説明

有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法

【課題】ギャップを所望の狭さに形成して高精細化による表示品質の向上を可能にした、有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法を提供する。
【解決手段】素子基板20に固定電極25を形成し、対向基板30のカラーフィルター基板40に可動電極27を形成し、これら素子基板20と対向基板30とをシール層35及び透明樹脂層34を介して貼り合わせた後、固定電極25に可動電極27を静電吸着させることで、カラーフィルター基板40の表示領域を素子基板20側に移動させるようにした、有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を備える有機エレクトロルミネッセンス装置(有機EL装置)が知られている。有機EL装置は、複数の有機EL素子を形成した素子基板と、前記素子基板に対向して配置され、接着層(樹脂層)を介して素子基板に貼着された対向基板と、を備えて構成されている。このような有機EL装置において、特に対向基板側を観察面側とするいわゆるトップエミッション方式では、対向基板側にカラーフィルターを設け、フルカラー表示を可能にしたものが知られている(例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0003】
有機EL素子を形成した素子基板と、カラーフィルターを形成した対向基板とを貼り合わせて有機EL装置を製造するには、従来、以下のようなプロセスで行っていた。
(1)素子基板の外周部へのシール材の塗布(透明樹脂の広がりを抑えるダム形成)
(2)前記シール材で囲まれた領域への透明樹脂の塗布
(3)素子基板と対向基板との真空貼り合わせ
(4)シール材、透明樹脂の硬化
【0004】
ところで、近年では有機EL装置の表示品質のさらなる向上が求められており、表示品質向上のため、表示画素の高精細化が進められている。しかし、このように表示画素の高精細化を進めると、有機EL素子で発光した光がこの有機EL素子に対応するカラーフィルターを通過せず、隣のカラーフィルターを通過してしまい、発光色の混色やコントラストの低下を招いてしまうことがある。
【0005】
そこで、有機EL素子層とカラーフィルターとの間のギャップを狭くし、有機EL素子で発光した光が必ずこれに対応するカラーフィルターを通過するように構成することが必要になる。前記のプロセスにおいて、有機EL素子層とカラーフィルターとの間のギャップを決めるものは、透明樹脂の塗布量である。したがって、ギャップを狭くするためには、透明樹脂の塗布量を十分に少なくする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−265615号公報
【特許文献2】特開2005−294057号公報
【特許文献3】特開2004−288456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、透明樹脂の塗布量を少なくすると、このような少量の透明樹脂を安定して素子基板上に配する(塗布)するのが難しくなる。すなわち、塗布する透明樹脂の全量を1箇所に配すると、この透明樹脂が素子基板全体に広がりにくくなり、素子基板の面方向において透明樹脂の量にバラツキが生じてしまう。また、塗布する透明樹脂の全量を複数箇所に分けて配すると、各箇所毎での塗布量がさらに少なくなることから、各箇所での塗布量にバラツキが生じ易くなるとともに、全体の塗布量についてもバラツキが生じ易くなってしまう。その結果、素子基板の面方向においてギャップを均一に形成するのが難しくなり、表示品質の向上も困難になっている。また、さらにギャップを狭くしようとすると、透明樹脂の必要量が少なくなりすぎ、塗布自体が行えなくなってしまう。
【0008】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、有機EL素子層とカラーフィルターとの間のギャップを所望の狭さに形成することができ、これによって高精細化による表示品質の向上を可能にした、有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法は、第1基板の一方の面の第1表示領域に有機エレクトロルミネッセンス素子を形成するとともに、前記第1表示領域の外側に固定電極を形成して素子基板を形成する工程と、
透明な第2基板の一方の面の第2表示領域にカラーフィルターを形成するとともに、該第2基板の前記第2表示領域と該第2基板の外周部との間に、該第2表示領域と外周部とを一部で連続させた状態で第2基板を貫通する切欠部を形成し、さらに、前記第2表示領域の外側でかつ前記切欠部の内側であって前記固定電極に対応する位置に、可動電極を形成してカラーフィルター基板を形成する工程と、
前記カラーフィルター基板の他方の面側に透明な第3基板を貼設するとともに、該第3基板の外周部と前記カラーフィルター基板の前記切欠部の外側との間を接着して、対向基板を形成する工程と、
前記素子基板の一方の面と前記対向基板における前記カラーフィルター基板の一方の面とのうちの一方あるいは両方に、前記第1表示領域と前記固定電極、及び/又は、前記第2表示領域と前記可動電極を囲んだ状態でシール材を配してシール層を形成するとともに、該シール層に囲まれた領域に透明樹脂を配して透明樹脂層を形成する塗布工程と、
前記塗布工程後、前記素子基板の一方の面側と前記対向基板における前記カラーフィルター基板の一方の面側とを、前記固定電極とこれに対応する前記可動電極とを対向させた状態で、真空雰囲気にて前記シール層及び透明樹脂層を介して貼り合わせる貼着工程と、
前記固定電極及び前記可動電極に電圧を印加し、前記固定電極に前記可動電極を静電吸着させることで、前記対向基板における前記カラーフィルター基板の第2表示領域を前記素子基板側に移動させる静電吸着工程と、
前記静電吸着工程後、前記透明樹脂層を硬化させる工程と、を備えることを特徴としている。
【0010】
この有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法によれば、素子基板に固定電極を形成し、対向基板のカラーフィルター基板に可動電極を形成し、これら素子基板と対向基板とをシール層及び透明樹脂層を介して貼り合わせた後、固定電極に可動電極を静電吸着させることで、対向基板におけるカラーフィルター基板の第2表示領域を素子基板側に移動させるようにしたので、素子基板側の有機EL素子層とカラーフィルター基板側のカラーフィルターとの間のギャップが、固定電極の高さと可動電極の高さとによってほぼ決まるようになる。したがって、予めこれら固定電極及び可動電極の高さを所望の狭さのギャップに対応させて形成することにより、有機EL素子層とカラーフィルターとの間のギャップを所望の狭さに形成することができる。よって、高精細化による表示品質の向上を可能にした、有機エレクトロルミネッセンス装置を製造することができる。
【0011】
また、前記の製造方法において、前記素子基板を形成する工程では、前記有機エレクトロルミネッセンス素子における陽極を形成する際、前記固定電極を形成するのが好ましい。
このようにすれば、固定電極形成のためだけに新たな工程を付加する必要がなくなり、生産性を向上することができる。
【0012】
また、前記の製造方法においては、前記シール層の硬化処理を、前記静電吸着工程の前に行うようにしてもよい。
このようにすれば、特に大判レベルで素子基板と対向基板とを貼着した後、ダイシングによって個片化する前にシール層を硬化処理しておくことで、ダイシングの際に素子基板と対向基板との間で位置ずれが生じることを防止することができる。
【0013】
また、前記の製造方法においては、前記シール層の硬化処理を、前記静電吸着工程の後に行うようにしてもよい。
このようにすれば、特に大判レベルで素子基板と対向基板とを貼着し、さらに静電吸着を行った後、透明樹脂層を硬化させる工程でシール層の硬化処理も同時に行うことができる。したがって、生産性を向上することができる。なお、この場合には、ダイシングによって個片化を、透明樹脂層を硬化させた後に行うことができる。
【0014】
また、前記の製造方法においては、前記シール材として、ギャップ材を含有したものを用いるのが好ましい。
このようにすれば、カラーフィルター基板の外周部、すなわち対向基板の外周部と、素子基板の外周部との間のギャップを、シール材中のギャップ材によって一定に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る有機EL装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】本発明に係る有機EL装置の概略構成を模式的に示す側断面図である。
【図3】素子基板の要部の側断面図である。
【図4】(a)は素子基板の平面図、(b)は(a)のA−A線矢視断面図である。
【図5】(a)は対向基板の平面図、(b)は(a)のB−B線矢視断面図である。
【図6】有機EL装置の製造工程を説明するための模式的な側断面図である。
【図7】有機EL装置の製造工程を説明するための模式的な側断面図である。
【図8】有機EL装置の製造工程を説明するための模式的な側断面図である。
【図9】(a)は素子基板の平面図、(b)は(a)のC−C線矢視断面図である。
【図10】(a)は対向基板の平面図、(b)は(a)のD−D線矢視断面図である。
【図11】(a)は、貼り合わせ状態の平面図、(b)は(a)のE−E線矢視断面図である。
【図12】有機EL装置の応用例としての、携帯電話を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、各図においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせてある。
まず、本発明に係る有機EL装置(有機エレクトロルミネッセンス装置)の一例の概略構成について説明する。図1は前記有機EL装置の概略構成を模式的に示す平面図、図2は前記有機EL装置の概略構成を模式的に示す側断面図である。これらの図において符号1は有機EL装置である。
【0017】
図1に示すように有機EL装置1は、素子基板本体(第1基板)21上に形成された図示しない各種配線、TFT、及び各種回路によって有機発光層を発光させる、素子基板20を備えている。また、図1では図示を省略しているが、素子基板20に対向して対向基板30が配置されている。
素子基板20及び対向基板30は、後述する複数の有機EL素子及びカラーフィルター(着書層)が形成された領域に対応する表示領域4(中央部分に二点鎖線で示す枠内の領域)と、表示領域4の周囲に配置されたダミー領域5(一点鎖線と二点鎖線との間の領域)とを備えている。
【0018】
表示領域4内には、複数の画素領域R,G,Bがマトリクス状に配置されている。画素領域R,G,Bは、それぞれ、後述するように陽極と、有機発光層を含む機能層と、陰極とからなる有機EL素子を備えて構成されている。
そして、有機EL素子から射出された光が各画素領域R,G,Bの着色層を透過することにより、各画素領域R,G,Bから、それぞれR(赤色)、G(緑色)、B(青色)の光が取り出されるようになっている。
【0019】
また、画素領域R,G,Bの各々は、紙面縦方向において同一色で配列しており、いわゆるストライプ配置を構成している。そして、画素領域R,G,Bが一つのまとまりとなって、表示単位画素が構成されており、表示単位画素はR,G,Bの発光を混色させてフルカラー表示を行うようになっている。
【0020】
素子基板20上の表示領域4の図1中両側であって、ダミー領域5の下層側には、走査線駆動回路80が配置されている。また、素子基板20上の表示領域4の図1中上方側であってダミー領域5の下層側には、検査回路90が配置されている。この検査回路90は、有機EL装置1の作動状況を検査するための回路であって、例えば検査結果を外部に出力する検査情報出力手段(図示せず)を備え、製造途中や出荷時における有機EL装置1の品質、欠陥の検査を行うことができるように構成されている。
【0021】
また、この有機EL装置1は、図2に示すようにいわゆる「トップエミッション構造」の有機EL装置である。トップエミッション構造は、光を素子基板20側ではなく対向基板30側から取り出すため、素子基板20に配置された各種回路の大きさに影響されず、発光面積を広く確保できる効果がある。そのため、電圧及び電流を抑えつつ輝度を確保することが可能であり、有機EL素子の寿命を長く維持することができる。
この有機EL装置1は、素子基板20と、素子基板20に対向して配置され、接着層となる透明樹脂層34及びシール層35を介して素子基板20に接着された対向基板30とを備えている。
【0022】
素子基板20は、その要部の側断面を示す図3に示すように、素子基板本体21と、素子基板本体21の一方の面(内面)を覆う無機絶縁層14とを備え、さらに平坦化層16を介して有機EL素子22を備えている。素子基板本体21は、例えばガラスやシリコン等によって形成され、無機絶縁層14は、窒化珪素等によって形成されている。素子基板本体21上には、駆動用TFT123や、その他各種配線等(図示省略)が形成され、無機絶縁層14はこれらを覆って形成されている。
【0023】
無機絶縁層14上には、アルミ合金等からなる金属反射層15を設けた平坦化層16が形成されている。平坦化層16は、絶縁性の樹脂材料、例えば、感光性のアクリル樹脂や環状オレフィン樹脂等により形成されている。
平坦化層16上の金属反射層15に平面的に重なる領域には、有機EL素子22の陽極10が形成されている。陽極10は、例えば仕事関数が5eV以上の正孔注入層の高いITO(Indium Thin Oxide:インジウム錫酸化物)等の金属酸化物により形成されている。陽極10は、平坦化層16及び無機絶縁層14を貫通するコンタクトホールを介して、素子基板本体21上の駆動用TFT123に接続されている。
【0024】
また、平坦化層16上には、有機EL素子22を区画する絶縁性の画素隔壁13が形成されている。画素隔壁13は、平坦化層16上に形成された陽極10の上部を露出させる、複数の開口部を備えている。
この開口部と画素隔壁13による凹凸形状に沿って、画素隔壁13及び陽極10の上面を覆って機能層12が形成されている。機能層12は、図1に示した表示領域4に対応する表示領域(第1表示領域)に、有機発光層(図示せず)を有して構成されたものである。この有機発光層としては、例えば、スリチルアミン系発光層にアントラセン系のドーパントをドーピングした層(青色)と、スリチルアミン系発光層にルブレン系のドーパントをドーピングした層(黄色)と、を同時に発光させて白色発光を実現している発光材料を用いることができる。
【0025】
なお、本実施形態では、機能層12を構成する機能膜として、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子注入バッファー層などを有している。すなわち、陽極10と前記有機発光層との間に、トリアリールアミン多量体(ATP)層(正孔注入層)、トリフェニルジアミン系誘導体(TPD)層(正孔輸送層)をこの順に形成し、有機発光層と陰極11との間に、アルミニウムキノリノール(Alq3)層(電子注入層)、LiF(電子注入バッファー層)がそれぞれ成膜され、形成されている。このような構成のもとに、機能層12は、各電極からの電子および正孔の注入を容易にさせ、これら電子と正孔とを有機発光層で良好に再結合させるようになっている。
【0026】
機能層12上には、機能層12の表面形状に沿って、該機能層12を覆って陰極11が形成されている。陰極11は、トップエミッション構造の有機EL装置1においては光透過性を有する材料により形成する必要がある。したがって、陰極11の材料としては、例えば、ITO、酸化インジウム・酸化亜鉛系アモルファス導電膜(Indium Zinc Oxide)等を用いることができる。
【0027】
また、陰極11は、電子注入効果の大きい(仕事関数が4eV以下)材料が好適に用いられる。例えば、カルシウムやマグネシウム、ナトリウム、リチウム金属、又はこれらの金属化合物である。金属化合物としては、フッ化カルシウム等の金属フッ化物や酸化リチウム等の金属酸化物、アセチルアセトナートカルシウム等の有機金属錯体が該当する。また、これらの材料だけでは、電気抵抗が大きく電極としての性能が低いため、発光部分を避けるようにアルミニウムや金、銀、銅などの金属層をパターン形成したり、ITOや酸化錫などの透光性を有する金属酸化物導電層と組み合わせて用いたりしてもよい。
このような陰極11と、前記機能層12、及び前記陽極10とから、有機EL素子22が形成されている。
【0028】
また、素子基板20上には、有機EL素子22の陰極11等を覆って電極保護層17が形成されている。電極保護層17は、例えば、珪素酸窒化物等の珪素化合物により形成されたものである。
電極保護層17上には、これを覆って有機緩衝層18が形成されている。この有機緩衝層18は、画素隔壁13とその開口部による凹凸形状を埋めるように形成されて、素子基板20上を平坦化するものである。
【0029】
有機緩衝層18は、光透過性を有する材料によって形成されたもので、原料主成分としては、例えば流動性に優れ、かつ溶媒や揮発成分の無い有機化合物材料が用いられる。このような材料としては、好ましくはエポキシ基を有する分子量3000以下のエポキシモノマー/オリゴマーが用いられる(モノマーの定義:分子量1000以下、オリゴマーの定義:分子量1000〜3000)。
また、エポキシモノマー/オリゴマーと反応する硬化剤としては、電気絶縁性や接着性に優れ、かつ硬度が高く強靭で耐熱性に優れる硬化被膜を形成するものがよく、透光性に優れ、かつ硬化のばらつきの少ない付加重合型がよい。
【0030】
有機緩衝層18上には、これを覆ってガスバリア層19が形成されている。ガスバリア層19は、透光性、ガスバリア性、耐水性を考慮して、例えば、窒素を含む珪素化合物、すなわち珪素窒化物や珪素酸窒化物等によって形成されたものである。
このような構成のもとに、ガスバリア層19と前記電極保護層17及び有機緩衝層18とにより、有機EL素子22を覆う封止層23が構成されている。
【0031】
また、素子基板20には、図2に示すように多数の有機EL素子22からなる有機EL素子層22Aの外側に、固定電極25が形成されている。この固定電極25は、前記陽極10と同じ工程で形成されたものであり、したがって陽極10と同じITO等によって形成されている。また、本例では、後述するようにこの固定電極25は矩形状の素子基板20における各辺の中央部にそれぞれ形成配置されており、したがって合計4個形成されている。
【0032】
素子基板20の有機EL素子層22Aが形成された面(一方の面)側には、図2に示すように対向基板30が対向して配置されている。
対向基板30は、透明樹脂層34及びシール層35を介して素子基板20上の有機EL素子層22A側に貼設されたもので、カラーフィルター基板40と支持基板50とから構成されたものである。
【0033】
カラーフィルター基板40は、ガラスまたは透明プラスチック(ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネ―ト、ポリオレフィン等)等の透明な材料で形成されたCF基板本体(第2基板)41を備えたものである。CF基板本体41の素子基板20と対向する面(一方の面)には、図1に示した表示領域4に対応する表示領域(第2表示領域)に、カラーフィルター37として、赤色着色層37R、緑色着色層37G、青色着色層37Bがマトリクス状に配列形成されている(図2では模式的に、それぞれ一つのみ示している)。
【0034】
これら各カラーフィルター(着色層)37は、それぞれ、図3に示した有機EL素子22の陽極10上に形成された白色発光をなす機能層12に対向して、平面的に重なるように配置されている。これにより、機能層(有機発光層)12から射出された光が、カラーフィルター37の各々を透過し、赤色光、緑色光、青色光の各色光として観察者側に射出されるようになっている。
【0035】
また、各カラーフィルター37の周囲には、各カラーフィルター37を区画するブラックマトリクス層(図示せず)が形成されている。カラーフィルター37及びブラックマトリクス層は、図2に示すように対向基板30を素子基板20に位置合わせして接着するときに、有機EL素子層22Aに対向して配置されるようになっている。カラーフィルター37の膜厚は、例えば約0.1〜1.5μm程度に調整されており、カラーフィルター37の幅は、約10〜15μm程度に形成されている。
【0036】
なお、図2では、これらカラーフィルター37やブラックマトリクス層を、CF基板本体41の一方の面上に形成しているが、CF基板本体41の一方の面側を予め彫り込んで凹部(図示せず)を形成しておき、この凹部内にカラーフィルター37やブラックマトリクス層を設けてもよい。
また、CF基板本体41上に、カラーフィルター37及びブラックマトリクス層を覆ってオーバーコート層(図示せず)を形成してもよい。このオーバーコート層は、例えばアクリル樹脂やポリイミド樹脂等の樹脂材料によって形成することができる。
【0037】
また、このCF基板本体41の一方の面には、カラーフィルター37及びブラックマトリクス層の外側に、可動電極27が形成されている。可動電極27は、素子基板20の固定電極25と対応する位置、すなわち固定電極25と対向する位置に形成されている。したがって、可動電極27も、矩形状のカラーフィルター基板40における各辺の中央部にそれぞれ形成配置されたものとなっている。そして、これら可動電極27は、それぞれが対応する(対向する)固定電極25に対して、後述するように静電吸着によって密着させられている。ただし、所定の製造工程が終了した後には、可動電極27、固定電極25への電圧印加が停止され、したがって可動電極27、固定電極25が除電されることにより、静電吸着が解除されている。
【0038】
また、CF基板本体41には、その外周部41aと前記カラーフィルター37及びブラックマトリクス層との間で、かつ可動電極27の外側に、切欠部(図示せず)が形成されている。この切欠部は、CF基板本体41の外周部41aとカラーフィルター37及びブラックマトリクス層を形成した領域(第2表示領域)とを一部で連続させた状態で、CF基板本体41を貫通して形成されたものである。なお、この切欠部については後述する。
【0039】
このような切欠部が形成されていることにより、カラーフィルター37及びブラックマトリクス層を形成した表示領域は、その外側に位置する可動電極27が素子基板20側の固定電極25に静電吸着されることによって容易に撓み(移動し)、素子基板20の有機EL素子層22A側に移動し接近するようになる。これにより、素子基板20とCF基板本体41との間は、固定電極25の高さ(厚さ)と可動電極27の高さ(厚さ)との合計の厚さにほぼ等しいギャップになる。
【0040】
したがって、有機EL素子層22Aとカラーフィルター37との間のギャップは、固定電極25の高さ(厚さ)と可動電極27の高さ(厚さ)との合計の厚さから、有機EL素子層22Aの厚さとカラーフィルター37の厚さとを引いた長さ(距離)となる。よって、有機EL素子層22Aとカラーフィルター37との間の所望のギャップに基づき、特に可動電極27の高さ(厚さ)を予め決定し、形成しておくことにより、有機EL素子層22Aとカラーフィルター37との間のギャップを所望のギャップに形成することが可能になる。
【0041】
このカラーフィルター基板40の他方の面、すなわちカラーフィルターを形成した側と反対の側の面には、支持基板(第3基板)50が貼着されている。支持基板50は、CF基板本体41と同じ透明な材料で形成されたもので、その外周部においてカラーフィルター基板40の外周部41aに接着され、これによってカラーフィルター基板40に貼着されたものである。そして、このようにカラーフィルター基板40と支持基板50とが貼着されていることにより、対向基板30が形成されている。
この対向基板30と前記素子基板20とは、前記したように透明樹脂層34及びシール層35を介して貼着され、これによって有機EL装置1が形成されている。
【0042】
次に、このような構成からなる有機EL装置1の製造方法の一実施形態を説明する。
まず、図4(a)、(b)に示すように素子基板本体21を用意する。ここで、図4(a)はダイシング前の素子基板20の一方の面側を示す平面図、図4(b)は図4(a)におけるA−A線矢視断面図である。
そして、この素子基板本体21の一方の面上に図3に示した無機絶縁膜14、金属反射層15、平坦化層16を形成し、さらに予め設定した表示領域に、図4(a)、(b)に示すように多数の有機EL素子からなる有機EL素子層22Aを形成する。
【0043】
その際、特に有機EL素子22における陽極10を形成する工程では、固定電極25を共に形成する。また、これに先立ち、前記有機EL素子層22Aを形成する領域の外側に、固定電極用配線60、第1可動電極用配線61をそれぞれ形成する。固定電極用配線60の形成では、図4(a)に示すように矩形状の素子基板本体21の一方の短辺側に第1配線60aを形成するともに、有機EL素子層22Aを形成する領域を囲って矩形枠状の第2配線を形成し、さらに、これら第1配線60aと第2配線60bとを繋ぎ、さらに有機EL素子層22Aの近傍にまで伸びる第3配線60cと、第2配線60bから有機EL素子層22Aの近傍にまで伸びる第4配線60dとをそれぞれ形成する。
【0044】
また、第1可動電極用配線61については、素子基板本体21の他方の短辺側に形成する。
これら第1配線60a〜第4配線60dからなる固定電極用配線60や、第1可動電極用配線61の形成にあたっては、例えば前記金属反射層15の形成工程と同じ工程で行うことができる。このようにすることにより、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0045】
そして、このように固定電極用配線60、第1可動電極用配線61を形成した後、有機EL素子22における陽極10を形成する工程において、陽極10を形成するとともに固定電極25も形成する。固定電極25については、前記第3配線60c及び第4配線60dの、それぞれの先端部、すなわち有機EL素子層22Aの側の端部に形成する。固定電極25の平面形状については特に限定されることなく、図示したような矩形状の他、円形や楕円形、他の多角形など、任意の形状が採用可能である。
このようにして固定電極25を形成し、さらに有機EL素子22(有機EL素子層22A)を形成し、その後電極保護層17、有機緩衝層18、ガスバリア層19を順次形成することにより、素子基板20を得る。
【0046】
また、素子基板20の形成とは別に、対向基板30を形成する。
この対向基板30の形成では、カラーフィルター基板40を形成するとともに、支持基板50を別に用意する。カラーフィルター基板40の形成では、まず、図5(a)、(b)に示すように透明なCF基板本体41を用意し、これの一方の面側の表示領域(第2表示領域)41bに、従来と同様にカラーフィルター37(赤色着色層37R、緑色着色層37G、青色着色層37B)をマトリクス状に配列形成する。ここで、図5(a)はダイシング前の対向基板30の一方の面側を示す平面図、図5(b)は図5(a)におけるB−B線矢視断面図である。なお、図5(a)でも、各着色層37R、37G、37Bを模式的に一つずつ示している。
【0047】
次に、図5(a)中破線で囲んだ表示領域41bと、CF基板本体41の外周部41aとの間に、これら表示領域41bと外周部41aとを一部で連続させた状態で、CF基板本体41を貫通する切欠部42をエッチング等によって形成する。本実施形態では、矩形状の表示領域41より一回り大きい矩形領域を囲んで、略矩形枠状の切欠部42を形成する。ただし、表示領域41bと外周部41aとを連続させるため、矩形枠の各辺の中央部に、表示領域41bと外周部41aとを連続させるブリッジ43を残した状態で、切欠部42を形成する。
【0048】
次いで、CF基板本体41の外周部41aとブリッジ43、及び該ブリッジ43から表示領域41b近傍にまで延びた位置に、第2可動電極配線62を形成する。
その後、第2可動電極配線62の、ブリッジ43から表示領域41b近傍にまで延びた部分の表示領域41b側の端部に、可動電極27を形成する。ここで、この可動電極27は、図4(a)に示した素子基板20の固定電極25と対応する位置となるように形成する。また、この可動電極27の高さについては、後述するように素子基板20とカラーフィルター37との間の所望のギャップに対応して、予め設定した高さに形成する。なお、この可動電極27の平面形状についても、図示したような矩形状の他、円形や楕円形、他の多角形など、任意の形状が採用可能である。ただし、固定電極25の平面形状と同じ形状にするのが、より高い静電吸着力を得るうえで好ましい。
【0049】
なお、ここでは、カラーフィルター37の形成、切欠部42の形成、第2可動電極配線62及び可動電極27の形成を、記載順に行うように説明したが、形成の順番については特に限定されることなく、必要に応じて順番を変えてもよい。
その後、CF基板本体41の他方の面、すなわちカラーフィルター37等を形成した側と反対の側の面をCMP法等によって研磨し、薄厚化して図5(b)に示したカラーフィルター基板40を得る。
【0050】
そして、このようにして得たカラーフィルター基板40の、カラーフィルター37等を形成した側と反対の側の面の外周部、すなわち前記切欠部42の外側に、接着剤44を塗布する。続いて、この接着剤44を介して別に用意した透明な支持基板50を貼り合わせる。なお、支持基板50側に接着剤44を塗布してもよいのはもちろんである。その後、接着剤44を硬化することにより、図5(b)に示す対向基板30を得る。
【0051】
このようにして形成した対向基板30にあっては、支持基板50に対してカラーフィルター基板40を、切欠部42の外側の外周部のみで接着しているので、カラーフィルター基板40は切欠部42の内側となる表示領域41bが、支持基板50に対して離間可能になっている。なお、図5(b)では、説明のために接着剤44の厚さ厚く記載しているが、実際には非常に薄い厚さとなり、したがって図2では接着剤44の記載を省略している。
【0052】
このようにして素子基板20、対向基板30をそれぞれ形成したら、図6に示すように、素子基板20の有機EL素子層22Aを形成した面(一方の面)に、有機EL素子層22A及び固定電極25を囲んだ状態、例えば矩形枠状にシール材を配し、シール層35を形成する。このシール材(シール層35)としては、例えば前記有機緩衝層18と同じ有機材料が用いられる。また、このシール材としては、ギャップ材(図示せず)を含有したものを用いる。このギャップ材は、後述するように素子基板20に対向基板30を貼り合わせた際の、素子基板20と対向基板30との間のギャップを規定するもので、このギャップにほぼ等しい径を有するものである。なお、図2や図6、及び以降の図では各部材毎に縮尺を異ならせているため、ギャップ材を示していない。
【0053】
続いて、前記シール層35に囲まれた領域に、熱硬化性又は光硬化性の透明樹脂を配して透明樹脂層34を形成する。この透明樹脂については、ギャップ材を含有しておらず、また、シール材に比べて十分に粘度が低いものが用いられる。
なお、シール材や透明樹脂の塗布については、素子基板20に対してでなく、対向基板30に対して行ってもよく、素子基板20、対向基板30の両方に対して行ってもよい。
【0054】
このようにしてシール層35、透明樹脂層34を形成したら、図7に示すように素子基板20の有機EL素子層22Aを形成した側と対向基板30のカラーフィルター基板40側とを、前記シール層35及び透明樹脂層34を介して貼り合わせる。
その際、貼り合わせた素子基板20と対向基板30とのアライメント位置の微調整を行い、固定電極25とこれに対応する可動電極27とがそれぞれに対向した状態で互いに当接するようにしつつ、素子基板20と対向基板30の双方を接近させていく。
【0055】
そして、このアライメント位置精度を維持しつつ、例えば真空度1Pa程度の真空雰囲気下にて600N程度の加圧力で200秒間程度保持し、素子基板20と対向基板30とをシール層35及び透明樹脂層34を介して圧着する。
すると、対向基板30と素子基板20との間で圧縮されることにより、シール層35はこれに含まれるギャップ材(図示せず)にほぼ等しい高さ(厚さ)となる。また、透明樹脂層51は、対向基板30と素子基板20との間において、シール層35に囲まれた領域内を均一に充填するようになる。
【0056】
次いで、固定電極25及び可動電極27に電圧を印加し、これらの間に静電吸着力を生じさせることにより、図8に示すように固定電極25に可動電極27を静電吸着させる。固定電極25への電圧印加については、図4(a)、(b)に示した固定電極用配線60を用いて行うことができる。一方、可動電極27への電圧印加については、図5(a)、(b)に示した第2可動電極用配線62、及び図4(a)、(b)に示した第1可動電極用配線61を用いて行うことができる。このように、各配線60、61、62を利用して、固定電極25、可動電極27に正負が異なる電位を付与することにより、固定電極25に可動電極27を静電吸着させることができる。
【0057】
このようにして固定電極25に可動電極27が静電吸着すると、対向基板30におけるカラーフィルター基板40の表示領域41bが、素子基板20側に移動する。その際、素子基板20とカラーフィルター基板40との間に位置する透明樹脂(透明樹脂層34)は、その一部がカラーフィルター基板40の切欠部42を相対的に通り抜け、支持基板50とカラーフィルター基板40との間に相対的に移動する。
【0058】
これにより、素子基板20とカラーフィルター基板40との間のギャップが、固定電極25の高さと可動電極27の高さとによってほぼ決まるようになる。ここで、固定電極25については陽極10と同等の厚さになるため薄いものとなるものの、可動電極27の高さについては、予め設定した高さに形成しているため、これらを合わせた高さは、素子基板20とカラーフィルター37との間の所望のギャップに等しい高さになっている。したがって、このギャップからカラーフィルター37の厚さや有機EL素子層22Aの厚さを差し引いた、カラーフィルター37と有機EL素子層22Aとの間のギャップを、所望の狭さに形成することができる。
【0059】
次いで、シール層35、透明樹脂層34をそれぞれ硬化し、前記のカラーフィルター37と有機EL素子層22Aとの間のギャップ(素子基板20とカラーフィルター基板40との間のギャップ)を固定する。
さらに、固定電極25、可動電極27に対する電圧の印加も停止し、これによって固定電極25、可動電極27を除電することにより、静電吸着を解除する。このように静電吸着を解除しても、シール層35、透明樹脂層34がそれぞれ硬化していることにより、固定電極25と可動電極27とは密着した状態に保持され、前記ギャップもそのままに維持される。
その後、図4(a)における第2配線60bの外形線と、図5(a)において破線で示すダイシングライン46とでそれぞれにダイシングを行うことにより、図2に示した有機EL装置1を得る。
【0060】
このような有機EL装置1の製造方法によれば、予め固定電極25及び可動電極27の高さを所望の狭さのギャップに対応させて形成しておき、これらを静電吸着させるようにしたので、有機EL素子層22Aとカラーフィルター37との間のギャップを所望の狭さに形成することができる。よって、高精細化による表示品質の向上を図ることができる。
【0061】
前記実施形態では、大判の基板から個片化された後の、1チップの状態の素子基板20や対向基板30から、有機EL装置1を製造する例について示したが、実際の製造では、大判の基板から多数個分の有機EL装置1を製造し、その後個片化して個々の有機EL装置1を得るのが一般的である。そこで、以下では、大判の基板から多数個分の有機EL装置1を製造する例について説明する。
【0062】
まず、図9(a)、(b)に示すように、個片化される前の大判の基板の状態で、複数の素子基板20を同時に形成する。図9(a)は、図4(a)、(b)に示した素子基板20を縦横2つずつ、計4つ形成した矩形状で大判の素子基板51を示す平面図であり、図9(b)は図9(a)のC−C線矢視断面図である。
【0063】
図9(a)に示すようにこの大判の素子基板51では、素子基板本体21に形成する第1可動電極用配線61を、素子基板51の横方向(長辺方向)で隣り合う矩形状の素子基板本体21の、内側の短辺部にそれぞれ形成する。また、固定電極用配線60の第1配線60aを、各素子基板本体21の外側の短辺部にそれぞれ形成する。したがって、これら第1可動電極用配線61、固定電極用配線60は、矩形状の素子基板51の短辺方向に沿って、縦方向で隣り合う素子基板本体21、21間にて連続したものとなる。
【0064】
また、矩形状の素子基板51の一方の長辺側に、前記第1可動電極用配線61、前記固定電極用配線60の第1配線60aに連続してこれに導通する、端子部52、53を形成する。
【0065】
一方、対向基板30についても、図10(a)、(b)に示すように、個片化される前の大判の基板の状態で、複数の対向基板20を同時に形成する。図10(a)は、図5(a)、(b)に示した対向基板30を縦横2つずつ、計4つ形成した矩形状で大判の対向基板55を示す平面図であり、図10(b)は図10(a)のD−D線矢視断面図である。図10(b)に示すようにこの大判の対向基板55では、大判の支持基板56に、図5(b)に示したカラーフィルター基板40が縦横に2つずつ、計4つ貼着されて形成されたものである。
【0066】
このような大判の素子基板51、大判の対向基板55をそれぞれ用意したら、図6に示した塗布工程と同様にして、各素子基板20、対向基板30毎に、シール層35及び透明樹脂層34を形成する。また、シール層35の形成と同時に、前記第1可動電極用配線61上に導電ペースト54(図11(b)参照)を配する。
続いて、図11(a)、(b)に示すように、シール層35及び透明樹脂層34を介して素子基板51と対向基板55とを貼り合わせる。図11(a)は、貼り合わせた状態を対向基板55側から見た平面図であり、図11(b)は図11(a)のE−E線矢視断面図である。
【0067】
ここで、図9(a)に示した素子基板51は、図10(a)に示した対向基板55に比べて、端子部52、53を形成した側の分大きくなっている。したがって、図11(a)に示すように位置合わせした状態で素子基板51に対向基板55を貼り合わせると、素子基板51は、端子部52、53を形成した側の分、対向基板55から飛び出す。これにより、端子部52、53は露出する。また、図11(b)に示すように、前記第1可動電極用配線61上に配した導電ペースト54は、対向基板55の第2可動電極用配線62に接する。
【0068】
続いて、図7に示した工程と同様にして、所定の真空度の真空雰囲気下にて、所定の加圧力で所定時間保持し、素子基板51と対向基板55とをシール層35及び透明樹脂層34と、導電ペースト54を介して圧着する。そして、この状態で例えば60℃程度に加熱し、導電ペースト54を硬化させる。なお、ここでは、透明樹脂層34は硬化させない。
【0069】
次いで、対向基板55に覆われることなく露出した端子部52、53を用い、これらに正負が異なる電位を付与することにより、各素子基板20の固定電極25に各対向基板30の可動電極27をそれぞれ静電吸着させる。すると、各カラーフィルター基板40の表示領域41bが、それぞれ対応する素子基板20側に移動する。その際、素子基板20とカラーフィルター基板40との間に位置する透明樹脂(透明樹脂層34)は、前述したようにその一部がカラーフィルター基板40の切欠部42を相対的に通り抜け、支持基板50とカラーフィルター基板40との間に相対的に移動する。
【0070】
これにより、各素子基板20と各カラーフィルター基板40との間が所望のギャップとなり、したがってカラーフィルター37と有機EL素子層22Aとの間のギャップが、所望の狭さに形成される。
次いで、シール層35、透明樹脂層34を同じ工程それぞれ硬化し、前記のカラーフィルター37と有機EL素子層22Aとの間のギャップ(素子基板20とカラーフィルター基板40との間のギャップ)を固定する。
【0071】
さらに、端子部52、53に対する電圧の印加(固定電極25、可動電極27に対する電圧の印加)も停止し、これによって固定電極25、可動電極27を除電することにより、静電吸着を解除する。このように静電吸着を解除しても、シール層35、透明樹脂層34がそれぞれ硬化していることにより、固定電極25と可動電極27とは密着した状態に保持され、前記ギャップもそのままに維持される。
その後、図11(b)に示すダイシングライン47でダイシングを行って個片化し、図2に示した有機EL装置1を得る。
【0072】
このような有機EL装置1の製造方法にあっても、予め固定電極25及び可動電極27の高さを所望の狭さのギャップに対応させて形成しておき、これらを静電吸着させることにより、有機EL素子層22Aとカラーフィルター37との間のギャップを所望の狭さに形成することができる。よって、高精細化による表示品質の向上を図ることができる。
また、シール層35の硬化処理を、固定電極25と可動電極27との間の静電吸着の後に、透明樹脂層の硬化処理と同時に行うようにしたので、工程を簡略化して生産性を向上することができる。
【0073】
なお、前記の例では、大判の素子基板51と大判の対向基板55とを貼り合わせ、多数の有機EL装置1を製造した後に、個片化(ダイシング)して個々の有機EL装置1を得るようにしたが、例えば、固定電極25と可動電極27との間の静電吸着を行う前に、シール層35を硬化処理するようにしてもよい。
このようにすれば、大判の素子基板51と大判の対向基板55とをダイシングした際に、素子基板20と対向基板30との間で位置ずれが生じることを防止することができる。
【0074】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、固定電極25及び可動電極27の配置やその数、大きさ等については、種々の形態が可能である。また、これら固定電極25や可動電極27に電位を付与するための配線についても、各基板の大きさや形態に応じて種々の形態が採用可能である。さらに、切欠部42の形態についても、種々の形態が採用可能である。
【0075】
次に、本発明によって得られる有機EL装置の応用例としての電子機器について、携帯電話を例に挙げて説明する。図12は、携帯電話600の全体構成を示す斜視図である。携帯電話600は、筺体601、複数の操作ボタンが設けられた操作部602、画像や動画、文字等を表示する表示部603を有する。表示部603は、本発明の有機EL装置からなっている。
このように、表示部603として光取り出し効率が高められた有機EL装置を備えているので、電子機器(携帯電話)600の表示性能を向上することができる。
【0076】
なお、電子機器としては、前記携帯電話600以外にも、マルチメディア対応のパーソナルコンピュータ(PC)、およびエンジニアリング・ワークステーション(EWS)、ページャ、ワードプロセッサ、テレビ、ビューファインダ型またはモニタ直視型のビデオテープレコーダ、電子手帳、電子卓上計算機、カーナビゲーション装置、POS端末、タッチパネルなどを挙げることができる。
【符号の説明】
【0077】
1…有機EL装置(有機エレクトロルミネッセンス装置)、10…陽極、11…陰極、12…機能層、20…素子基板、21…素子基板本体(第1基板)、22…有機EL素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)、22A…有機EL素子層、25…固定電極、27…可動電極、30…対向基板、34…透明樹脂層、35…シール層、37…カラーフィルター、37R、37G、37B…着色層、40…カラーフィルター基板、41…CF基板本体(第2基板)、41a…外周部、41b…表示領域、42…切欠部、50…支持基板(第3基板)、51…大判の素子基板、55…大判の対向基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板の一方の面の第1表示領域に有機エレクトロルミネッセンス素子を形成するとともに、前記第1表示領域の外側に固定電極を形成して素子基板を形成する工程と、
透明な第2基板の一方の面の第2表示領域にカラーフィルターを形成するとともに、該第2基板の前記第2表示領域と該第2基板の外周部との間に、該第2表示領域と外周部とを一部で連続させた状態で第2基板を貫通する切欠部を形成し、さらに、前記第2表示領域の外側でかつ前記切欠部の内側であって前記固定電極に対応する位置に、可動電極を形成してカラーフィルター基板を形成する工程と、
前記カラーフィルター基板の他方の面側に透明な第3基板を貼設するとともに、該第3基板の外周部と前記カラーフィルター基板の前記切欠部の外側との間を接着して、対向基板を形成する工程と、
前記素子基板の一方の面と前記対向基板における前記カラーフィルター基板の一方の面とのうちの一方あるいは両方に、前記第1表示領域と前記固定電極、及び/又は、前記第2表示領域と前記可動電極を囲んだ状態でシール材を配してシール層を形成するとともに、該シール層に囲まれた領域に透明樹脂を配して透明樹脂層を形成する塗布工程と、
前記塗布工程後、前記素子基板の一方の面側と前記対向基板における前記カラーフィルター基板の一方の面側とを、前記固定電極とこれに対応する前記可動電極とを対向させた状態で、真空雰囲気にて前記シール層及び透明樹脂層を介して貼り合わせる貼着工程と、
前記固定電極及び前記可動電極に電圧を印加し、前記固定電極に前記可動電極を静電吸着させることで、前記対向基板における前記カラーフィルター基板の第2表示領域を前記素子基板側に移動させる静電吸着工程と、
前記静電吸着工程後、前記透明樹脂層を硬化させる工程と、を備えることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法。
【請求項2】
前記素子基板を形成する工程では、前記有機エレクトロルミネッセンス素子における陽極を形成する際、前記固定電極を形成することを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法。
【請求項3】
前記シール層の硬化処理を、前記静電吸着工程の前に行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法。
【請求項4】
前記シール層の硬化処理を、前記静電吸着工程の後に行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法。
【請求項5】
前記シール材として、ギャップ材を含有したものを用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−222436(P2011−222436A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92917(P2010−92917)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】