説明

明度及びヘイズが抑えられたブラックインクジェットインク

インクジェット印刷画像のブラック領域においてLminを低下させ且つスタックヘイズを低減させる方法であって、インクジェットインク受容媒体を提供し、少なくとも1つのインクジェットインクを前記媒体にインクジェット印刷し、少なくとも1つのブラック領域を有する画像を含む印刷後媒体を形成することを含む方法を開示する。少なくとも1つのインクジェットインクは、液体ビヒクル及び式1を有する特定のブラックアゾ染料を含むブラックインクジェットインクを含む。前記方法は、印刷後媒体を積層させ、ブラック領域において低下したLmin及び低減されたスタックヘイズを有する印刷後媒体を得ることを含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
インクジェット技術において、高解像度画像の品質は、画像を生成するために使用されるインクジェットインク、プリンタ及び画像が印刷される印刷媒体の関数となる。インクジェット印刷では、インクの滴が、マイクロプロセッサによって生成される電気信号に応じてプリントヘッドから吐出され、印刷媒体、例えば紙又はポリマーの基体上に堆積され、これにより、所望の画像が形成される。
【0002】
インクジェット印刷で使用するための着色剤及びインクは、独立して使用した場合にも他の染料及びインクと組み合わせて使用した場合にも、十分な印刷品質、信頼性及び環境に対する堅牢性を提供しなくてはならない。良好な彩度、色域、色相角、及び環境に対する堅牢性(例えば、耐空気性、耐光性、耐水性)を有する単一のインクジェット着色剤及び/又はインクは、そのインクの他の着色剤及び/若しくは成分、又はそれと組み合わせて用いられる他のインクとの併用では必ずしも最適ではない。言い換えれば、個々の着色剤及び/又はインク(例えばシアン、マゼンタ又はイエローのインク)は、独立して許容可能な色品質を有しているばかりでなく、染料及び/又はインクセットの一部として使用された場合にも十分に良く機能しなくてはならない。さらに、1つ以上の望ましい特性を有するインクが多く知られているが、その多くのインクの欠点は、1つの特性を改善すると他の望ましい特性を低下させてしまうことが多いということである。
【0003】
シアン、マゼンタ及びイエローのインクを含む3種インクの染料ベースの印刷システムでは、通例では、画像の複合ブラック(composite black)の領域での明度(Lmin)が高く、それにより得られる画像品質が低いことが問題となる。かかる問題は、「スタックヘイズ(stacked haze)」とも呼ばれる、特別な多孔質写真媒体上に印刷されたもののヘイズ(曇り)によって悪化することが多い。この種のヘイズは、印刷後に、印刷画像を積層(スタック)させた結果として生じる。空気に曝され急速に乾燥する一番上に置かれたものを除いて、積層された画像の全ては、印刷画像上に曇ったフィルムを現す。このヘイズの作用により、ブラック領域の明度が増大し得、それにより画像の鮮鋭度(sharpness)が低下する。3種インクの複合ブラックと共に染料ベースのブラックインクを使用して4種インクシステムを得ることによって、ブラック領域の明度の改善を促進することができる。しかし、着色剤の選択(つまり選択された化学的染料化合物)により、明度、光及びオゾンに対する永続性に加え、画像上で観察されるヘイズの程度も決定される。いくつかのブラック染料又は複数のブラック染料の組合せにより、画像におけるブラック領域の明度が低下することが知られているが、それらは、ヘイズの問題については対処していない。
【0004】
特に多孔質の印刷媒体上で永続性を維持しながらも画像品質を向上させる着色剤及びブラックインクの開発への関心が、絶えずある。
【発明の概要】
【0005】
印刷後媒体(印刷された媒体若しくは印刷が既に施された媒体)上でのブラック領域の明度及びスタックヘイズの両方を低減する特定のブラックアゾ染料及び染料ブレンド(blends)を使用して、インクジェット印刷画像を生成する方法、並びに印刷生成物を開示する。特定の態様によれば、インクジェット印刷画像のブラック領域においてLminを低下させ且つスタックヘイズを減少させる方法であって、少なくとも1つのインクジェットインクをインクジェットインク受容媒体上にインクジェット印刷して、それにより少なくとも1つのブラック領域を有する画像を含む印刷後媒体を形成し、前記印刷後媒体を積層し、前記少なくとも1つのブラック領域において、前記少なくとも1つのブラックアゾ染料を含まないインクジェットインクで印刷された印刷後媒体よりも低いLmin及び減少したスタックヘイズを有する印刷後媒体を得ることを含む、方法を提供する。少なくとも1つの前記インクジェットインクは、液体ビヒクルと、式
【0006】
【化1】

【0007】
〔上式中、XはSOQであり、Rは非置換C1〜4アルキルであり、QはK、Na、Li又はそれらの任意の組合せであり、mは1又は2であり、nは1、2又は3である〕を有する少なくとも1つのブラックアゾ染料とを含むブラックインクジェットインクを含む。よって、ここに記載の態様は、特定の従来の方法に関連する様々な欠点に対処することを意図した特徴及び効果の組合せを有する。上述の様々な性質並びに他の特徴は、以下の好ましい態様の詳細な説明を読めば、当業者には容易に明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0008】
詳細な系の要素を記載するために、以下の説明及び特許請求の範囲全体にわたり、特定の用語を使用する。当業者により理解されるように、コンピュータ会社も1つの要素を異なる名前で呼ぶことがある。本明細書は、名前の異なる要素を区別することを意図しているのではなく、機能が異なる要素を区別することを意図している。
【0009】
以下の議論及び特許請求の範囲においては、「含む」、「含有する」等(「including」及び「comprising」)の用語は、制約なしで使用しており、よって、「含むが、〜に限られない」を意味すると解釈されたい。同様に、単数形の語(「a」、「an」及び「the」)は、文脈上明らかに別のことを示すのでないのあれば、複数の語も含む。よって、例えば、単に「染料」と記載した場合、1つ以上のそのような材料の記載を含む。
【0010】
「インク」又は「インクジェットインク」は、溶液又は分散組成物であって、液体ビヒクル及び着色剤、例えば染料、複数の染料の組合せ、又は顔料若しくは複数の顔料の組合せ、又は分散させた染料若しくは複数の分散させた染料の組合せ、又は染料と顔料若しくは分散させた染料との共用、又は染料及び/若しくは顔料及び/若しくは分散させた染料の任意の組合せを含み得るものを指す。前記液体ビヒクルは、溶液の性質の広い範囲にわたり染料と共存して安定であるように、またインクジェット印刷用に構成されていてよい。
【0011】
ここで用いる限り、「液体ビヒクル」は、基体に着色剤を移送するために使用することができる液体組成物を含む、と定義される。液体ビヒクルは、当分野で公知であり、インクビヒクルの広いバリエーションを、様々な本発明の態様で使用することができる。そのようなインクビヒクルは、非限定的に、界面活性剤、溶剤、共溶剤、緩衝剤、殺生物剤、増粘剤、金属イオン封鎖剤、安定剤及び水を含む様々な異なる薬剤の混合物を含んでいてよい。液体ビヒクルは、いくつかの態様で、ポリマー、UV硬化可能な材料及び/又は可塑剤といった他の添加剤も移送することができる。
【0012】
「媒体基体」又は「基体」は、その上にインクを受容することのできる任意の基体を含み、紙、OHP用プラスチックシート若しくはフィルム、コート紙、例えば写真用、布、アート紙、例えば水彩紙、光ディスク等を含んでいてよい。
【0013】
「多孔質媒体」は、本発明の態様によるインクジェットインクを吸収することができる表面孔及び/又は空洞を有する、任意の実質的に無機粒子を含有するコート媒体を指す。典型的には、多孔質媒体は、基体及び多孔質のインク受容層を含む。インクを多孔質媒体上に印刷すると、インクは孔を充填し、最上の表面は、従来の又は膨潤可能な媒体よりも迅速に指触乾燥する(指で触っても汚れない状態となる)。
【0014】
「スタックヘイズ」又は「スタッキングヘイズ」は、特別な多孔質写真媒体上の印字画のヘイズを指し、典型的には、印刷後に、印刷画像をスタック(積層)させた結果として生じる。それは、通常、印刷画像の暗い領域上に曇ったフィルムとして見える。このヘイズ作用は、画像のブラック領域の明度を増大させ、画像の鮮鋭度を低下させる。典型的には、積層された画像の群の最も上に置かれたもののみは、空気に曝され且つ急速に乾燥し、スタッキングヘイズの影響を受けない。
【0015】
「Lmin」という用語は、画像のブラック領域の最低の明度を指す。Lminがブラック領域の高い明度を示すと、典型的には、低い画像品質という結果を招く。Lminの低下は、より黒いブラック領域をもたらす(つまりより低い又は低下した明度)。
【0016】
数値又は範囲を記載する場合に「約」という語は、測定時に起り得る実験的な誤差から生じる値を包含することを意図している。
【0017】
濃度、量、測定値及び他の数値データは、ここでは範囲の形式で表すことができる。そのような範囲は、単に、説明を簡易に簡単にするために使用されていると理解すべきであり、また範囲の限界として記載されている数値のみだけでなく、その範囲内に包含されている全ての個々の数値又は下位範囲が、各数値及び下位範囲が明記されているかのごとく含まれていると柔軟に解釈されるべきである。例えば、約0.1重量%〜約10重量%の重量の範囲は、0.1重量%〜約10重量%という明記されている濃度の限界のみならず、2重量%、3重量%、4重量%といった個々の濃度、並びに1重量%〜5重量%、2重量%〜4重量%等の下位範囲も含まれると解釈すべきである。同じことが、1つの数値のみを記載して示した範囲についても云える。例えば、「約5重量%未満」と表された範囲は、全ての値及び0重量%〜5重量%の下位範囲を含むと解釈されるべきである。さらに、このような解釈は、記載された範囲又は性質の幅に関係なく適用されるべきである。
【0018】
インクジェット印刷(例えば、ピエゾ式及びサーマル式のインクジェット装置のいずれか又は両方)で使用するためのインクジェットインク組成物、印刷画像を形成する方法、並びに印刷画像を開示する。本発明のインクは、一般に、液体ビヒクル中に懸濁させたブラックアゾ染料の特別な種類又はそのような染料のブレンドを含み、印刷画像を積層させた場合の、画像の最も暗い領域での低い明度(Lmin)及び抑えられたヘイズという望ましい性質を付与する。ブラックアゾ染料(単数又は複数)は、以下の式
【0019】
【化2】

【0020】
〔式中、XはSOQであり、Rは非置換C1〜4アルキルであり、QはK、Na、Li又はそれらの任意の組合せであるか、或いはQは他の任意の適切な一価のカチオンであり、mは1又は2であり、nは1、2又は3である。この染料類の1つの代表的な成分は、「Experimental Black1」(1H−ピラゾール−3−カルボン酸,4−[[6−[[4−[(1,5−ジスルホ−2−ナフタレニル)アゾ]−2−メトキシ−5−メチルフェニル]アゾ]−5−ヒドロキシ−7−スルホ−2−ナフタレニル]アゾ]−4,5−ジヒドロ−5−オキソ−1−(4−スルホフェニル)−,リチウムナトリウム塩)である〕を有する。
【0021】
インク組成物
着色剤の式1の類に属する上述のブラックアゾ染料は、膨潤媒体、多孔質媒体、コート媒体及びこれらに類するものを含む様々な印刷可能な媒体上でのインクジェット印刷のためのブラックインク及び多色インクセットでの使用に適している。インク組成物は、水、追加的な着色剤、共溶剤、界面活性剤、緩衝剤、ブリード制御剤、殺生物剤、金属イオン封鎖剤、増粘剤、湿潤剤、バインダ及び他の公知のインクジェットインク添加剤のいくつか又は全てを含む水性調合物又は液体ビヒクル中に調製することができる。
【0022】
例えば、インク用の液体ビヒクルは、水又は水及び少なくとも1つの水溶性の有機溶剤の混合物を含む水ベースのビヒクルを含んでいてよい。適した混合物の選択は、特定の用途の要件、例えば所望の表面張力及び粘性、選択された着色剤、液体の乾燥時間、及び液体が印刷される基体の種類に依存する。本発明のインクえ使用するために選択することができるいくつかの水溶性の有機溶剤は、非限定的に、(1)アルコール、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、フルフリルアルコール、及びテトラヒドロフルフリルアルコール、(2)ケトン又はケトアルコール、例えばアセトン、メチルエチルケトン及びジアセトンアルコール、(3)エーテル、例えばテトラヒドロフラン及びジオキサン、(4)エステル、例えばエチルアセテート、エチルラクテート、エチレンカルボネート及びプロピレンカルボネート、(5)多価アルコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール及びチオジグリコール、(6)アルキレングリコールから誘導された、より低級のアルキルモノ−又はジ−エーテル、例えばエチレングリコールモノ−メチル(若しくは−エチル)エーテル、ジエチレングリコールモノ−メチル(若しくは−エチル)エーテル、プロピレングリコールモノ−メチル(若しくは−エチル)エーテル、トリエチレングリコールモノ−メチル(若しくは−エチル)エーテル、及びジエチレングリコールジ−メチル(若しくは−エチル)エーテル、(7)窒素含有環状化合物、例えばピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、並びに(8)硫黄含有化合物、例えばジメチルスルホキシド及びテトラメチレンスルホンを含む。
【0023】
1つ以上の溶剤又は共溶剤は、概して約1%(重量%)〜約25%の範囲という全量でインク調合物中に含まれていてよい。適する共溶剤は、非限定的に、水溶性の有機共溶剤、脂肪族アルコール、芳香族アルコール、ジオール、グリコールエーテル、ポリ(グリコール)エーテル、N−アルキルカプロラクタム、非置換カプロラクタム、置換及び非置換のホルムアミド、置換及び非置換のアセトアミド、長鎖アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、グリコールブチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アミド、エーテル、カルボン酸、エステル、有機スルフィド、有機スルホキシド、スルホン、アルコール誘導体、カルビトール、ブチルカルビトール、セロソルブ、エーテル誘導体、アミノアルコール、並びにケトンを含む。例えば、共溶剤は、炭素数30以下の第一級脂肪族アルコール、炭素数30以下の第一級芳香族アルコール、炭素数30以下の第二級脂肪族アルコール、炭素数30以下の第二級芳香族アルコール、炭素数30以下の1,2−ジオール、炭素数30以下の1,3−ジオール、炭素数30以下の1,5−ジオール、エチレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテル、ポリ(エチレングリコール)アルキルエーテル、ポリ(エチレングリコール)アルキルエーテルのより高次(高級)の同族体、ポリ(プロピレングリコール)アルキルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)アルキルエーテルのより高次の同族体、並びにこれらに類するものを含んでいてよい。本発明の実施において好ましく用いられる共溶剤の特定の例は、非限定的に、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−ピロリドン、1,(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン、トリメチロールプロパン(EHPD)及びテトラエチレングリコールを含む。
【0024】
選択された共溶剤は、詰まりを低減するためにインクジェットにおける水の蒸発速度、又は所望に応じた他のインク特性、例えば粘性、pH、表面張力、光学密度及び印刷品質を減少又は増大させるために添加することができる。当分野で知られているように、複数の共溶剤を使用することもできる。インクを調合するためのインクビヒクル調合物の例は、約1%(重量%)〜約50%、約2〜約45重量%、又は約5〜約35重量%の範囲での(全)量で、1つ以上の溶剤又は共溶剤を含む。
【0025】
いくつかの態様では、ブリード制御剤を、インクジェットインク組成物の約5重量%まで含む量で使用する。いくつかの適したブリード制御剤は、多価塩、例えば、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、及び任意のそれらの若しくは他の塩との組合せからなる。
【0026】
様々な緩衝剤又はpH調整剤も、インクジェットインク組成物中に含有させるために選択することができる。典型的な緩衝剤は、pH調整溶液、例えばSigma-Aldrich社(ウィスコンシン州ミルウォーキー)から入手可能なTrizma Base、4−モルホリンエタンスルホン酸(「MES」)、4−モルホリンプロパンスルホン酸(「MOPS」)、及びβ−ヒドロキシ−4−モルホリンプロパンスルホン酸(「MOPSO」))、アルカリ金属及びアミンの水酸化物、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、クエン酸、硝酸、塩酸、酢酸、硫酸、アミン、例えばトリエタノールアミン、ジエタノールアミン及びジメチルエタノールアミン、並びに他の塩基性若しくは酸性成分を含む。使用の際には、緩衝剤は、典型的には、インクジェットインク組成物の約10重量%まで含む。
【0027】
特定の用途のためにインク組成物の特性を最適化するために、様々な種類の添加剤をインク中で使用することができる。インク組成物の残り成分は、多くが水であってよい。しかし、いくつかの態様では、独立に選択された他の成分も含まれていてよく、そのような成分を、界面活性剤、湿潤剤、耐コゲーション添加剤、耐食添加剤、ポリマー、防腐剤、微生物の成長を阻止する殺生物剤(例えば、Avecia Incorporatedより入手可能な防腐剤PROXEL(商標)GXL)、キレート剤(又は金属イオン封鎖剤)、例えば重金属不純物の悪い影響を排除するEDTA、並びに増粘剤が含まれ、これらは、インク組成物の様々な特性を向上させるために添加することができる。
【0028】
1つ以上の界面活性剤をインク調合物中に含有させることができ、その適切なものは、アルキルポリエチレンオキサイド、アルキルフェニルポリエチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイドブロックコポリマー、アセチレン性ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド(ジ)エステル、ポリエチレンオキサイドアミン、プロトン化ポリエチレンオキサイドアミン、プロトン化ポリエチレンオキサイドアミド、ジメチコンコポリオール、置換アミンオキサイド及びこれらに類するもの、並びにフルオロカーボン界面活性剤である。適するフルオロカーボン界面活性剤は、非限定的に、オハイオ州フェアレーンのOmnova Solution, Inc.のような会社からPolyFox(登録商標)フルオロカーボン界面活性剤という商品名で市販されているものを含む。例示的なPolyFox(登録商標)界面活性剤は、PolyFox PF-136A、PolyFox PF-151N、PolyFox PF-154N、PolyFox PF-156A及びPolyFox PF-159を含む。
【0029】
非イオン性及び両性の界面活性剤の例は、Dow Chemical(ミシガン州ミッドランド)より入手可能なアルキルポリエチレンオキサイドであるTERGITOL(登録商標)化合物、Rohm & Haas Co.(ペンシルヴァニア州フィラデルフィア)より入手可能なアルキルフェニルポリエチレンオキサイド界面活性剤であるTRITON(登録商標)化合物、ICI Americas(デラウェア州ウィルミントン)より入手可能なBRIJ(登録商標)化合物、ポリエチレンオキサイド/ポリプロピレンオキサイドブロックコポリマーであるPLURONIC(登録商標)化合物、Air Products(ペンシルヴァニア州アレンタウン)より入手可能なアセチレン性ポリエチレンオキサイドであるSURFYNOL(登録商標)化合物、アニオン性界面活性剤、例えばDow Chemical Companyより入手可能なジフェニルスルホネート誘導体のDOWFAX(商標)の類及びCroda Incorporatedより入手可能なホスフェートエステルのCRODAFOS(商標)の類、ポリエチレンオキサイド(「POE」)エステル、POEジエステル、POEアミン、POEアミド、並びにジメチコンコポリオールを含む。
【0030】
インクのpHは、インクの特定のpH要件に応じて、必要に応じて任意の広範な公知のpH調整剤、例えば水酸化カリウム又は硝酸で調整する。
【0031】
minが低く且つスタッキングヘイズが小さい印刷後媒体の生成
上述のブラックインクジェットインクは、非限定的に、熱作動式インクジェットディスペンサ、機械作動式インクジェットディスペンサ、電気作動式インクジェットディスペンサ、磁気作動式ディスペンサ、圧電作動式ディスペンサ、コンティニュアス型インクジェットディスペンサ及び類似のインクジェット印刷装置を含む任意の種類のインクジェット材料ディスペンサ又はプリンタに組み込むことができる。また、インクジェット印刷用として知られる適切なインクジェットインク受容多孔質媒体を使用することができ、それによりインクを受容する。例えば、前記インクは、家庭用及び業務用プリンタを含むフォト用プリンタでの画像生成のため、或いは無機多孔質粒子でコートされた媒体(例えばシリカ及び/又はアルミナコート媒体)上に印刷するために使用することができる。使用可能な例示的な印刷媒体は、非限定的に、HP Advanced Photo Paper、HP Everyday Photo Paper, Semi-gloss、HP Photo Quality InkJet paper、Glossy HP Photo Paper、HP Brochure Tri-fold Gloss及びHP Advanced Photo Paper Soft/High Glossを含む。
【0032】
印刷後媒体を生成するプロセスは、適切なインクジェットインク受容性多孔質印刷媒体上に、着色剤の式1の類のブラックアゾ染料を含む上述のインクジェットインクをインクジェット印刷することを含む。これにより、好ましい態様では、印刷後媒体のブラック領域における望ましく低いLminが得られる。加えて、好ましい態様では、得られる印刷後媒体を印刷した後、完全に乾燥する前に積層させた場合、他のブラックインクを使用する印刷方法によって生成された他の同様に印刷された媒体と比較して、積層された印字画にスタックヘイズがない。
【0033】
ブラックインクは、式1のブラックアゾ染料を、インクの重量につき約2%〜約5%で含んでいてよい。ブラックアゾ染料によって、得られた印刷後媒体の少なくとも1つのブラック領域において、ブラックアゾ染料を含まない同じインクジェットインクで印刷された画像の対応する領域のスタックヘイズ及びLminと比較して、スタックヘイズの低減及びより低いLminが得られる。
【0034】
いくつかの例では、印刷は、上述のブラックインクのみを使用して行い、またいくつかの例では、印刷方法が、上述の式1のブラックアゾ染料及び1つ以上の他のブラック若しくはカラー染料のブレンドを含むブラックインクを利用する。さらに別の例では、印刷方法が、上述の式1のブラックアゾインク及び1つ以上のカラーインク、例えばシアン、マゼンタ及びイエローを含むインクセットを使用して、複数のインクをインクジェット印刷して合成画像若しくは複合画像(composite image)を生成することを含む。
【0035】
ここに記載のインク調合物を利用する印刷方法の態様は、印刷画像のブラック領域の明度(Lmin)を潜在的に低下させ、同時に、スタッキングヘイズを低減し、それにより、今日一般的に使用されている多くの他のインクジェット印刷後媒体と比較して、改善された積層性能(若しくは積層挙動)を有する印刷後媒体を提供する。例えば、式1の類のブラックアゾ染料を、単一インク印刷システム、4種インク、6種インク又は8種インクシステムで使用することができ、それにより、ブラックアゾ染料なしの同じインクで印刷された画像と比較して、スタックヘイズの発現は減少し且つ印刷画像のブラック領域のLminが低められる。好ましい態様では、本発明の印刷方法により、印刷された印(marks)又は画像の少なくとも1つのブラック領域のLminが0〜100のCIELAB色空間スケールにおいて約4〜12である印刷後媒体が得られる。
【0036】
特定の態様では、媒体は、多孔質媒体を含む。特定の態様では、ブラックアゾ染料の量は、ブラックインクの約0.1%〜約10%(重量%)である。いくつかの態様では、ブラックアゾ染料は、ブラックインクの約1%〜約5%である。特定の態様では、1つのブラックアゾ染料は、1H−ピラゾール−3−カルボン酸,4−[[6−[[4−[(1,5−ジスルホ−2−ナフタレニル)アゾ]−2−メトキシ−5−メチルフェニル]アゾ]−5−ヒドロキシ−7−スルホ−2−ナフタレニル]アゾ]−4,5−ジヒドロ−5−オキソ−1−(4−スルホフェニル),リチウムナトリウム塩である。
【0037】
特定の態様では、ブラックインクは、少なくとも1つの式1のブラックアゾ染料であって、ブラック染料、シアン染料、マゼンタ染料及びイエロー染料を含む群から選択された少なくとも1つの他の染料とブレンドされたものを含む。いくつかの態様では、シアン染料は、式
【0038】
【化3】

【0039】
〔式中、Mは水素原子又は金属原子(又はその酸化物、水酸化物若しくはハロゲン化物)を表し、Pcはフタロシアニン環を表す。R及びRはそれぞれ独立に、−SOX、−SO、SONX、−SOの群から選択される置換体を表し、X、X、X及びXはそれぞれ独立して、水素原子、置換若しくは非置換アルキル基、置換若しくは非置換アルキル基、又は置換若しくは非置換の複素環式基を表す。R及びRの少なくとも一方は、置換体としてイオン性親水性基を有する。さらに、k及びlはそれぞれ独立して、1〜3の整数を表す。典型的には、k及びlはそれぞれ独立して、k+lが4に等しくなるように選択される。いくつかの態様では、Rは−SO−(CH−SOZ若しくは−SO−(CH−SOZ及び/又はRは−SO−(CH−SONH−COCOH若しくは−SO−(CH−SONH−CHCH(OH)CHである。それらの態様では、Zはリチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム又はそれらの混合物である。いくつかの態様では、Zはリチウム又はカリウムである。いくつかの態様では、Zはリチウムである。1つの特定の態様では、Rは−SO−(CH−SOZであり、Rは−SO−(CH−SONH−CHCH(OH)CHであり、kは3であり、Zはリチウムである。〕を有する染料の類の1つである。
【0040】
下の表Iは、特定の態様による例示的なフタロシアニン染料を示し、表中、置換基R及びRはそれぞれβ位に導入されている。しかしながら、好ましいシアン染料はβ位でR置換基を有するものの、それを含む染料及びインクが、α位のような異なる位置でR置換基を有する同じ塩基環さらに含んでいてよいことは当業者には理解されるだろう。表Iに示す例示的な染料では、Mは銅(Cu)である。
【表I】

【0041】
いくつかの態様では、式2のシアン染料は、Rが−SO−(CH−SOZであり、Rが−SO−(CH−SONH−CHCH(OH)CHであり、kが3であり、Zがリチウムである、Experimental Cyan 1である。
【0042】
特定の態様では、印刷方法は、上述のブラックインク並びにシアン、マゼンタ及びイエローからなる群から選択される少なくとも1つのカラーインクを含むインクセットを使用する。いくつかの態様では、インクセットは、上記のシアン染料を含むシアンインクを含む。いくつかの態様では、少なくとも1つのブラック領域を有する複合画像が、媒体上に形成される。いくつかの態様では、式1の1つ以上のブラックアゾ染料は、ブラック領域に、ブラックアゾ染料を含まない同じインクで印刷された画像の対応する領域のスタックヘイズ及びLminと比較して、低減したスタックヘイズ及び低いLminを付与する。
【実施例】
【0043】
実施例1
式1の類のブラックアゾ染料の1つであるアゾ染料「Experimental Black 1」(1H−ピラゾール−3−カルボン酸,4−[[6−[[4−[(1,5−ジスルホ−2−ナフタレニル)アゾ]−2−メトキシ−5−メチルフェニル]アゾ]−5−ヒドロキシ−7−スルホ−2−ナフタレニル]アゾ]−4,5−ジヒドロ−5−オキソ−1−(4−スルホフェニル)−,リチウムナトリウム塩)2〜5%を、以下の成分、すなわち、
トリメチロールプロパン(2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、EHPD) 6〜12%、
2−ピロリドン 5〜10%、
1,5ペンタンジオール 1〜8%、
Tergitol 15-S-7 0.1〜3%
MES Acid 0.1〜1%、
Dowfax 8390 0.02〜0.1%、及び
EDTA 0.05〜0.2%
を有するビヒクルと混合することによって、ブラックインクを調製した。このブラックインクを、HP Deskjet 6540プリンタのみを使用してHP Advanced photo paper上に印刷すると、このインクによるLminは4〜12と測定された。
【0044】
このブラックインクは、式2の類のシアン染料の1つであるクプラート(3−)、[[3,3’、3’’−[[2,3−[[3−[[(2−ヒドロキシプロピル)アミノ]スルホニル]プロピル]スルホニル]−29H,31H−フタロシアニン−2,9,16−トリイル−κN29,κN30,κN31,κN32]トリス(スルホニル)]トリス[1−プロパンスルホナト]](5−)]−,トリリチウム,(SP−4−2)−(9Cl)(ここで「Experimental Cyan 1」と呼ぶ)を含むシアンインク、マゼンタ染料、6−ベンゾチアゾールスルホン酸,2−[4−シアノ−3−(1,1−ジメチルエチル)−5−[[4−メチル−6−[(6−スルホ−2ベンゾチアゾーリル)(2,4,6−トリメチル−3−スルホフェニル)アミノ]−2−[(2,4,6−トリメチル−3−スルホフェニル)アミノ]−3−ピリジニル]アゾ]−1H−ピラゾール−1−イル]を含むマゼンタインク、並びに
【0045】
【化4】

【0046】
〔式中、Rは水素又は1〜6の炭素原子を有するアルキルであり、Mは、水素又は金属原子、又は場合によってはアルキル、アルコキシアルキル若しくはヒドロキシアルキルで置換されたアンモニウムであり、R17、R18は独立して、水素、アルキル又はアルコキシであり、それらはそれぞれ1〜3個の炭素原子を有し、p4は1〜3であり、スルホ基は、p4が1である場合には、位置1、4、5、6、7又は8にあり、スルホ基は、p4が2である場合には、位置4及び8、5及び7、6及び8、又は1及び5にあり、スルホ基は、p4が3である場合には、位置3、6及び8、又は4、6及び8にあり、n、mはそれぞれ独立して2〜6である〕の染料の類からのイエロー染料を含むイエローインクの4種インクインクセットでも印刷した。具体的には、イエローインクは、染料、1,3−ナフタレンジスルホン酸,7−[[4−[[4,6−ビス[(3−スルホプロピル)チオ]−1,3,5−トリアジン−2−イル]アミノ]−3−メトキシフェニル]アゾ]−,テトラナトリウム塩(Yellow dye #1)を含む。
【0047】
得られた印刷画像は、画像の積層後も、画像の暗い領域で、ほとんど又は全くヘイズを有していなかった。スタックヘイズは、積層されていない対照例と比較して、Lの変化を測定することにより判定された。
【0048】
実施例2
Experimental Black 1 2〜5%、及び
式3の類のイエロー染料であるイエロー染料、1,5−ナフタレンジスルホン酸,3−[[4−[[4,6−ビス[(3−スルホプロピル)チオ]−1,3,5−トリアジン−2−イル]アミノ]−5−メトキシ−2−メチルフェニル]アゾ]−,テトラナトリウム塩(9Cl)(Yellow Dye #2) 0.1〜2%を、実施例1で説明したビヒクルと混合することによって、別のブラックインクを調製した。
【0049】
得られたインクを実施例1で述べたのと同じように印刷した。印刷画像の最も暗い(つまりブラック)領域のLminは、4〜12であると判定された。このブラックインクを、3種インクのインクセット(実施例1で述べたものと同様)と組み合わせて印刷すると、得られる画像は、印刷後のシートを積層させた後、最も暗い領域でほとんど又は全くヘイズがなかった。
【0050】
実施例3
Experimental Black 1 1〜4%、
マゼンタ染料(6−ベンゾチアゾールスルホン酸,2−[4−シアノ−3−(1,1−ジメチルエチル)−5−[[4−メチル−6−[(6−スルホ−2−ベンゾチアゾーリル)(2,4,6−トリメチル−3−スルホフェニル)アミノ]−2−[(2,4,6−トリメチル−3−スルホフェニル)アミノ]−3−ピリジニル]アゾ]−1H−ピラゾール−1−イル]) 0.1〜0.9%、
Experimental Cyan 1 0.5〜2.5%、及び
Yellow Dye #2 1.0〜2.5%を、
実施例1と同じビヒクルと混合することによって、ブラックインクを調製した。ここでも、このインクに関するLminは、上記態様で述べたのと同じように印刷した場合、4〜12であると判定された。このインクを、4種インクインクセット(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)で印刷した場合、得られた画像は、印刷後のシートを積層させた後、最も暗い領域でほとんど又は全くヘイズを有していなかった。この例において使用された濃度範囲はブラック染料1〜5%(重量ベース)であったが、これに代えて、上述の結果をもたらすブラック染料のあらゆる濃度範囲を利用することができることを理解されたい。例えば、前記染料は、一般に、インクジェットインク中、約0.1重量%〜約10重量%で存在する。サーマルインクジェットプリンタで得られる上述の結果は、例えば圧電式プリンタのような他のインクジェット分配装置で得ることができる同様の低い明度及び低減されたヘイズの代表例であると考える。
【0051】
比較例A
比較のために、以下に示す染料類
【0052】
【化5】

【0053】
〔R及びRはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ基、カルボキシ基、スルホ基、スルファモイル基、N−アルキルアミノスルホニル基、及びN−フェニルアミノスルホニル基であり、R、R、R、R、R、及びRはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン基、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボキシ基、スルホ基、スルファモイル基、N−アルキルアミノスルフォニル基、N−フェニルアミノスルフォニル基であり、nは0又は1である〕に属するアゾ染料Experimental Black 2 2〜5%を混合することによって、ブラックインクを調製した。
【0054】
ビヒクル組成物は、実施例1と同じとした。実施例1で説明したのと同じように印刷すると、得られる画像の最も暗い領域では、この染料のために生じた顕著なヘイズがあり、実施例1〜3のブラック染料及び染料ブレンドよりも不良の(つまりより高い)Lminが得られた。
【0055】
比較例B
別の比較試験では、アゾ染料llford K1334 2〜5%を比較例Aと同様に混合することによって、ブラックインクを調製した。印刷すると、この染料は、得られた画像の最も暗い領域で顕著なヘイジングを生じさせ、積層された画像においてLminが高いことが明らかとなった。
【0056】
比較例C
別の比較試験では、Experimental Black 3の染料(2,7−ナフタレンジスルホン酸,3−[[4−[[4−[[5−(アミノカルボニル)−1−エチル−1,6−ジヒドロ−2−ヒドロキシ−4−メチル−6−オキソ−3−ピリジニル]アゾ]−2−スルホフェニル]アゾ]−2,5−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]アゾ]−4,5−ジヒドロキシ−,カリウムナトリウム塩)2〜5%を、比較例Aと同様に混合することによって、ブラックインクを調製した。印刷すると、この染料も、得られる画像の最も暗い領域で顕著なヘイジングを生じさせ、Lminは、積層されていない画像と比較して積層された画像で顕著に高かった。
【0057】
比較例D
比較例の染料であるExperimental Black 3及びIlford Dye K1334もまた、実施例1〜3で述べたような様々なイエロー、シアン及びマゼンタ染料と混合し、スタックヘイズ及びLminについて試験した。試験結果は、これらの比較例のブラック染料も、実施例1〜3のものと同様のブレンドにおいて、顕著なヘイジング及び不良のLminを生じさせることを示していた。
【0058】
公知のCIELAB(CIEL)系を、色度(c、a及びbの和の平方根)又は二次元色度図における色相[arctan(b/a)]及び飽和度(c/L)を測定又は特定するために使用した。aは、赤色度−緑色度をx軸、つまり水平方向の軸上で、bは、黄色度−青色度をy軸、つまり垂直方向の軸上で測るものである。Lは、明度−暗度をz軸で測る。インク組成物のLmin、及び式1のブラックアゾ染料が他のブラック染料と比較してLminを低下させる能力を評価するため、インク組成物をインクジェットプリンタを使用して多孔質媒体上に印刷し、ブラック領域の暗さをCIELAB系を使用して評価した。
【0059】
実験では、全てのグレーランプ(gray ramps、グレースケールの一連の色)をシアン、マゼンタ及びイエローのインクの同じセットで印刷し、ブラックインクのみを異なるものとした。
【0060】
印刷画像のブラック領域でのヘイジングの広がりを、上記グレーランプを横切ってのLの平均の変化又は画像のLminの変化を印刷サンプルの積層の前後で測定することによって、評価した。画像を多孔質写真媒体上に印刷し、24時間積層させ、その後、数時間にわたり積層せずに放置した。積層された画像のLminを、最上にあった積層されなかった画像のLminと比較した。これらの結果を、表1にまとめる。
【0061】
【表1】

【0062】
上述の議論は、本発明の原理及び様々な態様を示すことを意図している。以上の開示が十分に理解されれば、当業者には多数の変更及び変形が明らかとなろう。また、このような変更及び変形の全てが以下の特許請求の範囲によって包含されるという解釈が意図されている。ここに記載の全ての特許、特許出願及び公報若しくは刊行物は、ここに記載の説明に矛盾なく且つ補助的な手続上の又は他の詳細を提供する程度に、参照によりここで援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット印刷画像のブラック領域において、Lminを低下させ、スタックヘイズを低減させる方法であって、
少なくとも1つのインクジェットインクを、インクジェットインク受容媒体にインクジェット印刷し、少なくとも1つのブラック領域を有する画像を含む印刷後媒体を形成し、
前記少なくとも1つのインクジェットインクが、ブラックインクジェットインクを含み、該ブラックインクジェットインクが、液体ビヒクル、及び式
【化6】


〔式中、XはSOQであり、Rは非置換アルキルであり、QはK、Na若しくはLi又はそれらの任意の組合せであり、mは1又は2であり、nは1、2又は3である〕を有する少なくとも1つのブラックアゾ染料を含み、
前記印刷後媒体を積層させ、前記少なくとも1つのブラック領域において、前記少なくとも1つのブラックアゾ染料を含まないインクジェットインクで印刷された印刷後媒体と比較して、低いLmin及び低減されたスタックヘイズを有する印刷後媒体を得る、方法。
【請求項2】
前記インク受容媒体が多孔質媒体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つのブラックアゾ染料が、1H−ピラゾール−3−カルボン酸,4−[[6−[[4−[(1,5−ジスルホ−2−ナフタレニル)アゾ]−2−メトキシ−5−メチルフェニル]アゾ]−5−ヒドロキシ−7−スルホ−2−ナフタレニル]アゾ]−4,5−ジヒドロ−5−オキソ−1−(4−スルホフェニル)−リチウムナトリウム塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ブラックインクジェットインクが、ブラック染料、シアン染料、マゼンタ染料及びイエロー染料からなる群から選択された少なくとも1つの他の染料と混合された前記少なくとも1つのブラックアゾ染料である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つのシアン染料が、式
【化7】


〔式中、Mは水素原子若しくは金属原子、又はそれらの酸化物、水酸化物若しくは塩化物であり、Pcはフタロシアニン環であり、R及びRはそれぞれ独立して、−SOX、−SO、SONX及び−SOからなる群から選択された置換基であり、X、X、X及びXはそれぞれ独立して、水素原子、置換若しくは非置換アルキル基、置換若しくは非置換アリール基、又は置換若しくは非置換複素環式基であり、R及びRの少なくとも一方が、置換体としてのイオン性の親水性基であり、k及びlはそれぞれ独立して、1〜3の整数である〕を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの前記マゼンタ染料が、6−ベンゾチアゾールスルホン酸,2−[4−シアノスルホン酸−3−(1,1−ジメチルエチル)−5−[[4−メチル−6−[(6−スルホ−2ベンゾチアゾーリル)(2,4,6−トリメチル−3−スルホフェニル)アミノ]−2−[(2,4,6−トリメチル−3−スルホフェニル)アミノ]−3−ピリジニル]アゾ]−1H−ピラゾール−1−イル]である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの前記イエロー染料が、式
【化8】


〔Rは、水素又は1〜6個の炭素原子を有するアルキルであり、Mは、水素又は金属原子、又はアルキル、アルコキシアルキル若しくはヒドロキシアルキルによって任意に置換置換されたアンモニウムであり、R17、R18は独立して、水素、アルキル又はアルコキシであり、それぞれ1〜3個の炭素原子を有しており、p4は1〜3であり、スルホ基は、p4が1に等しい場合には1、4、5、6、7又は8の位置にあり、スルホ基は、p4が2に等しい場合には、4及び8、5及び7、6及び8、又は1及び5の位置にあり、或いはスルホ基は、p4が3に等しい場合には、3、6及び8又は4、6及び8の位置にあり、n及びmはそれぞれ独立して、2〜6である〕を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのインクジェットインクが、前記ブラックインク並びに少なくともシアン、マゼンタ及びイエローのインクを含むインクセットを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記シアンインクが、式
【化9】


〔式中、Mは水素原子若しくは金属原子又はそれらの酸化物、水酸化物若しくは塩化物であり、Pcはフタロシアニン環であり、R及びRはそれぞれ独立して、−SOX、−SO、SONX、及び−SOからなる群から選択された置換基であり、X、X、X及びXはそれぞれ独立して、水素原子、置換若しくは非置換アルキル基、置換若しくは非置換アリール基、又は置換若しくは非置換複素環式基、R及びRの少なくとも一方は、置換体としてイオン性の親水性基であり、k及びlはそれぞれ独立して、1〜3の整数である〕を有するシアン染料を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記マゼンタインクが、マゼンタ染料6−ベンゾチアゾールスルホン酸,2−[4−シアノ−3−(1,1−ジメチルエチル)−5−[[4−メチル−6−[(6−スルホ−2ベンゾチアゾーリル)(2,4,6−トリメチル−3−スルホフェニル)アミノ]−2−[(2,4,6−トリメチル−3−スルホフェニル)アミノ]−3−ピリジニル]アゾ]−1H−ピラゾール−1−イル]を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記イエローインクが、式
【化10】


〔式中、Rは、水素、又は1〜6個の炭素原子を有するアルキルであり、Mは、水素又は金属原子、又は任意にアルキル、アルコキシアルキル若しくはヒドロキシアルキルで置換されたアンモニウムであり、R17、R18は独立して、水素、アルキル又はアルコキシであり、それぞれ1〜3個の炭素原子を有しており、p4は1〜3であり、スルホ基は、p4が1に等しい場合には1、4、5、6、7又は8の位置にあり、或いはスルホ基は、p4が2に等しい場合には4及び8、5及び7、6及び8、又は1及び5の位置にあり、或いはスルホ基は、p4が3に等しい場合には3、6及び8、又は4、6及び8の位置にあり、n及びmはそれぞれ独立して2〜6である〕を有するイエロー染料を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つのインクジェットインクを前記媒体上に噴射させることが、複合画像を前記媒体上に形成することを含み、前記複合画像が前記少なくとも1つのブラック領域を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つのブラックアゾ染料が、前記少なくとも1つのブラック領域に、前記ブラックアゾ染料を含まない同じ少なくとも1つのインクジェットインクで印刷された画像の対応する領域のスタックヘイズ及びLminと比較して、低減されたスタックヘイズ及びより低いLminをもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つのブラック領域のLminが、0〜100のCIELAB色空間スケールにおいて約4〜12である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ブラックインクが、前記少なくとも1つのブラックアゾ染料をインクの重量で約0.1%〜約10%含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記ブラックインクが、前記少なくとも1つのブラックアゾ染料をインクの重量で約1%〜約5%含む、請求項15に記載の方法。

【公表番号】特表2011−505454(P2011−505454A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535943(P2010−535943)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/086141
【国際公開番号】WO2009/070176
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】