この場合も、酸素原子上の電荷は消失せず、次のエポキシ系化合物と反応し7を生成することになる。従って、前記したスキームと同様にエポキシ系化合物との反応は連鎖的に進行し、エポキシ系化合物との反応効率が格段に高くなる。
【0093】
(スキーム7)
【化38】

【0094】
以下、塩基反応性化合物の具体例を挙げる。なお、下記No.2−1〜No.2−7の高分子化号物(塩基反応性化合物)のうち、No.2−1〜No.2−5の高分子化合物は、塩基の作用により脱離及び脱炭酸の反応を生じる。一方、No.2−6及びNo.2−7の塩基反応性化合物は、塩基の作用により脱離反応を引き起こしカルボン酸を生じることになる。
【0095】
【化39】

【0096】
なお、前記した塩基反応性化合物No.2−1〜No.2−7は、いずれも塩基の作用で脱離反応を起こし、極性が変換されるポリマー群であり、分解前後で溶解性が変化することを利用してパターニングを行う材料(レジスト材料)等として適用することができる。分解機構例のスキームを下記スキーム8及びスキーム9に示す。
【0097】
(スキーム8)
【化40】

【0098】
(スキーム9)
【化41】

【0099】
また、塩基反応性化合物の他の例を挙げる。なお、下記No.3−1〜No.3−4の塩基反応性化合物のうち、No.3−1の物質(混合物)は塩基の作用により脱水縮合及び架橋の反応を生じる。No.3−2の物質(混合物)は塩基の作用により脱水縮合及び架橋の反応を生じる。No.3−3の物質(ポリマー)は塩基の作用により脱炭酸の反応を生じる。No.3−4の物質は塩基の作用によりイミド形成の反応を生じる。なお、No.3−1及びNo.3−2において、xは0を超えて1以下の数を示す。
【0100】
【化42】

【0101】
本発明の感光性樹脂組成物を構成する塩基反応性化合物は、少なくとも1つのエポキシ基を有するエポキシ系化合物を使用することができる。また、少なくとも2つのエポキシ基を有するエポキシ系化合物に塩基を作用させることによって、エポキシ系化合物をエポキシ基の開環重合によりポリマーとすることができる。また、エポキシ系化合物に塩基を付加することにより、かかるエポキシ系化合物を化学変性することができる。重合反応性を示すエポキシ系化合物の一例を以下に示す。
【0102】
【化43】

【0103】
また、重合反応性を示すエポキシ系化合物(ポリマー)のその他の例を以下に示す。
【0104】
【化44】

【0105】
また、塩基反応性化合物としては、少なくとも1つのシラノール基またはアルコキシシリル基を有するケイ素系化合物を使用することができる。また、少なくとも2つのシラノール基またはアルコキシシリル基を有するケイ素系化合物に塩基を作用させることによって、かかるケイ素系化合物をシラノール基またはアルコキシシリル基の縮重合によりポリマーとすることができる。重合反応性を示すケイ素系化合物(No.5−2〜No.5−4はポリマー)の具体例を以下に示す。
【0106】
【化45】

【0107】
なお、前記したように、式(Z)で表される第3発明の塩基発生剤を構成するグアニジン類やホスファゼン誘導体は、pKaが26〜27程度(アセトニトリル(CHCN)溶媒中)となりアニオン開環重合が起こるため、これを用いるとモノマーが連鎖反応でポリマーに変化するので、かかる塩基発生剤と、塩基反応性化合物としてラクトン類や環状
シロキサンを用いた感光性樹脂組成物は、光硬化材料(UV接着、UVインク、UV粘着、UVコーティングなど)に好適となる。式(Z)で表される第3発明の塩基発生剤に適用可能な、塩基反応性化合物として、式(IV)で表されるグアニジン類、式(V)で表されるホスファゼン誘導体によりアニオン重合可能なラクトン及び環状シロキサンの構造の
具体例を以下に示す(No.6−1〜No.6−4)。
【0108】
【化46】

【0109】
本発明の感光性樹脂組成物における塩基発生剤の含有量は、塩基反応性化合物100質量部に対して0.1〜60質量部とすることが好ましい。塩基発生剤の含有量が0.1質量部より少ないと、塩基反応性化合物を迅速に反応させることができなくなる場合がある一方、塩基発生剤の含有量が60質量部を超えると、塩基発生剤の存在が塩基反応性化合物の溶媒に対する溶解性に悪影響を与える場合があり、また、過剰量の塩基発生剤の存在はコスト高に繋がることになる。塩基発生剤の含有量は、塩基反応性化合物100質量部に対して1〜60質量部とすることがなお好ましく、2〜30質量部とすることがさらに好ましく、2〜20質量部とすることがより好ましく、2〜15質量部とすることが特に好ましい。なお、塩基発生剤として式(Z)で表される第3発明に係る塩基発生剤を用いてラクトン類を重合する場合には、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコールを少量共存させることが好ましく、モノマー(塩基反応性化合物)100質量部に対して塩基発生剤を0.1〜0.5質量部として、アルコールを0.5〜2.0質量部とすることが好ましい。
【0110】
本発明の感光性樹脂組成物は、塩基反応性化合物として、前記したNo.4−1〜No.4−12等の重合反応性を示すエポキシ系化合物(重合性エポキシ系化合物)、あるいは前記したNo.5−1〜No.5−5等の重合反応性を示すケイ素系化合物(重合性ケイ素系化合物)とすることが好ましい。このような感光性樹脂組成物は、光または熱の作用により、重合し、重合体を与えることとなる。中でも、光により重合反応を開始する塩基反応性化合物を含む感光性樹脂組成物とすることが好ましい。
【0111】
このような感光性樹脂組成物を用いてパターンを形成するには、例えば、当該樹脂組成物を有機溶媒に溶解して塗布液を調製し、調製された塗布液を基板等の適当な固体表面に塗布し、乾燥して塗膜を形成するようにする。そして、形成された塗膜に対して、パターン露光を行って塩基を発生させた後、所定の条件で加熱処理を行って、感光性樹脂組成物に含有される塩基反応性化合物の重合反応を促すようにする。
【0112】
本発明の感光性樹脂組成物は、本発明の塩基発生剤を含有するため、室温でも重合反応は進行するが、重合反応を効率よく進行させるべく、加熱処理を施すことが好ましい。加熱処理の条件は、露光エネルギー、使用する塩基発生剤から発生する塩基の種類、エポキシ系化合物またはケイ素系化合物等の塩基反応性化合物の種類によって適宜決定すればよいが、加熱温度は50℃〜150℃範囲内とすることが好ましく、60℃〜130℃の範囲内とすることが特に好ましい。また、加熱時間は10秒〜60分とすることが好ましく、60秒〜30分とすることが特に好ましい。これを露光部と未露光部とで溶解度に差を生じる溶媒中に浸漬して現像を行ってパターンを得ることができる。
【0113】
本発明の感光性樹脂組成物には、必要により、塩基の作用で増殖的に塩基を発生する塩基増殖剤を含有させることが好ましい。本発明の感光性樹脂組成物に塩基増殖剤を含有させることにより、当該樹脂組成物の感度をさらに向上させることができる。特に、光が樹脂膜深部に到達しない場合(感光層が厚い場合や多量の染料や顔料を含む場合等。)には、表面層で光化学的に発生した塩基の作用、及び塩基増殖剤による塩基増殖反応が開始されることにより、熱化学的に、かつ連鎖的に塩基が生成するので、膜深部の塩基触媒反応を起こすことが期待できる。使用できる塩基増殖剤としては、特に制限はないが、例えば、特開2000−330270号公報、特開2002−128750号公報や、K.Arimitsu、M.Miyamoto and K.Ichimura,Angew.Chem.Int.Ed.,39,3425(2000)、等に開示される塩基増殖剤が挙げられる。塩基増殖剤の添加量は、使用する塩基発生剤や塩基反応性化合物等により適宜決定すればよいが、感光性樹脂組成物全体に対して1〜40質量%の範囲であることが好ましく、5〜20質量%の範囲内であることが特に好ましい。
【0114】
本発明の感光性樹脂組成物は、感光波長領域を拡大し、感度を高めるべく、増感剤を添加することができる。使用できる増感剤としては、特に限定はないが、例えば、ベンゾフェノン、p,p’−テトラメチルジアミノベンゾフェノン、p,p’−テトラエチルアミノベンゾフェノン、2−クロロチオキサントン、アントロン、9−エトキシアントラセン、アントラセン、ピレン、ペリレン、フェノチアジン、ベンジル、アクリジンオレンジ、ベンゾフラビン、セトフラビン−T、9,10−ジフェニルアントラセン、9−フルオレノン、アセトフェノン、フェナントレン、2−ニトロフルオレン、5−ニトロアセナフテン、ベンゾキノン、2−クロロ−4−ニトロアニリン、N−アセチル−p−ニトロアニリン、p−ニトロアニリン、N−アセチル−4−ニトロ−1−ナフチルアミン、ピクラミド、アントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、3−メチル−1,3−ジアザ−1,9−ベンズアンスロン、ジベンザルアセトン、1,2−ナフトキノン、3,3’−カルボニル−ビス(5,7−ジメトキシカルボニルクマリン)またはコロネン等が挙げられる。これらの増感剤は、1種類を単独で用いるようにしてもよく、また、2種類以上を組み合わせて使用するようにしてもよい。
【0115】
本発明の感光性樹脂組成物において、増感剤の添加量は、使用する塩基発生剤や塩基反応性化合物、及び必要とされる感度等により適宜決定すればよいが、感光性樹脂組成物全体に対して1〜30質量%の範囲であることが好ましい。増感剤が1質量%より少ないと、感度が十分に高められないことがある一方、増感剤が30質量%を超えると、感度を高めるのに過剰となることがある。増感剤の添加量は、感光性樹脂組成物全体に対して5〜20質量%の範囲であることが特に好ましい。
【0116】
本発明の感光性樹脂組成物を所定の基材に塗布等する場合にあっては、必要により、溶媒を適宜含有するようにしてもよい。感光性樹脂組成物に溶媒を含有させることにより、塗布能力を高めることができ、作業性が良好となる。溶媒としては、特に限定はないが、例えば、ベンゼン、キシレン、トルエン、エチルベンゼン、スチレン、トリメチルベンゼン、ジエチルベンゼン等の芳香族炭化水素化合物;シクロヘキサン、シクロヘキセン、ジペンテン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、n−ヘプタン、イソヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、n−ノナン、イソノナン、n−デカン、イソデカン、テトラヒドロナフタレン、スクワラン等の飽和または不飽和炭化水素化合物;ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジ−イソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、p−メンタン、o−メンタン、m−メンタン;ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、メチルアミルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルセロソルブ、酢酸エチルセロソルブ、酢酸ブチルセロソルブ、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソアミル、ステアリン酸ブチル等のエステル類等が挙げられる。これらの溶媒は、1種類を単独で用いるようにしてもよく、また、2種類以上を組み合わせて使用するようにしてもよい。
【0117】
本発明の感光性樹脂組成物において、溶媒の含有量は、例えば、所定の基材上に感光性樹脂組成物を塗布し、感光性樹脂組成物による層を形成する際に、均一に塗工されるように適宜選択すればよい。
【0118】
なお、本発明の感光性樹脂組成物には、本発明の目的及び効果を妨げない範囲において、添加剤を適宜添加するようにしてもよい。使用することができる添加剤としては、例えば、充填剤、顔料、染料、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、pH調整剤、分散剤、分散助剤、表面改質剤、可塑剤、可塑促進剤、タレ防止剤、硬化促進剤等が挙げられ、これらの1種類を単独で用いるようにしてもよく、2種類以上を組み合わせて使用するようにしてもよい。
【0119】
以上説明した本発明の感光性樹脂組成物は、本発明の塩基発生剤と塩基反応性化合物を含有することにより、塩基発生剤から発生する塩基とエポキシ系化合物等との反応が連鎖的に進行し、硬化速度及び反応効率に優れたものとなり、室温レベルでも硬化が速やかに実施され、硬化が十分になされる感光性樹脂組成物となる。かかる効果を奏する本発明の感光性樹脂組成物は、例えば、高感度の光硬化材料やレジスト材料(パターン形成材料)等に好適に用いることができる。
【0120】
光硬化材料として適用された成形体は、耐熱性、寸法安定性、絶縁性等の特性が有効とされる分野の部材等として、例えば、塗料または印刷インキ、カラーフィルター、フレキシブルディスプレー用フィルム、半導体装置、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム、光学部材または建築材料の構成部材として広く用いられ、印刷物、カラーフィルター、フレキシブルディスプレー用フィルム、半導体装置、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム、光学部材または建築部材等が提供される。また、形成されたパターン等は、耐熱性や絶縁性を備え、例えば、カラーフィルター、フレキシブルディスプレー用フィルム、電子部品、半導体装置、層間絶縁膜、配線被覆膜、光回路、光回路部品、反射防止膜、その他の光学部材または電子部材として有利に使用することができる。
【0121】
なお、以上説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を備え、目的及び効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造及び形状等は、本発明の目的及び効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状等としても問題はない。本発明は前記した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形や改良は、本発明に含まれるものである。
【0122】
例えば、前記した実施形態では、本発明の塩基発生剤として、式(Y)で表されるカルボン酸に1つのイミダゾール類を付加した化合物を例として挙げたが、これには限定されず、本発明の塩基発生剤は、イミダゾール類に2つのカルボン酸が付加したものも含まれる。一例として、2−メチルイミダゾールに式(Y)のカルボン酸を2つ付加した化合物を下記式(Y’)として示した。
【0123】
【化47】

【0124】
前記した実施形態では、本発明の塩基発生剤の例として、No.1−1’〜No.6−4’の化合物(カルボン酸塩)を挙げたが、これらはあくまでも例示であり、式(X)、式(Y)あるいは式(Z)を具備するカルボン酸と塩基類の組合せであれば、特に制限はない。また、No.1−1’〜No.6−4’では、本発明の塩基発生剤を構成することになる金属M(陽イオン)としてアルカリ金属及びアルカリ土類金属の陽イオンを用いた例を示したが、No.1−1’〜No.6−4’に開示されるカルボン酸(No.1−1’〜No.1−4’に示すケトプロフェンを除く。)に式(II)で表されるイミダゾール類を組み合わせて、あるいはNo.1−1’〜No.6−4’に開示されるカルボン酸に式(IV)で表されるグアニジン類、または式(V)で表されるホスファゼン誘導体を組み合わせて本発明の塩基発生剤としてもよい。
【0125】
前記した実施形態では、本発明の感光性樹脂組成物を構成する塩基反応性化合物の例として、No.2−1〜No.5−5の化合物を挙げたが、使用することができる塩基反応性化合物はこれらには限定されず、塩基の作用により反応して、架橋等により硬化する任意の化合物を使用することができる。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造及び形状等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
【実施例】
【0126】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例に何ら限定されるものではない。
【0127】
[実施例1]
塩基発生剤の製造(1):
式(III)に示したケトプロフェン5.0g(20mmol)をメタノール15mLに溶解した溶液に、ナトリウムエトキシド(CONa)1.4g(20mmol)をメタノール25mLに溶解した溶液を滴下し、室温で1時間反応させた。反応終了後、溶媒留去し、良溶媒にクロロホルム、貧溶媒にジエチルエーテルを用いて再沈殿を2回行うことにより、式(No.1−1’)で表される本発明の塩基発生剤の白色固体を収率38%で得た。
【0128】
H−NMR(300MHz,CDCl):δ(ppm)1.25(3H,d,J=7.2Hz,CH)、3.4(1H,d,J=7.2Hz,CH)、7.08−7.66(9H,m,ArH)
分解点(℃):156℃(DSC)
【0129】
光照射によるアルカリ発生能の確認(1):
実施例1で得られた塩基発生剤の適量を水とともにpH試験紙(Whatman indicator paper pH 1〜11)に数滴垂らした後(試験紙の色である黄色:pHが5〜6)、その上部より波長が254nmの光を照射したところ深緑色に変色し、pHが約11となった。以上より、実施例1で得られた塩基発生剤が光の照射によりアルカリが発生し、塩基として機能することが確認できた。
【0130】
光分解挙動の確認:
実施例1で得られた塩基発生剤について、溶媒としてメタノールを用いて、下記の測定法を用いて光分解挙動の確認を行った。
【0131】
(測定方法)
実施例1の塩基発生剤のメタノール溶液(3×10−5mol/L)に波長が254nmまたは313nmの光を照射し、紫外可視分光光度計(MultiSpec−1500/(株)島津製作所製)を用いてUVスペクトルの経時変化を確認した。結果を図1(波長:254nm)及び図2(波長:313nm)に示す。
【0132】
図1及び図2に示すように、実施例1で得られた本発明の塩基発生剤は、光照射の露光量に伴って237nm付近の吸収強度が増大していく様子が見られ、光分解挙動を確認することができた。
【0133】
[実施例2]
感光性樹脂組成物の製造(1):
式(No.4−12)に表されるエポキシ系化合物であるポリグリシジルメタクリレート(PGMA,M=10000)0.1g(100質量部)に対して、実施例1で得られた塩基発生剤を0.0078g(8質量部)(PGMAのモノマーユニットに対して4.0mol%)含有させることにより本発明の感光性樹脂組成物を得た。
【0134】
[試験例1]
光不溶化挙動の確認(1)(温度依存性):
実施例2で得られた感光性樹脂組成物を1.0gのテトラヒドロフラン(THF)に溶解させた。この試料溶液を3000rpmで30秒間シリコンウェハ上にスピンコートし、ホットプレート上にて80℃で1分間プリベイクすることにより、厚さ1.3μmの膜を作製した。この膜に254nmの単色光を照射し、ポストベイクの温度を120℃として5分間実施し、クロロホルムで30秒間現像し、残っている膜の厚さを測定した。そして、同様な操作を、ポストベイクの温度を140℃、及び160℃に変化させて実施し、それぞれについて露光量と残膜率との関係(感度曲線)を作成した。得られた感度曲線を図3に示す。
【0135】
本発明の感光性樹脂組成物は、光照射するにつれて、エポキシ化合物(PGMA)の架橋反応が進行し、クロロホルムに不溶化する。図3は、露光量と残膜率との関係の温度依存性を示した図である。図3に示すように、ポリグリシジルメタクリレート(PGMA)の不溶化効率は加熱温度が高いほど高効率で起こることが確認できた。
【0136】
[試験例2]
光不溶化挙動の確認(2)(時間依存性):
実施例2で得られた感光性樹脂組成物を1.0gのテトラヒドロフラン(THF)に溶解させた。この試料溶液を3000rpmで30秒間シリコンウェハ上にスピンコートし、ホットプレート上にて80℃で1分間プリベイクすることにより、厚さ1.3μmの膜を作製した。この膜に254nmの単色光を照射し、ポストベイクの温度を140℃として5分間実施し、クロロホルムで30秒間現像し、残っている膜の厚さを測定した。そして、同様な操作を、ポストベイクの時間を10分間、及び20分間に変化させて実施し、それぞれについて露光量と残膜率との関係(感度曲線)を作成した。得られた感度曲線を図4に示す。
【0137】
図4は、露光量と残膜率との関係の加熱時間依存性を示した図である。図4に示すように、加熱時間を長くするにつれてポリグリシジルメタクリレート(PGMA)の不溶化効率が向上することが確認できた。
【0138】
[実施例3]
感光性樹脂組成物の製造(2):
実施例2において、実施例1で得られた塩基発生剤を0.0037g(4質量部)(PGMAのモノマーユニットに対して2.0mol%)含有させることとした以外は、実施例2と同様な方法を用いて、本発明の感光性樹脂組成物を得た。
【0139】
[実施例4]
感光性樹脂組成物の製造(3):
実施例2において、実施例1で得られた塩基発生剤を0.012g(12質量部)(PGMAのモノマーユニットに対して6.0mol%)含有させることとした以外は、実施例2と同様な方法を用いて、本発明の感光性樹脂組成物を得た。
【0140】
[試験例3]
光不溶化挙動の確認(3)(濃度依存性):
実施例2で得られた感光性樹脂組成物を1.0gのテトラヒドロフラン(THF)に溶解させた。この試料溶液を3000rpmで30秒間シリコンウェハ上にスピンコートし、ホットプレート上にて80℃で1分間プリベイクすることにより、厚さ1.3μmの膜を作製した。この膜に254nmの単色光を照射し、ポストベイクの温度を120℃として5分間実施し、クロロホルムで30秒間現像し、残っている膜の厚さを測定した。そして、同様な操作を、実施例3及び実施例4で得られた感光性樹脂組成物に対して実施し、それぞれについて露光量と残膜率との関係(感度曲線)を作成した。得られた感度曲線を図5に示す。
【0141】
図5は、露光量と残膜率との関係の濃度依存性を示した図である。図5に示すように、本発明の塩基発生剤の濃度を増加させる(添加量を増加させる)につれてポリグリシジルメタクリレート(PGMA)の不溶化効率が向上することが確認できた。
【0142】
[試験例4]
光照射による塩基発生能の確認(2):
テトラエトキシシラン(Tetraethylorthosilicate:TEOS)0.50g、実施例1で得られた塩基発生剤0.066g、及び水0.086gをエタノール0.22gに溶解して試料溶液として、バイアル管に移した。この試料溶液にHg−Xeランプの紫外光を照射し、TEOSのゾルゲル反応の進行に伴い生成するSiOの量を測定した。露光時間とSiOの生成量との関係を図6に示す。
【0143】
図6に示すように、試料溶液に紫外光を照射すると、露光時間に応じて生成するSiOの量が増大していることがわかる。これは、光照射により試料溶液中で本発明の塩基発生剤からアルカリが発生し、テトラエトキシシラン(TEOS)のゾルゲル反応が進行したことを示すものである。以上より、本発明の塩基発生剤が、露光時間に応じて塩基を発生していることが確認できた。
【0144】
[実施例5]
塩基発生剤の製造(2):
式(III)に示したケトプロフェン2.0g(7.9mmol)のテトラヒドロフラン(THF)溶液に、式(IV−c)に示したTBD1.1g(7.9mmol)のテトラヒドロフラン(THF)溶液を滴下後、室温で1時間反応させた。反応終了後、溶媒留去し、エーテルを加えて攪拌後、デカンテーションを行い未反応のケトプロフェンとTBDを除去した。除去した後、減圧乾燥を行い、式(IV)で表される本発明の塩基発生剤の無色粘性液体を収率58%で得た。
【0145】
H−NMR(300MHz,CDCl):δ(ppm)1.50(3H,d,J=6.9Hz,CHCH)1.88−1.96(H,m,CH),3.18−3.26(8H,m,CH),3.70(1H,q,J=6.9Hz,CHCH),7.30−7.85(9H,m,Ph−H),10.80(2H,br,NH)
【0146】
[実施例6]
感光性樹脂組成物の製造(4):
式(No.4−12)に表されるエポキシ化合物であるポリグリシジルメタクリレート(PGMA, Mw=10000)0.1g(100質量部)に対して、実施例5で得られた塩基発生剤を0.0014g(1.4質量部)(PGMAのモノマーユニットに対して0.5mol%)含有させることにより本発明の感光性樹脂組成物を得た。
【0147】
[実施例7]
感光性樹脂組成物の製造(5):
実施例6において、実施例5で得られた塩基発生剤を0.0028g(2.8質量部)(PGMAのモノマーユニットに対して1.0mol%)含有させることとした以外は、実施例6と同様な方法を用いて、本発明の感光性樹脂組成物を得た。
【0148】
[実施例8]
感光性樹脂組成物の製造(6):
実施例6において、実施例5で得られた塩基発生剤を0.0055g(5.5質量部)(PGMAのモノマーユニットに対して2.0mol%)含有させることとした以外は、実施例6と同様な方法を用いて、本発明の感光性樹脂組成物を得た。
【0149】
[試験例5]
光不溶化挙動の確認(濃度依存性)
実施例7で得られた感光性樹脂組成物を1.0gのクロロホルムに溶解させた。この試料溶液を3000rpmで30秒間シリコンウェハ上にスピンコートし、ホットプレート上にて80℃で30秒間プリベイクすることにより、厚さ1.0μmの膜を作製した。この膜に254nmの単色光を照射し、ポストベイクの温度を100℃として5分間実施し、クロロホルムで30秒間現像し、残っている膜の厚さを測定した。そして、同様な操作を実施例8で得られた感光性樹脂組成物に対して実施し、それぞれについて露光量と残膜率との関係(感度曲線)を作成した。得られた感度曲線を図7に示す。
【0150】
図7は露光量と残膜率との関係の濃度依存性を示した図である。図7に示すように、本発明の塩基発生剤の濃度を増加させる(添加量を増加させる)につれてポリグリシジルメタクリレート(PGMA)の不溶化効率が向上することが確認できた。
【0151】
[実施例9]
塩基発生剤の製造(3)(2−キサントン酢酸+TBD):
式(1−5’)に示した2−キサントン酢酸0.50g(2.0mmol)のテトラヒドロフラン(THF)溶液に、式(IV−c)に示したTBD0.27g(2.0mmol)を滴下後、室温で1時間混合することで得られた白色固体を吸引ろ過し、テトラヒドロフラン(THF)で洗浄、減圧乾燥することで、カルボン酸塩である本発明の塩基発生剤の白色固体を0.33g(収率43%)得た。分解点は232.9℃(DSC)であった。
【0152】
H−NMR(300MHz,CDOD):d(ppm)1.93−1.98(4H,m,CH)、3.32−3.33(8H,m,CH)、3.64(2H,s,CH)、7.41−8.25(7H,m,Ar−H)
【0153】
[試験例6]
光分解挙動の確認:
実施例9で得られた塩基発生剤について、溶媒としてメタノールを用いて、下記の測定法を用いて光分解挙動の確認を行った。その結果、実施例9で得られた塩基発生剤は、光照射の露光量に伴って237nm付近の吸収強度が増大していく様子が見られ、光分解挙動を確認することができた。
【0154】
(測定方法)
実施例9で得られた塩基発生剤のメタノール溶液(3.0×10−5mol/L)に波長が254nmまたは365nmの光を照射し、紫外可視分光光度計(MultiSpec−1500/(株)島津製作所製)を用いてUVスペクトルの経時変化を確認した。
【0155】
光照射による塩基発生能の確認:
実施例9で得られた塩基発生剤を9.0×10−3mol/Lに調製したメタノール溶液を石英セルに入れ、波長365nm光を所定量照射して光分解させた後、この溶液にあらかじめ5.0×10−5mol/Lに調整しておいたフェノールレッド溶液を1mL加えた場合におけるUVスペクトルを測定した。結果を図8に示す。
【0156】
図8はUVスペクトル変化を示した図である。図8に示すように、実施例9で得られた塩基発生剤は、露光するにつれ、562nm付近の吸収が増大していることより、塩基発生剤に光照射することにより遊離の塩基が発生していることが確認できた。
【0157】
[実施例10]
感光性樹脂組成物の製造(7):
式(No.4−12)に表されるエポキシ化合物であるポリグリシジルメタクリレート(PGMA, Mw=15000)0.1g(100質量部)に対して、実施例9で得られた塩基発生剤を0.0055g(5.5質量部)(PGMAのモノマーユニットに対して2.0mol%)含有させることにより本発明の感光性樹脂組成物を得た。
【0158】
[試験例7]
光不溶化挙動の確認(温度依存性):
実施例10で得られた感光性樹脂組成物を1.0gのクロロホルムに溶解させた。この試料溶液を3000rpm、30秒間シリコンウェハ上にスピンコートし、ホットプレート上にて60℃で30秒間プリベイクすることにより、厚さ1.2μmの膜を作製した。この膜に365nmの単色光を照射し、ポストベイクの温度を100℃として5分間実施し、クロロホルムで30秒間現像し、残っている膜の厚さを測定した。そして、露光量と残膜率との関係(感度曲線)を作成した。
【0159】
本発明の感光性樹脂組成物は、光照射するにつれて、エポキシ化合物(PGMA)の架橋反応が進行して硬化して、クロロホルムに不溶化する。図9は、露光量と残膜率との関係を示した図である。図9に示すように、ポリグリシジルメタクリレート(PGMA)の不溶化効率は加熱温度が100℃の状態でも効率よく起こることが確認できた。
【0160】
[実施例11]
塩基発生剤の製造(4)(2−キサントン酢酸+イミダゾール):
式(1−5’)に示した2−キサントン酢酸0.2g(0.79mmol)とイミダゾール0.054g(0.79mmol)をテトラヒドロフラン(THF)中で混合し、室温で30分間攪拌を行った。その後、溶媒を留去し、カルボン酸塩である本発明の塩基発生剤を0.22g(収率90%)得た。
【0161】
H−NMR(300Mz,DMSO−d):d(ppm)1.36(s,1H,NH)、3.79(s,2H,CH)、7.03(s,2H,CH=CH),7.67(s,1H,N=CH)、7.91(m,7H,Ar−H)
【0162】
[実施例12]
感光性樹脂組成物の製造(7):
式(No.4−12)に表されるエポキシ化合物であるポリグリシジルメタクリレート(PGMA, Mw=15000)0.1g(100質量部)に対して、実施例11で得られた塩基発生剤を0.012g(12質量部)(PGMAのモノマーユニットに対して5.0mol%)含有させることにより本発明の感光性樹脂組成物を得た。
【0163】
[試験例8]
光不溶化挙動の確認:
実施例12で得られた感光性樹脂組成物を1.5gのテトラヒドロフラン(THF)に溶解させた。この試料溶液を3000rpm、30秒間シリコンウェハ上にスピンコートし、ホットプレート上にて60℃で30秒間プリベイクすることにより、厚さ0.28μmの膜を作製した。この膜に365nmの単色光を照射し、ポストベイクの温度を120℃として5分間実施し、クロロホルムで30秒間現像し、残っている膜の厚さを測定し、露光量と残膜率との関係(感度曲線)を作成した。
【0164】
図10は露光量と残膜率との関係を示した図である。図10に示すように、露光量を増加させるにつれて硬化が進行し、ポリグリシジルメタクリレート(PGMA)の不溶化効率が向上することが確認できた。
【0165】
[実施例13]
塩基発生剤の製造(5)(2−キサントン酢酸+2−メチルイミダゾール):
式(1−5’)に示した2−キサントン酢酸0.2g(0.79mmol)と式(II−b)に示した2−メチルイミダゾール0.065g(0.79mmol)をテトラヒドロフラン(THF)中で混合し、室温で30分間攪拌を行った。その後、溶媒を留去し、カルボン酸塩である本発明の塩基発生剤を0.24g(収率90%)得た。
【0166】
H−NMR(300Mz,DMSO−d):d(ppm)1.77(br,0.1H,NH)、3.77(br,0.1H,NH)、2.28(s,3H,CH)、3.88(s,2H,CH)、6.89(s,2H,CH=CH),7.90(m,7H,Ar−H)
【0167】
[実施例14]
感光性樹脂組成物の製造(8):
式(No.4−12)に表されるエポキシ化合物であるポリグリシジルメタクリレート(PGMA, Mw=15000)0.1g(100質量部)に対して、実施例13で得られた塩基発生剤を0.012g(12質量部)(PGMAのモノマーユニットに対して5.0mol%)含有させることにより本発明の感光性樹脂組成物を得た。
【0168】
[試験例9]
光不溶化挙動の確認:
実施例14で得られた感光性樹脂組成物を1.5gの1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP)に溶解させた。この試料溶液を3000rpm、30秒間シリコンウェハ上にスピンコートし、ホットプレート上にて60℃で30秒間プリベイクすることにより、厚さ1.00μmの膜を作製した。この膜に365nmの単色光を照射し、ポストベイクの温度を70℃として5分間実施し、クロロホルムで30秒間現像し、残っている膜の厚さを測定し、露光量と残膜率との関係(感度曲線)を作成した。
【0169】
図11は露光量と残膜率との関係を示した図である。図11に示すように、露光量を増加させるにつれて硬化が進行し、ポリグリシジルメタクリレート(PGMA)の不溶化効率が向上することが確認できた。
【0170】
[実施例15]
塩基発生剤の製造(6)(2−キサントン酢酸+ホスファゼン):
式(1−5’)に示した2−キサントン酢酸0.2g(0.79mmol)と式(V−e)に示したイミノ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホラン0.14g(0.79mmol)をテトラヒドロフラン(THF)中で混合し、室温で30分間攪拌を行った。その後、ヘキサンを貧溶媒、アセトンを良溶媒として再沈殿を行い沈殿させ、カルボン酸塩である本発明の塩基発生剤を0.28g(収率80%)得た。
【0171】
H−NMR(300Mz,CDCl):d(ppm)1.43(s,1H,NH)、2.64(s,9H,CH)、2.67(s,9H,CH)、3.70(s,2H,CH)、7.83(m,7H,Ar−H)
【0172】
[実施例16]
感光性樹脂組成物の製造(9):
式(No.4−12)に表されるエポキシ化合物であるポリグリシジルメタクリレート(PGMA, Mw=15000)0.1g(100質量部)に対して、実施例15で得られた塩基発生剤を0.015g(15質量部)(PGMAのモノマーユニットに対して5.0mol%)含有させることにより本発明の感光性樹脂組成物を得た。
【0173】
[試験例10]
光不溶化挙動の確認:
実施例16で得られた感光性樹脂組成物を1.5gのクロロホルムに溶解させた。この試料溶液を3000rpm、30秒間シリコンウェハ上にスピンコートし、ホットプレート上にて60℃で30秒間プリベイクすることにより、厚さ0.43μmの膜を作製した。この膜に365nmの単色光を照射し、ポストベイクの温度を110℃として5分間実施し、クロロホルムで30秒間現像し、残っている膜の厚さを測定し、露光量と残膜率との関係(感度曲線)を作成した。
【0174】
図12は露光量と残膜率との関係を示した図である。図12に示すように、露光量を増加させるにつれて硬化が進行し、ポリグリシジルメタクリレート(PGMA)の不溶化効率が向上することが確認できた。
【0175】
[実施例17]
塩基発生剤の製造(7)(2−キサントン酢酸+ナトリウム):
式(1−5’)に示した2−キサントン酢酸0.2g(0.79mmol)とナトリウムエトキシド0.054g(0.79mmol)をメタノール中で混合し、室温で30分間攪拌を行った。その後、溶媒を留去し、カルボン酸塩である本発明の塩基発生剤を0.20g(収率90%)得た。H−NMRスペクトルにより、キサントンカルボン酸のCOOH由来のピークの消失を確認した。
【0176】
H−NMR(300Mz,CDOD):d(ppm)3.68(s,2H,CH)、7.79(m,7H,Ar−H)
【0177】
[実施例18]
感光性樹脂組成物の製造(10):
式(No.4−12)に表されるエポキシ化合物であるポリグリシジルメタクリレート(PGMA, Mw=15000)0.1g(100質量部)に対して、実施例17で得られた塩基発生剤を0.010g(10質量部)(PGMAのモノマーユニットに対して5.0mol%)含有させることにより本発明の感光性樹脂組成物を得た。
【0178】
[試験例11]
光不溶化挙動の確認:
実施例18で得られた感光性樹脂組成物を1.5gのテトラヒドロフラン(THF)と0.1gの水との混合溶液に溶解させた。この試料溶液を3000rpm、30秒間シリコンウェハ上にスピンコートし、ホットプレート上にて60℃で30秒間プリベイクすることにより、厚さ0.29μmの膜を作製した。この膜に365nmの単色光を照射し、ポストベイクの温度を170℃として10分間実施し、クロロホルムで30秒間現像し、残っている膜の厚さを測定し、露光量と残膜率との関係(感度曲線)を作成した。
【0179】
図13は露光量と残膜率との関係を示した図である。図13に示すように、露光量を増加させるにつれて硬化が進行し、ポリグリシジルメタクリレート(PGMA)の不溶化効率が向上することが確認できた。
【0180】
[実施例19]
塩基発生剤の製造(8)(2−キサントン酢酸+テトラメチルグアニジン):
式(1−5’)に示した2−キサントン酢酸0.2g(0.79mmol)と式(IV−b)に示したテトラメチルグアニジン(TMG)0.09g(0.79mmol)をTHF中で混合し、室温で30分間攪拌を行った。その後、溶媒を留去し、カルボン酸塩である本発明の塩基発生剤を0.23g(収率80%)得た。
【0181】
H−NMR(300Mz,CDCl):d(ppm)2.16(s,0.17H,NH)、2.90(s,12H,NCH)、3.66(s,2H,CH)、7.49(m,7H,Ar−H)
【0182】
[実施例20]
感光性樹脂組成物の製造(11):
式(No.4−12)に表されるエポキシ化合物であるポリグリシジルメタクリレート(PGMA, Mw=15000)0.1g(100質量部)に対して、実施例19で得られた塩基発生剤を0.013g(13質量部)(PGMAのモノマーユニットに対して5.0mol%)含有させることにより本発明の感光性樹脂組成物を得た。
【0183】
[試験例12]
光不溶化挙動の確認:
実施例20で得られた感光性樹脂組成物を1.5gのクロロホルムに溶解させた。この試料溶液を3000rpm、30秒間シリコンウェハ上にスピンコートし、ホットプレート上にて60℃で30秒プリベイクすることにより、厚さ0.51μmの膜を作製した。この膜に365nmの単色光を照射し、ポストベイクの温度を140℃として3分間実施し、クロロホルムで30秒間現像し、残っている膜の厚さを測定し、露光量と残膜率との関係(感度曲線)を作成した。
【0184】
図14は露光量と残膜率との関係を示した図である。図14に示すように、露光量を増加させるにつれて硬化が進行し、ポリグリシジルメタクリレート(PGMA)の不溶化効率が向上することが確認できた。
【0185】
[実施例21]
塩基発生剤の製造(9)(ケトプロフェン+ホスファゼン):
式(III)に示したケトプロフェン0.2g(0.79mmol)と式(V−e)に示したイミノ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホラン0.14g(0.79mmol)をジエチルエーテル中で混合し、室温で30分間攪拌を行った。その後、ヘキサンを貧溶媒、アセトンを良溶媒として再沈殿を行い沈殿させ、カルボン酸塩である本発明の塩基発生剤を0.25g(収率70%)得た。
【0186】
H−NMR(300Mz,CDCl):d(ppm)1.50(s,1.5H,CH)、1.52(s,1.5H,CH)、2.61(s,9H,NCH)、2.65(s,9H,NCH)、3.67(s,0.5H,NH)、3.70(s,0.5H,NH)、7.57(m,9H,Ar−H)
【0187】
[実施例22]
感光性樹脂組成物の製造(12):
式(No.4−12)に表されるエポキシ化合物であるポリグリシジルメタクリレート(PGMA, Mw=15000)0.1g(100質量部)に対して、実施例21で得られた塩基発生剤を0.015g(15質量部)(PGMAのモノマーユニットに対して5.0mol%)含有させることにより本発明の感光性樹脂組成物を得た。
【0188】
[試験例13]
光不溶化挙動の確認:
実施例22で得られた感光性樹脂組成物を1.5gのクロロホルムに溶解させた。この試料溶液を3000rpm、30秒間シリコンウェハ上にスピンコートし、ホットプレート上にて60℃で30秒間プリベイクすることにより、厚さ0.45μmの膜を作製した。この膜に254nmの単色光を照射し、ポストベイクの温度を100℃として5分間実施し、クロロホルムで30秒間現像し、残っている膜の厚さを測定し、露光量と残膜率との関係(感度曲線)を作成した。
【0189】
図15は露光量と残膜率との関係を示した図である。図15に示すように、露光量を増加させるにつれて硬化が進行し、ポリグリシジルメタクリレート(PGMA)の不溶化効率が向上することが確認できた。
【0190】
[実施例23]
塩基発生剤の製造(10)(ケトプロフェン+テトラメチルグアニジン):
式(III)に示したケトプロフェン0.2g(0.79mmol)と式(IV−b)に示したテトラメチルグアニジン(TMG)0.09g(0.79mmol)をジエチルエーテル中で混合し、室温で30分間攪拌を行った。その後、溶媒を留去し、カルボン酸塩である本発明の塩基発生剤を0.25g(収率85%)得た。
【0191】
H−NMR(300Mz,CDCl):d(ppm)1.47(s,1.5H,CH)、1.49(s,1.5H,CH)、2.85(s,12H,NCH)、7・66(m,9H,Ar−H)
【0192】
[実施例24]
感光性樹脂組成物の製造(13):
式(No.4−12)に表されるエポキシ化合物であるポリグリシジルメタクリレート(PGMA, Mw=15000)0.1g(100質量部)に対して、実施例23で得られた塩基発生剤を0.013g(13質量部)(PGMAのモノマーユニットに対して5.0mol%)含有させることにより本発明の感光性樹脂組成物を得た。
【0193】
[試験例14]
光不溶化挙動の確認:
実施例24で得られた感光性樹脂組成物を1.5gのクロロホルムに溶解させた。この試料溶液を3000rpm、30秒間シリコンウェハ上にスピンコートし、ホットプレート上にて60℃で30秒間プリベイクすることにより、厚さ0.58μmの膜を作製した。この膜に254nmの単色光を照射し、ポストベイクの温度を100℃として5分間実施し、クロロホルムで30秒間現像し、残っている膜の厚さを測定し、露光量と残膜率との関係(感度曲線)を作成した。
【0194】
図16は露光量と残膜率との関係を示した図である。図16に示すように、露光量を増加させるにつれて硬化が進行し、ポリグリシジルメタクリレート(PGMA)の不溶化効率が向上することが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0195】
本発明は、高感度の光硬化材料やレジスト材料(パターン形成材料)等を提供する感光性樹脂材料として有利に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸とアルカリ金属またはアルカリ土類金属からなるカルボン酸塩であり、下記式(X)で表されることを特徴とする塩基発生剤。
【化1】

(式(X)中、Ar基は芳香環であり、当該芳香環は置換基としてベンゾイル基、ニトロ基、アルコキシ基、アルキル基を含んでもよく、当該芳香環の置換基は環構造をとることができる。また、R’、R’’は、それぞれ水素原子、アルコキシ基、アルキル基、水酸基、またはアリール基、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属、nは1または2の整数、を示す。)
【請求項2】
カルボン酸(ケトプロフェンを除く。)と塩基類からなるカルボン酸塩であり、下記式(Y)で表されることを特徴とする塩基発生剤。
【化2】

(式(Y)中、Ar基は芳香環であり、当該芳香環は置換基としてベンゾイル基、ニトロ基、アルコキシ基、アルキル基を含んでもよく、当該芳香環の置換基は環構造をとることができる。また、R’、R’’は、それぞれ水素原子、アルコキシ基、アルキル基、水酸基、またはアリール基、Qは下記式(II)で表されるイミダゾール類、からなる塩基類、を示す。)

【化3】

(式(II)中、Rはそれぞれ、独立して水素原子、炭素数が1〜4のアルキル基(S等のヘテロ原子を含んでもよい。)、またはフェニル基、を示す。)
【請求項3】
カルボン酸と塩基類からなるカルボン酸塩であり、下記式(Z)で表されることを特徴とする化合物。
【化4】

(式(Z)中、Ar基は芳香環であり、当該芳香環は置換基としてベンゾイル基、ニトロ基、アルコキシ基、アルキル基を含んでもよく、当該芳香環の置換基は環構造をとることができる。また、R’、R’’は、それぞれ水素原子、アルコキシ基、アルキル基、水酸基、またはアリール基、Gは下記式(IV)で表されるグアニジン類、式(V)で表されるホスファゼン誘導体、のいずれかからなる塩基類、を示す。)
【化5】

(式(IV)中、R〜Rはそれぞれ、独立して水素原子、アルキル基またはアリール基(アルキル基は環状構造でもよい。)を示す。)
【化6】

(式(V)中、R〜Rはそれぞれ、独立して水素原子、アルキル基またはアリール基(アルキル基は環状構造でもよい。)を示す。)
【請求項4】
前記請求項3に記載の化合物からなることを特徴とする塩基発生剤。
【請求項5】
前記カルボン酸がケトプロフェンであることを特徴とする請求項1または請求項4に記載の塩基発生剤。
【請求項6】
前記請求項1、請求項2、請求項4または請求項5のいずれかに記載の塩基発生剤と、塩基反応性化合物とを含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記塩基反応性化合物がエポキシ系化合物及び/またはケイ素系化合物であることを特徴とする請求項6に記載の感光性樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−80032(P2011−80032A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93549(P2010−93549)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【Fターム(参考)】