旋光子および光ヘッド装置
【課題】入射する光の偏光状態を容易に制御できるとともに偏光状態を光の波長依存性および使用温度依存性を低減できる旋光子を提供する。
【解決手段】透明基板11a、11b上にそれぞれ配向膜13a、13bを配し、90°ツイストしたネマティック液晶または高分子液晶からなる液晶層14で構成される。ネマティック液晶からなる旋光子10bは、それぞれ透明電極12a、12bを配し液晶分子の配向方向を切り替えることができる。例えば、液晶層14の厚さは入射する光の波長λ1の2次モーガンミニマム条件となる厚さと、波長λ2(λ1<λ2)の1次モーガンミニマム条件となる厚さとの中間値より大きい値に設定する。
【解決手段】透明基板11a、11b上にそれぞれ配向膜13a、13bを配し、90°ツイストしたネマティック液晶または高分子液晶からなる液晶層14で構成される。ネマティック液晶からなる旋光子10bは、それぞれ透明電極12a、12bを配し液晶分子の配向方向を切り替えることができる。例えば、液晶層14の厚さは入射する光の波長λ1の2次モーガンミニマム条件となる厚さと、波長λ2(λ1<λ2)の1次モーガンミニマム条件となる厚さとの中間値より大きい値に設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば光ストレージ、光通信、光イメージングなどの光学系において入射する直線偏光を旋光して出射するとともに、印加する電圧を制御することによって出射する光の偏光状態を制御することができる旋光子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ヘッド装置は、CD、DVD、光磁気ディスクだけでなく、「Blu−ray」(登録商標:以下BD)、HD−DVDなどの高密度光記録媒体(以下、「光ディスク」という)に対応した技術が開発されている。とくに、BDやHD−DVDとDVD、CDに対応した光ヘッド装置においては、青色レーザと赤色レーザ、近赤外レーザの3つの波長に対して、異なる性能を有する光学部品や、これら3つの波長で波長依存性が少なく同等の性能を有する光学部品などが適宜組み合わされている。その中で、これら3つの波長の偏光状態を等しく偏光変換するような機能も求められる。例えば、各々の光源から出射された光の直線偏光方向が、偏光ビームスプリッタの直進透過方向となる軸に直交している場合においては、3つの波長の直線偏光が偏光ビームスプリッタの直進透過方向となる軸に平行になるよう偏光方向を90°旋光させるように、多波長に対して機能する旋光子(多波長旋光子)が必要である。
【0003】
このように3つの異なる波長で入射する光を直交した偏光状態に変換する多波長旋光子として例えば特許文献1に記載の偏光変換子が提案されている。この偏光変換子を、3つの異なる波長の光が共通する光路中に配置することで、いずれの波長の光も入射光に対して90°変換させて出射させることができる。また、偏光変換子を光ヘッド装置に用いることで少ない部品点数で効率よく偏光状態の変換を実現している。
【0004】
【特許文献1】特開2007−304572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の偏光変換子は、入射する光の波長のばらつきによって変換効率が変化しやすい特性を有している。例えば、光源となる半導体レーザの発振波長のばらつきがあったり、異なる使用温度よって半導体レーザの発振波長に変化が発生したりすると、変換効率が低下するため、入射する光の波長を精度よく制御しなければならないという問題があった。さらに、光ヘッド装置に偏光変換子を適用した場合、偏光変換機能は固定的であるため、状況に応じて偏光変換機能を切り替えることは困難であるという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、平行に配置された一対の透明基板と、一対の前記透明基板の対向する空間を液晶で充填した液晶層を備え、少なくとも波長λ1と、前記波長λ1よりも大きい波長λ2の直線偏光となる光が入射する旋光子であって、前記液晶は、ネマティック液晶または高分子液晶からなり、前記液晶が前記液晶層の厚さ方向にらせん状に捩れているツイスト配向状態において、常温における前記波長λ2の1次モーガンミニマム条件となる厚さdλ21が前記波長λ1のn次モーガンミニマム条件となる厚さdλ1n以上でかつ、前記波長λ1の(n+1)次モーガンミニマム条件となる厚さdλ1(n+1)未満であるとき(nは自然数)、前記液晶層の厚さは、下記(A)または(B)
(A)前記厚さdλ21が(dλ1n+dλ1(n+1))/2以上であるとき、dλ21より大きい値、
(B)前記厚さdλ21が(dλ1n+dλ1(n+1))/2未満であるとき、dλ1nより大きい値、を満たす旋光子を提供する。
【0007】
また、前記液晶層に電圧を印加する透明電極を備え、前記液晶層に印加する電圧によって、前記ツイスト配向状態と、前記液晶が前記液晶層の厚さ方向に揃う垂直配向状態と、を切り替えることができる上記に記載の旋光子を提供する。また、前記液晶層の厚さは、前記厚さdλ21が(dλ1n+dλ1(n+1))/2以上であるとき前記厚さdλ21と前記厚さdλ1(n+1)との中間値より大きい値であり、前記厚さdλ21が(dλ1n+dλ1(n+1))/2未満であるとき前記厚さdλ1nと前記厚さdλ21との中間値より大きい値である上記に記載の旋光子を提供する。
【0008】
この構成により、異なる2以上の波長で入射する直線偏光に対して直交する直線偏光に変換するなど特定の偏光状態を発現させるときに、波長依存性および使用温度依存性による出射偏光状態の変化を低減させることができる。また、電圧制御によるアクティブ型の旋光子とすることで、容易に入射光の偏光状態を変えて出射させたり、偏光状態を変えないで出射させたりすることができる。これを利用して、例えばこの旋光子を、3つの異なる波長の光を利用する光ヘッド装置に用いた場合、安定した光ディスクへの情報の記録および/または再生(以下、「記録・再生」という)ができ、光ヘッド装置の品質が向上する。さらに、電圧制御によって光の偏光状態を制御することで光の進行方向を切り替える光ヘッド装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、広帯域に渡って波長の異なる複数の光の偏光状態を効率よく変換することができるとともに、変換状態と無変換状態とを容易に切り替えることができ、さらに温度変化に対しても変換効率の変動が少ない旋光子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(第1の実施の形態)
図1(a)および図1(b)は、それぞれ本実施の形態に係る旋光子10aおよび10bの概念的な構成を示す図である。旋光子10aは、透明基板11a、11b上に配向膜13a、13bを積層した基板と、その基板によって液晶を挟持した液晶層14とで構成される。また、旋光子10bは、透明基板11a、11b上にそれぞれ透明電極12a、12bを積層し、さらに配向膜13a、13bを積層した基板と、その基板によって液晶を挟持した液晶層14とで構成される、アクティブ型の旋光子である。そして、透明電極12a、12b間は図示しない電気配線によって電圧制御装置に接続されている。ここで、透明電極12a、12bを配さない旋光子10aは、旋光子10bの電圧非印加時と同じ特性を有するものであり、旋光子10bの電圧非印加時の機能の説明によって旋光子10aの機能の説明を代替するものとする。また、旋光子10bにおいて電圧非印加時には、図1(b)のように配向膜13aと接する面の液晶分子はX方向に配向され、配向膜13bと接する面の液晶分子はY方向に配向されており、液晶層14の厚さ方向(Z方向)に液晶分子の長軸方向が捩れて分布している。
【0011】
透明基板は入射する光に対して透明であれば、樹脂など種々の材料を用いることができるが、ガラスや石英ガラスなどの光学的等方性材料を用いると、透過光に複屈折性の影響を与えないため好ましい。透明電極としては、ITO(酸化錫ドープ酸化インジウム)膜、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)膜、GZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)膜などの酸化物透明導電膜が高い透明性と導電率とが得られるため好ましく用いられる。配向膜はポリイミド膜をラビングして形成してもよいし、SiOなどの無機材料を斜方蒸着して形成してもよい。
【0012】
液晶層14は、液晶分子15aの配向方向が電圧非印加時に厚さ方向に例えば、90°らせん状に捩れているツイストネマティック液晶セル(以下TN液晶セルという)からなる。このTN液晶セルに入射する光は、いずれもZ方向に進行するものとして説明する。例えば、上記TN液晶セルのようにX方向に振動する直線偏光が入射して、Y方向(入射方向と直交する方向)で出射する偏光変換に関しては、以下のジョーンズ行列を用いて考えることができる。なお、液晶分子の厚さ方向の捩れ角(以下、ツイスト角)は90°に限らず、異なる角度であってもジョーンズ行列の関係は成立する。
【0013】
TN液晶セル内の液晶の常光屈折率をno、異常光屈折率をne、屈折率異方性をΔn(=|ne−no|)、ツイスト角をΦt、TN液晶セルの厚さをd、光が入射する側の基板面上の液晶ダイレクタの角度(以下、プレツイスト角)をΨi、入射する光の波長をλとすると、TN液晶セルのジョーンズ行列WTNは、式(1)のように表される。
【0014】
【数1】
【0015】
なお、R(Ψ)は回転行列を表し、式(2)のようになる。
【0016】
【数2】
【0017】
ここでsinθ=0、すなわち式(3)が成立するときのmを、m次のモーガンの極限(モーガンミニマム条件)という。
【0018】
【数3】
【0019】
式(3)のモーガンの極限を満足するときの式(1)のJTNは、式(4)で表され、TN液晶セルは、ツイスト角Φtの旋光子として機能する。
【0020】
【数4】
【0021】
ここで、TN液晶セルのプレツイスト角Ψi=0°、ツイスト角Φt=90°として、0°の直線偏光を入射したとき、入射光の偏光方向と直交する偏光方向(90°)成分に変換される割合を偏光変換効率Iとして定義すると、式(5)のように表される。
【0022】
【数5】
【0023】
このように式(3)のモーガンミニマム条件を満たすTN液晶セルの厚さdは、入射する光の波長λによって異なり、任意の波長の光が入射して全て同じ旋光機能を有する旋光子は存在しない。さらに、液晶の屈折率は使用温度によって変化するため、広い温度範囲で一定の旋光機能を有する旋光子の実現には制限があるが、本実施形態の旋光子は、液晶層14の厚さを調整することによって、2つ以上の異なる波長に対して同じ旋光特性を発現させることができる。
【0024】
ここで、異なる2つの入射光の波長を具体的にλ1=405nm、λ2=660nm(λ1<λ2)として説明する。設計手法として、式(3)のモーガンミニマム条件において、波長λ1に対してm=2のモーガンの極限(以降、2次モーガンミニマム条件という)となる液晶層の厚さ(=dλ12)を考える。なお、厚さの表記(例えばdλ12)の‘λ’に続く2つの数字は、左から順に、入射する光の波長λ1、波長λ2、…のように波長に示される数字、m次モーガンミニマム条件のmに相当する数字、で表すものとする。
【0025】
次に、波長λ2に対してm=1のモーガンの極限(以降、1次モーガンミニマム条件という)となる液晶層の厚さ(=dλ21)を考える。また、図2(a)に旋光子10bの電圧非印加時の斜視図を示すが、この図のように透明基板11a、11b間で液晶分子15aがツイスト角Φt=90°で分布している。ここで、透明基板11a側からZ方向に進行するX方向の直線偏光が入射する場合において、液晶層の厚さを変化させたときの偏光変換効率の一例を図2(b)に示す。ここでは、偏光変換効率は、入射光の偏光方向と直交する、つまりX方向からY方向の直線偏光へ変換されて出射される割合を意味する。
【0026】
図2(b)のようにモーガンミニマム条件を満たす液晶層の厚さの条件において、偏光変換効率が最も高くなる。例えば、405nmの光が入射する場合、それぞれ液晶層の厚さが約3.7μmで1次モーガンミニマム条件、約8.3μmが2次モーガンミニマム条件となる。また、入射光の偏光状態が同一で波長が異なる場合、波長が長くなるにつれて、1次モーガンミニマム条件となる液晶層の厚さも大きい値をとる。なお、λ3として780nmの波長(λ1<λ2<λ3)の光が入射した場合もλ1、λ2に対して1次モーガンミニマム条件となる液晶層の厚さは大きい。したがって、少なくともλ1とλ2の波長の光が入射する場合、両方の波長の光の偏光変換効率を高くするためには、λ2の1次モーガンミニマム条件を満たす液晶層の厚さ以上であればよい。
【0027】
次に、温度変化による偏光変換効率の変化について説明する。通常、液晶は温度上昇とともに、屈折率異方性Δnが小さくなる傾向がある。式(3)より、Δnが小さくなると、モーガンミニマム条件を満足するにはTN液晶セル厚さdを大きくする必要がある。例として、405nmの光を入射させて温度条件のみ変化させた場合の液晶層の厚さに対する偏光変換効率の変化を図3に示す。これにより、温度が高くなることによって1次、2次モーガンミニマム条件を満たす液晶層の厚さが大きくなるため、広い温度範囲の条件において高い偏光変換効率を維持するためには、この特性を考慮する必要がある。
【0028】
このように、異なる2つ以上の波長の光が入射し、さらに広い使用温度範囲が要求される旋光子を実現するためには、次のように液晶層の厚さを設定するとよい。常温において、λ2における1次モーガンミニマム条件となる厚さdλ21が、例えばλ1における1次モーガンミニマム条件dλ11と、λ1における2次モーガンミニマム条件dλ12との間にあり、dλ21が(dλ11+dλ12)/2以上である場合を考える。このときdλ12が、dλ21とdλ12中間となる値、(dλ21+dλ12)/2よりも大きいと、少なくともλ1およびλ2の波長の入射光に対して高い偏光変換効率を得ることができる。なお、ここでいう常温とは、20〜30°の間の温度とする。また、液晶層の厚さをさらに厚く設定してもよいが、電圧印加時の応答速度が厚さの2乗に比例して遅くなったり、光の吸収によって透過光量が低減したりするので、上記条件を満足するとともに、できるだけ薄い液晶層の厚さであることがより好ましい。また、厚さの上限は、下限+4μm程度であってこの範囲の厚さに設定すると好ましい。
【0029】
また、入射する異なる2つの波長の光として波長λ1と波長λ2を上記の例ではそれぞれ405nmと660nmとして説明したがこれに限らない。波長λ1と波長λ2の組み合わせにより、図4(a)または図4(b)のように、波長λ2の1次モーガンミニマム条件となる厚さdλ21が、波長λ1の2次モーガンミニマム条件となる厚さdλ12より大きい値となることもある。次に、これらを考慮して、高い偏光変換効率が得られる液晶層の厚さの下限を一般化して説明する。なお、図4(a)および図4(b)の実線はλ1の特性、点線はλ2特性を示すとともに、いずれも使用温度は常温とする。
【0030】
図4(a)は、厚さdλ21が、波長λ1の2次モーガンミニマム条件となる厚さdλ12と波長λ1の3次モーガンミニマム条件となる厚さdλ13の間にあり、さらに、dλ21≧(dλ12+dλ13)/2となる特性を示したグラフである。このときの液晶層の厚さの下限は、dλ21より大きい値であれば好ましく、温度変化を考慮して(dλ21+dλ13)/2より大きい値であればより好ましい。
【0031】
図4(b)は、厚さdλ21が、波長λ1の2次モーガンミニマム条件となる厚さdλ12と波長λ1の3次モーガンミニマム条件となる厚さdλ13の間にあり、さらに、dλ21<(dλ12+dλ13))/2となる特性を示したグラフである。このときの液晶層の厚さの下限は、dλ12より大きい値であれば好ましく、温度変化を考慮して(dλ12+dλ21)/2より大きい値であればより好ましい。
【0032】
また、波長λ1と波長λ2の組み合わせにより、これらを一般的に表して、厚さdλ21が、波長λ1のn次モーガンミニマム条件となる厚さdλ1nと波長λ1の(n+1)次モーガンミニマム条件となる厚さdλ1(n+1)の間にあり(nは自然数)、さらに、dλ21≧(dλ1n+dλ1(n+1))/2となる場合を考える。このときの液晶層の厚さの下限は、dλ21より大きい値であれば好ましく、温度変化を考慮して(dλ21+dλ1(n+1))/2より大きい値であればより好ましい。同様に、厚さdλ21が、波長λ1のn次モーガンミニマム条件となる厚さdλ1nと波長λ1の(n+1)次モーガンミニマム条件となる厚さdλ1(n+1)の間にあり、さらに、dλ21<(dλ1n+dλ1(n+1))/2となる場合を考える。このときの液晶層の厚さの下限は、dλ1nより大きい値であれば好ましく、温度変化を考慮して(dλ1n+dλ21)/2より大きい値であればより好ましい。
【0033】
これまでは、図2(a)に示すように、透明基板11a側の液晶分子の配向方向と同じ方向の直線偏光が入射するものとして説明したが、これに限らない。本実施形態に係る旋光子10aおよび10b(電圧非印加時)に直線偏光が入射する場合、液晶層の厚さを調整することによって入射光の直線偏光がいずれの方向であっても入射光の偏光方向に対して約90°旋光した直線偏光となって出射する。
【0034】
例として図5は、波長405nmの直線偏光が旋光子10bに入射するとき、入射する直線偏光の方向に対する偏光変換効率を示すものである。つまり、図2(a)の旋光子11bの透明基板11a側の液晶分子の配向方向(X方向)とは異なる方向の直線偏光が入射するときの偏光変換効率を示す。このとき、X方向の直線偏光を0°として反時計回り方向をプラス(+)方向、時計回りをマイナス(−)方向と定義する。これを踏まえ、図5の実線は、90°方向つまりY方向の直線偏光で入射してX方向(180°)の直線偏光となる偏光変換効率、図5の点線は、45°方向の直線偏光が入射して135°方向の直線偏光となって出射するときの偏光変換効率を示すものである。なお、図2(b)は、いずれの波長もX方向(0°)の直線偏光で入射したときY方向(90°)となる偏光変換効率を示すものである。また、図示しないが、このほかの偏光方向で入射する光はいずれも図5の実線と点線の特性の間を取る。これより、液晶層の厚さがm次のモーガン極限付近(mは自然数)では偏光方向に依存せず高い偏光変換効率を得ることができ、透明基板11a側の液晶分子の配向方向と平行または直交する直線偏光の方向で入射させると、液晶層の厚さのばらつきによる偏光変換効率の変化が少なくより好ましい。
【0035】
また、液晶層に電圧を印加すると、液晶分子は透明基板面に対して略垂直方向(Z方向)に配向される。このとき、Z方向で入射する光は、偏光状態を変えずにそのまま出射する。したがって、液晶層に印加する電圧を制御することによって広帯域に渡って入射する光に対して偏光状態を容易に変化させることができる。
【0036】
(第2の実施の形態)
次に、第1の実施の形態に比べてより偏光変換効率を高くする効果を実現する形態を以下に説明する。図6は、本実施の形態に係る旋光子20a、20bの概念的な構成を示す断面模式図である。図6(a)に示す旋光子20aは、旋光子10に波長板22を積層したものであり、図6(b)に示す旋光子20bは、旋光子10に波長板24aおよび24bを両面にそれぞれ積層したものである。また、図6(a)および図6(b)において第1の実施形態と同じ部分は同一の番号を付して説明の重複を避ける。図6(a)は、Z軸に平行に透明基板21a側から光が入射する場合、光の入射側に2枚の波長板22a、22bを積層している。なお、波長板の配置は光の入射側に限らず、光の出射側に積層してもよく、波長板の枚数は2枚に限らず、1枚であっても3枚以上であってもよい。
【0037】
図7(a)および図7(b)は、波長板22を積層した旋光子20aの斜視図であって、いずれもZ方向に進行するX方向の直線偏光が入射する場合において、それぞれ、電圧非印加時、電圧印加時の光の変調の様子を示すものである。また、図7(c)は、波長板22a、22bを示す斜視図であり、矢印の方向は光学軸(進相軸または遅相軸)となる方向を示すものである。このように波長板22は、2枚の波長板22a、22bが積層されており、いずれの波長板とも光学軸はX方向(Y方向)からずれた角度となるように設置されている。
【0038】
以下に、積層する波長板の具体的な設計手法について説明する。以下の説明では、波長板22より直線偏光が入射し、基板11bから出射するものとするが、光の相反性の性質から基板11bから入射し波長板22から出射するとしても同様の原理が成立する。入射する光の波長λと温度Tの関数となる波長板22aのジョーンズ行列をA(λ,T)、波長板22bのジョーンズ行列をB(λ,T)とする。ここで波長板のジョーンズ行列WPは、波長板の遅相軸方位をΨWP、波長板の屈折率異方性をΔnWP、波長板の厚さをdWPとすると、式(6)のように表すことができる。
【0039】
【数6】
【0040】
また、液晶層のジョーンズ行列もλおよびTに依存するので、これをWTN(λ,T)とすると、この構成からなる旋光子のジョーンズ行列は、WTN(λ,T)×B(λ,T)×A(λ,T)となる。そこで、B(λ,T)×A(λ,T)は、WTN(λ,T)の入射波長依存性と温度依存性による変化を打ち消すようにする。つまり、入射する光の偏光状態、出射する光の偏光状態を僅かに変化させることで、入射波長および温度によって変化する偏光変換効率を小さくするように調整できるものである。
【0041】
例えば、以下のように設計することで、偏光変換効率の波長依存性、温度依存性を小さくすることができる。異なる2つの入射光の波長を具体的にλ1=405nm、λ2=660nmとして説明する。まず、液晶層の厚さは第1の実施の形態のものよりわずかに厚くし、波長λ1の2次モーガンミニマム条件となる厚さdλ12付近とする。これにより、図2(b)に示すように波長λ1の光に対して、液晶層単体での偏光変換効率を100%に近い値で設定することができる。一方で、厚さdλ12付近であると、波長λ2の光に対して、液晶層の波長依存性により偏光変換効率が低下するが、Y方向の直線偏光となって出射するように波長板22を積層して補正するものである。例えば、波長板22が厚さ方向に光学軸が揃った1枚の波長板で構成する場合、波長λ1の光に対してλ板として機能させるようにする。つまり、波長板22は、入射する光と出射する光とで偏光状態が大きく変わらないように、360°・Δn・d/λ1で表される位相差が360°×m(mは自然数)付近になるように、Δn(屈折率異方性)、d(厚さ)を設計するとよい。これより、波長板22を透過しても、λ1の偏光状態がほぼ変化せず、液晶層のみで偏光状態が変換される。
【0042】
また、図7(c)に示すように波長板22が2枚の波長板22a、22bが積層されてなる場合、2枚の波長板のリタデーション値(Δn・d)、遅相軸(進相軸)と入射光の偏光方向とがなす角度(0°、90°ではない値)をそれぞれ調整する。つまり2枚の波長板に入射する波長λ2の光に対して、液晶層の波長依存性による偏光変換効率の低下を補正するとともに、波長λ1の光に対して偏光状態を変えないように上記の条件を設定するとよい。
【0043】
図6(b)に示す旋光子20bについても同様の手法で設計できる。波長板24aのジョーンズ行列をC(λ、T)、波長板24bのジョーンズ行列をD(λ、T)、液晶層のジョーン行列をWTN(λ,T)とすると、20b構成のジョーンズ行列は、D(λ、T)×WTN(λ,T)×C(λ、T)となる。そこで、入射偏光状態をC(λ、T)にて、出射偏光状態をD(λ、T)にてわずかに変化させることにより、WTN(λ,T)の波長依存性と温度依存性を打ち消すように補正する。これにより、偏光変換効率の波長依存性、温度依存性を小さくすることができる。
【0044】
(第3の実施の形態)
第3の実施形態では、さらに温度依存性を小さくする効果が実現する、高分子液晶からなる層を有する旋光子の構成について説明する。図8は、本実施の形態に係る旋光子30の構成を示す断面模式図である。旋光子30は、第1の実施の形態の旋光子10bに、高分子液晶が厚さ方向に90°ツイストしてなるTN型高分子液晶層32を積層した構成になっている。なお、図8では省略しているが、製造の過程で用いられることがある図示しない配向膜がTN型高分子液晶層32を挟持するように施されていてもよい。また、電圧非印加時の液晶層14を構成する液晶(ネマティック液晶)および、TN型高分子液晶層32の高分子液晶はそれぞれ厚さ方向に約90°捩れて配向されている。また、旋光子30において光はZ軸と平行に透明基板11b側からであっても透明基板31側からであってもよい。
【0045】
また、90°ツイストした液晶を利用して入射する光を旋光させる場合、ネマティック液晶に比べて高分子液晶で構成されていれば、その材料特性から使用温度変化に対する偏光変換効率の変化で表す温度依存性が小さく、安定した特性を示すという特徴がある。これより、入射する光を90°旋光させる機能を高分子液晶で実現することによって温度依存性が小さい旋光子を実現することができる。図8の旋光子30の構成では、液晶層14に対して電圧印加時は、液晶層14を透過する光は偏光状態を変えず、TN型高分子液晶層32で90°旋光される。
【0046】
一方、液晶層14に対して電圧非印加時は、TN型高分子液晶層32で90°旋光された光が液晶層14で再び90°旋光されるので、入射する光の偏光状態となって旋光子30を透過する。ここで、液晶層14の液晶分子のツイスト方向とTN型高分子液晶層32の液晶分子のツイスト方向は互いに逆になる方向であっても、同一となる方向であってもよい。なお、液晶層14およびTN型高分子液晶32のプレツイスト方向(入射光の偏光方向に対する層の入射側の液晶分子の配向方向)はX−Y平面において、互いに略平行または略直交の関係であればよい。
【0047】
また、上記の構成としてとくに、液晶層14の液晶分子のツイスト方向とTN型高分子液晶層32の液晶分子ツイスト方向が互いに逆になるように旋光子30が構成されているとともに、プレツイスト角が略平行な関係にあるとき、図示しないポワンカレ球上でTN型高分子液晶層32での偏光状態の変化を辿る経路と液晶層14での偏光状態を辿る経路が互いに逆向きでほぼ一致し、出射する光の偏光状態は、入射する光の偏光状態の位置に復帰するので、とくに好ましい。
【0048】
次いで、入射する光の偏光状態の変化について具体的に説明する。図9は、TN型高分子液晶層32を積層した旋光子30の斜視図であって、いずれもZ方向に進行するX方向の直線偏光が入射する場合において、それぞれ、電圧非印加時、電圧印加時の光の変調の様子を示すものである。図9(a)に示す電圧非印加時では、TN型高分子液晶層32で旋光してY方向の直線偏光となるが、液晶層14で旋光してX方向の直線偏光となる。また、図9(b)に示す電圧印加時では、TN型高分子液晶層32で旋光してY方向の直線偏光となり、液晶層14では偏光状態が変化せずにY方向の直線偏光のまま透過する。このように、第1の実施形態および第2の実施形態に係る旋光子に対して、電圧の印加時と非印加時とで出射する光の偏光状態は逆になる。また、本実施形態の旋光子30に第2の実施形態のように波長板を積層して、波長依存性および温度依存性をさらに安定化させる構成としてもよい。
【0049】
(第4の実施の形態)
本実施形態は、旋光子を具備した光ヘッド装置であり、図10に模式図を示す。光ヘッド装置50は、BDまたはHD−DVD、DVDおよびCDをそれぞれ再生・記録できるものである。なお、BDまたはHD−DVDの高密度光記録媒体は405nm波長帯(385〜420nm)、DVDは660nm波長帯(640〜675nm)、CDは780nm波長帯(770〜800nm)のレーザ光を用いる。
【0050】
なお、光ヘッド装置50は、これら3つの異なる波長のレーザ光を単一の偏光ビームスプリッタ、単一の1/4波長板および単一の対物レンズを用いて実現する構成にしようとすると、部品点数が少なくなることが期待できる。しかし、これら広帯域にわたるレーザ光すべてに対して偏光状態を制御したり高い光利用効率を実現したりしようとすることが困難である。また、3つの波長に対してそれぞれ個別に偏光ビームスプリッタ、1/4波長板および対物レンズを設けると、偏光状態の制御性および高い利用効率を得ることが可能となるが、部品点数が多くなるため小型化が困難である。本実施形態は、後述するように3つのレーザ光を2つの光路に分離して、偏光状態の制御、高い光利用効率および小型化を実現できる例を示すものである。なお、上記3つの異なる波長をすべて同じ光路であって対物レンズを共有すると、開口数の違いなどからこれら全ての波長の光に対して有効な集光特性が得られないため、405nm波長帯の光路と、660nm波長帯と780nm波長帯とを共有する光路と、の2つに分離してそれぞれに対物レンズを配置する光学系が考えられる。
【0051】
光源41は、2種類または3種類の波長の直線偏光を出射する構成としてもよい。かかる構成の光源としては、2個または3個の半導体レーザチップが同一基板上にマウントされた、所謂ハイブリッド型の2波長レーザ光源または3波長レーザ光源や、互いに異なる波長の光を出射する2個または3個の発光点を有するモノリシック型の2波長レーザ光源または3波長レーザ光源でもよい。ここで、光源から発射する光はいずれもZ軸方向に進行し、X軸方向の直線偏光として説明する。
【0052】
光源41から発射された光はコリメータレンズ42で平行光となり、旋光子40に入射する。旋光子40は、第1の実施形態〜第3の実施形態で説明した旋光子10b、20a、20b、30いずれの構成のものであってもよい。ここでは、電圧非印加時で約90°旋光し、電圧印加時に偏光状態を変えない旋光子10b、20a、20bと同じ作用をするものとして説明する。
【0053】
また、光ヘッド装置50では、光ディスク47aをBDとし、光ディスク47bをHD−DVD/DVD/CDとし、これらの2つの光路が光ディスクの規格ごと異なるものとする。まず、BD(光ディスク47a)を記録・再生するときは、旋光子40に対して電圧を印加して405nm波長帯の入射光の偏光状態を変えないようにする。また、このときの光路を実線で示し、光源41から光ディスク(BD)47aに到達するまでの光路を往路51aとし、光ディスク47aから光検出器48に到達するまでの光路を復路51bとして示す。
【0054】
光ディスク47bとなるHD−DVD/DVD/CDを記録・再生するときは、旋光子40に対して電圧を印加せず、405nm波長帯、660nm波長帯および780nm波長帯の入射光の偏光状態を90°旋光させて出射する。また、このときの光路を点線で示し、光源41から光ディスク47bに到達するまでの光路を往路52aとし、光ディスク47bから光検出器48に到達するまでの光路を復路52bとして示す。
【0055】
図10において、X方向の直線偏光となる405nm波長帯の光でBDを記録・再生する場合、偏光状態を変えずに旋光子40を透過し、偏光ビームスプリッタ43に入射する。偏光ビームスプリッタはX方向に振動する光を光ディスク47aの方向に偏向させ、1/4波長板45aおよび対物レンズ46aを透過し、光ディスク47aの情報記録面に集光させる。反射された復路の光51bは、対物レンズ46aおよび1/4波長板45aを透過し、Z方向の直線偏光となり、偏光ビームスプリッタ43を直進透過して光検出器48に到達する。
【0056】
一方、X方向の直線偏光で出射する各波長帯の光がHD−DVD/DVD/CDを記録・再生するときは、旋光子40に入射する光は、偏光状態を約90°変えてY方向の直線偏光となって出射するので、偏光ビームスプリッタ43を直進透過する。偏光ビームスプリッタ43を透過した光はミラー44によって光ディスク47bの方向に反射し、(広帯域)1/4波長板45bおよび対物レンズ46bを透過し、光ディスク47bの情報記録面に集光させる。反射された光は、対物レンズ46bおよび(広帯域)1/4波長板45bを透過し、ミラーによって偏光ビームスプリッタ43の方向へ進行する。この復路の光は、偏光ビームスプリッタ43反射されて光検出器48へ到達する。
【0057】
このように、3つの異なる波長のレーザ光を使用する光ヘッド装置において本発明の旋光子を用いることで、規格の異なる各光ディスクに到達するまでの往路の光の偏光状態を制御でき、部品点数の削減および小型化が可能で設計自由度が高い光ヘッド装置を実現できる。なお、本実施の形態の光ヘッド装置の構成は一つの例であって、光学部品の位置はこれに限らない。また、旋光子40としては、第3の実施の形態に係る旋光子30を用いて電圧印加/電圧非印加による偏光状態の切り替えを逆とし、さらに波長依存性、温度依存性の少ない安定した特性を得るものであってもよい。
【0058】
(実施例1)
第1の実施形態に係る図1の旋光子10bの作製方法を説明する。まず、透明基板11a、11bとして石英ガラス基板を用いる。石英ガラス基板上にITOをスパッタリング法でシート抵抗値が300Ω/□程度となる膜厚まで堆積して透明電極12a、12bを形成する。成膜した透明電極12a、12b上にポリイミドを塗布、焼成した後、一方向にそれぞれラビング処理を施して配向膜13a、13bを形成する。一方の基板の表面に周縁部に図示しないエポキシ樹脂等のシール材を環状に塗布する。シール材には、直径約8.1μmのスペーサと、電圧印加のための導電経路となる導電性微粒子を予め混ぜる。透明基板11a、11bは、互いのラビング方向が直交するように配向膜13a、13bが対向するように重ね合せた後、熱圧着によりシール材を固化して、前記スペーサと同じ空隙を有するセルを形成する。
【0059】
この空隙に図示しない注入口から405nmの波長の光において25℃における常光屈折率(no)が1.510、異常光屈折率(ne)が1.605となる液晶を注入して充填し、旋光子10bとする。図2(b)は、上記特性を有する液晶が充填された液晶層の厚さを変化させた場合の電圧非印加時の旋光子10bの光学特性を示しており、このときの液晶層14の厚さ8.1μmは、図2(b)の特性より、波長405nmの光における2次モーガンの極限の厚さ8.3μmと、波長660nmの光における1次モーガンミニマム条件の厚さ6.4μmとの中間値7.35μmより大きい値になるよう設定されている。
【0060】
次に、それぞれ405nm、660nm、780nmの光に対して温度範囲を−10℃、25℃、70℃と変化させ、液晶層に対して電圧非印加時における偏光変換効率を図11に示す。なお、偏光変換効率は、図1においてX方向の直線偏光であるP偏光がS偏光(Y方向の直線偏光)に変換される割合である。使用温度が大きく変化しても偏光変換効率Iは、いずれの波長、いずれの温度においても90%以上の高い値となる。また、液晶層間に9Vrmsの交流電圧を印加したとき(電圧印加時)は、P偏光で入射した光はほぼ100%P偏光のまま出射され、S偏光はほぼ0%である。
【0061】
(比較例1)
比較例1として、実施例1に記載の旋光子10bの構成のうち、液晶層14の厚さを405nmの波長の光および25℃における1次モーガンミニマム条件の厚さである3.75μmとした以外は同じ構成のものとする。この旋光子の特性を図12に示す。これより、405nmにおける偏光変換効率は温度変化に対して100%に近い値を示すものの、660nmでは80%以下、780nmでは60%以下となり、異なる波長の光および温度変化に対してまでも高い値を得ることはできない。
【0062】
(実施例2)
本発明の第2の実施形態に係る図6(a)の旋光子20aの作製方法を説明するが、このうち旋光子10は、実施例1と同じ材料および同じ製造方法であり、液晶層14のツイスト角は90°であるが、液晶層の厚さは8.7μmとする。波長板22aの作製方法は、まず、石英ガラス基板21aに、図示しないポリイミドを成膜し、ラビングにより水平配向膜を形成し、配向膜上に直径8.8μmのスペーサを散布する。その後、図示しない水平配向の石英ガラス基板を石英ガラス基板21a側の配向方向と平行になるように対向させ、8.8μmの一定の空隙にUV硬化性の液晶性モノマー組成物を注入し、UV光を照射して液晶を固化させる。図示しないガラス基板を離型除去することによって高分子液晶からなる波長板22aを作製する。
【0063】
同様の方法で、石英ガラス基板21b上に厚さ2μmの高分子液晶による波長板22bを作製し、図示しない接着剤によって波長板22aと波長板22bとを接着させ、さらに石英ガラス基板11aと石英ガラス基板21bとを接着させて旋光子20aとする。また、図6(b)の波長板24aおよび24bも同様の方法を用いるとともに石英ガラス基板11aと石英ガラス基板11bの面に図示しない接着剤で接着させて旋光子20bを作製する。なお、このとき、常温(25℃)における高分子液晶の405nmの光に対する常光屈折率(no)は1.544、異常光屈折率(ne)が1.589である。
【0064】
図7(c)において、入射する光の偏光方向と一致するX方向を基準として反時計回り方向をプラス(+)方向、時計回りをマイナス(−)方向と定義する。なお、電圧非印加時の液晶層14は図7(a)に示しように、光の進行方向に向かって0°から+90°にツイストして配向されている。そして、波長板22aの遅相軸は、+93°方向、波長板22bの遅相軸は89°方向となるような方向で重ねて旋光子20aを構成する。
【0065】
ここで、405nmの光が入射するとき、波長板22aの常温時(25℃)のリタデーション値(360°・Δn・d/λ)は、約352°である。また、波長板22bの常温時のリタデーション値は、約80°である。さらに、液晶層14は、入射光の偏光方向のX方向に対してプレツイスト角が0°であって、405nmの光が入射するとき、常温時のリタデーション値は、約735°である。この旋光子20aにP偏光をZ方向から入射するときの電圧非印加時の偏光変換効率を図13(a)に示す。この結果より、使用温度が大きく変化しても偏光変換効率Iは、いずれの波長、いずれの温度においても95%以上の高い値となり、波長板を積層することでより高い偏光変換効率で安定させることができる。
【0066】
また、液晶層間に9Vrmsの交流電圧を印加するとき(電圧印加時)は、液晶層の液晶分子の長軸方向は電界方向と平行に配向し、液晶層では入射光の偏光状態は変わらないが、積層した波長板によって偏光状態が変化する。また、この旋光子20aにP偏光をZ方向から入射するときの電圧印加時の偏光変換効率を図13(b)に示す。この結果より、使用温度が大きく変化しても偏光変換効率Iは、いずれの波長、いずれの温度においても1%以下の値に抑えることができ、ほぼP偏光のまま透過する。これらの結果より、電圧非印加/電圧印加による偏光変換効率Iの消光比を大きくすることができる。
【0067】
(実施例3)
本発明の第2の実施形態に係る図6(b)の旋光子20bの具体的な構成について説明する。このうち旋光子10は、実施例1と同じ材料および同じ製造方法であり、液晶層14のツイスト角は90°であるが、液晶層の厚さは8.2μmとする。また、波長板24a、24bは実施例2と同じ材料および同じ製造方法であるが、24aの厚さは8.5μm、X方向を基準として遅相軸は92°方向に設定する。また、24bの厚さは2.3μm、X方向を基準として遅相軸は2°方向に設定する。
【0068】
ここで、405nmの光が入射するとき、波長板24aの常温時(25℃)のリタデーション値は、約340°である。また、液晶層14は、入射光の偏光方向のX方向に対してプレツイスト角が2°で厚さ方向に90°ツイストし、405nmの光が入射するとき、常温時のリタデーション値は、約692°である。さらに、波長板24bの常温時のリタデーション値は、約92°である。この旋光子20bにP偏光をZ方向から入射するときの電圧非印加時の偏光変換効率を図14(a)に示す。この結果より、使用温度が大きく変化しても偏光変換効率Iは、いずれの波長、いずれの温度においても94%以上の高い値となり、波長板を積層することでより高い偏光変換効率で安定させることができる。
【0069】
また、液晶層間に液晶層間に9Vrmsの交流電圧を印加するとき(電圧印加時)は、液晶層の液晶分子の長軸方向は電界方向と平行に配向し、液晶層では入射光の偏光状態は変わらないが、積層した波長板によって偏光状態が変化する。また、この旋光子20bにP偏光をZ方向から入射するときの電圧印加時の偏光変換効率を図14(b)に示す。この結果より、使用温度が大きく変化しても偏光変換効率Iは、いずれの波長、いずれの温度においても1%以下の値に抑えることができ、ほぼP偏光のまま透過する。これらの結果より、電圧非印加/電圧印加による偏光変換効率Iの消光比を大きくすることができる。
【0070】
(実施例4)
本発明の第3の実施形態に係る図8の旋光子30の具体的な構成について説明する。このうち旋光子10bは、ツイスト角を91°とすることと、ツイスト方向が図9(a)に示すように液晶分子が15bのように時計回り(−方向)にツイストさせていること、以外は実施例1と同じである。また、液晶の常光屈折率および異常光屈折率は、実施例1と同じものである。このときの液晶層14の厚さは8.6μmとする。
【0071】
次に、TN型高分子液晶セルの作製方法を説明する。石英ガラス基板31に、ポリイミドを成膜してラビングすることにより図示しない水平配向膜を形成し、配向膜上に直径18.2μmのスペーサを散布する。その後、図示しないもう一つの水平配向膜を形成したガラス基板を石英ガラス基板31に対して配向方向が94°の角度をなすように対向させ、18.2μmの一定の空隙にUV硬化性の液晶性モノマー組成物を注入する。このときの液晶分子は厚さ方向にツイストして配向される。次いで、UV光を照射して液晶を固化させる。ここで、405nmの光が入射するとき、液晶層14の25℃におけるリタデーション値は、約726°であり、同条件におけるTN型高分子液晶層32は約728°である。そして、図示しないガラス基板を離型除去することによってTN型高分子液晶層32を形成し、図示しない接着剤によって石英ガラス基板11aとTN型高分子液晶層32とを接着して旋光子30を作製する。
【0072】
また、TN型高分子液晶層32のうち、光が入射する側にある液晶分子33の配向方向はX方向に一致し、プレツイスト角は0°である。そして、TN型高分子液晶層32の光の出射側では液晶分子33は+94°の方向(反時計回りのツイスト)に配向される。また、電圧非印加時において液晶層14の光の入射側の液晶分子15bはX方向に対してプレツイスト角が1°で配向され、液晶層14の光の出射側では液晶分子15bは90°の方向(時計回りのツイスト)に配向される。また、電圧印加時には、図9(b)に示すように液晶層14の液晶が電界方向に配向するため、TN型高分子液晶層を出射した光の偏光状態で出射する。
【0073】
この旋光子30にP偏光をZ方向から入射するときの電圧非印加時の偏光変換効率を図15(a)に示す。この結果より、使用温度が大きく変化しても偏光変換効率Iは、いずれの波長、いずれの温度においても5%以下の値となる。また、液晶層間に液晶層間に9Vrmsの交流電圧を印加するとき(電圧印加時)は、液晶層の液晶分子の長軸方向は電界方向と平行に配向し、TN型高分子液晶層を出射した光の偏光状態で出射する。また、この旋光子30にP偏光をZ方向から入射するときの電圧印加時の偏光変換効率を図15(b)に示す。この結果より、使用温度が大きく変化しても偏光変換効率Iは、いずれの波長、いずれの温度においても97%以上の高い値となる。したがって、旋光子に対して電圧非印加時には、入射する直線偏光の偏光方向を変えず、電圧印加時には、入射する直線偏光の偏光方向をほぼ直交させるように出射させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上のように、本発明に係る旋光子は、特定の直線偏光が異なる波長の光で入射するとき、電圧を印加状態、非印加状態に切り替えることによって容易に出射する偏光状態を変える制御ができる。さらに使用温度の変化による特性の変化が少なく、出射する光の偏光状態が安定する高い品質を得ることができ、安定した特性を有する光ヘッド装置などへの適用が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】第1の実施形態に係る旋光子の断面模式図。
【図2】第1の実施形態に係る旋光子の斜視的模式図および液晶層厚さに対する偏光変換効率特性。
【図3】第1の実施形態に係る旋光子の405nm入射時の使用温度変化による偏光変換効率特性。
【図4】液晶層厚さに対する偏光変換効率特性。
【図5】405nmの入射光の偏光方向に対する偏光変換効率特性。
【図6】第2の実施形態に係る旋光子の断面模式図。
【図7】第2の実施形態に係る旋光子の斜視的模式図。
【図8】第3の実施形態に係る旋光子の断面模式図。
【図9】第3の実施形態に係る旋光子の斜視的模式図。
【図10】旋光子を用いた光ヘッド装置の一例を示す模式図。
【図11】第1の実施形態に係る旋光子の偏光変換効率特性。
【図12】従来の設計によるアクティブ型の旋光子の偏光変換効率特性。
【図13】第2の実施形態に係る旋光子の偏光変換効率特性(波長板2枚液晶層に対して光入射側に積層)。
【図14】第2の実施形態に係る旋光子の偏光変換効率特性(波長板1枚ずつ液晶層の光入射側前後に積層)。
【図15】第3の実施形態に係る旋光子の偏光変換効率特性。
【符号の説明】
【0076】
10a、10b、20a、20b、30、40 旋光子
11a、11b、21a、21b、25、31 透明基板
12a、12b 透明電極
13a、13b 配向膜
14 液晶層
15a、15b 液晶分子
22、22a、22b、24、24a、24b 波長板
32 TN型高分子液晶層
33 高分子液晶分子
41 光源
42 コリメータレンズ
43 偏光ビームスプリッタ
44 ミラー
46a、46b 対物レンズ
45a、45b 1/4波長板
47a、47b 光ディスク
48 光検出器
50 光ヘッド装置
51a BDを記録・再生する光路(往路)
51b BDを記録・再生する光路(復路)
52a HD−DVD/DVD/CDを記録・再生する光路(往路)
52b HD−DVD/DVD/CDを記録・再生する光路(復路)
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば光ストレージ、光通信、光イメージングなどの光学系において入射する直線偏光を旋光して出射するとともに、印加する電圧を制御することによって出射する光の偏光状態を制御することができる旋光子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ヘッド装置は、CD、DVD、光磁気ディスクだけでなく、「Blu−ray」(登録商標:以下BD)、HD−DVDなどの高密度光記録媒体(以下、「光ディスク」という)に対応した技術が開発されている。とくに、BDやHD−DVDとDVD、CDに対応した光ヘッド装置においては、青色レーザと赤色レーザ、近赤外レーザの3つの波長に対して、異なる性能を有する光学部品や、これら3つの波長で波長依存性が少なく同等の性能を有する光学部品などが適宜組み合わされている。その中で、これら3つの波長の偏光状態を等しく偏光変換するような機能も求められる。例えば、各々の光源から出射された光の直線偏光方向が、偏光ビームスプリッタの直進透過方向となる軸に直交している場合においては、3つの波長の直線偏光が偏光ビームスプリッタの直進透過方向となる軸に平行になるよう偏光方向を90°旋光させるように、多波長に対して機能する旋光子(多波長旋光子)が必要である。
【0003】
このように3つの異なる波長で入射する光を直交した偏光状態に変換する多波長旋光子として例えば特許文献1に記載の偏光変換子が提案されている。この偏光変換子を、3つの異なる波長の光が共通する光路中に配置することで、いずれの波長の光も入射光に対して90°変換させて出射させることができる。また、偏光変換子を光ヘッド装置に用いることで少ない部品点数で効率よく偏光状態の変換を実現している。
【0004】
【特許文献1】特開2007−304572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の偏光変換子は、入射する光の波長のばらつきによって変換効率が変化しやすい特性を有している。例えば、光源となる半導体レーザの発振波長のばらつきがあったり、異なる使用温度よって半導体レーザの発振波長に変化が発生したりすると、変換効率が低下するため、入射する光の波長を精度よく制御しなければならないという問題があった。さらに、光ヘッド装置に偏光変換子を適用した場合、偏光変換機能は固定的であるため、状況に応じて偏光変換機能を切り替えることは困難であるという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、平行に配置された一対の透明基板と、一対の前記透明基板の対向する空間を液晶で充填した液晶層を備え、少なくとも波長λ1と、前記波長λ1よりも大きい波長λ2の直線偏光となる光が入射する旋光子であって、前記液晶は、ネマティック液晶または高分子液晶からなり、前記液晶が前記液晶層の厚さ方向にらせん状に捩れているツイスト配向状態において、常温における前記波長λ2の1次モーガンミニマム条件となる厚さdλ21が前記波長λ1のn次モーガンミニマム条件となる厚さdλ1n以上でかつ、前記波長λ1の(n+1)次モーガンミニマム条件となる厚さdλ1(n+1)未満であるとき(nは自然数)、前記液晶層の厚さは、下記(A)または(B)
(A)前記厚さdλ21が(dλ1n+dλ1(n+1))/2以上であるとき、dλ21より大きい値、
(B)前記厚さdλ21が(dλ1n+dλ1(n+1))/2未満であるとき、dλ1nより大きい値、を満たす旋光子を提供する。
【0007】
また、前記液晶層に電圧を印加する透明電極を備え、前記液晶層に印加する電圧によって、前記ツイスト配向状態と、前記液晶が前記液晶層の厚さ方向に揃う垂直配向状態と、を切り替えることができる上記に記載の旋光子を提供する。また、前記液晶層の厚さは、前記厚さdλ21が(dλ1n+dλ1(n+1))/2以上であるとき前記厚さdλ21と前記厚さdλ1(n+1)との中間値より大きい値であり、前記厚さdλ21が(dλ1n+dλ1(n+1))/2未満であるとき前記厚さdλ1nと前記厚さdλ21との中間値より大きい値である上記に記載の旋光子を提供する。
【0008】
この構成により、異なる2以上の波長で入射する直線偏光に対して直交する直線偏光に変換するなど特定の偏光状態を発現させるときに、波長依存性および使用温度依存性による出射偏光状態の変化を低減させることができる。また、電圧制御によるアクティブ型の旋光子とすることで、容易に入射光の偏光状態を変えて出射させたり、偏光状態を変えないで出射させたりすることができる。これを利用して、例えばこの旋光子を、3つの異なる波長の光を利用する光ヘッド装置に用いた場合、安定した光ディスクへの情報の記録および/または再生(以下、「記録・再生」という)ができ、光ヘッド装置の品質が向上する。さらに、電圧制御によって光の偏光状態を制御することで光の進行方向を切り替える光ヘッド装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、広帯域に渡って波長の異なる複数の光の偏光状態を効率よく変換することができるとともに、変換状態と無変換状態とを容易に切り替えることができ、さらに温度変化に対しても変換効率の変動が少ない旋光子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(第1の実施の形態)
図1(a)および図1(b)は、それぞれ本実施の形態に係る旋光子10aおよび10bの概念的な構成を示す図である。旋光子10aは、透明基板11a、11b上に配向膜13a、13bを積層した基板と、その基板によって液晶を挟持した液晶層14とで構成される。また、旋光子10bは、透明基板11a、11b上にそれぞれ透明電極12a、12bを積層し、さらに配向膜13a、13bを積層した基板と、その基板によって液晶を挟持した液晶層14とで構成される、アクティブ型の旋光子である。そして、透明電極12a、12b間は図示しない電気配線によって電圧制御装置に接続されている。ここで、透明電極12a、12bを配さない旋光子10aは、旋光子10bの電圧非印加時と同じ特性を有するものであり、旋光子10bの電圧非印加時の機能の説明によって旋光子10aの機能の説明を代替するものとする。また、旋光子10bにおいて電圧非印加時には、図1(b)のように配向膜13aと接する面の液晶分子はX方向に配向され、配向膜13bと接する面の液晶分子はY方向に配向されており、液晶層14の厚さ方向(Z方向)に液晶分子の長軸方向が捩れて分布している。
【0011】
透明基板は入射する光に対して透明であれば、樹脂など種々の材料を用いることができるが、ガラスや石英ガラスなどの光学的等方性材料を用いると、透過光に複屈折性の影響を与えないため好ましい。透明電極としては、ITO(酸化錫ドープ酸化インジウム)膜、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)膜、GZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)膜などの酸化物透明導電膜が高い透明性と導電率とが得られるため好ましく用いられる。配向膜はポリイミド膜をラビングして形成してもよいし、SiOなどの無機材料を斜方蒸着して形成してもよい。
【0012】
液晶層14は、液晶分子15aの配向方向が電圧非印加時に厚さ方向に例えば、90°らせん状に捩れているツイストネマティック液晶セル(以下TN液晶セルという)からなる。このTN液晶セルに入射する光は、いずれもZ方向に進行するものとして説明する。例えば、上記TN液晶セルのようにX方向に振動する直線偏光が入射して、Y方向(入射方向と直交する方向)で出射する偏光変換に関しては、以下のジョーンズ行列を用いて考えることができる。なお、液晶分子の厚さ方向の捩れ角(以下、ツイスト角)は90°に限らず、異なる角度であってもジョーンズ行列の関係は成立する。
【0013】
TN液晶セル内の液晶の常光屈折率をno、異常光屈折率をne、屈折率異方性をΔn(=|ne−no|)、ツイスト角をΦt、TN液晶セルの厚さをd、光が入射する側の基板面上の液晶ダイレクタの角度(以下、プレツイスト角)をΨi、入射する光の波長をλとすると、TN液晶セルのジョーンズ行列WTNは、式(1)のように表される。
【0014】
【数1】
【0015】
なお、R(Ψ)は回転行列を表し、式(2)のようになる。
【0016】
【数2】
【0017】
ここでsinθ=0、すなわち式(3)が成立するときのmを、m次のモーガンの極限(モーガンミニマム条件)という。
【0018】
【数3】
【0019】
式(3)のモーガンの極限を満足するときの式(1)のJTNは、式(4)で表され、TN液晶セルは、ツイスト角Φtの旋光子として機能する。
【0020】
【数4】
【0021】
ここで、TN液晶セルのプレツイスト角Ψi=0°、ツイスト角Φt=90°として、0°の直線偏光を入射したとき、入射光の偏光方向と直交する偏光方向(90°)成分に変換される割合を偏光変換効率Iとして定義すると、式(5)のように表される。
【0022】
【数5】
【0023】
このように式(3)のモーガンミニマム条件を満たすTN液晶セルの厚さdは、入射する光の波長λによって異なり、任意の波長の光が入射して全て同じ旋光機能を有する旋光子は存在しない。さらに、液晶の屈折率は使用温度によって変化するため、広い温度範囲で一定の旋光機能を有する旋光子の実現には制限があるが、本実施形態の旋光子は、液晶層14の厚さを調整することによって、2つ以上の異なる波長に対して同じ旋光特性を発現させることができる。
【0024】
ここで、異なる2つの入射光の波長を具体的にλ1=405nm、λ2=660nm(λ1<λ2)として説明する。設計手法として、式(3)のモーガンミニマム条件において、波長λ1に対してm=2のモーガンの極限(以降、2次モーガンミニマム条件という)となる液晶層の厚さ(=dλ12)を考える。なお、厚さの表記(例えばdλ12)の‘λ’に続く2つの数字は、左から順に、入射する光の波長λ1、波長λ2、…のように波長に示される数字、m次モーガンミニマム条件のmに相当する数字、で表すものとする。
【0025】
次に、波長λ2に対してm=1のモーガンの極限(以降、1次モーガンミニマム条件という)となる液晶層の厚さ(=dλ21)を考える。また、図2(a)に旋光子10bの電圧非印加時の斜視図を示すが、この図のように透明基板11a、11b間で液晶分子15aがツイスト角Φt=90°で分布している。ここで、透明基板11a側からZ方向に進行するX方向の直線偏光が入射する場合において、液晶層の厚さを変化させたときの偏光変換効率の一例を図2(b)に示す。ここでは、偏光変換効率は、入射光の偏光方向と直交する、つまりX方向からY方向の直線偏光へ変換されて出射される割合を意味する。
【0026】
図2(b)のようにモーガンミニマム条件を満たす液晶層の厚さの条件において、偏光変換効率が最も高くなる。例えば、405nmの光が入射する場合、それぞれ液晶層の厚さが約3.7μmで1次モーガンミニマム条件、約8.3μmが2次モーガンミニマム条件となる。また、入射光の偏光状態が同一で波長が異なる場合、波長が長くなるにつれて、1次モーガンミニマム条件となる液晶層の厚さも大きい値をとる。なお、λ3として780nmの波長(λ1<λ2<λ3)の光が入射した場合もλ1、λ2に対して1次モーガンミニマム条件となる液晶層の厚さは大きい。したがって、少なくともλ1とλ2の波長の光が入射する場合、両方の波長の光の偏光変換効率を高くするためには、λ2の1次モーガンミニマム条件を満たす液晶層の厚さ以上であればよい。
【0027】
次に、温度変化による偏光変換効率の変化について説明する。通常、液晶は温度上昇とともに、屈折率異方性Δnが小さくなる傾向がある。式(3)より、Δnが小さくなると、モーガンミニマム条件を満足するにはTN液晶セル厚さdを大きくする必要がある。例として、405nmの光を入射させて温度条件のみ変化させた場合の液晶層の厚さに対する偏光変換効率の変化を図3に示す。これにより、温度が高くなることによって1次、2次モーガンミニマム条件を満たす液晶層の厚さが大きくなるため、広い温度範囲の条件において高い偏光変換効率を維持するためには、この特性を考慮する必要がある。
【0028】
このように、異なる2つ以上の波長の光が入射し、さらに広い使用温度範囲が要求される旋光子を実現するためには、次のように液晶層の厚さを設定するとよい。常温において、λ2における1次モーガンミニマム条件となる厚さdλ21が、例えばλ1における1次モーガンミニマム条件dλ11と、λ1における2次モーガンミニマム条件dλ12との間にあり、dλ21が(dλ11+dλ12)/2以上である場合を考える。このときdλ12が、dλ21とdλ12中間となる値、(dλ21+dλ12)/2よりも大きいと、少なくともλ1およびλ2の波長の入射光に対して高い偏光変換効率を得ることができる。なお、ここでいう常温とは、20〜30°の間の温度とする。また、液晶層の厚さをさらに厚く設定してもよいが、電圧印加時の応答速度が厚さの2乗に比例して遅くなったり、光の吸収によって透過光量が低減したりするので、上記条件を満足するとともに、できるだけ薄い液晶層の厚さであることがより好ましい。また、厚さの上限は、下限+4μm程度であってこの範囲の厚さに設定すると好ましい。
【0029】
また、入射する異なる2つの波長の光として波長λ1と波長λ2を上記の例ではそれぞれ405nmと660nmとして説明したがこれに限らない。波長λ1と波長λ2の組み合わせにより、図4(a)または図4(b)のように、波長λ2の1次モーガンミニマム条件となる厚さdλ21が、波長λ1の2次モーガンミニマム条件となる厚さdλ12より大きい値となることもある。次に、これらを考慮して、高い偏光変換効率が得られる液晶層の厚さの下限を一般化して説明する。なお、図4(a)および図4(b)の実線はλ1の特性、点線はλ2特性を示すとともに、いずれも使用温度は常温とする。
【0030】
図4(a)は、厚さdλ21が、波長λ1の2次モーガンミニマム条件となる厚さdλ12と波長λ1の3次モーガンミニマム条件となる厚さdλ13の間にあり、さらに、dλ21≧(dλ12+dλ13)/2となる特性を示したグラフである。このときの液晶層の厚さの下限は、dλ21より大きい値であれば好ましく、温度変化を考慮して(dλ21+dλ13)/2より大きい値であればより好ましい。
【0031】
図4(b)は、厚さdλ21が、波長λ1の2次モーガンミニマム条件となる厚さdλ12と波長λ1の3次モーガンミニマム条件となる厚さdλ13の間にあり、さらに、dλ21<(dλ12+dλ13))/2となる特性を示したグラフである。このときの液晶層の厚さの下限は、dλ12より大きい値であれば好ましく、温度変化を考慮して(dλ12+dλ21)/2より大きい値であればより好ましい。
【0032】
また、波長λ1と波長λ2の組み合わせにより、これらを一般的に表して、厚さdλ21が、波長λ1のn次モーガンミニマム条件となる厚さdλ1nと波長λ1の(n+1)次モーガンミニマム条件となる厚さdλ1(n+1)の間にあり(nは自然数)、さらに、dλ21≧(dλ1n+dλ1(n+1))/2となる場合を考える。このときの液晶層の厚さの下限は、dλ21より大きい値であれば好ましく、温度変化を考慮して(dλ21+dλ1(n+1))/2より大きい値であればより好ましい。同様に、厚さdλ21が、波長λ1のn次モーガンミニマム条件となる厚さdλ1nと波長λ1の(n+1)次モーガンミニマム条件となる厚さdλ1(n+1)の間にあり、さらに、dλ21<(dλ1n+dλ1(n+1))/2となる場合を考える。このときの液晶層の厚さの下限は、dλ1nより大きい値であれば好ましく、温度変化を考慮して(dλ1n+dλ21)/2より大きい値であればより好ましい。
【0033】
これまでは、図2(a)に示すように、透明基板11a側の液晶分子の配向方向と同じ方向の直線偏光が入射するものとして説明したが、これに限らない。本実施形態に係る旋光子10aおよび10b(電圧非印加時)に直線偏光が入射する場合、液晶層の厚さを調整することによって入射光の直線偏光がいずれの方向であっても入射光の偏光方向に対して約90°旋光した直線偏光となって出射する。
【0034】
例として図5は、波長405nmの直線偏光が旋光子10bに入射するとき、入射する直線偏光の方向に対する偏光変換効率を示すものである。つまり、図2(a)の旋光子11bの透明基板11a側の液晶分子の配向方向(X方向)とは異なる方向の直線偏光が入射するときの偏光変換効率を示す。このとき、X方向の直線偏光を0°として反時計回り方向をプラス(+)方向、時計回りをマイナス(−)方向と定義する。これを踏まえ、図5の実線は、90°方向つまりY方向の直線偏光で入射してX方向(180°)の直線偏光となる偏光変換効率、図5の点線は、45°方向の直線偏光が入射して135°方向の直線偏光となって出射するときの偏光変換効率を示すものである。なお、図2(b)は、いずれの波長もX方向(0°)の直線偏光で入射したときY方向(90°)となる偏光変換効率を示すものである。また、図示しないが、このほかの偏光方向で入射する光はいずれも図5の実線と点線の特性の間を取る。これより、液晶層の厚さがm次のモーガン極限付近(mは自然数)では偏光方向に依存せず高い偏光変換効率を得ることができ、透明基板11a側の液晶分子の配向方向と平行または直交する直線偏光の方向で入射させると、液晶層の厚さのばらつきによる偏光変換効率の変化が少なくより好ましい。
【0035】
また、液晶層に電圧を印加すると、液晶分子は透明基板面に対して略垂直方向(Z方向)に配向される。このとき、Z方向で入射する光は、偏光状態を変えずにそのまま出射する。したがって、液晶層に印加する電圧を制御することによって広帯域に渡って入射する光に対して偏光状態を容易に変化させることができる。
【0036】
(第2の実施の形態)
次に、第1の実施の形態に比べてより偏光変換効率を高くする効果を実現する形態を以下に説明する。図6は、本実施の形態に係る旋光子20a、20bの概念的な構成を示す断面模式図である。図6(a)に示す旋光子20aは、旋光子10に波長板22を積層したものであり、図6(b)に示す旋光子20bは、旋光子10に波長板24aおよび24bを両面にそれぞれ積層したものである。また、図6(a)および図6(b)において第1の実施形態と同じ部分は同一の番号を付して説明の重複を避ける。図6(a)は、Z軸に平行に透明基板21a側から光が入射する場合、光の入射側に2枚の波長板22a、22bを積層している。なお、波長板の配置は光の入射側に限らず、光の出射側に積層してもよく、波長板の枚数は2枚に限らず、1枚であっても3枚以上であってもよい。
【0037】
図7(a)および図7(b)は、波長板22を積層した旋光子20aの斜視図であって、いずれもZ方向に進行するX方向の直線偏光が入射する場合において、それぞれ、電圧非印加時、電圧印加時の光の変調の様子を示すものである。また、図7(c)は、波長板22a、22bを示す斜視図であり、矢印の方向は光学軸(進相軸または遅相軸)となる方向を示すものである。このように波長板22は、2枚の波長板22a、22bが積層されており、いずれの波長板とも光学軸はX方向(Y方向)からずれた角度となるように設置されている。
【0038】
以下に、積層する波長板の具体的な設計手法について説明する。以下の説明では、波長板22より直線偏光が入射し、基板11bから出射するものとするが、光の相反性の性質から基板11bから入射し波長板22から出射するとしても同様の原理が成立する。入射する光の波長λと温度Tの関数となる波長板22aのジョーンズ行列をA(λ,T)、波長板22bのジョーンズ行列をB(λ,T)とする。ここで波長板のジョーンズ行列WPは、波長板の遅相軸方位をΨWP、波長板の屈折率異方性をΔnWP、波長板の厚さをdWPとすると、式(6)のように表すことができる。
【0039】
【数6】
【0040】
また、液晶層のジョーンズ行列もλおよびTに依存するので、これをWTN(λ,T)とすると、この構成からなる旋光子のジョーンズ行列は、WTN(λ,T)×B(λ,T)×A(λ,T)となる。そこで、B(λ,T)×A(λ,T)は、WTN(λ,T)の入射波長依存性と温度依存性による変化を打ち消すようにする。つまり、入射する光の偏光状態、出射する光の偏光状態を僅かに変化させることで、入射波長および温度によって変化する偏光変換効率を小さくするように調整できるものである。
【0041】
例えば、以下のように設計することで、偏光変換効率の波長依存性、温度依存性を小さくすることができる。異なる2つの入射光の波長を具体的にλ1=405nm、λ2=660nmとして説明する。まず、液晶層の厚さは第1の実施の形態のものよりわずかに厚くし、波長λ1の2次モーガンミニマム条件となる厚さdλ12付近とする。これにより、図2(b)に示すように波長λ1の光に対して、液晶層単体での偏光変換効率を100%に近い値で設定することができる。一方で、厚さdλ12付近であると、波長λ2の光に対して、液晶層の波長依存性により偏光変換効率が低下するが、Y方向の直線偏光となって出射するように波長板22を積層して補正するものである。例えば、波長板22が厚さ方向に光学軸が揃った1枚の波長板で構成する場合、波長λ1の光に対してλ板として機能させるようにする。つまり、波長板22は、入射する光と出射する光とで偏光状態が大きく変わらないように、360°・Δn・d/λ1で表される位相差が360°×m(mは自然数)付近になるように、Δn(屈折率異方性)、d(厚さ)を設計するとよい。これより、波長板22を透過しても、λ1の偏光状態がほぼ変化せず、液晶層のみで偏光状態が変換される。
【0042】
また、図7(c)に示すように波長板22が2枚の波長板22a、22bが積層されてなる場合、2枚の波長板のリタデーション値(Δn・d)、遅相軸(進相軸)と入射光の偏光方向とがなす角度(0°、90°ではない値)をそれぞれ調整する。つまり2枚の波長板に入射する波長λ2の光に対して、液晶層の波長依存性による偏光変換効率の低下を補正するとともに、波長λ1の光に対して偏光状態を変えないように上記の条件を設定するとよい。
【0043】
図6(b)に示す旋光子20bについても同様の手法で設計できる。波長板24aのジョーンズ行列をC(λ、T)、波長板24bのジョーンズ行列をD(λ、T)、液晶層のジョーン行列をWTN(λ,T)とすると、20b構成のジョーンズ行列は、D(λ、T)×WTN(λ,T)×C(λ、T)となる。そこで、入射偏光状態をC(λ、T)にて、出射偏光状態をD(λ、T)にてわずかに変化させることにより、WTN(λ,T)の波長依存性と温度依存性を打ち消すように補正する。これにより、偏光変換効率の波長依存性、温度依存性を小さくすることができる。
【0044】
(第3の実施の形態)
第3の実施形態では、さらに温度依存性を小さくする効果が実現する、高分子液晶からなる層を有する旋光子の構成について説明する。図8は、本実施の形態に係る旋光子30の構成を示す断面模式図である。旋光子30は、第1の実施の形態の旋光子10bに、高分子液晶が厚さ方向に90°ツイストしてなるTN型高分子液晶層32を積層した構成になっている。なお、図8では省略しているが、製造の過程で用いられることがある図示しない配向膜がTN型高分子液晶層32を挟持するように施されていてもよい。また、電圧非印加時の液晶層14を構成する液晶(ネマティック液晶)および、TN型高分子液晶層32の高分子液晶はそれぞれ厚さ方向に約90°捩れて配向されている。また、旋光子30において光はZ軸と平行に透明基板11b側からであっても透明基板31側からであってもよい。
【0045】
また、90°ツイストした液晶を利用して入射する光を旋光させる場合、ネマティック液晶に比べて高分子液晶で構成されていれば、その材料特性から使用温度変化に対する偏光変換効率の変化で表す温度依存性が小さく、安定した特性を示すという特徴がある。これより、入射する光を90°旋光させる機能を高分子液晶で実現することによって温度依存性が小さい旋光子を実現することができる。図8の旋光子30の構成では、液晶層14に対して電圧印加時は、液晶層14を透過する光は偏光状態を変えず、TN型高分子液晶層32で90°旋光される。
【0046】
一方、液晶層14に対して電圧非印加時は、TN型高分子液晶層32で90°旋光された光が液晶層14で再び90°旋光されるので、入射する光の偏光状態となって旋光子30を透過する。ここで、液晶層14の液晶分子のツイスト方向とTN型高分子液晶層32の液晶分子のツイスト方向は互いに逆になる方向であっても、同一となる方向であってもよい。なお、液晶層14およびTN型高分子液晶32のプレツイスト方向(入射光の偏光方向に対する層の入射側の液晶分子の配向方向)はX−Y平面において、互いに略平行または略直交の関係であればよい。
【0047】
また、上記の構成としてとくに、液晶層14の液晶分子のツイスト方向とTN型高分子液晶層32の液晶分子ツイスト方向が互いに逆になるように旋光子30が構成されているとともに、プレツイスト角が略平行な関係にあるとき、図示しないポワンカレ球上でTN型高分子液晶層32での偏光状態の変化を辿る経路と液晶層14での偏光状態を辿る経路が互いに逆向きでほぼ一致し、出射する光の偏光状態は、入射する光の偏光状態の位置に復帰するので、とくに好ましい。
【0048】
次いで、入射する光の偏光状態の変化について具体的に説明する。図9は、TN型高分子液晶層32を積層した旋光子30の斜視図であって、いずれもZ方向に進行するX方向の直線偏光が入射する場合において、それぞれ、電圧非印加時、電圧印加時の光の変調の様子を示すものである。図9(a)に示す電圧非印加時では、TN型高分子液晶層32で旋光してY方向の直線偏光となるが、液晶層14で旋光してX方向の直線偏光となる。また、図9(b)に示す電圧印加時では、TN型高分子液晶層32で旋光してY方向の直線偏光となり、液晶層14では偏光状態が変化せずにY方向の直線偏光のまま透過する。このように、第1の実施形態および第2の実施形態に係る旋光子に対して、電圧の印加時と非印加時とで出射する光の偏光状態は逆になる。また、本実施形態の旋光子30に第2の実施形態のように波長板を積層して、波長依存性および温度依存性をさらに安定化させる構成としてもよい。
【0049】
(第4の実施の形態)
本実施形態は、旋光子を具備した光ヘッド装置であり、図10に模式図を示す。光ヘッド装置50は、BDまたはHD−DVD、DVDおよびCDをそれぞれ再生・記録できるものである。なお、BDまたはHD−DVDの高密度光記録媒体は405nm波長帯(385〜420nm)、DVDは660nm波長帯(640〜675nm)、CDは780nm波長帯(770〜800nm)のレーザ光を用いる。
【0050】
なお、光ヘッド装置50は、これら3つの異なる波長のレーザ光を単一の偏光ビームスプリッタ、単一の1/4波長板および単一の対物レンズを用いて実現する構成にしようとすると、部品点数が少なくなることが期待できる。しかし、これら広帯域にわたるレーザ光すべてに対して偏光状態を制御したり高い光利用効率を実現したりしようとすることが困難である。また、3つの波長に対してそれぞれ個別に偏光ビームスプリッタ、1/4波長板および対物レンズを設けると、偏光状態の制御性および高い利用効率を得ることが可能となるが、部品点数が多くなるため小型化が困難である。本実施形態は、後述するように3つのレーザ光を2つの光路に分離して、偏光状態の制御、高い光利用効率および小型化を実現できる例を示すものである。なお、上記3つの異なる波長をすべて同じ光路であって対物レンズを共有すると、開口数の違いなどからこれら全ての波長の光に対して有効な集光特性が得られないため、405nm波長帯の光路と、660nm波長帯と780nm波長帯とを共有する光路と、の2つに分離してそれぞれに対物レンズを配置する光学系が考えられる。
【0051】
光源41は、2種類または3種類の波長の直線偏光を出射する構成としてもよい。かかる構成の光源としては、2個または3個の半導体レーザチップが同一基板上にマウントされた、所謂ハイブリッド型の2波長レーザ光源または3波長レーザ光源や、互いに異なる波長の光を出射する2個または3個の発光点を有するモノリシック型の2波長レーザ光源または3波長レーザ光源でもよい。ここで、光源から発射する光はいずれもZ軸方向に進行し、X軸方向の直線偏光として説明する。
【0052】
光源41から発射された光はコリメータレンズ42で平行光となり、旋光子40に入射する。旋光子40は、第1の実施形態〜第3の実施形態で説明した旋光子10b、20a、20b、30いずれの構成のものであってもよい。ここでは、電圧非印加時で約90°旋光し、電圧印加時に偏光状態を変えない旋光子10b、20a、20bと同じ作用をするものとして説明する。
【0053】
また、光ヘッド装置50では、光ディスク47aをBDとし、光ディスク47bをHD−DVD/DVD/CDとし、これらの2つの光路が光ディスクの規格ごと異なるものとする。まず、BD(光ディスク47a)を記録・再生するときは、旋光子40に対して電圧を印加して405nm波長帯の入射光の偏光状態を変えないようにする。また、このときの光路を実線で示し、光源41から光ディスク(BD)47aに到達するまでの光路を往路51aとし、光ディスク47aから光検出器48に到達するまでの光路を復路51bとして示す。
【0054】
光ディスク47bとなるHD−DVD/DVD/CDを記録・再生するときは、旋光子40に対して電圧を印加せず、405nm波長帯、660nm波長帯および780nm波長帯の入射光の偏光状態を90°旋光させて出射する。また、このときの光路を点線で示し、光源41から光ディスク47bに到達するまでの光路を往路52aとし、光ディスク47bから光検出器48に到達するまでの光路を復路52bとして示す。
【0055】
図10において、X方向の直線偏光となる405nm波長帯の光でBDを記録・再生する場合、偏光状態を変えずに旋光子40を透過し、偏光ビームスプリッタ43に入射する。偏光ビームスプリッタはX方向に振動する光を光ディスク47aの方向に偏向させ、1/4波長板45aおよび対物レンズ46aを透過し、光ディスク47aの情報記録面に集光させる。反射された復路の光51bは、対物レンズ46aおよび1/4波長板45aを透過し、Z方向の直線偏光となり、偏光ビームスプリッタ43を直進透過して光検出器48に到達する。
【0056】
一方、X方向の直線偏光で出射する各波長帯の光がHD−DVD/DVD/CDを記録・再生するときは、旋光子40に入射する光は、偏光状態を約90°変えてY方向の直線偏光となって出射するので、偏光ビームスプリッタ43を直進透過する。偏光ビームスプリッタ43を透過した光はミラー44によって光ディスク47bの方向に反射し、(広帯域)1/4波長板45bおよび対物レンズ46bを透過し、光ディスク47bの情報記録面に集光させる。反射された光は、対物レンズ46bおよび(広帯域)1/4波長板45bを透過し、ミラーによって偏光ビームスプリッタ43の方向へ進行する。この復路の光は、偏光ビームスプリッタ43反射されて光検出器48へ到達する。
【0057】
このように、3つの異なる波長のレーザ光を使用する光ヘッド装置において本発明の旋光子を用いることで、規格の異なる各光ディスクに到達するまでの往路の光の偏光状態を制御でき、部品点数の削減および小型化が可能で設計自由度が高い光ヘッド装置を実現できる。なお、本実施の形態の光ヘッド装置の構成は一つの例であって、光学部品の位置はこれに限らない。また、旋光子40としては、第3の実施の形態に係る旋光子30を用いて電圧印加/電圧非印加による偏光状態の切り替えを逆とし、さらに波長依存性、温度依存性の少ない安定した特性を得るものであってもよい。
【0058】
(実施例1)
第1の実施形態に係る図1の旋光子10bの作製方法を説明する。まず、透明基板11a、11bとして石英ガラス基板を用いる。石英ガラス基板上にITOをスパッタリング法でシート抵抗値が300Ω/□程度となる膜厚まで堆積して透明電極12a、12bを形成する。成膜した透明電極12a、12b上にポリイミドを塗布、焼成した後、一方向にそれぞれラビング処理を施して配向膜13a、13bを形成する。一方の基板の表面に周縁部に図示しないエポキシ樹脂等のシール材を環状に塗布する。シール材には、直径約8.1μmのスペーサと、電圧印加のための導電経路となる導電性微粒子を予め混ぜる。透明基板11a、11bは、互いのラビング方向が直交するように配向膜13a、13bが対向するように重ね合せた後、熱圧着によりシール材を固化して、前記スペーサと同じ空隙を有するセルを形成する。
【0059】
この空隙に図示しない注入口から405nmの波長の光において25℃における常光屈折率(no)が1.510、異常光屈折率(ne)が1.605となる液晶を注入して充填し、旋光子10bとする。図2(b)は、上記特性を有する液晶が充填された液晶層の厚さを変化させた場合の電圧非印加時の旋光子10bの光学特性を示しており、このときの液晶層14の厚さ8.1μmは、図2(b)の特性より、波長405nmの光における2次モーガンの極限の厚さ8.3μmと、波長660nmの光における1次モーガンミニマム条件の厚さ6.4μmとの中間値7.35μmより大きい値になるよう設定されている。
【0060】
次に、それぞれ405nm、660nm、780nmの光に対して温度範囲を−10℃、25℃、70℃と変化させ、液晶層に対して電圧非印加時における偏光変換効率を図11に示す。なお、偏光変換効率は、図1においてX方向の直線偏光であるP偏光がS偏光(Y方向の直線偏光)に変換される割合である。使用温度が大きく変化しても偏光変換効率Iは、いずれの波長、いずれの温度においても90%以上の高い値となる。また、液晶層間に9Vrmsの交流電圧を印加したとき(電圧印加時)は、P偏光で入射した光はほぼ100%P偏光のまま出射され、S偏光はほぼ0%である。
【0061】
(比較例1)
比較例1として、実施例1に記載の旋光子10bの構成のうち、液晶層14の厚さを405nmの波長の光および25℃における1次モーガンミニマム条件の厚さである3.75μmとした以外は同じ構成のものとする。この旋光子の特性を図12に示す。これより、405nmにおける偏光変換効率は温度変化に対して100%に近い値を示すものの、660nmでは80%以下、780nmでは60%以下となり、異なる波長の光および温度変化に対してまでも高い値を得ることはできない。
【0062】
(実施例2)
本発明の第2の実施形態に係る図6(a)の旋光子20aの作製方法を説明するが、このうち旋光子10は、実施例1と同じ材料および同じ製造方法であり、液晶層14のツイスト角は90°であるが、液晶層の厚さは8.7μmとする。波長板22aの作製方法は、まず、石英ガラス基板21aに、図示しないポリイミドを成膜し、ラビングにより水平配向膜を形成し、配向膜上に直径8.8μmのスペーサを散布する。その後、図示しない水平配向の石英ガラス基板を石英ガラス基板21a側の配向方向と平行になるように対向させ、8.8μmの一定の空隙にUV硬化性の液晶性モノマー組成物を注入し、UV光を照射して液晶を固化させる。図示しないガラス基板を離型除去することによって高分子液晶からなる波長板22aを作製する。
【0063】
同様の方法で、石英ガラス基板21b上に厚さ2μmの高分子液晶による波長板22bを作製し、図示しない接着剤によって波長板22aと波長板22bとを接着させ、さらに石英ガラス基板11aと石英ガラス基板21bとを接着させて旋光子20aとする。また、図6(b)の波長板24aおよび24bも同様の方法を用いるとともに石英ガラス基板11aと石英ガラス基板11bの面に図示しない接着剤で接着させて旋光子20bを作製する。なお、このとき、常温(25℃)における高分子液晶の405nmの光に対する常光屈折率(no)は1.544、異常光屈折率(ne)が1.589である。
【0064】
図7(c)において、入射する光の偏光方向と一致するX方向を基準として反時計回り方向をプラス(+)方向、時計回りをマイナス(−)方向と定義する。なお、電圧非印加時の液晶層14は図7(a)に示しように、光の進行方向に向かって0°から+90°にツイストして配向されている。そして、波長板22aの遅相軸は、+93°方向、波長板22bの遅相軸は89°方向となるような方向で重ねて旋光子20aを構成する。
【0065】
ここで、405nmの光が入射するとき、波長板22aの常温時(25℃)のリタデーション値(360°・Δn・d/λ)は、約352°である。また、波長板22bの常温時のリタデーション値は、約80°である。さらに、液晶層14は、入射光の偏光方向のX方向に対してプレツイスト角が0°であって、405nmの光が入射するとき、常温時のリタデーション値は、約735°である。この旋光子20aにP偏光をZ方向から入射するときの電圧非印加時の偏光変換効率を図13(a)に示す。この結果より、使用温度が大きく変化しても偏光変換効率Iは、いずれの波長、いずれの温度においても95%以上の高い値となり、波長板を積層することでより高い偏光変換効率で安定させることができる。
【0066】
また、液晶層間に9Vrmsの交流電圧を印加するとき(電圧印加時)は、液晶層の液晶分子の長軸方向は電界方向と平行に配向し、液晶層では入射光の偏光状態は変わらないが、積層した波長板によって偏光状態が変化する。また、この旋光子20aにP偏光をZ方向から入射するときの電圧印加時の偏光変換効率を図13(b)に示す。この結果より、使用温度が大きく変化しても偏光変換効率Iは、いずれの波長、いずれの温度においても1%以下の値に抑えることができ、ほぼP偏光のまま透過する。これらの結果より、電圧非印加/電圧印加による偏光変換効率Iの消光比を大きくすることができる。
【0067】
(実施例3)
本発明の第2の実施形態に係る図6(b)の旋光子20bの具体的な構成について説明する。このうち旋光子10は、実施例1と同じ材料および同じ製造方法であり、液晶層14のツイスト角は90°であるが、液晶層の厚さは8.2μmとする。また、波長板24a、24bは実施例2と同じ材料および同じ製造方法であるが、24aの厚さは8.5μm、X方向を基準として遅相軸は92°方向に設定する。また、24bの厚さは2.3μm、X方向を基準として遅相軸は2°方向に設定する。
【0068】
ここで、405nmの光が入射するとき、波長板24aの常温時(25℃)のリタデーション値は、約340°である。また、液晶層14は、入射光の偏光方向のX方向に対してプレツイスト角が2°で厚さ方向に90°ツイストし、405nmの光が入射するとき、常温時のリタデーション値は、約692°である。さらに、波長板24bの常温時のリタデーション値は、約92°である。この旋光子20bにP偏光をZ方向から入射するときの電圧非印加時の偏光変換効率を図14(a)に示す。この結果より、使用温度が大きく変化しても偏光変換効率Iは、いずれの波長、いずれの温度においても94%以上の高い値となり、波長板を積層することでより高い偏光変換効率で安定させることができる。
【0069】
また、液晶層間に液晶層間に9Vrmsの交流電圧を印加するとき(電圧印加時)は、液晶層の液晶分子の長軸方向は電界方向と平行に配向し、液晶層では入射光の偏光状態は変わらないが、積層した波長板によって偏光状態が変化する。また、この旋光子20bにP偏光をZ方向から入射するときの電圧印加時の偏光変換効率を図14(b)に示す。この結果より、使用温度が大きく変化しても偏光変換効率Iは、いずれの波長、いずれの温度においても1%以下の値に抑えることができ、ほぼP偏光のまま透過する。これらの結果より、電圧非印加/電圧印加による偏光変換効率Iの消光比を大きくすることができる。
【0070】
(実施例4)
本発明の第3の実施形態に係る図8の旋光子30の具体的な構成について説明する。このうち旋光子10bは、ツイスト角を91°とすることと、ツイスト方向が図9(a)に示すように液晶分子が15bのように時計回り(−方向)にツイストさせていること、以外は実施例1と同じである。また、液晶の常光屈折率および異常光屈折率は、実施例1と同じものである。このときの液晶層14の厚さは8.6μmとする。
【0071】
次に、TN型高分子液晶セルの作製方法を説明する。石英ガラス基板31に、ポリイミドを成膜してラビングすることにより図示しない水平配向膜を形成し、配向膜上に直径18.2μmのスペーサを散布する。その後、図示しないもう一つの水平配向膜を形成したガラス基板を石英ガラス基板31に対して配向方向が94°の角度をなすように対向させ、18.2μmの一定の空隙にUV硬化性の液晶性モノマー組成物を注入する。このときの液晶分子は厚さ方向にツイストして配向される。次いで、UV光を照射して液晶を固化させる。ここで、405nmの光が入射するとき、液晶層14の25℃におけるリタデーション値は、約726°であり、同条件におけるTN型高分子液晶層32は約728°である。そして、図示しないガラス基板を離型除去することによってTN型高分子液晶層32を形成し、図示しない接着剤によって石英ガラス基板11aとTN型高分子液晶層32とを接着して旋光子30を作製する。
【0072】
また、TN型高分子液晶層32のうち、光が入射する側にある液晶分子33の配向方向はX方向に一致し、プレツイスト角は0°である。そして、TN型高分子液晶層32の光の出射側では液晶分子33は+94°の方向(反時計回りのツイスト)に配向される。また、電圧非印加時において液晶層14の光の入射側の液晶分子15bはX方向に対してプレツイスト角が1°で配向され、液晶層14の光の出射側では液晶分子15bは90°の方向(時計回りのツイスト)に配向される。また、電圧印加時には、図9(b)に示すように液晶層14の液晶が電界方向に配向するため、TN型高分子液晶層を出射した光の偏光状態で出射する。
【0073】
この旋光子30にP偏光をZ方向から入射するときの電圧非印加時の偏光変換効率を図15(a)に示す。この結果より、使用温度が大きく変化しても偏光変換効率Iは、いずれの波長、いずれの温度においても5%以下の値となる。また、液晶層間に液晶層間に9Vrmsの交流電圧を印加するとき(電圧印加時)は、液晶層の液晶分子の長軸方向は電界方向と平行に配向し、TN型高分子液晶層を出射した光の偏光状態で出射する。また、この旋光子30にP偏光をZ方向から入射するときの電圧印加時の偏光変換効率を図15(b)に示す。この結果より、使用温度が大きく変化しても偏光変換効率Iは、いずれの波長、いずれの温度においても97%以上の高い値となる。したがって、旋光子に対して電圧非印加時には、入射する直線偏光の偏光方向を変えず、電圧印加時には、入射する直線偏光の偏光方向をほぼ直交させるように出射させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上のように、本発明に係る旋光子は、特定の直線偏光が異なる波長の光で入射するとき、電圧を印加状態、非印加状態に切り替えることによって容易に出射する偏光状態を変える制御ができる。さらに使用温度の変化による特性の変化が少なく、出射する光の偏光状態が安定する高い品質を得ることができ、安定した特性を有する光ヘッド装置などへの適用が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】第1の実施形態に係る旋光子の断面模式図。
【図2】第1の実施形態に係る旋光子の斜視的模式図および液晶層厚さに対する偏光変換効率特性。
【図3】第1の実施形態に係る旋光子の405nm入射時の使用温度変化による偏光変換効率特性。
【図4】液晶層厚さに対する偏光変換効率特性。
【図5】405nmの入射光の偏光方向に対する偏光変換効率特性。
【図6】第2の実施形態に係る旋光子の断面模式図。
【図7】第2の実施形態に係る旋光子の斜視的模式図。
【図8】第3の実施形態に係る旋光子の断面模式図。
【図9】第3の実施形態に係る旋光子の斜視的模式図。
【図10】旋光子を用いた光ヘッド装置の一例を示す模式図。
【図11】第1の実施形態に係る旋光子の偏光変換効率特性。
【図12】従来の設計によるアクティブ型の旋光子の偏光変換効率特性。
【図13】第2の実施形態に係る旋光子の偏光変換効率特性(波長板2枚液晶層に対して光入射側に積層)。
【図14】第2の実施形態に係る旋光子の偏光変換効率特性(波長板1枚ずつ液晶層の光入射側前後に積層)。
【図15】第3の実施形態に係る旋光子の偏光変換効率特性。
【符号の説明】
【0076】
10a、10b、20a、20b、30、40 旋光子
11a、11b、21a、21b、25、31 透明基板
12a、12b 透明電極
13a、13b 配向膜
14 液晶層
15a、15b 液晶分子
22、22a、22b、24、24a、24b 波長板
32 TN型高分子液晶層
33 高分子液晶分子
41 光源
42 コリメータレンズ
43 偏光ビームスプリッタ
44 ミラー
46a、46b 対物レンズ
45a、45b 1/4波長板
47a、47b 光ディスク
48 光検出器
50 光ヘッド装置
51a BDを記録・再生する光路(往路)
51b BDを記録・再生する光路(復路)
52a HD−DVD/DVD/CDを記録・再生する光路(往路)
52b HD−DVD/DVD/CDを記録・再生する光路(復路)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に配置された一対の透明基板と、
一対の前記透明基板の対向する空間を液晶で充填した液晶層を備え、
少なくとも波長λ1と、前記波長λ1よりも大きい波長λ2の直線偏光となる光が入射する旋光子であって、
前記液晶は、ネマティック液晶または高分子液晶からなり、
前記液晶が前記液晶層の厚さ方向にらせん状に捩れているツイスト配向状態において、常温における前記波長λ2の1次モーガンミニマム条件となる厚さdλ21が前記波長λ1のn次モーガンミニマム条件となる厚さdλ1n以上でかつ、前記波長λ1の(n+1)次モーガンミニマム条件となる厚さdλ1(n+1)未満であるとき(nは自然数)、前記液晶層の厚さは、下記(A)または(B)
(A)前記厚さdλ21が(dλ1n+dλ1(n+1))/2以上であるとき、dλ21より大きい値、
(B)前記厚さdλ21が(dλ1n+dλ1(n+1))/2未満であるとき、dλ1nより大きい値、
を満たす旋光子。
【請求項2】
前記液晶層に電圧を印加する透明電極を備え、
前記液晶層に印加する電圧によって、前記ツイスト配向状態と、前記液晶が前記液晶層の厚さ方向に揃う垂直配向状態と、を切り替えることができる請求項1に記載の旋光子。
【請求項3】
前記液晶層の厚さは、前記厚さdλ21が(dλ1n+dλ1(n+1))/2以上であるとき前記厚さdλ21と前記厚さdλ1(n+1)との中間値より大きい値であり、前記厚さdλ21が(dλ1n+dλ1(n+1))/2未満であるとき前記厚さdλ1nと前記厚さdλ21との中間値より大きい値である請求項1または請求項2に記載の旋光子。
【請求項4】
少なくとも1枚の波長板が前記液晶層に積層される請求項1〜3いずれか1項に記載の旋光子。
【請求項5】
2枚の厚さの異なる波長板がそれぞれの遅相軸を交差させるように前記液晶層の一方の面に重なって積層されるかまたは、前記液晶層の両面にそれぞれ1枚ずつ積層される請求項4に記載の旋光子。
【請求項6】
前記液晶層に液晶分子が厚さ方向にらせん状に捩れている高分子液晶からなるTN型高分子液晶層が積層される請求項1〜5いずれか1項に記載の旋光子。
【請求項7】
少なくとも前記波長λ1と前記波長λ2の直線偏光を出射する光源と、
前記光源から出射した光の光路を分離する偏光ビームスプリッタと、
前記偏光ビームスプリッタから出射した光を光記録媒体上に集光させる対物レンズと、
前記光記録媒体で反射した光を検出する光検出器と、を備える光ヘッド装置であって、
前記光源と前記偏光ビームスプリッタとの光路中に請求項1〜6いずれか1項に記載の旋光子が配置される光ヘッド装置。
【請求項8】
前記波長λ1と前記波長λ2と前記波長λ2よりも大きい波長λ3の直線偏光となる光を出射する光源を有し、
前記波長λ1は405nm波長帯、前記波長λ2は660nm波長帯、前記波長λ3は780nm波長帯に含まれる請求項7に記載の光ヘッド装置。
【請求項1】
平行に配置された一対の透明基板と、
一対の前記透明基板の対向する空間を液晶で充填した液晶層を備え、
少なくとも波長λ1と、前記波長λ1よりも大きい波長λ2の直線偏光となる光が入射する旋光子であって、
前記液晶は、ネマティック液晶または高分子液晶からなり、
前記液晶が前記液晶層の厚さ方向にらせん状に捩れているツイスト配向状態において、常温における前記波長λ2の1次モーガンミニマム条件となる厚さdλ21が前記波長λ1のn次モーガンミニマム条件となる厚さdλ1n以上でかつ、前記波長λ1の(n+1)次モーガンミニマム条件となる厚さdλ1(n+1)未満であるとき(nは自然数)、前記液晶層の厚さは、下記(A)または(B)
(A)前記厚さdλ21が(dλ1n+dλ1(n+1))/2以上であるとき、dλ21より大きい値、
(B)前記厚さdλ21が(dλ1n+dλ1(n+1))/2未満であるとき、dλ1nより大きい値、
を満たす旋光子。
【請求項2】
前記液晶層に電圧を印加する透明電極を備え、
前記液晶層に印加する電圧によって、前記ツイスト配向状態と、前記液晶が前記液晶層の厚さ方向に揃う垂直配向状態と、を切り替えることができる請求項1に記載の旋光子。
【請求項3】
前記液晶層の厚さは、前記厚さdλ21が(dλ1n+dλ1(n+1))/2以上であるとき前記厚さdλ21と前記厚さdλ1(n+1)との中間値より大きい値であり、前記厚さdλ21が(dλ1n+dλ1(n+1))/2未満であるとき前記厚さdλ1nと前記厚さdλ21との中間値より大きい値である請求項1または請求項2に記載の旋光子。
【請求項4】
少なくとも1枚の波長板が前記液晶層に積層される請求項1〜3いずれか1項に記載の旋光子。
【請求項5】
2枚の厚さの異なる波長板がそれぞれの遅相軸を交差させるように前記液晶層の一方の面に重なって積層されるかまたは、前記液晶層の両面にそれぞれ1枚ずつ積層される請求項4に記載の旋光子。
【請求項6】
前記液晶層に液晶分子が厚さ方向にらせん状に捩れている高分子液晶からなるTN型高分子液晶層が積層される請求項1〜5いずれか1項に記載の旋光子。
【請求項7】
少なくとも前記波長λ1と前記波長λ2の直線偏光を出射する光源と、
前記光源から出射した光の光路を分離する偏光ビームスプリッタと、
前記偏光ビームスプリッタから出射した光を光記録媒体上に集光させる対物レンズと、
前記光記録媒体で反射した光を検出する光検出器と、を備える光ヘッド装置であって、
前記光源と前記偏光ビームスプリッタとの光路中に請求項1〜6いずれか1項に記載の旋光子が配置される光ヘッド装置。
【請求項8】
前記波長λ1と前記波長λ2と前記波長λ2よりも大きい波長λ3の直線偏光となる光を出射する光源を有し、
前記波長λ1は405nm波長帯、前記波長λ2は660nm波長帯、前記波長λ3は780nm波長帯に含まれる請求項7に記載の光ヘッド装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−294378(P2009−294378A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147035(P2008−147035)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】
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