説明

新規抗凝固ポリペプチド及び複合体

本発明はヘビ毒の分野におけるものであり、本発明は2つの新規ヘビポリペプチド及びそれらをコードする核酸を提供する。新規ヘビポリペプチド、及びそれらが凝固を相乗的に阻害し得ることの発見に基づく様々な使用、方法、及び組成物もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において引用されたすべての文書は参照によりそれらの全体が組み込まれている。
【0002】
本発明はヘビ毒の分野であり、本発明は二つの新規ヘビポリペプチドとそれらをコードする核酸を提供する。新規ヘビポリペプチド及びそれらの血液凝固阻害能の発見に基づく様々な使用、方法及び組成物も提供する。
【背景技術】
【0003】
血液凝固は一連の増幅反応に起因する、血管損傷に対する先天的応答であり、血漿中を循環するセリンプロテアーゼの特定の酵素原が、血餅の形成につながるタンパク質限定分解によって連続的に活性化され、それによって血液の喪失を予防する(1〜3)。それは外因性の経路を通して開始される(4)。血管損傷の結果露出される膜結合型組織因子(TF)が血漿中に先在する(全第VII因子のうちの1%〜2%の)第VIIa因子(FVIIa)(5,6)と相互作用し、そして外因性テナーゼ複合体を形成する。この複合体は第X因子(FX)を第Xa因子(FXa)へと活性化する。その補因子の第Va因子と共同で、FXaはプロトロンビンをタンパク質切断し、トロンビンにする。トロンビンはフィブリノゲンをフィブリンへと切断し、フィブリン血餅の形成を促進し、且つ血小板を活性化して血餅中に封入する。TF-FVIIa複合体はまた第IX因子(FIX)を第IXa因子(FIXa)へと活性化でき、従って内因性の経路を通した凝固カスケードの伝播を助長する。凝固カスケードは厳重な制御下にある。その制御におけるいかなる不均衡も、障害時に過大な出血をもたらす凝固不能血液か、結果的に心筋梗塞、脳卒中、肺動脈塞栓症、又は静脈血栓症となる血管閉塞のために死及び衰弱をもたらす好ましくない血餅形成のいずれかにつながり得る(7)。ゆえに、血栓塞栓疾患の予防及び治療に関しては緊急の必要性がある。
【0004】
抗凝固剤は血栓塞栓疾患の予防及び治療のために極めて重要であり、欧米人口の約0.7%が経口抗凝固療法を受けている(8)。クマリン類及びへパリンは最もよく知られた臨床的に使用される抗凝固剤である。クマリン類は凝血促進剤(トロンビン、FXa、FIXa及びFVIIa)並びに抗凝固剤(活性化プロテインC(APC)及びプロテインS)を含む全てのビタミンK依存性タンパク質の活性を阻害するが、へパリンはアンチトロンビンIIIによるトロンビン及びFXaの阻害を亢進することによりその抗凝固活性を媒介する(9,10)。これらの抗凝固剤の非特異的作用機序が血栓症と止血との間の均衡の維持における治療限界の要因である(11)。ゆえに、新しい抗凝固剤の開発が必要であり、それは特定の凝固酵素又は凝固過程における特定段階を標的にする(12,13)。FVII/FVIIaは、血中濃度が比較的低く(10nM)、凝固カスケードの開始における役割が重要(14)なことから、新規且つ特異的な抗凝固剤の開発のための魅力的な薬剤標的になり得る。
【0005】
ヘビ毒由来のタンパク質又は毒素は、多くの、とりわけ心臓血管の疾患のための治療剤又はリード分子の設計及び開発に使用されてきた(15)。例えば、アンギオテンシン転換酵素の阻害剤ファミリーは南アフリカのヘビの毒由来のブラジキニン促進ペプチドに基づいて開発された(16)。エプチフィバチド及びチロフィバン等の血小板凝集阻害剤はクサリヘビ及びガラガラヘビの毒で見出された大ファミリーの血小板凝集阻害剤であるディスインテグリンに基づいて設計された(17〜22)。マレーマムシの毒から抽出されたアンクロドは血中フィブリノゲンのレベルを減少させ、脳卒中を含む様々な虚血状態において試験に成功してきている(23)。
【発明の開示】
【0006】
要約
本明細書ではコブラ科のヘビ、Hemachatus haemachatus(アフリカリンカルスコブラ)の毒に由来する抗凝固活性を媒介するスリーフィンガートキシン(ヘメクスチンA)の精製と特徴づけを報告する。ヘメクスチンAが第2のスリーフィンガートキシン(ヘメクスチンB)と相互作用して複合体(ヘメクスチンAB複合体)を形成すると、ヘメクスチンAの抗凝固活性は亢進される。
【0007】
本発明者等は前記2タンパク質間の複合体形成が抗凝固活性のために重要となり得ることを示してきた。これはスリーフィンガートキシンからなる初の4量体である。本発明者等は「解剖的アプローチ」を用いて、及び、再構成した外因性テナーゼ複合体に及ぼすそれらの効果を研究することによって、ヘメクスチンA及びその相乗効果的な複合体が外因性テナーゼ活性を阻害することによって凝固を長引かせることを示した。
【0008】
さらに、本発明者らはヘメクスチンAB複合体及びヘメクスチンAの阻害の特異性を、12のセリンプロテアーゼに及ぼすそれらの効果を研究することによって確認した。ヘメクスチンAB複合体は、その阻害活性を媒介するための足場を必要としない、初めて報告された天然のFVIIa阻害剤である。ヘメクスチンAB複合体とFVIIa/TF-FVIIaとの分子間相互作用は血液凝固開始を阻害する抗凝固剤の探索において新たな理論的枠組を提供する。ヘメクスチンAB複合体の形成における分子間相互作用は生物物理学的技法を用いても明らかにされた。これらの研究結果に基づいて、この独特な抗凝固複合体のモデルが後述のように提唱される。
【0009】
本発明の第1の側面は、配列番号1又は配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、或いはその変異体、突然変異体又は断片を提供する。
【0010】
本発明の第2の側面は、配列番号2、4、又は5に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、或いはその変異体、突然変異体又は断片を提供する。本発明の第3の側面は、(i)本発明の第1又は第2の側面のポリペプチドをコードする核酸分子;或いは(ii)(i)の核酸分子又はその変異体、突然変異体、断片もしくは相補体にハイブリダイズする核酸分子を提供する。
【0011】
本発明の第4の側面は、本発明の第3の側面の核酸分子を含有するベクターを提供する。
【0012】
本発明の第5の側面は、本発明の第4の側面のベクターで形質転換された宿主細胞を提供する。
【0013】
本発明の第6の側面は、本発明の第1又は第2の側面のポリペプチドを製造する方法であって、本発明の第5の側面の宿主細胞を、本発明の第1又は第2の側面のポリペプチドの発現に適した条件下で培養することを含む、方法を提供する。
【0014】
本発明の第7の側面は、本発明の第1又は第2の側面のポリペプチドを製造する方法であって、該ポリペプチドの化学合成を含む、方法を提供する。
【0015】
本発明の第8の側面は、本発明の第1の側面のポリペプチド及び本発明の第2の側面のポリペプチドを含む、複合体を生成する方法であって、本発明の第1の側面のポリペプチドと本発明の第2の側面のポリペプチドとを、複合体の形成を可能にするのに適した条件下で接触させることを含む、方法を提供する。
【0016】
本発明の第9の側面は、
(i)本発明の第1の側面のポリペプチド;及び
(ii)本発明の第2の側面のポリペプチド
を含む複合体を提供する。本発明の第10の側面は、本発明の第1又は第2の側面のポリペプチド或いは本発明の第9の側面の複合体を認識する抗体を生成する方法であって、
(i)本発明の第1又は第2の側面のポリペプチド或いは本発明の第9の側面の複合体で動物を免疫し、;
(ii)前記動物から該抗体を取得する
工程を含む、方法を提供する。
【0017】
本発明の第11の側面は、本発明の第1又は第2の側面のポリペプチド或いは本発明の第9の側面の複合体を認識する抗体を提供する。
【0018】
本発明の第12の側面は、本発明の第1の側面のポリペプチド、第2の側面のポリペプチド或いは本発明の第9の側面の複合体に対する抗毒素を製造する方法であって、本発明の第1又は第2の側面のポリペプチド或いは本発明の第9の側面の複合体で動物を免疫し、抗毒素の製造において使用するために該動物から抗体を採取することを含む、方法を提供する。
【0019】
本発明の第13の側面は、本発明の第1の側面のポリペプチド、第2の側面のポリペプチド或いは本発明の第9の側面の複合体に対して有効な抗毒素を提供する。本発明の第14の側面は、本発明の第1又は第2の側面のポリペプチドの調節薬或いは本発明の第9の側面の複合体の調節薬を同定するための方法であって、
(i)試験化合物と本発明の第1又は第2の側面の前記ポリペプチド或いは本発明の第9の側面の前記複合体とを接触させ、;
(ii)試験化合物が前記ポリペプチド又は前記複合体に結合するかどうかを測定する
工程を含む、方法を提供する。
【0020】
本発明の第15の側面は、本発明の第1又は第2の側面のポリペプチド、本発明の第3の側面の核酸分子、本発明の第4の側面のベクター、本発明の第5の側面の宿主細胞、本発明の第9の側面の複合体、本発明の第11の側面の抗体、本発明の第13の側面の抗毒素、又は本発明の第14の側面の調節薬を含む、医薬組成物を提供する。
【0021】
本発明の第16の側面は、医薬における使用のための、本発明の第1又は第2の側面のポリペプチド、本発明の第3の側面の核酸分子、本発明の第4の側面のベクター、本発明の第5の側面の宿主細胞、本発明の第9の側面の複合体、本発明の第11の側面の抗体、本発明の第13の側面の抗毒素、又は本発明の第14の側面の調節因子を提供する。
【0022】
本発明の第17の側面は、医薬における使用のための併用剤であって、
(i)本発明の第1の側面のポリペプチド又はそれをコードする核酸分子;及び
(ii)本発明の第2の側面のポリペプチド又はそれをコードする核酸分子
を含む併用剤、を提供する。
【0023】
本発明の第18の側面は、抗凝固療法を必要とする患者の治療に用いるための薬剤の製造における、本発明の第1又は第2の側面のポリペプチド、本発明の第3の側面の核酸分子、本発明の第4の側面のベクター、本発明の第5の側面の宿主細胞、或いは本発明の第9の側面の複合体の使用を提供する。
【0024】
本発明の第19の側面は、抗凝固療法を必要とする患者の治療のための併用剤の製造における、
(i)本発明の第1の側面のポリペプチド又はそれをコードする核酸分子;及び
(ii)本発明の第2の側面のポリペプチド又はそれをコードする核酸分子
の使用を提供する。
【0025】
本発明の第20の側面は、抗凝固療法を必要とする患者の治療方法であって、本発明の第1又は第2の側面のポリペプチド、本発明の第3の側面の核酸分子、本発明の第4の側面のベクター、本発明の第5の側面の宿主細胞、本発明の第9の側面の複合体又は本発明の第15の側面の医薬組成物を該患者に投与することを含む、方法を提供する。本発明の第21の側面は、抗凝固療法を必要とする患者の治療方法であって、
(i)本発明の第1の側面のポリペプチド又はそれをコードする核酸分子;及び
(ii)本発明の第2の側面のポリペプチド又はそれをコードする核酸分子
を該患者に投与することを含む、方法を提供する。
【0026】
本発明の第22の側面は、患者の、蛇咬傷を治療する方法であって、本発明の第1又は第2の側面のポリペプチド、本発明の第3の側面の核酸分子、本発明の第4の側面のベクター、本発明の第5の側面の宿主細胞、本発明の第9の側面の複合体又は本発明の第15の側面の医薬組成物を該患者に投与することを含む、方法を提供する。
【0027】
本発明の第23の側面は、患者の蛇咬傷を治療薬の製造における、本発明の第1又は第2の側面のポリペプチド、本発明の第3の側面の核酸分子、本発明の第4の側面のベクター、本発明の第5の側面の宿主細胞、本発明の第9の側面の複合体又は本発明の第15の側面の医薬組成物の使用を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の第1の側面は、配列番号1又は配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、或いはその変異体、突然変異体又は断片を提供する。
【0029】
ある実施形態では、該ポリペプチドは配列番号1に示されるアミノ酸配列からなる。別の実施形態では、該ポリペプチドは配列番号3に示されるアミノ酸配列からなる。
【0030】
以下で考察されるように、本発明の第1の側面のポリペプチドの機能的同等物も本明細書中に含まれる。
【0031】
本明細書中で記述されるように、ヘメクスチンAは独力で抗凝固活性を示す。従って、本発明の第1の側面のポリペプチドは抗凝固活性を示し得る。
【0032】
ある実施形態では、該ポリペプチドはH. haemachatus(アフリカリンカルスコブラ)の毒から得られ得る。
【0033】
配列番号1は図13に示されるヘメクスチンA配列で、即ち
LKCKNKLVPFLSKTCPEGKNLCYKMTMLKMPKIPIKRGCTDACPKSSLLVKWCCNKDKCN
である。
【0034】
配列番号3は図3の第1行目に示される配列で、即ち
LKCKNKLVPFLSKT..CPEGKN..LCYKMT.LKKVTPKIKRG
である。
【0035】
配列番号3はヘメクスチンAのN末端部分の予備的なシークエンスの結果を表す。ヘメクスチンAを更にシークエンスして配列番号1における配列を得た。
【0036】
(i)本発明の第2の側面は、配列番号2、4、又は5に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、或いはその変異体、突然変異体又は断片を提供する。
【0037】
ある実施形態では、該ポリペプチドは配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる。別の実施形態では、該ポリペプチドは配列番号4に示されるアミノ酸配列からなる。更に別の実施形態では、該ポリペプチドは配列番号5に示されるアミノ酸配列からなる。
【0038】
以下で考察されるように、本発明の第2の側面のポリペプチドの機能的同等物も本明細書中に含まれる。配列番号2は図13に示されるヘメクスチンB
配列で、即ち
LKCKNKWPFLKCKNKWPFLCYKMTLKKVPKIPIKRGCTDACPKSSLLVNVMCCKTDKCN
である。
【0039】
配列番号4は図3の第2行目に示される配列で、即ち
LKCKNKWPFL.KT..CKNKWPFLCYKMT.LKKVTPKIKRG
である。
【0040】
配列番号4はヘメクスチンBのN末端部分の予備的なシークエンスの結果を表す。
【0041】
配列番号5は最後の4アミノ酸が無いが、図13に示されるヘメクスチンB配列で、即ち
LKCOJKVVPFLKCKNKVVPFLCYKMTLKKVPKIPIKRGCTDACPKSSLLVNVMCCKT
である。
【0042】
配列番号2のC末端部分(特に最後の4アミノ酸)には変異が存在し得ると信じられている。従ってある実施形態では、C末端において配列番号2に示される配列と異なり得る、本発明の第2の側面のポリペプチドが提供される。より詳しくは、配列番号2の最後の4アミノ酸(例えばC末端(即ちDKCN)の第1、第2、第3及び/又は第4番目のアミノ酸の1つ以上)のうち少なくとも1つ(例えば1、2、3又は4つ)が配列番号2に示されるそれと異なる、ポリペプチドが提供される。
【0043】
したがって、本発明の第2の側面の実施形態では、配列番号5を含む、ポリペプチドが提供される。配列番号5はヘメクスチンBの不完全な配列と信じられているので、ある実施形態では配列番号5及び配列番号5のアミノ酸配列のC末端に1つ以上の付随的なアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6等)を含む、ポリペプチドが提供される。
【0044】
本発明の第2の側面のポリペプチドはある実施形態ではH. haemachatus(アフリカリンカルスコブラ)の毒から得られ得る。
【0045】
本発明の第2の側面のポリペプチドは、本発明の第1の側面のポリペプチドと、本発明の第1の側面のポリペプチドの抗凝固活性に相乗効果があるような複合体を形成できる。
【0046】
本発明の第1及び第2の側面のポリペプチドは必ずしも物質的にヘビ毒由来ではなく、例えば組換え技術及び固相ペプチド合成による等の化学合成によるといった任意の手段で生成し得る。代替的な実施形態では、H. haemachatusのヘビ毒から精製される本発明の第1及び第2の側面のタンパク質が提供される。ポリペプチドの精製方法は当該技術分野においてよく知られており、本発明の第1及び第2の側面のポリペプチドの精製に用いられ得る。ポリペプチドの精製は本明細書中の実施例の節に記載されたようにしても達成され得る。従って、ある実施形態では、第1及び第2の側面のポリペプチドは、本明細書中の実施例の節に記載された方法により得られるか、又は入手可能である。
【0047】
本発明の第1及び第2の側面のポリペプチドは天然の形態であり得るか、或いは、それらの本来の環境から単離されたにもかかわらず、単独(例えば、本発明の第1の側面のポリペプチドの場合)か、本発明の複合体の形態の場合かのいずれかにおいて、抗凝固活性を示すという機能的特徴を保持しているという条件で、修飾されうる。例えば、ポリペプチドはアミノ酸構造に1つ以上の化学的修飾を導入するように、化学的に修飾され得る。
【0048】
タンパク質及び核酸配列の決定と確認に関しては、当業者は、ポリペプチドの部分アミノ酸配列がわかれば、オリゴヌクレオチドプローブを設計してH. haemachatusのゲノムもしくはcDNAライブラリーを探索し、それによって目的のポリペプチド又は遺伝子配列を決定または確認し得ると理解するであろう。遺伝暗号は縮重しているため、複数の核酸配列が同一のペプチド配列をコードし得る。実際の核酸配列がプローブオリゴヌクレオチド中に存在することを確実にするために、オリゴヌクレオチドは必要であれば複数のヌクレオチドを組み合わせて合成される。
【0049】
縮重プローブを設計、創作、及び使用する方法は当該技術分野においてよく知られている。例えば、Narang, SA (1983) Tetrahedron 39:3; Itakura et al. (1981) Recombinant DNA, Proc 3rd Cleveland Sympos. Macromolecules, ed. A G Walton, Amsterdam: Elsevier pp273-289; Itakura et al. (1984) Annu. Rev. Biochem. 53:323; Itakura et al. (1984) Science 198:1056; Dee et al. (1983) Nucleic Acid Res. 11:477を参照。遺伝子配列及びコードされたポリペプチドを明らかにするための縮重プローブの使用方法も当該技術分野においてよく知られており、当業者により容易に達成され得る。
【0050】
本発明の第1及び第2の側面のポリペプチドは、互いと、本発明の第1の側面のポリペプチドの抗凝固活性に相乗効果を及ぼすような複合体を形成しうる。従って、本発明の第1及び第2の側面の、ある実施形態においては、本発明の第1の側面のポリペプチド及び本発明の第2の側面のポリペプチドを含む、複合体が提供される。以下で考察するように、該複合体は4量体と信じられている。ある実施形態においては、該複合体はヘテロ2量体であり得る。そのような複合体は、例えば、抗凝固療法を必要とする患者の治療といった、本発明の様々な側面で使用され得る。
【0051】
本発明の第1の側面のポリペプチドは約6835.00±50、20、10、15、10、5、2、1又は0.52だと決定された分子量を有し得る。
【0052】
本発明の第1の側面のポリペプチドは約6835.0±50、20、10、15、10、5、2、1又は0.52だと決定された分子量を有し得る。
【0053】
本発明の第2の側面のポリペプチドは約6791.38±50、20、10、15、10、5、2、1又は0.32ダルトンだと決定された分子量を有し得る。
【0054】
或いは、本発明の第2の側面のポリペプチドは約6792.56±50、20、10、15、10、5、2、1又は0.32ダルトンだと決定された分子量を有し得る。
【0055】
例えば、実施例の節において用いられた方法が、分子量を決定するのに用いられ得る。当該技術分野で既知の他の方法が代わりに用いられ得る。
【0056】
用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は互換可能に用いられ、天然に又は合成的に生産されたかを問わずペプチド結合又は修飾されたペプチド結合を通して結合されたアミノ酸(ジペプチド又はより大きな)のあらゆるポリマーをいう。一般的に10〜20アミノ酸残基より小さいポリペプチドが「ペプチド」といわれる。
【0057】
本発明のポリペプチドは炭化水素基等の非ペプチド性成分も含み得る。炭化水素及び他の非ペプチド性置換基は、ポリペプチドを産生する細胞によって該ポリペプチドに付加され、細胞の種類によって変化する。本明細書中でポリペプチドは、アミノ酸バックボーンの構造という点から定義され、炭化水素基等の置換基は通例明記されないが、それでも存在し得る。
【0058】
本明細書中で用いられる用語「含む(comprising)」及びその文法上の活用形は「包含する(including)」を意味する。従って、例えば、Xを「含む」組成物はXのみからなってもよいし、又は1つ以上の付加的な成分を含んでもよい。同様に、所定の配列を含むポリペプチド分子は、その所定の配列のみからなってもよいし、又は1つ以上の付加的な成分を含んでもよい。例えば、本発明のポリペプチドは、そのN又はC末端に付加的なアミノ酸を含み得る。
【0059】
本発明の第1及び第2の側面のポリペプチドは、列挙された配列の変異体を含む。そのような変異体配列は、例えば、アレル変異体又はヘメクスチンAもしくはヘメクスチンBに関する更なるシークエンス実験の結果、同定される変異体配列を含みうる。機能的同等物、活性断片及び融合タンパク質も含まれる。疑念を避けるため、本発明の第1及び第2の側面のポリペプチドは変異体及び変異体の活性断片の機能的同等物を含む。変異体、機能的同等物及び活性断片を含む融合タンパク質も含まれる。同様に、本発明は機能的同等物の変異体及び活性断片にまで及ぶ。
【0060】
本発明の第1の側面のポリペプチド及び本発明の第2の側面のポリペプチドは、それぞれ本発明の第2の側面のポリペプチド又は本発明の第1の側面のポリペプチドとの複合体の形態で提供され得る。本発明の第1の側面のポリペプチドはヘメクスチンA、ヘメクスチンAの変異体、突然変異体、機能的同等物又は活性断片或いはヘメクスチンAを含む融合タンパク質であり得る。本発明の第2の側面のポリペプチドはヘメクスチンB、ヘメクスチンBの変異体、突然変異体、機能的同等物又は活性断片或いはヘメクスチンBを含む融合タンパク質であり得る。ゆえに、ヘメクスチンA及びヘメクスチンB、ヘメクスチンA及びヘメクスチンBの変異体、突然変異体、機能的同等物、活性断片及び融合タンパク質の様々な組み合わせが、結果として生ずる複合体が抗凝固活性を有するという条件で想定される。
【0061】
ある実施形態では、ポリペプチド又はポリペプチド複合体は、プロトロンビン時間を増大させるか、又は外因性テナーゼ活性であるところの活性を阻害すれば、抗凝固活性を示すとみなされる。
【0062】
ポリペプチド又はポリペプチド複合体が抗凝固活性を示すかどうか決定するために、実施例の節で後述されるようにプロトロンビン試験が用いられ得る。簡単に言うと、プロトロンビン時間はQuickの方法(Quick AJ. (1935) J.Mol.Chem. 109, 73-74参照)に従って測定されうる。100μlの50mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4)、100μlの血漿及び50μlの調査中のタンパク質を、37℃で2分保温する。150μlのトロンボプラスチンをカルシウム試薬とともに加えることによって凝固を開始する。ポリペプチドが抗凝固活性を示せば、プロトロンビン時間が増大するだろう。
【0063】
或いは、又はさらに、ポリペプチド又はポリペプチド複合体が外因性テナーゼ活性に及ぼす効果を、実施例の節で後述されるように評価することができる。本明細書中で考察されるように、ヘメクスチンA及びそのヘメクスチンBとの複合体は、TF-FVIIa複合体(外因性テナーゼ複合体)によるFXの活性化を阻害すると信じられている。従って、本発明の第1の側面のポリペプチド及び本発明の第1及び第2の側面のポリペプチドから形成された複合体は、FXのFXaへの活性化を触媒するTF-FVIIa複合体の能力を適切に阻害する。これがいかにして測定されうるかは、後記実施例の節に示されており、そこには、FXa形成への個々のタンパク質及び複合体の効果を測定することによって、いかにして個々のタンパク質及び複合体の外因性テナーゼ活性への阻害効果を決定できるかが記載されている。
【0064】
ある実施形態においては、ヘメクスチンAの変異体、突然変異体、機能的同等物又は活性断片は、ヘメクスチンB或いはヘメクスチンBの変異体、突然変異体、機能的同等物又は活性断片との複合体の形態では、外因性テナーゼ活性の少なくとも約20%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%を阻害できる。
【0065】
ある実施形態においては、ヘメクスチンBの変異体、突然変異体、機能的同等物又は活性断片は、ヘメクスチンA或いはヘメクスチンAの変異体、突然変異体、機能的同等物又は活性断片との複合体の形態では、外因性テナーゼ活性の少なくとも約20%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%を阻害できる。
【0066】
推定上のヘメクスチンAの機能的同等物、活性断片又は融合タンパク質が本発明の第2の側面のポリペプチドと相乗的な複合体を形成できるかを決定するため、又は抗凝固活性の程度を決定するため、ヘメクスチンBが任意に用いられる。
【0067】
同様に、ヘメクスチンBの変異体、突然変異体、機能的同等物又は活性断片が本発明の第1の側面のポリペプチドと相乗的な複合体を形成できるかを決定するため、又は抗凝固活性の程度を決定するため、ヘメクスチンAが任意に用いられる。
【0068】
変異体は、例えばそのポリペプチドが由来する種内のアレル変異体を含む。加えて、配列番号2の最後の4アミノ酸が変形されうる。従って、配列番号1、2、3、4、又は5の変異体配列の配列であって、ヘメクスチンA又はBの更なるシークエンス研究の結果同定されうる配列の同定も、本発明の第1及び第2の側面の範囲内に含まれる。
【0069】
本発明の変異体は、1つ以上のアミノ酸残基が、1つ以上の保存された又は保存されていないアミノ酸残基(好ましくは保存されたアミノ酸残基)で置換されたポリペプチドを含み得る。そのような典型的な置換は、Ala、VaI、Leu及びIle間、Ser及びThr間、酸性残基Asp及びGIu間、Asn及びGln間、塩基性残基Lys及びArg間、又は芳香族残基Phe及びTyr間の置換である。
【0070】
特に好ましいのは、任意の組み合わせで、いくつかの、例えば、5と10の間、1と5の間、1と3の間、1と2の間の、又はただ1つのアミノ酸が置換され、欠失し、及び付加された変異体である。とりわけ好ましいのは、サイレントな置換、付加及び欠失であり、それらはポリペプチドの特性及び活性を変えない。これ関しては保存的置換もとりわけ好ましい。変異体又は「突然変異体」ポリペプチドは、1つ以上のアミノ酸残基が置換基を含むポリペプチドも含む。変異体は、ポリペプチドの特性、例えばその生物学的活性を修飾するようにアミノ酸配列を修飾することが望ましい場合も意図される。
【0071】
本発明の第1及び第2の側面の更なる実施形態は、単一又は複数のアミノ酸の置換、付加、挿入及び/又は欠失、並びに/或いは化学修飾されたアミノ酸の置換を含む、本発明のポリペプチドの機能的同等物を提供する。ここで「機能的同等物」は、(i)単独又は複合体の形態のいずれかで抗凝固活性を示す機能的特徴を有する;又は(ii)該ポリペプチドに共通する抗原決定基を有する、ポリペプチドを意味する。
【0072】
本発明のこの側面の機能的に同等なポリペプチドは、本発明のポリペプチドの配列と少なくとも60%の同一性を有するポリペプチドであり得る。ある実施形態においては、ヘメクスチンA、ヘメクスチンB又はそのアレル変異体と少なくとも60%の配列同一性を有する機能的に同等なポリペプチドが提供される。
【0073】
タンパク質配列同一性を測定する方法は、当該技術分野でよく知られており、本文脈において、配列同一性はアミノ酸の同一性(hard homologyともいう)に基づいて計算されると、当業者に理解されるであろう。例えば、UWGCG Packageは、配列同一性を計算する(例えばそのデフォルト設定で用いられる)のに用いることができるBESTFITプログラムを提供する(Devereux et al (1984) Nucleic Acids Research 12, p387-395)。PILEUP及びBLASTアルゴリズムは、例えば、Altschul S. F. (1993) J MoI Evol 36:290-300; Altschul, S, F et al (1990) J MoI Biol 215:403に記載されたようにして、配列同一性を計算するか、又は配列を並べる(典型的にはデフォルト設定で)のに用いられ得る。BLAST解析を行うためのソフトウェアは国立バイオテクノロジー情報センターを通じて、インターネットを通じたワールドワイドウェブ上で、例えば「www.ncbi.nlm.nih.gov/」で公に入手できる。このアルゴリズムは最初に、クエリー配列における長さWの短いワードであって、データベース配列中の同じ長さのワードと並べられたときに一致するか、又はある正の値の閾値スコアTを満足させるかのいずれかであるワードを同定することによって高スコア配列の対(HSP)を同定することを含む。Tは隣接ワードスコア閾値と呼ばれる(Altschul et al,上記参照)。これらの初期の隣接ワードのヒットは、それらを含むHSPを見出すための検索を開始するためのシーズとしての役割を果たす。ワードのヒットは、累積アラインメントスコアが増大できる限りの間、各配列に沿って両方向に伸長される。BLASTアルゴリズムは2つの配列間の類似性の統計解析を行う;例えば、Karlin and Altschul (1993) Proc. Nad. Acad. Sci. USA 90: 5873を参照。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の一尺度は最小合計確率(P(N))であり、それは、2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列間の一致が、互いの代わりとなる確率の目安となる。
【0074】
通常、2つのポリペプチド間での60%を超える配列同一性は、単独又はポリペプチドの複合体の形態のいずれかで抗凝固活性を示すというポリペプチドの機能的特徴が存在するか、又はポリペプチドが、ポリペプチドに共通する抗原決定基を有するかのいずれかであれば、機能的同等性の指標となると考えられる。ある実施形態においては、本発明のこの側面の機能的に同等なポリペプチドは、ポリペプチド又はその断片と60%を超える程度の配列同一性を示す。ポリペプチドはそれぞれ70%、80%、90%、95%、97%、98%又は99%を超える程度の配列同一性を有しうる。
【0075】
したがって、本発明の機能的に同等なポリペプチドは、(アミノ酸の置換、挿入、又は欠失を含む突然変異体のような)突然変異体を含むことを意図している。そのような突然変異体は、1つ以上のアミノ酸残基が、保存された又は保存されていないアミノ酸残基(好ましくは保存されたアミノ酸残基)と置換されたポリペプチドを含み得、そのような置換されたアミノ酸残基が、遺伝暗号にコードされたものであってもよいし、そうでなくてもよい。そのような典型的な置換は、Ala、Val、Leu及びIle間、Ser及びThr間、酸性残基Asp及びGIu間、Asn及びGln間、塩基性残基Lys及びArg間、又は芳香族残基Phe及びTyr間の置換である。
【0076】
特に好ましいのは、任意の組み合わせでいくつかの、例えば、5と10の間、1と5の間、1と3の間、1と2の間の、又はただ1つのアミノ酸が置換され、欠失し、及び付加された変異体である。とりわけ好ましいのは、サイレントな置換、付加及び欠失であり、それらはポリペプチドの特性又は活性を変えない。これ関しては保存的置換もとりわけ好ましい。「突然変異体」ポリペプチドは、1つ以上のアミノ酸残基が置換基を含むポリペプチドも含む。
【0077】
改善された機能を伴う機能的同等物はポリペプチド配列中の特定残基の体系的又は指示的変異を通じても設計され得る。
【0078】
活性断片も本発明の第1及び第2の側面の範囲内に含まれる。ここで「活性断片」は(i)単独又は複合体の形態のいずれかで抗凝固活性を示すという機能的特徴を有する;又は(ii)ポリペプチドに共通する抗原決定基を有する、短縮されたポリペプチドを意味する。
【0079】
本発明の活性断片は、本発明のポリペプチドからの少なくともn個の連続したアミノ酸を含む。ふさわしいのは、活性断片は配列番号5、配列番号2、配列番号3、配列番号4又は配列番号5、或いはこれらの配列のいずれか1つの変異体、突然変異体又は機能的同等物などからの、少なくともn個の連続したアミノ酸を含む。nは、典型的には7以上(例えば、8、10、12、14、16、18、20、25、35、40、45、50、55又は60、或いはそれ以上)である。
【0080】
本発明のポリペプチド(例えば、本発明のポリペプチドの変異体、突然変異体、機能的同等物又は断片)は「独立」(即ち、他のアミノ酸又はポリペプチドの一部でもなく、他のアミノ酸又はポリペプチドに融合してもいない)していてもよく、或いは、それらが部分又は領域を形成する、より大きなポリペプチド内に含まれてもよい。より大きなポリペプチド内に含まれる場合、本発明のポリペプチドは、ある実施形態では、単一の連続領域を形成する。さらに、いくつかのポリペプチドが単一の、より大きなポリペプチド内に含まれ得る。
【0081】
本発明の第1及び第2の側面のある実施形態では、本発明のポリペプチドに共通する抗原決定基を有する機能的同等物又は活性断片が提供される。ある実施形態では、抗原決定基はヘメクスチンA、ヘメクスチンB又はそのアレル変異体に共有される。ある実施形態では、抗原決定基は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4又は配列番号5に共有される。
【0082】
「抗原決定基」はある特定の抗体と接触させる分子の断片(即ち、エピトープ)をいう。「抗原決定基」、即ちエピトープは、通常アミノ酸又は糖側鎖等の、化学的に活性のある表面分子群からなり、特異的な三次元構造上の特徴及び特異的な電荷的特性を有する。
【0083】
タンパク質の抗原決定基を模倣できる比較的短い合成ペプチドを用いて該タンパク質に対する抗体の産生を刺激することができることは、当該技術分野で既知である(例えば、Sutcliffe et al., Science 219:660 (1983)を参照)。抗原エピトープを持つペプチド及びポリペプチドは、例えば、少なくとも4〜10アミノ酸、少なくとも10〜15アミノ酸、又は約15〜約25アミノ酸を含み得る。そのようなエピトープを持つペプチド及びポリペプチドは、本明細書中で記載されたように、タンパク質を断片化することによって、又は化学的ペプチド合成によって製造しうる。
【0084】
その上、抗原決定基はランダムペプチドライブラリーのファージディスプレイによって選択できる(例えば、Lane and Stephen, Curr. Opin. Immunol. 5:268 (1993), and Cortese et al., Curr. Gpin. Biotechnol. 7.616 (1996)を参照)。抗原決定基を同定し、抗原決定基を含む小ペプチドから抗体を産生する標準的な方法は、例えば、Mole, "Epitope Mapping," in Methods in Molecular Biology, Vol. 10, Manson (ed.), p105-116 (The Humana Press, Inc. 1992), Price, "Production and Characterization of Synthetic Peptide-Derived Antibodies," in Monoclonal Antibodies Production, Engineering, and Clinical Application, Ritter and Ladyman (eds.), p6084 (Cambridge University Press 1995), 及びColigan et al. (eds.), Current Protocols in Immunology, p91-95 及びp91-911 (John Wiley & Sons 1997)に記載される。
【0085】
抗原決定基を有するそのようなポリペプチドを用いて、ポリクローナル又はモノクローナル抗体等の、本発明のポリペプチドに免疫特異的なリガンドを生成することが出来る。そのような抗体を用いて、本発明のポリペプチドを発現するクローンを単離又は同定する、或いはアフィニティークロマトグラフィーによって該ポリペプチドを精製することができる。抗体は、当業者にとって明らかなように、とりわけ診断又は治療の補助として、用いられ得る。
【0086】
本発明の第1及び第2の側面のある実施形態では、例えば、生理活性を有する、放射活性を有する、酵素的な、又は蛍光的な、或いは抗体であり得る、ラベル等のペプチド又は他のポリペプチドに融合された本発明のポリペプチドを含む、融合タンパク質が提供される。
【0087】
例えば、分泌又はリーダー配列、プロ配列、精製において補助になる配列、或いは、例えば組換え体生産の間にタンパク質を高度に安定化する配列を含み得る1つ以上の付加的アミノ酸配列を含むとしばしば好都合である。或いは、又はさらに、成熟型ポリペプチドは、(例えば、ポリエチレングリコール)ポリペプチドの半減期を増大させる化合物のような別の化合物と融合させてもよい。
【0088】
融合タンパク質は本発明のポリペプチドの活性の阻害剤をペプチドライブラリーから選抜するためにも、役立ち得る。市販の抗体によって認識され得る融合タンパク質を発現させることも有用であり得る。融合タンパク質は、ポリペプチドが切断され、異種のポリペプチドから離れて精製され得るように、本発明のポリペプチドと異種のポリペプチドとの間に位置する、切断部位を含むようにも設計されうる。「異種のポリペプチド」には、本発明のポリペプチドとの関連が全く見出せないポリペプチドが含まれる。
【0089】
本発明の第1及び第2の側面の好ましい実施形態では、配列番号1、2、3、4又は5に示される(好ましくは配列番号1、2又は5に示される)アミノ酸配列を含むポリペプチド、或いはその変異体、突然変異体、機能的同等物又は活性断片が提供される。ある実施形態では、該ポリペプチドは配列番号1、2、3、4、5に示されるアミノ酸配列、或いはその変異体、突然変異体、機能的同等物又は活性断片からなる。本発明のポリペプチド(例えば、配列番号1、2、3、4又は5)は、例えば、ヘメクスチンA及びヘメクスチンBに対する抗体を作製するのに有用でありうると理解されるであろう。
【0090】
本発明の第3の側面は、(i)本発明の第1又は第2の側面のポリペプチドをコードする核酸分子;或いは(ii)(i)の核酸分子又はその変異体、突然変異体、断片若しくは相補体にハイブリダイズする核酸分子を提供する。
【0091】
オリゴヌクレオチドはプライマー又はプローブになり得る。オリゴヌクレオチドはストリンジェントな条件下で(i)の核酸分子の少なくとも10、12、15、17、20、25、30、35又は40の連続するヌクレオチドにハイブリダイズする核酸配列の領域を含み得る。本発明の第3の側面の一実施形態においては、該核酸分子はオリゴヌクレオチドを含むプローブ又はプライマーで、そのオリゴヌクレオチドは、ストリンジェントな条件下で、配列番号1、2、3、4又は5(或いはその変異体、突然変異体、又は機能的同等物又は活性断片等)をコードする核酸分子(好ましくは天然の核酸分子)の少なくとも10、12、15、17、20、25、30、35又は40の連続するヌクレオチドにハイブリダイズする核酸配列の領域を含み得る。ある実施形態においては、該核酸分子はオリゴヌクレオチドを含むプローブ又はプライマーで、そのオリゴヌクレオチドは、本発明の第1の側面のポリペプチド、例えば、配列番号1、2、3、4又は5に示されるポリペプチド(或いはその変異体、突然変異体、機能的同等物又は活性断片等)をコードする核酸分子(好ましくは天然の核酸分子)の少なくとも10、12、15、17、20、25、30、35又は40の連続するヌクレオチドに相補的な核酸配列の領域を含む。
【0092】
ストリンジェントな条件は、低ストリンジェンシー、中ストリンジェンシー、中/高ストリンジェンシー、高ストリンジェンシー、又は非常に高ストリンジェンシーであってもよい。
【0093】
当業者は、遺伝暗号の縮重の結果として、本発明の第1及び第2の側面のポリペプチドをコードする多くの核酸分子(中には、いかなる既知の天然の遺伝子のポリヌクレオチド配列ともわずかな配列同一性しか有しないものもある。)が製造されうると理解するであろう。従って、本発明は、可能なコドン選択に基づいた組み合わせを選択することによって作成されうるであろうポリヌクレオチド配列の、ありとあらゆる可能性のある変異を意図する。
【0094】
その上、当業者は、コドンを選択することにより、特定のコドンがその宿主によって利用される頻度に従って、特定の原核生物又は真核生物宿主においてペプチド又はポリペプチドが発現する速度を増大させることができると理解するであろう。
【0095】
本発明の核酸は、mRNA等のRNAの形態であってもよいし、例えば、クローニングによって得られたか、合成で製造されたcDNA及びゲノミックDNAを含むDNAの形態であってもよい。DNAは2本鎖でも1本鎖でもよい。1本鎖DNA又はRNAは、センス鎖としても知られるコーディング鎖でもよく、又はアンチセンス鎖とも呼ばれる非コーディング鎖でもよい。
【0096】
用語「核酸分子」は、例えばペプチド核酸といった修飾されたバックボーンを含むもののような、DNA及びRNAの類似体も含む。
【0097】
ある核酸分子が規定の核酸にハイブリダイズするかどうか決定するための適切な実験条件は、Sambrook et al. (1989; Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2nd edition, Cold Spring Harbour, New York)に記載されるようなハイブリダイゼーション法に従って、試験すべき核酸の適切な試料を含むフィルターを5ラSSC中で10分間予備浸漬し、及び5ラSSC、5ラDenhardt's液、0.5%SDS及び100μg/mL超音波変性サケ精子DNAの溶液中でフィルターをプレハイブリダイゼーションさせた後、32P-dCTP-でラベルされたプローブを10ng/mLの濃度で含む同じ溶液中で12時間、約45℃でのハイブリダイゼーションさせることをを含み得る。
【0098】
それから、フィルターを、2×SSC、0.5%SDS中、少なくとも55℃(低ストリンジェンシー)、少なくとも60℃(中ストリンジェンシー)、少なくとも65℃(中/高ストリンジェンシー)、少なくとも70℃(高ストリンジェンシー)、又は少なくとも75℃(非常に高ストリンジェンシー)で、30分、2回洗浄する。ハイブリダイゼーションはフィルターをX線フィルムに露光することによって検出されうる。
【0099】
更に、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを変えるのに用いられ得る、当業者によく知られた無数の条件や要因がある。例えば、規定の核酸にハイブリダイズさせるべき核酸の長さ及び性質(DNA、RNA、塩基組成);塩及び他の成分の濃度、例えば、ホルムアミド、硫酸デキストラン、ポリエチレングリコール等の有無;及びハイブリダイゼーション及び/又は洗浄工程の温度を改変することである。
【0100】
更に、2つのあるヌクレオチド配列がある規定された条件下でハイブリダイズするか否かを理論的に予想することもできる。従って、上記の経験的方法の代替として、変異体核酸配列がハイブリダイズするかどうかの決定は、配列が知られた2つの非相同的なヌクレオチド配列が塩濃度及び温度等の規定された条件下でハイブリダイズするTm(融解温度)の理論的計算に基づき得る。
【0101】
非相同的なヌクレオチド配列の融解温度(Tm(hetero))の決定においては,まず相同核酸配列の融解温度(Tm(homo))の決定が必要である。2つの完全に相補的な核酸鎖間(ホモ二重鎖形成)の融解温度(Tm(homo))は、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, 1995に概説されるように、以下の式、
Tm(homo)=81.5℃+16.6(logM)+0.41(%GC)-0.61(%form)-500/L
M=1価陽イオンのモル濃度を意味する
%GC=配列中の全塩基数のうちのグアニン(G)及びシトシン(C)の%
%form=ハイブリダイゼーション緩衝液中のホルムアミドの%,及び
L=核酸配列の長さ
に従って決定され得る。
【0102】
上式によって決定されたTmは、2つの完全に相補的な核酸配列間(ホモ二重鎖形成)のTm(Tm(homo))である。Tm値を2つの非相同的な核酸配列のそれに合わさせるために、2つの非相同的な核酸配列間のヌクレオチド配列における1%の差異がTmにおける1℃の減少に等しいと仮定する。ゆえに、へテロ二重鎖形成のTm(hetero)は、問題の類似配列と上記のヌクレオチドプローブとの間の配列同一性の差異%をTm(homo)から差し引くことによって得られる。
【0103】
本発明のポリペプチド、核酸分子、及び抗体は「精製されている」。本明細書中で用いられている用語、「精製されている」とは、その天然の状態から「人の手によって」改変されていることを意味する。即ち、天然であれば、それは変化し、又はその天然の宿主又は環境から除去されてきている。付随する不純物は減少又は除去され得る。ある実施形態においては、目的の種は存在する主要種である(即ち、モル濃度ベースで、組成物中に他のいずれの個々の種よりも豊富である)。ある実施形態においては、目的の種は実質的に精製された画分に存在する。実質的に精製された画分は、目的の種が、存在する全ての巨大分子種のうちの(モル濃度ベースで)少なくとも約30パーセントを構成する組成物を含む。一般的に、実質的に純粋な組成物は、組成物中に存在する全ての巨大分子種のうちの約80から90パーセントより多くを構成するであろう。ある実施形態においては、目的の種は、組成物が単一の巨大分子種から実質的になる(従来の検出方法では組成物中に夾雑物質が検出できない)実質的な均一にまで精製される。
【0104】
核酸分子は「裸の」核酸分子、ベクター、又はそれを含む宿主細胞の形態で提供されてよい。これに関しては本発明の第4及び第5の側面を参照。核酸分子が患者の投与用である場合、一般の手引きの原則は、核酸分子を患者に投与した際、該核酸分子によってポリペプチドが発現され得るようなものにすべきということである。これは当業者によって容易になしえるであろうし、考慮すべき事柄にはプロモーターなどのような適切な制御因子の存在が挙げられるであろう。
【0105】
本発明の第4の側面は、本発明の第3の側面の核酸分子を含む、発現ベクター等の、ベクターを提供する。本発明のベクターは、転写プロモーター、及び転写ターミネーターを含んでもよく、該プロモーターは、機能できるように核酸分子に連結され、該核酸分子は、機能できるように核ターミネーターに連結されている。ベクターは更にリボソーム結合部位、転写開始及び終結配列、並びにエンハンサー又はアクチベーター配列を含み得る。多くの原核生物及び真核生物発現ベクターが市販されている。適切な発現ベクターの選択は当業者の知識の範囲内である。
【0106】
ある実施形態においては、ベクターは本発明の第1の側面のポリペプチドをコードする核酸配列を含む。
【0107】
ある実施形態においては、ベクターは本発明の第2の側面のポリペプチドをコードする核酸配列を含む。
【0108】
ある実施形態においては、ベクターは本発明の第1の側面のポリペプチドをコードする核酸配列及び本発明の第2の側面のポリペプチドをコードする核酸配列を含む。
【0109】
本発明のベクターは適切な宿主細胞における適切な条件下での前記ベクターの選択を可能にするマーカー遺伝子等の更なる遺伝子を含んでもよい。
【0110】
本発明は更にこれらのベクター及び発現ベクターを含む組換え宿主細胞を含む。ゆえに、本発明の第5の側面は、本発明の第4の側面のベクターで形質転換された宿主細胞を提供する。実例となる宿主細胞は、バクテリア、酵母、菌類、昆虫、鳥類、哺乳類、及び植物の細胞を含む。
【0111】
ある実施形態においては、本発明の第1の側面のポリペプチドが宿主細胞によって発現され得るような本発明の第4の側面のベクターで形質転換された、宿主細胞が提供される。
【0112】
ある実施形態においては、本発明の第2の側面のポリペプチドが宿主細胞によって発現され得るような本発明の第4の側面のベクターで形質転換された宿主細胞が提供される。
【0113】
ある実施形態においては、本発明の第1の側面のポリペプチドが宿主細胞によって発現され、且つ本発明の第2の側面のポリペプチドが宿主細胞によって発現され得るような本発明の第4の側面のベクターで形質転換された、宿主細胞が提供される。本発明の第1及び第2の側面のポリペプチドは異なるベクターにコードされてもよく、その場合宿主細胞は少なくとも2つの異なる本発明の第4の側面のベクターで形質転換され得る、。
【0114】
本発明の第6の側面は、本発明の第1又は第2の側面のポリペプチドを製造する方法であって、本発明の第5の側面の宿主細胞を、本発明の第1又は第2の側面のポリペプチドの発現に適した条件下で培養することを含む、方法を提供する。
【0115】
ある実施形態においては、宿主細胞は本発明の第1の側面のポリペプチドを発現する。
【0116】
別の実施形態においては、宿主細胞は本発明の第2の側面のポリペプチドを発現する。
【0117】
さらに別の実施形態においては、宿主細胞は本発明の第1及び第2の側面のポリペプチドを発現する。
【0118】
本発明の第7の側面は、本発明の第1又は第2の側面のポリペプチドを製造する方法であって、該ポリペプチドの化学合成を含む方法を提供する。化学合成は、例えば、固相ペプチド合成によって達成されてもよい。そのような技法は当該技術分野でよく知られており、当業者によって容易になされ得るであろう。
【0119】
本発明の第6及び第7の側面の方法は、ポリペプチドの精製を更に含んでよい。そのような方法は当該技術分野でよく知られており、当業者によって容易になされ得るであろう。
【0120】
上に述べたように、本発明の第1及び第2の側面のポリペプチドは、本発明の第1の側面のポリペプチド及び本発明の第2の側面のポリペプチドを含む複合体の形態で提供されてもよい。該複合体は4量体が適切である。
【0121】
従って、本発明の第8の側面は、本発明の第1の側面のポリペプチド及び本発明の第2の側面のポリペプチドを含む複合体を生成するための方法であって、そこにおいて本発明の第1の側面のポリペプチドを本発明の第2の側面のポリペプチドとが複合体の形成を可能にするのに適した条件下で接触させることを含む方法を提供する。
【0122】
当業者は、複合体形成を可能にするのに適した条件を容易に決定し得るであろう。その上、後記実施例の節に示すように、適切な条件として、等モル濃度の本発明の第1の側面のポリペプチドと本発明の第2の側面のポリペプチドとを、37℃で5分間、50mM Tris-HCl(pH7.4)中で保温することが挙げられる。
【0123】
本発明の第9の側面は、本発明の第1の側面のポリペプチド及び本発明の第2の側面のポリペプチドを含む複合体を提供する。
【0124】
本発明の第1及び第2の側面のポリペプチドは、1:1の比率で存在することが好ましい。
【0125】
該複合体は、2つのポリペプチドの4量体であることが好ましい。
【0126】
ある実施形態においては、該複合体は本発明の第8の側面の方法によって得られる。
【0127】
上で述べたように、該複合体は4量体の形態と信じられている。
【0128】
ある実施形態においては、本発明の第1の側面のポリペプチドはヘメクスチンAである。
【0129】
ある実施形態においては、本発明の第2の側面のポリペプチドはヘメクスチンBである。
【0130】
複合体内のポリペプチドはヘメクスチンA及びヘメクスチンBであってよいが、1つ又は両方のポリペプチドが上で述べられたような変異体、突然変異体、機能的同等物、活性断片又は融合タンパク質であってもよいと、前の考察から理解されるであろう。本発明の第10の側面は、本発明の第1又は第2の側面のポリペプチド或いは本発明の第9の側面の複合体を認識する抗体を作製する方法であって、
(i)本発明の第1又は第2の側面のポリペプチド或いは本発明の第9の側面の複合体で動物を免疫し、
(ii)前記動物から抗体を取得する
工程を含む方法を提供する。
【0131】
本発明の第11の側面は、本発明の第1又は第2の側面のポリペプチドを認識する抗体を提供する。
【0132】
ある実施形態においては、該抗体はヘメクスチンA又はBに結合する。ある実施形態においては、該抗体は配列番号1、2、3、4又は5の配列内に含まれるエピトープに結合する。
【0133】
ある実施形態においては、本発明の第10及び第11の側面の抗体は本発明の第1又は第2の側面のポリペプチドの抗原決定基を認識するが、該抗原決定基は該ポリペプチドが本発明の他の側面のポリペプチドと複合体を形成するときに露出する。ゆえに、ある実施形態においては、本発明の第1の側面のポリペプチド及び本発明の第2の側面のポリペプチドによって形成された複合体を認識する。そのような抗体はその複合体を免疫原として用いることにより作製され得る。
【0134】
本発明の抗体はポリクローナル又はモノクローナル抗体調製品、単一特異的な血清、ヒト抗体、でもよいし、或いはヒト化抗体、改変抗体(Fab’)2フラグメント、F(ab)フラグメント、Fvフラグメント、単一ドメイン抗体、2量体又は3量体抗体フラグメントもしくはコンストラクト、ミニボディ又は問題の抗原に結合するそれらの機能的断片等のハイブリッド又はキメラ抗体であってもよい。
【0135】
抗体は、当業者にとっての周知の技術、及び例えば、米国特許No.4,011,308; 4,722,890; 4,016,043; 3,876,504; 3,770,380; 及び 4,372,745に開示された技術を用いて製造され得る。Antibodies-A Laboratory Manual, Harlow and Lane, eds., Cold Spring Harbor Laboratory, N.Y. (1988)も参照。例えば、ポリクローナル抗体は、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、又はヤギ等の適切な動物に目的の抗原を免疫することによって産生される。免疫原性を亢進させるために抗原を、免疫前にキャリアーに連結することができる。そのようなキャリアーは当業者によく知られている。免疫は、一般的には、生理食塩液中で、好ましくは完全フロイントアジュバント等のアジュバント中で、抗原を混合又は乳化させ、混合物又は乳化物を非経口的に(一般的には皮下又は筋肉内で)注射することによって遂行される。一般的に、動物は2〜6週間後に、生理食塩液中の抗原を、好ましくは完全フロイントアジュバントを用いて、1回以上の注射して追加免疫される。抗体は当該技術分野で知られた方法を用いてインビトロ免疫によって生成せしめることもできる。その後、免疫された動物から抗血清を得る。
【0136】
モノクローナル抗体はKohler & Milstein (1975) Nature 256:495-497の方法又はその修正法を用いて調製されて得る。通常、マウス又はラットを、上記されたように免疫する。ウサギを用いてもよい。しかしながら、動物を出血させて血清を抽出するのではなく、脾臓(及び任意でいくつかの大リンパ節)を取り出して単細胞に解離させる。所望により、細胞懸濁液を抗原をコーティングしたプレート又はウェルにアプライすることによって(非特異的に付着している細胞を除去後)脾細胞をスクリーニングしてもよい。抗原に特異的な膜結合性イムノグロブリンを発現するB細胞はプレートに結合し、残りの懸濁液とともに洗い流されないだろう。得られるB細胞又は解離したすべての脾細胞は、ミエローマ細胞と融合するよう誘導して、ハイブリドーマを形成させ、次いで、選択培地(例えば、ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン培地、「HAT」)中で培養する。結果生じたハイブリドーマを、限界希釈(法)によってプレーティングし、免疫抗原に特異的に結合する(且つ、無関係の抗原には結合しない)抗体の産生を調べる。次いで、選択された、モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを、インビトロ(例えば、組織培養ビン又は中空系リアクター)又はインビボ(例えば、マウスの腹水)のいずれかで培養する。
【0137】
本発明においては、ヒト化及びキメラ抗体も役に立つ。ハイブリッド(キメラ)抗体は一般的に、Winter et al. (1991) Nature 349: 293-299 及び米国特許 No. 4,816,567において考察される。ヒト化抗体分子は、一般的に、Riechmann et al. (1988) Nature 332:323-327; Verhoeyan et al (1988) Science 239:1534-1536; 及び1994年9月21日に公開された英国特許公報 No. GB 2,276,169 において考察される。).
【0138】
分子と特異的に反応することによって該分子を抗体に結合させることができれば、該抗体は該分子を「認識する」といわれる。本発明の抗体は、既に本発明のポリペプチドに結合した抗体の形態で提供されてもよいし、又は本発明のポリペプチドに結合されてない抗体の形態で提供されてもよい。
【0139】
ある実施形態では、抗体又はその断片は約105M-1を上回る結合アフィニティー又はアビディティーを有するが、約106M-1を上回るのがより好ましく、約107M-1を更に上回るのがより好ましく、約108M-1又は109M-1を上回るのが最も好ましい。抗体の結合アフィニティーは、例えば、スキャッチャード解析(Scatchard, Ann. NY Acad. Sci. 51:660 (1949))により、当業者によって容易に決定されうる。
【0140】
本発明の第12の側面は、本発明の第1の側面のポリペプチド、第2の側面のポリペプチド或いは本発明の第9の側面の複合体に対する抗毒素を製造する方法であって、本発明の第1又は第2の側面のポリペプチド或いは本発明の第9の側面の複合体で動物を免疫し、抗毒素の製造において使用するために該動物から抗体を回収することを含む方法を提供する。
【0141】
動物は、本発明の第1の側面のポリペプチド又は本発明の第2の側面のポリペプチド或いは両方で免疫されてもよく、別々に(別々の、又は組み合わせた調製品として)提供されるか又は2つのポリペプチドの複合体の形態で提供されうる。
【0142】
抗毒素を製造する従来の方法は、毒素に対してウマ、ヤギ又はヒツジ等の動物を免疫することである。それらの毒性を低減するために、毒素をホルマリン処理によって修飾してもよい。それらの吸収を長引かせるために、修飾された毒素を水酸化アルミニウムゲルと混合してもよい。このようにして産生された抗体を、次いで動物から単離され、解毒剤として、患者、典型的にはヒト患者、に用いられる。より最近では、ニワトリ等の鳥類を用いて非哺乳類が用いられる。この手順においては、若いニワトリを少用量の標的ヘビ毒で免疫すると、これらの動物は加齢するにつれて毒素に対して解毒剤として作用する抗体を作り出す。ニワトリが雌鶏となり卵を産み始めると抗毒素タンパク質が卵黄に送られて蓄積することが分かっている。次いで、卵を解毒剤を作るのに用いるタンパク質の抽出のために回収する。
【0143】
次に、第一の動物(例えば、ウマ又はニワトリ)の血清を罹患動物(「宿主」)に投与し特異的且つよく反応性のある抗体のソースを供給する。投与された抗体は、ある程度あたかも内因性の抗体であるかのように機能し、毒素に結合しその毒性を低減する。
【0144】
本発明の第13の側面は、本発明の第1の側面のポリペプチド、第2の側面のポリペプチド或いは本発明の第9の側面の複合体に対して有効な抗毒素を提供する。抗毒素は本発明の第12の側面に従って製造されてもよいが、本発明の第14の側面方法を代わりに用いてもよい。
【0145】
本発明の第14の側面は、本発明の第1又は第2の側面のポリペプチドの化合物の調節薬或いは本発明の第9の側面の複合体の調節薬を同定するための方法を提供する。
【0146】
本明細書中で用いられる用語「調節薬」及び「調節する」等は、アンタゴニスト、アゴニストである、又はアンタゴニスト及びアゴニストの両方として機能できる化合物のことをいう。疑念を回避するために、「調節薬」は本発明のポリペプチド又は複合体の抗凝固活性を増大させられる化合物を含み、且つ本発明のポリペプチド又は複合体の抗凝固活性を減少させられる化合物も含むと理解されるであろう。
【0147】
様々な薬剤探索技術のいずれかにおいて、本発明の第1及び第2の側面のポリペプチドを用い、化合物ライブラリーをスクリーニングすることができる。そのような化合物は本発明の第1又は第2の側面のポリペプチド或いは本発明の2つのポリペプチドの複合体の活性を調節することができる。
【0148】
ある実施形態においては、本方法は試験化合物を本発明の第1又は第2の側面のポリペプチドと接触させ、試験化合物が本発明の第1又は第2の側面のポリペプチドに結合するかどうかを決定することを含む。ポリペプチドは、本発明の2つのポリペプチドを含む複合体の形態で提供されてもよい。本方法は更に、試験化合物が本発明の第1又は第2の側面のポリペプチドの活性を亢進又は減少させるか、或いは本発明の2つのポリペプチドの複合体の活性を亢進又は減少させるかを決定することを含んでもよい。
【0149】
本発明の第1又は第2の側面のポリペプチドの活性には、(i)独力の場合のポリペプチドの抗凝固活性(例えば、本発明の第1のポリペプチドの場合);(ii)本発明の他の側面のポリペプチドと活性な複合体を形成する能力(ポリペプチドの複合体形成能力が影響を受けてもよいし、結果生じる複合体の活性が影響を受けてもよい);及び(iii)複合体の活性が含まれる。抗凝固活性を決定する方法は上述され、また後記の実施例の節でも論じられる。そのような方法はプロトロンビン試験を含む。アゴニスト又はアンタゴニスト活性は本明細書中で記載された外因性テナーゼ複合体の阻害の試験のためのアッセイを用いて調べてもよい。
【0150】
試験化合物が本発明のポリペプチド又はポリペプチド複合体の活性を亢進又は減少させるかどうか決定するための方法は当業者には知られ、且つ例えば、ドッキング実験/ソフトウェア又はX線結晶解析を含むであろう。
【0151】
本発明のスクリーニング方法において用いられる本発明のポリペプチド又はポリペプチド複合体は溶液中で遊離していても、固形支持体に貼付られていても、細胞表面にあっても、又は細胞内にあってもよい。
【0152】
試験化合物(即ち、可能性のある調節薬)は天然の又は修飾された基質、酵素、受容体、2000Daまで、好ましくは800Da以下の、天然又は合成有機低分子等の有機低分子、ペプチド模倣薬、無機分子、ペプチド、ポリペプチド、抗体、前記の構造的もしくは機能的模倣薬を含む、様々な形態であってよい。
【0153】
試験化合物は例えば、細胞、無細胞調製品、化学物質ライブラリー又は天然産物混合物から単離されてもよい。これらの調節薬は、天然又は修飾された基質、リガンド、酵素、受容体、或いは構造的若しくは機能的模倣薬であってもよい。そのようなスクリーニング技法の適切な総説としては、Coligan et al., Current Protocols in Immunology l(2):Chapter 5 (1991)を参照。
【0154】
良好なアンタゴニスト、アンタゴニスト又はアゴニストかつアンタゴニストで最もあり得そうな化合物は、本発明のポリペプチド又はポリペプチド複合体に結合する分子である。
【0155】
或いは、調節薬(例えば、アンタゴニスト)は、本発明のポリペプチド又はポリペプチド複合体の受容体に拮抗的に結合することで機能してもよい。
【0156】
或いは、(例えば、アゴニスト)は、本発明のポリペプチド又はポリペプチド複合体の受容体に結合し、受容体と本発明のポリペプチド又はポリペプチド複合体との間の結合のアフィニティーを増大させることで機能してもよい。
【0157】
可能性のある調節薬(例えば、アンタゴニスト)は、本発明のポリペプチドに結合し、それによってその活性を阻害又は失活させる有機低分子、ペプチド、ポリペプチド及び抗体を含む。この様式においては、通常の細胞の結合分子への、ポリペプチド又はポリペプチド複合体の結合が阻害され得、ポリペプチド又はポリペプチド複合体の天然の生物活性が妨害される。
【0158】
上記の実施形態のうちのあるものにおいては、単純な結合アッセイを用いることができ、そこでは、直接的又は間接的に試験化合物に結合したラベルによってか、或いはラベルされた拮抗化合物との競合を含むアッセイにおいて、ポリペプチド又はポリペプチド複合体を有する表面への試験化合物の付着が検出される。
【0159】
利用可能な別の薬剤スクリーニングの技法は、目的のポリペプチド又はポリペプチド複合体への適切な結合アフィニティーを有する化合物のハイスループットスクリーニングを提供する(国際特許出願W084/03564を参照)。この方法においては、数多くの異なった試験低分子化合物を固体基板上で合成し、次いで、それを本発明のポリペプチド又はポリペプチド複合体と反応させ、洗浄することができる。ポリペプチド又はポリペプチド複合体を固定化する1つの方法は、非中和抗体の使用である。結合したポリペプチド又はポリペプチド複合体は、次いで当該技術分野でよく知られた方法を用いて検出され得る。精製されたポリペプチド又はポリペプチド複合体を、前記薬剤スクリーニング技法で使用するためのプレートに直接コーティングすることもできる。
【0160】
インシリコ的方法を用いて調節薬を同定することも出来る。所望により、その後、調節薬の活性を確認してもよい。
【0161】
本発明の第15の側面は、本発明の第1又は第2の側面のポリペプチド、本発明の第3の側面の核酸分子、本発明の第4の側面のベクター、本発明の第5の側面の宿主細胞、本発明の第9の側面の複合体、本発明の第11の側面の抗体、本発明の第13の側面の抗毒素、又は本発明の第14の側面の方法により同定された調節薬を含む医薬組成物を提供する。
【0162】
ある実施形態においては、該医薬組成物は本発明の第1の側面のポリペプチド又はそれをコードする核酸分子を含む。
【0163】
ある実施形態においては、該医薬組成物は本発明の第2の側面のポリペプチド又はそれをコードする核酸分子を含む。
【0164】
ある実施形態においては、医薬組成物は、(i)本発明の第1の側面のポリペプチド又はそれをコードする核酸分子;及び(ii)本発明の第2の側面のポリペプチド又はそれをコードする核酸分子を含む。
【0165】
医薬組成物が本発明の第1の側面のポリペプチド及び本発明の第2の側面のポリペプチドを含む場合、ポリペプチドは2つのポリペプチドを含む複合体の形態で提供されても、又は複合体でない形態で提供されてもよい。
【0166】
ある実施形態においては、本発明の第1の側面のポリペプチドの本発明の第2の側面のポリペプチドに対する比率は1:2〜2:1の範囲内であるが、より好ましくは1:1.5〜1.5:1、より好ましくは1:1.25〜1.25:1、より好ましくは1:1.15〜1.15:1、より好ましくは1:1.1〜1.1:1、より好ましくは1:1.05〜1.05:1、さらに好ましくは約1:1の範囲内である。ポリペプチドが1:1の比率で存在する場合、ポリペプチドは4量体として適切に存在する。即ち、複合体は2つの本発明の第1の側面のポリペプチド及び2つの本発明の第2の側面のポリペプチドを含む。
【0167】
本発明の医薬組成物は医薬的に許容できる担体を含んでもよい。組成物は単独で、或いは、安定化化合物等の少なくとも1つの他の薬剤と組み合わせて投与することができ、生理食塩水、生理緩衝食塩水、デキストロース、及び水を含むが、これらに限定されない任意の無菌の生体適合性の医薬担体中で、投与することができる。
【0168】
本発明において利用される医薬組成物は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、脳室内、髄内、鞘内(髄空内)、脳室内(心室内)、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所、舌下、又は直腸を含むが、これらに限定されない任意の数の経路により投与され得る。
【0169】
有効成分に加えて、これらの医薬組成物は、活性化合物の医薬的に用いられ得る製剤への加工を容易にする賦形剤及び補助剤を含む、医薬的に許容できる適切な担体を含んでもよい。製剤化や投与のための技法の更なる詳細はRemington's Pharmaceutical Sciences (Maack Publishing, Easton Paの最新版で見出され得る。
【0170】
経口投与のための医薬組成物は、その技術分野でよく知られた医薬的に許容できる担体を用いて、経口投与に適した投与量で製剤化され得る。そのような担体は、患者による摂取のために、錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして医薬組成物は、製剤化することを可能にする。
【0171】
経口的使用のための医薬組成物は、活性化合物と固体賦形剤とを組み合わせ、得られる顆粒混合物を(任意で、すりつぶした後に)加工して錠剤もしくは糖衣錠の核を得ることを通して得られ得る。所望により、適切な補助剤が加えられうる。適切な賦形剤としては、ラクトース、ショ糖、マンニトール、及びソルビトールを含む糖等の炭水化物もしくはタンパク質の充填剤;トウモロコシ、コムギ、イネ、ジャガイモ、又は他の植物由来のデンプン;メチルセルロース、ハイドロキシプロピルメチルセルロース、又はカルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース;アラビアゴム及びトラガントを含む、ゴム;及びゼラチン及びコラーゲン等のタンパク質を含む。所望により、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、及びアルギン酸ナトリウム等のアルギン酸又はその塩等の崩壊剤又は可溶化剤を加えてもよい。
【0172】
糖衣錠の核は、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー液、及び適切な有機溶媒又は溶媒混合液も含んでもよい濃縮ショ糖溶液等の適切なコーティング剤とともに用いてもよい。製品識別のため又は活性化合物の量、即ち投与量を明らかにするために、染料又は色素を錠剤又は糖衣錠のコーティングに加えてもよい。
【0173】
経口的に使用されうる医薬製剤は、ゼラチンで作られた押し込み式カプセル、並びにゼラチン及びグリセロール又はソルビトール等のコーティングで作られた軟らかい、密閉カプセルを含む。押し込み式カプセルは、充填剤又はラクトース又はデンプン等の結合剤、タルク又はステアリン酸マグネシウム等の滑剤、及び任意で、安定化剤と混合した有効成分を含むことができる。ソフトカプセルにおいては、活性化合物を脂肪油、液体、又は液体ポリエチレングリコール等の適切な液体中に、安定化剤と共に又は安定剤無しで、溶解又は懸濁してもよい。
【0174】
非経口投与に適する医薬製剤は水溶液、好ましくはハンクス液、リンゲル液又は生理緩衝食塩水等の生理的に適合した緩衝液中で製剤化されてもよい。注射水性懸濁液はカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、又はデキストラン等の懸濁液の粘度を増大させる物質を含んでもよい。加えて、活性化合物の懸濁液は適切な油状の注射懸濁液として調製されてもよい。適切な親油性溶媒又はビヒクルとしては、ゴマ油などの脂肪油、又はオレイン酸エチル、トリグリセリド、又はリポソーム等の合成脂肪酸エステルが挙げられる。非油性の多価陽イオン性のアミノポリマーも送達のために用いられ得る。懸濁液は、任意で、適切な安定化剤又は化合物の溶解度を増大させ、高度に濃縮された溶液の製剤を可能にするための薬剤も含んでもよい。
【0175】
局所又は経鼻投与のために、浸透されるべき特別の障壁に適する浸透剤が製剤化において用いられる。そのような浸透剤は一般的に当該技術分野で知られている。
【0176】
本発明の医薬組成物は、当該技術分野で知られた方法で、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣、粉末化、乳化、カプセル化、封入、又は凍結乾燥のプロセスにより、製造することができる。
【0177】
医薬組成物は塩として提供されてもよく、これは塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、及びコハク酸を含むが、これらに限定されない、多くの酸とで、形成され得る。塩は、対応する遊離塩基形態よりも水性又は他のプロトン性の溶媒に、よりよく溶解する傾向がある。
【0178】
医薬組成物が調製された後、それらは適切な容器内に置かれ、示された状態の治療のためにラベルを付される。そのようなラベル表示には、投与の量、頻度及び方法が含まれ得る。
【0179】
本発明における使用に適した医薬組成物は、有効成分が意図された目的を達成するのに有効な量で含まれる組成物を含む。有効用量の決定は十分に当業者の能力の範囲内である。
【0180】
任意の化合物に関して、治療有効量はまず、例えば、新生物細胞の細胞培養アッセイ、又はマウス、ラット、ウサギ、イヌもしくはブタ等の動物モデルのいずれかにおいて見積もられ得る。動物モデルは適切な濃度範囲及び投与経路を決定するためにも用いることができる。次に、そのような情報を用いて有用な投与量及び経路を決定することができる。
【0181】
治療有効量とは、症状又は状態を改善する有効成分の量をいう。治療有効性及び毒性は、ED50(集団の50%で治療上有効な量)又はLD50(集団の50%で致死的な量)統計を計算する等によって、細胞培養における、もしくは実験動物による標準的な医薬上の手順により、決定されてもよい。毒性の、治療効果に対する量比が治療指数であり、それはLD50/ED50比で表され得る。大きな治療指数を示す医薬組成物が好ましい。細胞培養アッセイ及び動物実験から得られたデータを用いてヒトへの使用のための投与量の範囲を策定する。そのような組成物中に含まれる投与量は、ED50を含みかつ毒性がほとんど、もしくは全く無い循環濃度の範囲内が好ましい。投与量は、用いられる剤型、患者の感受性、及び投与経路に依存して、この範囲内で可変である。
【0182】
治療を必要とする対象に関連した要因を考慮して、的確な投与量が、医者によって決定されるだろう。投与量及び投与は、十分なレベルの活性部分を提供するように、或いは望まれた効果を維持するように調整される。考慮されてもよい要因としては、疾患状態の重症度、対象の一般的な健康状態、年齢、体重、及び対象の性別、投与時間及び頻度、薬剤併用、反応感受性、及び治療に対する応答が挙げられる。長期に作用する医薬組成物は、個々の製剤の半減期及びクリアランス速度に依存して、3〜4日ごと、週ごと又は隔週に投与されてもよい。
【0183】
上の考察は本発明の医薬組成物に関して言われているが、該考察は、本発明の「併用剤」及び「医薬」を含む、本発明のその他の医薬品又は側面にも関連し得る。
【0184】
本発明の第16の側面は、医薬における使用のための、本発明の第1又は第2の側面のポリペプチド、本発明の第3の側面の核酸分子、本発明の第4の側面のベクター、本発明の第5の側面の宿主細胞、本発明の第9の側面の複合体、本発明の第11の側面の抗体、本発明の第13の側面の抗毒素、又は本発明の第14の側面の方法により同定された調節薬を提供する。ある実施形態においては、該医薬用途は抗凝固療法を必要とする患者の治療のためである。
【0185】
「抗凝固療法を必要とする患者」には、過剰な血液凝固が関係している状態に罹患しているか、罹患しやすい患者が含まれる。過剰な血液凝固は、個々の患者に関して、患者の健康に有害であり得る任意の程度の凝固である。そのような状態としては、以下のもの:血栓塞栓症、脳血栓症、冠動脈症、心筋梗塞、脳血管症、脳卒中、肺動脈塞栓症、静脈血栓症、深部静脈血栓症、静脈炎、浅(動脈症)、末梢動脈症、播種性血管内凝固、血栓性静脈炎、静脈血栓症、再狭窄、末梢アンギナフラキス(peripheral anginaphraxis)、血管障害性血栓症、虚血性脳血管血栓症、血栓症関連障害、不安定狭心症、不安定狭心症及び閉塞性血栓血管炎(thromboangiitis obliterans)のうち、1つ以上が含まれ得る。
【0186】
本明細書中で用いられる用語「治療」(及びその文法的活用形)とは、疾患状態又は症状を治療し、疾患の確立を予防し、或いはそうでなければ、疾患又は他の望ましくない症状の進行を、方法のいかんを問わず予防、妨害、遅延又は逆行させる、ありとあらゆる使用を言う。ゆえに、「治療」は予防的処置と治療的処置とを含む。本発明の第17の側面は、抗凝固療法を必要とする患者の治療のための併用剤を提供し、該併用剤は、
(i)本発明の第1の側面のポリペプチド又はそれをコードする核酸分子;及び
(ii)本発明の第2の側面のポリペプチド又はそれをコードする核酸分子
を含む。(i)及び(ii)は本発明の第9の側面の複合体の形態で提供されてもよいし、別個の形態で提供されてもよい。
【0187】
本発明の第18の側面は、抗凝固療法を必要とする患者の治療に用いるための医薬の製造における、本発明の第1又は第2の側面のポリペプチド、本発明の第3の側面の核酸分子、本発明の第4の側面のベクター、本発明の第5の側面の宿主細胞、或いは本発明の第9の側面の複合体の使用を提供する。
【0188】
本発明の第18の側面のある実施形態では、、抗凝固療法を必要とする患者の治療に用いるための医薬の製造における、本発明の第1の側面のポリペプチド又はそれをコードする核酸分子の使用が提供される。
【0189】
任意で、該医薬は、本発明の第2の側面のポリペプチド又はそれをコードする核酸分子と同時に、別個に、又は順次、投与される。
【0190】
ある実施形態では、患者は既に本発明の第2の側面のポリペプチド又はそれをコードする核酸分子を投与されている。
【0191】
本発明の第18の側面のある実施形態では、抗凝固療法を必要とする患者の治療に用いるための医薬の製造における、本発明の第2の側面のポリペプチド又はそれをコードする核酸分子の使用が提供される。。
【0192】
任意で、該医薬は、本発明の第1の側面のポリペプチド又はそれをコードする核酸分子と同時に、別個に、又は順次、投与される。
【0193】
ある実施形態では、患者は既に本発明の第1の側面のポリペプチド又はそれをコードする核酸分子を投与されている。
【0194】
本発明の第19の側面は、抗凝固療法を必要とする患者の治療のための併用剤の製造における、
(i)本発明の第1の側面のポリペプチド又はそれをコードする核酸分子;及び
(ii)本発明の第2の側面のポリペプチド又はそれをコードする核酸分子
の使用を提供する。
【0195】
本明細書中で用いられる「併用剤」には、(i)本発明の第1の側面のポリペプチド又はそれをコードする核酸分子;及び(ii)本発明の第2の側面のポリペプチド又はそれをコードする核酸分子を含む医薬製剤が含まれる。成分(i)及び(ii)は単一の製剤中に存在してもよいし、別個の製剤として存在してもよい。成分(i)及び(ii)が単一の製剤中にある場合は、それらは複合体の形態で提供されてもよいし、複合体でないポリペプチド(即ち、当然ながら両方の混合物)の形態で提供されてもよい。
【0196】
従って、有効成分は同時(例えば、いっせいに)に又は異なる時間(例えば、順次)に、異なる期間にわたって投与されてもよく、それはお互いに隔たっていても、又は重複していてもよい。
【0197】
別個又は順次の投与があるならば、第二回目の治療剤の投与における遅延は、本発明によって達成されるような治療剤の医薬的組み合わせの相乗的治療効果の利益を失わないようなものであるべきである。成分の投与の間の遅延時間は、成分の厳密な性質、それらの間の相互作用及びそれらそれぞれの半減期によって変わるであろう。
【0198】
組み合わせの相手はいかなる順序で投与されてもよい。
【0199】
ある実施形態においては、成分(i)の(ii)に対する比率は1:2〜2:1の範囲内であるが、より好ましくは1:1.5〜1.5:1、より好ましくは1:1.25〜1.25:1、より好ましくは1:1.15〜1.15:1、より好ましくは1:1.1〜1.1:1、より好ましくは1:1.05〜1.05:1、さらに好ましくは約1:1の範囲内である。
【0200】
本発明の第20の側面は、抗凝固療法を必要とする患者の治療方法であって、本発明の第1又は第2の側面のポリペプチド、本発明の第3の側面の核酸分子、本発明の第4の側面のベクター、本発明の第5の側面の宿主細胞、本発明の第9の側面の複合体又は本発明の第15の側面の医薬組成物を、該患者に投与することを含む方法を提供する。
【0201】
本発明の第21の側面は、抗凝固療法を必要とする患者の治療方法であって、
(i)本発明の第1の側面のポリペプチド又はそれをコードする核酸分子;及び
(ii)本発明の第2の側面のポリペプチド又はそれをコードする核酸分子
を、該患者に投与することを含む方法を提供する。
【0202】
上で考察されたように、(i)及び(ii)は別個の製剤として、又は(i)及び(ii)を含む単一の製剤として存在してもよい。別個の製剤の形態の場合は、(i)及び(ii)は別個に、順次、又は同時に投与されてもよい。
【0203】
(i)及び(ii)は本発明の第9の側面の複合体の形態で提供されてもよい。
【0204】
本発明の第22の側面は、患者の蛇咬傷を治療する方法であって、本発明の第1又は第2の側面のポリペプチド、本発明の第3の側面の核酸分子、本発明の第4の側面のベクター、本発明の第5の側面の宿主細胞、本発明の第9の側面の複合体、或いは本発明の第15の側面の医薬組成物を、該患者に投与することを含む方法を提供する。本発明の第23の側面は、患者の蛇咬傷の治療剤の製造における、本発明の第1又は第2の側面のポリペプチド、本発明の第3の側面の核酸分子、本発明の第4の側面のベクター、本発明の第5の側面の宿主細胞、本発明の第9の側面の複合体、或いは本発明の第15の側面の医薬組成物の使用を提供する。
【0205】
ある箇所では、本発明を、本発明の個々の側面に関連して記載してきたが、当業者が読めば、それらのコメントは本発明の他の側面に同等に当てはまり得るのでっあって、該記述をしかるべく解釈すべきだと理解するであろう。
【0206】
本発明の実施には、特に示さない限り、当業者の技術の範囲内である分子生物学、微生物学及び組換えDNA技術の従来技法が用いられるであろう。そのような技法は文献に十分に説明されている。参照用の教科書の例としては、以下のものが挙げられる:Sambrook Molecular Cloning; A Laboratory Manual, Third Edition (2000)及びその後の版。
【実施例】
【0207】
本明細書中ではコブラ科のヘビ、H. haemachatus(アフリカリンカルスコブラ)の毒に由来する抗凝固活性を媒介するスリーフィンガートキシンの精製と特徴づけを報告する。それは軽度の抗凝固活性を有するが、その、第2のスリーフィンガートキシンとの相乗的な相互作用が、その抗凝固効果を亢進させる。この複合体形成の特徴づけが本明細書中に記載される。抗凝固タンパク質及びその複合体はTF-FVIIa複合体によるFXの活性化を特異的に阻害する。これは、TF-FVIIa複合体を阻害することにより抗凝固効果を示すことが知られているスリーフィンガートキシン間の、初のユニークな相乗的複合体である。
【0208】
材料と方法
材料−凍結乾燥したH. haemachatus毒素をAfrican Reptiles and Venoms, Gauteng, South Africaから入手した。カルシウム入りトロンボプラスチン(プロトロンビン時間試験用)、ラッセルクサリヘビ毒素(RVV)(スチプベン時間試験用)、トロンビン試薬(トロンビン時間試験用)、塩酸ベンズアミジン及び4−ビニルピリジンはSigma(St. Louis, MO, USA)から購入した。β−メルカプトエタノールはナカライテスク(京都、日本)から購入した。発色基質H-D-Ile-Pro-Arg-p−ニトロアニリド(pNA)二塩酸塩(2HC1)、(S−2288)、pyro-Glu-Pro-Arg-pNA・HCl(S-2366)、H-D-Phe-Pip-Arg-pNA・2HCl(S-2238)、H-D-Pro-Phe-Arg-pNA・2HCl(S-2302)、Z-D-Arg-Gly-Arg-pNA・2HCl(S-2765)、pyro-Glu-Gly-Arg-pNA・HCl(S-2444)、benzoyl-Ile-Glu(GluγOMe)-Gly-Arg-pNA・HCl(S-2222)、H-D-Val-Leu-Lys-pNA・2HCl(S-2251)、H-D-Val-Leu-Arg-pNA・2HCl(S-2266)及びMeO-Suc-Arg-Pro-Tyr-pNA・HC1(S-2586)はChromogenix AB、 Stockholmから購入した。Spectrozyme(登録商標)FIXa(H-D-Leu-Ph'Gly-Arg-pNA.2AcOH)はAmerican Dignostica Inc., Stamford, CTから入手した。使用前に全基質を脱イオン水中で再構成した。凍結乾燥組換えヒト組織因子(Innovin)はDade Behring Marburg, Germanyから購入した。ヒト血漿は健康なボランティアに寄贈してもらった。使用した他の化学物質及び薬剤はすべて入手可能な最高純度のものであった。
【0209】
抗凝固タンパク質の精製−H. haemachatus粗毒素(1ml蒸留水中100mg)を、50mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4)で平衡化したSuperdex30ゲル濾過カラム(1.6×60cm)にアプライし、AKTA Purifier system (Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)を用いて、同じ緩衝液で溶出した。個々の画分についてプロトロンビン時間凝固試験(下参照)を用いて抗凝固活性を調べた。強力な抗凝固活性を有する画分をプールしておき、陽イオン交換カラムで同じクロマトグラフシステムを用いてサブフラクション化した。抗凝固画分を50mM Tris-HCl緩衝液pH7.5で平衡化したUnoS-6(Bio-Rad, Hercules, CA;カラム体積6ml)カラムにロードした。結合したタンパク質は同緩衝液中の1M NaCl直線グラジェントで溶出した。収集した画分につき抗凝固活性を調べた。陽イオン交換カラムから得た抗凝固のピークを0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)で平衡化したJupiter Cl8(I×25cm)カラムにアプライした。結合したタンパク質は0.1%TFA中の80%アセトニトリル(ACN)直線グラジェントを用いて溶出した。個々のピークを収集し、凍結乾燥し、抗凝固活性の試験を行い、次いで狭い口径のPepmapカラムでChromeleonマイクロ液体クロマトグラフィーシステム(LC Packings, San Francisco, CA)を用いて再びクロマトグラフィーにかけた。
【0210】
エレクトロスプレーイオン化マススペクトロメトリー(ESI-MS)−Perkin-Elmer Sciex API-300 LC/MS/MS systemを用いたESI-MSを用いて、抗凝固タンパク質の均質性及び質量を決定した。典型的には、RP-HPLC画分を直接解析に用いた。イオンスプレー、オリフィス及びリング電圧は、それぞれ、4600、50、及び350Vに設定した。噴霧器及びカーテンガスとして窒素を用いた。溶媒(0.1% TFA中40% ACN)の配送にはLC-IOAD Shimazdu ポンプを流速50μl/分で用いた。BioMultiview ソフトウェア(Perkin-Elmer Sciex)を用いて生のマススペクトルを解析及びデコンボリュートした。
【0211】
還元及びピリジルエチル化−精製タンパク質を以前に記載されたような手順(24)を用いて還元及びピリジルエチル化した。簡単に言うと、タンパク質(0.5mg)を500μlの変性緩衝液(6Mグアニジン塩酸塩、0.25M Tris−HCl、1mM EDTA pH8.5)に溶解した。10μlの メルカプトエタノールを加えた後、混合液を真空下、37℃で2時間保温した。4−ビニルピリジン(50μl)を混合液に加え、2時間室温に保った。ピリジルエチル化したタンパク質を解析用JupiterCl 8 カラム(4.6×250mm)で0.1%(v/v)TFA中のACN勾配を用いて流速0.5ml/分で精製した。
【0212】
N末端シークエンシング-天然及びS−ピリジルエチル化タンパク質のN末端シークエンシングは、Perkin-Elmer Applied Biosystems 494パルス液相シークエンサー(Procise)を、オンライン785A PTHアミノ酸アナライザーとともに用いて、自動化エドマン分解によって行った。
【0213】
抗凝固複合体の再構成−予備実験で活性のある抗凝固タンパク質が別の毒素タンパク質と相乗的な複合体を形成し相互作用することが示された。等モル濃度の2つのタンパク質を(他に言及が無い限り)37℃で5分間、50mM Tris-緩衝液(pH7.4)中で保温することによって、様々なインビトロ実験に関し、複合体を実験直前に再構成した。
【0214】
抗凝固活性−H. haemachatus毒素及びその画分の抗凝固活性を、BBLファイブロメーターを用いた4つの凝固試験によって測定した。
1.カルシウム再構成時間:Langdell et al. (25)の方法に従ってカルシウム再構成時間を測定した。50mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4)(100μl)、血漿(100μl)及び様々な濃度の毒素又はその画分(50μl)を2分間、37℃で予備保温した。凝固は50μlの50mM CaCl2を添加することにより開始した。
2.プロトロンビン時間: Quick (26)の方法に従ってプロトロンビン時間を計測した。100μlの50mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4)、100μlの血漿及び50μlの毒素又はその画分を2分間37℃で予備保温した。Sigma (St. Louis, MO, USA)から購入し得るカルシウム試薬とともに、150μlのトロンボプラスチンを加えることによって凝固を開始した。
−静電的相互作用の役割を研究するために、特定の濃度のヘメクスチンA(4.4μM)、ヘメクスチンB(4.4μM)及びヘメクスチンAB複合体(0.11μM)の抗凝固活性を、様々な濃度のNaCl(35mM〜150mM)を含む50mM Tris-HCl(pH7.4)中でモニターした。
−疎水性相互作用の役割を研究するために、特定の濃度のヘメクスチンA(4.4μM)、ヘメクスチンB(4.4μM)及びヘメクスチンAB複合体(0.11μM)の抗凝固活性を様々な濃度のグリセリン(125mM〜250mM)を含む50mM Tris-HCl(pH7.4)中でモニターした。
2.スチプベン時間: スチプベン時間の計測は、Hougie (27)の方法に従って測定した。血漿(100μl)、50mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4)(100μl)、及びRVV(100μl中0.01μl)並びに個々のタンパク質又は再構成複合体(50μl)を2分間37℃で予備保温した。50mM CaCl2(50μl)を加えることによって凝固を開始した。
3.トロンビン時間: Jim (28) の方法に従ってトロンビン時間を計測した。個々のタンパク質又は再構成複合体を、100μlの血漿及び100μlの50mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4)と全体積250μl中で2分間37℃で予備保温した。標準的なトロンビン試薬(50μl中0.01NIHユニット)を加えることによって凝固を開始した。
【0215】
ゲル濾過クロマトグラフィー−抗凝固タンパク質間の複合体形成を、AKTA 精製機を用いたSuperdex 30 ゲル濾過カラム(1.6×60cm)を用いたゲル濾過クロマトグラフィーによって試験した。50mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4)により流速1ml/分でカラムを平衡化した。(30分間37℃で保温した)個々のタンパク質及び抗凝固タンパク質の等モル濃度混合液をカラムにロードし、同緩衝液で溶出した。溶出は280nmで追跡した。
【0216】
FVIIaの精製−(29)に記載された方法でFVIIaの大規模調製を実行した。簡単に言うと、4.5gのFVIIを15000lのヒト血清から精製し、及びナノ径のフィルターで濾過した。FVIIを18時間10℃で保温することでFVIIをFVIIaへと完全に活性化した後、FVIIa調製品を240mM NaCl及び13mMグリシンを含む20mMクエン酸塩pH6.9に対して透析した。透析したFVIIaを凍結し、-6O℃で保存した。
【0217】
sTFの調製−組換えヒトsTF(膜貫通及び細胞内ドメインがなく、アミノ酸1〜219を含むTF)を(30)に記載されたように調製した。簡単に言うと、sTFを製造するための発現ベクターを構築し、サッカロミセス・セレビシエ中で発現させた。組換えsTFを培養液中に分泌させ、2段階のカラムクロマトグラフィー手順で単離した。
【0218】
外因性テナーゼ複合体の再構成−10pM FVIIaを70nMの組換えヒトTF(Innovin)と緩衝液A(20mM HEPES、150mM NaCl、10mM CaCl2及び1% BSA、pH7.4)中で10分間37℃で保温することによって、TF-FVIIa複合体を再構成した。次に、混合液にFXを加えて最終濃度30nMを得た。15分保温した後、50μlの終止緩衝液(20mM HEPES、150mM NaCl、50mM EDTA及び1% BSA、pH7.4)を50μlの反応混合液に添加することによって、活性化を止めた。形成したFXaを、緩衝液A中での1mMのS-2222の加水分解によって、マイクロプレートリーダーにて405nmで測定した。FX添加15分前の、個々のタンパク質又は抗凝固複合体の添加によって外因性テナーゼ活性に及ぼす阻害効果を決定した。
【0219】
セリンプロテアーゼ特異性−抗凝固タンパク質及びそれらの複合体の選択性プロファイルを、12のセリンプロテアーゼ−凝固促進セリンプロテアーゼ(FIXa、FXa、FXIa、FXIIa、血漿カリクレイン及びトロンビン)、抗凝固セリンプロテアーゼ(APC)、フィブリン分解型セリンプロテアーゼ(ウロキナーゼ、t-PA及びプラスミン)及び古典的セリンプロテアーゼ(トリプシン及びキモトリプシン)−に対して試験した。様々な濃度の精製ヘメクスチンA/ヘメクスチンB及び再構成ヘメクスチンAB複合体を各酵素(表1)と5分間37℃で予備保温した後、適切な発色基質を加えた。
【0220】
【表1】

【0221】
FXIa、カリクレイン及びウロキナーゼの実験のために、阻害剤に対するそれらのスクリーニングに先立って適切な基質を決定した。FXIaに関しては、発色基質S-2266、S-2302及びS-2366に対応するアミド分解活性のVmaxを決定した。S−2302が最高のVmaxを有する基質だったので、スクリーニング実験に用いた。カリクレイン及びウロキナーゼでの同様の実験を、カリクレインには基質S-2266、S-2302及びS-2288を用い、ウロキナーゼにはS-2444及びS-2484を用いて行った。マイクロタイタープレートの個々のウェル中で全体積200μl中、FVIIa(300nM)/S-2288、FVIIa-sTF(30nM)/S-2288、FXa(0.75nM)/S-2765、 トロンビン(0.66nM)/S-2238、プラスミン(2nM)/S-2366、FIXa(3μM)/spectrozyme(登録商標)fIXa、FXIa(0.34nM)/S-2366、FXIIa(0.4nM)/S-2302、組換え組織プラスミノーゲン活性化因子(80nM)/S-2288、活性化タンパク質C(0.34nM)/S-2366、ウロキナーゼ/S-2444、血漿カリクレイン(0.4nM)/S-2302、トリプシン(2.17nM)/S-2222及びキモトリプシン(0.4nM)/S-2586(最終濃度)を測定した。基質加水分解の動態速度(mOD/分)を5分間にわたって測定した。
【0222】
基質加水分解に関する速度定数の決定−実験は全て150mM NaCl、10mM CaCl2及び1% BSAを含む50mM Tris-HCl pH8.0を含むアッセイ用緩衝液中、37℃で行った。個々のヘメクスチン及びヘメクスチンAB複合体の阻害効果を試験する前に、FVIIa-sTFによる発色基質S-2288の加水分解のカイネティクスを測定した。最終体積180μl中sTF(100nM)とともに、複合体形成したFVIIa(30nM)を含む96-ウェルプレートの個々のウェルにS-2288(0〜5mM)を添加することによって反応を開始した。SPECTRAmax plus(登録商標)温度制御型マイクロプレート分光光度計(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)を用いて、405nmにおける吸光度(A405nm)の線形増加として初反応速度を5分間にわたって測定した。Kmは決定した速度の非線形回帰近似から導き、その値は2.79mMであった。
【0223】
阻害の動態−抗凝固複合体の阻害能力を一定範囲の基質濃度にわたって測定した。マイクロタイタープレートのウェル中で予備的に混合された酵素−補酵素及び阻害剤にS-2288を添加することによって反応を開始した。FVIIa-sTFとの反応は0.0125〜0.05μMの阻害剤複合体及び0〜3mMのS-2288を含んで行った。定常状態条件下で初速度を5分間にわたって測定し、Ki値を導くために古典的な非拮抗型阻害剤を記述する方程式1への反復非線形回帰により近似した。
【0224】
【数1】

【0225】
等温滴定熱量測定(ITC)実験−抗凝固ヘメクスチンAB複合体とFVIIaの相互作用をVP-ITC滴定熱量測定分析システム(Microcal Inc., Northampton, MA)で測定した。内臓式電子校正検査を用いて機器を校正した。熱量測定セル中の50mM Tris-HCl緩衝液中のFVIIa(10μM)及び10mM CaCl2(pH7.4)を250μl注入シリンジ中の同緩衝液に溶解した再構成抗凝固複合体(0.2mM)で300rpm、37℃で断続的に攪拌して滴定した。滴定に先立ってタンパク質溶液を全て濾過及び脱気した。最初の注入では基底線に異常が生じて、近似過程でこれらのデータを含めなかった。熱量測定データを加工し、そして機器についていたMicrocal Origin Version 7.0データ解析ソフトウェアを用いてsingle set of identical sites modelに近似した。活性のあるセル体積、V0が含む水溶液の総熱量Q(リガンドされていない分子種に関してゼロに対して決定した)を、次の方程式2に従って計算した。式中、Kは結合親和性定数、nはサイトの数、ΔHはリガンド結合のエンタルピー、Mt及びXtはそれぞれX+M⇔XMの結合に関する巨大分子及びリガンドのバルク濃度、である。
【0226】
【数2】

【0227】
2つの連続する注入の完了の間に測定された熱量の変化(ΔQ)を標準Marquardt 法に従ってセル内のタンパク質及びリガンドの希釈に関して補正した。相互作用間の自由エネルギー変化(ΔG)はΔG=ΔH-TΔS=-RTInKaの関係を用いて計算した。式中、Tは絶対温度、及びRは普遍気体定数である。
【0228】
CD 分光器実験−遠紫外CDスペクトル(260-190nm)をJasco J-810分光偏光計(Jasco Corporation, Tokyo, Japan)を用いて記録した。測定は全て室温で、0.1cm光路長ストッパー付きキュベットを用いて行った。窒素ガスを30l/分で光学機器にかけた。走査速度50nm/分、分解能0.2nm、及びバンド幅2nmでスペクトルを記録した。各スペクトルに関し、全部で6スキャン記録し、平均し、そして規定線を差し引いた。異なった濃度でのヘメクスチンA及びヘメクスチンBの構造を50mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4)中でモニターした。複合体形成を研究するため、ヘメクスチンAの濃度を0.5mMに一定に保ち、ヘメクスチンBの濃度を変えることによって滴定実験を行った。
【0229】
分子径の決定−ヘメクスチンAB複合体及び個々のヘメクスチンの分子径を気相及び液相の両方で決定した。
【0230】
(A)気相電気泳動度巨大分子分析器(GEMMA)−気相における分子径をnano-differential mobility analyzer, model 3980 (TSI, St Paul, MN, USA)、及びastandard CPC type 3025 (TSI, St Paul, MN, USA)を用いてGEMMA(71,72)で決定した。この機器は'conejet'モードで、作動電圧2.5〜3.0kV、結果として電流200〜300nAで作動させた。コロナ放電に対する電気スプレーを安定化させるために、フィルターにかけた外気を21/分で、及びフィルターにかけたCO2の同心シースガス流を0.11/分で用いた。実験直前にヘメクスチンA(4ng/ml)及びヘメクスチンB(4ng/ml)の試料溶液を20mM酢酸アンモニウム(pH7.4)中で調製した。ヘメクスチンAB複合体(4.5ng/ml)を上記緩衝液中で再構成し、37℃で10分間保温した。もう1つのスリーフィンガータンパク質毒素、同毒素から単離及び精製したトキシンCを、GEMMA実験の対照として用いた。試料を電気スプレー室に注入口流速100nl/分で吹き込んだ。GEMMAスペクトルを得るためにEM直径範囲(0〜25nm)にわたる20回のスキャンを記録し、平均した。データ提示のためには補正アルゴリズムは適用していない。
【0231】
(B)動的光散乱(DLS)−DLSでの複合体形成実験を、BI200SM 機(Brookhaven Instruments Corporation, Holstvile, NY, USA)を用いて25℃で行った。垂直方向に偏向したアルゴンイオンレーザー(514.2nm、75mW;NECmodelGLG-3112)を光源として用いた。実験直前にヘメクスチンA(4mM)、ヘメクスチンB(4.1mM)及びヘメクスチンAB複合体(2.3mM)の試料溶液を調製した。ヘメクスチンAB複合体及び個々のヘメクスチンの水力学的直径を異なったイオン強度及び異なったグリセリン濃度の溶液中で25℃で記録した。NaClの添加によってイオン強度を変えた。測定した並進拡散係数(DT)から、スト−クス−アインシュタインの関係式を用いて流体力学半径(RH)を計算できる。
【0232】
【数3】

【0233】
式中、kBはボルツマン定数、Tはケルビン温度及びηは溶媒の粘度である。強度−強度時間相関関数を機器に備え付けのBI-9000 デジタルコリレーターで取得した。粒径及び径分布を、制限付き正規化CONTIN法(73)を用いて場相関関数|g(1)(τ)j|の解析によって取得した。
【0234】
プロトン化の効果−プロトン化の、複合体形成への効果を研究するために、付随的な熱量測定実験をPBSpH7.4中、又は10mM MOPS pH7.4中で行った。
【0235】
静電的相互作用の役割−様々なイオン強度の50mM Tris-HCl緩衝液中でITC実験を行うことによって複合体形成における静電的相互作用の役割を評価した。緩衝液のイオン強度は塩化ナトリウム(NaCl)(35mM〜15OmM)を添加することによって変えられた。
【0236】
疎水性相互作用の役割−複合体形成における疎水性相互作用の役割を研究するために、様々な濃度(125mM〜250mM)のグリセリンを含む50mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4)中で実験を行った。
【0237】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)実験−SEC実験はすべて AKTA 精製システム(Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)を用いて、予め詰め込まれたSuperdex75ゲル濾過カラム(1.6×60cm)で、室温で行った。カラムでは50mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4)又は特定の溶出緩衝液で流速1ml/分で溶出した。カラムにアプライした試料の体積は4mlであった。オボムコイド(28kD)リボヌクレアーゼ(15.6KD)、チトクロームC(12KD)、アポプロチニン(7KD)及びペロバテリン(4KD)(20)を分子量マーカーとしてカラムを校正した。ブルーデキストランをランしてボイド体積を決定した。各ランに先立ってカラム床の少なくとも2倍の溶出緩衝液で平衡化した。ヘメクスチンAB複合体形成における静電的な寄与を、異なる濃度のNaCl(75mM及び150mM)の50mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4)中でのその溶出をモニターすることによって研究した。複合体形成における疎水性な寄与を、50mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4)中でのその溶出を記録することによって決定した。両実験において、それぞれの緩衝液中の再構成ヘメクスチンAB複合体のカラムへのアプライに先立って、まず望ましい緩衝液でカラムを平衡化した。タンパク質の溶出は280nmの吸収によってモニターした。
【0238】
1D-NMR分光実験−1次元プロトンNMR実験を近代のクリオプローブが備わったBruker 600 MHz、及び電子可変温度ユニットを用いて行った。分光光度計に接続したTopspinソフトウェア(Bruker)を用いてスペクトルを取得した。ヘメクスチンA(0.5mM)及びヘメクスチンB(0.5mM)を50mM Tris-HCl緩衝液(pH7)中で調製し、5mm Willmad NMR チューブに移した。重水素化溶媒は全てAldrich Laboratoriesから99.9%の同位体純度のものを購入した。1H2Oにおける実験のためのスペクトル幅は16p.p.m.に設定し、アーティファクトを最小化するためにトランスミッター/キャリアーを水シグナル上に位置させた。水プロトンの大きな共鳴はWATERGATEパルスシークエンスによって抑止した。典型的には、アポディゼーション前の各FIDに関して128スキャンを平均し、それからフーリエ変換を行った。1Hケミカルシフトは2,2-ジメチル-2シラペンタン-5-スルホン酸(DSS)溶液を参照した。
【0239】
結果
抗凝固タンパク質の精製−H.haemachatusの粗毒素はカルシウム再構成及びプロトロンビン時間試験において強力な抗凝固活性を示した(図1A及びB)。抗凝固タンパク質を精製するために、粗毒素をゲル濾過クロマトグラフィーによってサイズ分画した(図2A)。ピーク2及び3に相当する画分がプロトロンビン時間試験で決定された抗凝固タンパク質を含んでいた。ピーク2は、主に前に特徴付けられたPLA2(31)を含むタンパク質群に相当した。しかしながらこのピークは、ピーク3に比べてより軽度の抗凝固活性を有した(挿入図2A)。従って、ピーク3からの抗凝固タンパク質の単離が焦点になり、Uno S カラム(図2B)での陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて更に分画した。ピークAのみが軽度の抗凝固活性を示した。予備実験中、ピークAの抗凝固活性がピークB(下参照)によって強化されることを見出した。この抗凝固複合体は外因性テナーゼ複合体(下参照)を特異的に阻害するので、ヘメクスチン(Hemachatus extrinsic tenase inhibitor)と、個々のタンパク質はそれぞれヘメクスチンA及びBと命名された。ヘメクスチンA及びBに相当する画分はともに別個に集積され、RP-HPLC(図2C及びD)並びにキャピラリー液体クロマトグラフィー(図2E及びF)を用いて精製された。個々のタンパク質の均質性及び分子量はESI-MSによって決定された。ヘメクスチンA及びBのマススペクトルは3から6までの電荷の範囲にわたる分子量/電荷比率の3つのピークを示し(データ提示なし)、それらの分子量はそれぞれ6835.00±0.52及び6792.56±0.32と計算された(図2G及びH)。
【0240】
N末端配列決定−ヘメクスチンA及びBの最初の37アミノ酸残基の配列はエドマン分解を用いて決定された(図3)。タンパク質のシステイン残基の位置はピリジンエチル化されたタンパク質のシークエンシングによって確認された。両タンパク質はシナプス後神経毒のファシクリン及び他のスリーフィンガートキシンファミリーのメンバーと相同性を示し(図3)、それゆえヘビ毒タンパク質のこのファミリーに属する。
【0241】
ヘメクスチンの抗凝固活性−ヘメクスチンA及びBの抗凝固活性はプロトロンビン時間試験を用いて決定された(図4A)。ヘメクスチンAは凝固時間を長引かせ、軽度の抗凝固活性を示した。一方、ヘメクスチンBはより高濃度であっても凝固時間へは何ら有意な効果を示さなかった。興味深いことに、ヘメクスチンA及びBの等モル濃度混合物はより強力な抗凝固活性を示したが、このことはこれらのタンパク質間の相乗効果を示す(図4A)。そのような抗凝固活性の増加は抗凝固カスケードの2つの別個の段階の阻害に起因し得るか、又はそれらの間の複合体形成に起因し得るかのいずれかと思われた。ヘメクスチンBは独力ではプロトロンビン時間へは何も有意な効果を有しないことから、別個の段階を阻害するのではなく、ヘメクスチンA及びBが複合体を形成するらしいと思われる。
【0242】
ヘメクスチンA及びB間の複合体形成−2つのタンパク質間の複合体形成を調査するために、プロトロンビン時間試験において滴定実験が用いられた。この実験においては、ヘメクスチンAの濃度は4.4μMに一定に保たれ、その抗凝固活性は、増大するヘメクスチンB濃度とともにモニターされた。ヘメクスチンB濃度が増加して比率が1:1に到達するまでは抗凝固活性は増加した。更に加えても抗凝固効果を増大させなかった。本結果はヘメクスチンA及びBが1:1の複合体を形成し、且つその複合体が強力な抗凝固活性に重要であることを示した。
【0243】
ヘメクスチンA及びB間の複合体形成はゲル濾過クロマトグラフィーを用いて更に確認された。図5に示すとおり、個々のヘメクスチンA及びBの滞留時間は〜70分であった。しかしながら、再構成複合体は大きなピークとして〜40分の滞留時間で溶出し、且つ小さなピークとして〜70分の滞留時間で溶出した。滞留時間が低下した大きなピークの出現は2つのヘメクスチン間の複合体形成と整合性がある。
【0244】
抗凝固活性の部位−前に示したように、ヘメクスチンA及びそのヘメクスチンBとの複合体はプロトロンビン時間を長引かせる(図4A)。外因性凝固経路の特定の段階を同定するために、我々は単純な「解剖的アプローチ」を用いた(32,33)。一般的に用いられる凝固時間試験、即ちプロトロンビン時間、スチプベン時間、及びトロンビン時間が用いられた(図6A)。このアプローチは阻害された段階の「上流」からカスケードを開始すると凝固時間が上昇するが、阻害された段階の「下流」からカスケードを開始すると凝固時間に影響しないという原理に基づく。従って、個々のタンパク質及び複合体の抗凝固作用はカスケード内のある活性化段階に局在し得る(図6B〜D)(詳しくは、32, 33参照)。ヘメクスチンAはプロトロンビン時間試験において凝固時間を長引かせることによって、軽度の抗凝固活性を示したが、スチプベン時間及びトロンビン時間を長引かせなかった(図6B)。予想どおり、ヘメクスチンBはプロトロンビン時間、スチプベン時間、及びトロンビン時間試験において凝固時間を長引かせなかった(図6C)。ヘメクスチンAB複合体はプロトロンビン時間試験において凝固時間を長引かせることによって、強力な抗凝固活性を示した。しかしながら、他の2つの試験における凝固時間には影響しなかった(図6D)。これらの結果はヘメクスチンA及びヘメクスチンAB複合体は外因性テナーゼ複合体のみに影響するが、プロトロンビナーゼ複合体又はフィブリノゲンのフィブリン血餅への転換には影響しないことを示す。
【0245】
阻害部位を確認するために、ヘメクスチンA及びB並びにヘメクスチンAB複合体の、再構成TF-FVIIa複合体への効果を試験した(図7A)。ヘメクスチンAは高濃度で軽度の抗凝固活性を示した。他方ヘメクスチンBは外因性テナーゼ複合体の酵素作用に何ら阻害活性を伝達しなかった。しかしながら、ヘメクスチンAB複合体は外因性テナーゼ活性をのIC50値(活性の50%を阻害する阻害剤の濃度)100nMで阻害した(図7A)。後のスクリーニング実験(下参照)で観察されたように、個々のタンパク質も複合体もFXaのアミド分解活性には何ら阻害効果を伝達しなかった。ヘメクスチンAB複合体形成の、TF-FVIIa複合体の阻害に関しての重要性を決定するために、同様の滴定実験が行われた。ヘメクスチンAの濃度は50μMに一定に保たれ、その外因性テナーゼ活性への阻害活性は、増大する濃度のヘメクスチンB存在下で評価された。図7Bに示したように、ヘメクスチンAの阻害活性はヘメクスチンB濃度が増加して比率が1:1に到達するまでは増加した。更に加えても抗凝固効果を増大させなかった。本結果はヘメクスチンA及びBが1:1の複合体を形成し、且つその複合体形成が強力な抗凝固活性に重要であることを示した。ヘメクスチンA及びBの比率が等モル濃度になった後は、阻害活性の増加はさらに増加しないことが観察された。これらの観察でヘメクスチンA及びB間の複合体形成の重要性を確認した。
【0246】
リン脂質の効果を理解するために、ヘメクスチンA及びヘメクスチンAB複合体の阻害活性をsTFの存在下又は非存在下のいずれかでFVIIaアミド分解活性に関してモニターした。両方の場合で、濃度依存的な、強力な阻害活性(図8A及びB)が観察された。
【0247】
阻害の特異性−阻害の特異性を決定するために、ヘメクスチンA及びB並びにそれらの複合体が12のセリンプロテアーゼに対してスクリーニングされた。図9に記載されたように、FVIIa及び血漿カリクレインを除けばいずれのセリンプロテアーゼに対しても阻害活性が観察されなかった。FVIIaでそうであったように、ヘメクスチンA及びヘメクスチンAB複合体は濃度依存的に血漿カリクレインを阻害した(図10)。ヘメクスチンBはカリクレインのプロテアーゼ活性を阻害しなかった。しかしながら、FVIIaへの阻害能は(sTFの存在下又は非存在下のいずれかで)血漿カリクレインへのそれよりも少なくとも50倍高かった。
【0248】
阻害の動態−阻害機構を決定するために、sTF-FVIIa複合体のS-2288に関するアミド分解活性への、ヘメクスチンAB複合体の阻害動態を試験した。速度実験はヘメクスチンAB複合体はFVIIa-sTF活性を非拮抗的に阻害することを明らかにした。ラインウィーバー・バークプロットは、阻害剤濃度の上昇とともにVmaxは減少するがKmは不変のままであることを示した(図11A及び表2)が、これは非拮抗的な阻害剤の特徴である。阻害に関するKi値は25nMと決定された(図11B)。異なる阻害剤濃度でのターンオーバー数(Kcat)(単位酵素モル数単位分あたりの、産物に転換した基質のモル数)も計算された。古典的な非拮抗的阻害剤の場合に観察されるように、ヘメクスチンAB複合体濃度の上昇とともにKcatは減少した(表2)。
FVIIa単独のアミド分解活性は非常に弱いことから(34)、ヘメクスチンAB複合体単独のFVIIaアミド分解活性阻害に関する動態は研究しない。
【0249】
【表2】

【0250】
ITC実験−ヘメクスチンAB複合体のFVIIaへの結合に関連した熱力学的変化もモニターされた(図12)。結合は発熱性で、ΔH=-7.931kcal.M-1、ΔG=-7.543kcal.M-1、及びΔS=-1.25cal.M-1だった。結合に関するKの計算値は4.11×105M-1だった。
【0251】
複合体形成の間の構造変化−以前に、ヘメクスチンA及びヘメクスチンBが互いに相互作用して1:1の4量体の複合体を形成し、そしてこの複合体形成がそのFVIIa阻害及び凝固開始能力のために重要なことが示された(74)。ヘメクスチンAB複合体形成に関連した構造変化を研究するために、遠紫外CDを用いた。初めに、様々な濃度の個々のヘメクスチンA及びBの個々のCDスペクトルを記録した(図14, A及びB)。ヘメクスチンA及びヘメクスチンBのCDスペクトルは217nmで負の最小値、且つ196nmで正の最大値を表示したが、これはβ−シート構造に典型的な、それぞれアミド色素のπ→π*遷移及びn→π*遷移に起因する(図14A及びB)。しかしながら、高濃度では、両タンパク質で凝集が観察された(図14A及びB)。次に、2タンパク質間の複合体形成を研究するために滴定CD実験が行われた。この実験においては、ヘメクスチンAの濃度は0.5mMに一定に保たれ、様々な濃度のヘメクスチンBの存在下で、ヘメクスチンAの構造変化が記録された(図14C及びD)。βシート含量は添加したヘメクスチンB量の増大にともなって増大した。従って、ヘメクスチンAB複合体はより安定的なβシートを示した。ヘメクスチンAの、ヘメクスチンBに対する濃度が1:1に達した後は、ヘメクスチンBの更なる添加に際して、スペクトルに何ら有意な変化は観察されなかった(図14C)。ゆえに、CD実験は、ヘメクスチンAB複合体形成はβシート構造の安定化に関連していることを示すとともに、且つ1:1の化学量論を確認した。
【0252】
複合体形成の間の分子径の変化−気相及び液層の両方で個々のヘメクスチン及びヘメクスチンAB複合体の直径を決定した。GEMMAを用いた気相におけるそれらの電気泳動度によって決定されたように、ヘメクスチンA及びヘメクスチンBはそれぞれ見かけ上の分子径10.2±0.38nm及び8.82±0.42nmを示した(図15)。ヘメクスチンAB複合体より大きな16.3±0.43nmの直径を示した。GEMMAはタンパク質−タンパク質相互作用の研究において用いられた相当新しい技法であるから(75)、本結果は更にもう1つのタンパク質(H.haemachatusの毒から単離されたトキシンC)の、ヘメクスチンA及びヘメクスチンBの分子径への効果を試験することによって確認された。トキシンCはプロトロンビン時間試験(データ提示なし)によって決定されたようにヘメクスチンAの抗凝固活性に影響しなかったし、ヘメクスチンAと複合体を形成しなかった。GEMMAでは、トキシンCは等モル濃度でヘメクスチンA又はヘメクスチンBの分子径に影響しなかった(図14)。個々のヘメクスチン及びヘメクスチンAB複合体の50mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4)中での流体力学直径もDLSを用いて決定された。ヘメクスチンA、ヘメクスチンB及びヘメクスチンAB複合体に関する単一分散集合体(単峰型分布)が観察され、それぞれ10.3nm、9.9nm及び16.8nmの流体力学直径の試料標品の均質性を示唆している(図16A)。(狭いサイズの分布で示された)ヘメクスチンA及びヘメクスチンBの混合に際しての単分散の複合体の存在は十分に明確な複合体の形成を示唆している。しかしながらヘメクスチンAB複合体の大きさは、4量体の見積もりの大きさに比してずっと小さく、この複合体が詰まった構造であることを示している。
【0253】
ヘメクスチンAB複合体形成の熱力学−複合体形成の熱力学を研究するためにITCが用いられた。各注入は、負の(発熱の)反応熱を生じた(図17)。単一セットの結合部位モデルへの結合等温線近似は、ヘメクスチンA及びヘメクスチンB間の等モル濃度の結合を示唆している。ヘメクスチンA及びヘメクスチンB間の相互作用は、(負の自由エネルギー変化によって示されたように)熱力学的に許される(表 3)。好都合な負のエンタルピー、しかし不都合な負のエントロピー変化は複合体形成がエンタルピー的に駆動されることを示す。更に、負のエントロピー変化は、GEMMA 及びDLS実験で得られたデータによって示されたように、詰まった複合体の形成を確認する。ヘメクスチンAB複合体の形成に関して結合定数(Ka)2.23ラ106M-1が観察され、それは104〜1016M-1の範囲の、生物学的に関連性のある過程におけるタンパク質−タンパク質相互作用に関するKa値内で低下する。
【0254】
【表3】

【0255】
温度の、複合体形成への影響−いくつかのタンパク質−タンパク質及びタンパク質−ペプチド相互作用において、熱量測定のエンタルピーが実験温度における変化によって影響され得た。ヘメクスチンAのヘメクスチンBへの結合の温度依存性が10〜45℃の範囲で、図18及び表3中に示されている温度の関数としての熱力学的パラメーター、エンタルピー(ΔH)、エントロピー(ΔS)、および自由エネルギー(ΔG)で研究された。複合体形成は全ての温度でエンタルピー的に駆動されているのが明らかである。温度依存性データは複合体形成に関する熱容量変化(ΔCp=δΔH/δT)を決定するために用いられ得る。ΔH対温度のプロットはこの温度範囲においては線形だった(図18A)。直線の傾きは結合するヘメクスチンA及びヘメクスチンBに関して-177calmol-1deg-1というΔCpを与える。結合反応に関するACPは控えめであり、詰まった複合体形成を示しており(77,78)、上に記載の他の実験観察を支持している。また、負の熱容量変化はタンパク質−タンパク質相互作用で典型的であり、溶媒に接近できる疎水性表面領域の埋没のせいである(70)。異なる温度でのヘメクスチンAのBへの結合に関するΔH対ΔS値のプロットは〜1.1の傾きを示すが(挿入図、図18B)、それはタンパク質−タンパク質結合過程では一般的であり(79〜83)、エンタルピー/エントロピー補償に起因する。これは相当に高いΔCp値の直接的な結果であり、なぜなら(δΔH/δT)p=ΔCp及び(δ(TΔS)/δT)p=ΔCp+ΔSで、もしΔCp>>ΔSなら、温度をともなうΔH及びTΔSにおける変化は大まかにいって同じ(=ΔCp)で、互いを補償すると見られるからである。ΔG変化は調査した温度範囲にわたって最小だった(図18A)。ΔH及びΔSの値は常に負であり、ヘメクスチンAのヘメクスチンBへの結合過程はエンタルピー的に好都合であるが、エントロピー的に不都合なことをいま一度示している。ΔHの、温度への線形の依存性は、解離及び結合の形態の間で、平衡をともなう2状態の結合過程を示している。
【0256】
緩衝液イオン化の、複合体形成への効果−観察された熱量測定のエンタルピーは関連する全ての事象(水結合(解離)、成分のイオン化、希釈の熱、混合の熱、等)を加えた結合事象の結果である。結合を促進するために、界面の残基はプロトン化又は脱プロトン化されてもよく、結果、緩衝液とのプロトンのやりとりとなる。そのような状況下では、熱量測定のエンタルピーは緩衝液イオン化エンタルピーに依存するので、熱量測定の滴定はpH7.4でリン酸及びMOPS緩衝液でも行われた。複合体形成に際して、緩衝液イオン化エンタルピー変化(ΔHion)の増大にともなってエンタルピー変化(ΔHobs)における増大が観察された(表3)。熱量測定のエンタルピーに対するイオン化エンタルピーのプロットで相互作用に関与するプロトンの数(nH+)が出、そして結合エンタルピーは、次の関係式に従ってプロトン化効果(ΔHbin)に関して補正された。
【0257】
【数4】

【0258】
正の傾きは緩衝液からのプロトンの取り込みの傾向を示し、負の値は緩衝液へのプロトンの放出の傾向を示す。プロット(図19A)で、複合体形成に関して-0.57というnH+値及び-3.638という結合エンタルピー(ΔHbin)が出た。従って、ヘメクスチンAB複合体形成は緩衝液中へのプロトンの正味の放出に関係している。
【0259】
ヘメクスチンAB複合体形成における静電的相互作用静電的相互作用はタンパク質タンパク質相互作用において重要な役割を果たし、結合の境界に特異性を提供する。複合体形成における静電的相互作用の役割をITC、SEC及びDLSを用いて評価した。初めにITCによって、ヘメクスチンAB複合体形成に関する結合定数を、イオン強度を増大させる緩衝液中で決定した。緩衝液のイオン強度は異なる濃度のNaClを用いることによって変えられた。複合体形成に関するlogKa値はNaCl濃度の増大に伴って線形的に減少した(図19B、表3)が、これは複合体形成において静電的相互作用が関与しそうなことを示している。次に、緩衝液イオン強度の、ヘメクスチンAB複合体の会合への効果をSECの手助けで評価した。前に示されたように(74)、個々のヘメクスチンは単量体として溶出したが、ヘメクスチンA及びBは4量体として溶出した(図20A)。複合体形成における静電的相互作用の役割を研究するために、複合体を異なる濃度のNaClを含む緩衝液中で溶出させた。図2OBで示されたように、75mM NaCl存在下では4量体は、2量体への分解を開始した。より高イオン強度(NaCl 150mM)の緩衝液中では複合体は大半が2量体又は単量体として溶出した。2量体ピークのESI-MS及びHPLC解析は、それがヘメクスチンA及びBを両方含むことを示した(データ提示なし)。この観察はヘメクスチンAB複合体形成において静電的相互作用が関与しそうなことを強調する。興味深いことに、付随的なタンパク質ピークは単量体よりもゆっくりと溶出したが、このことは高イオン強度の緩衝液中では、ヘメクスチンA及び/又はヘメクスチンBは構造変化していたことを示している。ゆえに、高イオン強度の緩衝液存在下での個々のヘメクスチンの溶出プロファイルが研究された。NaCl濃度75mMではヘメクスチンAは2つのピークを示した;第2のタンパク質ピークは単量体よりもゆっくりと溶出した。NaCl濃度150mMではヘメクスチンAは大半が第2ピーク中に溶出した。この第2ピークのESI-MS及びHPLC解析は、それがヘメクスチンAと、構造的に相互作用することを示す(データ提示なし)。従って、高イオン強度側におけるヘメクスチンAの溶出プロファイル中の変化はこのタンパク質の構造変化を暗示し、それは1DNMR実験によって確認された(下参照)。しかしながら、緩衝液のイオン強度増大はヘメクスチンBの溶出には何ら効果がなかった(図20A及びB)。
【0260】
高イオン強度緩衝溶液中のヘメクスチンAB複合体及び個々のヘメクスチンの流体力学直径もDLSを用いて決定された(図16B)。高塩濃度では、ヘメクスチンAB複合体は高い多分散性を示すが、このことはいくつかの異なった種類の存在を示している。NaCl濃度75mMでは少なくとも3つの異なる集団がある;単量体及び4量体に加えて、見かけ上の分子径12.4nmの付随的な集団がある。SECの結果に基づくと(図20B)、12.4nmの分子種は、NaClが150mMに増大したときに増大した(図16B)。従って、DLSのデータも4量体の複合体の2量体への解離を示唆する。興味深いことに、高イオン強度の緩衝液中では、ヘメクスチンAの場合も、多分散性が観察された(図16B)。本来の10.4nmの大きさの粒子に加えて、11.57nmの大きさの粒子の付随的な集団がある。SEC及び1D-NMR(下参照)に基づくと(図20B)、11.57nm分子種はヘメクスチンAの構造的に改変した形態を表し得る。ヘメクスチンBの流体力学直径は、緩衝液イオン強度の変化に伴い、何ら変化が観察されなかった(図16B)。これらの実験は4量体の複合体が、濃度増大にともなって2量体及び単量体へと分解することを示す。この分解はサブユニット間の静電的相互作用における干渉及び/又はヘメクスチンAの構造における変化に起因するであろう。
【0261】
ヘメクスチンAの構造における変化と4量体の複合体分解との密接な関係を理解するために、高イオン強度の緩衝液中での複合体及び個々のヘメクスチンの抗凝固活性がモニターされた。ヘメクスチンAB複合体の抗凝固活性は、NaCl 100mMまでのイオン強度増大にともなって減少した(図21A)。しかしながら、塩濃度の更なる増大は抗凝固活性に有為に影響しなかった。NaCl濃度150mMでは、複合体は2量体、単量体及び構造的に改変されたヘメクスチンAの混合液として存在する(図20B)。しかしながら、より高濃度のNaClはヘメクスチンAの抗凝固活性に影響しなかった(図21A)。従って、構造の変化にも関わらず(下参照)、ヘメクスチンAはその抗凝固活性を保持する。ゆえに、NaCl濃度150mMで観察された残存の抗凝固活性はヘメクスチンAの存在に起因する。これらの結果から、高塩濃度で形成された2量体は何ら有為な抗凝固活性を有しないと結論できるかもしれない。
【0262】
ヘメクスチンAB複合体形成における疎水性相互作用疎水性相互作用は複合体形成において駆動力として作用する。複合体形成における疎水性相互作用の重要性も、ITC、SEC及びDLSを用いて評価された。緩衝液中に含ませたグリセリン濃度を増大させつつITC実験を行った。グリセリンは「水和」層を形成し、それによって疎水性相互作用を阻害する。グリセリン濃度の増大に伴って結合定数の減少が観察された(図19C及び表3)が、このことが複合体形成における疎水性相互作用の重要性を示す。Superdex75での、グリセリンを含む緩衝液中のヘメクスチンAB複合体の溶出がモニターされた(図20C)。高濃度グリセリンを含む緩衝液中では、4量体が2量体や単量体に分解する。2量体ピークのESI-MS及びHPLC解析は、それがヘメクスチンA及びヘメクスチンBの両方を含むことを示す(データ提示なし)。しかしながら、改変された構造のヘメクスチンAに相当する付随的なピークは観察されなかった。グリセリン存在下では個々のヘメクスチンの溶出は不変のままであった(図20C)。グリセリン存在下でのヘメクスチンAB複合体の分解はDLS実験でも観察された(図16C)。グリセリン濃度125mMでは、12.8nmの大きさの付随的な分子種の集団が、単量体及び4量体の複合体に加えて観察された。SEC実験に基づいて、12.8nmの分子種が2量体と提案された。12.8nmの分子種はグリセリン濃度の増大に伴って増大する(図16C)。この2量体の見かけ上の分子径は高イオン強度の緩衝液存在下で形成された2量体のそれとは異なることに注意することが重要だ(12.8nm対1212.4nm;図16B及び16C)。(GEMMAはナノの原理に基づいて稼働するので、多くの塩及びグリセリンを含む緩衝液中の分子径は、この技法を用いて決定されなかった。)グリセリン存在下での個々のヘメクスチンの場合においては、何ら多分散性は観察されなかった(図16C)。これらの実験は、疎水性相互作用が、ヘメクスチンAB複合体の形成において重要な役割を果たすことを示す。
【0263】
ヘメクスチンAB複合体の分解の密接な関連を理解するために、その抗凝固活性、及び異なる濃度のグリセリンを含む緩衝液中の個々のヘメクスチンのそれがモニターされた。ヘメクスチンAB複合体の抗凝固活性は、グリセリン濃度の増大に伴って増大する(図21B)。グリセリン濃度125mMでは、複合体の抗凝固活性は減少しない。グリセリン濃度250mMでは、抗凝固活性は減少するが、しかしヘメクスチンA単独の抗凝固効果のそれよりも高い。更に、グリセリンは個々のヘメクスチンの抗凝固活性に影響しなかった(図21B)。SEC実験はグリセリン濃度250mMでは複合体の大半は2量体及び単量体の混合物として存在することを示す(図20C)。抗凝固活性は、ヘメクスチンA単独のそれよりも高いので、グリセリン濃度250mMで観察される2量体は、ヘメクスチンA単独よりも高いが、4量体よりも低い抗凝固活性を示す。従って、グリセリン存在下で形成された2量体は塩存在下で形成された2量体とは異なる;前者の2量体はヘメクスチンA単独に比して増大した抗凝固活性を示すが、一方、後者の2量体はそうでない。
【0264】
緩衝液条件の、ヘメクスチンの構造への効果前のSEC(図20B)及びDLS(図16B)を用いた実験はヘメクスチンAが塩存在下で構造変化することを示した。ゆえに、異なる緩衝液条件下でヘメクスチンA及びBの構造を研究するために、1D-NMR実験を行った(図22)。NaCl存在下では、4.8ppm及び6ppmの間のHα共鳴数が減少する(図22A)。これらの化学シフトは、スリーフィンガー型トキシンすべてで典型的に観察される、反平行βシート構造を形成する異なるアミノ酸残基のHα間の残基間NOE交差ピークに寄与する(84)。従って、NaCl存在下でヘメクスチンAのβシート含量の減少が観察される。加えて、側鎖の化学シフトにおいていくつかの変化がある。顕著な変化は塩存在下で負の化学シフト値(-0.38ppm)に現れる高度に遮蔽されたメチルのピークである。これらの観察はNaCl存在下でのヘメクスチンAの構造変化を強く支持する。重水素化グリセリン存在下でのヘメクスチンAの1DプロトンNMRスペクトルの総体的な分散はアミド領域の微妙な変化だけで、ほとんど同じままだった(図22A)。従って、ヘメクスチンAはグリセリン添加に際して何ら有為に構造変化しなかった。ヘメクスチンBでの同様な実験は、スペクトル周波数に関してほぼ1対1の一致があることから、それがNaCl又はグリセリン存在下で何ら有為に構造変化しないことを示す(図22B)。
【0265】
考察
傷害又は外傷時の血液凝固開始は、生物の生存に不可欠である。しかしながら、望まない血餅の形成は有害な、又は衰弱させる効果を有し、ゆえに抗凝固療法が必要となる。これらの疾患を治療するために用いられた現行の抗凝固剤は非特異的で、且つ治療域が狭く、最大効果を達成し、且つ出血を最少にするために診察室での注意深いモニターを要する。これは食事摂取量等の他の要因によって更に複雑化する(35)。ゆえに、新規の抗凝固剤及び抗血小板剤が探されている。FVIIaは血液凝固の鍵となる開始因子であり、且つ血漿微環境中に非常に低濃度で存在するので、それは抗凝固剤の設計及び開発のための魅力的な薬剤標的となることを招く。
【0266】
これまで、TF-FVIIa複合体を特異的に阻害することが知られたタンパク質が2つだけ、十分に特徴付けられてきた。それは即ち、組織因子経路阻害剤(TFPI)及び線虫抗凝固ペプチドc2(NAPc2)である。TFPIはこの複合体の内生阻害剤であるが(36)、NAPc2はイヌの鉤虫Ancylostoma caninumから単離された外生阻害剤である(37)。TFPIは42kDaの、3つの縦列したRunitz型ドメインからなる血漿糖タンパク質である。第1及び第2の単位はそれぞれTF-FVIIa及びFXaを阻害する。第3のRunitzドメイン及び分子のC末端の塩基性領域はヘパリン結合部位を有する(38)。TFPIの抗凝固作用は2段階の過程である。第2のRunitzドメインが初めにFXa分子に結合してそれを不活化する。それから、第1のドメインが迅速に隣接するTF-FVIIa複合体に結合し、FXの更なる活性化を妨害する(39〜41)。他方、NAPc2は8kDaの小さなポリペプチドである。その作用機構は、その相互作用及び膜結合型TF-FVIIaの阻害に先立って2元複合体を形成するための、前提条件のFXa又は酵素原のFXへの結合を必要とする(42)。ゆえに、構造上の違いにもかかわらず、両方の阻害剤はTF-FVIIa-FXaと4次複合体を形成する。しかしながら、両複合体において、FVIIaの活性部位はそれぞれの阻害剤によって占領されており、接近できない。
【0267】
FVIIa活性に特異的に干渉する天然の阻害剤の欠如のため、いくつかの人工の阻害剤が設計及び開発されてきた。それらはTF又はFVIIaに対する抗体、TFAA(FXのための補酵素機能が低下した突然変異体TF)、FFR-VIIa(TFとの親和性が本来のFVIIaのそれよりも5倍高いFVIIaの不活性化型)及びTF又はFVIIa由来のペプチド等の、TF及びFVIIaの結合を阻止するタンパク質を含む(43〜50)。加えて、2つの一連のペプチド外部位阻害剤が、ファージディスプレイライブラリーから、そのTF-FVIIa複合体への結合能を目当てにして選択された(43,44)。それらは、FVIIaセリンプロテアーゼ上の2つの明瞭な外部位に結合し、且つ立体阻害及びアロステリックな阻害を示した(46)。両ペプチドクラスはTF-FVIIa複合体の協力且つ選択的な阻害剤であるが、それらは飽和濃度でさえ活性を100%阻害できなかった。これは2つのペプチドの融合(47)又は基質ファージのプロテアーゼスイッチ(45)の使用のいずれかによって克服された。いくつかの合成化合物がTF-FVIIa複合体と同様にFVIIaの活性部位阻害剤とされてもきた(48,51〜54)。最近、いくつかのナフチルアミジンがFVIIa阻害活性を有すると報告されてきている。それらはアミノベンズアルデヒド類似体のポリスチレン樹脂へのカップリングによって合成された。しかしながら、FVIIaの阻害活性は別として、これらの合成化合物は他の血液凝固セリンプロテアーゼの活性を非特異的に阻害した(55)。
【0268】
2つのタンパク質の単離と特徴づけ相乗的に強力な抗凝固活性を誘導するH. haemachatusの毒由来のヘメクスチンA及びヘメクスチンBの単離及び特徴付けが本明細書中で報告された。ヘメクスチンA及びヘメクスチンBはともにヘビ毒タンパク質スリーフィンガーファミリーに属する(図3)。個別には、ヘメクスチンAのみが軽度の抗凝固活性を示したが、ヘメクスチンBは抗凝固活性を有しなかった(図4A)。しかしながら、ヘメクスチンBは相乗的にヘメクスチンAの抗凝固活性を亢進させ、且つそれらの複合体は強力な抗凝固活性を示す。ヘメクスチンB存在下でのヘメクスチンAの抗凝固力の増大は2つのタンパク質間で複合体が形成されそうなことを示した(図4A)。プロトロンビン時間試験を用いて1:1の複合体形成が強力な抗凝固活性に重要であることが示された(図4B)。複合体形成は、ゲル濾過クロマトグラフィーによって更に確認された(図5)。
【0269】
「解剖的アプローチ」(32, 33)を用いて、ヘメクスチンA及びその相乗的複合体の抗凝固作用部位が同定された(図6A)。3つの一般的な凝固時間試験を用いて、ヘメクスチンA及びヘメクスチンAB複合体は外因性テナーゼ複合体を阻害するが、外因性経路の他の段階は阻害しないことが示された(図6B〜D)。これらの結果は、ヘメクスチンA及びその複合体の、再構成TF-FVIIa複合体への効果を研究することによって更に確認された。ヘメクスチンAB複合体及びヘメクスチンAはともに、再構成外因性テナーゼ複合体によるFXa形成を阻害した(図7A)。興味深いことに、ヘメクスチンA及びヘメクスチンAB複合体は、sTF存在下、非存在下でともに、それぞれIC5O〜100nM及び〜105nMでFVIIaのアミド分解活性をを阻害する(図8A及びB)。似かよったIC50値が、ヘメクスチンA及びヘメクスチンAB複合体はFVIIaの補酵素結合部位に結合しないという事実を示すかもしれない。ヘメクスチンA及びヘメクスチンAB複合体の阻害活性は、それらがスチプベン時間を長引かせられないことが示すように、ヘメクスチンA及びその複合体と外因性テナーゼ複合体中のリン脂質との非特異的相互作用に起因しないかもしれない。なぜならそれらが、やはりリン脂質表面上に形成されるプロトロンビナーゼ複合体を阻害できないからである。これは、sTF及びFVIIaを用いて、ヘメクスチンA及びヘメクスチンAB複合体の、再構成外因性テナーゼ複合体のアミド分解への阻害活性を決定することによって確認された(図8A)。更に、ヘメクスチンA及びヘメクスチンAB複合体はFVIIaのアミド分解活性を阻害した。しかしながらヘメクスチンBは、ヘメクスチンA非存在下では何らの阻害活性も示さなかった。更に阻害特性を特徴付け、そして阻害の特異性を決定するために、ヘメクスチンA及びB並びにヘメクスチンAB複合体は12のセリンプロテアーゼに対してスクリーニングされた。FVIIa及びその複合体に加えて、ヘメクスチンA及びヘメクスチンAB複合体はカリクレインのアミド分解活性のみを濃度依存的に阻害した。しかしながら、カリクレインの阻害に関するIC50は、FVIIa/FVIIa-TF/FVIIa-sTFのそれの〜100nMと対照的に、〜5μMだった。速度実験は、25nMというKiで、ヘメクスチンAB複合体がFVIIa-sTFの非拮抗的阻害剤であることを明らかにした。ITC実験を用いて、ヘメクスチンAB複合体がFVIIaと直接相互作用することを示した。FVIIa及びヘメクスチンAB複合体間の結合相互作用は、自由エネルギーにおける負の変化に関連していて、そのことはこの複合体形成が好都合であることを示す。結合に伴って観察されたエントロピーの負の変化は、2分子間が詰まって折りたたまれた複合体の形成を示す(56)。従って、これらのデータは、ヘメクスチンAB複合体が、高度に特異的な、天然のFVIIaの阻害剤であることを強く示す。
【0270】
ヘビ毒に由来する他のいくつかの抗凝固剤も外因性テナーゼ複合体を阻害する。しかしながら、それらはそれほど特異的ではない。例えば、Naja nigricollis毒由来の強力な抗凝固ホスホリパーゼA2(PLA2)、CMIVは凝固カスケードにおける2つの連続する段階を阻害することによって凝固を長引かせる。それは酵素的及び非酵素的機構の両方によってTF-FVIIa複合体を阻害するが(57)、それは非酵素的機構のみによってプロトロンビナーゼ複合体を阻害する(58,59)。ヘメクスチンA及びその相乗的複合体は最初に報告された、ヘビ毒から単離されたFVIIaの阻害剤である。
【0271】
TF-FVIIa複合体及びFVIIaの似かよった濃度依存的阻害はヘメクスチンAB複合体がその阻害活性のためにTFを要求しもしないし、TFのFVIIaへの結合において干渉しもしないことを示す。TFPI及びNAPC2とは異なり、それはFVIIaと結合するのにFXaを足場として用いず、従ってFVIIaを阻害するのにFX又はFXaを要求しない。更に、TFPI及びNAPC2はFVIIaの活性部位に結合する。対照的に、ヘメクスチンAB複合体は非拮抗的阻害剤で、ゆえに活性部位を通してFVIIaと相互作用しない。従って、ヘメクスチンA及びヘメクスチンAB複合体はFVIIa及びTF-FVII複合体の新規な阻害剤である。
【0272】
CD実験は、複合体形成がβ-シート化された構造の安定化につながることを示した(図14)。相互作用はまた、結果的に、詰まった構造の形成となる。これはヘメクスチンAB複合体の形成に関連した構造的エントロピーペナルティに反映される(表 3)。GEMMA及びDLS実験は気相及び液相の両方において、複合体形成の間に見かけ上の分子径の増大があることを示す(図15及び16)。これらの技法からは分子径はほぼ同一である。しかしながら、見かけ上の分子の寸法は本来のタンパク質に関して見積もられた理論上の直径よりもかなり大きく、完全な「伸長構造」において見積もられたタンパク質の長さよりもずっと小さい(85, 86)。そのような変則はタンパク質の非球状構造に起因するであろう(87)。
【0273】
ITCで水溶液中での巨大分子相互作用の研究の余地が生じ、そしてそれは結合親和性のエンタルピー及びエントロピー成分、ゆえに初期及び最終状態の間のギブス自由エネルギーにおける差異を分析できる唯一の技法である(88〜90)。ヘメクスチンA及びヘメクスチンB間の相互作用は好都合なΔHにおける負の変化によって特徴づけられる。従って、ファン・デル・ワールス相互作用及び水素結合が、複合体形成に重要な役割を果たすかもしれない。
【0274】
ヘメクスチンA及びヘメクスチンB間の相互作用に関して得られたエネルギー的パラメータは実験温度への強い依存性を示した。エンタルピー及びエントロピー変化における差異にもかかわらず、自由エネルギー変化は最小(図18A)のままで、このことはエンタルピーエントロピー補償を示唆した。この現象はタンパク質ペプチド相互作用に関して普遍的な特徴であり、弱い分子相互作用は、結合のより小さい自由エネルギーを実現するために絶えず再配置を続ける(91〜93)。図18Bは相互作用しているタンパク質-タンパク質系の範囲に関するエンタルピー及びエントロピー間の相関(r2=0.956)を示す。ヘメクスチンAB複合体形成に関するデータはこの相関線によく沿って下降する。
【0275】
熱力学の法則に従って、ΔH及びΔSの温度依存性はΔCpにおける変化に起因する。タンパク質に関連する過程のほぼすべてにおいて、ΔCpは遊離成分が参照(94)の状態なら負の兆候を有する。ヘメクスチンAB複合体形成においては、-177calmoldegという結合のΔCpが観察された。負のΔCpにおける変化は、続く方程式によって説明されるように、無極性溶媒に接近可能な表面領域の減少を示す(95)。
【0276】
【数5】

【0277】
式中、ΔASApol及びΔASAnonpolはそれぞれ、極性及び無極性に接近可能な表面領域における変化である。大きな負のΔCp変化がタンパク質ペプチド相互作用、疎水性効果によって支配されたタンパク質折りたたみ(96, 97)、及び溶媒に露出した疎水性残基の埋没に関連した複合体形成(80, 81, 98, 99)において観察されてきた。対照的に、極性表面領域の埋没は、弱いながら正のΔCpに寄与する。ヘメクスチンAB複合体形成に関するΔCp変化はタンパク質タンパク質相互作用において典型的に観察されたそれよりも弱いにもかかわらず、負である(70)。負のΔCpはTanfordによって提案された疎水性効果の古典的モデル(100)を支持し、且つ溶媒分子の再編成を伴い、従って溶媒和エントロピーを増大させる。この過程はヘメクスチンAヘメクスチンB相互作用の間に観察される不都合なΔSと矛盾する。しかしながら、この現象はタンパク質タンパク質相互作用においては珍しくはない(101〜110)。観察された不都合なΔSはヘメクスチンA及び/又はヘメクスチンBにおいて結合に際して生じ得る構造変化に帰着し得る(図14)か、及び/又は相互作用しているタンパク質の界面での水分子の結合に帰着し得るであろう。Ladburyらは、高度に水和された特定の界面内での水分子の自由度の制限も、いくつかのタンパク質タンパク質相互作用において観察されたように(80, 112〜114)、ΔCPへの相当な負の寄与をし得ることを示唆してきた(111)。水分子は界面で、水素結合を通したタンパク質及びペプチド間の相互作用を仲介する分子ブリッジとして作用し得る(113, 115)か、又はタンパク質及びリガンドの表面間の形の相補性を変化させ得る(116, 117)。
【0278】
ヘメクスチンAB4量体は高塩濃度存在下で2量体及び単量体へと分解する(図19B,2OB,16B,21A及び表3)。従って、人は直感的に、複合体形成における静電的相互作用の関与を疑うであろう。しかしながら、極性基間の相互作用で、結合が優先するときは、弱いながら正のΔCpになるであろう。対照的に、観察されたΔCpに関しての負の値は、隔離された水分子によってか、又は結合に際して生じる構造変化をともなって形成される「ブリッジ用」水素結合を含む結合境界の形成と整合性がある。ヘメクスチンAは塩存在下で構造変化する(図22A及び23A)ので、高イオン強度の緩衝液中の4量体の解離は、ヘメクスチンAにおける構造変化に起因し得る。しかしながら、複合体形成における静電的相互作用の役割も排除できない。
【0279】
ヘメクスチンAB4量体はグリセリン存在下でも2量体及び単量体へと分解する(図2OC,19C,16C及び21B)。従って、疎水性相互作用は複合体形成において重要な役割を果たす。これは異なる温度でのITC実験において観察された負のΔCp変化によっても支持される(図18A)。更に、グリセリンは個々のヘメクスチンの構造には影響しないので、分解はヘメクスチンの構造変化には起因しない(図22及び23)。従って、疎水性相互作用は複合体形成のための駆動力を提供するかもしれない。
【0280】
ヘメクスチンAB複合体形成のモデルへメクスチンA及びBの各2つがTris-HCl緩衝液中で4量体の複合体を形成する。この相乗的複合体の形成がその抗凝固活性にとって重要である。前に記載したように、高塩濃度におけるヘメクスチンAB2量体は、グリセリン存在下で形成された2量体とは異なる。前者の2量体は12.4nmという見かけ上の分子径を有し、且つ抗凝固活性を欠くが、後者の2量体は12.8nmという見かけ上の分子径を有し、やや高めの抗凝固効果を示す(図23)。従って、4量体の、2量体への分解はヘメクスチンA及びB間の相互作用の2つの異なった段階で起きるらしい。一方の段階は、周りのイオン強度に感受性であり、他方はグリセリンに感受性である(図23)。更に、塩存在下では、ヘメクスチンAは4量体形成において干渉するかもしれない構造変化を起こす(図23)。高塩条件下で形成された2量体は抗凝固部位を欠く(図23中の点状の半円の印)。対照的に、第2段階では疎水性相互作用が優先する。従って、グリセリンは4量体を2量体に解離させる。しかしながら、この場合、複合体の抗凝固部位中に(図23中で示されたように、)単なる小規模の変化が起きるだけで、ゆえに結果生じる2量体は活性がある。4量体形成によってヘメクスチンAの抗凝固部位が安定化するのが最もあり得ることである。
【0281】
ヘビ毒タンパク質間での複合体形成及び相乗効果は、特にシナプス前神経毒間でよく知られている。Crotalus durissus terrificus由来のcrotoxin(60)、 Oxyuranus scutellatus由来のtaipoxin(61)、Calloselasma rhodostoma由来のrhodocetin(64)、オーストラリアヘビ由来のグループCプロトロンビン活性化因子 (65-67)が、ヘビ毒複合体である。Crotalus durissus terrificus毒から単離されたCrotoxinは2つのサブユニットを含む;塩基性のサブユニットは酵素PLA2であるが、酸性のサブユニットは、(PLA2様のタンパク質由来であるが、)触媒としては不活性である(60)。個々では、塩基性サブユニットのみがやや毒性を有しているが、複合体は強力な毒性を示す。酸性サブユニットはシャペロンのように作用するように見え、且つ塩基性サブユニットの、前シナプス部位への特異的結合を亢進させる。同様に、Oxyuranus scutellatus由来のtaipoxin(61)及びPseudonaja textilis由来のtextilotoxin(62)毒等の他のシナプス前神経毒は、それぞれ3及び4のサブユニットを含む。サブユニットはすべて、酵素PLA2に相同性がある。これらの毒素のサブユニット間の非共有結合的相互作用はそれらの強力な毒性にとって重要である。従って、いくつかのヘビ毒シナプス前毒素はPLA2を必須の要素としてともなうタンパク質複合体である。O. scutellatus毒から単離されたもう一つのタンパク質複合体、Taicatoxinはカルシウムチャンネルを封鎖し、且つPLA2、プロテイナーゼ阻害剤及び神経毒(スリーフィンガートキシン)サブユニットを有する(63)。PLA2を必須の要素として含まないヘビ毒の非共有結合性タンパク質複合体はごくわずかしかない。例えば、Calloselasma rhodostoma毒由来の抗血小板タンパク質複合体のrhodocetinは、C型レクチンと構造的相同性を示す2つのサブユニットを含む(64)。オーストラリアヘビ由来のグループCプロトロンビン活性化因子は凝固性のタンパク質複合体で、それはヒトのFXa-FVa血液凝固複合体と構造的、機能的相同性を有する(65〜67)。RhodocetinはC型レクチン関連タンパク質のヘテロ2量体の抗血小板タンパク質複合体である(61)。Pseutarin Cは、ヒトのFXa-FVa複合体と構造的、機能的相同性を有する凝固的複合体である(65〜66)。残りの場合においては、それぞれのサブユニットは未だ特徴付けされていない非共有結合性相互作用によって結合している。ヘメクスチンAB複合体は、ヘメクスチンAの抗凝固活性が、そのヘメクスチンBとの相乗的相互作用によって増強される、ヘビ毒から単離された最初の抗凝固複合体である(74)。それはFXという足場を要求することなくFVIIaを特異的且つ非拮抗的に阻害する。従って、これは初の天然タンパク質性FVIIa阻害剤である。構造的には、それは2つのスリーフィンガートキシンによって形成された唯一の既知の4量体複合体である(74)。凝固開始の相乗的阻害にとって、複合体形成は不可欠なことから、この独特な複合体の形成を支配する分子相互作用の解明が重要である。
【0282】
要約すると、FVIIa活性の活性を特異的且つ非拮抗的に阻害するヘビ毒由来の独特な抗凝固タンパク質複合体が本明細書中に記載される。本結果は、ヘメクスチンA及びB間の相互作用が、強力な抗凝固活性に不可欠なことを強く支持する。2つの密接に関連したスリーフィンガートキシン間の独特なタンパク質タンパク質複合体が様々な生物物理学的技法で特徴づけられた。円2色性実験は、複合体形成がβシートの安定化につながることを示した。ヘメクスチンAB複合体は詰まっていて、且つその形成はエンタルピー的に駆動される。熱容量に関する負の値は、水素結合の存在と構造変化の発生を示す。複合体の安定性はその周りのイオン強度にも依存するが、疎水性相互作用は主に複合体形成の過程を駆動する。4量体は、塩と同様にグリセリン存在下で2量体へと解離する。塩存在下で形成された2量体はグリセリン存在下で形成されたそれと異なるように見える;それらの見かけ上の分子径は異なるし、且つそれらは異なる抗凝固特性を示す。塩存在下での複合体の解離は、恐らくヘメクスチンAの構造変化に起因する。本結果に基づいて、ヘメクスチンAB複合体の会合を明確に示すモデルを提案する。
【産業上の利用可能性】
【0283】
好都合にも、この新規の抗凝固剤は血液凝固における開始段階を阻害する異なる戦略及び治療剤の開発を促進し得る。この研究は、このタンパク質複合体の構造機能相関のより進んだ理解も可能にする。
【0284】
本発明は例示のみで記載されており、本発明の範囲及び精神の中に留まりつつも、変更がなされてもよい。
【0285】
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【図面の簡単な説明】
【0286】
【図1】粗毒素の抗凝固活性。粗毒素の、(A)カルシウム再構成時間及び(B)プロトロンビン時間への効果。毒素は両試験において強力な抗凝固活性を示すことに注意せよ。各データ要素は平均±標準偏差を表す。
【図2】ヘメクスチンA及びBの精製。(A)H. haemachatus毒の組成製毒素のSuperdex 30カラムでのゲル濾過クロマトグラフィー。挿入図、ピーク2及び3の抗凝固活性。(B)Uno S6カラムでのピーク3の陽イオン交換クロマトグラフィー。ヘメクスチンA(C)及びB(D)を含む画分のJupiter C18カラムでのRP-HPLCプロファイル。(E)及び(F)、それぞれヘメクスチンA及びBのキャピラリー液体クロマトグラフィープロファイル。ヘメクスチンA及びBの均質性及び分子量はESI-MSで決定された。ヘメクスチンA(G)及びB(H)の再構成マススペクトル。
【図3】ヘメクスチンA及びBのN末端配列。ヘメクスチンA及びBの最初の37残基はエドマン分解によって決定された。スリーフィンガートキシンファミリーにおける保存されたシステイン残基には黒く影をつける。さらにタンパク質をシークエンスして図13に示す配列を得た。
【図4】プロトロンビン時間へのヘメクスチンA及びBの効果。(A)プロトロンビン時間へのヘメクスチンA及びBの効果。ヘメクスチンAの抗凝固力がヘメクスチンBの存在下で増大することに注意せよ。各データ要素は平均±標準偏差を表す。(B)ヘメクスチンA及びB間の複合体形成を、そのプロトロンビン時間への効果により図示する。各データ要素は平均±標準偏差を表す。
【図5】ヘメクスチンAB複合体形成についてのゲル濾過実験。ヘメクスチンAB複合体の溶出時間(〜40分)が個々のヘメクスチンのそれ(〜70分)に比して減っていることに注意せよ。
【図6】活性段階の局在。(A)プロトロンビン、スチプベン、及びトロンビン時間の凝固検定による外因性凝固経路の選択的活性化の模式図を示す。ヘメクスチンA(B)、ヘメクスチンB(C)、及びヘメクスチンAB複合体(D)のプロトロンビン時間(△)、スチプベン時間(●)、及びトロンビン時間(■)の凝固検定への効果(詳細は本文参照)。各データ要素は平均±標準偏差を表す。
【図7】TF-FVIIa活性の阻害。(A)ヘメクスチンA(●)、ヘメクスチンB(▲)、及びヘメクスチンAB複合体(■)の、TF-FVIIaへの阻害効能。(B)ヘメクスチンA及びB間の複合体形成を、そのTF-FVIIa活性への効果により図示する。各データ要素は平均±標準偏差を表す。
【図8】リン脂質の、ヘメクスチンA、ヘメクスチンB、及びヘメクスチンAB複合体の、阻害活性への効果。ヘメクスチンA(●)、ヘメクスチンB(▲)、及びヘメクスチンAB複合体(■)のFVIIa(A)及びFVIIa-sTF(B)アミド分解活性阻害への効能。リン脂質がなくてもタンパク質及び再構成された複合体の阻害活性は影響を受けないことに注意せよ。
【図9】セリンプロテアーゼ活性。ヘメクスチンA、ヘメクスチンB、及びヘメクスチンAB複合体の、(A)FIXa(B)FXa(C)FXIa(D)FXIIa(E)血漿カリクレイン(F)トロンビン(G)トリプシン(H)キモトリプシン(I)ウロキナーゼ(J)プラスミン(K)APC及び(L)tPAのアミド分解活性への効果。アプロチニンを用いたプラスミン及びキモトリプシンの場合以外はポジティブコントロールとしてベンズアミジン(■)を用いた。タンパク質及び再構成された複合体の阻害効能を、タンパク質の代わりに検定緩衝液を含む検定混合液のブランク(□)を考慮して測定した。ヘメクスチンA及びヘメクスチンAB複合体ともに血漿カリクレインのアミド分解活性を阻害するが、ヘメクスチンBはしないことに注意せよ。
【図10】血漿カリクレインのアミド分解活性の阻害。ヘメクスチンA(●)、ヘメクスチンB(▲)、及びヘメクスチンAB複合体(■)の、血漿カリクレインのアミド分解活性への阻害効能。阻害のIC50が〜5μMであることに注意せよ。
【図11】阻害の本質。50nM(□)(2Ki)25nM(○)(Ki)12.5nM(■)(1/2Ki)の再構成されたヘメクスチンAB複合体存在下でのFVIIa-sTF活性動態の両逆数(ラインウィーバー・バーク)プロット。(●)はヘメクスチンAB複合体非存在下でのFVIIa-sTF活性動態を表す。非拮抗阻害剤に見られる古典的な現象であるが、Kmは不変でありながらVmaxは阻害剤濃度の上昇とともに減少することに注意せよ。(B)阻害のKiを記述、対応する二次プロット。図中矢印は25nMの値を有するKiを記述する。
【図12】ヘメクスチンAB複合体及びFVIIa間の複合体形成に関するITC実験。(A)10μMFVIIaを含む1.4mlセルへ0.2mMの再構成されたヘメクスチンAB複合体を注入する際の熱放出を示すマイクロカロリー/秒対時間の生データ。(B)生データの統合で熱/mol対Mの比率を出す。最良のフィッティングパラメータ値はKの4.11×105M-1、ΔHの7.931kcalM-1、及びΔSの1.25calM-1である。
【図13】ヘメクスチンB及びAの配列情報及びヘメクスチンB及びAの配列比較。
【図14】ヘメクスチン複合体形成に関連した構造変化。様々な濃度での(A)ヘメクスチンA、(B)ヘメクスチンBのCDスペクトルを示す。高濃度における凝集による構造変化を矢印で示す。(C)ヘメクスチンB濃度の増大に伴うヘメクスチンAの構造変化。(D)ヘメクスチンB濃度の増大に伴う217nmでのヘメクスチンAのCD変化。ヘメクスチンAのヘメクスチンBに対する比率が1:1に達した後さらにヘメクスチンAを加えていくとCDでの有意な変化が観察されたことに注意せよ(C及びD)。
【図15】GEMMAを用いたヘメクスチンAB複合体形成時の分子径の測定。電気泳動度に基づいて個々のヘメクスチン及びヘメクスチンAB複合体の分子径を計算する。ヘメクスチンAB複合体の形成が分子径の増大につながることに注意せよ。等濃度のトキシンCを加えてもヘメクスチンA及びヘメクスチンBの分子径は増大せず、得られたデータが正しいことを示している。
【図16】DLSを用いた流体力学直径の測定。(A)50mM Tris-HCl中のヘメクスチンA、ヘメクスチンB及びヘメクスチンAB複合体のCONTIN解析。様々な濃度のNaCl(B)及びグリセリンの、ヘメクスチンAB複合体への効果。計算された各分子種の流体力学直径を示す。
【図17】ITCを用いたヘメクスチンA及びB間の相互作用の実験。(A)0.1mMヘメクスチンAを含む1.4mlセルへ1MのヘメクスチンBを注入する際の熱放出を示すITC生データ。(B)ITC生データの統合で熱/mol対Mの比率を出す。最良のフィッティングパラメータ値はNの1.04、Kaの2.23×106M-1、及びΔHの-11.68kcalM-1である。
【図18】ヘメクスチンA-ヘメクスチンB相互作用の熱力学。(A)温度の、ヘメクスチンA−ヘメクスチンB相互作用のエネルギー論への効果:(●)エンタルピー変化(ΔH)、(■)エントロピー項における変化(TΔS)、及び(▲)自由エネルギー変化(ΔG)。(B)ΔG)。(B)文献に記載された様々なタンパク質−タンパク質相互作用におけるエンタルピー−エントロピー補償(O)(データはYe and Wu (68)、McNemar et al.(69)、及びSites(70)による総説で引用された参考文献からとった。)及びヘメクスチンA−ヘメクスチンB(●)相互作用を示す。挿入図はメクスチンA−ヘメクスチンB相互作用におけるエンタルピー−エントロピー補償を示す。
【図19】異なる緩衝液でのヘメクスチンAB複合体の形成。(A)緩衝液イオン化の、ヘメクスチンAB複合体形成のためのエンタルピーへの効果。実験はすべてpH7.4で行った。緩衝液で用いられたイオン化エンタルピー変化はリン酸が0.71kcal/mol、MOPSが5.27kcal/mol、及びTrisが11.3kcal/molであった(文献)。(B)Kaの緩衝液のイオン強度依存性。緩衝液イオン強度の増大に伴って結合親和性が減少する。(C)Kaのグリセリン濃度依存性。グリセリン濃度の増大に伴って結合親和性が増大し、疎水性相互作用の重要性を示す。
【図20】異なる緩衝液でのヘメクスチンAB複合体のSEC実験。(A)Tris-HCl緩衝液中のヘメクスチンAB複合体の溶出プロファイル。(B)(異なるNaCl濃度を用いることにより)イオン強度の異なるTris-HCl緩衝液(C)異なる濃度のグリセリンを含むTris-HCl緩衝液。塩又はグリセリンの増大とともに四量体の複合体が解離し、二量体及び単量体になる(ピークをそれぞれ4、2、1と示す)*(D)以下のタンパク質を分子量マーカーとして用いるカラムの標準化−(A)オボムコイド(28KD)、(B)リボヌクレアーゼ(15.6KD)、(C)チトクロームc(12KD)、(D)アポプロチニン(7KD)、(E)プレオバテリン(4KD)。四量体、二量体及び単量体の分子量を標準化曲線から計算した。
【図21】緩衝液条件の、抗凝固活性への効果。(A)緩衝液イオン強度の抗凝固活性への効果及び(B)グリセリンの抗凝固活性への効果。ヘメクスチンAB複合体の抗凝固活性は緩衝液イオン強度の増大に伴って減少し、グリセリン濃度の増大に伴っても減少する。矢印は、抗凝固剤複合体の大部分が二量体及び単量体の混合液として存在する(A)塩及び(B)グリセリン濃度を示す。
【図22】一次元1HNMR実験。異なる緩衝液条件下における(A)ヘメクスチンA及び(B)ヘメクスチンBのスペクトル。NaCl存在下で、ヘメクスチンAのβ−シート構造は完全に壊れる。
【図23】提案されたヘメクスチンAB複合体のモデル。(A)ヘメクスチンAB複合体の形成を記述した模式図。2つの構造的に類似したスリーフィンガートキシンのヘメクスチンA及びBが1:1の化学量で密集し、且つ厳密な四量体を形成する。(B)塩及びグリセリンの、ヘメクスチンA及びBの構造への効果を示す模式図。ヘメクスチンAは塩及びグリセリン存在下で構造変化する。(C)塩及びグリセリン存在下での四量体ヘメクスチンAB複合体の解離。解離は2つの異なる段階で起こりそうである。従って高塩濃度におけるヘメクスチンAB二量体はグリセリン存在下で形成された二量体とは異なる。2つの推定上の抗凝固部位を点線の半円で示す(詳細は本文参照)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1又は配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、或いはその変異体、突然変異体又は断片。
【請求項2】
配列番号2、4又は5に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、或いはその変異体、突然変異体又は断片。
【請求項3】
前記ポリペプチドが、Hemachatus haemachatus(アフリカリンカルスコブラ)の毒から得られる、請求項1又は2のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記ポリペプチドが抗凝固活性を示す、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のポリペプチドの機能的同等物を含むポリペプチドであって、前記機能的同等物が、配列番号l、配列番号2、配列番号3、配列番号4及び配列番号5からなる群より選択されるポリペプチドの活性を保持する、ポリペプチド。
【請求項6】
(i)請求項1〜5のいずれかに記載のポリペプチドをコードする;又は
(ii)(i)の核酸分子或いはその変異体、突然変異体、断片又は相補体にハイブリダイズする、
核酸分子。
【請求項7】
プライマー又はプローブである、請求項6記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項8】
請求項6記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項9】
請求項8記載のベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれかに記載のポリペプチドを製造する方法であって、請求項9に記載の宿主細胞を、請求項1〜5のいずれかに記載のポリペプチドの発現に適した条件下で培養することを含む方法。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれかに記載のポリペプチドを製造する方法であって、前記ポリペプチドの化学合成を含む方法。
【請求項12】
化学合成が固相ペプチド合成である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリペプチドを精製する工程をさらに含む、請求項10〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
(i)請求項1記載のポリペプチド;及び
(ii)請求項2記載のポリペプチド
を含む複合体を生成させる方法であって、請求項1記載のポリペプチドと請求項2に記載のポリペプチドとを、複合体の形成を可能にするのに適した条件下で接触させることを含む方法。
【請求項15】
(i)請求項1記載のポリペプチド;及び
(ii)請求項2記載のポリペプチド
を含む複合体。
【請求項16】
(ii)に対する(i)の比率が、1:2〜2:1の範囲内である、請求項15記載の複合体。
【請求項17】
請求項1〜5のいずれかに記載のポリペプチド又は請求項15記載の複合体を認識する抗体を生成させる方法であって、
(i)請求項1〜5のいずれかに記載のポリペプチド又は請求項15記載の複合体で動物を免疫し、;
(ii)前記動物から抗体を取得する
工程を含む方法。
【請求項18】
請求項1〜5のいずれかに記載のポリペプチド又は請求項15に記載の複合体を認識する抗体。
【請求項19】
請求項1〜5のいずれかに記載のポリペプチド又は請求項15に記載の複合体に対する抗毒素を製造する方法であって、請求項1〜5のいずれかに記載のポリペプチド又は請求項15記載の複合体で動物を免疫し、抗毒素の製造において使用するために、前記動物から抗体を採取することを含む方法。
【請求項20】
請求項1〜5のいずれかに記載のポリペプチド又は請求項15記載の複合体に対して有効な抗毒素。
【請求項21】
請求項1〜5のいずれかに記載のポリペプチド又は請求項15記載の複合体の調節薬を同定する方法であって、
(i)試験化合物と請求項1〜5のいずれかに記載のポリペプチド又は請求項15記載の複合体とを接触させ、;
(ii)試験化合物が前記ポリペプチド又は前記複合体に結合するかどうかを決定する
工程を含む方法。
【請求項22】
試験化合物が、前記ポリペプチド又は前記複合体の活性を増大又は減少させるかどうか決定する工程をさらに含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
請求項1〜5のいずれかに記載のポリペプチド、請求項6記載の核酸分子、請求項8記載のベクター、請求項9記載の宿主細胞、請求項15記載の複合体、請求項18記載の抗体、請求項20記載の抗毒素又は請求項21記載の方法によって同定される調節薬を含む、医薬組成物。
【請求項24】
医薬における使用のための、請求項1〜5のいずれかに記載のポリペプチド、請求項6記載の核酸分子、請求項8記載のベクター、請求項9記載の宿主細胞、請求項15記載の複合体、請求項18記載の抗体、請求項20記載の抗毒素又は請求項21記載の方法によって同定される調節薬。
【請求項25】
医薬における使用のための併用剤であって、
(i)請求項1記載のポリペプチド又はそれをコードする核酸分子;及び
(ii)請求項2記載のポリペプチド又はそれをコードする核酸分子
を含む併用剤。
【請求項26】
前記併用剤が、抗凝固療法を必要としている患者の治療のためのものである、請求項25に記載の併用剤。
【請求項27】
抗凝固療法を必要とする患者の治療に用いるための医薬の製造における、請求項1〜5のいずれかに記載のポリペプチド、請求項6記載の核酸分子、請求項8記載のベクター、請求項9記載の宿主細胞又は請求項15記載の複合体の、使用。
【請求項28】
抗凝固療法を必要とする患者の治療のための併用剤の製造における、
(i)請求項1記載ポリペプチド又はそれをコードする核酸分子;及び
(ii)請求項に記載ポリペプチド又はそれをコードする核酸分子
の使用。
【請求項29】
抗凝固療法を必要とする患者を治療する方法であって、請求項1〜5のいずれかに記載のポリペプチド、請求項6記載の核酸分子、請求項8記載のベクター、請求項9記載の宿主細胞、請求項15記載の複合体又は請求項23記載の医薬組成物を、該患者に投与することを含む方法。
【請求項30】
抗凝固療法を必要とする患者を治療する方法であって、
(i)請求項1記載のポリペプチド又はそれをコードする核酸分子;及び
(ii)請求項2記載のポリペプチド又はそれをコードする核酸分子
を、該患者に投与することを含む方法。
【請求項31】
患者の蛇咬傷を治療する方法であって、請求項1〜5のいずれかに記載のポリペプチド、請求項6記載の核酸分子、請求項8記載のベクター、請求項9記載の宿主細胞、請求項15記載の複合体又は請求項23記載の医薬組成物を、該患者に投与することを含む、方法。
【請求項32】
患者の蛇咬傷の治療剤の製造における、請求項1〜5のいずれかに記載のポリペプチド、請求項6記載の核酸分子、請求項8記載のベクター、請求項9記載の宿主細胞、請求項15記載の複合体又は請求項23記載の医薬組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図9】
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【図13】
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【図14】
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【図23】
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【公表番号】特表2009−502192(P2009−502192A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524944(P2008−524944)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【国際出願番号】PCT/SG2006/000222
【国際公開番号】WO2007/018475
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(507241953)ナショナル ユニヴァーシティ オヴ シンガポール (3)
【Fターム(参考)】