有機エレクトロルミネッセンス素子及びそれを用いた照明装置
【課題】光によるメラトニン分泌抑制を防止すると共にエネルギー効率の高い有機エレクトロルミネッセンス素子及びそれを用いた照明装置を提供する。
【解決手段】有機エレクトロルミネッセンス素子1は、発光色が青色である発光要素2と、発光色が赤色及び緑色である発光要素2’とを有し、青色の発光要素2に、波長480nm〜505nmの光を30%以下に遮るフィルタ3を設け、赤色及び緑色の発光要素2’からの波長480nm〜505nmの光は、遮光することなく出射する。これにより、青色の発光要素2からのメラトニン分泌抑制する波長域の光の強度が低くなり、赤色及び緑色の発光要素2’からの光は、フィルタ3によるエネルギー損失が生じない。
【解決手段】有機エレクトロルミネッセンス素子1は、発光色が青色である発光要素2と、発光色が赤色及び緑色である発光要素2’とを有し、青色の発光要素2に、波長480nm〜505nmの光を30%以下に遮るフィルタ3を設け、赤色及び緑色の発光要素2’からの波長480nm〜505nmの光は、遮光することなく出射する。これにより、青色の発光要素2からのメラトニン分泌抑制する波長域の光の強度が低くなり、赤色及び緑色の発光要素2’からの光は、フィルタ3によるエネルギー損失が生じない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子及びそれを用いた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、照明用光源として有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子という)がある。図10に示されるように、有機EL素子100は、基板104上に陽極121、ホール輸送層122、有機発光層123、電子輸送層124、陰極125がこの順に積層されて形成される。電子輸送層124は、有機発光層123に接する部分に、電子輸送層124を構成する主成分と、有機発光層123のホスト材料と、有機半導体材料とを混合した混合層124aが形成される。この有機EL素子100において、有機発光層123内の発光が素子外に出射される。なお、有機EL素子100は、厚さ方向に拡大して図示している。
【0003】
図11は、有機発光層123に含有される発光材料としての発光性ドーパントの相対分光分布を示し、横軸は波長、縦軸は発光分光の相対強度である。発光性ドーパントであるTBPとsty−NPDは青色系、C545TとIr(ppy)3は緑色系、rubreneとPQ2Iracacは赤色系の発光材料である。有機EL素子100は、これらの発光材料が発する赤色、緑色、青色の光を混色することによって白色光を出射する。この白色光中には、TBP等の青色系発光材料が発する波長410nm〜505nmの波長成分が多く含まれている。
【0004】
人は、このような短波長成分が多く含まれた光を夜間の入眠前の時間帯に受光すると、メラトニンというホルモンの分泌が抑制され、睡眠が阻害される。このため、有機EL素子100を光源に用いた照明装置は、入眠前の時間帯の使用に適していない。照明装置において、照明光中の波長410nm〜505nmの波長成分を全てカットすると、光によるメラトニン分泌抑制が防止されるが、照明光の青色味が失われて演色性が低くなる。
【0005】
演色性への影響を小さくし、光によるメラトニン分泌抑制の防止を図った照明装置として、波長480nm〜505nmの光を30%以下に遮るフィルタを有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このフィルタは、フィルタ材料として橙色系蛍光着色材料が用いられており、波長505nmより長波長の緑色の光も部分的に遮ってしまい、さらに長波長の赤色の光も完全には透過しない。このため、このようなフィルタを有機EL素子の発光面に設けると、光によるメラトニン分泌抑制が防止されるが、照明のエネルギー効率が低くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−259079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題を解決するものであり、光によるメラトニン分泌抑制を防止すると共にエネルギー効率の高い有機エレクトロルミネッセンス素子及びそれを用いた照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光色が赤色、緑色、青色である各発光要素を有するものであって、青色の発光要素に、波長480nm〜505nmの光を30%以下に遮るフィルタを設け、赤色及び緑色の発光要素からの波長480nm〜505nmの光は、遮光することなく出射することを特徴とする。
【0009】
この有機エレクトロルミネッセンス素子において、赤色、緑色、青色の発光要素は、同一平面内に分散配置されていることが好ましい。
【0010】
この有機エレクトロルミネッセンス素子において、赤色、緑色、青色の発光要素は、互いに積層されており、青色の発光要素の上に赤色及び緑色の発光要素が配置されていることが好ましい。
【0011】
本発明の照明装置は、この有機エレクトロルミネッセンス素子を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子及びそれを用いた照明装置によれば、青色の発光要素からの波長480nm〜505nmの光の強度がフィルタによって低くなるので、光によるメラトニン分泌抑制が防止され、睡眠の阻害が緩和される。また、赤色及び緑色の発光要素からの光は、フィルタによって遮光されないので、エネルギー効率が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の平面図。
【図2】(a)は同素子における青色の発光要素の断面図、(b)は赤色及び緑色の発光要素の断面図。
【図3】同素子における各発光要素の発光の相対分光分布を示す図。
【図4】同発光要素の発光を混ぜたときの白色光の分光分布を示す図。
【図5】同素子におけるフィルタの分光分布を示す図。
【図6】同素子における青色の発光要素にフィルタを設けたときの各発光要素の相対分光分布を示す図。
【図7】同素子から出射される光の分光分布を示す図。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の断面図。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る照明装置の斜視図。
【図10】従来の有機エレクトロルミネッセンス素子の断面図。
【図11】同素子に用いられる発光材料の相対分光分布を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る有機EL素子を図1乃至図7を参照して説明する。図1に示されるように、有機EL素子1は、発光色が青色である発光要素2と、発光色が赤色及び緑色である発光要素2’とを有する。本実施形態では、緑色の発光要素と赤色の発光要素が一体に構成されるが、それらを別々に構成しても構わない。有機EL素子1は、青色の発光要素2に、波長480nm〜505nmの光を30%以下に遮るフィルタ3を設け、赤色及び緑色の発光要素2’からの波長480nm〜505nmの光は、遮光することなく出射する。
【0015】
青色の発光要素2、赤色及び緑色の発光要素2’は、同一平面内に分散配置されており、互いに重ならないように基板4上に並べて配置される。
【0016】
図2(a)に示されるように、発光要素2は、陽極(アノード)となる第1電極21と、陰極(カソード)となる第2電極25との間に有機発光層23を有する。発光要素2は、第1電極21と有機発光層23の間にホール輸送層22を有し、有機発光層23と第2電極25の間に電子輸送層24を有する。電子輸送層24は、有機発光層23に接する少なくとも一部分に混合層24aが形成される。発光要素2は、基板4の表面に成層される。
【0017】
本実施形態の発光要素2は、第1電極21を光反射性の電極とし、第2電極25を光透過性の電極とし、フィルタ3が第2電極25を覆うように設けられる。有機発光層23内の青色の発光は、フィルタ3を通して発光要素2外に出射される。基板4を透明基板とし、第1電極21を光透過性の電極とし、第2電極25を光反射性の電極とし、フィルタ3を基板4上に設けてもよい。また、第1電極21とホール輸送層22の間にホール注入層を形成してもよく、電子輸送層24と第2電極25の間に電子注入層を形成してもよい。
【0018】
第1電極21の材料は、アルミニウム等の金属である。有機発光層23は、有機材料であるホスト材料にドーパントがドープされて形成される。ドーパントは、青色系発光材料としてのTBP系材料である。第2電極25の材料は、ITO(酸化インジウムスズ)等の透明導電膜材料である。ホール輸送層22と電子輸送層24には、それぞれ適宜の有機材料が用いられる。
【0019】
フィルタ3の材料は、透光性樹脂と橙色系蛍光着色材料とを含む樹脂組成物である。透光性樹脂は、例えばアクリル系樹脂であり、ポリスチレン樹脂、塩化ビニール樹脂、ポリカーボネート樹脂、非晶性ポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアリレート樹脂等であってもよい。橙色系蛍光着色材料は、例えばペリレン系化合物である。フィルタ3に波長480nm〜505nmの光を30%以下に遮るフィルタ特性を持たせるため、配合割合は、透光性樹脂の100重量部に対し、橙色系蛍光着色材料が略0.005〜0.2重量部とされる。
【0020】
混合層24aは、電子輸送層24を構成する主成分と、有機発光層23のホスト材料と、有機半導体材料とを混合して形成され、発光要素2を長寿命化及び高効率化するものである。有機半導体材料は、有機発光層23のホスト材料とは異なる材料であり、電子輸送層24を構成する主成分のイオン化ポテンシャル以上、又は有機発光層23のホスト材料のイオン化ポテンシャル以上のイオン化ポテンシャルを有するものである。電子輸送層24を構成する主成分は、電子輸送層24中の含有比率が25質量%を超える電子輸送材料であり、25質量%を超える電子輸送材料が複数種ある場合には、それらのいずれの材料であってもよい。
【0021】
図2(b)に示されるように、赤色及び緑色の発光要素2’は、青色の発光要素2と同様に各層が積層され、有機発光層23’に含有されるドーパントが、青色の発光要素2のものとは異なる。有機発光層23’のドーパントは、赤色系発光材料であるPQ2Iracac系材料と、緑色系発光材料であるIr(ppy)3系材料である。有機発光層23’のホスト材料を有機発光層23のホスト材料と異なる材料としてもよい。フィルタ3は、発光要素2’には設けられない。このため、有機発光層23’内の発光は、フィルタ3に遮光されずに発光要素2’外に出射される。
【0022】
青色の発光要素2と赤色及び緑色の発光要素2’の発光の相対分光分布を発光材料ごとに図3に示す。横軸は波長(380nm〜780nm)、縦軸は相対強度(0〜1)である。この相対分光分布の測定において、フィルタ3は設けられていない。青色の発光要素2のTBP系材料の発光には、480nm〜505nmの波長成分が多く含まれている。赤色及び緑色の発光要素2’のIr(ppy)3系材料とPQ2Iracac系材料の発光には、505nm以下の短波長の成分がほとんど含まれていない。
【0023】
発光要素2の青色と発光要素2’の赤色及び緑色の3色の発光を混ぜたときの白色光(色温度2500K)の分光分布を図4に示す。この分光分布の測定においても、フィルタ3は設けられていない。3色の発光を混ぜたときの白色光には、480nm〜505nmの波長成分が含まれる。
【0024】
フィルタ3の分光分布を図5に示す。横軸は波長、縦軸は透過率である。フィルタ3は、波長480nm〜505nmにおける透過率が低く、この波長域の光を30%以下に遮る。また、この波長域よりも長波長である波長505nm〜530nmにおける透過率も低くなっている。このような波長505nm〜530nmの光は、発光要素2’の緑色系発光材料の発光に多く含まれている(図3参照)。
【0025】
青色の発光要素2にフィルタ3を設けた場合の、各発光要素2、2’の相対分光分布を発光材料ごとに図6に示す。発光要素2のTBP系材料の発光は、フィルタ3を設けたことによって、波長480nm〜505nmの光の強度が低くなっている。発光要素2’のIr(ppy)3系材料とPQ2Iracac系材料の発光は、フィルタ3によって遮光されないので、フィルタ3によるエネルギー損失が生じない。
【0026】
青色の発光要素2にフィルタ3を設けた場合における、発光要素2、2’の3色の発光を混ぜたときの白色光(色温度2500K)の分光分布、すなわち、有機EL素子1から出射される光の分光分布を図7に示す。有機EL素子1から出射される光は、波長480nm〜505nmの光の強度が、フィルタ3を設けない場合(図4参照)と比べて低くなっている。また、505nmよりも長波長の光の強度は、ほとんど低くなっていない。
【0027】
このように、本発明の有機EL素子1によれば、青色の発光要素2からの波長480nm〜505nmの光の強度がフィルタ3によって低くなるので、光によるメラトニン分泌抑制が防止され、睡眠の阻害が緩和される。また、赤色及び緑色の発光要素2’からの光は、フィルタ3によって遮光されないので、エネルギー損失が生じない。また、赤色及び緑色の発光要素2’と、青色の発光要素2が同一平面内に分散配置されていることから、1つの発光要素からの光が他の発光要素に遮られずにロスなく出射されるので、エネルギー効率が高くなる。
【0028】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る有機EL素子を図8を参照して説明する。本実施形態の有機EL素子1は、第1の実施形態と同様の青色の発光要素2、赤色及び緑色の発光要素2’、フィルタ3を有し、発光要素2と発光要素2’の配置が第1の実施形態と異なる。発光要素2、発光要素2’は、互いに積層されており、青色の発光要素2の上に赤色及び緑色の発光要素2’が配置されている。この有機EL素子1は、基板4上に成層された青色の発光要素2の上に、透明基板5上に成層された赤色及び緑色の発光要素2’が、フィルタ3を介して重ねられて形成される。透明基板5は、例えばアクリル系樹脂から成る。有機EL素子1は、発光要素2、フィルタ3、及び発光要素2’の複数組を面状に配置して構成してもよい。
【0029】
本実施形態の有機EL素子1において、青色の発光要素2からの光は、フィルタ3と発光要素2’を通って素子外に出射される。この構成により、青色の発光要素2からの波長480nm〜505nmの光は、フィルタ3によって30%以下に遮られ、赤色及び緑色の発光要素2’からの光は遮光されない。また、青色の発光要素2の発光は、赤色及び緑色の発光要素2’を通って出射されるので、発光要素2’の発光と混色される。
【0030】
このように、本発明の有機EL素子1によれば、青色の発光要素2からの波長480nm〜505nmの光の強度がフィルタ3によって低くなるので、光によるメラトニン分泌抑制が防止され、睡眠の阻害が緩和される。また、青色の発光要素2の上に赤色及び緑色の発光要素2’が配置されているので、発光要素2からの光と発光要素2’からの光の混色が良好になる。このため、この有機EL素子1を用いた照明装置は、照射面の色むらを低減することができる。
【0031】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る照明装置を図9を参照して説明する。本実施形態の照明装置6は、第1の実施形態又は第2の実施形態の有機EL素子1を有し、例えば、ペンダントライトとして構成され、天井等に設置される。照明装置6は、有機EL素子1を有していれば、ペンダントライトに限定されるものではなく、例えば、シーリングライト、ベースライト、ブラケット等であってもよい。照明装置6は、有機EL素子1を光源に用いるので、光によるメラトニン分泌抑制が防止されると共にエネルギー効率が高くなる。
【0032】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、第2の実施形態において、発光要素2’は、赤色の発光要素と緑色の発光要素とを別々に形成し、それらを重ねて構成してもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)
2 青色の発光要素
2’ 赤色及び緑色の発光要素
3 フィルタ
6 照明装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子及びそれを用いた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、照明用光源として有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子という)がある。図10に示されるように、有機EL素子100は、基板104上に陽極121、ホール輸送層122、有機発光層123、電子輸送層124、陰極125がこの順に積層されて形成される。電子輸送層124は、有機発光層123に接する部分に、電子輸送層124を構成する主成分と、有機発光層123のホスト材料と、有機半導体材料とを混合した混合層124aが形成される。この有機EL素子100において、有機発光層123内の発光が素子外に出射される。なお、有機EL素子100は、厚さ方向に拡大して図示している。
【0003】
図11は、有機発光層123に含有される発光材料としての発光性ドーパントの相対分光分布を示し、横軸は波長、縦軸は発光分光の相対強度である。発光性ドーパントであるTBPとsty−NPDは青色系、C545TとIr(ppy)3は緑色系、rubreneとPQ2Iracacは赤色系の発光材料である。有機EL素子100は、これらの発光材料が発する赤色、緑色、青色の光を混色することによって白色光を出射する。この白色光中には、TBP等の青色系発光材料が発する波長410nm〜505nmの波長成分が多く含まれている。
【0004】
人は、このような短波長成分が多く含まれた光を夜間の入眠前の時間帯に受光すると、メラトニンというホルモンの分泌が抑制され、睡眠が阻害される。このため、有機EL素子100を光源に用いた照明装置は、入眠前の時間帯の使用に適していない。照明装置において、照明光中の波長410nm〜505nmの波長成分を全てカットすると、光によるメラトニン分泌抑制が防止されるが、照明光の青色味が失われて演色性が低くなる。
【0005】
演色性への影響を小さくし、光によるメラトニン分泌抑制の防止を図った照明装置として、波長480nm〜505nmの光を30%以下に遮るフィルタを有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このフィルタは、フィルタ材料として橙色系蛍光着色材料が用いられており、波長505nmより長波長の緑色の光も部分的に遮ってしまい、さらに長波長の赤色の光も完全には透過しない。このため、このようなフィルタを有機EL素子の発光面に設けると、光によるメラトニン分泌抑制が防止されるが、照明のエネルギー効率が低くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−259079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題を解決するものであり、光によるメラトニン分泌抑制を防止すると共にエネルギー効率の高い有機エレクトロルミネッセンス素子及びそれを用いた照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光色が赤色、緑色、青色である各発光要素を有するものであって、青色の発光要素に、波長480nm〜505nmの光を30%以下に遮るフィルタを設け、赤色及び緑色の発光要素からの波長480nm〜505nmの光は、遮光することなく出射することを特徴とする。
【0009】
この有機エレクトロルミネッセンス素子において、赤色、緑色、青色の発光要素は、同一平面内に分散配置されていることが好ましい。
【0010】
この有機エレクトロルミネッセンス素子において、赤色、緑色、青色の発光要素は、互いに積層されており、青色の発光要素の上に赤色及び緑色の発光要素が配置されていることが好ましい。
【0011】
本発明の照明装置は、この有機エレクトロルミネッセンス素子を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子及びそれを用いた照明装置によれば、青色の発光要素からの波長480nm〜505nmの光の強度がフィルタによって低くなるので、光によるメラトニン分泌抑制が防止され、睡眠の阻害が緩和される。また、赤色及び緑色の発光要素からの光は、フィルタによって遮光されないので、エネルギー効率が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の平面図。
【図2】(a)は同素子における青色の発光要素の断面図、(b)は赤色及び緑色の発光要素の断面図。
【図3】同素子における各発光要素の発光の相対分光分布を示す図。
【図4】同発光要素の発光を混ぜたときの白色光の分光分布を示す図。
【図5】同素子におけるフィルタの分光分布を示す図。
【図6】同素子における青色の発光要素にフィルタを設けたときの各発光要素の相対分光分布を示す図。
【図7】同素子から出射される光の分光分布を示す図。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の断面図。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る照明装置の斜視図。
【図10】従来の有機エレクトロルミネッセンス素子の断面図。
【図11】同素子に用いられる発光材料の相対分光分布を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る有機EL素子を図1乃至図7を参照して説明する。図1に示されるように、有機EL素子1は、発光色が青色である発光要素2と、発光色が赤色及び緑色である発光要素2’とを有する。本実施形態では、緑色の発光要素と赤色の発光要素が一体に構成されるが、それらを別々に構成しても構わない。有機EL素子1は、青色の発光要素2に、波長480nm〜505nmの光を30%以下に遮るフィルタ3を設け、赤色及び緑色の発光要素2’からの波長480nm〜505nmの光は、遮光することなく出射する。
【0015】
青色の発光要素2、赤色及び緑色の発光要素2’は、同一平面内に分散配置されており、互いに重ならないように基板4上に並べて配置される。
【0016】
図2(a)に示されるように、発光要素2は、陽極(アノード)となる第1電極21と、陰極(カソード)となる第2電極25との間に有機発光層23を有する。発光要素2は、第1電極21と有機発光層23の間にホール輸送層22を有し、有機発光層23と第2電極25の間に電子輸送層24を有する。電子輸送層24は、有機発光層23に接する少なくとも一部分に混合層24aが形成される。発光要素2は、基板4の表面に成層される。
【0017】
本実施形態の発光要素2は、第1電極21を光反射性の電極とし、第2電極25を光透過性の電極とし、フィルタ3が第2電極25を覆うように設けられる。有機発光層23内の青色の発光は、フィルタ3を通して発光要素2外に出射される。基板4を透明基板とし、第1電極21を光透過性の電極とし、第2電極25を光反射性の電極とし、フィルタ3を基板4上に設けてもよい。また、第1電極21とホール輸送層22の間にホール注入層を形成してもよく、電子輸送層24と第2電極25の間に電子注入層を形成してもよい。
【0018】
第1電極21の材料は、アルミニウム等の金属である。有機発光層23は、有機材料であるホスト材料にドーパントがドープされて形成される。ドーパントは、青色系発光材料としてのTBP系材料である。第2電極25の材料は、ITO(酸化インジウムスズ)等の透明導電膜材料である。ホール輸送層22と電子輸送層24には、それぞれ適宜の有機材料が用いられる。
【0019】
フィルタ3の材料は、透光性樹脂と橙色系蛍光着色材料とを含む樹脂組成物である。透光性樹脂は、例えばアクリル系樹脂であり、ポリスチレン樹脂、塩化ビニール樹脂、ポリカーボネート樹脂、非晶性ポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアリレート樹脂等であってもよい。橙色系蛍光着色材料は、例えばペリレン系化合物である。フィルタ3に波長480nm〜505nmの光を30%以下に遮るフィルタ特性を持たせるため、配合割合は、透光性樹脂の100重量部に対し、橙色系蛍光着色材料が略0.005〜0.2重量部とされる。
【0020】
混合層24aは、電子輸送層24を構成する主成分と、有機発光層23のホスト材料と、有機半導体材料とを混合して形成され、発光要素2を長寿命化及び高効率化するものである。有機半導体材料は、有機発光層23のホスト材料とは異なる材料であり、電子輸送層24を構成する主成分のイオン化ポテンシャル以上、又は有機発光層23のホスト材料のイオン化ポテンシャル以上のイオン化ポテンシャルを有するものである。電子輸送層24を構成する主成分は、電子輸送層24中の含有比率が25質量%を超える電子輸送材料であり、25質量%を超える電子輸送材料が複数種ある場合には、それらのいずれの材料であってもよい。
【0021】
図2(b)に示されるように、赤色及び緑色の発光要素2’は、青色の発光要素2と同様に各層が積層され、有機発光層23’に含有されるドーパントが、青色の発光要素2のものとは異なる。有機発光層23’のドーパントは、赤色系発光材料であるPQ2Iracac系材料と、緑色系発光材料であるIr(ppy)3系材料である。有機発光層23’のホスト材料を有機発光層23のホスト材料と異なる材料としてもよい。フィルタ3は、発光要素2’には設けられない。このため、有機発光層23’内の発光は、フィルタ3に遮光されずに発光要素2’外に出射される。
【0022】
青色の発光要素2と赤色及び緑色の発光要素2’の発光の相対分光分布を発光材料ごとに図3に示す。横軸は波長(380nm〜780nm)、縦軸は相対強度(0〜1)である。この相対分光分布の測定において、フィルタ3は設けられていない。青色の発光要素2のTBP系材料の発光には、480nm〜505nmの波長成分が多く含まれている。赤色及び緑色の発光要素2’のIr(ppy)3系材料とPQ2Iracac系材料の発光には、505nm以下の短波長の成分がほとんど含まれていない。
【0023】
発光要素2の青色と発光要素2’の赤色及び緑色の3色の発光を混ぜたときの白色光(色温度2500K)の分光分布を図4に示す。この分光分布の測定においても、フィルタ3は設けられていない。3色の発光を混ぜたときの白色光には、480nm〜505nmの波長成分が含まれる。
【0024】
フィルタ3の分光分布を図5に示す。横軸は波長、縦軸は透過率である。フィルタ3は、波長480nm〜505nmにおける透過率が低く、この波長域の光を30%以下に遮る。また、この波長域よりも長波長である波長505nm〜530nmにおける透過率も低くなっている。このような波長505nm〜530nmの光は、発光要素2’の緑色系発光材料の発光に多く含まれている(図3参照)。
【0025】
青色の発光要素2にフィルタ3を設けた場合の、各発光要素2、2’の相対分光分布を発光材料ごとに図6に示す。発光要素2のTBP系材料の発光は、フィルタ3を設けたことによって、波長480nm〜505nmの光の強度が低くなっている。発光要素2’のIr(ppy)3系材料とPQ2Iracac系材料の発光は、フィルタ3によって遮光されないので、フィルタ3によるエネルギー損失が生じない。
【0026】
青色の発光要素2にフィルタ3を設けた場合における、発光要素2、2’の3色の発光を混ぜたときの白色光(色温度2500K)の分光分布、すなわち、有機EL素子1から出射される光の分光分布を図7に示す。有機EL素子1から出射される光は、波長480nm〜505nmの光の強度が、フィルタ3を設けない場合(図4参照)と比べて低くなっている。また、505nmよりも長波長の光の強度は、ほとんど低くなっていない。
【0027】
このように、本発明の有機EL素子1によれば、青色の発光要素2からの波長480nm〜505nmの光の強度がフィルタ3によって低くなるので、光によるメラトニン分泌抑制が防止され、睡眠の阻害が緩和される。また、赤色及び緑色の発光要素2’からの光は、フィルタ3によって遮光されないので、エネルギー損失が生じない。また、赤色及び緑色の発光要素2’と、青色の発光要素2が同一平面内に分散配置されていることから、1つの発光要素からの光が他の発光要素に遮られずにロスなく出射されるので、エネルギー効率が高くなる。
【0028】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る有機EL素子を図8を参照して説明する。本実施形態の有機EL素子1は、第1の実施形態と同様の青色の発光要素2、赤色及び緑色の発光要素2’、フィルタ3を有し、発光要素2と発光要素2’の配置が第1の実施形態と異なる。発光要素2、発光要素2’は、互いに積層されており、青色の発光要素2の上に赤色及び緑色の発光要素2’が配置されている。この有機EL素子1は、基板4上に成層された青色の発光要素2の上に、透明基板5上に成層された赤色及び緑色の発光要素2’が、フィルタ3を介して重ねられて形成される。透明基板5は、例えばアクリル系樹脂から成る。有機EL素子1は、発光要素2、フィルタ3、及び発光要素2’の複数組を面状に配置して構成してもよい。
【0029】
本実施形態の有機EL素子1において、青色の発光要素2からの光は、フィルタ3と発光要素2’を通って素子外に出射される。この構成により、青色の発光要素2からの波長480nm〜505nmの光は、フィルタ3によって30%以下に遮られ、赤色及び緑色の発光要素2’からの光は遮光されない。また、青色の発光要素2の発光は、赤色及び緑色の発光要素2’を通って出射されるので、発光要素2’の発光と混色される。
【0030】
このように、本発明の有機EL素子1によれば、青色の発光要素2からの波長480nm〜505nmの光の強度がフィルタ3によって低くなるので、光によるメラトニン分泌抑制が防止され、睡眠の阻害が緩和される。また、青色の発光要素2の上に赤色及び緑色の発光要素2’が配置されているので、発光要素2からの光と発光要素2’からの光の混色が良好になる。このため、この有機EL素子1を用いた照明装置は、照射面の色むらを低減することができる。
【0031】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る照明装置を図9を参照して説明する。本実施形態の照明装置6は、第1の実施形態又は第2の実施形態の有機EL素子1を有し、例えば、ペンダントライトとして構成され、天井等に設置される。照明装置6は、有機EL素子1を有していれば、ペンダントライトに限定されるものではなく、例えば、シーリングライト、ベースライト、ブラケット等であってもよい。照明装置6は、有機EL素子1を光源に用いるので、光によるメラトニン分泌抑制が防止されると共にエネルギー効率が高くなる。
【0032】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、第2の実施形態において、発光要素2’は、赤色の発光要素と緑色の発光要素とを別々に形成し、それらを重ねて構成してもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)
2 青色の発光要素
2’ 赤色及び緑色の発光要素
3 フィルタ
6 照明装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光色が赤色、緑色、青色である各発光要素を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
青色の発光要素に、波長480nm〜505nmの光を30%以下に遮るフィルタを設け、
赤色及び緑色の発光要素からの波長480nm〜505nmの光は、遮光することなく出射することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
赤色、緑色、青色の発光要素は、同一平面内に分散配置されていることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
赤色、緑色、青色の発光要素は、互いに積層されており、
青色の発光要素の上に赤色及び緑色の発光要素が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を有する照明装置。
【請求項1】
発光色が赤色、緑色、青色である各発光要素を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
青色の発光要素に、波長480nm〜505nmの光を30%以下に遮るフィルタを設け、
赤色及び緑色の発光要素からの波長480nm〜505nmの光は、遮光することなく出射することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
赤色、緑色、青色の発光要素は、同一平面内に分散配置されていることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
赤色、緑色、青色の発光要素は、互いに積層されており、
青色の発光要素の上に赤色及び緑色の発光要素が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を有する照明装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−9185(P2012−9185A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142247(P2010−142247)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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