説明

施設内無線システム

【課題】関連する業務作業員が情報を共有し易くし、各セクションの作業効率を向上した施設内無線通信システム、更に、各部屋の施設の状況を収集し、省電力化、防犯効果が得られ、また、非常時の顧客誘導や救出にも役立つ施設内無線通信システムを提供する。
【解決手段】ホテル等の施設内無線通信システムにおいて、データ収集機能を備えた親局通信装置、移動通信端末、データ収集用通信端末を含み、移動通信端末から収集した情報を親局通信装置に蓄積し、移動通信端末の表示手段によって確認できるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は施設内無線システムに関し、詳細には、ホテルやレンタル会議室のように多数の部屋を擁する施設に好適な、施設内無線システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムは、移動しながら各種の連絡が可能であることから、多くの場面において利用されており、例えば、ホテルや催し物会場等における警備や業務連絡用には、特定小電力無線送受信機のように免許取得が不要なシステムが多く使用されている。
また、このような特定省電力無線送受信機やアマチュア無線等の陸上移動無線通信機(Land Mobile Radio:LMR)では、一部を除き通信端末の一方が送信し、他方がそれを受信する操作を交互に繰返す単信方式(シンプレックス方式)が一般的であるが、所要間隔離れた周波数を送信周波数と受信周波数として設定することによって、互いに、送信と受信を同時に行う複信方式(デュープレックス方式)も採用されている。
更に、陸上移動無線通信機は比較的送信電力が小さく設定されていることから、ある程度距離が離れると互いの送信信号が直接相手方に届かなくなることが多いので、従来からレピータ装置(無線中継局装置)が随所に設けられているが、その設備の規模は、それを利用する通信端末数によって種々のものが存在する。
【0003】
また、複数の移動通信端末を使用して業務用連絡を行う場合は、複数の通信チャネルを備え、その時点で空いているチャネルを選択して、同時に多くの当事者が通信を行えるマルチチャネルアクセス方式が使用されており、レピータ装置についてもマルチチャネルアクセス方式に対応するものが構築されている。
ところで、建築現場やホテル等の業務連絡の通信内容を、通信当事者以外の、関連業務に携わる他の関係者にも同時に伝えることができれば、更に、業務効率を向上し得るが、マルチチャネルアクセス方式では、多数のチャネルを選択しながら使用するので、通信当事者以外の移動通信端末においても同時に傍受するためには種々の工夫が必要であった。
例えば、特許文献1には、複信方式(デュープレックス方式)を行う複数の移動通信端末のうちの、ある移動通信端末間で行われている通信内容を、他の移動通信端末が受信できるようにした複数無線機間同時通話システムが提案されているので、レピータ装置の構成や通信端末の構成を知る上で参照することができる。
【特許文献1】特開2007−96579公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の施設内無線システムでは、専ら、音声による連絡が主たるものであったので、業務上の効率向上には限度があった。即ち、施設内無線システムとして、ホテルの業務用無線システムを例にすると、図6(a)に示すように特定小電力無線送受信機60を携行するハウスキーパや従業員が、フロント(受付)に設置された親局通信装置61を介してフロントの担当者や管理担当者と音声により通信するシステムでは、図6(b)に示すように、複数の従業員や作業員がフロントと通信する場合は種々、不便なものであった。
例えば、ハウスキーパがホテルのフロントや管理部門に、顧客のチェックアウトの有無を確認し、顧客が退室したことを確認後に客室の清掃や備品の補充、ベッドメーキングを行う場合、音声による通話のみでは、リアルタイムで様子を把握することが出来ないので、何度も現状確認のために無線連絡を行う必要がある。また、夫々の処理業務がある時間帯に集中する場合には、通信回線が塞がっていることが多くなり、連絡待ちのために費やす時間のために本来業務の遂行に支障を来す虞もあった。更には、一対一の通話では、通信当事者以外の他の作業者との情報共有が難しく、作業効率の向上を妨げる場合があった。
本発明は、従来のホテル等の施設内無線通信システムにおける諸事情に鑑みてなされたものであって、会話による通信の他、業務に有用な各種の情報を収集し、それらをデータとして蓄積するとともに、それらの情報を移動通信端末の表示手段によって確認可能とすることによって、各セクションの作業効率を向上できるようにした施設内無線通信システムを提供すること、または、各部屋の電気製品の起動状態や、ドアや窓の開放情報等を収集することによって、防犯にも利用でき、また、非常時の顧客誘導や救出にも役立ち得る施設内無線通信システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこのような課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、複数の移動通信端末と、これらの移動通信端末と通信可能な少なくとも一つの親局通信装置と、施設内要所に配置するデータ収集用通信端末を含み、上記移動通信端末は前記親局通信装置を介して他の移動通信端末と通信が可能であり、その通信内容が、通信当事者以外の他の移動通信端末において傍受信可能なように構成されたデジタル方式の施設内無線システムにおいて、上記移動通信端末は、表示器、入力部、マイクロホン、スピーカ、送信部、受信部、データ送受信機能を有する制御部を含み、上記親局通信装置は、表示器、入力部、マイクロホン、スピーカ、送信部、受信部、データ送受信機能を有する制御部、データ記憶部を含み、上記データ収集用通信端末は、施設内の各種センサ出力情報入力手段、入力されたデータを前記親局通信装置に送信する制御部を含み、上記親局通信装置が収集した各種データを、上記移動通信端末に必要に応じて送信し、且つ、移動通信端末から上記親局通信装置にアクセスしてデータを読み出す手段を備えたことを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の施設内無線システムにおいて、上記施設が宿泊施設、ホテル、レンタル会議室、レンタルカラオケルーム、レンタルイベント会場等であって、上記親局通信装置のデータ記憶部は、客室、レンタル会議室、レンタル会議室、レンタルイベント会場の使用状況情報を記憶しておく領域を含むとともに、上記センサ出力情報入力手段には、各部屋の電灯点灯センサ、窓・ドア開閉センサ、火災センサ、水道使用センサ、電気製品使用センサ、ガス使用センサ、のうちの少なくとも一つのセンサからの情報が入力されるように構成されたことを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載の施設内無線システムにおいて、上記移動通信端末には、カメラ機能を含み、設備や備品不具合状態を撮影した画像データと場所情報を前記親局通信装置に送信することができるように構成したことを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れか一項記載の施設内無線システムにおいて、上記データ収集用通信端末が、非常用ボックス中に収納され、バッテリィを内蔵した無線通信機を含み、通常は外部電力が供給されて内蔵バッテリィを充電しながらデータ収集用通信端末として使用され、非常時には顧客が連絡用に使用可能であり、または、携行して避難できるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は上述したように、ホテル等の施設内無線通信システムにおいて、各種情報を移動通信端末から収集し、これらを親局通信装置に蓄積するとともに、これらの情報を移動通信端末の表示手段によって確認できるように構成し、あるいは、移動通信端末間の通信を他の移動通信端末が同時に受信傍受可能としたので、関連する業務作業員が情報を共有し易くなり、各セクションの作業効率を向上した施設内無線通信システムを提供することができる。更に、各部屋の電気製品の起動状態や、ドアや窓の開放情報等を収集することによって、省電力化、防犯にも利用でき、また、非常時の顧客誘導や救出にも役立ち得る施設内無線通信システムを提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を図示した実施態様例を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図1は、本発明に係る施設内無線システムの一例として示した、ホテル内無線システムの概要図である。図1において、1は例えばホテルのフロント(受付)に設置された親局通信装置、2は、ホテル内のフロアマネージャ、ハウスキーパ、警備員、営繕担当者等が携行する複数の移動通信端末、3は、客室内や各種催し物会場、貸し会議室等に備えられたデータ収集用通信端末であり、夫々の通信端末は、以下のように構成されている。
先ず、親局通信装置1は、マイクロホン10を備えた送信部11と、スピーカ12を備えた受信部13と、送受信用アンテナ14と、親局制御部15と、を含み、更に親局制御部15には、データ記憶部16と、入力部17と、表示部18とが接続されている。
【0009】
また、移動通信端末2は、通常の移動端末と同様に、少なくともマイクロホン20を備えた送信部21と、スピーカ22を備えた受信部23と、送受信用アンテナ24と、制御部25と、移動局制御部25に接続された入力部26と、表示部27とを備えている。
一方、データ収集用通信端末3は、詳細構成は省略するが、上記移動通信端末2とほぼ同様に構成した通信端末30と、データ収集用のデータ制御部31と、センサ情報入力部(センサ情報入力手段)32を含み、このセンサ情報入力部32には、例えば、テレビ等の電気製品の起動状態を監視する電気製品使用センサ33、室内灯の点灯状態を監視する電灯点灯センサ34、窓・ドア開閉センサ35、火災センサ36や、図示を省略した水道センサ、ガスセンサ等の各種センサからの信号が入力されるように構成されている。
なお、これらの各通信機はデジタル方式として構成し、音声信号の他、データ通信が可能であることが好ましく、更に、パケット通信のように、逐一、相手局を呼出す操作を行うことなく、アドレスを付したデータ送受信によって、所要の情報の授受が行えるものであれば、更に、業務効率の改善が期待できる。
【0010】
このように構成されたホテル内通信システムは、例えば以下のように動作し、または、使用できるように各通信装置や端末の制御部のメモリ装置(図示省略)にプログラムや必要なデータが格納されている。
先ず、移動通信端末2は、少なくとも親局通信装置1との間で直接通信可能であり、通信方式は単信方式(シンプレックス)、複信方式(ディユープレックス)の何れであってもよい。なお、移動通信端末相互間の通信は、直接行えることが好ましいが、後述するように親局通信装置1にレピータ機能を持たせることによって、親局通信装置を介して通信を行うものであってもよい。
【0011】
本発明に係るこのホテル内通信システムの特徴は、ホテル業務に関する各種の情報を移動通信端末2から親局通信装置1に集め、それらの情報をデータとして蓄積し、他の移動通信端末が共有できるようにした点である。以下、この点を中心に、図1に示したホテル内通信システムの運用例について説明する。
先ず、移動通信端末2を客室の清掃等を行うハウスキーパに携行させる場合を例示する。周知のように、ハウスキーパは、顧客のチェックアウトを待って、空き部屋となった客室の清掃、備品補充、ベッドメーキング等を行うが、どの客室が空いたかについては、従来フロントに業務用無線機で問い合わせていたので、非効率的であったことは上述した通りである。そこで、この実施例では、フロントに備え付けられた上記親局通信装置1の入力部17を介して、チェックアウトした顧客の情報を入力し、データ記憶部16に蓄積する。通常、ホテルのフロントでは、顧客情報や、予約情報等の各種情報をパソコンによって管理するようになっているので、その管理のためにパソコンに入力する情報の一部を流用するものであってもよい。このようにフロントにおいて顧客のチェックアウト情報を入力すれば、リアルタイムで最新の空部屋情報が蓄積される。そこで、ハウスキーパが空き部屋(チェックアウトした部屋)を知りたいときは、携行する移動通信端末2を操作して親局通信装置1を呼出し、そのデータ記憶部16の空き部屋情報データにアクセスすれば、最新の情報を知ることができる。
【0012】
また、フロントから、チェックアウトの顧客のみならず、継続宿泊客であって、在室のまま清掃を希望する顧客や、外出中の時間を知らせて、その間に清掃やベッドメーキングを希望する顧客の情報、あるいは清掃無用を希望する顧客等、夫々の顧客情報を、上記データ記憶部16に入力し、蓄積しておけば、更に細かい顧客要望に応えたサービスを迅速に実施することが可能である。
そして、これらの情報に基づいてハウスキープ業務を完了したとき、各、ハウスキーパは携行する移動通信端末2を介して、作業が終了した旨を親局通信装置1に連絡すると、その情報が親局通信装置1のデータ記憶部16に登録され、必要に応じてフロントに配置された表示部18に表示される。ハウスキーパの移動通信端末2から親局通信装置1に行われる作業完了報告等の連絡は、一般的には、移動通信端末2の表示部27に表示されたハウスキーピングが必要な客室リストの所要部に、入力部として備えたキーボード(テンキー)を操作して、「作業完了」あるいは「作業中」等を入力し、そのデータが親局通信装置1を経由してフロントの表示部18に表示されるが、移動通信端末2側の作業効率を高めるために、音声認識による情報伝達手段を用いることも可能である。この場合は、ハウスキーパは単に、マイクロホン20から、作業終了した旨と、その部屋番号とを送信し、その音声を親局通信装置1において認識してデータとして蓄積すればよい。なお、変換ミスを無くすため、認識した結果を送信元に返送し、確認ボタンの押圧を促すことも有用である。このような操作が可能となれば、顧客の要望通りの時間帯に作業が終了したか否かをフロントにおいて確認できるし、未完了の場合は、担当者に作業実行を促すことにも活用できる。
【0013】
更に、移動通信端末からの連絡は、作業完了報告に留まらず、各種の情報を親局通信装置1に伝達し、データとして蓄積することもできる。例えば、客室のベッドや収納扉、ドアや窓等の設備が破損している場合は、修理等の営繕作業が必要となるが、それらの情報を親局通信装置1のデータ記憶部16に収集・蓄積しておき、営繕担当者が携行する移動通信端末2、もしくは営繕担当者が在籍する部屋に配置された情報伝達装置を介して営繕作業の必要性を把握して、迅速な対応を行うことも可能である。このような情報伝達には、現場の写真や動画像が有用であるので、各移動通信端末2に近年の携帯電話機のようにカメラを付加しておき、設備の破損部分等の撮影画像をデータとして送信するように構成すれば、営繕担当者は、一旦、現場に行って破損状況を確認することによって必要な部材を特定し、それらの部材を収集後、再び現場に赴くといった手間を省くことができるので、一層の業務効率化が期待できる。
【0014】
また、客室の洗面所にはシャンプー、歯ブラシ等、一揃いの備品が備えられているが、稀にではあるが欠品や、数が不足することがあるので、作業完了時に備品類を所定の位置から撮影した画像を親局通信装置1に送信させ、それらをフロントや、所定の担当者がチェックすると云った使用方法も、顧客サービスを充実させる上で有用であり、撮影日時が付加されるように構成することもサービスを徹底することに繋がる。
以上のように、ホテル等のハウスキーパやそれらに類似した作業を行う業務員に移動通信端末を携行させ、必要な情報を収集して親局通信装置のデータ記憶手段に蓄積するとともに、他の業務員が携行する移動通信端末により、リアルタイムで必要な情報を上記親局通信装置が蓄積したデータを参照できるように構成すれば、その業務員が、その都度、フロントや管理室、司令室に問い合わせる従来の方法に比べれば、大幅に作業効率の向上を図ることができる。
【0015】
また、データ収集用通信端末3によって、テレビ等の電気製品の起動状態、室内灯の点灯状態、窓・ドア開閉状態、火災発生、水道開閉状態、その他の各種センサからの信号が入力されるように構成されているので、空き室であるにも関わらず、テレビ等の電気製品が起動状態であったり、水道が出っぱなし状態であったり、窓が開いた状態である場合、それらの状態を自動的に把握することができるので、それらの点検を、最寄りの業務員やハウスキーパに無線連絡することによって、防災、防犯、省電力の効果をもたらすことができる。なお、これらの監視結果に基づいて、フロントから、電気製品の電源を遮断すること、開いたドアを閉めること、水道を止めること、等の対応をリモートコントロールするように構成することも可能である。
また、ハウスキーパ用の移動通信端末2は、各自が携行する形式でもよいが、ハウスキーパが備品や、シーツ、タオル、パジャマ等の用品を運搬するためのカートに備え付けられたものであってもよい。更に、本発明において親局通信装置1と移動通信端末2は、交互に送受信を繰返すシンプレックス(プレストーク;単信)方式でも、同時送受信を行うデュープレックス(複信)方式の何れにおいても適用可能であるが、通信管理や迅速な通信を行う上では同時送受信方式の方が有利である。
【0016】
ところで、ハウスキーパが携行する移動通信端末がデュープレックス(複信)方式である場合、送信周波数と受信周波数とが異なる周波数帯域に設定され、同時に送信と受信を行うことができるが、これらの移動通信端末と通信する親局通信装置では、移動通信端末の送信周波数を受信周波数とし、移動通信端末の受信周波数を送信周波数となる。即ち、送信周波数と受信周波数が異なるデュープレックス(複信)方式においては、移動通信端末から送信周波数をf1、受信周波数をf2とすると、周知のように親局通信装置では受信周波数がf2、送信周波数がf1となる。
この構成によれば、移動通信端末を携行するハウスキーパは、熟練を要するプレストーク操作を行うことなく、通常の携帯電話機と同様の操作によって通話を行うことができるので、複雑なボタン操作については、親局通信装置のオペレータの指示を聞きながら同時に行うことができる。
【0017】
しかし、移動通信端末が相互間で直接通信する場合は、一方の移動通信端末が送信周波数をf1、受信周波数をf2とすると、他方の移動通信端末5は、受信周波数がf2、送信周波数がf1となるような周波数設定が必要である。そのような設定が許容される場合は、直接、移動通信端末感の通信が可能となるが、親局通信装置において両者の送信内容を受信するためには、夫々の送信波となるf1とf2の両周波数を同時に受信する機能が必要である。あるいは、親局通信装置の受信周波数と同一の周波数を送信する側の通信当事者の移動通信端末において、受信復調信号を、自局の送信機のマイクロホン出力信号に混合する処理(リンク処理)を行う必要があるが、装置構成が複雑となるばかりでなく、親局通信装置における通信管理が困難となる場合がある。
そこで、親局通信装置にレピータ機能を持たせ、その中継機能によって、移動通信端末相互間の通信を可能とし、更には、その通信内容を他の移動通信端末が同時に傍受できるように構成することができれば、上記問題を解決することができる。
【0018】
図2は、ハウスキーパが携行する移動通信端末がデュープレックス(複信)方式である場合の、施設内無線システム例を示す概要図である。この例では、移動通信端末5が、送信周波数と受信周波数とが異なる周波数帯域に設定され、同時に送信と受信を行うことができるように構成されたもので、親局通信装置4は、上記図1と同様にフロント等に設置され、ハウスキーパが携行するデュープレックス(複信)方式の複数の移動通信端末5と直接通信可能なように周波数関係が設定されている。また、図示を省略したが、必要に応じて図1の3と同様のデータ収集用通信端末が備えられているが、単に、センサ情報を収集するのみの場合は、必ずしも、同時送受信が必要ではなく、親局通信装置からの指示に従って必要なデータを送信するか、あるいは、周期的に又は異常の場合にのみデータを送信する構成であっても構わないが、後述するように、非常時に持ち出して、顧客避難用に携行させる場合には、他の移動通信端末と同様に同時送受信可能であることが好ましい。
この例では、移動通信端末5がデュープレックス(複信)方式であることに対応して、親局通信装置4では、移動通信端末の送信周波数を受信周波数とし、移動通信端末の受信周波数が親局通信装置の送信周波数となるように設定されている。
即ち、送信周波数と受信周波数が異なるデュープレックス(複信)方式においては、移動通信端末5から送信周波数をf1、受信周波数をf2とすると、周知のように親局通信装置4では受信周波数がf2、送信周波数がf1となる。
【0019】
その場合であっても、通信当事間の通話内容を、それ以外の移動通信端末において同時に受信可能として情報を共有するためには、同一出願人が出願した特許文献1記載の発明(特開2007−96579公報)を利用すればよい。
特許文献1は、複信方式(デュープレックス方式)を行う複数の移動通信端末のうち、ある移動通信端末間で行われている通信内容を、他の移動通信端末が受信できるようにした複数無線機間同時通話システムに関するものである。即ち、移動通信端末としては図3に示すように構成し、親局通信装置としては、図4に示す構成の中継器(レピータ)を二つ、ケーブルを介して接続するとともに、二つの中継器のマイクロホン出力信号、受信機の復調信号を、内蔵するセレクタにより相手方中継器の送信機、又は、混合器に供給するように切替え、当該親局通信装置と通信中以外の移動通信端末が受信可能な周波数の電波に重畳して、通話中の音声信号を中継送信するものである。詳細には特許文献1に記載があるので、以下、各装置の構成と、動作について簡単に説明する。
【0020】
図3は特許文献1に開示された移動通信端末の構成例を示すブロック図である。この移動通信端末40は、マイクロホン41と、そのマイクロホンの音声出力信号を所要レベルに増幅するマイクアンプ42と、マイクアンプ42の出力を変調信号とする送信機43と、入力端子に上記送信機の出力信号を供給する結合器44と、この結合器44の出力端子に接続された受信機45と、この受信機45の復調信号に上記マイクアンプ42の出力信号の一部をミクシングする混合器46と、この混合出力46を音声信号に変換するスピーカ47と、上記結合器44の共用端子に接続された送受信用アンテナ48と、上記マイクアンプ42と混合器46及び、送信機43、受信機45を制御する子機制御部49を含んだものである。
【0021】
図4は、同様に特許文献1に記載された中継器(中継機能を備えた親局通信装置)50の一例を示すブロック図であり、上記図3と同じ機能ブロックは同一符号を付している。この構成が上記図3と相違する部分は、破線にて囲った中継制御部51を付加した点であり、他のブロック41乃至48に関しては、上記図3に示した移動通信端末40の構成とほぼ同様であるので、説明は省略する。
この中継制御部51は、三つのセレクタ52乃至54を備え、夫々を(子機)制御部49によって制御するように構成した点が特徴的である。この構成における第一のセレクタ52は送信機43に(変調信号)供給する信号として、自局のマイクアンプ42の出力信号、受信機45の出力信号、自局の混合器46の出力信号(この信号には、ケーブル55−1を介して供給される他方の中継器のマイクアンプ出力が含まれる場合がある)の何れかをセレクトし、第二のセレクタ53は混合器46に供給する信号として、受信機の復調信号、マイクアンプ42の出力信号、あるいは他方の中継器からケーブル55−1を介して供給される他方の中継器の第三のセレクタ54の出力信号(相手方のマイクアンプ出力、混合器出力、受信機の出力信号が含まれる場合がある)をセレクトし、第三のセレクタ54は、マイクアンプ42の出力、混合器46の出力、受信機の出力信号をセレクトして、他方の中継器の第二のセレクタに供給することができる。なお、図4におけるマルで囲った小文字アルファベット記号は、同一記号間の結線を省略したことを示す符号である。
【0022】
図5は、図4に示した中継器(レピータ)50−1(1A)と55−2(1B)を、上述したように連結した親局通信装置4と、図3に示した子機40−1(2A)、40−2(2B)、40−3(2C)、・・・を移動通信端末として利用して、本発明の施設内通信システムを実施した場合の一例を示す概要図であり、特許文献1に詳しく記載されているので、詳細な説明は省略する。
このような構成によって、親機(親局通信装置)である自機のマイクロホン41からの音声信号に付加して、受信機の復調音声信号を送信し、あるいは、自局のマイクロホン信号、受信機の復調信号等を適宜選択して、相手方の移動通信端末に送信するとともに、同様に構成された他方の中継器(親局通信装置の一部)から別の送信周波数によって、必要な音声信号をセレクトして送信することが可能となる。従って、この中継器と直接通信する移動通信端末以外の他の移動通信端末は、この中継器から送信される電波、又は他方の中継器から送信される電波の何れかを受信すれば、通話中の親局通信装置と移動通信端末両者の会話内容を傍受(モニタ)することが可能となる。
【0023】
更に、特許文献1に詳細に説明されているように、セレクタにより選択する信号によって、親局通信装置を中継器(レピータ)として機能させ、移動通信端末間が直接通話を行うことも可能であり、更に、このときの通話内容を他の移動通信端末において傍受(モニタ)可能なように制御することもできる。
このように、特許文献1に開示され手段の特徴は、比較的簡単な構成によって、同時送受信を行う特定の移動通信端末間の通信や、親局通信装置と移動通信端末との通話内容を、他の移動通信端末において傍受可能としたものであり、本発明に利用すれば、より一層簡便な施設内通信システムを構築することができる。
【0024】
本発明は、以上説明した実施例に限定する必要はなく、種々変形や他のシステムとの組み合わせが可能である。
例えば、図1に示したデータ収集用通信端末3における通信端末30として、移動通信端末2と同様に可搬可能な無線通信機を非常用ボックスの中に収納しておき、通常は、外部電源の供給を受けながら上述したように各種センサからの信号を入力し、親局通信装置にデータを送信するが、非常時には、非常用ボックスから顧客が移動通信端末を取りだして、フロントと通信できるように構成することも可能である。
即ち、非常用ボックスとは、例えば「非常用」、「非常の際はレバーを操作してボックスの蓋を開け、通信機を取り出してフロントと通信できます」といった表示を付したボックスである。このボックスは開閉する際に、スリットが施され僅かな力で透明板を割ってボックス開閉レバーを操作できるようにしておけば、通常時の悪戯を防止する上で効果がある。また、火災や地震等の非常時には、顧客がこれらの通信端末を携行して避難できるように構成し、その旨を表示しておくことも、万一の場合の避難者救助の上で有用である。更に、これら通信端末に、近年の携帯電話機のようにGPSによる位置検知機能を備えて、避難者の位置を親局通信装置において把握できるように構成しても良いが、建築物内ではGPS人工衛星からの電波が届きにくいので、施設内の要所に、位置を示す符号を含む微弱電波や超音波、赤外線等を発するサインポストを設け、それらの信号を通信端末が受信し、その位置情報を含んだ信号を自動的に親局通信装置に送信するような仕組みであっても良い。
【0025】
また、移動通信端末が親局通信装置のデータ記憶部から必要な情報を受取る際にも幾つかの方法を設定することができる。一つは、移動通信端末が必要に応じて親局通信装置アクセスして、データをダウンロードして、表示部に出力する方法(pull)、他の方法は、親局通信装置側から必要な移動通信端末あるいは、全ての移動通信端末に対し、所要のデータを送信する方法(push)である。更に、移動通信端末から他の移動通信端末に対してデータを送信する方法も可能である。
本発明は上述したホテル内通信システム以外にも、色々の施設内の通信システムとして利用可能である。例えば、多数のレンタルルームを擁するカラオケルーム、レンタル会議室、イベント会場のレンタル施設、旅館等の宿泊施設、各種の催し会場レンタルするレンタルイベント会場、その他複数の区画を含む施設であってもよい。
また、以上説明した構成や機能は、CPUや必要なメモリ装置を含むコンピュータを備え、メモリに、上述した制御や機能を実現する上で必要なプログラムやデータを格納することによって本発明を実施可能であることは云うまでもないであろう。更に、上述した機能を実現する処理をプログラム化し、あらかじめCD−ROM等の記録媒体に書き込んでおけば、コンピュータ、メモリを搭載した従来の通信機にインストールするのみで、本発明を実施できる場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の施設内通信システムの一例を示す概要構成図。
【図2】本発明の施設内通信システムの変形例を示す概要構成図。
【図3】本発明において使用する移動通信端末の構成例を示すブロック図。
【図4】本発明における親局通信装置として利用する中継機能を備えた通信端末の構成例を示すブロック図。
【図5】本発明において使用する中継機能を備えた親局通信装置の構成例を示すブロック図。
【図6】従来の施設内通信システムの例を示す概要構成図であり、(a)は親局通信装置と移動通信端末との通信を説明する図、(b)は複数の移動通信端末とが親局通信装置との通信を説明する図。
【符号の説明】
【0027】
1 親局通信装置、2、5 移動通信端末、3 データ収集用通信端末、4 レピータ装置(レピータ機能を備えた親局通信装置)、10、20 マイクロホン、11、21 送信部(送信機)、12、22 スピーカ、13、23 受信部(受信機)、14、24 アンテナ、15、25 制御部、16、データ記憶部、17、26 入力部、18、27 表示部、30 通信端末、31 データ収集用制御部、32 センサ情報入力部、33 電気製品センサ、34 電灯点灯センサ、35 窓・ドア開閉センサ、36 火災センサ、37 水道センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の移動通信端末と、これらの移動通信端末と通信可能な少なくとも一つの親局通信装置と、施設内要所に配置するデータ収集用通信端末を含み、前記移動通信端末は前記親局通信装置を介して他の移動通信端末と通信が可能であり、その通信内容が、通信当事者以外の他の移動通信端末において傍受信可能なように構成されたデジタル方式の施設内無線システムにおいて、
前記移動通信端末は、表示器、入力部、マイクロホン、スピーカ、送信部、受信部、データ送受信機能を有する制御部を含み、
前記親局通信装置は、表示器、入力部、マイクロホン、スピーカ、送信部、受信部、データ送受信機能を有する制御部、データ記憶部を含み、
前記データ収集用通信端末は、施設内の各種センサ出力情報入力手段、入力されたデータを前記親局通信装置に送信する制御部を含み、
前記親局通信装置が収集した各種データを、前記移動通信端末に送信し、且つ、移動通信端末から前記親局通信装置にアクセスしてデータを読み出すとともに、そのデータを表示するように構成したことを特徴とする施設内無線システム。
【請求項2】
前記施設が宿泊施設、ホテル、レンタル会議室、レンタルカラオケルーム、レンタルイベント会場の何れか一つであって、前記親局通信装置のデータ記憶部は、客室、レンタル会議室、レンタル会議室、レンタルイベント会場の使用状況情報を記憶しておく領域を含むとともに、前記センサ出力情報入力手段には、各部屋の電灯点灯センサ、窓・ドア開閉センサ、火災センサ、水道使用センサ、電気製品使用センサ、ガス使用センサ、のうちの少なくとも一つのセンサからの情報が入力されるように構成したことを特徴とする請求項1記載の施設内無線システム。
【請求項3】
前記移動通信端末には、カメラ機能を含み、撮影した画像データと場所情報を前記親局通信装置に送信することができるように構成したことを特徴とする請求項1又は2記載の施設内無線システム。
【請求項4】
前記データ収集用通信端末が、非常用ボックス中に収納され、バッテリィを内蔵した無線通信機を含み、通常は外部電力が供給されて内蔵バッテリィを充電しながらデータ収集用通信端末として使用され、非常時には顧客が連絡用に使用可能であり、又は、携行して避難できるようにしたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項記載の施設内無線システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−87767(P2010−87767A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253551(P2008−253551)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】