説明

有機エレクトロルミネッセンス装置の工程評価用基板

【課題】1つの基板を用いて、個別点灯の評価と全面点灯の評価とを評価することが可能であり、しかも、1画素毎の特性がばらついた場合においても、測定精度が低下する虞がなく、さらに、テスト基板を作製するための工数及び製造コストを低減することが可能な有機エレクトロルミネッセンス装置の工程評価用基板を提供する。
【解決手段】本発明の工程評価用基板31は、基板32上に、個別点灯領域33、及び個別点灯領域33の両側に近接して全面点灯領域34、35が設けられ、個別点灯領域33はFPC43の端子44及びFPC46の端子47に並列接続され、全面点灯領域34、35は、陽極端子52及び陰極端子54に並列接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス装置の工程評価用基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自発光型の平面表示型電気光学装置として、有機薄膜により発光層(電気光学層)等を構成した多層構造の有機エレクトロルミネッセンス(Electroluminescence:EL)装置が開発され、これまでにも様々な提案がなされている(例えば、特許文献1等参照)。
この有機EL装置には、トップエミッション型と、ボトムエミッション型の2種類のものがあり、薄型、軽量、フレキシブル等の優れた特徴を有することから、ディスプレイパネル、電子ペーパー等、様々な分野への応用が進められている。
【0003】
この有機EL装置を作製する方法としては、例えば、インクジェット法が挙げられる(例えば、特許文献2参照)。
インクジェット法を用いて有機EL装置を作製するには、基板上に設けられた発光領域となるバンク内の被塗布領域に、例えば、有機半導体発光材料またはカラーフィルタ材料を含む液滴を吐出して充填し、この充填した液滴に加熱処理、減圧処理のいずれか一方または双方を施して液滴に含まれる溶媒を除去する。これにより、被塗布領域に発光層またはカラーフィルタ層となる薄膜が形成される。
有機半導体発光材料としては、例えば、赤、緑、青から選択され電界の印加によりエレクトロルミネッセンスを発生する発光材料が用いられ、また、カラーフィルタ材料としては、例えば、赤、緑、青から選択された着色材料が用いられる。
【0004】
この有機EL装置では、インクジェット法によるインクの液滴の吐出量、この吐出された液滴に加熱処理、減圧処理のいずれか一方または双方を施して得られた画素の厚みや発光特性等を、複数の画素をまとめて駆動させることで評価している。また、1画素の個別点灯の評価と、画素部全体の全面点灯の評価とは、それぞれ別個のテスト基板を用いて評価している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−85488号公報
【特許文献2】特許第3328297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の有機EL装置では、複数の画素をまとめて駆動させることで特性を評価しているので、1画素毎の特性がばらつくと、画素部全体の電流−電圧−輝度評価(IVL評価)がばらついてしまい、測定精度が低下するという問題点があった。
また、1画素の個別点灯の評価と、画素部全体の全面点灯の評価とを、それぞれ別個のテスト基板を用いて評価しているので、インクジェットプロセスにおける吐出条件等が、個別点灯の評価に用いたテスト基板と、全面点灯の評価に用いたテスト基板とで異なる可能性がある。この場合、個別点灯の評価と全面点灯の評価とで条件等が異なるために、得られた特性の結果についても、これらの条件の違い等を考慮して評価する必要があり、特性評価の簡便性に欠けるという問題点があった。
さらに、個別点灯の評価と全面点灯の評価それぞれに対して個別にテスト基板を作製する必要があり、テスト基板を作製するための余分な工数及び製造コストが掛かるという問題点もあった。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、個別点灯の評価と、全面点灯の評価とを、1つの基板を用いて評価することが可能であり、しかも、1画素毎の特性がばらついた場合においても、測定精度が低下する虞がなく、さらに、テスト基板を作製するための工数及び製造コストを低減することが可能な有機エレクトロルミネッセンス装置の工程評価用基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の有機エレクトロルミネッセンス装置の工程評価用基板を採用した。
すなわち、本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置の工程評価用基板は、基板上に、インクジェット法により複数個の画素領域をマトリックス状に形成して画素部とする際に用いられる有機エレクトロルミネッセンス装置の工程評価用基板であって、基板上に、複数個の被塗布領域をマトリックス状に配置した個別点灯領域と、複数個の被塗布領域をマトリックス状に配置した全面点灯領域とを備え、前記個別点灯領域には、各被塗布領域に配置される有機発光層に対して独立して電流を供給することが可能な複数の画素電極が形成され、前記全面点灯領域には、各被塗布領域に配置される有機発光層に対して一括して電流を供給することが可能な単一の若しくは互いに配線にて接続された複数の画素電極が形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置の工程評価用基板では、基板上に、複数個の被塗布領域をマトリックス状に配置した個別点灯領域と、複数個の被塗布領域をマトリックス状に配置した全面点灯領域とを備え、個別点灯領域に、各被塗布領域に配置される有機発光層に対して独立して電流を供給することが可能な複数の画素電極を形成し、全面点灯領域に、各被塗布領域に配置される有機発光層に対して一括して電流を供給することが可能な単一の若しくは互いに配線にて接続された複数の画素電極を形成したので、インクジェットプロセスにおける吐出条件等が個別点灯と全面点灯とで同一となり、個別点灯と全面点灯とで特性の結果が異なる虞が無くなる。したがって、1つの基板を用いて同一の条件の下で個別点灯の評価と全面点灯の評価とを行うことができる。
また、1つの基板を用いて個別点灯の評価と全面点灯の評価とを行うので、個別点灯領域と全面点灯領域が同一のプロセス履歴を有するものとなり、したがって、プロセス履歴の影響を受けることなく個別点灯の評価及び全面点灯の評価を正確に行うことができ、これらの評価の信頼性を高めることができ、画素毎の特性がばらついた場合においても、測定精度が低下する虞がない。
また、テスト基板を作製するための工数及び製造コストを低減することができる。
【0010】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置の工程評価用基板は、前記全面点灯領域を2つの全面点灯領域により構成し、これらの全面点灯領域を前記個別点灯領域の両側それぞれに隣接して設け、前記個別点灯領域を第1の端子に接続するとともに、2つの前記全面点灯領域を第2の端子に並列接続してなることを特徴とする。
【0011】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置の工程評価用基板では、全面点灯領域を2つの全面点灯領域により構成し、これらの全面点灯領域を個別点灯領域の両側それぞれに隣接して設けたので、個別点灯領域の両側それぞれに隣接して設けられた2つの全面点灯領域により全面点灯のインクジェットプロセスにおける吐出条件等の経時変化を評価することができる。したがって、1つの基板を用いて、個別点灯の評価と、全面点灯の経時評価とを行うことができる。
【0012】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置の工程評価用基板は、前記全面点灯領域を前記個別点灯領域に隣接して設け、前記個別点灯領域を第1の端子に、前記全面点灯領域を第2の端子に、それぞれ接続してなることを特徴とする。
【0013】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置の工程評価用基板では、全面点灯領域を個別点灯領域に隣接して設け、個別点灯領域を第1の端子に、全面点灯領域を第2の端子に、それぞれ接続したので、1つの基板を用いて同一の条件の下で個別点灯の評価と全面点灯の評価とを行うことができる。
したがって、1つの基板を用いて、個別点灯の評価と全面点灯の評価とを簡便に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態の有機EL表示装置の画素領域を示す平面構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の有機EL表示装置の配線構造を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の工程評価用基板を示す平面図である。
【図4】インクジェット法を用いた液滴吐出装置を示す斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の工程評価用基板を用いた評価方法を示す過程図である。
【図6】本発明の第2の実施形態の工程評価用基板を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス(EL)装置の工程評価用基板を実施するための形態について説明する。
【0016】
「第1の実施形態」
図1は、本実施形態の工程評価用基板が適用される有機EL表示装置を示す平面図、図2は、この有機EL表示装置の配線構造を示す図であり、この有機EL表示装置1は、スイッチング素子として薄膜トランジスタ( Thin Film Transistor:TFT)を用いたアクティブマトリクス型の有機EL表示装置である。
【0017】
この有機EL表示装置1は、図1に示すように、平面視略矩形状の素子基板2の中央部分に、複数の画素領域3がマトリクス状に配置されて実表示領域4が形成され、この素子基板2上の実表示領域4の外側には、この実表示領域4を囲むように信号線駆動回路5及び一対の走査線駆動回路6が設けられ、これら信号線駆動回路5及び走査線駆動回路6を含む領域がダミー領域7とされ、この素子基板2上のダミー領域7の外側には、陰極用配線8が設けられ、この実表示領域4及びダミー領域7により画素部9が構成されている。
そして、素子基板2の端部には、陰極用配線8等を外部と接続するための配線基板10が設けられている。
【0018】
この画素領域3の配列は、図1に示すY軸方向ではR(赤)、G(緑)、B(青)各々が同一色となるように配列され、X軸方向ではR(赤)、G(緑)、B(青)がこの順で繰り返されるように配列されている。すなわち、この画素領域3の配列は、一方向(Y軸方向)に直線状に配列された同一色の画素領域3が、他方向(X軸方向)に所定の間隔をおいて平行に配列されたストライプ型となっている。
この画素領域3におけるR(赤)、G(緑)、B(青)各々の色は、画素領域3の発光層に発光材料を、または、画素領域3のエレクトロルミネッセンスを発生する発光層上にカラーフィルタを設けることにより可能である。例えば、発光材料としては、電界の印加によりエレクトロルミネッセンスを発生するR(赤)、G(緑)、B(青)各々の有機半導体発光材料が挙げられ、また、エレクトロルミネッセンスを発生する発光層上に設けられるカラーフィルタ材料としては、R(赤)、G(緑)、B(青)各々の着色材料が挙げられる。
【0019】
この有機EL表示装置1の配線構造は、図2に示すように、複数(図示では5本)の走査線11と、これらの走査線11に直交して延びる複数(図示では4本)の信号線12及び電源線13とが設けられており、走査線11及び信号線12に囲まれた領域が画素領域3に対応している。
これらの画素領域3それぞれには、画素電極となる陽極層21と、陰極層22と、これら陽極層21及び陰極層22により挟まれた発光層23とにより有機EL素子が構成されている。
また、これらの画素領域3それぞれには、陽極層21をスイッチング制御するためのスイッチング用TFT24、25と保持容量26とが設けられている。
【0020】
図3は、この有機EL表示装置1の製造工程の評価に用いられる工程評価用基板31であり、素子基板2上に、インクジェットにより液滴を吐出することにより複数個の画素領域3をマトリックス状に形成する際の、液滴及びそれにより形成される薄膜の形状及び特性の評価を行うための基板であり、例えば、インクジェットによる液滴の吐出量の調整及び確認、液滴を乾燥して薄膜とした場合の薄膜と液滴の吐出量との相関、液滴の吐出量と薄膜の特性との相関等を評価・確認する場合に用いられる基板である。
【0021】
この工程評価用基板31は、矩形板状の基板32の解像度が一律な発光領域の長手方向の中心線上に、この基板32の長手方向(Y軸方向)に沿って延在する個別点灯領域33が設けられ、この個別点灯領域33の両側それぞれに、全面点灯領域34、35が設けられている。
【0022】
この個別点灯領域33は、バンクにより区画された複数個の被塗布領域41がマトリックス状に配置されたもので、これらの被塗布領域41の配列は、図3に示すY軸方向ではR(赤)、G(緑)、B(青)各々が同一色となるように配列(図3では19個)され、X軸方向ではR(赤)、G(緑)、B(青)がこの順で複数回(図3では2回)繰り返されるように配列(図3では計6列)されている。すなわち、これらの被塗布領域41の配列は、一方向(Y軸方向)に直線状に配列された同一色の被塗布領域41が、他方向(X軸方向)に所定の間隔をおいて平行に配列されたストライプ型となっている。
【0023】
この個別点灯領域33では、個々の画素毎の発光特性を評価するためのもので、複数個の被塗布領域41それぞれの上端部が配線42を介して基板32の長手方向の一方の側面に取り付けられたフレキシブルプリント配線板(FPC)43のそれぞれの(第1の)端子44に並列接続され、それぞれの下端部が配線45を介して基板32の長手方向の他方の側面に取り付けられたフレキシブルプリント配線板(FPC)46のそれぞれの(第1の)端子47に並列接続されている。
【0024】
また、全面点灯領域34、35は、個別点灯領域33と同様、バンクにより区画された複数個の被塗布領域41がマトリックス状に配置されたもので、これらの被塗布領域41の配列は、個別点灯領域33と同様、図3に示すY軸方向ではR(赤)、G(緑)、B(青)各々が同一色となるように配列(図3では19個)され、X軸方向ではR(赤)、G(緑)、B(青)がこの順で繰り返されるように配列(図3では計6列)されている。
【0025】
これら全面点灯領域34、35では、一方向(Y軸方向)に直線状に配列された同一色の被塗布領域41それぞれが、配線51を介して基板32の長手方向の一方の端部に設けられた陽極端子(第2の端子)52に並列接続されるとともに、配線53を介して基板32の長手方向の他方の端部に設けられた陰極端子(第2の端子)54に並列接続されている。
例えば、R(赤)では、Y軸方向に配列された19個の被塗布領域41それぞれが配線51、53により並列接続されている。G(緑)及びB(青)も同様にY軸方向に配列された19個の被塗布領域41それぞれが配線51、53により並列接続されている。そして、配線51は、R(赤)、G(緑)、B(青)共通の配線になっている。
【0026】
次に、この工程評価用基板31を用いて、インクジェット法による画素領域3の製造工程を評価する方法について説明する。
ここでは、まず、画素領域3の製造に用いられるインクジェット法を用いた液滴吐出装置について、図4に基づき説明する。
この液滴吐出装置61は、インクジェット法により素子基板2上の所定領域に液滴を吐出して複数の画素領域3を形成する装置であり、装置架台62と、ワークステージ63と、ステージ移動装置64と、キャリッジ65と、液滴吐出ヘッド66と、キャリッジ移動装置67と、チューブ68と、第1〜第3タンク69〜71と、制御装置72と、を備えている。
【0027】
装置架台62は、ワークステージ63及びステージ移動装置64の支持台である。ワークステージ63は、装置架台62上においてステージ移動装置64により主走査方向であるX軸方向に移動可能に設置されており、上流側の搬送装置(図示略)から搬送される素子基板2(あるいは工程評価用基板31)を真空吸着機構によりXY平面上に保持する。
ステージ移動装置64は、リニアガイド及びボールネジ等の直動機構を備えており、制御装置72から出力されるワークステージ63の移動先のX座標を示すステージ位置制御信号に基づいて、ワークステージ63をX軸方向に移動させる。
【0028】
キャリッジ65は、液滴吐出ヘッド66を保持しており、キャリッジ移動装置67により副走査方向であるY軸方向及びZ軸方向に移動可能に設けられている。
液滴吐出ヘッド66は、複数のノズル(図示略)を備えており、制御装置72から出力される描画データ信号や駆動信号に基づいて液滴を吐出する。
この液滴吐出ヘッド66は、R(赤)、G(緑)及びB(青)の各液滴に対応した数だけヘッド(図示略)が設けられており、それぞれキャリッジ65を介してチューブ68と接続されている。
そして、R(赤)に対応するヘッドには、チューブ68を介して第1タンク69からR(赤)のインク(液体)が供給され、G(緑)に対応するヘッドには、チューブ68を介して第2タンク70からG(緑)のインク(液体)が供給され、B(青)に対応するヘッドには、チューブ68を介して第3タンク71からB(青)のインク(液体)が供給される。
【0029】
キャリッジ移動装置67は、装置架台62をY軸方向に沿って跨ぐように設けられた橋梁構造のものであり、Y軸方向及びZ軸方向に沿ってリニアガイド及びボールネジ等の直動機構を備え、制御装置72から出力されるキャリッジ65の移動先のY座標及びZ座標を示すキャリッジ位置制御信号に基づいてキャリッジ65をY軸方向及びZ軸方向に移動させる。
【0030】
チューブ68は、第1〜第3タンク69〜71からキャリッジ65にR(赤)、G(緑)及びB(青)の各インクを供給するための供給用チューブである。
第1タンク69は、R(赤)のインクを貯留すると共にチューブ68を介して液滴吐出ヘッド66のR(赤)に対応するヘッドにR(赤)のインクを供給する。また、第2タンク70は、G(緑)のインクを貯留すると共にチューブ68を介して液滴吐出ヘッド66のG(緑)に対応するヘッドにG(緑)のインクを供給する。また、第3タンク71は、B(青)のインクを貯留すると共にチューブ68を介して液滴吐出ヘッド66のB(青)に対応するヘッドにB(青)のインクを供給する。
【0031】
制御装置72は、ワークステージ63の移動による素子基板2(あるいは工程評価用基板31)の位置決め動作と、キャリッジ65の移動による液滴吐出ヘッド66の位置決め動作と、液滴吐出ヘッド66による素子基板2(あるいは工程評価用基板31)上の所定位置にインクを吐出する液滴吐出動作と、を制御する装置である。この制御装置72では、ステージ移動装置64にステージ位置制御信号を出力し、キャリッジ移動装置67にキャリッジ位置制御信号を出力し、液滴吐出ヘッド66に描画データ及び駆動信号を出力する。
【0032】
次に、上記の工程評価用基板31を用いて画素領域3の製造工程を評価する方法について、図3〜図5に基づき説明する。
ここでは、液滴吐出ヘッド66から吐出する液滴として、電界の印加によりエレクトロルミネッセンスを発生するR(赤)、G(緑)、B(青)各々の有機半導体発光材料を含むインクを用いる。
【0033】
ここでは、ワークステージ62上に工程評価用基板31を載置し、この工程評価用基板31の上面と液滴吐出ヘッド66とを対向させ、図5(a)に示すように、工程評価用基板31上の個別点灯領域33及び全面点灯領域34、35それぞれの被塗布領域41に、上述した液滴吐出装置61を用いてインク81を吐出する。
このインク81は、被塗布領域41内全体に広がり、塗膜82となる。
【0034】
次いで、この塗膜82を乾燥させる。
これにより、図5(b)に示すように、基板31上のそれぞれの被塗布領域41に薄膜83が形成された工程評価用のテスト基板84が得られる。
このようにして、基板31上の個別点灯領域33及び全面点灯領域34、35それぞれの被塗布領域41に薄膜83が形成されることで、Y軸方向ではR(赤)、G(緑)、B(青)各々が同一色となるように配列され、X軸方向ではR(赤)、G(緑)、B(青)がこの順で繰り返されるように配列された工程評価用のテスト基板84が得られる。
【0035】
次いで、このテスト基板84の評価を行う。
例えば、個別点灯領域33における薄膜83の膜厚及び特性とインク81の吐出量との相関を得たい場合、フレキシブルプリント配線板43の端子44及びフレキシブルプリント配線板46の端子47を用いて所望の位置の薄膜83に定電圧を印加するか、または定電流を流して点灯させ、この薄膜83自体の発光特性を測定する。このような動作を個別点灯領域33内の全ての薄膜83について行うことにより、個別点灯領域33における薄膜83の膜厚分布、薄膜83の発光特性のばらつきとインク81の吐出量との相関等が得られる。
なお、端子44、46の一方をピンプローブ等の直接接触させる端子に置き換えて測定しても、同様の結果を得ることができる。
【0036】
また、全面点灯領域34、35における薄膜83の膜厚及び特性とインク81の吐出量との相関を得たい場合、陽極端子52と陰極端子54との間に定電圧を印加し、これら全面点灯領域34、35内の全ての薄膜83を点灯させ、これらの薄膜83それぞれの発光を測定し、発光特性のばらつきを調べる。これにより、全面点灯領域34、35における薄膜83の発光特性のばらつきとインク81の吐出量との相関が得られる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態の工程評価用基板31によれば、基板32上に、個別点灯領域33と全面点灯領域34、35とを設け、個別点灯領域33に端子44、47を並列接続するとともに、全面点灯領域34、35に陽極端子52及び陰極端子54を並列接続したので、1つの基板を用いて同一の条件の下で個別点灯の評価と全面点灯の評価とを行うことができる。
また、1つの基板を用いて個別点灯の評価と全面点灯の評価とを行うので、個別点灯領域と全面点灯領域が同一のプロセス履歴を有するものとなり、したがって、プロセス履歴の影響を受けることなく個別点灯の評価及び全面点灯の評価を正確に行うことができる。
【0038】
また、1画素の単位で電流−電圧−輝度評価(IVL評価)を行うことができる。その結果、1画素の単位で膜厚あるいはインクの吐出量等の相関を確認することができる。
また、個別点灯領域33及び全面点灯領域34、35における配線構造を簡単化することができるので、個別点灯領域33及び全面点灯領域34、35のレイアウトを簡単化することができる。
また、画素毎に配線を引き出しているので、画素毎の電流−電圧特性(IV特性)を得ることができる。また、画素毎の輝度を測定することで、1つの画素の電流−電圧−輝度評価(IVL評価)を行うことができる。
【0039】
「第2の実施形態」
図6は、本発明の第2の実施形態の工程評価用基板91を示す平面図であり、本実施形態の工程評価用基板91が第1の実施形態の工程評価用基板31と異なる点は、個別点灯領域33とフレキシブルプリント配線板46との間の全面点灯領域35を配線を結線しないダミー領域92とし、この個別点灯領域33からの配線を配線45のみとしてフレキシブルプリント配線板46のそれぞれの端子47に並列接続し、さらに、全面点灯領域34のみを陽極端子52及び陰極端子54に並列接続した点であり、これ以外の点については第1の実施形態の工程評価用基板31と全く同様である。
【0040】
本実施形態の工程評価用基板91においても、第1の実施形態の工程評価用基板31と同様の作用、効果を奏することができる。
また、個別点灯領域33からの配線を配線45のみとし、全面点灯領域35を配線を結線しないダミー領域92とし、さらに、全面点灯領域34のみを陽極端子52及び陰極端子54に並列接続したので、個別点灯領域33の配線と全面点灯領域34の配線とが交差する虞が無くなり、したがって、独立して駆動させた場合においても、個別点灯領域33の配線と全面点灯領域34の配線とが絶縁破壊により短絡したり、あるいは静電気による破壊により短絡する虞がなくなり、その結果、安定した点灯及び測定を行うことができる。
【符号の説明】
【0041】
1…有機EL表示装置、2…素子基板、3…画素領域、4…実表示領域、9…画素部、31…工程評価用基板、32…基板、33…個別点灯領域、34、35…全面点灯領域、41…被塗布領域、44…(第1の)端子、47…(第1の)端子、52…陽極端子(第2の端子)、54…陰極端子(第2の端子)、66…液滴吐出ヘッド、81…インク、82…塗膜、83…薄膜、91…工程評価用基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、インクジェット法により複数個の画素領域をマトリックス状に形成して画素部とする際に用いられる有機エレクトロルミネッセンス装置の工程評価用基板であって、
基板上に、複数個の被塗布領域をマトリックス状に配置した個別点灯領域と、複数個の被塗布領域をマトリックス状に配置した全面点灯領域とを備え、
前記個別点灯領域には、各被塗布領域に配置される有機発光層に対して独立して電流を供給することが可能な複数の画素電極が形成され、
前記全面点灯領域には、各被塗布領域に配置される有機発光層に対して一括して電流を供給することが可能な単一の若しくは互いに配線にて接続された複数の画素電極が形成されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス装置の工程評価用基板。
【請求項2】
前記全面点灯領域を2つの全面点灯領域により構成し、
これらの全面点灯領域を前記個別点灯領域の両側それぞれに隣接して設け、
前記個別点灯領域を第1の端子に接続するとともに、2つの前記全面点灯領域を第2の端子に並列接続してなることを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス装置の工程評価用基板。
【請求項3】
前記全面点灯領域を前記個別点灯領域に隣接して設け、
前記個別点灯領域を第1の端子に、前記全面点灯領域を第2の端子に、それぞれ接続してなることを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス装置の工程評価用基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−103244(P2011−103244A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258153(P2009−258153)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】