説明

新規な化合物

本発明は、式(I)(式中、Yは、水素、メチル、フルオロ、クロロ、ブロモ、メトキシから選択された置換基を表し、Zは、水素またはメチルであり、Rは、任意選択で置換されているヘテロアリールである)の新規なmGluR1およびmGluR5受容体サブタイプ選択的リガンド、および/またはその塩および/または水和物および/または溶媒和物に関し、それらを生成するための方法に関し、それらを含有している医薬組成物に関し、ならびに神経障害、精神障害、急性および慢性疼痛、ならびに下部尿路の神経筋機能障害などの、mGluR1およびmGluR5受容体の調節を必要としている病的状態の治療および/または予防におけるそれらの使用に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)の新規なmGluR1およびmGluR5受容体サブタイプ選択的リガンド、および/またはその塩および/または水和物および/または溶媒和物に関し、それらの調製方法に関し、これらの化合物を含有する医薬組成物に関し、mGluR1およびmGluR5受容体の調節を必要とする状態の治療および/または予防におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳動物の中枢神経系(CNS)における主要な興奮性神経伝達物質は、グルタミン酸分子であり、これらはニューロンに結合し、細胞膜受容体を活性化させる。これらの受容体は、受容体タンパクの構造的特徴、受容体が細胞内へ信号を伝達する様式、および薬理学的プロファイルに基づいて、2つの主要なクラス、すなわちイオンチャネル型および代謝調節型グルタミン酸受容体に分類される。
【0003】
代謝調節型グルタミン酸受容体(mGluR)は、グルタミン酸の結合に続いて種々の細胞内のセカンドメッセンジャー系を活性化させるGタンパク質共役型受容体である。完全な哺乳動物ニューロンのmGluRの活性化は、下記の反応の1種または複数を誘発する。すなわち、ホスホリパーゼCの活性化、ホスホイノシチド(PI)加水分解の増加、細胞内カルシウム放出、ホスホリパーゼDの活性化、アデニルシクラーゼの活性化または阻害、環状アデノシン一リン酸(cAMP)生成の増加または減少、グアニリルシクラーゼの活性化、環状グアノシン一リン酸(cGMP)生成の増加、ホスホリパーゼA2の活性化、アラキドン酸放出の増加、ならびに電圧およびリガンド開口型イオンチャネルの活性化の増加または減少である。(Trends Pharmacol.Sci,1993,14,13;Neurochem.Int.,1994,24,439;Neuropharmacology,1995,34,1;Prog.Neurobiol.,1999,59,55;Berl.Psychopharmacology 2005,179,4)。
【0004】
mGluR1からmGluR8と称される8種類の異なるmGluRサブタイプが、分子クローニングによって同定されてきた(Neuron,1994,13,1031;Neuropharmacology,1995,34,1;J.Med.Chem.,1995,38,1417)。受容体のさらなる多様性は、特定のmGluRサブタイプの選択的スプライシング型の発現によってもたらされる(PNAS,1992,89,10331;BBRC,1994,199,1136;J.Neurosci.,1995,15,3970)。
【0005】
代謝調節型グルタミン酸受容体サブタイプは、アミノ酸配列の相同性、受容体が利用するセカンドメッセンジャー系、および薬理学的特徴に基づいて、I群、II群、およびIII群mGluRという3群にさらに分類することができる。I群mGluRは、mGluR1、mGluR5およびそれらの選択的スプライシング変異体を含む。
【0006】
I群mGluRの生理学的役割を解明する試みによって、これらの受容体の活性化が、ニューロンの興奮を誘発することが示唆される。この興奮がシナプス後mGluRの直接的な活性化によることが証拠により示されているが、シナプス前mGluRの活性化が起こり、それにより神経伝達物質の放出が増加することも示唆されている(Trends Pharmacol.Sci.,1992,15,92;Neurochem.Int,1994,24,439;Neuropharmacology,1995,34,1;Trends Pharmacol Sci.,1994,15,33)。
【0007】
代謝調節型グルタミン酸受容体は、哺乳動物のCNSにおいて多くの正常なプロセスに関係していると考えられてきた。mGluRの活性化が海馬の長期増強および小脳の長期抑圧の誘導に必要であることが示されてきた(Nature,1993,363,347;Nature,1994,368,740;Cell,1994,79,365;Cell,1994,79,377)。痛覚および無痛覚におけるmGluRの活性化の役割もまた示されてきた(Neuroreport,1993,4,879;Brain Res.,1999,871,223)。
【0008】
I群代謝調節型グルタミン酸受容体、mGluR5およびmGluR1はどちらも、CNSに作用する種々の病態生理学的プロセスおよび障害に関与していることが示唆されてきた。これらには、不安、うつ病、脳卒中、頭部外傷、無酸素性および虚血性損傷、低血糖症、てんかん、アルツハイマー病などの神経変性障害、GERDおよび疼痛が挙げられる(Trends Pharmacol Sci.1993,14,13;Life Sci.1994,54,135;Ann.Rev.Neurosci.1994,17,31;Neuropharmacology,1995,34,1;J.Med.Chem.1995,22,331;Trends Pharmacol.Sci.2001,22,331;Curr.Opin.Pharmacol.2002,2,43;Pain,2002,98,1;Neuropsychopharmacology 2004,1;Pharm.Biochem.Behav.,2005,81,901;Gastroenterology,2005,128,402;Pain,2005,114,195)。さらに、2−メチル−6−(フェニルエチニル)−ピリジン(「MPEP」)などのmGluR5選択的化合物は、不安およびうつ病を含めた気分障害の動物モデルに効果的である(J.Pharmacol.Exp.Ther.,2000,295,1267;Brit.J.Pharmacol.,2001,132,1423;Pol.J.Pharmacol.,2001,132,1423)。選択的mGluR1化合物は、不安、疼痛および神経保護の動物モデルにおいても有効であることが証明されている(Eur.J.Pharmacol,2004,492,137;Pharmacology,2005,179,207;Pain,2005,113,211;Ann.NY Acad.Sci.,2005,1053,55〜73;Neuropharmacology,2005,49,Suppl.1)。
【0009】
これらの状態の病態の多くは、CNSニューロンの過度のグルタミン酸誘導性興奮に起因すると考えられている。I群mGluR(mGluR1およびmGluR5)は、シナプス後の機序およびシナプス前グルタミン酸放出の増大を介してグルタミン酸介在性神経興奮を増大させているようであるため、それらの活性化は、おそらく病態の原因であろう。したがって、I群mGluR受容体の選択的アンタゴニストは、治療に有用であり、特に神経保護剤、鎮痛剤、または抗痙攣剤として有用であろう。
【0010】
日本国特許JP07076586には、骨粗鬆症の治療のための骨吸収阻害剤としてのフロピリジンおよびチエノピリジンが記載されている。
【0011】
チエノピリジン誘導体は、特許出願JP07053562に記載されているように、造血剤、抗腫瘍剤および免疫賦活剤として有用である。
【0012】
E.Zeinabら(Arch.Pharm,1992,325(5),301)によると、チエノピリジンおよびチエノピリミジン誘導体を合成し、それらのマイコトキシン阻害活性を評価した。化合物のいくつかは、マイコトキシンの産生およびカビの生育を阻害する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記の公開資料中に言及されている化合物は、mGluR受容体に対する活性を有することを言明されていない、または示唆さえもされていない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、式(I)
【0015】
【化1】

(式中、
Yは、水素、メチル、フルオロ、クロロ、ブロモ、メトキシから選択される置換基を表し、
Zは、水素またはメチルであり、
Rは、任意選択で置換されているヘテロアリールである)の新規なmGluR1およびmGluR5受容体サブタイプ選択的リガンド、および/またはその塩および/または水和物および/または溶媒和物に関し、それらを生成するための方法に関し、それらを含有する医薬組成物に関し、ならびに神経障害、精神障害、急性および慢性疼痛、ならびに下部尿路の神経筋機能障害などの、mGluR1およびmGluR5受容体の調製を必要とする病的状態の治療および/または予防におけるそれらの使用に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、式(I)
【0017】
【化2】

(式中、
Yは、水素、メチル、フルオロ、クロロ、ブロモ、メトキシから選択された置換基を表し、
Zは、水素またはメチルであり、
Rは、任意選択で置換されているヘテロアリールである)の新規なmGluR1およびmGluR5受容体サブタイプ選択的リガンド、および/またはその塩および/または水和物および/または溶媒和物に関する。
【0018】
さらに好ましい本発明の化合物には、構造
【0019】
【化3】

(式中、
Yは、水素、メチル、フルオロ、クロロ、ブロモ、メトキシから選択された置換基を表し、
Zは、水素またはメチルであり、
Rは、1つまたは複数のアルキル、アルコキシ、ハロゲン、メトキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、任意選択で置換されているフェニルによって任意選択で置換されている、O、NまたはSから選択された1〜4個のヘテロ原子を含有する単環式もしくは二環式ヘテロアリール環、またはO、NまたはSから選択された1〜4個のヘテロ原子を含有する単環式もしくは二環式ヘテロアリール環である)を有する式(I)の化合物、および/またはその塩および/または水和物および/または溶媒和物が含まれる。
【0020】
ヘテロアリール基は、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、フリルなどの環などの、O、NまたはSから選択された1〜4個のヘテロ原子を含有する単環式もしくは二環式芳香環でもよい。
【0021】
ヘテロアリール基は、1つまたは複数のメチル、メトキシ、フルオロ、クロロ、ブロモ、メトキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、(ピリジル、チオフェン環などの、O、NまたはSから選択された1〜4個のヘテロ原子を含有する)単環式もしくは二環式芳香環、または(1つまたは複数のハロゲン基によって任意選択で置換されている)フェニルによって任意選択で置換されていてもよい。
【0022】
式(I)の化合物は、酸と塩を形成してもよい。本発明は、式(I)の化合物の酸と形成する塩、特に医薬として許容される酸と形成する塩にも関する。式(I)の化合物の意味は、区別して示されないが、遊離塩基または塩である。
【0023】
酸付加塩の形成のために有機酸および無機酸の両方を使用することができる。適切な無機酸は、例えば塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸でもよい。一価の有機酸の代表例は、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、および様々な酪酸、吉草酸およびカプリン酸でもよい。二価の有機酸の代表例は、例えばシュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸およびコハク酸でもよい。ヒドロキシ酸、例えばクエン酸、酒石酸;または芳香族カルボン酸、例えば安息香酸もしくはサリチル酸;脂肪族および芳香族スルホン酸、例えばメタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸およびp−トルエンスルホン酸などの他の有機酸もまた使用することができる。酸付加塩の特に価値ある群は、酸成分自体が生理学的に許容でき、投与する量では治療的効果を有さなく、または活性成分の作用に好ましくない影響を有さない。これらの酸付加塩は、医薬として許容される酸付加塩である。医薬として許容される酸付加塩に属さない酸付加塩が本発明に属する理由は、所与の場合にそれらは所望の化合物の精製および単離に好都合である場合があるからである。
【0024】
式(I)の化合物の溶媒和物および/または水和物もまた、本発明の範囲内に含まれる。
【0025】
本発明の特に重要な式(I)の化合物は、下記の通りである。
【0026】
3−(4−フルオロ−フェニル)−2−(5−メチル−イソオキサゾール−3−イル)−チエノ[2,3−b]ピリジン、
3−(4−クロロ−フェニル)−2−(2−ピリジン−2−イル−チアゾール−4−イル)−チエノ[2,3−b]ピリジン、
3−(4−クロロ−フェニル)−2−(2−チオフェン−2−イル−オキサゾール−4−イル)−チエノ[2,3−b]ピリジン、
{4−[3−(4−クロロ−フェニル)−チエノ[2,3−b]ピリジン−2−イル]−チアゾール−2−イル}−エチル−アミン、
N−{4−[3−(4−クロロ−フェニル)−チエノ[2,3−b]ピリジン−2−イル]チアゾール−2−イル}−アセトアミド、
3−(4−クロロ−フェニル)−6−メチル−2−(5−メチル−イソオキサゾール−3−イル)−チエノ[2,3−b]ピリジン、
3−(4−クロロ−フェニル)−2−(5−メチル−イソオキサゾール−3−イル)−チエノ[2,3−b]ピリジン、
5−[3−(4−クロロ−フェニル)−チエノ[2,3−b]ピリジン−2−イル]−2−メチル−フラン−3−カルボン酸メチルエステル、
3−(4−クロロ−フェニル)−2−(3−エチル−[1,2,4]オキサジアゾール−5−イル)−チエノ[2,3−b]ピリジン、
3−(4−クロロ−フェニル)−2−[3−(4−フルオロ−フェニル)−[1,2,4]オキサジアゾール−5−イル]−チエノ[2,3−b]ピリジン、
3−(4−フルオロ−フェニル)−2−[5−(4−フルオロ−フェニル)−4,5−ジヒドロ−イソオキサゾール−3−イル]−チエノ[2,3−b]ピリジン。
【0027】
製剤
本発明は、活性成分として、式(I)の化合物、および/または生理学的に許容できるその塩および/または水和物および/または溶媒和物、ならびに1種または複数の生理学的に許容できる担体を含有する医薬組成物にも関する。
【0028】
式(I)の化合物、および/または生理学的に許容できるその塩および/または水和物および/または溶媒和物は、任意の便利な方法、例えば経口、非経口(皮下、筋内、および静脈内を含めた)、口腔、舌下、鼻、直腸または経皮投与によって投与することができ、医薬組成物はそれに応じて構成される。
【0029】
経口で投与された場合に活性である、式(I)の化合物、および/または生理学的に許容できるその塩および/または水和物および/または溶媒和物は、液体または固体、例えばシロップ剤、懸濁剤または乳剤、錠剤、カプセル剤およびロゼンジとして配合することができる。
【0030】
式(I)の化合物、および/または生理学的に許容できるその塩および/または水和物および/または溶媒和物の液体配合物は一般に、適切な液体担体、例えば水およびエタノールまたはグリセリンなどの水性溶媒、またはポリエチレングリコールまたは油などの非水性溶媒中に、式(I)の化合物、および/または生理学的に許容できるその塩および/または水和物および/または溶媒和物の懸濁液または溶液からなる。配合物は、懸濁剤、保存料、香味剤または着色剤もまた含有してもよい。
【0031】
錠剤としての固形中の組成物は、固形剤を調製するために通常使用される任意の適切な医薬担体を使用して調製することができる。固形担体の例には、ラクトース、白土、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などが挙げられる。任意選択で、錠剤は、標準的な水性または非水性技術によってコーティングされてもよい。
【0032】
カプセル剤としての固形中の組成物は、通常のカプセル化の手順を使用して調製することができる。例えば、標準的な担体を使用して活性成分を含有するペレットを調製することができ、次いでこれらを硬質ゼラチンカプセル中に充填する。あるいは、分散液または懸濁液を、任意の適切な医薬担体、例えば水性ガム、セルロース、ケイ酸塩または油を使用して調製することができ、次いで分散液または懸濁液を、軟質ゼラチンカプセルに充填する。
【0033】
典型的な非経口組成物は、無菌水性担体または非経口的に許容できる油、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、レシチン、ラッカセイ油またはゴマ油中の、式(I)の化合物、および/または生理学的に許容できるその塩および/または水和物および/または溶媒和物の溶液または懸濁液からなる。あるいは、溶液を凍結乾燥し、次いで投与直前に適切な溶媒で再構成することができる。
【0034】
式(I)の化合物、および/または生理学的に許容できるその塩および/または水和物および/または溶媒和物を含有する経鼻投与用の本発明の組成物は、エアロゾル、液滴、ゲルおよび粉末として好都合に配合することができる。本発明のエアロゾル配合物は、生理学的に許容できる水性または非水性溶媒中に、式(I)の化合物、および/または生理学的に許容できる塩および/または水和物および/または溶媒和物の溶液あるいは微細懸濁液を通常含み、シール容器中で無菌形態の単回用量または多回用量で通常存在し、これは噴霧装置と共に使用するためにカートリッジまたは詰め替え容器の形態をとることが可能である。あるいは、シール容器は、容器の中身が消耗すると処分することが意図されている、計量バルブを備えた単回用量の鼻吸入器またはエアロゾルディスペンサーなどの単体の分注装置でもよい。剤形がエアロゾルディスペンサーを含む場合は、圧縮空気などの圧縮ガス、またはフルオロクロロヒドロカーボンなどの有機噴霧剤でもよい噴霧剤を含有するであろう。エアロゾル剤形は、ポンプ式噴霧機の形態をとることもできる。
【0035】
式(I)の化合物、および/または生理学的に許容できる塩および/または水和物および/または溶媒和物を含有する本発明の組成物は、錠剤、ロゼンジおよび香錠を含めて、口腔または舌下投与に適切であり、活性成分は、糖およびアカシア、トラガカント、またはゼラチン、グリセリンなどの担体と共に配合される。
【0036】
直腸投与用の、式(I)の化合物、および/または生理学的に許容できるその塩および/または水和物および/または溶媒和物を含有する本発明の組成物は、好都合には、カカオバターおよび当技術分野で通常使用される他の材料などの従来の坐剤基剤を含有する坐薬の形態である。坐薬は、組成物を柔らかくしたまたは溶かした担体とまず混合し、次いで冷却し、型で成形することによって好都合に形成し得る。
【0037】
経皮投与のための、式(I)の化合物、および/または生理学的に許容できるその塩および/または水和物および/または溶媒和物を含有する本発明の組成物には、軟膏、ゲルおよびパッチが挙げられる。
【0038】
式(I)の化合物、および/または生理学的に許容できるその塩および/または水和物および/または溶媒和物を含有する本発明の組成物は、錠剤、カプセル剤またはアンプル剤などの単位用量形態であることが好ましい。
【0039】
経口投与のための本発明の各々の投与単位は、遊離塩基として計算して、0.1〜500mgの式(I)の化合物、および/または生理学的に許容できるその塩および/または水和物および/または溶媒和物を含有することが好ましい。
【0040】
非経口投与のための本発明の各々の投与単位は、遊離塩基として計算して、0.1〜500mgの式(I)の化合物、および/または生理学的に許容できるその塩および/または水和物および/または溶媒和物を含有することが好ましい。
【0041】
式(I)の化合物、および/または生理学的に許容できるその塩および/または水和物および/または溶媒和物は、毎日の投与計画で通常投与することができる。統合失調症、不安、うつ病、パニック、双極性障害、および概日障害、または慢性および急性疼痛障害などのmGluR1およびmGluR5介在性障害の治療において、1日当たり約0.01mg/体重kg〜約140mg/体重kgの投与量、または1日当たり患者当たり約0.5mg〜約7gが有用である。
【0042】
単一剤形を製造するために担体材料と組み合わせ得る活性成分の量は、治療されるホストおよび特定の投与方法によって変化するであろう。例えば、ヒトへの経口投与を意図した配合物は、全組成物の約5〜約95%で変動し得る適切で好都合な担体材料の量を配合して、約0.5mg〜約5gの活性剤を好都合に含有し得る。単位剤形は一般に、約1mg〜約1000mgの活性成分、通常25mg、50mg、100mg、200mg、250〜300mg、400mg、500mg、600mg、800mgまたは1000mgの活性成分を含有するであろう。
【0043】
しかし、任意の特定の患者のための特定の用量レベルは、年齢、体重、全体的健康状態、性別、食事、投与時間、投与経路、排せつ率、薬物の組合せ、および治療を受ける特定の疾患の重篤度を含めた種々の要因によるであろうことが理解される。
【0044】
医療用途
本発明の式(I)の化合物は、mGluR1およびmGluR5受容体に生物活性を示すことが見出され、mGluR1およびmGluR5介在性障害の治療に有用であることが期待される。
【0045】
本発明による化合物またはその塩は、個々の代謝調節型グルタミン酸受容体(mGluR)サブタイプに対し高度な効力および選択性を示すことが見出された。特に、mGluR1およびmGluR5受容体に対し効力および選択性を有する本発明による化合物がある。したがって、本発明の化合物は、mGluR1およびmGluR5受容体の興奮性活性化と関連する状態の予防および/または治療、ならびにmGluR1およびmGluR5受容体の興奮性活性化に起因するニューロン損傷の阻害に有用であることが期待される。これらの化合物は、ヒトを含めた哺乳動物においてmGluR1およびmGluR5の阻害作用を生じさせるために使用することができる。
【0046】
したがって、本発明の化合物は、急性および慢性神経障害および精神障害、慢性および急性疼痛障害、ならびに下部尿路の神経筋機能障害などのmGluR1およびmGluR5受容体介在性障害の予防および/または治療に十分適していることが期待される。
【0047】
特定の障害の治療上処置または予防的治療に必要な用量は、治療されるホストおよび投与経路によって必然的に変化するであろう。
【0048】
本発明は、治療に使用される、本明細書の上記に定義されている式(I)の化合物に関する。
【0049】
本発明は、mGluR1およびmGluR5受容体介在性障害の予防および/または治療に使用される、本明細書の上記に定義されている式(I)の化合物に関する。
【0050】
本発明は、神経障害の予防および/または治療に使用される、本明細書の上記に定義されている式(I)の化合物に関する。
【0051】
本発明は、精神障害の予防および/または治療に使用される、本明細書の上記に定義されている式(I)の化合物に関する。
【0052】
本発明は、慢性および急性疼痛障害の予防および/または治療に使用される、本明細書の上記に定義されている式(I)の化合物に関する。
【0053】
本発明は、下部尿路の神経筋機能障害の予防および/または治療に使用される、本明細書の上記に定義されている式(I)の化合物に関する。
【0054】
本発明は、片頭痛と関連する疼痛、炎症性痛覚、糖尿病性神経障害などの神経因性疼痛障害、関節炎およびリウマチ様疾患、腰痛、術後痛;アンギナ、腎仙痛または胆石仙痛、月経、片頭痛および痛風を含めた様々な状態と関連する疼痛の予防および/または治療に使用するための、本明細書の上記に定義されている式(I)の化合物に関する。
【0055】
本発明は、アルツハイマー病、老人性認知症、AIDSによる認知症、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン舞踏病、片頭痛、てんかん、統合失調症、うつ病、不安、急性不安、強迫性障害、眼科障害(網膜症、糖尿病性網膜症、緑内障など)、耳鳴などの聴覚性神経障害、化学療法による神経障害、ヘルペス感染後神経痛および三叉神経痛、耐性、依存性、脆弱X、自閉症、精神遅滞、統合失調症およびダウン症の予防および/または治療に使用するための、本明細書の上記に定義されている式(I)の化合物に関する。
【0056】
本発明は、脳卒中、頭部外傷、無酸素性および虚血性損傷、低血糖症、心血管疾患およびてんかんの予防および/または治療に使用するための、本明細書の上記に定義されている式(I)の化合物に関する。
【0057】
これらの化合物は、尿意逼迫、過活動膀胱、尿意頻数の増加、膀胱伸展性の低下、膀胱炎、失禁、遺尿症および排尿障害などの下部尿路の神経筋機能障害の治療にも十分適している。
【0058】
本発明は、mGluR1およびmGluR5受容体介在性障害および上記に記載した任意の障害の予防および/または治療のための医薬の製造における、本明細書の上記に定義されている式(I)の化合物の使用にも関する。
【0059】
本発明は、本明細書の上記に定義されている式(I)の化合物の有効量を患者に投与するステップを含む、前記状態を患っているまたは前記状態の恐れがある患者において、mGluR1およびmGluR5受容体介在性障害および上記に記載した任意の障害を治療および/または予防する方法もまた提供する。
【0060】
本明細書との関連で、「治療」という用語には、それに反する特定の表示がなければ、治療および予防が含まれる。「治療の」および「治療上」という用語は、それに従って解釈すべきである。
【0061】
本明細書では特に断りのない限り、「アンタゴニスト」という用語は、任意の手段で伝達経路を部分的にまたは完全に遮断し、それによってリガンドによる反応を生じる化合物を意味する。
【0062】
「障害」という用語は、特に断りのない限り、代謝調節型グルタミン酸受容体活性と関連する任意の状態および疾患を意味する。
【0063】
調製方法
略語
本明細書において使用する略語は、下記に表示した意味を有する。下記に表示されていない略語は、特に断りのない限り、通常使用される意味を有する。
【0064】
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
本発明によると、式(I)
【0065】
【化4】

(式中、Yは、水素、メチル、フルオロ、クロロ、ブロモ、メトキシから選択された置換基を表し、
Zは、水素またはメチルであり、
Rは、任意選択で置換されているヘテロアリールである)の化合物、および/またはその塩および/または水和物および/または溶媒和物を、
溶媒中で還流させながらまたはマイクロ波反応器中で、塩基の存在下で、
式(IV)
【0066】
【化5】

(式中、ZおよびYの意味は、上記の式(I)に記載の通りである)の化合物と、式(VI)
HlgCH
(VI)
(式中、Hlgは、クロロまたはブロモであり、Rは、請求項1および2に記載の通りである)の化合物とを反応させ、その後式(I)の化合物の塩および/または水和物および/または溶媒和物を任意選択で形成させることによって調製する方法である。
【0067】
本発明の化合物は、下記の方法によって調製することができる。特に断りのない限り、置換基の意味は、式Iの上記定義の通りであるか、または当業者には明らかである。
【0068】
【化6】

a.SOCl、Yによって置換されているベンゼン(Ph−Y、式(V)の化合物)、触媒量のDMF、80〜130℃、2〜3時間
b.AlCl、80〜130℃、5〜8時間
c.チオ尿素、水/エタノール、還流、20〜24時間
d.ハロメチル複素環(式(VI)のHlgCHR化合物、式中、Hlgは、クロロまたはブロモを意味し、Rは、1つまたは複数のアルキル、アルコキシ、ハロゲン、メトキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、任意選択で置換されているフェニルによって任意選択で置換されている、O、NまたはSから選択された1〜4個のヘテロ原子を含有する単環式もしくは二環式環でよいヘテロアリール基であるか、またはO、NまたはSから選択された1〜4個のヘテロ原子を含有する単環式もしくは二環式環であるヘテロアリール基である、塩基、例えばNaOCHまたはKOtBu、溶媒、例えばメタノール、エタノールまたはDMF、60〜150℃、2〜24時間、または場合によっては、ハロメチル複素環、CsCO、DMF、マイクロ波、200℃、20〜60分)。
【0069】
AlClの存在下で、塩化チオニルとベンゼンとの、または適切なベンゼン誘導体との反応によって、適切な2−クロロニコチン酸誘導体から酸塩化物を調製した。ベンゼンまたは適切なベンゼン誘導体を溶媒として使用してフリーデル・クラフツ反応に適切な周知の方法によって反応を行うことができる。
【0070】
生成物(III)を結晶化によって精製し、J.Katritzkyの方法(J.Chem.Soc.,1958,3610)によって還流させながら水およびエタノール混合物中でチオ尿素と反応させた。得られた式(IV)の化合物は、結晶形態である。
【0071】
塩基(例えば、NaOMe、KOtBuまたはCsCO)の存在下で、式(IV)の化合物を、様々な任意選択で置換されているハロメチル−複素環誘導体と反応させた。ハロメチル化合物は、例えばAldrich社およびEnamine社からの市販のビルディングブロックであるか、または公知の方法と同様に調製することができる。適切な溶媒(例えば、メタノール、エタノールまたはジメチルホルムアミド)中で、60〜150℃にて反応を行った。
【0072】
場合によっては、式(I)の化合物の調製(例えば、ハロメチル−複素環式化合物が、5−クロロメチル−2−メチルフラン−3−カルボン酸メチルエステルであった場合)は、マイクロ波装置(装置の詳細な説明は下記を参照されたい)中で200℃にて20〜60分間18バールおよび300ワットで反応を行った。
【0073】
得られた式(I)の化合物を、結晶化またはカラムクロマトグラフィーによって精製した。
【0074】
式(I)の化合物は、酸によってその塩に変換することができ、および/または塩基で処理することによって得られた酸付加塩から遊離することができる。
【0075】
式(I)の化合物は、水和物および/または溶媒和物に変換することができる。
【0076】
動物実験の方法
mGluR1受容体結合試験
Lavreysenら(Mol.Pharm.,2003,63,1082)の修正した方法によってmGluR1受容体結合試験を行った。ヒトおよびラットmGluR1受容体間の高い相同性に基づいて、ラット小脳膜調製物を使用して、ラットmGluR1への参照化合物および新規な化合物の結合特性を決定した。放射性リガンドとして、[3H]R214127(3nM)を使用し、1μMのR214127の存在下で非特異性結合を決定した。
【0077】
IC−50値を、非線形回帰分析によって置換曲線から決定し、ChengおよびPrusoffの等式法(Biochem.Pharmacol.,1973,22,3099)によってK値に変換した。
【0078】
mGluR5受容体結合試験
mGluR5受容体結合を、Gaspariniら(Bioorg.Med.Chem.Lett.2000,12:407〜409)に従って修正して決定した。ラット大脳皮質膜調製物を使用して、ラットmGluR5への参照化合物および新規な化合物の結合特性を決定した。hmGluR5aを発現しているA18細胞系(Euroscreen社から購入)を使用して、化合物のヒトmGluR5a受容体への結合特性を決定した。放射性リガンドとして、[3H]−M−MPEP(2nM)を使用した。10μMのM−MPEPの存在下で非特異性結合を決定した。
【0079】
機能活性の評価
未変性のラットmGluR5およびmGluR1受容体のための細胞培養
17日齢のCharles Riverラット胚由来の新皮質の初代細胞培養物および4日齢のWistar系ラット由来の小脳の初代細胞培養物を各々使用して、未変性のラットmGluR5およびmGluR1受容体の機能的効力を測定した(神経細胞培養物の調製についての詳細については、Johnson,M.I.;Bunge,R.P.(1992):Primary cell cultures of peripheral and central neurons and glia.In:Protocols for Neural Cell Culture,eds:Fedoroff,S.;Richardson A.,The Humana Press Inc.,51〜77を参照されたい)。単離後、細胞を標準の96ウェルマイクロプレート上に蒔いて、95%空気5%COの雰囲気下で37℃にて培養物を保持した。新皮質および小脳培養物を、各々5〜7日後、および3〜4日後に、in vitroでカルシウム測定のために使用した。
【0080】
組換えヒトmGluR5a受容体のための細胞培養
組換えヒトmGluR5a受容体を安定的に発現しているチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(CHO−mGluR5a、Euroscreen社から購入)を、F12培地(10%FCS、1%抗生物質の抗カビ性溶液、400μg/mlのG418、250μg/mlゼオシン、5μg/mlピューロマイシンを含有)中で培養した。細胞を、加湿したインキュベーター中で5%CO/95%空気の雰囲気下で37℃にて保持し、1週間で3回継代した。細胞を2.5〜3.5×104細胞/ウェルで標準の96ウェルマイクロプレート上に蒔き、翌日600ng/mlのドキシサイクリンを加えることによって、受容体発現を誘導した。誘発剤の添加後16〜24時間でカルシウム測定を行った。
【0081】
サイトゾルカルシウム濃度の蛍光定量的測定
新皮質および小脳の初代培養物、ならびにヒトmGluR5a受容体を安定的に発現しているCHO−mGluR5a細胞で、サイトゾルカルシウム濃度([Ca2+)の測定を行った。細胞を標準の96ウェルマイクロプレート中で増殖させ、測定前に蛍光性Ca2+感受性色素fluo−4/AM(2μM)を添加した。神経培養物をその増殖培地に添加し、CHO−mGluR5a細胞を、2mMのNa−ピルビン酸および30μg/mlのグルタミン酸−ピルビン酸トランスアミナーゼを補充したアッセイ緩衝液(145mMのNaCl、5mMのKCl、2mMのMgCl、2mMのCaCl、10mMのHEPES、20mMのD−グルコース、2mMのプロベネシド、pH=7.4)に添加した(CHO−mGluR5a細胞の場合、これらの補充物は[Ca2+測定の間に存在した)。細胞を100μl/ウェルの色素溶液と共に、加湿したインキュベーター中で5%CO/95%空気の雰囲気下で40〜120分間37℃でインキュベートすることによって、添加を行った。色素添加を停止するために、細胞をアッセイ緩衝液で2度洗浄した。洗浄後、様々な濃度の試験化合物(DMSOまたはジメチルホルムアミド(DMF)ストック溶液からのアッセイ緩衝液中で希釈、最終的なDMSO/DMF濃度は<0.1%であった)または緩衝液を、実験の設定によって各ウェルに加えた。新皮質培養物の場合は、アッセイ緩衝液は、[Ca2+]iの自発的振動を抑制するためTTXも含有し(0.5μM)、小脳培養物の場合は、プロベネシドをスルフィンピラゾン(0.25mM)に置換した。
【0082】
37℃での10〜20分のインキュベート後、ベースラインおよび[Ca2+]iのアゴニスト誘起変化を、プレートリーダー螢光計(FlexStation II、Molecular Devices社製)でカラム毎に測定した。プレートの底から、励起および放出検出を行った。すべての測定過程は37℃で行い、特注ソフトウェアで制御した。様々な濃度の化合物の存在下でアゴニスト誘起[Ca2+上昇の減少を測定することによって、試験化合物の阻害能力を評価した。DHPGを、3種類の培養物すべてのアゴニストとして使用し、新皮質および小脳培養物のための濃度は各々20μMおよび100μMであった。CHO−mGluR5a細胞の場合、DHPGはEC80濃度で適用され、EC80値は毎日測定する用量反応曲線から得た。蛍光データをΔF/F(ベースラインに正規化した蛍光変化)として表現した。
【0083】
単一のプレート上のすべての処理を、複数のウェルで測定した。同じ処理を行ったすべてのウェルからのデータを平均化し、平均値を分析のために使用した。単一の濃度点での化合物の阻害能力を、対照アゴニストの反応の阻害率%で表した。S字状の濃度阻害曲線を(少なくとも3回の別の実験から得た)データに当てはめ、化合物によってもたらされる最大の阻害の半分を生じさせる濃度としてIC50値を決定した。Soft Max Pro(Molecular Devices社製)を使用して未加工の蛍光データを分析し、GraphPad Prismで曲線の当てはめを行った。
【0084】
結果
本発明の式(I)の化合物は、ラットおよびヒトのmGluR1およびmGluR5受容体の両方に親和性を示し、mGluR5受容体の刺激によって誘発される機能的反応を阻害する機能的アンタゴニストであることが判明した。
【0085】
【表1−1】

【0086】
【表1−2】

【0087】
【表1−3】

【0088】
本発明を、以下の非限定的実施例によってさらに例示する。
【0089】
すべての出発物質は、市販であるか、または文献に記載されている様々な公知の方法によって合成することができる。
【実施例1】
【0090】
(4−クロロフェニル)−(2−クロロピリジン−3−イル)メタノン
塩化チオニル(15ml、0.2mol)およびDMF(0.5ml)を、クロロベンゼン(100ml)中の2−クロロニコチン酸(31.5g、0.2mol)の懸濁液に滴下で加え、反応混合物を120℃で4時間攪拌した。
【0091】
塩化アルミニウム(33g、0.25mol)を、0℃で反応混合物に加え、6時間沸騰させた。反応混合物を氷(100ml)に注ぎ、酢酸エチル(100ml)を加えた。混合物を室温で30分間攪拌した。水酸化ナトリウム水溶液(40%)によってpHを8に調節した。エマルジョンを濾過し、濾液を分離し、酢酸エチル(2×50ml)で抽出した。有機相を水(100ml)で洗浄し、NaSO上で乾燥し、減圧下で濃縮した。粗生成物を、イソプロパノール(20ml)から結晶化させ、表題化合物19.5g(34%)を得た。
【0092】
置換2−クロロニコチン酸から出発するケトンの合成の場合は、同じ方法を使用した。
【実施例2】
【0093】
(4−クロロフェニル)−(2−メルカプトピリジン−3−イル)メタノン塩酸塩
チオ尿素(15.6g、0.200mmol)の水(50ml)およびエタノール(25ml)溶液を、(4−クロロフェニル)−(2−クロロピリジン−3−イル)メタノン(7.65g、30mmol)のエタノール(20ml)懸濁液に滴下で加えた。反応混合物を、24時間加熱し、次いで冷却し、0℃で2〜3時間攪拌した。沈殿物を濾過し、水で洗浄し、室温で1時間NaOH溶液(水60ml中のNaOH2.5g)と共に攪拌することによって精製した。混合物を濾過し、濾液を6Nの塩酸水溶液でpH1に調節した。生成物を濾過し、水で洗浄し、表題化合物6.48g(76%)を得た。
【実施例3】
【0094】
3−(4−フルオロフェニル)−2−(5−メチルイソキサゾール−3−イル)チエノ[2,3−b]ピリジン
(化合物1)
メタノール(8ml)中の(4−フルオロフェニル)−(2−メルカプトピリジン−3−イル)メタノン塩酸塩(実施例1の記載により調製)(0.48g、2.1mmol)、3−(ブロモメチル)−5−イソオキサゾール(0.40g、2.3mmol)およびNaOMe(0.16g、2.4mmol)を、還流させながら3時間加熱した。反応混合物を冷却し、結晶性生成物を濾過し、メタノールで洗浄した。この反応によって、表題化合物0.25g(39%)が得られた。
【0095】
様々な市販のハロメチルビルディングブロックから、この方法によって、化合物4を除いた化合物を調製した。
【実施例4】
【0096】
[3−(4−クロロフェニル)チエノ[2,3−b]ピリジン−2−イル]−2−メチルフラン−3−カルボン酸メチルエステル塩酸塩
(化合物4)
(4−クロロフェニル)−(2−メルカプトピリジン−3−イル)メタノン塩酸塩(0.28g、1.0mmol)のDMF(5ml)溶液に、5−クロロメチル−2−メチルフラン−3−カルボン酸メチルエステル(0.2g、1.05mmol)および炭酸セシウム(0.36g、1.1mmol)を加えた。反応混合物を、CEMマイクロ波反応器(8ml管、300ワット、200℃、18バール、20分)中で処理した。減圧下で蒸発後、水(10ml)およびクロロホルム(3×10ml)を残渣に加えた。有機相をNaSO上で乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。クロマトグラフィー(Kieselgehl60、溶離液:シクロヘキサン:アセトン7:3)によってこれを精製し、生成物190mg(47%)を得て、これをジイソプロピル−メタノール混合物の溶液中のHCl/メタノールで処理し、表題化合物100mgを得た。
【実施例5】
【0097】
医薬組成物の調製
a)錠剤
0.01〜50%の式(I)の活性成分、15〜50%のラクトース、15〜50%のジャガイモデンプン、5〜15%のポリビニルピロリドン、1〜5%のタルク、0.01〜3%のステアリン酸マグネシウム、1〜3%のコロイド二酸化ケイ素、および2〜7%のウルトラアミロペクチンを混合し、次いで湿式造粒法によって造粒し、加圧して錠剤とした。
【0098】
b)糖衣錠、フィルムコート錠
上記の方法によって作製した錠剤を、腸溶性もしくは胃溶性フィルムからなる、または糖およびタルクからなる層でコーティングした。糖衣錠は、蜜蝋およびカルナウバ蝋の混合物によってつやを出した。
【0099】
c)カプセル剤
0.01〜50%の式(I)の活性成分、1〜5%のラウリル硫酸ナトリウム、15〜50%のデンプン、15〜50%のラクトース、1〜3%のコロイド二酸化ケイ素、および0.01〜3%のステアリン酸マグネシウムを完全に混合し、混合物を篩過し、硬質ゼラチンカプセルに充填した。
【0100】
d)懸濁剤
成分:0.01〜15%の式(I)の活性成分、0.1〜2%の水酸化ナトリウム、0.1〜3%のクエン酸、0.05〜0.2%のニパギン(4−ヒドロキシ安息香酸メチルナトリウム)、0.005〜0.02%のニパソール、0.01〜0.5%のカルボポール(ポリアクリル酸)、0.1〜5%の96%エタノール、0.1〜1%の香味剤、20〜70%のソルビトール(70%水溶液)および30〜50%の蒸留水。
【0101】
ニパギンおよびクエン酸の蒸留水溶液20mlに、カルボポールを激しく攪拌しながらごく一部ずつ加え、溶液を10〜12時間静置した。次いで、蒸留水1ml中の水酸化ナトリウム、ソルビトールの水溶液、最後にエタノール性のラズベリー香料を、攪拌しながら加えた。この担体に、活性成分をごく一部ずつ加え、浸漬するホモジナイザーで懸濁させた。最後に懸濁液を、蒸留水で所望の最終容量まで満たして、懸濁シロップをコロイド粉砕装置に通過させた。
【0102】
e)坐薬
坐薬毎に、0.01〜15%の式(I)の活性成分および1〜20%のラクトースを完全に混合し、次いで50〜95%のアデプスプロ坐薬(例えばWitepsol4)を溶解し、35℃に冷却し、活性成分およびラクトースの混合物を、ホモジナイザーでその中に混合した。得られた混合物を冷却した形態で成形した。
【0103】
f)凍結乾燥粉末アンプル組成物
マンニトールまたはラクトースの5%溶液を、注射用途のために再蒸留水により作製し、滅菌溶液とするために溶液を濾過した。式(I)の活性成分の0.01〜5%溶液もまた注射用途のために再蒸留水により作製し、滅菌溶液とするためにこの溶液を濾過した。これらの2種類の溶液を無菌条件下で混合し、1mlずつアンプルに充填し、アンプルの内容を凍結乾燥し、アンプルを窒素下で密封した。投与前に、アンプルの内容を滅菌水または0.9%(生理的)無菌塩化ナトリウム水溶液中で溶解した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

(式中、
Yは、水素、アルキル、ハロゲン、またはアルコキシ基から選択した置換基を表し、
Zは、水素またはアルキル基であり、
Rは、任意選択で置換されているヘテロアリール基である)の化合物、および/またはその塩および/または水和物および/または溶媒和物。
【請求項2】
式(I)
【化2】

(式中、
Yは、水素、メチル、フルオロ、クロロ、ブロモ、メトキシから選択された置換基を表し、
Zは、水素またはメチルであり、
Rは、1つまたは複数のアルキル、アルコキシ、ハロゲン、メトキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、任意選択で置換されているフェニルによって任意選択で置換されている、O、NまたはSから選択された1〜4個のヘテロ原子を含有する単環式もしくは二環式ヘテロアリール環、またはO、NまたはSから選択された1〜4個のヘテロ原子を含有する単環式もしくは二環式ヘテロアリール環である)の化合物、および/またはその塩および/または水和物および/または溶媒和物。
【請求項3】
3−(4−フルオロ−フェニル)−2−(5−メチル−イソオキサゾール−3−イル)−チエノ[2,3−b]ピリジン、
3−(4−クロロ−フェニル)−2−(2−ピリジン−2−イル−チアゾール−4−イル)−チエノ[2,3−b]ピリジン、
3−(4−クロロ−フェニル)−2−(2−チオフェン−2−イル−オキサゾール−4−イル)−チエノ[2,3−b]ピリジン、
{4−[3−(4−クロロ−フェニル)−チエノ[2,3−b]ピリジン−2−イル]−チアゾール−2−イル}−エチル−アミン、
N−{4−[3−(4−クロロ−フェニル)−チエノ[2,3−b]ピリジン−2−イル]チアゾール−2−イル}−アセトアミド、
3−(4−クロロ−フェニル)−6−メチル−2−(5−メチル−イソオキサゾール−3−イル)−チエノ[2,3−b]ピリジン、
3−(4−クロロ−フェニル)−2−(5−メチル−イソオキサゾール−3−イル)−チエノ[2,3−b]ピリジン、
5−[3−(4−クロロ−フェニル)−チエノ[2,3−b]ピリジン−2−イル]−2−メチル−フラン−3−カルボン酸メチルエステル、
3−(4−クロロ−フェニル)−2−(3−エチル−[1,2,4]オキサジアゾール−5−イル)−チエノ[2,3−b]ピリジン、
3−(4−クロロ−フェニル)−2−[3−(4−フルオロ−フェニル)−[1,2,4]オキサジアゾール−5−イル]−チエノ[2,3−b]ピリジン、
3−(4−フルオロ−フェニル)−2−[5−(4−フルオロ−フェニル)−4,5−ジヒドロ−イソオキサゾール−3−イル]−チエノ[2,3−b]ピリジン
から選択される化合物。
【請求項4】
式(I)
【化3】

(式中、Y、ZおよびRは、請求項1および2のいずれか一項に記載の通りである)の化合物を、
溶媒中で還流させながらまたはマイクロ波反応器中で、塩基の存在下で、
式(IV)
【化4】

(式中、ZおよびYの意味は、上記の式(I)に記載の通りである)の化合物と、式(VI)
HlgCH
(VI)
(式中、Hlgは、クロロまたはブロモであり、Rは、請求項1および2に記載の通りである)の化合物とを反応させ、その後式(I)の化合物の塩および/または水和物および/または溶媒和物を任意選択で形成させることによって調製する方法。
【請求項5】
1種または複数の生理学的に許容できる希釈剤、賦形剤および/または不活性な担体と組み合わせた、式(I)
【化5】

(式中、Y、ZおよびRは、請求項1および2のいずれか一項に記載の通りである)の化合物の治療有効量を含む製剤。
【請求項6】
mGluR1およびmGluR5受容体介在障害の予防および/または治療において使用するための、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
mGluR1およびmGluR5受容体介在障害の治療および/または予防のための医薬の製造における、式(I)
【化6】

(式中、Y、ZおよびRは、請求項1または2のいずれか一項に記載の通りである)の化合物の使用。
【請求項8】
前記mGluR1およびmGluR5受容体介在性障害が、精神障害である、請求項6に記載の化合物の使用。
【請求項9】
前記mGluR1およびmGluR5受容体介在性障害が、神経障害である、請求項6に記載の化合物の使用。
【請求項10】
前記mGluR1およびmGluR5受容体介在性障害が、慢性および急性疼痛である、請求項7に記載の化合物の使用。
【請求項11】
前記mGluR1およびmGluR5受容体介在性障害が、下部尿路の神経筋機能障害である、請求項7に記載の化合物の使用。
【請求項12】
mGluR1およびmGluR5受容体介在性障害を予防および/または治療する方法であって、このような予防および/または治療を必要としている哺乳動物に、式(I)
【化7】

(式中、Y、ZおよびRは、請求項1または2に記載の通りである)の化合物の治療有効量を投与するステップを含む方法。
【請求項13】
前記哺乳動物がヒトである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記mGluR1およびmGluR5受容体介在性障害が、精神障害である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記mGluR1およびmGluR5受容体介在性障害が、神経障害である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記mGluR1およびmGluR5受容体介在性障害が、慢性および急性疼痛障害である、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記mGluR1およびmGluR5受容体介在性障害が、下部尿路の神経筋機能障害である、請求項12に記載の方法。

【公表番号】特表2009−520012(P2009−520012A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546647(P2008−546647)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【国際出願番号】PCT/HU2006/000119
【国際公開番号】WO2007/072091
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(508169317)
【Fターム(参考)】