説明

有害有機物質油含有水の処理装置および処理方法

【解決課題】本発明は、装置内の汚染水、処理水等における有害物質の分解処理の進行状況を確認しながら十分に分解処理を行うことを可能とした有害有機物質油含有水の処理装置および処理方法を提供する。
【解決手段】ポリクロロビフェニル(PCB)油を含有する有害物質の汚染水を収容する汚染水タンク2と、この汚染水を供給するための供給配管3と、供給配管3から供給される汚染水を収容し、内部に設けた光触媒4により前記汚染水中に含まれる有害有機物質を分解処理する光触媒反応容器5と、光触媒4に紫外線を照射する紫外線ランプ6と、光触媒反応容器5内で分解処理された処理水を排出するための排出配管7と、排出配管から排出される処理水を回収する回収タンク8と、光触媒反応によるPCBの分解処理の進行状況を確認する濃度検出手段9と、からなる有害有機物質油含有水の処理装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリクロロビフェニル(PCB)油を含有する有害物質の汚染水を光触媒反応により分解処理する有害有機物質油含有水の処理装置および処理方法に関し、特に、有害有機物質の分解処理の進行状況を確認しながら処理することができる処理装置および処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国内保管PCBはPCB特別措置法により2017年度までに全て処理することになった。このため現在廃棄物処理法により18以上のPCB処理法が認可されている。また全国5箇所にPCB広域処理施設が建設されつつあり、一部は稼動を始めている。
【0003】
そして、このようなPCB油を含有する汚染水の処理について、種々の方法が検討され、紫外線照射による光触媒を用いた分解方法が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、PCBに汚染された油や容器は、上記した施設に運び込んで処理されることになるが、建物の地下に据え付けられている、巨大すぎて移送が困難なトランスなど特殊なものについては現地からの油回収方法などは未制定で、有効な処理方法が確立していない状態である。少なくともそのような汚染容器については、現場で油を安全に回収し、容器汚染度をなるべく下げる程度の洗浄を行う必要があるが、PCB処理施設で一般的に行なわれているような洗浄方法は溶剤を用いているため、取扱いの制限が多い。特にビルの地下などに埋め殺されているPCBトランスの現地洗浄を溶剤を用いて行うことについては、非常に困難であることが予測できる。そのため安全な水系の溶剤を用いて汚染レベルを低減させる手法が求められている。
【0005】
また、上記したような光触媒を用いた分解方法において、PCB油の分解処理を安全に行うためには、その分解処理によるPCB濃度を廃PCBの排出基準以下となるまで十分に低減しなければならず、分解処理が十分に行われたか否かを常に確認しながら行わなければならない。
【0006】
そこで、本発明は、これら課題を解決するため、装置内の汚染水、処理水等における有害有機物質の分解処理の進行状況を確認しながら十分に分解処理を行うことを可能とした有害有機物質油含有水の処理装置および処理方法を提供することを目的とし、さらに有害有機物質を現場で処理することができる処理装置および処理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の有害有機物質油含有水の処理装置は、ポリクロロビフェニル(PCB)油を含有する有害物質の汚染水を収容する汚染水タンクと、汚染水を供給するための供給配管と、供給配管から供給される汚染水を収容し、内部に設けたアナタース型が主成分の光触媒により汚染水を分解処理する光触媒反応容器と、光触媒に紫外線を照射する紫外線ランプと、光触媒反応容器内で分解処理された処理水を排出するための排出配管と、排出配管から排出される処理水を回収する回収タンクと、を有する有害有機物質油含有水の処理装置であって、光触媒反応による有害有機物質の分解処理の進行状況を確認するために、処理水中のポリクロロビフェニルの濃度をモニタする濃度検出手段および/または紫外線ランプから照射され、処理水を透過した紫外線量をモニタする紫外線量検出手段を有することを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の有害物質含有水の処理方法は、ポリクロロビフェニル(PCB)油を含有する有害物質の汚染水を、汚染水タンクから供給配管を経由させ、内部にアナタース型が主成分の光触媒を設けた光触媒反応容器に供給する汚染水供給工程と、汚染水供給工程により供給された汚染水を、光触媒に紫外線ランプを照射して汚染水中の有害有機物質を分解させる有害有機物質分解工程と、有害有機物質分解工程により得られた処理水を排出配管を経由して回収タンクへ回収する回収工程と、を有する有害有機物質油含有水の処理方法において、光触媒反応による有害有機物質の分解処理の進行状況を確認するために、処理水中のポリクロロビフェニルの濃度をモニタする濃度検出工程および/または紫外線ランプから照射され、処理水を透過した紫外線量をモニタする紫外線量検出工程を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の有害有機物質油含有水の処理装置および処理方法によれば、トランス等のPCB油を含有する有害物質の汚染水を危険性の高い溶剤ではなく安全性の高い水系洗浄液を用いて洗浄し、その有害物質の毒性を十分に低減させたことを確認して処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の有害有機物質油含有水の処理装置および処理方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
(第1の実施の形態)
まず、第1の実施形態に係る有害有機物質油含有水の処理装置および処理方法について、図1を参照しながら説明する。図1は、有害有機物質油含有水の処理装置の概略構成図である。
【0012】
この有害有機物質油含有水の処理装置1は、ポリクロロビフェニル(PCB)油を含有する有害有機物質の汚染水を収容する汚染水タンク2と、この汚染水を供給するための供給配管3と、供給配管3から供給される汚染水を収容し、内部に設けた光触媒4により汚染水中に含まれる有害有機物質を分解処理する光触媒反応容器5と、光触媒4に紫外線を照射する紫外線ランプ6と、光触媒反応容器5内で分解処理された処理水を排出するための排出配管7と、排出配管から排出される処理水を回収する回収タンク8と、光触媒反応によるPCBの分解処理の進行状況を確認する濃度検出手段9と、から構成されるものである。
【0013】
ここで、汚染水タンク2は、処理対象であるPCB油を含有する有害有機物質の汚染水を収容するものである。ここで収容される汚染水は、PCBを含む廃トランス油やPCB廃液等のPCB油を水系の溶剤と混合したものであり、水系の溶剤としては、例えば、一般的な水である水道水、純水、超純水や、酸またはアルカリが溶解したイオン水、電解水、界面活性剤を溶解した水等が挙げられ、また、複素環式化合物、アミン化合物、アルコール系化合物、ケトン系化合物及び脂環式化合物等の有機化合物からなる水素供与体等を用いることもできる。
【0014】
光触媒反応を効率的に進行させるためには、水素供与体とアルカリが存在する条件下で反応を行うことが好ましく、アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、水酸化カルシウム等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0015】
なお、このとき分解処理に供する汚染水としては、そのPCB濃度が100〜100000ppm程度とすればよく、100ppm以下の低濃度としてもよい。また、アルカリの濃度が溶剤及びアルカリの合計量中において0.1〜50質量%であることが好ましい。
【0016】
供給配管3は、汚染水を汚染水タンク2から光触媒反応容器5へと供給するためのものであり、この配管を通して汚染水を送液するには、液体を移送するための公知の手法、例えばポンプ等、を用いて行えばよい。
【0017】
光触媒4は、PCB等の有害有機物質を酸化分解させる光触媒反応を行わせることが可能な光触媒活性を有する金属酸化物が挙げられ、その種類は特に限定されるものではない。このような光触媒4としては、アナタース型(アナタース型二酸化チタン)が主成分のものが挙げられ、その他の成分として、例えば、ルチル型二酸化チタン、ブルッカイト型二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化鉛、酸化第二鉄等を含んでいても良い。このときアナタース型二酸化チタンが光触媒中に50質量%以上含んでいることが好ましい。これらの複数種を適宜混合して用いてもよい。また、この光触媒4は、粉末状、塊状、粒状、平板状等の様々な形態のものを用いることができる。
【0018】
光触媒反応容器5は、供給配管3より供給された汚染水中のPCB等の有害有機物質を内部に設けた光触媒4の作用により酸化分解反応による分解処理を行う場であり、この光触媒反応を十分に行うことができるように汚染水を収容することができるものである。反応を効率よく行うためには、この光触媒反応容器5中に攪拌手段を設けて容器内の汚染水と光触媒との接触を効果的に行うようにすることが好ましい。この容器は、汚染水を安全に収容することができるものであればよく、例えば、耐薬品性の鋼材やステンレス等で形成されるものである。
【0019】
また、光触媒反応容器5中の光触媒4は、その容器内壁面に層状に敷きつめたり、光触媒を担持させた板状体を容器内部に配置して汚染水と光触媒4が接触できるようになっていればよい。
【0020】
紫外線ランプ6は、光触媒4に紫外光を照射することにより光触媒反応を進行させるものであり、このとき390nm以下の紫外光を照射するようにすればよい。この紫外線ランプ6は、光触媒反応を生じさせることができれば1つでもまたは複数個を設けてもよく、複数個設ける場合には、それぞれ異なる波長を照射できるようにしておいてもよい。
【0021】
排出配管7は、光触媒反応容器5で処理された処理水を排出し、回収タンク8へと移送するものであり、供給配管3と同様に、処理水を送液するには、ポンプを用いて行えばよい。
【0022】
回収タンク8は、光触媒反応容器5で汚染水が分解処理された処理水を収容するものであり、ここで回収される処理水は、PCBが十分に分解処理され、そのPCB濃度は排出基準値以下、例えば、ppbレベルまで低下させたものであるため、容易に取り扱いが可能であり、その後の廃棄処理等も容易に行うことができる。
【0023】
濃度検出手段9は、光触媒反応によるPCBの分解処理の進行状況を確認するものであり、ここでは、処理水中のPCB濃度を検出して行うものである。この濃度検出手段9としては、例えば、GC−MS(ガスクロマトグラフ質量分析計)やイオンクロマトグラフィー等の濃度測定装置が挙げられる。
【0024】
また、濃度検出手段9は、PCBの分解処理の進行状況を確認することができれば、配置される場所は特に限定されず、ここでは、光触媒反応容器5内に設けた例を示したが、他に、排出配管7に設けるようにしてもよい。
【0025】
次に、有害有機物質油含有水の処理方法について、上記説明した有害有機物質油含有水の処理装置1を用いた場合を例に説明する。
【0026】
まず、汚染水タンク2に収容された汚染水を、ポンプ等により供給配管3を経由させて光触媒反応容器5に供給する。次に、光触媒反応容器5の内部に配置された光触媒4に紫外線ランプ6から紫外線を照射すると、光触媒反応により汚染水中の有害有機物質であるPCB等が酸化分解されて分解処理が行われる。この分解処理における分解機構は、光触媒へ紫外線が照射されることにより生じたOHラジカルが、有害有機物質であるPCBと酸化分解反応をすることによるものであり、この酸化分解反応により炭酸と塩化物塩、水が生成し、無害化処理されるものである。
【0027】
このように無害化処理された処理水は、光触媒反応容器5から排出配管7を経由して回収タンク8に回収されるが、このとき、濃度検出手段9により光触媒反応容器5内のPCBの濃度をモニタし、PCBの濃度が一定値以下となったときに、分解処理が十分に進行したものと判断して回収操作を行う。すなわち、分解処理の進行状況を確認しながら反応を継続するか、回収するかの判断を行うことができるため、安全かつ確実に有害有機物質を処理することができる。なお、このときのPCB濃度の一定値は、有害有機物質であるPCBの排出基準である0.003ppm以下とすればよく、さらに無害化するためには、それ以下の濃度を一定値として設定してもよい。
【0028】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る有害有機物質油含有水の処理装置および方法について、図2を参照しながら説明する。図2は、有害有機物質油含有水の処理装置の概略構成図である。
【0029】
この有害有機物質油含有水の処理装置11は、ポリクロロビフェニル(PCB)油を含有する有害有機物質の汚染水を収容する汚染水タンク2と、この汚染水を供給するための供給配管3と、供給配管3から供給される汚染水を収容し、内部に設けた光触媒4により汚染水中の有害有機物質を分解処理する光触媒反応容器5と、光触媒4に紫外線を照射する紫外線ランプ6と、光触媒反応容器5内で分解処理された処理水を排出するための排出配管7と、排出配管から排出される処理水を回収する回収タンク8と、光触媒反応による有害有機物質の分解処理の進行状況を確認する濃度検出手段9と、供給配管3と排出配管7とを光触媒反応容器を経由せずにバイパス接続されたバイパス配管12と、から構成されるものである。
【0030】
この実施形態は、第1の実施形態において、バイパス配管12を設け、濃度検出手段9を光触媒反応容器5の内部ではなく、バイパス配管12に設けられている以外は第1の実施形態と同様である。
【0031】
ここでバイパス配管12は、供給配管3と排出配管7とを光触媒反応容器を経由せずにバイパス接続されたものであり、このバイパス配管12には、一旦、光触媒容器5内で処理された汚染水、すなわち処理水を、再度光触媒反応容器5へと循環させるものである。このように光触媒反応容器5内を循環させて分解処理を再度行うようにすれば、汚染水中の有害有機物質の分解反応の進行状況がバイパス配管12に設けられた濃度検出手段9により確認でき、十分に分解処理が行われるまで光触媒反応による分解処理を継続して行うことができる。また、攪拌手段を設けなくても十分に光触媒反応容器5内の汚染水が移動して光触媒4と接触するため反応を効率よく行うことができる。
【0032】
そして、濃度検出手段9における濃度が一定値以下となった場合には、十分にPCBが分解処理されたものであるから、バイパス配管12の流路を閉鎖し、処理水を排出配管7を経由して回収タンク8へ収容すればよい。
【0033】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る有害有機物質油含有水の処理装置および方法について、図3を参照しながら説明する。図3は、有害有機物質油含有水の処理装置の概略構成図である。
【0034】
この有害有機物質油含有水の処理装置21は、ポリクロロビフェニル(PCB)油を含有する有害有機物質の汚染水を収容する汚染水タンク2と、この汚染水を供給するための供給配管3と、供給配管3から供給される汚染水を収容し、内部に設けた光触媒4により汚染水中の有害有機物質を分解処理する光触媒反応容器5と、光触媒4に紫外線を照射する紫外線ランプ6と、光触媒反応容器5内で分解処理された処理水を排出するための排出配管7と、排出配管から排出される処理水を回収する回収タンク8と、光触媒反応による有害有機物質の分解処理の進行状況を確認する濃度検出手段9と、供給配管3と排出配管7とを光触媒反応容器を経由せずにバイパス接続されたバイパス配管12と、汚染水中の有害有機物質油を油層と水層に分離して汚染水中の有害有機物質の濃度を調整する油水分離手段22と、汚染水中の有害有機物質油の濃度を検出する有害有機物質濃度検出手段23と、有害有機物質濃度検出手段23が検出した濃度によって汚染水の濃度を調節して反応条件を制御する濃度制御手段24と、光反応触媒容器5に供給される汚染水に水を供給することができる補給水タンク25と、から構成されるものである。
【0035】
この実施形態は、第2の実施形態において、油水分離手段22、有害有機物質濃度検出手段23、濃度制御手段24及び補給水タンク25が設けられている以外は第2の実施形態と同様である。
【0036】
油水分離手段22は、光触媒反応容器5に供給される汚染水を油層と水層に分離するものであり、汚染水中の有害有機物質濃度を調節するものである。ここで油層には有害有機物質が多量に含まれ、水層には油層が除去されても有害有機物質が全て除去されるわけではなく、微量に溶解しているため、汚染水中の有害有機物質の濃度を光触媒反応に適した範囲に調整することができるものである。これは光触媒反応における反応の負荷を軽減するものであり、汚染水を分解処理に適した有害有機物質濃度とするものである。
【0037】
ここでも用いられる油水分離手段としては、エバポレータ等の単蒸留機構を有する装置、蒸留装置、超音波分離装置、遠心分離装置、比重差分離装置、真空加熱分離装置、膜分離装置、サイクロン分離装置等が挙げられる。
【0038】
また、濃度調整を行うか否かは、汚染水中の有害有機物質油の濃度を検出する有害有機物質濃度検出手段23により汚染水タンク2および/または供給配管3中の汚染水を対象として有害有機物質の濃度を測定して判断するようにすればよい。なお、図3においては有害有機物質濃度検出手段23を2つ設けた例を示しているが、これはいずれか一方のみを設けるようにしてもよい。また、ここで有害有機物質濃度検出手段23としては、例えば、油分濃度計、粒度分布計、全有機炭素分析計等を用いることができる。
【0039】
そして、この有害有機物質濃度検出手段23において検出した濃度により、有害有機物質濃度が一定値以上であった場合には、油水分離手段22により油層と水層に分離させ、水層を光触媒反応容器5に供給する。
【0040】
なお、ここで有害有機物質濃度における一定値とは、それ以上の濃度であった場合に油水分離を行うか否かを判断する基準となる値のことであり、供給される汚染水のPCB濃度が100ppm以上、例えば100〜100000ppm程度の範囲で一定値を設定すればよい。
【0041】
また、この油水分離手段22による汚染水の油水分離を行うか否かは、有害有機物質濃度検出手段23により検出された濃度に基づいて濃度制御手段24が判断して決定するものである。なお、図3においては有害有機物質濃度検出手段23が2つ設けられているがいずれか1つでもよい。ここで濃度制御手段24は、光触媒反応の条件、例えば、汚染水の濃度を制御するものであり、油水分離を行う他に、補給水タンク25から水を供給して汚染水中の有害有機物質濃度を調節するか否かを決定することもできる。なお、油水分離と補給水による汚染水の濃度調整はいずれか1つを用いるようにしてもよい。
【0042】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係る有害有機物質油含有水の処理装置および処理方法について、図4を参照しながら説明する。図4は、有害有機物質油含有水の処理装置の概略構成図である。
【0043】
この有害有機物質油含有水の処理装置31は、ポリクロロビフェニル(PCB)油を含有する有害物質の汚染水を収容する汚染水タンク2と、この汚染水を供給するための供給配管3と、供給配管3から供給される汚染水を収容し、内部に設けた光触媒4により前記汚染水中に含まれる有害有機物質を分解処理する光触媒反応容器5と、光触媒4に紫外線を照射する紫外線ランプ6と、光触媒反応容器5内で分解処理された処理水を排出するための排出配管7と、排出配管から排出される処理水を回収する回収タンク8と、光触媒反応によるPCBの分解処理の進行状況を確認する紫外線量検出手段32と、から構成されるものである。
【0044】
この実施形態は、第1の実施形態において、濃度検出手段9の代わりに紫外線量検出手段32が設けられている以外は第1の実施形態と同様である。
【0045】
この紫外線量検出手段32は、紫外線ランプ6から照射される紫外光の光触媒反応容器5内の汚染水を透過した後の紫外線量を検出するものであり、この紫外線量は紫外線ランプから照射される紫外線量に対して、どの程度の紫外線量となったか否か、すなわち、紫外線の汚染水を透過することによる透過率(減衰率)を見るものである。
【0046】
汚染水中に含まれるPCBは紫外線を吸収する性質を有するため、光触媒反応容器5内でのPCBの分解処理が進行すればするほど、汚染水供給時に比べて紫外線の透過率が向上するようになる。
【0047】
したがって、この汚染水を透過した後の紫外線量を検出することにより、紫外線の透過率を算出することができ、この紫外線量(透過率)が一定値以上となった場合に分解処理が十分に進行したものと判断して、分解処理を終了し、回収タンク8へ処理水を収容するようにすれば良い。
【0048】
ここで用いる紫外線量検出手段は、例えば照度計や分光器を用いることができ、紫外光を受光する部分がファイバー系、レンズ系等であることが検出手段における測定誤差を生じにくくさせることができ好ましい。また、この紫外線量検出手段は、汚染水を透過した紫外線量を検出することができればよく、光触媒反応容器5への入射面や光触媒反応容器5の内部、その他光触媒反応容器からの透過光、反射光または散乱光を検出可能な位置であれば特に限定されるものではない。
【0049】
ここで紫外線ランプ6として、照射する紫外線の波長が異なる複数の紫外線ランプを設け、紫外線量検出手段32では、紫外線ランプが照射するそれぞれの波長(ピーク波長)の紫外線量を個々に検出することができるようにしてもよい。このとき用いられる紫外線ランプは、市販の紫外線ランプとして入手できるものを適宜使用することができ、その代表的なピーク波長としては、例えば、254nm、296nm、313nm等が挙げられる。
【0050】
なお、PCB等の汚染水の紫外線の吸収率は、一般には254nmが高いものであるが、用いる汚染水によりその特性は変わるものである。これはPCBの異性体によっては、他の異性体と異なる波長に吸収のピークがあり、紫外線の吸収率が異なるため、汚染水中のPCB異性体の存在比率に依存して各波長における紫外線の吸収率が決まるからである。
【0051】
そして、上記のように複数の波長を照射できる紫外線ランプを用意し、それぞれの透過率を検出するようにすれば、透過率の高い波長と低い波長を判別することができ、このとき透過率の高い波長の紫外線の照射量を多くするようにして、光触媒への紫外線照射量を確保し、光触媒反応を促進させることができる。
【0052】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態に係る有害有機物質油含有水の処理装置および処理方法について、図5を参照しながら説明する。図5は、有害有機物質油含有水の処理装置の概略構成図である。
【0053】
この有害有機物質油含有水の処理装置41は、ポリクロロビフェニル(PCB)油を含有する有害物質の汚染水を収容する汚染水タンク2と、この汚染水を供給するための供給配管3と、供給配管3から供給される汚染水を収容し、内部に設けた光触媒4により前記汚染水中に含まれる有害有機物質を分解処理する光触媒反応容器5と、光触媒4に紫外線を照射する紫外線ランプ6と、光触媒反応容器5内で分解処理された処理水を排出するための排出配管7と、排出配管から排出される処理水を回収する回収タンク8と、光触媒反応によるPCBの分解処理の進行状況を確認する紫外線量検出手段32と、紫外線量検出手段32により検出された紫外線量に基づいて反応条件の制御を行う反応制御手段42と、供給配管3と排出配管7とを光触媒反応容器を経由せずにバイパス接続されたバイパス配管43と、汚染水タンク2に収容された汚染水の液温を調整する温度調節手段44と、光触媒反応容器5に供給される汚染水に水を供給することができる補給水タンク45と、から構成されるものである。
【0054】
この実施形態は、第4の実施形態において、反応制御手段42、バイパス配管43、温度調節手段44および補給水タンク45が設けられている以外は第4の実施形態と同様である。
【0055】
反応制御手段42は、紫外線量検出手段32により検出された紫外線量に基づいて反応条件の制御を行うものであり、この反応条件の制御は、例えば、汚染水の濃度を調整したり、汚染水の液温を調整したり、汚染水の流量やバイパス配管43からの処理水の流量、紫外線ランプの照射強度、紫外線ランプを複数用いている場合には、その点灯数や特定の波長の紫外線ランプの点灯、照射強度等を適宜調整して光触媒反応を効率よく進行させるようにするものである。なお、流量の調整には、汚染水、処理水の流れを停止させる場合も含まれる。
【0056】
バイパス配管43は、供給配管3と排出配管7とを光触媒反応容器を経由せずにバイパス接続されたものであり、このバイパス配管43には、一旦、光触媒反応容器5内で処理された汚染水、すなわち処理水を、再度光触媒反応容器5へと循環させるものである。このように光触媒反応容器5内を循環させて分解処理を再度行うようにすれば、十分に分解処理が行われるまで光触媒反応による分解処理を継続して行うことができる。また、攪拌手段を設けなくても十分に光触媒反応容器5内の汚染水が移動して光触媒4と接触するため反応を効率よく行うことができる。
【0057】
温度調節手段44は、汚染水の液温を調整するものであり、ヒータ等の加熱手段やクーラー等の冷却手段が挙げられる。光触媒反応を効率よく行うには、汚染水の液温が、60℃以下であることが好ましく、光触媒反応容器内でこの温度になるように温度調節手段44により供給汚染水の温度を適宜調節すればよい。
【0058】
補給水タンク45は、第3の実施形態と同様に水を供給して汚染水中の有害有機物質濃度を調整するものである。
【0059】
このように反応制御手段を設けることにより、検出された紫外線量に基づいて有害有機物質の分解処理条件を適宜調整しながら、最適な処理条件となるようにして効率的に処理を行うようにすることができる。
【0060】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態に係る有害有機物質油含有水の処理装置および処理方法について、図6を参照しながら説明する。図6は、有害有機物質油含有水の処理装置の概略構成図である。
【0061】
この有害有機物質油含有水の処理装置51は、ポリクロロビフェニル(PCB)油を含有する有害物質の汚染水を収容する汚染水タンク2と、この汚染水を供給するための供給配管3と、供給配管3から供給される汚染水を収容し、内部に設けた光触媒4により前記汚染水中に含まれる有害有機物質を分解処理する光触媒反応容器5と、光触媒4に紫外線を照射する紫外線ランプ6と、光触媒反応容器5内で分解処理された処理水を排出するための排出配管7と、排出配管から排出される処理水を回収する回収タンク8と、光触媒反応によるPCBの分解処理の進行状況を確認する紫外線量検出手段32と、汚染水タンク2と回収タンク8とを直接接続し、回収タンク8に収容された処理水を汚染水タンク2へと循環させることができる処理水循環配管52と、汚染水中の有害有機物質油を油層と水層に分離して汚染水中の有害有機物質の濃度を調整する油水分離手段53と、油水分離手段53により分離された油層を回収する油層回収タンク54と、汚染水又は循環された処理水から不純物を除去することができる吸着手段55と、から構成されるものである。
【0062】
この実施形態は、第4の実施形態において、処理水循環配管52、油水分離手段53、油層回収タンク54および吸着手段55が設けられている以外は第4の実施形態と同様である。
【0063】
処理水循環配管52は、汚染水タンク2と回収タンク8とを直接接続し、回収タンク8に収容された処理水を汚染水タンク2へと循環させることができるようになっており、処理水を再度汚染水タンク2を経由して光触媒反応容器5に供給し、光触媒反応に供することができる。
【0064】
油水分離手段53は、光触媒反応容器5に供給される汚染水を油層と水層に分離するものであり、汚染水中の有害有機物質濃度を調節するものである。ここで油層には有害有機物質が多量に含まれ、水層には油層が除去されても有害有機物質が全て除去されるわけではなく、微量に溶解しているため、汚染水中の有害有機物質の濃度を光触媒反応に適した範囲に調整することができるものである。これは光触媒反応における反応の負荷を軽減するものであり、分解処理に適した濃度とするものである。
【0065】
ここでも用いられる油水分離手段としては、エバポレータ等の単蒸留機構を有する装置、蒸留装置、超音波分離装置、遠心分離装置、比重差分離装置、真空加熱分離装置、膜分離装置、サイクロン分離装置等が挙げられる。
【0066】
油層回収タンク54は、油水分離手段53により分離された油層を回収するものであり、これを用いることで分離処理を効率的に行うことができる。
【0067】
吸着手段55は、有害有機物質を吸着する機能を有するものであり、例えば、活性炭、モレキュラーシーブス ゼオライト等が挙げられ、これにより汚染水または処理水に含有する有害有機物質油等の不純物を除去することができ、光触媒反応の負荷を低減させ、処理を効率的に行うことができる。
【0068】
なお、本発明においては、汚染水タンク2としてトランス自体を用いるようにしても良く、例えば、地中に埋設された大型のトランス等はそれを移動させたり、処理することが困難であるため、埋設されたまま配管接続して汚染水の処理を行えば、現地での処理が可能である。このとき、上記説明した第6の実施形態のように処理水を循環させるようにすると、処理水がトランスの内部を洗浄する作用も得られ、さらにこのとき処理水中に含まれることとなった有害有機物質を光触媒反応に供することができるため、トランス内の有害有機物質油の処理が効率的に行うことができる。
【0069】
(実施例)
汚染水として50Lの水中にPCBを2ppm濃度となるように懸濁させたものを用い、図2に示した有害有機物質油含有水の処理装置により、常温、常圧で有害有機物質の分解処理を行いながら処理水を循環させ、PCBの濃度を濃度検出手段によりモニタし、処理水中のPCB濃度が排出基準値である0.003ppm以下(試験時間240分における処理水のPCB濃度は0.002ppm)になったことを確認して回収タンクへ回収した。
【0070】
そのときの試験時間とPCBの濃度変化についての結果を表1に示した。また、紫外線ランプを照射せずに循環させた場合の処理についても参考のため併せて表1に示した(参考例)。この参考例では吸着により濃度の低下が生じており、実施例と参考例との濃度の差分が光触媒による分解処理によるものである。なお、この処理装置に用いた各構成手段は、具体的には次のものである。
【0071】
光触媒:チタニア光触媒(宇部興産株式会社製、商品名:アクアソリューション)
紫外線ランプ:高圧水銀ランプ(ハリソン東芝ライティング株式会社製;出力:2.8kW、ピーク波長:365nm)
濃度検出手段:GC−MS
【0072】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る有害有機物質油含有水の処理装置の概略構成図。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る有害有機物質油含有水の処理装置の概略構成図。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る有害有機物質油含有水の処理装置の概略構成図。
【図4】本発明の第4の実施形態に係る有害有機物質油含有水の処理装置の概略構成図。
【図5】本発明の第5の実施形態に係る有害有機物質油含有水の処理装置の概略構成図。
【図6】本発明の第6の実施形態に係る有害有機物質油含有水の処理装置の概略構成図。
【符号の説明】
【0074】
1…有害有機物質油含有水の処理装置、2…汚染水タンク、3…供給配管、4…光触媒、5…光触媒反応容器、6…紫外線ランプ、7…排出配管、8…回収タンク、9…濃度検出手段、31…有害有機物質油含有水の処理装置、32…紫外線量検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリクロロビフェニル(PCB)油を含有する有害物質の汚染水を収容する汚染水タンクと、前記汚染水を供給するための供給配管と、前記供給配管から供給される汚染水を収容し、内部に設けたアナタース型が主成分の光触媒により前記汚染水を分解処理する光触媒反応容器と、前記光触媒に紫外線を照射する紫外線ランプと、前記光触媒反応容器内で分解処理された処理水を排出するための排出配管と、前記排出配管から排出される処理水を回収する回収タンクと、を有する有害有機物質油含有水の処理装置であって、
前記光触媒反応による有害有機物質の分解処理の進行状況を確認するために、前記処理水中のポリクロロビフェニルの濃度をモニタする濃度検出手段および/または前記紫外線ランプから照射され、前記処理水を透過した紫外線量をモニタする紫外線量検出手段を有することを特徴とする有害有機物質油含有水の処理装置。
【請求項2】
前記供給配管と前記排出配管とを前記光触媒反応容器を経由せずに接続されたバイパス配管を有しており、該バイパス配管は、前記排出配管から前記供給配管へ前記処理水を循環させるものであることを特徴とする請求項1記載の有害有機物質油含有水の処理装置。
【請求項3】
前記濃度検出手段が、前記光触媒反応容器、前記排出配管および前記バイパス配管から選ばれる少なくとも1つに設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の有害有機物質油含有水の処理装置。
【請求項4】
前記紫外線量検出手段が、前記光触媒反応容器への入射面、前記光触媒反応容器の内部および前記光触媒反応容器からの透過光、反射光または散乱光を検出可能な位置から選ばれる少なくとも1つに設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の有害有機物質油含有水の処理装置。
【請求項5】
前記紫外線量検出手段により検出された紫外線量が一定値以下である場合に、前記汚染水の光触媒反応容器への供給速度、前記汚染水の液温、前記汚染水の濃度、前記紫外線ランプの照射強度及び前記紫外線ランプの点灯数から選ばれる少なくとも1つの光触媒反応条件を調節する反応制御手段を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の有害有機物質油含有水の処理装置。
【請求項6】
前記紫外線ランプが、異なる波長を照射できる複数の紫外線ランプからなり、前記紫外線量検出手段が、前記複数の紫外線ランプから照射される複数の波長のそれぞれについて紫外線量を測定することができるものであって、前記反応制御手段が、前記紫外線量検出手段により検出された紫外線のうち、紫外線量の多い波長の紫外線ランプを選択して照射強度を上げることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の有害有機物質油含有水の処理装置。
【請求項7】
前記紫外線量検出手段が、ファイバー系またはレンズ系により検出対象である紫外線を導入して検出を行うことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の有害有機物質油含有水の処理装置。
【請求項8】
前記汚染水タンクから供給される汚染水中の前記有害有機物質の濃度を測定することができる有害有機物質濃度検出手段を有し、前記有害有機物質濃度検出手段により検出された有害有機物質の濃度が一定値以上である場合に、前記汚染水を前記光触媒反応容器に供給する前に、油層と水層に分離することができる油水分離手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の有害有機物質油含有水の処理装置。
【請求項9】
前記油水分離手段が、蒸留装置、超音波分離装置、遠心分離装置、比重差分離装置、真空加熱分離装置、膜分離装置及びサイクロン分離装置から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項8記載の有害有機物質油含有水の処理装置。
【請求項10】
前記油水分離手段により分離した油層を回収する油層回収タンクを有することを特徴とする請求項8または9記載の有害有機物質油含有水の処理装置。
【請求項11】
前記汚染水タンクと前記回収タンクとを直接接続し、前記回収タンクに収容された処理水を前記汚染水タンクへと循環させることができる処理水循環配管で接続されていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項記載の有害有機物質油含有水の処理装置。
【請求項12】
前記回収タンクから循環して光触媒反応容器に到達するまでの配管内に吸着手段を有することを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項記載の有害有機物質油含有水の処理装置。
【請求項13】
前記汚染水タンクとして有害有機物質油に汚染されたトランスをそのまま用いることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項記載の有害有機物質油含有水の処理装置。
【請求項14】
ポリクロロビフェニル(PCB)油を含有する有害物質の汚染水を、汚染水タンクから供給配管を経由させ、内部にアナタース型が主成分の光触媒を設けた光触媒反応容器に供給する汚染水供給工程と、前記汚染水供給工程により供給された汚染水を、前記光触媒に紫外線ランプを照射して汚染水中の有害有機物質を分解させる有害有機物質分解工程と、前記有害有機物質分解工程により得られた処理水を排出配管を経由して回収タンクへ回収する回収工程と、を有する有害有機物質油含有水の処理方法において、
前記光触媒反応による有害有機物質の分解処理の進行状況を確認するために、前記処理水中のポリクロロビフェニルの濃度をモニタする濃度検出工程および/または前記紫外線ランプから照射され、前記処理水を透過した紫外線量をモニタする紫外線量検出工程を有することを特徴とする有害有機物質油含有水の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−246449(P2008−246449A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−94511(P2007−94511)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構「ナノ傾斜構造を有する高強度光触媒繊維によるPOPs排水無害化技術の研究」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】