説明

映像表示装置、映像表示システム、映像表示方法およびプログラム

【課題】視認性および操作性を維持しつつ、効率的に映像を表示可能な、映像表示装置、映像表示システム、映像表示方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】通信接続されたパン/チルト制御可能な第1および第2のカメラを用いた映像表示方法であって、第1のカメラのパン/チルト範囲に当る第1の領域と、第2のカメラのパン/チルト範囲に当る第2の領域とを少なくとも互いに隣接させて組合せた仮想領域で表示領域を移動させるための情報を取得し、仮想領域での表示領域の位置を判定し、移動の前後で表示領域が第1の領域に位置するときに、表示領域の映像を受信するためのパン/チルト動作を第1のカメラに要求し、表示領域が第1の領域から第1の領域と第2の領域との境界まで移動したときに、表示領域の映像を受信するためのパン/チルト動作を第2のカメラに要求し、第1または第2のカメラから受信された表示領域の映像を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像表示装置、映像表示システム、映像表示方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のネットワークカメラを用いた映像表示システムが知られている。このようなシステムでは、ユーザが複数の映像を同時に確認できるように、一般に複数の映像がマルチ画面に表示される。これにより、パンおよび/またはチルト(以下では、パン/チルトとも称する。)操作を用いて移動物体を撮影する場合、ユーザは、マルチ画面に表示される移動物体を確認して、制御対象となるカメラを切替えながらパン/チルト操作することができる。
【0003】
しかし、高解像度化や高フレームレート化に伴い映像単位のデータ量が大きくなると、伝送容量や処理能力の制限から、映像全体のデータ量を抑えることが望まれる。よって、複数の映像を同時に確認する場合、映像の表示方法を含めて映像全体のデータ量を抑えることが重要となる。例えば、上記特許文献1は、制御対象となるカメラの映像を高フレームレートで表示し、他のカメラの映像を低フレームレートで表示する技術を開示している。
【0004】
また、携帯電話、携帯情報端末等、小型ディスプレイを伴う映像表示装置を用いて、複数の映像をマルチ画面に表示すると、映像の視認性やパン/チルト操作の操作性が低下してしまう。よって、マルチ画面の表示を伴わず、かつ操作性を低下させずに、映像を表示することが重要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−205700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、視認性および操作性を維持しつつ、効率的に映像を表示可能な、映像表示装置、映像表示システム、映像表示方法およびプログラムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある観点によれば、パン/チルト制御可能な少なくとも第1および第2のカメラに通信回線を通じて接続される映像表示装置であって、第1のカメラのパン/チルト範囲に相当する第1の領域と、第2のカメラのパン/チルト範囲に相当する第2の領域とを少なくとも互いに隣接させて組合せた仮想領域で表示領域を移動させるための情報を取得する取得部と、仮想領域での表示領域の位置を判定し、表示領域の移動の前後で表示領域が第1の領域に位置するときに、表示領域の映像を受信するためのパン/チルト動作を第1のカメラに要求し、表示領域が第1の領域から少なくとも第1の領域と第2の領域との境界まで移動したときに、表示領域の映像を受信するためのパン/チルト動作を第2のカメラに要求する制御部と、第1または第2のカメラから受信された表示領域の映像を表示する表示部とを備える映像表示装置が提供される。
【0008】
制御部は、表示領域が第1の領域から少なくとも第1の領域と第2の領域との境界まで移動したときに、第1の領域に含まれる映像が表示されている状態で、表示領域の映像を受信するためのパン/チルト動作を第2のカメラに要求した後に、第1の領域に含まれる映像の送信終了を第1のカメラに要求し、第2の領域に含まれる映像の送信開始を第2のカメラに要求してもよい。
【0009】
仮想領域は、第1の領域と第2の領域とを部分的に重複させて組合せた領域であり、第1の領域と第2の領域とが重複する重複領域を有し、制御部は、表示領域が第1の領域から少なくとも第1の領域と第2の領域との境界まで移動したときに、重複領域を移動する表示領域に追従するパン/チルト動作を第2のカメラに要求し、第1のカメラと第2のカメラとの間で撮影領域の位置が一致するまで、表示領域に追従するパン/チルト動作を第1のカメラに要求し、撮影領域の位置が一致すると、第1の領域に含まれる映像の送信終了を第1のカメラに要求し、第2の領域に含まれる映像の送信開始を第2のカメラに要求してもよい。
【0010】
第1および第2のカメラがズーム制御可能であって、取得部は、表示領域を拡縮するための情報をさらに取得し、制御部は、表示領域が第1の領域から少なくとも第1の領域と第2の領域との境界まで移動したときに、表示領域の映像を受信するためのズーム動作を第2のカメラに要求してもよい。
【0011】
取得部は、表示領域を移動させるための操作情報をユーザから取得してもよい。
【0012】
取得部は、仮想領域で移動する物体を捉えた表示領域を、物体の移動に追従して仮想領域で移動させるための動体検出情報を第1または第2のカメラから取得してもよい。
【0013】
また、本発明の別の観点によれば、少なくとも第1および第2のカメラと、少なくとも第1および第2のカメラに通信回線を通じて接続される映像表示装置とを有する映像表示システムが提供される。
【0014】
また、本発明の別の観点によれば、通信回線を通じて接続されたパン/チルト制御可能な少なくとも第1および第2のカメラを用いた映像表示方法であって、第1のカメラのパン/チルト範囲に相当する第1の領域と、第2のカメラのパン/チルト範囲に相当する第2の領域とを少なくとも互いに隣接させて組合せた仮想領域で表示領域を移動させるための情報を取得し、仮想領域での表示領域の位置を判定し、表示領域の移動の前後で表示領域が第1の領域に位置するときに、表示領域の映像を受信するためのパン/チルト動作を第1のカメラに要求し、表示領域が第1の領域から少なくとも第1の領域と第2の領域との境界まで移動したときに、表示領域の映像を受信するためのパン/チルト動作を第2のカメラに要求し、第1または第2のカメラから受信された表示領域の映像を表示することを含む映像表示方法が提供される。
【0015】
また、本発明の別の観点によれば、上記映像表示方法をコンピュータに実行させるためのプログラムが提供される。ここで、プログラムは、コンピュータ読取り可能な記録媒体を用いて提供されてもよく、通信手段等を介して提供されてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、視認性および操作性を維持しつつ、効率的に映像を表示可能な、映像表示装置、映像表示システム、映像表示方法およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一般的な映像表示システムの構成を示す図である。
【図2】図1に示す映像表示システムの動作を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る映像表示システムの機能構成を示す図である。
【図4】第1および第2のカメラのパン/チルト範囲を示す図である。
【図5】第1の実施形態に係る仮想領域を示す図である。
【図6】第1の実施形態に係る映像表示システムの動作を示す図である。
【図7】図6に示す映像表示システムの動作を示すシーケンス図である。
【図8】第2の実施形態に係る仮想領域を示す図である。
【図9】第2の実施形態に係る映像表示システムの動作を示す図(1/2)である。
【図10】第2の実施形態に係る映像表示システムの動作を示す図(2/2)である。
【図11】図9に示す映像表示システムの動作を示すシーケンス図である。
【図12】第3の実施形態に係る映像表示システムの動作を示す図である。
【図13】図12に示す映像表示システムの動作を示すシーケンス図である。
【図14】仮想領域の他の例を示す図(1/2)である。
【図15】仮想領域の他の例を示す図(2/2)である。
【図16】映像表示システムの他の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0019】
[1.一般的な映像表示システム]
まず、図1および図2を参照しながら、一般的な映像表示システムについて説明する。
【0020】
図1には、一般的な映像表示システムの構成が示されている。映像表示システムは、少なくとも第1および第2のカメラ1、2と、第1および第2のカメラ1、2にネットワークNWを介して接続される映像表示装置5とを含む。図1に示すように、映像表示システムは、例えば左右に並べて配置された第1および第2のカメラ1、2を有する。
【0021】
映像表示装置5は、ユーザ操作等に応じて第1および第2のカメラ1、2を制御する。第1および第2のカメラ1、2は、制御に応じて、パン/チルト動作およびズーム動作する。第1および第2のカメラ1、2は、パン/チルト角度、ズーム率等の撮影条件に応じた映像データを映像表示装置5に送信する。映像表示装置5は、第1または第2のカメラ1、2から受信した映像データに対応する映像を表示する。
【0022】
図2には、図1に示す映像表示システムの動作が示されている。以下では、第1のカメラ1のパン/チルト範囲(第1の領域A1)から第2のカメラ2のパン/チルト範囲(第2の領域A2)に移動する物体Oの映像を捉えて表示する動作について説明する。
【0023】
図2に示すT1の状態では、移動物体Oが第1の領域A1を第2の領域A2に向けて右方向に移動している。ユーザは、第1のカメラの撮影領域(第1の撮影領域S1)に移動物体Oを捉えるように、第1のカメラ1を制御対象として選択し、第1のカメラ1をパン/チルト操作する。第1のカメラ1は、パン/チルト動作し、映像表示装置5は、第1の撮影領域S1に捉えられた移動物体Oを表示する。
【0024】
T2の状態では、移動物体Oが第2の領域A2との境界まで移動している。ユーザは、第1の撮影領域S1に移動物体Oを捉えるように、第1のカメラ1をパン/チルト操作する。第1のカメラ1は、第1の領域A1の右端までパン/チルト動作し、映像表示装置5は、第1の撮影領域S1に捉えられた移動物体Oを表示する。
【0025】
T3の状態では、移動物体Oがさらに右方向に移動している。ユーザは、第1の撮影領域S1に移動物体Oを捉えるように、第1のカメラ1をパン/チルト操作しようとする。しかし、第1のカメラ1は、すでに第1の領域A1の右端までパン/チルト動作しているので、さらに右方向にパン/チルト動作することができない。
【0026】
このため、ユーザは、第2のカメラ2の撮影領域(第2の撮影領域S2)に移動物体Oを捉えるために、第1のカメラ1から第2のカメラ2に制御対象を手動で切替える。そして、ユーザは、第2の撮影領域S2に移動物体Oを捉えるように、第2のカメラ2を左方向にパン/チルト操作(必要に応じてズーム操作も)する。第2のカメラ2は、第2の領域A2の左端近傍までパン/チルト動作(必要に応じてズーム動作も)し、映像表示装置5は、第2の撮影領域S2に捉えられた移動物体Oを表示する。T3の状態では、カメラ1、2の切替えおよび第2の撮影領域S2の移動のために、移動物体Oの映像を連続して捉えることができず、移動物体Oを上手く捉えきれない状況が発生する。
【0027】
T4の状態では、移動物体Oが第2の領域A2を右方向に移動している。ユーザは、第2の撮影領域S2に移動物体Oを捉えるように、第2のカメラ2をパン/チルト操作する。第2のカメラ2は、パン/チルト動作し、映像表示装置5は、第2の撮影領域S2に捉えられた移動物体Oを表示する。
【0028】
このため、ユーザは、移動物体Oの映像を連続して捉えるために、第1のカメラ1から第2のカメラ2に制御対象を手動で切替えなくてはならない。また、切替えに際して、第2の撮影領域S2に移動物体Oを捉えるように、映像を確認しながら第2のカメラ2をパン/チルト操作を(必要に応じてズーム操作も)手動で行わなければならず、再び移動物体Oを捉えるまでに時間や手間を要してしまう。
【0029】
[2.本発明の実施形態に係る映像表示システムの構成]
つぎに、図3を参照しながら、本発明の実施形態に係る映像表示システムの構成について説明する。
【0030】
図3には、本発明の実施形態に係る映像表示システムの機能構成が示されている。図3に示すように、映像表示システムは、少なくとも第1および第2のカメラ11、12と、第1および第2のカメラ11、12にネットワークNWを介して接続される映像表示装置50とを含む。第1および第2のカメラ11、12は、パン/チルト機能を有しており、さらにズーム機能を有してもよい。映像表示装置50は、携帯電話、携帯情報端末等、小型ディスプレイを伴う装置である。ネットワークNWは、イーサネット(登録商標)、光ファイバ等の有線ネットワーク、無線LAN、W−CDMA、GSM等の無線ネットワーク等である。
【0031】
図3に示すように、映像表示システムを構成する第1および第2のカメラ11、12は、撮像部21、処理部22、通信部23、駆動部24、制御部25をそれぞれ含む。撮像部21は、撮影領域S1、S2の被写体を撮像素子(不図示)により撮像し、撮像信号を処理部22に供給する。処理部22は、撮像信号から映像データを生成し、圧縮符号化して通信部23に供給する。通信部23は、映像表示装置50から制御信号を受信して制御部25に供給するとともに、映像データをパケット化して映像表示装置50に送信する。駆動部24は、制御信号に基づき、パン/チルト機構およびズーム機構(いずれも不図示)を駆動する。制御部25は、制御信号に応じて、撮像部21による撮像、通信部23によるデータ通信、駆動部24によるパン/チルト動作およびズーム動作を制御する。
【0032】
映像表示システムを構成する映像表示装置50は、取得部51、処理部52、表示部53、通信部54、制御部55を含む。
【0033】
取得部51は、第1の領域A1と第2の領域A2を組合せた仮想領域AVで、表示領域ADを上下左右に移動/拡大縮小させるための情報を取得し、制御部55に供給する。なお、仮想領域AVの詳細については後述する。本実施形態に係る取得部51は、例えば、タッチパネル、キー、ボタン等のデバイスを通じて情報を取得する。
【0034】
通信部54は、第1および第2のカメラ11、12から映像データを受信してデパケット化して処理部52に供給するとともに、制御信号をカメラ11、12に送信する。処理部52は、映像データを伸張復号して表示部53に供給する。表示部53は、映像データに対応する映像を出力する。表示部53は、LCD、OLED等のディスプレイとして構成される。
【0035】
制御部55は、CPU、ROM、RAM等を有し、ROM等から読出したプログラムをRAM等に展開して実行することで、映像表示装置50の動作を実現する。制御部55は、取得された情報に応じて仮想領域AVでの表示領域ADの位置を判定する。そして、制御部55は、表示領域ADの移動の前後で表示領域ADが第1の領域A1に位置するときに、表示領域ADの映像を受信するためのパン/チルト動作を第1のカメラ11に要求する。また、制御部55は、表示領域ADが第1の領域A1から少なくとも第1の領域A1と第2の領域A2との境界まで移動したときに、表示領域ADの映像を受信するためのパン/チルト動作を第2のカメラ12に要求する。
【0036】
[3.第1の実施形態に係る映像表示システム]
つぎに、図4から図8を参照して、本発明の第1の実施形態に係る映像表示システムの動作について説明する。
【0037】
図4には、第1のカメラ11のパン/チルト範囲(第1の領域A1)と第2のカメラ12のパン/チルト範囲(第2の領域A2)が示されている。パン範囲は、最大パン角度Pのとき、例えば、カメラ11、12の正面方向を0とし、右方向−P/2から左方向P/2までの範囲として表される。また、チルト範囲は、最大チルト角度Tのとき、例えば、カメラ11、12の正面方向を0、俯角方向−T/2から仰角方向T/2までの範囲として表される。なお、パン/チルト角度は、カメラ11、12の正面方向を基準として、パン/チルト動作された状態の撮像レンズの光軸方向により規定され、撮影領域S1、S2の中心が示す方向に相当する。
【0038】
図4には、第1および第2の撮影領域S1、S2があわせて示されている。第1の撮影領域S1は、第1のカメラ11のパン/チルト動作により第1の領域A1で移動され、ズーム動作によりズームイン/アウトされる。第1のカメラ11の撮影条件は、パン角度p1、チルト角度t1、ズーム率z1として表される。第2の撮影領域S2は、第2のカメラ12のパン/チルト動作により第2の領域A2で移動され、ズーム動作によりズームイン/アウトされる。第2のカメラ12の撮影条件は、パン角度p2、チルト角度t2、ズーム率z2として表される。
【0039】
図5には、第1の実施形態に係る仮想領域AV1が示されている。仮想領域AVとは、第1の領域A1と第2の領域A2とを少なくとも互いに隣接させて組合せた領域である。特に、第1の実施形態に係る仮想領域AV1は、第1の領域A1と第2の領域A2とを互いに隣接するように左右に並べて組合せた領域である。
【0040】
図5には、映像表示の対象となる表示領域ADがあわせて示されている。なお、以下の図面では、ハッチを施された撮影領域S1またはS2として表示領域ADが表されている。ユーザは、入力デバイスに対するドラッグ操作、押圧操作等により仮想領域AV1で表示領域ADを移動させ、タップ操作、押圧操作等により表示領域ADを拡大/縮小させることができる。映像表示装置50は、仮想領域AV1での表示領域ADの位置に応じて、第1または第2の撮影領域S1、S2の映像を表示する。図5に示す例では、表示領域ADとして選択された第1の撮影領域S1に捉えられた移動物体Oが表示される。
【0041】
仮想領域AV1での表示領域ADの位置は、第1の領域A1の中央を基準(X、Y)=(0、0)として、第1および第2のカメラ11、12のパン/チルト角度により表される。表示領域ADの位置は、例えば、第1の領域A1の左上端では(X、Y)=(−P/2、T/2)、第1の領域A1の右下端では(X、Y)=(P/2、−T/2)と表される。また、第2の領域A2の左上端では(X、Y)=(P/2、T/2)、第2の領域A2の右下端では(X、Y)=(3P/2、−T/2)と表される。つまり、第1の領域A1に位置する表示領域ADは、第1の撮影領域S1に相当し、その位置が(X、Y)=(p1、t1)と表される。また、第2の領域A2に位置する表示領域ADは、第2の撮影領域S2に相当し、その位置が(X、Y)=(p2+P、t2)と表される。
【0042】
ここで、表示領域ADは、ズーム率z=1.0の場合に基準幅w(角度)、基準高h(角度)の領域に相当するとする。すると、第1の領域A1に位置する表示領域ADは、仮想領域AV1で(p1−w/2z1、t1−h/2z1)〜(p1+w/2z1、t1+h/2z1)の範囲を占めることになる。同様に、第2の領域A2に位置する表示領域ADは、仮想領域AV1で(p2+P−w/2z2、t2−h/2z2)〜(p2+P+w/2z2、t2+h/2z2)の範囲を占めることになる。そして、例えば、第1の領域A1の右端中央の表示領域ADと、第2の領域A2の左端中央の表示領域ADとは、いずれも(X、Y)=(P/2、0)に位置し、ズーム率z1=z2であれば同一の範囲を占めることになる。
【0043】
以上より、表示領域ADの位置とカメラ11、12の撮影条件とは、以下の関係を有することになる。つまり、表示領域ADが第1の領域A1から第2の領域A2に移動する場合、その位置が−P/2≦X<P/2の範囲にあるとき、第1のカメラ11が制御され、その位置がP/2≦X≦3P/2の範囲にあるとき、第2のカメラ12が制御される。また、表示領域ADが第2の領域A2から第1の領域A1に移動する場合、その位置が−P/2≦X≦P/2の範囲にあるとき、第1のカメラ11が制御され、その位置がP/2<X≦3P/2の範囲にあるとき、第2のカメラ12が制御される。そして、表示領域ADの移動方向にかかわらずに、第1のカメラ11は、表示領域ADの位置に基づき、撮影条件p1=X、t1=Yで制御され、撮影条件p2=X−P、t2=Yで制御される。
【0044】
【表1】

【0045】
図6および図7には、第1の領域A1から第2の領域A2に移動する物体Oの映像を捉えて表示する動作が説明されている。図6は、第1の実施形態に係る映像表示システムの動作を示す図であり、図7は、シーケンス図である。
【0046】
以下では、第1および第2のカメラ11、12では、所定の撮影条件(p1、p2=±0、t1、t2=±0、z1、z2=1.0等)を伴う第1および第2の撮影領域S1、S2が予め設定されているとする。また、表示領域ADが第1の領域A1の中央、つまり(X、Y)=(0、0)に位置しているとする。
【0047】
ユーザが映像表示の開始を指示すると、映像表示装置50では、制御部55が表示領域ADの位置を判定する。ここで、表示領域ADは、仮想領域AV1で(X、Y)=(0、0)に位置している。よって、制御部55は、表示領域ADが第1の領域A1に位置していると判断し、映像データの送信開始を第1のカメラ11に要求する。第1のカメラ11では、撮像部21が第1の撮影領域S1の被写体を撮像し、通信部23が映像データを映像表示装置50に送信する。映像表示装置50では、通信部54が映像データを受信し、表示部53が映像を表示する。これにより、映像表示装置50は、第1の撮影領域S1の被写体を表示する。
【0048】
図6に示すT1の状態では、移動物体Oが第1の領域A1を第2の領域A2に向けて移動している。ユーザは、移動物体Oを捉えるように表示領域ADを移動させる(ステップS11)。映像表示装置50では、取得部51が表示領域ADを移動させるための情報を取得し、制御部55が取得された情報に基づき表示領域ADの位置を判定する(S12)。ここで、表示領域ADは、第1の領域A1、つまり仮想領域AV1で−P/2≦X<P/2の範囲に位置している。この場合、表示領域ADの映像は、ズーム率z1にかかわらず、第1の撮影領域S1に捉えられる。映像表示装置50では、制御部55が表示領域ADの移動に応じたパン/チルト動作を第1のカメラ11に要求し、通信部54が制御信号を第1のカメラ11に送信する(S13)。つまり、制御部55は、表示領域ADの位置(X、Y)の変化に応じたパン/チルト角度p1、t1の変更を第1のカメラ11に要求する。
【0049】
第1のカメラ11では、通信部23が制御信号を受信し、制御部25が駆動部24を通じてパン/チルト動作を制御し(S14)、撮像部21がパン/チルト動作に応じて移動された第1の撮影領域S1の被写体を撮像する。映像表示装置50は、映像データを受信して(S15)、第1の撮影領域S1に捉えられた移動物体Oを表示する。
【0050】
T2の状態では、移動物体Oが第2の領域A2との境界の手前まで移動している。ユーザは、移動物体Oを捉えるように表示領域ADを移動させる(S16)。制御部55は、表示領域ADが第1の領域A1、つまり仮想領域AV1で−P/2≦X<P/2の範囲に位置していると判定する(S17)。そして、制御部55は、表示領域ADの移動に応じたパン/チルト動作を第1のカメラ11に要求する(S18)。第1のカメラ11は、パン/チルト動作し(S19)、映像表示装置50は、映像データを受信して(S20)、第1の撮影領域S1に捉えられた移動物体Oを表示する。
【0051】
T3の状態では、移動物体Oが第1の領域A1と第2の領域A2との境界まで移動している。ユーザは、移動物体Oを捉えるように表示領域ADを移動させる(S21)。制御部55は、表示領域ADが第1の領域A1と第2の領域A2との境界、つまり仮想領域AV1でX=P/2に位置していると判定する(S22)。この場合、表示領域ADの映像は、ズーム率z2にかかわらず、第2の撮影領域S2に捉えられる。すると、制御部55は、表示領域ADを第1の撮影領域S1から第2の撮影領域S2に自動的に切替える。結果的に、映像表示装置50では、第1のカメラ11に代えて第2のカメラ12が制御対象となる。
【0052】
ここで、表示領域ADは、撮影領域S1、S2間で以下のように切替えられる。映像表示装置50では、制御部55が表示領域ADの移動に応じたパン/チルト動作(およびズーム動作)を第2のカメラ12に要求し(S23)、通信部54が制御信号を第2のカメラ12に送信する。つまり、p2=p1、t2=t1とするパン/チルト動作(およびz2=z1とするズーム動作)を第2のカメラ12に要求する。第2のカメラ12では、通信部23が制御信号を受信し、制御部25が駆動部24を通じてパン/チルト動作(およびズーム動作)を制御する(S24)。撮像部21は、パン/チルト動作に応じて移動された第2の撮影領域S2の被写体を撮像可能な状態になると、動作完了通知を送信するように通信部23を制御する(S25)。この時点では、映像表示装置50は、第1の撮影領域S1に捉えられた移動物体Oを表示している。
【0053】
動作完了通知を受けると、映像表示装置50では、制御部55が映像データの送信終了を第1のカメラ11に要求する(S26)。第1のカメラ11では、制御部25がデータ送信を終了するように通信部23を制御する。また、映像表示装置50では、制御部55が映像データの送信開始を第2のカメラ12に要求する(S27)。第2のカメラ12では、撮像部21が第2の撮影領域S2の被写体を撮像し、通信部23が映像データを映像表示装置50に送信する(S28)。映像表示装置50では、通信部54が映像データを受信し、表示部53が第2の撮影領域S2に捉えられた移動物体Oを表示する。
【0054】
T4の状態では、移動物体Oが第2の領域A2を右方向に移動している。ユーザは、移動物体Oを捉えるように表示領域ADを移動させる(S29)。制御部55は、表示領域ADが第2の領域A2、つまり仮想領域AV1でP/2<X≦3P/2の範囲に位置していると判定する(S30)。そして、制御部55は、表示領域ADの移動に応じたパン/チルト動作を第2のカメラ12に要求する(S31)。第2のカメラ12は、パン/チルト動作し(S32)、映像表示装置50は、映像データを受信して(S33)、第2の撮影領域S2に捉えられた移動物体Oを表示する。
【0055】
第1の実施形態によれば、ユーザは、移動物体Oの映像を連続して捉えるために、制御対象となるカメラ11、12を手動で切替えなくてもよく、切替え後のカメラ11または12をパン/チルト操作(必要に応じてズーム操作も)しなくてもよい。このため、撮影領域S1、S2間で表示領域ADをスムーズに切替えることができる。また、撮影領域S1、S2間で表示領域ADを切替え、表示領域ADに相当する撮影領域S1またはS2の映像のみを処理するので、映像データの量を抑えることができる。なお、上記説明では、表示領域ADがT3の状態で切替えられているが、T3〜T4の状態の途中、つまり表示領域ADが第1の領域A1と第2の領域A2との境界を通過した直後の時点で切替えられてもよい。
【0056】
[4.第2の実施形態に係る映像表示システム]
つぎに、図8から図11を参照して、本発明の第2の実施形態に係る映像表示システムの動作について説明する。第2の実施形態では、第1の領域A1と第2の領域A2とを部分的に重複させて組合せた仮想領域AV2を用いて、撮影領域S1、S2間で表示領域ADが切替えられる。以下では、第1の実施形態と重複する説明を省略する。
【0057】
図8には、第2の実施形態に係る仮想領域AV2が示されている。仮想領域AV2は、第1の領域A1と第2の領域A2とを部分的に重複するように左右に並べて組合せた領域である。ここで、第1の領域A1と第2の領域A2とは、所定幅W(角度)の領域で重複している。以下では、所定幅Wの領域を重複領域AWと称する。
【0058】
映像表示装置50は、仮想領域AV2での表示領域ADの位置に応じて、第1または第2の撮影領域S1、S2の映像を表示する。図8に示す例では、表示領域ADとして選択された第1の撮影領域S1に捉えられた移動物体Oが表示される。
【0059】
仮想領域AV2での表示領域ADの位置は、第1の領域A1の中央を基準(X、Y)=(0、0)として、第1および第2のカメラ11、12のパン/チルト角度により表される。表示領域ADの位置は、例えば、第1の領域A1の左上端では(X、Y)=(−P/2、T/2)、第1の領域A1の右下端では(X、Y)=(P/2、−T/2)と表される。また、第2の領域A2の左上端では(X、Y)=(P/2−W、T/2)、第2の領域A2の右下端では(X、Y)=(3P/2−W、−T/2)と表される。つまり、第1の領域A1に位置する表示領域ADは、第1の撮影領域S1に相当し、その位置が(X、Y)=(p1、t1)と表される。また、第2の領域A2に位置する表示領域ADは、第2の撮影領域S2に相当し、その位置が(X、Y)=(p2+P−W、t2)と表される。
【0060】
ここで、表示領域ADは、ズーム率z=1.0の場合に基準幅w(角度)、基準高h(角度)の領域に相当するとする。すると、第1の領域A1に位置する表示領域ADは、仮想領域AV2で(p1−w/2z1、t1−h/2z1)〜(p1+w/2z1、t1+h/2z1)の範囲を占め、第2の領域A2に位置する表示領域ADは、仮想領域AV2で(p2+P−W−w/2z2、t2−h/2z2)〜(p2+P−W+w/2z2、t2+h/2z2)の範囲を占める。そして、例えば、重複領域AWの中央の表示領域ADは、(X、Y)=(P/2−W/2、0)に位置する。
【0061】
以上より、表示領域ADの位置とカメラ11、12の撮影条件とは、以下の関係を有することになる。つまり、表示領域ADが第1の領域A1から第2の領域A2に移動する場合、その位置が−P/2≦X<P/2−Wの範囲にあるとき、第1のカメラ11が制御され、その位置がP/2−W≦X≦3P/2−Wの範囲にあるとき、第2のカメラ12が制御される。また、表示領域ADが第2の領域A2から第1の領域A1に移動する場合、その位置が−P/2≦X≦P/2の範囲にあるとき、第1のカメラ11が制御され、その位置がP/2<X≦3P/2−Wの範囲にあるとき、第2のカメラ12が制御される。そして、表示領域ADの移動方向にかかわらずに、第1のカメラ11は、表示領域ADの位置に基づき、撮影条件p1=X、t1=Yで制御され、撮影条件p2=X−P+W、t2=Yで制御される。
【0062】
【表2】

【0063】
図9から図11には、第1の領域A1から第2の領域A2に移動する物体Oの映像を捉えて表示する動作が説明されている。図9および図10は、第2の実施形態に係る映像表示システムの動作を示す図であり、図11は、シーケンス図である。
【0064】
図9に示すT2の状態では、移動物体Oが重複領域AWの手前まで移動している。ユーザは、移動物体Oを捉えるように表示領域ADを移動させる(ステップS101)。ここで、表示領域ADは、仮想領域AV2で−P/2≦X<P/2−Wの範囲に位置している。映像表示装置50は、表示領域ADが重複領域AW以外の第1の領域A1に位置していると判定し(S102)、表示領域ADの移動に応じたパン/チルト動作を第1のカメラ11に要求する(S103)。第1のカメラ11は、パン/チルト動作し(S104)、第1の撮影領域S1の被写体を撮像する。映像表示装置50は、映像データを受信して(S105)、第1の撮影領域S1に捉えられた移動物体Oを表示する。
【0065】
T3の状態では、移動物体Oが第1の領域A1と第2の領域A2の境界まで移動している。ユーザは、移動物体Oを捉えるように表示領域ADを移動させる(S106)。ここで、表示領域ADは、仮想領域AV2でX=P/2−Wに位置している。映像表示装置50は、表示領域ADが第1の領域A1と第2の領域A2との境界に位置していると判定する(S107)。すると、映像表示装置50は、表示領域ADの移動に応じたパン/チルト動作(およびズーム動作)を第2のカメラ12に要求する(S108)。第2のカメラ12は、パン/チルト動作(およびズーム動作)を開始する(S109)。
【0066】
図10に示すT3−1の状態では、ユーザは、移動物体Oに追従して表示領域ADを移動させる(S110)。ここで、表示領域ADは、仮想領域AV2でP/2−W<X<P/2の範囲に位置している。第1のカメラ11は、表示領域ADの移動に追従したパン/チルト動作を第1のカメラ11に要求する(S111)。第1のカメラ11は、第1の撮影領域S1を第1の領域A1と第2の領域A2との境界を通過して右方向に移動させる(S112)。第1のカメラ11は、第1の撮影領域S1の被写体を撮像し、映像表示装置50は、映像データを受信して(S113)、第1の撮影領域S1に捉えられた移動物体Oを表示する。また、第1のカメラ11は、撮影条件の変化を第2のカメラ12に送信する(S114)。
【0067】
一方、第2のカメラ12は、表示領域ADを切替えるためのパン/チルト動作の途中にあり、第1の撮影領域S1の位置に第2の撮影領域S2の位置を合致させるように、第2の撮影領域S2を左方向に移動させる(S115)。ここで、重複領域AWに位置する表示領域ADの映像は、ズーム率z1、z2にかかわらず、第1または第2の撮影領域S1、S2のどちらにも捉えることができる。
【0068】
T3−2の状態では、第1の撮影領域S1の位置と第2の撮影領域S2の位置が合致している(S116)。第2のカメラ12は、第1のカメラ11の撮影条件を第2のカメラ12の撮影条件と比較して、撮影領域の一致を判定する。これにより、第1および第2の撮影領域S1、S2には、移動物体Oの映像が捉えられることになる。すると、第2のカメラ12は、動作完了通知を映像表示装置50に送信する(S117)。そして、映像表示装置50は、動作完了通知を受けると、映像データの送信終了を第1のカメラ11に要求(S118)した後に、映像データの送信開始を第2のカメラ12に要求する(S119)。第2のカメラ12は、パン/チルト動作およびズーム動作に応じて移動された第2の撮影領域S2の被写体を撮像し、映像表示装置50は、映像データを受信して(S120)、第2の撮影領域S2に捉えられた移動物体Oを表示する。
【0069】
T4の状態では、移動物体Oが重複領域AWを移動している。ユーザは、移動物体Oを捉えるように表示領域ADを移動させる(S121)。ここで、表示領域ADは、仮想領域AV2でP/2−W≦X<P/2の範囲に位置している。映像表示装置50は、表示領域ADが重複領域AWに位置していると判定し(S122)、表示領域ADの移動に応じたパン/チルト動作を第2のカメラ12に要求する(S123)。第2のカメラ12は、パン/チルト動作し(S124)、第2の撮影領域S2の被写体を撮像し、映像表示装置50は、映像データを受信して(S125)、第2の撮影領域S2に捉えられた移動物体Oを表示する。
【0070】
第2の実施形態によれば、表示領域ADが少なくとも第1の領域A1と第2の領域A2との境界まで移動すると、撮影領域S1、S2間で表示領域ADが切替えられる。ここで、重複領域AWに位置する表示領域ADの映像は、撮影領域S1またはS2のいずれにも捉えることができる。このため、表示領域ADが重複領域AWを移動している間は、表示領域ADを切替えるための準備が整うまで、表示領域ADの移動に追従して切替え前の表示領域ADに対応する撮影領域S1またはS2の映像を表示することができる。よって、表示領域ADの切替えに時間を要する場合でも、撮影領域S1、S2間で表示領域ADをスムーズに切替えることができる。なお、上記説明では、表示領域ADがT3の状態で切替えられているが、T3〜T4の状態の途中、つまり表示領域ADが第1の領域A1と第2の領域A2との境界を通過した後で重複領域AWに位置するときに切替えられてもよい。
【0071】
[5.第3の実施形態に係る映像表示システム]
つぎに、図12および図13を参照して、本発明の第3の実施形態に係る映像表示システムの動作について説明する。第3の実施形態では、パン/チルト操作に代えて、第1および第2のカメラ11、12から取得される動体検出情報に基づき、物体Oの移動に追従して表示領域ADが移動される。
【0072】
図12および図13には、第1の領域A1から第2の領域A2に移動する物体Oの映像を捉えて表示する動作が説明されている。以下では、第1の実施形態に係る仮想領域AV1を利用する場合について説明する。図12は、第3の実施形態に係る映像表示システムの動作を示す図であり、図13は、シーケンス図である。
【0073】
まず、第1のカメラ11は、第1の領域A1を移動する物体Oを検出する。例えば、第1のカメラ11は、ズーム率z1を最小にして、第1の領域A1で第1の撮影領域S1を隈なく移動させるようにパン/チルト動作する。第1のカメラ11は、パン/チルト動作に応じて移動された第1の撮影領域S1の被写体を撮像し、撮像信号から映像データを生成する。第1のカメラ11は、同一の撮影領域について前周期の映像データと現周期の映像データとを比較し、被写体の移動状況を推定し、例えば、移動中の被写体の大きさ、移動速度等に応じて、映像表示の対象となる移動物体Oを検出する。第2のカメラ12も同様に、第2の領域A2を移動する物体Oを検出する。なお、両方の領域A1、A2で移動物体Oを検出した場合、一方の領域A1またはA2で検出した移動物体Oを映像表示の対象として選択する。
【0074】
以下では、第1の領域A1で移動物体Oが検出された場合を想定する。この場合、第1のカメラ11は、移動物体Oを検出したことを映像表示装置50に通知する(ステップS201)。すると、映像表示装置50は、移動物体Oを捉えた映像データの送信開始を第1のカメラ11に要求する(S202)。
【0075】
図12に示すT1の状態では、移動物体Oが第1の領域A1を第2の領域A2に向けて移動している。第1のカメラ11は、第1の撮影領域S1に移動物体Oを捉えるようにパン/チルト動作する(S203)。そして、第1のカメラ11は、第1の撮影領域S1の被写体を撮像し、映像データとともに撮影条件p1、t1、z1を映像表示装置50に送信する(S204)。映像表示装置50は、受信した撮影条件に基づき、表示領域ADが第1の領域A1に位置していると判定する(S205)。ここで、制御部55は、撮影条件の変化に応じた表示領域ADの位置(X、Y)の変化に基づき、仮想領域AV1での表示領域ADの位置を判定する。
【0076】
T2の状態では、移動物体Oが第2の領域A2との境界の手前まで移動している。第1のカメラ11は、第1の撮影領域S1に移動物体Oを捉えるようにパン/チルト動作し(S206)、映像データとともに撮影条件を映像表示装置50に送信する(S207)。映像表示装置50は、受信した撮影条件に基づき、表示領域ADが第1の領域A1に位置していると判定する(S208)。
【0077】
T3の状態では、移動物体Oが第2の領域A2との境界まで移動している。第1のカメラ11は、第1の撮影領域S1を第1の領域A1の右端まで移動させ(S209)、第1の撮影領域S1に捉えられた映像のデータとともに撮影条件を映像表示装置50に送信する(S210)。映像表示装置50は、受信した撮影条件に基づき、表示領域ADが第2の領域A2との境界に位置していると判定する(S211)。すると、映像表示装置50は、第1の撮影領域S1から第2の撮影領域S2に表示領域ADを自動的に切替え、第1のカメラ11に代えて第2のカメラ12が制御対象となる。
【0078】
具体的に、映像表示装置50は、表示領域ADの移動に応じたパン/チルト動作(必要に応じてズーム動作も)を第2のカメラ12に要求する(S212)。つまり、p2=p1、t2=t1とするパン/チルト動作と、必要に応じてz2=z1とするズーム動作を第2のカメラ12に要求する。第2のカメラ12は、表示領域ADの移動に応じてパン/チルト動作(およびズーム動作)し(S213)、第2の撮影領域S2の被写体を撮像可能な状態になると、動作完了通知を映像表示装置50に送信する(S214)。映像表示装置50は、動作完了通知を受けると、映像データの送信終了を第1のカメラ11に要求する(S215)一方で、映像データの送信開始および移動物体Oの検出開始を第2のカメラ12に要求する(S216)。映像表示装置50は、第2の撮影領域S2の被写体を表示する。
【0079】
T4の状態では、移動物体Oが第2の領域A2を右方向に移動している。そして、第2のカメラ12は、第2
の撮影領域S2に移動物体Oを検出すると、動体検出通知を映像表示装置50に送信する(S217)。第2のカメラ12は、第1のカメラ11の場合と同様に、移動物体Oの移動に追従して第2の撮影領域S2を移動させる(S218)。第2のカメラ12は、第2の撮影領域S2に捉えられた映像のデータとともに撮影条件を映像表示装置50に送信し(S219)、映像表示装置50は、第2の撮影領域S2の被写体を表示する。
【0080】
第4の実施形態によれば、カメラ11、12から取得される動体検出情報に基づき、物体Oの移動に追従して撮影領域S1、S2間で表示領域ADをスムーズに切替えることができる。なお、上記説明では、第1の実施形態に係る仮想領域AV1を用いて、移動物体Oの移動に追従した映像を表示する場合について説明した。しかし、第2の実施形態に係る仮想領域AV2を用いて、移動物体Oの移動に追従した映像を表示してもよい。
【0081】
[6.映像表示システムの変形例]
また、第1から第3の実施形態では、左右に並べて配置された第1および第2のカメラ11、12を有する映像表示システムについて説明した。しかし、映像表示システムは、図14に示すように、左右に並べて配置された第1から第3のカメラ11、12、13を有してもよい。この場合、第1から第3の領域A1、A2、A3を組合せた仮想領域AV3での表示領域ADの位置に応じて、第1、第2、第3の撮影領域S1、S2、S3の間で表示領域ADが切替えられる。これにより、広範なパン機能を有する映像表示システムを実現することができる。例えば、第1の実施形態では、表示領域ADの位置とカメラ11、12、13の撮影条件とは、以下の関係を有することになる。
【0082】
【表3】

【0083】
また、映像表示システムは、図15に示すように、左右および上下に並べて配置された第1から第4のカメラ11、12、13、14を有してもよい。この場合、第1から第4の領域A1、A2、A3、A4を組合せた仮想領域AV4での表示領域ADの位置に応じて、第1、第2、第3、第4の撮影領域S1、S2、S3、S4の間で表示領域ADが切替えられる。これにより、広範なパン/チルト機能を有する映像表示システムを実現することができる。第1の実施形態では、表示領域ADの位置とカメラ11、12、13、14の撮影条件とは、以下の関係を有することになる。
【0084】
【表4】

【0085】
ここで、映像表示システムでは、撮影条件p、tから表示領域ADの位置を判定するために、複数のカメラ11、12等が正確に設置されなければならない。例えば、第1の実施形態では、第1のカメラ11、12と第2のカメラは、第1の領域A1の右上端に位置する第1の撮影領域S1と、第2の領域A2の左上端に位置する第2の撮影領域S2とが互いに隣接し、第1の領域A1の右下端に位置する第1の撮影領域S1と、第2の領域A2の左下端に位置する第2の撮影領域S2とが互いに隣接するように設置される。複数のカメラ11、12は、各カメラ11、12の撮影可能領域を確認しながら、手動で設置されてもよい。また、複数のカメラ11、12は、GPS、電子コンパス、加速度センサ、ジャイロセンサ、変位センサ等の各種センサ情報を用いて、各カメラの相対的な位置関係を把握しながら、設置されてもよい。
【0086】
また、上記説明では、複数のカメラ11、12と、複数のカメラ11、12にネットワークNWを介して接続される映像表示装置50とから構成される映像表示システムについて説明した。しかし、映像表示システムは、例えばクラウドコンピューティング等の技術を用いて実現されてもよい。この場合、図16に示すように、映像表示システムは、カメラサーバ等のサーバ40に接続された複数のカメラ11、12と、サーバ40にネットワークNWを介して接続される映像表示装置50´とから構成される。そして、映像表示装置50´が操作機能および表示機能を実現し、サーバ40が制御機能を実現することになる。
【0087】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0088】
例えば、上記説明では、第1の領域A1から第2の領域A2に向けて移動物体Oが移動する場合について説明したが、逆向きに移動物体Oが移動する場合についても同様に説明できることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0089】
1、2、11、12 カメラ
5、50、50´ 映像表示装置
NW ネットワーク
40 サーバ
O 移動物体
A1、A2、A3、A4 第1、第2、第3、第4の領域
S1、S2、S3、S4 第1、第2、第3、第4の撮影領域
AV1、AV2、AV3、AV4 仮想領域
AD 表示領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
パン/チルト制御可能な少なくとも第1および第2のカメラに通信回線を通じて接続される映像表示装置であって、
前記第1のカメラのパン/チルト範囲に相当する第1の領域と、前記第2のカメラのパン/チルト範囲に相当する第2の領域とを少なくとも互いに隣接させて組合せた仮想領域で表示領域を移動させるための情報を取得する取得部と、
前記仮想領域での前記表示領域の位置を判定し、前記表示領域の移動の前後で前記表示領域が前記第1の領域に位置するときに、前記表示領域の映像を受信するためのパン/チルト動作を前記第1のカメラに要求し、前記表示領域が前記第1の領域から少なくとも前記第1の領域と前記第2の領域との境界まで移動したときに、前記表示領域の映像を受信するためのパン/チルト動作を前記第2のカメラに要求する制御部と、
前記第1または第2のカメラから受信された前記表示領域の映像を表示する表示部と
を備える映像表示装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記表示領域が前記第1の領域から少なくとも前記第1の領域と前記第2の領域との境界まで移動したときに、前記第1の領域に含まれる映像が表示されている状態で、前記表示領域の映像を受信するためのパン/チルト動作を前記第2のカメラに要求した後に、前記第1の領域に含まれる映像の送信終了を前記第1のカメラに要求し、前記第2の領域に含まれる映像の送信開始を前記第2のカメラに要求する、請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項3】
前記仮想領域は、前記第1の領域と前記第2の領域とを部分的に重複させて組合せた領域であり、前記第1の領域と前記第2の領域とが重複する重複領域を有し、
前記制御部は、前記表示領域が前記第1の領域から少なくとも前記第1の領域と前記第2の領域との境界まで移動したときに、前記重複領域を移動する前記表示領域に追従するパン/チルト動作を前記第2のカメラに要求し、前記第1のカメラと前記第2のカメラとの間で撮影領域の位置が一致するまで、前記表示領域に追従するパン/チルト動作を前記第1のカメラに要求し、前記撮影領域の位置が一致すると、前記第1の領域に含まれる映像の送信終了を前記第1のカメラに要求し、前記第2の領域に含まれる映像の送信開始を前記第2のカメラに要求する、請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項4】
前記第1および第2のカメラがズーム制御可能であって、
前記取得部は、前記表示領域を拡縮するための情報をさらに取得し、
前記制御部は、前記表示領域が前記第1の領域から少なくとも前記第1の領域と前記第2の領域との境界まで移動したときに、前記表示領域の映像を受信するためのズーム動作を前記第2のカメラに要求する、請求項1から3のいずれか1項に記載の映像表示装置。
【請求項5】
前記取得部は、前記表示領域を移動させるための操作情報をユーザから取得する、請求項1から4のいずれか1項に記載の映像表示装置。
【請求項6】
前記取得部は、前記仮想領域で移動する物体を捉えた前記表示領域を、前記物体の移動に追従して前記仮想領域で移動させるための動体検出情報を前記第1または第2のカメラから取得する、請求項1から4のいずれか1項に記載の映像表示装置。
【請求項7】
パン/チルト制御可能な少なくとも第1および第2のカメラと、
少なくとも前記第1および前記第2のカメラに通信回線を通じて接続される映像表示装置とを有する映像表示システムであって、
前記映像表示装置は、
前記第1のカメラのパン/チルト範囲に相当する第1の領域と、前記第2のカメラのパン/チルト範囲に相当する第2の領域とを少なくとも互いに隣接させて組合せた仮想領域で前記表示領域を移動させるための情報を取得する取得部と、
前記仮想領域での前記表示領域の位置を判定し、前記表示領域の移動の前後で前記表示領域が前記第1の領域に位置するときに、前記表示領域の映像を受信するためのパン/チルト動作を前記第1のカメラに要求し、前記表示領域が前記第1の領域から少なくとも前記第1の領域と前記第2の領域との境界まで移動したときに、前記表示領域の映像を受信するためのパン/チルト動作を前記第2のカメラに要求する制御部と、
前記第1または第2のカメラから受信された前記表示領域の映像を表示する表示部と
を備える映像表示システム。
【請求項8】
通信回線を通じてパン/チルト制御可能な少なくとも第1および第2のカメラを用いた映像表示方法であって、
前記第1のカメラのパン/チルト範囲に相当する第1の領域と、前記第2のカメラのパン/チルト範囲に相当する第2の領域とを少なくとも互いに隣接させて組合せた仮想領域で表示領域を移動させるための情報を取得し、
前記仮想領域での前記表示領域の位置を判定し、前記表示領域の移動の前後で前記表示領域が前記第1の領域に位置するときに、前記表示領域の映像を受信するためのパン/チルト動作を前記第1のカメラに要求し、前記表示領域が前記第1の領域から少なくとも前記第1の領域と前記第2の領域との境界まで移動したときに、前記表示領域の映像を受信するためのパン/チルト動作を前記第2のカメラに要求し、
前記第1または第2のカメラから受信された前記表示領域の映像を表示すること
を含む映像表示方法。
【請求項9】
通信回線を通じてパン/チルト制御可能な少なくとも第1および第2のカメラを用いた映像表示方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記映像表示方法は、
前記第1のカメラのパン/チルト範囲に相当する第1の領域と、前記第2のカメラのパン/チルト範囲に相当する第2の領域とを少なくとも互いに隣接させて組合せた仮想領域で表示領域を移動させるための情報を取得し、
前記仮想領域での前記表示領域の位置を判定し、前記表示領域の移動の前後で前記表示領域が前記第1の領域に位置するときに、前記表示領域の映像を受信するためのパン/チルト動作を前記第1のカメラに要求し、前記表示領域が前記第1の領域から少なくとも前記第1の領域と前記第2の領域との境界まで移動したときに、前記表示領域の映像を受信するためのパン/チルト動作を前記第2のカメラに要求し、
前記第1または第2のカメラから受信された前記表示領域の映像を表示すること
を含むプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−124763(P2012−124763A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274781(P2010−274781)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】