説明

映像蓄積配信多重化システム

【課題】ストレージシステム内の1台のRAID装置での読み出し性能によりシステム全体の性能が制限されず、性能向上が図れて高信頼の映像蓄積配信多重化システムを提供する。
【解決手段】IPネットワーク3に接続する映像デーダの蓄積及び配信の処理を行う蓄積配信処理部と映像デーダを記録するRAID装置を有するストレージシステム8と、これを管理する蓄積配信管理部10と、映像デーダの蓄積及び配信を指示する監視端末7とを有している。ストレージシステム8内に、蓄積配信処理部20、30とRAID装置21、31との組合せセットを少なくとも2つ備え、固定時間長ファイルに分割した映像デーダを各RAID装置にそれぞれ蓄積する。クライアントからの配信要求時に、蓄積配信管理部10内の配信管理処理部60を用いてストレージシステム8内の正常な映像デーダを蓄積したセットを選択して用いると共に映像デーダの配信負荷を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像蓄積配信多重化システムに係り、特にカメラ映像を映像データに変換してIP(Internet Protocol)ネットワーク経由で配信し、遠隔監視するための映像監視システム等に好適な映像蓄積配信多重化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
数十台のカメラで撮影した映像を、MPEG(Moving Picture Experts Group)等の映像データに変換し、映像データをIPネットワーク経由で配信して遠隔監視すると共に、同時にこの映像データをストレージと称されている記憶装置に記憶しておき、有事の際に映像を再生可能とする映像蓄積配信システムが実用化されている。
【0003】
このような映像蓄積配信システムで用いられるストレージとしては、比較的安価な複数の磁気ディスク装置で構成する大容量で高性能かつ高信頼性のRAID(Redundant Arrays of Independent Disks)装置が製品化されている。
【0004】
一方、映像データを複数のRAID装置に大量に蓄積しておき、ユーザの要求に応じて蓄積映像データを提供するシステムも提案されており、各RAID装置の故障時を考慮して信頼性を向上させるため、各RAID装置に更にバックアップデータを格納する別のRAID装置を組み合わせた映像提供システムも特許文献1に記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平8−194585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
大容量で高性能かつ高信頼性のRAIDとして、RAID5方式のRAID装置が比較的安価に入手可能となってきているが、高信頼性な方式とは言っても、ディスクドライブ自体の故障や、RAIDコントローラの不具合などによる障害が皆無となる訳ではないため、種々の障害に対する対策が必要となる。
【0007】
このため、映像監視システムなど映像の録画を止めてはならないシステムにおいては、RAID装置の障害にも対応する必要がある。また、RAID装置の性能の面でみると、同時に録画できる映像の本数を増やすには、複数のRAID装置を設置して録画処理を分散すれば良いが、録画映像の配信の場合、ある一つの録画映像にアクセスが集中すると、1台のRAID装置の処理能力によりシステム全体の処理能力が制限されてしまうという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、ストレージシステム内の1台のRAID装置での読み出し性能によりシステム全体の性能が制限されることがなく、性能向上が図れて高信頼に構築できる映像蓄積配信多重化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の映像蓄積配信多重化システムでは、IPネットワークに、映像デーダの蓄積及び配信の処理を行う蓄積配信処理部と映像デーダを記録するRAID装置を有するストレージシステムと、このストレージシステムを管理する蓄積配信管理部と、映像デーダの蓄積及び配信を指示する監視端末とを接続し、クライアントの要求に応じて前記ストレージシステムに蓄積した映像デーダをIPネットワーク経由で配信するものである。そして、本発明ではストレージシステムには、蓄積配信処理部とRAID装置との組合せセットを少なくとも2つ備え、固定時間長ファイルに分割した映像デーダを各RAID装置にそれぞれ蓄積し、前記の蓄積配信管理部には、映像データの蓄積や配信操作に使用するGUI処理部と、ストレージシステム内の各セットにおける障害の検出と障害の回復処理を行う映像デーダの蓄積管理処理部と、配信要求時にストレージシステム内の正常な映像デーダを蓄積したセットを選択して用いると共に、映像デーダの配信負荷を制御する配信管理処理部と、前記の蓄積及び配信管理処理部で用いる管理テーブル群とを備えて構成したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のように映像蓄積配信多重化システムを構成すれば、ストレージシステム内の多重系にそれぞれRAID装置を用い、障害発生確率を改善して更に高信頼な映像蓄積配信システムを構築できると共に、1台のRAID装置の読み出し性能によって、システム全体の性能が制限されることがなく性能向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の映像蓄積配信多重化システムの実施例を、図を用いて説明する。本発明の映像蓄積配信多重化システムでは、複数のカメラからの映像データはIPネットワークを介してストレージシステムに蓄積する。ストレージシステムは、蓄積配信処理部とRAID装置のセットを複数有している。そして、蓄積配信管理部内の各処理部の働きで映像データの蓄積や、クライアント側の要請に基づく映像データの配信が正常に蓄積されたセットを用いて行うように構成している。
【実施例1】
【0012】
本発明における映像蓄積配信多重化システムの一構成例を、図1に示している。複数のカメラ1で撮影された監視の映像信号は、それぞれの映像信号をMPEG映像データへ変換するエンコーダ2によりデジタルデータに変換されて、IPネットワーク3及びスイッチングハブ(Switching Hub)と称される切換装置4を介して、ストレージシステム8に映像データを蓄積する。ストレージシステム8内には、この例ではA系及びB系の2セットから構成しており、各系ともそれぞれ映像デーダの記録及び配信の処理を行う蓄積配信処理部20及び30と、映像データを蓄積するRAID装置21及び31を備えている。
【0013】
蓄積した映像を配信して再生する場合には、蓄積配信処理部20又は30が、それぞれRAID装置21又は31に蓄積されているMPEG映像データを読み出し、切換装置4を介してMPEG映像データから映像信号へ変換するデコーダ5へ配信し、このデコーダ5の出力映像はモニタ装置6で映像として再生される。
また、切換装置4には、パーソナルコンピュータ等の監視端末7や、ストレージシステム8等の種々の管理を行う蓄積配信管理部10が連なっている。この蓄積配信管理部10には、監視端末7等に対してカメラ映像データの蓄積や配信操作を行うGUI(Graphical User interface)を提供するGUI処理部40と、ストレージシステム8の蓄積配信処理部20及び30へ蓄積や配信指示を行う蓄積管理処理部50や配信管理処理部60と、蓄積や配信指示の際に参照する図3に示す各種の管理テーブル群70とを備えている。
【0014】
蓄積配信管理部10のGUI処理部40は、図2(a)に示すように、監視端末7やクライアント端末等にGUIを提供するGUI提供処理手段41と、GUIによるユーザ指示を判断するユーザ指示判断処理手段42と、蓄積管理処理部50へ指示を出す蓄積指示通信処理手段43と、配信管理処理部60へ指示を出す配信指示通信処理手段44とを備えている。
【0015】
また、蓄積配信管理部10の蓄積管理処理部50は、図2(b)に示すように、GUI処理部40からの蓄積指示を受ける蓄積指示待ち処理手段51と、同様に指示に基づき録画の開始処理をする録画開始処理手段52及び録画の停止の処理をする録画停止処理手段53と、ストレージシステム8内のA系及びB系の蓄積配信処理部20及び30やRAID装置21及び31の動作状態を監視して管理テーブル群70内の指定の管理テーブルへ動作状態を記録し、映像データの配信時に活用させる動作状態監視処理手段54とを備えている。しかも、動作状態監視処理手段54は、A系及びB系の蓄積配信処理部20及び30やRAID装置21及び31の障害を検出し、この障害を回復する監視処理を実施するものである。
【0016】
更に、蓄積配信管理部10の配信管理処理部60は、図2(c)に示すように、GUI処理部40からの配信指示を受信待ちする配信指示待ち処理手段61と、同様に指示に基づき配信の開始処理をする配信開始処理手段62及び配信の停止の処理をする配信停止処理手段63と、管理テーブル群70内の指定の管理テーブルを参照してストレージシステム8内のA系及びB系の蓄積配信処理部20及び30動作状態を監視し、正常に動作する系を選択して使用する動作状態監視処理手段64と、管理テーブル群70内の指定の管理テーブルを使用してストレージシステム8内のA系及びB系の蓄積配信処理部20及び30の配信負荷状態を管理し、各系にほぼ均等に負荷が掛かるように制御する配信負荷状態監視処理手段65とを備えている。
【0017】
監視端末7からのGUI操作によって、各カメラ1からIPネットワーク3を経て送信される映像データを、ストレージシステム8への蓄積や、この蓄積してある映像データの配信指示を蓄積配信管理部10で受け、その指示に対応して蓄積管理処理部50又は60が、管理テーブル群70の各種管理テーブルの情報に基づいて、蓄積配信処理部20及び30への蓄積や、IPネットワーク3を経てクライアントへの配信の指示をする。
【0018】
蓄積配信管理部10の管理テーブル群70には、図3(a)から(e)に詳細を示す多重化動作管理テーブル71、映像録画管理テーブル72、録画映像配信管理テーブル73、映像毎録画ファイル管理テーブル74、多重系負荷状態管理テーブル75の各種管理テーブルを備えている。
【0019】
これら各種管理テーブルのうち、多重化動作管理テーブル71は、図3(a)に示す如くストレージシステム8内のA系の蓄積配信処理部20とRAID装置21のセットと、B系の蓄積配信処理部30とRAID装置31のセットとの双方について、停止中か動作中かの動作状態を記憶管理する。映像録画管理テーブル72は、図3(b)に示す如く各カメラ映像データの映像名称と、停止中か録画中かの録画状態と、録画スレッドID(Identification)と、録画の開始と停止の録画時間を記憶管理する。録画映像配信管理テーブル73は、図3(c)に示す如く配信中の映像名称と、配信スレッドIDと、配信先情報と、配信する系の配信元多重系情報と、配信中の映像ファイル情報のファイル先頭時間を記憶管理する。
【0020】
また、録画ファイル管理テーブル74は、図3(d)に示す如く蓄積している各カメラの映像データ毎に存在し、1つのカメラ映像データを固定長ファイルに分割管理した場合の録画時間帯、ファイル名称及び有効な映像を録画している多重系録画状態管理情報を記憶管理している。多重系負荷状態管理テーブル75は、図3(e)に示す如くストレージシステム8の各処理系であるA系及びB系における書き込み負荷と、読み出し負荷の状態を記憶管理する。
【0021】
図4(a)及び(b)は、図1に示すストレージシステム8内が二重系での録画(蓄積)動作及び配信動作の概要を示している。二重系での録画では、入力映像データは固定時間長に分割した入力映像801から805として管理され、A系及びB系のRAID装置21、31にそれぞれ蓄積されてゆき、固定時間長ファイル811から815及び821から825が録画される。
【0022】
図4(a)中の固定時間長ファイル812は、映像データ802を蓄積中にストレージシステム8のA系に障害が発生し、蓄積ファイルが正しく作成されなかったことを示し、また固定時間長ファイル824も同じく映像データ804を蓄積中にB系で障害が発生し、蓄積ファイルが正しく録画されていないことを示している。
【0023】
上記のようにストレージシステム8のA系又はB系において、映像データを蓄積中に障害が発生した場合でも、本発明の二重系では入力映像801から805が、いずれかの系で途切れることなく録画されることを示している。このため配信の際には、図4(b)に示すように配信映像データ831から835は、正常に録画された系の固定時間長ファイル822や814を選択して使用できる。
【0024】
次に、蓄積管理処理部50の処理フローを示す図5を用いて、蓄積処理の動作を説明する。蓄積管理処理部50でのメインプロセスは、GUI処理部40が提供しているGUI提供処理手段41を経て監視端末7からのオペレータの指示を、GUIからの指示待ちしている(ステップS11)。オペレータから、録画追加(ステップS12)又は録画停止(ステップS13)の指示があると、蓄積指示待ち処理手段51で判断処理され、その指示内容にしたがいYESのときは録画開始処理手段52の指示で指定映像データの録画開始(ステップS12A)又は録画停止処理手段53の指示で指定映像の録画停止(ステップS13A)を実行し、NOのときは指示待ちする。
【0025】
指定映像の録画開始(ステップS12A)では、映像録画管理テーブル72へ映像名称、録画開始時間の情報登録を行い、指定カメラの映像データのIPアドレス情報などを引数にして録画スレッド20を生成し、最後に映像録画管理テーブル72へ録画スレッドIDを登録して録画状態を、録画中とする。また、指定映像データの録画停止(ステップS13A)では、映像録画管理テーブル72から映像名称に対応する録画スレッドIDを求めて、対応する動作中の録画スレッドに対して停止要求を出し、映像録画管理テーブル72へ録画停止時間を登録する。
【0026】
録画スレッド20は、指定映像データのファイル管理を行うために、録画管理テーブル74の作成を行っている(ステップS21)。以下、録画停止の指示があるまで、後述するステップS22からS24の処理を実行し続ける。ステップS22では、動作状態監視処理手段54によって、多重系動作状態管理テーブル71に登録してあるストレージシステム8のA系及びB系の動作状態に従い、その時点で動作可能な全ての処理系に対して蓄積指示をする。具体的な指示の内容としては、現在書き込み中の対象ファイルの閉じ(録画停止)、新しく作成するファイル名称を指定しての録画開始が行われる。
【0027】
上記したように、図4(a)における二重系の録画動作での固定時間長ファイル812と824は、ストレージシステム8のA系又はB系に何らかの障害が発生したため、新たな蓄積指示を出さなかった状態であり、それ以外ではA系及びB系に同じ映像データを書き込んでいる。A系及びB系の動作状態の調査手段としては、ファイルを閉じた時での対応する多重処理系からの蓄積済みデータ量の取得、又は定期的な各処理系への処理状態のポーリング結果により動作状態を確認し、その結果を多重系動作状態管理テーブル71に登録しておくことにより実現できる。
【0028】
またステップS23では、映像データ毎に録画ファイル管理テーブル74へ新たに作成指示した録画時間帯、ファイル名称、多重系録画状態管理情報を登録する。この後、固定長の時間経過まで蓄積配信処理部50に蓄積処理を任せておけば良いので時間が経過するまで、若しくはメインプロセスからの停止要求が来るまでスリープ(ステップS24)し、停止指示(ステップS25)がYESのときは終了となり、NOのときにはステップS22から繰り返すことになる。
【0029】
次に、配信管理処理部60の処理フローを示す図6を用いて、配信処理の動作を説明する。配信管理処理部60でのメインプロセスは、GUI処理部40が提供しているGUI提供処理手段41を経由し、監視端末7からのオペレータの指示を、GUIからの指示待ちしている(ステップS31)。オペレータから、配信追加(ステップS32)又は配信停止(ステップS33)の指示があると、配信指示待ち処理手段61で判断処理され、その指示内容にしたがいYESのときは、配信開始処理手段62の指示で指定映像データの配信開始(ステップS32A)又は配信停止処理手段63の指示で指定映像データの配信停止(ステップS33A)が実行され、NOのときは指示待ちする。
【0030】
指定映像データをIPネットワークを介してクライアントに配信する際には、動作状態監視処理手段64では多重化動作管理テーブル71を参照し、ストレージシステム8の正常に動作しているA系又はB系を確認していずれかを選択する。指定映像データの配信開始(ステップS32A)は、録画映像配信管理テーブル73へ映像名称、配信先情報や配信中ファイル情報を登録し、これら登録情報を引数にして配信スレッド40を生成して、最後に録画映像配信管理テーブル73へ配信スレッドIDを登録する。
【0031】
また、指定映像データの配信停止(ステップS33A)は、録画映像配信管理テーブル73から、指定配信先情報に対応する配信スレッドIDを求めて、その配信スレッドIDを引数として、動作中の配信スレッドに対して停止要求をする。配信スレッド40は、配信停止指示があるまで、後述するステップS41からS44の処理を実行し続ける。
【0032】
最初に、現在配信中の映像ファイルを閉じ(配信停止)、次に配信すべき映像データのファイルを映像毎録画ファイル管理テーブル74から選択する(ステップS41)。続いて、配信負荷状態監視処理手段65によって、多重系動作状態管理テーブル71に登録してあるストレージシステム8のA系及びB系の動作状態、映像毎録画ファイル管理テーブル74での対象映像のA系及びB系への録画状態及び多重系負荷状態管理テーブル75での読み出し負荷状態に従い、A系又はB系へ配信指示をする(ステップS42)。
【0033】
具体的には、多重系動作状態管理テーブル71の情報から、ストレージシステム8のA系及びB系とも動作中であり、映像毎録画ファイル管理テーブル74の情報から、対象ファイルがA系及びB系とも有効であれば、多重系負荷状態管理テーブル75を調べて、読み出し負荷が小さい系を選択して配信の指示を出し、多重系負荷状態管理テーブル75の読み出し負荷情報を更新する。また、映像毎録画ファイル管理テーブル74の情報から、ストレージシステム8のA系又はB系に何らかの障害が発生していた場合には、配信可能な系を選択し、配信の指示をする。
【0034】
図4(b)は、ストレージシステム8のA系及びB系の二重系での配信動作での固定時間長ファイル812と824は、ストレージシステム8のA系又はB系に何らかの障害が発生して蓄積できなかった状態のため、これを考慮して配信映像の固定時間長ファイル831から835が、適切なA系又はB系から配信されることを示している。配信指示を出した後は、固定長時間経過まで配信管理処理部60に処理を任せ、時間が経過するまで若しくはメインプロセスからの停止要求がくるまでスリープ(ステップS43)し、停止指示(ステップS44)がYESのときは終了となり、NOのときにはステップS41から繰り返すことになる。
【0035】
書き込み負荷分散のために、図7(a)に示すように蓄積配信処理部へ複数台のRAID装置をファイバーチャンネル等によるデイジーチェーン接続した場合の構成で、6Mbps/台のカメラの映像データ40台分を同時蓄積(計240Mbps)、RAID装置の処理性能は、読み出しと書き込み合わせて200Mbps、RAID装置以外には障害要因は存在しないことを条件とした処理性能を、図7(b)に示している。RAID装置の台数が、増加するにしたがい1台当りの書き込み負荷は減少し、逆に読み出し性能は増加する。これは、同時蓄積対象のカメラ台数が増加した場合には、RAID装置の接続台数を増やせば良いことを示している。
【0036】
また、図7(c)は図7(b)での条件に加えて、多重系の1セット当り4台のRAID装置を用いて負荷分散するとき、映像配信要求が1つの映像に集中した場合でも、読み出し性能は増加することを示している。したがって、本発明のようにストレージシステムを構成する多重系セットを、2から3と増やすことにより読出し性能が大幅に向上できることになる。
【0037】
以上のように、ストレージシステムの各系として、映像データを書き込みや読み出しする蓄積配信処理部とRAID装置の組合せを1セットとして複数セット設け、各セットに対して映像データ書き込み(蓄積)時には、その時点で動作可能な全セットに対して同時書き込み指示を行い、逆に読み出し(映像配信)の場合には、有効な映像データを格納しており、かつ読み出し負荷が最も小さいセットに対して映像配信指示を行うことにより、1つの映像に対して配信要求が集中しても負荷分散することにより高い配信能力を有することが可能となる。また、1つのセットに障害が発生しても残りの正常なセットにより、蓄積配信動作を継続できるので、信頼性の高い映像蓄積配信多重化システムが構築可能となる。
【0038】
本発明の図1の実施例では、ストレージシステム内を二重系としたものであるが、更により高信頼を要求される場合には、蓄積配信処理部とRAID装置の組合せセットを3セット、4セット構成とすることもできることは明らかである。
【0039】
本発明は、蓄積した監視映像データを、クライアントからのIPネットワークを経由しての要求に応じて配信するだけでなく、種々の映像データ、例えば教育用の映像データをストレージシステムの多重系に蓄積しておき、クライアントの求めに応じて配信する映像配信システムへの適用することもできる。
【0040】
上記した蓄積配信管理部10を構成する各処理部等は、それぞれ独立したプログラムを作って使用したり、全体を取り纏めたプログラムを作って使用することができることは明らかである。
【0041】
なお、本発明におけるストレージシステム内の各RAID装置に蓄積する映像データは、カメラからのMPEG映像データの例で説明したが、JPEG(Joint Photographic Experts Group)映像データ等であっても良いことは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施例である映像蓄積配信多重化システムの概略構成図である。
【図2】蓄積配信管理部内の主要構成である処理部の詳細図である。
【図3】蓄積配信管理部内の管理テーブル群の説明図である。
【図4】本発明の映像蓄積配信多重化システムにおける映像蓄積及び配信動作の説明図である。
【図5】映像蓄積配信多重化システムにおける蓄積管理処理部動作のフロー図である。
【図6】映像蓄積配信多重化システムにおける配信管理処理部動作のフロー図である。
【図7】映像蓄積配信多重化システムにおける蓄積配信処理性能の説明図である。
【符号の説明】
【0043】
1…カメラ、2…エンコーダ、3…IPネットワーク、4…切換装置、5…デコーダ、6…映像モニタ、7…監視端末、8…ストレージシステム、10…蓄積配信管理部、20、30…蓄積配信処理部、21、31…RAID装置、40…GUI処理部、41…GUI提供処理手段、42…ユーザ指示判断処理手段、43…蓄積指示通信処理手段、44…配信指示通信処理手段、50…蓄積管理処理部、51…蓄積指示待ち処理手段、52…録画開始処理手段、53…録画停止処理手段、54…動作状態監視処理手段、60…配信管理処理部、61…配信指示待ち処理手段、62…配信開始処理手段、63…配信停止処理手段、64…動作状態監視処理手段、65…配信負荷状態監視処理手段、70…管理テーブル群、71…多重系動作状態管理テーブル、72…映像録画管理テーブル、73…録画映像配信管理テーブル、74…映像毎録画ファイル管理テーブル、75…多重系負荷状態管理テーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IPネットワークに、映像デーダの蓄積及び配信の処理を行う蓄積配信処理部と映像デーダを記録するRAID装置を有するストレージシステムと、前記ストレージシステムを管理する蓄積配信管理部と、映像デーダの蓄積及び配信を指示する監視端末とを接続し、クライアントの要求に応じて前記ストレージシステムに蓄積した映像デーダをIPネットワーク経由で配信する映像蓄積配信システムにおいて、前記ストレージシステムには蓄積配信処理部とRAID装置との組合せセットを少なくとも2つ備え、固定時間長ファイルに分割した映像デーダを前記各RAID装置にそれぞれ蓄積し、前記蓄積配信管理部には、映像データの蓄積や配信操作に使用するGUI処理部と、前記ストレージシステム内の各セットにおける障害の検出と障害の回復処理を行う映像デーダの蓄積管理処理部と、配信要求時に前記ストレージシステム内の正常な映像デーダを蓄積したセットを選択して用いると共に、映像デーダの配信負荷を制御する配信管理処理部と、前記蓄積及び配信管理処理部で用いる管理テーブル群とを備えて構成したことを特徴とする映像蓄積配信多重化システム。
【請求項2】
前記蓄積管理処理部には、前記監視端末からの指示に基づき映像デーダの録画開始を行う録画開始処理手段及び録画停止を行う録画停止処理手段と、前記ストレージシステム内の各セットにおける障害の検出と障害の回復処理を行う動作状態監視処理手段とを有することを特徴とする請求項1記載の映像蓄積配信多重化システム。
【請求項3】
前記配信管理処理部には、前記監視端末からの指示に基づき映像デーダの配信開始を行う配信開始処理手段及び配信停止を行う配信停止処理手段と、前記ストレージシステム内の各セットにおける動作状態を監視して正常に動作するセットを選択して使用する動作状態監視処理手段と、前記ストレージシステム内の各セットの配信負荷状態を管理し、各セットにほぼ均等に負荷が掛かるように制御する配信負荷状態監視処理手段とを有したことを特徴とする請求項1記載の映像蓄積配信多重化システム。
【請求項4】
監視映像を撮影する複数のカメラと監視映像を映像データに変換するエンコーダとをIPネットワークと接続し、前記IPネットワークには切換装置を介して、前記映像デーダの蓄積及び配信の処理を行う蓄積配信処理部と映像デーダを記録するRAID装置を有するストレージシステムと、前記ストレージシステムを管理する蓄積配信管理部と、映像デーダの蓄積及び配信を指示する監視端末とを接続し、クライアントの要求に応じて前記ストレージシステムに蓄積した監視カメラの映像デーダをIPネットワーク経由で配信する映像蓄積配信多重化システムにおいて、前記ストレージシステムには蓄積配信処理部とRAID装置との組合せセットを少なくとも2つ備え、固定時間長ファイルに分割した映像デーダを前記各RAID装置にそれぞれ蓄積し、前記蓄積配信管理部には、映像データの蓄積や配信操作に使用するGUI処理部と、前記ストレージシステム内の各セットにおける障害を検出と障害の回復処理を行う映像デーダの蓄積管理処理部と、配信要求時に前記ストレージシステム内の正常な映像デーダを蓄積したセットを選択処理すると共に、映像デーダの配信負荷を制御処理する配信管理処理部と、前記蓄積及び配信管理処理部で用いる管理テーブル群とを備え、前記蓄積管理処理部には、前記監視端末からの指示に基づき映像デーダの録画開始を行う録画開始処理手段及び録画停止を行う録画停止処理手段と、前記ストレージシステム内の各セットにおける障害を検出と障害の回復処理を行う動作状態監視処理手段とを有し、前記配信管理処理部には、前記監視端末からの指示に基づき映像デーダの配信開始を行う配信開始処理手段及び配信停止を行う配信停止処理手段と、前記ストレージシステム内の各セットにおける動作状態を監視して正常に動作するセットを選択して使用する動作状態監視処理手段と、前記ストレージシステム内の各セットの配信負荷状態を管理し、各セットにほぼ均等に負荷が掛かるように制御する配信負荷状態監視処理手段とを有して構成したことを特徴とする映像蓄積配信多重化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−104370(P2007−104370A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−292120(P2005−292120)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【出願人】(000153443)株式会社日立情報制御ソリューションズ (359)
【Fターム(参考)】