説明

映像信号処理回路、映像信号表示装置、及び映像信号記録装置

デジタル信号に変換された複合カラー映像信号を所定のクロックにより処理する映像信号処理回路であって、クロック発生手段(2)が、所定のクロックを発生し、バースト位相検出手段(3)が、複合カラー映像信号のそれぞれのラインにおいての色副搬送波の位相情報(p)を検出し、位相差算出手段(4)が、バースト位相検出手段(3)からの位相情報(p)と所定の基準位相との位相差を求め、サンプリング位相変換手段(8)が位相差算出手段(4)からの位相補正量(Δb,Δt)に基づき、複合カラー映像信号のサンプリングの位相を補正し、YC分離手段(9)が、サンプリング位相変換手段(8)から出力された複合カラー映像信号から、輝度信号と色信号を分離する。放送方式や非標準信号によらず、良好な2次元または3次元YC分離を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合カラー映像信号(コンポジット映像信号)を入力とし、輝度信号および色信号に分離するための輝度信号色信号分離(YC分離)手段を含む映像信号処理に関し、特に複合カラー映像信号のサンプリング位相を変換する映像信号処理に関する。
【背景技術】
【0002】
アナログカラーテレビジョン(TV)標準放送方式としては、米国や日本で用いられるNTSC方式、主に西ヨーロッパで用いられるPAL方式、フランスなどで用いられるSECAM方式などさまざまな方式がある。また、VTRやゲーム機などの普及により、映像信号には上記標準放送方式の信号(標準信号)とはならない非標準信号がある。近年、複数の放送方式の標準、非標準の映像信号をデジタル信号処理する映像信号処理装置の開発が行われている。
【0003】
このようなデジタル映像信号処理においては、所定のサンプリングクロックによりアナログ信号をデジタル信号に変換(A/D変換)した後に、コンポジット信号から輝度信号(Y信号)と色信号(C信号)に分離(YC分離)をする。
【0004】
従来の映像信号処理回路では、コンポジット信号のブランキング期間に重畳されているバースト信号(色信号位相と振幅の基準信号)での色副搬送波周波数(fsc)を基準とし、バースト・ロック・クロックを発生することでYC分離処理を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、複数の放送方式に対応するため、共通した単一のフリーランクロックでサンプリングしたコンポジット信号を、バーストロックした色副搬送波周波数の4倍(以下、4fsc)のサンプリングデータにサンプリング周波数変換し、YC分離処理をするものがある(例えば、特許文献2,3参照)。
【0006】
YC分離の方法としては、一般的に、色信号の周波数帯域による水平周波数分離フィルタを用いる方法(以下、1次元YC分離)があり、さらに、高画質化のため、NTSC方式において、色副搬送波の位相が1水平走査(1ライン)ごとに反転していることを利用して行うラインくし形フィルタを用いた2次元YC分離(例えば、特許文献4参照)や、同じ1水平走査(1ライン)の色副搬送波の位相が1フレームごとに反転していることを利用して行うフレームくし形フィルタによる3次元YC分離がある(例えば、特許文献5参照)。
【0007】
これらの2次元YC分離、3次元YC分離では、ライン間もしくはフレーム間の相関(ライン間またはフレーム間の色副搬送波位相の関係)を用いて、例えばNTSC方式の標準信号のように、水平周期(ライン間周期)もしくはフレーム間周期での色副搬送波位相の関係が反転(位相差が180°)する性質を利用して、YC分離処理をする。
【0008】
一方、複数の放送方式には、バーストロックした場合に、ライン間もしくはフレーム間の位相関係がNTSC方式とは異なり、位相が反転しない映像信号があり(例えば、NTSC−4.43方式,PAL方式など)、また、VTRやゲーム機などの非標準信号では、ライン間の位相関係が崩れ、位相が必ずしも180°反転しない。従って、ラインごとの色副搬送波位相がずれ、正しく180°反転しない場合には、2次元または3次元YC分離において、輝度信号と色信号の分離を正確に行うことができず、精度が劣化し、ドット妨害などの画質劣化の原因となる。
【0009】
このため、上記の色副搬送波の位相関係とはならない放送方式のコンポジット信号や、色副搬送波の位相のずれなどが生じる非標準信号に対しては、完全に2次元もしくは3次元YC分離を適用することができず、1次元YC分離もしくは2次元YC分離に切り換えることにより、各放送方式の標準・非標準信号に対応したYC分離処理を行っている(例えば、特許文献3,6,7参照)。
【0010】
【特許文献1】特開平10−164618号公報(図1)
【特許文献2】特開2001−112016号公報(図1)
【特許文献3】特開2002−315018号公報(図1,図6)
【特許文献4】特許第2566342号公報(第1図)
【特許文献5】特開平1−174088号公報(第1図)
【特許文献6】特開平7−131819号公報(図1)
【特許文献7】特開2003−92766号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように、上記従来の映像信号処理回路においては、色副搬送波の位相にずれを生じる非標準信号、さらに、標準信号であっても、NTSC方式以外の色副搬送波の位相が反転関係とならない放送方式に対しては、ライン間またはフレーム間の色副搬送波の位相関係による2次元YC分離または3次元YC分離を行うことができず、クロスカラーやドット妨害などの画質劣化が生じ、良好なYC分離を行うことができず、また、画質劣化なく、良好な映像信号を表示若しくは記録することができないという課題があった。
【0012】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、コンポジット信号のライン間もしくはフレーム間での位相関係や非標準信号であるかによらず、良好な2次元または3次元YC分離を行い、YC分離後の画質劣化を防ぐことができる映像信号処理回路、映像信号表示装置、及び映像信号記録装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、
アナログ複合カラー映像信号をサンプリングしてからデジタル信号に変換し、所定のクロックにより処理する映像信号処理回路であって、
上記所定のクロックを発生するクロック発生手段と、
上記複合カラー映像信号のそれぞれのラインにおいての色副搬送波の位相情報を検出する位相検出手段と、
上記位相検出手段からの位相情報と所定の基準位相との位相差を求めさらに、これに基いて位相補正量を求め、出力する位相差算出手段と、
上記位相差算出手段から出力される位相補正量に基づき、上記複合カラー映像信号の上記サンプリングの位相を補正するサンプリング位相変換手段と、
上記サンプリング位相変換手段から出力された複合カラー映像信号から、輝度信号と色信号を分離するYC分離手段と
を備えたことを特徴とする映像信号処理回路を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ライン間もしくはフレーム間での色副搬送波の位相の差を補正し、色副搬送波の位相を2次元または3次元YC分離で用いる位相関係となるようなサンプリング点に合わせることができるので、ライン間もしくはフレーム間での位相関係や非標準信号によらず、複数の放送方式の信号、非標準信号に対し、良好な2次元または3次元YC分離を行い、YC分離後の画質劣化を防ぐことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
[図1]本発明の実施の形態1の映像信号処理回路の構成例を示すブロック図である。
[図2]本発明の実施の形態1の映像信号処理回路におけるバースト位相検出手段の構成例を示すブロック図である。
[図3]本発明の実施の形態1の映像信号処理回路における位相算出手段の構成例を示すブロック図である。
[図4]本発明の実施の形態1の映像信号処理回路におけるサンプリング位相変換手段の構成例を示すブロック図である。
[図5]本発明の実施の形態1の映像信号処理回路における位相変換フィルタの構成例を示すブロック図である。
[図6]本発明の実施の形態1の映像信号処理回路におけるYC分離手段の構成例を示すブロック図である。
[図7]本発明の実施の形態1の映像信号処理回路におけるサンプリング位相変換後のライン間での色副搬送波位相を説明する図である。
[図8]本発明の実施の形態1のサンプリング位相の変換をより詳細に示す図である。
[図9]本発明の実施の形態1の映像信号処理回路における位相変換フィルタの他の構成例を示すブロック図である。
[図10]本発明の実施の形態1の映像信号処理回路における位相変換フィルタの他の構成例を示すブロック図である。
[図11]本発明の実施の形態2の映像信号処理回路の構成例を示すブロック図である。
[図12]本発明の実施の形態2の映像信号処理回路における位相算出手段の構成例を示すブロック図である。
[図13]本発明の実施の形態2の映像信号処理回路におけるサンプリング位相変換手段の構成例を示すブロック図である。
[図14]本発明の実施の形態3の映像信号処理回路の構成例を示すブロック図である。
[図15]本発明の実施の形態3の映像信号処理回路における位相算出手段の構成例を示すブロック図である。
[図16]本発明の実施の形態3におけるクロック位相の補正を示す図である。
[図17]本発明の実施の形態3の映像信号処理回路におけるライン遅延選択手段の構成例を示すブロック図である。
[図18]本発明の実施の形態4の映像信号処理回路の構成例を示すブロック図である。
[図19]本発明の実施の形態4の映像信号処理回路におけるバースト信号位相検波手段の構成例を示すブロック図である。
[図20]本発明の実施の形態5の映像信号処理回路の構成例を示すブロック図である。
[図21]本発明の実施の形態5の映像信号処理回路における位相算出手段の構成の一例を示すブロック図である。
[図22]本発明の実施の形態5の映像信号処理回路におけるフレームサンプリング位相変換手段の構成例を示すブロック図である。
[図23]本発明の実施の形態5の映像信号処理回路におけるYC分離手段の構成例を示すブロック図である。
[図24]本発明の実施の形態5の映像信号処理回路における位相算出手段の他の構成例を示すブロック図である。
[図25]本発明の実施の形態5の映像信号処理回路におけるフレームサンプリング位相変換手段の他の構成例を示すブロック図である。
[図26]本発明の実施の形態6の映像信号処理回路の構成例を示すブロック図である。
[図27]本発明の実施の形態7による映像信号表示装置の構成例を示すブロック図である。
[図28]本発明の実施の形態7による映像信号表示装置の他の構成例を示すブロック図である。
[図29]本発明の実施の形態7による映像信号表示装置の他の構成例を示すブロック図である。
[図30]本発明の実施の形態7による映像信号表示装置の他の構成例を示すブロック図である。
[図31]本発明の実施の形態8による映像信号表示装置の構成例を示すブロック図である。
[図32]本発明の実施の形態8による映像信号表示装置の他の構成例を示すブロック図である。
[図33]本発明の実施の形態9による映像信号記録装置の構成例を示すブロック図である。
[図34]本発明の実施の形態9による映像信号記録装置の他の構成例を示すブロック図である。
[図35]本発明の実施の形態9による映像信号記録装置の他の構成例を示すブロック図である。
[図36]本発明の実施の形態9による映像信号記録装置の他の構成例を示すブロック図である。
[図37]本発明の実施の形態10による映像信号記録装置の構成例を示すブロック図である。
[図38]本発明の実施の形態10による映像信号記録装置の他の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0016】
1 A/D変換手段、2 クロック発生手段、3 バースト位相検出手段、4 位相差算出手段、5 同期分離手段、6,6a,6b,6c タイミング信号発生手段、7 放送方式設定手段、8 サンプリング位相変換手段、9 YC分離手段、10 バースト信号位相検波手段、11 バースト信号抽出手段、12 位相比較手段、13 ループ・フィルタ、14 NCO、15 正弦波ROM、21〜24 遅延手段、25 選択手段、26 位相誤差算出手段、27 位相補正量変換手段、30〜33 1ライン遅延手段、34 遅延補償手段、35 選択手段、36 位相変換フィルタ、37 遅延補償手段、38 位相変換フィルタ、40 係数発生手段、41a〜41h 1クロック遅延手段、42 増幅回路、43 加算器、44 1クロック遅延手段、45 選択手段、46−1〜46−N 補正量遅延手段、47 選択手段、48 係数発生手段、49 補間フィルタ、50 垂直方向色信号抽出フィルタ、51 水平方向色信号抽出フィルタ、52 水平垂直方向色信号抽出フィルタ、53 相関判定手段、54 選択手段、55 減算器、60 位相差算出手段、61 サンプリング位相変換手段、62 位相誤差算出手段、63 位相補正量変換手段、64〜66 位相変換フィルタ、70 クロック位相補正手段、71 位相差算出手段、72 ライン遅延選択手段、73 位相誤差算出手段、74 位相補正量変換手段、75a〜75d 1ライン遅延手段、76 遅延補償手段、77 選択手段、81 位相差算出手段、82 フレームサンプリング位相変換手段、83 YC分離手段、84 1フレーム遅延手段、85 位相誤差算出手段、86 位相補正量変換手段、87 1フレーム遅延手段、88 遅延補償手段、89 位相変換手段、90 減算器、91 BPF、92 減算器、93 位相誤差算出手段、94 位相補正量変換手段、95,96 位相変換手段、100 入力端子、101,102,103,104,105 出力端子、110 色復調手段、200,202 表示処理手段、201 表示手段、300,302 記録信号処理手段、301 記録手段。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態の映像信号処理回路は、コンポジット信号のそれぞれのラインのバースト位相から色副搬送波の位相情報を検出し、その位相情報と所定の基準位相との位相差を求め、その位相差に基づいてコンポジット信号のサンプリング位相を補正し、輝度信号と色信号を分離することを特徴とする。
【0018】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1の映像信号処理回路の構成例を示すブロック図である。図1において、実施の形態1の映像信号処理回路は、A/D変換手段1と、クロック発生手段2と、バースト位相検出手段3と、位相差算出手段4と、同期分離手段5と、タイミング信号発生手段6と、放送方式設定手段7と、サンプリング位相変換手段8と、YC分離手段9と、入力端子100と、出力端子101および102とを備えている。
【0019】
[クロック発生手段2]
クロック発生手段2は、所定の周波数Xのクロックを発生し、A/D変換手段1、バースト位相検出手段3、位相差算出手段4、同期分離手段5、タイミング信号発生手段6、サンプリング位相変換手段8、およびYC分離手段9に供給する。
【0020】
このクロック発生手段2で発生する周波数Xのクロックは、複数の放送方式に対して共通した単一周波数Xのフリーランクロックである。そして、その周波数Xは、放送方式が変わった場合でも、水平同期周波数の公倍数として求められ、共通して用いることが可能な周波数13.5[MHz]を基準とし、周波数13.5[MHz]の整数倍、例えば、X=27[MHz]とする。
【0021】
A/D変換手段1、バースト位相検出手段3、位相差算出手段4、サンプリング位相変換手段8、同期分離手段5、タイミング信号発生手段6、およびYC分離手段9は、この周波数X=27[MHz]の単一のクロックでそれぞれ動作する。
【0022】
[A/D変換手段1]
A/D変換手段1は、クロック発生手段2からのサンプリングクロックに基づいて、入力端子100からの入力映像信号であるアナログ信号のコンポジット信号(アナログコンポジット信号)をサンプリングし、デジタル信号に変換し、変換により得られたデジタル信号をバースト位相検出手段3、同期分離手段5、およびサンプリング位相変換手段8に出力する。
【0023】
入力端子100には、NTSC,PAL,SECAM方式などの複数の放送方式のコンポジット信号が入力される。
【0024】
[同期分離手段5]
同期分離手段5は、A/D変換手段1からのデジタル信号のコンポジット信号に含まれる垂直同期信号および水平同期信号を分離し、タイミング信号発生手段6に出力する。
【0025】
[タイミング信号発生手段6]
タイミング信号発生手段6は、同期分離手段5からの同期信号に基づき、タイミング信号を発生し、位相差算出手段4およびサンプリング位相変換手段8に出力する。ここでは、水平同期信号に基づき、水平同期信号から所定位置にあるサンプリング点を示すタイミング信号、例えば水平ブランキング期間のバースト信号期間におけるサンプリング位置を示すタイミング信号hbを発生する。
【0026】
[放送方式設定手段7]
放送方式設定手段7は、例えばユーザ等の選択により、入力映像信号の放送方式を設定し、設定した放送方式に関する情報として、例えば、NTSC方式,PAL方式,SECAM方式などの放送方式を示す識別信号や、それぞれの放送方式の色副搬送波周波数を示す信号を放送方式設定信号として、バースト位相検出手段3、位相差算出手段4、サンプリング位相変換手段8、およびYC分離手段9に出力する。
【0027】
放送方式設定手段7からの放送方式設定信号が入力されないA/D変換手段1,クロック発生手段2,同期分離手段5,タイミング信号発生手段6の動作は、NTSC方式,PAL方式,SECAM方式など、互いに異なる放送方式相互間において互いに同様である。
【0028】
なお、ここでは、ユーザ等の選択により放送方式を設定するとしたが、これは一例であり、入力されたコンポジット信号のバースト信号の色副搬送波周波数(fsc)、垂直、水平同期信号の周期などから、自動的に放送方式を判別することも可能であり、この放送方式設定手段7を、自動方式判別を行うよう構成してもよい。
【0029】
[バースト位相検出手段3]
バースト位相検出手段3は、A/D変換手段1からのコンポジット信号のそれぞれのラインのバースト位相を検出して、そのラインの色副搬送波の位相情報pを位相差算出手段4に出力する。
【0030】
図2はバースト位相検出手段3の構成例を示すブロック図である。図2において、バースト位相検出手段3は、バースト信号抽出手段11と、位相比較手段12と、ループ・フィルタ13と、NCO(Numerically Controlled Oscillator、数値制御発振器)14と、正弦波ROM(Read Only Memory)15とを備えている。なお、NCO14は、デジタル発振器であり、アナログ信号処理で用いられるVCO(Voltage Controlled Oscillator)に相当する。
【0031】
バースト信号抽出手段11は、A/D変換手段1から入力されたコンポジット信号から、ブランキング期間に重畳されているバースト信号を抽出し、位相比較手段12に出力する。また、位相比較手段12は、バースト信号抽出手段11で抽出されたバースト信号と正弦波ROM15からの色副搬送波周波数fscの基準信号の位相とを比較し、その位相差に応じた信号(比較結果を示す信号)をループ・フィルタ13に出力する。また、ループ・フィルタ13は、位相比較手段12の出力信号を平滑し、平滑された値(平滑された位相比較結果)をNCO14に出力する。
【0032】
NCO14は、ループ・フィルタ13からの、平滑された位相比較結果を時間的に積分して、バースト信号の位相情報pを生成し、位相差算出手段4に出力する。一方、正弦波ROM15において、位相情報pに基づいて、色副搬送波周波数fscの基準信号を発生し、位相比較手段12に出力する。
【0033】
このように、NCO14は、位相引き込みを行い、色副搬送波周波数fscの基準信号を発生するための位相情報、つまりは入力コンポジット信号の現バースト信号における色副搬送波の位相情報を、現ラインでの色副搬送波の位相情報pとして連続して出力する。
【0034】
[位相差算出手段4]
位相差算出手段4は、色副搬送波の位相情報pから、注目ラインとその上下ラインとのライン間の位相誤差を算出し、さらに、これに基づいて位相補正量Δb,Δtを求め、サンプリング位相変換手段8に出力する。
【0035】
図3は位相差算出手段4の構成例を示すブロック図である。図3において、位相差算出手段4は、遅延手段21,22,23,24と、選択手段25と、位相誤差算出手段26と、位相補正量変換手段27とを備えている。
【0036】
図3の位相差算出手段4において、バースト位相検出手段3からの位相情報pは、遅延手段21と位相誤差算出手段26に入力される。また、タイミング信号発生手段6からのタイミング信号hbは、遅延手段21〜24に入力される。また、放送方式設定手段7からの放送方式設定信号は、選択手段25と位相補正量変換手段27に入力される。
【0037】
遅延手段21は、タイミング信号hbにより、位相情報pを1ライン分遅延し、遅延手段22および選択手段25に出力する。また、遅延手段22は、タイミング信号hbにより、遅延手段21から入力された位相情報pを同様に1ライン分遅延し、遅延手段23および選択手段25に出力する。また、遅延手段23は、タイミング信号hbにより、遅延手段22から入力された位相情報pを同様に1ライン分遅延し、遅延手段24に出力する。また、遅延手段24は、タイミング信号hbにより、遅延手段23から入力された位相情報pを同様に1ライン分遅延し、選択手段25に出力する。
【0038】
ここで、上記のタイミング信号hbは、水平同期信号に基づいたバースト信号期間の位置を示すタイミング信号(例えばバーストゲート信号)であり、このタイミング信号hbを用いることで、バースト信号での位相情報pを1ライン分遅延することとなる。
【0039】
このように、遅延手段22〜24は、タイミング信号hbにより、バースト位相検出手段3から入力された位相情報pを、1ライン分ずつ順次遅延する。
【0040】
選択手段25は、放送方式設定手段7からの放送方式設定信号に基づき、遅延手段21,22,24からの入力位相情報p(1ライン遅延情報、2ライン遅延情報、4ライン遅延情報)の内から、放送方式に応じた2つの位相情報pを選択し、その2ライン分の位相情報pを位相誤差算出手段26に出力する。
【0041】
選択手段25による選択は、選択手段25の出力とバースト位相検出手段3の出力(遅延手段21の入力)の組み合わせが、注目ラインおよびその上下のラインの合計3ラインの位相情報pを構成するように行われ、選択された位相情報が位相誤差検出手段26に入力されるが、これは、YC分離手段9において色副搬送波の位相が反転しているライン間の信号を用いて2次元YC分離を行うことを可能にするためである。
【0042】
位相誤差算出手段26は、バースト位相検出手段3および選択手段25からの3ライン分の位相情報pから、ライン間の補正すべき位相誤差δb,δtを求め、位相補正量変換手段27に出力する。
【0043】
位相補正量変換手段27は、位相誤差算出手段26からの位相誤差δb,δtを、位相補正のための位相補正量Δb,Δtに変換し、サンプリング位相変換手段8に出力する。
【0044】
この位相補正量変換手段27での変換は、位相情報pが色副搬送波の1周期を2πとする角度を表す情報であることから、位相誤差算出手段26からの位相誤差δb,δtを、X=27[MHz]のクロックでの1周期を基準とする、時間を表す値(Xのクロックの1周期の倍数で時間を表す)に変換するものである。つまり、色副搬送波周波数fscから、色副搬送波位相の1クロックあたりの、角度で表された変化量ωを、ω=2π×fsc/Xとすると、位相誤差δb,δtから変換された位相補正量Δb,Δtは、Δb=δb/ω,Δt=δt/ωとなる。位相誤差δb,δtの補正範囲を−πから+πまでとするとき、位相補正量Δb,Δtは、−X/(2×fsc)からX/(2×fsc)までの値をとり得る。
【0045】
[サンプリング位相変換手段8]
サンプリング位相変換手段8は、A/D変換手段1からのデジタル信号のコンポジット信号から、YC分離に用いるライン数分の信号として例えば3ライン分(注目ラインおよびその上下ライン)のコンポジット信号を得て、位相差算出手段4からの位相補正量Δb,Δtによって、上下ラインのコンポジット信号の位相を補正し、注目ラインのコンポジット信号DMおよび位相補正した上下ラインのコンポジット信号DT,DBをYC分離手段9に出力する。
このような処理によって、サンプリング位相変換手段8は、単一フリーランクロックでA/D変換した後のデジタル映像信号に対し、バースト信号の位相情報から得られる基準値との位相誤差に基づき、所定の位相関係となるようにサンプリング位相を補正する。
【0046】
図4はサンプリング位相変換手段8の構成例を示すブロック図である。図4において、サンプリング位相変換手段8は、1ライン遅延手段30,31,32,33と、遅延補償手段34と、選択手段35と、位相変換フィルタ36と、遅延補償手段37と、位相変換フィルタ38とを備えている。
【0047】
図4のサンプリング位相変換手段8において、A/D変換手段1からのコンポジット信号は、1ライン遅延手段30と遅延補償手段34に入力される。また、タイミング信号発生手段6からのタイミング信号hbは、1ライン遅延手段30〜33に入力される。また、放送方式設定手段7からの放送方式設定信号は、選択手段35に入力される。また、位相差算出手段4からの位相補正量Δbは、位相変換フィルタ(第1の位相変換フィルタ)36に入力され、位相差算出手段4からの位相補正量Δtは、位相変換フィルタ(第2の位相変換フィルタ)38に入力される。
【0048】
遅延補償手段34は、A/D変換手段1からの入力コンポジット信号に対し、選択手段35の出力信号の選択手段35においての遅延分を補償し、位相変換フィルタ36に出力する。
【0049】
1ライン遅延手段30は、水平同期信号に基づくタイミング信号hbにより、入力されたコンポジット信号を1ライン分遅延し、1ライン遅延手段31および選択手段35に出力する。また、1ライン遅延手段31は、タイミング信号hbにより、1ライン遅延手段30からのコンポジット信号をさらに1ライン遅延し、1ライン遅延手段32および選択手段35に出力する。また、1ライン遅延手段32は、タイミング信号hbにより、1ライン遅延手段31からのコンポジット信号をさらに1ライン遅延し、1ライン遅延手段33に出力する。また、1ライン遅延手段33は、タイミング信号hbにより、1ライン遅延手段32からのコンポジット信号をさらに1ライン遅延し、選択手段35に出力する。
【0050】
このように、1ライン遅延手段30〜33は、タイミング信号hbにより、A/D変換手段1から入力されたコンポジット信号を、1ライン分ずつ順次遅延する。
【0051】
選択手段35は、放送方式設定手段7からの放送方式設定に基づき、1ライン遅延手段30,31,33の出力信号の内から、放送方式に応じた2つの信号を選択し、その内の1つを遅延補償手段37に出力し、他の1つを第2の位相変換フィルタ38に出力する。
【0052】
遅延補償手段37は、選択手段35から入力されたコンポジット信号に対し、位相変換フィルタ36,38においての他のコンポジット信号の信号遅延分を補償し、コンポジット信号DMとしてYC分離手段9に出力する。
【0053】
位相変換フィルタ36は、位相差算出手段4からの位相補正量Δbに基づき、遅延補償手段34からのコンポジット信号の位相を補正し、コンポジット信号DBとしてYC分離手段9に出力する。また、位相変換フィルタ38は、位相差算出手段4からの位相補正量Δtに基づき、選択手段35からのコンポジット信号の位相を補正し、コンポジット信号DTとしてYC分離手段9に出力する。
【0054】
位相補正量Δb,Δtは、kラインの色副搬送波位相に対する上下ラインの信号での位相補正量であり、X=27[MHz]のクロックでの1周期を基準とする値に変換されている。よって、上記上下ラインの信号に相当する位相変換フィルタ36,38の入力信号を、それぞれΔb,Δtずつ遅延してサンプリングの位相を変換し、位相補正する。
【0055】
図5は位相変換フィルタ36,38の構成例を示すブロック図である。図5において、位相変換フィルタ36,38は、係数発生手段40と、1クロック遅延手段41a〜41hと、増幅回路42と、加算器43と、1クロック遅延手段44と、選択手段45とを備えている。
【0056】
この図5の位相変換フィルタ36,38は、線形位相フィルタであるFIR(Finite Impulse Response)フィルタとして構成されており、位相補正量Δn(ΔbまたはΔt)に対応する群遅延を持ち、コンポジット信号に1クロック周期未満の位相補正量に対応する遅延Δnを与えて位相補正するフィルタである。また、図5の位相変換フィルタ36,38は、フィルタのタップ数を8としている。
【0057】
図5の位相変換フィルタ36,38において、係数発生手段40は、位相差算出手段4から入力された位相補正量Δn(ΔbまたはΔt)に基づき、位相補正量Δnに対応する群遅延を持つFIRフィルタのフィルタ係数g0〜g7を発生し、増幅回路42に出力する。これは、例えば、ROMにより構成し、位相補正量Δnの値をアドレスとしてフィルタ係数を発生すればよい。
【0058】
1クロック遅延手段41a〜41hは、遅延補償手段34または選択手段35から入力されたコンポジット信号をそれぞれ1クロック遅延する。1クロック遅延手段41a〜41hの出力は、増幅回路42に入力され、1クロック遅延手段41eの出力は、選択手段45にも入力される。
【0059】
増幅回路42は、係数発生手段40からのフィルタ係数g0〜g7をそれぞれ利得とし、1クロック遅延手段41a〜41hの出力をそれぞれ入力とする8つの増幅器を有し、1クロック遅延手段41a〜41hから入力されたそれぞれのコンポジット信号とそれぞれのフィルタ係数g0〜g7とをそれぞれの増幅器で乗算し、加算器43に出力する。
【0060】
加算器43は、増幅回路42からのそれぞれの出力値を加算し、1クロック遅延手段44に出力する。また、1クロック遅延手段44は、加算器43の出力を1クロック遅延し、選択手段45に出力する。
【0061】
選択手段45は、位相差算出手段4からの位相補正量Δn(ΔbまたはΔt)がゼロであれば(つまり、位相補正の必要がなければ)、遅延量を調整した1クロック遅延手段41eの出力を選択し、位相補正量Δnがゼロでなければ(つまり、位相補正の必要があれば)、1クロック遅延手段44の出力を選択し、位相変換後のコンポジット信号(位相補正したコンポジット信号)DBまたはDTとして、YC分離手段9に出力する。
【0062】
[YC分離手段9]
YC分離手段9は、ラインくし形フィルタによる2次元YC分離手段であり、サンプリング位相変換手段8から入力された3ライン分のコンポジット信号DB,DM,DTから、放送方式設定手段7により設定された放送方式の色副搬送波周波数fscに応じて、2次元YC分離によりC信号を抽出してY信号とC信号を分離し、C信号を出力端子101に出力し、Y信号を出力端子102に出力する。
【0063】
サンプリング位相変換回路8から入力されるコンポジット信号DB,DM,DTは、コンポジット信号DBとDMの色副搬送波の位相が反転関係になり、コンポジット信号DMとDTの色副搬送波の位相が反転関係になるように、位相補正された信号である。従って、コンポジット信号DB,DM,DTの3ライン上のサンプリングデータは、YC分離手段9で用いる色副搬送波の位相関係となるようなサンプリング点に合わせられている。
【0064】
図6は2次元YC分離によるYC分離手段9の構成例を示すブロック図である。図6において、YC分離手段9は、垂直方向色信号抽出フィルタ50と、水平方向色信号抽出フィルタ51と、水平垂直方向色信号抽出フィルタ52と、相関判定手段53と、選択手段54と、減算器55とを備えている。
【0065】
図6のYC分離手段9において、サンプリング位相変換手段8からの3ライン分のコンポジット信号DT,DM,DBは、垂直方向色信号抽出フィルタ50、水平垂直方向色信号抽出フィルタ52、および相関判定手段53に入力される。また、コンポジット信号DMは、水平方向色信号抽出フィルタ51および減算器55にも入力される。また、放送方式設定手段7からの放送方式設定信号は、水平方向色信号抽出フィルタ51と水平垂直方向色信号抽出フィルタ52に入力される。
【0066】
垂直方向色信号抽出フィルタ50は、入力された3ライン分のコンポジット信号DT,DM,DBから、垂直方向に画像の相関があることを前提にして色信号を抽出し、選択手段54に出力する。また、水平方向色信号抽出フィルタ51は、入力されたコンポジット信号DMから、水平方向に画像の相関があることを前提にして色信号を抽出し、選択手段54に出力する。また、水平垂直方向色信号抽出フィルタ52は、入力された3ライン分のコンポジット信号DT,DM,DBから、水平方向および垂直方向に画像の相関があることを前提にして色信号を抽出し、選択手段54に出力する。
【0067】
なお、水平方向色信号抽出フィルタ51と水平垂直方向色信号抽出フィルタ52では、放送方式設定手段7からの放送方式設定信号に基づき、設定されている放送方式の色副搬送波周波数fscに対応した抽出フィルタを用いる。
【0068】
相関判定手段53は、入力された3ライン分のコンポジット信号DT,DM,DBから、コンポジット信号DMのサンプリング点に関する垂直方向および水平方向の画像の相関を検出し、この相関検出結果を選択手段54に出力する。
【0069】
選択手段54は、相関判定手段53からの相関検出結果に基づき、垂直方向色信号抽出フィルタ50の出力信号、水平方向色信号抽出フィルタ51の出力信号、水平垂直方向色信号抽出フィルタ52の出力信号のいずれかを、画像の相関の強さに応じて選択し、コンポジット信号から分離したC信号(色信号)として、出力端子102(図1参照)および減算器55に出力する。例えば、水平方向に相関が弱い場合は、垂直方向色信号抽出フィルタ50の出力信号が選択され、垂直方向に相関が弱い場合は、水平方向色信号抽出フィルタ51の出力信号が選択され、その他の場合は、水平垂直方向色信号抽出フィルタ52からのC信号出力を選択する。
【0070】
減算器55は、入力されたコンポジット信号DMから、選択手段54からのC信号を減算して、Y信号(輝度信号)を分離し、出力端子101(図1参照)に出力する。
【0071】
[NTSC方式のコンポジット信号が入力されたときの動作]
入力端子100に入力される映像信号がNTSC方式のコンポジット信号の場合について以下に説明する。放送方式設定手段7によりNTSC方式が設定されているので、バースト位相検出手段3では、NTSC方式の色副搬送波周波数fsc(NTSC)の信号の位相情報pがNCO14から出力され、正弦波ROM15から位相比較手段12に、NTSC方式での色副搬送波周波数fsc(NTSC)の基準信号が出力される。
【0072】
NTSC方式のコンポジット信号の場合には、ラインごとに色副搬送波位相が180°(=π)反転するので、注目ラインをkラインとするとき、kラインの色副搬送波の位相とその上下に位置するk−1ラインおよびk+1ラインの色副搬送波の位相とは互いに反転している。また、YC分離手段9では、ライン間で色副搬送波の位相が反転していることを考慮して2次元YC分離によりC信号とY信号を分離する。
【0073】
このため、位相差算出手段4では、選択手段25において、画面上でkラインの1ライン上に位置するk−1ラインの色副搬送波位相情報p(k−1)と、画面上でkラインの1ライン下に位置するk+1ラインの色副搬送波位相情報p(k+1)とが選択され、これらの位相情報p(k−1),p(k+1)が、kラインの色副搬送波位相情報p(k)とともに、3ライン分の色副搬送波位相情報として位相誤差算出手段26に入力される。
【0074】
つまり、k+1ラインの位相情報に相当するバースト位相検出手段3からの位相情報p(k+1)と、kラインの位相情報に相当する遅延手段21からの1ライン遅延位相情報p(k)と、k−1ラインの位相情報に相当する遅延手段22からの2ライン遅延位相情報p(k−1)とが、位相誤差算出手段26に入力される。
【0075】
位相差算出手段4の位相誤差算出手段26では、ライン間での位相πの反転分を考慮して、kラインの信号に対してその1ライン下のk+1ラインの信号で補正すべき位相誤差δbを、δb=p(k+1)−p(k)−πによって算出し、kラインの位相情報p(k)に対してその1ライン上のk−1ラインの信号で補正すべき位相誤差δtを、δt=p(k−1)−p(k)+πによって算出する。ここでは、−πおよび+πはそれぞれ固定の位相値であり、−p(k)−πおよび−p(k)+πはk+1,k−1ラインでの注目ラインkに対する基準位相に相当し、k+1,k−1ラインの位相情報p(k+1),p(k−1)と注目ラインkに対する基準位相との位相差を、それぞれ位相誤差δb,δtとして求めている。
【0076】
ライン間での位相が180°反転して入力されるNTSC方式の標準信号であれば、位相誤差δb,δtはそれぞれゼロであり、非標準信号の場合は、位相のずれ分に相当する値がこれら位相誤差δb,δtとして求められる。
【0077】
位相差算出手段4の位相補正量変換手段27では、NTSC方式の色副搬送波周波数fsc(NTSC)により、NTSC方式の色副搬送波位相の1クロックあたりの変化量ω(NTSC)=2π×fsc(NTSC)/Xが得られ、Δb=δb/ω(NTSC),Δt=δt/ω(NTSC)により、位相誤差δb,δtが位相補正量Δb,Δtに変換される。
【0078】
サンプリング位相変換手段8では、遅延補償手段34において遅延補償されて位相変換フィルタ36に入力されるコンポジット信号を、k+1ライン(画面上において注目ラインであるkラインの1ライン下)の信号とすると、選択手段35において、1ライン遅延手段30から入力されるkラインのコンポジット信号と、1ライン遅延手段31から入力されるk−1ライン(画面上においてkラインの1ライン上)のコンポジット信号とが選択され、kラインのコンポジット信号は遅延補償手段37に入力され、k−1ラインのコンポジット信号は位相変換フィルタ38に入力される。
【0079】
そして、図5のような構成の位相変換フィルタ36,38により、位相補正量Δb,Δtに基づき、k+1,k−1ラインのコンポジット信号の位相が補正され、位相変換フィルタ38で位相補正されたk−1ラインのコンポジット信号DTと、遅延補償手段37で遅延補償されたkラインのコンポジット信号DMと、位相変換フィルタ36で位相補正されたk+1ラインのコンポジット信号DBの3ライン分のコンポジット信号が、YC分離手段9に出力される。
【0080】
図7はNTSC方式においての位相変換フィルタ36,38でのサンプリング位相の補正例を示した図である。図7において、破線で示すk+1ラインおよびk−1ラインのフィルタ入力時のコンポジット信号に対し、位相変換フィルタ36,38において、位相誤差δb,δtから変換された位相補正量Δb,Δt分の補正がなされ、サンプリング位相変換後には、k+1ラインおよびk−1ラインのコンポジット信号は、実線で示す位相の信号に補正される。
【0081】
図7に示すように、k−1ラインのコンポジット信号DTおよびk+1ラインのコンポジット信号DBのサンプリングデータは、kラインのコンポジット信号DMのサンプリングデータに対し、位相が180°(=π)反転したものとなるように補正されたデータである。
【0082】
NTSC方式の非標準信号の場合においても、ライン間の位相補正量Δb,Δtによって、k+1,k−1ラインのコンポジット信号DB,DTの位相が補正されるので、k−1,k,k+1の3ラインのコンポジット信号DT,DM,DBのサンプリングデータは、ライン間の位相が反転したサンプリングデータに補正されてサンプリング位相変換手段8から出力される。
【0083】
図8(a)乃至(c)は、上記したサンプリング位相の変換の動作をより詳細に示す。図8(a)は、クロック発生手段2から発生されるX=27[MHz]のクロックを示し、図8(b)は、図7のk−1ラインの入力信号(図7の破線)を示し、図8(c)は、図7のk−1ラインの、サンプリング位相変換後の信号(図7の実線)を示す。
【0084】
サンプリング位相変換手段8の役割は、A/D変換手段1に入力されるアナログ信号の位相を補正(アナログ信号を移相)した上で、A/D変換した場合に得られるのと原理的に同様のデジタル信号を出力することにある。ただし、アナログ信号の移相を行う場合には、位相誤差の抽出、アナログ移相回路における制御の必要性、素子のばらつきなどの問題がある。本実施の形態では、アナログ信号をA/D変換前に移相する代わりに、単一フリーランクロックでA/D変換した後のデジタル映像信号に対し、バースト信号の位相情報から得られる基準値との位相誤差に基づき、所定の位相関係となるようにサンプリング位相を補正している。
【0085】
A/D変換手段1における、実際のサンプリングは、図8のクロックパルスの立ち上がりで、図8(b)に示される入力信号(図7の破線)に対して行われ、図8(b)に白丸で示されるサンプル値が得られる。
図7の実線で示される、補正された位相を持つ信号の値(図8(c)の黒丸)を得るには、入力信号(破線)上のサンプル値を時間的にずらすだけでは足りず、大きさを変える必要がある。これを行うのが、図5の位相変換フィルタ5であり、図7の破線上のサンプル値(図8(b)の白丸)を合成して、図7の実線上の値(図8(c)の黒丸)を作り出している。
【0086】
YC分離手段9では、k+1,k,k−1ラインのコンポジット信号DB,DM,DTから、NTSC方式の色副搬送波周波数fsc(NTSC)に応じて、C信号が抽出され、Y信号とC信号が分離される。
【0087】
[PAL方式のコンポジット信号が入力されたときの動作]
入力端子100に入力される映像信号がPAL方式のコンポジット信号の場合について以下に説明する。放送方式設定手段7によりPAL方式が設定されているので、バースト位相検出手段3では、正弦波ROM15から位相比較手段12にPAL方式での色副搬送波周波数fsc(PAL)の基準信号が出力され、PAL方式の色副搬送波周波数fsc(PAL)の信号の位相情報pがNCO14から出力される。
【0088】
PAL方式のコンポジット信号の場合には、ラインごとに色副搬送波位相が270°(つまりは−90°)変化し、2ライン離れたライン間において、位相が180°(=π)反転するので、注目ラインをkラインとするとき、kラインの色副搬送波の位相とその2ライン上下に位置するk−2ラインおよびk+2ラインの色副搬送波の位相とは互いに反転している。また、PAL方式では、R−Y信号の色副搬送波位相が、ラインごとに180°反転する。
【0089】
そこで、PAL方式では、NTSC方式において1ライン遅延する処理を、2ライン遅延する処理とすれば、遅延手段からの出力によるライン間の色副搬送波位相が180°反転となり、R−Y信号の色副搬送波位相は同じ符号になる。
【0090】
このため、位相差算出手段4では、選択手段25において、画面上でkラインの2ライン上に位置するk−2ラインの色副搬送波位相情報p(k−2)と、画面上でkラインの2ライン下に位置するk−2ラインの色副搬送波位相情報p(k+2)とが選択され、これらの位相情報p(k−2),p(k+2)が、kラインの色副搬送波位相情報p(k)とともに、3ライン分の色副搬送波位相情報として位相誤差算出手段26に入力される。
【0091】
つまり、k+2ラインの位相情報に相当するバースト位相検出手段3からの位相情報p(k+2)と、kラインの位相情報に相当する遅延手段22からの1ライン遅延位相情報p(k)と、k−2ラインの位相情報に相当する遅延手段24からの2ライン遅延位相情報p(k−2)とが、位相誤差算出手段26に入力される。
【0092】
位相差算出手段4の位相誤差算出手段26では、2ラインごとの位相πの反転分を考慮して、kラインの位相情報p(k)に対してその2ライン下のk+2ラインの信号で補正すべき位相誤差δbを、δb=p(k+2)−p(k)−πによって算出し、kラインの位相情報p(k)に対してその2ライン上のk−2ラインの信号で補正すべき位相誤差δtを、δt=p(k−2)−p(k)+πによって算出する。ここでは、−πおよび+πはそれぞれ固定の位相値であり、−p(k)−πおよび−p(k)+πはk+2,k−2ラインでの注目ラインkに対する基準位相に相当し、k+2,k−2ラインの位相情報p(k+2),p(k−2)と注目ラインkに対する基準位相との位相差を、それぞれ位相誤差δb,δtとして求めている。
【0093】
2ラインごとの位相が180°反転して入力されるPAL方式の標準信号であれば、位相誤差δb,δtはそれぞれゼロであり、非標準信号の場合は、位相のずれ分に相当する値がこれら位相誤差δb,δtとして求められる。
【0094】
位相差算出手段4の位相補正量変換手段27では、PAL方式の色副搬送波周波数fsc(PAL)により、PAL方式の色副搬送波位相の1クロックあたりの変化量ω(PAL)=2π×fsc(PAL)/Xが得られ、Δb=δb/ω(PAL),Δt=δt/ω(PAL)により、位相誤差δb,δtは位相補正量Δb,Δtが変換される。
【0095】
サンプリング位相変換手段8では、遅延補償手段34において遅延補償されて位相変換フィルタ36に入力されるコンポジット信号を、k+2ライン(画面上において注目ラインであるkラインの2ライン下)の信号とすると、選択手段35において、1ライン遅延手段31から入力されるkラインのコンポジット信号と、1ライン遅延手段33から入力されるk−2ライン(画面上においてkラインの2ライン上)のコンポジット信号とが選択され、kラインのコンポジット信号は遅延補償手段37に入力され、k+2ラインのコンポジット信号は位相変換フィルタ38に入力される。
【0096】
そして、図5のような構成の位相変換フィルタ36,38により、位相補正量Δb,Δtに基づき、k+2,k−2ラインのコンポジット信号の位相が補正され、位相変換フィルタ38で位相補正されたk−2ラインのコンポジット信号DTと、遅延補償手段37で遅延補償されたkラインのコンポジット信号DMと、位相変換フィルタ36で位相補正されたk+2ラインのコンポジット信号DBの3ライン分のコンポジット信号が、YC分離手段9に出力される。
【0097】
k−2ラインのコンポジット信号DTおよびk+2ラインのコンポジット信号DBのサンプリングデータは、kラインのコンポジット信号DMのサンプリングデータに対し、位相が180°(=π)反転したものとなるように補正されたデータである。
【0098】
PAL方式の非標準信号の場合においても、ライン間の位相補正量Δb,Δtによって、k+2,k−2ラインのコンポジット信号の位相が補正されるので、k−2,k,k+2の3ラインのコンポジット信号DT,DM,DBのサンプリングデータは、ライン間の位相が反転したサンプリングデータに補正されてサンプリング位相変換手段8から出力される。
【0099】
YC分離手段9では、k+2,k,k−2ラインのコンポジット信号DB,DM,DTから、PAL方式の色副搬送波周波数fsc(PAL)に応じて、C信号が抽出され、Y信号とC信号が分離される。
【0100】
このように、位相差算出手段4は、NTSC方式では、注目ラインとその1ライン上または下に位置するラインの計3ラインの信号に対し、色副搬送波の位相情報pからライン間での位相誤差を算出して位相補正量Δb,Δtを出力し、PAL方式では、注目ラインと2ライン上または下に位置するラインの計3ラインの信号に対し、色副搬送波の位相情報pからライン間での位相誤差を算出して位相補正量Δb,Δtを出力する。
【0101】
また、サンプリング位相変換手段8は、位相補正量Δb,Δtにより、NTSC方式では、kラインの1ライン上および1ライン下に位置するk−1,k+1ラインのコンポジット信号の位相を補正して、k−1,k,k+1ラインのコンポジット信号を3ライン分のコンポジット信号DT,DM,DBとして出力し、PAL方式では、kラインの2ライン上および2ライン下に位置するk−2,k+2ラインのコンポジット信号の位相を補正して、k−2,k,k+2ラインのコンポジット信号を3ライン分のコンポジット信号DT,DM,DBとして出力する。
【0102】
なお、上記位相誤差δb,δtの算出においては、ライン間での位相πの反転分を考慮して、値πを加算または減算して求めているが、位相πの考慮は、値πに限らず、それぞれの放送方式においてのライン間での位相関係を考慮し、ライン間の色副搬送波の位相差が180°の反転となるように、オフセット分を考慮した位相誤差となればよい。
【0103】
その他の放送方式、例えば、PAL−N方式,PAL−M方式,NTSC−4.43方式などの場合にも、ラインごとの色副搬送波の位相が180°反転することを考慮したYC分離を行えるように、位相差算出手段4内の位相誤差算出手段26において、ライン間での位相情報から補正すべき位相誤差を求めれば、サンプリング位相変換手段8による位相の補正が行え、それぞれの放送方式にも容易に対応することができる。なお、PAL方式と同様、R−Y信号の色副搬送波位相がラインごとに反転する場合は、NTSC方式において1ライン遅延する処理を、2ライン分遅延する処理として用いることとなる。
【0104】
つまり、色副搬送波の位相が反転関係とならない放送方式や非標準信号に対しても、位相差算出手段4内の位相誤差算出手段26において、上記NTSC方式やPAL方式の場合と同様の算出により、ライン間の色副搬送波の位相差が180°の反転となるようにオフセット分を考慮した値を位相誤差として求めることができる。
【0105】
例えば、NTSC方式と同様、R−Y信号の色副搬送波位相の反転などがなく、ラインごとに色副搬送波位相がph変化する場合は、相関がとりやすいkラインの位相情報p(k)とk+1ラインの位相情報p(k+1)から位相誤差を求める。そして、1ライン下のk+1ラインの信号での位相p(k−1)=p(k)−phのとき、phの値がどのような場合であっても、ライン間の色副搬送波の位相差が180°の反転となるように、k+1ラインの信号での補正すべき位相誤差δbを、δb=p(k+1)−p(k)−πとして算出する。このときの補正すべき位相誤差δbの算出は、上記NTSC方式の場合と同様である。なお、PAL方式のように、R−Y信号の色副搬送波位相がラインごとに反転する場合には、上記の位相誤差は、kラインに対するk+2ラインでの位相誤差を同様の算出により求めることとなる。
【0106】
標準信号であれば、位相誤差δbはph−πであり、非標準信号の場合は、位相のずれ分に相当する値がこの位相誤差δbとして求められ、位相誤差算出から、VTRなどの再生による非標準のコンポジット信号時、位相の崩れによる位相ずれを補正量として得られ、各放送方式の非標準信号に対しても対応することができる。
【0107】
また、入力信号がSECAM方式である場合には、NTSC方式,PAL方式と異なる処理が必要であり、一般には2次元YC分離は行わないが、色副搬送波のラインごとの位相関係を考慮すれば、上記のサンプリング位相変換を行うことで、YC分離を行うことができる。
【0108】
以上のように実施の形態1によれば、複数の放送方式、非標準信号に対し、位相差算出手段4において、コンポジット信号における色副搬送波の位相情報から、ライン間の位相誤差を算出し、ライン間の色副搬送波の位相差が、180°の反転となるための位相補正量を得て、コンポジット信号のサンプリング位相をサンプリング位相変換により補正した後、YC分離を行うので、ライン間での位相関係や非標準信号であるかによらず、良好な2次元YC分離を行い、YC分離後の画質劣化を防ぐことができる。また、現ラインの信号が無変換であり、上下ラインの信号の位相を補正しているので、位相の補正による画質への影響が少なくなる。
【0109】
なお、上記実施の形態1の位相変換フィルタ36,38は、図5に示すような位相差算出手段4からの位相補正量Δnに対応する群遅延を持つ線形位相フィルタにより構成したものに限らず、例えば図9または図10に示す構成とすることも可能である。図9または図10のような構成の位相変換フィルタによっても、位相補正を行うことができ、上記実施の形態1と同様、ライン間での位相関係や非標準信号であるかによらず、良好な2次元YC分離を行い、YC分離後の画質劣化を防ぐことができる。
【0110】
図9の位相変換フィルタ36,38は、所定の遅延を行う遅延手段を複数内蔵し、位相補正量Δnに対応する遅延を行う遅延手段からの出力を選択するフィルタであって、位相変換フィルタ36,38は、補正量遅延手段46−1,46−2,…46−Nと、選択手段47とを備えている。補正量遅延手段46−1〜46−Nは、位相補正量Δnの範囲内でそれぞれ異なる遅延量を持ち、入力コンポジット信号をそれぞれ所定量遅延して、選択手段47に出力する。また、選択手段47は、補正量遅延手段46−1〜46−Nの出力から、位相補正量Δnに対応した遅延を持つ信号を選択する。
【0111】
図10の位相変換フィルタ36,38は、位相補正量Δn分のずれ位置に相当するサンプリングデータの値を、補間演算によって求めるフィルタであって、係数発生手段48と、補間フィルタ49とを備えている。係数発生手段48は、位相補正量Δnに対応する位置のサンプリングデータを求めるための補間フィルタ係数hiを発生する。また、補間フィルタ49は、係数発生手段48からのフィルタ係数hiにより、補間演算をして、位相補正量Δn分のずれ位置に相当するサンプリングデータの値を求め、出力する。補間フィルタ49からは、位相補正量Δn分位相が補正されたコンポジット信号が出力されることとなる。
【0112】
また、上記実施の形態1のクロック発生手段2で発生するクロックは、周波数X=27[MHz]のクロックとしたが、これに限るものではなく、クロック周波数、種類によらず、同様の効果を奏する。例えば、コンポジット信号におけるバースト信号を基準としたクロックであるバーストロッククロックや、コンポジット信号中の水平同期信号を基準としたクロックであるラインロッククロックがあるが、これらのクロックを上記実施の形態1のクロック発生手段2で発生して用いても、サンプリング位相変換により位相を補正し、YC分離することができ、上記と同様の効果を奏する。
【0113】
また、上記実施の形態1のYC分離手段9は、ラインくし形フィルタによる2次元YC分離手段として、3ラインの信号を処理するよう説明したが、1ライン遅延した信号と現ラインの信号との2ラインの信号をくし形フィルタで処理する場合についても、ライン間での色副搬送波位相の関係に基づき、コンポジット信号のサンプリング位相変換を行い、ライン間の色副搬送波の位相関係を所定の関係となるように位相補正すれば、上記実施の形態1と同様の効果を奏する。
【0114】
また、上記実施の形態1のバースト位相検出手段3では、A/D変換1からのコンポジット信号からバースト位相を検出しているが、これに限らず、各ライン上のコンポジット信号の色副搬送波位相を検出できれば、フィードバックループでバースト信号を抽出してもよく、上記実施の形態1と同様の効果を奏する。
【0115】
また、上記実施の形態1のタイミング信号発生手段6では、水平ブランキング期間のバースト信号期間における位置を示すタイミング信号hbを発生するが、タイミング信号は任意の位置で発生してもよく、タイミング信号が示す各位置における色副搬送波の位相を検出することができれば、同様の効果を奏する。
【0116】
さらに、本実施の形態1では、ハードウェア構成するよう説明しているが、ハードウェア構成に限らず、プログラム制御でのソフトウェアの処理により実現する構成してもよい。
【0117】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、ライン間での位相πの反転分を考慮して、ライン間での位相誤差を求めたが、以下に説明する実施の形態2では、所定ラインでの位相情報を固定の位相値と比較して補正量を求める。
【0118】
図11は本発明の実施の形態2の映像信号処理回路の構成例を示すブロック図であり、図1と同様のものには同じ符号を付してある。図11において、実施の形態2の映像信号処理回路は、A/D変換手段1と、クロック発生手段2と、バースト位相検出手段3と、位相差算出手段60と、同期分離手段5と、タイミング信号発生手段6aと、放送方式設定手段7と、サンプリング位相変換手段61と、YC分離手段9と、入力端子100と、出力端子101および102とを備えている。
【0119】
このように、実施の形態2の映像信号処理回路は、上記実施の形態1の映像信号処理回路(図1参照)において、位相差算出手段4を位相差算出手段60に変更し、タイミング信号発生手段6をタイミング信号発生手段6aに変更し、サンプリング位相変換手段8をサンプリング位相変換手段61に変更したものである。これらタイミング信号発生手段6a、位相差算出手段60、サンプリング位相変換手段61を除く他の部分の構成および動作は、上記実施の形態1と同様である。
【0120】
[タイミング信号発生手段6a]
タイミング信号発生手段6aは、同期分離手段5からの同期信号に基づき、タイミング信号を発生し、位相差算出手段60およびサンプリング位相変換手段61に出力する。ここでは、水平同期信号に基づき、水平ブランキング期間のバースト信号期間におけるサンプリング位置を示すタイミング信号hbと、例えばフレーム単位のライン番号(NTSC方式の場合0〜524,PAL方式の場合0〜624)など、入力コンポジット信号においてのライン番号(ライン位置)を示すタイミング信号h1とを発生する。
【0121】
[位相差算出手段60]
位相差算出手段60は、バースト位相検出手段3内のNCO14(図2参照)から入力された色副搬送波の位相情報pから、注目ラインおよびその上下ラインそれぞれについて基準位相(ライン位置に応じてあらかじめ決められた固定の位相値)からの位相誤差を算出し、位相補正量Δ0m,Δ0b,Δ0tをサンプリング位相変換手段61に出力する。
【0122】
図12は位相差算出手段60の構成例を示すブロック図であり、図3の位相差算出手段4と同様のものには同じ符号を付してある。図12において、位相差算出手段60は、遅延手段21,22,23,24と、選択手段25と、位相誤差算出手段62と、位相補正量変換手段63とを備えている。
【0123】
このように、実施の形態2の位相差算出手段60は、上記実施の形態1の位相差算出手段4(図3参照)において、位相誤差算出手段26を位相誤差算出手段62に変更し、位相補正量変換手段27を位相補正量変換手段63に変更したものである。これら位相誤差算出手段62および位相補正量変換手段63を除く他の部分の構成および動作は、上記実施の形態1の位相差算出手段4と同様である。
【0124】
図12の位相差算出手段60において、位相誤差算出手段62には、バースト位相検出手段3からの位相情報pおよび選択手段25からの2つの位相情報pの他に、タイミング信号発生手段6aからのタイミング信号h1および放送方式設定手段7からの放送方式設定信号が入力される。
【0125】
位相誤差算出手段62は、バースト位相検出手段3および選択手段25からの3ライン分の位相情報pから、入力ライン信号の位相と放送方式の設定および入力信号のライン番号を示すタイミング信号h1に基づいた固定の基準位相との位相差を、補正すべき位相誤差δ0m,δ0b,δ0tとして求め、位相補正量変換手段63に出力する。
【0126】
位相補正量変換手段63は、位相誤差算出手段62からの位相誤差δ0m,δ0b,δ0tを、位相補正のための位相補正量Δ0m,Δ0b,Δ0tに変換し、サンプリング位相変換手段61に出力する。
【0127】
この位相補正量変換手段63での変換は、位相情報pが色副搬送波の1周期を2πとする角度を表す情報であることから、位相誤差算出手段62からの位相誤差δ0m,δ0b,δ0tを、X=27[MHz]のクロックでの1周期を基準とする、時間を表す値(Xのクロックの1周期の倍数で時間を表す)に変換するものである。つまり、色副搬送波周波数fscから、色副搬送波位相の1クロックあたりの、角度で表された変化量ωを、ω=2π×fsc/Xとすると、位相誤差δ0m,δ0b,δ0tから変換された位相補正量Δ0m,Δ0b,Δ0tは、Δ0m=δm/ω,Δ0b=δb/ω,Δ0t=δt/ωとなる。位相誤差δ0m,δ0b,δ0tの補正範囲を−πから+πまでとするとき、位相補正量Δ0m,Δ0b,Δ0tは、−X/(2×fsc)からX/(2×fsc)までの値をとり得る。
【0128】
[サンプリング位相変換手段61]
サンプリング位相変換手段61は、A/D変換手段1からのデジタル信号のコンポジット信号から、YC分離に用いるライン数分の信号として例えば3ライン分(注目ラインおよびその上下ライン)のコンポジット信号を得て、位相差算出手段60からの位相補正量Δ0b,Δ0m,Δ0tによって、上記3ラインのコンポジット信号の位相を補正し、位相補正した3ラインのコンポジット信号DT,DM,DBをYC分離手段9に出力する。
【0129】
図13はサンプリング位相変換手段61の構成例を示すブロック図であり、図4のサンプリング位相変換手段8と同様のものには同じ符号を付してある。図13において、サンプリング位相変換手段61は、1ライン遅延手段30,31,32,33と、遅延補償手段34と、選択手段35と、位相変換フィルタ64,65,66とを備えている。
【0130】
このように、実施の形態2のサンプリング位相変換手段61は、上記実施の形態1のサンプリング位相変換手段8(図4参照)において、位相変換フィルタ36を位相変換フィルタ64に変更し、遅延補償手段37を位相変換フィルタ65に変更し、位相変換フィルタ38を位相変換フィルタ66に変更したものである。これら位相変換フィルタ64〜66を除く他の部分の構成および動作は、上記実施の形態1のサンプリング位相変換手段8と同様である。また、位相変換フィルタ64〜66の構成および動作は、例えば上記実施の形態1の位相変換フィルタ36,38(図5,図9,図10参照)と同様である。
【0131】
図13のサンプリング位相変換手段61において、位相差算出手段60からの位相補正量Δ0bは、位相変換フィルタ64に入力され、位相差算出手段60からの位相補正量Δ0mは、位相変換フィルタ65に入力され、位相差算出手段60からの位相補正量Δ0tは、位相変換フィルタ66に入力される。
【0132】
位相変換フィルタ64は、位相差算出手段60からの位相補正量Δ0bに基づき、遅延補償手段34からのコンポジット信号の位相を補正し、コンポジット信号DBとしてYC分離手段9に出力する。また、位相変換フィルタ65は、位相差算出手段60からの位相補正量Δ0mに基づき、選択手段35からのコンポジット信号の位相を補正し、コンポジット信号DMとしてYC分離手段9に出力する。また、位相変換フィルタ66は、位相差算出手段60からの位相補正量Δ0tに基づき、選択手段35からのコンポジット信号の位相を補正し、コンポジット信号DTとしてYC分離手段9に出力する。
【0133】
位相補正量Δ0b,Δ0m,Δ0tは、3ラインにおいての基準色副搬送波位相に対する位相補正量であり、X=27[MHz]のクロックでの1周期を基準とする値に変換されている。よって、上記3ラインの信号にそれぞれ相当する位相変換フィルタ64,65,66の入力信号を、それぞれΔ0m,Δ0b,Δ0tずつ遅延してサンプリングの位相を変換し、位相補正する。
【0134】
[NTSC方式のコンポジット信号が入力されたときの動作]
入力端子100に入力される映像信号がNTSC方式のコンポジット信号の場合について以下に説明する。NTSC方式のコンポジット信号の場合には、ラインごとに色副搬送波位相が180°(=π)反転するので、注目ラインをkラインとするとき、kラインの色副搬送波の位相とその上下に位置するk−1ラインおよびk+1ラインの色副搬送波の位相とは互いに反転している。
【0135】
このため、位相差算出手段60では、選択手段25において、画面上でkラインの1ライン上に位置するk−1ラインの色副搬送波位相情報p(k−1)と、画面上でkラインの1ライン下に位置するk+1ラインの色副搬送波位相情報p(k+1)とが選択され、これらの位相情報p(k−1),p(k+1)が、kラインの色副搬送波位相情報p(k)とともに、3ライン分の色副搬送波位相情報として位相誤差算出手段62に入力される。
【0136】
NTSC方式では、ラインごとに色副搬送波位相が180°反転するので、偶数ライン(ライン0,2,…)の位相を0°としたとき、奇数ライン(ライン1,3,…)の位相は180°となる。このことを考慮し、位相差算出手段60の位相誤差算出手段62では、比較する基準位相の値を、偶数ラインで基準位相値0°、奇数ラインで基準位相値180°とし、放送方式の設定および入力信号のライン番号を示すタイミング信号h1に基づいて2ラインごとに切り換え、k−1,k,k+1ラインの色副搬送波位相情報p(k−1),p(k),p(k+1)と基準位相との位相差を、それぞれk−1,k,k+1ラインでの補正すべき位相誤差δ0t,δ0m,δ0bとして算出する。
【0137】
kラインが奇数ラインである場合には、kラインの信号での補正すべき位相誤差δ0mを、δ0m=p(k)−πによって算出し、1ライン下のk−1ラインの信号での補正すべき位相誤差δ0bを、δ0b=p(k+1)−0によって算出し、1ライン上のk−1ラインの信号での補正すべき位相誤差δ0tを、δ0t=p(k−1)−0によって算出する。ここでは、−π,−0,−0はライン位置に応じた固定の基準位相に相当し、k−1,k,k+1ラインの位相情報p(k−1),p(k),p(k+1)と固定の基準位相との位相差を、それぞれ位相誤差δ0t,δ0m,δ0bとして求めている。
【0138】
また、kラインが偶数ラインである場合には、kラインの信号での補正すべき位相誤差δ0mを、δ0m=p(k)−0によって算出し、1ライン下のk+1ラインの信号での補正すべき位相誤差δ0bを、δ0b=p(k+1)−πによって算出し、1ライン上のk−1ラインの信号での補正すべき位相誤差δ0tを、δ0t=p(k−1)−πによって算出する。ここでは、−0,−π,−πはライン位置に応じた固定の基準位相に相当し、k−1,k,k+1ラインの位相情報p(k−1),p(k),p(k+1)と固定の基準位相との位相差を、それぞれ位相誤差δ0t,δ0m,δ0bとして求めている。
【0139】
ライン間での位相が180°反転して入力されるNTSC方式の標準信号であれば、位相誤差δ0m,δ0b,δ0tはそれぞれゼロであり、非標準信号の場合は、それぞれのラインにおいての基準位相からのずれ分に相当する値がこれら位相誤差δ0m,δ0b,δ0tとして求められる。
【0140】
位相差算出手段60の位相補正量変換手段63では、NTSC方式の色副搬送波周波数fsc(NTSC)により、NTSC方式の色副搬送波位相の1クロックあたりの変化量ω(NTSC)=2π×fsc(NTSC)/Xが得られ、Δ0m=δ0m/ω(NTSC),Δ0b=δ0b/ω(NTSC),Δ0t=δ0t/ω(NTSC)により、位相誤差δ0m,δ0b,δ0tが位相Δ0m,Δ0b,Δ0tに変換される。
【0141】
サンプリング位相変換手段61では、遅延補償手段34において遅延補償されて位相変換フィルタ64に入力されるコンポジット信号を、k+1ライン(画面上において注目ラインであるkラインの1ライン下)の信号とすると、選択手段35において、1ライン遅延手段30から入力されるkラインのコンポジット信号と、1ライン遅延手段31から入力されるk−1ライン(画面上においてkラインの1ライン上)のコンポジット信号とが選択され、kラインのコンポジット信号は位相変換フィルタ65に入力され、k−1ラインのコンポジット信号は位相変換フィルタ66に入力される。
【0142】
そして、サンプリング位相変換手段61の位相変換フィルタ64,65,66により、位相Δ0b,Δ0m,Δ0tに基づき、k+1,k,k−1ラインのコンポジット信号の位相が補正され、位相変換フィルタ66で位相補正されたk−1ラインのコンポジット信号DTと、遅延位相変換フィルタ65で位相補正されたkラインのコンポジット信号DMと、位相変換フィルタ64で位相補正されたk+1ラインのコンポジット信号DBの3ライン分のコンポジット信号が、YC分離手段9に出力される。
【0143】
k−1ラインのコンポジット信号DTおよびk+1ラインのコンポジット信号DBのサンプリングデータは、kラインのコンポジット信号DMのサンプリングデータに対し、位相が180°(=π)反転したものとなるように補正されたデータである。
【0144】
NTSC方式の非標準信号の場合においても、3ラインそれぞれの位相Δ0b,Δ0m,Δ0tによって、k+1,k,k−1ラインのコンポジット信号の位相が補正されるので、k−1,k,k+1の3ラインのコンポジット信号DT,DM,DBのサンプリングデータは、ライン間の位相が反転したサンプリングデータに補正されてサンプリング位相変換手段61から出力される。
【0145】
YC分離手段9では、k+1,k,k−1ラインのコンポジット信号DB,DM,DTから、NTSC方式の色副搬送波周波数fsc(NTSC)に応じて、C信号が抽出され、Y信号とC信号が分離される。
【0146】
[PAL方式のコンポジット信号が入力されたときの動作]
入力端子100に入力される映像信号がPAL方式のコンポジット信号の場合について以下に説明する。PAL方式のコンポジット信号の場合には、ラインごとに色副搬送波位相が270°(つまりは−90°)変化し、2ライン離れたライン間において、位相が180°(=π)反転するので、注目ラインをkラインとするとき、kラインの色副搬送波の位相とその2ライン上下に位置するk−2ラインおよびk+2ラインの色副搬送波の位相とは互いに反転している。また、PAL方式では、R−Y信号の色副搬送波位相が、ラインごとに180°反転する。
【0147】
このため、位相差算出手段60では、選択手段25において、画面上でkラインの2ライン上に位置するk−2ラインの色副搬送波位相情報p(k−2)と、画面上でkラインの2ライン下に位置するk+2ラインの色副搬送波位相情報p(k+2)とが選択され、これらの位相情報p(k−2),p(k+2)が、kラインの色副搬送波位相情報p(k)とともに、3ライン分の色副搬送波位相情報として位相誤差算出手段62に入力される。
【0148】
PAL方式では、位相は4ラインごとに順次変化するので(4ラインシーケンスで変化するので)、1ライン目(ライン0,4,…)の位相を0°としたとき、2ライン目(ライン1,5,…)の位相は270°(=3π/2)、3ライン目(ライン2,6,…)の位相は180°、4ライン目(ライン3,7,…)の位相は90°(=π/2)となり、R−Y信号の色副搬送波位相が、ラインごとに180°反転する。このことを考慮し、位相差算出手段60の位相誤差算出手段62では、比較する基準位相の値を、放送方式の設定および入力信号のライン番号を示すタイミング信号h1に基づいて4ラインごとに切り換え、k−2,k,k+2ラインの色副搬送波位相情報p(k−2),p(k),p(k+2)と基準位相との位相差を、それぞれk−2,k,k+2ラインでの補正すべき位相誤差δ0t,δ0m,δ0bとして算出する。
【0149】
kラインが4ラインシーケンスの1ライン目である場合は、kラインの信号での補正すべき位相誤差δ0mを、δ0m=p(k)−0によって算出し、2ライン下のk+2ラインの信号での補正すべき位相誤差δ0bを、δ0b=p(k+2)−πによって算出し、2ライン上のk−2ラインの信号での補正すべき位相誤差δ0tを、δ0t=p(k−2)−πによって算出する。ここでは、−0,−π,−πはライン位置に応じた固定の基準位相に相当し、k−2,k,k+2ラインの位相情報p(k−2),p(k),p(k+2)と固定の基準位相との位相差を、それぞれ位相誤差δ0t,δ0m,δ0bとして求めている。
【0150】
また、kラインが4ラインシーケンスの2ライン目である場合は、kラインの信号での補正すべき位相誤差δ0mを、δ0m=p(k)−3π/2によって算出し、2ライン下のk+2ラインの信号での補正すべき位相誤差δ0bを、δ0b=p(k−2)−π/2によって算出し、2ライン上のk−2ラインの信号での補正すべき位相誤差δ0tを、δ0t=p(k−2)−π/2によって算出する。ここでは、−3π/2,−π/2,−π/2はライン位置に応じた固定の基準位相に相当し、k−2,k,k+2ラインの位相情報p(k−2),p(k),p(k+2)と固定の基準位相との位相差を、それぞれ位相誤差δ0t,δ0m,δ0bとして求めている。
【0151】
kラインが4ラインシーケンスの3ライン目である場合は、kラインの信号での補正すべき位相誤差δ0mを、δ0m=p(k)−πによって算出し、2ライン下のk+2ラインの信号での補正すべき位相誤差δ0bを、δ0b=p(k+2)−0によって算出し、2ライン上のk−2ラインの信号での補正すべき位相誤差δ0tを、δ0t=p(k−2)−0によって算出する。ここでは、−π,0,0はライン位置に応じた固定の基準位相に相当し、k−2,k,k+2ラインの位相情報p(k−2),p(k),p(k+2)と固定の基準位相との位相差を、それぞれ位相誤差δ0t,δ0m,δ0bとして求めている。
【0152】
また、kラインが4ラインシーケンスのう4ライン目である場合は、kラインの信号での補正すべき位相誤差δ0mを、δ0m=p(k)−π/2によって算出し、2ライン下のk+2ラインの信号での補正すべき位相誤差δ0bを、δ0b=p(k+2)−3π/2によって算出し、2ライン上のk−2ラインの信号での補正すべき位相誤差δ0tを、δ0t=p(k−2)−3π/2によって算出する。ここでは、−π/2,−3π/2,−3π/2はライン位置に応じた固定の基準位相に相当し、k−2,k,k+2ラインの位相情報p(k−2),p(k),p(k+2)と固定の基準位相との位相差を、それぞれ位相誤差δ0t,δ0m,δ0bとして求めている。
【0153】
2ラインごとのライン間での位相が180°反転で入力されるPAL方式の標準信号であれば、位相誤差δ0m,δ0b,δ0tはそれぞれゼロであり、非標準信号の場合は、それぞれのラインにおいての基準位相からのずれ分に相当する値がこれら位相誤差δ0m,δ0b,δ0tとして求められる。
【0154】
位相差算出手段60の位相補正量変換手段63では、PAL方式の色副搬送波周波数fsc(PAL)により、PAL方式の色副搬送波位相の1クロックあたりの変化量ω(PAL)=2π×fsc(PAL)/Xが得られ、Δ0m=δ0m/ω(PAL),Δ0b=δ0b/ω(PAL),Δ0t=δ0t/ω(PAL)により、位相誤差δ0m,δ0b,δ0tは位相Δm,Δb,Δtが変換される。
【0155】
サンプリング位相変換手段61では、遅延補償手段34において遅延補償されて位相変換フィルタ64に入力されるコンポジット信号を、k+2ライン(画面上において注目ラインであるkラインの2ライン下)の信号とすると、選択手段35において、1ライン遅延手段31から入力されるkラインのコンポジット信号と、1ライン遅延手段33から入力されるk−2ライン(画面上においてkラインの2ライン上)のコンポジット信号とが選択され、kラインのコンポジット信号は位相変換フィルタ65に入力され、k−2ラインのコンポジット信号は位相変換フィルタ66に入力される。
【0156】
そして、サンプリング位相変換手段61の位相変換フィルタ64,65,66により、位相Δ0b,Δ0m,Δ0tに基づき、k+2,k,k−2ラインのコンポジット信号の位相が補正され、位相変換フィルタ66で位相補正されたk−2ラインのコンポジット信号DTと、遅延位相変換フィルタ65で位相補正されたkラインのコンポジット信号DMと、位相変換フィルタ64で位相補正されたk−2ラインのコンポジット信号DBの3ライン分のコンポジット信号が、YC分離手段9に出力される。
【0157】
PAL方式においてのk−2ラインのコンポジット信号DTおよびk+2ラインのコンポジット信号DBのサンプリングデータは、kラインのコンポジット信号DMのサンプリングデータに対し、位相が180°(=π)反転したものとなるように補正されたデータである。
【0158】
PAL方式の非標準信号の場合においても、3ラインそれぞれの位相Δ0b,Δ0m,Δ0tによって、k+2,k−2ラインのコンポジット信号DB,DM,DTの位相が補正されるので、k−2,k,k+2の3ラインのコンポジット信号DT,DM,DBのサンプリングデータは、ライン間の位相が反転したサンプリングデータに補正されてサンプリング位相変換手段61から出力される。
【0159】
YC分離手段9では、k+2,k,k−2ラインのコンポジット信号DB,DM,DTから、PAL方式の色副搬送波周波数fsc(PAL)に応じて、C信号が抽出され、Y信号とC信号が分離される。
【0160】
このように、位相差算出手段60は、NTSC方式では、注目ラインとその1ライン上または下に位置するラインの計3ラインの信号に対し、色副搬送波の位相情報pからそれぞれのラインにおいての基準位相からの位相誤差を算出して位相Δ0b,Δ0m,Δ0tを出力し、PAL方式では、注目ラインと2ライン上または下に位置するラインの計3ラインの信号に対し、色副搬送波の位相情報pからそれぞれのラインにおいての基準位相からの位相誤差を検出して位相補正量Δ0b,Δ0m,Δ0tを出力する。
【0161】
また、サンプリング位相変換手段61は、位相補正量Δ0b,Δ0m,Δ0tにより、NTSC方式では、k−1,k,k+1ラインのコンポジット信号の位相を補正して、これらk−1,k,k+1ラインのコンポジット信号を3ライン分のコンポジット信号DT,DM,DBとして出力し、PAL方式では、k−2,k,k+2ラインのコンポジット信号の位相を補正して、これらk−2,k,k+2ラインのコンポジット信号を3ライン分のコンポジット信号DT,DM,DBとして出力する。
【0162】
なお、上記位相誤差δ0m,δ0b,δ0tの算出においては、基準位相の値の設定を0°,180°としたが、基準位相の値は、それぞれのラインで抽出するサンプリング位置に対し、色副搬送波の位相とライン間の位相関係を示す値であり、ライン間の色副搬送波の位相差が180°の反転となるように、オフセット分を考慮した基準値を設定してもよい。
【0163】
その他の放送方式、例えば、PAL−N方式,PAL−M方式,NTSC−4.43方式などの場合にも、ラインごとの色副搬送波の位相が180°反転することを考慮したYC分離を行えるように、位相差算出手段60内の位相誤差算出手段62において、それぞれのラインの位相情報と基準位相から補正すべき位相誤差を求めれば、サンプリング位相変換手段61による位相の補正が行え、それぞれの放送方式にも容易に対応することができる。
【0164】
つまり、色副搬送波の位相が反転関係とならない放送方式や非標準信号に対しても、位相差算出手段60内の位相誤差算出手段62において、上記NTSC方式やPAL方式の場合と同様の算出により、ライン間の色副搬送波の位相差が180°の反転となるように、オフセット分を考慮した値を位相誤差として求めることができる。
【0165】
また、入力信号がSECAM方式である場合には、NTSC方式、PAL方式と異なる処理が必要であり、一般には2次元YC分離は行わないが、色副搬送波のラインごとの位相関係を考慮すれば、上記のサンプリング位相変換を行うことで、YC分離を行うことができる。
【0166】
以上のようの実施の形態2によれば、複数の放送方式、非標準信号に対し、位相差算出手段60において、コンポジット信号における色副搬送波の位相情報から、各ラインの基準位相値との位相誤差を算出し、ライン間の色副搬送波の位相差が、180°の反転となるための位相補正量を得て、コンポジット信号のサンプリング位相をサンプリング位相変換により補正した後、YC分離を行うので、ライン間での位相関係や非標準信号であるかによらず、良好な2次元YC分離を行い、YC分離後の画質劣化を防ぐことができる。また、固定の基準位相とラインでの位相を比較するので、位相誤差算出時の構成を固定値との減算で構成でき、回路構成が容易となる。
【0167】
なお、上記実施の形態2のタイミング信号発生手段6aでは、水平ブランキング期間のバースト信号期間における位置を示すタイミング信号hbとフレーム単位のライン番号を示すタイミング信号h1とを発生するが、色副搬送波の位相検出のためのタイミング信号hbは、任意の位置で発生してもよく、タイミング信号が示す各位置における色副搬送波の位相を検出するのであれば、上記実施の形態2と同様の効果を奏する。また、フレーム単位のライン番号を示すタイミング信号h1は、色副搬送波のラインごとの位相の変化に応じて繰り返されるタイミング信号であればよく、NTSC方式の場合は、偶数ラインと奇数ラインの識別が可能な信号、PAL方式では、4ラインのシーケンスを示す信号であれば、同様の効果を奏する。
【0168】
さらに、上記実施の形態2では、ハードウェア構成するよう説明しているが、ハードウェア構成に限らず、プログラム制御でのソフトウェアの処理により実現する構成してもよい。
【0169】
実施の形態3.
上記実施の形態1および2では、位相差算出手段から出力される位相補正量により映像信号の位相を補正したが、以下に説明する実施の形態3では、位相差算出手段から出力される位相補正量によりサンプリングクロックの位相を補正して、映像信号の位相関係をYC分離で用いる関係となるようにする。
【0170】
図14は本発明の実施の形態3の映像信号処理回路の構成例を示すブロック図であり、図1または図11と同様のものには同じ符号を付してある。図14において、実施の形態3の映像信号処理回路は、A/D変換手段1と、クロック発生手段2と、クロック位相補正手段70と、バースト位相検出手段3と、位相差算出手段71と、同期分離手段5と、タイミング信号発生手段6bと、放送方式設定手段7と、ライン遅延選択手段72と、YC分離手段9と、入力端子100と、出力端子101および102とを備えている。
【0171】
このように、実施の形態3の映像信号処理回路は、上記実施の形態1または2の映像信号処理回路(図1または図11参照)において、位相差算出手段4または60を位相差算出手段71に変更し、タイミング信号発生手段6または6aをタイミング信号発生手段6bに変更し、サンプリング位相変換手段8に相当する手段として、クロック位相補正手段70と、ライン遅延選択手段72を設けたものである。これらクロック位相補正手段70、タイミング信号発生手段6b、位相差算出手段71、ライン遅延選択手段72を除く他の部分の構成および動作は、上記実施の形態1または2と同様である。
【0172】
[クロック位相補正手段70]
クロック位相補正手段70は、クロック発生手段2からの所定の周波数Xのクロックに、位相差算出手段71からの位相補正量Δc分に相当する遅延を与えることにより、クロック発生手段2が発生したクロックの位相を補正し、この位相補正したクロックを、A/D変換手段1、バースト位相検出手段3、位相差算出手段71、同期分離手段5、タイミング信号発生手段6b、ライン遅延選択手段72、およびYC分離手段9に供給する。
【0173】
従って、これらA/D変換手段1、バースト位相検出手段3、位相差算出手段71、同期分離手段5、タイミング信号発生手段6b、ライン遅延選択手段72、およびYC分離手段9は、クロック位相補正手段70で位相補正されたクロックにより動作する。
【0174】
[タイミング信号発生手段6b]
タイミング信号発生手段6bは、同期分離手段5からの同期信号に基づき、タイミング信号を発生し、位相差算出手段71に出力する。ここでは、水平同期信号に基づき、例えばフレーム単位のライン番号(NTSC方式の場合0〜524,PAL方式の場合0〜624)など、入力コンポジット信号においてのライン番号(ライン位置)を示すタイミング信号h1を発生する。
【0175】
[位相差算出手段71]
位相差算出手段71は、バースト位相検出手段3内のNCO14(図2参照)から入力された色副搬送波の位相情報pから、注目ラインについて基準位相(ライン位置に応じてあらかじめ決められた固定の位相値)からの位相誤差を算出し、位相補正量Δcをクロック位相補正手段70に出力する。
【0176】
図15は位相差算出手段71の構成例を示すブロック図である。図15において、位相差算出手段71は、位相誤差算出手段73と、位相補正量変換手段74とを備えている。
【0177】
図15の位相差算出手段71において、位相誤差算出手段73には、バースト位相検出手段3からの位相情報p、タイミング信号発生手段6bからのタイミング信号h1、および放送方式設定手段7からの放送方式設定信号が入力される。
【0178】
位相誤差算出手段73は、バースト位相検出手段3からの注目ラインの位相情報pから、入力ライン信号の位相と、放送方式の設定および入力信号のライン番号を示すタイミング信号h1に基づいた固定の基準位相との位相差を、補正すべき位相誤差δcとして求め、位相補正量変換手段74に出力する。
【0179】
位相補正量変換手段74は、位相誤差算出手段73からの位相誤差δcを、位相補正のための位相補正量Δcに変換し、クロック位相補正手段70に出力する。この位相誤差δcを位相補正量Δcに変換する手順は、上記実施の形態2の位相補正量変換手段63(図12参照)において、位相誤差δ0mを位相補正量Δ0mに変換する手順と同様であり、詳細な説明は省略する。
【0180】
クロック位相補正手段70で位相補正量Δcの位相補正をされたクロックによって、A/D変換手段1は入力コンポジット信号をサンプリングすることになるので、位相補正量がΔcであるラインのサンプリングデータは、位相補正量Δcを補正されたデータとして、A/D変換手段1でサンプリングされることとなり、結果として、位相補正量Δcの位相補正をされたコンポジット信号がA/D変換手段1からライン遅延選択手段72に入力される。
【0181】
以上のように、位相差算出手段71では、各ラインのバースト信号の位相情報pをライン毎に固定の基準位相と比較し、位相誤差δc(位相補正量Δc)を求め、クロック位相補正手段70において、そのラインの信号をサンプリングする位相をライン毎の基準位相と比較し、位相誤差δcを各ラインで求め、位相誤差δcにより、ライン毎にサンプリングクロックの位相を補正している。即ち、図14のクロック発生手段2から出力されるクロック(図16(a))の位相を補正して、補正されたクロック(図16(b))を生成する。そして、この補正されたクロック(図16(b))により、A/D変換手段1における入力信号(図16(c)のA/D変換を行う。NTSC信号の場合、基準位相の値は、例えば偶数ラインでは0°、奇数ラインでは180°と2ラインごとに切り換えられる。
【0182】
[ライン遅延選択手段72]
ライン遅延選択手段72は、位相補正されたクロックでサンプリングされたA/D変換手段1からのデジタル信号のコンポジット信号から、YC分離に用いるライン数分の信号として例えば3ライン分のコンポジット信号を得て、位相補正した3ラインのコンポジット信号DT,DM,DBをYC分離手段9に出力する。なお、この実施の形態3では、ライン遅延選択手段72とクロック位相補正手段70から、サンプリング位相変換手段を構成することとなる。すなわち、バースト信号の位相情報から得られる基準値との位相誤差に基きサンプリングクロックの位相を補正し、位相補正されたクロックによりA/D変換したデジタル映像信号とそのライン遅延した後の信号において、映像信号が所定の位相関係となるようにサンプリング位相が補正されていることになる。
【0183】
図17はライン遅延選択手段72の構成例を示すブロック図である。図17において、ライン遅延選択手段72は、1ライン遅延手段75a,75b,75c,75dと、遅延補償手段76と、選択手段77とを備えている。
【0184】
図17のライン遅延選択手段72において、位相補正されたクロックでサンプリングされたA/D変換手段1からのコンポジット信号は、1ライン遅延手段75aと遅延補償手段76に入力される。また、放送方式設定手段7からの放送方式設定信号は、選択手段77に入力される。
【0185】
1ライン遅延手段75aは、入力されたコンポジット信号を1ライン分遅延し、1ライン遅延手段75bおよび選択手段77に出力する。また、1ライン遅延手段75bは、1ライン遅延手段75aからのコンポジット信号をさらに1ライン遅延し、1ライン遅延手段75cおよび選択手段77に出力する。また、1ライン遅延手段75cは、1ライン遅延手段75bからのコンポジット信号をさらに1ライン遅延し、1ライン遅延手段75dに出力する。また、1ライン遅延手段75dは、1ライン遅延手段75cからのコンポジット信号をさらに1ライン遅延し、選択手段77に出力する。
【0186】
遅延補償手段76は、A/D変換手段1からの入力コンポジット信号に対し、選択手段77の出力信号の選択手段77においての遅延分を補償し、コンポジット信号DBとしてYC分離手段9に出力する。また、選択手段77は、放送方式設定手段7からの放送方式設定に基づき、1ライン遅延手段75a,75b,75dからの入力信号の内から、放送方式に応じた2つの信号を選択し、その内の1つをコンポジット信号DMとして、他の1つをコンポジット信号DTとして、YC分離手段9に出力する。
【0187】
[NTSC方式のコンポジット信号が入力されたときの動作]
入力端子100に入力される映像信号がNTSC方式のコンポジット信号の場合について以下に説明する。NTSC方式のコンポジット信号の場合には、ラインごとに色副搬送波位相が180°(=π)反転するので、注目ラインをkラインとするとき、kラインの色副搬送波の位相とその上下に位置するk−1ラインおよびk+1ラインの色副搬送波の位相とは互いに反転している。
【0188】
NTSC方式では、ラインごとに色副搬送波位相が180°反転するので、偶数ライン(ライン0,2,…)の位相を0°としたとき、奇数ライン(ライン1,3,…)の位相は180°となる。このことを考慮し、位相差算出手段71の位相誤差算出手段73では、比較する基準位相の値を、偶数ラインで基準位相値0°、奇数ラインで基準位相値180°として、放送方式の設定および入力信号のライン番号を示すタイミング信号h1に基づいて2ラインごとに切り換え、kラインの色副搬送波位相情報p(k)と基準位相との位相差を、補正すべき位相誤差δcとして算出する。
【0189】
つまり、入力信号のラインが奇数ラインである場合は、補正すべき位相誤差δcを、δc=p−πによって算出し、入力信号のラインが偶数ラインの場合は、補正すべき位相誤差δcを、δc=p−0によって算出する。
【0190】
ライン間での位相が180°反転で入力されるNTSC方式の標準信号であれば、位相誤差δcはゼロであり、非標準信号の場合は、基準位相からのずれ分に相当する値がこの位相誤差δcとして求められる。
【0191】
位相差算出手段71の位相補正量変換手段74では、NTSC方式の色副搬送波周波数fsc(NTSC)により、NTSC方式の色副搬送波位相の1クロックあたりの変化量ω(NTSC)=2π×fsc(NTSC)/Xが得られ、Δc=δc/ω(NTSC)により、位相誤差δcが位相補正量Δcに変換される。
【0192】
NTSC方式では、kラインの色副搬送波の位相とその上下に位置するk−1ラインおよびk+1ラインの色副搬送波の位相とは互いに反転しているので、ライン遅延選択手段72では、遅延補償手段76に入力されるコンポジット信号を、k+1ライン(画面上において注目ラインであるkラインの1ライン下)の信号とすると、選択手段77において、1ライン遅延手段75aから入力されるkラインのコンポジット信号と、1ライン遅延手段75bから入力されるk−1ライン(画面上においてkラインの1ライン上)のコンポジット信号とが選択される。
【0193】
そして、1ライン遅延手段75bから出力されたk−1ラインのコンポジット信号DTと、1ライン遅延手段75aから出力されたkラインのコンポジット信号DMと、遅延補償手段76から出力されたk+1ラインのコンポジット信号DBの3ライン分のコンポジット信号DBが、YC分離手段9に出力される。
【0194】
このとき、k+1ラインのコンポジット信号は、k−1ラインの色副搬送波位相情報p(k+1)から算出された位相補正量Δc(k−1)で位相補正されたサンプリングクロックによりA/D変換手段1においてサンプリングされた信号であり、kラインのコンポジット信号は、kラインの色副搬送波位相情報p(k)から算出された位相補正量Δc(k)で位相補正されたサンプリングクロックによりA/D変換手段1においてサンプリングされた信号であり、k−1ラインの色副搬送波位相情報p(k−1)から算出された位相補正量Δc(k−1)で位相補正されたサンプリングクロックによりA/D変換手段1においてサンプリングされた信号である。
【0195】
ライン遅延選択手段72に入力されたコンポジット信号は、そのラインの位相補正量Δcを補正したクロックでサンプリングされているので、k−1ラインのコンポジット信号DTおよびk+1ラインのコンポジット信号DBのサンプリングデータは、kラインのコンポジット信号DMのサンプリングデータに対し、位相が180°(=π)反転したものとなるように補正されたデータである。
【0196】
NTSC方式の非標準信号の場合においても、3ラインそれぞれの位相補正量Δc(k+1),Δc(k),Δc(k−1)によってk+1,k,k−1ラインのサンプリングクロックの位相が補正されているので、k−1,k,k+1の3ラインのコンポジット信号DT,DM,DBのサンプリングデータは、ライン間の位相が反転したサンプリングデータに補正されてライン遅延選択手段72から出力される。
【0197】
YC分離手段9では、k+1,k,k−1ラインのコンポジット信号DB,DM,DTから、NTSC方式の色副搬送波周波数fsc(NTSC)に応じて、C信号が抽出され、Y信号とC信号が分離される。
【0198】
[PAL方式のコンポジット信号が入力されたときの動作]
入力端子100に入力される映像信号がPAL方式のコンポジット信号の場合について以下に説明する。PAL方式のコンポジット信号の場合には、ラインごとに色副搬送波位相が270°(つまりは−90°)変化し、2ライン離れたライン間において、位相が180°(=π)反転するので、注目ラインをkラインとするとき、kラインの色副搬送波の位相とその2ライン上下に位置するk−2ラインおよびk+2ラインの色副搬送波の位相とは互いに反転している。また、PAL方式では、R−Y信号の色副搬送波位相が、ラインごとに180°反転する。
【0199】
PAL方式では、位相は4ラインごとに順次変化するので(4ラインシーケンスで変化するので)、1ライン目(ライン0,4,…)の位相を0°としたとき、2ライン目(ライン1,5,…)の位相は270°(=3π/2)、3ライン目(ライン2,6,…)の位相は180°、4ライン目(ライン3,7,…)の位相は90°(=π/2)となり、R−Y信号の色副搬送波位相が、ラインごとに180°反転する。このことを考慮し、位相差算出手段71の位相誤差算出手段73では、比較する基準位相の値を、放送方式の設定および入力信号のライン番号を示すタイミング信号h1に基づいて4ラインごとに切り換え、kラインの色副搬送波位相情報p(k)と基準位相との位相差を、補正すべき位相誤差δcとして算出する。
【0200】
つまり、入力信号のラインが4ラインシーケンスの1ライン目である場合は、補正すべき位相誤差δcを、δc=p−0によって算出し、入力信号のラインが4ラインシーケンスのの2ライン目である場合は、補正すべき位相誤差δcを、δc=p−3π/2によって算出し、入力信号のラインが4ラインシーケンスの3ライン目である場合は、補正すべき位相誤差δcを、δc=p−πによって算出し、入力信号のラインが4ラインシーケンスの4ライン目である場合は、補正すべき位相誤差δcを、δc=p−π/2によって算出する。
【0201】
2ラインごとのライン間での位相が180°反転で入力されるPAL方式の標準信号であれば、位相誤差δcはそれぞれゼロであり、非標準信号の場合は、基準位相からのずれ分に相当する値がこれら位相誤差δcとして求められる。
【0202】
位相差算出手段71の位相補正量変換手段74では、PAL方式の色副搬送波周波数fsc(PAL)により、PAL方式の色副搬送波位相の1クロックあたりの変化量ω(PAL)=2π×fsc(PAL)/Xが得られ、Δc=δc/ω(PAL)により、位相誤差δcが位相補正量Δcに変換される。
【0203】
PAL方式では、kラインの色副搬送波の位相とその2ライン上下に位置するk−2ラインおよびk+2ラインの色副搬送波の位相とは亙いに反転しているので、ライン遅延選択手段72では、遅延補償手段76に入力されるコンポジット信号を、k+2ライン(画面上において注目ラインであるkラインの2ライン下)の信号とすると、選択手段77において、1ライン遅延手段75bから入力されるkラインのコンポジット信号と、1ライン遅延手段75dから入力されるk−2ライン(画面上においてkラインの2ライン上)のコンポジット信号とが選択される。
【0204】
そして、1ライン遅延手段75dから出力されたk−2ラインのコンポジット信号DTと、1ライン遅延手段75bから出力されたkラインのコンポジット信号DMと、遅延補償手段76から出力されたk+2ラインのコンポジット信号DBの3ライン分のコンポジット信号DBが、YC分離手段9に出力される。
【0205】
このとき、k−2ラインのコンポジット信号は、k−2ラインの色副搬送波位相情報p(k+2)から算出された位相補正量Δc(k−2)で位相補正されたサンプリングクロックによりA/D変換手段1においてサンプリングされた信号であり、kラインのコンポジット信号は、kラインの色副搬送波位相情報p(k)から算出された位相補正量Δc(k)で位相補正されたサンプリングクロックによりA/D変換手段1においてサンプリングされた信号であり、k−2ラインの色副搬送波位相情報p(k−2)から算出された位相補正量Δc(k−2)で位相補正されたサンプリングクロックによりA/D変換手段1においてサンプリングされた信号である。
【0206】
ライン遅延選択手段72に入力されたコンポジット信号は、そのラインの位相補正量Δcを補正したクロックでサンプリングされているので、k−2ラインのコンポジット信号DTおよびk+2ラインのコンポジット信号DBのサンプリングデータは、kラインのコンポジット信号DMのサンプリングデータに対し、位相が180°(=π)反転したものとなるように補正されたデータである。
【0207】
PAL方式の非標準信号の場合においても、3ラインそれぞれの位相補正量Δc(k+2),Δ(k),Δc(k−2)によってk+2,k,k−2ラインのサンプリングクロックの位相が補正されているので、k−2,k,k+2の3ラインのコンポジット信号DT,DM,DBのサンプリングデータは、ライン間の位相が反転したサンプリングデータに補正されてライン遅延選択手段72から出力される。
【0208】
YC分離手段9では、k+2,k,k−2ラインのコンポジット信号DB,DM,DTから、PAL方式の色副搬送波周波数fsc(PAL)に応じて、C信号が抽出され、Y信号とC信号が分離される。
【0209】
なお、上記位相誤差δcの算出においては、基準位相の値の設定を0°,180°としたが、基準位相の値は、それぞれのラインで抽出するサンプリング位置に対し、色副搬送波の位相とライン間の位相関係を示す値であり、ライン間の色副搬送波の位相差が180°の反転となるように、オフセット分を考慮した基準値の設定を行ってもよい。
【0210】
その他の放送方式、例えば、PAL−N方式,PAL−M方式,NTSC−4.43方式などの場合にも、ラインごとの色副搬送波の位相が180°反転することを考慮したYC分離を行えるように、位相差算出手段71内の位相誤差算出手段73において、位相情報と基準位相から補正すべき位相誤差を求めれば、クロック位相補正手段70による位相の補正が行え、それぞれの放送方式にも容易に対応することができる。
【0211】
また、入力信号がSECAM方式である場合には、NTSC方式、PAL方式と異なる処理が必要であり、一般には2次元YC分離は行わないが、色副搬送波のラインごとの位相関係を考慮すれば、上記のクロックの位相を補正することで、YC分離を行うことができる。
【0212】
以上のように実施の形態3によれば、複数の放送方式、非標準信号に対し、位相差算出手段71において、バースト信号の色副搬送波の位相情報から、基準位相値との位相誤差を算出し、ライン間の色副搬送波の位相差が、180°の反転となるための位相補正量を得て、クロックの位相を補正し、補正したクロックでコンポジット信号をサンプリングしたデータとするので、ライン間の色副搬送波の位相差を180°の反転としてYC分離を行え、ライン間での位相関係や非標準信号であるかによらず、良好な2次元YC分離を行い、YC分離後の画質劣化を防ぐことができる。
【0213】
なお、上記実施の形態3のタイミング信号発生手段6bでは、フレーム単位のライン番号を示すタイミング信号h1を発生するが、色副搬送波のラインごとの位相の変化に応じて繰り返されるタイミング信号であればよく、NTSC方式の場合は、偶数ラインと奇数ラインの識別が可能な信号、PAL方式では、4ラインのシーケンスを示す信号であれば、同様の効果を奏する。
【0214】
また、上記実施の形態3の位相差算出手段71では、入力ライン信号の位相と基準位相の位相差を算出して位相補正量を求めるが、上記実施の形態1の位相差算出手段4と同様に、遅延手段による特定のライン上の位置での位相情報との位相差を求め、補正すべき位相誤差を求めてもよく、ライン間の色副搬送波の位相差が、180°の反転となるための位相補正量を得て、クロックの位相を補正し、同様の効果を奏する。
【0215】
さらに、上記実施の形態3では、ハードウェア構成するよう説明しているが、ハードウェア構成に限らず、プログラム制御でのソフトウェアの処理により実現する構成してもよい。
【0216】
実施の形態4.
上記実施の形態1から3では、バースト位相検出手段3を設け、色副搬送波の位相情報を検出したが、以下に説明する実施の形態4では、C信号から色差信号R−Y,B−Y信号を得るための色復調用の色副搬送波基準信号を発生する位相検波において、上記位相情報を生成する。
【0217】
図18は本発明の実施の形態4の映像信号処理回路の構成例を示すブロック図であり、図1と同様のものには同じ符号を付してある。図18において、実施の形態4の映像信号処理回路は、A/D変換手段1と、クロック発生手段2と、バースト信号位相検波手段10と、位相差算出手段4と、同期分離手段5と、タイミング信号発生手段6と、放送方式設定手段7と、サンプリング位相変換手段8と、YC分離手段9と、入力端子100と、出力端子103,104,105と、色復調手段110とを備えている。
【0218】
このように、実施の形態4の映像信号処理回路は、上記実施の形態1の映像信号処理回路(図1参照)において、色復調手段110を設け、バースト位相検出手段3をバースト信号位相検波手段10に変更したものである。これら色復調手段110およびバースト信号位相検波手段10を除く他の分部の構成および動作は、上記実施の形態1と同様である。
【0219】
[バースト信号位相検波手段10]
バースト信号位相検波手段10は、図1のバースト位相検出手段3と同様に、色副搬送波基準信号を用いて、A/D変換手段1からのコンポジット信号においてのバースト信号を検波し(コンポジット信号のバースト位相を検出し)、色副搬送波の位相情報pを位相差算出手段4に出力するものであるが、色副搬送波の位相情報pに基づき、C信号から色差信号R−Y,B−Y信号を得るための色復調用の周波数fscの上記色副搬送波基準信号を発生して、色復調手段110に出力する。
【0220】
図19はバースト信号位相検波手段10の構成例を示すブロック図であり、図2のバースト位相検出手段3と同様のものには同じ符号を付してある。図19において、バースト信号位相検波手段10は、バースト信号抽出手段11と、位相比較手段12と、ループ・フィルタ13と、NCO(Numerically Controlled Oscillator、数値制御発振器)14と、正弦波ROM(Read Only Memory)15とを備えている。
【0221】
この実施の形態4のバースト信号位相検波手段10は、上記実施の形態1のバースト位相検出手段3(図2参照)において、正弦波ROM15で発生する色副搬送波周波数fscの基準信号を、色復調用の色副搬送波基準信号として色復調手段110に出力する構成としたものである。
【0222】
[色復調手段110]
色復調手段110は、YC分離手段9で抽出されたC信号を、放送方式設定手段7により設定された放送方式に応じて、バースト信号位相検波手段10からの周波数fscの色副搬送波基準信号と乗算することにより、色差信号R−Y,B−Y信号を色復調し、R−Y信号を出力端子104に出力し、B−Y信号を出力端子105に出力する。
【0223】
CCIRのディジタル・テレビ・スタジオの符号化規格信号において、Y信号のサンプリング周波数は13.5[MHz]であり、R−Y,B−Y信号のサンプリング周波数は6.75[MHz]である。YC分離手段9から出力されるY信号、および色復調手段110から出力されるR−Y,B−Y信号のサンプリング周波数は、クロック発生手段2が発生するクロックの周波数X=27[MHz]であるので、YC分離手段9から出力されるY信号のサンプリング周波数は、上記CCIR規格のY信号のサンプリング周波数の2倍であり、色復調手段110から出力されるR−Y,B−Y信号のサンプリング周波数は、上記CCIR規格のR−Y,B−Y信号のサンプリング周波数の4倍である。従って、YC分離手段9および色復調手段110の出力は、容易にディジタル・テレビ・スタジオの符号化規格信号に変換することができる。
【0224】
以上のように実施の形態4によれば、複数の放送方式、非標準信号に対し、位相差算出手段において、コンポジット信号における色副搬送波の位相情報から位相誤差を算出し、ライン間の色副搬送波の位相差が、180°の反転となるための位相補正量を得て、コンポジット信号のサンプリング位相をサンプリング位相変換により補正した後、YC分離を行うので、ライン間での位相関係や非標準信号であるかによらず、良好な2次元YC分離を行い、YC分離後の画質劣化を防ぐことができる。さらに、色副搬送波の位相情報を色復調用の色基準信号の生成するバースト信号位相検波手段から得るので、回路規模を大幅に増加することなく、良好なYC分離を行い、YC分離後の画質劣化を防ぐことができる。
【0225】
なお、上記実施の形態4では、上記実施の形態1においてバースト位相検出手段3をバースト信号位相検波手段10に変更して色復調手段110を設けたが、上記実施の形態2または3においてバースト位相検出手段3をバースト信号位相検波手段10に変更して色復調手段110を設けても、上記実施の形態4と同様の効果を奏する。
【0226】
実施の形態5.
上記実施の形態1から4のYC分離手段では、ラインくし形フィルタによる2次元YC分離をしたが、以下に説明する実施の形態5では、フレーム間周期での色副搬送波位相の関係を用いるフレームくし形フィルタによる3次元YC分離をする。3次元YC分離の場合は、上記実施の形態1から4において、1ラインを遅延する遅延手段を例えばフィールド単位で1フレーム分遅延するフレーム遅延手段として3次元方向に拡張すれば、上記実施の形態1から4と同様にフレーム間での位相関係や非標準信号であるかによらず、良好な3次元YC分離ができる。
【0227】
図20は本発明の実施の形態5の映像信号処理回路の構成例を示すブロック図であり、図1と同様のものには同じ符号を付してある。図20において、実施の形態5の映像信号処理回路は、A/D変換手段1と、クロック発生手段2と、バースト位相検出手段3と、位相差算出手段81と、同期分離手段5と、タイミング信号発生手段6cと、放送方式設定手段7と、フレームサンプリング位相変換手段82と、YC分離手段83と、入力端子100と、出力端子101および102とを備えている。
【0228】
このように、実施の形態5の映像信号処理回路は、上記実施の形態1の映像信号処理回路(図1参照)において、位相差算出手段4を位相差算出手段81に変更し、タイミング信号発生手段6をタイミング信号発生手段6cに変更し、サンプリング位相変換手段8をフレームサンプリング位相変換手段82に変更し、YC分離手段9をYC分離手段83に変更したものである。これらタイミング信号発生手段6c、位相差算出手段81、フレームサンプリング位相変換手段82、YC分離手段83を除く他の部分の構成および動作は、上記実施の形態1と同様である。
【0229】
[タイミング信号発生手段6c]
タイミング信号発生手段6cにおいては、同期分離手段5からの同期信号に基づき、タイミング信号を発生し、位相差算出手段81およびフレームサンプリング位相変換手段82に出力する。ここでは、垂直および水平同期信号に基づき、1フレーム分(2フィールド分)信号を遅延するためのタイミング信号vbを発生する。
【0230】
[位相差算出手段81]
位相差算出手段81は、色副搬送波の位相情報pから、フレーム間での位相差を検出し、位相補正量Δfをフレームサンプリング位相変換手段82に出力する。
【0231】
図21は位相差算出手段81の構成例を示すブロック図である。図21において、位相差算出手段81は、1フレーム遅延手段84と、位相誤差算出手段85と、位相補正量変換手段86とを備えている。
【0232】
図21の位相差算出手段81において、バースト位相検出手段3からの位相情報pは、1フレーム遅延手段84と位相誤差算出手段85に入力される。また、タイミング信号発生手段6cからのタイミング信号は、1フレーム遅延手段84に入力される。また、放送方式設定手段7からの放送方式設定信号は、位相補正量変換手段86に入力される。
【0233】
1フレーム遅延手段84は、タイミング信号vbにより、位相情報pを1フレーム分(2フィールド分)遅延し、位相誤差算出手段85に出力する。
【0234】
位相誤差算出手段85は、バースト位相検出手段3からの位相情報pと1フレーム遅延手段84からの1フレーム遅延した位相情報pから、フレーム間の補正すべき位相誤差δfを求め、位相補正量変換手段86に出力する。
【0235】
位相補正量変換手段86は、位相誤差算出手段85からの位相誤差δfを、位相補正のための位相補正量Δfに変換し、フレームサンプリング変換手段82に出力する。
【0236】
この位相補正量変換手段86での変換は、位相情報pが色副搬送波の1周期を2πとする角度を表す情報であることから、位相誤差算出手段85からの位相誤差δfを、X=27[MHz]のクロックでの1周期を基準とする、時間を表す値(Xのクロックの1周期の倍数で時間を表す)に変換するものである。つまり、色副搬送波周波数fscから、色副搬送波位相の1クロックあたりの、角度で表された変化量ωを、ω=2π×fsc/Xとすると、位相誤差δfから変換された位相補正量Δfは、Δf=δf/ωとなる。位相誤差δfの補正範囲を−πから+πまでとするとき、位相補正量Δfは、−X/(2×fsc)からX/(2×fsc)までの値をとり得る。
【0237】
[フレームサンプリング位相変換手段82]
フレームサンプリング位相変換手段82は、A/D変換手段1からのデジタル信号のコンポジット信号の1フレーム遅延信号を求めることで、YC分離に用いる現フィールドのコンポジット信号およびその1フレーム遅延したフィールドのコンポジット信号(現フィールドの注目ラインのコンポジット信号およびその1フレーム前の同じラインのコンポジット信号)を得て、位相差算出手段81からの位相補正量Δfによって、上記1フレーム遅延したコンポジット信号の位相を補正し、YC分離手段83に出力する。
【0238】
図22はフレームサンプリング位相変換手段82の構成例を示すブロック図である。図22において、フレームサンプリング位相変換手段82は、1フレーム遅延手段87と、遅延補償手段88と、位相変換手段89とを備えている。なお、位相変換手段89の構成および動作は、例えば上記実施の形態1の位相変換フィルタ(図5,図9,図10参照)と同様である。
【0239】
図22のフレームサンプリング位相変換手段82において、A/D変換手段1からのコンポジット信号は、1フレーム遅延手段87と遅延補償手段88に入力される。また、タイミング信号発生手段6cからのタイミング信号vbは、1フレーム遅延手段87に入力される。また、位相差算出手段81からの位相補正量Δfは、位相変換手段89に入力される。
【0240】
1フレーム遅延手段87は、タイミング信号vbにより、入力されたコンポジット信号を1フレーム分遅延し、位相変換手段89に出力する。
【0241】
遅延補償手段88は、A/D変換手段1からの入力コンポジット信号に対し、位相変換手段89においての他のコンポジット信号の信号遅延分を補償し、コンポジット信号D0としてYC分離手段83に出力する。
【0242】
位相変換手段89は、位相差算出手段81からの位相補正量Δfに基づき、1フレーム遅延補償手段87からのコンポジット信号の位相を補正し、コンポジット信号D1としてYC分離手段83に出力する。
【0243】
位相補正量Δfは、現フィールドの色副搬送波位相に対する1フレーム前の信号での位相補正量であり、X=27[MHz]のクロックでの1周期を基準とする値に変換されている。よって、上記1フレーム前の信号に相当する位相変換手段89の入力信号を、Δf遅延してサンプリングの位相を変換し、位相補正する。
【0244】
[YC分離手段83]
YC分離手段83は、フレームくし形フィルタによる3次元YC分離手段であり、フレームサンプリング位相変換手段82から入力された現フィールドおよびその1フレーム前のフィールドのコンポジット信号D0,D1から、放送方式設定手段7により設定された放送方式の色副搬送波周波数fscに応じて、3次元YC分離によりC信号を抽出してY信号とC信号を分離し、C信号を出力端子101に出力し、Y信号を出力端子102に出力する。
【0245】
図23は3次元YC分離によるYC分離手段83の構成例を示すブロック図である。図23において、YC分離手段83は、減算器90と、BPF(バンドパスフィルタ)91と、減算器92とを備えている。
【0246】
図23のYC分離手段83において、フレームサンプリング位相変換手段82からの現フィールドのコンポジット信号D0は、減算器90および92に入力される。また、フレームサンプリング位相変換手段82からの1フレーム遅延したフィールドのコンポジット信号D1は、減算器90に入力される。また、放送方式設定手段7からの放送方式設定信号は、BPF91に入力される。
【0247】
減算器90は、現フィールドのコンポジット信号D0から1フレーム遅延したコンポジット信号D1を減算してC信号を抽出し、BPF91に出力する。フレーム間の同じラインにおいての色副搬送波の位相は反転しているので、コンポジット信号のフレーム間の相関が強ければ、この減算器90の処理により、完全にC信号を抽出することができる。
【0248】
BPF91は、減算器90の出力信号から、C信号の周波数帯域外の不要成分を除去し、出力端子102(図20参照)および減算器92に出力する。なお、BPF91では、放送方式設定手段7からの放送方式設定信号に基づき、設定されている放送方式の色副搬送波周波数fscに対応したBPFを用いる。
【0249】
減算器92は、入力された現フィールドのコンポジット信号D0から、BPF91からのC信号を減算して、Y信号を分離し、出力端子101(図20参照)に出力する。
【0250】
[NTSC方式のコンポジット信号が入力されたときの動作]
入力端子100に入力される映像信号がNTSC方式のコンポジット信号の場合について以下に説明する。NTSC方式のコンポジット信号の場合には、1フレームごとに色副搬送波位相が180°(=π)反転するので、現フレームをjフレームとするとき、jフレームとその1フレーム前のj−1フレームの同じラインにおいての色副搬送波の位相は互いに反転している。また、YC分離手段83では、フレームごとに色副搬送波の位相が反転していることを考慮して3次元YC分離によりC信号とY信号を分離する。
【0251】
このため、位相差算出手段81では、注目ラインであるjフレームのkラインの色副搬送波位相情報p(j,k)と、j−1フレームの同じkラインの色副搬送波の位相情報p(j−1,k)とが、色副搬送波位相情報として位相誤差算出手段85に入力される。
【0252】
つまり、jフレームのkライン(注目ライン)の位相情報に相当するバースト位相検出手段3からの位相情報p(j,k)と、j−1フレームのkライン(2フィールド離れた特定ライン)の位相情報に相当する1フレーム遅延手段84からの1フレーム遅延位相情報p(j−1,k)とが、位相誤差算出手段85に入力される。
【0253】
位相差算出手段81の位相誤差算出手段85では、フレーム間での位相πの反転分を考慮し、jフレームのkラインの信号に対してその1フレーム前のj−1フレームの同じkラインの信号で補正すべき位相誤差δfを、δf=p(j−1,k)−p(j,k)+πによって算出する。ここでは、+πは固定の位相値であり、−p(j,k)+πはjフレームのkラインに対する基準位相に相当し、j−1フレームのkラインの位相情報p(j−1,k)と注目ラインに対する基準位相との位相差を、位相誤差δfとして求めている。
【0254】
フレーム間での位相が180°反転で入力されるNTSC方式の標準信号であれば、位相誤差δfはゼロであり、非標準信号の場合は、位相のずれ分に相当する値がこの位相誤差δfとして求められる。
【0255】
位相差算出手段81の位相補正量変換手段86では、NTSC方式の色副搬送波周波数fsc(NTSC)により、NTSC方式の色副搬送波位相の1クロックあたりの変化量ω(NTSC)=π×fsc(NTSC)/Xが得られ、Δf=δf/ω(NTSC)により、位相誤差δfが位相補正量Δfに変換される。
【0256】
フレームサンプリング位相変換手段82では、遅延補償手段88において遅延補償されるコンポジット信号を、jフレームのkラインの信号とすると、1フレーム遅延手段87で1フレーム分遅延されたj−1フレームのkラインのコンポジット信号が位相変換手段89に入力される。
【0257】
そして、位相変換手段89により、位相補正量Δfに基づき、j−1フレームのkラインのコンポジット信号の位相が補正され、位相変換手段89で位相補正されたj−1フレームのコンポジット信号D1と、遅延補償手段88で遅延補償されたjフレームのコンポジット信号D0とが、YC分離手段83に出力される。
【0258】
j−1フレームのコンポジット信号D1は、jフレームのコンポジット信号D0のサンプリングデータに対し、位相が180°(=π)反転したものとなるように補正されたデータである。
【0259】
NTSC方式の非標準信号の場合においても、フレーム間の位相補正量Δfによって、jフレームとその1フレーム前のj−1フレームのコンポジット信号D1,D0のサンプリングデータは、フレーム間での位相が反転したサンプリングデータに補正されてフレームサンプリング位相変換手段82から出力される。
【0260】
YC分離手段83では、j,j−1フレームのコンポジット信号D0,D1から、NTSC方式の色副搬送波周波数fsc(NTSC)に応じて、C信号が抽出され、Y信号とC信号が分離される。
【0261】
[PAL方式のコンポジット信号が入力されたときの動作]
入力端子100に入力される映像信号がPAL方式のコンポジット信号の場合について以下に説明する。PAL方式のコンポジット信号の場合には、1フレームごとに色副搬送波位相が270°変化し、2フレーム後に180°反転するので、現フレームをjフレームとするとき、jフレームの色副搬送波の位相とその1フレーム前のj−1フレームの色副搬送波の位相とは3π/2ずれており、jフレームの色副搬送波の位相とその2フレーム前のj−2フレームの色副搬送波の位相とは互いに反転している。また、YC分離手段83では、フレーム相関性を利用しており、フレーム間での色副搬送波の位相が180°反転することを考慮した3次元YC分離によりC信号とY信号を分離する。
【0262】
しかしながら、PAL方式において色副搬送波位相が180°反転する現フレームとその2フレーム前のフレームでの信号間の相関は一般に弱く、フレーム相関が弱くなると、3次元YC分離を行う際に弊害が生じ、良好なYC分離が行うことができない。このため、現フレームとその2フレーム前のフレームとを用いて3次元YC分離をするのは得策でない。
【0263】
そこで、PAL方式においても、上記NTSC方式の場合と同様に、位相差算出手段81において、現フレームとその1フレーム前のフレーム間での位相誤差を含め、上記フレーム間の位相が180°反転するように位相補正するための位相補正量を求める。
【0264】
位相差算出手段81の位相誤差算出手段85では、注目ラインであるjフレームのkラインの色副搬送波位相情報p(j,k)と、j−1フレームの同じkラインの色副搬送波の位相情報p(j−1,k)とから、上記NTSC方式と同様に、jフレームのkラインの信号に対してその1フレーム前のj−1フレームの同じkラインの信号で補正すべき位相誤差δfを、δf=p(j−1)−p(j)+πによって算出する。
【0265】
フレーム間での位相が270°変化して入力されるPAL方式の標準信号であれば、p(j−1,k)=p(j,k)+3π/2なので、δf=(3π/2)+π=2π+π/2、つまりδf=π/2であり、これにより、位相0°の信号の場合(現フィールドでは270°の位相に対応)は、位相90°への補正となる。また、非標準信号の場合は、位相のずれ分に相当する値が上記π/2に付加され、位相誤差δfとして求められる。
【0266】
位相差算出手段81の位相補正量変換手段86では、PAL方式の色副搬送波周波数fsc(PAL)により、PAL方式の色副搬送波位相の1クロックあたりの変化量ω(PAL)=2π×fsc(PAL)/Xが得られ、Δf=δf/ω(PAL)により、位相誤差δfが位相補正量Δfに変換される。
【0267】
フレームサンプリング位相変換手段82では、上記NTSC方式の場合と同様に、j−1フレームのコンポジット信号D1とjフレームのコンポジット信号D0のサンプリングデータの位相が180°(=π)反転したものとなるように、位相補正量Δfによりj−1フレームのコンポジット信号D1の位相を補正する。
【0268】
PAL方式の非標準信号の場合も、位相補正量Δfには位相のずれ分に相当する値が含まれるため、フレーム間の位相補正量Δfによって、jフレームとその1フレーム前のj−1フレームのコンポジット信号D1,D0のサンプリングデータは、フレーム間での位相が反転したサンプリングデータに補正されてフレームサンプリング位相変換手段82から出力される。
【0269】
YC分離手段83では、j,j−1フレームのコンポジット信号D0,D1から、PAL方式の色副搬送波周波数fsc(PAL)に応じて、C信号が抽出され、Y信号とC信号が分離される。
【0270】
なお、上記位相誤差δfの算出においては、フレーム間での位相πの反転分を考慮して、値πを加算し求めているが、位相πの考慮は、値πに限らず、放送方式のフレーム間での位相関係を考慮し、色副搬送波の位相差が180°の反転となるよう、オフセット分を考慮した位相誤差となればよい。
【0271】
その他の放送方式の場合にも、フレームごとの色副搬送波の位相が180°反転することを考慮したYC分離を行えるように、位相差算出手段81内の位相誤差算出手段85において、フレーム間での位相情報から補正すべき位相誤差を求めれば、フレームサンプリング位相変換手段82における位相補正が行え、それぞれの放送方式にも容易に対応することができる。
【0272】
以上のように実施の形態5によれば、複数の放送方式、非標準信号に対し、位相差算出手段81において、コンポジット信号における色副搬送波の位相情報から、フレーム間の位相誤差を算出し、フレーム間での色副搬送波の位相差が180°の反転となるための位相補正量を得て、コンポジット信号のサンプリング位相をサンプリング位相変換により補正した後、YC分離を行うので、フレーム間での位相関係や非標準信号であるかによらず、良好な3次元YC分離を行い、YC分離後の画質劣化を防ぐことができる。
【0273】
なお、上記実施の形態5の位相差算出手段81では、フレーム間の色副搬送波位相を比較して位相補正量を求めたが、上記実施の形態2と同様に、色副搬送波位相を固定の位相値と比較して補正量を求めることもできる。
【0274】
また、上記実施の形態5の位相差算出手段81を図24に示す構成とすることも可能であり、その場合に、フレームサンプリング位相変換手段82を図25に示す構成とすることが可能である。
【0275】
図24の位相差算出手段81は、1フレーム遅延手段84と、位相誤差算出手段93と、位相補正量変換手段94とを備えている。なお、図24において、図21の位相差算出手段81と同様のものには同じ符号を付してある。位相誤差算出手段93は、比較する基準位相の値を、色副搬送波位相のフレーム間での変化から設定し、放送方式の設定と信号発生手段6cからのタイミング信号v1に基づいて切り換え、現フィールドの位相情報pおよび1フレーム遅延手段84から出力された1フレーム前のフィールドの位相情報pのそれぞれを基準位相値と比較して位相差を算出し、現フィールドの信号での補正すべき位相誤差δf0と、1フレーム前の信号での補正すべき位相誤差δf1とを求める。また、位相補正量変換手段94では、位相誤差算出手段93からの位相誤差δf0,δf1、を位相補正のための位相補正量Δf0,Δf1に変換する。
【0276】
図25のフレームサンプリング位相変換手段82は、1フレーム遅延手段87と、位相変換手段95,96とを備えている。なお、図25において、図22のフレームサンプリング位相変換手段82と同様のものには同じ符号を付してある。位相変換手段95は、現フィールドのコンポジット信号に、位相補正量Δf0の遅延を与えて、位相を補正する。また、位相変換手段96は、現フィールドの1フレーム前のフィールドのコンポジット信号に、位相補正量Δf1の遅延を与えて、位相を補正する。
【0277】
また、上記実施の形態5では、位相差算出手段81から出力される位相補正量により映像信号の位相を補正したが、上記実施の形態3と同様に、サンプリングを行うサンプリングクロックの位相を補正することにより、位相関係を3次元YC分離で用いる関係となるよう構成することができ、上記と同様の効果を奏する。
【0278】
実施の形態6
上記実施の形態5では、バースト位相検出手段3を設け、色副搬送波の位相情報を検出したが、以下に説明する実施の形態6では、上記実施の形態4と同様に、C信号からR−Y,B−Y信号を得るための色復調用の色副搬送波基準信号を発生するバースト信号位相検波手段10において、上記位相情報を生成する。
【0279】
図26は本発明の実施の形態6の映像信号処理回路の構成例を示すブロック図であり、図18または図20と同様のものには同じ符号を付してある。図26において、実施の形態6の映像信号処理回路は、A/D変換手段1と、クロック発生手段2と、バースト信号位相検波手段10と、位相差算出手段81と、同期分離手段5と、タイミング信号発生手段6cと、放送方式設定手段7と、フレームサンプリング位相変換手段82と、YC分離手段83と、入力端子100と、出力端子103,104,105と、色復調手段110とを備えている。
【0280】
このように、実施の形態6の映像信号処理回路は、上記実施の形態4の映像信号処理回路(図18参照)において、位相差算出手段4を位相差算出手段81に変更し、タイミング信号発生手段6をタイミング信号発生手段6cに変更し、サンプリング位相変換手段8をフレームサンプリング位相変換手段82に変更し、YC分離手段9をYC分離手段83に変更したものである。
【0281】
また、実施の形態6の映像信号処理回路は、上記実施の形態5の映像信号処理回路(図20参照)において、色復調手段110を設け、バースト位相検出手段3をバースト信号位相検波手段10に変更したものである。
【0282】
なお、この実施の形態6の映像信号処理回路において、バースト信号位相検波手段10および色復調手段110の構成および動作は、上記実施の形態4と同様であり、これらを除く他の部分の構成および動作は、上記実施の形態5と同様である。
【0283】
以上のように実施の形態6によれば、複数の放送方式、非標準信号に対し、位相差算出手段81において、コンポジット信号における色副搬送波の位相情報から、フレーム間の位相誤差を算出し、フレーム間での色副搬送波の位相差が180°の反転となるための位相補正量を得て、コンポジット信号のサンプリング位相をサンプリング位相変換により補正した後、YC分離を行うので、フレーム間での位相関係や非標準信号であるかによらず、良好な3次元YC分離を行い、YC分離後の画質劣化を防ぐことができる。さらに、バースト信号位相検波手段での処理を色復調用の色基準信号の生成時に、色副搬送波の位相情報が得られるので、回路規模を大幅に増加することなく、良好なYC分離を行い、YC分離後の画質劣化を防ぐことができる。
【0284】
実施の形態7.
上記実施の形態1から3、および実施の形態5では、コンポジット信号を入力とし、ライン間もしくはフレーム間での位相関係や非標準信号であるかによらず、良好な2次元もしくは3次元YC分離を行い、Y信号とC信号を得ることを説明したが、以下に示す実施の形態7では、コンポジット信号を入力とし、上記YC分離後のY信号とC信号を表示する映像信号表示装置を示す。
【0285】
図27は、上記実施の形態1の図1を元にした実施の形態7による映像信号表示装置の一例を示すブロック図であり、図1と同様のものには同じ符号を付してある。図において、実施の形態7の映像信号表示装置は、A/D変換手段1と、クロック発生手段2と、バースト位相検出手段3と、位相差算出手段4と、同期分離手段5と、タイミング信号発生手段6と、放送方式設定手段7と、サンプリング位相変換手段8と、YC分離手段9と、表示処理手段200と、表示手段201を備えている。
【0286】
一般に、TV放送やVTR、DVDおよびゲーム機等からの信号を表示する映像信号表示装置では、コンポジット信号を入力する入力端子を備えており、コンポジット信号入力をデジタル信号へ変換してYC分離した後、YC分離後のY信号とC信号を処理し、画像として表示する。実施の形態7の映像信号表示装置は、上記実施の形態1の映像信号処理回路(図1参照)において、YC分離手段9からの出力であるY信号とC信号を処理する表示処理手段200と、表示手段201を設け、YC分離した後の信号を表示するように構成したものである。これら表示処理手段200および表示手段201に関する部分以外の構成、及び動作は、上記実施の形態1と同様であり、その詳細な説明は省略する。
【0287】
[表示処理手段200]
表示処理手段200は、YC分離手段9により分離されたY信号とC信号が送られ、Y信号とC信号に基づき、C信号を色復調してR−Y、B−Y信号を得た後、例えばRGB信号へと変換して、スケーリング処理などの表示信号へと変換するための信号処理を施し、表示信号として表示手段201へ出力する。
【0288】
[表示手段201]
表示手段201は、表示処理手段200からの表示信号を表示し、YC分離手段9により分離されたY信号とC信号による映像信号を表示することとなる。
【0289】
以上のように本実施の形態7によれば、複数の放送方式、非標準信号に対し、コンポジット信号のサンプリング位相をサンプリング位相変換により補正した後、YC分離を行い、ライン間での位相関係や非標準信号であるかによらず、良好なYC分離を行い、その後のY信号とC信号による映像信号を表示するので、クロスカラーやドット妨害など画質劣化のない良好な映像信号を表示することができる。
【0290】
なお、上記実施の形態7では、上記実施の形態1においてYC分離手段9からの出力を表示するように表示処理手段200、表示手段201を設けたが、図28に示すように上記実施の形態2において、表示処理手段200、表示手段201を設けても、また、図29に示すように上記実施の形態3において、表示処理手段200、表示手段201を設けてもよく、さらには、図30に示すように、上記実施の形態5において、YC分離手段83の後に表示処理手段200、表示手段201を設けても、上記実施の形態7と同様の効果を奏する。
【0291】
実施の形態8.
上記実施の形態4および6では、コンポジット信号を入力とし、ライン間もしくはフレーム間での位相関係や非標準信号であるかによらず、良好な2次元もしくは3次元YC分離を行い、Y信号と色復調した後のR−Y、B−Y信号を得ることを説明したが、以下に示す実施の形態8では、コンポジット信号を入力とし、上記YC分離および色復調後のY信号とR−Y、B−Y信号を表示する映像信号表示装置を示す。
【0292】
図31は、上記実施の形態4の図18を元にした実施の形態8による映像信号表示装置の一例を示すブロック図であり、図18と同様のものには同じ符号を付してある。図において、実施の形態8の映像信号表示装置は、A/D変換手段1と、クロック発生手段2と、バースト信号位相検波手段10と、位相差算出手段4と、同期分離手段5と、タイミング信号発生手段6と、放送方式設定手段7と、サンプリング位相変換手段8と、YC分離手段9と、色復調手段110と、表示処理手段202と、表示手段201とを備えている。
【0293】
一般に、TV放送やVTR、DVDおよびゲーム機等からの信号を表示する映像信号表示装置では、コンポジット信号を入力する入力端子を備えており、コンポジット信号入力をデジタル信号へ変換してYC分離し、色復調した後、Y信号とR−Y、B−Y信号を画像として表示する。実施の形態8の映像信号表示装置は、上記実施の形態4の映像信号処理回路(図18参照)において、YC分離手段9からの出力であるY信号と色復調手段110からのR−Y、B−Y信号を処理する表示処理手段202と、表示手段201を設け、YC分離および色復調した後の信号を表示するように構成したものである。これら表示処理手段202および表示手段201に関する部分以外の構成、及び動作は、上記実施の形態4と同様であり、また、表示手段201の構成、及び動作は、上記実施の形態7と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0294】
[表示処理手段202]
表示処理手段202は、YC分離手段9により分離されたY信号と、色復調処理手段110からのR−Y、B−Y信号が送られ、Y信号とR−Y、B−Y信号から例えばRGB信号へと変換し、スケーリング処理などの表示信号へと変換するための信号処理を施した後、表示信号として表示手段201へ出力する。表示手段201は、表示処理手段202からの表示信号を表示し、YC分離手段9により分離されたY信号と、色復調処理手段110からのR−Y、B−Y信号による映像信号を表示することとなる。
【0295】
以上のように本実施の形態8によれば、複数の放送方式、非標準信号に対し、コンポジット信号のサンプリング位相をサンプリング位相変換により補正した後、YC分離を行い、ライン間での位相関係や非標準信号であるかによらず、良好なYC分離を行い、その後のY信号とR−Y、B−Y信号による映像信号を表示するので、クロスカラーやドット妨害など画質劣化のない良好な映像信号を表示することができる。
【0296】
なお、上記実施の形態8では、上記実施の形態4においてYC分離手段9、色復調手段110からの出力を表示するように表示処理手段202、表示手段201を設けたが、図32に示すように上記実施の形態6において、YC分離手段83と色復調手段110の後に表示処理手段202、表示手段201を設けても、上記実施の形態8と同様の効果を奏する。
【0297】
実施の形態9.
上記実施の形態1から3、および実施の形態5では、コンポジット信号を入力とし、ライン間もしくはフレーム間での位相関係や非標準信号であるかによらず、良好な2次元もしくは3次元YC分離を行い、Y信号とC信号を得ることを説明したが、以下に示す実施の形態9では、コンポジット信号を入力とし、上記YC分離後のY信号とC信号による映像信号を記録する映像信号記録装置を示す。
【0298】
図33は、上記実施の形態1の図1を元にした実施の形態9による映像信号記録装置の一例を示すブロック図であり、図1と同様のものには同じ符号を付してある。図において、実施の形態9の映像信号記録装置は、A/D変換手段1と、クロック発生手段2と、バースト位相検出手段3と、位相差算出手段4と、同期分離手段5と、タイミング信号発生手段6と、放送方式設定手段7と、サンプリング位相変換手段8と、YC分離手段9と、記録信号処理手段300と、記録手段301を備えている。
【0299】
一般に、TV放送やVTR、DVDおよびゲーム機等からの映像信号を記録する映像信号記録装置では、コンポジット信号を入力する入力端子を備えており、コンポジット信号入力をデジタル信号へ変換してYC分離した後、YC分離後のY信号とC信号を処理し、画像として記録する。実施の形態9の映像信号記録装置は、上記実施の形態1の映像信号処理回路(図1参照)において、YC分離手段9からの出力であるY信号とC信号を処理する記録信号処理手段300と、記録手段301を設け、YC分離した後の信号を記録するように構成したものである。これら記録信号処理手段300および記録手段301に関する部分以外の構成、及び動作は、上記実施の形態1と同様であり、その詳細な説明は省略する。
【0300】
[記録信号処理手段300]
記録信号処理手段300は、YC分離手段9により分離されたY信号とC信号が送られ、Y信号とC信号に基づき、例えばRGB信号またはY信号とR−Y、B−Y信号へと変換し、MPEG2による画像圧縮などの符号化、記録のための記録変調処理などの記録信号処理を行い、記録信号として記録手段301へ出力する。
【0301】
[記録手段301]
記録手段301は、VTR、DVD、ハードディスクなどの記録媒体へ記録信号処理手段300からの記録信号を記録するものであり、YC分離手段9により分離されたY信号とC信号による映像信号を記録媒体へ記録することとなる。
【0302】
以上のように本実施の形態9によれば、複数の放送方式、非標準信号に対し、コンポジット信号のサンプリング位相をサンプリング位相変換により補正した後、YC分離を行い、ライン間での位相関係や非標準信号であるかによらず、良好なYC分離を行い、その後のY信号とC信号による映像信号を記録するよう構成したので、クロスカラーやドット妨害など画質劣化のない良好な映像信号を記録することができる。
【0303】
なお、上記実施の形態9では、上記実施の形態1においてYC分離手段9からの出力を表示するように記録信号処理手段300と記録手段301を設けたが、図34に示すように上記実施の形態2において、記録信号処理手段300、記録手段301を設けても、また、図35に示すように上記実施の形態3において、記録信号処理手段300、記録手段301を設けてもよく、さらには、図36に示すように、上記実施の形態5において、YC分離手段83の後に記録信号処理手段300、記録手段301を設けても、上記実施の形態9と同様の効果を奏する。
【0304】
実施の形態10.
上記実施の形態4および6では、コンポジット信号を入力とし、ライン間もしくはフレーム間での位相関係や非標準信号であるかによらず、良好な2次元もしくは3次元YC分離を行い、Y信号と色復調した後のR−Y、B−Y信号を得ることを説明したが、以下に示す実施の形態10では、コンポジット信号を入力とし、上記YC分離および色復調後のY信号とR−Y、B−Y信号による映像信号を記録する映像信号記録装置を示す。
【0305】
図37は、上記実施の形態4の図18を元にした実施の形態10による映像信号記録装置の一例を示すブロック図であり、図18と同様のものには同じ符号を付してある。図において、実施の形態10の映像信号記録装置は、A/D変換手段1と、クロック発生手段2と、バースト信号位相検波手段10と、位相差算出手段4と、同期分離手段5と、タイミング信号発生手段6と、放送方式設定手段7と、サンプリング位相変換手段8と、YC分離手段9と、色復調手段110と、記録信号処理手段302と、記録手段301を備えている。
【0306】
一般に、TV放送やVTR、DVDおよびゲーム機等からの信号を記録する映像信号記録装置では、コンポジット信号を入力する入力端子を備えており、コンポジット信号入力をデジタル信号へ変換してYC分離し、色復調した後、Y信号とR−Y、B−Y信号を画像として記録する。実施の形態10の映像信号記録装置は、上記実施の形態4の映像信号処理回路(図18参照)において、YC分離手段9からの出力であるY信号と色復調手段110からのR−Y、B−Y信号を処理する記録信号処理手段302と、記録手段301を設け、YC分離および色復調した後の信号を記録するように構成したものである。これら記録信号処理手段302および記録手段301に関する部分以外の構成、及び動作は、上記実施の形態4と同様であり、また、記録手段301の構成、及び動作は、上記実施の形態9と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0307】
[記録信号処理手段302]
記録信号処理手段302は、YC分離手段9により分離されたY信号と、色復調処理手段110からのR−Y、B−Y信号が送られ、Y信号とR−Y、B−Y信号に基づき、MPEG2による画像圧縮などの符号化、記録のための記録変調処理などの記録信号処理を行い、記録信号として記録手段301へ出力する。記録手段301は、記録信号処理手段302からの記録信号を記録媒体へ記録する。
【0308】
以上のように本実施の形態10によれば、複数の放送方式、非標準信号に対し、コンポジット信号のサンプリング位相をサンプリング位相変換により補正した後、YC分離を行い、ライン間での位相関係や非標準信号であるかによらず、良好なYC分離を行い、その後のY信号とR−Y、B−Y信号による映像信号を記録するので、クロスカラーやドット妨害など画質劣化のない良好な映像信号を記録することができる。
【0309】
なお、上記実施の形態10では、上記実施の形態4においてYC分離手段9、色復調手段110からの出力を記録するように記録信号処理手段302、記録手段301を設けたが、図38に示すように上記実施の形態6において、YC分離手段83と色復調手段110の後に記録信号処理手段302、記録手段301を設けても、上記実施の形態10と同様の効果を奏する。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】

【図25】

【図26】

【図27】

【図28】

【図29】

【図30】

【図31】

【図32】

【図33】

【図34】

【図35】

【図36】

【図37】

【図38】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ複合カラー映像信号をサンプリングしてからデジタル信号に変換し、所定のクロックにより処理する映像信号処理回路であって、
上記所定のクロックを発生するクロック発生手段と、
上記複合カラー映像信号のそれぞれのラインにおいての色副搬送波の位相情報を検出する位相検出手段と、
上記位相検出手段からの位相情報と所定の基準位相との位相差を求めさらに、これに基いて位相補正量を求め、出力する位相差算出手段と、
上記位相差算出手段から出力される位相補正量に基づき、上記複合カラー映像信号の上記サンプリングの位相を補正するサンプリング位相変換手段と、
上記サンプリング位相変換手段から出力された複合カラー映像信号から、輝度信号と色信号を分離するYC分離手段と
を備えたことを特徴とする映像信号処理回路。
【請求項2】
上記位相検出手段は、上記複合カラー映像信号のそれぞれのラインのバースト位相を検出し、そのラインの色副搬送波の位相情報として出力することを特徴とする請求項1記載の映像信号処理回路。
【請求項3】
色副搬送波基準信号に基づき、上記YC分離手段により分離された色信号を色差信号に色復調する色復調手段さらに備え、
上記位相検出手段は、上記複合カラー映像信号のそれぞれのラインのバースト位相を検出し、そのラインの色副搬送波の位相情報として出力するとともに、検出したバースト位相に基づき、上記色副搬送波基準信号を生成する
ことを特徴とする請求項1記載の映像信号処理回路。
【請求項4】
上記所定の基準位相は、あらかじめ決められた固定の位相値と注目ラインの上記位相情報とに基づいて定められた注目ラインの基準位相であり、
上記位相差算出手段は、上記注目ラインから所定のライン数またはフィールド数離れた特定ラインの上記位相情報と上記注目ラインの基準位相との位相差を求める
ことを特徴とする請求項1記載の映像信号処理回路。
【請求項5】
上記位相差算出手段は、
上記位相検出手段からの位相情報を所定のライン数またはフィールド数遅延する遅延手段と、
上記特定ラインの位相情報と上記注目ラインの位相情報を含む上記注目ラインの基準位相との位相差を位相誤差として求める位相誤差算出手段と、
上記位相誤差を、上記クロック発生手段クロックの1周期を基準とする値に換算した位相補正量に変換する補正量変換手段と
を有することを特徴とする請求項4記載の映像信号処理回路。
【請求項6】
上記所定の基準位相は、上記複合カラー映像信号のライン位置に応じてあらかじめ決められた固定の位相値からなる固定の基準位相であり、
上記位相差算出手段は、上記位相情報と上記固定の基準位相との位相差を求める
ことを特徴とする請求項1記載の映像信号処理回路。
【請求項7】
上記位相差算出手段は、
上記位相検出手段からの位相情報を所定のライン数またはフィールド数遅延する遅延手段と、
注目ラインの位相情報と上記固定の基準位相との位相差、および上記注目ラインから上記所定のライン数またはフィールド数離れた特定ラインの位相情報と上記固定の基準位相との位相差を、それぞれ位相誤差として求める位相誤差算出手段と、
上記位相誤差を、上記クロックの1周期を基準とする値に換算した位相補正量に変換する補正量変換手段と有する
ことを特徴とする請求項6記載の映像信号処理回路。
【請求項8】
上記位相差算出手段は、
上記位相検出手段からの位相情報と上記固定の基準位相との位相差を位相誤差として求める位相誤差算出手段と、
上記位相誤差を、上記クロックの1周期を基準とする値に換算した位相補正量に変換する補正量変換手段とを有する
ことを特徴とする請求項6記載の映像信号処理回路。
【請求項9】
上記サンプリング位相変換手段は、
上記複合カラー映像信号を所定のライン数またはフィールド数遅延する遅延手段と、
上記位相差算出手段からの出力に基づき、注目ラインから所定のライン数またはフィールド数離れた特定ラインの複合カラー映像信号、または上記注目ラインおよび上記特定ラインの複合カラー映像信号のサンプリング位相を補正する位相補正手段と
を有する
ことを特徴とする請求項1記載の映像信号処理回路。
【請求項10】
上記位相補正手段は、
上記位相差算出手段からの出力に対応する群遅延を持つフィルタの係数を発生する係数発生手段と、
上記複合カラー映像信号に対し、上記係数によるフィルタ処理を行うフィルタ手段と
を有する
ことを特徴とする請求項9記載の映像信号処理回路。
【請求項11】
上記位相補正手段は、
上記複合カラー映像信号に対し、所定の遅延を与える遅延手段を複数個備え、
上記位相差算出手段からの出力に応じて、上記複数個の遅延手段からの出力を選択する手段を備えた
ことを特徴とする請求項9記載の映像信号処理回路。
【請求項12】
上記位相補正手段は、
上記複合カラー映像信号のサンプリングの位置から、上記位相差算出手段からの出力に対応する位相差分ずれた位置に相当する点の値を求めるための補間フィルタの係数を発生する係数発生手段と、
上記複合カラー映像信号に対し、上記係数によるフィルタ処理を行うフィルタ手段と
を有する
ことを特徴とする請求項9記載の映像信号処理回路。
【請求項13】
入力されるアナログ複合カラー映像信号をデジタル複合カラー映像信号に変換するA/D変換手段をさらに有し、
上記サンプリング位相変換手段は、
上記位相差算出手段からの出力に基づき、上記クロック発生手段からのクロックの位相を補正するクロック位相補正手段と、
上記デジタル化された複合カラー映像信号を所定のライン数またはフィールド数遅延する遅延手段とを有し、
上記A/D変換手段は、上記複合カラー映像信号を上記クロック位相補正手段により位相が補正されたクロックによりデジタル信号に変換する
ことを特徴とする請求項1記載の映像信号処理回路。
【請求項14】
上記YC分離手段は、上記サンプリング位相変換手段からの出力である複合カラー映像信号を用いて、複数のラインにおける複合カラー映像信号からラインくし形フィルタまたはフレームくし形フィルタで輝度信号と色信号を分離することを特徴とする請求項1記載の映像信号処理回路。
【請求項15】
上記クロック発生手段は、上記複合カラー映像信号の放送方式にかかわらず、周波数が13.5[MHz]の整数倍のクロックを発生し、複合カラー映像信号を処理することを特徴とする請求項1記載の映像信号処理回路。
【請求項16】
上記クロック発生手段は、複合カラー映像信号のバースト信号に位相同期するバーストロッククロックを発生し、複合カラー映像信号を処理することを特徴とする請求項1記載の映像信号処理回路。
【請求項17】
上記クロック発生手段は、複合カラー映像信号の水平同期信号に位相同期するラインロッククロックを発生し、複合カラー映像信号を処理することを特徴とする請求項1記載の映像信号処理回路。
【請求項18】
複合カラー映像信号の放送方式を設定する放送方式設定手段をさらに備え、
上記位相検出手段は、上記放送方式設定手段により設定された放送方式に応じて、色副搬送波の位相を検出し、
上記位相差算出手段は、上記設定された放送方式に応じて上記位相差を求め、
上記YC分離手段は、上記設定された放送方式に応じて、複合カラー映像信号から輝度信号と色信号を分離する
ことを特徴とする請求項1に記載の映像信号処理回路。
【請求項19】
請求項1に記載の映像信号処理回路を備えることを特徴とする映像信号表示装置。
【請求項20】
請求項1に記載の映像信号処理回路を備えることを特徴とする映像信号記録装置。

【国際公開番号】WO2005/022928
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【発行日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513443(P2005−513443)
【国際出願番号】PCT/JP2004/012178
【国際出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】