説明

映像の歪みを補正する方法、映像の歪みを補正する装置、模擬視界表示装置及び操縦訓練のためのシミュレータ

【課題】スクリーンに投影された映像を見る観察者の目の位置の変位により生じる観察者が認識する映像の歪みを補正する方法を提供する。
【解決手段】本明細書に開示する方法は、スクリーン21に投影された映像を見る観察者の目の位置Pの変位により生じる観察者が認識する映像の歪みを補正する方法であって、目の位置Pの変位量を取得し、この変位量に基づいて、スクリーン21に映像を投影するプロジェクタ22の投影中心を原点O1とする第1座標系S1から、目の位置Pを原点とする第2座標系S2への座標変換を行うマッピング関数を変更し、変更されたマッピング関数を用いて、スクリーン21に投影される原映像に対して目の位置Pの変位により生じる観察者が認識する映像の歪みを補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像の歪みを補正する方法、映像の歪みを補正する装置、模擬視界表示装置及び操縦訓練のためのシミュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飛行機又は車両等の操縦を訓練するためのシミュレータが使用されている。
【0003】
このようなシミュレータでは、実際に操縦している状態の臨場感を得るために広い視野を有するスクリーンに映像が投影される。シミュレータの操縦者は、スクリーンに映される映像を見ながら操縦を訓練する。
【0004】
スクリーンには、プロジェクタ等を用いて映像が投影される。操縦者の視点と映像を投影するプロジェクタの投影中心とが一致する場合には、スクリーンに映される映像には歪みが生じない。しかし、一般に操縦者の視点と投影中心とは一致しないので、操縦者から見たスクリーン上の映像には歪みが生じる。この映像の歪みは、スクリーンが平面の時よりも、曲面の場合に大きい。
【0005】
そこで、スクリーンに投影される原映像に対してスクリーンに映された時に生じる操縦者が認識する映像の歪みがあらかじめ補正された映像を作成し、この補正された映像をスクリーンに投影することが行われている。この映像の補正について、図を参照しながら、以下に説明する。
【0006】
図1は、スクリーンに投影された映像の歪みを補正することを説明する図である。
【0007】
図1(A)に示す原映像がスクリーンに投影された映像が、図1(B)に示されている。操縦者の視点と投影中心とが一致しない場合には、スクリーンを見る操縦者は、図1(B)に示すように歪んだ映像を見ることになる。ここで、この原映像の投影は、図1(A)に示す原映像を、図1(B)に示す歪んだ映像に関連付ける一種の写像と考えることができる。この写像を関数Fで表す。
【0008】
そこで、関数Fの逆関数F−1を用いて、原画像に対して逆歪みをかけた映像を作成し、この逆歪みをかけた映像をスクリーンに投影すれば、関数F(F−1)によって、投影される映像が原映像の状態に戻るので、操縦者が認識する歪みのない映像をスクリーンに投影することができる。
【0009】
図1(C)は、逆関数F−1を用いて、図1(A)に示す原映像に対してスクリーンに映された時に生じる歪みが補正された映像を示している。図1(D)は、図1(C)に示す補正された映像がスクリーンに映された状態を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2011−53628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
また、シミュレータには、操縦者の操縦操作に応じて、操縦者が位置する操縦部を動揺又は回転させて操縦の模擬体験を提供するものがある。操縦部の動揺と共に、操縦者の位置が変化することにより、操縦者の目の位置も変化するので、視点の位置も同様に変化する。
【0012】
一方、上述したスクリーンに投影された映像の歪みを補正することは、操縦者の目が所定の基準点に位置する場合に固定されて行われている。
【0013】
しかし、操縦者の位置が動揺によって変化すれば、操縦者の目の位置も変化するので、視点の位置も変化する。また、操縦者が、操縦中に頭を動かせば、操縦者の目の位置も変化するので、視点の位置も変化する。
【0014】
このように、操縦者の目の位置が変化すると、操縦者が認識する映像の歪みの状態が変化するので、映像の補正が操縦者の目の位置に合わなくなり、操縦者が認識するスクリーンに投影された映像に歪みが生じることになる。
【0015】
そこで、本明細書では、スクリーンに投影された映像の歪みを補正する方法を提供することを目的とする。
【0016】
また、本明細書では、スクリーンに投影された映像の歪みを補正する装置を提供することを目的とする。
【0017】
また、本明細書では、スクリーンに投影された映像の歪みを補正する模擬視界表示装置を提供することを目的とする。
【0018】
更に、本明細書では、スクリーンに投影された映像の歪みを補正する操縦訓練のためのシミュレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本明細書に開示する方法によれば、スクリーンに投影された映像を見る観察者の目の位置の変位により生じる観察者が認識する映像の歪みを補正する方法であって、上記目の位置の変位量を取得し、上記変位量に基づいて、スクリーンに投影される原映像に対して上記目の位置の変位により生じる映像の歪みを補正する。
【0020】
また、本明細書に開示する装置によれば、スクリーンに投影された映像を見る観察者の目の位置の変位により生じる観察者が認識する映像の歪みを補正する装置であって、上記目の位置の変位量を入力する変位量入力部と、上記スクリーンに投影される原映像を入力する映像入力部と、入力した上記変位量に基づいて、上記原映像に対して上記目の位置の変位により生じる映像の歪みを補正して、補正された映像を生成する歪み補正部と、補正された映像を出力する映像出力部と、を備える。
【0021】
また、本明細書に開示する模擬視界表示装置によれば、スクリーンと、入力した映像を上記スクリーンに投影するプロジェクタと、上記スクリーンに投影された映像を見る観察者の目の位置の変位量を取得する変位量取得部と、上記スクリーンに投影された映像を見る上記目の位置の変位により生じる観察者が認識する映像の歪みを補正する補正装置であって、上記変位量取得部から上記変位量を入力する変位量入力部と、上記スクリーンに投影される原映像を入力する映像入力部と、入力した上記変位量に基づいて、上記原映像に対して上記目の位置の変位により生じる映像の歪みを補正して、補正された映像を生成する歪み補正部と、補正された映像を上記プロジェクタに出力する映像出力部と、を有する補正装置と、を備える。
【0022】
更に、本明細書に開示するシミュレータによれば、映像を生成する映像生成部と、スクリーンと、上記映像生成部から入力した映像を上記スクリーンに投影するプロジェクタと、上記スクリーンに投影された映像を見る操縦者の目の位置の変位量を取得する変位量取得部と、上記スクリーンに投影された映像を見る上記目の位置の変位により生じる操縦者が認識する映像の歪みを補正する補正装置であって、上記変位量取得部から上記変位量を入力する変位量入力部と、上記映像生成部から上記スクリーンに投影される原映像を入力する映像入力部と、入力した上記変位量に基づいて、上記原映像に対して上記目の位置の変位により生じる映像の歪みを補正して、補正された映像を生成する歪み補正部と、補正された映像を上記プロジェクタに出力する映像出力部と、を含む補正装置と、を有する模擬視界表示装置と、操縦者が位置し操縦を行う操縦部と、操縦部に動揺を与える動揺装置と、を備える。
【発明の効果】
【0023】
上述した本明細書に開示する方法によれば、目の位置の変位に応じて、スクリーンに投影された映像の歪みを補正することができる。
【0024】
また、上述した本明細書に開示する装置によれば、目の位置の変位に応じて、スクリーンに投影された映像の歪みを補正することができる。
【0025】
また、上述した本明細書に開示する模擬視界表示装置によれば、目の位置の変位に応じて、歪みが補正された映像がスクリーンに投影される。
【0026】
更に、上述した本明細書に開示するシミュレータによれば、目の位置の変位に応じて、歪みが補正された映像がスクリーンに投影される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】スクリーンに投影された映像の歪みを補正することを説明する図である。
【図2】本明細書に開示する操縦訓練のためのシミュレータの一実施形態を示す図である。
【図3】補正装置の機能ブロック図である。
【図4】補正装置のハードウェアを説明する図である。
【図5】原映像に対して映像の歪みを補正することを説明する図である。
【図6】目の位置の変位量に基づいて、スクリーンに投影される原映像に対して目の位置の変位により生じる映像の歪みを補正することを説明する図である。
【図7】(A)はピンホール・カメラモデルを説明する図であり、(B)は、光学中心を原点とする座標系を説明する図である。
【図8】シミュレータの動作例を説明するフローチャートである。
【図9】変型例のシミュレータにおいて、目の位置の変位量に基づいて、スクリーンに投影される原映像に対して目の位置の変位により生じる映像の歪みを補正することを説明する図である。
【図10】変型例のシミュレータにおいて、原映像に対して目の位置の変位により生じる映像の歪みを補正することを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本明細書で開示する操縦訓練のためのシミュレータの好ましい一実施形態を、図を参照して説明する。但し、本発明の技術範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。
【0029】
図2は、本明細書に開示する操縦訓練のためのシミュレータの一実施形態を示す図である。
【0030】
シミュレータ10は、例えば、ヘリコプター、飛行機又は車両等の操縦訓練のためのシミュレータである。
【0031】
シミュレータ10は、操縦者50が位置し操縦操作を行う操縦部11と、操縦部11に動揺を与える動揺装置12と、映像を生成する映像生成部14とを備える。操縦部11は、操縦者50が着席する操縦席11a及びシミュレータを操作するための操縦桿11bを有する。映像生成部14は、後述するスクリーン21に投影するための原映像を生成する。映像は、複数の画像により構成される。
【0032】
また、シミュレータ10は、スクリーン21と、映像生成部14から入力した映像をスクリーン21に投影するプロジェクタ22とを有する模擬視界表示装置20を備える。
【0033】
模擬視界表示装置20は、操縦部11における操縦者50の操縦操作に応じて映像生成部14が生成する映像を入力し、操縦者50が認識する映像の歪みを補正して、プロジェクタ22から歪みが補正された映像をスクリーン21に投影する。
【0034】
更に、シミュレータ10は、操縦部11、動揺装置12、映像生成部14及び模擬視界表示装置20を制御する制御装置13を備える。
【0035】
制御装置13は、操縦者50の操縦に応じて、動揺装置12の動揺を制御する。動揺装置12は、操縦部11を、縦方向、水平方向又は斜め方向に動揺させる。また、動揺装置12は、操縦部11を回転させても良い。更に、制御装置13は、操縦者50の操縦に応じて、スクリーンに投影される原映像を映像生成部14に生成させる。
【0036】
操縦者50は、スクリーンに映し出される映像を目で見ながら操縦桿11bを操作して、操縦の訓練を行う。
【0037】
シミュレータ10では、スクリーン21は2次曲面形状を有する。操縦者50に広い視野を与える2次曲面形状のスクリーンは、操縦者50に対して、実際に操縦している状態の臨場感をもたらす。
【0038】
操縦訓練では、操縦者50の操縦に応じて、操縦者50が位置する操縦部11は動揺装置12の動揺によって変位する。このように、操縦者50の位置が変化すると、操縦者50の目の位置Pも変化するので、操縦者50のスクリーン21上の視点の位置も変化する。また、操縦者50が、操縦中に頭を動かせば、操縦者の目の位置Pも変化するので、操縦者50の視点が変化する。
【0039】
シミュレータ10は、操縦者50の目の位置Pの変位量を取得し、この変位量に基づいて、スクリーン21に投影される原映像に対して目の位置Pの変位により生じる操縦者50が認識する映像の歪みを補正する。従って、シミュレータ10を操縦する操縦者50は、目の位置Pが変化しても、歪みのない映像を見ることができる。
【0040】
シミュレータ10では、模擬視界表示装置20が、映像の歪みを補正する。以下、この模擬視界表示装置20について、図を参照しながら、以下に説明する。
【0041】
模擬視界表示装置20は、上述したスクリーン21及びプロジェクタ22と、スクリーン21に投影された映像を見る操縦者50の目の位置Pの変位量を取得する変位量取得部26と、スクリーン21に投影された映像を見る目の位置Pの変位により生じる映像の歪みを補正する補正装置25とを有する。
【0042】
変位量取得装置26及び補正装置25は、制御装置13によって制御される。
【0043】
変位量取得部26は、操縦者50の目の位置Pの変位量を、以下の2通りの方法で取得することができる。
【0044】
第1の方法では、変位量取得部26は、制御装置13が動揺装置12を動揺させる制御信号を入力して、操縦者50の目の位置Pの変位量を取得する。動揺装置12によって操縦部11が動揺すると、操縦席11aに着座している操縦者50の位置は、動揺部11と同じ様に変位する。操縦者の目の位置Pの変位は、操縦者50の位置の変位と同じである考えることができる。そこで、第1の方法では、制御装置13が動揺装置12を動揺させる制御信号を入力して、操縦者50の目の位置Pの変位量を取得する。
【0045】
操縦者50の目の位置Pの変位量は、目の位置Pの平行移動量及び/又は姿勢の変化量である回転量として表される。
【0046】
第2の方法では、変位量取得部26は、操縦者50の頭部の位置が変位した量を取得して、目の位置Pの変位量とする。変位量取得部26は、操縦者50の頭部の変位量を測定するセンサ26aを有する。センサ26aは、操縦者50の頭部に装着される。センサ26aとしては、例えば、3次元加速度センサを用いることができる。センサ26aは、操縦者50の頭部の位置の変化により生じる3次元の加速度成分を検出し、各成分を信号として出力する。変位量取得部26は、センサ26aの出力信号を入力して、操縦者50の頭部の位置の変位量を取得する。変位量取得部26は、入力した加速度成分を時間に関して2回積分することにより変位量を求める。操縦者の目の位置Pの変位は、操縦者50の頭部の変位と同じである考えることができる。そこで、第2の方法では、変位量取得部26は、操縦者50の頭部が変位した量を取得して、目の位置Pの変位量とする。
【0047】
変位量取得部26は、上述した第1の方法又は第2の方法の何れかを用いて、操縦者50の目の位置の変位量を取得し得る。
【0048】
例えば、スクリーン21が操縦部11と一体に形成される場合には、スクリーン21は、操縦部11と一体に動揺する。このような場合には、上述した第1の方法では、操縦者50の目の位置の変位量を正確に取得することができないので、第2の方法が用いられる。
【0049】
変位量取得部26は、取得した目の位置Pの変位量を補正装置25に出力する。
【0050】
次に、補正装置25について、図を参照しながら、以下に説明する。
【0051】
図3は、補正装置の機能ブロック図である。
【0052】
図3に示すように、補正装置25は、変位量取得部26から目の位置Pの変位量を入力する変位量入力部25aと、映像生成装置14からスクリーン21に投影される原映像を入力する映像入力部25bと、入力した変位量に基づいて、原映像に対して目の位置Pの変位により生じる操縦者50が認識する映像の歪みを補正して、補正された映像を生成する歪み補正部25cと、補正された映像をプロジェクタ22に出力する映像出力部25dと、を有する。
【0053】
図4は、補正装置のハードウェアを説明する図である。
【0054】
補正装置25は、上述した各機能を実現するためのハードウェアとして、演算部31と、記憶部32と、表示部33と、入力部34と、出力部35と、通信部36とを有する。演算部31は、記憶部32に記憶された所定のプログラムを実行することにより、上述した補正装置25の各機能を実現する。
【0055】
具体的には、入力した目の位置Pの変位量に基づいて、原映像に対して目の位置Pの変位により生じる操縦者50が認識する映像の歪みを補正することは、演算部31が、記憶部32に記憶された所定のプログラムを実行することにより実現される。
【0056】
所定のプログラムは、例えば通信部36を用いて、ネットワーク(図示しない)を介して記憶部32に記憶することができる。また、補正装置31の通信部36と、映像生成装置14、変位量取得装置26及び制御装置13とをネットワークを介して接続することにより、変位量又は原映像を、通信部36を用いて入力しても良い。
【0057】
補正装置25は、例えば、サーバ又はパーソナルコンピュータ等のコンピュータ、若しくはステートマシン等を用いて形成され得る。制御装置13及び映像生成装置14及び後述するマッピング関数生成装置27も、図4に示すのと同様のハードウェアを用いて実現され得る。
【0058】
また、補正装置25は、回路等のハードウェアを用いて形成しても良い。
【0059】
次に、補正装置25が、目の位置Pの変位量に基づいて、スクリーン21に投影される原映像に対して目の位置Pの変位により生じる操縦者50が認識する映像の歪みを補正する処理を、図を参照しながら、以下に説明する。
【0060】
まず、図1を用いて説明したように、映像生成装置14により生成された原映像に対しては、スクリーンに映された時に生じる操縦者50が認識する歪みが補正される。この歪み補正は、シミュレータ10が動作を開始した最初の状態では、操縦者の目の位置Pが所定の基準点にあるものとして行われる。
【0061】
図5は、原映像に対して映像の歪みを補正することを説明する図である。
【0062】
画像40aは、映像生成装置14により生成された原映像の一コマを示す。画像40bは、プロジェクタ22からスクリーン21に投影される歪みが補正された映像の一コマを示す。プロジェクタ22の画素Qbの画素情報(輝度情報)として、歪み補正テーブル41のテーブル要素41aを参照して、画像40aの画素Qaの画素情報が読み取られる。即ち、歪み補正テーブル41は、プロジェクタ22の各画素Qbの位置と、原映像の画像40aの画素Qaの位置と対応づけるテーブルである。
【0063】
プロジェクタ22から投影される画像40bは、スクリーンに映された時に生じる操縦者50が認識する歪みが補正された画像(図1(C)に対応する)となっているので、画像40bがプロジェクタ22からスクリーン21に投影された画像(図1(D)に対応する)は、目の位置が所定の基準点にある操縦者50には、歪みのない画像に見える。プロジェクタ22から投影される画像40b(矩形ABCD)は、例えば、原映像の画像40aの鎖線で示された領域ABCDの画素情報を用いて生成される。
【0064】
このように、補正装置25は、映像生成装置14により生成された原映像の一コマを入力し、歪み補正テーブル41を参照して、プロジェクタ22に出力される各画素Qbの画素情報を、対応する原映像の画像40aの画素Qaから読み取って、補正された画像を生成する。このようにして、補正装置25が、映像生成装置14により生成された原映像の各コマに対して補正された画像をプロジェクタ22に次々と出力することにより、操縦者50が認識する歪みが補正された映像がスクリーン21に投影される。
【0065】
上述した歪み補正テーブル41は、図5の式(1)に示すマッピング関数fpeによって作成される。マッピング関数fpeは、プロジェクタ22のある画素Qbの位置を、原映像の画像40aの画素Qaの位置に対応づける関数である。図5の式(1)における±の符号は、2次曲面であるスクリーン21が、操縦者50に向かって凸の場合と、操縦者50とは反対側に向かって凸の場合とのそれぞれに対応する。
【0066】
図6は、目の位置の変位量に基づいて、スクリーンに投影される原映像に対して目の位置の変位により生じる映像の歪みを補正することを説明する図である。
【0067】
マッピング関数fpeは、プロジェクタ22がスクリーン21に映像を投影する投影中心を原点O1とする第1座標系S1から、操縦者50の目の位置Pを原点とする第2座標系S2への座標変換を行う関数である。
【0068】
マッピング関数fpeは、最初は目の位置Pが所定の基準点にあるとして生成されたものであり、操縦者50が操縦訓練を開始した後には、目の位置Pの変位量に基づいて変更される。
【0069】
最初、操縦者50の目の位置Pが、第1座標系S1における所定の基準点にあるものとする。そして、当初のマッピング関数fpeは、プロジェクタ22がスクリーン21に映像を投影する投影中心を原点O1とする第1座標系S1から、操縦者50の目の位置Pである基準点を原点とする第2座標系S2への座標変換を行う関数として生成される。ここで、シミュレータ10においてプロジェクタ22の位置は固定されているので、プロジェクタ22がスクリーン21に映像を投影する投影中心を原点O1の位置は固定されている。
【0070】
そして、図6に示すように、操縦部11の動揺等により、操縦者50の目の位置が、位置Pから位置P’に変位したとする。すると、操縦者50の目の位置が、第1座標系S1における点P’に移動する。
【0071】
操縦者50の目の位置が、第1座標系S1において点Pから点P’に移動する変位量は行列Rで表すことができる。この変位量を表す行列Rは、点Pの移動に基づく平行移動量を表す成分及び回転量を表す成分を有する。
【0072】
そして、補正装置25は、目の位置Pの変位量に基づいて、プロジェクタ22がスクリーン21に映像を投影する投影中心を原点O1とする第1座標系S1から目の位置Pを原点とする第2座標系S2への座標変換を行うマッピング関数fpeを、第1座標系S1から目の位置P’を原点とする第2座標系S2’への座標変換を行うマッピング関数fpe’に変更し、変更されたマッピング関数fpe’を用いて、原映像に対して目の位置の変位により生じる操縦者50が認識する映像の歪みを補正する。
【0073】
次に、シミュレータ10が動作を開始した最初の状態において、即ち操縦者の目の位置Pが所定の基準点にある状態におけるマッピング関数を以下に説明する。その後、目の位置Pの変位量に基づいて、マッピング関数がどのように変更されるのかを説明する。
【0074】
シミュレータ10が動作を開始した最初の状態において、マッピング関数は、模擬視界表示装置20が有するマッピング関数生成装置27によって生成される。マッピング関数生成装置27は、スクリーン21の形状等を計測するための計測カメラ23を有する。マッピング関数生成装置27は、制御装置13によって制御される。
【0075】
マッピング関数生成装置27は、以下に説明するシステムデータに基づいて、マッピング関数を生成する。システムデータは、マッピング関数生成装置27内の記憶部に記憶される。マッピング関数生成装置27は、その演算部が、システムデータを用いて所定のプログラムを実行することにより、マッピング関数を生成する。
【0076】
システムデータは、プロジェクタ22に関するデータと、操縦者50の目を仮想的にカメラに置き換えた仮想カメラ24(図6参照)に関するデータと、スクリーン21に関するデータとを有する。計測用カメラ23は、一部のシステムデータを取得する際に用いられる。
【0077】
プロジェクタ22に関するデータには、投影角(画角)、解像度及び第1座標系S1で表された画像中心の位置が含まれる。この画像中心の説明については後述する。
【0078】
仮想カメラ24に関するデータには、視野角(画角)、解像度、第2座標系S2で表された画像中心の位置及び第1座標系S1で表された仮想カメラ24の位置及び姿勢が含まれる。仮想カメラ24の位置は、第1座標系S1で表された原点O1からの平行移動量で表され、仮想カメラ24の姿勢は、第1座標系S1で表された所定の基準の方向から仮想カメラ24の光軸の方向への回転量で表される。シミュレータ10が動作を開始した最初の状態においては、仮想カメラ24の位置は、第1座標系S1で表された所定の基準点にある。また、最初の状態における仮想カメラ24の姿勢は、所定の基準点に位置する操縦者50の目からスクリーン21の正面方向を見た視点の方向と一致する光軸の方向を意味する。仮想カメラ24の位置及び姿勢は、計測用カメラ23を用いて計測される。
【0079】
スクリーン21に関するデータには、スクリーン21の形状を表す2次曲面係数行列(4行4列)が含まれる。2次曲面係数行列は、第1座標系S1で表される。この2次曲面係数行列は、2次曲面と共に平面形状を表すことができるので、2次曲面係数行列で表されるスクリーンには平面スクリーンが含まれる。2次曲面係数行列は、計測カメラ23を用いて計測される。
【0080】
なお、システムデータの内、計測カメラ23を用いて計測されないデータに関しては、あらかじめマッピング関数生成装置27内に記憶されている。
【0081】
次に、上述したプロジェクタ22の画像中心及び仮想カメラ24の画像中心並びに第1座標系S1及び第2座標系S2について、図7を参照して、以下に説明する。
【0082】
図7(A)はピンホール・カメラモデルを説明する図であり、図7(B)は、光学中心を原点とする座標系を説明する図である。
【0083】
図7(A)には、プロジェクタ22及び仮想カメラ24の幾何学的性質が、ピンホール・カメラモデルを用いて示されている。
【0084】
図7(A)では、カメラの撮像素子(プロジェクタの場合には、投影される画像素子)が配置される画像面πと、カメラの光学系の光軸Lと、画像面πに映された像とが示されている。ピンホール・カメラモデルでは、カメラの画像面πに至る光の全ては、光軸上の一点Cを通過すると考える。この点Cは光学中心と呼ばれる。また、この光学中心Cを通る光軸Lは、画像面πと垂直に交わっており、光軸Lと画像面πとの交点は、画像中心xcと呼ばれる。そして、光学中心Cと画像中心xcとの間の距離は焦点距離と呼ばれる。
【0085】
また、図7(B)に示すように、画像面π内では、光軸Lと直交し且つ互いに垂直な関係にあるx軸及びy軸が示されている。画像面π内の画素の位置は、x座標及びy座標により表される。そして、ピンホール・カメラモデルにおいて、光学中心Cを原点としたカメラ座標系を考える。このカメラ座標系では、Z軸を光軸Lと一致させて、X軸を画像面π内のx軸と平行になるように且つY軸を画像面π内のy軸と平行になるようにとる。上述した第1座標系S1及び第2座標系S2は、このカメラ座標系の一つである。
【0086】
第1座標系S1では、プロジェクタ22がスクリーン21に映像を投影する投影中心である原点O1は、プロジェクタ22の画像中心である。
【0087】
また、第2座標系S2では、操縦者50の目の位置である原点Pは、仮想カメラ24の画像中心である。
【0088】
図5の式(1)に示すマッピング関数fpeは、第1座標系S1において3行1列の齋次座標で表されるプロジェクタの画像における画素の位置を表す行列X1と、第2座標系S2において3行1列の齋次座標で表される仮想カメラ24の画像における画素の位置を表す行列X2とを対応づける。齋次座標では、図7(B)におけるカメラ座標系のZ成分が1に固定されて、画像面π上の位置を表わす座標である。
【0089】
図5の式(1)における行列Aは、3行3列の行列であり、(1)プロジェクタ22の投影角、解像度及び画像中心の位置に基づいて作成された3行3列の内部パラメータ行列と、(2)視点カメラ24の視野角、解像度、画像中心の位置、及び第1座標系S1で表された所定の基準点に位置する視点カメラ24の平行移動量及び回転量に基づいて作成された3行4列の射影行列Tと、(3)スクリーン21の形状を表す4行4列の2次曲面係数行列と、を用いて作成される。
【0090】
上述した射影行列Tは、視点カメラの視野角、解像度及び画像中心位置に基づいて作成される行列T1と、第1座標系S1で表された所定の基準点に位置する視点カメラ24の平行移動量及び回転量に基づいて作成される行列T2との積で表される。
【0091】
図5の式(1)における行列Eは、第1座標系S1で表された2次曲面係数行列に基づいて作成される3行3列の行列である。
【0092】
図5の式(1)における行列eは、エピポールと呼ばれ、射影行列Tを元にして作成される3行1列の行列である。行列eは、視点カメラの視野角、解像度及び画像中心の位置に基づいて作成される行列e1と、第1座標系S1で表された所定の基準点に位置する視点カメラ24の平行移動量及び回転量に基づいて作成される行列e2との積で表される。
【0093】
マッピング関数生成装置27は、生成したマッピング関数及びシステムデータを補正装置25に出力する。補正装置25は、入力したマッピング関数及びシステムデータを記憶部32に記憶する。
【0094】
上述したマッピング関数に関する詳細な説明については、例えば、特開2006−221599号明細書及び特開2009−5044号明細書等を参照されたい。
【0095】
次に、目の位置Pの変位量に基づいて、マッピング関数を変更することを以下に説明する。
【0096】
目の位置が変位すると、即ち、視点カメラ24の位置が変位すると、第1座標系S1で表された第2座標系S2の原点Pの平行移動量及び回転量が変化する。図6には、目の位置が点Pから点P’に移動することにより、点Pを原点とする第2座標系S2が、点P’を原点とする第2座標系S2’に移動した状態が示されている。
【0097】
そして、移動後の第1座標系S1で表された視点カメラ24の平行移動量及び回転量は、目の位置が変位する前の第1座標系S1で表された視点カメラ24の平行移動量及び回転量と、視点カメラ24の位置の変位量とに基づいて求められる。ここで、視点カメラ24の位置の変位量は、目の位置Pの変位量として、変位量取得装置26によって取得された行列Rで表される。
【0098】
最初の状態において、視点カメラ24の平行移動量は、第1座標系S1における所定の基準点の位置に対応しており、視点カメラ24の回転量は、第1座標系S1で表された所定の基準の方向から仮想カメラ24の光軸の方向への回転量である。従って、移動後の第1座標系S1で表された視点カメラ24の平行移動量及び回転量それぞれは、第1座標系S1における所定の基準点からの位置の変位量である平行移動量と、第1座標系S1における初期姿勢からの変位量である回転量とにより表されることになる。
【0099】
補正装置25は、演算部31が記憶部32に記憶された所定のプログラムを実行することにより、第1座標系S1で表された現在の視点カメラ24の平行移動量及び回転量を用いて、射影行列Tを構成する行列T2を新たに求める。また、補正装置25は、演算部31が記憶部32に記憶された所定のプログラムを実行することにより、求めた現在の第1座標系S1で表された視点カメラ24の平行移動量及び回転量を用いて、行列eを構成する行列e2を新たに求める。そして、補正装置25は、演算部31が記憶部32に記憶された所定のプログラムを実行することにより、新たに求めた行列T2を用いて射影行列Tを変更し且つ新たに求めた行列e2を用いて行列eを変更して、変更された射影行列T及び行列e及びシステムデータを用いて、マッピング関数を変更する。
【0100】
このように、補正装置25は、目の位置Pの変位量に基づいて、マッピング関数を変更する機能を有する。
【0101】
図6には、目の位置の変位に伴って、第1座標系S1から第2座標系S2への座標変換を行うマッピング関数がfpeからfpe’に変更されることが示されている。
【0102】
以上が、目の位置Pの変位量に基づいて、補正装置25がマッピング関数を変更することの説明である。
【0103】
次に、上述したシミュレータ10の動作例を、図8を参照して以下に説明する。
【0104】
まず、ステップS10に示すように、シミュレータ10が起動すると、制御部13は、計測用カメラ23を用いてシステムデータを取得した後、マッピング関数生成装置27を用いてマッピング関数を生成する。生成されたマッピング関数は、補正装置25に記憶される。そして、操縦部11に位置した操縦者50が操縦訓練を開始する。
【0105】
次に、ステップS12に示すように、補正装置25は、変位量取得部26が取得した操縦者50の目の位置の変位量を入力する。また、補正装置25は、映像生成装置14が生成したスクリーンに投影するための原映像を入力する。
【0106】
次に、ステップS14に示すように、補正装置25は、目の位置の変位量に基づいて、マッピング関数を変更する。
【0107】
次に、ステップS16に示すように、補正装置25は、変更されたマッピング関数を用いて、歪み補正テーブル41を変更する。補正装置25は、プロジェクタ22の各画素Qbの位置に対応する原映像を構成する画像40aの画素Qaの位置について、変更されたマッピング関数を用いて、歪み補正テーブル41を書き換える。
【0108】
次に、ステップS18に示すように、補正装置25は、歪み補正テーブル41を用いて、原映像に対して目の位置の変位により生じる操縦者50が認識する映像の歪みを補正して、補正された映像を生成する。
【0109】
そして、ステップS20に示すように、補正装置25は、補正された映像をプロジェクタ22に出力する。プロジェクタ22は、補正された映像をスクリーン21に投影する。スクリーン21には、操縦者が認識する歪みのない映像が投影される。
【0110】
上述した本実施形態のシミュレータ10によれば、操縦者50の目の位置の変位に応じて、操縦者50が認識する歪みが補正された映像がスクリーンに投影される。操縦者50は、訓練中に歪みのない映像を見ながら操縦できるので、訓練の精度を高めることができる。
【0111】
次に、上述したシミュレータの変型例を、図9及び図10を参照しながら以下に説明する。この変型例について特に説明しない点については、上述の実施形態に関して詳述した説明が適宜適用される。また、同一の構成要素には同一の符号を付してある。
【0112】
図9は、変型例のシミュレータにおいて、目の位置の変位量に基づいて、スクリーンに投影される原映像に対して目の位置の変位により生じる映像の歪みを補正することを説明する図である。図10は、変型例のシミュレータにおいて、原映像に対して目の位置の変位により生じる映像の歪みを補正することを説明する図である。
【0113】
本変型例のシミュレータ10では、マッピング関数が、スクリーン21に映像を投影するプロジェクタ22の投影中心を原点O1とする第1座標系S1から、スクリーン21を撮影する計測用カメラ23の位置を原点O3とする第3座標系S3への座標変換を行う第1マッピング関数fpcと、第3座標系S3から、操縦者50の目の位置Pを原点とする第2座標系S2への座標変換を行う第2マッピング関数fceとから構成される。
【0114】
シミュレータ10では、プロジェクタ22及び計測用カメラ23の位置は固定されているので、操縦者50の目の位置Pが変位しても第1マッピング関数fpcは変化しない。
【0115】
図9には、操縦者50の目の位置が点Pから点P’に移動することにより、点Pを原点とする第2座標系S2が、点P’を原点とする第2座標系S2’に移動した状態が示されている。補正装置25は、操縦者50の目の位置の変位量に基づいて、第3座標系S3から目の位置Pを原点とする第2座標系S2への座標変換を行うマッピング関数fceを、第3座標系S3から目の位置P’を原点とする第2座標系S2’への座標変換を行うマッピング関数fce’に変更する。
【0116】
補正装置25は、目の位置の変位量に基づいて、第2マッピング関数fceを変更し、第1マッピング関数fpc及び変更された第2マッピング関数fce’を用いて、原映像に対して目の位置の変位により生じる操縦者50が認識する映像の歪みを補正する。
【0117】
次に、本変型例が、マッピング関数を第1マッピング関数fpc及び第2マッピング関数fceという2つの関数に分ける理由を以下に説明する。
【0118】
上述した図5の式(1)に示すマッピング関数fpeは、行列A及び行列E及び行列eを有しているが、これらの行列A及び行列E及び行列eには誤差が含まれている。誤差を含む行列A及び行列E及び行列eを用いたマッピング関数によって補正された映像には、操縦者が認識し得る歪みが残り、映像を構成する画像と画像との間にずれが生じる場合がある。そこで、マッピング関数fpeに対して、これらの誤差を修正する最適化処理を行うことが好ましい。しかし、この最適化処理には多くの時間を要するので、操縦者の目の位置の変位に応じて、マッピング関数を最適化処理した上で、映像を構成する各画像の補正を行うことは困難な場合がある。
【0119】
そこで、本変型例では、第1マッピング関数fpcに対しては最適化処理を行うが、第2マッピング関数fceに対しては最適化処理を行わないこととした。第1マッピング関数fpcは、操縦者50の目の位置Pが変位しても変更されないので、最初に第1マッピング関数fpcを生成した後に最適化処理を一度行えばその後の最適化処理は不要となる。
【0120】
このように、本変型例では、操縦者の目の位置の変位に応じて、部分的に最適化処理されたマッピング関数を用いて映像の補正を行う。第2マッピング関数fceに対しては最適化処理を行ないが、第1マッピング関数fpcに対しては最適化処理が行われているので、操縦者が認識し得る映像の歪み補正に対する不具合の程度を許容範囲に収めることができる。
【0121】
本変型例では、所定の演算速度を有する補正装置25を用いることにより、目の位置の変位により生じる操縦者が認識する映像の歪みを補正した上で、例えば、60Hzで画像が更新される映像をスクリーンに投影することも可能である。
【0122】
次に、上述した第1マッピング関数fpc及び第2マッピング関数fceを用いて、画像を補正する処理について、図10を参照して更に説明する。
【0123】
図10に示すように、プロジェクタ22から投影される画像40bの各画素Qbは、第1歪み補正テーブル42及び第2歪み補正テーブル43を介して、映像生成装置14により生成された原映像の一コマである画像40aの画素Qaと対応付けられている。
【0124】
第2歪み補正テーブル43は、プロジェクタ22の画素Qbの位置と第1歪み補正テーブル42のテーブル要素42aとを対応づけるテーブルである。第2歪み補正テーブル43のテーブル要素43aには、プロジェクタ22の画素Qbの画素情報(輝度情報)が読み取られる原映像の画像40aの画素Qaの位置が、第1歪み補正テーブル42のどのテーブル要素に記載されているのかが収められている。第2歪み補正テーブル43は、図10の式(3)に示す第2マッピング関数fceを用いて作成される。
【0125】
第1歪み補正テーブル42は、第2歪み補正テーブル43のテーブル要素43aと原映像の画像40aの画素Qaとを対応づけるテーブルである。第1歪み補正テーブル42のテーブル要素42aには、第2歪みテーブル43のテーブル要素43aで特定されるプロジェクタ22の画素Qbの画素情報(輝度情報)が読み取られる原映像の画像40aの画素Qaの位置が収められている。第1歪み補正テーブル42は、図10の式(2)に示す第1マッピング関数fpcを用いて作成される。
【0126】
補正装置25は、映像生成装置14により生成された原映像の一コマを入力し、第1歪み補正テーブル42及び第2歪み補正テーブル43を参照して、プロジェクタ22に出力される各画素Qbの画素情報を、対応する原映像の画像40aの画素Qaから読み取って、補正された画像40bを生成する。このようにして、補正装置25が、映像生成装置14により生成された原映像の各コマに対して、補正された画像をプロジェクタ22に次々と出力することにより、操縦者50が認識する歪みが補正された映像がスクリーン21に投影される。
【0127】
図10の式(2)に示す第1マッピング関数fpcは、第1座標系S1において3行1列の齋次座標で表されるプロジェクタ22の画像における画素の位置を表す行列X1と、第3座標系S3において3行1列の齋次座標で表される計測用カメラ23の画像における画素の位置を表す行列X3とを対応づける。
【0128】
マッピング関数生成装置27は、以下に説明するシステムデータに基づいて、第1マッピング関数fpcを生成する。
【0129】
システムデータは、プロジェクタ22に関するデータと、計測用カメラ23に関するデータと、スクリーン21に関するデータとを有する。
【0130】
プロジェクタ22に関するデータには、投影角(画角)、解像度及び第1座標系S1で表された画像中心の位置が含まれる。
【0131】
計測用カメラ23に関するデータには、視野角(画角)、解像度、第3座標系S3で表された画像中心の位置及び第1座標系S1で表された計測用カメラ23の位置及び姿勢が含まれる。ここで、第3座標系S3では、計測用カメラ23の位置である原点O3が、計測用カメラ23の画像中心である。また、計測用カメラ23の位置は、第1座標系S1で表された原点O1からの平行移動量で表され、計測用カメラ23の姿勢は、第1座標系S1で表された所定の基準の方向から計測用カメラ23の光軸の方向への回転量で表される。シミュレータ10において、計測用カメラ23は固定されているので、計測用カメラ23の位置及び姿勢は、あらかじめ決定されている。
【0132】
スクリーン21に関するデータには、スクリーン21の形状を表す2次曲面係数行列(4行4列)が含まれる。2次曲面係数行列は、第1座標系S1で表される。この2次曲面係数行列は、計測カメラ23を用いて計測される。
【0133】
図10の式(2)における行列Eaは、2次曲面係数行列に基づいて作成される3行3列の行列である。
【0134】
図10の式(2)における行列Aaは、3行3列の行列であり、(1)プロジェクタ22の投影角、解像度、及び画像中心の位置に基づいて作成された3行3列の内部パラメータ行列と、(2)計測用カメラ23の視野角、解像度、画像中心の位置及び第1座標系S1で表された計測用カメラ23の平行移動量及び回転量に基づいて作成された3行4列の射影行列Taと、(3)スクリーン21の形状を表す4行4列の2次曲面係数行列と、を用いて作成される。
【0135】
上述した射影行列Taは、計測用カメラ23の視野角、解像度、画像中心の位置に基づいて作成される行列Ta1と、第1座標系S1で表された計測用カメラ23の平行移動量及び回転量に基づいて作成される行列Ta2との積で表される。
【0136】
図10の式(2)における行列eaは、エピポールと呼ばれ、射影行列Taを元にして作成される3行1列の行列である。行列eaは、計測用カメラ23の視野角、解像度、画像中心の位置に基づいて作成される行列ea1と、第1座標系S1で表された計測用カメラ23の平行移動量及び回転量に基づいて作成される行列ea2との積で表される。
【0137】
図10の式(3)に示す第2マッピング関数fceは、第3座標系S3において3行1列の齋次座標で表される計測カメラ23の画像における画素の位置を表す行列X3と、第2座標系S2において3行1列の齋次座標で表される仮想カメラ24の画像における画素の位置を表す行列X2とを対応づける。
【0138】
マッピング関数生成装置27は、以下に説明するシステムデータに基づいて、第2マッピング関数fceを生成する。
【0139】
システムデータは、計測用カメラ23に関するデータと、視点カメラ24に関するデータと、スクリーン21に関するデータとを有する。
【0140】
計測用カメラ23に関するデータには、視野角(画角)、解像度、及び第3座標系S3で表された画像中心の位置が含まれる。
【0141】
仮想カメラ24に関するデータには、視野角(画角)、解像度、第2座標系S2で表された画像中心の位置及び第3座標系S3で表された仮想カメラ24の位置及び姿勢が含まれる。仮想カメラ24の位置は、第3座標系S3で表された原点O3からの平行移動量で表され、仮想カメラ24の姿勢は、第3座標系S3で表された所定の基準の方向から仮想カメラ24の光軸の方向への回転量で表される。ミュレータ10が動作を開始した最初の状態においては、仮想カメラ24の位置は、第3座標系S3で表された所定の基準点にあり、即ち第3座標系S3で表された第2座標系S2の原点の位置Pとなる。また、最初の状態における仮想カメラ24の姿勢は、所定の基準点に位置する操縦者50の目からスクリーン21の正面方向を見た視点の方向と一致する光軸の方向を意味する。仮想カメラ24の位置及び姿勢は、計測用カメラ23を用いて計測される。
【0142】
スクリーン21に関するデータには、スクリーン21の形状を表す2次曲面係数行列(4行4列)が含まれる。2次曲面係数行列は、第3座標系S3で表される。2次曲面係数行列は、計測用カメラ23を用いて計測される。
【0143】
図10の式(3)における行列Abは、3行3列の行列であり、(1)計測用カメラ23の視野角、解像度、及び画像中心の位置から作成された3行3列の内部パラメータ行列と、(2)視点カメラ24の視野角、解像度、画像中心の位置、及び第3座標系S3で表された視点カメラ24の平行移動量及び回転量に基づいて作成された3行4列の射影行列Tbと、(3)スクリーン21の形状を表す4行4列の2次曲面係数行列と、を用いて作成される。
【0144】
上述した射影行列Tbは、視点カメラの視野角、解像度、画像中心の位置に基づいて作成される行列Tb1と、第3座標系S3で表された視点カメラ24の平行移動量及び回転量に基づいて作成される行列Tb2との積で表される。
【0145】
図10の式(3)における行列Ebは、第3座標系S3で表される2次曲面係数行列に基づいて作成される3行3列の行列である。
【0146】
図10の式(3)における行列ebは、エピポールと呼ばれ、射影行列Tbを元にして作成される3行1列の行列である。行列ebは、視点カメラ24の視野角、解像度、画像中心の位置に基づいて作成される行列Eb1と、第3座標系S3で表された視点カメラ24の平行移動量及び回転量に基づいて作成される行列eb2との積で表される。
【0147】
第2マッピング関数fceは、最初は目の位置Pが所定の基準点にあるとして生成されたものであり、操縦者50が操縦訓練を開始した後には、目の位置Pの変位量に基づいて変更される。
【0148】
そして、現在の第3座標系S1で表された視点カメラ24の平行移動量及び回転量は、目の位置が変位する前の第3座標系S3で表された視点カメラ24の平行移動量及び回転量と、視点カメラ24の位置の変位量とに基づいて求められる。
【0149】
補正装置25は、現在の第3座標系S3で表された視点カメラ24の平行移動量及び回転量を用いて、射影行列Tbを構成する行列Tb2を新たに求める。また、補正装置25は、第3座標系S3で表された現在の視点カメラ24の平行移動量及び回転量を用いて、行列ebを構成する行列eb2を新たに求める。そして、補正装置25は、新たに求めた行列Tb2を用いて射影行列Tbを変更し且つ新たに求めた行列eb2を用いて行列ebを変更し、変更された射影行列Tb及び行列ebを用いて、第2マッピング関数fceを変更する。
【0150】
図9には、目の位置の変位に伴って、第3座標系S3から第2座標系S2への座標変換を行う第2マッピング関数がfceからfce’に変更されることが示されている。
【0151】
本発明では、上述した実施形態の映像の歪みを補正する方法、映像の歪みを補正する装置、模擬視界表示装置及び操縦訓練のためのシミュレータは、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。
【0152】
例えば、上述した実施形態では、頭部の変位量を測定するセンサ又は動揺装置への制御信号を用いて、目の位置の変位量の取得をしていた。しかし、目の位置の変位量を取得することは、これらに限定されず他の方法又は手段を用いても良い。例えば、加速度センサを、操縦者の目の近傍に配置して、目の位置の変位量を取得しても良い。
【0153】
また、上述した実施形態では、スクリーンに映像を投影するプロジェクタの数が1つであったが、複数のプロジェクタを使用して、それぞれのプロジェクタから分割した映像をスクリーンに投影しても良い。
【0154】
また上述した説明では、システムデータは、計測用カメラを用いて計測されていたが、スクリーンの2次曲面計数行列が既知であり、且つスクリーンに光ファイバ等のマーカを付けることによりプロジェクタの位置及び姿勢を計測可能な場合には、計測用カメラを設置せずに、仮想的に仮想計測用カメラを配置して、マッピング関数を生成しても良い。
【0155】
また上述した説明では、スクリーンは、2次曲面であったが、スクリーンの形状は、2次曲面以外の形状であっても良い。
【符号の説明】
【0156】
10 シミュレータ
11 操縦部
11a 操縦席
11b 操縦桿
12 動揺装置
13 制御装置
14 映像生成装置
20 模擬視界表示装置
21 スクリーン
22 プロジェクタ
23 計測用カメラ
24 仮想視点カメラ
25 補正装置
25a 変位量入力部
25b 映像入力部
25c 歪み補正部
25d 映像出力部
26 変位量取得部
26a センサ
27 マッピング関数生成装置
31 演算部
32 記憶部
33 表示部
34 入力部
35 出力部
36 通信部
40a 原画像
40b 補正された映像
41 歪み補正テーブル
42 第1歪み補正テーブル
43 第2歪み補正テーブル
50 操縦者
P 目の位置、第2座標系の原点
S1 第1座標系
S2 第2座標系
S3 第3座標系
O1 第1座標系の原点
O3 第3座標系の原点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーンに投影された映像を見る観察者の目の位置の変位により生じる観察者が認識する映像の歪みを補正する方法であって、
前記目の位置の変位量を取得し、
前記変位量に基づいて、スクリーンに投影される原映像に対して前記目の位置の変位により生じる映像の歪みを補正する方法。
【請求項2】
前記変位量に基づいて、
前記スクリーンに映像を投影する投影中心を原点とする第1座標系から、前記目の位置を原点とする第2座標系への座標変換を行うマッピング関数を変更し、
変更された前記マッピング関数を用いて、前記原映像に対して前記目の位置の変位により生じる映像の歪みを補正する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マッピング関数は、
前記第1座標系から、前記スクリーンを撮影する計測用カメラの位置を原点とする第3座標系への座標変換を行う第1マッピング関数と、
前記第3座標系から、前記第2座標系への座標変換を行うマッピング関数とから構成されており、
前記変位量に基づいて、前記第2マッピング関数を変更し、
前記第1マッピング関数及び変更された前記第2マッピング関数を用いて、前記原映像に対して前記目の位置の変位により生じる映像の歪みを補正する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記マッピング関数は、最初は前記目の位置が所定の基準点にあるとして生成されたものであり、その後、前記変位量に基づいて変更される請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記変位量は、前記目の位置の平行移動量又は回転量である請求項1〜4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記スクリーンは2次曲面形状を有する請求項1〜5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
スクリーンに投影された映像を見る観察者の目の位置の変位により生じる観察者が認識する映像の歪みを補正する装置であって、
前記目の位置の変位量を入力する変位量入力部と、
前記スクリーンに投影される原映像を入力する映像入力部と、
入力した前記変位量に基づいて、前記原映像に対して前記目の位置の変位により生じる映像の歪みを補正して、補正された映像を生成する歪み補正部と、
補正された映像を出力する映像出力部と、
を備える装置。
【請求項8】
スクリーンと、
入力した映像を前記スクリーンに投影するプロジェクタと、
前記スクリーンに投影された映像を見る観察者の目の位置の変位量を取得する変位量取得部と、
前記スクリーンに投影された映像を見る前記目の位置の変位により生じる観察者が認識する映像の歪みを補正する補正装置であって、
前記変位量取得部から前記変位量を入力する変位量入力部と、
前記スクリーンに投影される原映像を入力する映像入力部と、
入力した前記変位量に基づいて、前記原映像に対して前記目の位置の変位により生じる映像の歪みを補正して、補正された映像を生成する歪み補正部と、
補正された映像を前記プロジェクタに出力する映像出力部と、
を有する補正装置と、
を備える模擬視界表示装置。
【請求項9】
映像を生成する映像生成部と、
スクリーンと、
前記映像生成部から入力した映像を前記スクリーンに投影するプロジェクタと、
前記スクリーンに投影された映像を見る操縦者の目の位置の変位量を取得する変位量取得部と、
前記スクリーンに投影された映像を見る前記目の位置の変位により生じる操縦者が認識する映像の歪みを補正する補正装置であって、
前記変位量取得部から前記変位量を入力する変位量入力部と、
前記映像生成部から前記スクリーンに投影される原映像を入力する映像入力部と、
入力した前記変位量に基づいて、前記原映像に対して前記目の位置の変位により生じる映像の歪みを補正して、補正された映像を生成する歪み補正部と、
補正された映像を前記プロジェクタに出力する映像出力部と、
を含む補正装置と、
を有する模擬視界表示装置と、
操縦者が位置し操縦を行う操縦部と、
操縦部に動揺を与える動揺装置と、
を備える操縦訓練のためのシミュレータ。
【請求項10】
前記変位量取得部は、操縦者の頭部の位置が変位した量を取得して、前記目の位置の前記変位量とする請求項9に記載のシミュレータ。
【請求項11】
前記動揺装置の動揺を制御する制御部を備え、
前記変位量取得部は、前記制御部が動揺装置を動揺させる制御信号を入力して、前記目の位置の前記変位量を取得する請求項9又は10に記載のシミュレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−26824(P2013−26824A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159783(P2011−159783)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000176730)三菱プレシジョン株式会社 (97)
【Fターム(参考)】