説明

曇りセンサー

ウィンドウガラスの表面上に配置された少なくとも一つの湿度センサー(2)と少なくとも一つの温度センサー(3)並びに後続の評価ユニットから構成される、自動車のウィンドウガラス、特にフロントガラスの車内側表面の湿度と温度を検出するための測定装置であり、これらのセンサー(2,3)と評価ユニットとの間に、信号変換・合成ユニットが配置されており、合成した信号(7)を評価ユニットに転送するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ウィンドウガラスの表面上に一緒に配置された少なくとも一つの容量型湿度センサーと少なくとも一つの温度センサー並びに後続の評価ユニットから構成される、自動車のウィンドウガラス、特にフロントガラスの車内側表面の湿度と温度を検出するための測定装置に関する。
【0002】
近代的な自動車の場合、暖房・空調設備の制御は、車内の快適性を向上させることとなる。この場合、空調設備の自動運転において、様々な外部条件が、ウィンドウガラスを曇らせる可能性がある。即ち、空気の循環が長時間となった場合、外部の温度が低下又は急落した場合、或いは空気の供給量が低下した場合に、そのような危険性が生じる。このような場合、車内の空気の相対湿度の急速な上昇が生じ、それは、多くは特に車両の乗客から発せられる。ウィンドウガラスの曇りを検知するためには、ウィンドウガラス上で直接か周囲環境内のどちらかにおいて、好適なセンサーを用いて、ウィンドウガラスの曇りの発生を検出するセンサー技術が必要となる。
【背景技術】
【0003】
ウィンドウガラスの曇りを防止するためには、特許文献1により、相対湿度を測定して、換気設備の制御機器に供給する方法が周知である。相対湿度の検知のために、フロントガラスの内側に、湿度を検知するセンサーを貼り付けている。ウィンドウガラスが曇り始める場合、その前に、この電気センサーの容量が急激に変化することを識別することができる。この変化を評価して、換気設備の制御機器に供給し、そして、それによって、例えば、新鮮な空気の供給による、曇りを防止するための好適な措置を執ることができる。
【0004】
曇りが形成される危険性を決定するためには、非特許文献1により、容量型薄膜センサーを用いて空気の相対湿度を検知すると同時に、ウィンドウガラス表面の温度を測定するセンサーが知られている。そして、これらの値から、評価ユニットにおいて、露点の計算を行うことができる。このウィンドウガラス表面の温度を検知するためのセンサーは、非接触による温度測定を可能とする、薄膜熱伝対をベースとする高感度の赤外線検出器である。このセンサーは、空気の相対湿度、それに対応する温度、ウィンドウガラスの表面温度とを検出する。マイクロコントローラー支援による評価用電子機器は、空気の相対湿度とそれに対応する温度のアナログ入力信号を変換した後に、露点温度を計算することが可能である。ウィンドウガラスの表面温度との差分を生成することによって、曇る傾向に関する指標としての働きを持つ値を算出することができる。この場合、これらのセンサーは、フロントガラスから間隔を空けて、ルームミラーの裏側に設置される。
【0005】
特許文献2により、フロントガラス上での曇る傾向を検知するための別のセンサーが周知である。ウィンドウガラスが曇り始めるのを検知するために、ウィンドウガラスの湿度とウィンドウガラスの表面温度の両方を測定するセンサーモジュールを採用している。この場合、センサーモジュールは、ウィンドウガラス上に直接配置される。検出した測定信号は、評価ユニットに転送される。そして、評価ユニットにおいて、フロントガラスの曇る傾向を検知している。
【特許文献1】ドイツ特許公開明細書第19907401号
【特許文献2】ドイツ特許公開明細書第10152999号
【非特許文献1】自動車技術誌(ATZ)102号(2000年1月)の寄稿論文、 42〜44頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の課題は、簡単で安価なセンサーモジュールであり、ウィンドウガラス表面の曇りを防止するために、曇る傾向に関して、ただ一本の信号導線を介して、ウィンドウガラス表面の状態データを伝送することを可能とすると同時に、温度に依存しない測定信号を供給する測定装置を開発することである。更に、この発明の課題は、温度に依存しない測定信号を検出するとともに、曇りを防止する働きを持つ後続の制御ユニットに転送することを可能とする、測定信号を検出するための方法を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の課題は、センサーと評価ユニットとの間に、信号変換・合成ユニットを配置することと、この合成後の信号を、評価ユニットに転送することとによって解決される。ここで、この発明にもとづき、センサーと評価ユニットとの間に信号変換・合成ユニットを採用することによって、センサーモジュールから評価ユニットに一つの出力信号だけを転送し、その場合、この測定信号がウィンドウガラス表面の複数の状態データを含む形で、測定信号を補正する手段が実現される。この場合、センサーのアナログ測定値は、ウィンドウガラス表面上の瞬間的な状況に関する尺度としての働きを持つ。この発明の有利な実施構成では、ウィンドウガラス表面上において、一つの抵抗を用いて温度を測定し、そして湿度を検知する一つのコンデンサを用いて湿度を測定する。この場合、両方のセンサーは、熱伝導性フォイルを用いて、ウィンドウガラスの表面上に直接貼り付けられる。その容量は、周波数を決定する要素として、発振器の共振回路に組み込まれる。温度センサーとしての働きを持つ抵抗は、発振器の共振回路に重畳される。有利には、温度センサーとして、サーミスタを、更に有利にはNTC抵抗を採用する。ウィンドウガラス表面上の湿度に応じて、湿度センサーを用いて、様々な容量が得られ、それによって、発振器では、その容量に対応した周波数が生成される。従って、発振器における周波数は、ウィンドウガラス表面上の湿度に関する尺度となる。温度センサーの抵抗は、共振回路において、温度補償された周波数が生じる形で、発振器に重畳される。相対湿度が一定で、温度が可変の場合、共振回路に生成される周波数は、ほぼ変化しないままである。発振器内で生成された周波数は、後続の周波数分周器において、評価ユニットの処理が容易となる周波数に逓降される。従って、このセンサーモジュールは、その出力において、パルスの長さがウィンドウガラス表面の湿度に関する、温度に依存しない信号である方形波信号を供給する。
【0008】
方法論の観点において、この発明による課題は、信号変換・合成ユニットの回路ユニットにおいて、検知した測定信号を方形波信号に合成することと、この方形波信号を評価ユニットに転送することとによって解決される。この方法では、容量型センサーが、発振器の周波数を決定する。生成された周波数は、温度センサーの抵抗のアナログ信号に重畳されて、温度に依存しない測定信号が生成され、これに対応する周波数は、ウィンドウガラス表面の湿度に関する特別な周波数として現れる。この生成された周波数は、後続の周波数分周器において、評価ユニットに有利な周波数に分周されて、評価ユニットに転送される。この発明により両方のセンサーの測定信号を合成することは、センサーモジュールにおいて、温度補償された一つの出力信号だけが現れるという、この発明の利点を提供するものである。この場合、センサーモジュールは、基本的に両方のセンサー、発振器、周波数分周器から構成される。この発明では、出力信号に関して、一つの信号導線だけが必要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下において、実施例のブロック接続図とグラフにもとづき、この発明をより詳しく説明する。
【0010】
図1では、一本の信号導線を介して、湿度と温度を測定するためのセンサーモジュール1の基本的な構造をブロック接続図で図示している。容量型センサー2によって、ウィンドウガラス表面の相対湿度を測定している。有利にはサーミスタ、更に有利にはNTC抵抗である抵抗3によって、ウィンドウガラス表面の温度を検知している。コンデンサ2と抵抗3は、熱伝導性フォイルを用いて、図示されていないフロントガラス上に直接貼り付けられており、その際この発明の有利な実施構成では、センサーモジュール1は、完全なユニットとして、ウィンドウガラス表面上に直接配置され、その場合、センサーモジュールをフロントガラスに配置されたバックミラーに組み込むこともできる。容量型センサーとしてのコンデンサ2には、発振器、有利にはRC発振器が後続されている。発振器4の共振回路には、サーミスタ3の抵抗が組み込まれている。発振器で生成された周波数は、後続の周波数分周器5において、評価ユニットが容易に読み取ることが可能な周波数に変換される。発振器4と周波数分周器5及び並列して配置された回路部品は、回路基板6上に取り付けられている。センサー2,3及び回路基板6は、熱伝導性フォイルを用いて、ウィンドウガラスの表面上に一緒に貼り付けられている。この発明では、出力信号7を周波数分周器の出力に伝送するために、バスシステム用のインタフェースを配置することができる。そして、このインタフェースと信号導線の接続端子に対するプラグの両方は、同じく回路基板6上に固定されている。従って、センサーモジュール1は、基本的に両方のセンサー2,3と回路基板6上に配置された、測定信号の信号合成及び変換用回路部品とを含んでいる。矢印8により、回路基板6に対する供給電圧を示している。センサーモジュール1の出力に現れる出力信号7は、方形波9の形で現れることができる。この場合、パルス10の長さL1は、既に温度補償された測定信号が現れているので、ウィンドウガラス表面の曇る傾向に関する直接的な尺度となる。
【0011】
この発明により共振回路と温度センサーの抵抗とを一つの周波数に向けて合成することによって、曇りの形成に関する反応時間が大幅に短縮される、即ち、改善されるという、この発明の利点が得られる。ウィンドウガラス表面上にセンサーモジュール1を取り付けるために、接着剤の不要な熱伝導性フォイルを採用することによって、即ち、取り付けが大幅に軽減されるという、この発明の更なる利点が得られる。
【0012】
容量型センサー部品2は、上の電極と下の電極、並びにそれらの間に配置された誘電体としての湿気を検知する層のサンドイッチ構造を有する。湿度を含むことによって、電極間の層の誘電率が変化し、そのことが、更に容量の変化を生じさせ、そして更に発振器4の共振回路における周波数の変化を生じさせることとなる。車内の相対湿度に関する情報を示すことができるようにするためには、ウィンドウガラス表面の絶対湿度を決定する以外に、ウィンドウガラス表面の温度を考慮しなければならない。温度補償のために、温度センサー3を発振器4の共振回路に組み込んでいる。図2には、コンデンサ2とセンサーモジュール1の出力における、周波数に関する温度センサー3の影響を図示している。このグラフは、温度に関して、周波数をkHzで、空気の相対湿度をパーセントで示している。この測定では、空気の相対湿度を50%と一定に設定している。グラフでは、相対湿度の推移が、直線11で図示されている。摂氏で測定した温度は、25°Cと約80°Cの間で変化している。グラフの下の領域のほぼ直線的に推移するカーブ12は、コンデンサ2における共振回路の周波数を表している。この周波数は、温度範囲全体に渡って、ほぼ一定のままである。センサーモジュール1の出力信号13も、温度範囲全体に渡って、ほとんど一定のままである。図2は、容量型センサー2における湿度測定に関する温度の影響がほぼ解消されていることを示している。
【0013】
センサー2,3と回路基板6は、接着剤の不要な熱伝導性フォイルを用いて、ウィンドウガラスの表面上に貼り付けられている。この発明の別の変化形態では、センサー2,3をテフロン(R)被膜を用いて保護することが考えられる。センサーモジュール1全体をプラスチック容器で取り囲んで、センサーの上と横の領域を格子状に開けることができる。更に、テフロン(R)被膜は、センサー部品を汚れから保護している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明によるセンサーモジュールのブロック接続図
【図2】一連の実験結果のグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウィンドウガラスの表面上に配置された少なくとも一つの湿度センサー(2)と少なくとも一つの温度センサー(3)並びに後続の評価ユニットから構成される、自動車のウィンドウガラス、特にフロントガラスの車内側表面の湿度と温度を検出するための測定装置において、
これらのセンサー(2,3)と評価ユニットとの間に、信号変換・合成ユニットが配置されていることを特徴とする測定装置。
【請求項2】
センサー(2)には、先ずは発振器(4)が後続され、その次に周波数分周器(5)が後続されていることと、温度センサー(3)が、発振器(4)の共振回路の一部となっていることとを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
温度センサー(3)が、温度係数を負に構成した抵抗であることを特徴とする請求項1又は2に記載の測定装置。
【請求項4】
湿度センサー(2)が、湿度を検知する中間層を持つコンデンサであることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載の測定装置。
【請求項5】
発振器(4)と周波数分周器(5)が、共通の回路基板(6)上に配置されていることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の測定装置。
【請求項6】
回路基板(6)上には、バスシステム用のインタフェースが配置されていることを特徴とする請求項1から5までのいずれか一つに記載の測定装置。
【請求項7】
センサー(2)を用いて、ウィンドウガラスの表面上の湿度を検知し、温度センサー(3)を用いて、その表面の温度を検出し、これらの検出した測定信号を評価ユニットに伝える、自動車のウィンドウガラス、特にフロントガラスの車内側表面の温度と湿度を検知するための測定信号の検出方法において、
これらの検知した測定信号を、信号変換・合成ユニットの回路ユニットで方形波信号(9)に合成することと、この方形波信号(9)を評価ユニットに転送することとを特徴とする方法。
【請求項8】
容量型センサー(2)の測定信号を、後続の発振器(4)において、この測定信号に比例する周波数に変換することと、この周波数を、同時に温度センサー(3)の抵抗を用いて補正することとを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
温度係数を負に構成した抵抗(3)を用いて、当該の温度を検出することを特徴とする請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
当該の生成された周波数に依存して、パルスの長さを変化させる形で、当該の回路ユニットが、評価ユニットに転送される方形波信号(9)を変化させることを特徴とする請求項7から9までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
当該の生成された周波数を、後続の周波数分周器(5)で分周することを特徴とする請求項7から10までのいずれか一つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−505302(P2007−505302A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525748(P2006−525748)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009986
【国際公開番号】WO2005/025903
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(504162556)プレー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (24)
【Fターム(参考)】