説明

新規な含フッ素共重合体および膜

【課題】酸素遮蔽性能と、有機溶剤溶解性、および成形性が発揮され、水蒸気透過性が維持されたクロロトリフルオロエチレン系共重合体を得る。
【解決手段】クロロトリフルオロエチレンのモノマー単位(A)とモノマー単位(B)とからなり、モノマー単位(A)の割合が3〜99モル%、フッ素含有率が15〜75モル%、かつ、分子量が1000〜100万である含フッ素共重合体。ただし、モノマー単位(B)は、CH=CHCOON(R、N−ビニルカプロラクタム、式CH=CRCHOCHCR=CH、式CH=CHCHCH(CH)−R、およびメチル−2−フルオロアクリレートのモノマーからなる群より選ばれるいずれか1種のモノマーが重合した単位。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素遮蔽性能および水蒸気遮蔽性能に優れた含フッ素共重合体に関する(以下、含フッ素共重合体を、単に共重合体と記すこともある。)。本発明の含フッ素共重合体は、食品用包装フィルム、電子部品用包装フィルム、医薬品用包装フィルム、有機EL用ガスバリアフィルム、またはLCD用ガスバリアフィルム等の酸素遮蔽性が要求されるフィルムとして、LED用封止膜や太陽電池用のコーティング膜等のコーティング剤として、または太陽電池の表面シートまたはバックーシートに水蒸気遮蔽性能および酸素遮蔽性能を付与するためのコ−ティング剤もしくはフィルムとして有用である。
【背景技術】
【0002】
酸素遮蔽性能を有する重合体は、食品用包装フィルム、電子部品用包装フィルム、医薬品用包装フィルム、有機EL用ガスバリアフィルム、LCD用ガスバリアフィルムおよびLED用封止膜等の材料として有用に用いうる。また、含フッ素共重合体は、高撥水撥油性、高耐熱性、高耐薬品性、高耐候性等の性質を有する。
しかし、酸素遮蔽性とともに、他の性質を有する含フッ素共重合体についての報告は少なくない。たとえば、クロロトリフルオロエチレン(以下、CTFEと記す。)を重合させてなるポリクロロトリフルオロエチレン(以下、PCTFEと記す)、CTFEとビニリデンフルオリドの共重合体についての、酸素遮蔽性能や水蒸気遮蔽性能の報告がある(非特許文献1)。
また、1重量%までの共重合性コモノマーを含むPCTFEフィルムについて、水蒸気透過性と物理的性質を検討した報告がある(特許文献1)。
さらに、CTFEの2元系共重合体として、CTFEとプロピレンの共重合体およびCTFEとビニルエステルの共重合体が知られている(非特許文献2、特許文献2)。また、CTFEの共重合体として、3元系以上の共重合体も種々知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表平6−511271号公報
【特許文献2】英国特許第596943号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】A.W.Myers,V.Tammela,V.Stannett,and M.Szwarc,Mod. Plast.,37,10,139(1960).
【非特許文献2】小山利一、里川孝臣ら、有機合成化学、31、No.6,518(1973)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、PCTFEは、高い結晶性を有するため成型温度が高い。またPCTFEは、フッ素含有率が高いために有機溶剤に対する溶解性が低い。よって、PCTFEを膜等の形状に成型するのは困難であった。
CTFEの共重合体については、CTFEは共重合性が低いため、CTFEと共重合しうる単量体は限定される。またCTFEの共重合体として高分子量のものを得ることは一般に困難であることから、自立膜にすることは難しい。
また、本発明者の検討によれば、多くの3元系共重合体について酸素遮蔽性が低く、実用化は困難であった。また3元系共重合体は、反応制御が難しく、共重合体中のモノマー組成コントロールは一般に困難である。さらに、前記した用途に用いる場合には、水蒸気が透過しない性質(水蒸気遮蔽性)も要求されるが、該性質を維持したまま、酸素透過性が優れ、かつ成型加工性に優れた重合体については、報告されていない。
【0006】
本発明は、CTFEと、CTFEと共重合しうるモノマーとの2元系共重合体であって、酸素遮蔽性能と、有機溶剤溶解性および成形性の性能が両立され、PCTFEに比して実用性に優れた含フッ素共重合体および該含フッ素共重合体から得られる膜の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の発明を提供する。
[1]クロロトリフルオロエチレンのモノマー単位(A)、および、下記モノマー単位(B)から実質的になる共重合体であって、モノマー単位(A)とモノマー単位(B)の総モル数に対するモノマー単位(A)の割合が3〜99モル%、下記フッ素含有率が15〜75モル%、かつ、分子量が1000〜100万である含フッ素共重合体。
モノマー単位(B):式CH=CHCOON(Rで表されるモノマー(ただし、2つのRは同一であっても異なっていてもよく、Rは水素原子またはアルキル基を示す。)、N−ビニルカプロラクタム、式CH=CRCHOCHCR=CHで表されるモノマー(ただし、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、またはメチル基を示す。)、式CH=CHCHCH(CH)−Rで表されるモノマー(ただし、Rは炭素数1〜7の直鎖アルキル基を示す。)、およびメチル−2−フルオロアクリレートのモノマーからなる群より選ばれるいずれか1種のモノマーが重合した単位。
フッ素含有率:含フッ素共重合体の炭素原子に結合するハロゲン原子および水素原子の総モル数に対するフッ素原子の総モル数の割合。
[2]モノマー単位(B)が、式CH=CHCOON(Rで表されるモノマーが重合した単位(ただし、Rは前記と同じ意味を示す。)であり、
モノマー単位(A)とモノマー単位(B)の総モル数に対する、モノマー単位(A)の割合が16〜99モル%であり、モノマー単位(B)の割合が84〜1モル%である、[1]に記載の含フッ素共重合体。
[3]モノマー単位(B)が、N,N−ジメチルアクリルアミドが重合した単位であり、
モノマー単位(A)とモノマー単位(B)の総モル数に対する、モノマー単位(A)の割合が36〜60モル%であり、モノマー単位(B)の割合が64〜40モル%である、[1]に記載の含フッ素共重合体。
[4]モノマー単位(B)が、N−ビニルカプロラクタムが重合した単位であり、
モノマー単位(A)とモノマー単位(B)の総モル数に対する、モノマー単位(A)の割合が45〜99モル%であり、モノマー単位(B)の割合が55〜1モル%である、[1]に記載の含フッ素共重合体。
[5]モノマー単位(B)が、式CH=CRCHOCHCR=CHで表されるモノマーが重合した単位(ただし、RおよびRは、前記と同じ意味を示す。)であり、
モノマー単位(A)とモノマー単位(B)の総モル数に対する、モノマー単位(A)の割合が10〜99モル%であり、モノマー単位(B)の割合が90〜1モル%である、[1]に記載の含フッ素共重合体。
[6]モノマー単位(B)が、式CH=CHCHCH(CH)−Rで表されるモノマーが重合した単位(ただし、Rは前記と同じ意味を示す。)であり、
モノマー単位(A)とモノマー単位(B)の総モル数に対する、モノマー単位(A)の割合が43〜99モル%であり、モノマー単位(B)の割合が57〜1モル%である、[1]に記載の含フッ素共重合体。
[7]モノマー単位(B)が、式CH=CHCHCH(CHで表されるモノマーの重合した単位であり、
モノマー単位(A)とモノマー単位(B)の総モル数に対する、モノマー単位(A)の割合が43〜70モル%であり、モノマー単位(B)の割合が57〜30モル%である、[1]に記載の含フッ素共重合体。
[8]モノマー単位(B)が、メチル−2−フルオロアクリレートの重合した単位であり、
モノマー単位(A)とモノマー単位(B)の総モル数に対する、モノマー単位(A)の割合が3〜20モル%であり、モノマー単位(B)の割合が97〜80モル%である、[1]に記載の含フッ素共重合体。
[9]酸素透過係数が40℃において0〜20(cm・mm)/(m・day・atm)である[1]〜[8]のいずれかに記載の含フッ素共重合体。
[10]クロロトリフルオロエチレンのモノマー単位(A)、および、下記モノマー単位(B)からなり、モノマー単位(A)とモノマー単位(B)の総モル数に対するモノマー単位(A)の割合が3〜99モル%、下記フッ素含有率が15〜75モル%、かつ、分子量が1000〜100万である含フッ素共重合体から形成され、酸素透過係数が40℃において0〜20(cm・mm)/(m・day・atm)である膜。
モノマー単位(B):式CH=CHCOON(Rで表されるモノマー(ただし、2つのRは同一であっても異なっていてもよく、Rは水素原子またはアルキル基を示す。)、N−ビニルカプロラクタム、式CH=CRCHOCHCR=CHで表されるモノマー(ただし、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、またはメチル基を示す。)、式CH=CHCHCH(CH)−Rで表されるモノマー(ただし、Rは炭素数1〜7の直鎖アルキル基を示す。)、およびメチル−2−フルオロアクリレートのモノマーからなる群より選ばれるいずれか1種のモノマーが重合した単位。
フッ素含有率:含フッ素共重合体の炭素原子に結合するハロゲン原子および水素原子の総モル数に対するフッ素原子の総モル数の割合。
[11]膜厚が0.05〜2000μmである[10]に記載の膜。
[12]フィルムまたはコーティング膜である[10]または[11]に記載の膜。
[13][1]〜[9]のいずれかに記載の含フッ素共重合体と、有機溶媒とを含む有機溶媒溶液を基板上に塗布し、つぎに乾燥させることにより該基板上に該含フッ素共重合体の膜を形成させる、コーティング膜の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、CTFEと共重合性しうる特定のモノマーとの共重合体であって、酸素遮蔽性能と、有機溶剤溶解性および成形性の性能が両立され、PCTFEに比して実用性に優れた含フッ素共重合体が提供される。また、該含フッ素共重合体から得られる有用な膜が提供されうる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において、モノマー単位とは、モノマーの重合した単位である。モノマーの重合により、重合体中に形成する繰り返し単位でもある。本明細書において、式(1)で表されるモノマーをモノマー(1)と記し、モノマー(1)により形成されるモノマー単位をモノマー単位(1)と記すことがある。また、明細書中の記号について特に記載していない場合には、前記と同じ意味を示す。
【0010】
本発明の含フッ素共重合体は、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)のモノマー単位(A)と、CTFEと共重合する特定のモノマーのモノマー単位(B)とから実質的になる共重合体である。
【0011】
モノマー単位(B)とは、式CH=CHCOON(R(B1)で表されるモノマー(ただし、2つのRは同一であっても異なっていてもよく、Rは水素原子またはアルキル基を示す。)、N−ビニルカプロラクタム(B2)、式CH=CRCHOCHCR=CH(B3)で表されるモノマー(ただし、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、またはメチル基を示す。)、式CH=CHCHCH(CH)−R(B4)で表されるモノマー(ただし、Rは炭素数1〜7の直鎖アルキル基を示す。)、およびメチル−2−フルオロアクリレート(B5)から選ばれるいずれか1種のモノマーが重合した単位である。
【0012】
含フッ素共重合体中のモノマー単位(B)は、1種である。ただし、モノマー単位(B)が一般式または上位概念で表現される場合においては、該一般式または上位概念に含まれる複数のモノマー単位(B)は、化学構造が異なる場合においても、1種であると解釈し、2以上の異なる化学構造のモノマー単位(B)を採用してもよい。モノマー単位(B)は、化学構造が同一の1種のモノマー単位に基づくモノマー単位であるのが好ましい。
【0013】
モノマー単位(B1)における式CH=CHCOON(R(ただし、2つのRは同一であっても異なっていてもよく、Rは水素原子またはアルキル基を示す。)で表されるモノマー(B1)としてRが同一である化合物が好ましく、アクリルアミド、または、N,N−ジアルキルアクリルアミドが特に好ましい。Rがアルキル基である場合の炭素数は1〜3であることが好ましく、メチル基が特に好ましい。すなわち、N,N−ジアルキルアクリルアミドとしては、N,N−ジメチルアクリルアミドが好ましい。
【0014】
モノマー単位(B2)におけるN−ビニルカプロラクタム(B2)とは、下記式(B2)で表される化合物である。
【0015】
【化1】

【0016】
モノマー単位(B3)における式CH=CRCHOCHCR=CHで表されるモノマー(B3)(ただし、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、またはメチル基を示す。)としては、CH=C(CH)CHOCHC(CH)=CH、CH=CHCHOCHCH=CH、CH=CFCHOCHC(CH)=CH、CH=CFCHOCHCF=CH、CH=CFCHOCHCH=CH等が挙げられ、CH=C(CH)CHOCHC(CH)=CH、CH=CHCHOCHCH=CHが好ましく、CH=CHCHOCHCH=CHが特に好ましい。該モノマーが重合したモノマー単位(B3)としては、片末端で付加重合したモノマー単位、両末端で付加重合したモノマー単位、および、環化重合したモノマー単位があげられ、これらの比率は特に限定されない。
【0017】
モノマー単位(B4)における式CH=CHCHCH(CH)−Rで表されるモノマー(B4)としては、CH=CHCHCH(CH)−CHCH、CH=CHCHCH(CH等が好ましく、CH=CHCHCH(CHが特に好ましい。
【0018】
モノマー単位(B)におけるメチル−2−フルオロアクリレート(B5)とは、式CH=CF−COOCHで表される化合物である。
【0019】
上記モノマー単位(B)としては、水蒸気遮蔽性能の観点からはCH=CHCHCH(CH(4−メチル−1ペンテン)、N−ビニルカプロラクタム、およびCH=CHCHOCHCH=CH(ジアリルエーテル)が好ましい。酸素遮蔽性能の観点からは、N−ビニルカプロラクタム、メチル−2−フルオロアクリレート、ジアリルエーテル、が好ましく、特にN−ビニルカプロラクタムが好ましい。
【0020】
本発明の含フッ素共重合体は、CTFEのモノマー単位(A)とモノマー単位(B)とから実質的になる。すなわち、共重合体中の全モノマー単位の総モル数に対するモノマー単位(A)とモノマー単位(B)の総モル数の割合は100モル%である。100モル%であるとは、NMR等の分析手法で共重合体を定性分析した場合に、モノマー単位(A)とモノマー単位(B)以外のモノマー単位を含まない、または、含んでいたとしても検出されないことを意味する。含フッ素共重合体は、CTFEのモノマー単位(A)とモノマー単位(B)とからなるのが好ましい。
【0021】
共重合体中のモノマー単位の割合は、CTFEのモノマー単位(A)は3〜99モル%が、モノマー単位(B)は97〜1モル%が好ましい。さらに、本発明が目的とする性能を発揮するためのモノマー単位の好ましい比率を、モノマー単位(B)の種類別に記載する。共重合体中のモノマー単位の割合は、例えば後述するAQF-IC法、NMR法等の測定したデータを、換算することにより求めることができる。
【0022】
モノマー単位(B)がモノマー単位(B1)である場合の該モノマー単位の比率は、モノマー単位(A)が16〜99モル%でありモノマー単位(B1)が84〜1モル%であることが好ましく、モノマー単位(A)が36〜60モル%であり、モノマー単位(B1)が64〜40モル%であることが特に好ましい。
【0023】
モノマー単位(B)が、N−ビニルカプロラクタムのモノマー単位(B2)である場合の該比率は、モノマー単位(A)が45〜99モル%でありモノマー単位(B2)が55〜1モル%であることが好ましく、モノマー単位(A)が45〜90モル%でありモノマー単位(B2)が55〜10モル%であることが特に好ましく、モノマー単位(A)が45〜85モル%でありモノマー単位(B2)が55〜15モル%であることがとりわけ好ましい。
【0024】
モノマー単位(B)が、式CH=CRCHOCHCR=CHで表されるモノマー(B3)のモノマー単位(B3)である場合の該比率は、モノマー単位(A)が10〜99モル%でありモノマー単位(B3)が90〜1モル%であることが好ましく、モノマー単位(A)が39〜85モル%でありモノマー単位(B3)が61〜15モル%であることが特に好ましい。
【0025】
モノマー単位(B)が、式CH=CHCHCH(CH)−Rで表されるモノマー(B4)のモノマー単位(B4)である場合の該比率は、モノマー単位(A)が43〜99モル%でありモノマー単位(B4)が57〜1モル%であることが好ましい。さらに、Rがメチル基である場合、モノマー単位(A)が43〜70モル%でありモノマー単位(B4)が57〜30モル%であることが特に好ましい。Rが炭素数2〜7の直鎖アルキル基である場合、モノマー単位(A)は43〜99モル%でありモノマー単位(B4)は57〜1モル%であることが特に好ましい。
【0026】
モノマー単位(B)におけるメチル−2−フルオロアクリレートである場合のモノマー単位(B5)の割合は、モノマー単位(A)が3〜40モル%でありモノマー単位(B5)が97〜60モル%であることが好ましく、モノマー単位(A)が3〜20モル%でありモノマー単位(B5)が97〜80モル%であることが特に好ましい。
【0027】
含フッ素共重合体の分子量(質量平均分子量)は、1000〜100万が好ましく、3000〜100万が好ましく、5000〜50万が特に好ましく、10000〜20万がとりわけ好ましい。特にモノマー単位(B)が、4−メチル−1ペンテンである場合の分子量は、3000〜2万が好ましい。モノマー単位(B)がジアリルエーテルである場合の分子量は2000〜2万が好ましい。モノマー単位(B)がビニルカプロラクタムである場合の分子量は1万〜10万が好ましい。モノマー単位(B)がN,N−ジメチルアクリルアミドである場合の分子量は、10万〜12万が好ましい。
【0028】
本明細書における分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下、GPCと記す。)によって測定される値である。GPCは、移動相にテトラヒドロフラン、分析カラムにPLgel MIXED−Bカラム(ポリマーラボラトリーズ社製、商品名)を2本直列に連結したカラム、分子量測定用標準試料に標準ポリスチレン(ポリマーラボラトリーズ社製)、移動相流速を1.0mL、カラム温度を30℃、検出器を蒸発光散乱検出器、を用いることにより測定できる。
【0029】
含フッ素共重合体のフッ素含有率は、15〜75モル%であり、好ましくは15〜70モル%である。本明細書におけるフッ素含有率とは、含フッ素共重合体の炭素原子に結合するハロゲン原子(たとえば、フッ素原子および塩素原子等。)および水素原子の総モル数に対するフッ素原子の総モル数の割合をいう。フッ素含有率が該範囲よりも少ない場合には、酸素遮蔽性、および後述する水蒸気遮蔽性が不十分になる。共重合体中のフッ素含有率は、例えば後述するAQF-IC法、NMR法等の測定したデータを、換算することにより求めることができる。
【0030】
本発明の含フッ素共重合体の製造方法としては、CTFEの重合方法として知られる公知の方法を採用でき、溶液重合法によるのが好ましい。
【0031】
本発明においては、CTFEとの共重合に優れたコモノマーを選択した点が特徴の一つである。本発明によれば、高分子量の共重合体が得られ、該高分子量の重合体は、実用性に優れた共重合体として、種々の用途に用いうる。また本発明の含フッ素共重合体のモノマー単位(B)は、C−H結合と、有機溶媒への溶解性等に寄与する特定の側鎖とを有する。よって、水素原子を持たないPCTFEに比べて、有機溶媒に対する溶解性が高く、共重合体を溶剤溶液として、膜等の形状に成型できる利点がある。
【0032】
本発明の含フッ素共重合体は、優れた酸素遮蔽性能を有する。また、有機溶剤に対する溶解性および成形性にも優れることから、共重合体を製膜して、酸素遮蔽性能が要求される種々の用途に用いることができる。
【0033】
該用途としては、食品用包装フィルム、電子部品用包装フィルム、医薬品用包装フィルム、有機EL用ガスバリアフィルム、LCD用ガスバリアフィルム等のフィルム、LED用封止膜、太陽電池モジュールの耐候性層形成用のコーティング剤またはフィルム等が挙げられる。
これらの用途に用いるには、本発明の含フッ素共重合体をフィルムまたはコーティング膜等の膜の形状に成型するのが好ましい。
【0034】
該膜の製造方法としては、共重合体と、有機溶媒とを含む有機溶媒溶液を基板上に塗布し、つぎに乾燥させることにより該基板上に該共重合体の膜を形成させる方法が好ましい。さらに、基板から膜を剥離させる方法により自立膜としてのフィルムを得てもよく、または、基板表面にコーティング膜としたままであってもよい。
【0035】
有機溶媒としてはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、ジメチルヘプタノン、キシレン、ヘキサフルオロメタキシレン、ヘプタコサフルオロトリブチルアミン、パーフルオロメチルデカリン等が挙げられる。また基板を構成する基材としては、ポリカーボネートフィルム基材、PETフィルム基材、ポリ塩化ビニルフィルム基材、ポリプロピレンフィルム基材等が挙げられる。
【0036】
有機溶媒に共重合体を溶解させる場合には、有機溶媒の質量に対する共重合体の質量の割合は、1〜40モル%が好ましく、1〜20モル%が好ましい。本発明の含フッ素共重合体は、有機溶剤に対する溶解性に優れることから、高濃度の有機溶媒溶液となりうる。
【0037】
膜が自立膜である場合には、メルトプレス機を使用して含フッ素共重合体のガラス転移点以上に加熱してプレス製膜する方法も採用できる。
本発明の含フッ素共重合体からなる膜を製膜する場合、重合反応で得た共重合体を精製処理したあとに製膜を行うのが好ましい。
【0038】
本発明の含フッ素共重合体およびその膜の酸素に対する遮蔽性能の強さは、酸素透過係数により表すことができる。酸素透過係数は、1平方メートルの膜を、40℃で1気圧の酸素が1日間で透過する量を、フィルム膜厚を1mmに換算して示した値であり、該値が小さいほど、酸素が透過しないこと、すなわち、酸素遮蔽性能が優れることを意味する。
本発明の含フッ素共重合体は、酸素透過係数が0〜20cm・mm/(m・day・atm)であることが好ましく、0〜10cm・mm/(m・day・atm)であることがより好ましい。また、本発明の含フッ素共重合体から形成される膜は、酸素透過係数が0〜20cm・mm/(m・day・atm)であり、0〜10cm・mm/(m・day・atm)が好ましい。酸素透過係数の測定方法としては、実施例に記載する原理で測定できる。また、JIS−K−7126にあるB法(等圧法)およびASTMのD3985−81に示された測定方法に準じたMOCON社の酸素透過度測定装置などを用いて測定することもできる。
本発明の含フッ素共重合体は、良好な酸素遮蔽性能を有し、かつ、有機溶媒に対する溶解性が高く、成形加工性にも優れる。また含フッ素共重合体の分子量も十分に高いことから、実用性の高い膜を得ることができる。
【0039】
さらに、本発明の含フッ素共重合体およびその膜においては、水蒸気遮蔽性も維持されうる。水蒸気遮蔽性の指標である水蒸気透過係数は、0〜20(g・mm)/(m・day)が好ましく、0〜10(g・mm)/(m・day)が特に好ましい。該係数の値が少ないほど、水蒸気遮蔽性に優れることを意味する。
水蒸気遮蔽性は、実施例に記載する原理で測定できる。またJIS−K7129(B法)にある赤外センサー法、およびASTMのF1249−90に準じたMOCON社の水蒸気透過度測定装置などを用いて測定することができる。
【0040】
本発明の含フッ素共重合体からなる膜の膜厚は自立膜として用いる場合には、30〜2000μmが好ましく、コーティング膜として用いる場合には、0.05〜500μmが好ましい。該膜厚は、目的および要求性能に応じて任意の膜厚に変更できる。得られた膜は、前記用途に有用に用いうる。
【実施例】
【0041】
以下に本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例において、GPC(移動相の溶媒は、テトラヒドロフランを使用。)による分子量は、ポリスチレン換算値である。Mnは数平均分子量を、Mwは重量平均分子量を示す。ガラス転移温度は、示差走査熱分析(DSC)により測定した値である。フッ素含有率は、炭化水素系有機物の燃焼ガスを吸収液に捕集し、つぎにイオンクロマトグラフ装置に送液する全自動システム(AQF-IC(Auto Quick Furnace-Ion Chromatography、AQF:ダイヤインスツルメンツ社製、IC:Dionex 社製))により(以下AQF-IC法と略記する。)を用いて測定した値である。共重合体中の各モノマー単位の割合は、AQF-IC法から求まるフッ素含有量から計算しても求めた値である。
【0042】
[例1]CTFE/N−ビニルカプロラクタム重合体の製造例
15℃に保たれた窒素グローブボックス内でPEEK製パドル翼付きのステンレス製反応器(内容積16mL)に炭酸カリウム(0.043g)を仕込んだ。つぎに、容器内を窒素パージした。次にニードル付きシリンジでハイドロクロロフルオロカーボン系溶媒(旭硝子社製商品名:AK225、以下AK225と略記する)とエタノールとの混合溶媒(AK225/エタノール=78/22質量比、2.755g)、およびN−ビニルカプロラクタム(1.258g)を仕込んだ。
つぎに反応器内を窒素で0.448MPa(ゲージ圧、以下同様。)に加圧した。つぎに、15℃に保持された液化CTFE(3.051g)を圧力を掛けながら導入し、反応器を55℃に昇温した。反応器内の圧力が1.48MPaで一定になった時点でAK225で50%希釈したt−ブチルパーオキシピバレート(0.00973g)を圧力を掛けながら導入した。反応温度を55℃に保持して重合を開始した。
20時間後、反応器内圧力が0.89MPaになったところで容器を冷却した。反応器内のモノマーをパージし、共重合体分散液をヘキサン中に滴下して再沈した。さらに90℃で18時間真空乾燥を実施して、白色の共重合体A(2.23g)を得た。共重合体Aは、AQF-IC法によりフッ素含有率を測定した結果、16.1モル%であった。また、共重合体Aは、CTFEに基づく重合単位/N−ビニルカプロラクタムに基づく重合単位が47/53(モル比)であった。共重合体AのMwは65,900、Mw/Mnは2.11、ガラス転移温度は155.4℃であった。
【0043】
[例2−1]CTFE/CH=CHCHOCHCH=CH重合体の製造例
モノマーとして液化CTFE(3.528g)、およびCH=CHCHOCHCH=CH(0.99g)を、溶媒としてAK225(2.82g)、開始剤としてAK225で50%希釈したt−ブチルパーオキシピバレート(0.02810g)を用い、炭酸カリウムを用いない以外は実施例1と同様にして重合・精製・乾燥を実施して、白色の共重合体B(1.87g)を得た。共重合体Bは、AQF-IC法によりフッ素含有率を測定した結果、25.3モル%であった。また、共重合体Bは、CTFEに基づく重合単位/CH=CHCHOCHCH=CHに基づく重合単位が56/44(モル比)であった。共重合体BのMwは20,000、Mw/Mnは3.12、ガラス転移温度は53℃であった。
【0044】
[例2−2]CTFE/CH=CHCHOCHCH=CH重合体の製造例
溶媒としてAK225の代わりに1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロヘキサンを用いた以外は例2−1と同様にして重合・精製・乾燥を実施して白色の共重合体B’(1.60g)を得た。共重合体B’は、AQF-IC法によりフッ素含有率を測定した結果、約25.3モル%である。また、共重合体B’は、CTFEに基づく重合単位/CH=CHCHOCHCH=CHに基づく重合単位は約56/44(モル比)である。共重合体B’のMwは12,700であり、Mw/Mnは2.16であった。
【0045】
[例3−1]CTFE/4−メチル−1−ペンテン重合体の製造例
モノマーとして液化CTFE(3.485g)、および4−メチル−1−ペンテン(0.839g)を、溶媒としてAK225(2.7g)を、開始剤としてAK225で50%希釈したt−ブチルパーオキシピバレート(0.02776g)を用い、炭酸カリウムを用いない以外は実施例1と同様にして重合・精製・乾燥を実施して、白色の共重合体Cを1.29g得た。共重合体Cは、AQF-IC法によりフッ素含有率を測定した結果、25.7モル%であった。また、共重合体Cは、CTFEに基づく重合単位/4−メチル−1−ペンテンに基づく重合単位が61/39(モル比)であった。共重合体Cの分子量をGPC(THF溶媒)にて測定したところ、ポリスチレン換算で、重量平均分子量(Mw)は11,500であり、Mw/Mnは1.43であった。示差走査熱分析(DSC)により測定したガラス転移温度は35℃であった。
【0046】
[例3−2]CTFE/4−メチル−1−ペンテン重合体の製造例
モノマーとして液化CTFE(4.286g)、および4−メチル−1−ペンテン(0.344g)を、溶媒としてAK225(2.84g)を、開始剤としてAK225で50%希釈したt−ブチルパーオキシピバレート(0.1388g)を用い、炭酸カリウムを用いない以外は実施例1と同様にして重合・精製・乾燥を実施して、白色の共重合体C’(0.95g)を得た。共重合体C’のフッ素含有率は15〜77モル%の範囲にある。また、共重合体C’のCTFEに基づく重合単位/4−メチル−1−ペンテンに基づく重合単位は3〜99/97〜1(モル比)の範囲にある。共重合体C’のMwは15,500であり、Mw/Mnは1.43であった。
【0047】
[例4]CTFE/N,N−ジメチルアクリルアミド重合体の製造例
モノマーとして液化CTFE(3.645g)、およびN,N−ジメチルアクリルアミド(1.034g)を、溶媒としてAK225(2.93g)を、開始剤としてAK225で50%希釈したt−ブチルパーオキシピバレート(0.01452g)を用い、炭酸カリウムを用いない以外は実施例1と同様にして重合・精製・乾燥を実施して、白色の共重合体D(2.99g)を得た。共重合体Dは、AQF-IC法によりフッ素含有率を測定した結果、約15モル%であった。また、共重合体Dは、CTFEに基づく重合単位/N,N−ジメチルアクリルアミドに基づく重合単位が約36/64(モル比)であった。共重合体DのMwは119,500、Mw/Mnは1.41、示差走査熱分析(DSC)により測定したガラス転移温度は116.5℃であった。
【0048】
[例5]CTFE/メチル−2−フルオロアクリレート重合体の製造例
モノマーとして液化CTFE(3.645g)、およびメチル−2−フルオロアクリレート(0.99g)を、溶媒としてAK225(2.9g)を、開始剤としてAK225で50%希釈したt−ブチルパーオキシピバレート(0.01452g)を用い、炭酸カリウムを用いない以外は実施例1と同様にして重合・精製・乾燥を実施して、白色の共重合体E(2.99g)を得た。共重合体Eは、AQF-IC法によりフッ素含有率を測定した結果、17.8モル%であった。また、共重合体Eは、CTFEに基づく重合単位/メチル−2−フルオロアクリレートに基づく重合単位が3/97(モル比)であった。該重合体は、テトラヒドロフランには溶解しなかったが、ジクロロメタンには溶解した。共重合体EのMwは1000〜100万の範囲にある。ガラス転移温度は133℃であった。
【0049】
[例6]ポリマーフィルムの製造例(スピンコート法)
共重合体をテトラヒドロフランに10%濃度で溶解し、1μmフィルターで濾過した。続いて当該濾過溶液をヘキサン中に滴下して共重合体を再沈し、60℃15時間真空乾燥を行った(共重合体のTHFに対する溶解性が低い場合は、THFで洗浄した)。次にクリーンルーム内で乾燥した共重合体を2,6−ジメチル−4−ヘプタノンに20%濃度で再度溶解し、0.2μmフィルターで濾過した。その濾過溶液1mLを直径10cm、厚み125μmのポリカーボネートフィルム上に滴下しスピンコートを実施した。スピンコーターは、Laurell社製WS−400 A−6NPPを使用した。また、スピンコートは、500rpm10sで回転後すみやかに1000rpmで20s回転させる条件で実施した。スピンコート完了後、145℃のホットプレート上で5分乾燥し、酸素及び水蒸気透過測定用サンプルとして使用する為に打ち抜きカッターで直径3.2cmの円盤状に切り出した。
【0050】
[例7]ポリマーフィルムの製造例(メルトプレス法)
酸素及び水蒸気透過率測定の精度を上げるために、フィルムの膜厚を大にしたい場合、または得られたポリマーの溶媒溶解性が低い場合には、メルトプレス法を採用した。プレス機は、加熱、水冷機能と真空チャンバーを備えた三枚のプレス板から成るFontijne社製プレス機を使用した。2枚のプレス板に挟まれる部分は、同時に9個のサンプルを置くことが可能で、各々挟まれる部分が独立に温度制御ができ、かつ、2ケ所のプレス部で最大18個のサンプルを同時にプレスすることができた。メルトプレスの際の共重合体の融点は、再沈精製後の共重合体(約0.07g)を用いて予備試験を行い決定した。その結果、共重合体の融点が150℃以上であった場合、PTFEコートされたアルミシートの上に、直径7.7cmの穴の開いた厚み100μmのスペーサーの穴の開いた部分にポリイミドフィルムなどの離型フィルムを置き、その上に共重合体約0.3gを載せた後、上から離型基材(ポリイミドフィルム或いはPTFEコートされたアルミ板)をかぶせた。続いて当該共重合体の溶融温度(155℃〜320℃)で25分間、125kNでプレスを行い自立膜を作成した。次に、得られた自立膜を酸素及び水蒸気透過測定用サンプルとして使用するために、2枚のポリカーボネートフィルム(厚さ125μm)で挟み込み、直径3.2cmの円盤状に打ち抜きカッターで切り出した。一方、共重合体の融点が150℃以下の場合、直径7.7cmの穴の開いた厚み100μmのスペーサーの穴の開いた部分に、ポリカーボネートフィルム(厚さ125μm)を置き、その上に共重合体約0.3gを載せ、上から離型基材(ポリイミドフィルム或いはPTFEコートされたアルミ板)をかぶせた。続いて当該共重合体の溶融温度(100℃〜150℃)で25分間、125kNでプレスを行い、共重合体がポリカーボネートフィルム上に積層されたフィルムを作成した。次に、得られた積層フィルム膜を酸素及び水蒸気透過測定用サンプルとして使用するために、打ち抜きカッターで直径3.2cmの円盤状に切り出した。
【0051】
[例8]膜の評価法(酸素透過率測定)
種々のポリマーフィルムの酸素透過率は、Symyx Technologys Inc.によって作製された12サンプル同時並行測定可能なチャンバーを備えた装置によって測定した。各チャンバーは、室内中央をフィルムによって仕切られ、二つの区画に分かれていた。一方の区画(体積9.3cm)に、酸素センサー(GEパナメトリクス社製、OX1 IS)が設置されており、もう一方の区画は、測定中、定常的に35%RH、40℃の酸素/窒素混合ガス(50/50%)が僅かに陽圧状態で流れていた(6.895×10−3kPa〜13.79×10−3kPa)。また、酸素と接触している部分のフィルム面積は、約4.6cmであった。各酸素センサーは標準ガス(酸素を500ppm含有した窒素ガス)で校正を行った。各酸素センサーの信号は、校正係数を用いて酸素濃度に変換した。また測定準備として、チャンバー内の酸素を完全に取り除く為、二つの区画は、事前に3時間窒素でパージした。フィルムの酸素透過率に依存するが、殆どの酸素透過率測定の測定時間は24時間であった。測定された酸素透過率係数は、センサー区画の体積及び酸素と接触している部分のフィルム面積で、単位体積、面積当たりの値に変換した。
【0052】
[例9]膜の評価法(水蒸気透過率測定)
種々のポリマーフィルムの水蒸気透過率は、例8の酸素透過率測定と同様の方法で測定した。水蒸気透過率測定装置は12サンプル同時並行測定可能なチャンバーを備えていた。各チャンバーは室内中央をフィルムによって仕切られ、二つの区画に分かれていた。一方の区画(体積9.3cm)に湿度センサー(Kahn Instruments社製、EasiDew 1−1000ppm)が設置されており、もう一方の区画は、測定中、定常的に35%RH、40℃の窒素が僅かに陽圧状態で流れていた(6.895×10−3kPa〜13.79×10−3kPa)。また測定準備として、チャンバー内の水蒸気を完全に取り除く為、二つの区画は、事前に3時間窒素でパージした。フィルムの水蒸気透過率に依存するが、殆どの水蒸気透過率測定の測定時間は24時間であった。測定された露点は、水蒸気濃度に変換し、更に水蒸気透過率係数は、センサー区画の体積と、フィルム面積、測定時間をX軸に取った時の水蒸気透過率曲線の傾きから計算した。傾きの計算は、水蒸気透過率曲線が直線的に推移している領域のみを選択して行った。
【0053】
[評価結果]
例1〜5で製造した重合体を用いてフィルムを形成させた。評価用フィルムの作成は、メルトプレス法とスピンコート法で試みた。重合体の溶媒への溶解性が良好である場合には、両方法でフィルムが得られた。しかし、重合体の溶媒への溶解性が低い場合には、メルトプレス法でフィルムを得た。本明細書における評価結果は、メルトプレス法で得たフィルムに関する。得られたフィルムについて酸素透過率(単位:(cm・mm)/(m・day・atm))、と水蒸気透過率(単位:(g・mm)/(m・day))を前記の方法により評価した。結果を表1に示す。表1中の「−」は測定していないことを示す。
【0054】
【表1】

【0055】
[例10]
例1に記した共重合体Aをφ65mmのT−ダイ押出機を用いて230℃(チルロール温度=30℃)で100μmのフィルムロールを作成する。これを原反として用いて、製造直後のスナック菓子(ポテトチップス)を充填包装するテストを行う。包装機は、株式会社イシダ製のAPEX包装機を用い、N2置換も行う。このAPEX包装機は、米国特許5347795号に開示されているものである。
得られた包装袋を恒温槽に入れ、「40℃−1ヶ月保存テスト」を行い、パネラー10名による官能テストを行う。製造直後の評点を5.0とし、3.0を賞味限界点とし、3.0以上を商品価値有りとして評価する。「開封時のフレーバー」は袋を開けた時のフレーバーの香りを「味覚・フレーバー」はポテトチップスを賞味した時の味と香りを評価する。「開封時のフレーバー」及び「賞味した時の味と香り」がともに4.5以上と優れている。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、CTFEと、CTFEと共重合しうる特定のモノマーとの共重合体であって、酸素遮蔽性能と、有機溶剤溶解性、および成形性が発揮され、水蒸気透過性が維持された共重合体が提供される。本発明によれば、PCTFEに比して実用性に優れた共重合体および該共重合体から得られる膜が提供できる。
該膜は食品用包装フィルム、電子部品用包装フィルム、医薬品用包装フィルム、有機EL用ガスバリアフィルム、LCD用ガスバリアフィルム等のフィルム、LED用封止膜、太陽電池モジュールの耐候性層形成用のコーティング剤、太陽電池の表面シートまたはバックーシートに水蒸気遮蔽性能および酸素遮蔽性能を付与するためのコ−ティング剤等として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロトリフルオロエチレンのモノマー単位(A)、および、下記モノマー単位(B)から実質的になる共重合体であって、モノマー単位(A)とモノマー単位(B)の総モル数に対するモノマー単位(A)の割合が3〜99モル%、下記フッ素含有率が15〜75モル%、かつ、分子量が1000〜100万である含フッ素共重合体。
モノマー単位(B):式CH=CHCOON(Rで表されるモノマー(ただし、2つのRは同一であっても異なっていてもよく、Rは水素原子またはアルキル基を示す。)、N−ビニルカプロラクタム、式CH=CRCHOCHCR=CHで表されるモノマー(ただし、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、またはメチル基を示す。)、式CH=CHCHCH(CH)−Rで表されるモノマー(ただし、Rは炭素数1〜7の直鎖アルキル基を示す。)、およびメチル−2−フルオロアクリレートのモノマーからなる群より選ばれるいずれか1種のモノマーが重合した単位。
フッ素含有率:含フッ素共重合体の炭素原子に結合するハロゲン原子および水素原子の総モル数に対するフッ素原子の総モル数の割合。
【請求項2】
モノマー単位(B)が、式CH=CHCOON(Rで表されるモノマーが重合した単位(ただし、Rは前記と同じ意味を示す。)であり、
モノマー単位(A)とモノマー単位(B)の総モル数に対する、モノマー単位(A)の割合が16〜99モル%であり、モノマー単位(B)の割合が84〜1モル%である、請求項1に記載の含フッ素共重合体。
【請求項3】
モノマー単位(B)が、N,N−ジメチルアクリルアミドが重合した単位であり、
モノマー単位(A)とモノマー単位(B)の総モル数に対する、モノマー単位(A)の割合が36〜60モル%であり、モノマー単位(B)の割合が64〜40モル%である、請求項1に記載の含フッ素共重合体。
【請求項4】
モノマー単位(B)が、N−ビニルカプロラクタムが重合した単位であり、
モノマー単位(A)とモノマー単位(B)の総モル数に対する、モノマー単位(A)の割合が45〜99モル%であり、モノマー単位(B)の割合が55〜1モル%である、請求項1に記載の含フッ素共重合体。
【請求項5】
モノマー単位(B)が、式CH=CRCHOCHCR=CHで表されるモノマーが重合した単位(ただし、RおよびRは、前記と同じ意味を示す。)であり、
モノマー単位(A)とモノマー単位(B)の総モル数に対する、モノマー単位(A)の割合が10〜99モル%であり、モノマー単位(B)の割合が90〜1モル%である、請求項1に記載の含フッ素共重合体。
【請求項6】
モノマー単位(B)が、式CH=CHCHCH(CH)−Rで表されるモノマーが重合した単位(ただし、Rは前記と同じ意味を示す。)であり、
モノマー単位(A)とモノマー単位(B)の総モル数に対する、モノマー単位(A)の割合が43〜99モル%であり、モノマー単位(B)の割合が57〜1モル%である、請求項1に記載の含フッ素共重合体。
【請求項7】
モノマー単位(B)が、式CH=CHCHCH(CHで表されるモノマーが重合した単位であり、
モノマー単位(A)とモノマー単位(B)の総モル数に対する、モノマー単位(A)の割合が43〜70モル%であり、モノマー単位(B)の割合が57〜30モル%である、請求項1に記載の含フッ素共重合体。
【請求項8】
モノマー単位(B)が、メチル−2−フルオロアクリレートが重合した単位であり、
モノマー単位(A)とモノマー単位(B)の総モル数に対する、モノマー単位(A)の割合が3〜20モル%であり、モノマー単位(B)の割合が97〜80モル%である、請求項1に記載の含フッ素共重合体。
【請求項9】
酸素透過係数が40℃において0〜20(cm・mm)/(m・day・atm)である請求項1〜8のいずれか1項に記載の含フッ素共重合体。
【請求項10】
クロロトリフルオロエチレンのモノマー単位(A)、および、下記モノマー単位(B)からなり、モノマー単位(A)とモノマー単位(B)の総モル数に対するモノマー単位(A)の割合が3〜99モル%、下記フッ素含有率が15〜75モル%、かつ、分子量が1000〜100万である含フッ素共重合体から形成され、酸素透過係数が40℃において0〜20(cm・mm)/(m・day・atm)である膜。
モノマー単位(B):式CH=CHCOON(Rで表されるモノマー(ただし、2つのRは同一であっても異なっていてもよく、Rは水素原子またはアルキル基を示す。)、N−ビニルカプロラクタム、式CH=CRCHOCHCR=CHで表されるモノマー(ただし、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、またはメチル基を示す。)、式CH=CHCHCH(CH)−Rで表されるモノマー(ただし、Rは炭素数1〜7の直鎖アルキル基を示す。)、およびメチル−2−フルオロアクリレートのモノマーからなる群より選ばれるいずれか1種のモノマーが重合した単位。
フッ素含有率:含フッ素共重合体の炭素原子に結合するハロゲン原子および水素原子の総モル数に対するフッ素原子の総モル数の割合。
【請求項11】
膜厚が0.05〜2000μmである請求項10に記載の膜。
【請求項12】
フィルムまたはコーティング膜である請求項10または11に記載の膜。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の含フッ素共重合体と、有機溶媒とを含む有機溶媒溶液を基板上に塗布し、つぎに乾燥させることにより該基板上に該含フッ素共重合体の膜を形成させる、コーティング膜の製造方法。

【公開番号】特開2011−32341(P2011−32341A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178797(P2009−178797)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】