説明

新規な感光性樹脂組成物及びその利用

【課題】 本発明の課題は、感光性を有するため微細加工が可能であり、希アルカリ水溶液で現像可能であり、低温(200℃以下)で硬化可能であり、得られる硬化膜が柔軟性に富み、電気絶縁信頼性、ハンダ耐熱性、耐有機溶剤性、難燃性に優れ、硬化後の基板の反りが小さい感光性樹脂組成物を提供することにある。
【解決手段】 少なくとも(A)バインダー樹脂と、(B)感光性樹脂と、(C)光重合開始剤とを含み、上記(A)バインダー樹脂が、少なくとも(a)(メタ)アクリル酸と、(b)下記一般式(1)で示されるホスフィンオキサイド化合物とを共重合させたものであることを特徴とする感光性樹脂組成物を用いることで上記課題を解決しうる。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、感光性を有するため微細加工が可能であり、希アルカリ水溶液で現像可能であり、低温(200℃以下)で硬化可能であり、得られる硬化膜が柔軟性に富み、電気絶縁信頼性、ハンダ耐熱性、耐有機溶剤性、難燃性に優れ、硬化後の基板の反りが小さい感光性樹脂組成物、それから得られる樹脂フィルム、絶縁膜、及び絶縁膜付きプリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板の製造業界では、フレキシブル回路基板用の表面保護材料として、ポリイミドフィルム等の成形体に接着剤を塗布して得られるカバーレイフィルムが用いられてきた。このカバーレイフィルムをフレキシブル回路基板上に接着する場合、回路の端子部や部品との接合部に予めパンチングなどの方法により開口部を設け、位置合わせをした後に熱プレス等で熱圧着する方法が一般的である。
【0003】
しかし、薄いカバーレイフィルムに高精度な開口部を設けることは困難であり、また、張り合わせ時の位置合わせは手作業で行われる場合が多いため、位置精度が悪く、張り合わせの作業性も悪く、コスト高となっていた。
【0004】
一方、回路基板用の表面保護材料としては、ソルダーレジストなどが用いられる場合もあり、特に感光性機能を有するソルダーレジストは、微細な加工が必要な場合には好ましく用いられている。この感光性ソルダーレジストとしては、エポキシ樹脂等を主体とした感光性樹脂組成物が用いられるが、この感光性ソルダーレジストは、絶縁材料としては電気絶縁信頼性に優れるが、屈曲性等の機械特性が悪く、硬化収縮が大きいためフレキシブル回路基板などの薄くて柔軟性に富む回路基板に積層した場合、基板の反りが大きくなり、フレキシブル回路基板用に用いるのは難しかった。また、難燃性にも乏しく、難燃性を付与する目的で難燃剤を添加した場合に、物性低下や硬化膜から難燃剤がしみ出すブリードアウトによる接点障害や工程汚染が問題であった。
【0005】
近年では、この感光性ソルダーレジストとして、難燃性を発現することができる種々の提案がされている。
【0006】
例えば、特許文献1では、難燃性及び耐めっき性に優れ、ソルダーレジストに要求される諸特性を備えた硬化膜を形成可能な、バインダーポリマー、エチレン性不飽和基を含有する重合性化合物、重合開始剤、ホスフィン酸塩を含有する感光性樹脂組成物が提案されている。また、特許文献2では、硬化樹脂の難燃性に優れる、特定の構造を有するホスフィンオキサイド化合物、1分子内に2個以上の活性エネルギー線反応性官能基を有する反応性化合物、光重合開始剤を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が提案されている。また、特許文献3では、十分な難燃性を有し高解像度が得られる、リン含有アルカリ可溶性樹脂とリン含有光重合性化合物と光重合開始剤とを含有する感光性樹脂組成物が提案されている。更に、特許文献4、特許文献5では、十分な難燃性を有し、ブリードアウトの問題が低減された、特定の構造単位を有するリン含有重合体を含む樹脂組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−294319号公報
【特許文献2】特開2009−256622号公報
【特許文献3】特開2007−303542号公報
【特許文献4】特開2007−177203号公報
【特許文献5】特開2008−274003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献では、感光性ソルダーレジストの課題を解決する種々の方法が提案されている。しかし、特許文献1に記載されている感光性樹脂組成物は、リン含有化合物であるホスフィン酸塩を含有するため難燃性、耐めっき性、はんだ耐熱性、HAST耐性等には優れるものの、ホスフィン酸塩と感光性樹脂組成物との界面接着性が不充分であり、耐折れ性に乏しいという問題がある。特許文献2または3に記載されている感光性樹脂組成物は、リン含有光重合性化合物を含むため、ブリードアウトの問題が低減されるものの、硬化膜の耐折れ性の低下や硬化後の基板の反りが大きくなるなどの物性低下を引き起こすという問題がある。特許文献3〜5に記載されている感光性樹脂組成物は、骨格中にリンを有する樹脂を含む構造を有するため、ため、ブリードアウト性に優れるものの、加水分解が促進されやすい構造を有するため、硬化物の長期にわたる電気絶縁信頼性に問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、少なくとも(A)バインダー樹脂と、(B)感光性樹脂と、(C)光重合開始剤とを含み、上記(A)バインダー樹脂が、少なくとも(a)下記一般式(1)で示されるホスフィンオキサイド化合物と、(b)カルボキシル基及び上記(a)と共重合可能な二重結合を有する化合物と、を共重合させたものであることを特徴とする感光性樹脂組成物は、感光性を有するため微細加工が可能であり、希アルカリ水溶液で現像可能であり、低温(200℃以下)で硬化可能であり、得られる硬化膜が柔軟性に富み、電気絶縁信頼性、ハンダ耐熱性、耐有機溶剤性、難燃性に優れ、硬化後の基板の反りが小さい感光性樹脂組成物が得られる知見を得、これらの知見に基づいて、本発明に達したものである。本発明は以下の新規な感光性樹脂組成物により上記課題を解決しうる。
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、RはHまたはCH3である。)
【0012】
すなわち、本願発明は、少なくとも(A)バインダー樹脂と、(B)感光性樹脂と、(C)光重合開始剤とを含み、上記(A)バインダー樹脂が、少なくとも(a)下記一般式(1)で示されるホスフィンオキサイド化合物と、(b)カルボキシル基及び上記(a)と共重合可能な二重結合を有する化合物と、を共重合させたものであることを特徴とする感光性樹脂組成物である。
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、RはHまたはCH3である。)
【0015】
また、本願発明にかかる感光性樹脂組成物は、上記(b)が、(メタ)アクリル酸および/又は(メタ)アクリロイル基とカルボキシル基を有する化合物であることが好ましい。
【0016】
また、本願発明にかかる感光性樹脂組成物は、上記(b)が、(メタ)アクリル酸であることが好ましい。
【0017】
また、本願発明にかかる感光性樹脂組成物は、上記(A)バインダー樹脂が、さらに(c)(メタ)アクリル酸アルキルエステルを共重合させたものであることが好ましい。 また、本願発明にかかる感光性樹脂組成物は、上記(A)バインダー樹脂のリン元素含有率が、2.0〜9.5重量%であることが好ましい。 また、本願発明にかかる感光性樹脂組成物は、上記(A)バインダー樹脂の酸価が、40〜200mgKOH/gであることが好ましい。
【0018】
また、本願発明にかかる感光性樹脂組成物は、上記(C)光重合開始剤が、オキシムエステル系化合物であることが好ましい。
【0019】
また、本願発明にかかる感光性樹脂組成物は、上記感光性樹脂組成物における(A)バインダー樹脂と、(B)感光性樹脂と、(C)光重合開始剤は、(A)バインダー樹脂100重量部に対して(B)感光性樹脂が10〜200重量部、(C)光重合開始剤が、0.1〜50重量部となるように配合されていることであることが好ましい。
【0020】
また、本願発明にかかる感光性樹脂組成物は、更に(D)難燃剤を含有することが好ましい。
【0021】
また、本願発明にかかる感光性樹脂組成物は、上記感光性樹脂組成物中のリン元素含有率が、1〜7重量%であることが好ましい。
【0022】
また、本願発明にかかる感光性樹脂組成物は、更に(E)熱硬化性樹脂を含有することが好ましい。
【0023】
また、本願発明にかかる感光性樹脂組成物は、上記(E)熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂であることが好ましい。
【0024】
また、本願発明にかかる感光性樹脂組成物は、上記(E)熱硬化性樹脂の配合割合が、(A)バインダー樹脂と、(B)感光性樹脂と、(C)光重合開始剤とを合計した100重量部に対して、0.5〜100重量部となるように配合されていることが好ましい。
【0025】
また、本願発明にかかる感光性樹脂組成物溶液は、上記感光性樹脂組成物を有機溶剤に溶解して得られるものである。
【0026】
また、本願発明にかかる樹脂フィルムは、上記感光性樹脂組成物、または上記感光性樹脂組成物溶液を基材表面に塗布した後、乾燥して得られるものである。
【0027】
また、本願発明にかかる絶縁膜は、上記樹脂フィルムを硬化させて得られるものである。
【0028】
また、本願発明にかかる絶縁膜付きプリント配線板は、上記絶縁膜をプリント配線板に被覆してなるものである。
【発明の効果】
【0029】
本願発明の感光性樹脂組成物から得られる硬化膜は、柔軟性に富み、電気絶縁信頼性、ハンダ耐熱性、耐有機溶剤性、難燃性に優れ、良好な物性を有するとともに、硬化後の反りが小さい。従って、本願発明の感光性樹脂組成物は、種々の回路基板の保護膜等に使用でき、優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】フィルムの反り量を測定している模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下本願発明について、(I)感光性樹脂組成物、(II)感光性樹脂組成物の使用方法の順に詳細に説明する。
【0032】
(I)感光性樹脂組成物
本願発明の感光性樹脂組成物は、少なくとも(A)バインダー樹脂と、(B)感光性樹脂と、(C)光重合開始剤とを含み、上記(A)バインダー樹脂が、少なくとも(a)下記一般式(1)で示されるホスフィンオキサイド化合物と、(b)カルボキシル基及び上記(a)と共重合可能な二重結合を有する化合物と、を共重合させたものである。
【0033】
【化3】

【0034】
(式中、RはHまたはCH3である。)
【0035】
ここで、本願発明の感光性樹脂組成物は、各種特性に優れる事を、本発明者らは見出したが、これは、以下の理由によるのではないかと推測している。つまり、
(A)バインダー樹脂は、少なくとも(a)下記一般式(1)で示されるホスフィンオキサイド化合物と、(b)カルボキシル基及び上記(a)と共重合可能な二重結合を有する化合物と、を共重合させたものであり、分子中にカルボキシル基を有するため、希アルカリ水溶液に代表される現像液に可溶となり、露光・現像により微細加工が可能となる。また、分子中に下記一般式(1)で示されるホスフィンオキサイド化合物を共重合させることにより骨格中にホスファフェナントレン構造を有するため、硬化膜の耐折れ性の低下や硬化後の基板の反りが大きくなるなどの物性低下を引き起こすことなく、十分な難燃性が得られ、更には長期にわたる耐久性にも優れる。
【0036】
【化4】

【0037】
(式中、RはHまたはCH3である。)
【0038】
以下本願発明について、感光性樹脂組成物について詳細に説明する。本発明における(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及びメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートなども同様の意味である。
【0039】
<(A)バインダー樹脂>
本願発明で用いられる(A)バインダー樹脂は、(a)下記一般式(1)で示されるホスフィンオキサイド化合物と、(b)カルボキシル基及び上記(a)と共重合可能な二重結合を有する化合物と、を共重合させたものである。
【0040】
【化5】

【0041】
(式中、RはHまたはCH3である。)
【0042】
(b)カルボキシル基及び上記(a)と共重合可能な二重結合を有する化合物は特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、プロピオル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンもの(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、2−(メタ)アクリロイオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイオキシエチルコハク酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、アトロパ酸、けい皮酸、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ−Y−リノレン酸、エイコサトリエン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸、アドレン酸、ボセオペンタエン酸、エイコサペンタエン酸、オズボンド酸、イワシ酸、テトラコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ニシン酸、2,2,2−トリスアクリロイロキシメチルコハク酸、2−トリスアクリロイロキシメチルエチルフタル酸等が挙げられる。
【0043】
特に、上記(b)が、(メタ)アクリル酸および/又は(メタ)アクリロイル基とカルボキシル基を有する化合物を用いると、感光性樹脂組成物を乾燥して得られた樹脂フィルムは現像性に優れ、好ましい。中でも(メタ)アクリル酸を用いると、共重合の際に反応性に優れ、好ましく、また、感光性樹脂組成物を乾燥して得られた樹脂フィルムは現像性に優れ、好ましい。
【0044】
また、(a)下記一般式(1)で示されるホスフィンオキサイド化合物と、(b)カルボキシル基及び上記(a)と共重合可能な二重結合を有する化合物の2成分以外に、更に共重合可能なビニルモノマーを1成分以上加えた3成分以上で共重合してもよい。共重合可能なビニルモノマーは共重合可能であれば特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類がある。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとは、(メタ)アクリル酸エステルのエステル鎖に炭素数1〜20のアルキル基を有する化合物であり、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ターシャリーブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。
【0045】
【化6】

【0046】
(式中、RはHまたはCH3である。)
【0047】
また、その他に、ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド、アクリロニトリル及びビニル−n−ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル類、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、α−ブロモ(メタ)アクリル酸、α−クロル(メタ)アクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、及びβ−スチリル(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリル酸系単量体、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、及びマレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸系単量体、フマル酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、プロピオール酸、スチレン、及びビニルトルエン等が挙げられる。
【0048】
これは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用してもかまわない。特に(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることが、感光性樹脂組成物の硬化膜の柔軟性と耐薬品性に優れ、好ましい。中でも(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルを用いることが、感光性樹脂組成物の硬化膜の柔軟性と耐薬品性に優れ、好ましい。
【0049】
また、上記(A)バインダー樹脂のリン元素含有率が、2.0〜9.5重量%であることが好ましい。リン元素の含有量が2.0重量%以上であると、(A)バインダー樹脂の難燃性がより効果的に得られる。また、リン元素の含有量が9.5重量%以下であると、分子構造における十分なカルボキシル基を確保することができ、希アルカリ水溶液に代表される現像液に可溶となり、露光・現像により微細加工が可能となる。また、柔軟性に富み、その他の特性バランスに優れた硬化膜が得られる。
【0050】
ここで、(A)バインダー樹脂のリン元素含有率は、バインダー樹脂の共重合に用いられる原料総重量と原料に含まれるリン元素含有率から、下記式1により算出することが可能である。また、例えば、マイクロウェーブ分解装置で加圧酸分解を実施した後、ICP発光分光分析法で測定することも可能である。
(p1×31/M1×m1+・・・pn×31/Mn×mn)/w×100(式1)
単位:重量%
p:各リン含有化合物1分子中のリン元素数
M:各リン含有化合物の分子量
m:各リン含有化合物の重量(固形分)
n:1以上の整数であり、リン含有化合物の種類の数に等しい
w:バインダー樹脂の共重合に用いられる原料総重量(固形分)
【0051】
また、上記(A)バインダー樹脂の酸価が、40〜200mgKOH/gであることが好ましい。酸価が40mgKOH/gより小さい場合では感光性樹脂組成物のアルカリ現像性が低下する場合があり、200mgKOH/gより大きい場合では硬化膜の吸湿性が高くなり電気絶縁信頼性が低下する場合がある。
【0052】
ここで、酸化は、例えば、JIS K5601−2−1で規定された方法で測定することができる。
【0053】
また、上記(A)バインダー樹脂の重量平均分子量は、ポリエチレングリコール換算で、3,000以上300,000以下のポリマーであることが好ましい。ここで、カルボキシル基含有樹脂の分子量は、例えば、以下の方法で測定することができる。
使用装置:東ソーHLC−8220GPC相当品
カラム :東ソー TSK gel Super AWM−H(6.0mmI.D.×15cm)×2本
ガードカラム:東ソー TSK guard column Super AW−H
溶離液:30mM LiBr+20mM H3PO4 in DMF
流速:0.6mL/min
カラム温度:40℃
検出条件:RI:ポラリティ(+)、レスポンス(0.5sec)
試料濃度:約5mg/mL
標準品:PEG(ポリエチレングリコール)
【0054】
上記範囲内に重量平均分子量を制御することにより、感光性樹脂組成物のアルカリ現像性、得られる硬化膜の柔軟性、耐薬品性が優れるため好ましい。重量平均分子量が3,000以下の場合は、柔軟性や耐薬品性が低下する場合があり、重量平均分子量が300,000以上の場合はアルカリ現像性が低下し、感光性樹脂組成物の粘度が高くなる場合がある。
【0055】
少なくとも(a)(メタ)アクリル酸と、(b)下記一般式(1)で示されるホスフィンオキサイド化合物とを共重合させる反応は、例えば、ラジカル重合開始剤によりラジカルを発生させることにより進行させることができる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリルなどのアゾ系化合物、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、過酸価水素等が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0056】
【化7】

【0057】
(式中、RはHまたはCH3である。)
【0058】
上記、ラジカル重合開始剤の使用量は、使用するモノマー100重量部に対して0.001〜5重量部とすることが好ましく、0.01〜1重量部とすることがより好ましい。0.001重量部より少ない場合では反応が進行しにくく、5重量部より多い場合では分子量が低下する場合がある。
【0059】
上記反応は、無溶媒で反応させることもできるが、反応を制御する為には、有機溶媒系で反応させることが望ましく、例えば有機溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができる。さらに必要に応じて、これらの有機極性溶媒とキシレンあるいはトルエンなどの芳香族炭化水素とを組み合わせて用いることもできる。
【0060】
更に、例えばメチルモノグライム(1,2-ジメトキシエタン)、メチルジグライム(ビス(2-メトキシエテル)エーテル)、メチルトリグライム(1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン)、メチルテトラグライム(ビス[2-(2-メトキシエトキシエチル)]エーテル)、エチルモノグライム(1,2-ジエトキシエタン)、エチルジグライム(ビス(2-エトキシエチル)エーテル)、ブチルジグライム(ビス(2-ブトキシエチル)エーテル)等の対称グリコールジエーテル類、メチルアセテート、エチルアセテート、イソプロピルアセテート、n―プロピルアセテート、ブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(別名、カルビトールアセテート、酢酸2-(2-ブトキシエトキシ)エチル))、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、1,3―ブチレングリコールジアセテート等のアセテート類や、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、1,3―ジオキソラン、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールものエチルエーテル等のエーテル類の溶剤を用いることもできる。中でも、副反応が生じにくいことから、対称グリコールジエーテル類を用いることが好ましい。
【0061】
反応の際に用いられる溶剤量は、反応溶液中の溶質重量濃度すなわち溶液濃度が5重量%以上90重量%以下となるような量とすることが好ましく、20重量%以上70重量%以下とすることがより好ましい。溶液濃度が5%より少ない場合では重合反応が起こりにくく反応速度が低下すると共に、所望の構造物質が得られない場合があり、また、溶液濃度が90重量%より多い場合では反応溶液が高粘度となり反応が不均一となる場合がある。
【0062】
上記反応温度は、20〜120℃とすることが好ましく、50〜100℃とすることがより好ましい。20℃より低い温度の場合では反応時間が長くなり過ぎ、120℃を超えると急激な反応の進行や副反応に伴う三次元架橋によるゲル化を招く恐れがある。反応時間は、バッチの規模、採用される反応条件により適宜選択することができる。
【0063】
<(B)感光性樹脂>
本願発明で用いられる(B)感光性樹脂は、ラジカル重合開始剤により重合反応が進行するラジカル重合性基を分子内に含有する化合物である。その中でも分子内に不飽和二重結合を少なくとも1つ有する樹脂であることが好ましい。さらには、上記不飽和二重結合は、(メタ)アクリロイル基、もしくはビニル基であることが好ましい。
【0064】
かかる(B)感光性樹脂としては、例えばビスフェノールF EO変性(n=2〜50)ジアクリレート、ビスフェノールA EO変性(n=2〜50)ジアクリレート、ビスフェノールS EO変性(n=2〜50)ジアクリレート、ビスフェノールF EO変性(n=2〜50)ジメタクリレート、ビスフェノールA EO変性(n=2〜50)ジメタクリレート、ビスフェノールS EO変性(n=2〜50)ジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、テトラメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、テトラメチロールプロパンテトラメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、β−アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、ラウリルアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2−ビス[4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、2−ヒドロキシ−1−アクリロキシ−3−メタクリロキシプロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、メトキシジプロピレングリコールメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールアクリレート、1 − アクリロイルオキシプロピル−2−フタレート、イソステアリルアクリレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルアクリレート、ノニルフェノキシエチレングリコールアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジメタクリレート、1,6−メキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールメタクリレート、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールジメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、2,2−水添ビス[4−(アクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシ・ポリプロポキシ)フェニル]プロパン、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、エトキシ化トチメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トチメチロールプロパントリアクリレート、イソシアヌル酸トリ(エタンアクリレート)、ペンタスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタスリトールテトラアクリレート、プロポキシ化ペンタスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールポリアクリレート、イソシアヌル酸トリアリル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアリルエーテル、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、トリアリル1,3,5−ベンゼンカルボキシレート、トリアリルアミン、トリアリルシトレート、トリアリルフォスフェート、アロバービタル、ジアリルアミン、ジアリルジメチルシラン、ジアリルジスルフィド、ジアリルエーテル、ザリルシアルレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート、1,3−ジアリロキシ−2−プロパノール、ジアリルスルフィドジアリルマレエート、4,4’−イソプロピリデンジフェノールジメタクリレート、4,4’−イソプロピリデンジフェノールジアクリレート、等が好ましいが、これらに限定されない。特に、ジアクリレートあるいはジメタクリレートの一分子中に含まれるEO(エチレンオキサイド)の繰り返し単位が、2〜50の範囲のものが好ましく、さらに好ましくは2〜40である。EOの繰り返し単位が2〜50の範囲の物を使用することにより、感光性樹脂組成物のアルカリ水溶液に代表される水系現像液への溶解性が向上し、現像時間が短縮される。更に、感光性樹脂組成物を硬化した硬化膜中に応力が残りにくく、例えばプリント配線板の中でも、ポリイミド樹脂を基材とするフレキシブルプリント配線板上に積層した際に、プリント配線板のカールを抑えることができるなどの特徴を有する。
【0065】
特に、上記EO変性のジアクリレート或いは、ジメタクリレートと、アクリロイル基もしくは、メタクリロイル基を3以上有する化合物を併用することが感光性を高める上で特に好ましく、例えばエトキシ化イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸EO変性トリメタクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、プロポキシ化ペンタエリストールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、2,2,2−トリスアクリロイロキシメチルエチルコハク酸、2,2,2−トリスアクリロイロキシメチルエチルフタル酸、プロポキシ化ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、プロポキシ化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、下記一般式(2)
【0066】
【化8】

【0067】
(式中、a+b=6、n=12である。)
で表される化合物、下記一般式(3)
【0068】
【化9】

【0069】
(式中、a+b=4、n=4である。)
で表される化合物、下記式(4)
【0070】
【化10】

【0071】
で表される化合物、下記一般式(5)
【0072】
【化11】

【0073】
(式中、m=1、a=2、b=4もしくは、m=1、a=3、b=3もしくは、m=1、a=6、b=0もしくは、m=2、a=6、b=0である。)
で表される化合物、下記一般式(6)
【0074】
【化12】

【0075】
(式中、a+b+c=3.6である。)
で表される化合物、下記式(7)
【0076】
【化13】

【0077】
で表される化合物、下記一般式(8)
【0078】
【化14】

【0079】
(式中、m・a=3、a+b=3、ここで「m・a」は、mとaとの積である。)
で表される化合物等が好適に用いられる。
【0080】
また、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート、アクリル酸ダイマー、ペンタエスリトールトリ及びテトラアクリレート等の分子構造骨格中にヒドロキシル基、カルボニル基を有する化合物も好適に用いられる。
【0081】
この他、酸変性ビニルエステル樹脂、エポキシ変性(メタ)アクリル樹脂や、ウレタン変性(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル変性(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸変性エポキシ樹脂酸付加物等どのような分子内にラジカル重合性基を含有するラジカル重合性化合物を用いてもよい。
【0082】
尚、分子内にラジカル重合性基を含有するラジカル重合性化合物としては、1種を使用することも可能であるが、2種以上を併用することが、硬化膜の耐熱性を向上させる上で好ましい。
【0083】
本願発明の感光性樹脂組成物における(B)感光性樹脂は、(A)成分100重量部に対して、10〜200重量部となるように配合されていることが、感光性樹脂組成物の感光性が向上する点で好ましい。
【0084】
(B)成分が上記範囲よりも少ない場合には、感光性樹脂組成物を光硬化した後の硬化被膜の耐アルカリ性が低下すると共に、露光・現像したときのコントラストが付きにくくなる場合がある。また、(B)成分が上記範囲よりも多い場合には、感光性樹脂組成物を基材上に塗布し、溶媒を乾燥させることにより得られる塗膜のべたつきが大きくなるため生産性が低下し、また架橋密度が高くなりすぎることにより硬化膜が脆く割れやすくなる場合がある。そのため、上記範囲内にすることで露光・現像時の解像度を最適な範囲にすることが可能となる。
【0085】
<(C)光重合開始剤>
本願発明における(C)光重合開始剤とは、UVなどのエネルギーによって活性化し、ラジカル重合性基の反応を開始・促進させる化合物である。かかる(C)光重合開始剤としては、例えば、ミヒラ−ズケトン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’,4’’−トリス(ジメチルアミノ)トリフェニルメタン、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ジイミダゾール、アセトフェノン、ベンゾイン、2−メチルベンゾイン、ベンゾインメチルエ−テル、ベンゾインエチルエ−テル、ベンゾインイソプロピルエ−テル、ベンゾインイソブチルエ−テル、2−t−ブチルアントラキノン、1,2−ベンゾ−9,10−アントラキノン、メチルアントラキノン、チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジアセチルベンジル、ベンジルジメチルケタ−ル、ベンジルジエチルケタ−ル、2(2’−フリルエチリデン)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、2[2’(5’’−メチルフリル)エチリデン]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、2(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、2,6−ジ(p−アジドベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、4,4’−ジアジドカルコン、ジ(テトラアルキルアンモニウム)−4,4’−ジアジドスチルベン−2,2’−ジスルフォネ−ト、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−ケトン、ビス(n5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、ヨード二ウム,(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−ヘキサフルオロフォスフェート(1−)、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエート、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシオム)などが挙げられる。上記光重合開始剤は適宜選択することが好ましく、1種以上を混合させて用いることが好ましい。特に、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)] 、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシオム)などのオキシムエステル系化合物を用いると、少量の添加で感光性樹脂組成物を硬化することができるため、柔軟性や耐薬品性に優れた硬化膜となるため好ましい。
【0086】
本願発明の感光性樹脂組成物における(C)光重合開始剤は、(A)成分及び(B)成分の合計100重量部対して、0.1〜50重量部となるように配合されていることが好ましい。上記配合割合にすることで感光性樹脂組成物の感光性が向上するので好ましい。(C)成分が上記範囲よりも少ない場合には、光照射時のラジカル重合性基の反応が起こりにくく、硬化が不十分となることが多い場合がある。また、(C)成分が上記範囲よりも多い場合には、光照射量の調整が難しくなり、過露光状態となる場合がある。そのため、光硬化反応を効率良く進めるためには上記範囲内に調整することが好ましい。
【0087】
<(D)難燃剤>
本願発明における(D)難燃剤は、難燃性を付与するために添加することができる。難燃剤とは、プラスチック、木材、または繊維等の可燃性物質に、添加または反応させることにより、可燃性物質を燃えにくくする働きのある物質のことを意味する。上記難燃剤としては、特に限定されないが、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、ホスフィンオキサイド、ホスフィン、リン−窒素二重結合をもつホスファゼン化合物のようなリン系難燃剤、芳香族環の含有率が高いシリコーン化合物等を挙げることができる。これら難燃剤のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、本発明においてリン系難燃剤とは、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、ホスフィンオキサイド、ホスフィン、ホスファゼン化合物のようにリンを含む化合物のことを指す。
【0088】
感光性樹脂組成物との相溶性、難燃性の観点から、縮合リン酸エステル、ホスファゼン化合物リン系難燃剤を用いることが好ましい。
【0089】
縮合リン酸エステルとしては、例えば、CR−733S(レゾシノ−ルジホスフェート)(大八化学製)、CR−741(大八化学製)、CR−747(大八化学製)、およびPX−200(大八化学製)などが挙げられ、ホスファゼン化合物としては、SPE−100(大塚化学製)、SPH−100(大塚化学製)などが挙げられる。
【0090】
上記難燃剤の使用量は、感光性樹脂組成物中のリン元素含有率が、1〜7重量%であることが好ましい。上記リン元素含有率が、1重量%未満であると、十分な難燃効果が得られない場合がある。一方、7重量%を超えると、乾燥後の感光性樹脂組成物にベタツキが見られたりする場合があり、さらに硬化物の物性に悪影響を与える場合があるために好ましくない。
【0091】
<(E)熱硬化性樹脂>
本願発明の感光性樹脂組成物には、上記成分に加えて(E)熱硬化性樹脂を加えることが出来る。
【0092】
本願発明の感光性樹脂組成物に用いられる(E)熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、フェノール樹脂、イソシアネート樹脂、ブロックイソシアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビスアリルナジイミド樹脂、ポリエステル樹脂(例えば不飽和ポリエステル樹脂等)、ジアリルフタレート樹脂、珪素樹脂、ビニルエステル樹脂、メラミン樹脂、ポリビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)、シアネート樹脂(例えばシアネートエステル樹脂等)、ユリア樹脂、グアナミン樹脂、スルホアミド樹脂、アニリン樹脂、ポリウレア樹脂、チオウレタン樹脂、ポリアゾメチン樹脂、エピスルフィド樹脂、エン−チオール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ポリイミド樹脂、これらの共重合体樹脂、これら樹脂を変性させた変性樹脂、又はこれらの樹脂同士もしくは他の樹脂類との混合物等が挙げられる。
【0093】
上記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート樹脂を用いることが好ましい。これら成分を含有することにより、感光性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化膜に対して耐熱性を付与できる。
【0094】
上記エポキシ樹脂とは、分子内に少なくとも1個のエポキシ基を含む化合物であり、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製の商品名jER828、jER1001、jER1002、株式会社ADEKA製の商品名アデカレジンEP−4100E、アデカレジンEP−4300E、日本化薬株式会社製の商品名RE−310S、RE−410S、DIC株式会社製の商品名エピクロン840S、エピクロン850S、エピクロン1050、エピクロン7050、東都化成株式会社製の商品名エポトートYD−115、エポトートYD−127、エポトートYD−128、ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製の商品名jER806、jER807、株式会社ADEKA製の商品名アデカレジンEP−4901E、アデカレジンEP−4930、アデカレジンEP−4950、日本化薬株式会社製の商品名RE−303S、RE−304S、RE−403S,RE−404S、DIC株式会社製の商品名エピクロン830、エピクロン835、東都化成株式会社製の商品名エポトートYDF−170、エポトートYDF−175S、エポトートYDF−2001、ビスフェノールS型エポキシ樹脂としては、DIC株式会社製の商品名エピクロンEXA−1514、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製の商品名jERYX8000、jERYX8034,jERYL7170、株式会社ADEKA製の商品名アデカレジンEP−4080E、DIC株式会社製の商品名エピクロンEXA−7015、東都化成株式会社製の商品名エポトートYD−3000、エポトートYD−4000D、ビフェニル型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製の商品名jERYX4000、jERYL6121H、jERYL6640、jERYL6677、日本化薬株式会社製の商品名NC−3000、NC−3000H、フェノキシ型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製の商品名jER1256、jER4250、jER4275、ナフタレン型エポキシ樹脂としては、DIC株式会社製の商品名エピクロンHP−4032、エピクロンHP−4700、エピクロンHP−4200、日本化薬株式会社製の商品名NC−7000L、フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製の商品名jER152、jER154、日本化薬株式会社製の商品名EPPN−201−L、DIC株式会社製の商品名エピクロンN−740、エピクロンN−770、東都化成株式会社製の商品名エポトートYDPN−638、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、日本化薬株式会社製の商品名EOCN−1020、EOCN−102S、EOCN−103S、EOCN−104S、DIC株式会社製の商品名エピクロンN−660、エピクロンN−670、エピクロンN−680、エピクロンN−695、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂としては、日本化薬株式会社製の商品名EPPN−501H、EPPN−501HY、EPPN−502H、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂としては、日本化薬株式会社製の商品名XD−1000、DIC株式会社製の商品名エピクロンHP−7200、アミン型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製の商品名jER604、jER630、東都化成株式会社の商品名エポトートYH−434、エポトートYH−434L、三菱ガス化学株式会社製の商品名TETRAD−X、TERRAD−C、可とう性エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製の商品名jER871、jER872、jERYL7175、jERYL7217、DIC株式会社製の商品名エピクロンEXA−4850、ウレタン変性エポキシ樹脂としては、株式会社ADEKA製の商品名アデカレジンEPU−6、アデカレジンEPU−73、アデカレジンEPU−78−11、ゴム変性エポキシ樹脂としては、株式会社ADEKA製の商品名アデカレジンEPR−4023、アデカレジンEPR−4026、アデカレジンEPR−1309、キレート変性エポキシ樹脂としては、株式会社ADEKA製の商品名アデカレジンEP−49−10、アデカレジンEP−49−20、複素環含有エポキシ樹脂としては、日産化学株式会社製の商品名TEPIC等が挙げられる。
【0095】
本願発明の感光性樹脂組成物には、上記熱硬化性化合物の硬化剤として、特に限定されないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフタレン型フェノール樹脂等のフェノール樹脂、アミノ樹脂、ユリア樹脂、メラミン、ジシアンジアミド等が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0096】
また、硬化促進剤としては、特に限定されないが、例えば、トリフェニルホスフィン等のホスフィン系化合物;3級アミン系、トリメタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラエタノールアミン等のアミン系化合物;1,8−ジアザ−ビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムテトラフェニルボレート等のボレート系化合物等、イミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;2−メチルイミダゾリン、2−エチルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリン等のイミダゾリン類;2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン等のアジン系イミダゾール類等が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0097】
上記ブロックイソシアネート樹脂とは、常温では不活性であり、加熱されることにより、オキシム類、ジケトン類、フェノール類、カプロラクタム類等のブロック剤が解離してイソシアネート基を再生する化合物であり、例えば、旭化成ケミカルズ株式会社製の商品名デュラネート17B−60PX、デュラネートTPA−B80E、デュラネートMF−B60X、デュラネートMF−K60X、デュラネートE402−B80T、三井化学ポリウレタン株式会社製の商品名タケネートB−830、タケネートB−815N、タケネートB−846N、タケネートB−882N、日本ポリウレタン工業株式会社製の商品名コロネートAP−M、コロネート2503、コロネート2507、コロネート2513、コロネート2515、ミリオネートMS−50等が挙げられる。特に本願発明に好適に用いられるブロックイソシアネート樹脂は、ブロック剤の解離温度が160℃以下であるヘキサメチレンジイソシアネート系イソシアヌレート型、ビウレット型、アダクト型等のブロックイソシアネート化合物、水添ジフェニルメタンジイソシアネート系、水添キシリレンジイソシアネート系ブロックイソシアネート樹脂である。
【0098】
上記ブロックイソシアネート樹脂を用いることで感光性樹脂組成物を硬化したときに得られる硬化膜に高い基材との接着性を付与できるので好ましい。
【0099】
また、これらブロックイソシアネート樹脂は単独で、或いは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0100】
中でも、感光性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化膜に対して耐熱性を付与できると共に、金属箔等の導体や回路基板に対する接着性を付与することができるため、エポキシ樹脂を用いることがより好ましい。
【0101】
本願発明の感光性樹脂組成物における(E)熱硬化性樹脂は、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計100重量部に対して、0.5〜100重量部となるように配合されていることが、感光性樹脂組成物の硬化膜の耐熱性、耐薬品性、電気絶縁信頼性を向上することができるので好ましい。
【0102】
熱硬化性樹脂が上記範囲よりも少ない場合には、添加することによる効果が得られにくく、また、多すぎる場合には、感光性樹脂組成物を基材上に塗布し、溶媒を乾燥させることにより得られる塗膜のべたつきが大きくなるため生産性が低下し、また架橋密度が高くなりすぎることにより硬化膜が脆く割れやすくなる場合がある。
【0103】
<その他の成分>
本願発明の感光性樹脂組成物には、さらに必要に応じて充填剤、接着助剤、消泡剤、レベリング剤、着色剤、重合禁止剤等の各種添加剤を加えることができる。上記充填剤としては、シリカ、マイカ、タルク、硫酸バリウム、ワラストナイト、炭酸カルシウムなどの微細な無機充填剤、微細な有機ポリマ−充填剤を含有させてもよい。また、上記消泡剤としては、例えば、シリコン系化合物、アクリル系化合物等を含有させることができる。また、上記レベリング剤としては、例えば、シリコン系化合物、アクリル系化合物等を含有させることができる。また、上記着色剤としては、例えば、フタロシアニン系化合物、アゾ系化合物、カーボンブラック、酸化チタン等を含有させることができる。また、上記接着助剤(密着性付与剤ともいう。)としては、シランカップリング剤、トリアゾール系化合物、テトラゾール系化合物、トリアジン系化合物等を含有させることができる。また、上記重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等を含有させることができる。また、本願発明の感光性樹脂組成物は、イミド難燃剤を含むため難燃性に優れているが、より高い難燃効果を得るために他の難燃剤を加えてもよい。難燃剤としては、例えば、リン酸エステル系化合物、含ハロゲン系化合物、金属水酸化物、有機リン系化合物等を添加することができる。上記各種添加剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。また、それぞれの含有量は適宜選定することが望ましい。
【0104】
(II)感光性樹脂組成物の使用方法
本願発明の感光性樹脂組成物を直接に用いて、又は、感光性樹脂組成物溶液を調製した後に、以下のようにして硬化膜又はレリーフパターンを形成することができる。先ず、上記感光性樹脂組成物、又は、感光性樹脂組成物溶液を基板に塗布し、乾燥して有機溶媒を除去する。基板への塗布はスクリ−ン印刷、カ−テンロ−ル、リバ−スロ−ル、スプレーコーティング、スピンナーを利用した回転塗布等により行うことができる。塗布膜(好ましくは厚み:5〜100μm、特に10〜100μm)の乾燥は120℃以下、好ましくは40〜100℃で行う。
【0105】
次いで、乾燥後、乾燥塗布膜にネガ型のフォトマスクを置き、紫外線、可視光線、電子線などの活性光線を照射する。次いで、未露光部分をシャワー、パドル、浸漬または超音波等の各種方式を用い、現像液で洗い出すことによりレリ−フパタ−ンを得ることができる。なお、現像装置の噴霧圧力や流速、エッチング液の温度によりパターンが露出するまでの時間が異なる為、適宜最適な装置条件を見出すことが望ましい。
【0106】
上記現像液としては、アルカリ水溶液を使用することが好ましく。この現像液には、メタノ−ル、エタノ−ル、n−プロパノ−ル、イソプロパノ−ル、N−メチル−2−ピロリドン等の水溶性有機溶媒が含有されていてもよい。上記のアルカリ水溶液を与えるアルカリ性化合物としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはアンモニウムイオンの、水酸化物または炭酸塩や炭酸水素塩、アミン化合物などが挙げられ、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトライソプロピルアンモニウムヒドロキシド、N−メチルジエタノ−ルアミン、N−エチルジエタノ−ルアミン、N,N−ジメチルエタノ−ルアミン、トリエタノ−ルアミン、トリイソプロパノ−ルアミン、トリイソプロピルアミンなどを挙げることができ、水溶液が塩基性を呈するものであればこれ以外の化合物も当然使用することができる。本願発明の感光性樹脂組成物の現像工程に好適に用いることのできる、アルカリ性化合物の濃度は、0.01〜20重量%、特に好ましくは、0.02〜10重量%とすることが好ましい。また、現像液の温度は感光性樹脂組成物の組成や、アルカリ現像液の組成に依存しており、一般的には0℃以上80℃以下、より一般的には、10℃以上60℃以下で使用することが好ましい。
【0107】
上記現像工程によって形成したレリ−フパタ−ンは、リンスして不用な残分を除去する。リンス液としては、水、酸性水溶液などが挙げられる。
【0108】
次いで、上記得られたレリ−フパタ−ンの加熱処理を行う。加熱処理を行って、分子構造中に残存する反応性基を反応させることにより、耐熱性に富む硬化膜を得ることができる。硬化膜の厚みは、配線厚み等を考慮して決定されるが、2〜50μm程度であることが好ましい。このときの最終硬化温度は配線等の酸化を防ぎ、配線と基材との密着性を低下させないことを目的として低温で加熱して硬化できることが望まれている。
【0109】
この時の硬化温度は100℃以上250℃以下であることが好ましく、更に好ましくは120℃以上200℃以下であり、特に好ましくは130℃以上180℃以下である。最終加熱温度が高くなると配線の酸化劣化が進むので望ましくない。
【0110】
本願発明の感光性樹脂組成物から形成した硬化膜は、難燃性、耐熱性、耐薬品性、電気的及び機械的性質に優れており、また、柔軟性にも優れている。
【0111】
また、例えば、感光性樹脂組成物から得られる絶縁膜は、好適には厚さ2〜50μm程度の膜厚で光硬化後少なくとも10μmまでの解像力、特に10〜1000μm程度の解像力のものである。このため感光性樹脂組成物から得られる絶縁膜は、高密度フレキシブル基板の絶縁材料として特に適しているのである。また更には、光硬化型の各種配線被覆保護剤、感光性の耐熱性接着剤、電線・ケーブル絶縁被膜、等に用いられる。
【0112】
尚、本願発明は上記感光性樹脂組成物、又は、感光性樹脂組成物溶液を基材表面に塗布し乾燥して得られた樹脂フィルムを用いても同様の絶縁材料を提供することができる。
【実施例】
【0113】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0114】
(合成例1)
攪拌機、温度計、滴下漏斗、および窒素導入管を備えた反応容器に、重合用溶媒としてメチルトリグライム(=1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン)100.0gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温した。これに、室温で予め混合しておいた、メタクリル酸12.0g、アクリル酸ブチル58.0g、下記式(9)で示されるホスフィンオキサイド化合物30.0g、ラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.3gを80℃に保温した状態で3時間かけて滴下漏斗から滴下した。滴下終了後、反応溶液を攪拌しながら90℃まで昇温し、反応溶液の温度を90℃に保ちながら更に2時間攪拌し、本願発明のカルボキシル基含有樹脂溶液を得た。得られたカルボキシル基含有樹脂溶液の固形分濃度は47%、重量平均分子量は35,000、酸価は78mgKOH/g、リン元素含有率は3.1重量%であった。尚、固形分濃度、重量平均分子量、酸価は下記の方法で測定した。
【0115】
【化15】

【0116】
<固形分濃度>
JIS K 5601−1−2に従って測定を行った。尚、乾燥条件は150℃×1時間の条件を選択した。
【0117】
<重量平均分子量>
重量平均分子量の測定は、下記条件で実施した。
使用装置:東ソーHLC−8220GPC相当品
カラム :東ソー TSK gel Super AWM−H(6.0mmI.D.×15cm)×2本
ガードカラム:東ソー TSK guard column Super AW−H
溶離液:30mM LiBr+20mM H3PO4 in DMF
流速:0.6mL/min
カラム温度:40℃
検出条件:RI:ポラリティ(+)、レスポンス(0.5sec)
試料濃度:約5mg/mL
標準品:PEG(ポリエチレングリコール)
【0118】
<酸価>
JIS K 5601−2−1に従って測定を行った。
【0119】
(合成例2)
攪拌機、温度計、滴下漏斗、および窒素導入管を備えた反応容器に、重合用溶媒としてメチルトリグライム(=1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン)100.0gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温した。これに、室温で予め混合しておいた、メタクリル酸12.0g、アクリル酸ブチル48.0g、下記式(9)で示されるホスフィンオキサイド化合物40.0g、ラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.3gを80℃に保温した状態で3時間かけて滴下漏斗から滴下した。滴下終了後、反応溶液を攪拌しながら90℃まで昇温し、反応溶液の温度を90℃に保ちながら更に2時間攪拌し、本願発明のカルボキシル基含有樹脂溶液を得た。得られたカルボキシル基含有樹脂溶液の固形分濃度は47%、重量平均分子量は45,000、酸価は78mgKOH/g、リン元素含有率は4.1重量%であった。尚、固形分濃度、重量平均分子量、酸価は合成例1と同様に測定した。
【0120】
【化16】

【0121】
(合成例3)
攪拌機、温度計、滴下漏斗、および窒素導入管を備えた反応容器に、重合用溶媒としてメチルトリグライム(=1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン)100.0gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温した。これに、室温で予め混合しておいた、メタクリル酸12.0g、アクリル酸ブチル48.0g、下記式(10)で示されるホスフィンオキサイド化合物40.0g、ラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.3gを80℃に保温した状態で3時間かけて滴下漏斗から滴下した。滴下終了後、反応溶液を攪拌しながら90℃まで昇温し、反応溶液の温度を90℃に保ちながら更に2時間攪拌し、本願発明のカルボキシル基含有樹脂溶液を得た。得られたカルボキシル基含有樹脂溶液の固形分濃度は47%、重量平均分子量は45,000、酸価は78mgKOH/g、リン元素含有率は3.9重量%であった。尚、固形分濃度、重量平均分子量、酸価は合成例1と同様に測定した。
【0122】
【化17】

【0123】
(合成例4)
攪拌機、温度計、滴下漏斗、および窒素導入管を備えた反応容器に、重合用溶媒としてメチルトリグライム(=1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン)100.0gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温した。これに、室温で予め混合しておいた、アクリル酸12.0g、メタクリル酸ブチル48.0g、下記式(9)で示されるホスフィンオキサイド化合物40.0g、ラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.3gを80℃に保温した状態で3時間かけて滴下漏斗から滴下した。滴下終了後、反応溶液を攪拌しながら90℃まで昇温し、反応溶液の温度を90℃に保ちながら更に2時間攪拌し、本願発明のカルボキシル基含有樹脂溶液を得た。得られたカルボキシル基含有樹脂溶液の固形分濃度は47%、重量平均分子量は52,000、酸価は78mgKOH/g、リン元素含有率は3.6重量%であった。尚、固形分濃度、重量平均分子量、酸価は合成例1と同様に測定した。
【0124】
【化18】

【0125】
(合成例5)
攪拌機、温度計、滴下漏斗、および窒素導入管を備えた反応容器に、重合用溶媒としてメチルトリグライム(=1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン)100.0gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温した。これに、室温で予め混合しておいた、メタクリル酸25.0g、アクリル酸ブチル35.0g、下記式(9)で示されるホスフィンオキサイド化合物40.0g、ラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.3gを80℃に保温した状態で3時間かけて滴下漏斗から滴下した。滴下終了後、反応溶液を攪拌しながら90℃まで昇温し、反応溶液の温度を90℃に保ちながら更に2時間攪拌し、本願発明のカルボキシル基含有樹脂溶液を得た。得られたカルボキシル基含有樹脂溶液の固形分濃度は47%、重量平均分子量は46,000、酸価は162mgKOH/g、リン元素含有率は4.1重量%であった。尚、固形分濃度、重量平均分子量、酸価は合成例1と同様に測定した。
【0126】
【化19】

【0127】
(合成例6)
攪拌機、温度計、滴下漏斗、および窒素導入管を備えた反応容器に、重合用溶媒としてメチルトリグライム(=1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン)100.0gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温した。これに、室温で予め混合しておいた、メタクリル酸7.0g、アクリル酸ブチル53.0g、下記式(9)で示されるホスフィンオキサイド化合物40.0g、ラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.3gを80℃に保温した状態で3時間かけて滴下漏斗から滴下した。滴下終了後、反応溶液を攪拌しながら90℃まで昇温し、反応溶液の温度を90℃に保ちながら更に2時間攪拌し、本願発明のカルボキシル基含有樹脂溶液を得た。得られたカルボキシル基含有樹脂溶液の固形分濃度は47%、重量平均分子量は46,000、酸価は45mgKOH/g、リン元素含有率は4.1重量%であった。尚、固形分濃度、重量平均分子量、酸価は合成例1と同様に測定した。
【0128】
【化20】

【0129】
(合成例7)
攪拌機、温度計、滴下漏斗、および窒素導入管を備えた反応容器に、重合用溶媒としてメチルトリグライム(=1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン)100.0gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温した。これに、室温で予め混合しておいた、メタクリル酸10.0g、アクリル酸ブチル20.0g、下記式(9)で示されるホスフィンオキサイド化合物70.0g、ラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.3gを80℃に保温した状態で3時間かけて滴下漏斗から滴下した。滴下終了後、反応溶液を攪拌しながら90℃まで昇温し、反応溶液の温度を90℃に保ちながら更に2時間攪拌し、本願発明のカルボキシル基含有樹脂溶液を得た。得られたカルボキシル基含有樹脂溶液の固形分濃度は47%、重量平均分子量は43,000、酸価は65mgKOH/g、リン元素含有率は7.0重量%であった。尚、固形分濃度、重量平均分子量、酸価は合成例1と同様に測定した。
【0130】
【化21】

【0131】
(合成例8)
攪拌機、温度計、滴下漏斗、および窒素導入管を備えた反応容器に、重合用溶媒としてメチルトリグライム(=1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン)100.0gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温した。これに、室温で予め混合しておいた、メタクリル酸12.0g、アクリル酸ブチル48.0g、ジフェニル−(2−メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート(大八化学工業(株)製、商品名:MR−260)40.0g、ラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.6gを80℃に保温した状態で3時間かけて滴下漏斗から滴下した。滴下終了後、反応溶液を攪拌しながら90℃まで昇温し、反応溶液の温度を90℃に保ちながら更に2時間攪拌し、本願発明のカルボキシル基含有樹脂溶液を得た。得られたカルボキシル基含有樹脂溶液の固形分濃度は47%、重量平均分子量は61,000、酸価は78mgKOH/gリン元素含有率は3.4重量%であった。尚、固形分濃度、重量平均分子量、酸価は合成例1と同様に測定した。
【0132】
(合成例9)
攪拌機、温度計、滴下漏斗、および窒素導入管を備えた反応容器に、重合用溶媒としてメチルトリグライム(=1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン)100.0gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温した。これに、室温で予め混合しておいた、メタクリル酸12.0g、アクリル酸ブチル40.0g、ジフェニル−(2−メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート(大八化学工業(株)製、商品名:MR−260)48.0g、ラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.6gを80℃に保温した状態で3時間かけて滴下漏斗から滴下した。滴下終了後、反応溶液を攪拌しながら90℃まで昇温し、反応溶液の温度を90℃に保ちながら更に2時間攪拌し、本願発明のカルボキシル基含有樹脂溶液を得た。得られたカルボキシル基含有樹脂溶液の固形分濃度は47%、重量平均分子量は60,000、酸価は78mgKOH/gリン元素含有率は4.1重量%であった。尚、固形分濃度、重量平均分子量、酸価は合成例1と同様に測定した。
【0133】
(合成例10)
攪拌機、温度計、滴下漏斗、および窒素導入管を備えた反応容器に、重合用溶媒としてメチルトリグライム(=1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン)100.0gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温した。これに、室温で予め混合しておいた、メタクリル酸12.0g、メタクリル酸メチル28.0g、アクリル酸ブチル60.0g、ラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.5gを80℃に保温した状態で3時間かけて滴下漏斗から滴下した。滴下終了後、反応溶液を攪拌しながら90℃まで昇温し、反応溶液の温度を90℃に保ちながら更に2時間攪拌し、本願発明のカルボキシル基含有樹脂溶液を得た。得られたカルボキシル基含有樹脂溶液の固形分濃度は47%、重量平均分子量は45,000、酸価は78mgKOH/gであった。尚、固形分濃度、重量平均分子量、酸価は合成例1と同様に測定した。
【0134】
(実施例1〜7)
合成例1〜7で得られた(A)バインダー樹脂、(B)感光性樹脂、(C)光重合開始剤、(D)難燃剤、(E)熱硬化性樹脂、その他の成分、及び有機溶媒である1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタンを添加して感光性樹脂組成物を作製した。それぞれの構成原料の樹脂固形分での配合量及び原料の種類を表1に記載する。なお、添加した1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン量は、感光性樹脂組成物の固形分が60重量%になるよう調整した。組成物を脱泡装置で溶液中の泡を完全に脱泡して下記評価を実施した。
【0135】
【表1】

【0136】
<1>チバジャパン株式会社製 光重合開始剤の製品名
<2>新中村化学株式会社製 製品名NKエステルA−9300(エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート)
<3>新中村化学株式会社製 製品名NKエステルBPE−1300(ビスフェノールA EO変性ジアクリレート)
<4>大塚化学株式会社製 ホスファゼン化合物(リン系難燃剤)の製品名
<5>DIC株式会社製 クレゾールノボラック型の多官能エポキシ樹脂の製品名
<6>日本アエロジル株式会社製 シリカ粒子の製品名
【0137】
<ポリイミドフィルム上への塗膜の作製>
上記感光性樹脂組成物を、ベーカー式アプリケーターを用いて、25μmのポリイミドフィルム(株式会社カネカ製:商品名25NPI)に最終乾燥厚みが20μmになるように100mm×100mmの面積に流延・塗布し、80℃で20分乾燥した後、50mm×50mmの面積のライン幅/スペース幅=100μm/100μmのネガ型フォトマスクを置いて300mJ/cm2の積算露光量の紫外線を照射して露光した。次いで、1.0重量%の炭酸ナトリウム水溶液を30℃に加熱した溶液を用いて、1.0kgf/mm2の吐出圧で60秒スプレー現像を行った。現像後、純水で十分洗浄した後、150℃のオーブン中で60分加熱硬化させてポリイミドフィルム上に感光性樹脂組成物の硬化膜を作製した。
【0138】
<硬化膜の評価>
得られた硬化膜について、以下の項目につき評価を行った。評価結果を表2に記載する。
【0139】
(i)感光性評価
感光性樹脂組成物の感光性の評価は、上記<ポリイミドフィルム上への塗膜の作製>の項目で得られた硬化膜の表面観察を行い判定した。
〇:ポリイミドフィルム表面に顕著な線太りや現像残渣無くライン幅/スペース幅=100/100μmの感光パターンが描けているもの。
×:ポリイミドフィルム表面にライン幅/スペース幅=100/100μmの感光パターンが描けていないもの。
【0140】
(ii)硬化膜の密着性
上記<ポリイミドフィルム上への塗膜の作製>の項目で得られた硬化膜の密着性をJIS K 5600−5−6に従ってクロスカット法で評価した。
○:分類0(カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にもはがれがない。)
△:分類1(カットの交差点における塗膜の小さなはがれ。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を上回ることはない。)
×:分類2(塗膜がカットの縁に沿って、及び/又は交差点においてはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは明確に5%を超えるが15%を上回ることはない。)。
【0141】
(iii)耐溶剤性
上記<ポリイミドフィルム上への塗膜の作製>の項目で得られた硬化膜の耐溶剤性の評価を行った。評価方法は25℃のメチルエチルケトン中に15分間浸漬した後風乾し、フィルム表面の状態を観察した。
○:塗膜に異常がない。
×:塗膜に膨れや剥がれなどの異常が発生する。
【0142】
(iv)耐折れ性
上記<ポリイミドフィルム上への塗膜の作製>の項目と同様の方法で、25μm厚みのポリイミドフィルム(株式会社カネカ製アピカル25NPI)表面に20μm厚みの感光性樹脂組成物の硬化膜積層フィルムを作製した。硬化膜積層フィルムの耐折れ性の評価方法は、硬化膜積層フィルムを50mm×10mmの短冊に切り出して、硬化膜を外側にして25mmのところで180°に折り曲げ、折り曲げ部に5kgの荷重を3秒間乗せた後、荷重を取り除き、折り曲げ部の頂点を顕微鏡で観察した。顕微鏡観察後、折り曲げ部を開いて、再度5kgの荷重を3秒間乗せた後、荷重を取り除き完全に硬化膜積層フィルムを開いた。上記操作を繰り返し、折り曲げ部にクラックが発生する回数を折り曲げ回数とした。
○:折り曲げ回数5回で硬化膜にクラックが無いもの。
△:折り曲げ回数3回で硬化膜にクラックが無いもの。
×:折り曲げ1回目に硬化膜にクラックが発生するもの。
【0143】
(v)電気絶縁信頼性
フレキシブル銅貼り積層版(電解銅箔の厚み12μm、ポリイミドフィルムは株式会社カネカ製アピカル25NPI、ポリイミド系接着剤で銅箔を接着している)上にライン幅/スペース幅=100μm/100μmの櫛形パターンを作製し、10容量%の硫酸水溶液中に1分間浸漬した後、純水で洗浄し銅箔の表面処理を行った。その後、上記<ポリイミドフィルム上への塗膜の作製>方法と同様の方法で櫛形パターン上に20μm厚みの感光性樹脂組成物の硬化膜を作製し試験片の調整を行った。85℃、85%RHの環境試験機中で試験片の両端子部分に100Vの直流電流を印加し、絶縁抵抗値の変化やマイグレーションの発生などを観察した。
○:試験開始後、1000時間で10の8乗以上の抵抗値を示し、マイグレーション、デンドライトなどの発生が無いもの。
×:試験開始後、1000時間でマイグレーション、デンドライトなどの発生があるもの。
【0144】
(vi)半田耐熱性
上記<ポリイミドフィルム上への塗膜の作製>の項目と同様の方法で、75μm厚みのポリイミドフィルム(株式会社カネカ製アピカル75NPI)表面に20μm厚みの感光性樹脂組成物の硬化膜積層フィルムを作製した。
上記塗工膜を260℃で完全に溶解してある半田浴に感光性樹脂組成物の硬化膜が塗工してある面が接する様に浮かべて10秒後に引き上げた。その操作を3回行い、フィルム表面の状態を観察した。
○:塗膜に異常がない。
×:塗膜に膨れや剥がれなどの異常が発生する。
【0145】
(vii)反り
上記<ポリイミドフィルム上への塗膜の作製>の項目と同様の方法で、25μm厚みのポリイミドフィルム(株式会社カネカ製アピカル25NPI)表面に20μm厚みの感光性樹脂組成物の硬化膜積層フィルムを作製した。
この硬化膜を50mm×50mmの面積のフィルムに切り出して平滑な台の上に塗布膜が上面になるように置き、フィルム端部の反り高さを測定した。測定部位の模式図を図1に示す。ポリイミドフィルム表面での反り量が少ない程、プリント配線板表面での応力が小さくなり、プリント配線板の反り量も低下することになる。反り量は5mm以下であることが好ましい。尚、筒状に丸まる場合は×とした。
【0146】
(viii)難燃性
プラスチック材料の燃焼性試験規格UL94VTM法に従い、以下のように燃焼性試験を行った。上記<ポリイミドフィルム上への塗膜の作製>の項目と同様の方法で、12.5μm厚みのポリイミドフィルム(株式会社カネカ製:商品名アピカル12.5NPI)片面に20μm厚みの感光性樹脂組成物硬化膜積層フィルムを作製した。上記作製したサンプルを寸法:50mm幅×200mm長さ×32.5μm 厚み(ポリイミドフィルムの厚みを含む)に切り出し、125mmの部分に標線を入れ、感光性樹脂組成物硬化膜積層が外側になるよう直径約13mmの筒状に丸め、標線よりも上の重ね合わせ部分(75mmの箇所)、及び、上部に隙間がないようにPIテープを貼り、難燃性試験用の筒を20本用意した。そのうち10本は(1)23℃/50%相対湿度/48時間で処理し、残りの10本は(2)70℃で168時間処理後無水塩化カルシウム入りデシケーターで4時間以上冷却した。これらのサンプルの上部をクランプで止めて垂直に固定し、サンプル下部にバーナーの炎を3秒間近づけて着火する。3秒間経過したらバーナーの炎を遠ざけて、サンプルの炎や燃焼が何秒後に消えるか測定する。
○:各条件((1)、(2))につき、サンプルからバーナーの炎を遠ざけてから平均(10本の平均)で10秒以内、最高で10秒以内に炎や燃焼が停止し自己消火し、かつ、評線まで燃焼が達していないもの。
×:1本でも10秒以内に消火しないサンプルがあったり、炎が評線以上のところまで上昇して燃焼するもの。
【0147】
【表2】

【0148】
(比較例1〜3)
合成例8〜10で得られた(A)バインダー樹脂、(B)感光性樹脂、(C)光重合開始剤、(D)難燃剤、(E)熱硬化性樹脂、その他の成分、及び有機溶媒である1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタンを添加して感光性樹脂組成物を作製した。それぞれの構成原料の樹脂固形分での配合量及び原料の種類を表3に記載する。なお、添加した1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン量は、感光性樹脂組成物の固形分が60重量%になるよう調整した。組成物を脱泡装置で溶液中の泡を完全に脱泡して実施例と同様の方法で物性値の評価を行った。その結果を表4に記載する。
【0149】
【表3】

【0150】
<1>チバジャパン株式会社製 光重合開始剤の製品名
<2>新中村化学株式会社製 製品名NKエステルA−9300(エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート)
<3>新中村化学株式会社製 製品名NKエステルBPE−1300(ビスフェノールA EO変性ジアクリレート)
<4>DIC株式会社製 クレゾールノボラック型の多官能エポキシ樹脂の製品名
<5>日本アエロジル株式会社製 シリカ粒子の製品名
【0151】
【化22】

【0152】
【表4】

【0153】
(比較例4)
不揮発分としての配合量であり、アクリル樹脂であって、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチルの共重合体(メタクリル酸:メタクリル酸メチル:アクリル酸ブチル=17重量%:62重量%:21重量%)で重量平均分子量100000、酸価110mgKOH/gのもの30重量部、ポリウレタン化合物(日本化薬(株)社製、サンプル名UXE−3024、重量平均分子量:10000) 40重量部、ビスフェノールAポリオキシエチレンジメタクリレート(日立化成工業(株)製、商品名FA−321M)30重量部、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフェリノフェニル)−ブタノン−1(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「I−369」)5重量部、1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタン(旭電化工業(株)製、商品名N-1717)3重量部、ホスフィン酸塩(クラリアント社製、商品名EXOLIT OP935、リン含有量=23質量%)30重量部、硫酸バリウム(堺化学工業(株)製、商品名バリエースB-30)60重量部、ブロック型イソシアネート(住化バイエルウレタン(株)製、商品名スミジュールBL−3175)30重量部、黄色系顔料(ピグメントイエロー)0.5重量部混合し、希釈剤としてのメチルエチルケトンとともに不揮発分が50質量%となるように混合することにより、感光性樹脂組成物を得た。組成物を脱泡装置で溶液中の泡を完全に脱泡して実施例と同様の方法で物性値の評価を行った。その結果を表5に記載する。
【0154】
(比較例5)
不揮発分としての配合量であり、下記構造式(8)で示されるホスフィンオキサイド化合物10.0g、酸変性多官能ビスフェノールF型エポキシアクリレート(日本化薬(株)製、商品名ZFR−1401H)46.55g、ε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製、商品名DPCA−60)6.06g、2−メチル−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノ−1−プロパン(チバスペシャリティーケミカルズ社製、商品名Irg.907)4.54g、2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬(株)製、商品名DETX−S)0.91g、ビフェノール型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、商品名NC−3000H)18.31g、メラミン1.00g、硫酸バリウム15.15g、フタロシアニンブルー0.61g、レベリング剤(ビックケミー社製、商品名BYK−354)0.39g、消泡剤(信越化学性、商品名KS−66)0.69g、カルビトールアセテート4.54gを混合することにより、感光性樹脂組成物を得た。組成物を脱泡装置で溶液中の泡を完全に脱泡して実施例と同様の方法で物性値の評価を行った。その結果を表5に記載する。
【0155】
(比較例6)
攪拌機、還流冷却機、滴下漏斗、温度計及び窒素ガス導入管を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル60 .0重量部及びトルエン4 0.0重量部の混合溶液を加え、窒素ガスを吹き込みながら80℃に加熱した状態で攪拌した。これに、メタクリル酸20.0重量部、メタクリル酸メチル20. 0重量部、及び、ジフェニル−(2−メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート(大八化学工業株式会社製、商品名MR−260)60.0重量部と、アゾビスイソブチロニトリル1.0重量部とを混合した溶液を、3時間かけて滴下した後、さらに80℃で9時間攪拌した。その後、プロピレングリコールモノメチルエーテル45.0重量部で希釈することにより樹脂溶液を得た。
【0156】
不揮発分としての配合量として、この樹脂溶液70g、リン含有光重合性化合物(昭和高分子社製、商品名HF−TMPTA)35g、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフェリノフェニル)−ブタノン−1( チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名I−369)3g、ブロックイソシアネート(住化バイエルウレタン社製、商品名BL3175、)15gを混合し、メチルエチルケトン20gで希釈し、感光性樹脂組成物を得た。組成物を脱泡装置で溶液中の泡を完全に脱泡して実施例と同様の方法で物性値の評価を行った。その結果を表5に記載する。
【0157】
(比較例7)
メチルエチルケトン50重量部を500mlの四つ口フラスコに入れ、窒素気流下で撹拌しながら加熱して80℃とした。ここにジフェニル−(2−メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート(大八化学工業株式会社製、商品名MR−260)100重量部と、アゾビスイソブチロニトリル1重量部と、過安息香酸tert−ブチル0.1重量部とを有機溶媒であるメチルエチルケトン50重量部に室温で溶解させた溶液を4時間かけて滴下し、さらに2時間反応させて樹脂溶液を得た。
【0158】
不揮発分の配合量として、この樹脂溶液50g、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(住友化学工業株式会社製ESCN−195)45重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェル株式会社製EP−1001)15重量部、フェノールノボラック樹脂(大日本インキ株式会社製TD−2131)40重量部、2−フェニルイミダゾール0.2重量部を混合し、メチルエチルケトン50重量部で希釈し、感光性樹脂組成物を得た。組成物を脱泡装置で溶液中の泡を完全に脱泡して実施例と同様の方法で物性値の評価を行った。その結果を表5に記載する。
【0159】
(比較例8)
メチルエチルケトン50重量部を500mlの四つ口フラスコに入れ、窒素気流下で撹拌しながら加熱して80℃とした。ここにジフェニル−(2−メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート(大八化学工業株式会社製、商品名MR−260)79重量部、アクリル酸16重量部、メタクリル酸メチル5重量部、アゾビスイソブチロニトリル1重量部と、過安息香酸tert−ブチル0.1重量部とを有機溶媒であるメチルエチルケトン50重量部に室温で溶解させた溶液を4時間かけて滴下し、さらに2時間反応させて樹脂溶液を得た。
不揮発分の配合量として、この樹脂溶液40重量部、エポキシアクリレート酸無水物(日本化薬(株)製、商品名:ZFR−1158):30重量部、ウレタン結合含有モノマー(新中村化学工業(株)製、商品名:UA−11)30重量部、光重合開始剤(チバガイギー(株)製、商品名:イルガキュア651)5重量部、熱重合開始剤(日本油脂(株)製、商品名:パーヘキシン25B):2重量部、2,2−ビス[4−(4−N−マレイミジニルフェノキシ)フェニル]プロパン10重量部を混合し、メチルエチルケトン20重量部で希釈し、感光性樹脂組成物を得た。組成物を脱泡装置で溶液中の泡を完全に脱泡して実施例と同様の方法で物性値の評価を行った。その結果を表5に記載する。
【0160】
【表5】

【符号の説明】
【0161】
1 感光性樹脂組成物を積層したポリイミドフィルム
2 反り量
3 平滑な台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも(A)バインダー樹脂と、(B)感光性樹脂と、(C)光重合開始剤とを含み、上記(A)バインダー樹脂が、少なくとも(a)下記一般式(1)で示されるホスフィンオキサイド化合物と、(b)カルボキシル基及び上記(a)と共重合可能な二重結合を有する化合物と、を共重合させたものであることを特徴とする感光性樹脂組成物。
【化1】

【請求項2】
上記(b)が、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリロイル基とカルボキシル基を有する化合物であることを特徴とする請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
上記(b)が、(メタ)アクリル酸であることを特徴とする請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
上記(A)バインダー樹脂が、さらに(c)(メタ)アクリル酸アルキルエステルを共重合させたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
上記(A)バインダー樹脂のリン元素含有率が、2.0〜9.5重量%である請求項1〜4のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
上記(A)バインダー樹脂の酸価が、40〜200mgKOH/gである請求項1〜5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
上記(C)光重合開始剤が、オキシムエステル系化合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
上記感光性樹脂組成物における(A)バインダー樹脂と、(B)感光性樹脂と、(C)光重合開始剤は、(A)バインダー樹脂100重量部に対して(B)感光性樹脂が10〜200重量部、(C)光重合開始剤が、0.1〜50重量部となるように配合されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
更に(D)難燃剤を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
上記感光性樹脂組成物中のリン元素含有率が、1〜7重量%である請求項1〜9のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項11】
更に(E)熱硬化性樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項12】
上記(E)熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項11に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項13】
上記(E)熱硬化性樹脂の配合割合が、(A)バインダー樹脂と、(B)感光性樹脂と、(C)光重合開始剤とを合計した100重量部に対して、0.5〜100重量部となるように配合されていることを特徴とする請求項11または12に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を有機溶剤に溶解して得られる感光性樹脂組成物溶液。
【請求項15】
少なくとも請求項1〜13のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物、または請求項14に記載の感光性樹脂組成物溶液を基材表面に塗布した後、乾燥して得られた樹脂フィルム。
【請求項16】
請求項15に記載の樹脂フィルムを硬化させて得られる絶縁膜。
【請求項17】
請求項16記載の絶縁膜をプリント配線板に被覆した絶縁膜付きプリント配線板。

【図1】
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【公開番号】特開2011−237643(P2011−237643A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109604(P2010−109604)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】