説明

曲率半径算定装置、曲率半径算定方法、及び曲率半径算定プログラム

【課題】各形状補間点が実際の道路形状に合致する位置に設定されていない場合であっても、曲率半径の算定精度を向上させることができる、曲率半径算定装置、曲率半径算定方法、及び曲率半径算定プログラムを提供すること。
【解決手段】曲率半径算定装置50は、地図情報DB52aと、形状補間点情報を取得する形状補間点情報取得部51aと、曲率半径の算定の対象とするコーナー区間を検出するコーナー区間検出部51bと、形状補間点の相互間の距離に基づいて基準距離を設定する基準距離設定部51cと、コーナー区間の仮の曲率半径を算定する仮曲率半径算定部51dと、コーナー区間の道路種別と仮の曲率半径とに基づいて補正係数を特定する補正係数特定部51eと、補正係数と基準距離とに基づいて3点の形状補間点を抽出する形状補間点抽出部51fと、3点の形状補間点に基づいてコーナー区間の曲率半径を算定する曲率半径算定部51gとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲率半径算定装置、曲率半径算定方法、及び曲率半径算定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カーナビゲーション装置には、車両が走行する際に走行経路の道路形状に応じた各種の運転支援等を行うため、道路形状を推定するための道路形状推定装置が組み込まれている。この道路形状推定装置は、地図情報データベースを備えており、この地図情報データベースには、道路形状を複数の点で表すために設定された形状補間点が記憶されている。そして、道路形状推定装置は、道路形状の推定対象となっている道路に設定された形状補間点の中で、互いに隣接する3つの形状補間点を用いて道路の曲率半径を算出し、当該算出した曲率半径に基づいてクロソイドフィッティング処理を行うことで、道路形状を推定していた(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−214839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、互いに隣接する3つの形状補間点を用いて道路の曲率半径を算出する場合、これら各形状補間点が実際の道路形状に合致する位置に設定されている場合には、道路の曲率半径を正しく算出することができるが、現実的には、各形状補間点が実際の道路形状に合致する位置に設定されていない場合があり、この場合には、道路の曲率半径の算出精度が低下する可能性があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、各形状補間点が実際の道路形状に合致する位置に設定されていない場合であっても、道路の曲率半径の算出精度を向上させることができる、曲率半径算定装置、曲率半径算定方法、及び曲率半径算定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の曲率半径算定装置は、道路種別を含む地図情報を格納する地図情報格納手段と、道路に沿って設定された複数の形状補間点の各々の位置を特定する形状補間点情報を取得する形状補間点情報取得手段と、前記形状補間点情報取得手段にて取得された形状補間点情報に基づいて、曲率半径の算定の対象とするコーナー区間を検出するコーナー区間検出手段と、前記形状補間点情報取得手段にて取得された形状補間点情報に基づいて、前記コーナー区間検出手段にて検出されたコーナー区間に含まれる複数の形状補間点の相互間の距離を算定し、当該算定した距離に基づいて基準距離を設定する基準距離設定手段と、前記形状補間点情報取得手段にて取得された形状補間点情報に基づいて、前記コーナー区間に含まれる3つの形状補間点を抽出し、当該抽出した3つの形状補間点に基づいて、当該コーナー区間の仮の曲率半径を算定する仮曲率半径算定手段と、前記地図情報格納手段にて格納された地図情報から取得した前記コーナー区間の道路種別と、前記仮曲率半径算定手段にて算定された仮の曲率半径とに基づいて、前記基準距離設定手段にて設定された基準距離を補正するための補正係数を特定する補正係数特定手段と、前記補正係数特定手段にて特定された補正係数と、前記基準距離設定手段にて設定された基準距離とに基づいて、前記コーナー区間に含まれる形状補間点の中から取得すべき3点の形状補間点の相互間距離を算定し、当該算定された相互間距離だけ相互に離れた3点を前記コーナー区間に含まれる形状補間点の中から抽出する形状補間点抽出手段と、前記形状補間点抽出手段にて抽出された3点の形状補間点に基づいて、前記コーナー区間の曲率半径を算定する曲率半径算定手段とを備える。
【0007】
請求項2に記載の曲率半径算定装置は、請求項1に記載の曲率半径算定装置において、前記基準距離設定手段は、前記コーナー区間に含まれる形状補間点の相互間の平均距離を算定し、当該算定した平均距離を前記基準距離として設定する。
【0008】
請求項3に記載の曲率半径算定装置は、請求項1又は2に記載の曲率半径算定装置において、前記補正係数を道路の種別毎及び道路の曲率半径毎に格納する補正係数格納手段を備え、前記補正係数特定手段は、前記地図情報格納手段にて格納された地図情報から取得した前記コーナー区間の道路種別と、前記仮曲率半径算定手段にて算定された仮の曲率半径とに対応する補正係数を、前記補正係数格納手段から取得する。
【0009】
請求項4に記載の曲率半径算定方法は、道路に沿って設定された複数の形状補間点の各々の位置を特定する形状補間点情報を取得する形状補間点情報取得ステップと、前記形状補間点情報取得ステップにて取得された形状補間点情報に基づいて、曲率半径の算定の対象とするコーナー区間を検出するコーナー区間検出ステップと、前記形状補間点情報取得ステップにて取得された形状補間点情報に基づいて、前記コーナー区間検出ステップにて検出されたコーナー区間に含まれる複数の形状補間点の相互間の距離を算定し、当該算定した距離に基づいて基準距離を設定する基準距離設定ステップと、前記形状補間点情報取得ステップにて取得された形状補間点情報に基づいて、前記コーナー区間に含まれる3つの形状補間点を抽出し、当該抽出した3つの形状補間点に基づいて、当該コーナー区間の仮の曲率半径を算定する仮曲率半径算定ステップと、道路種別を含む地図情報を格納する地図情報格納手段から取得した前記コーナー区間の道路種別と、前記仮曲率半径算定ステップにて算定された仮の曲率半径とに基づいて、前記基準距離設定ステップにて設定された基準距離を補正するための補正係数を特定する補正係数特定ステップと、前記補正係数特定ステップにて特定された補正係数と、前記基準距離設定ステップにて設定された基準距離とに基づいて、前記コーナー区間に含まれる形状補間点の中から取得すべき3点の形状補間点の相互間距離を算定し、当該算定された相互間距離だけ相互に離れた3点を前記コーナー区間に含まれる形状補間点の中から抽出する形状補間点抽出ステップと、前記形状補間点抽出ステップにて抽出された3点の形状補間点に基づいて、前記コーナー区間の曲率半径を算定する曲率半径算定ステップとを含む。
【0010】
請求項5に記載の曲率半径算定プログラムは、請求項4に記載の方法をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の曲率半径算定装置、請求項4に記載の曲率半径算定方法、及び請求項5に記載の曲率半径算定プログラムによれば、コーナー区間の道路種別と仮の曲率半径とに基づいて補正係数を特定し、この補正係数と基準距離とに基づいて3点の形状補間点の相互間距離を算定し、この相互間距離だけ相互に離れた3つの形状補間点を用いてコーナー区間の曲率半径を算定するので、コーナー区間の道路種別と曲率半径に応じた距離だけ離れた形状補間点を用いてコーナー区間の形状を推定することができ、形状補間点が実際の道路形状に合致する位置に設定されていない場合であっても、曲率半径の算定精度を向上させることができる。
【0012】
請求項2に記載の曲率半径算定装置によれば、複数の形状補間点の相互間の平均距離を算定し、当該算定した平均距離を基準距離として設定するので、複数の形状補間点の代表的な距離を基準距離とし、この基準距離に基づいて3点の形状補間点の相互間距離が算定されるので、曲率半径の算定精度を向上させることができる。
【0013】
請求項3に記載の曲率半径算定装置置によれば、コーナー区間の道路種別と仮の曲率半径とに対応する補正係数が取得されるので、形状推定の対象になり得る各道路の種別と曲率半径に応じて補正係数を設定しておくことで、道路種別と曲率半径に応じて適切な相互間距離を算定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態に係るカーナビゲーションシステムを例示するブロック図である。
【図2】補正係数テーブルを例示する図である。
【図3】道路形状推定処理のフローチャートである。
【図4】道路形状推定処理による推定結果を示す図であり、(a)は従来の道路形状推定結果を示す図、(b)は本発明の実施の形態による道路形状推定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る曲率半径算定装置、曲率半径算定方法、及び曲率半径算定プログラムの実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。ただし、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。なお、なお、本発明に係る曲率半径算定装置、曲率半径算定方法、及び曲率半径算定プログラムは、任意の目的に使用することができるが、この実施の形態では、カーナビゲーションシステムにおける道路形状の推定に適用した例を示す。
【0016】
(構成)
まず、本実施の形態に係るカーナビゲーションシステムの構成を説明する。図1は、本実施の形態に係るカーナビゲーションシステムを例示するブロック図である。図1に示すように、カーナビゲーションシステム1は、現在位置検出処理部10、車速センサ20、ディスプレイ30、スピーカ40、及び曲率半径算定装置50を備えている。
【0017】
(構成−現在位置検出処理部)
現在位置検出処理部10は、カーナビゲーションシステム1が取り付けられた車両(以下、自車両)の現在位置を検出する現在位置検出手段である。具体的には、現在位置検出処理部10は、GPS、地磁気センサ、距離センサ、又はジャイロセンサ(いずれも図示省略)の少なくとも一つを有し、現在の自車両の位置(座標)及び方位等を公知の方法にて検出する。
【0018】
(構成−車速センサ)
車速センサ20は、自車両の車輪の回転速度等を曲率半径算定装置50に出力するものであり、公知の車速センサを用いることができる。
【0019】
(構成−ディスプレイ)
ディスプレイ30は、曲率半径算定装置50によって案内された画像を表示する表示手段である。ディスプレイ30の具体的な構成は任意であり、公知の液晶ディスプレイや有機ELディスプレイの如きフラットパネルディスプレイを使用することができる。
【0020】
(構成−スピーカ)
スピーカ40は、曲率半径算定装置50の制御に基づいて各種の音声を出力する出力手段である。スピーカ40より出力される音声の具体的な態様は任意であり、必要に応じて生成された合成音声や、予め録音された音声を出力することができる。
【0021】
(構成−曲率半径算定装置)
曲率半径算定装置50は、曲率半径の算定を行う曲率半径算定手段であり、制御部51及びデータ記録部52を備えている。
【0022】
(構成−曲率半径算定装置−制御部)
制御部51は、曲率半径算定装置50を制御する制御手段であり、具体的には、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成されるコンピュータである。特に、本実施の形態に係る曲率半径算定プログラムは、任意の記録媒体又はネットワークを介して曲率半径算定装置50にインストールされることで、制御部51の各部を実質的に構成する。
【0023】
この制御部51は、機能概念的に、形状補間点情報取得部51a、コーナー区間検出部51b、基準距離設定部51c、仮曲率半径算定部51d、補正係数特定部51e、形状補間点抽出部51f、及び曲率半径算定部51gを備える。形状補間点情報取得部51aは、道路に沿って設定された複数の形状補間点の各々の位置を特定する形状補間点情報を取得する形状補間点情報取得手段である。コーナー区間検出部51bは、形状補間点情報取得部51aにて取得された形状補間点情報に基づいて、曲率半径の算定の対象とするコーナー区間を検出するコーナー区間検出手段である。基準距離設定部51cは、形状補間点情報取得部51aにて取得された形状補間点情報に基づいて、コーナー区間検出部51bにて検出されたコーナー区間に含まれる複数の形状補間点の相互間の距離を算定し、当該算定した距離に基づいて基準距離を設定する基準距離設定手段である。仮曲率半径算定部51dは、形状補間点情報取得部51aにて取得された形状補間点情報に基づいて、コーナー区間に含まれる3つの形状補間点を抽出し、当該抽出した3つの形状補間点に基づいて、当該コーナー区間の仮の曲率半径を算定する仮曲率半径算定手段である。補正係数特定部51eは、後述する地図情報DB52aにて格納された地図情報から取得したコーナー区間の道路種別と、仮曲率半径算定部51dにて算定された仮の曲率半径とに基づいて、基準距離設定部51cにて設定された基準距離を補正するための補正係数を特定する補正係数特定手段である。形状補間点抽出部51fは、補正係数特定部51eにて特定された補正係数と、基準距離設定部51cにて設定された基準距離とに基づいて、コーナー区間に含まれる形状補間点の中から取得すべき3点の形状補間点の相互間距離を算定し、当該算定された相互間距離だけ相互に離れた3点をコーナー区間に含まれる形状補間点の中から抽出する形状補間点抽出手段である。曲率半径算定部51gは、形状補間点抽出部51fにて抽出された3点の形状補間点に基づいて、コーナー区間の曲率半径を算定する曲率半径算定手段である。これらの制御部51の各構成要素によって実行される処理の詳細については後述する。また、補正係数、基準距離、及び仮の曲率半径についても後述する。
【0024】
(構成−曲率半径算定装置−データ記録部)
図1において、データ記録部52は、曲率半径算定装置50の動作に必要なプログラム及び各種のデータを記録する記録手段であり、例えば、外部記録装置としてのハードディスク(図示省略)を用いて構成されている。ただし、ハードディスクに代えてあるいはハードディスクと共に、磁気ディスクの如き磁気的記録媒体、又はDVDやブルーレイディスクの如き光学的記録媒体を含む、その他の任意の記録媒体を用いることができる。
【0025】
このデータ記録部52は、地図情報データベース(以下、データベースを「DB」と称する)52aと補正係数テーブル52bを備えている。地図情報DB52aは、地図情報を格納する地図情報格納手段である。「地図情報」とは、交差点や一時停止地点を含む各種の位置の特定に必要な情報であり、例えば、交差点データ(交差点座標等)や、地図をディスプレイ30に表示するための地図表示データ等を含んで構成されている。また、地図情報には、各道路の道路種別(高速道路、一般道、細街路、山岳路等)、各道路の始点から終点までの道路リンクを表すデータ、及び道路リンク上において道路形状を表すために道路に略沿って設定された形状補間点のデータ(以下、形状補間点データ)が含まれる。形状補間点データには、各形状補間点の番号及び座標等が含まれる。なお、各ノードは、道路リンク上の始点又は終点を表すものであるため、形状補間点としても機能する。
【0026】
補正係数テーブル52bは、補正係数を道路の種別毎及び道路の曲率半径毎に格納する補正係数格納手段である。この補正係数テーブル52bを図2に例示する。この図2に示すように、補正係数テーブル52bは、項目「道路の曲率半径」と項目「道路種別」を含んでおり、項目「道路種別」は、さらに項目「高速道路」、項目「一般道」、項目「細街路、山岳路」を含んでいる。項目「道路の曲率半径」に対応する情報としては、「0〜100未満」、「100〜200未満」、「200〜300未満」、「300〜400未満」、「400〜500未満」、「500以上」が格納されており、項目「高速道路」、項目「一般道」、項目「細街路又は山岳路」に対応する情報としては、補正係数S1〜S3のいずれか、あるいは当該補正係数S1〜S3に数値を乗算したものが格納されている。
【0027】
ここで、補正係数について説明する。本実施の形態では、概略的に、道路形状を推定する際、3点の形状補間点を用いたクロソイドフィッティング処理を行う。ただし、従来のように相互に隣接した3点の形状補間点に限定せず、必要に応じて、相互に一定な距離だけ隔てて配置された3点の形状補間点を抽出して使用する。ただし、一定な距離とは、厳密に同一な距離を意味するものではなく、同一とみなせる程度のある程度幅をもった距離を意味する。以下、この距離を「抽出距離」と称する。
【0028】
この抽出距離は、「基準距離」に「補正係数」を乗じることで算定する。「基準距離」とは、抽出距離を算定するための基礎となる距離である。以下の説明では、基準距離として「平均距離」を用いた例について説明する。平均距離とは、曲率半径の算定の対象になるコーナー区間に含まれる形状補間点を対象として算定された距離であって、相互に隣接する形状補間点の各距離の平均である。「補正係数」とは、基準距離を補正して抽出距離を算定するための係数である。この補正係数は、道路の種別と、道路の曲率半径とに基づいて、補正係数テーブル52bに予め設定されている。この補正係数の概略的な設定方針としては、例えば、上述のように基準距離として平均距離を用いた場合において、道路種別=高速道路である場合には、形状補間点が比較的長い距離を隔てて配置されており、相互に隣接する3点の形状補間点を用いて曲率半径を算定しても実際の道路の曲率半径との間でずれが生じる可能性は低いと考えられることから、平均距離に近い距離を抽出距離として設定することができるので、補正係数を比較的小さくする(例えば1に近い係数とする)。一方、道路種別=細街路又は山岳路である場合には、形状補間点が比較的間短い距離を隔てて配置されており、相互に隣接する3点の形状補間点を用いて曲率半径を算定すると実際の道路の曲率半径との間でずれが生じる可能性があると考えられることから、平均距離よりも長い距離を抽出距離として設定することが好ましいため、補正係数を比較的大きくする(例えば1より大きい係数とする)。また、道路の曲率半径に関して、道路の曲率半径が小さい場合には、比較的近い形状補間点を使用してもコーナーを直線と推定してしまう可能性が低いため、抽出距離を短くするため、補正係数を比較的小さくし(あるいは1とし)、道路の曲率半径が大きい場合には、比較的近い形状補間点を使用するとコーナーを直線と推定してしまうことで推定精度が低下する可能性があるため、道路の曲率半径が小さい場合に比べて抽出距離を長くするため、補正係数を比較的大きくする。なお、このように、補正係数を決定する上で、道路の曲率半径を使用しているが、道路形状の推定が終了するまでは、最終的な曲率半径は特定することができない。このため、本実施の形態においては、補正係数を決定するために使用する暫定的な曲率半径を算定し、当該算定した暫定的な曲率半径を用いて補正係数を決定することとしている。このように暫定的に算定された曲率半径を、「仮の曲率半径」と称する。
【0029】
このような設定方針に基づき、図2の補正係数テーブル52bの内容が設定されている。すなわち、道路種別に関して、道路種別=高速道路の場合にはパラメータ=S3、道路種別=一般道の場合にはパラメータ=S2、道路種別=細街路又は山岳路の場合にはパラメータ=S1をそれぞれ用いるものとして、S3<S2<S1となるように、これらパラメータS1〜S3を決定している。この条件に合致する限りにおいて、パラメータの具体的数値は任意であるが、例えば、S3=1.4、S2=1.8、S1=2.0として設定される。また、道路の曲率半径に関して、道路の曲率半径が大きい場合には、補正係数が大きくなるように、1.2又は1.5が乗算される。なお、この条件に合致する限りにおいて、これらの数値も任意に変更することができ、例えば、パラメータS1〜S3と同様に、各数値をパラメータとして設定することもできる。なお、道路種別=一般道の場合であって、道路の曲率半径=400〜500未満及び500以上の場合と、道路種別=細街路又は山岳路の場合であって、道路の曲率半径=300〜400未満、400〜500未満、及び500以上の場合は、対応する補正係数が設定されていない。この理由は、これらの各場合には、道路形状をコーナーであるとみなさない(直線とみなす)ことができる場合であり、補正係数による補正を行う必要性が低いためである。ただし、これらの各場合に対しても、補正係数を設定するようにしてもよい。
【0030】
(処理)
次に、このように構成される曲率半径算定装置50によって実行される道路形状推定処理について説明する。図3は、道路形状推定処理のフローチャートである(以下の各処理の説明ではステップを「S」と略記する)。この道路形状推定処理は、例えば、自車両の走行開始後に自動的に起動されて所定間隔で繰り返し実行される。
【0031】
まず、制御部51は、現在位置検出処理部10から自車両の現在位置を取得する(SA1)。次いで、コーナー区間検出部51bは、曲率半径の算定の対象とするコーナー区間を検出する(SA2)。具体的には、形状補間点情報取得部51aが、道路に沿って設定された複数の形状補間点の各々の位置を特定する形状補間点情報を取得し、当該取得された形状補間点情報に基づいて、コーナー区間検出部51bが、曲率半径の算定の対象とするコーナー区間を検出する。例えば、形状補間点情報取得部51aは、SA1で取得した自車両の現在位置から、当該自車両の走行道路上における当該自車両の進行方向前方の所定範囲(例えば、1km以内)を、推定対象範囲として設定し、地図情報DB52aに格納されている地図情報から、当該推定対象範囲内に含まれる全ての形状補間点を取得する。次いで、コーナー区間検出部51bは、形状補間点情報取得部51aにて取得された全ての形状補間点を対象に、相互に隣接する3点の形状補間点の半径(以下、3点半径)と、相互に隣接する形状補間点同士を結ぶ線分の相互角度(屈曲角)をそれぞれ算定する。そして、3点半径が所定半径以下となる区間であって、屈曲角が所定角度以上であり、かつ、屈曲角が同一方向に形成される区間を、コーナー区間として特定する。また、コーナー区間検出部51bは、当該特定したコーナー区間に含まれる形状補間点の中で、最も手前にある形状補間点を、当該特定したコーナー区間の開始候補点に設定し、最も奥にある形状補間点を、当該特定したコーナー区間の終了候補点として設定する。
【0032】
次いで、制御部51は、自車両の進行方向前方にコーナー区間があるか否かを判定する(SA3)。具体的には、制御部51は、SA2でコーナー区間が検出された場合には、コーナー区間があると判定し、SA2でコーナー区間が検出されなかった場合には、コーナー区間がないと判定する。そして、コーナー区間がないと判定した場合(SA3、No)、制御部51は、道路形状を推定する必要がないものとし、道路形状推定処理を終了する。
【0033】
一方、コーナー区間があると判定した場合(SA3、Yes)、基準距離設定部51cは、SA2で特定されたコーナー区間(以下、単にコーナー区間)の基準距離を算定する(SA4)。具体的には、基準距離設定部51cは、SA2で取得したコーナー区間に含まれる形状補間点であって、開始候補点及び終了候補点と、開始候補点から終了候補点までの間に位置する形状補間点を対象として、相互に隣接する形状補間点の各距離を算定し、当該算定した各距離の平均距離を算定して、当該算定した平均距離を基準距離に設定する。
【0034】
次いで、仮曲率半径算定部51dは、コーナー区間の仮の曲率半径を算定する(SA5)。具体的には、仮曲率半径算定部51dは、SA2で取得したコーナー区間に含まれる形状補間点の中から、3つの形状補間点を抽出し、当該抽出した3つの形状補間点の半径(以下、3点半径)を公知の3点計算法によって算定し、当該算定した半径を仮の曲率半径に設定する。ここで、3つの形状補間点の抽出方法は任意であり、いずれの形状補間点を抽出してもよい。ここでは、相互に隣接する3つの形状補間点を抽出する。この3つの形状補間点は、コーナー区間の形状を代表するような形状補間点を抽出することが好ましく、例えば、仮曲率半径算定部51dは、SA3で取得した形状補間点の中で、最も中央寄りの位置において、相互に隣接する3つの形状補間点を抽出する。
【0035】
その後、補正係数特定部51eは、コーナー区間の道路種別を特定する(SA6)。具体的には、補正係数特定部51eは、地図情報DB52aの地図情報を参照し、コーナー区間の道路種別を特定する。
【0036】
次いで、補正係数特定部51eは、補正係数を特定する(SA7)。具体的には、補正係数特定部51eは、SA5で算定した仮の曲率半径と、SA6で特定したコーナー区間の道路種別とに対応する補正係数を、補正係数テーブル52bから取得する。例えば、仮の曲率半径=250mで、道路種別=一般道である場合において、パラメータS2=1.8の場合には、補正係数=S2×1.2=2.16となる。
【0037】
そして、形状補間点抽出部51fは、コーナー区間の曲率半径を算定するために使用する形状補間点を抽出する(SA8)。具体的には、形状補間点抽出部51fは、SA4で算定した基準距離に、SA7で特定した補正係数を乗じることで、抽出距離を算定する。例えば、基準距離=2mで、補正係数=2.16の場合には、抽出距離=4.32mとなる。次いで、形状補間点抽出部51fは、SA3で取得した形状補間点の中で、基準となる一つの形状補間点を特定し、当該特定した形状補間点と、当該特定した形状補間点に対して開始候補点側に抽出距離だけ離れた位置(以下、開始側位置)にある形状補間点と、当該特定した形状補間点に対して終了候補点側に抽出距離だけ離れた位置(以下、終了側位置)にある形状補間点とを、コーナー区間の曲率半径を算定するために使用する3つの形状補間点として特定する。ここで、基準となる一つの形状補間点としては、SA3で取得した形状補間点の中で、最も中央寄りの位置にある形状補間点を特定する。なお、開始側位置や終了側位置に形状補間点がない場合には、開始側位置に対して開始候補点側において最も近い位置にある形状補間点や、終了側位置対して終了候補点側において最も近い位置にある形状補間点を抽出する。
【0038】
そして、曲率半径算定部51gは、SA8で抽出された3つの形状補間点を用いて、当該3つの形状補間点の3点半径を公知の3点計算法によって算定する(SA9)。このことにより、コーナー区間の曲率半径を算定することができる。
【0039】
最後に、制御部51は、SA9で算定されたコーナー区間の曲率半径に基づいてクロソイドフィッティング処理を公知の方法で行うことで、コーナー区間の形状を推定する(SA10)。これにて道路形状推定処理が終了する。
【0040】
次に、このような道路形状推定処理を行う意義について説明する。図4は、道路形状推定処理による推定結果を示す図であり、(a)は従来の道路形状推定結果を示す図、(b)は本実施の形態による道路形状推定結果を示す図である。この図4(a)(b)には、形状補間点P1〜P6を示しており、特に、P4は、実際のコーナー区間の形状からのずれが大きい形状補間点であることを想定している。
【0041】
ここで、図4(a)に示すように、従来は、相互に隣接する3つの形状補間点を用いて曲率半径の算定を行っていたので、例えば、このような3つの形状補間点として、ずれが大きい形状補間点P4を含む形状補間点P2〜P4を用いて3点計算法によりコーナー区間の曲率半径を算定した場合には、当該算定されたコーナー区間の曲率半径が実際のコーナー区間の曲率半径とは異なるものとなり、曲率半径の算定精度が低いものとなる。また、この結果、このように算定されたコーナー区間の曲率半径に基づいて推定された道路の形状が実際の道路の形状とは異なるものとなる。
【0042】
これに対して、図4(b)に示すように、本実施の形態では、抽出距離だけ離れた3つの形状補間点を用いて道路形状の推定を行うので、例えば、このような3つの形状補間点として、形状補間点P1、P3、P5を用いて3点計算法によりコーナー区間の曲率半径を算定することができ、曲率半径の算定精度が向上する。また、この結果、このように算定されたコーナー区間の曲率半径に基づいて推定された道路の形状が実際のコーナー区間の形状と近くなり、推定精度を向上させることができる。
【0043】
(効果)
このように本実施の形態によれば、コーナー区間の道路種別と仮の曲率半径とに基づいて補正係数を特定し、この補正係数と基準距離とに基づいて3点の形状補間点の相互間距離を算定し、この相互間距離だけ相互に離れた3つの形状補間点を用いてコーナー区間の曲率半径を算定するので、コーナー区間の道路種別と曲率半径に応じた距離だけ離れた形状補間点を用いてコーナー区間の形状を推定することができ、形状補間点が実際の道路形状に合致する位置に設定されていない場合であっても、曲率半径の算定精度を向上させることができる。
【0044】
また、複数の形状補間点の相互間の平均距離を算定し、当該算定した平均距離を基準距離として設定するので、複数の形状補間点の代表的な距離を基準距離とし、この基準距離に基づいて3点の形状補間点の相互間距離が算定されるので、曲率半径の算定精度を向上させることができる。
【0045】
また、コーナー区間の道路種別と仮の曲率半径とに対応する補正係数が取得されるので、形状推定の対象になり得る各道路の種別と曲率半径に応じて補正係数を設定しておくことで、道路種別と曲率半径に応じて適切な相互間距離を算定することが可能となる。
【0046】
〔実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0047】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、上述の内容に限定されるものではなく、発明の実施環境や構成の細部に応じて異なる可能性があり、上述した課題の一部のみを解決したり、上述した効果の一部のみを奏することがある。
【0048】
(仮の曲率半径の算定について)
図3のSA5において仮の曲率半径を算定するための3つの形状補間点の抽出方法としては、上記説明した方法以外にも、種々の方法を採用することができる。例えば、仮曲率半径算定部51dは、屈曲角が最大となる形状補間点とその前後の形状補間点抽出する。あるいは、仮曲率半径算定部51dは、屈曲角が最大となる形状補間点であって、かつ、前後の形状補間点における屈曲角との差が小さい形状補間点を特定し、当該形状補間点とその前後の形状補間点を抽出する。あるいは、仮曲率半径算定部51dは、SA3で取得した形状補間点を対象に、相互に隣接する3つの形状補間点の全ての組み合わせを対象として3点半径を算定し、当該算定した3点半径の中で、一番小さく、かつ、前後の3点半径との差分が小さい3点半径を、仮の曲率半径としてもよい。
【0049】
(抽出距離に基づく形状補間点の設定について)
図3のSA8において抽出距離に基づいて3つの形状補間点を抽出する方法としては、上記説明した方法以外にも、種々の方法を採用することができる。例えば、形状補間点抽出部51fは、コーナー区間の全ての形状補間点を対象とした3点半径の中で一番小さい3点半径の中心の形状補間点を、コーナー区間の曲率半径を算定するための3つの形状補間点の中の中心の形状補間点として設定し、当該形状補間点に対して抽出距離だけ離れた2つの形状補間点をさらに抽出するようにしてもよい。あるいは、形状補間点抽出部51fは、最も中央寄りの位置にある形状補間点を特定した後、この形状補間点を基準として抽出距離だけ離れた開始側位置や終了側位置に形状補間点がない場合には、開始側位置や終了側位置に仮想の形状補間点を設定してもよい。仮想の形状補間点は、例えば、開始側位置や終了側位置の前後の形状補間点を特定し、当該特定した前後の形状補間点を結ぶ線分を設定し、当該線分上における開始側位置や終了側位置に対応する位置に設定することができる。また、形状補間点抽出部51fは、最も中央寄りの位置にある形状補間点以外の形状補間点を基準として、他の2つの形状補間点を抽出してもよい。
【0050】
(道路形状の推定について)
上記実施の形態では、コーナー区間の曲率半径が算定された後、当該算定された曲率半径に基づいてコーナー区間の形状を推定しているが、当該推定を行う処理は省略してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 カーナビゲーションシステム
10 現在位置検出処理部
20 車速センサ
30 ディスプレイ
40 スピーカ
50 曲率半径算定装置
51 制御部
51a 形状補間点情報取得部
51b コーナー区間検出部
51c 基準距離設定部
51d 仮曲率半径算定部
51e 補正係数特定部
51f 形状補間点抽出部
51g 曲率半径算定部
52 データ記録部
52a 地図情報DB
52b 補正係数テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路種別を含む地図情報を格納する地図情報格納手段と、
道路に沿って設定された複数の形状補間点の各々の位置を特定する形状補間点情報を取得する形状補間点情報取得手段と、
前記形状補間点情報取得手段にて取得された形状補間点情報に基づいて、曲率半径の算定の対象とするコーナー区間を検出するコーナー区間検出手段と、
前記形状補間点情報取得手段にて取得された形状補間点情報に基づいて、前記コーナー区間検出手段にて検出されたコーナー区間に含まれる複数の形状補間点の相互間の距離を算定し、当該算定した距離に基づいて基準距離を設定する基準距離設定手段と、
前記形状補間点情報取得手段にて取得された形状補間点情報に基づいて、前記コーナー区間に含まれる3つの形状補間点を抽出し、当該抽出した3つの形状補間点に基づいて、当該コーナー区間の仮の曲率半径を算定する仮曲率半径算定手段と、
前記地図情報格納手段にて格納された地図情報から取得した前記コーナー区間の道路種別と、前記仮曲率半径算定手段にて算定された仮の曲率半径とに基づいて、前記基準距離設定手段にて設定された基準距離を補正するための補正係数を特定する補正係数特定手段と、
前記補正係数特定手段にて特定された補正係数と、前記基準距離設定手段にて設定された基準距離とに基づいて、前記コーナー区間に含まれる形状補間点の中から取得すべき3点の形状補間点の相互間距離を算定し、当該算定された相互間距離だけ相互に離れた3点を前記コーナー区間に含まれる形状補間点の中から抽出する形状補間点抽出手段と、
前記形状補間点抽出手段にて抽出された3点の形状補間点に基づいて、前記コーナー区間の曲率半径を算定する曲率半径算定手段と、
を備える曲率半径算定装置。
【請求項2】
前記基準距離設定手段は、前記コーナー区間に含まれる形状補間点の相互間の平均距離を算定し、当該算定した平均距離を前記基準距離として設定する、
請求項1に記載の曲率半径算定装置。
【請求項3】
前記補正係数を道路の種別毎及び道路の曲率半径毎に格納する補正係数格納手段を備え、
前記補正係数特定手段は、前記地図情報格納手段にて格納された地図情報から取得した前記コーナー区間の道路種別と、前記仮曲率半径算定手段にて算定された仮の曲率半径とに対応する補正係数を、前記補正係数格納手段から取得する、
請求項1又は2に記載の曲率半径算定装置。
【請求項4】
道路に沿って設定された複数の形状補間点の各々の位置を特定する形状補間点情報を取得する形状補間点情報取得ステップと、
前記形状補間点情報取得ステップにて取得された形状補間点情報に基づいて、曲率半径の算定の対象とするコーナー区間を検出するコーナー区間検出ステップと、
前記形状補間点情報取得ステップにて取得された形状補間点情報に基づいて、前記コーナー区間検出ステップにて検出されたコーナー区間に含まれる複数の形状補間点の相互間の距離を算定し、当該算定した距離に基づいて基準距離を設定する基準距離設定ステップと、
前記形状補間点情報取得ステップにて取得された形状補間点情報に基づいて、前記コーナー区間に含まれる3つの形状補間点を抽出し、当該抽出した3つの形状補間点に基づいて、当該コーナー区間の仮の曲率半径を算定する仮曲率半径算定ステップと、
道路種別を含む地図情報を格納する地図情報格納手段から取得した前記コーナー区間の道路種別と、前記仮曲率半径算定ステップにて算定された仮の曲率半径とに基づいて、前記基準距離設定ステップにて設定された基準距離を補正するための補正係数を特定する補正係数特定ステップと、
前記補正係数特定ステップにて特定された補正係数と、前記基準距離設定ステップにて設定された基準距離とに基づいて、前記コーナー区間に含まれる形状補間点の中から取得すべき3点の形状補間点の相互間距離を算定し、当該算定された相互間距離だけ相互に離れた3点を前記コーナー区間に含まれる形状補間点の中から抽出する形状補間点抽出ステップと、
前記形状補間点抽出ステップにて抽出された3点の形状補間点に基づいて、前記コーナー区間の曲率半径を算定する曲率半径算定ステップと、
を含む曲率半径算定方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法をコンピュータに実行させる曲率半径算定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−214990(P2011−214990A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83213(P2010−83213)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】