説明

新規インダゾール誘導体またはその塩およびその製造中間体、ならびに、それを用いた抗酸化剤

【課題】新規の抗酸化剤、その作用効果を有する新規化合物およびその製造中間体を提供すること。
【解決手段】式(1)で表される化合物またはその塩およびその製造中間体を創製、該化合物は、ラット肝ミクロソームを使用したミクロソーム脂質過酸化測定系において、優れた抗酸化作用を示した。よって、該化合物またはその塩は、抗酸化剤として有用である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規インダゾール誘導体またはその塩、ならびにその製造中間体に関する。また本発明は、このインダゾール誘導体またはその塩の少なくとも一つを有効成分として含有する、抗酸化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体内での過酸化脂質の生成とそれに付随したラジカル反応が、膜障害や細胞障害などを介して、生体に種々の悪影響を及ぼすことが明らかになってきている。それに伴い、抗酸化剤や過酸化脂質生成抑制剤の医薬への応用が種々試みられ、多くの抗酸化剤についての研究がなされている。
【0003】
たとえば、代表的な抗酸化剤として、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどが食品や化粧品に使用されている。また、活性酸素を酸素分子と過酸化水素分子にする酵素であるSOD(スーパーオキシド ディスムターゼ)なども抗酸化剤として、よく知られている。さらに、エダラボンは、その抗酸化作用により脳梗塞後の梗塞部位拡大を防ぐ治療薬として使用され、また高脂血症の治療薬であるプロブコールなどがLDL(低密度リポタンパク質)の酸化を抑制し、動脈硬化抑制作用を有することなども知られている。しかしながら、作用が弱かったり、副作用があったり、実用的に必ずしも満足できるものは多くない。
【0004】
一方、欧州特許出願公開第1679308号明細書(特許文献1)には、下記式(1)で示される化合物を包含する一般式で表わされる化合物群が記載されている。また、特許文献1には、それらの化合物群がRhoキナーゼ阻害作用を有し、緑内障などの治療剤として有用であることが開示されている。また欧州特許出願公開第1870099号明細書(特許文献2)には、下記式(1)で示される化合物を包含する一般式で表わされる化合物群を有効成分とする網膜神経細胞保護剤が記載されている。
【0005】
【化1】

【0006】
しかしながら、これら特許文献1、2には、上記式(1)で示される化合物自体の開示はなく、また、上記式(1)で示される化合物の抗酸化剤としての用途について記載、示唆されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1679308号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1870099号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
新規の抗酸化剤を見出すこと、また、その作用効果を有する新規化合物またはその塩、並びにそれらの新規化合物の製造中間体を創製することは非常に興味深い課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、新規の抗酸化剤を見出す為に鋭意研究を行なった結果、上記式(1)で表される新規インダゾール誘導体またはその塩の創製に成功し、それらの新規化合物が、ラット肝ミクロソームを用いたミクロソーム脂質過酸化測定系において、優れた抗酸化作用を有することを見出した。すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0010】
本発明は、下記式(1)で表される化合物またはその塩の少なくとも一つを有効成分として含有する抗酸化剤である。以下、下記式(1)で表される化合物またはその塩を「本発明化合物(1)」と呼称する。
【0011】
【化2】

【0012】
本発明はまた、本発明化合物(1)自体についても提供する。
本発明はさらに、下記式(2)で表される化合物またはその塩についても提供する。以下、上記本発明化合物(1)の製造中間体である下記式(2)で表わされる化合物またはその塩を「本発明化合物(2)」と呼称し、また、本発明化合物(1)、本発明化合物(2)を「本発明化合物」と総称する。
【0013】
【化3】

【0014】
(式中、Bocは、tert−ブトキシカルボニル基を示し、THPは、テトラヒドロピラニル基を示す。)
【発明の効果】
【0015】
本発明化合物(1)は、ラット肝ミクロソームを用いたミクロソーム脂質過酸化測定系において、優れた抗酸化作用を示した。すなわち、本発明化合物(1)は、抗酸化剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明化合物(1)は、下記式(1)で示されるインダゾール誘導体である、1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミンおよびその塩であり、本発明化合物(2)は、下記式(2)で示される本発明化合物(1)の製造中間体である1−{6−[4−シクロプロピル−1−(テトラヒドロピラン−2−イル)−1H−インダゾール−5−イル]ピリジン−3−イル}−1−エチルプロピルカルバミン酸 tert−ブチルエステルおよびその塩である。
【0017】
【化4】

【0018】
【化5】

【0019】
本発明化合物における「塩」とは、医薬的に許容される塩であることが好ましく、たとえば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などの無機酸との塩、酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、マロン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸(D体、L体、メソ体)、アジピン酸、グルコン酸、グルコヘプト酸、グルクロン酸、安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、乳酸、馬尿酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、1,2−エタンジスルホン酸、イセチオン酸、ラクトビオン酸、オレイン酸、パモ酸、ポリガラクツロン酸、ステアリン酸、タンニン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、硫酸ラウリルエステル、硫酸メチル、ナフタレンスルホン酸、スルホサリチル酸などの有機酸との塩、リチウム、カリウムなどのアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属との塩、アンモニアなどの四級アンモニウムとの塩などが挙げられる。好ましくは、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸(D体、L体、メソ体)、メタンスルホン酸との塩が、特に好ましくは、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸(L体)、メタンスルホン酸が挙げられる。また、本発明化合物(1)は、無機酸、有機酸、アルカリ金属、または、アルカリ土類金属などと、任意の割合の塩を形成することができ、その各々、または、それらの混合物は、本発明に包含される。
【0020】
なお、本発明化合物に水和物および/または溶媒和物が存在する場合は、それらの水和物および/または溶媒和物も本発明化合物の範囲に含まれる。
【0021】
本発明化合物に結晶多形および結晶多形群(結晶多形システム)が存在する場合には、それらの結晶多形体および結晶多形群(結晶多形システム)も本発明化合物の範囲に含まれる。ここで、結晶多形群(結晶多形システム)とは、それら結晶の製造、晶出、保存などの条件および状態(なお、本状態には製剤化した状態も含む)により、結晶形が種々変化する場合の各段階における結晶形およびその過程全体を意味する。
【0022】
本発明化合物の好ましい具体例として、以下の化合物またはその塩を挙げることができる。
【0023】
・1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン、
・1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン 塩酸塩(以下、「化合物A」ともいう)、
・1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン 臭化水素酸塩、
・1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン 硫酸塩、
・1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン リン酸塩、
・1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン フマル酸塩、
・1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン マレイン酸塩、
・1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン コハク酸塩、
・1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン L−酒石酸塩、
・1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン メタンスルホン酸塩、
・1−{6−[4−シクロプロピル−1−(テトラヒドロピラン−2−イル)−1H−インダゾール−5−イル]ピリジン−3−イル}−1−エチルプロピルカルバミン酸 tert−ブチルエステル。
【0024】
本発明化合物のさらに好ましい具体例として、以下の化合物またはその塩を挙げることができる。
【0025】
・1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン、
・1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン 1塩酸塩、
・1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン 2塩酸塩、
・1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン 3塩酸塩、
・1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン 1臭化水素酸塩、
・1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン 2臭化水素酸塩、
・1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン 3臭化水素酸塩、
・1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン 1硫酸塩、
・1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン 1リン酸塩、
・1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン 0.5フマル酸塩、
・1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン 1フマル酸塩、
・1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン 1.5フマル酸塩、
・1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン 0.5マレイン酸塩、
・1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン 1マレイン酸塩、
・1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン 1.5マレイン酸塩、
・1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン 0.5コハク酸塩、
・1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン 1コハク酸塩、
・1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン 1.5コハク酸塩、
・1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン 0.5L−酒石酸塩、
・1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン 1L−酒石酸塩、
・1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン 1.5L−酒石酸塩、
・1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン 1メタンスルホン酸塩、
・1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン 2メタンスルホン酸塩、
・1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン 3メタンスルホン酸塩、
・1−{6−[4−シクロプロピル−1−(テトラヒドロピラン−2−イル)−1H−インダゾール−5−イル]ピリジン−3−イル}−1−エチルプロピルカルバミン酸 tert−ブチルエステル。
【0026】
なお、本発明化合物の具体的な製造方法については、後述の実施例[製造例]の項で詳細に説明するが、代表的な製造方法としては、国際公開第2007/142323号に記載の方法により、本発明化合物(2)を製造した後に、該化合物を汎用される方法で脱保護および/または、それと同時および/または引き続き塩とすることで、本発明化合物(1)を製造することができる。
【0027】
その詳細については、後述の[薬理試験]の項で説明するが、本発明化合物(1)は、ラット肝ミクロソームを用いたミクロソーム脂質過酸化測定系において、優れた抗酸化作用を示した。すなわち、本発明化合物(1)は、抗酸化剤として有用である。
【0028】
本発明の抗酸化剤の用途は、医薬に限らず、化粧品、食品、工業製品など(塗料など)への利用も可能である。好ましくは医薬として、より好ましくは抗酸化剤が有効とされる疾患の予防または治療に有用な医薬として、特に好ましくは、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、不整脈、慢性腎不全、腎炎、高血圧、高脂血症などの循環器系疾患;脳出血、脳梗塞、くも膜下出血、虚血性再還流障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、痴呆症などの脳・神経系疾患;胃潰瘍、炎症性腸疾患、逆流性食道炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、糖尿病、膵炎、肝炎、肝硬変、非アルコール性脂肪性肝炎などの消化器系疾患;肺炎、肺気腫、肺線維症、慢性閉塞性肺疾患、喘息などの呼吸器系疾患;膠原病、リウマチ、ベーチェット病、敗血症などの炎症・自己免疫疾患;アトピー性皮膚炎、皮膚炎症、乾癬、火傷などの皮膚疾患;ヘルペス感染、AIDSなどの感染症;癌;アドリアマイシン誘発心臓毒性などの抗癌治療;角膜炎、結膜炎、強膜炎、眼瞼炎などの眼炎症疾患;ドライアイ;翼状片;白内障;眼精疲労などの酸化ストレス性の眼疾患;加齢黄斑変性、加齢黄斑浮腫(萎縮型、滲出型)、糖尿病性網膜症などの網膜疾患;緑内障の予防または治療に有用な医薬として有用である。
【0029】
また、本発明の抗酸化剤は、必要に応じて、他の活性成分および/または添加剤(好ましくは医薬的に許容される他の活性成分および/または添加剤)を加えて、単独製剤および/または配合製剤として、汎用される技術を用いて製剤化することができる。
【0030】
本発明の抗酸化剤は、抗酸化剤が有効とされる疾患の予防または治療に適用される場合には、患者に対して経口的または非経口的に投与することができ、投与形態としては、経口投与、眼への局所投与(点眼投与、結膜嚢内投与、硝子体内投与、結膜下投与、テノン嚢下投与など)、静脈内投与、経皮投与などが挙げられ、必要に応じて、医薬的に許容され得る添加剤と共に、投与に適した剤型に製剤化される。経口投与に適した剤型としては、たとえば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤などが挙げられ、非経口投与に適した剤型としては、たとえば、注射剤、点眼剤、眼軟膏、貼布剤、ゲル剤、挿入剤などが挙げられる。これらは当該分野で汎用されている通常の技術を用いて調製することができる。また、本発明の抗酸化剤は、これらの製剤の他に眼内インプラント用製剤やマイクロスフェアーなどのDDS(ドラッグデリバリーシステム)化された製剤にすることもできる。
【0031】
たとえば、錠剤は、乳糖、ブドウ糖、D−マンニトール、無水リン酸水素カルシウム、デンプン、ショ糖などの賦形剤;カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン、デンプン、部分アルファー化デンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどの崩壊剤;ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、デンプン、部分アルファー化デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどの結合剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、含水二酸化ケイ素、硬化油などの滑沢剤;精製白糖、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ピロリドンなどのコーティング剤;クエン酸、アスパルテーム、アスコルビン酸、メントールなどの矯味剤などを適宜選択して用い、調製することができる。
【0032】
注射剤は、塩化ナトリウムなどの等張化剤;リン酸ナトリウムなどの緩衝化剤;ポリオキシエチレンソルビタンモノオレートなどの界面活性剤;メチルセルロースなどの増粘剤などから必要に応じて選択して用い、調製することができる。
【0033】
点眼剤は、塩化ナトリウム、濃グリセリンなどの等張化剤;リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなどの緩衝化剤;ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などの界面活性剤;クエン酸ナトリウム、エデト酸ナトリウムなどの安定化剤;塩化ベンザルコニウム、パラベンなどの防腐剤などから必要に応じて選択して用い、調製することができ、pHは眼科製剤に許容される範囲内にあればよいが、通常4〜8の範囲内が好ましい。また、眼軟膏は、白色ワセリン、流動パラフィンなどの汎用される基剤を用い、調製することができる。
【0034】
挿入剤は、生体分解性ポリマー、たとえばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸などの生体分解性ポリマーを有効成分とともに粉砕混合し、この粉末を圧縮成型することにより、調製することができ、必要に応じて、賦形剤、結合剤、安定化剤、pH調整剤を用いることができる。
【0035】
眼内インプラント用製剤は、生体分解性ポリマー、たとえばポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸・グリコール酸共重合体、ヒドロキシプロピルセルロースなどの生体分解性ポリマーを用い、調製することができる。
【0036】
本発明の抗酸化剤の投与量は、剤型、投与すべき患者の症状の軽重、年令、体重、医師の判断などに応じて適宜変えるこができるが、経口投与の場合、一般には、成人に対し1日あたり0.01〜5000mg、好ましくは0.1〜2500mg、より好ましくは0.5〜1000mgを1回または数回に分けて投与することができ、注射剤の場合、一般には、成人に対し0.0001〜2000mgを1回または数回に分けて投与することができる。また、点眼剤または挿入剤の場合には、0.000001〜10%(w/v)、好ましくは0.00001〜1%(w/v)、より好ましくは0.0001〜0.1%(w/v)の有効成分濃度のものを1日1回または数回投与することができる。さらに、貼布剤の場合は、成人に対し0.0001〜2000mgを含有する貼布剤を貼布することができ、眼内インプラント用製剤の場合は、成人に対し0.0001〜2000mg含有する眼内インプラント用製剤を眼内にインプラントすることができる。
【0037】
以下に、製造例、薬理試験例および製剤例を示すが、これらの例は本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0038】
[製造例]
<実施例1:1−{6−[4−シクロプロピル−1−(テトラヒドロピラン−2−イル)−1H−インダゾール−5−イル]ピリジン−3−イル}−1−エチルプロピルカルバミン酸 tert−ブチルエステルの合成>
4−シクロプロピル−1−(テトラヒドロピラン−2−イル)−5−(4,4,5,5−テトラメチル[1,3,2]ジオキサボロラニル)−1H−インダゾール(130g、353mmol、国際公開第2007/142323号参照)のトルエン(720g)溶液に、アルゴン気流下、エタノール(140ml)、水(140ml)、リン酸カリウム2水和物(230g、933mmol)および2−ブロモ−5−(1−tert−ブトキシカルボニルアミノ−1−エチルプロピル)ピリジン(100g、291mmol、国際公開第2005/035506号参照)を加えた。反応溶液中にアルゴンガスを10分間通気した。次いで、アルゴン気流下、20重量%トリシクロヘキシルホスフィン/トルエン溶液(10ml、6.22mmol)および酢酸パラジウム(700mg、3.11mmol)を加え、75℃で6時間加熱撹拌した。
【0039】
反応終了後、反応溶液に水(200ml)を加え分液した。有機層を飽和食塩水(300ml)で洗浄し、セライト(商品名)(20g)に通した後、減圧濃縮した。得られた残渣にヘプタン(1000ml)を加え、生成した固体を濾取し、ヘプタンで洗浄した。得られた固体を48℃で減圧乾燥することにより、下記式で表わされる1−{6−[4−シクロプロピル−1−(テトラヒドロピラン−2−イル)−1H−インダゾール−5−イル]ピリジン−3−イル}−1−エチルプロピルカルバミン酸 tert−ブチルエステル(実施例化合物1)(104g)を白色粉末として得た。(収率66%)
【0040】
【化6】

【0041】
マススペクトル(CI,m/z):505([M+H])。
1H−NMRスペクトル(CDCl3):δ 0.50−0.55(m,2H),0.75−0.87(m,8H),1.40(brs,9H),1.63−2.37(m,10H),2.53−2.66(m,1H),3.71−3.79(m,1H),4.01−4.07(m,1H),4.81(brs,1H),5.72(dd,J=9.3,2,7,1H),7.47−7.59(m,3H),7.68(dd,J=8.2,2.4Hz,1H),8.21(s,1H),8.69(dd,J=2.4,0.7Hz,1H)。
【0042】
<実施例2:1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン 塩酸塩の合成>
1−{6−[4−シクロプロピル−1−(テトラヒドロピラン−2−イル)−1H−インダゾール−5−イル]ピリジン−3−イル}−1−エチルプロピルカルバミン酸 tert−ブチルエステル(実施例化合物1、100g、198mmol)に、エタノール(250ml)、水(11ml)および38重量%塩化水素/エタノール溶液(179ml)を加え、アルゴン気流下、30℃から43℃で5時間撹拌した。
【0043】
反応溶液を12℃まで冷却し、同温度で0.3時間撹拌した。析出した固体を濾取した後、エタノール(100ml)で洗浄した。得られた固体(90g)にエタノール(270ml)を加え、75℃に加熱した。次いで、水(35ml)を加え、0.5時間加熱撹拌した。10℃に冷却し、生成した固体を濾取し、エタノール(200ml)で洗浄後、40℃で10時間乾燥し、白色固体(71g)を得た。
【0044】
得られた固体(70g)に、エタノール/水=2/1(v/v)の混合溶液(234ml)を加え、アルゴン気流下、70℃から75℃で0.5時間加熱撹拌した。10℃に冷却し、析出した固体を濾取後、エタノール90mlで洗浄した。50℃で2時間乾燥することにより、1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン 塩酸塩(実施例化合物2)(46g)を白色粉末として得た(収率62%)。
融点:>250℃(分解)。
マススペクトル(CI,m/z):321([M+H])。
1H−NMRスペクトル(CD3OD):δ 0.44−0.50(m,2H),0.97−1.04(m,8H),2.16−2.54(m,5H),7.58−7.69(m,2H),8.38−8.41(m,2H),8.73(dd,J=8.5,2.4Hz,1H),9.02(dd,J=2.4,0.5Hz,1H)。
【0045】
<実施例3:1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン 臭化水素酸塩の合成>
1−{6−[4−シクロプロピル−1−(テトラヒドロピラン−2−イル)−1H−インダゾール−5−イル]ピリジン−3−イル}−1−エチルプロピルカルバミン酸 tert−ブチルエステル(実施例化合物1、2.1g、4.2mmol)に、エタノール(20ml)および48重量%臭化水素溶液(10ml)を加え、40℃で4時間加熱撹拌した。溶媒を減圧留去し、50℃で残渣にエタノール(10ml)および水(2ml)を加えた。氷水冷却後、析出した固体を濾取し、エタノールで洗浄することにより白色固体(883mg)を得た。
【0046】
得られた白色固体(530mg)に、エタノール(5ml)および水(200μl)加え、70℃で0.5時間加熱撹拌した。室温まで冷却した後、析出した固体を濾取し、エタノールで洗浄後、60℃で1.25時間乾燥させることにより、1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン 臭化水素酸塩(実施例化合物3)(273mg)を白色粉末として得た(収率22%)。
融点:>221−223℃(分解)。
マススペクトル(CI,m/z):321([M+H])。
1H−NMRスペクトル(CD3OD):δ 0.45−0.50(m,2H),0.97−1.04(m,8H),2.17−2.53(m,5H),7.60(d,J=8.8Hz,1H),7.65−7.69(m,1H),8.39−8.42(m,2H),8.72(dd,J=8.8,2.4Hz,1H),9.02(dd,J=2.4,0.5Hz,1H)。
【0047】
<実施例4:1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミンの合成>
1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン 塩酸塩(実施例化合物2、30.0g、76.3mmol)に、n―ブタノール(300ml)および4M水酸化ナトリウム水溶液(370ml)を加え、室温で1.5時間撹拌した。有機層を分離し、水(150ml)で洗浄後、有機層を濃縮し、固体(22.6g)を得た。
【0048】
得られた固体(22.6g)に、メタノール(160ml)を加え、60℃に昇温した。同温度で水(160ml)を加え、0.5時間撹拌後、10℃から15℃で1時間撹拌した。反応溶液を濾過した後、得られた固体を冷メタノール/水=1/1(v/v)混合溶液(46ml)で洗浄した。80℃で11時間減圧乾燥することにより、下記式で表わされる1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン(実施例化合物4)(21.5g)を白色粉末として得た(収率88%)。
【0049】
【化7】

【0050】
融点:208℃。
マススペクトル(CI,m/z):321([M+H])。
1H−NMRスペクトル(CD3OD):δ 0.41−0.47(m,2H),0.79−0.86(m,8H),1.75−2.04(m,4H),2.28−2.37(m,1H),7.42−7.49(m,2H),7.62(dd,J=8.3,0.7Hz,1H),7.93(dd,J=8.3,2.4Hz,1H),8.24(d,J=0.7Hz,1H),8.67(dd,J=2.4,0.7Hz,1H)。
【0051】
<実施例5:1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン L−酒石酸塩の合成>
1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン(実施例化合物4、4.0g、12mmol)のエタノール(160ml)溶液に、L−酒石酸(2.8g、19mmol)のエタノール(85ml)溶液を室温で0.5時間かけて滴下し、同温度で0.67時間撹拌した。反応溶液を10℃に冷却し、析出した固体を濾取した。エタノール(40ml)で洗浄後、40℃で1時間減圧乾燥し、さらに60℃に昇温して11時間減圧乾燥させることにより、1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン L−酒石酸塩(実施例化合物5)(5.4g)を白色固体として得た(収率92%)。
融点:215−216℃。
マススペクトル(CI,m/z):321([M+H])。
1H−NMRスペクトル(CD3OD):δ 0.41−0.46(m,2H),0.83−0.89(m,2H),0.95(t,J=7.4Hz,6H),2.10(dq,J=14.8,7.4Hz,2H),2.26(dq,J=14.8,7.4Hz,2H),2.34−2.42(m,1H),4.40(s,2H),7.46−7.52(m,2H),7.81(dd,J=8.3,0.5Hz,1H),7.97(dd,J=8.3,2.7Hz,1H),8.27(d,J=0.7Hz,1H),8.66−8.67(m,1H)。
【0052】
<実施例6:1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン マレイン酸塩の合成>
マレイン酸(11mg、0.095mmol)のテトラヒドロフラン(110μl)溶液に、1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン(実施例化合物4、10mg、0.031mmol)のテトラヒドロフラン(800μl)溶液を加え、室温で6日間静置した。析出した固体を濾取し、50℃で減圧乾燥することにより1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン マレイン酸塩(実施例化合物6)(11mg)を白色固体として得た(収率71%)。
融点:174−178℃。
1H−NMRスペクトル(CD3OD):δ 0.41−0.46(m,2H),0.83−0.90(m,2H),0.96(t,J=7.5Hz,6H),2.10(dq,J=14.8,7.5Hz,2H),2.21−2.42(m,3H),6.27(s,3H),7.46−7.53(m,2H),7.82(dd,J=8.5,0.6Hz,1H),7.94(dd,J=8.5,2.7Hz,1H),8.27(s,1H),8.65−8.66(m,1H)。
【0053】
<実施例7:1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン フマル酸塩の合成>
フマル酸(11mg、0.095mmol)のテトラヒドロフラン(275μl)溶液に、1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン(実施例化合物4、10mg、0.031mmol)のテトラヒドロフラン(667μl)溶液を加え、室温で3日間静置した。析出した固体を濾取し、50℃で減圧乾燥することにより1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン フマル酸塩(実施例化合物7)(8.8mg)を白色固体として得た。(収率75%)
融点:257℃。
1H−NMRスペクトル(CD3OD):δ 0.41−0.46(m,2H),0.82−0.94(m,8H),1.94−2.07(m,2H),2.18(dq,J=14.8,7.3Hz,2H),2.31−2.41(m,1H),6.68(s,1H),7.45−7.51(m,2H),7.76(dd,J=8.3,0.7Hz,1H),7.95(dd,J=8.3,2.4Hz,1H),8.26(d,J=0.7Hz,1H),8.66(dd,J=2.4,0.7Hz,1H)。
【0054】
<実施例8:1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン コハク酸塩の合成>
コハク酸(11mg、0.093mmol)のテトラヒドロフラン(275μl)溶液に、1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン(実施例化合物4、10mg、0.031mmol)のテトラヒドロフラン(667μl)溶液を加え、室温で6日間静置した。析出した固体を濾取し、50℃で減圧乾燥することにより1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン コハク酸塩(実施例化合物8)(6.9mg)を白色固体として得た(収率58%)。
融点:218℃。
1H−NMRスペクトル(CD3OD):δ 0.41−0.46(m,2H),0.82−0.90(m,8H),1.94(dq,J=14.6,7.3Hz,2H),2.11(dq,J=14.6,7.3Hz,2H),2.30−2.40(m,1H),2.51(s,2H),7.44−7.51(m,2H),7.72(d,J=8.3Hz,1H),7.94(dd,J=8.3,2.4Hz,1H),8.25(d,J=0.7Hz,1H),8.66(d,J=2.4Hz,1H)。
【0055】
[薬理試験例]
1.ラット肝ミクロソームでの抗酸化作用試験
ミクロソーム脂質過酸化測定系を用いて、被験化合物の抗酸化作用を評価した。この試験はミクロソームにニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸および硫酸第一鉄を添加することで惹起される脂質過酸化反応によって生成する、チオバルビツール酸反応物質(TBARS)を定量する。この系に被験化合物を添加し、被験化合物によるTBARS生成抑制作用を抗酸化作用として評価する。この方法は、化合物などの抗酸化作用を測定するための一般的な方法である(参考文献;薬学雑誌119,93−99(1999), Biochimica et Biophysics Acta, 1046 (1990) 207−213,化学と生物 実験ライン2 脂質過酸化実験法(廣川書店))。
【0056】
<抗酸化作用試験用の試薬の調製、被験化合物溶液の調製および評価方法>
(試薬の調製)
1)緩衝溶液の調製
25mM トリスヒドロキシメチルアミノメタン(Tris)(pH7.4)、150mM塩化カリウム(KCl)となるよう混和して緩衝溶液とした。
【0057】
2)5mM 硫酸第一鉄溶液の調製
硫酸第一鉄(FeSO4・7H2O)を蒸留水に溶解し5mM 溶液を調製した。
【0058】
3)50mM ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸溶液の調製
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)を蒸留水に溶解し50mM 溶液を調製した。
【0059】
4)200mM エチレンジアミン四酢酸溶液の調製
エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を蒸留水に溶解し200mM 溶液を調製した。
【0060】
5)ラット肝臓ミクロソーム
市販のラット肝臓ミクロソーム[XENOTECH, Catalog No.R1000(20mg protein/ml)]を5μl使用した。
【0061】
(被験化合物溶液の調製)
被験化合物として、本発明化合物である化合物A[1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−エチルプロピルアミン 塩酸塩(実施例化合物2)]と、それに類似した化合構造である化合物B[1−[6−(4−シクロプロピル−1H−インダゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]−1−メチルエチルアミン 塩酸塩(欧州特許出願公開第1679308号明細書記載の方法により合成)]を使用した。化合物Aは、1.3mgをジメチルスルホキシド(DMSO)0.315mlに溶解し、化合物Bは、2.15mgをジメチルスルホキシド(DMSO)0.554mlに溶解し、10mM溶液として被験化合物溶液を調製した。
【0062】
【化8】

【0063】
【化9】

【0064】
(評価方法)
1)反応チューブに被験化合物溶液(5μl)を入れた。
【0065】
2)反応チューブに緩衝溶液(480μl)を加えた。
3)次いで、各反応チューブにラット肝臓ミクロソーム5μlを加えて混和し、インキュベーター(37℃)に入れて5分間プレインキュベーションさせた。
【0066】
4)終濃度500μMとなるよう各反応チューブに、50mM ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸溶液(5μl)を加えた。
【0067】
5)終濃度50μMとなるよう各反応チューブに、5mM 硫酸第一鉄溶液(5μl)を加え、反応を開始した。
【0068】
6)20分間反応後、終濃度10mMとなるよう各反応チューブに、200mM エチレンジアミン四酢酸溶液を(25μl)加え反応を停止後、氷水中に静置した。
【0069】
7)反応終了溶液中のチオバルビツール酸反応物質(TBARS)生成値を市販のTBARS測定キット[Cayman,Catalog No. 10009055]を使用して測定した。
【0070】
また、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸および硫酸第一鉄の代わりに蒸留水を添加して試験を実施し、TBARS生成値を測定した群を非脂質過酸化反応群とした。なお、各群の例数はn=2で、n=2の平均値より下記式1に従い、TBARS生成抑制率(%)を算出し,統計解析ソフト(EXSAS)の非線形回帰により被験化合物のIC50を算出した。
【0071】
[式1]
TBARS生成抑制率(%)=[1−(Tx−T0)/(Tn−T0)]×100
0:非脂質過酸化反応群のTBARS生成値(μM)
n:対照溶液添加群のTBARS生成値(μM)
x:被験化合物添加群のTBARS生成値(μM)
(化合物添加方法)
・被験化合物添加群:ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液に溶解した、化合物溶液を添加した。
【0072】
・対照溶液添加群および非脂質過酸化反応群:ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液を添加した。
【0073】
【表1】

【0074】
(考察)
以上の結果から、化合物Aは、強力な抗酸化作用を示した。一方、化合物Bは、化合物Aと類似した化学構造を有するにもかかわらず、強力な抗酸化作用は示さなかった。
【0075】
[製剤例]
製剤例を挙げて本発明の薬剤をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの製剤例にのみ限定されるものではない。
【0076】
(処方例1:錠剤)
100mg中
化合物A 1mg
乳糖 66.4mg
トウモロコシデンプン 20mg
カルボキシメチルセルロースカルシウム 6mg
ヒドロキシプロピルセルロース 6mg
ステアリン酸マグネシウム 0.6mg
化合物A、乳糖を混合機中で混合し、その混合物にカルボキシメチルセルロースカルシウムおよびヒドロキシプロピルセルロースを加えて造粒し、得られた顆粒を乾燥後整粒し、その整粒顆粒にステアリン酸マグネシウムを加えて混合し、打錠機で打錠する。また、化合物Aの添加量を変えることにより、100mg中の含有量が0.1mg、10mgまたは50mgの錠剤を調製できる。
【0077】
(処方例2:眼軟膏)
100g中
化合物A 0.3g
流動パラフィン 10.0g
白色ワセリン 適量
均一に溶融した白色ワセリンおよび流動パラフィンに、化合物Aを加え、これらを十分に混合して後に徐々に冷却することで眼軟膏を調製する。化合物Aの添加量を変えることにより、濃度が0.05%(w/w)、0.1%(w/w)、0.5%(w/w)または1%(w/w)の眼軟膏を調製できる。
【0078】
(処方例3:注射剤)
10ml中
化合物A 10mg
塩化ナトリウム 90mg
ポリソルベート80 適量
滅菌精製水 適量
化合物Aおよび塩化ナトリウムを滅菌精製水に加えて注射剤を調製する。化合物Aの添加量を変えることにより、10ml中の含有量が0.1mg、10mgまたは50mgの注射剤を調製できる。
【0079】
(処方例4:点眼剤)
100ml中
化合物A 10mg
塩化ナトリウム 900mg
ポリソルベート80 適量
リン酸水素二ナトリウム 適量
リン酸二水素ナトリウム 適量
滅菌精製水 適量
滅菌精製水に化合物Aおよびそれ以外の上記成分を加え、これらを十分に混合して点眼液を調製する。化合物Aの添加量を変えることにより、濃度が0.05%(w/v)、0.1%(w/v)、0.5%(w/v)または1%(w/v)の点眼剤を調製できる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明化合物(1)はラット肝ミクロソームを用いたミクロソーム脂質過酸化測定系において、優れた抗酸化作用を示した。よって、本発明化合物(1)は抗酸化剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物またはその塩の少なくとも一つを有効成分として含有する抗酸化剤。
【化1】

【請求項2】
下記式(1)で表される化合物またはその塩。
【化2】

【請求項3】
下記式(2)で表される化合物またはその塩。
【化3】

(式中、Bocは、tert−ブトキシカルボニル基を示し、THPは、テトラヒドロピラニル基を示す。)

【公開番号】特開2012−6920(P2012−6920A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118032(P2011−118032)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【出願人】(000177634)参天製薬株式会社 (177)
【Fターム(参考)】