説明

新規のDHA誘導体およびその医薬品としての用途

本開示は一般式(I):
【化21】


(式中、RlおよびR2は同一であるかまたは異なり、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アミノ基、およびアルキルアミノ基から選択される)
の化合物、および医薬的に許容されるその塩、溶媒和物、複合体、またはプロドラッグ;そして、種々の疾患および症状の治療、例えばトリグリセリド濃度上昇(すなわち高トリグリセリド血症)の低下、非HDLコレステロールの低下、グルコースおよびHbA1cの低下、およびインスリン抵抗性の改善のための医薬品としてのその用途に関する。本開示はまた、式(I)の化合物を含有する医薬組成物、並びに式(I)の化合物の調製法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明が属する分野
本開示は、一般式(I)の化合物:
【化1】

(式中、RlおよびR2は同一であるかまたは異なり、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アミノ基、およびアルキルアミノ基である)
および任意の医薬的に許容されるその塩、溶媒和物、複合体、またはプロドラッグ;
そして、種々の疾患および症状の治療、例えばトリグリセリド濃度上昇(すなわち高トリグリセリド血症)の低下、非HDLコレステロールの低下、グルコースおよびHbA1cの低下、およびインスリン抵抗性の改善を目的とする医薬品としてのその用途に関する。本開示は式(I)の化合物を含有する医薬組成物、並びに式(I)の化合物の調製法にも関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
EPAおよびDHAは正常な健康状態および慢性疾患に影響を与える多様な生理学的過程(例えば血漿脂質濃度の制御、心血管および免疫機能、インスリン作用、神経発生、および視覚機能)に作用を及ぼす。それらが冠動脈性心疾患、脂質異常症、2型糖尿病、インスリン抵抗性、および高血圧の予防および管理に有益な役割を果たすという確実な証拠が報告されている(Simonopoulos, A. P. Am. J. Clin. Nutr. (1999) 70(Suppl):560S-569S;Geleijnse, J. M.ら J. Hypertension (2002) 20:1493-1499;Storlien, L. H.ら Curr. Opin. Clin. Nutr. Metab. Care (1998) 1:559-563)。
【0003】
それらの型のオメガ-3脂肪酸の一つは、DHAおよびEPAをエチルエステルとして含有する魚油由来のオメガ-3長鎖多価不飽和脂肪酸の濃縮物であり、それらは例えば米国特許第5,502,077号;第5,656,667号;および第5,698,594号に報告されており、また、Omacor(登録商標)またはLovaza(登録商標)の名称で販売されている。特に、高濃度(少なくとも80重量%)のオメガー3脂肪酸エチルエステルを含有し、EPAエチルエステルおよびDHAエチルエステルが1:2から2:1の比率で含有されており、組成物中の総脂肪酸が少なくとも約75%に相当する脂肪酸組成物は心血管疾患のいくつかの危険因子(特に高トリグリセリド血症、軽度高血圧に優れた効果を示す)、および凝固第VII因子-リン脂質複合体活性に対して有益な効果を示すことが明らかになっている。それらの化合物(例えばOmacor(登録商標)およびLovaza(登録商標))は血清LDL-コレステロールを低下させ、血清HDLコレステロールを上昇させ、血清トリグリセリドを低下させ、収縮期および拡張期血圧および脈拍数を低下させ、血液凝固第VII因子-リン脂質複合体の活性を低下させる。EPAおよびDHAは相乗的に作用することが明らかになっている。更に、EPAおよびDHAは、本明細書に記載する式(I)の化合物と同様、非常に良好な耐容性を示し、重度の副作用を全く引き起こさない。
【0004】
2型糖尿病および心血管疾患の世界的な罹患率増加により、その予防および治療戦略を成功させるための手段が公衆衛生および医療上の非常に大きな課題となっている。体重過多の人々の増加および高頻度の肥満の同時発生(2型糖尿病に関係する)は糖尿病治療に影響を与え、高血圧、脂質異常症、およびアテローム性疾患の可能性を増加させる。
【0005】
2型糖尿病の進展に先行する病態生理学的状態は、末梢組織でのインスリンの効果の低下(インスリン抵抗性)に関係する。これらの組織は主に筋肉、脂肪、および肝臓である。筋肉組織は2型糖尿病におけるインスリン抵抗性の影響を最も受ける組織である。インスリン抵抗性、高血圧、脂質異常症、および全身性炎症症状を特徴とする症候群をメタボリック・シンドロームと呼ぶ。先進国における成人人口のメタボリック・シンドローム有病率は22-39%である(Meighs, J.B.ら Diabetes (2003) 52:2160-2167)。
【0006】
現在、メタボリック・シンドロームを軽減または防止するための最も有望な方法は体重減少、飽和脂肪摂取量の低減、および運動量の増加による生活スタイルへの介入を、好適な薬物療法と併せて行うことである。過剰なエネルギー摂取を防止する健康的な食事には、一価および多価不飽和脂肪酸を飽和脂肪の代替とすることが含まれる。特に、脂肪性魚類から得られる長鎖オメガ-3脂肪酸、すなわちエイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)は2型糖尿病の予防に有益であることが証明されている。
【0007】
最近の研究では、オメガ-3脂肪酸が遺伝子発現の重要な介在物質として機能し、脂質代謝、グルコース代謝、および脂質生成に関与する遺伝子の発現を制御するペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)のような核内受容体を介して作用することが示唆されている(Jump, D. B. J. Biol. Chem. (2002) 277:8755-8758)。PPARは、肥満に関係する代謝性疾患(例えば高脂血症、インスリン抵抗性、および冠状動脈性心疾患)において重要な役割を果たすと考えられている核内脂肪酸受容体である。
【0008】
近年、PPARγ受容体のリガンドとして作用する医薬品が2型糖尿病の治療に導入されてきている(Yki-Jarvinen, H. New Engl. J. Med. (2004) 351:1106-1118)。
【0009】
しかしながら、これらの医薬品は一般に体重増加および皮下脂肪組織量の増加を伴う(Adams, M.ら J. Clin. Invest. (1997) 100:3149-3153)。チアゾリジンジオンの使用は体重増加を伴うのみならず、あるサブグループの患者は、末梢浮腫をもたらす体液貯留および血漿体積増加も示す。体重増加および浮腫は心不全の発症率増加と関連づけられており、そのような理由から食品医薬品局(FDA)はロシグリタゾン(アバンディア(Avandia))およびピオグリタゾン(Takeda社)の処方情報に警告を包含させている。これらの有害作用により、特に冠動脈性心疾患患者では、チオグリタゾンの使用は制限される。従って、インスリン抵抗性に有効な作用があり、体重減少活性を有さず、体液貯留傾向を示さない新規の薬剤には将来性がある。
【0010】
チオグリタゾンのような薬理学的アゴニストと比較するとオメガ-3脂肪酸はPPARの弱いアゴニストであるが、これらの脂肪酸ではグルコースの取り込みおよびインスリン感受性が改善されることが証明されている(Storlien, L. H.ら Science (1987) 237:885-888)。報告によれば、食事中の飽和脂肪酸に対する多価不飽和脂肪酸の比率が増加すると、脂肪細胞はより高いインスリン感受性を示し、より多くのグルコースを輸送する(Field, C. J.ら J. Biol. Chem. (1990) 265:11143-11150)。総じてこれらのデータは、20炭素および22炭素脂肪酸(例えばEPAおよびDHA)がインスリン抵抗性の進展において予防的役割を果たしうることを示している。
【0011】
インビボでの安定性が不十分であること、および生物学的特異性が欠如していることから、PUFAは治療薬として広範に使用されてはいない。n-3多価不飽和脂肪酸の代謝作用を変更または増加させるための化学修飾が、いくつかの研究グループによって行われてきた。
【0012】
例えば、EPAの脂質低下作用は、EPAのαまたはβ位にメチルまたはエチルを導入することによって増強される(Vaagenes, H.ら Biochem. Pharmacol. (1999) 58:1133-1143)。またこの化合物は血漿中の遊離脂肪酸を低下させるが、EPAエチルエステル(EE)ではその効果は見られなかった。
【0013】
L. Larsenの研究(Larsen, L.ら Lipids (2005) 40:49-57)では、EPAおよびDHAのα-メチル誘導体はEPA/DHAに比較して核内受容体PPARαの活性を増加し、その結果L-FABPの発現を増加したことが明らかにされている。α位にエチル基を有するEPAは、α-メチルEPAと同等の強度でPPARαを活性化した。著者は、これらα-メチル脂肪酸の異化が緩慢であることが、ミトコンドリア内でのβ酸化の低下とその結果として起こるペルオキシソームでの酸化によって、その作用の増大に関与している可能性を示唆している。
【0014】
α-メチルEPAは、インビトロ(Larsen, L.ら Biochemical Pharmacology (1998) 55:405)およびインビボ(Willumsen, N. Biochim Biophys Acta (1998) 1369:193-203)のいずれでも血小板凝集抑制作用がEPAより強いことが明らかにされている。PAJ公開番号05-00974号はα位をOH基で置換したDHAを開示しているが、これは中間体としてのみである。この化合物の予想される医薬品的効果については開示されていない。
【0015】
また、Laxdale社も精神障害または中枢神経障害の治療におけるEPAのα置換型誘導体の用途について報告している(米国特許第6,689,812号)。
【0016】
【化2】

しかしながら、それらの修飾型脂肪酸はいずれも十分な薬剤活性を示さず、医薬品として上市されたものはない。
【0017】
α置換を有するDHA誘導体について開示しているWO2006/117664号を参照することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本開示の目的は治療活性を有する新規のDHA誘導体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
従って、本開示は式(I)の化合物:
【化3】

(式中、R1およびR2は同一であるかまたは異なり、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アミノ基、およびアルキルアミノ基から選択される);
および任意の医薬的に許容されるその塩、溶媒和物、複合体、およびプロドラッグに関する。
【0020】
少なくとも一つの態様では、アルキル基はメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、n-ヘキシル、およびベンジルから選択される。
【0021】
少なくとも一つの態様では、ハロゲン原子はフッ素、塩素、臭素、およびヨウ素から選択される。
【0022】
少なくとも一つの態様では、アルコキシ基はメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、sec-ブトキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、OCH2CF3、およびOCH2CH2OCH3から選択される。
【0023】
少なくとも一つの態様では、アルケニル基はアリル、2-ブテニル、および3-ヘキセニルから選択される。
【0024】
少なくとも一つの態様では、アルキニル基はプロパルギル、2-ブチニル、および3-ヘキシニルから選択される。
【0025】
少なくとも一つの態様では、アリール基はフェニル基である。
【0026】
少なくとも一つの態様では、アルキルチオ基はメチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ、およびフェニルチオから選択される。
【0027】
少なくとも一つの態様では、アルコキシカルボニル基はメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、およびブトキシカルボニルから選択される。
【0028】
少なくとも一つの態様では、アルキルスルフィニル基はメタンスルフィニル、エタンスルフィニル、およびイソプロパンスルフィニルから選択される。
【0029】
少なくとも一つの態様では、アルキルスルホニル基はメタンスルホニル、エタンスルホニル、およびイソプロパンスルホニルから選択される。
【0030】
少なくとも一つの態様では、アルキルアミノ基はメチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、およびジエチルアミノから選択される。
【0031】
少なくとも一つの態様では、R1およびR2は水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アミノ基、およびアルキルアミノ基から選択される。
【0032】
少なくとも一つの態様では、R1およびR2は水素原子、ヒドロキシ基、C1-C7アルキル基、ハロゲン原子、C1-C7アルコキシ基、C1-C7アルキルチオ基、C1-C7アルキルスルフィニル基、C1-C7アルキルスルホニル基、アミノ基、およびC1-C7アルキルアミノ基から選択される。
【0033】
少なくとも一つの態様では、C1-C7アルキル基はメチル、エチル、またはベンジルであり;ハロゲン原子はフッ素またはヨウ素であり;C1-C7アルコキシ基はメトキシまたはエトキシであり;C1-C7アルキルチオ基はメチルチオ、エチルチオ、またはフェニルチオであり;C1-C7アルキルスルフィニル基はエタンスルフィニルであり;C1-C7アルキルスルホニル基はエタンスルホニルであり;C1-C7アルキルアミノ基はエチルアミノまたはジエチルアミノである。
【0034】
少なくとも一つの態様では、R1およびR2は水素原子、C2-C7アルキル基、ハロゲン原子、C1-C7アルコキシ基、C1-C7アルキルチオ基、C1-C7アルキルスルフィニル基、C1-C7アルキルスルホニル基、アミノ基、およびC1-C7アルキルアミノ基から選択される。
【0035】
少なくとも一つの態様では、C2-C7アルキル基はエチルまたはベンジルであり;ハロゲン原子はフッ素またはヨウ素であり;C1-C7アルコキシ基はメトキシまたはエトキシであり;C1-C7アルキルチオ基はメチルチオ、エチルチオ、またはフェニルチオであり;C1-C7アルキルスルフィニル基はエタンスルフィニルであり;C1-C7アルキルスルホニル基はエタンスルホニルであり;C1-C7アルキルアミノ基はエチルアミノまたはジエチルアミノである。
【0036】
本開示の式(I)の化合物では、R1およびR2は同一であっても異なっていてもよい。それらが異なる場合、式(I)の化合物は立体異性体で存在できる。理解されるように、本開示は式(I)の化合物の全ての光学異性体、およびそれらの混合物(ラセミ体を含む)を包含する。
【0037】
R1がR2と異なる場合、本開示は式(I)の化合物のラセミ体、または鏡像異性的に濃縮された、もしくは鏡像異性的に純粋な式(I)の化合物の(S)もしくは(R)エナンチオマーを包含する。
【0038】
本開示の少なくとも一つの態様では、例えば以下のような種々の症状の治療または予防を目的とする医薬品の製造のための式(I)の化合物の用途について開示する:体重低減の管理および/もしくは体重増加の予防、肥満もしくは過体重状態の治療および/もしくは予防、糖尿病(例えば2型糖尿病)の予防および/もしくは治療、アミロイド関連疾患の治療および/もしくは予防、心血管疾患の危険因子重複の治療もしくは予防、血中脂質(例えばトリグリセリドおよび非HDLコレステロール(例えばLDLコレステロールおよびVLDLコレステロール))上昇の治療、インスリン濃度上昇の治療、脂質異常症の治療、高血圧、心筋梗塞(MI)後、鬱病、およびIgA腎症の治療、血清HDL濃度の増加、炎症性疾患もしくは症状の治療および/もしくは予防、そして/または、複数動脈のアテローム性硬化症に関係する卒中、脳虚血発作、もしくは一過性虚血発作の予防。
【0039】
本開示の少なくとも一つの態様では、式(I)の化合物は式(Ia)の化合物:
【化4】

または医薬的に許容されるその塩、溶媒和物、複合体、もしくはプロドラッグである。式(Ia)の化合物の調製法も本発明の範囲に含まれる。
【0040】
本開示にかかるα置換型DHA誘導体、例えばモノグリセリドは医薬的活性を示すことが明らかになった。特に、本開示にかかる脂肪酸誘導体、例えばモノグリセリドは本明細書に開示する疾患および症状の治療および/または予防に使用することができる。
【0041】
本開示の別の観点は、式(I)の化合物を医薬品として使用する方法に関する。
【0042】
本開示はまた、式(I)の化合物の製造のためのプロセスにも関する。例えば式(I)の化合物を(all-Z)-4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸(DHA)から調製することができる。DHAは例えば植物、微生物、および/または動物供与源(例えば魚油のような水産油脂)由来であってもよい。化合物(I)の別の利点は、脂肪酸化合物を(all-Z)-4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸(DHA)から直接調製しうることである。
【0043】
本開示のある態様では、式(I)の化合物をDHAから調製し、ここでDHAは植物起源、微生物起源、および動物起源から選択される少なくとも一つの起源に由来する。本開示はまた、微生物起源由来のDHA含有油脂から調製した誘導体を包含する。好適なDHAは水産油脂、例えば魚油から得てもよい。
【0044】
本開示の別の観点は、活性成分として式(I)の化合物を含有する医薬組成物に関する。医薬組成物は更に医薬的に許容されるキャリアーを含有してもよい。必要により、本開示にかかる医薬組成物を経口投与用に、例えばカプセル剤またはサシェ剤の形態に調製する。本開示の式(I)の化合物の好適な一日投与量の範囲は10mgから10g、例えば100mgから1gの式(I)の化合物である。
【0045】
更に本開示は式(I)の化合物を含有する脂肪酸組成物に関し、ここで、式(I)の化合物は脂肪酸組成物の少なくとも60重量%、例えば少なくとも90重量%で存在することができる。脂肪酸は誘導体の形態で存在していてもよい。本開示にかかる脂肪酸組成物は医薬的に許容される抗酸化剤、例えばトコフェロールを更に含有してもよい。医薬品として使用するための上記脂肪酸組成物も本開示の範囲に包含される。
【0046】
更なる観点では、本開示は以下を目的とする式(I)の化合物の用途に関する:体重低減の管理および/または体重増加の予防を目的とする医薬品の製造;肥満または過体重状態の治療および/または予防を目的とする医薬品の製造;糖尿病(例えば2型糖尿病)の予防および/または治療を目的とする医薬品の製造;アミロイド関連疾患の治療および/または予防を目的とする医薬品の製造;心血管疾患の危険因子重複の治療または予防(例えば血中脂質上昇の治療)を目的とする医薬品の製造;および、複数動脈のアテローム性硬化症に関係する卒中、脳虚血発作、または一過性虚血発作の予防を目的とする医薬品の製造。
【0047】
更に本開示は以下:体重低減の管理および/または体重増加の予防方法;肥満または過体重状態の治療および/または予防方法;糖尿病(例えば2型糖尿病)の予防および/または治療方法;アミロイド関連疾患の治療および/または予防方法;心血管疾患の危険因子重複の治療または予防方法;および、複数動脈のアテローム性硬化症に関係する卒中、脳虚血発作、または一過性虚血発作の予防方法に関し、この方法では、医薬的有効量の式(I)の化合物をヒトまたは動物に投与する。必要に応じて、式(I)の化合物をヒトまたは動物に経口投与する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、実施例1で測定した血漿トリグリセリド濃度を示す。
【図2】図2は、実施例1で測定した血漿コレステロール濃度を示す。
【図3】図3は、実施例2で測定した受容体活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
発明の詳細な説明
出願人は、動物モデルにおいてアルファ置換型DHA誘導体のモノグリセリドが強力な脂質低下作用を有することを発見した。また、化合物は核内受容体、PPARaおよびPPARγに親和性を有する。そのため、それらは種々の疾患および症状の治療のための医薬品としての可能性を有している。
【0050】
本明細書を通して、本開示にかかる典型的な化合物について記載する場合、“PRB-x MG”(xは整数)という略語を使用する。
【0051】
本開示にかかる化合物の典型的な分類には以下がある:
分類A:R1はアルキル基であり、R2は水素原子である。
例i:
【化5】

(all-Z)-1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル2-メチルドコサ-4,7,10,13,16,19-ヘキサエノアート(PRB-1 MG)(式中、R1はメチル基であり、R2は水素原子である)。
例ii:
【化6】

(all-Z)-1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル2-メチル2-エチル-ドコサ-4,7,10,13,16,19-ヘキサエノアート(PRB-2 MG)(Ia)(式中、R1はエチル基であり、R2は水素原子である)。
例iii:
【化7】

(all-Z)-1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル2-プロピル-ドコサ-4,7,10,13,16,19-ヘキサエノアート(PRB-3 MG)(式中、R1はプロピル基であり、R2は水素原子である)。
【0052】
分類B:R1およびR2はいずれもアルキル基である。
例iv:
【化8】

(all-Z)-1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル2,2-ジメチル-ドコサ-4,7,10,13,16,19-ヘキサエノアート(PRB-4 MG)(式中、R1およびR2はメチル基である)。
【0053】
分類C:R1はアルコキシ基であり、R2は水素原子である。
例v:
【化9】

(all-Z)-1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル2-メトキシ-ドコサ-4,7,10,13,16,19-ヘキサエノアート(PRB-5 MG)(式中、R1はメトキシ基であり、R2は水素原子である)。
例vi:
【化10】

(all-Z)-1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル2-エトキシ-ドコサ-4,7,10,13,16,19-ヘキサエノアート(PRB-6 MG)(式中、R1はエトキシ基であり、R2は水素原子である)。
【0054】
理解されるように、本開示は式(I)の化合物の医薬的に許容される塩、溶媒和物、複合体、およびプロドラッグの全てを包含する。
【0055】
“プロドラッグ”は、それ自体は薬理学的活性を有しても有さなくてもよいが、(例えば経口または非経口で)投与されると体内で生体内活性化(例えば代謝)されて薬理学的に活性な本開示の薬剤を生成する物質である。
【0056】
“治療的有効量”または“医薬的有効量”は、所望の治療効果および/または薬理学的効果をもたらす量に関する。個々の患者のニーズは様々でありうるが、式(I)の化合物の有効量の最適範囲は当業者の技術の範囲内である。一般に本開示の化合物および/または組成物を用いる症状の治療のための投薬計画は種々の因子、例えば患者のタイプ、年齢、体重、性別、食習慣、および医学的状態に従って選択される。
【0057】
“医薬品”とは医療目的で使用するのに好適な任意の形態(例えば医療品、医薬製剤もしくは製品、食事療法製品、食料品、または栄養補助食品の形態)の式(I)の化合物を意味する。
【0058】
本明細書で使用する“治療”という用語は、それと異なることが明記されていない限り、“予防”および“防止”も包含する。“治療的な”および“治療的に”という用語は適宜に解釈されるべきである。
【0059】
治療にはヒトまたは非ヒト動物に益となる任意の治療的適用が含まれる。哺乳動物の治療は典型的な態様である。ヒトおよび動物の治療はいずれも本開示の範囲内である。治療は既存の症状に対するものであってもよいし、予防、すなわち防止するためのものであってもよい。治療は成人、青少年、乳児、胎児、または上記のいずれかの一部(例えば臓器、組織、細胞、または核酸分子)に対するものであってもよい。“長期的治療”とは、数週間または数年間継続する治療を意味する。
【0060】
本開示にかかる化合物は、例えば食料品、栄養補助食品、栄養サプリメント、または食事療法製品に含有させることができる。α置換型DHA誘導体およびEPA(または更に言えばDHA)を互いに結合させ、Novozym 435(固定化された形態で市販されているカンジダ・アンタルクティカ(Candida antarctica)由来のリパーゼ)で触媒されるアルファ誘導体、EPA、およびグリセロール混合物間のエステル化過程によってトリグリセリド上で結合させることができる。式(I)の化合物は医薬品(例えば核内受容体活性のトリガー)としての活性を有する。
【0061】
少なくとも一つの態様では、新規の式(I)の化合物、医薬的に許容されるその塩、溶媒和物、複合体、および/またはプロドラッグを以下の目的で使用することができる:体重低減の管理および/もしくは体重増加の予防、肥満または過体重状態の治療および/もしくは予防、糖尿病(例えば2型糖尿病)の予防および/もしくは治療、アミロイド関連疾患の治療および/もしくは予防、心血管疾患の危険因子重複の治療もしくは予防、血中脂質(例えばトリグリセリドおよび非HDLコレステロール)上昇の治療、インスリン濃度上昇の治療、脂質異常症の治療、高血圧、心筋梗塞(MI)後の鬱病、およびIgA腎症の治療、血清HDL濃度の増加、炎症性疾患もしくは症状の治療および/もしくは予防、そして/または、複数動脈のアテローム性硬化症に関係する卒中、脳虚血発作、もしくは一過性虚血発作の予防。
【0062】
糖尿病には大きく分けて2つの型がある。一方はインスリン依存型糖尿病(IDDM)として知られる1型糖尿病であり、他方は非インスリン依存型糖尿病(NIDDM)として知られる2型糖尿病である。2型糖尿病は肥満/体重過多および運動不足に関係し、多くの場合発症は緩徐であり、通常は成人にみられ、インスリン感受性の低下、すなわち末梢インスリン抵抗性の原因となる。これはインスリン生成の代償性増加をもたらす。本格的な2型糖尿病を発症する前のこの段階はメタボリック・シンドロームと呼ばれ、高インスリン血症、インスリン抵抗性、肥満、耐糖能異常、高血圧、血中脂質異常、過凝固状態(hypercoagulopathia)、脂質異常症、および炎症を特徴とし、しばしばアテローム性動脈硬化を引き起こす。その後インスリン生成が停止すると2型糖尿病が発症する。
【0063】
代表的な態様では、式(I)の化合物を2型糖尿病の治療に使用することができる。式(I)の化合物を使用して、メタボリック・シンドローム、二次性糖尿病(例えば膵性糖尿病、膵性以外の内分泌性糖尿病、または薬剤によって起こる糖尿病)、および特殊な型の糖尿病(例えば脂肪萎縮性、筋緊張性、またはインスリン受容体障害によって起こる疾患)から選択される他の型の糖尿病の治療を行うことができる。
【0064】
少なくとも一つの態様では、式(I)の化合物は核内受容体(例えばPPAR(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体)αおよび/またはγ)を活性化する。
【0065】
式(I)の化合物は肥満の治療および/または予防に使用することができる。肥満は通常、インスリン抵抗性の増加に関係し、肥満人は心血管疾患発症の主な危険因子である2型糖尿病の発症リスクが高い。肥満は西洋社会で罹患人口が増加している慢性疾患であり、これは社会的不名誉ばかりでなく、寿命の短縮および多くの問題(例えば糖尿病、インスリン抵抗性、および高血圧)とも関係している。
【0066】
式(I)の化合物を用いてアミロイド関連疾患の予防および/または治療を行うことができる。(例えば原線維またはプラーク形成の結果として起こる)アミロイド沈着に関係するアミロイド関連症状または疾患には、アルツハイマー病または認知症、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、、海綿状脳症(例えばクロイツフェルト・ヤコブ病)、嚢胞性線維症、原発性または続発性腎アミロイドーシス、IgA腎症、および動脈、心筋、および神経組織におけるアミロイド沈着がある。アミロイド関連疾患の治療は急性治療または慢性治療のいずれであってもよい。
【0067】
式(I)の化合物を、脳に血液を供給する動脈のアテローム性硬化症状(例えば卒中または一過性虚血発作)を有する患者に投与して、更なる致死的な発作のリスクを低減することができる。
【0068】
式(I)の化合物はまた、ヒトの血中脂質上昇の治療に使用することができる。
【0069】
更に、式(I)の化合物は心血管疾患に関して知られている危険因子重複(例えば高血圧および高トリグリセリド症)の治療および/または予防に使用することができる。代表的な態様では、式(I)の化合物をヒトの血中脂質濃度上昇の治療に使用する。
【0070】
式(I)の化合物、医薬的に許容されるその塩、溶媒和物、プロドラッグ、および/または複合体はそのままで使用してもよいが、医薬組成物の形態(式(I)の化合物(活性成分)は医薬的に許容される賦形剤、希釈剤、またはキャリアー(それらを組み合わせたものを含む)を伴う)で投与してもよい。
【0071】
本開示は治療的有効量の式(I)の化合物および医薬的に許容されるキャリアー、希釈剤、または賦形剤(それらを組み合わせたものを含む)を含有する医薬組成物にも関する。
【0072】
治療/医薬に使用するために許容されるキャリアー、希釈剤、および賦形剤は薬学分野で公知である。医薬キャリアー、賦形剤、および/または希釈剤(それらを組み合わせたものを含む)は、意図する投与経路および標準的な医薬実務に従って選択することができる。医薬組成物はキャリアー、賦形剤、もしくは希釈剤として、またはそれらに加えて、任意の好適な結合剤(単数または複数)、潤滑剤(単数または複数)、懸濁剤(単数または複数)、コーティング剤(単数または複数)、および可溶化剤(単数または複数)を含有してもよい。
【0073】
本開示の範囲内に含まれる医薬組成物は以下の1つまたはそれ以上を含んでもよい:保存剤、可溶化剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色料、香料、着臭剤、塩(本開示の化合物自体が医薬的に許容される塩の形態で提供されてもよい)、バッファー、コーティング剤、抗酸化剤、懸濁剤、佐剤、賦形剤、および希釈剤。
【0074】
少なくとも一つの態様では、本開示にかかる医薬組成物をヒトまたは動物への経口投与用に調剤することができる。医薬組成物は、活性成分が効率的に吸収および利用されうる他の経路、例えば静脈内、皮下、筋肉内、鼻腔内、直腸内、膣内、または局所投与用に調剤してもよい。
【0075】
本開示の少なくとも一つの態様では、医薬組成物をカプセルの形態に調製し、これは粉末またはサシェ剤となるマイクロカプセルであってもよい。カプセルに風味をつけてもよい。この態様には、カプセルおよびカプセルに封入された本開示にかかる脂肪酸組成物の両方に風味をつけたカプセルも含まれる。カプセルに風味をつけることにより、より使用者に好まれうる。上記の治療用途では、当然のことながら投与量は使用する化合物、投与方法、所望される治療、および適応する障害によって様々である。
【0076】
少なくとも一つの態様では、医薬組成物を10mgから10gの範囲の一日投与量となるように調剤することができる。代表的な態様では、医薬組成物を50mgから5gの範囲の一日投与量となるように調剤してもよい。別の代表的な態様では、医薬組成物を100mgから1gの範囲の一日投与量となるように調剤してもよい。一日投与量とは24時間当たりの投与量を意味する。当然のことながら、投与量は使用する化合物、投与方法、所望される治療、および適応する障害によって様々である。医師は個々の被験者に最も好適な実際の投与量を決定する。特定の患者に対する具体的な投与量および投与頻度は多様であり、種々の因子に依存するが、それらには以下がある:使用する式(I)の化合物の活性、化合物の代謝的安定性および作用持続時間、年齢、体重、全体的な健康状態、性別、食事、投与の方法および時間、排出速度、併用薬剤、特定の症状の重篤度、および個体が受けている治療。本開示の薬剤および/または医薬組成物を一日当たり1から10回(例えば一日1回または2回)投与してもよい。ヒト患者への経口および非経口投与では、薬剤の一日投与量を一回で投与してもよいし、複数回に分けて投与してもよい。
【0077】
本開示の別の態様は、式(I)の化合物を含有する脂肪酸組成物に関する。
【0078】
脂肪酸組成物は式(I)の化合物を60重量%から100重量%の範囲で含有することができる(全ての重量パーセンテージは脂肪酸組成物の総重量に基づくものである)。本開示の代表的な態様では、式(I)の化合物は脂肪酸組成物の少なくとも80重量%、例えば90重量%、95重量%で含有される。
【0079】
本開示にかかる脂肪酸組成物は、(all-Z オメガ3-)-6,9,12,15,18-ヘンエイコサペンタエン酸(HPA)またはその誘導体を少なくとも1重量%、または1重量%から4重量%の量で含有することができる。
【0080】
本開示にかかる脂肪酸は、20-、21-、または22-炭素原子を有するEPAおよびDHA以外のオメガ-3脂肪酸またはその誘導体を、少なくとも1.5重量%、または少なくとも3重量%の量で含有することができる。
【0081】
本開示の少なくとも一つの態様では、脂肪酸組成物は医薬組成物、栄養組成物、またはダイエット組成物である。脂肪酸組成物は有効量の医薬的に許容される抗酸化剤、例えばトコフェロールまたはトコフェロール混合物を更に含んでもよい。代表的な態様では、脂肪酸組成物は脂肪酸組成物の総量(g)当たり4mgまでの量のトコフェロールまたはトコフェロール混合物を更に含んでもよい。少なくとも一つの態様では、脂肪酸組成物は組成物の総重量に基づき、0.2mgから0.4mgの量のトコフェロールを含有する。
【0082】
本開示の別の観点では、医薬品および/または治療に使用するための式(I)の化合物を含有する脂肪酸組成物、または医薬的に許容されるその塩、溶媒和物、プロドラッグ、もしくは複合体を提供する。それらの脂肪酸組成物を用いて、式(I)の化合物に関して本明細書に概説したのと同じ症状を予防および/または治療してもよい。
【0083】
脂肪酸組成物を医薬品として使用する場合、治療的または医薬的に活性を示す量を投与することができる。
【0084】
ある態様では、脂肪酸組成物をヒトまたは動物に経口投与する。
【0085】
本開示はまた、以下を目的とする式(I)の化合物、医薬的に許容されるその塩、溶媒和物、プロドラッグ、および/または複合体の使用法を提供する:体重低減の管理および/もしくは体重増加の予防を目的とする医薬品の製造;肥満もしくは過体重状態の治療および/もしくは予防を目的とする医薬品の製造;糖尿病の予防および/もしくは治療を目的とする医薬品の製造;アミロイド関連疾患の治療および/もしくは予防を目的とする医薬品の製造;心血管疾患の危険因子重複(例えば高血圧と高トリグリセリド血症)の治療および予防を目的とする医薬品の製造;複数動脈のアテローム性硬化症に関係する卒中、脳虚血発作、もしくは一過性虚血発作の予防を目的とする医薬品の製造;血中トリグリセリドの低下および/もしくは血清HDLコレステロール濃度の増加を目的とする医薬品の製造;および/または、“メタボリック・シンドローム”と称されるマルチ・メタボリック・シンドロームの治療および/もしくは予防を目的とする医薬品の製造。これらの態様は全て、上記で概説した医薬品の製造を目的とする式(I)の化合物を含有する脂肪酸組成物の用途を包含することができる。
【0086】
本開示は体重低減の管理および体重増加の予防のための方法にも関し、この方法では、少なくとも一つの式(I)の化合物を含有する脂肪酸組成物をヒトまたは動物に投与する。
【0087】
別の態様では、本開示は、肥満または過体重状態の治療および/または予防のための方法であって、少なくとも一つの式(I)の化合物を含有する脂肪酸組成物をヒトまたは動物に投与する方法に関する。
【0088】
本開示の代表的な態様では、本開示は糖尿病の予防および/または治療のための方法で、少なくとも一つの式(I)の化合物を含有する脂肪酸組成物をヒトまたは動物に投与するものに関する。少なくとも一つの態様では、糖尿病は2型糖尿病である。
【0089】
式(I)の脂肪酸化合物はDHAから調製してもよい。出発物質が純粋なDHAでない(すなわち100% DHAでない)場合、最終脂肪酸組成物は前記で定義したDHA誘導体およびある量のDHA以外の他の脂肪酸の混合物を含有し、ここで、これらの脂肪酸は新規の式(I)の脂肪酸化合物と同様に、すなわちα位で置換されている。それらの態様も本明細書に含まれる。
【0090】
本開示の別の態様では、式(I)の化合物を(all-Z)-4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸(DHA)から調製し、ここでDHAは植物、微生物、および/または動物供与源から得る。少なくとも一つの態様では、DHAは水産油脂、例えば魚油から得る。
【0091】
組成物中の脂肪酸は植物、微生物、もしくは動物供与源、またはそれらを組み合わせたものから得ることができる。従って、本開示は微生物油から調製した脂肪酸組成物を包含する。
【0092】
本開示は新規の式(I)の脂肪酸化合物を調製する工程を提供する。
【0093】
DHAは生物供与源、例えば水産油脂、微生物油脂、または植物油脂から生成される。可能な原料として、DHAが脂肪酸の一部しか占めていないトリグリセリド型脂肪酸の混合物がある。典型的なDHA濃度は微生物油脂で40%、水産油脂で10-25%である。DHA含有植物油脂は開発中であり、高濃度のDHAを含有する油脂が将来期待されている。
【0094】
工程の第1段階は、トリグリセリドの遊離脂肪酸またはモノエステルへの変換を含む。代表的なエステルにはメチルまたはエチルエステルがあるが、他のエステルも可能である。こうして、トリグリセリドとして結合していた脂肪酸が互いに分離される。DHAを他の脂肪酸から分離するいくつかの方法が知られている。最も一般的なものには、ショートパス蒸留(揮発によって脂肪酸を分離する)および尿素沈殿(不飽和度によって脂肪酸を分離する)がある。報告されている他の方法には硝酸銀錯体形成(不飽和度によって脂肪酸を分離する)、脂肪酸選択性リパーゼによって触媒されるエステル化反応をショートパス蒸留と併用するもの、および超臨界二酸化炭素を用いる向流抽出がある。
【0095】
純粋なDHAの生成に関係する課題は、利用できるDHA供与源中に含有される他のC20-22多価不飽和脂肪酸からDHAを分離することである。これらの他の脂肪酸はDHAと非常に類似した特性を有するため、上記の方法では分離が不十分でありうる。ある種のDHA含有微生物油脂では、C20-22多価不飽和脂肪酸の濃度が非常に低く、ショートパス蒸留のみ、または上述した他の方法との併用で、90%を越える純度が得られうる。
【0096】
ほとんどのDHA含有油脂は無視できない量のC20-22多価不飽和脂肪酸(例えばEPA(20:5n-3)、n-3 DPA(22:5n-3)、HPA(21:5n-3)など)も含有する。DHAをそれらの脂肪酸から分離するのに利用できる方法は分離用高速液体クロマトグラフィー(HPLC)であり、固定相はシリカゲルまたは硝酸銀含浸シリカゲルであり、移動相は有機溶媒または超臨界二酸化炭素から選択される。この方法では、97%を越える純度のDHAが得られうる。しかしながら、生成コストは濃度と共に上昇することに留意すべきである。例えば97% DHAの生成コストは90% DHAより5倍以上高い。
【0097】
純度が90%、95%、および97%のDHAは他の脂肪酸を少量含有する。例えば純度97%のDHAはn-3 DPA(22:5n-3)を含有するが、長鎖脂肪酸、例えばEPA(20:5n-3)、HPA(21:5n-3)なども含有する。しかしながら、他の脂肪酸はDHAと同様に反応し、α置換型誘導体を生成する。
【0098】
最初の二重結合と共に環化されてγラクトンを生成できることが知られている脂肪酸はDHAおよびn-6 DPA(および通常は極低濃度で含有される22:5n-6)だけであるため、有機合成をもって精製法としてもよい。ラクトン化の後に精製を行い加水分解によって再びDHAとすることも可能であるが、この経路はHPLCよりも更に多くの費用を必要とする。
【0099】
ある態様では、R1(またはR2)が水素である式(I)の化合物を以下の工程(スキーム1)によって調製する。これらの工程を、R1およびR2がいずれも、例えばC1-C7アルキル基、ベンジル、ハロゲン、アルケニル、またはアルキニルである、式(I)の化合物の調製に適宜使用することができる。
【0100】
R1が水素でありR2がC1-C7アルキル基、ベンジル、ハロゲン、アルケニル、アルキニルである式(I)の化合物の調製は、-60℃から-78℃の温度において、溶媒(例えばテトラヒドロフランまたはジエチルエーテル)中でDHAエステルを強い非求核性塩基(例えばリチウムジイソプロピルアミンまたはヘキサメチルジシラザンカリウム/ナトリウム)と反応させ、エステルエノラートを生成させることによって行う(工程1)。
【化11】

【0101】
このエステルエノラートを求電子試薬、例えばハロゲン化アルキル(例えばヨウ化エチル、塩化ベンジル)、ハロゲン化アシル(例えば塩化アセチル、臭化ベンゾイル)、カルボン酸無水物(例えば無水酢酸)、また求電子的ハロゲン化剤(例えばN-フルオロベンゼンスルホンイミド(NFSI))と反応させ、モノ置換型誘導体を生成させる(工程2)。15℃から40℃の温度で塩基(例えば水に混合した水酸化リチウム/ナトリウム)を添加することにより、エタノールまたはメタノールのような溶媒中でエステルを更に加水分解してカルボン酸誘導体とする。
【0102】
DHA EEを強塩基で処理するとDHA EEのクライゼン縮合が起こる。この縮合産物は興味深い生体活性を有しうる。従って、本開示のある態様では、上記の縮合(中間)産物、並びに本開示にかかる疾患の治療および/または予防を目的とするこの産物の用途について開示する。
【0103】
更なる態様では、式(I)の化合物を以下の工程によって合成する(スキーム2)。
【化12】

【0104】
R1が水素であり、R2がヒドロキシ、アルコキシ基、アシルオキシである式(I)の化合物の調製は、-60℃から-78℃の温度において、溶媒(例えばテトラヒドロフランまたはジエチルエーテル)中でDHAエステルを強い非求核性塩基(例えばリチウムジイソプロピルアミンまたはヘキサメチルジシラザンカリウム/ナトリウム)と反応させ、エステルエノラートを生成させることによって行う(工程4)。このエステルエノラートを種々の添加物(例えばトリメチルホスファイト)または種々の触媒(例えばNi(II)複合体)と共に酸素供与源、例えばジメチルジオキシラン、2-(フェニルスルホニル)-3-フェニルオキサジリジン、酸素分子と反応させることによってαヒドロキシDHAエステルを生成させる(工程5)。THFまたはDMFのような溶媒中で第2級アルコールを水素化ナトリウムのような塩基と反応させてアルコキシドを生成し、これを種々の求電子試薬、例えばヨウ化アルキル(例えばヨウ化メチル、ヨウ化エチル、臭化ベンジル)またはハロゲン化アシル(例えば塩化アセチルまたは臭化ベンゾイル)と反応させる(工程6)。15℃から40℃の温度で塩基(例えば水に混合した水酸化リチウム/ナトリウム)を添加することにより、エタノールまたはメタノールのような溶媒中でエステルを加水分解してカルボン酸誘導体とする(工程7)。
【0105】
ヒドロキシ-DHAエステルは本開示にかかるα位における他の官能基の導入に有用な中間体である。ヒドロキシル基をハロゲン化物またはトシレートに変換することによって活性化した後、種々の求核試薬(例えばアンモニア、アミン、およびチオール)と反応させることができる。光延反応もヒドロキシル基を他の官能基に変換するのに有用である(Mitsunobu, O. Synthesis (1981) 1-28)。
【0106】
式(I)の化合物に代表される化合物は、前記の種々の工程を組み合わせて合成することができる。本開示は上記の工程を包含する。
【0107】
本開示は更に医薬組成物を調製する工程を提供し、工程は、少なくとも一つの式(I)の化合物または医薬的に許容されるその塩、溶媒和物、複合体、もしくはプロドラッグを少なくとも一つの医薬的に許容される賦形剤、希釈剤、またはキャリアーと混合することを含む。
【0108】
前記のような式(I)の化合物のラセミ体を分割して鏡像異性的に純粋な化合物を調製することができる。式(I)の化合物の分割は既知の分割法を用いて、例えば式(I)の化合物を鏡像異性的に純粋な補助剤と反応させてジアステレオマーの混合物とし、これをクロマトグラフィーで分離することによって行うことができる。その後、慣例的な方法(例えば加水分解)によって分離したジアステレオマーから式(I)の化合物の二つの鏡像異性体を再生することができる。
【0109】
化学量論的キラル補助剤を用いて、DHAのα位に前記のような置換基を非対称に導入することも可能である。キラルなオキサゾリジン-2-オンの使用は特に有効な方法であることが証明されている。キラルなN-アシルオキサゾリジンから誘導されたエノラートは、立体化学的に高度に制御された状態で、種々の求電子試薬でクエンチングすることができる(Ager, D. J.ら Chem. Rev. (1996) 96:835-876)。
【実施例】
【0110】
以下の実施例により本開示について更に詳細に記述するが、これは本開示の制限として記載するものではない。実施例において構造は質量分析法(MS)によって確認した。認識されるように、脂肪酸化合物はDHAを低濃度または中濃度含有する出発物質(すなわち約40-60重量% DHA)から生成することができる。
【0111】
2位に脂肪酸を有するモノグリセリドを調製するためのいくつかの一般的な合成法がある。一つは1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)および4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)の存在下で脂肪酸をグリシドールでエステル化反応し、グリシジル誘導体を生成することを利用する。トランスエステル化の前にグリシジル誘導体を無水トリフルオロ酢酸(TFAA)で処理し、モノグリセリドを生成する(Parkkariら, Bioorg. Med. Chem. Lett. (2006) 2437)。
【化13】

【0112】
脂肪酸誘導体のモノ-、ジ-、およびトリ-グリセリドを調製するための更なる方法は国際特許出願PCT/FR02/02831号に報告されている。
【0113】
酵素法(リパーゼ反応)を使用して脂肪酸をモノ-、ジ-、またはトリ-グリセリドに変換することも可能である。真菌ムコール・ミエヘイ(Mucor miehei)由来の1,3-部位特異的リパーゼを使用して多価不飽和脂肪酸およびグリセロールからトリグリセリドまたはジグリセリドを生成することもできる。これとは別のリパーゼ、カンジダ・アンタークティカ(Candida antartica)由来の非部位特異的酵母リパーゼは多価不飽和脂肪酸からトリグリセリドを生成するのに非常に効率がよい(Haraldsson, Pharmazie (2000) 3)。
【0114】
合成プロトコル
式(I)の化合物の前駆体、例えば遊離脂肪酸および/またはエチルエステル誘導体はWO2006/117664号に報告されているようにして調製できる。
【0115】
αエチルDHA EE(PRB-2)の調製
N2下、0℃で、乾燥THF(750ml)に混合したジイソプロピルアミン(111ml、0.78mol)の撹拌溶液にブチルリチウム(440ml、0.67mol、1.6M/ヘキサン)を滴加した。得られた溶液を-78℃で45分間撹拌した後、乾燥THF(1.6 l)に混合したDHA EE(200g、0.56mol)を滴加した。エステルの添加は4時間で完了した。濃緑色の溶液を-78℃で30分間撹拌した後、EtI(65ml、0.81mol)を添加した。溶液を-40℃に達するまで放置し、更なる量のEtI(5ml、0.06mol)を添加し、最終的に-15℃に達した後(-78℃から3時間)、混合液を水に注入し、ヘキサンで2回抽出した。合一した有機層を1M HCl、水で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、ろ過し、真空エバポレートした。生成物をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、ヘプタン/EtOAc(99:1、その後50:1)で溶出して標記化合物の黄色油状物質42.2g(20%)を得た;
1H-NMR (200 MHz; CDCl3) ( 0.8-1.0 (m, 6H), 1.2-1.4 (m, 411), 1.5-1.7 (m, 2H), 2.12 (m, 2H), 2.3-2.5 (m, 2H), 2.8-3.0 (m, 10H), 4.18 (t, J 7.1 Hz, 211), 5.3-5.6 (m, 12H);
MS(エレクトロスプレー);407[M+Na]。
【0116】
PRB-2 MGの調製
PRB-A
【化14】

PRB-2 FA((all-z)4,7,10,13,16,19-2-エチルドコサヘキサエン酸)(5.081g、14.25mmol)、グリシドール(0.63ml、9.5mmol)、N-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(2.745g、14.3mmol)、およびDMAP(1.752g、14.3mmol)をCH2Cl2に混合した溶液60mlをN2雰囲気下、室温で113時間撹拌した後、真空エバポレートした。シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーを行い、ヘプタン:EtOAc(95:5)で溶出して所望産物の黄色液体1.396g(36%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) d 0.89 (t, J=7.5 Hz, 3H), 0.95 (t, J=7.6 Hz, 3H), 1.55-1.64 (m, 2H), 2.05 (quint, J=7.4 Hz, 2H), 2.25-2.37 (m, 3H), 2.60-2.63 (m, 1H), 2.77-2.84 (m, 11H), 3.15-3.19 (m, 1H), 3.89 (ddd, J=12.3 Hz, 6.3 Hz, 3.8 Hz, 1H), 4.39 (dd, J=12.3 Hz, 3.1 Hz, 1H), 5.27-5.42 (m, 12H)。
13C NMR (75 MHz, CDCl3) d 11.7, 14.3, 20.5, 24.8, 24.9, 25.5, 25.6 (2 C), 29.47, 29.53, 44.6, 47.07, 49.4, 64.6, 64.7, 126.5, 127.0, 127.8, 128.01, 128.04, 128.08, 128.18, 128.21, 128.5, 129.9, 132.0, 175.3
MS(エレクトロスプレー);435 [M+Na]+
【0117】
PRB-B
【化15】

PRB-A(1.368g、3.31mmol)を乾燥CH2Cl2に混合した溶液15mlをN2雰囲気下で-20℃まで冷却した後、無水トリフルオロ酢酸(TFAA)(1.85ml、13.3mmol)を乾燥CH2Cl2に混合した溶液15mlを部分量ずつ添加した。冷却槽を除去し、混合液を1時間撹拌した。溶媒および未反応のTFAAを真空エバポレートし、残渣をトルエン30mlに溶解し、シリカゲル充填剤(30g)を通過させ、トルエン700mlで溶出した。真空エバポレーションにより、1.21g(59%)の粗1,3-ビス(トリフルオロアセチル)-2-PRB-2を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) d 0.87 (t, J=7.4 Hz, 3H), 0.95 (t, J=7.5 Hz, 3H), 1.60 (m, 2H), 2.05 (quint, J=7.3 Hz, 2H), 2.21-2.38 (m, 3H), 2.79-2.83 (m, 10H), 4.39-4.48 (m, 2H), 4.56-4.63 (m, 2H), 5.29-5.42 (m, 13H)
13C NMR (75 MHz, CDCl3) d 11.5, 14.2, 20.5, 24.8, 25.5, 25.6 (2 C), 29.4, 47.0, 64.8, 66.9, 125.9, 127.0, 127.76, 127.83, 128.0, 128.3, 128.4, 128.6, 130.3, 132.0, 174.6(残念ながらスキャンが不十分でCOCF3のシグナルは確認できなかった)。
【0118】
PRB-2 MG
【化16】

PRB-Bをペンタン/CH2Cl2(2:1)に混合した溶液20mlをN2雰囲気下で-20℃まで冷却した後、ピリジン(1.6ml、19.8mmol)およびMeOH(1.2ml、29.6mmol)を滴加した。冷却槽を除去し、混合液を4時間撹拌した後、真空エバポレートした。シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーにより、ヘプタン-ヘプタン:EtOAc(1:1)で溶出してPRB-2 MGの淡黄色油状物質670mg(80%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) d 0.90 (t, J=7.4 Hz, 3H), 0.92 (t, J=7.5 Hz, 3H), 1.50-1.70 (m, 2H), 2.05 (quint., J=7.3 Hz, 2H), 2.19-2.31 (m, 3H), 2.32-2.43 (m, 2H), 2.74-2.87 (m, 10 H), 3.77 (m, 4H), 4.91 (m, 1H), 5.11-5.46 (m, 12H)
13C NMR (75 MHz, CDCl3) d 11.7, 14.2, 20.5, 25.0, 25.5, 25.6 (2C), 29.7, 47.3, 62.2, 75.0, 126.6, 126.9, 127.8, 128.0, 128.2, 128.3, 128.5, 130.0, 132.0, 175.9 (5シグナルは不明瞭)
MS(エレクトロスプレー);453 [M+Na]+
HPLC;98 %
【0119】
実施例1:インビボにおける脂質代謝に対する効果の証明
PRB-2 MGを含有する代表的な組成物を下記のように動物モデルで試験した。3-チア脂肪酸、例えばテトラデシルチオ酢酸(TTA)は動物モデルにおいて血清トリグリセリド、コレステロール、および遊離脂肪酸濃度を低下させることが知られているため(Journal of Lipid Research, 1999, 2099)、この物質を動物実験のポジティブ・コントロールとして使用した。
【0120】
マウス
メスのヘテロ接合体APOE*3 Leidenを使用し、実験中はクリーンコンベンショナル動物飼育室(相対湿度50-60%、室温約21℃、照明周期7am-7pm)においてマクロロン(macrolon)ケージ内で飼育した。個々の動物は耳パンチ穴によって識別した。マウスには飼料および酸性化水道水を不断給餌した。
【0121】
食餌
マウスにはNishinaら(J Lipid Res 1990;31:859)に記載される半合成改変型西洋型飼料(WTD)(コレステロール(最終濃度0.25重量%)および15%カカオ脂含有)を給餌した。
【0122】
薬剤投与
0.3mmol/kg体重/日のPRB-2 MGおよびTTAを西洋型飼料に混合して経口投与した。凍結乾燥した飼料塊を真空袋に入れ、警報機付きの-20℃冷凍室において暗所保存した。マウス・ケージ上の飼料は週に2回交換した。
【0123】
実験計画
APOE*3 Leidenマウスに半合成西洋型飼料を給餌した。4週間の導入期間後、応答性の低いマウスを実験から除去し、残りのマウスを血漿コレステロール、トリグリセリド、遊離脂肪酸、および年齢に合わせて10検体ずつの亜群に分けた(t=0)。
【0124】
4週間後(t=0)、体重および摂食量を測定し、4時間の絶食後に血液サンプルを採取し、血漿コレステロールおよびトリグリセリド、そしてリポタンパク質プロフィールを確認した。4週間後、全ての動物をと殺した。結果を図1および2に示す。これらの結果から明らかなように、本開示の代表的な化合物は、ポジティブ・コントロールであるTTAでの効果より良好な脂質低下効果を示した。リポタンパク質プロフィールから、脂質低下効果が非HDL粒子に関係していることは明らかである。
【0125】
ApoEマウスのデータをトリグリセリドおよびコレステロールについてそれぞれ図1および2に示す。
【0126】
実施例2:インビトロにおけるPPAR活性化の評価
方法
レポーターを恒常発現する3つの株化細胞、PPARα、PPARδ、またはPPARγ(それぞれ、酵母転写活性化因子GAL4 DNA結合ドメイン(DBD)に融合させたヒトPPARα、ヒトPPARδ、またはヒトPPARγのリガンド結合ドメイン(LBD)を含有するキメラタンパク質を発現する)でインビトロアッセイを行った。
【0127】
ルシフェラーゼ(Luc)レポーター遺伝子はβグロビンプロモーターの前にあるGAL4認識配列五量体によって誘導される。GAL4-PPARα、GAL4-PPARδ、およびGAL4-PPARγキメラレポーターを使用することにより、内因性受容体由来のバックグラウンド活性を除去し、同じレポーター遺伝子で3つのPPARサブタイプにわたる相対活性を定量することが可能となる。
【0128】
既知の対照薬剤(PPARαでは1μM GW7647、PPARδでは1μM L-165041、PPARγでは1μM BRL49653)およびネガティブ・コントロール(0.1% DMSO)との比較により、PRB-2 MG(10μM)のPPAR活性を測定した。結果はポジティブ・コントロール(100%とした)と比較した活性パーセンテージで表す。
【0129】
PPAR活性化データを図3に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化17】

(式中、RlおよびR2は同一であるかまたは異なり、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アミノ基、およびアルキルアミノ基から選択される);
の化合物、および医薬的に許容されるその塩、溶媒和物、複合体、またはプロドラッグ。
【請求項2】
アルキル基がメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、n-ヘキシル、およびベンジルから選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
アルコシキ基がメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、sec-ブトキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、OCH2CF3、およびOCH2CH2OCH3から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
RlおよびR2がアルキル基から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
RlおよびR2がC1-C7アルキル基およびC1-C7アルコキシ基から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
C1-C7アルキル基がメチル、エチル、およびプロピルから選択され;C1-C7アルコキシ基がメトキシおよびエトキシから選択される、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
RlおよびR2が異なる、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
化合物がラセミ体である、請求項7記載の化合物。
【請求項9】
化合物がそのR立体異性体である、請求項7記載の化合物。
【請求項10】
化合物がそのS立体異性体である、請求項7記載の化合物。
【請求項11】
RlおよびR2の一方がC1-C7アルキル基およびC1-C7アルコキシ基から選択され、他方が水素原子である、請求項1記載の化合物。
【請求項12】
RlおよびR2の一方がメチル、エチル、およびプロピルから選択される、請求項11記載の化合物。
【請求項13】
RlおよびR2の一方がメトキシ、エトキシ、およびプロポキシから選択される、請求項11記載の化合物。
【請求項14】
アルキル基がエチルであり、式(Ia)の化合物:
【化18】

である、請求項11記載の化合物。
【請求項15】
化合物がラセミ体である、請求項14記載の化合物。
【請求項16】
化合物がそのR立体異性体である、請求項14記載の化合物。
【請求項17】
化合物がそのS立体異性体である、請求項14記載の化合物。
【請求項18】
医薬品として使用するための、請求項1から17のいずれかに記載される化合物。
【請求項19】
請求項1記載の化合物を製造する方法。
【請求項20】
化合物が(all-Z)-4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸(DHA)から調製される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
DHAが水産油脂由来である、請求項19記載の方法。
【請求項22】
請求項1記載の化合物を含有する医薬組成物。
【請求項23】
式(Ia)の化合物:
【化19】

を含有する医薬組成物。
【請求項24】
医薬的に許容されるキャリアーを更に含有する、請求項22または23記載の医薬組成物。
【請求項25】
該医薬組成物は経口投与用に調製されている、請求項24記載の医薬組成物。
【請求項26】
該医薬組成物がカプセル剤、錠剤、およびサシェ剤から選択される形態である、請求項25記載の医薬組成物。
【請求項27】
化合物の一日投与量が10mgから10gの範囲となるように調製されている、請求項22から26のいずれかに記載される医薬組成物。
【請求項28】
化合物の一日投与量が100mgから1gの範囲になるように調製されている、請求項27記載の医薬組成物。
【請求項29】
末梢インスリン抵抗性および/または糖尿病状態の治療および/または予防を目的とする医薬品を製造するための、請求項1から17のいずれかに記載される化合物の使用。
【請求項30】
血漿インスリン、血中グルコース、および/または血清トリグリセリドの低下と目的とする医薬品を製造するための、請求項1から17のいずれかに記載される化合物の使用。
【請求項31】
2型糖尿病の治療および/または予防を目的とする医薬品を製造するための、請求項1から17のいずれかに記載される化合物の使用。
【請求項32】
トリグリセリド濃度および/または非HDLコレステロール、LDLコレステロール、およびVLDLコレステロール濃度の上昇の予防および/または治療を目的とする医薬品を製造するための、請求項1から17のいずれかに記載される化合物の使用。
【請求項33】
高脂質血症症状の予防および/または治療を目的とする医薬品の製造のための、請求項1から17のいずれかに記載される化合物の使用。
【請求項34】
高脂質血症症状が高トリグリセリド血症(HTG)である、請求項33記載の使用。
【請求項35】
肥満または過体重状態の治療および/または予防を目的とする医薬品の製造のための、請求項1から17のいずれかに記載される化合物の使用。
【請求項36】
体重の低減および/または体重増加の予防を目的とする医薬品の製造のための、請求項1から17のいずれかに記載される化合物の使用。
【請求項37】
インスリン抵抗性、高脂質血症、および/または肥満もしくは過体重状態の治療を目的とする医薬品の製造のための、請求項1から17のいずれかに記載される化合物の使用。
【請求項38】
炎症性疾患または症状の治療および/または予防を目的とする医薬品の製造のための、請求項1から17のいずれかに記載される化合物の使用。
【請求項39】
医薬的有効量の請求項1から17のいずれかに記載される化合物をヒトまたは動物に投与する、末梢インスリン抵抗性および/または糖尿病症状の治療および/または予防のための方法。
【請求項40】
医薬的有効量の請求項1から17のいずれかに記載される化合物をヒトまたは動物に投与する、血漿インスリン、血中グルコース、および/または血清トリグリセリドを低下させるための方法。
【請求項41】
医薬的有効量の請求項1から17のいずれかに記載される化合物をヒトまたは動物に投与する、2型糖尿病の治療および/または予防のための方法。
【請求項42】
医薬的有効量の請求項1から17のいずれかに記載される化合物をヒトまたは動物に投与する、トリグリセリド濃度、および/または非HDLコレステロール、LDLコレステロール、およびVLDLコレステロール濃度上昇の予防および/または治療のための方法。
【請求項43】
医薬的有効量の請求項1から17のいずれかに記載される化合物をヒトまたは動物に投与する、高脂血症症状の予防および/または治療のための方法。
【請求項44】
高脂血症症状が高トリグリセリド血症(HTG)である、請求項43記載の方法。
【請求項45】
医薬的有効量の請求項1から17のいずれかに記載される化合物をヒトまたは動物に投与する、肥満または過体重状態の治療および/または予防のための方法。
【請求項46】
医薬的有効量の請求項1から17のいずれかに記載される化合物をヒトまたは動物に投与する、体重の低減および/または体重増加の予防のための方法。
【請求項47】
医薬的有効量の請求項1から17のいずれかに記載される化合物をヒトまたは動物に投与する、インスリン抵抗性、高脂血症、および/または肥満もしくは過体重状態の治療のための方法。
【請求項48】
医薬的有効量の請求項1から17のいずれかに記載される化合物をヒトまたは動物に投与する、炎症性疾患または症状の治療および/または予防のための方法。
【請求項49】
化合物を経口投与する、請求項39から48のいずれかに記載される方法。
【請求項50】
式(Ia):
【化20】

の化合物の調製法であって、
a)カップリング試薬の存在下で(all-Z)-4,7,10,13,16,19-2-エチルドコサヘキサエン酸をグリシドールと反応させること;
b)段階a)の生成物を無水トリフルオロ酢酸と反応させ;
c)段階b)の生成物をピリジンと反応させ;
d)段階c)の生成物を単離し、必要により精製する;
の各工程を含む上記方法。
【請求項51】
段階a)、b)、またはc)のいずれかの生成物を必要により単離および/または精製する、請求項50記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−502113(P2011−502113A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530588(P2010−530588)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際出願番号】PCT/IB2008/003666
【国際公開番号】WO2009/056983
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(509123471)プロノヴァ バイオファーマ ノルゲ アーエス (5)
【Fターム(参考)】