説明

暖房システム

【課題】 流体加熱装置を備えた暖房システムにおいて、該流体加熱装置内に発生する空気だまりや水蒸気を抜き去ることができる暖房システムを提供する。
【解決手段】 流体を保持する流体タンク81と、流体を加熱する流体加熱装置100と、流体加熱装置により発生した熱を室内に供給する放熱器220と、流体を循環させる循環ポンプ82とを具備し、流体加熱装置を熱源として流体を放熱器に循環させるように構成した暖房システムであって、流体加熱装置から流体タンクに通じるオリフィス195を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
我が国における高齢化社会の進行に伴い、寒さの厳しい冬季にあっても快適な住環境を提供する床暖房システムが注目されている。床暖房システムは、室内に温風を循環させて室内を暖める暖房システムとは異なり、暖まった床面からの輻射と熱伝導により室内を暖房するため、室内の居住者に不快な風を感じさせないという利点がある。
【0003】
これまで、温水式床暖房システムはその熱源としてガス、灯油等の燃料を燃焼させる方法、あるいはニクロム線をコア材としたシーズヒータを使用する方法が一般的であった。また、その一方で、床暖房以外の分野においては、多くの流体加熱用IHの提案がなされている。
【0004】
かかるIH流体加熱装置に関して本願発明者は、先に特許文献1において、絶縁体よりなる外筒と、外筒の外周部に捲線された高周波電流加熱コイルと、外筒の内部に配置されるとともに高周波電流加熱コイルによって発熱する断面形状が回転対称形である柱形状の金属体とを備え、金属体は柱形状の軸心に関して略回転対称の位置に複数の貫通口を備え、外筒の内周面と金属体の外周面との間に一定の間隔を設けて流体流路を形成したことを特徴とする流体加熱装置を提案した。
【特許文献1】特願2003−296345号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、IHを利用して流体加熱装置を構成しようとする場合、上記特許文献1に開示された構成のように、外筒内に発熱体を設けることが必要であり、かかる構造ゆえに外筒内に空気だまりができやすいという問題があった。また、水位が低下した場合発生する蒸気の抜きようがないという問題もあった。かかる問題は、IHを利用した流体加熱装置において顕著であるが、流体加熱装置一般に通じる問題点でもある。
【0006】
そこで、本発明は、流体加熱装置を備えた暖房システムにおいて、該流体加熱装置内に発生する空気だまりや水蒸気を抜き去ることができる暖房システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0008】
請求項1に記載の発明は、流体を保持する流体タンク(81)と、流体を加熱する流体加熱装置(100)と、流体加熱装置により発生した熱を室内に供給する放熱器(220)と、流体を循環させる循環ポンプ(82)とを具備し、流体加熱装置を熱源として流体を放熱器に循環させるように構成した暖房システムであって、流体加熱装置から流体タンクに通じるオリフィス(195)を設けることを特徴とする暖房システム(200)である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の暖房システム(200)において、流体加熱装置(100)は、軸心方向に順に第一端部(110)、中間部(120)、及び第二端部(130)を備えるとともに少なくとも中間部が絶縁体により形成された外筒(150)と、中間部の外周に捲線された高周波電流加熱コイル(160)と、外筒の内部に配置されるとともに高周波電流加熱コイルによって発熱する柱形状の金属体(170)と、外筒の内周面と金属体の外周面との間に一定の間隔を設けて形成された流体流路(180)と、を具備するとともに、金属体が軸心(X)方向に関して、中間部に対応する位置から両端方向の少なくとも一方に延設されており、外筒の第一端部に、流体流路からオリフィス(195)に通じる開口(196)が設けられていることを特徴とする。
【0010】
ここに、「金属体が軸心方向に関して、中間部に対応する位置から両端方向の少なくとも一方に延設されている。」とは、金属体長手方向の少なくとも一方の側が、高周波電流加熱コイルにより直接発熱される部位よりさらに外方に延設されていることを意味する。必ずしも延設されている金属体の端部が、外筒の端面にまで達している必要はなく、取り付け部材やフランジ、フィンなどで固定されていて、外筒の端面から所定距離離隔していてもよい趣旨である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の暖房システム(200)において、外筒(150)の内周面と金属体(170)の外周面との間に、これらの面と所定の間隔を隔てて配設された金属管(600)をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、流体加熱装置内に発生した空気だまりや蒸気は、オリフィスを通じて流体タンクへと抜くことができる。よって、空気だまりの発生により生じうる流体加熱装置の過熱、部材の溶解や、蒸気の発生により起こり得る水蒸気爆発を未然に防止することができる。また通常の床暖房システムに多用されているいわゆる空気抜きのように、定期的に空気を抜く作業を要しないので、メンテナンスフリーの安全なシステムを構成することができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、金属体は、高周波電流加熱コイルにより発熱される部分のさらに外方に延設されるので、長さ方向に温度勾配を形成して、流体の急激な加熱を防止することが容易なものとなる。よって、水蒸気の発生を防止して、より安全性の高い流体加熱装置を備えた暖房システムを構成することが可能となる。
【0014】
請求項3の発明によれば、流体は流体加熱装置内において、外筒内周面と金属管外周面との間、及び金属管内周面と金属体外周面との間に流通されるので、熱交換面積を広く取ることができる。従って、蒸気の発生を防止してさらに安全な流体加熱装置を備えた暖房システムを構築することができる。
【0015】
本発明のこのような作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0017】
図1は、本発明の暖房システムに備えられる流体加熱装置の一例を示す断面図である。図1に示すごとく、流体加熱装置100は、外筒150を備え、外筒150は軸心X(図1に、水平方向に仮想線(一点鎖線)にて表されている。)方向に、図の左から順に第一端部110、中間部120、及び第二端部130よりなる。また、図2は、図1に示した流体加熱装置100の正面図である。図3は、外筒150の第一端部110の部位を示し、(A)は一部を破断した正面図、(B)は側面図である。また、図4は、第一端部110と金属体170とオリフィスたるフレキシブルホース195を示す図である。図5は、外筒150の中間部120を示し、(A)は正面方向からみた断面図、(B)は側面図、(C)は(A)のA−A視断面図である。さらに、図6は、外筒150の第二端部130の部位を示し、(A)は長手方向中央付近で切断して、その部分から端部方向に見た図、(B)は一部を破断した正面図、(C)は側面図である。以下にこれら図1〜図6、及び図7を参照しつつ、本発明にかかる暖房システムに使用される流体加熱装置100について説明する。
【0018】
図1において、上記したように、流体加熱装置100は、軸心X方向に順に第一端部110、中間部120、及び第二端部130よりなる外筒150と、外筒中間部120の外周に捲線された高周波電流加熱コイル160と、外筒150の内部に配置されるとともに、高周波電流加熱コイル160によって発熱する柱形状の金属体170と、外筒150の内周面と金属体170の外周面との間にこれらの面と所定の間隔を隔てて配設された金属管600と、金属体170の外周面に螺旋状に捲線された金属線650とを備えている。この金属線650は、金属管600の内周面602に圧接して固定されている。
【0019】
外筒150の内周面150Aと金属管600の外周面601との間には一定の間隔を設けて形成された第一流体流路181が、金属管600の内周面602と金属体170の外周面170Aとの間には、一定の間隔を設けて形成された第二流体流路182が設けられている。これら第一流体流路181と、第二流体流路182とは、流体加熱装置100の外筒150内部を図面左側から右側方向に流体を流通させる流体流路180の中央部を構成している。
【0020】
さらに、外筒150の左端面にはワンタッチ継手190を介して、フレキシブルホース195が取り付けられている。これについては後に詳しく説明する。
【0021】
図3にも示されているように、第一端部110は、断面円形の筒状部112と、筒状部112の一端側の開口を閉鎖している端部底板113とを備え、端部底板113とは反対側の開口部115の外周縁には、さらに外周方向にフランジ111が延設されている。フランジ111には、角度等間隔(120度毎)に3つの孔114A、114B、114Cが設けられている。これらの孔114A〜Cを利用して、第一端部110と中間部120との連結がはかられる。
【0022】
筒状部112には、軸心Xに直交し且つオフセットされた方向に流体入り口管50が取り付けられ、その管内に流通する流体が流体加熱装置100の流体流路180に流入するように流体入り口51が開口されている。端部底板113には軸心X方向に4枚の係止フィン116A〜Dが立設されている。
【0023】
図4にも示すように、各係止フィン116A〜Dは、矩形の一の角が切り欠かれた形状に形成されており、その切り欠きの部分で、金属体170の左端部171Aを支えている。切り欠き部の長さは金属体170の半径より小さい。従って、金属体170の左端部171Aの端面172と、第一端部110の端部底板113とは係止フィン116A〜Dによって所定距離だけ離隔して固定配置されている。端部底板113には、軸心Xに沿って小孔196が空けられている。この小孔196に通じるように端部底板113の外部側にワンタッチ継手190が取り付けられ、さらにこのワンタッチ継手190の他端側にはフレキシブルホース195が装着されている。フレキシブルホース195の他端側は、後述する流体タンク81(図8参照)に連結されている。かかる構成により、外筒150内の流体流路180は、小孔196、ワンタッチ継手190、及びフレキシブルホース195を介して流体タンク81へと通じている。
【0024】
図5(A)にその正面方向からの断面が示されている中間部120は、両端面が開口された筒状部125を備え、筒状部125には図面左の左端側に、第一端部取り付けフランジ121A、フェライト取り付けフランジ122Aが、図面右の右端側に、フェライト取り付けフランジ122B、共用取り付けフランジ121Bがそれぞれ、筒状部125の外周面からさらに外方向に延設されている。第一端部取り付けフランジ121Aには筒状部125の外周部に沿って、さらにその外周側に6つの孔129A〜Fが等角度間隔(60度毎)で形成されている(図5には2つの孔129A、129Dのみが表されている。)。これら孔129A〜Fを利用して、中間部120と第一端部110との固定がはかられる。
【0025】
図5(B)は、図5(A)に表された中間部120を右方向から見た側面図であり、共用取り付けフランジ121Bが明確に表されている。共用取り付けフランジ121Bの上部、及び下部には、装置取り付け孔127A、127Bが設けられている。これら孔127A、127Bを利用して、流体加熱装置100は、後に説明する熱源機80に固定される。
【0026】
共用取り付けフランジ121Bにはまた、筒状部125の外周部に沿って、さらにその外周側に6つの孔128A〜Fが等角度間隔(60度毎)に形成されている。これら孔128A〜Fを利用して、中間部120と第二端部130とが連結される。
【0027】
図6に示されているように、第二端部130は、断面形状が円形の筒状部132と、筒状部132の一端側の開口を閉鎖している端部底板133とを備え、端部底板133とは反対側の開口部135の外周縁には、さらに外周方向にフランジ131が延設されている。フランジ131には、角度等間隔(120度毎)に3つの孔134A、134B、134Cが設けられている。これら孔134A〜Cを利用して、第二端部130と中間部120とが連結される。
【0028】
筒状部132には、軸心Xに直交し且つオフセットされた方向に流体出口管60が取り付けられ、その管内と流体加熱装置100の流体流路180とが通じるように流体出口61が開口されている。端部底板133には軸心X方向に4枚の係止フィン136A〜Dが略等角度間隔(90度毎)に延設配置されている。各係止フィン136A〜Dは、矩形に形成されており、各フィンの一辺の部分が、端部底板133に固定され、それと直交する一辺が金属体170の右端部171Bの外周部に当接されている。従って、金属体170の右端部171Bの端面173は、第二端部130の端部底板133と当接して配置されている。
【0029】
再び図1を参照して、第二端部130の端部底板133中央近傍には、温度センサ140が取り付けられている。図示のように温度センサ140は、金属体170の右端部171Bに近接して配置されている。熱伝導性の良い金属で形成されている金属体端部171A、171Bは、金属体170そのものの温度を代表しており、そこから流体に伝えられた熱が冷暖房システムを循環することから、安全保守上、その部位に温度検知器を設けておくのが望ましい。そこで、外部からの監視、保守の利便性を考えて、金属体端部にもっとも近い第二端部130の端部底板133に温度センサ140を配置したものである。
【0030】
図1及び図2に明確に示されているように、中間部120の外周部には、二つのフェライト取り付けフランジ122A、122Bの間に、高周波電流加熱コイル160が捲線されている。また、二つのフェライト取り付けフランジ122A、122Bそれぞれに設けられた6個の角孔126A〜F、126G〜L(角孔126G〜Lは不図示である。)には、軸心X方向に6本の磁束誘導フェライト166A〜Fが架け渡されている(図5(C)も参照されたい。)。
【0031】
再び図1に戻り説明を続ける。中間部の筒状部125の外周径と、第一端部110、及び第二端部130それぞれの筒状部112、132の内周径とはほぼ同一寸法に形成されている。しかして、第一端部110の開口部115に、中間部の筒状部125の左端側を差し入れて、フランジ111と第二端部取り付けフランジ121Aとを当接させて配置する。そして、これら各フランジの孔114A〜C、129A〜Fに適宜締結ネジ191A〜C(締結ネジ191B、及び191Cは図面に現れていない。)を差し入れて三箇所で固定することにより、第一端部110と中間部120とが連結される。なお、第一端部110の内周面と、中間部120の外周面との間には、リング状のシール部材71A、71Bが配設されて、連結部のシールがはかられている。
【0032】
次に、金属管600、及び金属線650と一体にされた金属体170(後に図7により説明する。)を中間部120に差し入れて、その左端172を第一端部110内のフィン116A〜Dの所定位置に合わせる。しかる後に、第二端部130の開口部135に、中間部の筒状部125の右端側を差し入れて、フランジ131と共用取り付けフランジ121Bとを当接させて配置する。これら各フランジの孔134A〜C、128A〜Fに適宜締結ネジ192A〜C(締結ネジ192B、及び192Cは図面に現れていない。)を差し入れて三箇所で固定することにより、第二端部130と中間部120とが連結される。なお、第二端部130の内周面と、中間部120の外周面との間には、リング状のシール部材72A、72Bが配設されて、連結部のシールがはかられている。かくして、第一端部110、中間部120、及び第二端部130が一体に連結されて外筒150が構成される。
【0033】
なお、図1、及び図2においては、流体入り口管50と流体出口管60とが同方向に向けて取り付けられているが、各フランジに設けられた孔は、60度あるいは120度ごとに等角度間隔に設けられているので、流体入り口管50と流体出口管60とが径方向になす角度を、60度おきに変化させることができる。これにより、流体加熱装置100全体の設計の自由度が増し、装置のコンパクト化、圧損の低減を図ることもできる。さらに、フランジ111、131に設けられている孔114A〜C、134A〜Cを円周方向の長孔として形成すれば、流体入り口管50と流体出口管60とが径方向になす角度を、任意の角度に連続的に変化させることもできる。
【0034】
図7は、金属体170と、金属管600と、これらの間に螺旋状に捲かれて配置された金属線650を示す図である。金属線650は、金属体170の外周面170Aに螺旋状に捲線されるとともに、該金属線650は金属管600の内周面602に圧接固定されている。かかる構成により、比較的簡易な加工によって、金属体170の外周側に(第二)流体流路182を形成しつつ、金属管600を配設することが可能となる。
【0035】
次に各部材を構成する材料について簡単に説明する。中間部120を構成する材料は、絶縁体で構成することが必要であり、例えば合成樹脂、あるいはセラミック材料等にて形成する。これに対して、第一端部110、及び第二端部130は材料としての限定はないが、生産工程における加工性等の観点から、所定の耐熱性を備えた樹脂成形品であることが好ましい。また、中間部120と同様にセラミックで構成しても良い。金属体170、及び金属管600は、磁性を備えた材料、たとえばSUS430等のステンレス鋼を材料として使用することができる。また、金属線650は、流体として水を使用する場合に、水まわりに真鍮系の材料を使用することが多いため、材料として銅(Cu)を使用することが好ましい。銅(Cu)を使用することにより電蝕を防止することができる。温度センサ140は、サーミスタにより構成されている。温度センサ140を、温度により変化する抵抗値を電流に変換するサーミスタにより構成することにより、熱電対を使用した場合に受けるノイズの影響を避けることができる。
【0036】
以上のように構成された流体加熱装置100は、高周波電流加熱コイル160により発熱される金属管600の外周面601、及び内周面602、並びに金属体170の外周面170A、さらには金属線650の表面において流体との熱交換が行われるので、熱交換面積を、非常に大きなものとすることができる。かかる構成により、突沸を防止でき、また、必要な場合には、流体加熱装置100自体の大きさをさらにコンパクトなものとすることができる。
【0037】
また、本発明の流体加熱装置100は、軸心方向Xに関して、高周波電流加熱コイル160より、金属体170が両端方向に長く形成されているので、高周波電流加熱コイル160により、発熱を促された金属体170の高周波電流加熱コイル160の軸心方向長さに対応する部分から、両端方向に温度勾配を形成して、流体の急激な加熱を防止することが容易なものとなる。また、金属体170の端部近傍に温度センサ140が配置されているので、金属体170の温度を直接的に検知することが可能であり、装置の過熱を防止することが容易となる。
【0038】
上述した通り、流体加熱装置100は、外筒150の一部をなし絶縁体よりなる中間部120と、中間部120の外周に捲線された高周波電流加熱コイル160と、外筒150の内部に高周波電流加熱コイル160により誘導加熱される金属体170、及び金属管600とを備えており、この金属体170及び金属管600が高周波誘導電流により内部に渦電流損を発生し、その損失エネルギーにより発熱する(図1及び2も参照)。
磁束誘導フェライト166は、高周波電流による発生磁束をフェライト内に誘導して、磁束がIHセル外部に漏洩するのを抑止する。磁束が外部に漏洩すると、周辺金属に誘導加熱を引き起こして好ましくないからである。また、電波ノイズが周辺の電子機器に悪影響を及ぼすことを防止する目的もある。
【0039】
発熱した金属体170及び金属管600を内部に有する外筒150内に流体を通すと熱交換が行われ、流体の温度が上昇することになる。即ち、加熱流体となる。本発明に使用される流体としては特に限定されるものではないが、例えば水、エチレングリコールのような不凍液、鉱油、ポリエステル等の合成油などを使用することができる。
【0040】
図8は、流体タンクと流体加熱装置とを備えた熱源機の内部構造を示す正面図である。図示の熱源機80において、台板85上には共用取り付けフランジ121Bを利用して流体加熱装置100が縦型に取り付けられている。図1〜7においては流体加熱装置100、及びそれを構成する各部材が便宜上横向きに表されていたが、実際に流体加熱装置100が使用されるときには図8に表されているように、縦置きにして使用される。このとき第一端部110が上側に配置される。流体加熱装置100の斜め上方には流体タンク81が、取り付けパネル板86にネジ止めされている。流体タンク81の底面には、流体加熱装置100のものと同様のワンタッチ継手87がタンク内部に通じるように取り付けられている。流体加熱装置100のワンタッチ継手190と、流体タンク81のワンタッチ継手87とは、前記したフレキシブルホース195で連結されている。
【0041】
かかる構成によって、流体加熱装置100の内部と流体タンク81とは流体の通路が通じている。流体加熱装置100内において、蒸気や気泡が発生するとそれらは流体加熱装置100の筒状部150内上部へと向かい、ワンタッチ継手190、フレキシブルホース195、及びワンタッチ継手87を介して、流体タンク81へと抜けてゆく。しかして、流体加熱装置100内に発生した空気だまりや蒸気は筒状体150に滞留させることなく、流体タンク81へと抜くことができる。よって、空気だまりの発生により生じうる流体加熱装置100の過熱、部材の溶解や、蒸気の発生により起こり得る水蒸気爆発を未然に防止することができる。また通常の床暖房システムに多用されているいわゆる空気抜きのように、定期的に空気を抜く作業を要しないので、メンテナンスフリーの安全な熱源機80を構成することができる。
【0042】
流体タンク81の上部には注水口88が設けられている。注水口88から入れられた水は流体タンク81内に貯水される。流体タンク81は、配管を介して循環ポンプ82へと通じている。熱源機80は商用電源から交流電圧の給電を受けて動作する。漏電ブレーカ83は、商用電源の基幹配線に設けられており、熱源機80の内部で漏電が発生するとオフ状態となって、熱源機80を商用電源から電気的に分離する。温水は不図示の(戻りヘッダー)→(循環ポンプ82)→(流体加熱装置100)→(往きヘッダー)→(放熱器)→(戻りヘッダー)の経路で循環される。
【0043】
図9は、図8に示す熱源機80を備えた暖房システムの一例を示す図である。この床暖房システム200は、熱源機80にて加熱した約60℃の温水を床下に敷設した温水マット220に循環させ、床からの輻射熱で部屋A全体を均一に暖房する。この床暖房システム200では、熱源機80に循環ポンプ82が内蔵されている。この熱源機80の流体加熱装置100により、水を所定温度(60℃)に加熱して、循環ポンプ82により温水配管211に送り出している。
【0044】
床暖房システム200の制御信号が流れる信号線213を含む温水配管211、212は、熱源機80から温水マット220に向かう温水が流れる往き管211と、温水マット220内を循環した水が熱源機80に戻るための戻り管212とを有しており、それらはペアチューブ215として一本にまとめられている。ペアチューブ215の周囲は不図示の断熱材で囲まれている。
【0045】
温水マット220から熱源機80への戻りは、戻り管212で結ばれている。これらと同様な温水を供給する配管は他のB及びCの部屋にも導かれている。温水マット220が設けられた部屋Aの壁221には、部屋Aの室温を計測して室内の温度調節を行う床暖房コントローラ222が取り付けられている。床暖房コントローラ222には部屋Aの居住者が希望する所定の室温を設定することができる。また床暖房コントローラ222には、部屋A室内の所定個所に設けられた温度センサ(不図示)からの情報が常時入力されている。
【0046】
部屋Aの室温を所望の温度付近に保つように、上記のように構成された床暖房コントローラ222から信号線223を介し、さらにペアチューブ215の信号線213を介して熱源機80(循環ポンプ82、及び開閉弁(不図示))に対して指令が送出されるように構成されている。熱源機80(循環ポンプ82、及び開閉弁)は、床暖房コントローラ222からの指令に基づいて温水マット220に供給する60℃の温水の供給を制御して、温水マット220からの床を介した輻射熱により部屋Aを所定の室温に維持している。
【0047】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う暖房システムもまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の流体加熱装置の一例を示す断面図である。
【図2】図1に示した流体加熱装置の正面図である。
【図3】外筒の第一端部の部位を示す、(A)は一部を破断した正面図、(B)は側面図である。
【図4】第一端部と金属体とフレキシブルホースを示す図である。
【図5】外筒の中間部を示す、(A)は正面方向からみた断面図、(B)は側面図、(C)は(A)のA−A視断面図である。
【図6】外筒の第二端部の部位を示す、(A)は長手方向中央付近で切断して、その部分から端部方向に見た図、(B)は一部を破断した正面図、(C)は側面図である。
【図7】金属体と金属管を示す図である。
【図8】流体加熱装置を備えた熱源機の一例を示す図である。
【図9】図8に示す熱源機を備えた暖房システムの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
X 軸心
50 流体入り口管
51 流体入り口
60 流体出口管
61 流体出口
80 熱源機
81 流体タンク
82 循環ポンプ
83 漏電ブレーカ
85 台板
86 取り付けパネル板
87 ワンタッチ継手
88 注水口
100 流体加熱装置
110 第一端部
111 フランジ
112 筒状部
113 端部底板
114A〜C 孔
115 開口部
116A〜D 係止フィン
120 中間部
121A 第一端部取り付けフランジ
121B 共用取り付けフランジ
122A、122B フェライト取り付けフランジ
125 筒状部
126A〜F 角孔
127A、127B 装置取り付け孔
128A〜F 孔
129A〜F 孔
130 第二端部
131 フランジ
132 筒状部
133 端部底板
134A〜C 孔
135 開口部
136A〜D 係止フィン
140 温度センサ
150 外筒
150A 内周面
160 高周波電流加熱コイル
166A〜F 磁束誘導フェライト
170 金属体
170A 外周面
171A 左端部
171B 右端部
172 端面
173 端面
180 流体流路
181 第一流体流路
182 第二流体流路
190 ワンタッチ継ぎ手
191A〜C 締結ネジ
192A〜C 締結ネジ
195 フレキシブルホース(オリフィス)
196 小孔(孔)
200 床暖房システム
211 高温温水配管(往き管)
212 高温温水配管(戻り管)
213 信号線
215 ペアチューブ
216 温水コンセント
217、218 配管
219 開閉弁
220 温水マット(放熱器)
221 壁
222 床暖房コントローラ
223 信号線
600 金属管
601 外周面
602 内周面
650 金属線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を保持する流体タンクと、前記流体を加熱する流体加熱装置と、前記流体加熱装置により発生した熱を室内に供給する放熱器と、前記流体を循環させる循環ポンプとを具備し、
前記流体加熱装置を熱源として、前記流体を前記放熱器に循環させるように構成した暖房システムであって、
前記流体加熱装置から前記流体タンクに通じるオリフィスを設けることを特徴とする暖房システム。
【請求項2】
前記流体加熱装置は、軸心方向に順に第一端部、中間部、及び第二端部を備えるとともに少なくとも前記中間部が絶縁体により形成された外筒と、前記中間部の外周に捲線された高周波電流加熱コイルと、前記外筒の内部に配置されるとともに前記高周波電流加熱コイルによって発熱する柱形状の金属体と、前記外筒の内周面と前記金属体の外周面との間に一定の間隔を設けて形成された流体流路と、を具備するとともに、前記金属体が前記軸心方向に関して、前記中間部に対応する位置から両端方向の少なくとも一方に延設されており、
前記外筒の第一端部に、前記流体流路からオリフィスに通じる開口が設けられていることを特徴とする暖房システム。
【請求項3】
前記外筒の内周面と前記金属体の外周面との間に、これらの面と所定の間隔を隔てて配設された金属管をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の暖房システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−145143(P2006−145143A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−337975(P2004−337975)
【出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【出願人】(501299428)
【Fターム(参考)】