説明

有効なコンジュゲートおよび親水性リンカー

薬物を細胞結合剤に結合させるためのリンカーを、ポリエチレングリコールスペーサーの取込みにより修飾して、親水性リンカーにする。本発明の細胞結合剤−薬物コンジュゲートの力価または有効性は、細胞表面に少ない数の抗原を発現するものまたは処置に対して耐性である癌細胞を含めた多様な癌細胞タイプにおいて、予想外に数倍増強される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国仮特許出願No.61/049,28、2008年4月30日出願に基づく優先権を主張する。
発明の分野
[01] 本発明は、薬物(たとえば細胞毒薬)を細胞結合剤(たとえば抗体)に、リンカーが薬物の活性を増強するのに寄与する様式で連結するための新規リンカーに関する。特に、本発明は新規な親水性リンカーの使用に関するものであり、それらのリンカーは、細胞表面に低い抗原数を発現するものまたは処置に対して耐性である癌細胞を含めた多様な癌細胞タイプにおいて、細胞結合剤−薬物コンジュゲートの力価または有効性を数倍増強する。
【背景技術】
【0002】
[02] 標的特異的療法薬として細胞毒薬の抗体コンジュゲートが開発されつつある。種々の癌細胞表面抗原に対する抗体が、本質的な細胞標的、たとえば下記のものを阻害する種々の細胞毒薬とコンジュゲートされている:微小管(メイタンシノイド類、オーリスタチン類、タキサン類:U.S.Patent No.5,208,020;5,416,064;6.333,410;6,441,163;6,340,701;6,372,738;6,436,931;6,596,757;7,276,497)、DNA(カリケアマイシン、ドキソルビシン、CC−1065類似体;U.S.Patent No.5,475,092;5,585,499;5,846,545;6,534,660;6,756,397;6,630,579)。抗体とこれらの細胞毒薬のうちあるものとのコンジュゲートが癌治療臨床において試験中である(Richart, A. D., and Tolcher, A. W., 2007, Nature Clinical Practice, 4, 245-255)。
【0003】
[03] 抗体−細胞毒薬コンジュゲートは、一般にまず抗体上の反応性部分、たとえばリジンのアミノ基、またはシステイン基(天然ジスルフィド結合の還元により、または分子生物学的方法を用いて工学的に非天然システイン残基を付加することにより生成)を修飾することにより作製される。たとえば、抗体をこれまでに記載されているヘテロ二官能性リンカー試薬、たとえばSPDB、SMCCおよびSIAB(U.S.Patent No.6,913,758およびU.S.Patent Publication No.20050169933)でまず修飾して、反応性基、たとえば混合ピリジルジスルフィド、マレイミドまたはハロアセトアミドをもつリンカーを取り込ませる。抗体に取り込まれた反応性リンカー基を、次いで反応性部分、たとえばチオール基を含む細胞毒薬とコンジュゲートさせる。他のコンジュゲーション経路は、チオール反応性基(たとえばハロアセトアミドまたはマレイミド)を含む細胞毒薬誘導体と細胞結合剤上のチオール基との反応によるものである。チオール基は、細胞結合剤、たとえば抗体に、下記により取り込まれる:天然ジスルフィド残基の還元(R. Singh et al., Anal. Biochem., 2002, 304, 147-156)、または取り込まれたジスルフィド部分の還元(SPDP、スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネートによる取込み、続いてジチオトレイトールによる還元、D. G. Gilliland et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 1980, 77, 4539-4543)、または追加の非天然システイン残基の取込み(J. B. Stimmel et al., J. Biol. Chem., 2000, 275, 30445-30450)、または2−イミノチオラン(R. Jue et al., Biochemistry, 1978, 17, 5399-5406)もしくはメチル 3-メルカプトプロピオンイミデートエステル(T. P. King et al., Biochemistry, 1978, 17, 1499-1506)との反応によるチオールの取込み。
【0004】
[04] ジスルフィドまたはチオエーテル結合をもつ抗体−細胞毒薬コンジュゲートは細胞内で、おそらくリソソームにおいて開裂して、有効な細胞毒薬を癌細胞の内部へ送達するであろう(H. K. Erickson et al., 2006, Cancer Research, 66, 4626-4433)。還元性ジスルフィド結合をもつ抗体−細胞毒薬コンジュゲートは、標的細胞を死滅させるほか、インビトロで、および異種移植モデルにおいてインビボで、抗原陰性細胞と抗原陽性細胞の混合集団内の近接する抗原陰性細胞をも死滅させる;これは、不均一抗原発現を伴う腫瘍内の、抗原を発現しない隣接細胞に対する力価の改善において、標的細胞で放出された細胞毒薬がもつ役割を示唆する(Y. V. Kovtun et al., Cancer Research, 2006, 66, 3214-3221)。
【0005】
[05] 抗体−細胞毒薬コンジュゲートはインビトロ細胞死滅活性およびインビボ抗腫瘍活性を示すが、特に標的癌細胞における抗原発現が低い場合、または標的細胞が処置に対して耐性である場合、それらの力価は多くの症例において減退する。これは臨床状況でしばしば起き、その結果、患者における抗腫瘍活性は低度ないし中等度となる。耐性を回避するために可能性のある方法は、親水性または親油性官能基を保有する新規薬物を合成することである(参照:G. Szokacs et al., Nature Reviews, 5; 219-235, 2006)。しかし、この方法は繁雑であり、幾つかの類似体を合成しなければならず、かつ薬物の構造を修飾するとしばしば生物活性が喪失する。したがって、異なる解決方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】U.S.Patent No.5,208,020
【特許文献2】U.S.Patent No.5,416,064
【特許文献3】U.S.Patent No.6.333,410
【特許文献4】U.S.Patent No.6,441,163
【特許文献5】U.S.Patent No.6,340,701
【特許文献6】U.S.Patent No.6,372,738
【特許文献7】U.S.Patent No.6,436,931
【特許文献8】U.S.Patent No.6,596,757
【特許文献9】U.S.Patent No.7,276,497
【特許文献10】U.S.Patent No.5,475,092
【特許文献11】U.S.Patent No.5,585,499
【特許文献12】U.S.Patent No.5,846,545
【特許文献13】U.S.Patent No.6,534,660
【特許文献14】U.S.Patent No.6,756,397
【特許文献15】U.S.Patent No.6,630,579
【特許文献16】U.S.Patent No.6,913,758
【特許文献17】U.S.Patent Publication No.20050169933
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Richart, A. D., and Tolcher, A. W., 2007, Nature Clinical Practice, 4, 245-255
【非特許文献2】R. Singh et al., Anal. Biochem., 2002, 304, 147-156
【非特許文献3】D. G. Gilliland et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 1980, 77, 4539-4543
【非特許文献4】J. B. Stimmel et al., J. Biol. Chem., 2000, 275, 30445-30450
【非特許文献5】R. Jue et al., Biochemistry, 1978, 17, 5399-5406
【非特許文献6】T. P. King et al., Biochemistry, 1978, 17, 1499-1506
【非特許文献7】H. K. Erickson et al., 2006, Cancer Research, 66, 4626-4433
【非特許文献8】Y. V. Kovtun et al., Cancer Research, 2006, 66, 3214-3221
【非特許文献9】G. Szokacs et al., Nature Reviews, 5; 219-235, 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[06] 本発明は、薬物を細胞結合剤に連結するための新規リンカーを、リンカーが薬物活性の増強に寄与するように設計することにより、耐性の問題に対処するものである。したがって本発明は薬物を細胞結合剤に連結する様式を改良し、これによって広域の腫瘍にわたって、特に抗原発現の低い腫瘍または薬物耐性腫瘍において有効であるコンジュゲートをリンカー設計により提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[07] 本発明は、従来のリンカー(たとえばSMCC、SIABなど;U.S.Patent Publication No.20050169933に記載)を、ポリエチレングリコール[PEG、(−CHCHO))]スペーサーの取込みにより修飾して親水性リンカーにした場合、細胞結合剤−薬物コンジュゲートの力価または有効性が、細胞表面に低い抗原数を発現するものを含めた多様な癌細胞タイプにおいて予想外に数倍増強されるという新規所見に基づく。
【0010】
[08] これらのPEG含有コンジュゲートは予想外に、処置に対して耐性である細胞系に対しても、これまでに記載されているコンジュゲートより有効である。
[09] さらに、抗体コンジュゲートの場合、親水性リンカーの取込みにより、高収率で、凝集または沈殿なしに、抗体分子当たり最高15分子の薬物のコンジュゲーションが可能になった。親水性リンカーによる抗体分子当たり最高15分子の薬物を含むこれらのコンジュゲートは、高い親和性で標的抗原に結合した(修飾されていない抗体のものと同様に)。
【0011】
[10] したがって本発明は、式(1)の化合物または式(1’)の特定の化合物を提供し:
Z−X−(−CH−CH−O−)−Y−D (1)
D−Y−(−CH−CH−O−)−X−Z (1’)
式中:
Zは、細胞結合剤とアミドまたはチオエーテル結合を形成することができる反応性官能基を表わし;
Dは、薬物を表わし;
Xは、細胞結合剤に、チオエーテル結合、アミド結合、カルバメート結合またはエーテル結合により結合する、脂肪族、芳香族または複素環式の単位を表わし;
Yは、薬物に、チオエーテル結合、アミド結合、カルバメート結合、エーテル結合、アミン結合、炭素−炭素結合、およびヒドラゾン結合からなる群から選択される共有結合により結合した、脂肪族、芳香族または複素環式の単位を表わし;
lは、0または1であり;
pは、0または1であり;
nは、1から2000までの整数である。
【0012】
[11] 本発明の他の観点は、式(2)の細胞結合剤−細胞毒薬コンジュゲートまたは式(2’)の特定の化合物であり:
CB−[X−(−CH−CH−O−)−Y−D] (2)
[D−Y−(−CH−CH−O−)−X−CB (2’)
式中:
CBは、細胞結合剤を表わし;
Dは、薬物を表わし;
Xは、細胞結合剤に、チオエーテル結合、アミド結合、カルバメート結合またはエーテル結合により結合した、脂肪族、芳香族または複素環式の単位を表わし;
Yは、薬物に、チオエーテル結合、アミド結合、カルバメート結合、エーテル結合、アミン結合、炭素−炭素結合、およびヒドラゾン結合からなる群から選択される共有結合により結合した、脂肪族、芳香族または複素環式の単位を表わし;
lは、0または1であり;
pは、0または1であり;
mは、2から15までの整数であり;
nは、1から2000までの整数である。
【0013】
[12] 本発明の他の観点は、式(3)の化合物または式(3’)の特定の化合物であり:
Z−X−(−CH−CHO−)−Y−D (3)
D−Y−(−CH−CHO−)−X−Z (3’)
式中:
Zは、細胞結合剤とアミドまたはチオエーテル結合を形成することができる反応性官能基を表わし;
Dは、薬物を表わし;
Xは、細胞結合剤に、チオエーテル結合、アミド結合、カルバメート結合またはエーテル結合により結合する、脂肪族、芳香族または複素環式の単位を表わし;
Yは、薬物にジスルフィド結合により結合した、脂肪族、非芳香族複数環式または芳香族複素環式の単位を表わし;
lは、0または1であり;
nは、1から14までの整数である。
【0014】
[13] 本発明の他の観点は、式(4)の細胞結合剤−細胞毒薬コンジュゲートまたは式(4’)の特定の化合物であり:
CB−(X−(−CH−CHO−)−Y−D) (4)
[D−Y−(−CH−CHO−)−X−CB (4’)
式中:
CBは、細胞結合剤を表わし;
Dは、薬物を表わし;
Xは、細胞結合剤にチオエーテル結合、アミド結合、カルバメート結合またはエーテル結合により結合した、脂肪族、芳香族または複素環式の単位を表わし;
Yは、薬物にジスルフィド結合により結合した、脂肪族、芳香族または複素環式の単位を表わし;
lは、0または1であり;
mは、3から8までの整数であり;
nは、1から14までの整数である。
【0015】
[14] 本発明のさらに他の観点は、その方法による処置に対して感受性の癌を処置するための方法であって、その必要がある患者に有効量の式(2)または(4)のコンジュゲートを含む組成物を非経口投与することを含む方法である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】[15] 図1は、本発明の代表的なPEG含有チオスクシンイミジル連結したコンジュゲートの構造式を示す(mAb=モノクローナル抗体)。
【図2】[16] 図2は、本発明の代表的なPEG含有チオアセトアミジル連結したコンジュゲートの構造式を示す。
【図3】[17] 図3は、本発明の代表的なPEG含有ジスルフィド連結した化合物の構造式を示す。
【図4】[18] 図4は、本発明のPEG含有チオスクシンイミジル連結したコンジュゲートの合成スキームを示す。
【図5】[19] 図5は、本発明のPEG含有チオアセトアミジル連結したコンジュゲートの合成スキームを示す。
【図6】[20] 図6は、本発明のPEG含有ジスルフィド連結した化合物の合成スキームを示す:a.)細胞結合剤への1工程コンジュゲーションのためのPEG含有ジスルフィド連結した化合物の合成;およびb.)ヘテロ二官能性PEG含有ジスルフィド連結した架橋用化合物の合成。
【図7】[21] 図7は、本発明のPEG含有チオスクシンイミジル連結したコンジュゲートのコンジュゲーション法を示す(1工程コンジュゲーション)。
【図8】[22] 図8は、本発明のPEG含有チオスクシンイミジル連結したコンジュゲートのコンジュゲーション法を示す(2工程コンジュゲーション)。
【図9】[23] 図9は、本発明のPEG含有チオエーテル連結した(チオアセトアミジル連結した)コンジュゲートのコンジュゲーション法を示す(1工程コンジュゲーション)。
【図10】[24] 図10は、本発明のPEG含有チオエーテル連結した(チオアセトアミジル連結した)コンジュゲートのコンジュゲーション法を示す(2工程コンジュゲーション)。
【図11】[25] 図11は、本発明のPEG含有ジスルフィド連結したコンジュゲートのコンジュゲーション法を示す(1工程コンジュゲーション)。
【図12】[26] 図12は、本発明のPEG含有ジスルフィド連結したコンジュゲートのコンジュゲーション法を示す(2工程コンジュゲーション)。
【図13】[27] 図13は、本発明のPEG含有スルフヒドリル反応性チオスクシンイミジル連結した化合物の合成スキームを示す。
【図14】[28] 図14は、本発明のPEG含有チオスクシンイミジル連結したコンジュゲートのコンジュゲーション法を示す(1工程コンジュゲーション)。
【図15】[29] 図15は、本発明のPEG含有チオスクシンイミジル連結したコンジュゲートのコンジュゲーション法を示す(2工程コンジュゲーション)。
【図16】[30] 図16は、本発明のPEG含有スルフヒドリル反応性チオアセトアミジル連結した化合物の合成スキームを示す:a.)1工程コンジュゲーションのためのPEG含有スルフヒドリル反応性チオアセトアミド連結した化合物の合成;およびb.)2工程コンジュゲーションのためのヘテロ二官能性PEG含有スルフヒドリル反応性架橋用化合物の合成。
【図17】[31] 図17は、本発明のPEG含有チオアセトアミジル連結したコンジュゲートのコンジュゲーション法を示す(1工程コンジュゲーション)。
【図18】[32] 図18は、本発明のPEG含有チオアセトアミジル連結したコンジュゲートのコンジュゲーション法を示す(2工程コンジュゲーション)。
【図19】[33] 図19は、本発明のPEG含有スルフヒドリル反応性チオエーテル連結した化合物の合成スキームを示す:a.)1工程コンジュゲーションのためのPEG含有スルフヒドリル反応性チオアセトアミジル連結した化合物の合成;およびb.)2工程コンジュゲーションのためのホモ二官能性PEG含有スルフヒドリル反応性架橋用化合物の合成。
【図20】[34] 図20は、本発明のPEG含有チオアセトアミジル連結したコンジュゲートのコンジュゲーション法を示す(1工程コンジュゲーション)。
【図21】[35] 図21は、本発明のPEG含有チオアセトアミジル連結したコンジュゲートのコンジュゲーション法を示す(2工程コンジュゲーション)。
【図22】[36] 図22は、脱グリコシル化HuAb−PEGMal−DM1コンジュゲート(平均10.7DM1/Ab)の質量スペクトル(MS)を示す。
【図23】[37] 図23は、HuAb−PEGMal−DM1コンジュゲート(平均10.7DM1/Ab)のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を示す。
【図24】[38] 図24は、HuAb−PEGMal−DM1コンジュゲート(平均10.7メイタンシノイド(maytansinoid)/抗体)のFACS結合が非修飾抗体のものと類似することを示す。
【図25】[39] 図25は、多剤耐性COLO205−MDR細胞に対する抗EpCAM抗体−メイタンシノイドコンジュゲートの細胞毒性を示す。
【図26】[40] 図26は、多剤耐性COLO205−MDR細胞に対する抗CanAg抗体−メイタンシノイドコンジュゲートの細胞毒性を示す。
【図27】[41] 図27は、Molp−8多発性骨髄腫細胞に対する抗CD56抗体−メイタンシノイドコンジュゲートの細胞毒性を示す。
【図28】[42] 図28は、HCT15細胞に対する抗EpCAM抗体−メイタンシノイドコンジュゲートの細胞毒性を示す。
【図29】[43] 図29は、COLO205 mdr細胞に対する抗EpCAM抗体−メイタンシノイドコンジュゲートの細胞毒性を示す。
【図30】[44] 図30は、HCT15異種移植に対する抗EpCAM抗体−メイタンシノイドコンジュゲートのインビボ抗腫瘍活性を示す。
【図31】[45] 図31は、COLO205 mdr異種移植に対する抗EpCAM抗体−メイタンシノイドコンジュゲートのインビボ抗腫瘍活性を示す。
【図32】[46] 図32は、COLO205異種移植に対する抗EpCAM抗体−メイタンシノイドコンジュゲートのインビボ抗腫瘍活性を示す。
【図33】[47] 図33は、COLO205 mdr異種移植に対する抗CanAg抗体−メイタンシノイドコンジュゲートのインビボ抗腫瘍活性を示す。
【図34】[48] 図34は、抗CanAg抗体(huC242)−PEG24−Mal−DM1コンジュゲート(最高17D/A)の結合を示す。
【図35】[49] 図35は、COLO205細胞に対する抗CanAg抗体(huC242)−PEG24−Mal−DM1コンジュゲート(4〜17D/A)のインビトロ力価を示す。
【図36】[50] 図36は、多剤耐性(pgp+)COLO205−MDR細胞に対する抗CanAg抗体(huC242)−PEG24−Mal−DM1コンジュゲート(4〜17D/A)のインビトロ力価を示す。
【図37】[51] 図37は、UO−31細胞に対する抗EGFR抗体−メイタンシノイドコンジュゲートの細胞毒性を示す。
【図38】[52] 図38は、抗体−PEG4−Mal−DM1の血漿薬物動態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[53] 本発明は、薬物(たとえば細胞毒薬)にポリエチレングリコールまたはポリエチレンオキシドリンカー((−CHCHO))により連結した細胞結合剤(たとえば抗体)のコンジュゲートが、標的癌細胞に対して、一般的な脂肪族リンカーおよび同様な薬物装填量をもつ従来の細胞結合剤−薬物コンジュゲートとの比較に基づいて予想したものより数倍大きい細胞毒性を示すという新規所見を開示する。重要なことに、本発明に記載するコンジュゲートは、細胞毒薬による処置に対する感受性に乏しい多剤耐性(mdr)癌細胞に対してきわめて有効または効果的である。癌療法は、種々の化学療法薬による多数ラウンドの処置後にしばしば遭遇する薬物耐性機序を克服するという難関がある。癌細胞にみられる多剤耐性と呼ばれるそのような機序のひとつは、ATP結合カセット(ABC)トランスポーターによる薬物輸出の増強により起きる(C. Drumond, B. I. Sikic, J. Clin. Oncology, 1999, 17, 1061-1070, G, Szokacs et al., Nature Reviews, 5; 219-234, 2006)。これらの薬物耐性機序を克服する療法、たとえば癌細胞によるこの薬物流出を妨害または克服することは、きわめて有用であろう。PEGリンカーがこれらの耐性細胞に対抗する何らかの利点をもたらすかを試験するために、多剤耐性癌細胞に対する細胞結合剤と細胞毒薬とのPEG連結コンジュゲートの細胞毒性を評価した。多剤耐性細胞に対するこれらのアッセイにおいて、細胞結合剤と細胞毒薬とのPEG連結コンジュゲートは、一般的なリンカーから誘導したはるかに効力の低いコンジュゲートと比較して、予想外に有効な多剤耐性細胞死滅を示した。さらに本発明のコンジュゲートは、多剤耐性腫瘍細胞を用いて樹立した動物モデルにおいても、顕著に、より高い抗腫瘍活性を示す。
【0018】
[54] 親水性ポリエチレングリコールまたはポリエチレンオキシドリンカー(PEGまたはPEO;(−CHCHO))は、療法用途に望まれる1mg/mlを超える濃度において90%を超える高いタンパク質モノマーレベルで、細胞結合剤分子当たり比較的多数の薬物の取込みをも可能にする。さらに、広範な細胞毒薬装填量(細胞結合剤当たり2の少数からたとえば15の多数までの薬物)をもつ細胞結合剤のポリエチレングリコール(PEG)連結コンジュゲートは、標的癌細胞に対して、コンジュゲートの薬物装填量の増大に基づく薬物送達の化学量論的増大から予想したものより著しく増強した細胞毒性を示した。PEGスペーサーを保有する、細胞結合剤と薬物とのコンジュゲートを本発明に記載する;これらは、標的癌細胞に対し、従来法で製造した同様な薬物装填量をもつコンジュゲートと比較して260〜650倍もの力価増強という超化学量論的増大を示した(たとえば図29を参照)。
【0019】
[55] したがって、本発明の1観点において、ポリエチレングリコールスペーサー(−CHCHO)および細胞結合剤と反応しうる反応性基を保有するリンカーを含む、薬物を記載する。
【0020】
[56] この観点において特に考慮されるのは、修飾された式(1)の化合物または式(1’)の特定の化合物であり:
Z−X−(−CH−CH−O−)−Y−D (1)
D−Y−(−CH−CH−O−)−X−Z (1’)
式中:
Zは、細胞結合剤とアミドまたはチオエーテル結合を形成することができる反応性官能基を表わし;
Dは、薬物を表わし;
Xは、細胞結合剤に、チオエーテル結合、アミド結合、カルバメート結合またはエーテル結合により結合する、脂肪族、芳香族または複素環式の単位を表わし;
Yは、薬物に、チオエーテル結合、アミド結合、カルバメート結合、エーテル結合、アミン結合、炭素−炭素結合、およびヒドラゾン結合からなる群から選択される共有結合により結合した、脂肪族、芳香族または複素環式の単位を表わし;
lは、0または1であり;
pは、0または1であり;
nは、1から2000までの整数である。
【0021】
[57] 好ましくは、Yを薬物に結合させる共有結合はチオエーテル結合またはアミド結合である。
[58] 好ましくは、nは1から100までの整数である。よりさらに好ましくは、nは1から14までの整数である。最も好ましい観点において、nは1から4までの整数である。
【0022】
[59] 本発明の第2観点において、ポリエチレングリコールリンカー(−CHCHO)による細胞結合剤と薬物との新規コンジュゲートを記載する。これらのコンジュゲートは、癌細胞に対して、従来のリンカーおよび同等の薬物装填量をもつコンジュゲートより有効である。
【0023】
[60] 好ましい観点において特に考慮されるものは、式(2)の細胞結合剤と薬物とのコンジュゲートまたは式(2’)の特定の化合物であり:
CB−[X−(−CH−CH−O−)−Y−D] (2)
[D−Y−(−CH−CH−O−)−X−CB (2’)
式中:
CBは、細胞結合剤を表わし;
Dは、薬物を表わし;
Xは、細胞結合剤に、チオエーテル結合、アミド結合、カルバメート結合またはエーテル結合により結合した、脂肪族、芳香族または複素環式の単位を表わし;
Yは、薬物に、チオエーテル結合、アミド結合、カルバメート結合、エーテル結合、アミン結合、炭素−炭素結合、およびヒドラゾン結合からなる群から選択される共有結合により結合した、脂肪族、芳香族または複素環式の単位を表わし;
lは、0または1であり;
pは、0または1であり;
mは、2から15までの整数であり;
nは、1から2000までの整数である。
【0024】
[61] 好ましくは、共有結合はチオエーテル結合またはアミド結合である。
[62] 好ましくは、mは3から8までの整数である。
[63] 好ましくは、nは1から100までの整数である。よりさらに好ましくは、nは1から14までの整数である。最も好ましい観点において、nは1から4までの整数である。
【0025】
[64] 本発明は、抗体が細胞毒薬にジスルフィド結合により連結した抗体コンジュゲートである場合、このイムノコンジュゲートの力価または有効性の増強において、連結した薬物の個数とポリエチレングリコールスペーサーの長さとの間に重要な相関性があるという新規所見にも基づく。このリンカー設計のさらに他の有益性は、抗体−薬物コンジュゲートの望ましい高モノマー比、および凝集が最少であることである。したがって、1観点において本発明は、ジスルフィド連結したコンジュゲートのためのポリエチレングリコールスペーサーが2〜8のエチレンオキシ単位からなり、連結した薬物の個数が3〜8の範囲である場合、それは抗体−薬物コンジュゲートに最高の生物学的力価または有益性を与え、かつ望ましい高いモノマー含量を与えるという重要な所見に基づく。
【0026】
[65] 好ましい観点において、短いポリエチレングリコールスペーサー((CHCHO)n=1−14)を保有するジスルフィド基(−S−S−)を介して、細胞結合剤と反応しうる官能基と連結した、細胞毒薬を記載する。
【0027】
[66] この観点において特に考慮されるものは、式(3)の修飾された細胞毒性化合物または式(3’)の特定の化合物であり:
Z−X−(−CH−CHO−)−Y−D (3)
D−Y−(−CH−CHO−)−X−Z (3’)
式中:
Zは、細胞結合剤とアミドまたはチオエーテル結合を形成することができる反応性官能基を表わし;
Dは、薬物を表わし;
Xは、細胞結合剤に、チオエーテル結合、アミド結合、カルバメート結合またはエーテル結合により結合する、脂肪族、芳香族または複素環式の単位を表わし;
Yは、薬物にジスルフィド結合により結合した、脂肪族、非芳香族複数環式または芳香族複素環式の単位を表わし;
lは、0または1であり;
nは、1から14までの整数である。
【0028】
[67] 好ましくは、nは2から8までの整数である。
[68] 他の好ましい観点において、ポリエチレングリコールスペーサー((CHCHO)n=1−14)を保有するジスルフィド基(−S−S−)を介して3〜8の狭い薬物装填量で連結した細胞毒薬と薬物とのコンジュゲートを記載する;これは、癌細胞に対して相対的に高い効力の生物活性を示し、かつ最少のタンパク質凝集で、高いコンジュゲーション収率および高いモノマー比の望ましい生化学的特性をもつ。
【0029】
[69] この観点において特に考慮されるものは、式(4)の細胞結合剤と薬物とのコンジュゲートまたは式(4’)の特定の化合物であり:
CB−(X−(−CH−CHO−)−Y−D) (4)
[D−Y−(−CH−CHO−)−X−CB (4’)
式中:
CBは、細胞結合剤を表わし;
Dは、薬物を表わし;
Xは、細胞結合剤に、チオエーテル結合、アミド結合、カルバメート結合またはエーテル結合により結合した、脂肪族、芳香族または複素環式の単位を表わし;
Yは、薬物に、ジスルフィド結合により結合した、脂肪族、芳香族または複素環式の単位を表わし;
lは、0または1であり;
mは、3から8までの整数であり;
nは、1から14までの整数である。
【0030】
[70] 好ましくは、mは3から6までの整数である。
[71] 同様に好ましくは、nは2から8までの整数である。
[72] 本発明において、薬物は親油性分子であり、これらは細胞結合剤、たとえば抗体にコンジュゲートすると、タンパク質の凝集または沈殿のためしばしば収量損失が生じる。細胞結合剤当たりの薬物数を増加させると、一般にタンパク質の凝集または沈殿が増悪し、これに伴ってモノマーパーセントが低くなり、収率が低下する。一般的なリンカーについての典型的なコンジュゲート挙動と対比して、PEGリンカーは、療法用途に有用な1mg/ml以上の高濃度で、細胞結合剤と薬物とのコンジュゲートのモノマーパーセント(>90%のモノマー)および収率(>70%)において望ましい改良をもたらす。さらに、これらのコンジュゲートは、4℃での長期貯蔵に際して安定である。
【0031】
[73] すべての観点において、“脂肪族単位”はアルキル、アルケニルまたはアルキニル基であると定義される。アルキル基は脂肪族炭化水素基であり、直鎖または分枝鎖であってよく、好ましくは、鎖または環中に1〜20個の炭素原子、好ましくは3〜10個の炭素原子をもつ。より好ましくは、アルキル基は鎖中に1〜12個の炭素原子をもつ。“分枝鎖”は、1個以上の低級アルキル基、たとえばメチル、エチルまたはプロピルが線状アルキル鎖に結合していることを意味する。アルキル基の例には、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、3−ペンチル、オクチル、ノニル、デシル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルが含まれる。
【0032】
[74] アルケニル基は、炭素−炭素二重結合をもつ脂肪族炭化水素基であり、直鎖または分枝鎖であってよく、好ましくは、鎖中に2〜15個の炭素原子をもつ。より好ましくは、アルケニル基は鎖中に2〜12個の炭素原子をもつ;より好ましくは、鎖中に約2〜4個の炭素原子をもつ。アルケニル基の例には、エテニル、プロペニル、n−ブテニル、i−ブテニル、3−メチルブタ−2−エニル、n−ペンテニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニルが含まれる。
【0033】
[75] アルキニル基は、炭素−炭素三重結合をもつ脂肪族炭化水素基であり、直鎖または分枝鎖であってよく、好ましくは、鎖中に2〜15個の炭素原子をもつ。より好ましくは、アルキニル基は鎖中に2〜12個の炭素原子をもつ;より好ましくは、鎖中に2〜4個の炭素原子をもつ。アルキニル基の例には、エチニル、プロピニル、n−ブチニル、2−ブチニル、3−メチルブチニル、n−ペンチニル、ヘプチニル、オクチニルおよびデシニルが含まれる。
【0034】
[76] 本明細書中で用いる用語“芳香族単位”は、置換または非置換アリール基を意味し、炭素原子6〜14個、好ましくは炭素原子6〜10個の芳香族単環式または多環式炭化水素環系からなる。アリール基の例には、フェニルおよびナフチルが含まれる。置換基にはアルキル基、ハロゲン、ニトロ、アミノ、ヒドロキシおよびアルコキシ基が含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
[77] ハロゲンには、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素原子が含まれる。フッ素および塩素原子が好ましい。
[78] 本明細書中で用いる用語“複素環式単位”は、飽和、部分不飽和または不飽和の非芳香族の安定な3〜14員、好ましくは5〜10員の、単環式、二環式または多環式の環において、環の少なくとも1つの員子がヘテロ原子であるもの、あるいは、芳香族の、好ましくは5〜10員、単環式、二環式または多環式の環であって、少なくとも1個のヘテロ原子を保有するものを表わす。一般に、ヘテロ原子には酸素、窒素、硫黄、セレン、およびリン原子が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、ヘテロ原子は酸素、窒素および硫黄である。
【0036】
[79] 好ましい複素環式単位には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:ピロリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、オキシラニル、テトラヒドロフラニル、ジオキソラニル、テトラヒドロ−ピラニル、ジオキサニル、ジオキソラニル、ピペリジル、ピペラジニル、モルホリニル、ピラニル、イミダゾリニル、ピロリニル、ピラゾリニル、チアゾリジニル、テトラヒドロチオピラニル、ジチアニル、チオモルホリニル、ジヒドロ−ピラニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロピリジル、ジヒドロピリジル、テトラヒドロピリニジニル、ジヒドロチオピラニル、アゼパニル、ピロリル、ピリジル、ピラゾリル、チエニル、ピリミジニル、ピラジニル、テトラゾリル、インドリル、キノリニル、プリニル、イミダゾリル、チエニル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、フラニル、ベンゾフラニル、1,2,4−チアジアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾイル、テトラゾリル、イソキノリル、ベンゾチエニル、イソベンゾフリル、ピラゾリル、カルバゾリル、ベンゾイミダゾリル、およびイソオキサゾリル、ピリジル−N−オキシド、ならびにフェニル基との縮合により生じる縮合系。
【0037】
[80] XおよびYにより表わされる脂肪族、芳香族および複素環式の単位は、荷電した置換基をもつこともできる。荷電した置換基は、カルボキシレート、スルホネートおよびホスフェート(これらに限定されない)から選択される陰電荷をもつことができ、あるいは、第三級または第四級アミノ基から選択される陽電荷をもつことができる。
【0038】
[81] 本明細書中で用いる“細胞結合剤に連結した”という表現は、適切な連結基またはその前駆体を介して細胞結合剤に結合した少なくとも1つの薬物誘導体を含むコンジュゲート分子を表わす。好ましい連結基は、チオールまたはジスルフィド結合、またはその前駆体である。
【0039】
[82] 本明細書中で用いる、ある基の“前駆体”は、いずれかの脱保護、化学的修飾またはカップリング反応によりその基に導くことができるいずれかの基を表わす。たとえば、チオール前駆体としてのチオエステルまたはチオエーテルにより例示されるように、前駆体は適切に保護された官能基であってもよい。
【0040】
[83] 本明細書中で用いる用語“反応性官能基”は、アミン−、チオール−またはヒドロキシル−反応性官能基を表わす。言い換えると、反応性官能基は、細胞結合剤中に存在するアミン、スルフヒドリル(チオール)またはヒドロキシル基と反応することができる。たとえば、アミン反応性官能基について、官能基は反応性カルボン酸エステル(N−スクシンイミジル、N−スルホスクシンイミジル、N−フタルイミジル、N−スルホフタルイミジル、2−ニトロフェニル、4−ニトロフェニル、2,4−ジニトロフェニル、3−スルホ−4−ニトロフェニル、3−カルボキシ−4−ニトロフェニル、テトラフルオロフェニルエステルを含む)、反応性スルホン酸誘導体、または反応性チオエステルであって、アミド結合を生成することができ;チオール反応性官能基について、官能基はマレイミド、ハロアセトアミド、またはビニルスルホンであって、チオエーテル結合を生成することができ;ヒドロキシル反応性官能基について、官能基は反応性カルボン酸エステルであって、エステル結合を生成することができる。
【0041】
A.修飾した薬物および修飾した細胞結合剤を保有する親水性リンカー
[84] リンカーは、薬物、たとえばメイタンシノイドを細胞結合剤に安定な共有結合様式で連結させることができるいずれかの化学物質部分である。リンカーは、薬物または細胞結合剤が活性を維持する条件下で、酸誘発開裂、光誘発開裂、ペプチダーゼ誘発開裂、エステラーゼ誘発開裂、およびジスルフィド結合開裂に対して、感受性または実質的に抵抗性の可能性がある。図1、2および3は、本発明のコンジュゲートの構造式を例示する。
【0042】
[85] 薬物と細胞結合剤の間にリンカーを形成する親水性PEG鎖を含む適切な架橋試薬は当技術分野で周知であるか、あるいは市販されている(たとえば、Quanta Biodesignから、オハイオ州パウエル)。適切なPEG含有架橋剤は、市販のPEG自体から、当業者に既知の標準的な合成化学技術を用いて合成することもできる。本明細書に記載の方法により薬物を二官能性のPEG含有架橋剤と反応させて、式(1)、Z−X−(−CH−CH−O−)−Y−Dの化合物にすることができる。たとえば、チオール含有メイタンシノイド薬物を、PEGスペーサーを保有するビス−マレイミド架橋剤と反応させて、チオエーテル結合によりPEGスペーサーに結合したメイタンシノイド薬物にすることができる(たとえば図13を参照)。PEGスペーサーおよび末端マレイミド基を保有するこの修飾されたメイタンシノイドを、次いでたとえば図14に示すように細胞結合剤と反応させて、本明細書の式(2)の細胞結合剤−薬物コンジュゲートを得ることができる。
【0043】
[86] あるいは、反応性アミン基、たとえばN−ヒドロキシスクシンイミドエステルを保有する二官能性PEG含有架橋剤の一端に細胞結合剤をまず反応させて、リンカーにアミド結合により共有結合した修飾された細胞結合剤にすることができる(たとえば図15を参照)。次の工程で、メイタンシノイドをPEGスペーサーの他端のマレイミド置換基と反応させて、本発明の細胞結合剤−薬物コンジュゲートにする。
【0044】
[87] 図16および17は、たとえばPEG架橋剤の合成、およびチオアセトアミド連結によるそれとメイタンシノイドの反応を示す。次いでマレイミド置換基をPEGに取り込ませて、チオエーテル結合による細胞結合剤との反応を可能にする。あるいは、たとえば図18に示すように、細胞結合剤をまずPEG架橋剤にチオエーテル結合により連結する。この修飾された細胞結合剤を次いでメイタンシノイド薬物と反応させて、コンジュゲートにする。PEGスペーサーの両端がヨードアセトアミド部分を含むホモ二官能性PEG架橋剤であって、細胞毒薬と細胞結合剤の両方をチオエーテル結合により連結して親水性PEGスペーサーを含むコンジュゲートにすることができる架橋剤の合成を、たとえば図19に示す。本発明のコンジュゲートを得るためのコンジュゲーション方法を、たとえば図20および21に示す。
【0045】
[88] 本明細書に記載した方法により種々の反応性基を保有する他のPEG含有架橋剤を容易に合成しうることは、当業者には理解されるであろう。たとえば、ヒドロキシル基を保有する薬物、たとえば19−デメチルメイタンシノイド類(U.S.Patent No.4,361,650)とヨード−アセチル−PEGリンカー(図5)を、塩基、たとえば炭酸カリウムの存在下で反応させて、メイタンシノイドをエーテル結合により連結させることができる。同様に、アミン含有メイタンシノイド(U.S.Patent No.7,301,019の記載に従って合成)とヨードアセチルPEG(図5に示す)を、塩基、たとえばピリジンまたはトリエチルアミンの存在下で反応させて、アミン連結によりPEGに連結したメイタンシノイドを得ることができる。アミド結合によるPEGへの薬物の連結については、カルボキシ−PEG(図5に示す)とアミン含有メイタンシノイドを、縮合剤、たとえばジシクロヘキシルカルボジイミドの存在下で反応させて、アミド結合したPEG−メイタンシノイドを得ることができる。薬物をPEGスペーサーにカルバメート連結により連結させるためには、PEGをまずジホスゲンと反応させてPEGクロロホルメートを製造し、次いでこれとアミン含有メイタンシノイドを、塩基、たとえばトリエチルアミンの存在下で反応させて、カルバメート連結したPEG−メイタンシノイドを得ることができる。
【0046】
[89] 適切なリンカーの例には、細胞結合剤との反応のためのN−スクシンイミジルエステルまたはN−スルホスクシンイミジルエステル部分、および薬物との反応のためのマレイミドまたはハロアセチルをベースとする部分をもつリンカーが含まれる。PEGスペーサーを、本明細書に記載する方法により既知のいずれかの架橋剤に取り込ませることができる。マレイミドをベースとする部分を含む架橋剤であってPEGスペーサーを取り込ませることができる架橋剤には、下記のものが含まれるが、これらに限定されない:N−スクシンイミジル 4−(マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキシレート(SMCC)、N−スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシ−(6−アミドカプロエート):これはSMCCの“長鎖”類似体である(LC−SMCC)、κ−マレイミドウンデカン酸 N−スクシンイミジルエステル(KMUA)、γ−マレイミド酪酸 N−スクシンイミジルエステル(GMBS)、ε−マレイミドカプロン酸 N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(EMCS)、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、N−(α−マレイミドアセトキシ)−スクシンイミドエステル(AMAS)、スクシンイミジル−6−(β−マレイミドプロピオンアミド)ヘキサノエート(SMPH)、N−スクシンイミジル 4−(p−マレイミドフェニル)−ブチレート(SMPB)、およびN−(p−マレイミドフェニル)イソシアネート(PMPI)。ハロアセチルをベースとする部分を含む架橋剤には、N−スクシンイミジル−4−(ヨードアセチル)−アミノベンゾエート(SIAB)、N−スクシンイミジルヨードアセテート(SIA)、N−スクシンイミジルブロモアセテート(SBA)、およびN−スクシンイミジル 3−(ブロモアセトアミド)プロピオネート(SBAP)が含まれる。
【0047】
[90] 硫黄原子を含まない他の架橋剤も本発明方法に使用できる。そのような架橋剤は、ジカルボン酸をベースとする部分から誘導することができる。ジカルボン酸をベースとする適切な部分には下記に示す一般式のα,ω−ジカルボン酸が含まれるが、これらに限定されない:
HOOC−A’−E’−(CHCHO)G’−COOH
式中:A’は2〜20個の炭素原子をもつ任意の直鎖または分枝鎖アルキル、アルケニルまたはアルキニル基であり、E’は3〜10個の炭素原子をもつ任意のシクロアルキルまたはシクロアルケニル基であり、G’は6〜10個の炭素原子をもつ任意の置換もしくは非置換芳香族基、またはヘテロ原子がN、OもしくはSから選択される置換もしくは非置換複素環式基であり、p、qおよびrはそれぞれ0または1であり、ただし、p、qおよびrが同時にすべてゼロであることはなく、nは1から2000までの整数である。
【0048】
[91] 本明細書に開示するリンカーの多くはU.S.Patent Publication No.20050169933に詳細に記載されている。
[92] 本発明の他の観点において、細胞結合剤は二官能性架橋試薬を細胞結合剤と反応させることにより修飾され、これにより細胞結合剤へのリンカー分子の共有結合が得られる。本明細書中で用いる“二官能性架橋試薬”は、細胞結合剤を薬物、たとえば本明細書に記載する薬物に共有結合させるいずれかの化学物質部分である。本発明の好ましい観点において、連結部分の一部は薬物により供給される。この観点において薬物は、細胞結合剤を薬物に結合させるために用いる、より大きいリンカー分子の一部である連結部分を含む。たとえば、メイタンシノイドDM1を形成するために、メイタンシンのC−3ヒドロキシ基にある側鎖を、遊離スルフヒドリル基(SH)をもつように修飾する。このチオール化形メイタンシンを、修飾した細胞結合剤と反応させて、コンジュゲートを形成することができる。したがって、最終リンカーは2成分から組み立てられ、その一方は架橋試薬から供給され、他方はDM1からの側鎖により供給される。
【0049】
[93] 本発明の他の観点において、薬物をジスルフィド結合により細胞結合剤に連結させる。リンカー分子は、細胞結合剤と反応しうる反応性化学基を含む。細胞結合剤との反応に好ましい反応性化学基は、N−スクシンイミジルエステルおよびN−スルホスクシンイミジルエステルである。さらにリンカー分子は、薬物と反応してジスルフィド結合を形成しうる反応性化学基、好ましくはジチオピリジル基を含む。特に好ましいリンカー分子には下記のものが含まれる:たとえばN−スクシンイミジル 3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)(参照:たとえば、Carlsson et al., Biochem. J., 173: 723-737 (1978))、N−スクシンイミジル 4−(2−ピリジルジチオ)ブタノエート(SPDB)(参照:たとえば、U.S.Patent No.4,563,304)、N−スクシンイミジル 4−(2−ピリジルジチオ)ペンタノエート(SPP)(参照:たとえば、CAS登録番号341498−08−6)、および他の反応性架橋剤、たとえばU.S.Patent No.6,913,748に記載のもの:それの全体を本明細書に援用する。
【0050】
[94] あるいは、U.S.Patent No.6,441,163 B1に開示されるように、薬物をまず修飾して、細胞結合剤と反応させるのに適切な反応性エステルを導入することができる。活性化されたリンカー部分を含むこれらの薬物と細胞結合剤との反応は、細胞結合剤−薬物コンジュゲートを製造するための他の方法を提供する。siRNAの連結のために、オリゴヌクレオチドの修飾に一般に用いられる方法によりsiRNAを本発明の架橋剤に連結させることができる(参照:たとえばUS Patent Publication 20050107325および20070213292)。よって、3’または5’−ホスホロアミダイト形のsiRNAを、ヒドロキシル官能基を保有する架橋剤の一端と反応させて、siRNAと架橋剤の間にエステル結合を生成させる。同様に、siRNAホスホロアミダイトと末端アミノ基を保有する架橋剤との反応により、架橋剤がアミンによりsiRNAに連結する。
【0051】
B.細胞結合剤
[95] 本発明に用いる細胞結合剤は、癌細胞上の標的抗原に特異的に結合するタンパク質(たとえば免疫グロブリンおよび非−免疫グロブリンタンパク質)である。これらの細胞結合剤には下記のものが含まれる:
−下記を含む抗体:
−表面再構成(resurfaced)抗体(U.S.Patent No.5,639,641);
−ヒト化抗体または完全ヒト抗体(ヒト化抗体または完全ヒト抗体は下記のものから選択されるが、これらに限定されない:huMy9−6、huB4、huC242、huN901、DS6、CD38、IGF−IR、CNTO 95、B−B4、トラスツヅマブ(trastuzumab)、ビバツヅマブ(bivatuzumab)、シブロツヅマブ(sibrotuzumab)、ペルツヅマブ(pertuzumab)およびリツキシマブ(rituximab)(参照:たとえばU.S.Patent No.5,639,641、5,665,357、および7,342,110;U.S.Provisional Patent Application No.60/424,332、国際特許出願WO 02/16,401、U.S.Patent Publication Number 20060045877、U.S.Patent Publication Number 20060127407、U.S.Patent Publication No.20050118183、Pedersen et al., (1994) J. Mol. Biol. 235, 959-973, Roguska et al., (1994) Proceedings of the National Academy of Sciences, Vol 91, 969-973, Colomer et al., Cancer Invest., 19: 49-56 (2001), Heider et al., Eur. J. Cancer, 31A: 2385-2391 (1995), Welt et al., J. Clin. Oncol., 12: 1193-1203 (1994)、およびMaloney et al., Blood, 90: 2188-2195 (1997));ならびに
−抗体のエピトープ結合フラグメント、たとえばsFv、Fab、Fab’、およびF(ab’)(Parham, J. Immunol. 131: 2895-2902 (1983); Spring et al, J. Immunol. 113: 470-478 (1974); Nisonoff et al, Arch. Biochem. Biophys. 89: 230-244 (1960))。
【0052】
[96] 他の細胞結合剤には、下記に例示する他の細胞結合性のタンパク質およびポリペプチドが含まれるが、これらに限定されない:
−アンキリンリピートタンパク質(DARPin類;Zahnd et al., J. Biol. Chem., 281, 46, 35167-35175, (2006); Binz, H.K., Amstutz, P. & Pluckthun, A. (2005) Nature Biotechnology, 23, 1257-1268)またはアンキリン様リピートタンパク質もしくは合成ペプチド、たとえばU.S.Patent Publication No.20070238667;U.S.Patent No.7,101,675;WO/2007/147213;およびWO/2007/062466に記載);
−インターフェロン(たとえばα、β、γ);
−リンホカイン、たとえばIL−2、IL−3、IL−4、IL−6;
−ホルモン、たとえばインスリン、TRH(チロトロピン放出ホルモン)、MSH(メラノサイト刺激ホルモン)、ステロイドホルモン、たとえばアンドロゲンおよびエストロゲン;ならびに
−増殖因子およびコロニー刺激因子、たとえばEGF、TGF−a、IGF−1、G−CSF、M−CSFおよびGM−CSF(Burgess, Immunology Today 5: 155-158 (1984))。
【0053】
[97] 細胞結合剤が抗体である場合、それは、ポリペプチドでありかつ膜貫通分子(たとえば受容体)の可能性がある抗原、またはリガンド、たとえば増殖因子に結合する。抗原の例には、下記の分子が含まれる:たとえばレニン;成長ホルモン:ヒト成長ホルモンおよびウシ成長ホルモンを含む;成長ホルモン放出ホルモン;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;アルファ−1−アンチトリプシン;インスリンA−鎖;インスリンB−鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;凝固因子、たとえばvmc因子、IX因子、組織因子(TF)、およびフォンビルブラント因子(von Willebrands factor);抗凝固因子、たとえばプロテインC;心房性ナトリウム利尿因子;肺表面活性物質;プラスミノーゲンアクチベーター、たとえばウロキナーゼもしくはヒトの尿、または組織タイプのプラスミノーゲンアクチベーター(t−PA);ボンベシン;トロンビン;造血性増殖因子;腫瘍壊死因子−アルファおよび−ベータ;エンケファリナーゼ;RANTES(regulated on activation normally T−cell expressed and secreted);ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP−1−アルファ);血清アルブミン、たとえばヒト血清アルブミン;ミュラー管抑制物質;リラキシン(relaxin)A−鎖;リラキシンB−鎖;プロリラキシン;マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド;微生物タンパク質、たとえばベータ−ラクタマーゼ;DNアーゼ;IgE;細胞傷害性T−リンパ球関連抗原(CTLA)、たとえばCTLA−4;インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子(VEGF);ホルモンまたは増殖因子の受容体;プロテインAまたはD;リウマチ因子;神経栄養因子、たとえば骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3、−4、−5もしくは−6(NT−3、NT4、NT−5またはNT−6)、または神経成長因子、たとえばNGF−β;血小板由来増殖因子(PDGF);線維芽細胞増殖因子、たとえばaFGFおよびbFGF;上皮増殖因子(EGF);トランスフォーミング増殖因子(TGF)、たとえばTGF−アルファおよびTGF−ベータ:TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4またはTGF−β5を含む;インスリン様増殖因子−Iおよび−II(IGF−IおよびIGF−II);デス(1−3)−IGF−I(脳IGF−I)、インスリン様増殖因子結合タンパク質、EpCAM、GD3、FLT3、PSMA、PSCA、MUC1、MUC16、STEAP、CEA、TENB2、EphA受容体、EphB受容体、葉酸受容体、FOLR1、メソテリン(mesothelin)、cripto、αβ、インテグリン、VEGF、VEGFR、トランスフェリン受容体、IRTA1、IRTA2、IRTA3、IRTA4、IRTA5;CDタンパク質、たとえばCD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD8、CD11、CD14、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD26、CD28、CD30、CD33、CD36、CD37、CD38、CD40、CD44、CD52、CD55、CD56、CD59、CD70、CD79、CD80、CD81、CD103、CD105、CD134、CD137、CD138、CD152;エリスロポエチン;骨誘導因子(osteoinductive factor);イムノトキシン;骨形態形成タンパク質(BMP);インターフェロン、たとえばインターフェロン−アルファ、−ベータ、および−ガンマ;コロニー刺激因子(CSF)、たとえばM−CSF、GM−CSFおよびG−CSF;インターロイキン(IL)、たとえばIL−1〜IL−10;スーパーオキシドジスムターゼ;T−細胞受容体;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;ウイルス抗原、たとえばHIVエンベロープの一部;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン(addressin)類;調節タンパク質;インテグリン、たとえばCD11a、CD11b、CD11c、CD18、ICAM、VLA−4およびVCAM;腫瘍関連抗原、たとえばHER2、HER3またはHER4受容体;ならびに以上に挙げたポリペプチドのいずれかのフラグメント、抗体模倣体アドネクチン(Adnectin)類(US appl 20070082365)、または1以上の腫瘍関連抗原もしくは細胞表面受容体に結合する抗体:US Publication No.20080171040またはUS Publication No.20080305044に開示されるもの;それらの全体を本明細書に援用する。
【0054】
[98] さらに、骨髄細胞に結合するGM−CSFを、急性骨髄性白血病由来の罹患細胞に対する細胞結合剤として使用できる。活性T細胞に結合するIL−2を、移植片拒絶の予防のために、移植片対宿主疾患の治療および予防のために、ならびに急性T細胞性白血病の治療のために使用できる。メラノサイトに結合するMSHを、黒色腫の処置のために使用できる。葉酸を用いて、卵巣その他の腫瘍に発現する葉酸受容体をターゲティングすることができる。上皮増殖因子を用いて、扁平上皮癌、たとえば肺癌および頭頚部癌をターゲティングすることができる。ソマトスタチン(somatostatin)を用いて、神経芽細胞腫その他のタイプの腫瘍をターゲティングすることができる。
【0055】
[99] 乳腺および精巣の癌は、それぞれ細胞結合剤としてのエストロゲン(またはエストロゲン類似体)またはアンドロゲン(またはアンドロゲン類似体)で効果的にターゲティングすることができる。
【0056】
[100] 本発明に包含される抗体に対する好ましい抗原には、下記のものが含まれる:CDタンパク質、たとえばCD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD8、CD11、CD14、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD25、CD26、CD28、CD30、CD33、CD36、CD37、CD38、CD40、CD44、CD52、CD55、CD56、CD70、CD79、CD80、CD81、CD103、CD105、CD134、CD137、CD138、およびCD152;ErbB受容体ファミリーのメンバー、たとえばEGF受容体、HER2、HER3またはHER4受容体;細胞接着分子、たとえばLFA−1、Mac1、p150.95、VLA−4、ICAM−1、VCAM、EpCAM、α4/β7インテグリン、およびαv/β3インテグリン:そのαまたはβサブユニットを含む(たとえば、抗−CD11a、抗−CD18または抗−CD11b抗体);増殖因子、たとえばVEGF;組織因子(TF);TGF−β;アルファインターフェロン(アルファ−IFN);インターロイキン、たとえばIL−8;IgE;血液型抗原Apo2、デスレセプター(death receptors);flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;mpl受容体;CTLA−4;プロテインCなど。本発明において最も好ましい標的は下記のものである:IGF−IR、CanAg、EphA2、MUC1、MUC16、VEGF、TF、CD19、CD20、CD22、CD33、CD37、CD38、CD40、CD44、CD56、CD138、CA6、Her2/neu、EpCAM、CRIPTO(大部分のヒト乳癌細胞において高レベルで産生されるタンパク質)、ダルピン(darpin)類、α/βインテグリン、α/βインテグリン、α/βインテグリン、TGF−β、CD11a、CD18、Apo2およびC242、または1以上の腫瘍関連抗原もしくは細胞表面受容体に結合する抗体:US Publication No.20080171040またはUS Publication No.20080305044に開示されるもの;それらの全体を本明細書に援用する。
【0057】
[101] 本発明に包含される抗体に対する好ましい抗原には、下記のものも含まれる:CDタンパク質、たとえばCD3、CD4、CD8、CD19、CD20、CD34、CD37、CD38、CD46、CD56およびCD138;ErbB受容体ファミリーのメンバー、たとえばEGF受容体、HER2、HER3またはHER4受容体;細胞接着タンパク質、たとえばLFA−1、Mac1、p150.95、VLA−4、ICAM−1、VCAM、EpCAM、α4/β7インテグリン、およびαv/β3インテグリン:そのαまたはβサブユニットを含む(たとえば、抗−CD11a、抗−CD18または抗−CD11b抗体);増殖因子、たとえばVEGF;組織因子(TF);TGF−β;アルファインターフェロン(アルファ−IFN);インターロイキン、たとえばIL−8;IgE;血液型抗原Apo2、デスレセプター;flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;mpl受容体;CTLA−4;プロテインCなど。本発明において最も好ましい標的は下記のものである:IGF−IR、CanAg、EGF−R、EphA2、MUC1、MUC16、VEGF、TF、CD19、CD20、CD22、CD33、CD37、CD38、CD40、CD44、CD56、CD138、CA6、Her2/neu、CRIPTO(大部分のヒト乳癌細胞において高レベルで産生されるタンパク質)、α/βインテグリン、α/βインテグリン、TGF−β、CD11a、CD18、Apo2、EpCAMおよびC242。
【0058】
[102] モノクローナル抗体技術により、モノクローナル抗体の形の特異的細胞結合剤の製造が可能になる。当技術分野で特に周知のものは、マウス、ラット、ハムスター、または他のいずれかの哺乳動物を、目的抗原、たとえば無傷の標的細胞、標的細胞から分離した抗原、全ウイルス、弱毒化した全ウイルス、およびウイルスタンパク質、たとえばウイルスコートタンパク質で免疫化することにより産生されるモノクローナル抗体の作製技術である。感作されたヒト細胞も使用できる。モノクローナル抗体を作製するための他の方法は、sFv(一本鎖可変部)、特にヒトsFvのファージライブラリーの使用である(参照:たとえばGriffiths et al, U.S. Patent No. 5,885,793; McCafferty et al, WO 92/01047; Liming et al, WO 99/06587)。
【0059】
[103] 適切な細胞結合剤の選択は、ターゲティングすべき個々の細胞集団に依存する選択肢であるが、適切なものが得られるならば、一般にモノクローナル抗体およびそのエピトープ結合フラグメントが好ましい。
【0060】
[104] たとえば、モノクローナル抗体My9は、急性骨髄性白血病(AML)細胞上にみられるCD33抗原に対して特異的なネズミIgG2a抗体であり(Roy et al. Blood 77: 2404-2412 (1991))、AML患者の処置に使用できる。同様に、モノクローナル抗体、抗−B4は、B細胞上のCD19抗原に結合するネズミIgGであり(Nadler et al, J. Immunol. 131: 244-250 (1983))、非ホジキンリンパ腫または慢性リンパ芽球性白血病の場合のように標的細胞がこの抗原を発現するB細胞または罹患細胞であれば使用できる。抗体N901は、小細胞性肺癌細胞上および神経内分泌由来の他の腫瘍の細胞上にみられるCD56に結合するネズミモノクローナルIgG抗体である(Roy et al. J. Nat. Cancer Inst. 88: 1136-1145 (1996));huC242はCanAg抗原に結合する抗体である;トラスツヅマブ(Trastuzumab)はHER2/neuに結合する抗体である;抗−EGF受容体抗体はEGF受容体に結合する。
【0061】
C.薬物
[105] 本発明に使用する薬物は、細胞結合剤に結合させることができる細胞毒薬である。適切な薬物の例には、メイタンシノイド(maytansinoid)類、DNA結合性薬物、たとえばCC−1065およびその類似体、カリケアマイシン(calicheamicin)類、ドキソルビシン(doxorubicin)およびその類似体、ビンカアルカロイド(vinca alkaloid)、クリプトフィシン(cryptophycin)類、ドラスタチン(dolastatin)、オーリスタチン(auristatin)およびその類似体、ツブライシン(tubulysin)、エポチロン(epothilone)類、タキソイド(taxoid)類、およびsiRNAが含まれる。
【0062】
[106] 好ましいメイタンシノイド類は、U.S.Patent No.5,208,020;5,416,064;6,333.410;6,441,163;6,716,821;RE39,151および7,276,497に記載のものである。好ましいCC−1065類似体は、U.S.Patent No.5,475,092;5,595,499;5,846,545;6,534,660;6,586,618;6,756,397および7,049,316に記載のものである。好ましいドキソルビシン類およびその類似体は、U.S.Patent No.6,630,579に記載のものである。好ましいタキソイド類は、U.S.Patent No.6,340,701;6,372,738;6.436,931;6,596,757;6,706,708;7,008,942;7,217,819および7,276,499に記載のものである。カリケアマイシン類は、U.S.Patent No.5,714,586および5739,116に記載のものである。
【0063】
[107] ビンカアルカロイド化合物、ドラスタチン化合物、およびクリプトフィシン化合物は、WO01/24763に詳細に記載されている。オーリスタチンには、オーリスタチンE、オーリスタチンEB(AEB)、オーリスタチンEFP(AEFP)、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)が含まれ、U.S.Patent No.5,635,483、Int. J. Oncol. 15: 367-72 (1999); Molecular Cancer Therapeutics, vol. 3, No. 8, pp. 921-932 (2004);U.S.Application Number 11/134826、U.S.Patent Publication No.20060074008、2006022925に記載されている。ツブライシン化合物は、U.S.Patent Publication No.20050249740に記載されている。クリプトフィシン化合物は、U.S.Patent No.6,680,311および6,747,021に記載されている。エポチロン類は、U.S.Patent No.6,956,036および6,989,450に記載されている。
【0064】
[108] siRNAは、U.S.Patent Publication Number:20070275465、20070213292、20070185050、20070161595、20070054279、20060287260、20060035254、20060008822、20050288244、20050176667に詳細に記載されている。
【0065】
類似体および誘導体
[109] 本明細書に記載した細胞毒薬を、得られる化合物がなお出発化合物の特異性および/または活性を保持する様式で修飾しうることは、細胞毒薬の分野の当業者に容易に理解されるであろう。当業者は、これらの化合物の多くを本明細書に記載する細胞毒薬の代わりに使用しうることも理解するであろう。したがって、本発明の細胞毒薬には、本明細書に記載する化合物の類似体および誘導体が含まれる。
【0066】
[110] 細胞結合剤をこれまでに記載された方法により細胞毒薬にコンジュゲートさせることができる(U.S.Patent No.6,013,748;6,441,163l、および6,716,821;U.S.Patent Publication No.20050169933;ならびにWO2006/034488 A2)。
【0067】
D.療法用途
[111] 本発明の細胞結合剤−薬物コンジュゲート(たとえばイムノコンジュゲート)を、化学療法薬と併用することもできる。そのような化学療法薬は、U.S.Patent No.7,303,749に記載されている。
【0068】
[112] 本発明の細胞結合剤−薬物コンジュゲート(たとえばイムノコンジュゲート)を、インビトロ、インビボおよび/またはエクスビボで投与して、患者を処置し、および/または選択した細胞集団の増殖を調節することができ、これにはたとえば下記のものが含まれる:肺、血液、血漿、乳腺、大腸、前立腺、腎臓、膵臓、脳、骨、卵巣、精巣、およびリンパ器官の癌;自己免疫疾患、たとえば全身性狼瘡、リウマチ性関節炎、および多発性硬化症;移植片拒絶、たとえば腎移植片拒絶、肝移植片拒絶、肺移植片拒絶、心臓移植片拒絶、および骨髄植片拒絶;移植片対宿主疾患;ウイルス感染症、たとえばCMV感染症、HIV感染症、およびエイズ;ならびに寄生虫感染症、たとえばジアルジア症、アメーバ症、住血吸虫症など。好ましくは、本発明のイムノコンジュゲートおよび化学療法薬をインビトロ、インビボおよび/またはエクスビボで投与して、患者の癌を処置し、および/または癌細胞の増殖を調節することができ、これにはたとえば血液、血漿、肺、乳腺、大腸、前立腺、腎臓、膵臓、脳、骨、卵巣、精巣、およびリンパ器官の癌;より好ましくは肺、大腸前立腺、血漿、血液または大腸の癌が含まれる。最も好ましい観点において、癌は多発性骨髄腫である。
【0069】
[113] “選択した細胞集団の増殖を調節する”ことには、選択した細胞集団(たとえば多発性骨髄腫の細胞集団、たとえばMOLP−8細胞、OPM2細胞、H929細胞など)が分裂によって増殖してより多数の細胞を生じるのを阻害すること;たとえば非処置細胞と比較して、細胞分裂が増加する速度を低下させること;選択した細胞集団を死滅させること;および/または選択した細胞集団(たとえば癌細胞)が転移するのを阻止することが含まれる。選択した細胞集団の増殖をインビトロ、インビボまたはエクスビボで調節することができる。
【0070】
[114] 本発明方法において、細胞結合剤−薬物コンジュゲート(たとえばイムノコンジュゲート)をインビトロ、インビボまたはエクスビボで投与することができる。細胞結合剤−薬物コンジュゲート(たとえばイムノコンジュゲート)を、医薬的に許容できる適切なキャリヤー、希釈剤および/または賦形剤と共に使用でき、これらは周知であり、臨床状況に応じて当業者が決定できる。適切なキャリヤー、希釈剤および/または賦形剤の例には、下記のものが含まれる:(1)約1mg/ml〜25mg/mlのヒト血清アルブミンを含有する、ダルベッコのリン酸緩衝化生理食塩水、pH約6.5、(2)0.9%生理食塩水(0.9% w/v NaCl)、および(3)5%(w/v)デキストロース。
【0071】
[115] 本明細書に記載する化合物および組成物は、適切な形態で、好ましくは非経口的に、より好ましくは静脈内に投与することができる。非経口投与のために、化合物または組成物は水性または非水性の無菌の液剤、懸濁液剤または乳剤であってもよい。プロピレングリコール、植物油、および注射用有機エステル、たとえばオレイン酸エチルを、溶剤またはビヒクルとして使用できる。組成物は、佐剤、乳化剤または分散剤を含有することもできる。
【0072】
[116] 本発明組成物は、無菌水または他のいずれかの無菌媒質に溶解または分散することができる無菌固体組成物の形態であってもよい。
[117] 本明細書に記載する細胞結合剤−薬物コンジュゲート(たとえばイムノコンジュゲート)の“療法有効量”は、選択した細胞集団の増殖を調節しおよび/または患者の疾患を処置するための用量計画を表わし、患者の年齢、体重、性別、食事および医学的状態、疾患の重症度、投与経路、ならびに薬理学的考慮事項、たとえば使用する特定の化合物の活性、有効性、薬物動態および毒性プロフィールを含めた多様な要因に従って選択される。“療法有効量”は、標準医療テキスト、たとえばPhysicians Desk Reference 2004を参照して決定することもできる。患者は、好ましくは動物、より好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトである。患者は雄または雌であってよく、乳児、小児または成人であってよい。
【0073】
[118] 細胞結合剤−薬物コンジュゲート(たとえばイムノコンジュゲート)投与の適切なプロトコルの例は、下記のものである。コンジュゲートを1日1回で約5日間投与することができる;毎日の静脈内ボーラスとして約5日間、または約5日間の連続注入として。
【0074】
[119] あるいは、本発明のコンジュゲートを週1回で6週間、またはより長期間、投与することができる。他の別法として、コンジュゲートを2または3週に1回投与することができる。ボーラス量を約50〜約400mlの生理食塩水中で投与し、これに約5〜約10mlのヒト血清アルブミンを添加することができる。連続注入は、24時間当たり約250〜約500mlの生理食塩水中で投与され、これに約25〜約50mlのヒト血清アルブミンを添加することができる。投与量は、静脈内に一人当たり約10pg〜約1000mg/kg(約100ng〜約100mg/kgの範囲)であろう。
【0075】
[120] 処置の約1〜4週間後、患者は第2コースの処置を受けることができる。投与経路、賦形剤、希釈剤、投与量および時間に関する具体的な臨床プロトコルは、臨床状況に応じて当業者が決定できる。
【0076】
[121] 本発明の組成物およびコンジュゲート(たとえばイムノコンジュゲート)は、たとえば異常な細胞増殖を特徴とする障害(たとえば癌)の処置またはその重症度の軽減に有用な医薬の製造に使用することもできる。
【0077】
[122] 本発明は、1種類以上のイムノコンジュゲートおよび1種類以上の化学療法薬を含む本発明の医薬化合物および/または組成物の1以上の成分を充填した1以上の容器を含む医薬キットをも提供する。そのようなキットは、たとえば他の化合物および/または組成物、それらの化合物および/または組成物を投与するための器具(単数または複数)、ならびに医薬または生物製剤の製造、使用または販売を規制する行政当局により指示された形式の指示書をも含むことができる。
【0078】
[123] 癌療法ならびにそれらの投与量、投与経路および推奨される用途は当技術分野で既知であり、Physician's Desk Reference(PDR)などの文献に記載されている。PDRには、種々の癌の処置に用いられている薬剤の投与量が示されている。療法に有効なこれらの前記化学療法薬の投与計画および投与量は、処置する個々の癌、疾患の程度、およびこの技術分野の医師に周知の他の要因に依存し、医師が決定できるであろう。たとえば、2006年版のPhysician's Desk Referenceに、下記のことが開示されている:タキソテール(Taxotere)(2947頁を参照)はチューブリン脱重合の阻害薬であり;ドキソルビシン(Doxorubicin)(786頁を参照)、ドキシル(Doxil)(3302頁を参照)およびオキサリプラチン(oxaliplatin)(2908頁を参照)はDNA相互作用薬であり、イリノテカル(Irinotecal)(2602頁を参照)はトポイソメラーゼI阻害薬であり、エルビタックス(Erbitux)(937頁を参照)およびタルセバ(Tarceva)(2470頁を参照)は上皮増殖因子受容体と相互作用する。PDRの内容全体を特に本明細書に援用する。当業者は、下記のパラメーターのうち1以上を用いてPDRを検討して、本発明の教示に従って使用しうる化学療法薬およびコンジュゲートの投与計画および投与量を決定できる。これらのパラメーターには下記のものが含まれる:
1.包括的インデックス
a)製造業者による
b)製品(企業名または商標薬剤名による)
c)カテゴリーインデックス(たとえば“抗ヒスタミン薬”、“DNAアルキル化剤”、タキサン類など)
d)一般/化学インデックス(商標ではない薬物一般名)
2.医薬の外観(Color image of medication)
3.FDAラベリングと一致した製品情報
a)化学的情報
b)機能/作用
c)適応症および配合禁忌
d)試験研究、副作用、警告。
【0079】
[124] 前記の参考文献、特許出願、および特許それぞれの内容全体を、明細書、特許請求の範囲および要約ならびにその図面、表または図式(これらに限定されない)を含めて全体として特に本明細書に援用する。
【実施例】
【0080】
[125] いずれか特定の観点により拘束されることなく、ポリエチレングリコール((CHCHO))連結した、細胞結合剤とのコンジュゲーションのための種々の反応性リンカーを含む薬物の合成のための方法を記載する。これらのコンジュゲーション方法には、ポリエチレングリコール((CHCHO))リンカーを介してN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)反応性基における反応により連結した、抗体と薬物、たとえばメイタンシノイドの、1工程コンジュゲーションが含まれる。
【0081】
[126] ジスルフィド基含有ポリエチレングリコール((CHCHO))連結した、抗体とのコンジュゲーションのための種々の反応性リンカーを含む薬物を合成する方法も記載する。これらのコンジュゲーション方法には、ジスルフィド基を保有するポリエチレングリコール((CHCHO))リンカーでN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)反応性基における反応により連結した、抗体と薬物、たとえばメイタンシノイドの、1工程コンジュゲーションが含まれる。
【0082】
[127] 以下の実施例は説明のためのものにすぎず、本発明を限定するためのものではない。
実施例I
従来の脂肪族炭素スペーサーを含むジスルフィドリンカーによる抗体と抗体分子当たり数個の連結メイタンシノイド分子とのコンジュゲーション
[128] 抗体を数個のメイタンシノイドDM4またはDM1の分子とコンジュゲートさせるための2工程法において、ヒト化抗体をまず、アミン反応性N−ヒドロキシスクシンイミド基(NHS基)およびチオール反応性2−ピリジルジチオ基(−SSPy基)の両方を含む市販のヘテロ二官能性リンカー(SPDB)で修飾して、数個のリンカー分子を抗体分子に取り込ませた(W. C. Widdison et al., J. Med. Chem., 2006, 49, 4392-4408の記載に従う)。反応性リンカーを抗体分子に取り込ませた後、第2反応工程で、反応性チオール基をもつメイタンシノイドDM4またはDM1をリンカー修飾抗体に添加して、メイタンシノイドをジスルフィド結合により抗体にコンジュゲートさせた。具体例において、5〜10mg/mlの濃度のヒト化抗体を、10〜15倍モル過剰の、−(CH)−アルキル基をもつ市販のヘテロ二官能性リンカー(たとえばSPDB、SPP、SPDP)により、水性緩衝液中、pH6.5〜8で0.25〜3時間、周囲温度で修飾し、次いでゲル濾過により精製して(たとえばSephadex G25クロマトグラフィーを使用)、抗体分子当たり平均8〜12個のリンカー基で修飾された抗体を高収率で得た(一般に80〜90%の収率)。連結した基は、過剰の1,4−ジチオトレイトール(DTT)試薬を少量のリンカー修飾抗体試料に添加した際の2−チオピリドンの放出を343nm(ε343nm=8080M−1 cm−1)におけるそれの吸光に基づいて測定することにより推定された。抗体に連結した反応性基を測定した後、2.5mg/mlの濃度のリンカー修飾抗体を過剰のメイタンシノイドDM4(反応性リンカーより1.7倍モル過剰のDM4チオール)とpH6.5でコンジュゲートさせた。しかし、抗体−メイタンシノイドコンジュゲーション反応中に沈殿がみられ、ゲル濾過により抗体−メイタンシノイドコンジュゲートを精製すると低い収率の抗体−メイタンシノイドコンジュゲート(約38〜60%の収率)が得られた。抗体分子当たり連結したメイタンシノイドの個数を252nmおよび280nmにおける吸光度測定値から、252nmおよび280nmにおけるメイタンシノイドおよび抗体の吸光係数を用いて判定した。約1〜1.5mg/mlにおける沈殿および抗体−メイタンシノイドコンジュゲートの低い収率のほか、抗体分子当たり取り込まれたメイタンシノイドの個数は、抗体分子当たり取り込まれたはるかに高い初期の反応性リンカー基の平均数(抗体分子当たり約8〜12個の反応性リンカー基)に基づいて予想したよりはるかに少なかった(抗体分子当たり約5.2〜5.5個の平均メイタンシノイド分子);これは、メイタンシノイドを保有する抗体コンジュゲートが比較的多量に沈殿したことを示唆する。他の例において、ヒト化抗体をまずSPDBヘテロ二官能性リンカーで修飾して、抗体分子当たり11個のピリジルジチオ基を取り込ませた;これは、1.7倍モル過剰のDM4メイタンシノイドチオールとの2回目の反応に際して反応混合物中に著しい沈殿を示し、<30%のきわめて低い回収率の抗体−メイタンシノイドコンジュゲートが得られた。脂肪族スペーサーをもつ市販のヘテロ二官能性リンカー、たとえばSPDBまたはSPDPを用いると、抗体−メイタンシノイドコンジュゲート濃度1mg/mlまたはそれより高い濃度については、抗体当たり4または5個のメイタンシノイド分子より多くを高いコンジュゲーション収率で取り込ませるのは一般に困難である。SPDB−またはSPDP−由来のリンカーを保有する抗体−メイタンシノイドコンジュゲートにみられたこの沈殿および低い収率は、抗体の最初のSPDB−またはSPDP−リンカー修飾(メイタンシノイドとのコンジュゲーション前)についてはみられなかった;これは、抗体−メイタンシノイドコンジュゲートの凝集および沈殿がおそらく疎水性分子の結合により起きたことを示唆する。
【0083】
実施例II
親水性ポリエチレンオキシドスペーサー(PEG、または(−CH−CH−O)n=1−14)を含むジスルフィドリンカーによる抗体と抗体分子当たり数個の連結メイタンシノイド分子とのコンジュゲーション
[129] 親水性スペーサー、たとえばポリエチレンオキシド(PEG、または(−CH−CH−O)n=1−14)が、高い個数のメイタンシノイド分子(抗体分子当たり平均>4)を含む抗体−メイタンシノイドコンジュゲートの凝集および沈殿を阻止するであろうという可能性を調べるために、幾つかの新規なヘテロ二官能性および一官能性メイタンシノイド誘導体を製造した;これらは、直接修飾により、または抗体のリジン残基における最初の誘導体化に続いてメイタンシノイドを反応させることによる2工程反応により、抗体にコンジュゲートさせることができる(たとえば、図3、6、11および12を参照)。
【0084】
15−(2−ピリジルジチオ)−4,7,10,13−テトラオキサペンタデカン酸の合成
[130] アルドリチオール−2(1.17g,5.31mmol)の溶液を、10mL丸底フラスコ内で5.0mLの1,2−ジメトキシエタン中に調製した。この反応フラスコに、1.0mLの1,2−ジメトキシエタンに溶解した3−(2−チオテトラエチレングリコール)プロピオン酸(QuantaBiodesign,490mg,1.73mmol)の溶液を添加した。撹拌しながら3.5時間、反応を進行させ、生成物をシリカクロマトグラフィーにより、塩化メチレン中の5%メタノールで溶離して精製した。溶媒を真空中で除去して、432mg(64%の収率)の目的生成物を得た。
【0085】
PySS−PEG−NHS[15−(2−ピリジルジチオ)−4,7,10,13−テトラオキサペンタデカン酸−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル]の合成
[131] 10mL丸底フラスコに、15−(2−ピリジルジチオ)−4,7,10,13−テトラオキサペンタデカン酸(431mg,1.10mmol)、5.0mLの塩化メチレンおよび撹拌バーを装入した。N−ヒドロキシスクシンイミド(3.6mg,0.31mmol)および1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(6.8mg,0.036mmol)をこの反応器に添加し、室温で2時間、撹拌しながら反応を進行させた。生成物をシリカクロマトグラフィーにより、塩化メチレン中の7% 1,2−ジメトキシエタンで溶離して精製した。溶媒を真空中で除去して、206mg(38%の収率)の目的生成物を得た。MS:m/z:実測値:511.1(M+Na),計算値:511.2。
【0086】
15−(DM4−ジチオ)−4,7,10,13−テトラオキサペンタデカン酸の合成
[132] N2’−デアセチル−N2’−(4−メルカプト−4−メチル−1−オキソペンチル)メイタンシン(DM4,18.6mg,0.0239mmol)および15−(2−ピリジルジチオ)−4,7,10,13−テトラオキサペンタデカン酸(14.0mg,0.0358mmol)の溶液を、0.75mLの1,2−ジメトキシエタン中に調製した。4−メチルモルホリン(6.0mg,0.0597mmol)を反応器に添加し、室温で24時間、撹拌しながら反応を進行させた。反応が終了すると、粗製反応混合物を真空中で乾燥させ、それ以上精製せずに使用した(図6)。
【0087】
15−(DM4−ジチオ)−4,7,10,13−テトラオキサペンタデカン酸−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(DM4−SPEG−NHS)の合成
[133] 粗製15−(DM4−ジチオ)−4,7,10,13−テトラオキサペンタデカン酸を2.0mLの塩化メチレンに溶解し、N−ヒドロキシスクシンイミド(3.6mg,0.31mmol)および1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(6.8mg,0.036mmol)と混和した。この溶液を2.5時間撹拌し、生成物をシリカクロマトグラフィーにより、塩化メチレン中の4%メタノールで溶離して精製した。溶媒を真空下で除去して、15.0mg(54%の収率)の目的生成物を得た。MS:m/z:実測値:1179.3(M+Na),計算値:1179.4(図6)。
【0088】
抗体分子当たり高い個数のメイタンシノイド分子を連結するための、親水性ポリエチレンオキシドスペーサー(PEG、または(−CH−CH−O)n=1−14)を含むジスルフィドリンカーを用いる2工程の抗体コンジュゲーション:
[134] 親水性スペーサー、たとえばポリエチレンオキシド(PEG、または(−CH−CH−O)n=1−14)を含む新規なヘテロ二官能性試薬を用いて抗体を修飾し、次いでDM4チオールとコンジュゲートさせた際に、新規な所見が得られた。親水性PEGスペーサーをもつ抗体−メイタンシノイドコンジュゲートのコンジュゲーション混合物は、何ら沈殿を示さず、一貫してきわめて高いモノマー画分(>90%)で高いコンジュゲート収率(>70%)を生じた。一例として、8mg/ml濃度のヒト化抗体を、抗体濃度より数倍モル過剰のPySS−PEG−NHS試薬で、pH8の緩衝液中において30℃で1時間修飾し、次いでゲル濾過により精製した。抗体分子当たり連結したジチオピリジル基は、過剰のジチオトレイトールを用いて部分標本の2−チオピリドン放出アッセイにより約4〜16個と推定された;これに基づいて、pH6.5、25℃で一夜のコンジュゲーション工程について、1.4倍モル過剰のDM4メイタンシノイドチオールをジチオピリジル−PEG−リンカー修飾した抗体の各溶液に添加し、次いでコンジュゲートをゲル濾過により精製した(図12)。種々の初期リンカー取込み量をもつ種々のコンジュゲーション混合物について抗体当たり取り込まれたメイタンシノイドの最終値は、抗体分子当たり3から9個までの平均メイタンシノイドに及び、沈殿はみられず、>70%の収率およびきわめて高いモノマー量が得られた(>90%のモノマー;20%イソプロパノールまたは0.4M過塩素酸ナトリウムを用いるサイズ排除TSK−GEL G3000 HPLCに基づく)。最終コンジュゲート中のコンジュゲートしていない薬物は0.6%未満であることがHiSep Mixed−Modeクロマトグラフィー(HiSepカラム、Supelco)により測定され、メイタンシノイドが抗体に共有結合したことが示唆された。他の例において、8mg/ml濃度のヒト化抗体を、抗体濃度より数倍モル過剰のPySS−PEG−NHS試薬で、pH6.5の緩衝液中において25℃で1.5時間修飾し、次いでゲル濾過により精製した。抗体試料上のジチオピリジル−PEGを保有するリンカー基は抗体分子当たり6〜18個と推定され、次いでこれを1.3〜1.7倍モル過剰のDM4メイタンシノイドチオールとpH6.5、25℃で一夜反応させ、次いでゲル濾過により精製した。沈殿はみられず、約1〜2mg/mlで抗体−メイタンシノイドコンジュゲート最終試料は高いモノマー画分(>90%)を示し、凝集がなく、抗体分子当たり約3.1〜7.1個の高い個数のメイタンシノイドが共有結合しており、コンジュゲートしていないメイタンシノイドがきわめて少ないことを示す(HiSepクロマトグラフィーにより推定して、コンジュゲートしていないメイタンシノイドは<1.7%)。抗体当たりの薬物装填量が高いこのコンジュゲートは、4℃での貯蔵に際し、分析した最長期間(1.5カ月間)まですら安定であった。
【0089】
抗体分子当たり高い個数のメイタンシノイド分子を連結するための、親水性ポリエチレンオキシドスペーサー(PEG、または(−CH−CH−O)n=1−14)を含むジスルフィドリンカーを用いる1工程の抗体コンジュゲーション:
[135] 1工程コンジュゲーション方法において、親水性ポリエチレンオキシドスペーサー(PEG、または(−CH−CH−O)n=1−14)を含むジスルフィドリンカーを用いた抗体−メイタンシノイドコンジュゲートが、4mg/ml濃度のヒト化抗体と10〜20倍モル過剰のDM4−SPEG−NHS試薬をpH8の緩衝液中、30℃で2時間コンジュゲートさせ、次いでゲル濾過により精製することによって作製され、抗体分子当たり6.6個のコンジュゲートしたメイタンシノイド(82%のモノマー)を含む1.4mg/ml濃度の抗体−メイタンシノイドコンジュゲートが得られた(図11)。したがって、2工程法および1工程法の両方により、親水性ポリエチレンオキシドスペーサー(PEG、または(−CH−CH−O)n=1−14)を含むジスルフィドリンカーを用いて、抗体分子当たり高い個数の連結メイタンシノイドが得られた。
【0090】
実施例III
親水性ポリエチレンオキシドスペーサー(PEG、または(−CH−CH−O))を含むチオエーテルリンカーによる抗体と抗体当たり数個の連結メイタンシノイド分子とのコンジュゲーション
[136] 抗体のリジン残基を直接修飾するために、SPPから誘導した従来の脂肪族リンカー、たとえばアルキルリンカーをもつメイタンシノイドのN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(W.C. Widdison et al., J. Med. Chem., 2006, 49, 4392-4408に記載)を用いて、まず抗体を1工程法でコンジュゲートさせた。ヒト化抗体と被験試薬としての8倍モル過剰の5mg/mlのDM1−SPP−NHS試薬を、pH8の緩衝液中、30℃で2時間コンジュゲートさせる試み(次いでゲル濾過および透析する)は、著しい沈殿および凝集を生じ、したがって最終コンジュゲートはわずか61%のモノマーであり、抗体当たり連結したメイタンシノイドは約3.3個であった。これに対し、DM1−Mal−PEG−NHS試薬を同様な条件下で用いると1.1mg/mlで抗体当たり5.4個のメイタンシノイド分子が連結したコンジュゲートが得られ、最終コンジュゲート中に沈殿はなかった(図7または9)。同様に、DM1−Mal−PEG−NHS試薬を用いて、抗体当たり高い個数の連結メイタンシノイドがチオエーテル結合によりコンジュゲートしたものが得られた。他の例において、ネズミIgG抗体を4mg/mlで10および20倍モル過剰のDM1−Mal−PEG−NHS試薬と、pH8の緩衝液中、30℃で2時間コンジュゲートさせ、次いでゲル濾過して、約1mg/ml濃度の抗体−メイタンシノイドコンジュゲートを得た;抗体分子当たり4.1および7.8個のメイタンシノイド分子が共有結合によりコンジュゲートし(98%のモノマー)、コンジュゲートしていない薬物は検出不可能なレベルであった(HiSep HPLCアッセイ)。他の例において、ヒト化抗体を過剰のDM1−Mal−PEG−NHS試薬とコンジュゲートさせて、抗体当たり平均10.7個の連結メイタンシノイド分子が得られた(99%モノマー;1.1mg/ml濃度)。図8および図10に概説した2工程コンジュゲーション方法を用いて、抗体からPEG−連結チオエーテルコンジュゲートも製造した。したがって、親水性リンカー、たとえばPEGまたは(−CH−CH−O)の使用により、抗体当たり多数のメイタンシノイド分子を導入することができる(たとえば図1、2、4、5、7、8、9、10、13、14、15、16、17、18、19、20および21を参照)。
【0091】
DM1−Mal−PEG−NHSの合成
[137] N2’−デアセチル−N2’−(3−メルカプト−1−オキソプロピル)−メイタンシン(DM1,13.4mg,0.0182mmol)の溶液を0.70mLのTHF中に調製し、スクシンイミジル−[(N−マレイミドプロピオンアミド)−ジエチレングリコール]エステル(NHS−PEG−マレイミド,Quanta Biodesign,11.6mg,0.0273mmol)を、水性リン酸カリウム緩衝液(50mM,pH6)およびTHFの2:1(v/v)混合物1.5mL中において添加した。室温で撹拌しながら1時間、反応を進行させ、TLC分析は反応が完了したことを示した。粗製反応混合物をシリカクロマトグラフィーにより、塩化メチレン中の8%エタノールで溶離して精製した;溶媒を真空下で除去して、6.0mg(28%の収率)の目的生成物を得た。MS:m/z実測値:1185.3(M+Na),計算値:1184.4(図4)。
【0092】
DM1−Mal−PEG−NHSの合成
[138] N2’−デアセチル−N2’−(3−メルカプト−1−オキソプロピル)−メイタンシン(DM1,28.1mg,0.0381mmol)の溶液を0.50mLのTHF中に調製し、スクシンイミジル−[(N−マレイミドプロピオンアミド)−テトラエチレングリコール]エステル(NHS−PEG−マレイミド,Quanta Biodesign,39.1mg,0.0762mmol)を、水性リン酸カリウム緩衝液(50mM,pH6)およびTHFの2:1(v/v)混合物1.5mL中において添加した。室温で撹拌しながら1時間、反応を進行させ、TLC分析は反応が完了したことを示した。粗製反応混合物をシリカクロマトグラフィーにより、塩化メチレン中の6%エタノールで溶離して精製した;溶媒を真空下で除去して、9.6mg(20%の収率)の目的生成物を得た。MS:m/z実測値:1273.5(M+Na),計算値:1273.5(図4)。
【0093】
実施例IV
高メイタンシノイドを保有する抗体種の質量分析
[139] 親水性PEGリンカーを含む、高メイタンシノイドを保有する抗体種を分析するために、抗体当たり平均10.7個のDM1を含むきわめて高いメイタンシノイドを保有するAb−PEG−Mal−DM1コンジュゲートを選択した。このコンジュゲートを脱グリコシルし、次いでESI−TOF MSにより分析した(図22)。質量スペクトルは、抗体当たり薬物4〜15個の種々の個数の連結メイタンシノイドで標識された種々の抗体種を示す;抗体当たり薬物8〜9個付近に最大値。この分布は正規であり、高い薬物保有種について選択的な消失がみられなかったことを示唆し、これは最終コンジュゲートの高い溶解度と一致する。抗体当たり平均10.7個のDM1を含む高いメイタンシノイドを保有するAb−PEG−Mal−DM1コンジュゲーのサイズ排除クロマトグラフィーHPLCトは、予想外に高い>99%量のモノマーを示した(図23)。
【0094】
実施例V
高メイタンシノイドを保有する抗体種のFACS結合は非修飾抗体のものに類似する:
[140] EpCAM、CanAgおよびCD56など種々の標的に対する、数種類の抗体の高メイタンシノイド保有コンジュゲートの結合を、フローサイトメトリーにより非修飾抗体と比較した。要約すると、抗原陽性細胞をコンジュゲートまたは非修飾抗体と共に4℃でインキュベートし、次いで二次抗体−FITCコンジュゲートと共に4℃でインキュベートし、ホルムアルデヒド(PBS中1%)で固定し、フローサイトメトリーにより分析した。評価したすべてのコンジュゲートについて、コンジュゲートの結合と非修飾抗体の結合の間に有意差はみられなかった。一例を図24に示す;この場合、10.7個のメイタンシノイドを保有するAb−PEG−Mal−DM1コンジュゲートが非修飾抗体のものに類似する高い親和性で抗原陽性細胞に結合した。
【0095】
実施例VI
ポリエチレンオキシドスペーサー(PEG、または(−CH−CH−O))を含むチオエーテルおよびジスルフィドリンカーをもつ、抗体のメイタンシノイドコンジュゲートのインビトロ細胞毒性評価
[141] PEGスペーサーを含むチオエーテルおよびジスルフィドリンカーをもつ抗体−メイタンシノイドコンジュゲートの細胞毒性を、一般にWST−8細胞生存率アッセイにより、癌細胞とコンジュゲートの4〜5日連続インキュベーション後に評価した。抗原を発現する癌細胞(約1000〜5000細胞/ウェル)を、96ウェルプレート内で、ウシ胎仔血清を種々の濃度の抗体−メイタンシノイドコンジュゲートと共に含有する普通増殖培地において約5日間インキュベートした。次いでWST−8試薬を添加し、約2〜5時間後に450nmにおけるプレートの吸光度を測定した。生存画分をコンジュゲート濃度に対してプロットして、コンジュゲートのIC50値(50%の細胞を死滅させる濃度)を判定した。
【0096】
[142] 図25は、抗EpCAM Ab−メイタンシノイドコンジュゲートの力価がPEG連結チオエーテルコンジュゲート(Ab−PEG−Mal−DM1)に対する薬物装填量の増加に伴って増強されることを示す;これは、抗体当たりメイタンシノイド約4個の同様な薬物装填量のチオエーテル連結SMCC−DM1およびジスルフィド連結SPDB−DM4コンジュゲートより、EpCAM抗原陽性COLO205−多剤耐性細胞(COLO205−MDR細胞)に対する力価が大きいことも示す。メイタンシノイド装填量4.1および7.8のチオエーテル連結した抗EpCAM Ab−PEG−Mal−DM1コンジュゲートの力価は新規であり、療法用途にとってきわめて有望な可能性をもつ。
【0097】
[143] 図26は、CanAg抗原陽性COLO205−MDRに対する抗CanAg Ab−メイタンシノイドコンジュゲートの細胞毒性を示す。この場合も、チオエーテル連結したAb−PEG−Mal−DM1およびAb−PEG−Mal−DM1コンジュゲートは、同様なメイタンシノイド装填量をもつチオエーテル連結Ab−SMCC−DM1コンジュゲートと比較して、より大きい力価を示した。
【0098】
[144] 図27は、CD56発現Molp−8多発性骨髄腫細胞に対する、PEGを含むチオエーテルおよびジスルフィドリンカーをもつ抗CD56抗体−メイタンシノイドコンジュゲートの細胞毒性を示す。抗体当たり7.7個の薬物を含むチオエーテル連結PEG4コンジュゲート(Ab−PEGMal−DM1)は、3.8個の薬物を保有するコンジュゲート(IC50=1.9nM)と比較して、予想外の100倍の細胞毒性力価増大を示した(IC50値0.019nM)。
【0099】
[145] 図28は、EpCAM陽性多剤耐性HCT15細胞に対して、PEG連結チオエーテルコンジュゲートを保有する抗EpCAM Ab−メイタンシノイドコンジュゲート(Ab−PEG−Mal−DM1)の力価が、抗体当たりメイタンシノイド約4個の同様な薬物装填量の一般的なチオエーテル連結SMCC−DM1より増強したことを示す。チオエーテル連結した抗EpCAM Ab−PEG−Mal−DM1コンジュゲートの高い力価は新規所見であり、療法用途にとってきわめて有望な可能性をもつ。図29は、EpCAM陽性多剤耐性COLO 205細胞に対して、PEG連結チオエーテルコンジュゲートを保有する抗EpCAM Ab−メイタンシノイドコンジュゲート(Ab−PEG−Mal−DM1)の力価が、抗体当たりメイタンシノイド約4個の同様な薬物装填量の一般的なチオエーテル連結SMCC−DM1より増強したことを示す。チオエーテル連結した抗EpCAM Ab−PEG−Mal−DM1コンジュゲートの増強した力価は新規所見であり、療法用途にとってきわめて有望な可能性をもつ。図37は、EGFR陽性UO−31ヒト腎癌細胞に対して、親水性チオエーテル結合PEGリンカーをもつ抗EGFR Ab−メイタンシノイドコンジュゲート(Ab−PEG−Mal−DM1)の細胞毒性が、メイタンシノイド3.7個/Abを含む非親水性SMCC−DM1コンジュゲートと比較して著しく増強したことを示す。PEG−Mal−DM1の力価は、従来のリンカーをもつSMCC−DM1コンジュゲートのものより約10倍大きかった。
【0100】
実施例VII
インビボ薬物動態:
[146] 親水性PEGリンカーを含む6.7D/A(メイタンシノイド/抗体)を保有するヒト化−抗CD56抗体(Ab)−PEG−Mal−DM1コンジュゲートの血漿薬物動態を、従来の脂肪族炭素鎖リンカーを含む4D/Aを保有するAb−SMCC−DM1コンジュゲートのものと比較した(図38A)。CD1マウスに5mg/kgのコンジュゲートを単回ボーラスにより静脈内注射した(抗体基準の投与量;グループ当たり3匹のマウス)。血漿試料を4週間までの数回の時点で採集した。血漿試料を抗体濃度およびコンジュゲート濃度についてELISAにより分析した。抗体ELISAについては、コートした固定化−ヤギ−抗ヒトIgG(H+L)抗体を含むマイクロタイタープレートに血漿試料を添加し、洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートしたヤギ−抗ヒトIgG(Fcγ)抗体を用いて検出した。コンジュゲート濃度については、コートした固定化−ヤギ−抗ヒトIgG(H+L)抗体を含むマイクロタイタープレートに血漿試料を添加し、洗浄し、ビオチニル化−抗メイタンシン抗体およびアルカリホスファターゼコンジュゲートしたストレプトアビジンを用いて検出した。抗体濃度およびコンジュゲート濃度両方のELISA結果が、親水性PEGリンカーを含む6.7DM1/Abの高い装填量を保有するAb−PEG−Mal−DM1コンジュゲートは4週間の試験期間にわたって血漿中に良好に保持されることを証明した。
【0101】
[147] 図38Aは、PEGリンカーを用いた高いメイタンシノイド装填量(6.7DM1/Ab)をもつ抗体−メイタンシノイドコンジュゲートのインビボ薬物動態を、4DM1/Abを保有する標準的なリンカーコンジュゲートと比較して示す。高いメイタンシノイド装填量についてすら、メイタンシノイド6.7個/Abを含むPEG連結チオエーテルコンジュゲート(Ab−PEG−Mal−DM1)は、標準的なコンジュゲートより長い半減期をもつ。他の例において、H標識DM1を含むヒト化C242 Ab−PEG−Mal−H−DM1コンジュゲート(メイタンシノイド3.3個/Ab)の血漿薬物動態を、コンジュゲートしていない抗体、および従来の脂肪族炭素鎖リンカーを含む同様な4.2D/Aの装填量をもつAb−SMCC−H−DM1コンジュゲートと、CD−1マウスにおいて10〜12mg/kgのi.v.(静脈内)投与量で比較した(図38B)。Ab−PEG−Mal−H−DM1コンジュゲートは、4週間にわたって、同様なメイタンシノイド装填量をもつ従来のSMCCリンカーコンジュゲートと比較してより高い血漿濃度を示した;抗体濃度(ELISA;図38B)およびコンジュゲート濃度(H標識計数)の両方により測定。PEG−Mal連結コンジュゲートの半減期は、SMCC連結コンジュゲートについての12.6日と比較して16日であり、したがってSMCCコンジュゲートよりはるかに改良された(図38B)。重要なことに、CD−1マウスにおいて、3.3D/AをもつAb−PEG−Mal−DM1コンジュゲートの10mg/kg静脈内投与量における曲線下面積(AUC)(AUC=38790h.μg/mL)は、コンジュゲートしていない抗体の同様な12mg/kg静脈内投与量におけるもの(AUC=38798h.μg/mL)と類似し、4.2D/AをもつAb−SMCC−DM1コンジュゲートの10mg/kg静脈内投与量におけるもの(AUC=25910h.μg/mL)よりはるかに良好であった(図38B)。
【0102】
実施例VIII
耐性大腸癌(HCT15)異種移植に対する抗EpCAM−メイタンシノイドコンジュゲート、muB38.1−MCC−DM1およびmuB38.1−PEG4−mal−DM1コンジュゲートのインビボ抗腫瘍活性の比較
[148] muB38.1−MCC−DM1およびmuB38.1−PEG4−mal−DM1コンジュゲートの抗腫瘍効果を、P糖タンパク質を過剰発現して種々の薬物に対し耐性であることが示されているヒト大腸癌HCT15の異種移植モデルにおいて評価した。HCT15細胞をSCIDマウスの右肩下領域に皮下注射した(1x10細胞/動物)。腫瘍の体積が約140mmのサイズに達した時点で(腫瘍細胞接種後、9日目)、マウスを腫瘍体積によりランダム化して3グループに分け(5匹/グループ)、各グループをmuB38.1−MCC−DM1(コンジュゲートタンパク質20mg/kg)、muB38.1−PEG4−mal−DM1(コンジュゲートタンパク質20mg/kg)またはリン酸緩衝化生理食塩水(ビヒクル対照)の静脈内単回ボーラスで処置した。腫瘍サイズを週2回測定することにより腫瘍の増殖をモニターした。腫瘍サイズは次式により計算された:長さ×幅×高さ×1/2。
【0103】
[149] 腫瘍体積の平均変化を、たとえば図30に示す。PBS対照グループでは、細胞接種後20日目までに腫瘍が600mmの腫瘍体積に達した。muB38.1−MCC−DM1による処置は15日の腫瘍増殖遅延を生じた。muB38.1−PEG4−mal−DM1による処置はより大きい抗腫瘍効果を示した:5匹中2匹の動物は腫瘍が完全に退縮してこれが44日間持続し、3匹は32日間の腫瘍増殖遅延を伴った。
【0104】
[150] したがって、本発明のコンジュゲートmuB38.1−PEG4−mal−DM1は、このヒト大腸癌異種移植モデルにおいてmuB38.1−MCC−DM1より有意に有効である。
【0105】
実施例IX
耐性大腸癌(COLO205−MDR)異種移植に対する抗EpCAM−メイタンシノイドコンジュゲート(muB38.1−MCC−DM1およびmuB38.1−PEG4−mal−DM1)のインビボ抗腫瘍活性の比較
[151] muB38.1−MCC−DM1およびmuB38.1−PEG4−mal−DM1コンジュゲートの抗腫瘍効果を、P糖タンパク質を過剰発現するように工学的に処理されたヒト大腸癌COLO205−MDRの異種移植モデルにおいて評価した。COLO205−MDR細胞をSCIDマウスの右肩下領域に皮下注射した(1x10細胞/動物)。腫瘍の体積が約170mmのサイズに達した時点で(細胞接種後、8日目)、マウスをランダムに3グループに分け(6匹/グループ)、各グループをmuB38.1−MCC−DM1(コンジュゲートタンパク質20mg/kg)、muB38.1−PEG4−mal−DM1(抗体投与量20mg/kg)またはリン酸緩衝化生理食塩水(ビヒクル対照)の静脈内単回ボーラスで処置した。腫瘍サイズを週2回測定することにより腫瘍の増殖をモニターした。腫瘍サイズは次式により計算された:長さ×幅×高さ×1/2。
【0106】
[152] 腫瘍体積の平均変化を、たとえば図31に示す。PBS対照グループでは、38日で腫瘍が約1000mmにまで増殖した。muB38.1−MCC−DM1による処置は14日の腫瘍増殖遅延を生じた。muB38.1−PEG4−mal−DM1による処置は顕著な抗腫瘍効果をもち、6匹すべての動物において完全に腫瘍が退縮した(図31)。
【0107】
[153] 同様な実験をCOLO 205異種移植に対しても実施した。この場合も、B38.1−PEG4−mal−DM1による処置はより有効であって完全な腫瘍退縮を生じたのに対し、標準的なSMCCコンジュゲートは中等度の腫瘍増殖遅延を示すにすぎない(図32)。
【0108】
[154] 同様な結果がヒト化抗CanAg抗体のコンジュゲートについて得られた(図33)。
[155] したがって、本発明のコンジュゲートmuB38.1−PEG4−mal−DM1は、このヒト大腸癌異種移植モデルにおいて、これまでに記載されたリンカーを用いて製造されたコンジュゲートmuB38.1−MCC−DM1より有意に有効である。
【0109】
実施例X
PEGの長さの評価:
[156] PEG、PEG、PEG12、PEG24リンカーを用い、かつ抗体当たり種々の個数のDMxを取り込ませて、幾つかのAb−PEG−Mal−DMxコンジュゲートを製造した。図34は、きわめて高い17.1D/Aの装填量をもつAb−PEG24−Mal−DM1コンジュゲートが、抗原を発現する癌細胞に非修飾抗体と同様な結合を示すことを証明する(フローサイトメトリーによる相対平均蛍光RMF単位で結合を測定)。4〜8D/Aを保有するAb−PEG−Mal−DM1およびAb−PEG12−Mal−DM1コンジュゲートも、細胞結合フローサイトメトリーによれば非修飾抗体と同様な結合を示す。PEG、PEG、PEG12、PEG24リンカーを用いて製造したAb−PEG−Mal−DMxコンジュゲートは、抗原陽性細胞に対する細胞毒性において有効であった。図35は、4〜17D/Aをもつ抗CanAg抗体(huC242)−PEG−Mal−DM1コンジュゲートが、CanAg抗原陽性COLO205細胞を5日間のインキュベーションに際して約0.1〜0.5nMの有効なIC50で死滅させたことを証明する。pgpを発現する多剤耐性COLO205−MDR細胞は、4〜17D/Aを保有するhuC242−PEG−Mal−DM1コンジュゲートによって、約0.05〜0.5nMのIC50で効果的に死滅した(図36)。高い17.1D/AをもつPEG24−Mal−DM1コンジュゲートは、細胞毒性において、4D/AをもつPEG24−Mal−DM1コンジュゲートより有効であった(図34、36)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)または(1’)の化合物であって:
Z−X−(−CH−CH−O−)−Y−D (1)
D−Y−(−CH−CH−O−)−X−Z (1’)
[式中:
Zは、細胞結合剤とアミドまたはチオエーテル結合を形成することができる反応性官能基を表わし;
Dは、薬物を表わし;
Xは、細胞結合剤に、チオエーテル結合、アミド結合、カルバメート結合またはエーテル結合により結合する、脂肪族、芳香族または複素環式の単位を表わし;
Yは、薬物に、チオエーテル結合、アミド結合、カルバメート結合、エーテル結合、アミン結合、炭素−炭素結合、およびヒドラゾン結合からなる群から選択される共有結合により結合した、脂肪族、芳香族または複素環式の単位を表わし;
lは、0または1であり;
pは、0または1であり;
nは、1から2000までの整数である]
である、前記化合物。
【請求項2】
式(2)または(2’)の細胞結合剤−細胞毒薬コンジュゲートであって:
CB−[X−(−CH−CH−O−)−Y−D] (2)
[D−Y−(−CH−CH−O−)−X−CB (2’)
[式中:
CBは、細胞結合剤を表わし;
Dは、薬物を表わし;
Xは、細胞結合剤に、チオエーテル結合、アミド結合、カルバメート結合またはエーテル結合により結合した、脂肪族、芳香族または複素環式の単位を表わし;
Yは、薬物に、チオエーテル結合、アミド結合、カルバメート結合、エーテル結合、アミン結合、炭素−炭素結合、およびヒドラゾン結合からなる群から選択される共有結合により結合した、脂肪族、芳香族または複素環式の単位を表わし;
lは、0または1であり;
pは、0または1であり;
mは、2から15までの整数であり;
nは、1から2000までの整数である]
である、前記コンジュゲート。
【請求項3】
式(3)または(3’)の化合物であって:
Z−X−(−CH−CHO−)−Y−D (3)
D−Y−(−CH−CHO−)−X−Z (3’)
[式中:
Zは、細胞結合剤とアミドまたはチオエーテル結合を形成することができる反応性官能基を表わし;
Dは、薬物を表わし;
Xは、細胞結合剤に、チオエーテル結合、アミド結合、カルバメート結合またはエーテル結合により結合した、脂肪族、芳香族または複素環式の単位を表わし;
Yは、薬物にジスルフィド結合により結合した、脂肪族、非芳香族複数環式または芳香族複素環式の単位を表わし;
lは、0または1であり;
nは、1から14までの整数である]
である、前記化合物。
【請求項4】
式(4)または(4’)の細胞結合剤−細胞毒薬コンジュゲートであって:
CB−(X−(−CH−CHO−)−Y−D) (4)
[D−Y−(−CH−CHO−)−X−CB (4’)
[式中:
CBは、細胞結合剤を表わし;
Dは、薬物を表わし;
Xは、細胞結合剤に、チオエーテル結合、アミド結合、カルバメート結合またはエーテル結合により結合した、脂肪族、芳香族または複素環式の単位を表わし;
Yは、薬物に、ジスルフィド結合により結合した、脂肪族、芳香族または複素環式の単位を表わし;
lは、0または1であり;
mは、3から8までの整数であり;
nは、1から14までの整数である]
である、前記コンジュゲート。
【請求項5】
細胞結合剤が、抗体、一本鎖抗体、標的細胞に優先的に結合する抗体フラグメント、モノクローナル抗体、一本鎖モノクローナル抗体、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、標的細胞に特異的に結合するフラグメント、抗体模倣体アドネクチン類、DARPin類、リンホカイン、サイトカイン、ホルモン、増殖因子、酵素、または栄養素輸送分子である、請求項2または4に記載のコンジュゲート。
【請求項6】
細胞結合剤が、表面再構成(resurfaced)モノクローナル抗体、表面再構成一本鎖モノクローナル抗体、または標的細胞に優先的に結合する表面再構成モノクローナル抗体フラグメントである、請求項2または4に記載のコンジュゲート。
【請求項7】
細胞結合剤が、ヒト化モノクローナル抗体、ヒト化一本鎖モノクローナル抗体、または標的細胞に優先的に結合するヒト化モノクローナル抗体フラグメントである、請求項2または4に記載のコンジュゲート。
【請求項8】
抗体が、キメラ抗体、キメラ抗体フラグメント、ドメイン抗体、またはそのドメイン抗体フラグメントである、請求項5に記載のコンジュゲート。
【請求項9】
抗体が、MY9、抗−B4、EpCAM、CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD11、CD19、CD20、CD22、CD26、CD30、CD33、CD37、CD38、CD40、CD44、CD56、CD79、CD105、CD138、EphA受容体、EphB受容体、EGFR、EGFRvIII、HER2、HER3、メソテリン、cripto、αβ、αβ、αβインテグリンまたはC242である、請求項5に記載のコンジュゲート。
【請求項10】
抗体が、My9−6、B4、C242、N901、DS6、EphA2受容体、CD38、IGF−IR、CNTO 95、B−B4、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ビバツズマブ、シブロツズマブ、またはリツキシマブから選択されるヒト化抗体、ヒト抗体、または表面再構成抗体である、請求項5に記載のコンジュゲート。
【請求項11】
細胞結合剤が、腫瘍細胞;ウイルス感染細胞、微生物感染細胞、寄生虫感染細胞、自己免疫細胞、活性化細胞、骨髄細胞、活性化T細胞、B細胞、または黒色腫細胞;IGF−IR、CanAg、EGFR、MUC1、MUC16、VEGF、TF、MY9、抗−B4、EpCAM、CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD11、CD11a、CD18、CD19、CD20、CD22、CD26、CD30、CD33、CD37、CD38、CD40、CD44、CD56、CD70、CD79、CD105、CD138、EphA受容体、EphB受容体、EGFRvIII、HER2/neu、HER3、メソテリン、cripto、αβインテグリン、αβインテグリン、αβインテグリン、Apo2、およびC242抗原のうち1以上を発現する細胞;またはインスリン増殖因子受容体、上皮増殖因子受容体、および葉酸受容体を発現する細胞から選択される標的細胞に結合する、請求項2または4に記載のコンジュゲート。
【請求項12】
腫瘍細胞が、乳癌細胞、前立腺癌細胞、卵巣癌細胞、結腸直腸癌細胞、胃癌細胞、扁平上皮癌細胞、小細胞性肺癌細胞、および精巣癌細胞から選択される、請求項11に記載のコンジュゲート。
【請求項13】
有効量の請求項2または4に記載の薬物−細胞結合剤コンジュゲート、その医薬的に許容できる塩または溶媒和物、および医薬的に許容できるキャリヤー、希釈剤または賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項14】
その方法による処置に対して感受性の疾患を処置するための方法であって、その必要がある患者に有効量の請求項2または4に記載のコンジュゲートを非経口投与することを含む方法。
【請求項15】
疾患が、腫瘍、自己免疫疾患、移植片拒絶、移植片対宿主疾患、ウイルス感染症、および寄生虫感染症から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
腫瘍が、肺、血液、血漿、乳腺、大腸、前立腺、腎臓、膵臓、脳、骨、卵巣、精巣、およびリンパ器官の癌のうち1種類以上から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
腫瘍が、IGF−IR、FOLR1、CanAg、EGFR、EphA2、MUC1、MUC16、VEGF、TF、MY9、抗−B4、EpCAM、CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD11、CD11a、CD18、CD19、CD20、CD22、CD26、CD30、CD33、CD37、CD38、CD40、CD44、CD56、CD70、CD79、CD105、CD138、EphA、EphB、EGFRvIII、HER2/neu、HER3、メソテリン、cripto、αβインテグリン、αβインテグリン、αβインテグリン、Apo2、およびC242抗原のうち1以上を発現する、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公表番号】特表2011−523628(P2011−523628A)
【公表日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507633(P2011−507633)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/042259
【国際公開番号】WO2009/134976
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(504039155)イミュノジェン・インコーポレーテッド (36)
【Fターム(参考)】