説明

有機ケイ素化合物、およびその製造方法

【課題】本発明は、ヒドロシリル化反応の手法によらずに、ダブルデッカー型シルセスキオキサンに対して官能基を導入し液状化させた有機ケイ素化合物およびその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】式(1)で示される構造を有するケイ素化合物、およびその製造方法。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種官能基を導入した常温で液状を呈する新規な有機ケイ素化合物、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ケイ素化合物の中でシルセスキオキサンに関しては、これまで多くの研究が行われており報告も多数存在する。例えばBaneyらによる総説(非特許文献1)によれば、シルセスキオキサンには、ラダー構造、籠型構造、不完全縮合型構造のほか、一定の構造を示さない不定形構造などの存在が確認されている。
【0003】
不完全縮合型構造の中でも、チッソ(株)のグループはダブルデッカー型と呼ばれる新規なシルセスキオキサン構造を有する化合物の選択的合成・単離を世界に先駆けて成功した(特許文献1)。近年、そのユニークな構造と物性に対して産学を問わず注目が集まっており、応用研究が盛んに行われるようになってきている(例えば、非特許文献2)。
【0004】
ある化合物に対して様々な機能性を持たせるためには、任意の官能基の導入技術の開発が必須である。官能基の導入されたダブルデッカー型シルセスキオキサンは、これまでにも報告されている。
【0005】
従来知られている有機ケイ素化合物やその重合体は固体状態や結晶状態であった。例えば、特許文献1および特許文献2には、様々な官能基が導入されたダブルデッカー型シルセスキオキサン構造を有する有機ケイ素化合物が開示されているが、ここで開示されている化合物は全て固体である。
【0006】
固体状態や結晶状態の有機ケイ素化合物やその重合体を硬化物とする際には、容易に成形を可能とするために、一度、有機ケイ素化合物を溶媒に溶解させて、ビニルを2個以上有するケイ素化合物と混合し、さらに触媒を含有させたうえで、基材等に塗布してから熱硬化させることにより塗膜を成形体とするか、鋳型に流し込んでから熱硬化させることで成形体とする必要があった。
【0007】
そのため、成形体に溶媒が必ず含まれることとなり、溶媒の存在が不都合となる用途に用いることはできなかった。この欠点を克服するためにダブルデッカー型シルセスキオキサン構造を含む化合物に対し官能基を導入しつつ、液状化するための検討が過去様々試みられてきた。
【0008】
例えば、特許文献3には、SiHの導入されたダブルデッカー型シルセスキオキサンに対して、ヒドロシリル化反応を利用して官能基の導入と液状化を同時に行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2003/024870号公報パンフレット
【特許文献2】特開2009−167390号公報
【特許文献3】特開2009−298908号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Chem.Rev.,95,1409(1995)
【非特許文献2】Macromolecules,43,2108(2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながらヒドロシリル化反応を利用する手法によれば、系内にヒドロシリル化の反応触媒が残留するため、製品の安定性が損なわれるといった品質上の問題が生じることがあった(例えば経時での着色、粘度変化など)。もちろん反応後にこれらの反応触媒を除去することにより、触媒の影響を排除することも可能である。除去剤を使用するなど公知慣用の技術により実施可能である。
【0012】
しかし、一般にヒドロシリル化の反応触媒の除去剤は高価な場合が多く、また除去工程が増えることにより生産負荷が増大し、結果として貴重なエネルギー、資源等の損失につながる。このような損失を避ける意味でも、ヒドロシリル化反応の手法によらない、ダブルデッカー型シルセスキオキサンに対して官能基を導入し液状化するための工業的に実施可能な技術開発が望まれていた。
【0013】
本発明は、ヒドロシリル化反応の手法によらずに、ダブルデッカー型シルセスキオキサンに対して官能基を導入し液状化させた有機ケイ素化合物およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究した結果、下記式(1)で表されるケイ素化合物は、ヒドロシリル化反応の手法によらずに製造することができ、かつ液状化することを見出し、本発明を完成させた。
【0015】
すなわち、本発明は以下である。
[1]下記式(1)で示される有機ケイ素化合物。
【0016】
【化1】

【0017】
ただし、式(1)中のR〜R11は、水素、炭素の数が2〜20であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−またはシクロアルキレンで置き換えられてもよいアルケニル、および炭素の数が1〜20であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−がシクロアルケニレンで置き換えられてもよいアルキルから独立して選択される基であり、R12およびR13は水素、炭素の数が1〜45であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−、−CO−、−CH=CH−、シクロアルキレン、またはシクロアルケニレンで置き換えられてもよいアルキル、置換もしくは非置換のアリール、および炭素の数が1〜45であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−、−CH=CH−、またはシクロアルキレンで置き換えられてもよいアルキレンと置換もしくは非置換のアリールとで構成されるアリールアルキルから独立して選択される基であり、nは0<n≦4を満たす整数である。
[2]前記式(1)のR〜Rがフェニルであり、R、R10、およびR11がいずれもメチルであり、R12およびR13がいずれも水素であり、且つn=2である[1]に記載の有機ケイ素化合物。
[3]前記式(1)のR〜Rがフェニルであり、R、R10、およびR11がいずれもメチルであり、R12が水素であり、R13がビニルであり、且つn=2である[1]に記載の有機ケイ素化合物。
[4]前記式(1)のRがフェニルであり、R、R10、およびR11がいずれもメチルであり、R12が水素、またはメチルであり、R13がメタクリルであり、且つn=2である[1]に記載の有機ケイ素化合物。
[5][1]〜[4]のいずれか1項に記載の有機ケイ素化合物を含有する組成物。
[6]下記式(2)で表される有機ケイ素化合物と、n倍モル(nは0<n≦4を満たす整数)の下記式(3)で表される有機ケイ素化合物とを反応させた後、(4−n)倍モルの下記式(4)で表される有機ケイ素化合物とを反応させることを特徴とする、[1]記載の有機ケイ素化合物の製造方法。
【0018】
【化2】

【0019】
【化3】

【0020】
【化4】

【0021】
ただし式(2)〜(4)中のR〜R11は、水素、炭素の数が2〜20であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−またはシクロアルキレンで置き換えられてもよいアルケニル、および炭素の数が1〜20であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−がシクロアルケニレンで置き換えられてもよいアルキルから独立して選択される基であり、式(3)および(4)中のR12およびR13は水素、炭素の数が1〜45であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−、−CO−、−CH=CH−、シクロアルキレン、またはシクロアルケニレンで置き換えられてもよいアルキル、置換もしくは非置換のアリール、および炭素の数が1〜45であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−、−CH=CH−、またはシクロアルキレンで置き換えられてもよいアルキレンと置換もしくは非置換のアリールとで構成されるアリールアルキルから独立して選択される基であり、式(3)および式(4)中のXはハロゲンを表す。
[7]下記式(5)で表される有機ケイ素化合物と、n倍モルの下記式(3)で表される有機ケイ素化合物とを反応させた後、(4−n)倍モルの下記式(4)で表される有機ケイ素化合物とを反応させることを特徴とする、[1]記載の有機ケイ素化合物の製造方法。
【0022】
【化5】

【0023】
ただし式(5)中のR〜Rは水素、炭素の数が2〜20であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−またはシクロアルキレンで置き換えられてもよいアルケニル、および炭素の数が1〜20であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−がシクロアルケニレンで置き換えられてもよいアルキルから独立して選択される基であり、Mは1価のアルカリ金属を表す。
【0024】
【化6】

【0025】
【化7】

【0026】
ただし式(3)および(4)中のR〜R11は、水素、炭素の数が2〜20であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−またはシクロアルキレンで置き換えられてもよいアルケニル、および炭素の数が1〜20であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−がシクロアルケニレンで置き換えられてもよいアルキルから独立して選択される基であり、式(3)および(4)中のR12およびR13は水素、炭素の数が1〜45であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−、−CO−、−CH=CH−、シクロアルキレン、またはシクロアルケニレンで置き換えられてもよいアルキル、置換もしくは非置換のアリール、および炭素の数が1〜45であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−、−CH=CH−、またはシクロアルキレンで置き換えられてもよいアルキレンと置換もしくは非置換のアリールとで構成されるアリールアルキルから独立して選択される基であり、式(3)および式(4)中のXはハロゲンを表す。
【0027】
本発明において、「任意の」は、位置だけでなく個数についても任意であることを示すが、個数が0である場合を含まない。任意のAがB、C、またはDで置き換えられてもよいという表現は、任意のAがBで置き換えられる場合、任意のAがCで置き換えられる場合、および任意のAがDで置き換えられる場合に加えて、複数のAがB〜Dの少なくとも2つで置き換えられる場合をも含むことを意味する。例えば、「任意の−CH−が−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよいアルキル」には、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルケニル、アルケニルオキシアルキルなどが含まれる。なお、本発明においては、連続する2つの−CH−が−O−で置き換えられて、−O−O−のようになることは好ましくない。そして、アルキルにおける末端の−CH−が−O−で置き換えられることも好ましくない。
【発明の効果】
【0028】
本発明の有機ケイ素化合物は液状であるために、溶媒に溶解させる必要がなく、様々な用途に用いることができ、さらに硬化物を成形することが容易となる。
【0029】
さらに、本発明の有機ケイ素化合物は、ヒドロシリル化反応の手法によらずに製造することができるため、重金属等のヒドロシリル化反応の反応触媒が混入しておらず、安定性等の品質に優れている。
【0030】
また、本発明の有機ケイ素化合物の製造方法は、ヒドロシリル化反応によらない製造方法であるため、反応後に反応触媒を除去する工程が不要であり、簡便で、経済的かつ工業的にも優れた製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1で合成された化合物のH−NMRチャートである。
【図2】実施例1で合成された化合物の13C−NMRチャートである。
【図3】実施例1で合成された化合物の29Si−NMRチャートである。
【図4】実施例1で合成された化合物のGPCチャートである。
【図5】実施例2で合成された化合物のH−NMRチャートである。
【図6】実施例2で合成された化合物の13C−NMRチャートである。
【図7】実施例2で合成された化合物の29Si−NMRチャートである。
【図8】実施例2で合成された化合物のGPCチャートである。
【図9】実施例3で合成された化合物のH−NMRのチャートである。
【図10】実施例3で合成された化合物の13C−NMRチャートである。
【図11】実施例3で合成された化合物の29Si−NMRチャートである。
【図12】実施例3で合成された化合物のGPCチャートである。
【図13】実施例5、比較例1、比較例2で得られた試験片の400nmにおける180℃における透過率の経時変化を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0033】
本発明の有機ケイ素化合物は、式(1)で示される。
【0034】
【化8】

【0035】
式(1)中、R〜R11は、水素、炭素の数が2〜20であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−またはシクロアルキレンで置き換えられてもよいアルケニル、および炭素の数が1〜20であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−がシクロアルケニレンで置き換えられてもよいアルキルから独立して選択される基である。
【0036】
〜Rはフェニルであることが好ましい。R、R10、およびR11は、メチルまたはフェニルであることが好ましい。
【0037】
式(1)中、R12およびR13は、水素、炭素の数が1〜45であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−、−CO−、−CH=CH−、シクロアルキレン、またはシクロアルケニレンで置き換えられてもよいアルキル、置換もしくは非置換のアリール、および炭素の数が1〜45であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−、−CH=CH−、またはシクロアルキレンで置き換えられてもよいアルキレンと置換もしくは非置換のアリールとで構成されるアリールアルキルから独立して選択される基である。
【0038】
12およびR13は、水素、メチル、ビニル、およびメタクリロキシプロピルのいずれか1であることが好ましい。
【0039】
式(1)中、nは0<n≦4を満たす整数であり、好ましくは2である。
【0040】
本発明の有機ケイ素化合物は、式(2)または式(5)で表される有機ケイ素化合物と、n倍モルの式(3)で表される有機ケイ素化合物とを反応させた後、(4−n)倍モルの式(4)で表される有機ケイ素化合物とを反応させることにより得られる。
【0041】
【化9】

【0042】
【化10】

【0043】
【化11】

【0044】
【化12】

【0045】
式(2)〜(5)中のR〜R13の定義、並びに好ましい実施形態については式(1)における前記と同じである。
【0046】
式(3)および式(4)中のXはハロゲンをあらわす。原料の入手のしやすさ、あるいは取り扱いやすさを考慮するとXは塩素が好ましい。
【0047】
式(5)中のMは1価のアルカリ金属を表す。原料が入手し易いことから、Mは、NaおよびKが好ましい。
【0048】
式(2)または式(5)で表される有機ケイ素化合物は、例えば、後述する[合成例1]に記載の方法により製造することができる。
【0049】
式(3)で表される化合物は、例えば式(6)で表される環状トリシロキサンと式(7)で表されるクロロシランの反応により製造することができる。式(6)および(7)中のR〜R12の定義、並びに好ましい実施形態については式(1)における前記と同じである。
【0050】
【化13】

【0051】
【化14】

【0052】
式(4)で表される化合物はいわゆる一般のクロロシランであり、当業者であれば公知の技術により容易に製造することが可能であり、一般の試薬メーカー等を通じても入手可能である。
【0053】
反応はいわゆる縮合反応である。反応溶媒は必ずしも必要ではないが、式(2)または式(5)で表される化合物は通常固体であるので、反応を阻害するものでなければ必要に応じて適当な溶媒に溶解して反応を実施するのが好ましい。
【0054】
溶媒としては、例えば、ヘキサンおよびヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、およびジオキサン等のエ−テル系溶媒、塩化メチレンおよび四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は単独またはいくつかを組み合わせて使用することもできる。
【0055】
反応温度は特に限定されないが、通常は反応溶媒の沸点以下で反応するのが安全上好ましい。反応溶媒を使用しない場合は0〜250℃で反応することが好ましく、反応溶媒を使用する際は、反応が発熱反応であるので0〜20℃で行うことが好ましい。
【0056】
反応時間は、通常1〜24時間が好ましく、5〜18時間がより好ましい。
【0057】
式(2)で表される有機ケイ素化合物と式(3)または式(4)で表される有機ケイ素化合物との縮合反応については、反応により生じるハロゲン化水素を捕捉し、反応を促進するため、塩基を使用することが一般的に行われる。
【0058】
塩基については反応を阻害しないものであれば公知慣用のものを任意に選択して使用することができ、3級アミンが一般的に使用される。3級アミンとしては、例えば、トリエチルアミンおよびピリジン等が挙げられ、トリエチルアミンが好ましい。
【0059】
本発明で有機ケイ素化合物が液状であるとは、25℃において流動性があることをいい、具体的には、粘稠液体、水アメ状物質などである。水アメ状物質の場合には、流動性を上げるために60℃程度に温めて、硬化性組成物の調製に用いてもよい。
【0060】
また、本発明の有機ケイ素化合物は、組成物に含有させることができる。本発明の有機ケイ素化合物を含有する組成物としては、例えば、熱硬化性組成物が挙げられる。熱硬化性組成物を調製して硬化させた硬化物が屈折率、透明性および耐熱性(耐熱黄変性および耐透明性)に優れており、従来使用されていたフェニルシリコーン樹脂およびメチルシリコーン樹脂からなる硬化物の欠点が改善された、優れた硬化物の原料である。
【0061】
本発明の有機ケイ素化合物を含有する熱硬化性組成物をLED等に用いる場合には、硬化物の屈折率は、1.4以上であれば特に問題なく利用でき、1.49以上が好ましく、上限は特に制限されない。
【0062】
本発明の有機ケイ素化合物を含有する熱硬化性組成物は、(A)式(1)で表される有機ケイ素化合物と、(B)ビニルを2個以上有するケイ素化合物とを含有することが好ましい。当該熱硬化性組成物に、さらに(C)硬化触媒を加え、加熱することで、硬化物となる。
【0063】
また、前記熱硬化性組成物に、(D)末端に2個以上SiHを有するケイ素化合物をさらに含有することも好ましい。
【0064】
上記(B)ビニルを2個以上有するケイ素化合物は、架橋用のビニルを2個以上有するケイ素化合物であれば特に限定はされず、例えば、両末端にビニルを有する直鎖ポリシロキサンおよび末端に2個以上ビニルを有する分岐ポリシロキサン等を用いることができる。
【0065】
具体的には、例えば、1,1,3,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,1,5,5−ジビニルヘキサメチルトリシロキサン、両末端にビニルを有する直鎖状ポリシロキサンおよびT構造を持ち末端ビニルを有する分岐ポリシロキサンなどが挙げられる。
【0066】
前記(B)ビニルを2個以上有するケイ素化合物の分子量は、150〜10,000が好ましく、200〜5,000がより好ましい。
【0067】
上記(B)のビニルを2個以上有するケイ素化合物は、1種類でも、異なる2種類以上の化合物をブレンドして使用してもよい。
【0068】
また、(D)末端に2個以上のSiHを有するケイ素化合物は、架橋用のSiHを2個以上有するケイ素化合物であれば特に限定はされず、例えば、両末端にSiHを有する直鎖ポリシロキサン、側鎖にSiHを有する直鎖ポリシロキサンおよび末端に2個以上のSiHを有する分岐ポリシロキサンを用いることができる。
【0069】
具体的には、例えば、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、両末端にSiHを有する直鎖状ポリシロキサンおよびT構造を持ち末端SiHを有する分岐ポリシロキサンなどが挙げられる。
【0070】
前記(D)末端に2個以上のSiHを有するケイ素化合物の分子量は、150〜10,000が好ましく、200〜5,000がより好ましい。
【0071】
前記(D)末端に2個以上のSiHを有するケイ素化合物は、1種類でも、異なる2種類以上の化合物をブレンドして使用してもよい。
【0072】
本明細書中の分子量は、GPCで測定できる範囲の場合には、重量平均分子量であり、GPCで測定できない低分子量の場合には、化合物の構造から算出した分子量である。
【0073】
前記熱硬化性組成物中、(A)本発明の有機ケイ素化合物の含有量は、耐熱性の観点から、(A)、(B)、および(D)の全量に対し30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。
【0074】
また、(B)上記ビニルを2個以上有するケイ素化合物の含有量は、(A)、(B)、および(D)の全量に対し1〜70質量%であることが好ましく、3〜60質量%であることがより好ましく、5〜50質量%であることがさらに好ましい。
【0075】
本発明の熱硬化性組成物中、SiH合計とビニル合計の含有比は、SiHとビニルの官能基モル比で1:2〜2:1であることが好ましい。
【0076】
上記(C)硬化触媒は、通常、反応触媒として用いられる遷移金属触媒であれば特に限定されないが、白金触媒を用いることが好ましい。白金触媒としては、例えば、通常のヒドロシリル化触媒が選択できる。
【0077】
ヒドロシリル化触媒としては、例えば、カルステッド(Karstedt)触媒、スパイヤー(Spier)触媒、およびヘキサクロロプラチニック酸などが好適に挙げられる。
【0078】
前記(C)硬化触媒の使用量は、該触媒に含まれる遷移金属の熱硬化性組成物に対する質量比で、0.1ppm〜10ppmが好ましく、0.5ppm〜4ppmがより好ましい。添加割合が0.1ppm以上であれば、硬化が良好である。また添加割合が10ppm以下であれば、熱硬化性組成物を調製した後のポットライフが短くなりすぎることがなく好適に使用することができ、得られる硬化物の着色も生じにくい。
【0079】
本発明の有機ケイ素化合物を含有する熱硬化性組成物は溶媒を必要としない。上記したように、本発明の有機ケイ素化合物は液状であるため、ビニルを2個以上有するケイ素化合物が固体であったとしても、当該熱硬化性組成物も液状となる。本発明の有機ケイ素化合物を含有する熱硬化性組成物は、溶媒の混入が好まれない用途に使用することができるため、用途が多様である。
【0080】
熱硬化性組成物には、更に下記(i)〜(viii)から選ばれる少なくとも1の成分を配合してもよい。
【0081】
(i)粉末状の補強剤および充填剤、例えば、酸化アルミニウムおよび酸化マグネシウムなどの金属酸化物、微粉末シリカ、溶融シリカ、および結晶シリカなどのケイ素化合物、ガラスビーズ等の透明フィラー、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物、その他、カオリン、マイカ、石英粉末、グラファイト、および二硫化モリブデン等。
【0082】
これらは、熱硬化性組成物の透明性を損なわない範囲で配合することが好ましい。これらを配合するときは、熱硬化性組成物全量に対する質量比を、0.1〜0.6の範囲とすることが好ましい。
【0083】
(ii)着色剤または顔料。例えば、二酸化チタン、モリブデン赤、紺青、群青、カドミウム黄、カドミウム赤、および有機色素等が挙げられる。
【0084】
(iii)難燃剤。例えば、三酸化アンチモン、ブロム化合物、およびリン化合物等が挙げられる。
【0085】
(iv)イオン吸着体。
【0086】
上記(ii)〜(iv)の成分を配合するときの割合は、熱硬化性組成物全量に対する質量比で0.0001〜0.30とすることが好ましい。
【0087】
(v)シランカップリング剤。
【0088】
(vi)ジルコニア、チタニア、アルミナ、およびシリカなどの金属酸化物のナノ粒子分散液。
【0089】
上記(v)〜(vi)の成分を配合するときの割合は、熱硬化性組成物全量に対する質量比で0.01〜0.50とすることが好ましい。
【0090】
(vii)フェノール系、硫黄系、およびリン系などの酸化防止剤。硬化促進剤を使用するときの割合は、熱硬化性組成物全量に対する質量比で、0.0001〜0.1の範囲とすることが好ましい。
【0091】
(viii)耐光性を向上させるための紫外線吸収剤。硬化促進剤を使用するときの割合は、熱硬化性組成物全量に対する質量比で、0.0001〜0.1の範囲とすることが好ましい。
【0092】
本発明の有機ケイ素化合物を含有する熱硬化性組成物は、例えば、次の方法で作製できる。(A)本発明の有機ケイ素化合物、(B)ビニルを2個以上有するケイ素化合物、(C)硬化触媒、さらには必要に応じて上記任意成分を攪拌し混合した後、減圧して脱泡する。そして当該混合物を型に流し込み、100℃で1時間加熱し、最後に150℃で1〜2時間加熱することで硬化させることができる。
【0093】
本発明の熱硬化性組成物を熱硬化させて得られる硬化物の耐熱性は、耐熱透明性と耐熱黄変性を評価する。耐熱透明性は、耐熱試験前後の硬化物の透過率を紫外可視分光光度計で測定し、その光線透過率の保持率により評価することができる。また、耐熱黄変性は、耐熱試験前後の硬化物の黄色度(YI値)の保持率により評価することができる。
【0094】
本発明の熱硬化性組成物を熱硬化させて得られる硬化物の180℃での黄色度(YI値)および光線透過率の保持率は、それぞれ5以下、90%以上であることが好ましい。これらの範囲内にそれぞれの値が入る場合には、当該硬化物は、無色で透明性が高いことを示しており、透明性が要求されるような光半導体封止剤などの分野に特に好ましく利用できる。
【0095】
本発明の有機ケイ素化合物を含有する熱硬化性組成物を熱硬化させて得られる硬化物の耐熱透明性が非常に良好であることは、本発明の有機ケイ素化合物がヒドロシリル化反応によらずに製造されることに起因している。
【0096】
さらに、本発明の有機ケイ素化合物が有するダブルデッカー型シルセスキオキサン骨格は、その立体構造により、通常のランダム構造であるシルセスキオキサンに較べて耐熱透明性に優れた性質を与えているとともに、硬化物の加熱における着色を抑制する効果を与える。
【0097】
本発明の有機ケイ素化合物を含有する熱硬化性組成物を熱硬化させて得られる硬化物を成形し、成形体とすることで、様々な用途に用いることができる。また、当該熱硬化性組成物にシリカおよび蛍光体の少なくとも1つを分散させることで発光機能を有し、LED組成物として用いることができる。また、用途としては、例えば、光半導体封止材、半導体封止材、絶縁膜、シール材、接着剤、および光学レンズなどが挙げられる。
【0098】
シリカとしては、例えば、ヒュームドシリカおよびコロイダルシリカが挙げられる。熱硬化性組成物におけるシリカの含有量は1〜50質量%とすることが好ましく、1〜20質量%とすることがより好ましい。
【実施例1】
【0099】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。尚、実施例で用いた評価方法は以下の通りである。
【0100】
1)核磁気共鳴スペクトル(NMR)
日本電子(株)製のECP400を使用した。H、13C−NMRについては重クロロホルムに溶解し、溶媒由来の吸収を内部標準として測定した。29Si−NMRについては無溶媒で測定した。
【0101】
2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)
日本分光(株)製の液体クロマトグラフィーシステムLC−2000Plusに昭和電工(株)製カラムKF−804L、KF−805Lを接続し、テトラヒドロフランを溶離液として測定した。分子量は標準ポリスチレンを用いて作製した校正曲線から算出し、これをもとに数平均分子量、重量平均分子量を求めた。
【0102】
[合成例1]
<DD−4OHの合成>
環流冷却器、温度計、および滴下漏斗を取り付けた反応容器に、フェニルトリメトキシシラン(6,540g)、水酸化ナトリウム(880g)、イオン交換水(660g)、および2−プロパノール(26.3リットル)を仕込んだ。窒素気流下、撹拌しながら加熱(80℃)を開始した。還流開始から6時間撹拌し、室温(25℃)で1晩静置した。そして反応混合物を濾過器に移し、窒素ガスで加圧して濾過した。得られた固体を2−プロピルアルコールで1回洗浄、濾過した後、80℃で減圧乾燥を行ない、下式で表される無色固体(DD−4ONa)(3,300g)を得た。
【0103】
【化15】

【0104】
次に、環流冷却器、温度計、および滴下漏斗を取り付けた反応容器に、シクロペンチルメチルエーテル(2005g)、2−プロパノール(243g)、イオン交換水(1,400g)、塩酸(461g)を仕込み、窒素雰囲気下、室温(25℃)で攪拌した。続いて滴下ロートに、上記得られた化合物(DD−4ONa)(800g)、シクロペンチルメチルエーテル(2,003g)を仕込み、スラリー状にして30分かけて反応器に滴下し、滴下終了後30分間攪拌した。
【0105】
その後、静置して有機層と水層に分けた。得られた有機層は水洗により中性とした後、メンブレンフィルタにてゴミを取り除き、ロータリーエバポレーターを用いて60℃で減圧濃縮して、678gの無色固体を得た。この無色固体を酢酸メチル(980g)で洗浄し、減圧乾燥して下式で表される無色粉末状固体(DD−4OH)(496g)を得た。
【0106】
【化16】

【0107】
[実施例1]
500mLの四ツ口フラスコに冷却管、温度計、サンプリング装置、滴下漏斗を取り付けて窒素雰囲気下、ヘキサメチルシクロトリシロキサン22.3gを、44.6gのトルエンに溶解して仕込んだ。水浴上でジメチルクロロシラン7.1g、ジメチルホルムアミド6.7gをフィードしてマグネティックスターラーにより攪拌を行って反応した。ガスクロマトグラフィーでジメチルクロロシランの消失、および下記式(1−2)の化合物の生成を確認した。
【0108】
続いて合成例1で得られたDD−4OH(下記式(1−1)) 36.1gをトルエン180gに懸濁させてフラスコ内へフィードした。続いてトリエチルアミン15.2gを滴下して1時間攪拌した後、ジメチルクロロシラン(1−4)7.1gをフィードして終夜攪拌反応した。得られたスラリーを純水で3回洗浄し、エヴァポレーターにて低沸成分を留去して、液状の生成物43.2gを得た。
【0109】
得られた生成物のH−NMRチャートを図1に、13C−NMRチャートを図2に、29Si−NMRチャートを図3に、GPCチャートを図4に示す。GPCによる数平均分子量は1282、重量平均分子量は1361であった。各種データを総合的に判断した結果、以下の下記式(1−3)で示される化合物が生成していることがわかった。
【0110】
【化17】

【0111】
[実施例2]
500mLの四ツ口フラスコに冷却管、温度計、サンプリング装置、滴下漏斗を取り付けて窒素雰囲気下、ヘキサメチルシクロトリシロキサン22.3gを、44.5gのトルエンに溶解して仕込んだ。水浴上でジメチルクロロシラン7.1g、ジメチルホルムアミド7.0gをフィードしてマグネティックスターラーにより攪拌を行って反応した。ガスクロマトグラフィーでジメチルクロロシランの消失、および下記式(2−2)の化合物の生成を確認した。
【0112】
フラスコを氷浴に漬けて冷却し内温が5℃以下になったのを確認した後に、合成例1で得られたDD−4ONa(下記式(2−1))39.1gをトルエン180gに懸濁させてフラスコ内へフィードした。続いてトリエチルアミン3.0gを滴下して1時間攪拌した後、室温で終夜攪拌し反応した。得られたスラリーを純水で3回洗浄し、エヴァポレーターにて低沸成分を留去して、液状の生成物46.9gを得た。
【0113】
得られた生成物のH−NMRチャートを図5に、13C−NMRチャートを図6に、29Si−NMRチャートを図7に、GPCチャートを図8に示す。GPCによる数平均分子量は1189、重量平均分子量は1725であった。各種データを総合的に判断した結果、以下の構造式(2−3)で示される化合物が生成していることがわかった。
【0114】
【化18】

【0115】
[実施例3]
実施例1の式(1−4)で示される化合物を下記式(3−4)で示される化合物9.1gに変更した以外は実施例1と同様の操作を行って、高粘度の液状生成物51.8gを得た。
【0116】
得られた生成物のH−NMRチャートを図9に、13C−NMRチャートを図10に、29Si−NMRチャートを図11に、GPCチャートを図12に示す。GPCによる数平均分子量は1371、重量平均分子量は1503であった。各種データを総合的に判断した結果、以下の構造式(3−3)で示される化合物が生成していることがわかった。
【0117】
【化19】

【0118】
[実施例4]
500mLの四ツ口フラスコに冷却管、温度計、サンプリング装置、滴下漏斗を取り付けて窒素雰囲気下、ヘキサメチルシクロトリシロキサン22.3gを、44.6gのトルエンに溶解して仕込んだ。水浴上でトリメチルクロロシラン8.2g、ジメチルホルムアミド6.7gをフィードしてマグネティックスターラーにより攪拌を行って反応させた。下記式(4−2)で示される化合物の生成をガスクロマトグラフィーで確認した。合成例1で得られたDD−4OH(下記式(4−1))36.1gをトルエン180gに懸濁させてフラスコ内へフィードした。
【0119】
続いてトリエチルアミン15.2gを滴下して1時間攪拌した後、下記式(4−4)で示される化合物16.6gをフィードして終夜攪拌反応した。得られたスラリーを純水で3回洗浄し、エヴァポレーターにて低沸成分を留去して、高粘度の液状生成物62.0gを得た。
【0120】
得られた生成物のGPCによる数平均分子量は1502、重量平均分子量は1598であった。各種NMRの分析結果を総合して、以下の構造式(4−3)で示される化合物が生成していることがわかった。
【0121】
【化20】

【0122】
[実施例5]
スクリュー管に実施例1で合成した化合物(1−3)5.0gと分子量が720である両末端ビニル変性ポリジメチルシロキサン3.7g、更に白金触媒を白金が1ppmになるように加え、スクリュー管を自転・公転ミキサー(株式会社シンキー製 あわとり練太郎ARE−250)にセットし、混合・脱泡を行って熱硬化性組成物を得た。
【0123】
ニチアス(株)製ナフロンSPパッキン(4mm径)をスペーサーとしてガラス板2枚に挟み、この中に上記の熱硬化性組成物を流し込んで、減圧脱泡後、80℃で1時間、150℃で2時間の順に加熱することにより硬化させた後、ガラス板からはがして4mm厚の表面が平滑な試験片を得た。
【0124】
得られた試験片の400nmの透過率を島津製作所(株)製紫外可視分光光度計UV−1650にて測定し、180℃環境下における経時変化を追跡した。結果を図13に示す。
【0125】
[比較例1]
スクリュー管にチッソ(株)社製CRL−3017のA液、B液を所定量の割合で入れた。実施例5と同様の手順で混合・脱泡を実施し、加熱硬化して試験片を得た。得られた試験片の180℃における400nmの透過率の経時変化を図13に示す。
実施例1で合成した前記式(1−3)で示される化合物を、チッソ(株)社製CRL−3017のA液5.0g(ヒドロシリル化反応によってSiHの導入されたダブルデッカー型シルセスキオキサンを含む組成物)に変更し、さらに分子量が720である両末端ビニル変性ポリジメチルシロキサンを同B液1.0g(ビニル変性ポリジメチルシロキサンおよび白金触媒を含む組成物)に変更した以外は、実施例5と同様の手順で混合・脱泡を実施し、加熱硬化して試験片を得た。得られた試験片の180℃における400nmの透過率の経時変化を図13に示す。
【0126】
[比較例2]
スクリュー管にダウ・コーニング(株)社製OE−6630のA液、B液を所定量の割合で入れた。実施例5と同様の手順で混合・脱泡を実施し、加熱硬化して試験片を得た。得られた試験片の180℃における400nmの透過率の経時変化を図13に示す。
【0127】
図13に示すように、本発明による材料を含む実施例5の試験片は400時間経過後でも96%の透過率を保っており、従来技術による比較例1および2の試験片と比較して耐熱透明性に優れていた。この結果から、本発明の有機ケイ素化合物を含有する熱硬化性化合物は、耐熱透明性が非常に優れていることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明により提供される官能基を含有する有機ケイ素化合物は、透明性といった光学的特性を求められる用途、例えば半導体の封止材、光半導体の封止材、絶縁膜、シール材、および光学レンズなどに好適に用いることができる。
【0129】
また、光学フィルム、光学シート、接着剤、電子材料、絶縁材料、層間絶縁膜、塗料、インク、コーティング材料、成形材料、ポッティング材料、液晶シール材、表示デバイス用シール材、太陽電池封止材料、レジスト材料、カラーフィルター、電子ペーパー用材料、ホログラム用材料、太陽電池用材料、燃料電池用材料、表示材料、記録材料、防水材料、防湿材料、電池用固体電解質、ガス分離膜、およびコンタクトレンズ等に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示される有機ケイ素化合物。
【化1】


ただし、式(1)中のR〜R11は、水素、炭素の数が2〜20であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−またはシクロアルキレンで置き換えられてもよいアルケニル、および炭素の数が1〜20であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−がシクロアルケニレンで置き換えられてもよいアルキルから独立して選択される基であり、R12およびR13は水素、炭素の数が1〜45であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−、−CO−、−CH=CH−、シクロアルキレン、またはシクロアルケニレンで置き換えられてもよいアルキル、置換もしくは非置換のアリール、および炭素の数が1〜45であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−、−CH=CH−、またはシクロアルキレンで置き換えられてもよいアルキレンと置換もしくは非置換のアリールとで構成されるアリールアルキルから独立して選択される基であり、nは0<n≦4を満たす整数である。
【請求項2】
前記式(1)のR〜Rがフェニルであり、R、R10、およびR11がいずれもメチルであり、R12およびR13がいずれも水素であり、且つn=2である請求項1に記載の有機ケイ素化合物。
【請求項3】
前記式(1)のR〜Rがフェニルであり、R、R10、およびR11がいずれもメチルであり、R12が水素であり、R13がビニルであり、且つn=2である請求項1に記載の有機ケイ素化合物。
【請求項4】
前記式(1)のRがフェニルであり、R、R10、およびR11がいずれもメチルであり、R12が水素、またはメチルであり、R13がメタクリルであり、且つn=2である請求項1に記載の有機ケイ素化合物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機ケイ素化合物を含有する組成物。
【請求項6】
下記式(2)で表される有機ケイ素化合物と、n倍モル(nは0<n≦4を満たす整数)の下記式(3)で表される有機ケイ素化合物とを反応させた後、(4−n)倍モルの下記式(4)で表される有機ケイ素化合物とを反応させることを特徴とする、請求項1記載の有機ケイ素化合物の製造方法。
【化2】


【化3】


【化4】


ただし式(2)〜(4)中のR〜R11は、水素、炭素の数が2〜20であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−またはシクロアルキレンで置き換えられてもよいアルケニル、および炭素の数が1〜20であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−がシクロアルケニレンで置き換えられてもよいアルキルから独立して選択される基であり、式(3)および(4)中のR12およびR13は水素、炭素の数が1〜45であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−、−CO−、−CH=CH−、シクロアルキレン、またはシクロアルケニレンで置き換えられてもよいアルキル、置換もしくは非置換のアリール、および炭素の数が1〜45であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−、−CH=CH−、またはシクロアルキレンで置き換えられてもよいアルキレンと置換もしくは非置換のアリールとで構成されるアリールアルキルから独立して選択される基であり、式(3)および式(4)中のXはハロゲンを表す。
【請求項7】
下記式(5)で表される有機ケイ素化合物と、n倍モルの下記式(3)で表される有機ケイ素化合物とを反応させた後、(4−n)倍モルの下記式(4)で表される有機ケイ素化合物とを反応させることを特徴とする、請求項1記載の有機ケイ素化合物の製造方法。
【化5】


ただし式(5)中のR〜Rは水素、炭素の数が2〜20であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−またはシクロアルキレンで置き換えられてもよいアルケニル、および炭素の数が1〜20であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−がシクロアルケニレンで置き換えられてもよいアルキルから独立して選択される基であり、Mは1価のアルカリ金属を表す。
【化6】


【化7】


ただし式(3)および(4)中のR〜R11は、水素、炭素の数が2〜20であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−またはシクロアルキレンで置き換えられてもよいアルケニル、および炭素の数が1〜20であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−がシクロアルケニレンで置き換えられてもよいアルキルから独立して選択される基であり、式(3)および(4)中のR12およびR13は水素、炭素の数が1〜45であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−、−CO−、−CH=CH−、シクロアルキレン、またはシクロアルケニレンで置き換えられてもよいアルキル、置換もしくは非置換のアリール、および炭素の数が1〜45であり、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−、−CH=CH−、またはシクロアルキレンで置き換えられてもよいアルキレンと置換もしくは非置換のアリールとで構成されるアリールアルキルから独立して選択される基であり、式(3)および式(4)中のXはハロゲンを表す。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−31354(P2012−31354A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174258(P2010−174258)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(311002067)JNC株式会社 (208)
【Fターム(参考)】