説明

映像信号処理装置

【課題】色ずれ等の残光による影響を抑制するとともに、ディスプレイの表示領域において色目の境界の発生を抑制することのできる映像信号処理装置を提供すること。
【解決手段】映像信号処理装置100であって、処理対象のフレームのブロック毎の動きベクトルを検出する動きベクトル検出部103と、複数のブロックを含む部分領域毎に、当該部分領域の複数の動きベクトルの乱雑度を算出する乱雑度算出部102と、部分領域毎に、第一領域であるか、第一領域よりも乱雑度の大きな第二領域であるかを判定する判定部108と、先行フレームの残光の影響を抑制するように映像信号を補正して出力する信号補正部110とを備え、信号補正部110は、第一領域の画素またはブロックごとの動きベクトルを用いて第一領域の映像信号を補正して出力し、動きベクトルを用いずに先行フレームの映像信号に示される発光量を用いて第二領域の映像信号を補正して出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに特性の異なる複数の蛍光体を用いて画像を表示するディスプレイに映像信号を出力する映像信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、互いに特性の異なる複数の蛍光体を用いて画像を表示するディスプレイの一種であるプラズマディスプレイパネル(以下「PDP」と称する)における中間調表示は、1フィールドを輝度の重み付けを変えた複数のサブフィールドに分割表示することにより実現される。
【0003】
PDPの画像の表示は3色(青、緑、赤)の蛍光体を発光させることで実現されるが、蛍光体は色毎に特性が異なり、その結果、発光する立ち上がりタイミング、発光が消える立ち下りタイミングが異なる。
【0004】
特に、青色は緑や赤色と比較すると発光の立ち上がり、立ち下りタイミングは早く、これらの特性の差は、動きがある映像において色ずれや残光ぼけとして知覚される。
【0005】
これらの問題を解決する手段として、現フレームの1つ前のフレームである先行フレームの発光量から現フレームに漏れ込む量を算出して現フレームの発光量から減算する方法が特許文献1に示されている。
【0006】
また、現フレームの動き量に基づいて残光量を近似補正する方法が特許文献2に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−255863号公報
【特許文献2】特許第4079138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に示される方法は、先行フレームから現フレーム対して漏れ込む残光量を算出し、算出した残光量を現フレームの映像信号から差し引くことによって、上記の色ずれ等の残光による影響を抑制しようというものである。しかしながら、この方法では動きがある場合には残光による影響を十分には抑制できない。
【0009】
この理由を図11により簡便に示す。図11(a)は発光800が右方向に動いている図であり、上段の1/60秒の経過後に発光800が右方向に移動した様子を示している。
【0010】
ここで、発光800が移動した場合、蛍光体特性の違いによる残光801及び残光802が発生する。
【0011】
残光802は次フレームに洩れ込んでいる量を示しており、図中、破線の矢印は移動する発光800を人の視線が追従して見る状態を示している。
【0012】
発光800の後方に残光が見えるのは前フレームの残光を積分して見ていることによって生じる。
【0013】
図11(b)は、特許文献1にあるように次フレームに漏れ込む残光802を取り除いた状態を示している。
【0014】
しかしながら、動きがあるものを見る場合は、先行フレームの残光が無くなっているわけではないので、やはり先行フレームの残光801を積分して見ることにより、発光800の後方に残光が知覚されることになる。このように特許文献1による方法では動きがあるものに対しての残光抑制には有効ではないことがわかる。
【0015】
特許文献2は、現フレームで知覚される残光量を、現フレームから求められる動き量に基づいて擬似的に近似して、近似した残光量を用いて補正することにより残光による影響を抑制しようというものである。
【0016】
この方法は動きベクトルや動き領域の検出精度によって補正精度が決定され、動きのある箇所に対して補正をおこなうものである。しかしながら、一般に100%正確に動きの領域を求めることは難しく、誤検出した場合、残光に対して誤った補正をしてしまう可能性がある。
【0017】
また、正しく動きを検出したとしても、人の視線が必ずしも動き方向に追従するとは限らず、視線追従が行われない場合、残光補正によりかえって、赤っぽく見えるまたは青っぽく見えるなど、色目がおかしくなる可能性がある。
【0018】
一方、補正精度が動きの検出精度に影響を受けるため、動きベクトルの大きさに示される速さ、または、当該動きベクトルの信頼度という尺度によって補正を抑制し、ベクトルの誤検出による副作用を回避しようという方法がある。
【0019】
しかしながら、これには次のような課題がある。画面内に動きベクトルが正しく求めることができた領域と正しく求めることができなかった領域が存在する場合、正しく求めることができた領域は残光補正が正しく行われ、できなかったと判断された領域は残光補正が抑制されることにより、画面全体の色目が異なって見えるという弊害を生む。
【0020】
また、動きがある領域に対して補正を行なうため、動きがある箇所と動きがない箇所においても、同様に画面全体の色目が異なって見えるという弊害を生む。
【0021】
本発明は、上記従来の課題を考慮し、互いに特性の異なる複数の蛍光体を用いて画像を表示するディスプレイに映像信号を出力する映像信号処理装置であって、色ずれ等の残光による影響を抑制するとともに、ディスプレイの表示領域において色目の境界の発生を抑制することのできる映像信号処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するために、本発明に係る映像信号処理装置は、互いに特性の異なる複数の蛍光体を用いて画像を表示するディスプレイに動画像を表示させるための映像信号を出力する映像信号処理装置であって、前記動画像を構成するフレームであって処理対象のフレームのブロック毎の動きベクトルを検出する動きベクトル検出部と、前記処理対象のフレームの、複数のブロックを含む部分領域毎に、当該部分領域の複数の動きベクトルの乱雑度を算出する乱雑度算出部と、前記乱雑度算出部による算出結果に基づいて、前記部分領域毎に、第一領域であるか、前記第一領域よりも乱雑度の大きな第二領域であるかを判定する判定部と、前記判定部による判定結果に応じて、前記処理対象のフレームの1つ前のフレームである先行フレームの残光の影響を抑制するように、前記処理対象のフレームの映像信号を補正して出力する信号補正部とを備え、前記信号補正部は、前記第一領域に含まれる画素またはブロックごとの動きベクトルを用いて前記第一領域の映像信号を補正して出力し、前記動きベクトルを用いずに前記先行フレームの映像信号に示される発光量を用いて前記第二領域の映像信号を補正して出力する。
【0023】
この構成により、本発明に係る映像信号処理装置は、処理対象のフレームについて、部分領域ごとに乱雑度を算出し、算出した乱雑度の大きさに応じて、領域ごとに、動きベクトルを用いる補正と、動きベクトルを用いない補正とを適応的に切り替えることができる。
【0024】
その結果、当該ディスプレイの表示領域の全体において、色ずれ等の残光の影響を抑制しつつ、色目の境界の発生を抑制することができる。
【0025】
また、前記信号補正部は、前記処理対象のフレームの映像信号と、前記処理対象のフレームに含まれる画素またはブロックごとの動きベクトルとを用いて、前記先行フレームの、前記処理対象のフレームに対する推定残光量を求め、前記処理対象のフレームの映像信号から前記推定残光量を減算または加算することで、前記処理対象のフレームの映像信号を補正する第一信号処理部と、前記先行フレームの映像信号の発光量から算出される、前記処理対象のフレームへ漏れ込む残光量を求め、前記処理対象のフレームの映像信号から前記残光量を減算または加算することで、前記処理対象のフレームの映像信号を補正する第二信号処理部と、前記判定部により前記第一領域であると判定された部分領域については、前記第一信号処理部から得られる補正後の映像信号を選択し、前記判定部により前記第二領域であると判定された部分領域については、前記第二信号処理部から得られる補正後の映像信号を選択し、選択した映像信号を出力する選択部とを有するとしてもよい。
【0026】
この構成により、例えば、動きベクトルの検出および乱雑度の算出を行っている間に、映像信号の補正処理を行うことができるため、映像信号の補正にかかる処理全体を効率よく行うことができる。
【0027】
また、前記乱雑度算出部は、前記部分領域毎に、当該部分領域に含まれるブロックごとの複数の動きベクトルの分散値を算出し、算出した分散値が大きいほど、大きな乱雑度を算出するとしてもよい。
【0028】
このように、乱雑度は、部分領域に含まれるブロックごとの複数の動きベクトルの分散値という定量的に求められる値に基づくため、乱雑度の大小を正確に判別することが可能となる。
【0029】
また、前記判定部は、前記乱雑度算出部により算出された部分領域毎の乱雑度と所定の閾値とを比較し、乱雑度が、前記乱雑度についての閾値より大きな部分領域を第二領域であると判定し、乱雑度が、前記乱雑度についての閾値以下である部分領域を第一領域であると判定するとしてもよい。
【0030】
また、前記乱雑度算出部は、前記部分領域毎に、当該部分領域に含まれる複数のブロックそれぞれの動きベクトルが得られた際のそれぞれの絶対値差分和の総和を算出し、前記総和が、前記総和についての閾値よりも大きな場合、前記乱雑度についての閾値から所定の値を減算するとしてもよい。
【0031】
また、前記乱雑度算出部は、前記部分領域毎に、当該部分領域に含まれる複数のブロックそれぞれの動きベクトルが得られた際のそれぞれの絶対値差分和の総和を算出し、前記総和が大きいほど、前記乱雑度についての閾値を小さくするとしてもよい。
【0032】
このように、絶対値差分和の総和が大きい場合、言い換えると、動きベクトルの信頼度が低い場合に、乱雑度についての閾値が小さくなるように当該閾値を変動させてもよい。これにより、判定対象の部分領域が第二領域であると判定され易くなり、その結果、信頼度の低い動きベクトルによる残光補正が抑制される方向に調整される。
【0033】
なお、本発明は、映像信号処理装置として実現できるだけではなく、当該映像信号処理装置とディスプレイとを備えるテレビとして実現することもできる。
【0034】
また、本発明は、本発明の映像信号処理装置の各構成要素による各処理を含む映像信号処理方法として実現することもできる。
【0035】
また、本発明は、本発明の映像信号処理方法に含まれる各処理をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現することもできる。
【0036】
また、そのプログラムをDVD(Digital Versatile Disc)等の記録媒体やインターネット等の伝送媒体を介して広く流通させることもできる。
【0037】
また、本発明の映像信号処理装置を構成する構成要素の一部又は全部は、1個のシステムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)から構成されていてもよい。システムLSIは、複数の構成部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)などを含んで構成されるコンピュータシステムである。
【発明の効果】
【0038】
本発明によると、PDP等の、互いに特性の異なる複数の蛍光体を用いて画像を表示するディスプレイに画像を表示させる際に、色ずれ等の残光による影響を抑制するとともに、ディスプレイの表示領域において色目の境界の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態に係る映像信号処理装置の主要な機能構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る映像信号処理装置の基本的な処理の流れを示すフロー図である。
【図3】蛍光体の発光特性と時間との関係を説明するための図である。
【図4】動きがある発光の後方に尾引きのような残光が見える状態を示す概念図である。
【図5】動きがある発光の後方に残光が知覚される原理を説明するための図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る乱雑度算出部の処理を説明するための図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る第一信号処理部が注目ブロックの動き量を求める手順を説明するための図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る第一信号処理部による映像信号へのフィルタ処理を説明するための説明図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る映像信号処理装置を備えるテレビの外観および主要な構成を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る映像信号処理装置における集積回路化の一例を示す図である。
【図11】従来技術では残光が抑制できない状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下に、図面を参照しながら、本発明に係る画像処理装置の実施の形態について説明する。
【0041】
図1は、本発明の実施の形態に係る映像信号処理装置100の主要な機能構成を示すブロック図である。
【0042】
映像信号処理装置100は、例えば、PDP等の、互いに特性の異なる複数の蛍光体を用いて画像を表示するディスプレイを備えるテレビに内蔵され、当該ディスプレイに動画像を表示させるための映像信号を出力する装置である。
【0043】
映像信号処理装置100は、メモリ101、乱雑度算出部102、動きベクトル検出部103、メモリ106、判定部108、および信号補正部110を備える。信号補正部110は、第一信号処理部104、第二信号処理部105、および信号選択部107を有する。
【0044】
第一信号処理部104および第二信号処理部105には同じ映像信号が入力される。動きベクトル検出部103にはメモリ101においてフレーム遅延した映像信号と、フレーム遅延しない映像信号とが入力される。
【0045】
動きベクトル検出部103は、複数の画素からなるブロック単位によるブロックマッチングによって、ブロックごとの動きベクトルを検出する。なお、動きベクトル検出部103は、必要に応じて1画素単位でマッチング処理をすることで動きベクトルを求めてもよい。
【0046】
乱雑度算出部102には、動きベクトル検出部103で検出された動きベクトル、検出時に使用した絶対値差分和(SAD:Sum of Absolute Difference)が入力される。乱雑度算出部102は、入力された情報から、複数のブロックを含む部分領域における動きベクトルの分散度や信頼度を求め、部分領域ごとの動きベクトルの乱雑度を算出する。
【0047】
第二信号処理部105には、処理対象である現フレームの1つ前のフレーム(以下、「先行フレーム」という。)の映像信号と、現フレームの映像信号が入力される。第二信号処理部105は、先行フレームの信号レベルに応じて、現フレームの映像信号から色毎の信号レベルを加算あるいは減算することで現フレームの映像信号を補正する。
【0048】
第一信号処理部104には、現フレームの映像信号に加え、動きベクトル検出部103によって検出された動きベクトルとSAD値とが与えられる。第一信号処理部104は、動きベクトル情報に基づいて現フレームの映像信号から色毎の信号レベルを加算あるいは減算することで現フレームの映像信号を補正する。
【0049】
信号選択部107では、乱雑度算出部102からの結果に基づき、動きベクトルの乱雑度が大きい場合は第二信号処理部105を選択し、乱雑度が小さい場合は第一信号処理部104を選択する。
【0050】
具体的には、判定部108が、複数のブロックを含む部分領域毎に、第一領域であるか、前記第一領域よりも乱雑度の大きな第二領域であるかを判定する。この判定は、例えば、乱雑度算出部102から得られる部分領域ごとの乱雑度と所定の閾値とを比較することで行なわれる。
【0051】
信号選択部107は、第一領域であると判定された部分領域については、第一信号処理部104より補正された映像信号を選択する。また、第二領域であると判定された部分領域については、第二信号処理部105より補正された映像信号を選択する。信号選択部107はさらに、選択した映像信号を出力する。
【0052】
図2は、映像信号処理装置100の基本的な処理の流れを示すフロー図である。
図2を用いて、映像信号処理装置100の基本的な処理の流れを説明する。
【0053】
まず、動きベクトル検出部103は、処理対象のフレームのブロックごとの動きベクトルを算出する(S10)。
【0054】
乱雑度算出部102は、動きベクトル検出部103から得られるブロックごとの動きベクトルから複数のブロックを含む部分領域ごとの動きベクトルの乱雑度を算出する(S20)。
【0055】
判定部108は、乱雑度算出部102から得られる部分領域ごとの乱雑度から、部分領域ごとに、第一領域であるか、第一領域より乱雑度の大きな第二領域であるかを判定する(S30)。
【0056】
信号補正部110は、判定部108による判定結果に従い、処理対象のフレームの映像信号を補正して出力する(S40)。
【0057】
具体的には、第一領域の映像信号については、先行フレームの映像信号に示される発光信号量と、当該第一領域のブロックごとの動きベクトルとが用いられて補正される。
【0058】
また、第二領域の映像信号については、動きベクトルは用いられず、先行フレームの映像信号に示される発光信号量が用いられて補正される。
【0059】
このように、実施の形態の映像信号処理装置100は、処理対象のフレームについて、部分領域ごとに乱雑度を算出し、算出した乱雑度の大きさに応じて、動きベクトルを用いる補正方法と、動きベクトルを用いない補正方法とを適応的に切り替える。さらに補正後の映像信号をディスプレイに出力する。これにより、色ずれ等の残光による影響を抑制し、かつ、当該ディスプレイの表示領域において色目の境界の発生を抑制することができる。
【0060】
なお、映像信号処理装置100による、動きベクトルの検出、乱雑度の算出、および、映像信号の補正処理を含む一連の処理は、CPU(Central Processing Unit)、記憶媒体、情報の入出力のためのインタフェース等で構成されるコンピュータ、および上記各処理を当該コンピュータに実行させるためのプログラムにより実現することもできる。
【0061】
次に、人が残光を知覚する原理について簡単に説明する。
図3は、蛍光体の発光特性と時間との関係を説明するための図である。
【0062】
図3では、縦軸に放電パルスにより発光する蛍光体の輝度を、横軸に時間(秒)を示している。図3に示すように、1/60秒の期間内で蛍光体を発光させると、次の1/60秒にまたがって発光輝度は減衰していく。減衰する割合(減衰速度)は、蛍光体の材料に依存するもので、緑、赤、青の各色によって異なる。
【0063】
このように発光輝度が減衰していく過程を人が知覚することにより、次フレームにおいて色付いて見えたり、色合いが異なって見えたりする。
【0064】
映像が静止している場合は、残光は次フレーム以降の発光に加算された状態であり、位置が移動しないために知覚されにくい。しかし、次フレームの発光に先行フレームの残光が漏れ込むと、全体的には残光分だけ信号が底上げされる。そのため映像の色合いが異なって見えたりすることがある。
【0065】
図4は、動きがある発光の後方に尾引きのような残光が見える状態を示す概念図である。
【0066】
図4に示すように、矩形図形400が右から左に動いておりその後方に残光401が知覚される。このように映像に動きがある場合は、動きの後方に顕著に尾引きのようになって残光が知覚される。これは人が動きのあるものを見る場合、視線が動きに追従し次フレームに漏れ込んだ残光を、図5における斜め方向に積分して見るためである。
【0067】
図5は、動きがある発光の後方に残光が知覚される原理を説明する説明図である。
図5は、図4で示した矩形図形400が右から左に移動している場合の発光と時間との関係を示している。図5では、図面下方向に時間軸をとり、左方向に発光位置が移動する場合を示している。また、最初の1/60秒の開始時点での発光を発光500、次フレームの時間(2/60秒)での発光を発光501、発光500の次フレームに漏れこむ残光を残光502で示している。
【0068】
上述のように、人には動きがあるものを視線で追いかけて見るという習性があり、図5に示す状態の場合、発光500から発光501を追いかけて見ることになる。
【0069】
残光502についても同様なことがいえ、人は視線の移動に伴って次フレームに漏れこんだ残光502を図5における斜め方向に積分して知覚する。このように残光が動きの後方に尾引いて知覚されるのは、残光を視線方向503で追いかけるためであり、発光に近い位置はより多く残光が積分され、距離が離れるに従って積分量が少なくなる。つまり人は発光504と残光505のように知覚することになる。
【0070】
また、上述のように蛍光体の発光輝度の減衰速度は、蛍光体の材料に依存するものであり、緑、赤、青の各色によって異なる。
【0071】
このように、蛍光体の発光特性の違いと、人の視線方向の関係により残光がどう見えるかが決定される。
【0072】
本願発明の特徴は、人の視線がどう動きに追従しどう残光を知覚するかを乱雑度というパラメータで示し、人の視線が動きに追従しやすい領域については動きベクトルを用いて視線の追従方向を決定しそれに基づいて残光を補正し、ほぼ動きがない領域、視線移動が行われない領域、または、視線が追従し難い領域については、動きベクトルを用いずに先行フレームの発光量に基づいて残光を補正する点にある。
【0073】
ここで乱雑度とは、複数のブロックが含まれる部分領域における、動きベクトルの方向、大きさ、その分散度合い及びSAD値から求められる値である。具体的には、様々な方向に様々な大きさの動きベクトルがあればあるほど、またSAD値が大きく検出した動きベクトルの精度が悪いと判断されればされるほど、乱雑度は大きなものとして扱われる。すなわち、乱雑度は、動きベクトルの分布度合いを示す指標である。
【0074】
乱雑度が小さい場合は、動きベクトルに一定の類似の分布があり、動きベクトルの精度もそれなりに高いと判断できる。この場合、映像信号処理装置100は、人が動きを目で追いやすい場合と判断し、動きベクトルを用いて残光補正をおこなう。
【0075】
逆に、乱雑度が大きい場合には、複雑な動きがあり、人が動きを目で追いかけにくい場合、または、ほぼ静止していると判断できる。この場合、映像信号処理装置100は、先行フレームでの発光レベルに従って残光を補正する。
【0076】
以下、乱雑度の算出について具体的に説明する。
映像信号処理装置100に映像信号が入力されると、メモリ101に1フレーム以上の映像信号がバッファリングされる。動きベクトル検出部103では現フレームとバッファリングされた先行フレームとの差分を検出することにより動きベクトルを検出する。
【0077】
動きベクトル検出にはブロックマッチング法が用いられ、マッチング毎の絶対値差分和(SAD)が最小になるような箇所を探索することにより求められる。もちろん、動きベクトル検出の手法はブロックマッチング法に限定されるものではなく、動きベクトルが求められる手法であればどのような手法でもよい。
【0078】
乱雑度算出部102は、動きベクトル検出部103によって求められ動きベクトルと、当該動きベクトルで先行フレームと現フレームとの位置関係を一致させた時のSAD値(言い換えると、当該動きベクトルが求められた際のSAD値)に基づいて乱雑度を算出する。
【0079】
図6は、乱雑度算出部102の処理を説明するための図である。
具体的には、図6では、処理対象のフレーム内の1つの注目ブロック301とその周囲のブロックである縦5ブロック、横5ブロックからなる、当該フレームの一部である部分領域の例が示されている。
【0080】
乱雑度算出部102は、これら各ブロックの動きベクトルとSAD値とを保存できる数ライン分のラインバッファを備えている。これにより、図6で示す注目ブロック301だけでなく周囲の各ブロックの動きベクトルおよびSAD値を参照することができる。
【0081】
乱雑度算出部102では、まずこの5×5ブロック領域の動きベクトルのx成分、y成分毎の分散値を求める。判定部108は、乱雑度算出部102から得られるx成分の分散値およびy成分の分散値がともに閾値a以上であれば分散が大きいと判断する。つまり、当該部分領域が第二領域であると判定する。
【0082】
なお、閾値aは、所定の値に固定されていてもよく、動的に変更されてもよい。
例えば、乱雑度算出部102は、この5×5の領域内の複数のブロックそれぞれの動きベクトルが得られた際のそれぞれのSAD値の総和を求め、判定部108は、その総和が閾値bより大きければ、当該閾値aからαを減算する。
【0083】
これは、SAD値が大きいブロックの動きベクトルは間違えている可能性が高いと考えられるからである。そこで、判定部108は、部分領域に含まれる複数のブロックそれぞれのSAD値の総和が閾値bより大きな場合、動きベクトルの分散が大きい(乱雑度が大きい)と判断するための閾値aを下げる。
【0084】
または、判定部108は、当該SAD値の総和が大きいほど、閾値aを小さくする。
このように、SAD値の総和が大きい場合、言い換えると、動きベクトルの信頼度が低い場合に、閾値aが小さくなるように閾値aを変動させる。これにより、判定対象の部分領域が第二領域であると判定され易くなり、結果として、信頼度の低い動きベクトルによる残光補正が抑制される方向に調整される。
【0085】
もちろん、この調整処理は、当該SAD値の総和が大きな場合、閾値aを固定したまま、乱雑度を所定の値だけ増加させるまたは所定の割合で大きくするなどの等価な処理によっても実現される。
【0086】
また、乱雑度算出部102は、映像のエッジ情報、動きベクトルの分布、およびSAD値などから、算出対象の部分領域がテロップを表示するブロックを含む領域(テロップ領域)であると判断した場合、その旨を判定部108に通知する。判定部108は、その通知を受け取ると、当該部分領域は、乱雑度が小さいと判断する。つまり、当該部分領域が第一領域であると判定する。このようにして、動きベクトルが用いられる残光補正を優先する処理が行われてもよい。
【0087】
なお、算出対象の部分領域がテロップ領域であるか否かの判断は、判定部108が当該判断に必要な情報を乱雑度算出部102から受け取って行ってもよい。
【0088】
また、算出対象の部分領域がテロップ領域であると判断する条件としては、例えば、当該部分領域内に映像のエッジがあり、そのエッジ部分の動きベクトルの分布が、水平あるいは垂直方向成分のみのベクトル成分を持ち、かつ、閾値c以上のSAD値がある、という条件が例示される。
【0089】
また、本実施の形態では乱雑度算出部102で判定する部分領域を5×5ブロックとしたが、この部分領域のサイズは2ブロック以上であればよく5×5ブロックに限定されるものではない。
【0090】
また、乱雑度算出部102は、乱雑度を算出するにあたり、複数の動きベクトルのx成分およびy成分の分散値を計算したが、他の手法で乱雑度を算出してもよい。例えば、5×5ブロックにおける動きベクトルのヒストグラムを求め、一定の範囲に含まれる動きベクトルの個数を、分散を示す数値として扱ってもよい。この場合、判定部108は、一定範囲内に含まれる動きベクトルの個数が大きければ大きいほど分散が小さい、つまり、乱雑度が小さいと判断する。
【0091】
信号選択部107は、判定部108により、乱雑度が大きいことから当該部分領域が第二領域であると判定されると、第二信号処理部105の処理結果を選択し、逆に乱雑度が小さいことから当該部分領域が第一領域であると判定されると、第一信号処理部104の処理結果を選択する。信号選択部107はさらに、選択した処理結果(補正後の映像信号)を出力する。
【0092】
メモリ106には、残光補正の対象である映像信号が、動きベクトル検出部103及び乱雑度算出部102の処理時間だけ遅延させる目的で保持される。これにより、メモリ106は、次フレームで減算または加算する残光量を計算するための1フレーム分の映像信号データを保持する役割も果たす。
【0093】
なお、メモリ101とメモリ106とは共用可能であり、メモリアクセスの競合がない限り共用にしても問題はない。またメモリ106に保持される1フレーム分の映像信号は、次フレームで差し引く色信号の差分量がわかればいいのだから、あらかじめ発光量から計算される残光量のみを保持しておいてもよい。
【0094】
第二信号処理部105は、先行フレームの映像信号の発光量から算出される、処理対象である現フレームへ漏れ込む残光量を求め、現フレームの映像信号から残光量を減算する。
【0095】
蛍光体は図3で示したような発光特性を有しており、先行フレームにおける発光量に応じて現フレームに残光する量は決定できる。例えば、発光量と、その発光量により近似される残光量(推定残光量)とを色毎に対応付けたテーブルデータを第二信号処理部105が所定の記憶領域に保持しておく。これにより、第二信号処理部105は、先行フレームの発光量に応じた、現フレームから差し引くべき残光量を求めることができる。
【0096】
一般に、残光は緑(G)、赤(R)、青(B)の順に大きく、青が次フレームに残光するレベルは問題にならない。そのため残光量が大きい緑、赤の信号を、次フレームの発光から減算する。
【0097】
次フレームにおいて減算するだけの発光量がない場合、残光は残ることになる。ただしこの場合、次フレームに青を加算し無彩色化することにより残光による色づきを軽減してもよい。
【0098】
第一信号処理部104は、現フレームの映像信号と、動きベクトル検出部103によって算出した動きベクトルとによって先行フレームからの推定残光量を求め、現フレームの映像信号から当該推定残光量を加算あるいは減算する。
【0099】
第一信号処理部104では、注目ブロックの動きベクトルに基づいてフィルタ演算を行う。例えば、映像が右から左にスクロールしていると仮定し、その動きの大きさと方向に応じてフィルタ処理して推定残光量を求める。
【0100】
図7を用いてこの処理の過程を具体的に説明する。
画素601の動きベクトルから映像の動き方向が右から左であると判断した場合、第一信号処理部104は、左から右の方向に、画素ごとに、(式1)に示すLPF(Low Pass Filter)を連続的に適用する。
【0101】
P´(x,y)=α×P(x,y)+(1−α)×P(x−1,y) (式1)
【0102】
αは動きベクトルの大きさによって変化するパラメータであり、0<α≦1の値をとる。また、第一信号処理部104は、検出された動きベクトルが大きければ大きいほどαの値が小さくなるように調整する。
【0103】
なお、動きベクトルがブロック単位で求められた場合は、第一信号処理部104は、複数の動きベクトルを用いた補間処理により画素単位の動きベクトルを生成する。また、ブロック境界を挟んで動きベクトルが大きく異ならないように、これら動きベクトルは平滑化される。
【0104】
また、動きベクトルがブロック単位で求められた場合、補正対象の画素を含むブロックの動きベクトルそのものを、補正対象の画素の動きベクトルとして採用してもよい。
【0105】
第一信号処理部104は、事前に作成された、動きベクトルの大きさとαとが対応付けられたテーブルを参照し、検出または生成された動きベクトルに応じてαの値を決定する。なお、動きベクトルの大きさとαの値との対応関係は、蛍光体の色毎に独立に定義される。
【0106】
また、(式1)において、P(x,y)は、補正対象の画素である注目画素の信号レベルであり、図7の例の場合、画素601の信号レベルに該当する。P(x−1,y)は、注目画素の、動きの方向に隣接する画素の信号レベルであり、図7の例の場合、注目画素の左隣の画素602の信号レベルに該当する。
【0107】
なお、映像の動きの方向が左から右の動きと判断された場合は、隣接する画素の信号レベルはP(x+1,y)となる。また、映像の動きの方向が、右上から右下と判断された場合は、隣接する画素の信号レベルはP(x+1,y+1)となる。このように、映像の動きの方向に応じて(式1)の隣接する画素の位置は変化する。
【0108】
図8は、映像信号とLPF処理した信号、及び差分信号のそれぞれの例を示す図である。
【0109】
LPF処理前の映像信号701に対して、(式1)のLPF処理をかけた結果であるP´(x,y)が映像信号702である。また、映像信号701から映像信号702を差し引いたものが差分信号703である。
【0110】
差分信号703は、動きがある場合に見える残光のレベルを近似したものとして扱われる。具体的には、図8では映像信号701の立ち上がりと立ち下がりに対して差分信号703が生じており、これは蛍光体の立ち上がり、立ち下がりの応答を近似するものである。
【0111】
残光の補正では、各色の差分信号703に従った補正量が元信号に対して与えられる。例えば、図8に示す差分信号703は、立ち上がりに不足する量を示しており、この量を補正するように入力画素値にオフセットを与える。
【0112】
例えば、立ち上がり時には、応答が速い青に対して緑および赤は遅れるため、不足する量をオフセットとして余計に発光させて補正する。
【0113】
ただし、補正できる量はパネルの表示できる量で限界となるため、それを越えた場合は、超えた分だけ青を差し引いて弱めに発光して無彩色化して調整する。同様に、立ち下がり時には、緑、赤は青に対して残光するため、余分に残光する量をオフセットとして差し引いて発光することにより補正する。
【0114】
この場合も、表示できる値を越えた場合は、青を加算することにより無彩色化して色づきを抑制する。
【0115】
このように、実施の形態の映像信号処理装置100は、処理対象のフレームについて、部分領域ごとに乱雑度を算出し、算出した乱雑度の大きさに応じて、動きベクトルを用いる補正方法と、動きベクトルを用いない補正方法とを適応的に切り替えることができる。
【0116】
具体的には、映像信号処理装置100は、処理対象のフレームの部分領域ごとに、人の視線が追従し易い領域か、追従し難いまたは視線移動の必要のない領域であるかを判断する。さらに、人の視線が追従し易い領域については、当該領域に含まれる画素またはブロックごとの動きベクトルを用いて映像信号を補正する。
【0117】
また、人の視線が追従し難いまたは視線移動の必要のない領域については、動きベクトルを用いずに、先行フレームからの残光量を用いて映像信号を補正する。
【0118】
さらに、このように補正された映像信号はディスプレイに出力される。つまり、実施の形態の映像信号処理装置100は、表示された画像を、人がどのように見るかを基準に、部分領域ごとに適切な補正方法を選択し、補正後の映像信号を出力する。
【0119】
これにより、当該ディスプレイの表示領域の全体において、色ずれ等の残光の影響を抑制しつつ、色目の境界の発生を抑制することができる。
【0120】
なお、本実施の形態では、LPFとして(式1)を適用したが、減衰していくような信号を近似できるフィルタであればよく、このフィルタに限定するものではない。
【0121】
また、注目ブロックの1フレーム前の動きベクトルを周囲の動きベクトルの分布から算出したが、1フレーム前の動きベクトルをメモリに保持しておき、それを使用するとより正確な1フレーム前の動きベクトルを使用することができる。
【0122】
また、実施の形態における信号補正部110は、第一信号処理部104および第二信号処理部105の後段に信号選択部107を備えている(図1参照)。
【0123】
しかしながら、第一信号処理部104および第二信号処理部105の前段に信号選択部107が備えられていてもよい。
【0124】
この場合、信号選択部107は、判定部108から処理対象の部分領域が第一領域であるか第二領域であるかを示す判定結果を受け取る。当該判定結果が、処理対象の部分領域が第一領域であることを示す場合、信号選択部107は、当該部分領域の映像信号をメモリ106から読み出して第一信号処理部104に入力する。
【0125】
また、信号選択部107は、判定部108から受け取った判定結果が、処理対象の部分領域が第二領域であることを示す場合、当該部分領域の映像信号をメモリ106から読み出して第二信号処理部105に入力する。
【0126】
信号選択部107から映像信号が入力された第一信号処理部104および第二信号処理部105のそれぞれは、上述のように、入力された映像信号を補正する処理を行う。
【0127】
このような処理の流れであっても、図1に示す構成の映像信号処理装置100と同じく、領域ごとに適切な補正がなされた映像信号を得ることができる。
【0128】
また、上述のように、映像信号処理装置100は、例えばPDPを備えるテレビに内蔵される。映像信号処理装置100を内蔵するテレビの一例を図10に示す。
【0129】
図9(a)は、実施の形態の映像信号処理装置100を内蔵するテレビ200の外観を示す斜視図である。
【0130】
図9(b)は、テレビ200の主要な構成を示すブロック図である。
なお、図9(b)では、放送波を受信するチューナ等、通常のテレビが備える構成要素についての図示は省略されている。
【0131】
図9(a)および図9(b)に示すように、テレビ200は、映像信号処理装置100およびPDP210を備える。映像信号処理装置100は、チューナ等から映像信号が入力されると、上述のように映像信号の補正を行い、PDP210に出力する。
【0132】
これにより、PDP210には、補正により色ずれや残光ぼけ等が抑制され、かつ、色目の境界の発生が抑制された映像が表示される。
【0133】
また、実施の形態の映像信号処理装置100の構成の一部または全部を、1つまたは複数の集積回路で実現することもできる。
【0134】
図10は、実施の形態の映像信号処理装置100における集積回路化の一例を示す図である。
【0135】
図10に示すLSI120は、映像信号処理装置100が備える複数の機能ブロックを含む集積回路の一例である。
【0136】
なお、これら複数の機能ブロックは1つのLSIではなく、複数のLSIに分散して含まれてもよい。
【0137】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)または、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0138】
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIなどに置き換わる集積回路の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明は、プラズマテレビにおける映像信号処理装置としてはもちろんのこと、互いに特性の異なる複数の蛍光体を用いて画像を表示するディスプレイに動画像を表示させるための映像信号を出力する映像信号処理装置として応用が可能である。
【符号の説明】
【0140】
100 映像信号処理装置
101 メモリ
102 乱雑度算出部
103 動きベクトル検出部
104 第一信号処理部
105 第二信号処理部
106 メモリ
107 信号選択部
108 判定部
110 信号補正部
120 LSI
200 テレビ
210 PDP

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに特性の異なる複数の蛍光体を用いて画像を表示するディスプレイに動画像を表示させるための映像信号を出力する映像信号処理装置であって、
前記動画像を構成するフレームであって処理対象のフレームのブロック毎の動きベクトルを検出する動きベクトル検出部と、
前記処理対象のフレームの、複数のブロックを含む部分領域毎に、当該部分領域の複数の動きベクトルの乱雑度を算出する乱雑度算出部と、
前記乱雑度算出部による算出結果に基づいて、前記部分領域毎に、第一領域であるか、前記第一領域よりも乱雑度の大きな第二領域であるかを判定する判定部と、
前記判定部による判定結果に応じて、前記処理対象のフレームの1つ前のフレームである先行フレームの残光の影響を抑制するように、前記処理対象のフレームの映像信号を補正して出力する信号補正部とを備え、
前記信号補正部は、
前記第一領域に含まれる画素またはブロックごとの動きベクトルを用いて前記第一領域の映像信号を補正して出力し、
前記動きベクトルを用いずに前記先行フレームの映像信号に示される発光量を用いて前記第二領域の映像信号を補正して出力する
映像信号処理装置。
【請求項2】
前記信号補正部は、
前記処理対象のフレームの映像信号と、前記処理対象のフレームに含まれる画素またはブロックごとの動きベクトルとを用いて、前記先行フレームの、前記処理対象のフレームに対する推定残光量を求め、前記処理対象のフレームの映像信号から前記推定残光量を減算または加算することで、前記処理対象のフレームの映像信号を補正する第一信号処理部と、
前記先行フレームの映像信号の発光量から算出される、前記処理対象のフレームへ漏れ込む残光量を求め、前記処理対象のフレームの映像信号から前記残光量を減算または加算することで、前記処理対象のフレームの映像信号を補正する第二信号処理部と、
前記判定部により前記第一領域であると判定された部分領域については、前記第一信号処理部から得られる補正後の映像信号を選択し、前記判定部により前記第二領域であると判定された部分領域については、前記第二信号処理部から得られる補正後の映像信号を選択し、選択した映像信号を出力する選択部とを有する
請求項1記載の映像信号処理装置。
【請求項3】
前記乱雑度算出部は、前記部分領域毎に、当該部分領域に含まれるブロックごとの複数の動きベクトルの分散値を算出し、算出した分散値が大きいほど、大きな乱雑度を算出する
請求項1または2に記載の映像信号処理装置。
【請求項4】
前記判定部は、
前記乱雑度算出部により算出された部分領域毎の乱雑度と所定の閾値とを比較し、乱雑度が、前記乱雑度についての閾値より大きな部分領域を第二領域であると判定し、乱雑度が、前記乱雑度についての閾値以下である部分領域を第一領域であると判定する
請求項1〜3のいずれか1項に記載の映像信号処理装置。
【請求項5】
前記乱雑度算出部は、前記部分領域毎に、当該部分領域に含まれる複数のブロックそれぞれの動きベクトルが得られた際のそれぞれの絶対値差分和の総和を算出し、前記総和が、前記総和についての閾値よりも大きな場合、前記乱雑度についての閾値から所定の値を減算する
請求項4記載の映像信号処理装置。
【請求項6】
前記乱雑度算出部は、前記部分領域毎に、当該部分領域に含まれる複数のブロックそれぞれの動きベクトルが得られた際のそれぞれの絶対値差分和の総和を算出し、前記総和が大きいほど、前記乱雑度についての閾値を小さくする
請求項4記載の映像信号処理装置。
【請求項7】
請求項1記載の映像信号処理装置と、
互いに特性の異なる複数の蛍光体を用いて画像を表示するディスプレイであって、前記映像信号処理装置から出力される映像信号を受信して表示するディスプレイと
を備えるテレビ。
【請求項8】
互いに特性の異なる複数の蛍光体を用いて画像を表示するディスプレイに動画像を表示させるための映像信号を出力するための映像信号処理方法であって、
前記動画像を構成するフレームであって処理対象のフレームのブロック毎の動きベクトルを検出する動きベクトル検出ステップと、
前記処理対象のフレームの、複数のブロックを含む部分領域毎に、当該部分領域の複数の動きベクトルの乱雑度を算出する乱雑度算出ステップと、
前記乱雑度算出ステップにおける算出結果に基づいて、前記部分領域毎に、第一領域であるか、前記第一領域よりも乱雑度の大きな第二領域であるかを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおける判定結果に応じて、前記処理対象のフレームの1つ前のフレームである先行フレームの残光の影響を抑制するように、前記処理対象のフレームの映像信号を補正して出力する信号補正ステップとを含み、
前記信号補正ステップでは、
前記第一領域に含まれる画素またはブロックごとの動きベクトルを用いて前記第一領域の映像信号を補正して出力し、
前記動きベクトルを用いず、前記先行フレームの映像信号に示される発光量を用いて前記第二領域の映像信号を補正して出力する
映像信号処理方法。
【請求項9】
互いに特性の異なる複数の蛍光体を用いて画像を表示するディスプレイに動画像を表示させるための映像信号を出力するためのプログラムであって、
前記動画像を構成するフレームであって処理対象のフレームのブロック毎の動きベクトルを検出する動きベクトル検出ステップと、
前記処理対象のフレームの、複数のブロックを含む部分領域毎に、当該部分領域の複数の動きベクトルの乱雑度を算出する乱雑度算出ステップと、
前記乱雑度算出ステップにおける算出結果に基づいて、前記部分領域毎に、第一領域であるか、前記第一領域よりも乱雑度の大きな第二領域であるかを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおける判定結果に応じて、前記処理対象のフレームの1つ前のフレームである先行フレームの残光の影響を抑制するように、前記処理対象のフレームの映像信号を補正して出力する信号補正ステップと
をコンピュータに実行させるためのプログラムであり、
前記信号補正ステップでは、
前記第一領域に含まれる画素またはブロックごとの動きベクトルを用いて前記第一領域の映像信号を補正して出力し、
前記動きベクトルを用いず、前記先行フレームの映像信号に示される発光量を用いて前記第二領域の映像信号を補正して出力する
プログラム。
【請求項10】
互いに特性の異なる複数の蛍光体を用いて画像を表示するディスプレイに動画像を表示させるための映像信号を出力する集積回路であって、
前記動画像を構成するフレームであって処理対象のフレームのブロック毎の動きベクトルを検出する動きベクトル検出部と、
前記処理対象のフレームの、複数のブロックを含む部分領域毎に、当該部分領域の複数の動きベクトルの乱雑度を算出する乱雑度算出部と、
前記乱雑度算出部による算出結果に基づいて、前記部分領域毎に、第一領域であるか、前記第一領域よりも乱雑度の大きな第二領域であるかを判定する判定部と、
前記判定部による判定結果に応じて、前記処理対象のフレームの1つ前のフレームである先行フレームの残光の影響を抑制するように、前記処理対象のフレームの映像信号を補正して出力する信号補正部とを備え、
前記信号補正部は、
前記第一領域に含まれる画素またはブロックごとの動きベクトルを用いて前記第一領域の映像信号を補正して出力し、
前記動きベクトルを用いず、前記先行フレームの映像信号に示される発光量を用いて前記第二領域の映像信号を補正して出力する
集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−70036(P2011−70036A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−221653(P2009−221653)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】