説明

曲げ加工装置及び曲げ加工機

【課題】素材Wの3個所を折り曲げる加工を、素材Wの引き込みを生じることなく行え、加工精度を良好にできる曲げ加工装置12を提供する。
【解決手段】第一の治具13と第二の治具14とは、回動軸15を中心に回動自在に連結される。また、該回動軸15から前記素材Wの回動側のオフセットした位置に、オフセット曲げ部18を配置する。また、前記第二の治具14に、基部19に対し所定量スライドするスライド部20と、該基部19に固定される固定曲げ部21とを配置する。また、該スライド部20には、スライド曲げ部24を設ける。そして、前記両治具13,14を回動させると共に前記スライド部20をスライドさせ、前記素材Wを各抑え部16,23a,23bに対し変位させることなく、該素材Wに曲げ加工を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、回転電機用の巻線(マグネットワイヤ)を構成する断面円形或は矩形の金属線(例えば平角線)や、その他、棒材、パイプ材、板材等の所定の素材に曲げ加工を施す曲げ加工装置及び曲げ加工機に係り、詳しくは、前記素材の複数個所を折り曲げる加工を、素材の引き込みを生じることなく行え、加工精度を良好にできる曲げ加工装置及び曲げ加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、誘導モータ、直流モータ(ジェネレータを含む)等の回転電機は、産業用又は車輌用の動力源として広く用いられており、そのステータのコイルのレイアウトは、比出力が高い分布巻きが多用されている。近時、ハイブリット駆動車輌及び電気自動車に用いられるモータとして、出力/寸法要求等からスロットの占積率の高い平角線をマグネットワイヤとして用いることが提案されている。
【0003】
上述のような回転電機に使用されるマグネットワイヤは、複数個所を折り曲げることによりコイルを構成するが、一般的に、マグネットワイヤ等の素材の曲げ加工は、一方向にのみ曲げ加工が可能な曲げ加工装置により、素材を治具に引き込みつつ行っていた(特許文献1参照)。
【0004】
一方、マグネットワイヤ等の素材の2個所をクランプで固定し、素材を引っ張りつつ曲げて、素材に2個所の曲げ加工を同時に行う構造も知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−104841号公報
【特許文献2】実開昭55−122924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1に記載された構造の場合、素材の複数個所に曲げ加工を行うためには、素材の先頭から曲げ加工を施し、その後、素材をずらして再度加工するという作業を、順次繰り返す必要がある。このため、加工時間が長くなることが避けられない。また、曲げ加工時に素材の引き込みが生じるため、素材の複数個所を同時に曲げる加工を行えない。
【0007】
一方、特許文献2に記載された構造の場合、素材の2個所に同時に曲げ加工を施しているが、素材が引き込みを生じないように、素材を曲げるための両クランプが離れる方向に大きなバックテンション(引っ張り力)を作用する必要がある。この為、曲げ加工の際に、素材の寸法管理が難しく、正確な曲げ加工を行いにくい。
【0008】
そこで、本発明は、素材の複数個所を折り曲げる加工を、素材の引き込みを生じることなく行え、加工精度を良好にできる曲げ加工装置及び曲げ加工機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、所定の素材(W)に3個所の曲げ加工を施す曲げ加工装置(12)において、
回動軸(15)を中心に回動自在に連結される第一の治具(13)及び第二の治具(14)と、
該第一の治具(13)と第二の治具(14)との何れかに配置され、前記回動軸(15)から前記素材(W)の回動側に所定量オフセットして配置され、前記両治具(13,14)の回動により該素材(W)を曲げるオフセット曲げ部(18)と、を備え、
前記第一の治具(13)は、回動方向と反対側に前記素材(W)の変位を抑える抑え部(16)を有し、
前記第二の治具(14)は、前記第一の治具(13)と回動自在に連結される基部(19)と、該基部(19)に対し前記素材(W)を所定量スライドさせるスライド部(20)と、前記基部(19)に固定され、前記スライド部(20)のスライドにより前記素材(W)を曲げる固定曲げ部(21)と、を有し、
前記スライド部(20)は、前記素材(W)の回動方向両側の変位を抑える抑え部(23a,23b)と、該スライド部(20)のスライドにより該素材(W)を曲げるスライド曲げ部(24)と、を有し、
前記両治具(13,14)を回動させると共に前記スライド部(20)をスライドさせ、前記素材(W)を該両治具(13,14)を構成する各抑え部(16,23a,23b)に対し変位させることなく、該素材(W)に3個所の曲げ加工を施すことを特徴とするものである。
【0010】
前記スライド部(20)が移動する方向及び量は、前記素材(W)の中立線上の前記固定曲げ部(21)及び前記スライド曲げ部(24)よりも前記第二の治具(14)側の所定の点が、該両曲げ部(21,24)で曲げられなかったと仮定した場合と、該両曲げ部(21,24)で曲げられた場合とで、それぞれ存在する位置に基づいて定める。
【0011】
前記固定曲げ部(21)及びスライド曲げ部(24)で曲げられなかったと仮定した場合に前記所定の点が存在する位置を始点(Q)と、該両曲げ部(21,24)で曲げられた場合に前記所定の点が存在する位置を終点(R)とした場合に、
前記スライド部は、前記始点(Q)を通る前記第二の治具(14)の前記素材(W)を配設する方向と平行な仮想線上の、該始点(Q)及び前記終点(R)から同じ距離に存在する点(G)を中心とし、該始点(Q)及び終点(R)を通る円弧に沿ってスライドする。
【0012】
前記スライド部(20)は、前記基部(19)に対し回動方向と反対側にスライドし、前記固定曲げ部(21)は、前記オフセット曲げ部(18)と前記素材(W)を挟む位置に配置され、前記スライド曲げ部(24)は、該素材(W)の回動側に配置される。
【0013】
前記所定の素材(W)が、回転電機用のコイルを構成する平角線である。
【0014】
また、本発明の曲げ加工機(28)は、上記曲げ加工装置(12)を、前記第一の治具(13a,13b)と前記第二の治具(14a,14b,14c)とを前記回動中心で交互に連結することにより、複数個直列状に配置して、前記所定の素材(W)を複数個所で曲げ加工をし得ることを特徴とするものである。
【0015】
前記第一の治具(13a,13b)の両端部に前記第二の治具(14a,14b,14c)をそれぞれ回動自在に連結し、
該両第二の治具(14a,14b,14c)を互いに近づく方向に回動させた場合に、それぞれのスライド部(20a,20b,20c)と当接するスライド部当接部材(29a,29b)を備え、
前記両第二の治具(14a,14b,14c)を回動させ、該両第二の治具(14a,14b,14c)のスライド部(20a,20b,20c)をそれぞれ前記スライド部当接部材(29a,29b)に当接させた状態で、該両第二の治具(14a,14b,14c)を更に回動させることにより、前記各スライド部(20a,20b,20c)をそれぞれ回動方向と反対側にスライドさせる。
【0016】
前記第一の治具(13a,13b)及び第二の治具(14a,14b,14c)を、第一の治具(13a,13b)の両端部に第二の治具(14a,14b,14c)が配置されるように交互に5個の治具を回動自在に連結し、
該各治具のうち、真中に配置される第二の治具(14b)は、分割され相対変位可能な2個の基部(19b,19c)と、該両基部(19b,19c)同士に掛け渡すように配置される単一のスライド部(20b)と、を有し、
曲げ加工の際に、前記両基部(19b,19c)が相対変位することにより、該単一のスライド部(20b)が該両基部(19b,19c)に対しそれぞれスライドする。
【0017】
前記真中の第二の治具(14b)を回動させた場合に、該真中の第二の治具(14b)を構成する一方の基部(19c)に当接する基部当接部材(34)を有し、
該真中の第二の治具(14b)を回動させ、該一方の基部(19c)を該基部当接部材(34)に当接させた状態で、該真中の第二の治具(14b)を更に回動させることにより、該一方の基部(19c)に連結される第一の治具(13b)、及び、該第一の治具(13b)を介して連結される端部の第二の治具(14c)と共に、前記一方の基部(19c)が、前記真中の第二の治具(14b)を構成する他方の基部(19b)に対し変位する。
【0018】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより各請求項の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る本発明によると、第一の治具と第二の治具とを回動させると共に、該第二の治具のスライド部をスライドさせることにより、素材に3個所の曲げ加工を行っているため、加工時間を短くできる。また、曲げ加工時に、素材が前記両治具を構成する各抑え部に対し変位しない(引き込みが生じない)ため、該素材と該各抑え部との間で摺れ合いが生じることを防止でき、該素材に損傷が生じることを防止できる。また、曲げ加工時に該素材に引っ張り力が作用しないため、該素材の曲げ加工を正確に行える。
【0020】
請求項2に係る本発明によると、曲げ加工時に素材の引き込みが生じることを、より確実に防止できる。
【0021】
請求項3に係る本発明によると、曲げ加工を円滑に行え、より確実に曲げ加工時の素材の引き込みを防止できる。
【0022】
請求項4に係る本発明によると、素材の3個所を互いに反対方向に曲げる加工(曲げ方向が異なる曲げ加工)を、容易且つ短時間で行える。
【0023】
請求項5に係る本発明によると、平角線の3個所を曲げる加工を精度良く行え、且つ、曲げ加工の際に絶縁用のエナメル層を傷つけることがないため、良質な回転電機用のコイルを得られる。
【0024】
請求項6に係る本発明によると、複雑な曲げ形状を精度良く、且つ、短時間で製造でき、製造コストの低減を図れる。即ち、上記曲げ加工装置によると、素材の曲げ加工時に引き込みが生じることがない為、このような曲げ加工装置を複数組み合わせて、前記素材の複数個所に同時に曲げ加工を施しても、該素材が引っ張られることがない。従って、該素材の複数個所に同時に曲げ加工を施しても、該素材の寸法が変化することがなく、複雑な曲げ形状を精度良く、且つ、短時間で得られる。更に、本発明により回転電機用のコイルを製造すれば、コイルの接合個所を少なくできる為、製造コストの低減を図れ、且つ、コイルの小型化を図れる。
【0025】
請求項7に係る本発明によると、第一の治具の両端部に連結された第二の治具のそれぞれのスライド部を、該両第二の治具の回動に連動させてスライドさせることができ、効率良く素材の曲げ加工を行える。
【0026】
請求項8に係る本発明によると、5個の治具の回動に連動させて、真中の第二の治具の単一のスライド部をそれぞれの基部に対してスライドさせることができ、5個の治具による曲げ加工を効率良く行える。
【0027】
請求項9に係る本発明によると、真中の第二の治具を構成する他方の基部を変位させることにより、5個の治具の回動に連動させて、単一のスライド部をそれぞれの基部に対してスライドさせることができ、より効率良く曲げ加工を行える。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明により製造されるコイルを組み込んだステータを示す斜視図。
【図2】そのコイル(U相)を示す斜視図。
【図3】本発明の第一の実施の形態に係る曲げ加工装置により素材を曲げる状態を示す図。
【図4】オフセット曲げ部の曲げ中心と回動中心との関係を説明する為の模式図。
【図5】固定曲げ部及びスライド曲げ部による、素材の曲げ加工前後の状態を示す模式図。
【図6】スライド部のスライド方向を説明するための図。
【図7】本発明の第二の実施の形態に係る曲げ加工機により曲げ加工を施す前の状態を示す図。
【図8】同じく、曲げ加工を開始した第一の状態を示す図。
【図9】同第二の状態を示す図。
【図10】同第三の状態を示す図。
【図11】同第四の状態を示す図。
【図12】同第五の状態を示す図。
【図13】同じく、曲げ加工後の状態を示す図。
【図14】本発明の第二の実施の形態を導く際に問題となった構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施の形態を図面に沿って説明する。まず、本発明により製造されるコイルを組み込んだ回転電気(モータ、ジェネレータ等)のステータについて、図1及び図2に沿って説明する。本ステータ1は、ロータと共に電気モータ(ジェネレータを含む)を構成し、該電気モータは、電気自動車及びハイブリッド車輌の駆動源となる電気モータ(含むジェネレータ)、特にブラシレスDCモータに適用して好適である。ステータ1は、図1に示すように、多数の珪素鋼板の薄板を積層したステータコア2、及び、所定の素材であるマグネットワイヤ(導体、巻線)3を巻回したコイル4からなる。ステータコア2は、リング状からなり、内径側に開口するスロット5及びティース6が交互に多数形成されている。そして、所定ピッチ離れた2個のスロット5の間を分布巻きにて3相U,V,Wの各コイル4(4U,4V,4W)が巻かれている。
【0030】
マグネットワイヤ3は、断面矩形状の平角線からなり、銅等からなる導体部の全周に絶縁樹脂等の絶縁被膜が形成されている。上記ワイヤ3からなる3相のコイル4U,4V,4Wは、同相のスロット5内においては、同相の複数本(例えば4本)のワイヤ3がステータコア2の径方向に並んで配置されており、かつステータコア2の軸方向Lの一端面7から突出した一端側コイルエンド部8においては、同相の複数本のワイヤ3がステータコア2の径方向(又は軸方向)に並んで配置され、ステータコア2の軸方向Lの他端面9から突出した他端側コイルエンド部10においては、同相の複数本のワイヤ3がステータコア2の径方向内径側に屈曲すると共にステータコア2の径方向に並んで配置されている。
【0031】
代表してU相のコイル4Uを示すと、コイル4Uは、図2に示すように、隣接する2個のスロット5,5を占めるように、2組4U1,4U2がセットとなって、隣接する2個のスロット5,5の近い方同士、遠い同士が所定間隔隔てて連結するようかつ上記2組が交互に連結するように構成されている。各組のコイル4U1,4U2は、スロット5内に配置されるスロット導体部11と、ステータコア2の一端面7から突出して、所定間隔隔てたスロット導体部11を連結するように、周方向Mに延びる一端側コイルエンド部8と、ステータコア2の他端面9から突出して、所定間隔離れたスロット導体部11と連結するように、内径方向R1に屈曲して周方向Mに延びる他端側コイルエンド部10と、からなる。両コイルエンド部8,10は、それぞれが軸方向L又は径方向Rに互に干渉することなく並ぶように、周方向に(例えばY)又は軸方向に(例えばX)複数に屈曲して(折り曲げて)いる。
【0032】
上述のように、コイル4は、コイルエンド部8、10等で複数個所に折り曲げている。また、これらコイルエンド部8,10では、コイル4を折り曲げると共に、曲げた部分を互いに曲げ方向を異ならせて略S字状に形成している。このようなコイルエンド部8,10を成形する曲げ加工装置の概略について、本発明の第一の実施の形態を示す、図3により説明する。
【0033】
<第一の実施の形態>
図3に示すように、本実施の形態の曲げ加工装置12は、第一の治具13と第二の治具14とを回動軸15を中心に回動自在に連結してなる。そして、両治具13,14に、前述のコイル4を構成する平角線等の素材Wを配置し、該両治具13,14を回動させることにより、該素材Wに曲げ加工を施す。
【0034】
このうちの第一の治具13には、回動方向と反対側(図3の上側)に前記素材Wの変位を抑える抑え部16を固定している。即ち、該抑え部16の抑え面17を該素材Wの側面に当接させ、曲げ加工時に該素材Wが図3の上側に変位することを抑える。
【0035】
また、前記第二の治具14の、前記回動軸15から前記素材Wの回動側に所定量オフセットした位置に、オフセット曲げ部18を配置している。該オフセット曲げ部18は、外周面を曲げ加工後の素材Wの内周面の曲率半径とほぼ同じ曲率半径の円筒面として、前記両治具13,14の回動により前記素材Wを外周面に沿って曲げるものである。なお、前記オフセット曲げ部18は、前記第一の治具13側に設けても良い。また、外周面の形状は、少なくとも、曲げ加工時に素材Wが当接する部分を上述のような曲率半径を有する円筒面としていれば良く、図示のような形状に限定されない。
【0036】
また、前記第二の治具14は、基部19と、スライド部20と、固定曲げ部21とからなる。該基部19は、前記第一の治具13と回動自在に連結されるものである。また、前記スライド部20は、前記基部19上に該基部19に対し、回動方向と反対側にスライド可能に支持されている。このスライド機構については、後述する。そして、曲げ加工時に、該基部19に対し前記素材Wを所定量スライドさせる。また、前記固定曲げ部21は、該基部19上の前記オフセット曲げ部18と該素材Wを挟む位置に固定された、略矩形状の固定ブロック22の該素材W側で第二の治具14側(図3の左下)に存在する角部を、部分円筒状に形成したものである。このため、前記固定曲げ部21は、前記基部19に対しスライド不能である。また、該固定曲げ部21の曲率半径は、曲げ加工後の素材Wの内周面の曲率半径とほぼ同じとしている。そして、前記スライド部20により該素材Wをスライドさせた際に、該素材Wを前記固定曲げ部21に沿って曲げる。
【0037】
また、前記スライド部20は、前記素材Wの回動方向両側{図3(B)では、左右方向両側}の変位を抑える抑え部23a,23bと、該素材Wの回動側に配置され、該スライド部20のスライドにより該素材Wを曲げるスライド曲げ部24とを有する。このうちの両抑え部23a,23bは、互いに対向するそれぞれの抑え面25a,25bにより前記素材Wを挟持し、前記両治具13,14の回動時及び前記スライド部20のスライド時に、該素材Wが回動方向両側に変位することを防止する。また、スライド曲げ部24は、前記両抑え部23a,23bのうち、前記素材Wの回動側に配置される抑え部23aの該素材W側で第一の治具13側(図3の右上)に存在する角部を、部分円筒状に形成したものである。なお、スライド曲げ部24は、抑え部23aと別に設けても良い。また、図示の例のように、スライド曲げ部24を抑え部23b側にも形成すれば、後述するように、スライド部20を回動方向と同方向にスライドさせた場合にも、素材Wに曲げ加工を施す事ができる。
【0038】
そして、前記両治具13,14を回動させると共に前記スライド部20をスライドさせ、前記素材Wを該両治具13,14を構成する各抑え部16,23a,23bに対し変位させることなく、該素材Wに3個所の曲げ加工を施す。即ち、曲げ加工時に前記素材Wに引き込みが生じないようにする。
【0039】
このために、オフセット曲げ部18の回動軸15に対するオフセット量を、次のように定める。なお、説明の便宜上、素材Wをオフセット曲げ部18のみにより曲げた場合を考える。図4に示すように、前記素材Wの曲げ角度をθ、該素材Wの厚さ(素材Wが断面円形の場合は直径)をT、該素材Wの中立線Nから該素材Wの曲げ加工後の内周面までの距離の前記Tに対する割合をα、前記オフセット曲げ部18の曲率半径をr、前記オフセット曲げ部18の曲げ中心Pの前記回動軸15の回動中心Oに対する距離のうち、前記素材Wの曲げ方向で該素材Wを曲げる以前の状態が直線であるとした場合の直線方向と平行方向(X方向、図4の左右方向)に関する距離をX、同じく、前記直線方向と直角な方向(Y方向、図4の上下方向)に関する距離をY、とした場合に、前記曲げ中心Pは、少なくとも曲げ加工後に、前記回動中心Oに対し、
X=(r+T×α)×θ/2
Y=(r+T×α)×θ/2/tan(θ/2)
0<θ≦π/2
を満たす位置に設置される。
【0040】
上述の式について説明する。先ず、仮に、曲げ中心Pと回動中心Oとを一致させた状態で前記素材Wに曲げ加工を施した場合、前記中立線Nの位置で、該素材Wが(r+T×α)×θだけ、前記第一の治具13に対し移動する。即ち、該中立線Nの曲げ部分の円周長さ分、前記素材Wが引き込まれる。従って、曲げ加工の際に該素材Wが引き込まれないようにする為には、前記オフセット曲げ部18を曲げ加工の前後で該素材Wに沿って前記(r+T×α)×θだけ移動させれば良い。図4から明らかなように、前記オフセット曲げ部18のY方向の移動距離は考慮する必要がない。この場合に、前記オフセット曲げ部18の移動は、前記回動中心Oを中心として行われる為、図4(B)から明らかなように、前記曲げ中心Pの回動中心OからのX方向の距離は、前記オフセット曲げ部18の移動距離の半分である(r+T×α)×θ/2となる。
【0041】
このように、曲げ中心Pの回動中心OからのX方向の距離が分かれば、三角関数から、同じくY方向の距離(r+T×α)×θ/2/tan(θ/2)を導き出せる。尚、0<θ≦π/2と規定したのは、本実施の形態の場合、曲げ角度をπ/2よりも大きくした場合に、前記素材Wの引き込みを防止できない為である。
【0042】
一方、本実施の形態の場合、素材Wを3個所で曲げるべく、スライド部20により該素材Wをスライドさせている。したがって、このスライドによっても、該素材Wに引き込みを生じないようにする必要がある。このために、前記スライド部20が移動する方向及び量を、図5に示すように、前記固定曲げ部21及び前記スライド曲げ部24で曲げられなかったと仮定した場合と、該両曲げ部21,24で曲げられた場合とを考慮して定める。
【0043】
即ち、素材Wの中立線N上の該両曲げ部21,24よりも前記第二の治具14側の所定の点Q,Rが、該両曲げ部21,24で曲げられなかったと仮定した場合(Q)と、該両曲げ部21,24で曲げられた場合(R)とで、それぞれ存在する位置に基づいて、前記スライド部20のスライド方向及びスライド量を定める。前記点Q,Rは、前記素材Wの中立線N上の前記両曲げ部21,24よりも前記第一の治具13側の所定の点をSとすると、該点Sから前記点Qまでの中立線Nの長さaと、該点Sから前記点Rまでの中立線Nの長さbとが等しくなる関係を有する。
【0044】
前記スライド部20のスライドによる曲げ加工時に、前記素材Wに引き込みが生じないためには、該スライド部20のスライドにより点Qが点Rに移動すれば良い。したがって、該点Qと点Rとのずれが、X方向(図5の左右方向)にc、Y方向(図5の上下方向)にdであるとすると、前記スライド部20を、X方向にc、Y方向にdスライドさせれば、前記素材Wに引き込みが生じないこととなる。
【0045】
上述のような構成を実現するために、本実施の形態の場合、図6に示すように、スライド部20に設けたスライド孔26に、基部19上に設けたピン27を嵌合させ、該ピン27に対し該スライド孔26を移動させることにより、前記スライド部20を上記条件を満たすようにスライドさせている。なお、スライド孔を基部19側に、ピンをスライド部20側に設けても良い。
【0046】
上記スライド孔26は、次のような円弧により形成している。なお、スライド孔26の幅は、前記ピン27の直径との関係で定まる。まず、前記点Qを始点と、前記点Rを終点とした場合に、該始点Qを通る前記第二の治具14の前記素材Wを配設する方向と平行な仮想線H上の、該始点Q及び前記終点Rから同じ距離に存在する点をGとする。該点Gは、該始点Qよりも前記第一の治具13側(図6の上側)に存在する。そして、前記スライド孔26を、前記点Gを中心とし、前記始点Q及び前記終点Rを通る円弧に沿って形成する。本実施の形態の場合、前記スライド孔26とピン27とが係合する部分を2個所としているが、それぞれのスライド孔26が上記条件を満たすような円弧に沿って形成する。これにより、前記スライド部20は、前記円弧に沿ってスライドする。この際、前記ピン27が前記始点Qと前記終点Rとの間を前記スライド孔26に沿って相対変位する。
【0047】
なお、上述のスライド部20のスライド方向は、前記始点Qと前記終点Rとを結ぶ直線の方向であっても良い。但し、前記素材Wの引き込みを生じないように前記スライド部20を円滑にスライドさせるためには、上述のような円弧に沿ってスライドさせることが好ましい。
【0048】
上述のように構成される本実施の形態によると、第一の治具13と第二の治具14とを回動させると共に、該第二の治具14のスライド部20をスライドさせることにより、素材Wに3個所の曲げ加工を行っているため、加工時間を短くできる。即ち、前記両治具13,14の回動と前記スライド部20のスライドとを連続して、或は、同時に行うことにより、前記素材Wに3個所の曲げ加工を短時間で行える。一方、例えば、両治具13,14の回動のみにより素材Wに3個所の曲げ加工を行う場合、該素材Wをずらしたり、該素材Wの向きを変えたりする必要があるため、加工時間が長くなることが避けられない。これに対し本実施の形態の場合には、このような素材Wをずらしたり向きを変えるという作業が必要ないため、加工時間を短くできる。
【0049】
また、本実施の形態の場合、曲げ加工時に、前記素材Wが前記両治具13,14を構成する各抑え部16,23a,23bに対し変位しない(引き込みが生じない)ため、該素材Wと該各抑え部16,23a,23bとの間で摺れ合いが生じることを防止でき、該素材Wに損傷が生じることを防止できる。また、曲げ加工時に該素材Wに引っ張り力が作用しないため、該素材Wの曲げ加工を正確に行える。
【0050】
また、素材Wが上述のようにコイル4を構成する平角線である場合でも、該平角線の3個所を曲げる加工を精度良く行える。即ち、平角線は断面円形の丸線と異なり曲げ方向が限定されるため、何等工夫しなければ、3個所に曲げ加工を施しにくい。特に、上述のような形状に形成する場合、曲げ方向が異なるため、更に曲げ加工を施しにくい。これに対して本実施の形態の場合には、曲げ方向が限定される平角線であっても、曲げ方向を異ならせて行う曲げ加工を、容易に、且つ、精度良く行える。また、曲げ加工の際に引き込みが生じないため、曲げ加工の際に絶縁用のエナメル層を傷つけることがなく、良質な回転電機用のコイル4を得られる。
【0051】
なお、本実施の形態の場合、前記スライド部20を前記両治具13,14の回動方向と反対側にスライドさせて、前記素材Wを略S字状に曲げているが、前記スライド部20を回動方向と同方向にスライドさせて、該素材Wを別の形状に曲げ加工することもできる。即ち、所望の形状に合わせて、両治具13,14の回動方向及び回動角度とスライド部20のスライド方向及びスライド量を調整することができる。
【0052】
<第二の実施の形態>
図7〜13は、本発明の第二の実施の形態に係る曲げ加工機28を示すものであり、前述したような曲げ加工装置12を複数組み合わせたものである。曲げ加工装置12単体の構成は、前述の第一の実施の形態と同様である。先ず、本実施形態の曲げ加工機28の概略について、図7により説明する。
【0053】
曲げ加工機28は、前記曲げ加工装置12を、第一の治具13a,13bと第二の治具14a,14b,14cとを回動軸15の中心で交互に連結することにより、複数個直列状に配置して、前記素材Wを複数個所で曲げ加工をし得るようにしている。このために、前記第一の治具13a,13bの両端部に前記第二の治具14a,14b,14cが配置されるように、交互に5個の治具13a,13b,14a,14b,14cを回動自在に連結している。即ち、図7の下端部から、第二の治具14a、第一の治具13a、第二の治具14b,第一の治具13b、第二の治具14cをそれぞれ順番に連結している。
【0054】
また、前記第一の治具13a,13bの回動側には、それぞれスライド部当接部材29a,29bを固定している。そして、図8から図13に順次示すように、それぞれの第一の治具13a,13bの両端部の第二の治具14a,14b,14cを互いに近づく方向に回動させた場合に、それぞれのスライド部20a,20b,20cを、前記スライド部当接部材29a,29bに当接させる。また、該スライド部当接部材29a,29bは、前記各治具の回動に合わせて、それぞれ固定された第一の治具13a,13bと共に移動する。更に、図13に示すように、該各スライド部20aないし20cは、該スライド部当接部材29a,29bに当接した状態で更に各第二の治具14aないし14cを回動させることにより、所定方向にスライドする。
【0055】
即ち、第一の治具13aに固定されたスライド部当接部材29aは、該第一の治具13aの前記第二の治具14a,14bの回動側(図7の右側)の中央に配置されたブロック部30aに、2本の円柱状の当接円柱部31a,31bを突設してなる。そして、図8から図13に順次示すように、前記第一の治具13aの両端部に連結された第二の治具14a,14bを回動させることにより、それぞれのスライド部20a,20bを、前記当接円柱部31a,31bを挟み込むようにそれぞれ当接させる。この状態で、図13に示すように、更に前記第二の治具14a,14bを回動させることにより、前記スライド部20a,20bを、前記各円柱当接部31a,31bとの当接に基づき、それぞれ回動方向と反対側にスライドさせる。なお、該各円柱当接部31a,31bは、少なくとも一方が存在すれば良いが、スライド部20a,20bをより確実にスライドさせるために、複数配置することが好ましい。
【0056】
なお、前記第二の治具14a,14bを構成する基部19a,19bは、回動側の側面の前記当接円柱部31a,31bに整合する位置に切り欠き32,32を形成している。そして、該当接円柱部31a,31bが前記スライド部20a,20bに当接してスライドさせる際に、該当接円柱部31a,31bが前記基部19a,19bと干渉することを防止している。
【0057】
また、第一の治具13bに固定されたスライド部当接部材29bは、該第一の治具13bの前記第二の治具14b,14cの回動側(図7の左側)の中央に配置されたブロック部30bの両側に、2本ずつ突部33a,33bを突設してなる。そして、図8から図13に順次示すように、前記第一の治具13bの両端部に連結された第二の治具14b,14cを回動させることにより、それぞれのスライド部20b,20cを、前記各突部33a,33bを挟み込むようにそれぞれ当接させる。この状態で、図13に示すように、更に前記第二の治具14b,14cを回動させることにより、前記スライド部20b,20cを、前記各突部33a,33bとの当接に基づき、それぞれ回動方向と反対側にスライドさせる。なお、該各突部33a,33bは、少なくともブロック部30bの両側に一対存在すれば良いが、スライド部20a,20bをより確実にスライドさせるために、複数配置することが好ましい。
【0058】
ここで、真中に配置される第二の治具14bのスライド部20bは、図13に矢印で示すように、第一の治具13a側と第一の治具13b側とで逆方向に押される。このため、スライド部20bを分割して、図14に示すような構成とすることが考えられるが、同図に示すように、この構成では、素材Wが同一直線状で結びつかない。したがって、図14に示す構造は採用できない。
【0059】
したがって、本実施の形態の場合、前記真中に配置される第二の治具14bは、分割され相対変位可能な2個の基部19b,19cを有し、該両基部19b,19c同士に掛け渡すように単一のスライド部20bを配置している。そして、曲げ加工の際に、該両基部19b,19cを相対変位させることにより、前記単一のスライド部20bが該両基部19b,19cに対しそれぞれスライドすることを許容している。
【0060】
また、前記第一の治具13aの素材Wの配設方向に隣接する位置(図7ないし13の下側)に、図13に示すように、前記真中の第二の治具14bを回動させた場合に、該真中の第二の治具14bを構成する一方の基部19cに当接する、基部当接部材34を配置している。この状態で、該真中の第二の治具14bを更に回動させることにより、該一方の基部19cに連結される第一の治具13b、及び、該第一の治具13bを介して連結される端部の第二の治具14cと共に、前記一方の基部19cが、前記真中の第二の治具14bを構成する他方の基部19bに対し変位する。この結果、前記単一のスライド部20bが相対的に前記一方の基部19cに対し、回動側と反対側に変位する。
【0061】
即ち、本実施の形態の場合、前記単一のスライド部20bは、前記真中の第二の治具14bが前記第一の治具13aに対して回動することにより、スライド部当接部材29aに当接して、図13の右側に変位する。更に、前記一方の基部19cが前記基部当接部材34に当接して、図13の右側に変位する。この際、前記真中の第二の治具14bが前記第一の治具13bに対して回動することにより、前記単一のスライド部20bが前記スライド部当接部材29bに当接して、該単一のスライド部20bが前記一方の基部19cと共に変位することを防止する。この結果、該単一のスライド部20bが相対的に該一方の基部19cに対し、図13の左側に変位する。なお、このような動作を実現すべく、前記スライド部当接部材29bの突部33a,33bの突出量を、前記第一の治具13bが前記一方の基部19cと共に、図13の右側に変位する量を考慮して定める。
【0062】
このように本実施の形態の場合には、真中の第二の治具14bを構成する基部19b,19cを分割して相対変位可能としているため、スライド部20bを単一としても、該スライド部20bを前記基部19b,19cに対し、それぞれスライド可能とできる。そして、該スライド部20bを単一とすることができるため、素材Wを同一直線状で結びつけることができ、前述の図14に示したような問題が生じることはない。
【0063】
また、前記端部の第二の治具14cを構成する基部19dは、回動方向側に突出するように、仕上げ押付部材35を設けている。該仕上げ押付部材35は、図13に示すように、各治具の回動の終了時に、真中の第二の治具14bの他方の基部19bと当接する。そして、この状態から、更に前記端部の第二の治具14cを回動させることにより、前記仕上げ押付部材35を前記他方の基部19bに押し付ける。これにより、各第二の治具14aないし14cを構成する各スライド部20aないし20cを、所定位置に確実にスライドさせて、素材Wの曲げ加工を精度良く、且つ、確実に行えるようにしている。
【0064】
なお、上述のスライド部当接部材29a,29bは、上述の仕上げ押付部材35と同様に、各スライド部20aないし20cの回動側の側面に設けた突出部材により構成しても良い。この場合、該突出部材は、回動時に対向するスライド部同士の、少なくとも一方に設ければ良い。そして、該突出部材をそれぞれ対向するスライド部に当接させて、対向するスライド部同士をそれぞれ反対側にスライドさせる。
【0065】
上述のような本実施の形態の曲げ加工機28によれば、素材Wの4個所でそれぞれ略S字状に曲げ加工を行うことができる。即ち、合計12個所の曲げ加工を、単一の曲げ加工機28で、前記素材Wを取り外したり向きを変えたりすることなく、ほぼ同時に行うことができる。このため、複雑な曲げ形状を精度良く、且つ、短時間で製造でき、製造コストの低減を図れる。
【0066】
即ち、前記曲げ加工機28を構成する各曲げ加工装置12は、前述の第一の実施の形態で説明したように、素材Wの曲げ加工時に引き込みが生じることがない。この為、このような曲げ加工装置12を複数組み合わせて、前記素材Wの複数個所に同時に曲げ加工を施しても、該素材Wが引っ張られることがない。従って、該素材Wの複数個所に同時に曲げ加工を施しても、該素材Wの寸法が変化することがなく、複雑な曲げ形状を精度良く、且つ、短時間で得られる。
【0067】
更に、本実施の形態の曲げ加工機28により、前述の図1、2に示したような回転電機用のコイル4を製造すれば、コイル4の接合個所を少なくできる為、製造コストの低減を図れ、且つ、コイル4の小型化を図れる。即ち、上述のように素材Wに曲げ加工を施せば、1回の加工により、折り曲げ部を多く形成できる為、曲げ加工後の素材を溶接等により接合して、前述の図2に示したようなコイル4を得る場合に、接合個所を少なくでき、製造コストの低減を図れる。又、接合個所を少なくできれば、各コイル4同士の間隔を詰めることができ、コイル4全体の小型化を図れる。
【符号の説明】
【0068】
1 ステータ
2 ステータコア
3 マグネットワイヤ
4 コイル
5 スロット
6 ティース
7 一端面
8 一端側コイルエンド部
9 他端面
10 他端側コイルエンド部
11 スロット導体部
12 曲げ加工装置
13,13a,13b 第一の治具
14,14a,14b,14c 第二の治具
15 回動軸
16 抑え部
17 抑え面
18 オフセット曲げ部
19,19a,19b,19c,19d 基部
20,20a,20b,20c スライド部
21 固定曲げ部
22 固定ブロック
23a,23b 抑え部
24 スライド曲げ部
25a,25b 抑え面
26 スライド孔
27 ピン
28 曲げ加工機
29a,29b スライド部当接部材
30a,30b ブロック部
31a,31b 当接円柱部
32 切り欠き
33a,33b 突部
34 基部当接部材
35 仕上げ押付部材
W 素材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の素材に3個所の曲げ加工を施す曲げ加工装置において、
回動軸を中心に回動自在に連結される第一の治具及び第二の治具と、
該第一の治具と第二の治具との何れかに配置され、前記回動軸から前記素材の回動側に所定量オフセットして配置され、前記両治具の回動により該素材を曲げるオフセット曲げ部と、を備え、
前記第一の治具は、回動方向と反対側に前記素材の変位を抑える抑え部を有し、
前記第二の治具は、前記第一の治具と回動自在に連結される基部と、該基部に対し前記素材を所定量スライドさせるスライド部と、前記基部に固定され、前記スライド部のスライドにより前記素材を曲げる固定曲げ部と、を有し、
前記スライド部は、前記素材の回動方向両側の変位を抑える抑え部と、該スライド部のスライドにより該素材を曲げるスライド曲げ部と、を有し、
前記両治具を回動させると共に前記スライド部をスライドさせ、前記素材を該両治具を構成する各抑え部に対し変位させることなく、該素材に3個所の曲げ加工を施すことを特徴とする曲げ加工装置。
【請求項2】
前記スライド部が移動する方向及び量は、前記素材の中立線上の前記固定曲げ部及び前記スライド曲げ部よりも前記第二の治具側の所定の点が、該両曲げ部で曲げられなかったと仮定した場合と、該両曲げ部で曲げられた場合とで、それぞれ存在する位置に基づいて定める、請求項1に記載の曲げ加工装置。
【請求項3】
前記固定曲げ部及びスライド曲げ部で曲げられなかったと仮定した場合に前記所定の点が存在する位置を始点と、該両曲げ部で曲げられた場合に前記所定の点が存在する位置を終点とした場合に、
前記スライド部は、前記始点を通る前記第二の治具の前記素材を配設する方向と平行な仮想線上の、該始点及び前記終点から同じ距離に存在する点を中心とし、該始点及び終点を通る円弧に沿ってスライドする、請求項2に記載の曲げ加工装置。
【請求項4】
前記スライド部は、前記基部に対し回動方向と反対側にスライドし、前記固定曲げ部は、前記オフセット曲げ部と前記素材を挟む位置に配置され、前記スライド曲げ部は、該素材の回動側に配置される、請求項1ないし3のうちの何れか1項に記載の曲げ加工装置。
【請求項5】
前記所定の素材が、回転電動用のコイルを構成する平角線である、請求項1ないし4のうちの何れか1項に記載の曲げ加工装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のうちの何れか1項に記載の曲げ加工装置を、前記第一の治具と前記第二の治具とを前記回動中心で交互に連結することにより、複数個直列状に配置して、前記所定の素材を複数個所で曲げ加工をし得ることを特徴とする、曲げ加工機。
【請求項7】
前記第一の治具の両端部に前記第二の治具をそれぞれ回動自在に連結し、
該両第二の治具を互いに近づく方向に回動させた場合に、それぞれのスライド部と当接するスライド部当接部材を備え、
前記両第二の治具を回動させ、該両第二の治具のスライド部をそれぞれ前記スライド部当接部材に当接させた状態で、該両第二の治具を更に回動させることにより、前記各スライド部をそれぞれ回動方向と反対側にスライドさせる、請求項6に記載の曲げ加工機。
【請求項8】
前記第一の治具及び第二の治具を、第一の治具の両端部に第二の治具が配置されるように交互に5個の治具を回動自在に連結し、
該各治具のうち、真中に配置される第二の治具は、分割され相対変位可能な2個の基部と、該両基部同士に掛け渡すように配置される単一のスライド部と、を有し、
曲げ加工の際に、前記両基部が相対変位することにより、該単一のスライド部が該両基部に対しそれぞれスライドする、請求項6又は7に記載の曲げ加工機。
【請求項9】
前記真中の第二の治具を回動させた場合に、該真中の第二の治具を構成する一方の基部に当接する基部当接部材を有し、
該真中の第二の治具を回動させ、該一方の基部を該基部当接部材に当接させた状態で、該真中の第二の治具を更に回動させることにより、該一方の基部に連結される第一の治具、及び、該第一の治具を介して連結される端部の第二の治具と共に、前記一方の基部が、前記真中の第二の治具を構成する他方の基部に対し変位する、請求項8に記載の曲げ加工機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−221225(P2010−221225A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68101(P2009−68101)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】