説明

新規クリセン化合物及びこれを有する有機発光素子

【課題】新規なクリセン化合物、及び発光効率が高く駆動耐久性の優れた有機発光素子を提供する。
【解決手段】下記一般式[1]で示される新規トリアリール置換クリセン化合物を提供する。


〔式[1]において、Ar乃至Arはそれぞれ、置換あるいは無置換のナフチル基、置換あるいは無置換のフェナントリル基、及び置換あるいは無置換のフルオレニル基からなる群より選ばれる置換基を表す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規クリセン化合物及びこれを有する有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子は、一対の電極である陽極と陰極との間に蛍光発光有機化合物又は燐光発光有機化合物を有する薄膜が配置されている素子である。
【0003】
そして有機発光素子の発光効率や耐久性に改善の余地がある。
【0004】
縮合多環芳香族化合物の一つに、クリセン誘導体がある。特許文献1では6,12−ジアリール置換のクリセン誘導体が、特許文献2では3,6,9,12−テトラアリール置換のクリセン誘導体が、及び非特許文献1では2,6,8,12−テトラアリール置換のクリセン誘導体が開示されている。また特許文献3では、2,6,12−トリフェニル置換のクリセン誘導体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−75567号公報
【特許文献2】特開2007−273055号公報
【特許文献3】WO2009/008311パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Chem.Commun.2008,2319.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、発光効率や耐久性が十分に満足できる新規な化合物を提供することを目的とし、より具体的には新規なクリセン化合物とそれを有する有機発光素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
よって本発明は、下記一般式[1]で示されることを特徴とするクリセン化合物を提供する。
【0009】
【化1】

【0010】
〔前記一般式[1]において、R乃至Rは水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルコキシ基からなる群よりそれぞれ独立に選ばれる。Ar乃至Arは下記式[2]で示される群からそれぞれ独立に選ばれる。〕
【0011】
【化2】

【0012】
〔前記式[2]において、X乃至X26は水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルコキシ基、置換あるいは無置換のフェニル基、置換あるいは無置換のナフチル基、置換あるいは無置換のフェナントリル基、及び置換あるいは無置換のフルオレニル基からなる群よりそれぞれ独立に選ばれる。但し、X乃至Xのうち一つ、X乃至X16のうち一つ、X17乃至X26のうち一つは、それぞれ前記一般式[1]に記載のクリセン環を表す。Y及びYはそれぞれ独立に水素原子または置換あるいは無置換のアルキル基から選ばれる。〕
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、化学的安定性が高く、HOMOが深く、エネルギーギャップが広く、二面角の小さい、キャリア輸送性の良好な新規クリセン化合物を提供することが出来る。そしてそれを有する発光効率が高く駆動耐久性の優れた有機発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】有機発光素子と有機発光素子と接続するスイッチング素子とを示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るクリセン化合物は、下記一般式[1]で示される。
【0016】
【化3】

【0017】
式[1]において、R乃至Rは水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルコキシ基からなる群よりそれぞれ独立に選ばれる。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基である。
アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、iso−プロポキシ基、tert−ブトキシ基、アリロキシ基、ベンジルオキシ基である。
【0018】
上記のアルキル基及びアルコキシ基は置換基を有してもよい。たとえばメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、フルオレニル基等の炭化水素芳香環基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基等の複素芳香環基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジアニソリルアミノ基等の置換アミノ基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基等のアリールオキシ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基である。
【0019】
式[1]の置換基Ar乃至Arは下記式[2]で示される置換基群からそれぞれ独立に選ばれる。
【0020】
【化4】

【0021】
式[2]において、X乃至X26は水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルコキシ基、置換あるいは無置換のフェニル基、置換あるいは無置換のナフチル基、置換あるいは無置換のフェナントリル基、及び置換あるいは無置換のフルオレニル基からなる群よりそれぞれ独立に選ばれる置換基を表す。但し、X乃至Xのうち一つ、X乃至X16のうち一つ、X17乃至X26のうち一つは、それぞれ一般式[1]に記載のクリセン環を表す。
【0022】
乃至X26で表されるアルキル基の具体例としては、式[1]中のR乃至Rで表される上述のアルキル基の具体例と同様である。このアルキル基がさらに有してもよい置換基の具体例は、式[1]中のR乃至Rがアルキル基であって、アルキル基がさらに有してもよい置換基として上述した具体例と同様である。
乃至X26で表されるアルコキシ基の具体例としては、式[1]中のR乃至Rで表される上述のアルコキシ基の具体例と同様である。このアルコキシ基がさらに有してもよい置換基の具体例は、式[1]中のR乃至Rがアルコキシ基であって、アルコキシ基がさらに有してもよい置換基として上述した具体例と同様である。
乃至X26で表されるフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、及びフルオレニル基がさらに有してもよい置換基の具体例は、メチル基、エチル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、tert−ブチルフェニル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基、フェナントリル基、フルオレニル基、9,9−ジメチルフルオレニル基、9,9−ジエチルフルオレニル基、9,9−ジ−(n−ヘキシル)フルオレニル基等の炭化水素芳香環基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、フェナントリル基等の複素芳香環基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジアニソリルアミノ基等の置換アミノ基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基等のアリールオキシ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基である。
【0023】
式[2]において、Y及びYはそれぞれ独立に水素原子または置換あるいは無置換のアルキル基から選ばれる。
及びYで表されるアルキル基の具体例としては、式[1]中のR乃至Rで表される上述のアルキル基の具体例と同様である。このアルキル基がさらに有してもよい置換基の具体例は、式[1]中のR乃至Rがアルキル基であって、アルキル基がさらに有してもよい置換基として上述した具体例と同様である。
【0024】
また式[1]のクリセン化合物において、主骨格(一般式[1]中に示すクリセン骨格のこと)又は主骨格が有する置換基に存在する水素原子の全部又は一部が重水素で置き換わっていてもよい。
【0025】
式[1]のクリセン化合物は、好ましくは、式[3]乃び[4]で示される化合物である。
【0026】
【化5】

【0027】
【化6】

【0028】
なお式[3]及び[4]において置換基Ar乃至Arは、式[1]中のAr乃至Arと同一の置換基である。
【0029】
次に、本実施の形態に係る式[3]、[4]で示される2,6,12−トリアリール置換クリセン化合物、及び3,6,12−トリアリール置換クリセン化合物の合成方法について説明する。
2,6,12−トリアリール置換クリセン化合物は下記式[5]に示される鈴木−宮浦カップリング反応によって合成することができる。
すなわち、6,12−ジブロモ−2−クロロクリセンから2−Cl中間体を合成し、更にアリール基を導入して2,6,12−トリアリール置換クリセン化合物を得る。
【0030】
【化7】

【0031】
〔式中、Ar及びAr’は置換あるいは無置換のナフチル基、置換あるいは無置換のフェナントリル基、及び置換あるいは無置換のフルオレニル基からなる群よりそれぞれ独立に選ばれる置換基を表す。〕
【0032】
同様に、3,6,12−トリアリール置換クリセン化合物も、下記式[6]に示すように6,12−ジブロモ−3−クロロクリセンから3−Cl中間体を経由して合成することができる。
【0033】
【化8】

【0034】
〔式中、Ar及びAr’は置換あるいは無置換のナフチル基、置換あるいは無置換のフェナントリル基、及び置換あるいは無置換のフルオレニル基からなる群よりそれぞれ独立に選ばれる置換基を表す。〕
【0035】
式[5]及び[6]において、Arとして所望のアリール基を導入したCl中間体を合成し、続くカップリング反応においても所望のAr’を導入することによって、所望のAr及びAr’が置換したクリセン化合物を合成することができる。この際、それぞれの式中のボロン酸化合物として所望のAr及びAr’に対応するボロン酸化合物が用いられる。
なお式中の最終合成物であるクリセン化合物にアルキル基又はアルコキシ基を導入する場合は、式中のジブロモクロロクリセンをアルキル化あるいはアルコキシ化しておけばよい。
【0036】
以下、本発明に係るクリセン化合物の具体的な構造式を例示する。
【0037】
【化9】

【0038】
【化10】

【0039】
【化11】

【0040】
【化12】

【0041】
【化13】

【0042】
【化14】

【0043】
【化15】

【0044】
上記化合物C101乃至C112(以下、C100群と記す)、C501乃至C520(以下、C500群と記す)およびC701乃至C722(以下、C700群と記す)は、一般式[3]で示される2,6,12−トリアリールクリセン化合物の具体例である。
上記化合物C201乃至C215(以下、C200群と記す)、C601乃至C615(以下、C600群と記す)およびC801乃至C821(以下、C800群と記す)は、一般式[4]で示される3,6,12−トリアリールクリセン化合物の具体例である。
上記化合物C301乃至C303(以下、C300群と記す)とC401乃至C403(以下、C400群と記す)は、一般式[1]におけるR乃至Rのうち少なくとも1つが水素原子以外の置換基である化合物の具体例である。
【0045】
C100群の中で、HOMO準位が比較的深くて電子輸送層に用いた場合にホールブロック性が高いという点で、C101と同じ性質を有するものはC102、C107、C109、およびC112である。これらを一般化すると以下の一般式[7]で表すことができる。
【0046】
【化16】

【0047】
C100群の中で、HOMO準位が比較的浅くて発光層ホスト材料として用いた場合にホール注入性が高いという点で、C103と同じ性質を有するものはC104、C105、C110、およびC111である。これらを一般化すると以下の一般式[8]で表すことができる。
【0048】
【化17】

【0049】
C200群の中で、HOMO準位が比較的深くて電子輸送層に用いた場合にホールブロック性が高いという点で、C201と同じ性質を有するものはC205、C208、C209、およびC215である。これらを一般化すると以下の一般式[9]で表すことができる。
【0050】
【化18】

【0051】
C200群の中で、HOMO準位が比較的浅くて発光層ホスト材料として用いた場合にホール注入性が高いという点で、C202と同じ性質を有するものはC203、C210、C211、C212、およびC213である。これらを一般化すると以下の一般式[10]で表すことができる。
【0052】
【化19】

【0053】
C500群の中で、C501と同じ性質を有するものはC506、C507、C510、C511、およびC517である。これらを一般化すると以下の一般式[11]で表すことができる。これらはHOMO準位が深くて且つエネルギーギャップが比較的大きいため、電子輸送層に用いた場合にホールブロック性及びエキシトンブロック性が高いという点で共通する。
【0054】
【化20】

【0055】
〔前記式[11]において、Z乃至Zはそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基である。〕
C500群の中で、エネルギーギャップが比較的大きく電子輸送層に用いた場合にエキシトンブロック性が高いという点で、C505と同じ性質を有するものはC509である。これらを一般化すると以下の一般式[12]で表すことができる。
【0056】
【化21】

【0057】
〔前記式[12]において、Z乃至Z14はそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基である。〕
C700群の中で、C703と同じ性質を有するものはC702、C704、C705、C708、C709、C710、C711、C712、C713、C720、C721、およびC722である。これらを一般化すると以下の一般式[13]で表すことができる。
【0058】
これらはHOMO準位が深くて且つエネルギーギャップが大きく、電子輸送層に用いた場合にホールブロック性とエキシトンブロック性が共に高いという点で共通する、
【0059】
【化22】

【0060】
〔前記式[13]において、Z乃至Zはそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基である。〕
なお式[8]乃至[13]において置換基Ar乃至Arは、式[1]中のAr乃至Arと同一の置換基である。
【0061】
次に、本発明に係る有機発光素子について詳細に説明する。
本発明に係る有機発光素子は、陽極及び陰極からなる一対の電極と、前記一対の電極間に配置される有機化合物層により構成される有機発光素子において、前記有機化合物層が一般式[1]で示される有機化合物を含有する。
【0062】
一対の電極の間には上記有機化合物層以外の化合物層を有していてもよい。また、一対の電極の間には有機化合物層を含む化合物層が二層以上設けられていてもよく、このような場合を多層型の有機発光素子と呼ぶことにする。
【0063】
以下に、多層型の有機発光素子の好ましい例として第一から第六までを示す。
第一の多層型の有機発光素子の例としては、基板上に、順次陽極/発光層/陰極が設けられた構成の有機発光素子を挙げる。第二の多層型の有機発光素子の例としては、基板上に、順次陽極/ホール輸送層/電子輸送層/陰極が設けられた構成の有機発光素子を挙げる。この場合、発光層は、ホール輸送層あるいは電子輸送層の少なくともいずれかである。
【0064】
第三の多層型の有機発光素子の例としては、基板上に、順次陽極/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/陰極が設けられた構成の有機発光素子を挙げる。第四の多層型の有機発光素子の例としては、基板上に、順次陽極/ホール注入層/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/陰極が設けられた構成の有機発光素子を挙げる。
【0065】
第五の多層型の有機発光素子の例としては、基板上に、順次陽極/ホール注入層/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極が設けられた構成の有機発光素子を挙げる。第六の多層型の有機発光素子の例としては、基板上に、順次陽極/ホール輸送層/発光層/ホールブロッキング層・エキシトンブロッキング層/電子輸送層/陰極が設けられた構成の有機発光素子を挙げる。
【0066】
ただし、第一乃至第六の多層型の例はあくまでごく基本的な素子構成であり、本発明に係る有機発光素子の構成は、これらに限定されるものではない。例えば、電極と有機層界面に絶縁性層を設ける、接着層あるいは干渉層を設ける、電子輸送層もしくはホール輸送層がイオン化ポテンシャルの異なる二層から構成される、発光層が二層以上の積層構造から成るなど、多様な層構成をとることができる。
【0067】
本発明に係る有機発光素子において有機化合物層は本発明に係るクリセン化合物を1種含んでもよいし本発明に係るクリセン化合物を複数種有してもよい。
【0068】
本発明に係る有機発光素子は、本発明のクリセン化合物が、発光層のホスト材料として用いられることが好ましい。
【0069】
また、本発明に係るクリセン化合物は、発光層のゲスト材料として用いてもよい。
【0070】
さらに、本発明に係るクリセン化合物は、発光層以外の各層、即ちホール注入層、ホール輸送層、ホールブロッキング層、エキシトンブロッキング層、電子輸送層、電子注入層の何れかに用いてもよい。そして本発明に係るクリセン化合物が電子輸送層に設けられることが好ましい。
【0071】
有機発光素子は一対の電極の間に配置された有機化合物である発光材料が発光する素子である。発光材料を有する層が発光層である。
【0072】
発光層は本発明に係るクリセン化合物のみから構成されていてもよいし、あるいは本発明に係るクリセン化合物を一部有していてもよい。発光層が本発明に係るクリセン化合物を一部有する場合、クリセン化合物は発光層における発光材料であってもよく、あるいは非発光材料であってもよい。
【0073】
発光層が複数種の成分から構成される場合、それらを主成分と副成分とに分類することが出来る。主成分とは、発光層を構成する全化合物の中で、例えば重量的あるいはモル数的に多い化合物であり、副成分とは少ない化合物のことをいう。主成分である材料は、ホスト材料と呼ぶことができる。副成分である材料は、ゲスト(ドーパント)材料、発光アシスト材料、電荷注入材料と呼ぶことができる。ここでゲスト材料とは、発光層内で主たる発光を担う化合物である。これに対してホスト材料とは、発光層内でゲスト材料の周囲にマトリックスとして存在する化合物であって、主にキャリアの輸送、及びゲスト材料への励起エネルギー供与を担う化合物である。
【0074】
ホスト材料に対するゲスト材料の濃度は、発光層の構成材料の全体量を基準として、0.01wt%乃至50wt%であり、好ましくは、0.1wt%乃至20wt%である。さらに好ましくは、濃度消光を防ぐために、ゲスト材料の濃度は10wt%以下であることが望ましい。またゲスト材料は、ホスト材料からなる層全体に均一に含まれてもよいし、濃度勾配を有して含まれてもよいし、特定の領域に部分的に含ませてゲスト材料を含まないホスト材料層の領域を設けてもよい。
【0075】
次に本発明に係るクリセン化合物が有機発光素子の耐久寿命の改善に有用であることについて説明する。
【0076】
有機発光素子が通電されることによって発光特性が劣化するがその原因はいくつか考えられる。
【0077】
例えば発光中心材料そのもの、又はその周辺分子による発光材料の環境変化に関連するものが原因として考えられる。また結晶化等によって膜(層)のアモルファス膜質が劣化することや、通電そのものによる有機層の経時的な劣化等も、原因として考えられる。発光材料の劣化の一つに、酸化による材料の劣化があり、素子中での酸化物の存在は有機発光素子の耐久寿命を短くすることが知られている。
【0078】
一般に、有機発光素子の発光材料として、アントラセン環を母骨格として分子内に有するアントラセン化合物が知られている。このアントラセン環の9,10位の炭素原子は非常に酸化されやすい。従って、アントラセン化合物を有機発光素子の発光層ホスト材料として用いると、前述の酸化による材料劣化によって、有機発光素子の耐久寿命が短くなる場合が多い。
【0079】
一方、アントラセンと炭素数が同程度の炭化水素芳香環としてクリセンが挙げられる。アントラセン環と異なり、クリセン環の耐酸化性は強く、クリセン環を母骨格として分子内に有するクリセン化合物の化学的安定性は非常に高い。そのため、クリセン化合物を有機発光素子に用いることは素子の長寿命化に効果的であると本発明者は考えた。またこのとき、クリセン化合物の化学的安定性を発現させるためには、発光過程に密接に関係するHOMO及びLUMOについて、それらの電荷分布の中心がクリセン環上に存在していることが重要であると本発明者は考えた。そのようなクリセン化合物は、クリセン環上の芳香環置換基について、この芳香環の一重項エネルギーがクリセンの一重項エネルギーよりも大きくなければならないことに注目した。分子を母骨格(主骨格)と置換基とに分けて考える場合、母骨格であるクリセンに主たる機能を期待し、置換基はあくまでそのチューニングとして期待したいためである。クリセン環が有する芳香環置換基の一重項エネルギーがクリセンのそれよりも大きいことで、1分子中において、エネルギー的に大きな負荷となるキャリア再結合やキャリア輸送の場を、化学的安定性の高いクリセン環上に集中させることができる。
【0080】
そのような考え方からクリセンと種々の芳香環の一重項エネルギーを比較する。
【0081】
下記の表1は代表的な芳香環とその一重項エネルギーを、波長換算した値を示す。また同じ表にクリセンに関しても一重項エネルギーを波長換算した値を示す。これら芳香環ののうちフェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、及びフェナントリル基がクリセンよりも一重項エネルギーが高い。このような芳香環を置換基として有すれば、それを有するクリセン化合物はそのHOMOとLUMOが母骨格であるクリセン環上に局在する。
【0082】
【表1】

【0083】
一方、例えば、クリセン環上に置換される芳香環基が、ピレニル基のようにクリセンより一重項エネルギーが小さい芳香環である場合、クリセン由来の化学的安定性は得られない可能性がある。
【0084】
ところで、フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、及びフェナントリル基のうちフェニル基を除くフルオレニル基、ナフチル基、及びフェナントリル基が置換基として好ましい場合がある。
【0085】
クリセン環が有する芳香環基がフェニル基であっても、フルオレニル基、ナフチル基、及びフェナントリル基の場合と同様にクリセン分子のHOMO及びLUMOの電荷分布の中心はクリセン環上に存在する。そしてその場合クリセン分子のエネルギーギャップは非常に大きくなる。エネルギーギャップとは、化合物のHOMO準位とLUMO準位の差である。これは、フェニル基の一重項エネルギーが非常に大きく、またフェニル基は他の3つの芳香環基と比べてπ共役が小さいためクリセン化合物全体としてのπ共役の広がりが小さいからである。このようなエネルギーギャップが非常に大きいクリセン化合物は、後述のように、発光層ホスト材料として用いる場合には好ましくない。
【0086】
以上より、本発明に係るクリセン化合物は一般式[1]に示すクリセン骨格に式[2]に記載の置換基を有している。その結果化学的安定性が得られる。
【0087】
本発明に係るクリセン化合物を青色有機発光素子の発光層のホスト材料として有する場合、クリセン化合物のエネルギーギャップは3.0eV程度、具体的には3.0±0.2eVであることが好ましい。またより好ましくは3.0eV以上3.1eV以下である。
【0088】
これは発光層に隣接する有機層、例えばホール輸送層や電子輸送層とのHOMOあるいはLUMOのキャリア注入障壁差を小さくすることが求められるからである。またホスト材料が青色発光する発光材料、すなわちゲスト材料へエネルギーを良好に供給するために、ゲスト材料のエネルギーギャップよりも広いエネルギーギャップを有することが求められるからである。
【0089】
本発明に係るクリセン化合物はこれら数値範囲のエネルギーギャップを満たすので青色有機発光素子の発光層のホスト材料として好ましく用いることができる。
【0090】
次に式[2]で示す置換基がクリセン母骨格の特定位置においてクリセン母骨格と結合していることについて説明する。本発明に係るクリセン化合物は上述したように青色発光層ホスト材料として好ましいエネルギーギャップを有するクリセン化合物である。
【0091】
クリセン環の置換位置番号を下記に示す。
【0092】
【化23】

【0093】
まずクリセン環に二つの芳香環基が置換しているジアリール置換クリセン化合物、具体的には6,12−ジアリールクリセン化合物では、そのエネルギーギャップは大きいため青色発光層のホスト材料としてはこのままでは改善の余地がある。
【0094】
これは、置換基をフェニル基から、よりπ共役面の広がるフルオレニル基、ナフチル基、およびフェナントリル基にしたとしても、二つの芳香環置換基だけでは、クリセン化合物全体としてπ共役の広がりが未だ小さ過ぎるからである。これを青色発光層ホストとして使用すると、発光素子が高電圧化し、発光効率も低下してしまう。
【0095】
また、クリセン環に四つの芳香環基が置換しているテトラアリール置換クリセン化合物では、そのエネルギーギャップは小さくなる。これは、四つも芳香環置換基があるので、クリセン化合物全体としてπ共役の広がりが過度に大きくなるからである。これでは青色有機発光素子のホスト材料としては不適である。特許文献2における3,6,9,12−テトラアリール置換クリセン誘導体、及び非特許文献1の2,6,8,12−テトラアリール置換クリセン誘導体は、共に、青色発光層のゲスト材料として主に用いられている。
【0096】
非特許文献1における3,6,9,12−テトラキス(4−tert−ブチルフェニル)クリセンは、これを単独で発光層に用いた有機発光素子の発光ピーク波長が450nmとの記載がある。通常のπ−π*性発光をする炭化水素芳香多環化合物のストークスシフトを考えれば、前記クリセン化合物の膜状態でのエネルギーギャップは、大きくとも2.95eV(波長換算:420nm)程度であることが予測される。従って、これらのテトラアリール置換クリセン化合物を青色発光層ホストに使用すると、ゲストへの励起エネルギー移動が起こらなくなって発光効率が低下することが容易に予想される。すなわち、テトラアリール置換クリセン化合物のエネルギーギャップは、青色発光層ホスト材料としては小さ過ぎるため、適さない。
【0097】
一方、本発明のトリアリール置換クリセン化合物は、クリセン環に三つの芳香環基が置換しているのでエネルギーギャップがジアリール置換とテトラアリール置換との中間の値になる。そのため青色発光層ホスト材料として3.0eV程度の好ましい値になる。これは、三つの芳香環置換基によって、クリセン化合物全体としてπ共役の広がりが青色発光層ホスト材料として適度になるからである。
【0098】
ここで、トリアリール置換クリセン化合物の三つの置換基の置換位置について考察する。
【0099】
置換芳香環と母骨格であるクリセン環との二面角は、置換基が付くクリセン環の位置によって大きく異なる。芳香環置換基としてフェニル基をクリセン環の各位置に置換させた化合物について、分子軌道計算による構造最適化を行うと、ベンゼン環とクリセン環の二面角は以下の表2のようになり、2位及び3位のみ、他の置換位置に比べて二面角が小さくなるといえる。
【0100】
【表2】

【0101】
また、二面角が小さいことは、クリセン環に対する芳香環置換基のねじれが小さいことを意味し、このとき、クリセン環上のπ共役が置換する芳香環にまで大きく広がって、化合物のエネルギーギャップが小さくなることにつながる。
【0102】
従って、本発明に係るクリセン化合物は、第三の芳香環置換基、すなわち一般式[1]におけるArがクリセン環の2位または3位に置換している。これらの置換位置は、上述のように、置換芳香環とクリセン環との二面角が小さくなり、二つの環同士のねじれが小さくなるため、よりπ共役の伸びが大きくなる置換位置である。そのため、エネルギーギャップが青色発光層ホスト材料としては大き過ぎるジアリール置換クリセン化合物を、第三の芳香環置換基によってエネルギーギャップを小さくするには効果的な置換位置といえる。また、このエネルギーギャップ狭化の効果はクリセン環3位のほうが2位よりも大きい。
【0103】
更に、本発明に係るクリセン化合物は、第三の芳香環置換基がクリセン環の2位または3位のいずれか一方で置換していることによって、置換した芳香環とクリセン環とで、直線的に長いπ共役が形成される。このようなπ共役は、キャリア輸送性の向上に効果的である。従って、本発明のクリセン化合物を発光層ホスト材料として用いた場合、両キャリア輸送層からのキャリアの供給が効率よく行われ、発光素子の高効率化及び長寿命化への効果が十分に期待できる。
【0104】
一方、二面角が小さくてクリセン環と第三の置換芳香環のねじれが小さいことは、クリセン化合物の分子全体としての平面性を高めるので、分子間相互作用によるスタックが顕著になる可能性がある。分子間、特にホスト−ホスト分子間のスタックが有機発光素子中で起こると、ホスト分子間のエキシマー形成等によって、ホストからゲストへの励起エネルギーの移動が効率よく行われなくなり、発光素子の発光効率の低下を招く恐れがあり好ましくない。
【0105】
しかし、本発明に係るトリアリール置換クリセン化合物では、クリセン環の6位及び12位、すなわち一般式[1]におけるArおよびArに置換または無置換の炭化水素芳香環基が導入されているので、そのような分子間スタックを回避することができる。すなわち上述のように、クリセン環の6位に置換している芳香環基は、クリセン環7位のペリ位原子の立体反発によって、クリセン環に対する二面角が大きくなり、この芳香環基が分子間でのクリセン環の相互作用にとって障害基となるからである。
【0106】
このようなスタックを軽減する障害基としては、嵩高いアルキル基よりも、本発明のように炭化水素芳香環基である方が好ましい。それは、クリセン環上には、発光過程に直接関係するHOMO及びLUMOの電荷分布が多く存在しているので、芳香環置換基のようなsp2炭素が直接結合している方がエネルギー的に有利だからである。
【0107】
ところで、表2によると、そのような障害基の置換位置として、同様に二面角が大きいクリセン環1位、4位、及び5位も考えられる。しかし、クリセン環4位に芳香環が置換されると、クリセン環5位の原子が置換芳香環の芳香環面と立体的に干渉するので、母核であるクリセン環自体が歪むことになる。そのようなクリセン環の歪みは、分子の構造的安定性を低くし好ましくない。同様に、クリセン環5位に芳香環が置換される場合も、クリセン環4位の原子による立体的干渉でクリセン環が歪むので好ましくない。
【0108】
一方、クリセン環6位に芳香環が置換されても、上述したクリセン環7位のペリ位原子による立体反発はクリセン環自体を歪ませることはない。クリセン環12位に芳香環が置換された場合の、クリセン環1位のペリ位原子による立体反発も同様である。
【0109】
クリセン環1位に芳香環が置換された場合、クリセン環12位のペリ位原子による立体反発も同様にクリセン環を歪ませることはないが、分子間スタックを回避させる障害基としての機能は、クリセン環の中心に近い位置に置換している方が効果的である。そのため、中心に近い6位及び12位が、このような障害基の置換位置として最適であるといえる。さらに、クリセン環6位及び12位は、ブロモ化反応等の合成反応上、芳香環基を導入することが容易な置換位置なので、その意味でも上述の障害基の置換位置としてより好ましい。
【0110】
以上を踏まえて、本発明に係るトリアリール置換クリセンは、2,6,12−トリアリールクリセン化合物及び3,6,12−トリアリールクリセン化合物である。
【0111】
クリセン環6位及び12位の芳香環置換基に加えて、二面角の小さくなる位置であるクリセン環2位、3位、8位、及び9位のうち二つ以上に芳香環置換基を導入すると、エネルギーギャップは小さくなり過ぎてしまう。従って、第三の芳香環置換基を2位のみ、あるいは3位のみに導入したトリアリール置換クリセン化合物が青色発光層ホスト材料として最適である。また、クリセン環6位及び12位の第一及び第二の芳香環置換基は、分子間スタックの抑制や、分子の安定性を考慮した場合に必要となる置換基である。すなわち本発明に係るトリアリール置換クリセン化合物は、青色発光層ホスト材料として最適なエネルギーギャップを有し、対酸化性などの化学的安定性、歪のない構造的安定性、および分子間スタック抑制能の全てを同時に有している。
【0112】
また更に、本発明に係るトリアリール置換クリセン化合物は、先述のジアリール置換及びテトラアリール置換と比較して、分子構造全体としてより大きな非対称性を持たせることができる。この大きな非対称性によって、本発明に係るトリアリール置換クリセン化合物は結晶性が低くアモルファス性が高い。一般に、高いガラス転移点温度を有する化合物はアモルファス性が高いと言える。本発明のトリアリール置換クリセン化合物は140℃以上のガラス転移点温度を有し、クリセン環6位と12位のみアリール基で置換されたジアリール置換クリセン化合物に比べて、高いガラス転移点温度を有している。この理由として、クリセン環の2位または3位に第三の芳香環置換基が導入されることで分子の対称性が崩れ、結晶性よりもアモルファス性の方が高い化合物になり、高いガラス性が得られたためだと考えられる。従って、これを有機発光素子に用いた場合、通電素子中においても安定なアモルファス膜が維持され、素子の発光劣化の軽減に効果があると考えられる。
【0113】
ところで、上述のように本発明に係るクリセン化合物はキャリア輸送性が良好であるため、隣接する発光層へ陰極からの電子を輸送する電子輸送層に含めることが好ましい。特に、本発明に係るクリセン化合物は比較的HOMO準位が深い(イオン化ポテンシャルが大きい)ので、電子輸送層として用いるとホールブロック性も発現されて、発光層にキャリアであるホールを閉じ込めることができ、素子の発光効率を高くすることができる。特に、本発明に係るクリセン化合物のうち、青色発光層ホスト材料として用いるにしてはエネルギーギャップが幾分大き過ぎるものであったとしても、電子輸送層としては好ましく用いることが出来るものがある。このような化合物は隣接する発光層のエネルギーギャップよりも大きいエネルギーギャップを有し、そのためエキシトンブロック性あるいはホールブロック性などが良好であり、その結果素子の発光効率がより高くなる。
【0114】
このようなクリセン化合物の具体例としては、先に示した例示化合物C700群及びC800群が挙げられる。これら化合物に共通するのは、クリセン環とクリセン環6位及び2位に置換されている芳香環の二面角が非常に大きくてほぼ直交し、クリセン環と置換芳香環とのπ共役が切断されて、化合物のエネルギーギャップが大きいことである。
【0115】
上述の効果を持たせる芳香環置換基として、ナフタレン−1−イル基が挙げられる。なぜならクリセン環6位にナフタレン−1−イル基が置換している場合、クリセン環7位の水素原子とナフタレン環8位の水素原子のペリ位水素原子同士の大きな立体反発によって、クリセン環とナフタレン環はほぼ直交するからである。同様に、クリセン環6位にフルオレン−4−イル基またはフェナントレン−9−イル基を置換させても、クリセン環と置換芳香環はほぼ直交し、同様のエネルギーギャップを拡大する効果が得られる。この場合、クリセン環7位の水素原子との大きく立体反発するのは、フルオレン環5位の水素原子およびフェナントレン環8位の水素原子である。
【0116】
一方、例示化合物C100群及びC500群は、クリセン環6位及び12位に、上記のような立体反発がなくクリセン環との二面角が大きくならない芳香環置換基が導入され、クリセン環2位に第三の芳香環置換基が導入されている。従って、前述のように、化合物のエネルギーギャップは青色発光層ホスト材料として好ましい範囲の値となる。また同時に、電子輸送層材料としても用いても、十分なエキシトンブロック性を発揮できるエネルギーギャップの大きさとなる。そのため、例示化合物C100群乃至C500群は、青色発光層ホスト材料と電子輸送層材料の両方に好ましく用いることができる。
【0117】
同様に、例示化合物C200群及びC600群も、青色発光層ホスト材料と電子輸送層材料の両方に好ましく用いることができる。さらに、エネルギーギャップ狭化の効果が大きいクリセン環3位に、第三の芳香環置換基が導入されているので、化合物のエネルギーギャップは比較的小さくなり易い。そのため、エキシトンブロック性が不十分な場合もあるため、青色発光層ホスト材料として用いる方がより好ましい。
【0118】
さらに同様に、例示化合物C300群及びC400群も、青色発光層ホスト材料と電子輸送層材料の両方に好ましく用いることができる。特に、電子供与基となるメチル基及びアルコキシ基がクリセン環に直接導入されている化合物は、HOMO準位がより浅い化合物となり、青色発光層ホスト材料に用いた際にホール輸送層からのホール注入性が大きくなると考えられる。また、電子吸引基となるハロゲン化アルキル基がクリセン環に直接導入されている化合物は、HOMO準位がより深い化合物となり、電子輸送材料に用いた際のホールブロック性が大きくなると考えられる。
【0119】
また本発明に係るクリセン化合物は、有機発光素子に用いられる場合には直前の精製として昇華精製が好ましい。なぜなら、有機化合物の高純度化において、昇華精製は精製効果が大きいからである。このような昇華精製においては、一般に、有機化合物の分子量が大きいほど高温が必要とされ、この場合、高温による熱分解などを起こしやすい。従って、有機発光素子に用いられる有機化合物は、過大な加熱なく昇華精製を行うことが可能な、分子量が1000以下であることが好ましい。
【0120】
以上のように、本発明の有機発光素子は、有機化合物からなる層に本発明のクリセン化合物が少なくとも一種含まれるものである。また、本発明のクリセン化合物は、好ましくは青色発光素子の発光層ホスト材料、あるいは電子輸送層材料として使用するものであるが、その用途はこれらに限定されることはない。他の用途として具体的には、緑色発光素子の発光層におけるホスト材料等として使用してもよい。
【0121】
本本発明に係るクリセン化合物が、青色発光素子の発光層ホスト材料として用いられるときに青色発光素子のゲスト材料として好ましく用いられる化合物の具体例を以下に示す。
【0122】
【化24】

【0123】
また、本発明に係るクリセン化合物は、発光層のゲスト材料として用いてもよい。
【0124】
さらに、本発明に係るクリセン化合物は、発光層以外の各層、即ちホール注入層、ホール輸送層、ホールブロッキング層、エキシトンブロッキング層、電子輸送層、電子注入層の何れに用いてもよい。
【0125】
ここで、本発明に係る有機発光素子は、本発明に係るクリセン化合物以外にも、必要に応じて従来公知の低分子系及び高分子系のホール輸送性化合物、発光性化合物あるいは電子輸送性化合物等を一緒に使用することができる。
【0126】
以下にこれらの化合物例を挙げる。
【0127】
ホール注入輸送性材料としては、陽極からのホールの注入が容易で、注入されたホールを発光層へと輸送することができるように、ホール移動度が高い材料が好ましい。ホール注入輸送性能を有する低分子及び高分子系材料としては、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、ポリ(ビニルカルバゾール)、ポリ(チオフェン)、その他導電性高分子が挙げられる。
【0128】
主に発光機能に関わる発光材料としては、前述の青色発光ゲスト材料、もしくはその誘導体以外に、縮環化合物(例えばフルオレン誘導体、ナフタレン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、テトラセン誘導体、アントラセン誘導体、ルブレン等)、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、スチルベン誘導体、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム等の有機アルミニウム錯体、有機ベリリウム錯体、及びポリ(フェニレンビニレン)誘導体、ポリ(フルオレン)誘導体、ポリ(フェニレン)誘導体等の高分子誘導体が挙げられる。
【0129】
電子注入輸送性材料としては、陰極からの電子の注入が容易で、注入された電子を発光層へ輸送することができるものから任意に選ぶことができ、ホール注入輸送性材料のホール移動度とのバランス等を考慮して選択される。電子注入輸送性能を有する材料としては、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラジン誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、有機アルミニウム錯体等が挙げられる。
【0130】
陽極材料としては、仕事関数がなるべく大きなものがよい。例えば、金、白金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、コバルト、セレン、バナジウム、タングステン等の金属単体あるいはこれらを組み合わせた合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)、酸化亜鉛インジウム等の金属酸化物が使用できる。また、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性ポリマーも使用できる。これらの電極物質は一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用して使用してもよい。また、陽極は一層で構成されていてもよく、複数の層で構成されていてもよい。
【0131】
一方、陰極材料としては、仕事関数の小さなものがよい。例えば、リチウム等のアルカリ金属、カルシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム、チタニウム、マンガン、銀、鉛、クロム等の金属単体が挙げられる。あるいはこれら金属単体を組み合わせた合金も使用することができる。例えば、マグネシウム−銀、アルミニウム−リチウム、アルミニウム−マグネシウム等が使用できる。酸化錫インジウム(ITO)等の金属酸化物の利用も可能である。これらの電極物質は一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用して使用してもよい。また、陰極は一層で構成されていてもよく、複数の層で構成されていてもよい。
【0132】
本発明の有機発光素子で使用される基板としては、特に限定するものではないが、金属製基板、セラミックス製基板等の不透明性基板、ガラス、石英、プラスチックシート等の透明性基板が用いられる。また、基板にカラーフィルター膜、蛍光色変換フィルター膜、誘電体反射膜等を用いて発色光をコントロールすることも可能である。
【0133】
尚、作製した素子に対して、酸素や水分等との接触を防止する目的で保護層あるいは封止層を設けることもできる。保護層としては、ダイヤモンド薄膜、金属酸化物、金属窒化物等の無機材料膜、フッ素樹脂、ポリエチレン、シリコン樹脂、ポリスチレン樹脂等の高分子膜、さらには、光硬化性樹脂等が挙げられる。また、ガラス、気体不透過性フィルム、金属等で被覆し、適当な封止樹脂により素子自体をパッケージングすることもできる。また、素子の光取り出し方向に関しては、ボトムエミッション構成(基板側から光を取り出す構成)及び、トップエミッション(基板の反対側から光を取り出す構成)のいずれも可能である。
【0134】
本発明の有機発光素子において、本発明のクリセン化合物が含まれる層及びその他の有機化合物からなる層は、以下に示す方法により形成される。具体的には真空蒸着法、イオン化蒸着法、スパッタリング、プラズマあるいは、適当な溶媒に溶解させて塗布法(例えば、スピンコーティング、ディッピング、キャスト法、LB法、インクジェット法等)により薄膜を形成する。ここで真空蒸着法や溶液塗布法等によって層を形成すると、結晶化等が起こりにくく経時安定性に優れる。また塗布法で成膜する場合は、適当なバインダー樹脂と組み合わせて膜を形成することもできる。
【0135】
上記バインダー樹脂としては、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらバインダー樹脂は、ホモポリマー又は共重合体として、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を混合して使用してもよい。さらに必要に応じて、公知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を併用してもよい。
【0136】
本発明の有機発光素子は、省エネルギーや高輝度が必要な製品への応用が可能である。応用例としてはフラットパネルディスプレイ等の表示装置、レーザービームプリンター等の電子写真方式の画像形成装置の感光体への露光光源、照明装置、液晶表示装置のバックライト等が考えられる。
【0137】
表示装置は複数の有機発光素子を独立に発光させることで画像を表示する装置のみならず、例えば装置の異常を知らせるための発光点としての装置も含まれる。表示装置はデジタルカメラや電子写真方式の画像形成装置が表示部として有してもよい。
【0138】
また、レーザービームプリンター等の電子写真方式の画像形成装置の感光体への露光光源としては複数の有機発光素子を感光体の長尺方向にライン状に並べ、それぞれの有機発光素子を独立に発光制御できるようしたものを提供することができる。このようにすることで画像形成装置の露光部の装置体積を大幅に減少することができる。
【0139】
次に、本発明に係る有機発光素子を使用したアクティブマトリクスタイプの表示装置について図面を挙げて説明する。この表示装置は、有機発光素子と、その有機発光素子に電気信号を供給する手段と、を有する。
【0140】
図1は本実施形態に係る表示装置の断面模式図である。表示装置3は基板31の上に複数の有機発光素子を有している。本図では2つの有機発光素子が図示されている。有機発光素子は陽極311、有機層312、陰極313を有する。
【0141】
基板31は例えばガラスの板である。
基板31には防湿膜32が設けられる。防湿膜32はその上部に作られる部材(TFT又は有機層)を保護するために設けられる。防湿膜32を構成する材料としては、酸化ケイ素又は酸化ケイ素と窒化ケイ素との複合体等が挙げられる。防湿膜32の上には2つのTFTのそれぞれが有するゲート電極33が設けられる。ゲート電極はスパッタリングによりCr等の金属を防湿膜32上に設け、その金属をパターニングすることで得ることが出来る。
【0142】
ゲート電極33にはそれを覆うゲート絶縁膜34が設けられる。ゲート絶縁膜34は酸化シリコン等をプラズマCVD法又は触媒化学気相成長法(cat−CVD法)等により製膜し、パターニングして得られる。
【0143】
ゲート絶縁膜34にはその上に半導体層35が設けられる。半導体層35はプラズマCVD法等により(場合によっては290℃以上の温度でアニールして)シリコン膜を製膜し、パターニングすることで得られる。
【0144】
さらに、この半導体膜35にドレイン電極36とソース電極37とが設けられている。このようにしてスイッチング素子であるTFT素子38が2つ図中に記されている。
【0145】
それぞれのスイッチング素子はそれぞれの有機発光素子に対応して有機発光素子と接続している。スイッチング素子は有機発光素子の発光と非発光をスイッチングする。本図ではスイッチング素子であるTFT素子38のソース電極37がコンタクトホール310を介して有機発光素子の陽極311と接続している。
【0146】
TFT素子38は絶縁膜39によって覆われている。
絶縁膜30は2つのTFT素子を覆うのみならず、その上面が平坦となっている。この絶縁膜39の上に有機発光素子が設けられている。
有機層312は多層あるいは単層でもよい。本図にはさらに有機発光素子の劣化を防ぐための第一の保護層314や第二の保護層315が図示されている。
本実施形態に係る表示装置においてスイッチング素子に特に制限はなく、単結晶シリコン基板やMIM素子、a−Si型の素子等を用いてもよい。
【実施例】
【0147】
<実施例1>(例示化合物C101の合成)
(1)2−クロロクリセンの合成
【0148】
【化25】

【0149】
2−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒドから1−ホルミルナフタレン−2−イル−トリフルオロメタンスルホン酸を合成した。また2−ブロモ−5−クロロベンズアルデヒドから4−クロロ−2−ホルミルフェニルボロン酸を合成した。
【0150】
以下に示す試薬、溶媒を300mL三口フラスコに投入した。
1−ホルミルナフタレン−2−イル−トリフルオロメタンスルホン酸:9.97g(32.8mmol)
4−クロロ−2−ホルミルフェニルボロン酸:5.75g(31.2mmol)
テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0):1.0g(0.86mmol)
トルエン:100mL
エタノール:50mL
10wt%炭酸ナトリウム水溶液:50mL
この反応溶液を、窒素下、撹拌しながら3時間加熱還流させた。反応終了後、反応溶液を水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた後に濃縮し粗生成物を得た。次にこの粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン/ヘプタン=2/1)で精製し、2−(4−クロロ−2−ホルミルフェニル)−1−ナフトアルデヒドを6.55g(収率71%)得た。
【0151】
続いて、以下に示す試薬、溶媒を滴下漏斗を備えた500mL三口フラスコに投入した。
2−(4−クロロ−2−ホルミルフェニル)−1−ナフトアルデヒド:6.55g(22.2mmol)
酢酸:350mL
この反応溶液を、窒素下、撹拌しながら加熱還流させ、そこへ、滴下漏斗から、酢酸30mLにヒドラジン1水和物1.45g(28.9mmol)を混合させた溶液を50分間かけてゆっくり滴下し、滴下終了後、さらに3時間半加熱還流を続けた。反応終了後、反応溶液に水100mLを加えて撹拌し、析出した生成物をろ別し、メタノール/アセトン混合溶媒で加熱分散洗浄して精製し、2−クロロクリセンを4.44g(収率76%)得た。
【0152】
また、H−NMR測定により、得られた化合物の同定を行った。
【0153】
H−NMR(400MHz、CDCl)]
δ 8.75(d,1H),8.73(d,1H),8.68(d,1H),8.62(d,1H),8.01(d,1H),7.99(dd,1H),7.95(d,1H),7.90(d,1H),7.74(td,1H),7.64(m,2H).
(2)6,12−ジブロモ−2−クロロクリセンの合成
【0154】
【化26】

【0155】
以下に示す試薬、溶媒を滴下漏斗を備えた300mL三口フラスコに投入した。
2−クロロクリセン:4.10g(15.6mmol)
ニトロベンゼン:170mL
この反応溶液を、窒素下、撹拌しながら105℃に加熱し、そこへ、滴下漏斗から、ニトロベンゼン30mLに臭素1.8mL(34.9mmol)を混合させた溶液を10分間かけてゆっくり滴下し、滴下終了後、さらに3時間半加熱を続けた。反応終了後、反応溶液にメタノール50mLを加えて撹拌し、析出した結晶をろ別し、メタノール、エタノール、ヘキサンで洗浄を行った。得られた結晶をトルエンで再結晶して精製し、6,12−ジブロモ−2−クロロクリセンを5.94g(収率84%)得た。
また、H−NMR測定により、得られた化合物の同定を行った。
【0156】
H−NMR(400MHz、CDCl)]
δ 9.01(s,1H),8.91(s,1H),8.67(d,1H),8.61(d,1H),8.50−8.35(m,2H),8.77−8.73(m,3H).
(3)中間体Cl−204の合成
【0157】
【化27】

【0158】
以下に示す試薬、溶媒を200mLナスフラスコに投入した。
6,12−ジブロモ−2−クロロクリセン:1.50g(3.57mmol)
ボロン酸化合物BO−04:1.29g(7.49mmol)
テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0):0.20g(0.17mmol)
トルエン:50mL
エタノール:25mL
10wt%炭酸ナトリウム水溶液:25mL
この反応溶液を、窒素下、撹拌しながら4時間半加熱還流させた。反応終了後、析出した結晶をろ別し、水、エタノール、ヘキサンで洗浄し粗生成物を得た。次にこの粗生成物をクロロベンゼンに加熱溶解後、熱時ろ過し、トルエン/ヘプタン混合溶媒で加熱分散洗浄して精製し、中間体Cl−204を1.67g(収率91%)得た。
【0159】
(4)例示化合物C101の合成
【0160】
【化28】

【0161】
以下に示す試薬、溶媒を100mLナスフラスコに投入した。
中間体Cl−204:800mg(1.55mmol)
ボロン酸化合物BO−04:320mg(1.86mmol)
酢酸パラジウム(II):18mg(80μmol)
ジシクロヘキシル(2’,6’−ジメトキシビフェニル−2−イル)ホスフィン:80mg(194μmol)
りん酸カリウム:0.99g(4.66mmol)
トルエン:40mL
【0162】
この反応溶液を、撹拌しながら7時間加熱還流させた。反応終了後、析出した結晶をろ別し、水、エタノール、アセトンで洗浄し粗生成物を得た。次にこの粗生成物をトルエンに加熱溶解後、熱時ろ過し、トルエン/オクタンで再結晶を行った。得られた結晶を150℃で真空乾燥後、10−4Pa、360℃の条件下で昇華精製を行い、高純度の例示化合物C101を518mg(収率55%)得た。
【0163】
得られた化合物の同定を行った結果を以下に示す。
【0164】
[MALDI−TOF−MS(マトリックス支援イオン化−飛行時間型質量分析)]
実測値:m/z=605.99 計算値:C4830=606.23
H−NMR(400MHz、CDCl)]
δ 9.00(d,1H),8.91(d,1H),8.84(d,2H),8.42(d,1H),8.23(s,1H),8.18(s,1H),8.15−7.95(m,9H),7.92−7.70(m,7H),7.65−7.55(m,5H),7.47(m,2H).
また例示化合物C108について、以下の方法でエネルギーギャップの測定を行った。
【0165】
例示化合物C101をガラス基板上に加熱蒸着し、膜厚20nmの蒸着薄膜を得た。この蒸着薄膜について、紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製V−560)を用いて吸光スペクトルを測定した。得られた吸光スペクトルの吸収端を求めると403nmであり、例示化合物C101のエネルギーギャップは3.08eVであった。
【0166】
さらに、例示化合物C101について示差走査熱量計(パーキンエルマー社製)を用いてDSC分析を行うと、ガラス転移点温度は144℃であった。
【0167】
<実施例2>(例示化合物C103の合成)
【0168】
【化29】

【0169】
以下に示す試薬、溶媒を100mLナスフラスコに投入した。
6,12−ジブロモ−2−クロロクリセン:400mg(0.95mmol)
ボロン酸化合物BO−06:1.01g(3.14mmol)
酢酸パラジウム(II):22mg(98μmol)
ジシクロヘキシル(2’,6’−ジメトキシビフェニル−2−イル)ホスフィン:98mg(239μmol)
りん酸カリウム:606mg(2.85mmol)
トルエン:30mL
水:0.75mL
【0170】
この反応溶液を、窒素下において撹拌しながら100℃で33時間加熱した。反応終了後、反応溶液を水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた後に濃縮し粗生成物を得た。次にこの粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘプタン/トルエン=3/1)で精製した後、さらにトルエン/ヘプタン溶媒で再結晶を行った。得られた結晶を150℃で真空乾燥後、10−4Pa、370℃の条件下で昇華精製を行い、高純度の例示化合物C103を473mg(収率62%)得た。
【0171】
得られた化合物の同定を行った結果を以下に示す。
[MALDI−TOF−MS]
実測値:m/z=804.40 計算値:C6348=804.38
H−NMR(400MHz、CDCl)]
δ 8.99(d,1H),8.93(d,1H),8.81(d,2H),8.47(d,1H),8.13(d,1H),8.05(dd,1H),7.95(t,2H),7.86(m,3H),7.81−7.57(m,9H),7.53(m,2H),7.50−7.30(m,7H),1.66(s,6H),1.62(s,6H),1.49(s,6H).
また例示化合物C103について、実施例1−(4)と同様の方法でエネルギーギャップの測定を行ったところ、吸光スペクトルの吸収端は405nmであり、例示化合物C103のエネルギーギャップは3.06eVであった。
【0172】
さらに、例示化合物C103について実施例1−(4)と同様の方法でDSC分析を行うと、ガラス転移点温度は189℃であった。
【0173】
<実施例3>(例示化合物C107の合成)
【0174】
【化30】

【0175】
以下に示す試薬、溶媒を200mLナスフラスコに投入した。
中間体Cl−204:1.60g(3.11mmol)
ボロン酸化合物BO−06:1.05g(3.26mmol)
酢酸パラジウム(II):42mg(186μmol)
ジシクロヘキシル(2’,6’−ジメトキシビフェニル−2−イル)ホスフィン:191mg(466μmol)
りん酸カリウム:1.98g(9.32mmol)
トルエン:80mL
水:2mL
【0176】
この反応溶液を、窒素下において撹拌しながら100℃で5時間加熱した。反応終了後、反応溶液を水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた後に濃縮し粗生成物を得た。次にこの粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘプタン/クロロホルム=3/1)で精製した後、さらにトルエン/オクタン溶媒で再結晶を行った。得られた結晶を150℃で真空乾燥後、10−4Pa、370℃の条件下で昇華精製を行い、高純度の例示化合物C107を0.99g(収率47%)得た。
【0177】
得られた化合物の同定を行った結果を以下に示す。
[MALDI−TOF−MS]
実測値:m/z=672.16 計算値:C5336=672.28
H−NMR(400MHz、CDCl)]
δ 8.96(d,1H),8.91(d,1H),8.83(d,2H),8.37(d,1H),8.22(s,1H),8.17(s,1H),8.15−7.94(m,8H),7.87(dd,1H),7.81(dd,1H),7.72(t,4H),7.68−7.51(m,6H),7.43(m,1H),7.32(m,2H),1.50(s,6H).
また例示化合物C107について、実施例1−(4)と同様の方法でエネルギーギャップの測定を行ったところ、吸光スペクトルの吸収端は403nmであり、例示化合物C107のエネルギーギャップは3.08eVであった。
【0178】
さらに、例示化合物C107について実施例1−(4)と同様の方法でDSC分析を行うと、ガラス転移点温度は161℃であった。
【0179】
<実施例4>(例示化合物C110の合成)
(1)中間体Cl−206の合成
【0180】
【化31】

【0181】
以下に示す試薬、溶媒を300mLナスフラスコに投入した。
6,12−ジブロモ−2−クロロクリセン:2.00g(4.76mmol)
ボロン酸化合物BO−06:3.20g(9.99mmol)
テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0):165mg(143μmol)
トルエン:80mL
エタノール:40mL
10wt%炭酸ナトリウム水溶液:40mL
【0182】
この反応溶液を、窒素下、撹拌しながら3時間加熱還流させた。反応終了後、反応溶液を水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた後に濃縮し粗生成物を得た。次にこの粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘプタン/クロロホルム=4/1)で精製した後、さらにヘプタン/エタノール混合溶媒で加熱分散洗浄して精製し、中間体Cl−206を2.71g(収率88%)得た。
【0183】
(2)例示化合物C110の合成
【0184】
【化32】

【0185】
以下に示す試薬、溶媒を200mLナスフラスコに投入した。
中間体Cl−206:1.80g(2.78mmol)
ボロン酸化合物BO−04:574mg(3.34mmol)
酢酸パラジウム(II):62mg(276μmol)
ジシクロヘキシル(2’,6’−ジメトキシビフェニル−2−イル)ホスフィン:285mg(694μmol)
りん酸カリウム:1.77g(8.34mmol)
トルエン:90mL
この反応溶液を、窒素下において撹拌しながら105℃で16時間加熱した。反応終了後、反応溶液を水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた後に濃縮し粗生成物を得た。次にこの粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘプタン/クロロホルム=3/1)で精製し、ヘプタン/酢酸エチル混合溶媒で加熱分散洗浄した後、さらにトルエン/オクタン溶媒で再結晶を2回行った。得られた結晶を150℃で真空乾燥後、10−4Pa、380℃の条件下で昇華精製を行い、高純度の例示化合物C110を1.24g(収率60%)得た。
【0186】
得られた化合物の同定を行った結果を以下に示す。
[MALDI−TOF−MS]
実測値:m/z=738.46 計算値:C5842=738.33
H−NMR(400MHz、CDCl)]
δ 9.01(d,1H),8.93(d,1H),8.84(s,1H),8.80(s,1H),8.52(d,1H),8.13(m,3H),7.95(t,2H),7.91−7.78(m,7H),7.78−7.70(m,3H),7.67(dd,1H),7.61(t,1H),7.53(m,2H),7.50−7.32(m,6H),1.67(s,6H),1.62(s,6H).
また例示化合物C110について、実施例1−(4)と同様の方法でエネルギーギャップの測定を行ったところ、吸光スペクトルの吸収端は412nmであり、例示化合物C110のエネルギーギャップは3.01eVであった。
【0187】
さらに、例示化合物C110について実施例1−(4)と同様の方法でDSC分析を行うと、ガラス転移点温度は181℃であった。
【0188】
<実施例5>(例示化合物C201の合成)
(1)3−クロロクリセンの合成
【0189】
【化33】

【0190】
2−ブロモ−4−クロロベンズアルデヒドから5−クロロ−2−ホルミルフェニルボロン酸を合成した。
【0191】
以下に示す試薬、溶媒を200mLナスフラスコに投入した。
1−ホルミルナフタレン−2−イル−トリフルオロメタンスルホン酸:5.37g(17.7mmol)
5−クロロ−2−ホルミルフェニルボロン酸:2.96g(16.1mmol)
テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0):0.60g(0.52mmol)
トルエン:60mL
エタノール:30mL
10wt%炭酸ナトリウム水溶液:30mL
この反応溶液を、窒素下、撹拌しながら7時間加熱還流させた。反応終了後、反応溶液を水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた後に濃縮し粗生成物を得た。次にこの粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン/ヘプタン=5/1)で精製し、2−(5−クロロ−2−ホルミルフェニル)−1−ナフトアルデヒドを2.24g(収率47%)得た。
【0192】
続いて、以下に示す試薬、溶媒を滴下漏斗を備えた300mL三口フラスコに投入した。
2−(5−クロロ−2−ホルミルフェニル)−1−ナフトアルデヒド:2.05g(6.96mmol)
酢酸:160mL
【0193】
この反応溶液を、窒素下、撹拌しながら加熱還流させ、そこへ、滴下漏斗から、酢酸25mLにヒドラジン1水和物0.46g(9.04mmol)を混合させた溶液を20分間かけてゆっくり滴下し、滴下終了後、さらに5時間加熱還流を続けた。反応終了後、反応溶液に水50mLを加えて撹拌し、析出した結晶をろ別し、メタノール/アセトン混合溶媒で加熱分散洗浄して精製し、3−クロロクリセンを1.50g(収率82%)得た。
【0194】
また、H−NMR測定により、得られた化合物の同定を行った。
H−NMR(400MHz、CDCl)]
δ 8.78(d,1H),8.75(d,1H),8.72(d,1H),8.61(d,1H),8.05−7.90(m,4H),7.73(td,1H),7.66(t,1H),7.59(dd,1H).
(2)6,12−ジブロモ−3−クロロクリセンの合成
【0195】
【化34】

【0196】
以下に示す試薬、溶媒を滴下漏斗を備えた200mL三口フラスコに投入した。
3−クロロクリセン:1.49g(5.67mmol)
ニトロベンゼン:65mL
この反応溶液を、窒素下、撹拌しながら105℃に加熱し、そこへ、滴下漏斗から、ニトロベンゼン10mLに臭素0.62mL(12.0mmol)を混合させた溶液を10分間かけてゆっくり滴下し、滴下終了後、さらに3時間半加熱を続けた。反応終了後、反応溶液にメタノール30mLを加えて撹拌し、析出した結晶をろ別し、メタノール、エタノール、ヘキサンで洗浄を行った。得られた結晶をトルエンで再結晶して精製し、6,12−ジブロモ−3−クロロクリセンを1.99g(収率84%)得た。
【0197】
また、H−NMR測定により、得られた化合物の同定を行った。
H−NMR(400MHz、CDCl)]
δ 8.99(s,1H),8.89(s,1H),8.75−8.65(m,2H),8.46(m,1H),8.38(d,1H),7.79(m,2H),7.70(dd,1H).
(3)中間体Cl−304の合成
【0198】
【化35】

【0199】
以下に示す試薬、溶媒を100mLナスフラスコに投入した。
6,12−ジブロモ−3−クロロクリセン:0.978g(2.32mmol)
ボロン酸化合物BO−04:0.879g(5.11mmol)
テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0):0.134g(0.116mmol)
トルエン:30mL
エタノール:15mL
10wt%炭酸ナトリウム水溶液:15mL
この反応溶液を、窒素下、撹拌しながら4時間加熱還流させた。反応終了後、析出した結晶をろ別し、水、エタノールで洗浄し粗生成物を得た。次にこの粗生成物をクロロベンゼンに加熱溶解後、熱時ろ過し、トルエン/オクタン混合溶媒で加熱分散洗浄して精製し、中間体Cl−304を1.10g(収率92%)得た。
【0200】
(4)例示化合物C201の合成
【0201】
【化36】

【0202】
以下に示す試薬、溶媒を50mLナスフラスコに投入した。
中間体Cl−304:600mg(1.16mmol)
ボロン酸化合物BO−04:241mg(1.40mmol)
酢酸パラジウム(II):15mg(67μmol)
ジシクロヘキシル(2’,6’−ジメトキシビフェニル−2−イル)ホスフィン:62mg(151μmol)
りん酸カリウム:0.75g(3.49mmol)
トルエン:30mL
この反応溶液を、窒素下で撹拌しながら100℃で7時間半時間加熱した。反応終了後、反応溶液を水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた後に濃縮し粗生成物を得た。次にこの粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘプタン/トルエン=3/1)で精製し、さらにトルエン/オクタンで2回再結晶を行った。得られた結晶を150℃で真空乾燥後、10−4Pa、370℃の条件下で昇華精製を行い、高純度の例示化合物C201を113mg(収率16%)得た。
【0203】
得られた化合物の同定を行った結果を以下に示す。
[MALDI−TOF−MS]
実測値:m/z=606.11 計算値:C4830=606.23
H−NMR(400MHz、CDCl)]
δ 9.19(d,1H),8.94(s,1H),8.92(s,1H),8.84(s,1H),8.30−8.15(m,4H),8.15−7.92(m,11H),7.92−7.77(m,3H),7.73(td,1H),7.70−7.55(m,5H),7.50(m,2H).
また例示化合物C201について、実施例1−(4)と同様の方法でエネルギーギャップの測定を行ったところ、吸光スペクトルの吸収端は408nmであり、例示化合物C201のエネルギーギャップは3.04eVであった。
【0204】
さらに、例示化合物C201について実施例1−(4)と同様の方法でDSC分析を行うと、ガラス転移点温度は144℃であった。
【0205】
<実施例6>(例示化合物C202の合成)
【0206】
【化37】

【0207】
以下に示す試薬、溶媒を50mLナスフラスコに投入した。
6,12−ジブロモ−3−クロロクリセン:400mg(0.95mmol)
ボロン酸化合物BO−06:1.07g(3.33mmol)
酢酸パラジウム(II):43mg(190μmol)
ジシクロヘキシル(2’,6’−ジメトキシビフェニル−2−イル)ホスフィン:195mg(476μmol)
りん酸カリウム:0.81g(3.80mmol)
トルエン:30mL
水:0.75mL
この反応溶液を、窒素下において撹拌しながら100℃で12時間加熱した。反応終了後、反応溶液を水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた後に濃縮し粗生成物を得た。次にこの粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘプタン/クロロホルム=3/1)で精製した後、さらにトルエン/ヘプタン溶媒で再結晶を行った。得られた結晶を150℃で真空乾燥後、10−4Pa、370℃の条件下で昇華精製を行い、高純度の例示化合物C202を442mg(収率58%)得た。
【0208】
得られた化合物の同定を行った結果を以下に示す。
[MALDI−TOF−MS]
実測値:m/z=804.43 計算値:C6348=804.38
H−NMR(400MHz、CDCl)]
δ 9.12(s,1H),8.93(d,1H),8.88(s,1H),8.79(s,1H),8.22(d,1H),8.15(d,1H),8.00−7.50(m,15H),7.51(t,2H),7.49−7.30(m,7H),1.63(s,6H),1.61(s,6H),1.56(s,6H).
また例示化合物C202について、実施例1−(4)と同様の方法でエネルギーギャップの測定を行ったところ、吸光スペクトルの吸収端は412nmであり、例示化合物C202のエネルギーギャップは3.01eVであった。
【0209】
さらに、例示化合物C202について実施例1−(4)と同様の方法でDSC分析を行うと、ガラス転移点温度は191℃であった。
【0210】
<実施例7>(例示化合物C501の合成)
【0211】
【化38】

【0212】
以下に示す試薬、溶媒を50mLナスフラスコに投入した。
中間体Cl−204:484mg(0.94mmol)
ボロン酸化合物BO−01:178mg(1.03mmol)
酢酸パラジウム(II):13mg(56μmol)
ジシクロヘキシル(2’,6’−ジメトキシビフェニル−2−イル)ホスフィン:58mg(141μmol)
りん酸カリウム:600mg(2.83mmol)
トルエン:24mL
【0213】
この反応溶液を、窒素下において撹拌しながら105℃で10時間加熱した。反応終了後、反応溶液を水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた後に濃縮し粗生成物を得た。次にこの粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘプタン/トルエン=3/1)で精製した後、さらにアセトン/エタノール混合溶媒で加熱分散洗浄を行った。得られた結晶を150℃で真空乾燥後、10−4Pa、350℃の条件下で昇華精製を行い、高純度の例示化合物C501を146mg(収率26%)得た。
【0214】
得られた化合物の同定を行った結果を以下に示す。
[MALDI−TOF−MS]
実測値:m/z=606.16 計算値:C4830=606.23
H−NMR(400MHz、CDCl)]
δ 9.00(d,1H),8.92(d,1H),8.87(d,2H),8.35−7.68(m,18H),7.68−7.32(m,8H).
また例示化合物C501について、実施例1−(4)と同様の方法でエネルギーギャップの測定を行ったところ、吸光スペクトルの吸収端は404nmであり、例示化合物C501のエネルギーギャップは3.07eVであった。
【0215】
<実施例8>(例示化合物C505の合成)
【0216】
【化39】

【0217】
以下に示す試薬、溶媒を50mLナスフラスコに投入した。
中間体Cl−204:500mg(0.97mmol)
ボロン酸化合物BO−10:504mg(1.17mmol)
酢酸パラジウム(II):22mg(97μmol)
ジシクロヘキシル(2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル−2−イル)ホスフィン:139mg(291μmol)
りん酸カリウム:618mg(2.91mmol)
トルエン:25mL
水:0.6mL
【0218】
この反応溶液を、窒素下において撹拌しながら100℃で6時間加熱した。反応終了後、反応溶液を水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた後に濃縮し粗生成物を得た。次にこの粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘプタン/トルエン=4/1)で精製した後、さらに酢酸エチル/トルエン混合溶媒で加熱分散洗浄を行った。得られた結晶を150℃で真空乾燥後、10−4Pa、370℃の条件下で昇華精製を行い、高純度の例示化合物C505を415mg(収率54%)得た。
【0219】
得られた化合物の同定を行った結果を以下に示す。
[MALDI−TOF−MS]
実測値:m/z=784.27 計算値:C6152=784.41
H−NMR(400MHz、CDCl)]
δ 8.99(d,1H),8.94(d,1H),8.88(d,2H),8.28−7.65(m,14H),7.65−7.27(m,8H),7.05(d,1H),6.92(d,1H),1.55(s,6H),1.35(s,9H),1.31(s,9H).
また例示化合物C505について、実施例1−(4)と同様の方法でエネルギーギャップの測定を行ったところ、吸光スペクトルの吸収端は397nmであり、例示化合物C505のエネルギーギャップは3.12eVであった。
【0220】
<実施例9>(例示化合物C703の合成)
(1)中間体Cl−201の合成
【0221】
【化40】

【0222】
以下に示す試薬、溶媒を300mLナスフラスコに投入した。
6,12−ジブロモ−2−クロロクリセン:0.82g(1.95mmol)
ボロン酸化合物BO−01:0.74g(4.31mmol)
テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0):68mg(59μmol)
トルエン:100mL
エタノール:50mL
10wt%炭酸ナトリウム水溶液:50mL
【0223】
この反応溶液を、窒素下、撹拌しながら12時間加熱還流させた。反応終了後、反応溶液を水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させた後に濃縮し粗生成物を得た。次にこの粗生成物をメタノール溶媒で加熱分散洗浄した後、トルエンで再結晶して精製し、中間体Cl−201を0.70g(収率70%)得た。
【0224】
(2)例示化合物C703の合成
【0225】
【化41】

【0226】
以下に示す試薬、溶媒を100mLナスフラスコに投入した。
中間体Cl−201:0.64g(1.24mmol)
ボロン酸化合物BO−06:0.43g(1.35mmol)
酢酸パラジウム(II):17mg(80μmol)
ジシクロヘキシル(2’,6’−ジメトキシビフェニル−2−イル)ホスフィン:71mg(170μmol)
りん酸カリウム:0.91g(4.29mmol)
トルエン:40mL
水:10mL
【0227】
この反応溶液を、窒素下で撹拌しながら98℃で48時間加熱した。反応終了後、反応溶液を水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させた後に濃縮し粗生成物を得た。次にこの粗生成物をメタノール溶媒、続いてエタノール溶媒で加熱分散洗浄した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘプタン/トルエン=3/1)で精製し、さらにメタノール溶媒で加熱分散洗浄を行った。得られた結晶を150℃で真空乾燥後、10−4Pa、370℃の条件下で昇華精製を行い、高純度の例示化合物C703を378mg(収率45%)得た。
【0228】
得られた化合物の同定を行った結果を以下に示す。
[MALDI−TOF−MS]
実測値:m/z=671.93 計算値:C5336=672.28
H−NMR(400MHz、CDCl)]
δ 9.00−8.75(m,4H),8.15−7.99(m,4H),7.94(dd,1H),7.84(d,1H),7.81−7.61(m,8H),7.61−7.50(m,4H),7.50−7.27(m,8H),1.43(s,3.3H),1.40(s,2.7H).
また例示化合物C703について、実施例1−(4)と同様の方法でエネルギーギャップの測定を行ったところ、吸光スペクトルの吸収端は385nmであり、例示化合物C703のエネルギーギャップは3.22eVであった。
【0229】
さらに、例示化合物C703について実施例1−(4)と同様の方法でDSC分析を行うと、ガラス転移点温度は189℃であった。
【0230】
<実施例10>(例示化合物C702の合成)
【0231】
【化42】

【0232】
以下に示す試薬、溶媒を100mLナスフラスコに投入した。
中間体Cl−201:0.74g(1.93mmol)
ボロン酸化合物BO−04:0.33g(1.35mmol)
酢酸パラジウム(II):49mg(0.22mmol)
ジシクロヘキシル(2’,6’−ジメトキシビフェニル−2−イル)ホスフィン:189mg(0.46mmol)
りん酸カリウム:1.64g(7.74mmol)
トルエン:20mL
水:1mL
この反応溶液を、窒素下で撹拌しながら98℃で9時間半加熱した。反応終了後、反応溶液を水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させた後に濃縮し粗生成物を得た。次にこの粗生成物をエタノール溶媒、続いてアセトン/メタノール混合溶媒で加熱分散洗浄した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘプタン/トルエン=7/3)で精製し、さらにエタノール溶媒、続いてアセトン/メタノール混合溶媒で加熱分散洗浄を行った。得られた結晶を150℃で真空乾燥後、10−4Pa、375℃の条件下で昇華精製を行い、高純度の例示化合物C702を418mg(収率43%)得た。
【0233】
得られた化合物の同定を行った結果を以下に示す。
[MALDI−TOF−MS]
実測値:m/z=606.01 計算値:C4830=606.23
H−NMR(400MHz、CDCl)]
δ 8.91(d,1H),8.88(d,2H),8.83(d,1H),8.20−7.95(m,5H),7.91(d,1H),7.88(s,1H),7.85−7.49(m,14H),7.49−7.39(m,3H),7.39−7.29(m,2H).
また例示化合物C702について、実施例1−(4)と同様の方法でエネルギーギャップの測定を行ったところ、吸光スペクトルの吸収端は376nmであり、例示化合物C702のエネルギーギャップは3.30eVであった。
【0234】
<比較例1>(エネルギーギャップの比較)
下記に示す、比較化合物H01乃至H03について、実施例1−(4)と同様の方法でエネルギーギャップの測定を行った。実施例1乃至10の結果と合わせて、結果を表3に示す。
【0235】
【化43】

【0236】
<比較例2>(ガラス転移点温度の比較)
上記の比較化合物H01及びH03について、実施例1−(4)と同様の方法でガラス転移点温度を行った。実施例1乃至10の結果と合わせて、結果を表3に示す。
【0237】
【表3】

【0238】
以下の実施例及び比較例において、有機発光素子の作製に使用した化合物を以下に示す。
【0239】
【化44】

【0240】
【化45】

【0241】
【化46】

【0242】
【化47】

【0243】
<実施例11>
本実施例では、多層型有機発光素子の第三の例で示した素子(陽極/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/陰極)を、以下に示す方法で作製した。
【0244】
ガラス基板上に、陽極としてITOをスパッタ法にて膜厚110nmで製膜したものを透明導電性支持基板(ITO基板)として使用した。このITO基板上に、以下に示す有機化合物層及び電極層を、10−5Paの真空チャンバー内で抵抗加熱による真空蒸着によって連続的に製膜した。このとき対向する電極面積は3mmになるように作製した。
ホール輸送層(30nm) HTL−1
発光層(30nm) ホスト:例示化合物C101、ゲスト:BD−3(重量比 5%)
電子輸送層(30nm) ETL−1
金属電極層1(0.5nm) LiF
金属電極層2(100nm) Al
次に、有機発光素子が、水分の吸着によって素子劣化が起こらないように、乾燥空気雰囲気中で保護用ガラス板をかぶせ、アクリル樹脂系接着材で封止した。以上のようにして有機発光素子を得た。
【0245】
得られた有機発光素子について、ITO電極を正極、Al電極を負極にして、4.6Vの印加電圧をかけたところ、発光効率が7.3cd/Aで、輝度1200cd/mの青色発光が観測された。またこの素子において、CIE色度座標は、(x,y)=(0.14,0.21)であった。さらに、この素子を100mA/cmの定電流密度を保ちながら100時間耐久駆動させると、初期輝度からの輝度減少率は25%であった。
【0246】
<実施例12>
実施例11において、発光層のホストを、例示化合物C101に代えて、例示化合物C103を使用した他は、実施例11と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例11と同様に評価を行った。結果を表4に示す。
【0247】
<実施例13>
実施例11において、発光層のホストを、例示化合物C101に代えて、例示化合物C107を使用した他は、実施例11と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例11と同様に評価を行った。結果を表4に示す。
【0248】
<実施例14>
実施例11において、発光層のホストを、例示化合物C101に代えて、例示化合物C110を使用した他は、実施例11と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例11と同様に評価を行った。結果を表4に示す。
【0249】
<実施例15>
実施例11において、発光層のホストを、例示化合物C101に代えて、例示化合物C201を使用した他は、実施例11と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例11と同様に評価を行った。結果を表4に示す。
【0250】
<実施例16>
実施例11において、発光層のホストを、例示化合物C101に代えて、例示化合物C202を使用した他は、実施例11と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例11と同様に評価を行った。結果を表4に示す。
【0251】
<比較例3>
実施例11において、発光層のホストを、例示化合物C101に代えて、比較化合物H01を使用した他は、実施例11と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例11と同様に評価を行った。結果を表4に示す。
【0252】
<比較例4>
実施例11において、発光層のホストを、例示化合物C101に代えて、比較化合物H02を使用した他は、実施例11と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例11と同様に評価を行った。結果を表4に示す。
【0253】
【表4】

【0254】
<実施例17>
本実施例では、多層型有機発光素子の第三の例で示した素子(陽極/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/陰極)において、電子輸送層がイオン化ポテンシャルの異なる二層から構成される素子を、以下に示す方法で作製した。
【0255】
実施例8と同様の方法で作製したITO基板上に、以下に示す有機化合物層及び電極層を、10−5Paの真空チャンバー内で抵抗加熱による真空蒸着によって連続的に製膜した。このとき対向する電極面積は3mmになるように作製した。
ホール輸送層(25nm) HTL−2
発光層(30nm) ホスト:BH−1、ゲスト:BD−7(重量比 5%)
電子輸送層1(10nm) 例示化合物C101
電子輸送層2(25nm) ETL−1
金属電極層1(0.5nm) LiF
金属電極層2(100nm) Al
次に、有機発光素子が、水分の吸着によって素子劣化が起こらないように、乾燥空気雰囲気中で保護用ガラス板をかぶせ、アクリル樹脂系接着材で封止した。以上のようにして有機発光素子を得た。
【0256】
得られた有機発光素子について、ITO電極を正極、Al電極を負極にして、4.2Vの印加電圧をかけたところ、発光効率が5.0cd/Aで、輝度1300cd/mの青色発光が観測された。またこの素子において、CIE色度座標は、(x,y)=(0.15,0.21)であった。さらに、この素子を50mA/cmの定電流密度を保ちながら250時間耐久駆動させると、初期輝度からの輝度減少率は9%であった。
【0257】
<実施例18>
実施例17において、電子輸送層1を、例示化合物C101に代えて、例示化合物C103を使用した他は、実施例17と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例17と同様に評価を行った。結果を表5に示す。
【0258】
<実施例19>
実施例17において、電子輸送層1を、例示化合物C101に代えて、例示化合物C107を使用した他は、実施例17と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例17と同様に評価を行った。結果を表5に示す。
【0259】
<実施例20>
実施例17において、電子輸送層1を、例示化合物C101に代えて、例示化合物C110を使用した他は、実施例17と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例17と同様に評価を行った。結果を表5に示す。
【0260】
<実施例21>
実施例17において、電子輸送層1を、例示化合物C101に代えて、例示化合物C201を使用した他は、実施例17と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例17と同様に評価を行った。結果を表5に示す。
【0261】
<実施例22>
実施例17において、電子輸送層1を、例示化合物C101に代えて、例示化合物C202を使用した他は、実施例17と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例17と同様に評価を行った。結果を表5に示す。
【0262】
<実施例23>
実施例17において、電子輸送層1を、例示化合物C101に代えて、例示化合物C501を使用した他は、実施例17と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例17と同様に評価を行った。結果を表5に示す。
【0263】
<実施例24>
実施例17において、電子輸送層1を、例示化合物C101に代えて、例示化合物C505を使用した他は、実施例17と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例17と同様に評価を行った。結果を表5に示す。
【0264】
<実施例25>
実施例17において、電子輸送層1を、例示化合物C101に代えて、例示化合物C702を使用した他は、実施例17と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例17と同様に評価を行った。結果を表5に示す。
【0265】
<実施例26>
実施例17において、電子輸送層1を、例示化合物C101に代えて、例示化合物C703を使用した他は、実施例17と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例17と同様に評価を行った。結果を表5に示す。
【0266】
<比較例5>
実施例17において、電子輸送層1を、例示化合物C101に代えて、比較化合物H01を使用した他は、実施例17と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例17と同様に評価を行った。結果を表5に示す。
【0267】
<比較例6>
実施例17において、電子輸送層1を、例示化合物C101に代えて、比較化合物H02を使用した他は、実施例17と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例17と同様に評価を行った。結果を表5に示す。
【0268】
【表5】

【0269】
<実施例27>
本実施例では、多層型有機発光素子の第五の例で示した素子(陽極/ホール注入層/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極)において、共振構造を有する有機発光素子を以下に示す方法で作製した。
【0270】
支持体としてのガラス基板上に反射性陽極としてのアルミニウム合金(AlNd)を100nmの膜厚でスパッタリング法にて成膜した。さらに、透明性陽極としてITOをスパッタリング法にて40nmの膜厚で形成した。次に、この陽極周辺部にアクリル製の素子分離膜を厚さ1.5μmで形成し、半径3mmの開口部を設けた。これをアセトン、イソプロピルアルコール(IPA)で順次超音波洗浄した後、IPAで煮沸洗浄して乾燥させた。さらに、この基板表面に対してUV/オゾン洗浄を施した。
【0271】
更に、以下に示す有機層を10−5Paの真空チャンバー内で抵抗加熱による真空蒸着によって連続的に成膜した。
ホール注入層(90nm) HTL−1
ホール輸送層(10nm) HTL−3
発光層(35nm) ホスト:BH−2、ゲスト:BD−3(重量比 2%)
電子輸送層(10nm) 例示化合物C101
電子注入層(70nm) EIL−1(重量比 78%)、Li(重量比 22%)
続いて、陰極としてIZOをスパッタリング法にて成膜して膜厚30nmの透明性電極を形成した後に、窒素雰囲気中において封止した。以上により有機発光素子を得た。
【0272】
得られた有機発光素子について、ITO電極を正極、IZO電極を負極にして、4.8Vの印加電圧をかけたところ、発光効率が4.2cd/Aで、輝度1000cd/mの青色発光が観測された。またこの素子において、CIE色度座標は、(x,y)=(0.13,0.09)であった。さらに、この素子を100mA/cmの定電流密度を保ちながら100時間耐久駆動させると、初期輝度からの輝度減少率は3.0%であった。
【0273】
<実施例28>
実施例27において、電子輸送層を、例示化合物C101に代えて、例示化合物C103を使用した他は、実施例27と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例27と同様に評価を行った。結果を表6に示す。
【0274】
<実施例29>
実施例27において、発光層のホストを、BH−2に代えてBH−1を使用し、電子輸送層を、例示化合物C101に代えて例示化合物C107を使用した他は、実施例27と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例27と同様に評価を行った。結果を表6に示す。
【0275】
<実施例30>
実施例27において、発光層のホストを、BH−2に代えてBH−1を使用し、電子輸送層を、例示化合物C101に代えて例示化合物C110を使用した他は、実施例27と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例27と同様に評価を行った。結果を表6に示す。
【0276】
<実施例31>
実施例27において、発光層のホストを、BH−2に代えてBH−1を使用し、電子輸送層を、例示化合物C101に代えて例示化合物C201を使用した他は、実施例27と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例27と同様に評価を行った。結果を表6に示す。
【0277】
<実施例32>
実施例27において、電子輸送層を、例示化合物C101に代えて、例示化合物C703を使用した他は、実施例27と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例27と同様に評価を行った。結果を表6に示す。
【0278】
<比較例7>
実施例27において、電子輸送層を、例示化合物C101に代えて、比較化合物H01を使用した他は、実施例27と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例27と同様に評価を行った。結果を表6に示す。
【0279】
【表6】

【0280】
<実施例33>
本実施例では、実施例27と同様の共振構造を有する多層型有機発光素子(陽極/ホール注入層/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極)において、電子注入層と陰極との間に共振用の透明金属薄膜層を有する素子を以下に示す方法で作製した。
【0281】
実施例27と同様の方法で得られたITO基板上に、以下に示す有機層及び電極層を10−5Paの真空チャンバー内で抵抗加熱による真空蒸着によって連続的に成膜した。
ホール注入層(95nm) HTL−2
ホール輸送層(10nm) HTL−4
発光層(25nm) ホスト:BH−1、ゲスト:BD−3(重量比 2%)
電子輸送層(10nm) 例示化合物C101
電子注入層(40nm) EIL−1(重量比 70%)、Cs(重量比 30%)
透明金属薄膜層(12nm) Ag
続いて、陰極としてIZOをスパッタリング法にて成膜して膜厚50nmの透明性電極を形成した後に、窒素雰囲気中において封止した。以上により有機発光素子を得た。
【0282】
得られた有機発光素子について、ITO電極を正極、IZO電極を負極にして、4.5Vの印加電圧をかけたところ、発光効率が4.0cd/Aで、輝度2000cd/mの青色発光が観測された。またこの素子において、CIE色度座標は、(x,y)=(0.13,0.11)であった。さらに、この素子を100mA/cmの定電流密度を保ちながら60時間耐久駆動させると、初期輝度からの輝度減少率は19%であった。
【0283】
<実施例34>
実施例33において、発光層のホストをBH−1に代えてBH−2を使用し、電子輸送層を例示化合物C101に代えて例示化合物C107を使用した他は、実施例33と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例33と同様に評価を行った。結果を表7に示す。
【0284】
<実施例35>
実施例33において、発光層のホストをBH−1に代えてBH−2を使用し、電子輸送層を例示化合物C101に代えて例示化合物C501を使用した他は、実施例33と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例33と同様に評価を行った。結果を表7に示す。
【0285】
<実施例36>
実施例33において、発光層のホストをBH−1に代えてBH−3を使用し、電子輸送層を例示化合物C101に代えて例示化合物C505を使用した他は、実施例33と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例33と同様に評価を行った。結果を表7に示す。
【0286】
<実施例37>
実施例33において、発光層のホストをBH−1に代えてBH−3を使用し、電子輸送層を例示化合物C101に代えて例示化合物C702を使用した他は、実施例33と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例33と同様に評価を行った。結果を表7に示す。
【0287】
<実施例38>
実施例33において、電子輸送層を例示化合物C101に代えて例示化合物C703を使用した他は、実施例33と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例33と同様に評価を行った。結果を表7に示す。
【0288】
<比較例8>
実施例33において、電子輸送層を例示化合物C101に代えて比較化合物H01を使用した他は、実施例33と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例33と同様に評価を行った。結果を表7に示す。
【0289】
【表7】

【0290】
<実施例39>
本実施例では、実施例27と同様の共振構造を有する多層型有機発光素子(陽極/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極)において、発光層がホスト材料及びゲスト材料以外にアシスト材料を有する素子を以下に示す方法で作製した。
【0291】
実施例27と同様の方法で得られたITO基板上に、以下に示す有機層及び電極層を10−5Paの真空チャンバー内で抵抗加熱による真空蒸着によって連続的に成膜した。
ホール輸送層(140nm) HTL−1
発光層(20nm) ホスト:GH−1、アシスト:GA−1(体積比 30%)、ゲスト:GD−1(重量比 2%)
電子輸送層(10nm) 例示化合物C101
電子注入層(70nm) EIL−1(重量比 70%)、Cs(重量比 30%)
続いて、陰極としてIZOをスパッタリング法にて成膜して膜厚30nmの透明性電極を形成した後に、窒素雰囲気中において封止した。以上により有機発光素子を得た。
【0292】
得られた有機発光素子について、ITO電極を正極、IZO電極を負極にして、4.5Vの印加電圧をかけたところ、発光効率が17.0cd/Aで、輝度3600cd/mの緑色発光が観測された。またこの素子において、CIE色度座標は、(x,y)=(0.21,0.71)であった。さらに、この素子を100mA/cmの定電流密度を保ちながら500時間耐久駆動させると、初期輝度からの輝度減少率は10.4%であった。
【0293】
<実施例40>
実施例39において、発光層のアシストをGA−1に代えてGA−2を使用し、電子輸送層を例示化合物C101に代えて例示化合物C107を使用した他は、実施例39と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例39と同様に評価を行った。結果を表8に示す。
【0294】
<実施例41>
実施例39において、発光層のアシストをGA−1に代えてGA−3を使用し、電子輸送層を例示化合物C101に代えて例示化合物C110を使用した他は、実施例39と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例39と同様に評価を行った。結果を表8に示す。
【0295】
<実施例42>
実施例39において、発光層のアシストをGA−1に代えてGA−3を使用し、電子輸送層を例示化合物C101に代えて例示化合物C501を使用した他は、実施例39と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例39と同様に評価を行った。結果を表8に示す。
【0296】
<実施例43>
実施例39において、発光層のアシストをGA−1に代えてGA−2を使用し、電子輸送層を例示化合物C101に代えて例示化合物C702を使用した他は、実施例39と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例39と同様に評価を行った。結果を表8に示す。
【0297】
<実施例44>
実施例39において、電子輸送層を例示化合物C101に代えて例示化合物C703を使用した他は、実施例39と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例39と同様に評価を行った。結果を表8に示す。
【0298】
<比較例9>
実施例39において、電子輸送層を例示化合物C101に代えて比較化合物H01を使用した他は、実施例39と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例39と同様に評価を行った。結果を表8に示す。
【0299】
<比較例10>
実施例39において、発光層のアシストをGA−1に代えてGA−2を使用し、電子輸送層を例示化合物C101に代えて比較化合物H02を使用した他は、実施例39と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例39と同様に評価を行った。結果を表8に示す。
【0300】
【表8】

【0301】
<実施例45>
本実施例では、実施例27と同様の共振構造を有する多層型有機発光素子(陽極/ホール注入層/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極)において、発光層がホスト材料及びゲスト材料以外にアシスト材料を有し、且つ電子注入層と陰極との間に共振用の透明金属薄膜層を有する素子を以下に示す方法で作製した。
【0302】
実施例27と同様の方法で得られたITO基板上に、以下に示す有機層及び電極層を10−5Paの真空チャンバー内で抵抗加熱による真空蒸着によって連続的に成膜した。
ホール注入層(195nm) HTL−2
ホール輸送層(10nm) HTL−1
発光層(20nm) ホスト:RH−1、アシスト:RA−1(体積比 16%)、ゲスト:RD−1(重量比 2%)
電子輸送層(10nm) 例示化合物C101
電子注入層(30nm) EIL−1(重量比 70%)、Cs(重量比 30%)
続いて、陰極としてIZOをスパッタリング法にて成膜して膜厚30nmの透明性電極を形成した後に、窒素雰囲気中において封止した。以上により有機発光素子を得た。
【0303】
得られた有機発光素子について、ITO電極を正極、IZO電極を負極にして、4.6Vの印加電圧をかけたところ、発光効率が9.1cd/Aで、輝度3000cd/mの赤色発光が観測された。またこの素子において、CIE色度座標は、(x,y)=(0.67,0.32)であった。さらに、この素子を100mA/cmの定電流密度を保ちながら100時間耐久駆動させると、初期輝度からの輝度減少率は20%であった。
【0304】
<実施例46>
実施例45において、発光層のホストをRH−1に代えてRH−2を使用し、電子輸送層を例示化合物C101に代えて例示化合物C103を使用した他は、実施例45と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例45と同様に評価を行った。結果を表9に示す。
【0305】
<実施例47>
実施例45において、発光層のホストをRH−1に代えてRH−3を使用し、電子輸送層を例示化合物C101に代えて例示化合物C107を使用した他は、実施例45と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例45と同様に評価を行った。結果を表9に示す。
【0306】
<実施例48>
実施例45において、発光層のアシストをRA−1に代えてRA−2を使用し、電子輸送層を例示化合物C101に代えて例示化合物C201を使用した他は、実施例45と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例45と同様に評価を行った。結果を表9に示す。
【0307】
<実施例49>
実施例45において、発光層のホストをRH−1に代えてRH−2を使用し、発光層のアシストをRA−1に代えてRA−2を使用し、電子輸送層を例示化合物C101に代えて例示化合物C702を使用した他は、実施例45と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例45と同様に評価を行った。結果を表9に示す。
【0308】
<実施例50>
実施例45において、発光層のホストをRH−1に代えてRH−3を使用し、発光層のアシストをRA−1に代えてRA−2を使用し、電子輸送層を例示化合物C101に代えて例示化合物C703を使用した他は、実施例45と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例45と同様に評価を行った。結果を表9に示す。
【0309】
<比較例11>
実施例45において、電子輸送層を例示化合物C101に代えて比較化合物H01を使用した他は、実施例45と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例45と同様に評価を行った。結果を表9に示す。
【0310】
<比較例12>
実施例45において、発光層のホストをRH−1に代えてRH−2を使用し、発光層のアシストをRA−1に代えてRA−2を使用し、電子輸送層を例示化合物C101に代えて比較化合物H02を使用した他は、実施例45と同様の方法で素子を作製した。また得られた素子について実施例45と同様に評価を行った。結果を表9に示す。
【0311】
【表9】

【符号の説明】
【0312】
3 表示装置
38 TFT素子
311 陽極
312 有機層
313 陰極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[1]で示されることを特徴とするクリセン化合物。
【化1】


〔前記一般式[1]において、R乃至Rは水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルコキシ基からなる群よりそれぞれ独立に選ばれる。Ar乃至Arは下記式[2]で示される群からそれぞれ独立に選ばれる。〕
【化2】


〔前記式[2]において、X乃至X26は水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルコキシ基、置換あるいは無置換のフェニル基、置換あるいは無置換のナフチル基、置換あるいは無置換のフェナントリル基、及び置換あるいは無置換のフルオレニル基からなる群よりそれぞれ独立に選ばれる。但し、X乃至Xのうち一つ、X乃至X16のうち一つ、X17乃至X26のうち一つは、それぞれ前記一般式[1]に記載のクリセン環を表す。Y及びYはそれぞれ独立に水素原子または置換あるいは無置換のアルキル基から選ばれる。〕
【請求項2】
前記一般式[1]で示されるクリセン化合物は下記一般式[3]で示されることを特徴とする請求項1に記載のクリセン化合物。
【化3】

【請求項3】
前記一般式[1]で示されるクリセン化合物は下記一般式[4]で示されることを特徴とする請求項1に記載のクリセン化合物。
【化4】

【請求項4】
一対の電極と前記一対の電極の間に配置される有機化合物層とを有し、前記有機化合物層は請求項1乃至3のいずれか一項に記載のクリセン化合物を有することを特徴とする有機発光素子。
【請求項5】
前記有機化合物層は発光層であることを特徴とする請求項4に記載の有機発光素子。
【請求項6】
前記発光層が、ホスト材料とゲスト材料から構成され、前記ホスト材料が前記クリセン化合物であることを特徴とする請求項5に記載の有機発光素子。
【請求項7】
前記一対の電極の間に前記有機化合物層とは別の層が設けられ、前記別の層は発光層であり、前記有機化合物層は電子輸送層であることを特徴とする請求項4に記載の有機発光素子。
【請求項8】
請求項4乃至7のいずれか一項に記載の有機発光素子と前記有機発光素子と接続するスイッチング素子とを有する表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−102285(P2011−102285A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10192(P2010−10192)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】