説明

有機エレクトロルミネッセンス素子及びそれを用いた露光装置並びに画像形成装置

【課題】簡便な構造で発光エリア減少の発生を改善でき、長寿命性、量産性に優れる有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とする。
【解決手段】陽極と陰極との間に有機材料で形成された発光層を有する複数の発光部と、隣接する複数の発光部を電気的に分離する隔壁と、を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子であって、発光部及び隔壁を含む表面全体に覆設された被覆層を備えている構成としたものであり、有機エレクトロルミネッセンス素子の最上面に形成された電極の端部が被覆層8ですべて覆われ、発光エリア減少の要因となっている水分や酸素等の有機エレクトロルミネッセンス素子内部への浸入経路を絶つことができ、発光エリア減少を抑制でき、長寿命性に優れるという効果を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の装置において発光素子等に用いられる有機エレクトロルミネッセンス素子及びそれを用いた露光装置並びに画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、有機材料を正孔輸送層と発光層の2層に分けた機能分離型の積層構造を有する有機エレクトロルミネッセンス素子についての研究が盛んに行われている。特に、有機エレクトロルミネッセンス素子の実用化のためには不可欠である高効率化・長寿命化についても十分検討がなされており、近年、有機エレクトロルミネッセンス素子を用いたディスプレイ等が実現されている。
【0003】
また、電子写真技術による画像形成装置には、一様に所定の電位に帯電した感光体に画像データに応じた露光光を照射してこの感光体上に静電潜像を書き込むための露光装置が設けられており、その光源として有機エレクトロルミネッセンス素子が利用されている。
【0004】
ここで、従来の一般的な有機エレクトロルミネッセンス素子の構成について、図面を用いて説明する。
【0005】
図8は従来のエレクトロルミネッセンス素子の構成を示す断面図であり、図9は従来のエレクトロルミネッセンス素子の構造を示す要部断面図である。
【0006】
図9に示すように、有機エレクトロルミネッセンス素子30は、ガラス等で構成される基板31上に、スパッタリング法や抵抗加熱蒸着法により形成されたITO等の透明な導電性膜からなる陽極32と、陽極32上に同じく抵抗加熱蒸着法等により形成されたN,N'−ジフェニル−N,N'−ビス(3−メチルフェニル)−1,1'−ジフェニル−4,4'−ジアミン(以下、TPDと略称する。)等からなる正孔輸送層33と、正孔輸送層33上に抵抗加熱蒸着法により形成された8−Hydroxyquinoline Aluminum(以下、Alq3と略称する。)等からなる発光層34と、発光層34上に抵抗加熱蒸着法等により形成された100nm〜300nm程度の膜厚の金属膜からなる陰極35を備えている。
【0007】
上記構成を有する有機エレクトロルミネッセンス素子30の陽極32にプラス、陰極35にマイナスの直流電圧又は直流電流を印加すると、陽極32から正孔輸送層33を介して発光層34に正孔が注入され、陰極35から発光層34に電子が注入される。発光層34では正孔と電子の再結合が生じ、これに伴って生成される励起子が励起状態から基底状態へ移行する際に発光現象が起こる。
【0008】
そして、このような有機エレクトロルミネッセンス素子30において、通常、発光層34中の蛍光体から放射される光は、蛍光体を中心とした全方位に出射され、正孔輸送層33、陽極32、基板31を経由して空気中へ放射される。あるいは、一旦、光取り出し方向(基板31方向)とは逆方向へ向かい、陰極35により反射され、発光層34、正孔輸送層33、陽極32、基板31を経由して、空気中へ放射される。
【0009】
なお、有機エレクトロルミネッセンス素子の構造については(特許文献1)や(特許文献2)等で開示されているものがある。
【0010】
しかしながら、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する有機物は溶媒に侵され易く、また有機物に電子を注入するために通常使用される仕事関数の小さい金属は水分や酸素により劣化し易く、陰極を形成した後に、有機エレクトロルミネッセンス素子を複数の発光部に分離することは困難であり、微細な発光画素を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を作成することは困難であった。
【0011】
そこで、図9に示すように、分離させたい発光部38の間には陽極32上にポリイミド等の絶縁層を成膜して形成した画素規制層36を設け、さらに陽極32上に形成される発光層34及び陰極35の表面よりも高く、底部の幅よりも頂部の幅が大きな隔壁37を画素規制層36上に形成し、発光層34及び陰極35の材料を真空蒸着することにより、隔壁37の上下の形状の差によってできる影の部分に材料が蒸着されず、発光部38が分離される有機エレクトロルミネッセンス素子30の製造方法や、隔壁37を直方体状などに形成し、発光層34及び陰極35の材料を斜方向から真空蒸着することにより、隔壁37の影となる部分に材料が蒸着されず、発光部38が分離される有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法等が提案されている(特許文献3、特許文献4、特許文献5)。
【特許文献1】米国特許第5917280号公報
【特許文献2】米国特許第5932895号公報
【特許文献3】特開平5−275172号公報
【特許文献4】特開平5−258859号公報
【特許文献5】特開平9−330792号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら上記従来の技術では、以下のような課題を有していた。
【0013】
(1)有機エレクトロルミネッセンス素子は作製後、時間と共に発光部の発光面積が発光端部から徐々に小さくなり、最終的には発光しなくなる(以後、発光エリア減少と称する)という素子寿命に関する課題を有していた。
【0014】
(2)隔壁等で発光部を分離した場合、発光部周辺に電極の端部が存在するため、有機エレクトロルミネッセンス素子の周りに存在する水分や酸素等が電極とその下に形成されている有機膜との界面に発光画素(発光部)の周辺から徐々に浸入し、電極と有機膜とを劣化させ、発光エリア減少が起こり易くなるという課題を有していた。
【0015】
(3)画像形成装置の露光装置等における光源として有機エレクトロルミネッセンス素子を用いることにより、従来の露光方式であるレーザビーム方式やLEDアレイ方式に比べ、装置の小型化や低コスト化が図られているが、有機エレクトロルミネッセンス素子の各発光画素(発光部)は微細なため、たとえ微小な発光エリア減少であっても、その発光光量を大きく低下させてしまい、感光体上に結像するために必要な光量を得ることができなくなり、信頼性、長寿命性に欠けるという課題を有していた。
【0016】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、簡便な構造で発光エリア減少の発生を改善でき、長寿命性、量産性に優れる有機エレクトロルミネッセンス素子の提供、及びそれを用いた小型で長期に渡って十分な光量を得ることができる実用性、信頼性に優れる露光装置並びに画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極と陰極との間に有機材料で形成された発光層を有する複数の発光部と、隣接する前記複数の発光部を電気的に分離する隔壁と、を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記発光部及び前記隔壁を含む表面全体に覆設された被覆層を備えた構成を有している。
【0018】
これにより、有機エレクトロルミネッセンス素子の最上面に形成された電極の端部が被覆層ですべて覆われ、発光エリア減少の要因となっている水分や酸素等の有機エレクトロルミネッセンス素子内部への浸入経路を絶つことができ、発光エリア減少を抑制でき、長寿命性に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。
【0019】
上記課題を解決するために本発明の露光装置は、陽極と陰極との間に有機材料で形成された発光層を有する複数の発光部と、隣接する前記複数の発光部を電気的に分離する隔壁と、を備え、前記発光部及び前記隔壁を含む表面全体に覆設された被覆層を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子を光源に用いた構成を有している。
【0020】
これにより、発光エリア減少を抑制した有機エレクトロルミネッセンス素子を光源に用いることで、装置を大型化することなく長期にわたり露光に必要な光量を得ることができる実用性、信頼性に優れた露光装置を提供することができる。
【0021】
上記課題を解決するために本発明の画像形成装置は、陽極と陰極との間に有機材料で形成された発光層を有する複数の発光部と、隣接する前記複数の発光部を電気的に分離する隔壁と、を備え、前記発光部及び前記隔壁を含む表面全体に覆設された被覆層を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子を光源に用いた構成を有している。
【0022】
これにより、発光エリア減少を抑制した有機エレクトロルミネッセンス素子を光源に用いることで、装置を大型化することなく長期にわたり露光に必要な光量を得ることができる実用性、信頼性に優れた画像形成装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子及びそれを用いた露光装置並びに画像形成装置によれば、以下のような有利な効果が得られる。
【0024】
請求項1に記載の発明によれば、
(1)発光部及び隣接する複数の発光部を電気的に分離する隔壁を含む表面全体に被覆層が覆設されているので、有機エレクトロルミネッセンス素子の最上面に形成された電極の端部が被覆層ですべて覆われ、発光エリア減少の要因となっている水分や酸素等の有機エレクトロルミネッセンス素子内部への浸入経路を絶つことができ、発光エリア減少を抑制できる長寿命性に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。
【0025】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、
(1)被覆層が絶縁体で形成されているので、複数の発光部を確実に絶縁することができる信頼性に高品質で信頼性に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。
【0026】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加え、
(1)被覆層が吸湿性を有する材料で形成されることにより、発光エリア減少の要因となる水分を被覆層で吸収することができるので、電極と発光層との界面に浸入する水分量を低減し、発光エリア減少を抑制できる長寿命性に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。
【0027】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の内いずれか1項の効果に加え、
(1)隔壁の端部から隣接する発光部の端部までの距離を5μm〜10μmに形成することにより、水分や酸素等の浸入による発光面積減少の発生を遅らせることができる長寿命性に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。
【0028】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1乃至4の内いずれか1項の効果に加え、
(1)発光層の上面に形成される電極の面積を発光層の面積よりも小さな面積に形成することにより、最上部に形成される電極の端部を被覆層で確実に覆うことができるので、発光エリア減少の要因となる水分や酸素等の浸入経路を絶つことができ、発光エリア減少を抑制できる信頼性、長寿命性に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。
【0029】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1乃至4の内いずれか1項の効果に加え、
(1)隔壁が撥水性を有する材料で形成されることにより、発光層を湿式成膜法によって成膜するだけで発光層と隔壁とを離間させて形成することができ、水分や酸素等の浸入による発光面積減少の発生を遅らせることができる量産性、長寿命性に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。
【0030】
請求項7に記載の発明によれば、
(1)発光エリア減少を抑制した有機エレクトロルミネッセンス素子を光源に用いることで、装置を大型化することなく長期にわたり露光に必要な光量を得ることができる実用性、信頼性に優れた露光装置を提供することができる。
【0031】
請求項8に記載の発明によれば、
(1)発光エリア減少を抑制した有機エレクトロルミネッセンス素子を光源に用いることで、装置を大型化することなく長期にわたり露光に必要な光量を得ることができる実用性、信頼性に優れた画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明は、簡便な構造で発光エリア減少の発生を改善でき、長寿命性、量産性に優れる有機エレクトロルミネッセンス素子を提供するという目的を、陽極と陰極との間に有機材料で形成された発光層を有する複数の発光部と、隣接する前記複数の発光部を電気的に分離する隔壁と、を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子の発光部及び隔壁を含む表面全体に被覆層を覆設することにより実現した。
【0033】
上記課題を解決するためになされた第1の発明は、陽極と陰極との間に有機材料で形成された発光層を有する複数の発光部と、隣接する前記複数の発光部を電気的に分離する隔壁と、を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記発光部及び前記隔壁を含む表面全体に覆設された被覆層を備えた構成を有している。
【0034】
この構成により、以下の作用を有する。
【0035】
(1)発光部及び隣接する複数の発光部を電気的に分離する隔壁を含む表面全体に被覆層が覆設されているので、有機エレクトロルミネッセンス素子の最上面に形成された電極の端部が被覆層ですべて覆われ、発光エリア減少の要因となっている水分や酸素等の有機エレクトロルミネッセンス素子内部への浸入経路を絶つことができ、発光エリア減少を抑制できる。
【0036】
ここで、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光部が形成される基板としては、基板上に形成される各層を保持できる強度があればよい。基板側を光の取り出し面として用いる場合には、透明あるいは半透明の発光の視認を妨げない程度の透明性を有する材質で基板を形成する。基板側を光の取り出し面として用いない場合には、不透明の材質を用いることができる。
【0037】
具体的には、透明または半透明な材質としては、ソーダ石灰ガラス,バリウム・ストロンチム含有ガラス,鉛ガラス,アルミノケイ酸ガラス,ホウケイ酸ガラス,バリウムホウケイ酸ガラス,石英ガラス等の無機酸化物ガラス、無機フッ化物ガラス等の無機ガラス、或いはポリエチレンテレフタレート,ポリカーボネート,ポリメチルメタクリレート,ポリエーテルスルフォン,ポリフッ化ビニル,ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアクリレート,非晶質ポリオレフィン,フッ素系樹脂等の高分子フィルム等、As23,As4010,S40Ge10等のカルコゲノイドガラス、ZnO,Nb2O,Ta25,SiO,Si34,HfO2,TiO2等の金属酸化物および窒化物等が好適に用いられる。
【0038】
不透明な材質としては、シリコン,ゲルマニウム,炭化シリコン,ガリウム砒素,窒化ガリウム等の半導体材料、或いは、顔料等を含んだ前述の透明基板材料、表面に絶縁処理を施した金属材料等が好適に用いられる。また、前述の複数の基板材料を積層した積層基板を用いることもできる。
【0039】
また、この基板表面、あるいは基板内部には、有機エレクトロルミネッセンス素子を駆動するための抵抗,コンデンサ,インダクタ,ダイオード,トランジスタ等からなる回路を形成していても良い。
【0040】
さらに、用途によっては特定波長のみを透過する材料、光−光変換機能をもった特定の波長の光へ変換する材料などであってもよい。また、基板は絶縁性であることが好ましいが、特に限定されるものではなく、有機エレクトロルミネッセンス素子の駆動を妨げない範囲、或いは用途によって、導電性を有していても良い。
【0041】
陽極としては、ITO(インジウムスズ酸化物)、IZO(インジウム亜鉛酸化物)、ATO(SbをドープしたSnO2)、AZO(AlをドープしたZnO)等を部材として、スパッタリングや抵抗加熱蒸着法等により形成されるものが好適に用いられる。
陰極の材質としては、仕事関数の低い金属もしくは合金が好ましく、Al、In、Mg、Ca、Ti等の金属、Mg−Ag合金、Mg−In合金等のMg合金、Al−Li合金、Al−Ca合金、Al−Sr合金、Al−Ba合金等のAl合金等が好適に用いられる。
有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層としては、可視領域で蛍光または燐光特性を有し、かつ成膜性の良いものが好ましく、Alq3やBe−ベンゾキノリノール(BeBq2)の他に、2,5−ビス(5,7−ジ−t−ペンチル−2−ベンゾオキサゾリル)−1,3,4−チアジアゾ−ル、4,4'−ビス(5,7−ベンチル−2−ベンゾオキサゾリル)スチルベン、4,4'−ビス[5,7−ジ−(2−メチル−2−ブチル)−2−ベンゾオキサゾリル]スチルベン、2,5−ビス(5,7−ジ−t−ベンチル−2−ベンゾオキサゾリル)チオフェン、2,5−ビス[(5−α,α−ジメチルベンジル)−2−ベンゾオキサゾリル]チオフェン、2,5−ビス〔5,7−ジ−(2−メチル−2−ブチル)−2−ベンゾオキサゾリル〕−3,4−ジフェニルチオフェン、2,5−ビス(5−メチル−2−ベンゾオキサゾリル)チオフェン、4,4’−ビス(2−ベンゾオキサイゾリル)ビフェニル、5−メチル−2−〔2−〔4−(5−メチル−2−ベンゾオキサイゾリル)フェニル〕ビニル〕ベンゾオキサイゾリル、2−〔2−(4−クロロフェニル)ビニル〕ナフト〔1,2−d〕オキサゾール等のベンゾオキサゾール系、2,2’−(p−フェニレンジビニレン)−ビスベンゾチアゾール等のベンゾチアゾール系、2−〔2−〔4−(2−ベンゾイミダゾリル)フェニル〕ビニル〕ベンゾイミダゾール、2−〔2−(4−カルボキシフェニル)ビニル〕ベンゾイミダゾール等のベンゾイミダゾール系等の蛍光増白剤、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)マグネシウム、ビス(ベンゾ〔f〕−8−キノリノール)亜鉛、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)アルミニウムオキシド、トリス(8−キノリノール)インジウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、8−キノリノールリチウム、トリス(5−クロロ−8−キノリノール)ガリウム、ビス(5−クロロ−8−キノリノール)カルシウム、ポリ〔亜鉛−ビス(8−ヒドロキシ−5−キノリノニル)メタン〕等の8−ヒドロキシキノリン系金属錯体やジリチウムエピンドリジオン等の金属キレート化オキシノイド化合物、1,4−ビス(2−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−(3−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(4−メチルスチリル)ベンゼン、ジスチリルベンゼン、1,4−ビス(2−エチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(3−エチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(2−メチルスチリル)2−メチルベンゼン等のスチリルベンゼン系化合物や、2,5−ビス(4−メチルスチリル)ピラジン、2,5−ビス(4−エチルスチリル)ピラジン、2,5−ビス〔2−(1−ナフチル)ビニル〕ピラジン、2,5−ビス(4−メトキシスチリル)ピラジン、2,5−ビス〔2−(4−ビフェニル)ビニル〕ピラジン、2,5−ビス〔2−(1−ピレニル)ビニル〕ピラジン等のジスチルピラジン誘導体、ナフタルイミド誘導体、ペリレン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アルダジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、スチリルアミン誘導体、クマリン系誘導体、芳香族ジメチリディン誘導体等が好適に用いられる。さらに、アントラセン、サリチル酸塩、ピレン、コロネン等も用いられる。
【0042】
発光層は単層構造として陽極と陰極の間に挟むようにしてもよいし、発光層の陽極側に正孔輸送層を有する二層構造、発光層の陰極側に電子輸送層を有する二層構造、発光層の陽極側に正孔輸送層を有し、陰極側に電子輸送層を有する三層構造としてもよい。
【0043】
正孔輸送層を有する場合、陽極からの正孔を発光層に効率よく運ぶことができ、電子輸送層を有する場合、電子を円滑に発光層に移動させることができると共に、発光層に入った正孔が電子輸送層に移動してくるのを防止できる。
【0044】
正孔輸送層の材料としては、正孔移動度が高く、透明で成膜性の良いものが好ましく、TPDの他に、ポルフィリン、テトラフェニルポルフィリン銅、フタロシアニン、銅フタロシアニン、チタニウムフタロシアニンオキサイド等のポルフィリン化合物、1,1−ビス{4−(ジ−P−トリルアミノ)フェニル}シクロヘキサン、4,4',4''−トリメチルトリフェニルアミン、N,N,N',N'−テトラキス(P−トリル)−P−フェニレンジアミン、1−(N,N−ジ−P−トリルアミノ)ナフタレン、4,4'−ビス(ジメチルアミノ)−2−2'−ジメチルトリフェニルメタン、N,N,N',N'−テトラフェニル−4,4'−ジアミノビフェニル、N,N'−ジフェニル−N,N'−ジ−m−トリル−4,4'−ジアミノビフェニル、N−フェニルカルバゾ−ル等の芳香族第三級アミン、4−ジ−P−トリルアミノスチルベン、4−(ジ−P−トリルアミノ)−4'−[4−(ジ−P−トリルアミノ)スチリル]スチルベン等のスチルベン化合物、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体やポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体やフェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体やポリシラン系アニリン系共重合体、高分子オリゴマー、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポリ3−メチルチオフェン等の有機材料が好適に用いられる。また、ポリカーボネート等の高分子中に低分子の正孔輸送用の有機材料を分散させた、高分子分散系の正孔輸送層も用いられる。さらに、これらの正孔輸送材料は正孔注入材料、あるいは電子ブロック材料としても用いることができる。
【0045】
電子輸送層の材料としては、1,3−ビス(4−tert−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾリル)フェニレン(OXD−7)等のオキサジアゾール誘導体、アントラセン誘導体、ジフェニルキノン誘導体等が好適に用いられる。また、これらの電子輸送材料は電子注入材料、あるいは正孔ブロック材料として用いることもできる。
【0046】
有機エレクトロルミネッセンス素子の複数の発光部を電気的に分離し、画素を規制するために陽極上に画素規制層を形成する。画素規制層の無い窓となっている部分が発光部であり、発光素子として機能する。画素規制層を形成する材料としては、絶縁性を有するものであればよい。具体例としては、SiO2、MgO、Al23、Cr23等の金属酸化物や金属窒化物、さらには炭化物、硫化物等を用いることができる。また、ポリイミド、アクリル、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等に代表される成膜パターニングが可能な樹脂を用いてもよい。
【0047】
隔壁は発光部を分離形成できるものであれば如何なる構造であってもよく、その形状は従来提案されてきた隔壁構造、逆テーパー構造、オーバーハング構造、アンダーカット構造等が好適に用いられる。
【0048】
隔壁の材料としては、絶縁性を有するネガ型レジスト、ポジ型レジスト、ネガ型レジストとポジ型レジストの組み合わせ、或いはレジストと無機薄膜の組み合わせ等が好適に用いられる。また、電極との短絡の危険性を回避できるのであれば、導電性の材料を使用してもよい。尚、隔壁の膜厚は、発光層及び発光層上に形成される電極の膜厚を合わせた厚さよりも厚く形成することが好ましい。これにより、発光層上に形成される電極を確実に分離することが可能となる。
【0049】
被覆層を形成する材料としては、絶縁性を有しガスバリア性に優れているものであれば如何なるものであってもよい。
【0050】
被覆層の成膜時にArガス等の不活性ガスを入れることにより、平均自由行程(ミーン・フリー・パス)を短くしてステップカバレッジをよくすることができ、逆テーパー状等に形成される隔壁の根元部分や側面を被覆層で全て覆うことができる。これにより、電極の端部を被覆層で完全に覆うことができるので、水分や酸素等の浸入経路を確実に遮断して発光エリア減少の発生を抑制できる。
【0051】
上記課題を解決するためになされた第2の発明は、第1の発明に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記被覆層が絶縁体で形成されて構成を有している。
【0052】
この構成により、第1の発明の作用に加え、以下のような作用を有する。
【0053】
(1)被覆層が絶縁体で形成されているので、複数の発光部を確実に絶縁することができる。
【0054】
ここで、被覆層を形成する材料としては、SiO2、MgO、Al23、Cr23等の金属酸化物や金属窒化物、さらには炭化物、硫化物等が好適に用いられる。また、ポリイミド、アクリル、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等に代表される塗布可能な樹脂を用いることもできる。特に金属酸化物等は、発光層の上部に真空中で電極を形成後、大気圧に戻すことなく、比較的マイルドな条件で成膜することができるので好ましい。
【0055】
上記課題を解決するためになされた第3の発明は、第1又は第2の発明に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記被覆層が吸湿性を有する材料で形成されている構成を有している。
【0056】
この構成により、第1又は第2の発明の作用に加え、以下のような作用を有する。
【0057】
(1)被覆層が吸湿性を有する材料で形成されていることにより、発光エリア減少の要因となる水分を被覆層で吸収することができるので、電極と発光層との界面に浸入する水分量を低減でき、発光エリア減少を抑制できる。
【0058】
ここで、被覆層の材質としては、酸化カルシウム等が好適に用いられる。
【0059】
上記課題を解決するためになされた第4の発明は、第1乃至第3の発明の内いずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記隔壁の端部から隣接する前記発光部の端部までの距離が、5μm〜10μmである構成を有している。
【0060】
この構成により、第1乃至第3の発明の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
【0061】
(1)隔壁の端部から隣接する発光部の端部までの距離を5μm〜10μmに形成することにより、水分や酸素等の浸入による発光面積減少の発生を遅らせることができる。

【0062】
ここで、隔壁の端部から隣接する発光部の端部までの距離が5μmより短くなるにつれ、発光面積の減少が短時間で発生し易く、隔壁と発光部を離間させた効果が不十分になる傾向があり、距離が10μmより長くなるにつれ、発光部の面積が不足して光量が低下したり発光部のピッチが粗くなって解像度が低下したりする傾向があり、いずれも好ましくない。
【0063】
上記課題を解決するためになされた第5の発明は、第1乃至第4の発明の内いずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記発光層の上面に形成された前記陽極若しくは前記陰極のどちらか一方の電極が、前記発光層の面積よりも小さな面積を有する構成を有している。
【0064】
この構成により、第1乃至第4の発明の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
【0065】
(1)発光層の上面に形成された陽極若しくは陰極のどちらか一方の電極が、発光層の面積よりも小さな面積を有することにより、最上部に形成された電極の端部を被覆層で確実に覆うことができ、発光エリア減少の要因となる水分や酸素等の浸入経路を絶つことができ、発光エリア減少を効果的に抑制できる。
【0066】
上記課題を解決するためになされた第6の発明は、第1乃至第5の発明の内いずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記隔壁が撥水性を有する材料で形成されている構成を有している。
【0067】
この構成により、第1乃至第5の発明の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
【0068】
(1)隔壁が撥水性を有する材料で形成されているので、発光層を湿式成膜法により成膜するだけで発光層と隔壁とを離間させて形成することができ、水分や酸素等の浸入による発光面積減少の発生を遅らせることができ、量産性、長寿命性に優れる。
【0069】
ここで、発光層をスピンコート法等の湿式成膜法により成膜した場合に、発光層は隔壁の根元にまで潜り込んで成膜されてしまうが、隔壁が撥水性を有することにより、発光層を発光部の内側に留めることが可能となる。また、画素規制層が撥水性を有する場合も同様の効果を得ることができる。
【0070】
上記課題を解決するためになされた第7の発明は、露光装置であって、第1乃至第6の内いずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を光源に用いた構成を有している。
【0071】
この構成により、以下のような作用を有する。
【0072】
(1)発光エリア減少を抑制した有機エレクトロルミネッセンス素子を光源に用いることで、装置を大型化することなく長期にわたり露光に必要な光量を得ることができ実用性、信頼性に優れる。
【0073】
上記課題を解決するためになされた第8の発明は、画像形成装置であって、第1乃至第6の内いずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を光源に用いた構成を有している。
【0074】
この構成により、以下のような作用を有する。
【0075】
(1)発光エリア減少を抑制した有機エレクトロルミネッセンス素子を光源に用いることで、装置を大型化することなく長期にわたり露光に必要な光量を得ることができ実用性、信頼性に優れる。
【0076】
ここで、有機エレクトロルミネッセンス素子は画像形成装置の露光部に実装される。露光部のヘッド支持部材上に光源として実装される有機エレクトロルミネッセンス素子は封止材により気密封止され、ヘッド支持部材上などに配設されたドライバから画像データに対応した電圧を給電されて発光する。この有機エレクトロルミネッセンス素子からの照射光がプリズムで屈折され、ファイバアレイで集光され、さらにシリンドリカルレンズで副走査方向に絞り込まれて露光に用いられる。
【0077】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における有機エレクトロルミネッセンス素子について図面に基づき説明する。
【0078】
図1は本発明の実施の形態1における有機エレクトロルミネッセンス素子の構造を示す要部断面図である。
【0079】
図1中、1は本発明の実施の形態1における有機エレクトロルミネッセンス素子、2は透明なソーダガラスで形成された有機エレクトロルミネッセンス素子1の基板、3は基板2上にITO等の透明導電性薄膜を成膜して形成した透明な陽極、4は陽極3上にポリイミド等の絶縁層を成膜して形成した画素規制層、5は画素規制層4上にネガ型レジストで形成され後述する陰極7を分離する隔壁、6は陽極3上,画素規制層4上の一部,隔壁5上に形成された有機エレクトロルミネッセンス素子1の発光層、7は発光層6上に真空蒸着法により成膜された陰極、8は隔壁5を含む有機エレクトロルミネッセンス素子1の表面全体にバリア層として覆設された被覆層、9は陽極3上に成膜された画素規制層4を部分的に取り除くことにより形成された有機エレクトロルミネッセンス素子1の発光部である。
【0080】
本実施の形態では、発光部9の光は基板2側から取り出すようになっているが、基板2と反対面の陰極7側や基板2の側面から取り出すようにしてもよい。
【0081】
以上のように構成された有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法について説明する。
【0082】
まず、スパッタ法により基板2上に膜厚が150nmのITO膜を成膜し、このITO膜の上部にポジレジストをスピンコート等により塗布し、所定時間プリベークを行った後、所定のパターンに露光し、レジスト現像液に浸漬することにより現像を行う。その後、所定時間ポストベークを行った後、ITOエッチング液に所定時間浸漬することにより、エッチングを行って透明な導電性膜をパターニングし、レジスト剥離液を用いて、レジストをITO膜上から剥離することで、所定のパターンに陽極3を形成した。
【0083】
次に、陽極3上に絶縁層を画素規制層4として成膜した後、発光素子として機能させる部分だけ取り除き発光部9とする。本実施の形態では、感光性のポリイミドを、スピンコート法により成膜した。成膜後、所定時間ホットプレート上にてプリベークを行った後、所定のパターンに露光し、レジスト現像液に浸漬することにより現像を行った。その結果、発光素子として機能する発光部9が画素規制層4に囲まれた窓状に形成された。次に、後の工程で使用される、溶媒や試薬に侵されて、発光部9が変形しないように、高温で完全に硬化させるポストベークを行った。
【0084】
次に、後に成膜される陰極7を分離するための隔壁5を画素規制層4上に形成した。本実施の形態では、ネガ型レジストを隔壁材料として用いた。まず、画素規制層4上にネガ型レジストをスピンコート法により成膜した。このときネガ型レジストの膜厚は、陽極3上に形成される発光層6及び陰極7の膜厚を合わせた厚さよりも厚くした。これにより後に形成される陰極7の分離が可能となる。ネガ型レジストを成膜した後、所定時間ホットプレート上にてプリベークを行い、所定のパターンに露光し、もう一度所定時間ホットプレート上にてプリベークを行うことで、硬化を促進させ、レジスト現像液に浸漬することにより現像を行った。この結果、絶縁性の逆テーパー形状を有する隔壁5が画素規制層4上に形成された。次に、後の工程で使用される、溶媒や試薬に侵されて、逆テーパー形状の隔壁5が変形しないように、高温で完全に硬化させるポストベークを行った。また、逆テーパー形状の底部の幅と頂部の幅との差は、プリベークの温度と時間、露光量、現像時間等に大きく影響される。特に温度は基板2全体に対して均一になるように制御することが好ましい。
【0085】
尚、隔壁5と発光部9の端部との距離は、5μm〜10μmに形成した。隔壁5の端部から隣接する発光部9の端部までの距離が5μmより短くなるにつれ、発光面積の減少が短時間で発生し易く、隔壁5と発光部9を離間させた効果が不十分になる傾向があり、距離が10μmより長くなるにつれ、発光部9の面積が不足して光量が低下したり発光部9のピッチが粗くなって解像度が低下したりする傾向があることがわかったためである。水分や酸素等の浸入経路である隔壁5と発光部9の端部との距離を5μm以上とすることで、発光エリア減少の成長速度(およそ0.01μm/時間)に対して十分な距離を確保することができる。
【0086】
次に、真空蒸着法やスピンコート法等の成膜方法により発光層6を形成し、真空蒸着法により陰極7を成膜した。陰極7を成膜するときにはArガス等の不活性ガスを入れて成膜することが好ましい。これにより、平均自由行程(ミーン・フリー・パス)を短くすることができ、ステップカバレッジをよくすることができる。その結果、陰極7の端部が隔壁5の逆テーパー部分の陰(根元部)にまで潜り込み、発光部9の端部と陰極7の端部との距離が長くなるので、水分や酸素等の浸入経路を長くすることができ、発光エリア減少の発生を抑制する効果が得られる。
【0087】
さらに、発光層6を真空蒸着法により成膜する場合に、それよりもミーン・フリー・パスを短くして陰極7を真空蒸着すると、発光層6自体を陰極7により完全に覆うことができ、発光層6を形成する有機膜がむき出しにならないので、水分や酸素等の浸入を抑制でき、発光エリア減少を抑制する効果が得られる。尚、発光層6の成膜に真空蒸着法を用いる場合は、真空を破らずに連続して陰極7を形成することが好ましい。
【0088】
次に、大気圧に戻すことなく被覆層8をバリア層として成膜した。被覆層8は隔壁5の逆テーパー部分の陰や側面をも全て覆うように形成した。これにより、陰極7の端部を欠陥の無い被覆層8で完全に覆うことができ、水分や酸素等の浸入経路を確実に遮断して発光エリア減少の発生を抑制する効果が得られる。
【0089】
本実施の形態では、被覆層8は、陰極7を真空蒸着法で形成後、大気圧に戻すことなく、比較的マイルドな真空蒸着法により成膜した。このとき、陰極7の成膜時と同様にArガス等の不活性ガスを入れることにより、平均自由行程(ミーン・フリー・パス)を短くしてステップカバレッジをよくすることができ、隔壁5の逆テーパー部分の陰や側面を完全に覆うことができる。
【0090】
尚、被覆層8の材質として吸水性を有する酸化カルシウム等を用いた場合、浸入してくる水分を捕獲することができ、より効果的に発光エリア減少の発生を抑制できる。
【0091】
以上のように形成された実施の形態1における有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた画像形成装置について説明する。
【0092】
図2は本発明の実施の形態1における有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた画像形成装置を示す要部模式断面図である。
【0093】
図2中、10はカラーの画像形成装置、11は下から順にイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー像を形成するための画像形成装置10の4つの現像部、12は各色の現像部11のそれぞれに対応して配設された実施の形態1における有機エレクトロルミネッセンス素子1を光源とする画像形成装置10の露光部(露光装置)、13は各色の現像部11及び露光部12のそれぞれに対応して配設された画像形成装置10の感光部、14は各色の現像部11,露光部12,感光部13に対向する位置に配設され、各色の感光部13の感光ドラム13a上に顕像化された各色トナー像を記録媒体20上に相互に重ね転写してカラートナー像を形成する画像形成装置10の転写部、14aは各色の感光ドラム13aに対応して配設された転写部14の転写ローラ、14bは各々の転写ローラ14aを各色の感光ドラム13aに圧接する転写部14のスプリング、15は現像部11,露光部12,感光部13を挟んで転写部14の反対側に配設され記録媒体20が収納される画像形成装置10の給紙部、16は給紙部15から記録媒体20を1枚ずつ取り出す給紙ローラ、17は給紙部15から転写部14に至る用紙搬送路上に配設され、所定のタイミングで記録媒体20を転写部14に送るレジストローラ、18は転写部14でカラートナー像が形成された記録媒体20が走行する用紙搬送路上に配置された画像形成装置10の定着部、18aは押圧ローラ18bと共に記録媒体20を狭持回転し記録媒体20上に転写されたカラー画像を加熱、圧着して定着させる定着部18の加熱ローラ、19はカラー画像形成が終了した記録媒体20が排出される画像形成装置10の排紙トレイである。
【0094】
次に、画像形成装置10の現像部11の詳細について説明する。図3は画像形成装置の現像部を示す要部断面模式図である。
【0095】
図3中、11aは露光部12からの照射光によって外周面に静電潜像が形成された感光ドラム13aにトナーを付着させて静電潜像をトナー像として顕像化する現像ローラ(現像手段)、11bはタンク内のトナー21を撹拌する撹拌部材、11cはトナー21を撹拌しつつこれを現像ローラ11aへ供給するサプライローラ、11dは現像ローラ11aへ供給されたトナー21を所定の厚みに整えるとともに摩擦によりトナー21を帯電させるドクターブレードである。
【0096】
次に、画像形成装置10の露光部12の詳細について説明する。図4は画像形成装置の露光部を示す要部断面模式図である。
【0097】
図4中、12aは露光部12のヘッド支持部材、12bはヘッド支持部材12a上に光源として実装された実施の形態1における有機エレクトロルミネッセンス素子1を気密封止する封止材、12cはヘッド支持部材12a上に配設され画像データに対応した電圧を有機エレクトロルミネッセンス素子1に給電してこれを発光させるドライバ、12dは有機エレクトロルミネッセンス素子1からの照射光を屈折させるプリズム、12eはプリズム12dからの光を集めるファイバアレイ、12fはファイバアレイ12eからの光を副走査方向に絞り込むシリンドリカルレンズであり、矢印は光路を示している。
【0098】
尚、有機エレクトロルミネッセンス素子1は直流駆動以外に、交流電圧または交流電流、あるいはパルス波で駆動してもよい。
【0099】
次に、画像形成装置10の感光部13の詳細について説明する。図5は画像形成装置の感光部を示す要部断面模式図である。
【0100】
図5中、13aは回転可能に配設された像担持体としての感光ドラム(感光体)、13bは感光ドラム13aに圧接されて感光ドラム13aの表面を一様な電位に帯電させる帯電器(帯電手段)、13cは画像転写後の感光ドラム13aに残留しているトナーを除去するクリーナである。
【0101】
各色に対応した感光部13の感光ドラム13aは、回転中心軸が同一直線上に並ぶように一列に配置されている。また、感光ドラム13aに圧接された帯電器13bは、感光ドラム13aの回転に従動して回転する。
【0102】
以上のように構成された画像形成装置10の動作について説明する。
【0103】
イエローに対応した一番下の感光ドラム13a上に画像情報のイエロー成分色の潜像が形成される。この潜像はイエロートナーを有する一番下の現像ローラ11aによりイエロートナー像として感光ドラム13a上に可視像化される。その間、給紙ローラ16により給紙部15から取り出された記録媒体20は、レジストローラ17によりタイミングがとられて転写部14に送り込まれる。そして、感光ドラム13aと転写ローラ14aとで挟持搬送され、このときに前述したイエロートナー像が感光ドラム13aから転写される。
【0104】
イエロートナー像が記録媒体20に転写されている間に、続いてマゼンタ成分色の潜像が形成され、下から二番目の感光ドラム13aでマゼンタトナーによるマゼンタトナー像が顕像化される。そして、イエロートナー像が転写された記録媒体20に対して、マゼンタトナー像がイエロートナー像と重ね転写される。
【0105】
以下、シアントナー像、ブラックトナー像についても同様にして画像形成および転写が行われ、記録媒体20上に4色のトナー像の重ね合わせが終了する。
【0106】
その後、カラー画像の形成された記録媒体20は定着部18へと搬送される。定着部18では、転写されたトナー像が記録媒体20に加熱定着されて、記録媒体20上にフルカラー画像が形成される。
【0107】
このようにして一連のカラー画像形成が終了した記録媒体20は、その後、排紙トレイ28上に排出される。
【0108】
尚、4色のトナー像の重ね合わせの順序は前述のものに限定されるものではなく、任意に選択することができ、現像色もイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの4色に限定されるものではない。また、画像形成装置はフルカラーに対応したものに限らず、ブラックなどの単色の画像形成装置にも適用することができる。
【0109】
以上のように本発明の実施の形態1における有機エレクトロルミネッセンス素子によれば、以下のような作用を有する。
【0110】
(1)隣接する複数の発光部9を電気的に分離する隔壁5を含む表面全体に被覆層8が覆設されているので、有機エレクトロルミネッセンス素子1の最上面に形成された陰極7の端部が被覆層8ですべて覆われ、発光エリア減少の要因となっている水分や酸素等の有機エレクトロルミネッセンス素子1内部への浸入経路を絶つことができ、発光エリア減少を抑制できる。
【0111】
(2)被覆層8が絶縁体で形成されているので、複数の発光部9を確実に絶縁することができる。
【0112】
(3)被覆層8が吸湿性を有することにより、発光エリア減少の要因となる水分を被覆層8で吸収することができるので、陰極7と発光層6との界面に浸入する水分量を低減でき、発光エリア減少を抑制できる。
【0113】
(4)隔壁5の端部から隣接する発光部9の端部までの距離を5μm〜10μmに形成することにより、水分や酸素等の浸入による発光面積減少の発生を遅らせることができる。
【0114】
以上のように本発明の実施の形態1における有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた画像形成装置によれば、以下のような作用を有する。
【0115】
(1)発光エリア減少を抑制した有機エレクトロルミネッセンス素子を光源に用いることで、装置を大型化することなく長期にわたり露光に必要な光量を得ることができ実用性、信頼性に優れる。
【0116】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2における有機エレクトロルミネッセンス素子について図面に基づき説明する。
【0117】
図6は本発明の実施の形態2における有機エレクトロルミネッセンス素子の構造を示す要部断面図である。
【0118】
図6において、実施の形態2における有機エレクトロルミネッセンス素子1aが実施の形態1における有機エレクトロルミネッセンス素子1と異なるのは、発光層6の端部が隣接する隔壁5の根元の端部近傍まで形成されている点と、発光層6の上面に形成された陰極7が発光層6の面積よりも小さな面積を有する点である。
【0119】
以上のように構成された実施の形態2における有機エレクトロルミネッセンス素子1aの製造工程については、隔壁5の製造工程までは実施の形態1における有機エレクトロルミネッセンス素子1の製造工程と同様であるので、それ以降の工程について説明する。
【0120】
隔壁5を形成した後、スピンコート法等の湿式成膜法により発光層6を形成した。このとき、発光層6の端部は逆テーパー状の隔壁5の根元部分にまで潜り込み、隔壁5の端部近傍まで成膜される。
【0121】
次に、真空蒸着法により陰極7を成膜した。この陰極7の形成については実施の形態1と同様に成膜時にArガス等の不活性ガスを入れることで、陰極7の端部が隔壁5の逆テーパー部分の根元にまで潜り込ませることができる。発光部9の端部から陰極7の端部までの距離が長くなることで、実施の形態1と同様に発光エリア減少の発生を抑制する効果が得られる。
【0122】
発光層6の端部が隔壁5の端部近傍まで達しているため、陰極7の面積が発光層6の面積よりも小さな面積となり、発光層6を陰極7により完全に覆うことができない部分も発生するが、後工程で実施の形態1と同様に被覆層8を形成することにより、被覆層8で露出した発光層6の端部を直接覆うことができ、水分や酸素等の浸入経路を確実に遮断できる。
【0123】
以上のように本発明の実施の形態2における有機エレクトロルミネッセンス素子によれば、実施の形態1の作用に加え、以下のような作用を有する。
【0124】
(1)発光層6の上面に形成された陰極7が、発光層6の面積よりも小さな面積を有することにより、最上部に形成された陰極7の端部を被覆層8で確実に覆うことができ、発光エリア減少の要因となる水分や酸素等の浸入経路を絶つことができ、発光エリア減少を効果的に抑制できる。
【0125】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3における有機エレクトロルミネッセンス素子について図面に基づき説明する。
【0126】
図7は本発明の実施の形態3における有機エレクトロルミネッセンス素子の構造を示す要部断面図である。
【0127】
図7において、実施の形態3における有機エレクトロルミネッセンス素子1bが実施の形態1における有機エレクトロルミネッセンス素子1と異なるのは、画素規制層4及び隔壁5の材料に撥水性を有する材料を用い、発光層6が陽極3上のみに形成されている点である。
【0128】
以上のように構成された実施の形態3における有機エレクトロルミネッセンス素子1bの製造工程については、画素規制層4及び隔壁5の材料が異なるだけで、隔壁5の製造工程までは実施の形態1における有機エレクトロルミネッセンス素子1の製造工程と同様であるので、それ以降の工程について説明する。
【0129】
隔壁5を形成した後、実施の形態2と同様にスピンコート法等の湿式成膜法により発光層6を形成した。このとき、画素規制層4及び隔壁5が撥水性を有することにより、発光層6が形成される範囲は発光部9の内部に留まる。
【0130】
次に、実施の形態1及び2と同様に真空蒸着法により陰極7を成膜した。発光層6が陽極3上のみに形成され、その周囲が画素規制層4により囲まれていることから、陰極7を真空蒸着すると、発光層6自体を陰極7により完全に覆うことができ、発光層6がむき出しになることがなく、発光層6への水分や酸素等の浸入を効果的に抑制できる。
【0131】
さらに、実施の形態1及び2と同様に被覆層8を形成することにより、被覆層8で陰極7の全面を覆うことができ、水分や酸素等の浸入経路を確実に遮断できる。
【0132】
以上のように本発明の実施の形態3における有機エレクトロルミネッセンス素子によれば、実施の形態1及び2の作用に加え、以下のような作用を有する。
【0133】
(1)画素規制層4及び隔壁5が撥水性を有する材料で形成されているので、発光層6を湿式成膜法により成膜するだけで発光層6と隔壁5とを離間させて形成することができ、水分や酸素等の浸入による発光面積減少の発生を遅らせることができ、量産性、長寿命性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明によれば、簡便な構造で発光エリア減少の発生を改善でき、長寿命性、量産性に優れる有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができ、種々の装置における発光素子として有用であり、特に露光装置や画像形成装置等の光源として用いることにより、装置を大型化することなく露光に必要な光量を得ることができ、実用性、信頼性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明の実施の形態1における有機エレクトロルミネッセンス素子の構造を示す要部断面図
【図2】本発明の実施の形態1における有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた画像形成装置を示す要部模式断面図
【図3】画像形成装置の現像部を示す要部断面模式図
【図4】画像形成装置の露光部を示す要部断面模式図
【図5】画像形成装置の感光部を示す要部断面模式図
【図6】本発明の実施の形態2における有機エレクトロルミネッセンス素子の構造を示す要部断面図
【図7】本発明の実施の形態3における有機エレクトロルミネッセンス素子の構造を示す要部断面図
【図8】従来のエレクトロルミネッセンス素子の構成を示す断面図
【図9】従来のエレクトロルミネッセンス素子の構造を示す要部断面図
【符号の説明】
【0136】
1,1a,1b,30,30a 有機エレクトロルミネッセンス素子
2,31 基板
3,32 陽極
4,36 画素規制層
5,37 隔壁
6,34 発光層
7,35 陰極
8 被覆層
9,38 発光部
10 画像形成装置
11 現像部
11a 現像ローラ(現像手段)
11b 撹拌部材
11c サプライローラ
11d ドクターブレード
12 露光部
12a ヘッド支持部材
12b 封止材
12c ドライバ
12d プリズム
12e ファイバアレイ
12f シリンドリカルレンズ
13 感光部
13a 感光ドラム
13b 帯電器(帯電手段)
13c クリーナ
14 転写部
14a 転写ローラ
14b スプリング
15 給紙部
16 給紙ローラ
17 レジストローラ
18 定着部
18a 加熱ローラ
18b 押圧ローラ
19 排紙トレイ
20 記録媒体
21 トナー
33 正孔輸送層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極との間に有機材料で形成された発光層を有する複数の発光部と、隣接する前記複数の発光部を電気的に分離する隔壁と、を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記発光部及び前記隔壁を含む表面全体に覆設された被覆層を備えたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
前記被覆層が絶縁体で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記被覆層が吸湿性を有する材料で形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記隔壁の端部から隣接する前記発光部の端部までの距離が、5μm〜10μmであることを特徴とする請求項1乃至3の内いずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記発光層の上面に形成された前記陽極若しくは前記陰極のどちらか一方の電極が、前記発光層の面積よりも小さな面積を有することを特徴とする請求項1乃至4の内いずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記隔壁が撥水性を有する材料で形成されていることを特徴とする請求項1乃至5の内いずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
請求項1乃至6の内いずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を光源に用いたことを特徴とする露光装置。
【請求項8】
請求項1乃至6の内いずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を光源に用いたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−42488(P2007−42488A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−226459(P2005−226459)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】