説明

曲線造形装置

【課題】 推進工法によりきれいな曲線を容易に施工すること。
【解決手段】 屈曲自在な関節20aを形成する形で、推進方向に複数個直列に接続された筒体21を備える。推進方向1個おきの筒体21において、関節20aの屈曲方向両側にそれぞれ配置されると共に、推進方向前後の関節20aにおいて突出後退自在な2つのラム22bを有する両伸びジャッキ22を有する。曲線施工時には、曲線外側のラム22bだけを伸ばして、推力伝達を曲線外側で行う。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、地中に管を推進させる推進工法において、きれいな曲線を好適に施工することのできる曲線造形装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】推進工法とは、発進立坑より出発し地盤を掘削する掘削マシンを先頭にして、ヒューム管等の複数の推進管を順次後ろから直列に継ぎ足し、その最後尾を前記立坑内の元押しジャッキで押し込むことにより、上記複数の推進管を地中に敷設する工法である。この推進工法では、複数の推進管を、その管軸に直角な端面どうしを真っ直ぐに当接させながら直列に継ぎ足し推進させる「直線押し」が基本である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】推進工法による曲線施工の要望が高まっており、曲線施工に対する様々な工夫もなされているが、現状の技術ではきれいな曲線を施工することは非常に困難である。
【0004】そこで本発明は上記事情に鑑み、推進工法によりきれいな曲線を容易に施工することのできる曲線造形装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための本発明のうち請求項1は、推進方向前方の地盤を掘削しつつ、その後方より推進管(50)を順次継ぎ足し押し込むことにより、前記推進管の地盤への推進及び敷設を行う際に、前記推進管の推進方向前方に配置して使用する曲線造形装置(20)において、屈曲自在な関節(20a)を形成する形で、推進方向に複数個直列に接続された筒体(21)と、前記複数個の筒体のうち推進方向1個おきの筒体において、該筒体のうち前記関節の屈曲方向両側にそれぞれ配置されると共に、該筒体の推進方向前後の関節において突出後退自在な2つのラム(22b)を有する両伸びジャッキ(22)と、前記複数個の筒体のうち前記両伸びジャッキを有する筒体に隣接する筒体に設けられ、前記両伸びジャッキのラムにより押圧自在に配置された押圧部(23)と、を備えて構成したことを特徴とする。
【0006】また本発明のうち請求項2は、前記筒体の推進方向における長さは前記両伸びジャッキのシリンダ部(22a)の長さに略等しいことを特徴とする。
【0007】また本発明のうち請求項3は、前記関節を介して互いに隣接する前記筒体間に、これら筒体間の目開きを所定の目開き量までに規制する目開き規制手段(26)を、該関節の屈曲方向両側にそれぞれ配設したことを特徴とする。
【0008】また本発明のうち請求項4は、前記ラムの先端及び前記押圧部のうち少なくとも一方にクッション材(22c)を、前記ラムが前記押圧部に対して該クッション材を介して押圧可能に配設したことを特徴とする。
【0009】なお、括弧内の番号等は、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【0010】
【発明の効果】上記構成により本発明のうち請求項1では、曲線施工時には曲線造形装置において、曲線外側の両伸びジャッキのラムで押圧部を押圧し、曲線内側の両伸びジャッキのラムで押圧部を非押圧とすることで、推力作用位置を強制的に曲線外側にする。これにより屈曲部より推進先頭側の掘削機および曲線造形装置では推進方向を曲線内側に回転させる偶力が発生し、推進方向は容易に(自然に)曲線内側に変更される。所定の曲線に曲がった後、曲線の曲率に合わせて屈曲するようにした曲線造形装置のラムを押圧し推進方向を該曲線の曲率に合わせて保持するようにした。これにより曲線造形装置が曲線施工のガイドとなり曲線施工を正確かつきれいに行うことができる。
【0011】また請求項1では、両伸びジャッキを採用したことにより、筒体の長さを短くして関節を多くとることができ、しかも両伸びジャッキであるためジャッキ数は片伸びジャッキを採用する場合の半分に抑えられる。特に、関節が多く、屈曲点の多い構造となっているので、円弧に近いきれいな曲線を施工することが可能である。また、関節での目開きが少ないため、止水効果が高く、土砂噛み込みトラブル防止に効果的である。また、ジャキ数が少なくて済むことから経済的である。また、本発明では、筒体の推進方向における長さを両伸びジャッキのシリンダ部と略等しくできるので、筒体の長さを短く、関節を多くとることができ、きれいな曲線を施工することが可能となる。
【0012】また本発明のうち請求項2では、筒体の推進方向における長さは前記両伸びジャッキのシリンダ部の長さに略等しいので、筒体の長さが短く、関節を多くとることができるので、きれいな曲線を施工できる。
【0013】また本発明のうち請求項3では、両伸びジャッキでは両側のラムの突出量が各ラムに作用する負荷により一定とはならない可能性があるが、目開き規制手段により両側のラムの突出量を均一にすることができるので、筒体間の目開きを一定にできる。これによりきれいな曲線が施工できる。
【0014】また、関節が変化点(P)を通過する場合、筒体前部は、先方の筒体が曲線R内に入っていることから、当該部分が開口するが、筒体自体は未だ直線部分にあるので、後続する筒体との間に開口は生じない。また、その後曲線部分に筒体が入り込むと、筒体が変化点にあり、後続の筒体が直線分にあると、後続の筒体との間の目開き角度はaとなるが、先行する筒体との間の目開き角度は、当該筒体及び先行する筒体共に曲線部分にあるので、両者間の目開き角度は、後続の筒体に対する目開き角度の倍の2aとなる。このように、変化点付近で両伸びジャッキの突出量が筒体の前後で変化しなければならない状態が生じるが、そうした場合でも目開き規制手段により、筒体の前後の目開き角度を制限することが可能となるので、後続する筒体との間で必要以上に目開き角度が大きくなることが未然に防止され、精度よい施工が可能となる。
【0015】また本発明のうち請求項4では、両伸びジャッキのラムはクッション材を介して筒体の押圧部に荷重を伝達する。即ち、曲線造形装置はいわばバネ連接構造をなす。これにより両伸びジャッキはラムの支圧力を常時確保することができて好都合である。また、直線部及び緩曲線施工時には、両伸びジャッキに荷重を加えず(例えば油圧を抜く)、クッション材にて推力を伝達するように利用することも可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1は掘進装置を示した模式平面図である。推進工法において使用される掘進装置1は、図1R>1(a)に示すように、先頭(図1紙面左側)より、掘削マシン10、曲線造形装置20の2台のユニット、2台のフレキシブル推進管40がこの順で推進方向(図1の矢印S方向)に直列に接続されて構成されている。また掘進装置1の後端、従ってフレキシブル推進管40の後端には、図1(b)に示すように複数のヒューム管50(推進管)が直列に接続されている。
【0017】図1では説明を簡単にするため、途中に関節部をもたない一体タイプの掘削マシン10を示しているが、掘削マシン10には途中に1つ以上の関節部をもつ中折れ分割胴型のものを採用することが好ましい。掘削マシン10は円筒状の殻体12を有し、殻体12の前部(図1の紙面左側)には、前方の地盤を掘削自在なカッタ等を有した掘削手段15が設けられている。
【0018】図2は曲線造形装置の平断面図、図3は図2R>2のA−A線断面図である。曲線造形装置20は、図1に示すように、図2及び図3に示すように、推進方向(図2の矢印S方向)に直列に配設された複数のユニット25を有している。各ユニット25は、鋼製の円筒体である筒体21を有しており、筒体21の外周部分にはカラー部材21aが設けられている。カラー部材21aは筒体21の後端から推進方向後方に突出している。なお、カラー部材21aは従来どおり金属等により形成することも可能であるが、ゴム等の可撓性部材で形成するほうが好ましい(屈曲時に変形して目開き部をカバーする。)。推進方向に隣接する筒体21,21間は屈曲自在な関節20aとなっている。
【0019】各筒体21の後端にはクッション材24が設置されている。クッション材24は、例えば筒体21の周に沿って環状に配置されているか、或いは筒体21の軸心に対して少なくとも水平方向左右対称な位置に配置されている(又は、掘進方向に応じて、鉛直方向上下対称に配置されてもよい)。推進方向に隣接する筒体21どうしはクッション材24を挟む形で配置されている。また、推進方向後側の筒体21の前端部は、推進方向前方の筒体21のカラー部材21a内部に挿入されている。なお、曲線造形装置20の最前位置の筒体21は掘削マシン10の後端部に接続されている。
【0020】曲線造形装置20の複数のユニット25のうち推進方向1個おきのユニットは、図2及び図3に示すように油圧ジャッキからなる複数の押圧ジャッキ22(両伸びジャッキ)を、その筒体21の周に沿って環状に配設した形で、或いは筒体21の軸心に対して少なくとも水平方向左右対称な位置(関節20aの屈曲方向両側)に配設した形で有している。各押圧ジャッキ22はシリンダ部22aが筒体21に固定されており、該シリンダ部22aの前後両側(推進方向前後両側)にそれぞれラム22bが突出後退自在に設けられている。つまり各ラム22bは上記筒体21の前後両側である関節20a,20aに配置されている。なお、シリンダ部22aの長さと筒体21の長さは略等しい。
【0021】一方、押圧ジャッキ22を有しないユニット25の筒体21には、前端及び後端に、推進方向に対して直角な壁面からなる受圧壁23(押圧部)が設けられている。即ち、押圧ジャッキ22の各ラム22bは対向する位置の受圧壁23を押圧自在になっている。なお、ラム22bと受圧壁23との間にはクッション材22cが設置されている。クッション材22cは、ラム22b側及び受圧壁23側のうち少なくとも一方に設置する。
【0022】推進方向に隣接する筒体21,21間にはロッド26が複数設けられている。即ち、筒体21の前端部及び後端部には、ロッド26が推進方向に貫通したロッド貫通部27がそれぞれ設けられている。つまり各ロッド26は、推進方向前側の筒体21の後端部に形成されたロッド貫通部27を貫通すると共に、推進方向後側の筒体21の前端部に形成されたロッド貫通部27を貫通している。ロッド26の両端にはナット26aがそれぞれ螺合されており、ナット26aによりロッド26がロッド貫通部27から抜け外れないようになっている。なお、隣接する筒体21,21間(関節20a)のロッド26は、該筒体21の周に沿って環状に複数配置されているか、或いは筒体21の軸心に対して少なくとも水平方向左右対称な位置(関節20aの屈曲方向両側)に複数配置されている。
【0023】上述したように筒体21は鋼製であるため、該筒体21の推進方向の長さをできるだけ短くして曲線造形装置20を形成することが可能となっている(短くしてもコンクリート製に比べて破損に強い)。筒体21の長さをできるだけ短くすることで、急曲線にも対応できる曲線造形装置20が提供されることになる。但し、強度等の問題をクリアできれば筒体21を、鋼製以外に、プラスチックやコンクリート等で形成してもよい。
【0024】図1に示すフレキシブル推進管40は、公知のSR推進管(曲線推進管)と同様のものとなっている。例えばこのSR推進管は、Vol.13,No.8, 1999の「月刊推進技術」における「現場リポート、いろいろな分野で活躍する下水道推進技術、大中口径用急曲線推進管の開発」等で詳細に説明されている。詳細な図示は省略するが、例えばフレキシブル推進管40は、環状のコンクリート管体と環状のクッション材とが推進方向に交互に配置される形で多数接続されて構成されている。2台のうち推進方向前側のフレキシブル推進管40は、曲線造形装置20の後端に接続されている。
【0025】推進方向後側のフレキシブル推進管40の後端には、図1に示すように、従来より推進管として使用されている複数のヒューム管50が、推進方向に推進力を伝達し得る形で直列に配置されている。
【0026】上記説明した掘進装置1は、掘削マシン10、曲線造形装置20、フレキシブル推進管40を備えて構成されているが、掘進装置は少なくとも曲線造形装置を備えて構成される。例えば掘進装置は、上記説明した、掘削マシン10と、曲線造形装置20と、フレキシブル推進管40とのうち、フレキシブル推進管40が無い構成をとることもできる。また、掘進装置は、掘削マシンをもたず曲線造形装置だけで構成することもできる。この場合、曲線造形装置の先端部にカッタ等の掘削手段を直接設置する。
【0027】また上記説明した曲線造形装置20のユニット25の個数は図2に示した5個に限らず、3個、7個など、3個以上であれば何個でもよい。フレキシブル推進管40も同様に、2台に限らず、1台、3台、4台など何台でもよい。
【0028】また掘進装置1は、曲線造形装置20とフレキシブル推進管40との間などに図示しない管周混合装置を接続しても良い。管周混合装置は従来より使用されているものであり、管体外部よりベントナイト液等の滑材を地山に注入自在な装置である。これにより管周混合装置に後続するフレキシブル推進管40或いはヒューム管50と地山との間の摩擦力を低減させることができる。なお、管周混合装置には、実開平7−12594号(実願平5−47151号)等に開示されているように、管体の外周に滑材注入テールボイドを切削することのできるビットを備えた回動切削体が所定の回動角度をもって正逆回動自在に設けられた「摩擦低減装置」を利用することも有効である。これにより地山との摩擦抵抗がより一層低減される。
【0029】掘進装置1及びこれに後続するヒューム管50等は以上のように構成されているので、長距離急曲線を含む管敷設工事を上記掘進装置1を用いて推進工法により行うと以下のようになる。まず、図示しない発進立坑から掘削マシン10を、図示しない元押しジャッキにより地盤に向けて水平に押し込む。この際、掘削マシン10の先端側では掘削手段15を介して前方の地盤を掘削するので、該掘削マシン10は地盤中に推進される。続けて、該掘削マシン10の後端に曲線造形装置20を接続すると共に、これを図示しない元押しジャッキにより地盤に向けて押圧し推進させる。続けて、フレキシブル推進管40を順次継ぎ足しながら地盤に推進させていく。2台のフレキシブル推進管40に続けてヒューム管50を順次継ぎ足しながら地盤に推進させる。
【0030】この状態ではまだ直線状の推進だけであるので、掘削マシン10、曲線造形装置20、フレキシブル推進管40は、いずれも全体に亘って直線状となっている。続けて、図示しない発進立坑よりヒューム管50を順次継ぎ足しながら地盤に推進させることにより、掘進装置1を、掘削マシン10の先端が変化点P(図1参照)に到達するまで推進させる。この変化点Pは長距離急曲線である計画曲線Rの始点である。
【0031】図5は掘削マシンと曲線造形装置との関係を模式的に示した図である。変化点Pからの掘削マシン10のコントロールを図5に基づいて説明する。なお、図5では理解しやすい例とするため、曲線造形装置20の押圧ジャッキ22のラム22bが掘削マシン10の後端を直接押圧しているように表現した(図1も同様)。しかし、実際には上述した構成の説明にある通り、曲線造形装置20の押圧ジャッキ22のラム22bは隣接する筒体21の受圧壁23を押圧する。但し、曲線造形装置20の前端部に押圧ジャッキ22を配設して、該押圧ジャッキ22のラム22bで掘削マシン10の後端を直接押圧するように構成することも可能である。
【0032】図5に示すように変化点Pにおいて、曲線造形装置20の推力作用位置を強制的に曲線外側にする。即ち、曲線造形装置20では予め押圧ジャッキ22のラム22b,22bを全て伸ばしておく。そして、図5R>5のように掘削マシン10が変化点Pに到達した時点で、計画曲線Rの内側(図5の紙面下側)の押圧ジャッキ22だけラム22b,22bを縮める。この時、掘削マシン10前面の反力FC(マシン面板に作用する土圧)はマシン軸心CTに作用し、曲線造形装置20からの推力FDは曲線外周側のラム22bを介して掘削マシン10に作用する。これにより掘削マシン10には、曲線内側に回転させる偶力MTが発生し、掘削マシン10は容易に(自然に)曲線内側に向きを変えて計画曲線Rに沿って進んでいく。なお図5で示す掘進装置1のカーブ方向(推進方向右)と図1で示す掘進装置1のカーブ方向(推進方向左)とは逆になっているが、これは単に作図都合上の差異である。
【0033】図1(a)の状態は上記図5の状態に対応する。即ち、変化点Pにおいて曲線造形装置20の推力作用位置を強制的に曲線外側にして、掘削マシン10に偶力MTを発生させ、掘削マシン10の向きを曲線内側に変えた。更に推進を進めて、図1(b)のように掘削マシン10が計画曲線Rの中に入っても、曲線造形装置20内の各ユニット25どうしにおける推力FDの作用位置を強制的に曲線外側にする。つまり、曲線造形装置20或いはこれら曲線造形装置20の各ユニット25が変化点Pを通過する際に、対応する曲線内側の押圧ジャッキ22だけラム22b,22bを縮める。これにより図1(a)と同様に、先行するユニット25に曲線内側に回転させる偶力MTを発生させ、曲線造形装置20の各ユニット25は容易に(自然に)曲線内側に向きを変えて計画曲線Rに沿って進んでいく。
【0034】更に推進を進めて、図1(c)のように掘削マシン10からフレキシブル推進管40までが完全に計画曲線R内に入った状態では、曲線造形装置20内の押圧ジャッキ22で強制的に適正な開口長(ユニット25間の目開き)を保持することで、掘削マシン10と曲線造形装置20がきれいな曲線をなす一体の剛体となる。そうなることで曲線の方向を安定させることができ、掘削マシン10は続けてきれいな曲線を掘削することができる。また、追従するフレキシブル推進管40は掘削孔がきれいな曲線であるため、よけいな側圧が作用しないので好都合である。
【0035】従来のように曲線造形装置を利用しない場合には、掘削マシンの方向修正ジャッキ(中折れジャッキ)によりマシン先端側の方向を強制的に変更していた。しかしこれでは、マシン軸心に作用する地山からの反力と、後続の管からの推力との作用により、掘削マシンが曲線外側に回転する偶力を受けていた。その結果、掘削マシンは計画曲線外側の側方地盤から反力を受けて掘削方向を変更することになり、計画通りのきれいな曲線が造形できなかった。なお、地盤が軟弱で側方地盤からの反力が得られない場合には、地盤改良を行っていたが、いずれにせよ計画通りのきれいな曲線の造成は不可能であった。しかし、上記実施形態では、曲線造形装置20を利用することにより、掘削マシン10の方向を無理なく容易に(自然に)変更することができ、計画曲線に入った後にはガイドとして安定的に掘削マシン10を推進させることができる。
【0036】ところで、上述したように曲線造形装置20では、曲線内側に位置する押圧ジャッキ22のラム22bを後退させることにより推力作用位置を強制的に曲線外側にしてマシンコントロールをしている。本実施形態では押圧ジャッキ22が両伸びジャッキであり、両側のラム22bを突出させるための油供給ポートが共通である。つまり、両側のラム22bの突出量は各ラム22bに作用する負荷により一定とはならない可能性がある。そこで本実施形態では両側のラム22bの突出量を均一、又は異なる突出量に規制して筒体21,21間の目開きを一定にする工夫がなされている(目開き量が不均一であるとカーブ方向が定まらない)。
【0037】つまり、施工すべき計画曲線Rの曲率は予め判っており、曲線施工時における曲線造形装置20の筒体21,21間の目開き量はその曲率に合った大きさとなるはずである。そこで、予め突出させておくべく押圧ジャッキ22のラム22bの突出量は、上記曲率に合った目開き量を形成する大きさにしておく(曲線内側に位置する押圧ジャッキ22でも同じ突出量にする)。これと共に、筒体21,21間の関節20aでの目開き量がこの状態よりも広がらないように、これら筒体21,21間のロッド26のナット26a,26aを締めて調整する。なお、筒体21,21間の最大目開き量の調整は、ナット26a,26aにより自由に可能であることから、直線部分から計画曲線Rに入る変化点付近で筒体前後に生じる目開き量の不均一にも容易に対処することが出来る。
【0038】図4は曲線施工時の曲線造形装置を示す模式平面図である。図4に示すように、曲線施工時には曲線外側の押圧ジャッキ22がラム22b,22bを突出した状態にある。両側のラム22b,22bにかかる負荷は均一であるとは限らないが、一方のラム22bが更に突出(従って他方のラム22bは後退)しようとしてもロッド26とナット26a,26aにより筒体21,21間の目開き量がこれ以上大きくならないようになっているので、ラム22bの移動は阻止される。これにより両側のラム22bの突出量が均一となり筒体21,21間の目開きを一定に保持することができる。なお、目開き規制手段としては上記ロッド26以外にも可能である。例えば、筒体21,21どうしを一定長さのワイヤ等で接続してもよい。
【0039】上述したように本実施形態では、掘削マシン10により計画曲線Rの掘削を行う際に、曲線造形装置20において推力作用位置を強制的に曲線外側にすることで計画曲線Rに沿って推進方向を容易かつ自然に変更し、その後、計画曲線Rの曲率に合わせて屈曲した曲線造形装置20をガイドとして掘削マシン10の姿勢を計画曲線Rの曲率に合わせて保持するようにした。これにより長距離急曲線の施工を正確に行うことができる。
【0040】本実施形態では、曲線造形装置20の押圧ジャッキ22に両伸び式の油圧ジャッキを採用したことによるメリットが大きい。単純に考えると、曲線造形装置の筒体間を屈曲させるためには、筒体間ごとに目開き用のジャッキを設置する必要がある。しかし、このジャッキを配置するには、構造上、筒体の長さがジャッキのシリンダ部より長い必要があるので、施工すべき曲線の曲率が小さい場合には、規定曲率の構築が困難となる。この対策として、ストロークの短いジャッキを配置することも考えられるが、ジャッキ数が多くなり、狭い装置内での配管制約や設備費の観点から不都合となる。これに対して上述した実施形態では、両伸びジャッキである押圧ジャッキ22を採用することで不都合が解消される。つまり、筒体21の長さを短くして屈曲部分を多くとっているが、両伸びジャッキであるためジャッキ数は片伸びジャッキを採用する場合の半分に抑えられる。
【0041】こうして少ないジャッキ数にもかかわらず、曲線造形装置20は関節20aの多い構造となっているので、円弧に近いきれいな曲線を施工することが可能である。また、関節20aの目開きが少ないため、カラー部材21aにおける段違い隙間が小さくなり、止水効果が高く、土砂噛み込みトラブル防止に効果的である。
【0042】なお、筒体21の受圧壁23に対する押圧ジャッキ22の支圧部は自由端である。即ち、押圧ジャッキ22と受圧壁23とはピンジョイント構造になっていないので過大な荷重を排除することが可能となる。掘削マシン10による曲線掘削出来型は理論曲率ではないため、ピンジョイントによる剛構造ではジャッキに過大な力が作用する可能性がある。なお、このときジャッキ圧力は上昇(又は下降)するので、その圧力変化を検知することにより曲線掘削状態を把握することも可能となる。
【0043】押圧ジャッキ22のラム22bはクッション材22cを介して筒体21の受圧壁23に荷重を伝達する。曲線造形装置20はいわばバネ連接構造をなしている。これにより押圧ジャッキ22はラム22bの自由端の支圧力を常時確保することができて好都合である。
【0044】また筒体21,21の連接部にもクッション材24を設置しているので、直線部及び緩曲線施工時には、押圧ジャッキ22に荷重を加えず(例えば油圧を抜く)、クッション材24にて推力を伝達するように利用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】掘進装置を示した模式平面図。
【図2】曲線造形装置の平断面図。
【図3】図2のA−A線断面図。
【図4】曲線施工時の曲線造形装置を示す模式平面図。
【図5】掘削マシンと曲線造形装置との関係を模式的に示した図。
【符号の説明】
20 曲線造形装置
20a 関節
21 筒体
22 両伸びジャッキ(押圧ジャッキ)
22a シリンダ部
22b ラム
22c クッション材
23 押圧部(受圧壁)
26 目開き規制手段(ロッド)

【特許請求の範囲】
【請求項1】推進方向前方の地盤を掘削しつつ、その後方より推進管を順次継ぎ足し押し込むことにより、前記推進管の地盤への推進及び敷設を行う際に、前記推進管の推進方向前方に配置して使用する曲線造形装置において、屈曲自在な関節を形成する形で、推進方向に複数個直列に接続された筒体と、前記複数個の筒体のうち推進方向1個おきの筒体において、該筒体のうち前記関節の屈曲方向両側にそれぞれ配置されると共に、該筒体の推進方向前後の関節において突出後退自在な2つのラムを有する両伸びジャッキと、前記複数個の筒体のうち前記両伸びジャッキを有する筒体に隣接する筒体に設けられ、前記両伸びジャッキのラムにより押圧自在に配置された押圧部と、を備えて構成したことを特徴とする曲線造形装置。
【請求項2】前記筒体の推進方向における長さは前記両伸びジャッキのシリンダ部の長さに略等しいことを特徴とする請求項1記載の曲線造形装置。
【請求項3】前記関節を介して互いに隣接する前記筒体間に、これら筒体間の目開きを所定の目開き量までに規制する目開き規制手段を、該関節の屈曲方向両側にそれぞれ配設したことを特徴とする請求項1記載の曲線造形装置。
【請求項4】前記ラムの先端及び前記押圧部のうち少なくとも一方にクッション材を、前記ラムが前記押圧部に対して該クッション材を介して押圧可能に配設したことを特徴とする請求項1記載の曲線造形装置。

【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2002−276287(P2002−276287A)
【公開日】平成14年9月25日(2002.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−75573(P2001−75573)
【出願日】平成13年3月16日(2001.3.16)
【出願人】(591160671)奥村組土木興業株式会社 (6)
【出願人】(396000374)株式会社西日本油機 (4)
【出願人】(390025999)中川ヒューム管工業株式会社 (15)
【出願人】(597024522)サンコーコンサルタント株式会社 (14)
【Fターム(参考)】