説明

日焼け止め化粧料

【課題】高いSPF値を日焼け止め化粧料へ付与するには、製剤中に有機系の紫外線吸収剤などを配合する必要があった。そして、水溶性紫外線吸収剤は、製剤中では十分に期待するSPF機能を果たしにくい問題があった。また、日焼け止め化粧料には特にみずみずしい使用感触が求められる。本発明は、油性の有機系紫外線吸収剤を高配合するとみずみずしさが失われることに鑑みて、水溶性紫外線吸収剤を主に配合することにより、高いSPF値とみずみずしい使用感触を達成できる日焼け止め化粧料を提供することを本発明の課題とするものである。
【解決手段】日焼け止め化粧料全量に対して、寒天ミクロゲル10〜90質量%(ただし寒天ミクロゲル中の寒天含有率が0.4〜1質量%である)と、水溶性紫外線吸収剤0.1〜5質量%とを配合することを特徴とする日焼け止め化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は日焼け止め化粧料に関するものである。詳しくは水溶性紫外線吸収剤を効果的に配合することで高いSPF値を確保し、みずみずしい使用感触を達成する日焼け止め化粧料に関するものである。なお、本発明の日焼け止め化粧料には油溶性の紫外線吸収剤を配合する必要はない。
【背景技術】
【0002】
高いSPF値を日焼け止め化粧料へ付与するには、製剤中に有機系の紫外線吸収剤などを配合する必要があった。日焼け止め化粧料に配合する有機系の紫外線吸収剤には、油溶性紫外線吸収剤と水溶性紫外線吸収剤とがある。そして、水溶性紫外線吸収剤は、油溶性紫外線吸収剤と比較した場合に、製剤中では十分に期待するSPF機能を果たしにくい問題があった。そのため、日焼け止め化粧料には油溶性紫外線吸収剤が配合される場合が多く、水溶性紫外線吸収剤を配合する場合であっても油溶性紫外線吸収剤は一般に配合されている。
【0003】
一方、日焼け止め化粧料には特にみずみずしい使用感触が求められる。しかしながら、油溶性の紫外線吸収剤を配合すると、水溶性紫外線吸収剤と比較した場合に、日焼け止め化粧料に使用感触として油っぽくなってしまい、重要なみずみずしさが失われてしまう。
なお、日焼け止め化粧料に油溶性紫外線吸収剤を配合する場合には、水中油型乳化組成物若しくは油中水型乳化組成物といった乳化物の剤型を採用することが一般的である。すなわち、油溶性紫外線吸収剤を配合する場合、剤型が乳化物に限られてしまう。
【0004】
また、特許文献1には、日焼け止め化粧料の使用感触と安定性を確保する技術として、特に水中油型乳化組成物の日焼け止め化粧料においては、寒天などのゲル化能を有する親水性化合物をミクロゲル化して得た増粘剤が化粧料の使用性及び安定性に高く寄与することが報告されている。
【0005】
そして、特許文献2〜4には、水中油型乳化組成物の日焼け止め化粧料においては、内油相に酸化チタンや酸化亜鉛等の紫外線散乱剤の微粒子粉体を分散配合するが、この場合、外水相にはサクシノグルカン、キサンタンガム、アクリルアミドなどの一般的な増粘剤を配合して系を増粘せしめ、乳化粒子と同時に微粒子粉体を安定的に水相へ分散する技術が知られている。
【0006】
一方、特許文献5には、油溶性紫外線吸収剤を高配合することなく、みずみずしい使用感を損なわずに紫外線防御効果と安定性の両立を図り、さらには、塗膜の均一性、使用性(肌なじみ)に優れる水中油型乳化日焼け止め化粧料を提供する。特許文献5の中には、配合可能成分の増粘剤として寒天の一行記載はあるものの、本発明が達成した寒天ミクロゲルによる水溶性紫外線吸収剤の紫外線吸収効果の増大については何らの記載もされてはいない。しかも、特許文献5の発明には油溶性紫外線吸収剤も配合されている。
【0007】
また、特許文献6には、水溶性紫外線吸収剤としてフェニルべンズイミダゾールスルホン酸が油溶性紫外線吸収剤と併用して配合された水中油型乳化組成物の日焼け止め化粧料が開示されている。しかしながら、特許文献5と同様に、本発明が達成した寒天ミクロゲルによる水溶性紫外線吸収剤の予測不可能な紫外線吸収増大効果については記載も示唆もされてはいない。また、同文献には油溶性紫外線吸収剤の配合を極度に制限したりこれを配合したりしないことについても記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3531735号
【特許文献2】特開2004−210698号公報
【特許文献3】特開2005−225771号公報
【特許文献4】特開2005−247722号公報
【特許文献5】特開2008−162930号公報
【特許文献6】WO2007/122822
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
高いSPF値を日焼け止め化粧料へ付与するには、製剤中に有機系の紫外線吸収剤を高配合する必要があった。有機系の紫外線吸収剤には、油溶性紫外線吸収剤と水溶性紫外線吸収剤とがあるが、水溶性紫外線吸収剤だけでは、製剤中で十分に期待するSPF機能を果たし難いという課題があった。
【0010】
一方、日焼け止め化粧料には特にみずみずしい使用感触が求められる。本発明は、油溶性紫外線吸収剤を配合するとみずみずしい使用感触が失われることに鑑みて、また、その剤型も乳化系組成物として限定されてしまうことを鑑みて、有機系紫外線吸収剤として水溶性紫外線吸収剤をメインに配合することにより、高いSPF値を本発明により達成し、同時にみずみずしい使用感触をも達成できる日焼け止め化粧料を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、日焼け止め化粧料全量に対して、寒天ミクロゲル10〜90質量%(ただし寒天ミクロゲル中の寒天含有率が0.4〜1質量%である)と、水溶性紫外線吸収剤0.1〜5質量%とを配合することを特徴とする日焼け止め化粧料を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、前記水溶性紫外線吸収剤が、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸及び/又は2−ヒドロキシ4−メトキシベンゾフェノンスルホン酸であることを特徴とする上記の日焼け止め化粧料を提供するものである。
【0013】
さらに、本発明は、油溶性紫外線吸収剤を日焼け止め化粧料全量に対して1質量%以下配合することを特徴とする上記の日焼け止め化粧料を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、油溶性紫外線吸収剤を実質的に配合しないことを特徴とする上記の日焼け止め化粧料を提供するものである。
【0015】
さらに、本発明は、水に寒天を攪拌しながら加温して溶解させこれを冷却させて得られる寒天ゲルであって、寒天ゲル中の寒天含有率が0.4〜1質量%であり、溶解冷却後、当該寒天ミクロゲルを10〜400μm程度までホモミキサーで粉砕して得られる寒天ミクロゲルを日焼け止め化粧料全量に対して10〜90質量%と、日焼け止め化粧料全量に対して水溶性紫外線吸収剤0.1〜5質量%とを化粧料基剤に配合して製造することを特徴とする日焼け止め化粧料の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
(1)本発明の日焼け止め化粧料は紫外線吸収能が高い。本発明者等は、驚くべきことに寒天ミクロゲルにより水溶性紫外線吸収剤の紫外線吸収効果が増大する効果を見出した。その結果、水溶性紫外線吸収剤による紫外線吸収効果の高い日焼け止め化粧料の提供を可能とした。これは単に水溶性紫外線吸収剤の配合量を増大させることによって紫外線吸収効果を高めるという従来の方法とは根本的に異なる発明であり、すなわち、寒天ミクロゲルが水溶性紫外線吸収剤に紫外線吸収効果増幅剤として機能する発明である。
(2)高い紫外線吸収効果を達成するために、わざわざ油溶性紫外線吸収剤を配合する必要はない。事情により、油溶性紫外線吸収剤を配合したい場合があるとしても、せいぜい日焼け止め化粧料全量に対して1質量%以下であることが好ましい。この範囲であればみずみずしい使用感触が担保される。一方、本発明においては油溶性紫外線吸収剤を配合する必要は全くない。油溶性紫外線吸収剤を1質量%以下という極めて限定された配合量か或いは全く配合しないという点も、本発明の効果である。
(3)本発明の日焼け止め化粧料はみずみずしい使用感触を有する。
(4)本発明の日焼け止め化粧料は、その剤型が水中油型乳化組成物や油中水型乳化組成物に限定されることはなく、水溶液系の日焼け止め化粧料にも応用出来る。これによって、ますますみずみずしい使用感触が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は寒天ミクロゲルによって紫外線吸収効果が増大すること示す紫外線吸収スペクトルである。水溶性紫外線吸収剤はフェニルベンズイミダゾールスルホン酸である。
【図2】図2は寒天ミクロゲル中の寒天濃度によって紫外線吸収効果が増大し変化することを示す紫外線吸収スペクトルである。水溶性紫外線吸収剤は図1と同じである。
【図3】図3は寒天ミクロゲル中の日焼け止め化粧料中の濃度によって紫外線吸収効果が増大し変化することを示す紫外線吸収スペクトルである。水溶性紫外線吸収剤は図1と同じである。
【図4】図1は寒天ミクロゲルによって紫外線吸収効果が増大すること示す紫外線吸収スペクトルである。水溶性紫外線吸収剤は2−ヒドロキシ4−メトキシベンゾフェノンスルホン酸である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0019】
<寒天ミクロゲル>
本発明において、寒天ミクロゲルとは、固化した寒天をミクロン単位に破砕したものを示す。寒天としては、ゲル化力の高いアガロースを主成分とするものであれば、天然物ないし市販品等のいずれも制限なく適用することができる。市販されている寒天としては、例えば、伊那寒天PS−84、Z−10、AX−30、AX−100、AX−200、T−1、S−5、M−7(伊那食品工業社製)等を好適に用いることができる。また、前記寒天として精製アガロースを使用してもよい。
【0020】
続いて寒天ミクロゲルの製造について説明する。本発明に用いる寒天ミクロゲルは常法にしたがって製造できる。
すなわち、寒天は水または水性成分に溶解した後、放置冷却して固化させ、ゲルを形成させる。寒天の水または水性成分への溶解は、混合、加熱等によって行なうことができる。
ゲル化(固化)は、溶解後、加熱を止めてゲル化温度(固化温度)より低温となるまで放置することにより行う。
【0021】
水と共に用いることが出来る水性成分としては、化粧料、医薬品分野において用いられ得る水性成分であれば特に限定されるものでなく、例えば1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類や、エタノール、プロパノール等の低級アルコールのほか、一般に化粧料の水相成分として配合される成分を含有することができる。具体的には、メタリン酸塩、エデト酸塩等のキレート剤や、pH調整剤、防腐剤等が例示されるが、これらに限定されない。
【0022】
具体的には、水に寒天を攪拌しながら加温して溶解させこれを冷却させて得られる寒天ゲルであって、寒天ミクロゲル中の寒天含有率が0.4〜1質量%であり、当該寒天ミクロゲルを10〜400μm程度にホモミキサー等で粉砕して得られる寒天ミクロゲルが好ましい。
破砕の度合いは、得られるミクロゲルが前記粒径範囲内のものであれば、目的に応じて調節可能である。より滑らかな使用性が必要とされる場合には高速攪拌により十分に破砕し、細かな粒径のミクロゲルとし、一方、ミクロゲル自体の触感を必要とする場合には軽い攪拌により破砕の度合いを弱めてやや大きめの粒径のミクロゲルとする。
特に、本発明においては、ミクロゲルの平均粒径が10〜400μmとなるように調製することが好ましい。
【0023】
このようにして得られるミクロゲルの粘度は、配合する日焼け止め化粧料の製品に応じて適宜調整され得るが、水または水性成分に対する寒天濃度0.5〜2%程度で、B型粘度計(回転数0.6rpm、25℃)による測定で2,000〜1,000,000mPa・s程度のものが好ましい。
【0024】
寒天ミクロゲル中の寒天濃度は、水または水性成分中にて0.2〜1.5質量%が好ましく、さらに好ましくは、0.4〜1質量%である。
【0025】
寒天ミクロゲルの日焼け止め化粧料への配合量は、日焼け止め化粧料全量に対して10〜90質量%が好ましく、さらに好ましくは、30〜80質量%である。これにより、水溶性紫外線吸収剤の紫外線吸収効果が増大される。
【0026】
<水溶性紫外線吸収剤>
本発明に用いる水溶性紫外線吸収剤は、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸及び/又は2−ヒドロキシ4−メトキシベンゾフェノンスルホン酸である。これらの紫外線吸収剤の紫外線吸収効果が寒天ミクロゲルによって飛躍的に増大するという現象は本発明者らにより実証された驚くべき事実である。
フェニルベンズイミダゾールスルホン酸及び/又は2−ヒドロキシ4−メトキシベンゾフェノンスルホン酸は公知の水溶性紫外線吸収剤であり酸の状態もしくは塩の状態で市販されているものを使用できる。なお、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸および2−ヒドロキシ4−メトキシベンゾフェノンスルホン酸といった酸の状態のものを用いる場合は中和剤が必要であり、その中和剤としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミンなどが挙げられる。
【0027】
水溶性紫外線吸収剤の配合量は日焼け止め化粧料全量に対して0.1〜5質量%が好ましく、0.3〜3質量%がさらに好ましい。
【0028】
本発明において油溶性紫外線吸収剤は配合する必要はない。事情により配合したい場合は、日焼け止め化粧料全量に対して1質量%以下である。油溶性紫外線吸収剤は限定されないが、オクチルメトキシシンナメート等を0.1〜1質量%以下で配合してもかまわない。みずみずしさの使用感触の観点からは油溶性紫外線吸収剤の配合量は少ない方がよく、全く配合しないことが最も好ましい。
【0029】
本発明の日焼け止め化粧料は、上記必須成分を単に日焼け止め化粧料の基剤中に配合すれば完成する。すなわち、水に寒天を攪拌しながら加温して溶解させこれを冷却させて得られる寒天ゲルであって、寒天ゲル中の寒天含有率が0.4〜1質量%であり、当該寒天ミクロゲルを10〜400μm程度にホモミキサーで粉砕して得られる寒天ミクロゲルを日焼け止め化粧料全量に対して10〜90質量%と、日焼け止め化粧料全量に対して水溶性紫外線吸収剤0.1〜5質量%とを化粧料基剤に配合して製造することが可能である。本発明では、上記の如く複雑な製造方法によらずとも、水溶性紫外線吸収剤の紫外線吸収効果を増大させ、かつみずみずしい使用感触を発揮する日焼け止め化粧料を簡便に製造できる点も本発明の進歩性に寄与する点である。
【0030】
本発明の日焼け止め化粧料には、上記成分の他に、本発明の目的・効果を損なわない範囲で、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる他の任意添加成分、例えば、油脂、ロウ類、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、合成エステル油、シリコーン油、水溶性高分子、キレート剤、低級アルコール、多価アルコール、pH調整剤、酸化防止剤、粉末成分、香料、水等を必要に応じて適宜配合することができる。ただしこれら例示に限定されるものでない。
本発明の日焼け止め化粧料は剤型が限定されない。本発明の日焼け止め化粧料は、常法に従って、その他の化粧料配合成分と混合して、水中油型乳化組成物、油中水型乳化組成物、水溶液系組成物等の日焼け止め化粧料の製品が製造される。特に水溶液系の日焼け止め化粧料は、みずみずしい使用感触やさっぱり感にも特に優れている。
【実施例】
【0031】
次に本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例だけに限定されない。なお、特に記載のない限り、配合量は全て質量%で表すものとする。
【0032】
以下に本発明の効果データを記載する。
【0033】
「実施例1:図1のデータ(寒天ミクロゲル配合の有無のデータ)について」
水に寒天(AX−100 伊那食品工業株式会社製)を加熱溶解し、寒天1質量%を含有する寒天ミクロゲルを常法によりホモミキサーで粉砕して製造した。寒天ミクロゲルを配合した実施例1と配合しない比較例1の水溶液を製造した。製造した水溶液を石英板に2mg/cm2塗布し、分光光度計(UV−4100、日立製作所製)により常法により紫外線吸収スぺクトルを調べた。
その結果を図1に示す。寒天ミクロゲルを配合した実施例1では、紫外線吸収硬化(吸光度ABS)が驚嘆に増大している。
【0034】
<実施例1(水溶液タイプの日焼け止め化粧料)>
フェニルベンズイミダゾールスルホン酸(PBSAと略す) 1 質量%
トリエタノールアミン 0.6
寒天ミクロゲル(寒天濃度1質量%) 50
水 残余
【0035】
<比較例1(寒天ミクロゲルが配合されていない日焼け止め化粧料)>
フェニルベンズイミダゾールスルホン酸(PBSAと略す) 1 質量%
トリエタノールアミン 0.6
水 残余
【0036】
「実施例2:図2のデータ(寒天ミクロゲル中の寒天濃度のデータ)について」
実施例1と同様に、寒天ミクロゲル中の寒天濃度を0.4質量%、1質量%、2質量%と変化させて、紫外線吸収効果を検討した。寒天濃度の異なる寒天ミクロゲルを製造し、実施例1と同様に寒天ミクロゲルを配合した実施例2を製造した。また、寒天ミクロゲルを配合した比較例を製造した。
その結果、寒天濃度が、0.4〜1質量%である場合に、280〜340nm付近の紫外線吸収効果が飛躍的に増大することが分かった。しかし、寒天濃度が2質量%の場合には、寒天ミクロゲルを配合しない場合とほぼ同じ結果となり、紫外線吸収効果の増大は見られなかった。すなわち、本発明において、紫外線吸収効果が飛躍的に増大する寒天濃度は、寒天ミクロゲル全量に対して0.4〜1質量%の範囲である。
【0037】
<実施例2(水溶液タイプの日焼け止め化粧料)>
フェニルベンズイミダゾールスルホン酸(PBSAと略す) 1 質量%
トリエタノールアミン 0.6
寒天ミクロゲル(寒天濃度0.4、1、4質量%のいずれか) 50
水 残余
【0038】
「3.実施例3:図3のデータ(寒天ミクロゲル配合量のデータ)について」
寒天ミクロゲルの製剤中への配合量を10、30、50、80質量%と変化させて、実施例1と同様に、紫外線吸収効果を測定した。なお、寒天ミクロゲルの寒天濃度は1質量%である。
いずれも、寒天ミクロゲルを配合しない場合よりも、紫外線吸収効果は飛躍的に増大した。しかしながら、図3から分かるように、50質量%の場合に最大の紫外線吸収効果を示しており、必ずしも、寒天ミクロゲル濃度にはよらないことが分かった。10〜80質量%でいずれも特異的に紫外線吸収効果が増大するが、30〜80質量%が好ましく、50〜80質量%が最も好ましい結果が得られた。
【0039】
<実施例3(水溶液タイプの日焼け止め化粧料)>
フェニルベンズイミダゾールスルホン酸(PBSAと略す) 1 質量%
トリエタノールアミン 0.6
寒天ミクロゲル(寒天濃度1.0質量%) 0〜80
(すなわち、0、10、30、50、80のいずれかの配合量)
水 残余
【0040】
「実施例4.図4のデータ(寒天ミクロゲル配合の有無のデータ:実施例1とは異なる水溶性紫外線吸収剤を使用した。)」
水に寒天(AX−100 伊那食品工業株式会社製)を加熱溶解し、寒天1質量%を含有する寒天ミクロゲルを常法により製造した。寒天ミクロゲルを配合した実施例4と配合しない比較例4の水溶液(水溶液タイプの日焼け止め化粧料)を製造した。実施例1と同様にして紫外線吸収スぺクトルを調べた。
その結果を図4に示す。寒天ミクロゲルを配合した実施例4では、紫外線吸収硬化(吸光度ABS)が驚嘆に増大している。
【0041】
<実施例4 水溶液タイプの日焼け止め化粧料>
2−ヒドロキシ4−メトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム(ALS24Sと略す) 1 質量%
寒天ミクロゲル(寒天濃度1.0質量%) 50
水 残余
【0042】
<比較例4(寒天ミクロゲルが配合されていない日焼け止め化粧料)>
フェニルベンズイミダゾールスルホン酸(PBSAと略す) 1 質量%
水 残余
【0043】
(5)使用感触(みずみずしさ)のデータ
以下の処方において(水中油型の日焼け止め化粧料)、油溶性紫外線吸収剤の配合量とみずみずしさとの関係を調べた。その結果、油溶性紫外線吸収剤が配合しない方が使用感触(みずみずしさ)に優れていることが分かった。また、事情により配合した場合であっても、0.5〜1%程度が使用感触の観点からは好ましい。
【0044】
<処方:実施例5>
【表1】

【0045】
<結果>
【表2】

【0046】
<評価基準> 上記使用感触の評価は以下により判断した。
パネル 10名に上記サンプルを使用してもらい、使用感触の評価を行った。
◎: 9名以上がみずみずしいと答えた。
○: 7〜8名がみずみずしいと答えた。
○△: 5〜6名がみずみずしいと答えた。
△: 3〜4名がみずみずしいと答えた。
×: 0〜2名がみずみずしいと答えた。
【0047】
下記に本発明の日焼け止め化粧料の処方例を挙げる。いずれも紫外線吸収特性と使用感触に優れた日焼け止め化粧料である。
【0048】
実施例6:日焼け止めローション(水溶液系)
配合成分 質量%
1.寒天 0.5
2.イオン交換水 50
3.グリセリン 1
4.1,3−ブチレングリコール 5
5.ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.03
6.トリメチルグリシン 1
7.ポリアスパラギン酸ナトリウム 0.1
8.α−トコフェロール2−L−アスコルビン酸リン酸ジエステルカリウム
0.1
9.チオタウリン 0.1
10.緑茶エキス 0.1
11.西洋ハッカエキス 0.1
12.イリス根エキス 0.1
14.EDTA3ナトリウム 0.1
15.精製水 残余
16.エチルアルコール 5
17.POE、POPデシルテトラデシルエーテル 0.2
18.フェノキシエタノール 適量
19.香料 適量
20.フェニルベンズイミダゾールスルホン酸 3
21.トリエタノールアミン 1.5
製造方法:
(1) 1、2を加温溶解し、室温へ冷却後、ホモミキサーで粉砕
(2) 3〜15を(1)部に室温で混合
(3) 16〜19を室温で混合後、(1)部に添加
(4) 20、21を室温で(1)部に添加し、目的物を得る。
【0049】
実施例7:化粧水(マイクロエマルション)(水溶液系)
配合成分 質量%
1.寒天 0.5
2.イオン交換水 50
3.エタノール 10
4.ジプロピレングリコール 1
5.ポリエチレングリコール1000 1
6.ポリオキシエチレンメチルグルコシド 1
7.ホホバ油 0.01
8.トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 0.1
9.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.2
10.ジイソステアリン酸ポリグリセリル 0.15
11.N−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウム 0.1
12.クエン酸 0.05
13.クエン酸ナトリウム 0.2
14.水酸化カリウム 0.4
15.グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
16.塩酸アルギニン 0.1
17.L−アスコルビン酸2−グルコシド 2
18.オウゴンエキス 0.1
19.ユキノシタエキス 0.1
20.オドリコソウエキス 0.1
21.トラネキサム酸 1
22.エデト酸三ナトリウム 0.05
23.パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル 0.01
24.ジブチルヒドロキシトルエン 適量
25.パラベン 適量
26.海洋深層水 3
27.精製水 残余
28.香料 適量
29.フェニルベンズイミダゾールスルホン酸 3
30.トリエタノールアミン 1.5
製造方法:
(1) 1、2を加温溶解し、室温へ冷却後、ホモミキサーで粉砕
(2) 3〜11、23〜25、27を70℃で加温溶解する。
(3) 12〜22、26、28、29、30をRTで混合溶解し、(1)部に添加することで目的物を得る。
【0050】
実施例8:日焼け止め乳液(水中油型乳化化粧料)
配合成分 質量%
1.寒天 0.5
2.イオン交換水 50
3.カルボキシビニルポリマー 0.1
4.水酸化カリウム 適量
5.ジメチルポリシロキサン 2
6.ベヘニルアルコール 1
7.バチルアルコール 0.5
8.スクワラン 6
9.テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリット 2
10.イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル 1
11.モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン 1
12.硬化油 3
13.グリセリン 5
14.1,3−ブチレングリコール 7
15.エリスリトール 2
16.ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.05
17.フェノキシエタノール 適量
18.2−ヒドロキシ4−メトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム
1
19.精製水 残余
製造方法:
(1) 1、2を加温溶解し、室温へ冷却後、ホモミキサーで粉砕
(2) 3、4を(1)部に添加。
(3) 5〜12を加温溶解後、(1)部に添加し、ホモミキサーで乳化
(4) 13〜19を(1)部に添加し、目的物を得る。
【0051】
実施例9:日焼け止め乳液(水中油型乳化化粧料)
配合成分 質量%
1.寒天 0.5
2.イオン交換水 50
3.アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(ペミュレンTR−1)
0.1
4.水酸化カリウム 0.05
4.ジメチルポリシロキサン 3
5、デカメチルシクロペンタシロキサン 4
6.スクワラン 2
7.ヒマワリ油 1
8.エタノール 5
9.グリセリン 6
10.1,3−ブチレングリコール 5
11.ポリオキシエチレンメチルグルコシド 3
13.ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.05
14.ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン 0.1
15.グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
16.ビワ葉エキス 0.1
17.L−グルタミン酸ナトリウム 0.05
18.ウイキョウエキス 0.1
19.酵母エキス 0.1
20.ラベンダー油 0.1
21.ジオウエキス 0.1
22.キサンタンガム 0.1
23.ベンガラ 適量
24.黄酸化鉄 適量
25.パラベン 適量
26.精製水 残余
27.2−ヒドロキシ4−メトキシベンゾフェノンスルホン酸 1
28.トリエタノールアミン 0.6
製造方法:
(1) 1、2を加温溶解し、室温へ冷却後、ホモミキサーで粉砕
(2) (1)部に3、4を添加し、混合
(3) 8〜28を(1)部に室温で添加し、混合。
(4) 5〜7を(1)部に室温で添加し、ホモミキサーで乳化後、目的物を得る。
【0052】
実施例10:日焼け止めクリーム(水中油型乳化化粧料)
配合成分 質量%
1.寒天 0.5
2.イオン交換水 50
3.ベントナイト 1
4.ステアリン酸 1
5.パルミチン酸 1
6.トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 3
7.2−エチルヘキサン酸セチル 2
8.イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル 1
9.モノステアリン酸グリセリン 1
10.モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン 1
11.4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン 1
12.パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル 7
13.エイコセン・ビニルピロリドン共重合体 2
14.微粒子酸化チタン(30nm) 2
15.ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.1
16.フェノキシエタノール 適量
17.エデト酸三ナトリウム 適量
18.ジプロピレングリコール 5
19.精製水 残余
20.香料 適量
21.フェニルベンズイミダゾールスルホン酸 3
22.トリエタノールアミン 1.5
製造方法:
(1) 1、2を加温溶解し、室温へ冷却後、ホモミキサーで粉砕
(2) 3を(1)部に添加し、室温でホモミキサー分散
(3) 4〜13を加温溶解後、加温した(1)部に添加し、ホモミキサーで乳化
(4) 14、15を(1)部に添加し、ホモミキサーで分散
(5) 16〜22を(1)部に添加し、ホモミキサーで分散後、室温まで冷却し、目的物を得る。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は油溶性紫外線吸収剤を実質的に使用しなくても、紫外線吸収効果に極めて優れた日焼け止め化粧料である。さらに、みずみずしく好ましい使用感触を発揮する日焼け止め化粧料である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
日焼け止め化粧料全量に対して、寒天ミクロゲル10〜90質量%(ただし寒天ミクロゲル中の寒天含有率が0.4〜1質量%である)と、水溶性紫外線吸収剤0.1〜5質量%とを配合することを特徴とする日焼け止め化粧料。
【請求項2】
前記水溶性紫外線吸収剤が、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸及び/又は2−ヒドロキシ4−メトキシベンゾフェノンスルホン酸であることを特徴とする請求項1記載の日焼け止め化粧料。
【請求項3】
油溶性紫外線吸収剤を日焼け止め化粧料全量に対して1質量%以下配合することを特徴とする請求項1又は2記載の日焼け止め化粧料。
【請求項4】
油溶性紫外線吸収剤を配合しないことを特徴とする請求項1又は2記載の日焼け止め化粧料。
【請求項5】
水に寒天を攪拌しながら加温して溶解させこれを冷却させて得られる寒天ゲルであって、寒天ゲル中の寒天含有率が0.4〜1質量%であり、当該寒天ミクロゲルを10〜400μm程度にホモミキサーで粉砕して得られる寒天ミクロゲルを日焼け止め化粧料全量に対して10〜90質量%と、日焼け止め化粧料全量に対して水溶性紫外線吸収剤0.1〜5質量%とを化粧料基剤に配合して製造することを特徴とする日焼け止め化粧料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−51922(P2011−51922A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201278(P2009−201278)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】