説明

既製杭の施工方法とその施工方法に用いる蓋

【課題】掘削装置や施工のために膨大なコストをかけずに、改良体を、既製杭の内部には充填せずに既製杭の外周部に確実かつ容易に充填することができる、既製杭の施工方法とその施工方法に用いる蓋を提供する。
【解決手段】掘削された地盤中に固化材と土砂とを攪拌して造成された改良体5に、既製杭8を建て込む既製杭の施工方法において、前記既製杭8が建て込まれた後、前記既製杭8の内部に圧力をかけることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先堀り工法および中堀り工法を用いて既製杭を施工する方法に関する。なお、本発明において既製杭とは、中空の、鋼管杭やコンクリート杭(鉄筋コンクリート杭(RC杭)、プレストレストコンクリート(PC)杭、高強度プレストレストコンクリート(PHC)杭、外殻鋼管付きコンクリート(SC)杭、高強度コンクリート拡径杭(ST)杭、鉄筋または平鋼を入れたコンクリート(PRC)杭等を含む)等を示す。
【背景技術】
【0002】
市街地等における既製杭の施工方法としては、低振動、低騒音で、かつ狭いスペースで施工できる埋込み杭工法が、一般的に採用されている。この埋込み杭工法には、さらに先掘り工法、中掘り工法等がある。
【0003】
先掘り工法は、スパイラルオーガーあるいは先端に掘削ヘッドを設けた掘削ロッド等の掘削装置で、地盤中に穴を先に掘削し、その後、当該穴に既製杭を建て込む工法である。通常、掘削ヘッド部分等からセメントミルク等の固化材を、既製杭を建て込む穴に注入し、土砂と攪拌・混合したソイルセメント等の中へ既製杭を沈設していくもので、ソイルセメント等の固化により既製杭を掘削穴中に固定し、支持力を得る。支持層における先端支持力を増すため、既製杭の下端に、富配合のセメントミルクもしくはモルタル等を充填し、先端根固め部を形成することも多い。
【0004】
一方、中掘り工法は、中空の既製杭8を用いた工法で、施工手順の一例を図10に模式的に断面図として示す。図中の(1)から(4)の番号順が施工順に当たる。既製杭8の中空部に通したオーガーあるいは掘削ロッド1先端の掘削ヘッド1aの回転により地盤3の掘削を行いつつ、掘削穴2へ中空の既製杭8を建て込んで行く(図10(1)を参照)。通常、掘削ビットや掘削ヘッド部分等から、水に代表される掘削液、セメントミルクに代表される固化材、もしくは空気を注入しながら掘削すると共に、既製杭8の建て込みを同時に行なう(図10(2)を参照)。中掘り工法の場合も、富配合ソイルセメント6、もしくはモルタル等からなる先端根固め部を形成し(図10(3)を参照)、先端支持力を高めることができる(図10(4)を参照)。
【0005】
しかしこれらの工法場合、ソイルセメント等が中空既製杭の中空部分(以降、既製杭の内部と呼ぶ)にも充填され、固化材の使用量が増大しコストが上昇するという問題がある。既製杭の内部に充填されたソイルセメントは、杭の剛性と杭の支持力には影響しないので、既製杭の内部にソイルセメントを充填しなくても、杭の性能は全く変わらない。そして、この問題は、杭径が大きくなればなる程、中空部分が増加する為に大きくなる。
【0006】
そこで、この問題を克服する為、特許文献1、特許文献2および特許文献3の発明がなされている。特許文献1には、中空部を貫通する掘削装置の回転軸に杭の中空部を閉じるシャッタアを設け、杭の内部に混合してなるソイルセメントの流入を阻止する技術が開示されている。また、特許文献2には、中空部を貫通する掘削装置の回転軸に逆流装置を設け、杭の内部に混合してなるソイルセメントの流入を阻止する技術が開示されている。さらに、特許文献3には、スラリー状の固化材を鋼管外周面に限定して吐出できる掘削装置の技術が開示されている。
【特許文献1】特開昭63−277318号公報
【特許文献2】特開昭63−233190号公報
【特許文献3】特開2001−064970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、特許文献2および特許文献3の何れの技術も、掘削装置の攪拌軸や攪拌翼に特殊な装置を付加したり、特殊な構造とする必要があり、掘削装置の製作に膨大なコストがかかる。さらに、特許文献1の技術では、地中深くの圧力に耐えるシャッタアの構造は、かなり剛性の大きなものが必要となり、装置が大がかりになる。一方、特許文献2の技術では、施工において逆流スパイラルと管内面にはある程度の隙間が必要であり、その隙間を通してソイルセメントが上昇し、杭内部にも充填されてしまうおそれがある。
【0008】
あるいは、特許文献3の技術では、固化材(セメントミルク)が地中深くで吐出されるため、既製杭の外周面にソイルセメントが適切に配置される可能性は低い。特に、ソイルセメントの流動性が低い場合、既製杭の外周部にソイルセメントが配置されるように施工するのは難しくなる。
【0009】
本発明は、上記問題を解決する為になされたものであって、掘削装置や施工のために膨大なコストをかけずに、改良体(ソイルセメント等)を、既製杭の内部には充填せずに既製杭の外周部に確実かつ容易に充填することができる、既製杭の施工方法とその施工方法に用いる蓋を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記の課題を解決するため、本発明に係る既製杭の施工方法は、掘削された地盤中に固化材と土砂とを攪拌して造成された改良体に、既製杭を建て込む既製杭の施工方法において、前記改良体に前記既製杭が建て込まれた後、前記既製杭の内部に圧力をかけることを特徴とする。
(2)上記の課題を解決するため、本発明に係る既製杭の施工方法は、既製杭を建て込む地盤を掘削した後、掘削された地盤中に固化材を注入し、前記注入された固化材と土砂とを攪拌して改良体を造成し、さらに、前記造成された改良体に既製杭を建て込む既製杭の施工方法において、前記改良体に前記既製杭が建て込まれた後、前記既製杭の内部に圧力をかけることを特徴とする。
(3)上記の課題を解決するため、本発明に係る既製杭の施工方法は、地盤を掘削しながら既製杭を建て込み、掘削された地盤中に既製杭を建て込んだ後、前記掘削された地盤中に固化材を注入し、さらに、前記注入された固化材と土砂とを攪拌して改良体を造成する既製杭の施工方法において、前記改良体に前記既製杭が建て込まれた後、前記既製杭の内部に圧力をかけることを特徴とする。
(4)上記(1)から(3)において、既製杭の内部に圧力をかける為に、液体と気体とを既製杭の内部へ供給することを特徴とする。
(5)上記の課題を解決するため、本発明に係る施工方法に用いる蓋は、上記(1)〜(4)の何れか一項に記載の既製杭の施工方法に用いる蓋であって、既製杭の上端面を閉塞可能な面積を有する板部と、既製杭の内部へ液体を供給する為の給水孔と、既製杭の内部へ気体を供給する為の加圧孔と、既製杭の内部へかけられた圧力を保持するシールとを備えたことを特徴とする。
(6)上記の課題を解決するため、本発明に係る施工方法に用いる蓋は、上記(1)〜(4)の何れか一項に記載の既製杭の施工方法に用いる蓋であって、既製杭の内部へかけられた圧力を保持する為のシールと既製杭の上端面を閉塞可能な面積を有する板からなり、既製杭の内部へ液体を供給する為の給水孔と、既製杭の内部へ気体を供給する為の加圧孔とが備えられた板部と、該板部の縁部に固定され、少なくとも前記シールが配置可能な高さを有する中空の柱からなる柱部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、固化材と土砂とを混合した改良体(例えば、セメントミルクと土砂から造成されるソイルセメント)を既製杭下部で造成した後に、既製杭の内部に圧力をかけるという簡略な方法で、既製杭の外周面における支持力性能を向上させると共に、杭剛性もしくは荷重支持には関与しない余分な改良体を既製杭内部に充填せずに施工することができる。この為、固化材の余分な注入を防ぐことができ、施工コストを大きく下げることができる。さらに、固化材の注入量を少なくできることから、改良体を含む土砂等の排出が減るので、産業廃棄物の処理が減り環境への負荷を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明について、図を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
(a)施工方法の例:第1の実施の形態
先ず、本発明に係る既製杭の施工方法の一例を、第1の実施の形態として説明する。図1は、本実施の形態に係る施工手順を、模式的に示す断面図である。図1(1)から図1(8)までの番号順が、施工の順番を示しており、この番号に沿って、第1の実施の形態を説明する。
【0014】
この第1の実施の形態においては、中空の鋼管杭8を掘削オーガー1を用いて地盤3に、先堀り工法で埋設する。鋼管杭8の外周部はソイルセメント5で改良し、鋼管杭8の先端根固め部は富配合ソイルセメント6で形成する。鋼管杭8の下端部の外周面には、先端根固め部における支持力を向上させる為の突起が複数段設けられている。また、掘削ロッド1の先端部には、従来と同様に、掘削液や固化材を噴出可能な噴出孔が設けられていて、地盤中や泥土中に注入可能となっている。なお、固化材としては、実際の杭の施工においてはセメントミルクの使用頻度が最も高いので、セメントミルクを用いた場合で説明する。また、掘削液としては、ソイルセメント5および富配合ソイルセメント6の強度へ影響の少ない水を用いた場合で説明する。固化材と攪拌する土砂としては、排土を発生させない為に、地盤3が掘削されて発生する土砂を用いた場合で説明する。その為、セメントミルクと地盤3の土砂と水とを攪拌して造成されるソイルセメント5が改良体となる。さらに、施工装置は、通常の先堀り工法で用いられる3点式杭打ち機を用いる。
【0015】
(1)先ず、掘削ロッド1のみを地盤3に回転貫入させ、予め地盤3を泥土化させる。回転貫入した地盤3に、掘削ロッド1の先端部の噴出孔から水を注入しながら掘削を行う。この時、排土は殆ど行わないように施工する。その為、掘削後の掘削穴2は、地盤3の土砂と水が混合されてできた泥土4で満たされる。
【0016】
(2)次に、支持層まで掘削を行ったら、掘削ロッド1の貫入を停止する。
【0017】
(3)そして、掘削ロッド1の先端の噴出孔から、掘削穴2の底部にセメントミルクを注入する。そして、掘削ロッド1を回転させながら所定ストロークだけ上下動させて、注入したセメントミルクと泥土4とを攪拌混合してソイルセメント5にする。
【0018】
セメントミルクの注入量は、従来技術のように掘削した全ての深さがソイルセメント5で満たされるような量とするのでは無く、図1(3)に例示するように、掘削穴2の底から途中の深さまでがソイルセメント5で満たされるように注入する。即ち、鋼管杭8の施工が完成した時に、鋼管杭8の内部にはソイルセメント5が殆ど無く、かつ鋼管杭8の外周部をソイルセメント5が充填するのに十分な量であれば良い。なお、セメントミルクの注入量は、埋設する鋼管杭8の長さや内径、もしくは施工仕様によって、適宜決定する。
【0019】
(4)上記のように掘削とソイルセメント5の造成が完了したら、掘削ロッド1を引き抜き、自重沈設および回転圧入によって、上記泥土4とソイルセメント5の中に鋼管杭8を建て込む。
【0020】
(5)鋼管杭8を所定の深さまで建て込んだら、鋼管杭8の上端部に蓋7をし、蓋7の給水孔73を給水ポンプ(図示せず)に、蓋7の加圧孔74を加圧ポンプ(図示せず)に、それぞれ接続する。そして、鋼管杭8の内部に、加圧孔74から圧縮空気を送って圧力をかけながら、給水孔73からソイルセメント5の上面Aの上昇を防ぐ水76を給水し、圧縮空気と水76とで鋼管杭の内部に圧力をかけることで、鋼管杭8の内部にあるソイルセメント5の上面Aに下向きの圧力をかける。
【0021】
(6)その圧力により、鋼管杭8の内部にあるソイルセメント5は、鋼管杭8の下端と掘削穴2の底との隙間から、鋼管杭8の外周部へ押し上げられる。この時、鋼管杭8の外周部の上部にある泥土4を上方に押し上げ、鋼管杭8の外周部はそのほぼ全長がソイルセメント5で満たされる。
【0022】
(7)鋼管杭8の内部にあったソイルセメント5により、鋼管杭8の外周部のほぼ全長をソイルセメント5で満たした状態で、蓋7を取り外し、再び、掘削ロッド1を支持層まで配置する。そして、鋼管杭8の下端部に富配合のセメントミルクを注入する。そして、掘削ロッド1を回転させながら所定ストロークだけ上下動させて、注入した富配合のセメントミルクとソイルセメント5とを攪拌混合して、先端根固め用の富配合ソイルセメント6を造成する。この時、掘削ロッド1と同時に鋼管杭8も上下動や回転させると、掘削ロッド1と鋼管杭8の下端部外周面の突起による攪拌効果で、より良好な富配合ソイルセメント6が造成される。
【0023】
(8)先端根固め用の富配合ソイルセメント6が造成できたら、掘削ロッド1を引き抜き、ソイルセメント5と富配合ソイルセメント6を固化させる。
【0024】
なお、本実施の形態において、ソイルセメント5は、かけられた圧力により上昇しやすいように、流動性が高いものの方が好ましい。具体的には、セメントミルクの水セメント比W/Cを100〜200質量%程度として、調整する。
【0025】
本実施の形態によれば、根固め施工する前に、ソイルセメント5を鋼管杭8の下部で造成し、そのソイルセメント5を圧力により鋼管杭8の内部から外周部へ移動させ、鋼管杭8の外周部へ押し上げるといった簡略な方法で、鋼管杭8の外周面支持力性能を向上させ、かつ鋼管杭8内部にあるソイルセメントを減少させ、さらには無くすことができる。
【0026】
(b)施工方法の例:第2の実施の形態
本発明に係る既製杭の施工方法の別の例を、第2の実施の形態として説明する。図2は、本実施の形態に係る施工手順を、模式的に示す断面図である。図2(1)から図2(7)までの番号順が、施工の順番を示しており、この番号に沿って、第2の実施の形態を説明する。
【0027】
この第2の実施の形態においては、先端に掘削ビット1aが設けられた掘削ロッド1を用いて、地盤3に鋼管杭8を中堀り工法で埋設する。中空の鋼管杭8の外周部はソイルセメント5で改良し、鋼管杭8の先端根固め部は富配合ソイルセメント6で形成する。鋼管杭8の下端部の外周面には、先端根固め部における支持力を向上させる為の突起が複数段設けられている。また、掘削ロッド1の先端部には、従来と同様に、掘削液や固化材を噴出可能な噴出孔が設けられていて、地盤中や泥土中に注入可能となっている。なお、固化材としては、セメントミルクを用いた場合で説明する。また、掘削液としては、ソイルセメント5および富配合ソイルセメント6の強度へ影響の少ない水を用いた場合で説明する。固化材と攪拌する土砂としては、排土を発生させない為に、地盤3が掘削されて発生する土砂を用いた場合で説明する。その為、セメントミルクと地盤3の土砂と水とを攪拌して造成されるソイルセメント5が改良体となる。さらに、施工装置は、通常の中堀り工法で用いられる3点式杭打ち機を用いる。
【0028】
(1)先ず、図示しない3点式杭打ち機に鋼管杭8と掘削ロッド1を連結して、鋼管杭8の下端に配置された掘削ビット1aを回転させると共に、鋼管杭8を掘削ロッド1の回転と反対方向に回転させて、掘削ビット1aと共に、地盤3の表面から地盤3中に鋼管杭8を回転貫入させる。この時、掘削ロッド1の先端部の噴出孔から水を注入しながら地盤3の掘削を行う。この時、排土は殆ど行わないように施工する。その為、掘削後の掘削穴2は、地盤3の土砂と水が混合されてできた泥土4で満たされる。
【0029】
(2)次に、支持層まで掘削を行ったら、掘削ロッド1の貫入を停止する。
【0030】
(3)そして、掘削ロッド1の先端の噴出孔から、掘削穴2の底部にセメントミルクを注入する。そして、鋼管杭8を回転させながら所定ストロークだけ上下動させて、注入したセメントミルクと泥土4とを攪拌混合してソイルセメント5にする。
【0031】
セメントミルクの注入量は、従来技術のように掘削した全ての深さがソイルセメント5で満たされるような量とするのでは無く、図2(3)に例示するように、掘削穴2の底から途中の深さまでがソイルセメント5で満たされるように注入する。即ち、鋼管杭8の施工が完成した時に、鋼管杭8の内部にはソイルセメント5が殆ど無く、かつ鋼管杭8の外周部をソイルセメント5が充填するのに十分な量であれば良い。なお、セメントミルクの注入量は、埋設する鋼管杭8の長さや内径、もしくは施工仕様によって、適宜決定する。
【0032】
(4)上記のように掘削とソイルセメント5の造成が完了したら、掘削ロッド1を引き抜く。それから、鋼管杭8の上端部に蓋7をし、蓋7の給水孔73を給水ポンプ(図示せず)に、蓋7の加圧孔74を加圧ポンプ(図示せず)に、それぞれ接続する。そして、鋼管杭8の内部に、加圧孔74から圧縮空気を送って圧力をかけながら、給水孔73からソイルセメント5の上面Aの上昇を防ぐ水76を給水し、圧縮空気と水76とで鋼管杭の内部に圧力をかけることで、鋼管杭8の内部にあるソイルセメント5の上面Aに下向きの圧力をかける。
【0033】
(5)その圧力により、鋼管杭8の内部にあるソイルセメント5は、鋼管杭8の下端と掘削穴2の底との隙間から、鋼管杭8の外周部へ押し上げられる。この時、鋼管杭8の外周部の上部にある泥土4を上方に押し上げ、鋼管杭8の外周部はそのほぼ全長がソイルセメント5で満たされる。
【0034】
(6)鋼管杭8の内部にあったソイルセメント5により、鋼管杭8の外周部のほぼ全長をソイルセメント5で満たした状態で、蓋7を取り外し、再び、掘削ロッド1を支持層まで配置する。そして、鋼管杭8の下端部に富配合のセメントミルクを注入する。そして、掘削ロッド1を回転させながら所定ストロークだけ上下動させて、注入した富配合のセメントミルクとソイルセメント5とを攪拌混合して、先端根固め用の富配合ソイルセメント6にする。この時、掘削ロッド1と同時に鋼管杭8も上下動させると、掘削ロッド1と鋼管杭8の下端部外周面の突起による攪拌効果で、より良好な富配合ソイルセメント6が造成される。
【0035】
(7)先端根固め用の富配合ソイルセメント6が造成できたら、掘削ロッド1を引き抜き、ソイルセメント5と富配合ソイルセメント6を固化させる。
【0036】
なお、本実施の形態において、ソイルセメント5は、かけられた圧力により上昇しやすいように、流動性が高いものの方が好ましい。具体的には、セメントミルクの水セメント比W/Cを100〜200質量%程度として、調整する。
【0037】
なお、本実施の形態において、掘削ロッド1と鋼管杭8との回転方向は、同方向とすることもできる。地盤、杭径もしくは施工装置等を考慮して、適宜選択すれば良い。
【0038】
本実施の形態によれば、根固め施工する前に、ソイルセメント5を鋼管杭8の下部で造成し、そのソイルセメント5を圧力により鋼管杭8の内部から外周部へ移動させ、鋼管杭8の外周部へ押し上げるといった簡略な方法で、鋼管杭8の外周面支持力性能を向上させ、かつ鋼管杭8内部にあるソイルセメントを減少させ、さらには無くすことができる。
【0039】
(c)施工方法の例:第3の実施の形態
第1の実施の形態の別の例を、第3の実施の形態として説明する。第3の実施の形態では、上記(a)の工程(4)で掘削ロッド1を抜かずに施工を行う。図3は、本実施の形態に係る施工手順を、模式的に示す断面図である。図3(1)から図3(8)までの番号順が、施工の順番を示しており、この番号に沿って、第3の実施の形態を説明する。また、第1の実施の形態と同じものについては、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0040】
(1)先ず、掘削ロッド1の先端部の噴出孔から水を注入しながら地盤3を掘削し、泥土化させる。この時、排土は殆ど行わないように施工する。その為、掘削後の掘削穴2は、地盤3の土砂と水が混合されてできた泥土4で満たされる。
【0041】
(2)次に、支持層まで掘削を行ったら、掘削ロッド1の貫入を停止する。
【0042】
(3)そして、掘削ロッド1の先端の噴出孔から、掘削穴2の底部にセメントミルクを注入する。そして、掘削ロッド1を回転させながら所定ストロークだけ上下動させて、注入したセメントミルクと泥土4とを攪拌混合してソイルセメント5にする。
【0043】
セメントミルクの注入量は、従来技術のように掘削した全ての深さがソイルセメント5で満たされるような量とするのでは無く、図3(3)に例示するように、掘削穴2の底から途中の深さまでがソイルセメント5で満たされるように注入する。即ち、鋼管杭8の施工が完成した時に、鋼管杭8の内部にはソイルセメント5が殆ど無く、かつ鋼管杭8の外周部をソイルセメント5が充填するのに十分な量であれば良い。なお、セメントミルクの注入量は、埋設する鋼管杭8の長さや内径、もしくは施工仕様によって、適宜決定する。
【0044】
(4)上記のように掘削とソイルセメント5の造成が完了したら、掘削ロッド1をそのままにした上で、鋼管杭8を、自重沈設および回転圧入によって上記泥土4とソイルセメント5の中に建て込む。なお、施工条件や使用する掘削ロッド1の種類によっては、掘削ロッドを1度引抜き、その後、鋼管杭8と掘削ロッド1を同時に貫入させることにより鋼管杭8を建て込む、としても良い。
【0045】
(5)鋼管杭8を所定の深さまで建て込んだら、鋼管杭8の上端部に蓋7をし、蓋7の給水孔73を給水ポンプ(図示せず)に、蓋7の加圧孔74を加圧ポンプ(図示せず)に、それぞれ接続する。そして、鋼管杭8の内部に、加圧孔74から圧縮空気を送って圧力をかけながら、給水孔73からソイルセメント5の上面Aの上昇を防ぐ水76を給水し、圧縮空気と水76とで鋼管杭の内部に圧力をかけることで、鋼管杭8の内部にあるソイルセメント5の上面Aに下向きの圧力をかける。
【0046】
(6)その圧力により、鋼管杭8の内部にあるソイルセメント5は、鋼管杭8の下端と掘削穴2の底との隙間から、鋼管杭8の外周部へ押し上げられる。この時、鋼管杭8の外周部の上部にある泥土4を上方に押し上げ、鋼管杭8の外周部はそのほぼ全長がソイルセメント5で満たされる。
【0047】
(7)鋼管杭8の内部にあったソイルセメント5により、鋼管杭8の外周部のほぼ全長をソイルセメント5で満たした状態で、蓋7を取り外し、鋼管杭8の下端部に富配合のセメントミルクを注入する。そして、掘削ロッド1を回転させながら所定ストロークだけ上下動させて、注入した富配合のセメントミルクとソイルセメント5とを攪拌混合して、先端根固め用の富配合ソイルセメント6を造成する。この時、掘削ロッド1と同時に鋼管杭8も上下動や回転させると、掘削ロッド1と鋼管杭8の下端部外周面の突起による攪拌効果で、より良好な富配合ソイルセメント6が造成される。
【0048】
(8)先端根固め用の富配合ソイルセメント6が造成できたら、掘削ロッド1を引き抜き、ソイルセメント5と富配合ソイルセメント6を固化させる。
【0049】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態の効果の他に、掘削ロッド1の引抜きと再度の挿入の手間が省けるので、施工時間をさらに短くすることができる。
【0050】
(d)施工方法の例:第4の実施の形態
第2の実施の形態の別の例を、第4の実施の形態として説明する。第4の実施の形態では、上記(b)の工程(4)で掘削ロッド1を抜かずに施工を行う。図4は、本実施の形態に係る施工手順を、模式的に示す断面図である。図4(1)から図4(7)までの番号順が、施工の順番を示しており、この番号に沿って、第4の実施の形態を説明する。また、第2の実施の形態と同じものについては、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0051】
(1)先ず、図示しない3点式杭打ち機に鋼管杭8と掘削ロッド1を連結して、鋼管杭8の下端に配置された掘削ビット1aを回転させると共に、鋼管杭8を掘削ロッド1の回転と反対方向に回転させて、掘削ビット1aと共に、地盤3の表面から地盤3中に鋼管杭8を回転貫入させる。この時、掘削ロッド1の先端部の噴出孔から水を注入しながら地盤3の掘削を行う。この時、排土は殆ど行わないように施工する。その為、掘削後の掘削穴2は、地盤3の土砂と水が混合されてできた泥土4で満たされる。
【0052】
(2)次に、支持層まで掘削を行ったら、掘削ロッド1の貫入を停止する。
【0053】
(3)そして、掘削ロッド1の先端の噴出孔から、掘削穴2の底部にセメントミルクを注入する。そして、鋼管杭8を回転させながら所定ストロークだけ上下動させて、注入したセメントミルクと泥土4とを攪拌混合してソイルセメント5にする。
【0054】
セメントミルクの注入量は、従来技術のように掘削した全ての深さがソイルセメント5で満たされるような量とするのでは無く、図4(3)に例示するように、掘削穴2の底から途中の深さまでがソイルセメント5で満たされるように注入する。即ち、鋼管杭8の施工が完成した時に、鋼管杭8の内部にはソイルセメント5が殆ど無く、かつ鋼管杭8の外周部をソイルセメント5が充填するのに十分な量であれば良い。なお、セメントミルクの注入量は、埋設する鋼管杭8の長さや内径、もしくは施工仕様によって、適宜決定する。
【0055】
(4)上記のように掘削とソイルセメント5の造成が完了したら、掘削ロッドをそのままにした上で、鋼管杭8の上端部に蓋7をし、蓋7の給水孔73を給水ポンプ(図示せず)に、蓋7の加圧孔74を加圧ポンプ(図示せず)に、それぞれ接続する。そして、鋼管杭8の内部に、加圧孔74から圧縮空気を送って圧力をかけながら、給水孔73からソイルセメント5の上面Aの上昇を防ぐ水76を給水し、圧縮空気と水76とで鋼管杭の内部に圧力をかけることで、鋼管杭8の内部にあるソイルセメント5の上面Aに下向きの圧力をかける。
【0056】
(5)その圧力により、鋼管杭8の内部にあるソイルセメント5は、鋼管杭8の下端と掘削穴2の底との隙間から、鋼管杭8の外周部へ押し上げられる。この時、鋼管杭8の外周部の上部にある泥土4を上方に押し上げ、鋼管杭8の外周部はそのほぼ全長がソイルセメント5で満たされる。
【0057】
(6)鋼管杭8の内部にあったソイルセメント5により、鋼管杭8の外周部のほぼ全長をソイルセメント5で満たした状態で、蓋7を取り外し、鋼管杭8の下端部に富配合のセメントミルクを注入する。そして、掘削ロッド1を回転させながら所定ストロークだけ上下動させて、注入した富配合のセメントミルクとソイルセメント5とを攪拌混合して、先端根固め用の富配合ソイルセメント6にする。この時、掘削ロッド1と同時に鋼管杭8も上下動や回転させると、掘削ロッド1と鋼管杭8の下端部外周面の突起による攪拌効果で、より良好な富配合ソイルセメント6が造成される。
【0058】
(7)先端根固め用の富配合ソイルセメント6が造成できたら、掘削ロッド1を引き抜き、ソイルセメント5と富配合ソイルセメント6を固化させる。
【0059】
本実施の形態によれば、第2の実施の形態の効果の他に、掘削ロッド1の引抜きと再度の挿入の手間が省けるので、施工時間をさらに短くすることができる。
【0060】
(e)施工方法の例:第5の実施の形態
第2の実施の形態の別の例を、第5の実施の形態として説明する。第5の実施の形態では、上記(b)の工程(1)から工程(3)において、鋼管杭8の外周面の4カ所にスペーサー81を設けて掘削を行う。図5は、本実施の形態に係る施工手順を、模式的に示す断面図である。図5(1)から図5(8)までの番号順が、施工の順番を示しており、この番号に沿って、第5の実施の形態を説明する。また、第2の実施の形態と同じものについては、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。また、スペーサー81は、鋼製のパイプ等であり、その幅は、埋設する鋼管杭よりも遙かに小さい。
【0061】
(1)先ず、鋼管杭8の外周面に取り外し可能なスペーサー81を取り付ける。それから、図示しない3点式杭打ち機にスペーサー81付き鋼管杭8と掘削ロッド1を連結して、鋼管杭8の下端に配置された掘削ビット1aを回転させると共に、スペーサー81付き鋼管杭8を掘削ロッド1の回転と反対方向に回転させて、掘削ビット1aと共に、地盤3の表面から地盤3中に鋼管杭8を回転貫入させる。この時、掘削ロッド1の先端部の噴出孔から水を注入しながら地盤3の掘削を行う。この時、排土は殆ど行わないように施工する。その為、掘削後の掘削穴2は、地盤3の土砂と水が混合されてできた泥土4で満たされる。
【0062】
(2)次に、支持層まで掘削を行ったら、掘削ロッド1の貫入を停止する。
【0063】
(3)そして、掘削ロッド1の下端の噴出孔から、掘削穴2の底部にセメントミルクを注入する。そして、スペーサー81付き鋼管杭8を回転させながら所定ストロークだけ上下動させて、注入したセメントミルクと泥土4とを攪拌混合してソイルセメント5にする。
【0064】
セメントミルクの注入量は、従来技術のように掘削した全ての深さがソイルセメント5で満たされるような量とするのでは無く、図5(3)に例示するように、掘削穴2の底から途中の深さまでがソイルセメント5で満たされるように注入する。即ち、鋼管杭8の施工が完成した時に、鋼管杭8の内部にはソイルセメント5が殆ど無く、かつ鋼管杭8の外周部をソイルセメント5が充填するのに十分な量であれば良い。なお、セメントミルクの注入量は、埋設する鋼管杭8の長さや内径、もしくは施工仕様によって、適宜決定する。
【0065】
(4)上記のように掘削とソイルセメント5の造成が完了したら、掘削ロッド1を引き抜き、さらにスペーサー81も全数引き抜く。スペーサー81の幅だけ鋼管杭8と地盤3との間に空間Bができ、鋼管杭8の外周面にソイルセメント5が充填されやすくなる。
【0066】
(5)掘削ロッド1とスペーサー81を引き抜いた後に、鋼管杭8の上端部に蓋7をし、蓋7の給水孔73を給水ポンプ(図示せず)に、蓋7の加圧孔74を加圧ポンプ(図示せず)に、それぞれ接続する。そして、鋼管杭8の内部に、加圧孔74から圧縮空気を送って圧力をかけながら、給水孔73からソイルセメント5の上面Aの上昇を防ぐ水76を給水し、圧縮空気と水76とで鋼管杭の内部に圧力をかけることで、鋼管杭8の内部にあるソイルセメント5の上面Aに下向きの圧力をかける。
【0067】
(6)その圧力により、鋼管杭8の内部にあるソイルセメント5は、鋼管杭8の下端と掘削穴2の底との隙間から、鋼管杭8の外周面に沿ってできた空間Bへ押し上げられる。この時、鋼管杭8の外周部の上部にある泥土4を上方に押し上げ、鋼管杭8の外周部はそのほぼ全長がソイルセメント5で満たされる。
【0068】
(7)鋼管杭8の内部にあったソイルセメント5により、鋼管杭8の外周部のほぼ全長をソイルセメント5で満たした状態で、蓋7を取り外し、再び、掘削ロッド1を支持層まで配置する。そして、鋼管杭8の下端部に富配合のセメントミルクを注入する。そして、掘削ロッド1を回転させながら所定ストロークだけ上下動させて、注入した富配合のセメントミルクとソイルセメント5とを攪拌混合して、先端根固め用の富配合ソイルセメント6にする。
【0069】
(8)先端根固め用の富配合ソイルセメント6が造成できたら、掘削ロッド1を引き抜き、ソイルセメント5と富配合ソイルセメント6を固化させる。
【0070】
なお、本実施の形態において、スペーサー81は鋼製パイプを用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。プラスチック製やその他の材質でも構わないし、さらに中実の柱状の形態や溝形鋼等でも構わない。また、スペーサー81は4本用いたが、1本でも複数本でも構わない。スペーサー81の形状、材質および本数は、施工条件、杭径もしくは杭の長さ等を考慮して、適宜決定すれば良い。
【0071】
本実施の形態によれば、第2の実施の形態の効果の他に、鋼管杭8と地盤3の間に空間Bができることで、ソイルセメント5を外周面に押し上げやすくなり、鋼管杭1内へかける圧力も小さくすることが可能となる。
【0072】
(f)施工方法の例:第6の実施の形態
第1の実施の形態の別の例を、第6の実施の形態として説明する。第6の実施の形態では、上記(a)の工程(2)において支持層の手前までの掘削とし、上記(a)の工程(7)にて支持層まで掘削を行う。図6は、本実施の形態に係る施工手順を、模式的に示す断面図である。図6(1)から図6(8)までの番号順が、施工の順番を示しており、この番号に沿って、第6の実施の形態を説明する。また、第1の実施の形態と同じものについては、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0073】
(1)から(6)までは、上記(a)の工程(1)から工程(6)までと、同一内容の施工を行う。但し、(a)の工程(2)における「支持層まで」は、「支持層手前まで」に読み替える。
【0074】
(7)鋼管杭8の内部にあったソイルセメント5により、鋼管杭8の外周部のほぼ全長をソイルセメント5で満たした状態で、蓋7を取り外し、掘削ロッド1を支持層手前まで配置する。そして、このままの状態で、富配合のセメントミルクを注入しながら掘削を開始し、支持層まで掘削を行ったら、掘削ロッド1の貫入を停止する。その後、掘削ロッド1を回転させながら所定ストロークだけ上下動させて、注入した富配合のセメントミルクと新たに掘削した土砂とを攪拌混合して、先端根固め用の富配合ソイルセメント6を造成する。
【0075】
(8)先端根固め用の富配合ソイルセメント6が造成できたら、掘削ロッド1を引き抜き、さらに、鋼管杭8を、自重沈設および回転圧入によって、富配合ソイルセメント6の中まで建て込む。この時、鋼管杭8の上端部は、地面よりも下面に配置される場合があっても構わない。その後、ソイルセメント5と富配合ソイルセメント6を固化させる。
【0076】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態の効果の他に、富配合ソイルセメント6は、地盤3の土砂と富配合のセメントミルクとを攪拌して造成されるので、ソイルセメント5との混合が発生せず、富配合ソイルセメント6の品質を、より厳密に管理することが可能となる。この為、鋼管杭8の支持力に大きな影響を与える先端根固め部の品質を重要視する場合は、本実施の形態は有用である。
【0077】
なお、第6の実施の形態においては、第1の実施の形態の別の例として説明したが、第2から第5の実施の形態の別の例としても良い。即ち、第2の実施の形態の工程(6)と工程(7)、第4の実施の形態の工程(6)と工程(7)、第3の実施の形態の工程(7)と工程(8)、および第5の実施の形態の工程(7)と工程(8)と、上記第6の実施の形態の工程(7)と工程(8)とを置換して施工を行っても良い。
【0078】
なお、第1から第6の実施の形態においては、説明の簡略化の為、鋼管杭8が1本の場合で説明したが、鋼管杭8が複数本連結された場合でも同様の効果を奏する。
【0079】
なお、第1から第6の実施の形態においては、既製杭として鋼管杭8にて説明したが、本発明はこれに限定されない。既製杭は、通常用いられている既製杭であれば良く、鋼管製でもコンクリート製でも、もしくは鋼管とコンクリートのハイブリット製でも使用可能である。
【0080】
なお、第1から第6の実施の形態においては、掘削穴2にセメントミルクを注入した際に泥土4が多少はあふれる為、必要に応じて、上記(1)の前に、先行掘削して、あふれる分の土砂を除いておいても良い。
【0081】
なお、第1から第6の実施の形態においては、掘削液として水を用いたが、本発明はこれに限定されない。掘削液として、泥水やベントナイト泥水等、既製杭の施工に一般的に使用されるものを用いても良い。さらに、掘削液を用いて地盤を泥土化する代わりに、空気を吹き込んで地盤を軟化させても良い。施工仕様や使用する既製杭に合わせて、適宜選択すれば良いが、ソイルセメント5および富配合ソイルセメント6の性能を十分に引き出す為と排土量を減らす為には、掘削液を用いるのが望ましく、特に水を用いるのが最も望ましい。
【0082】
なお、第1から第6の実施の形態において、先端根固め部を形成したが、本発明はこれに限定されない。支持層の状態、鋼管杭8の杭径もしくは鋼管杭8の長さによっては、先端根固め部を設けなくても良い。また、第1から第6の実施の形態において、先端根固め部における穴径を掘削穴2の中央部の穴径と同じとしたが、本発明はこれに限定されない。先端根固め部を拡翼可能な拡翼機能を有する掘削ビットで掘削し、先端根固め部の穴径を掘削穴2の中央部の穴径より大きくしても良い。具体的には、例えば、図1(7)、図2(6)、図3(7)、図4(6)、図5(7)および図6(7)に示した富配合ソイルセメント6からなる先端根固め部を形成する際に、この拡翼機能付きの掘削ビットを使用して施工する。勿論、掘削穴2の全長を、当該拡翼機能付きの掘削ビットを使用し、必要とする穴径に合わせて拡翼の要否を選択しながら掘削しても良い。
【0083】
なお、第1から第6の実施の形態において、鋼管杭8の内部へ圧力をかける為に、圧縮空気と常圧の水76の組み合わせを用いたが、本発明はこれに限定されない。水76にも杭内部に送る空気にも加圧せずに、常圧のまま供給しても良い。また、常圧の空気を送りながら加圧された水76により鋼管杭8の内部に圧力をかけても良く、圧縮空気と加圧された水76の組み合わせで鋼管杭8の内部に圧力をかけても良い。即ち、鋼管杭8の内部へ圧力をかけることが可能となる方法であればよい。しかしながら、ソイルセメント5の上面Aに下向きの圧力をより強くかけるには、水76か杭内部に送る空気の少なくとも1つについて加圧するのが望ましい。水76と杭内部に送る空気のそれぞれに加圧するか否かは、埋設する鋼管杭8の長さや杭径によって、適宜選択すればよい。
【0084】
なお、第1から第6の実施の形態において、鋼管杭8の内部へ圧力をかける為に、加圧孔74より圧縮空気を送ったが、この圧縮空気の代わりに、他の気体、複数の気体からなる混合ガス、もしくは空気と1種以上の気体との混合ガスを用いても良い。上記「他の気体」としては、入手の容易さ、不活性であることもしくは毒性等の点から、希ガスや窒素ガスであることが望ましい。
【0085】
(g)蓋7の例:第7の実施の形態
上記にて説明した第1、第2、第5および第6の実施に形態にて使用する蓋7の例を、本発明に係る第7の実施の形態として説明する。図7は、本実施の形態に係る蓋の構造を、模式的に示す断面図である。
【0086】
蓋7は鋼製で、鋼管杭8の外径以上の直径を有する円形の板からなる円板部71と、この円板の縁に固定され、後述する第1シール75aと貫通孔77bとが配置可能な高さを有する円柱からなる第1円柱部72aとから構成されている。円板部71の直径は、鋼管杭8の外径以上としたので、蓋7を鋼管杭8の上端に載置した時に、上端面を閉塞可能な面積を有している。
【0087】
第1円柱部72aには、鋼管杭8の内部へ加えた圧力を保持する第1シール75aと、当該第1シール75aよりも地面寄りに、貫通孔77bおよびボルト77aとが配置されている。第1シール75aは、ボルト77aよりも円板部71に近い第1円柱部72aの内周面の、蓋7を載置した時に鋼管杭8の外周を一周する範囲に設けられている。これにより、鋼管杭8の内部にかけられた圧力は、鋼管杭8の外部へ逃げることがない。一方、蓋7の第1円柱部72aには貫通孔77bが設けられており、またそれと対応する鋼管杭8の外周面の位置にネジ穴82が設けられている。そして、ボルト77aを貫通孔77bに通して、ネジ穴82で固定する。これにより、蓋7は鋼管杭8の上端部に固定される。即ち、貫通孔77bとボルト77aは、蓋7を鋼管杭8の上端部に固定する固定手段77として機能する。
【0088】
また、円板部71には、鋼管杭8の内部へ圧力をかけると共に、蓋を取り外した際にソイルセメントの上面Aの再上昇を防ぐ水76を鋼管杭8の内部へ給水する給水孔73と、鋼管杭8の内部へ圧力をかける圧縮空気を送る加圧孔74とが設けられている。また、第1シール75aは、第1円柱部72aの内周面では無く、鋼管杭8の上端に対応する円板部71の位置に設けても良い。
【0089】
なお、第1シール75a、ボルト77aおよび貫通孔77bは、鋼管杭8の内部へかける圧力に耐えられる耐力を有する材質である必要がある。
【0090】
(h)蓋7の別の例:第8の実施の形態
上記にて説明した第3と第4の実施に形態にて使用する蓋7の例を、本発明に係る第8の実施の形態として説明する。図8は、本実施の形態に係る蓋の構造を、模式的に示す断面図である。
【0091】
第8の実施の形態が第7の実施の形態と異なるのは、蓋7の円板部71に掘削ロッド1が貫通できる掘削ロッド用貫通孔78と、掘削ロッド1と蓋7との間隙を埋めるための第2シール75bが設けられていることである。ここで第2シール75bは、鋼管杭8の内部へかける圧力に耐えられる耐力を有する材質である必要がある。
【0092】
これら以外の、円板部71、第1円柱部72a、第1シール75a、蓋固定用ボルト77a、貫通孔77b、ネジ穴82、給水孔73、および加圧孔74は、第6の実施の形態と同一である。
【0093】
(i)蓋7の別の例:第9の実施の形態
上記にて説明した第7の実施の形態の別の例を、本発明に係る第9の実施の形態として説明する。図9は、本実施の形態に係る蓋の構造を、模式的に示す断面図である。第9の実施の形態が第7の実施の形態と異なるのは、第3シール75cを備えていることと、蓋7を鋼管杭8の上端部に固定する固定手段77を設けていないことである。
【0094】
第9の実施の形態において、円板部71の縁部のうち、鋼管杭8の内径以内となる箇所に、第1円柱部72aと同心円状に第2円柱部72bが別途設けられている。そして、この第2円柱部72bの外周面に一周して、第3シール75cが設けられている。この構造の為、第3シール75cは、蓋7を鋼管杭8の上端に載置した際には、鋼管杭8の内周面に当接し、鋼管杭8の内部にかけられた圧力は、鋼管杭8の外部へ逃げることがない。ここで第3シール75cは、鋼管杭8の内部へかける圧力に耐えられる耐力を有する材質である必要がある。
【0095】
第9の実施の形態において、蓋7の鋼管杭8の上端部への固定は、蓋7の円板部71を重機等で下方向に押さえて圧力をかけることで行う。圧力をかける場所と方向の例は、図8に白矢印にて示した。蓋7を押さえる為の重機等は、鋼管杭8の内部にかかる圧力よりも大きな圧力をかけることができれば何でも良く、例えば、回転モータの自重を用いることができる。
【0096】
これら以外の、第1円柱部72aの第1シール75a、ならびに、円板部71の給水孔73および加圧孔74は、第7の実施の形態と同一である。
【0097】
本実施の形態によれば、第7の実施の形態の効果の他に、第1シール75aと第3シール75cの2重のシールとなり、より強固に鋼管杭8の内部にかけられた圧力を保持することができる。また、鋼管杭8側にネジ穴82を設けなくて良いので、確実に鋼管杭8の内部にかけられた圧力を保持することができると共に、鋼管杭8の性能を落とす危険性を回避することができる。
【0098】
なお、第9の実施の形態において、鋼管杭8の内部にかけられた圧力を保持することに問題がなければ、鋼管杭8内側に位置する第3シール75cと第2円柱部72bのみとし、鋼管杭8外側に位置する第1シール75aと第1円柱部72aを設けないでおいても良い。また、第7と第8の実施の形態においては、鋼管杭8外側に位置する第1シール75aと第1円柱部72aのみで説明したが、必要に応じて、鋼管杭8内側に位置する第3シール75cと第2円柱部72bを追加して、第9の実施の形態と同様の2重シールの構造としても良い。
【0099】
なお、第7から第9の実施の形態において、円板と円柱で説明したが、本発明はこれに限定されない。埋設対象である鋼管杭8の断面形状により、最適な形状(即ち、矩形板と角柱、多角形板と角柱等)を選択すれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明に係る既製杭の施工方法の第1の実施の形態を模式的に説明する断面図である。
【図2】本発明に係る既製杭の施工方法の第2の実施の形態を模式的に説明する断面図である。
【図3】本発明に係る既製杭の施工方法の第3の実施の形態を模式的に説明する断面図である。
【図4】本発明に係る既製杭の施工方法の第4の実施の形態を模式的に説明する断面図である。
【図5】本発明に係る既製杭の施工方法の第5の実施の形態を模式的に説明する断面図である。
【図6】本発明に係る既製杭の施工方法の第6の実施の形態を模式的に説明する断面図である。
【図7】本発明に係る蓋の第7の実施の形態を模式的に説明する断面図である。
【図8】本発明に係る蓋の第8の実施の形態を模式的に説明する断面図である。
【図9】本発明に係る蓋の第9の実施の形態を模式的に説明する断面図である。
【図10】従来の既製杭の施工方法の例(中堀り工法)を模式的に説明する断面図である。
【符号の説明】
【0101】
1 掘削ロッド
1a 掘削ビット
2 掘削穴
3 地盤
4 泥土
5 ソイルセメント
6 富配合ソイルセメント
7 蓋
71 円板部
72a 第1円柱部
72b 第2円柱部
73 給水孔
74 加圧孔
75a 第1シール
75b 第2シール
75c 第3シール
76 給水用の水
77 蓋7を鋼管杭8の上端部に固定する固定手段
77a 蓋固定用ボルト
77b 貫通孔
78 掘削ロッド用貫通孔
8 鋼管杭
81 スペーサー
82 ネジ穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削された地盤中に固化材と土砂とを攪拌して造成された改良体に、既製杭を建て込む既製杭の施工方法において、
前記改良体に前記既製杭が建て込まれた後、前記既製杭の内部に圧力をかけることを特徴とする既製杭の施工方法。
【請求項2】
既製杭を建て込む地盤を掘削した後、掘削された地盤中に固化材を注入し、前記注入された固化材と土砂とを攪拌して改良体を造成し、さらに、前記造成された改良体に既製杭を建て込む既製杭の施工方法において、
前記改良体に前記既製杭が建て込まれた後、前記既製杭の内部に圧力をかけることを特徴とする既製杭の施工方法。
【請求項3】
地盤を掘削しながら既製杭を建て込み、掘削された地盤中に既製杭を建て込んだ後、前記掘削された地盤中に固化材を注入し、さらに、前記注入された固化材と土砂とを攪拌して改良体を造成する既製杭の施工方法において、
前記改良体に前記既製杭が建て込まれた後、前記既製杭の内部に圧力をかけることを特徴とする既製杭の施工方法。
【請求項4】
既製杭の内部に圧力をかける為に、液体と気体とを既製杭の内部へ供給することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の既製杭の施工方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の既製杭の施工方法に用いる蓋であって、
既製杭の上端面を閉塞可能な面積を有する板部と、
既製杭の内部へ液体を供給する為の給水孔と、
既製杭の内部へ気体を供給する為の加圧孔と、
既製杭の内部へかけられた圧力を保持するシールとを備えたことを特徴とする既製杭の施工方法に用いる蓋。
【請求項6】
請求項1〜4の何れか一項に記載の既製杭の施工方法に用いる蓋であって、
既製杭の内部へかけられた圧力を保持する為のシールと
既製杭の上端面を閉塞可能な面積を有する板からなり、既製杭の内部へ液体を供給する為の給水孔と、既製杭の内部へ気体を供給する為の加圧孔とが備えられた板部と、
該板部の縁部に固定され、少なくとも前記シールが配置可能な高さを有する中空の柱からなる柱部とを備えたことを特徴とする既製杭の施工方法に用いる蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−31772(P2008−31772A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−208153(P2006−208153)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】