説明

有底ビア充填用導電性ペースト

【課題】有底ビアホールの口径が小さくなっても、特殊な装置を導入することなく、気泡を脱泡できる有底ビア用導電性ペーストの実現。
【解決手段】導電性粒子と溶剤とを含有し、前記導電性粒子のうち、90質量%以上が略球状であり、かつ、BM型回転粘度計の回転数30rpmにおける粘度が温度23℃で0.1〜50dPa・sであることを特徴とする有底ビア充填用導電性ペースト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有底ビア充填用導電性ペーストに関するものであり、特に、口径が150μm以下の小さな有底ビアホールに好適に充填される有底ビア充填用導電性ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント基板などの回路基板に形成されたビアホールの充填には、導電性ペーストが使用されている。
ところで、近年では、回路基板の高密度化、高集積化などが進むに従って、ビアホールの口径が小さくなる傾向にあり、ビアホールの底に銅箔回路などを有するような非貫通のビアホール(有底ビア)の場合、導電性ペーストを完全に充填することが困難であった。また、導電性ペーストを充填する際には空気などの気泡が導電性ペースト中に混入することが多く、有底ビアの場合は特に気泡を取り除くことが難しかった。導電性ペースト中に気泡が混入したままハンダ付けなどの加熱処理を行うと、気泡が膨張して導電性が低下したり、気泡が破裂して回路基板の破損を招いたりすることがある。
【0003】
そこで、特許文献1、2には、非貫通ビアホールに導電性ペーストを真空雰囲気下で充填する方法が開示されている。
また、特許文献3には、非貫通ビアホールに硬化性導電ペーストをスクリーン印刷し、振動させながら加熱硬化させることにより、ビアホールの底部の空隙に存在する空気やペースト内の気泡を脱泡する方法が開示されている。
さらに、特許文献4には、有底ビア内に進入するようにペーストをプリント基板に付着させた後、該プリント基板を回転させることにより、ペースト内の気泡を遠心力にて放出する方法が開示されている。
【特許文献1】特開平11−298138号公報
【特許文献2】特開2000−183519号公報
【特許文献3】特開2001−274547号公報
【特許文献4】特開2001−267737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2では大掛かりな真空装置、特許文献3では1〜100Hzの振動を発生させる装置、特許文献4ではプリント基板を回転させる装置、といったように特殊な装置を導入する必要があった。
【0005】
本発明は上記事情を鑑みてなされたもので、有底ビアホールの口径が小さくなっても、特殊な装置を導入することなく、気泡を脱泡できる有底ビア用導電性ペーストの実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、導電性ペースト中の導電性粒子として、形状が略球状のものを用いることにより、有底ビアに充填後、導電性粒子が導電性ペースト中で沈降しやすくなり、それに伴い導電性ペースト中に混入した気泡が押し出されて脱泡されることを見出した。また、導電性ペーストの粘度が導電性粒子の沈降に関係していることも見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の有底ビア充填用導電性ペーストは、導電性粒子と溶剤とを含有し、前記導電性粒子のうち、90質量%以上が略球状であり、かつ、BM型回転粘度計の回転数30rpmにおける粘度が温度23℃で0.1〜50dPa・sであることを特徴とする。
ここで、前記導電性粒子100質量部に対して、0.1〜15質量部の酸化膜除去剤を含有することが好ましい。
また、前記導電性粒子の平均粒径が1〜30μmであることが好ましい。
さらに、前記導電性粒子は、250℃以下で少なくとも粒子の一部が熱溶融する低融点金属粒子を、当該導電性粒子100質量%中、50質量%以上含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の有底ビア用導電性ペーストによれば、有底ビアホールの口径が小さくなっても、特殊な装置を導入することなく、気泡を脱泡できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の有底ビア用導電性ペースト(以下、「導電性ペースト」という場合がある。)は、導電性粒子と溶剤とを含有する。
【0010】
本発明に用いられる導電性粒子は、その90質量%以上が略球状の形状をしている。略球状の導電性粒子の割合は、全導電性粒子100質量%中、90質量%以上が好ましく、100質量%がより好ましい。
導電性粒子100質量%のうち、90質量%以上が略球状であることにより、導電性ペーストを有底ビアホール(以下、「有底ビア」という場合がある。)に充填させた際に、導電性ペースト中で導電性粒子が沈降しやすくなり、結果、導電性ペーストに空気などの気泡が混入しても、気泡を押し出して導電性ペースト内から脱泡することができる。
なお、本発明においては、導電性粒子が沈降して有底ビアの底部に集まっても、導電性ペースト本来の効果、すなわち、導通性(導電性)を低下させることなく、気泡を導電性ペースト内から脱泡することができる。
【0011】
本発明において「略球状」とは、導電性粒子の形状がおおよそ球状であり、アスペクト比A(長径/短径)とアスペクト比B(長径/厚み)が、各々1.0〜2.0の範囲であることを意味する。アスペクト比Aとアスペクト比Bは、各々1.0〜1.5の範囲であることがより好ましい。
なお、各アスペクト比は、任意に選出された導電性粒子を電子顕微鏡にて観察することにより、求めることができる。
【0012】
また、導電性粒子は、250℃以下で少なくとも粒子の一部が熱溶融する低融点金属粒子を、全導電性粒子100質量%中、50質量%以上含有することが好ましく、より好ましくは70〜90質量%である。低融点金属粒子を50質量%含有することにより、回路基板などを作製する際の加熱処理が短時間であっても、導電性粒子同士の融着接続性や、導電性粒子と基板の電極金属部との融着接続性が特に向上する。
【0013】
導電性粒子としては、例えば銀粒子、銅粒子、ニッケル粒子、スズ粒子、ビスマス粒子およびこれらの合金を使用できる。特に低融点金属粒子としては、スズ粒子、ビスマス粒子、インジウム粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、250℃以下で少なくとも一部が熱溶融するものが使用される。具体的には、スズ粒子、インジウム粒子、Sn−Ag−Cu合金、Sn−Ag−Cu−Bi−In合金、Sn−Cu合金、Sn−Ag合金、Sn−Ag−Cu−Bi合金、Sn−Ag−Cu−In合金、Sn−Ag−Cu−Sb合金、Sn−Ag−Bi−In合金、Sn−Bi合金、Sn−Bi−In合金、Sn−Zn−Bi合金、Sn−Zn合金、Sn−Mn合金、Sn−Bi−Ag合金などが挙げられる。これらの導電性粒子は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
導電性粒子の平均粒径は、1〜30μmが好ましく、1〜20μmがより好ましい。平均粒径の下限値が上記値より小さくなると、比表面積が小さくなり、表面が酸化されやすくなる。一方、平均粒径の上限値が上記値より大きくなると、これを含む導電性ペーストを有底ビアに充填した際、導電性粒子間の間隙が生じやすくなり、安定した導電性が発現しにくくなる。
【0015】
導電性粒子の含有量は、導電性ペースト100質量%中70〜95質量%が好ましく、80〜92質量%がより好ましい。導電性粒子の含有量の下限値が上記値より小さくなると、導電性粒子の接続が悪くなり、導電性が得られにくくなる。一方、含有量の上限値が上記値より大きくなると、有底ビアへの充填性が低下する傾向にある。
【0016】
溶剤としては、沸点が150〜250℃のものが好ましい。沸点が150℃未満であると、導電性ペーストが乾燥しやすくなり、印刷作業性が低下する傾向にある。一方、沸点が250℃を超えると、導電性ペーストの乾燥性が低下する傾向にある。
このような溶剤としては、例えば、ターピネオール、n−オクチルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノブチルアルコール、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、イソホロンなどが挙げられる。中でも、ターピネオールが好ましい。これらの溶剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
溶剤の含有量は、導電性ペースト100質量%中5〜25質量%が好ましい。溶剤の含有量の下限値が上記値より小さくなると、濡れ性が低下して有底ビアの底部に空隙が残る場合がある。一方、含有量の上限値が上記値より大きくなると、回路基板などを作製する際の予備乾燥処理に時間がかかりやすくなる。
【0017】
本発明の導電性ペーストは、必要に応じてバインダー樹脂を含有してもよい。バインダー樹脂を含有することにより、印刷作業性が向上する。
バインダー樹脂としては、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。中でもアクリル樹脂、エポキシ樹脂が好ましい。これらのバインダー樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
導電性ペーストにおける導電性粒子とバインダー樹脂との質量比は、90:10〜100:0が好ましく、95:5〜100:0がより好ましい。導電性粒子の割合が上記範囲以内であれば、導電性粒子同士の融着接続性や、導電性粒子と基板の電極金属部との融着接続性がより向上し、導電性や導電接続性がより高まる。
【0019】
導電性ペーストは、以上説明した導電性粒子と溶剤と、必要に応じてバインダー樹脂とをプラネタリーミキサーやロールミルなどで混合することにより得られるが、ここで導電性ペーストには、さらに酸化膜除去剤を配合することが好ましい。酸化膜除去剤を配合することによって、導電性粒子の表面酸化膜を除去でき、その融着性をより向上させることができる。
酸化膜除去剤としては、一般的に市販されているフラックス、表面処理剤のほか、アジピン酸、ステアリン酸などのカルボン酸類、ビニルエーテルなどを用いてカルボン酸の活性をブロックしたブロックカルボン酸、ステアリルアミンなどのアミン類、ホウ素系化合物などを用いてアミンの活性をブロックしたブロックアミンなどを使用できる。中でも、アジピン酸が好ましい。
酸化膜除去剤の配合量は、導電性粒子100質量部に対して、0.1〜15質量部であることが好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。酸化膜除去剤の配合量の下限値が上記値より小さくなると、十分な配合効果が得られにくくなり、導電性や導電接続性が低下しやすくなる。一方、配合量の上限値が上記値より大きくなると、回路基板などに用いた際に、マイグレーションが発生して絶縁不良が起こりやすくなる。
【0020】
酸化膜除去剤の配合方法としては特に制限はなく、上述したように、導電性粒子と溶剤と、必要に応じてバインダー樹脂とをプラネタリーミキサーやロールミルなどで混合してペースト化する際に直接添加する以外に、導電性粒子をあらかじめ酸化膜除去剤で被覆しておいてもよい。
被覆には、粉体同士を混合したり、粉体と液体とを混合、分散したりする際に使用する装置を適宜使用でき、その機種などに制限はない。その際、酸化膜除去剤を直接導電性粒子に接触させてもよいが、酸化膜除去剤をあらかじめ適当な溶媒に溶解または分散させ、これに導電性粒子を投入し、スラリー状として処理してもよい。このような方法によれば、均一かつ確実に導電性粒子を酸化膜除去剤で被覆できる。その後、必要に応じて真空乾燥機などによる乾燥工程を行ってもよい。
また、導電性ペーストには、さらに分散剤、沈降防止剤など、他の成分が必要に応じて含まれていてもよい。
【0021】
このようにして得られる導電性ペーストは、BM型回転粘度計の回転数30rpmにおける粘度が温度23℃で0.1〜50dPa・sであり、好ましくは 0.5〜30dPa・sであり、より好ましくは 1〜20dPa・sである。粘度の下限値が上記値より小さくなると、溶剤の含有量が増え、回路基板などを作製する際の予備乾燥処理に時間がかかりやすくなる。一方、粘度の上限値が上記値より大きくなると、有底ビアに充填した導電性ペースト中の導電性粒子が沈降しにくくなり、結果、気泡を導電性ペーストから脱泡しにくくなる。また、有底ビアに充填しにくくもなる。
【0022】
このような本発明の導電性ペーストは、種々の用途に使用できるが、特に、回路基板の作製時における有底ビアホールへの使用に適している。
回路基板の作製方法としては、例えば図1に示すように、両面銅張り基板の片方の銅箔をエッチングして、基板本体11の片面11a側に銅箔パターン12をパターン形成させる(図1(a))。
次いで、基板本体11の他方の面11b側の銅箔13上にフィルムまたは層状の絶縁膜14を積層する(図1(b))。
その後、絶縁膜14側から例えば炭酸ガスレーザーを照射して、絶縁膜14と銅箔13と基板本体11に、銅箔パターン12を底面とするビアホール15を形成させる(図1(c))。
次いで、本発明の導電性ペースト16をビアホール15内に充填する(図1(d))。充填方法には特に制限されないが、例えばスクリーン印刷にて充填する方法、ディスペンサを用いる方法などが挙げられる。中でもスクリーン印刷が好ましい。充填後、予備乾燥処理を施して溶剤を揮発させ、さらに加熱処理を施して導電性ペースト中の導電性粒子を熱融着させる。予備乾燥処理の方法には制限はないが、例えばボックス炉やIR炉などの過熱炉を用いて予備乾燥処理するのが好ましい。予備乾燥処理の温度は30〜150℃が好ましい。また、加熱処理の方法にも制限はないが、例えばホットプレート、加熱炉などを用いて加熱するのが好ましい。また、加熱処理の温度は150〜260℃が好ましい。
その後、絶縁膜14を研磨して取り除き、銅箔13の表面を平坦化する(図1(e))。
そして、電解メッキにて銅箔13上に金属メッキ17を施す(図1(f))。
最後に、銅箔13と金属メッキ17とをエッチングして、回路パターン18をパターン形成させ、回路基板10を作製する(図1(g))。
なお、両面銅張り基板は、多層基板化した銅張り基板であってもよい。
【0023】
このように、本発明の導電性ペーストは、該導電性ペースト中に含まれる導電性粒子のうちの90質量%以上が略球状であり、かつ、導電性ペーストの粘度が0.1〜50dPa・sである。これにより、導電性ペーストを有底ビアに充填しても、特殊な装置を導入することなく、気泡を脱泡できる。
また、近年では回路基板の高密度化、高集積化などが進むに従って、ビアホールの口径が小さくなる傾向にあるが、本発明によれば導電性ペーストを有底ビアに完全に充填し、かつ、導電性ペースト中の気泡を脱泡できる。特に、有底ビアの口径が150μm以下であっても、本発明の効果を発揮できる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、例中「部」とは「質量部」を、「%」とは「質量%」を示す。
[試験例1〜15]
<導電性ペーストの製造>
導電性粒子と溶剤とバインダー樹脂と酸化膜除去剤とをプラネタリーミキサーで混合することにより、導電性ペーストを製造した。
この際、各導電性ペーストにおける導電性粒子とバインダー樹脂との質量比を99:1とした。また、酸化膜除去剤は、導電性粒子100部に対して3部使用した。なお、溶剤の配合量によって導電性ペーストの粘度を調整した。
溶剤としてはターピネオール(日本テルペン化学(株)製)を使用し、バインダー樹脂としてはアクリル樹脂(日本シイベルヘグナー社製、「アクチライン150」、分子量5000)を使用し、酸化膜除去剤としてはアジピン酸を使用した。
また、各試験例の導電性粒子の構成および質量比は表1に示すようにした。また、導電性粒子100%中の略球状の粒子の割合を表1に示した。
【0025】
<回路基板の作製>
両面銅張り基板(松下電工(株)製、「R−1705」)の片方の銅箔上に、エッチングレジストをスクリーン印刷し、これを硬化させ、エッチングし、エッチングレジストを除去することにより、基板本体11の片面11a側に銅箔パターン12をパターン形成させた(図1(a))。
次いで、基板本体11の他方の面11b側の銅箔13上に、絶縁膜として接着層付きのポリイミドフィルム(ニッカン工業(株)製、「ニカフレックスCISV」)14を積層し(図1(b))、炭酸ガスレーザーを照射して、図1(c)に示すように、ポリイミドフィルム14と銅箔13と基板本体11に、銅箔パターン12を底面とするビアホール15(口径:100μm)を形成させた。
次いで、図1(d)に示すように、先に得られた導電性ペースト16をスクリーン印刷にてビアホール15に充填させた。その後、予備乾燥処理(80℃×30分)を行い、溶剤をある程度揮発させてから、240℃のホットプレート上で1分間加熱処理し、導電性ペースト中の導電性粒子を熱融着させた。
その後、ポリイミドフィルム14を研磨して取り除き、銅箔13の表面を平坦化させ(図1(e))、電解メッキにて銅箔13上に銅メッキ17を施した(図1(f))。
最後に、銅箔13と銅メッキ17とをエッチングして、図1(g)に示すような回路パターン18をパターン形成させ、回路基板10を作製した。
【0026】
<各種測定および評価>
(粘度測定)
各試験例で得られた導電性ペーストの粘度について、BM型回転粘度計(東機産業(株)製)を用いて測定した。なお、BM型回転粘度計の回転数を30rpm、測定温度を23℃とした。結果を表1に示す。
【0027】
(充填性の評価)
各試験例で得られた回路基板の断面を、日本電子(株)製の走査型電子顕微鏡(SEM、500倍)にて目視観察し、有底ビアホールの内部に気泡などの痕跡が確認されず、導電性ペーストが完全に充填されているかについて、以下のように評価し、◎と○を合格とした。結果を表1に示す。
◎:まったく気泡の痕跡が確認されない。
○:ほとんど気泡の痕跡が確認されない。
×:著しく気泡の痕跡が確認された。
【0028】
(融着接続性の測定)
各試験例で得られた回路基板の断面を、日本電子(株)製の走査型電子顕微鏡(SEM、2000倍)にて目視観察し、導電性粒子間、および導電性粒子と銅箔との融着接続の状態について、以下のように評価し、◎と○を合格とした。結果を表1に示す。
◎:極めて良好。
○:良好。
×:不良。
【0029】
各試験例で用いた導電性粒子を構成する各粒子の詳細について、以下に示す。
導電性粒子1:三井金属鉱業(株)製、Sn(96.5%)−Ag(3.0%)−Cu(0.5%)合金粒子、DSCピーク温度(以下、「DSC」という。):219℃、略球状、平均粒径20μm。
導電性粒子2:日本アトマイズ加工(株)製、銀粉(商品名:「HXR−Ag」)、DSC:962℃、略球状、平均粒径5μm。
導電性粒子3:FERRO社製、銀粉(商品名:「SF102」)、DSC:962℃、フレーク状、平均粒径8μm。
導電性粒子4:三井金属鉱業(株)製、Sn(42%)−Bi(58%)合金粒子、DSC:141℃、略球状、平均粒径20μm。
導電性粒子5:三井金属鉱業(株)製、Sn粒子、DSC:232℃、略球状、平均粒径20μm。
導電性粒子6:三井金属鉱業(株)製、Sn(93.0%)−Ag(3.5%)−Bi(0.5%)−In(3.0%)合金粒子、DSC:212℃、略球状、平均粒径20〜30μm。
導電性粒子7:三井金属鉱業(株)製、還元銅粉(商品名:「Cu1400Y」)、DSC:1083℃、略球状、平均粒径5μm。
導電性粒子8:日興リカ(株)製、ニッケルパウダー(商品名:「CNS−20ミクロン」)、DSC:1450℃、略球状、平均粒径20μm。
なお、各導電性粒子の平均粒径は、レーザー回折散乱法(マイクロトラック法)により測定された粒子径の平均値をその平均粒径とした。
【0030】
【表1】

【0031】
表1より明らかなように、導電性粒子として形状が略球状のものを90質量%以上含み、かつ、粘度が0.1〜50dPa・sの導電性ペーストを用いて回路基板を作製した各試験例(1〜3、6〜7、9〜15)では、加熱処理し導電性粒子を熱融着させる前の段階で、導電性ペーストから気泡を脱泡することができたため、導電性ペーストの充填性が良好であった。また、融着接続性にも優れていた。特に、粘度が10dPa・sであり、略球状の導電性粒子のみを用いた導電性ペーストを使用した場合(試験例1、6、7、10〜15)は、充填性が著しく良好であった。
一方、導電性粒子として形状が略球状のものを80質量%含む導電性ペーストを用いた場合(試験例8)や、粘度が100dPa・s以上の導電性ペーストを用いた場合(試験例4〜5)では、融着接続性は良好であったが、導電性ペーストの充填性は劣っていた。これは、有底ビアに導電性ペーストを充填した後、導電性粒子の沈降が不十分であったため、気泡が導電性ペーストから脱泡しにくかったことによるものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】回路基板の作製方法を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0033】
10:回路基板、11:基板本体、11a:片面、11b:他方の面、12:銅箔パターン、13:銅箔、14:絶縁膜、15:ビアホール、16:導電性ペースト、17:金属メッキ、18:回路パターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粒子と溶剤とを含有し、
前記導電性粒子のうち、90質量%以上が略球状であり、かつ、BM型回転粘度計の回転数30rpmにおける粘度が温度23℃で0.1〜50dPa・sであることを特徴とする有底ビア充填用導電性ペースト。
【請求項2】
前記導電性粒子100質量部に対して、0.1〜15質量部の酸化膜除去剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の有底ビア充填用導電性ペースト。
【請求項3】
前記導電性粒子の平均粒径が1〜30μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の有底ビア充填用導電性ペースト。
【請求項4】
前記導電性粒子は、250℃以下で少なくとも粒子の一部が熱溶融する低融点金属粒子を、当該導電性粒子100質量%中、50質量%以上含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有底ビア充填用導電性ペースト。

【図1】
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【公開番号】特開2008−288368(P2008−288368A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131563(P2007−131563)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(000224123)藤倉化成株式会社 (124)
【Fターム(参考)】