説明

有機ケイ素化合物及びその製造方法、ゴム用配合剤、ゴム組成物並びにタイヤ

【課題】ゴム組成物の硬化物のヒステリシスロスを大幅に低下させると共に、作業性を大幅に向上させることが可能な含硫黄有機ケイ素化合物及びその製造方法、該含硫黄有機ケイ素化合物を含むゴム用配合剤、該ゴム用配合剤を配合してなるゴム組成物並びに該ゴム組成物の硬化物を用いたタイヤを提供する。
【解決手段】1個以上のメルカプト基を有する有機ケイ素化合物とクロロシランとを含窒素複素環化合物の存在下に反応させて、硫黄−ケイ素結合を形成することを特徴とする有機ケイ素化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子内に加水分解性シリル基と、硫黄−ケイ素結合を有する有機ケイ素化合物及びその製造方法、該有機ケイ素化合物を含むゴム用配合剤、該ゴム用配合剤を配合してなるゴム組成物並びに該ゴム組成物の硬化物を用いたタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
含硫黄有機ケイ素化合物は、タイヤの製造に用いられるシリカ充填ゴム組成物に配合する成分として有用である。シリカ充填タイヤは、自動車用途で向上した性能、特に耐磨耗性、転がり抵抗及びウェットグリップ性に優れる。こういった性能向上は、タイヤの低燃費性向上と密接に関連しており、昨今盛んに研究されている。
【0003】
低燃費性向上には、ゴム組成物のシリカ充填率を上げることが必須であるが、シリカ充填ゴム組成物は、タイヤの転がり抵抗を低減し、ウェットグリップ性を向上させるものの、未加硫粘度が高く、多段練り等を要し、作業性に問題がある。そのためシリカ等の無機充填剤を単に配合したゴム組成物においては、充填剤の分散が不足し、破壊強度及び耐磨耗性が大幅に低下するといった問題が生じる。そこで、無機充填剤のゴム中への分散性向上、並びに充填剤とゴムマトリックスの化学結合をさせるため、含硫黄有機ケイ素化合物が必須であった。
【0004】
含硫黄有機ケイ素化合物としては、アルコキシシリル基とポリスルフィドシリル基を分子内に含む化合物、例えば、ビス−トリエトキシシリルプロピルテトラスルフィドやビス−トリエトキシシリルプロピルジスルフィド等が有効であることが知られている。
【0005】
上記ポリスルフィド基を有する有機ケイ素化合物の他に、シリカの分散性に有利なチオエステル型の封鎖メルカプト基含有有機ケイ素化合物や、水素結合によるシリカとの親和性に有利な加水分解性シリル基部分にアミノアルコール化合物をエステル交換したタイプの含硫黄有機ケイ素化合物の応用も知られている。
【0006】
しかしながら、上記のような含硫黄有機ケイ素化合物を使用しても所望の低燃費性を実現するタイヤ用ゴム組成物を得るには至っておらず、他にもスルフィド型の化合物と比較して高コストである他、製造法が複雑であることから生産性に問題があるなど種々課題が残されるものであった。
【0007】
また、特開2000−103795号公報(特許文献1)には、硫黄−ケイ素結合を形成する手法として、トリエチルアミンなどのアミン塩基存在下でメルカプト基とクロロシランを反応させる手法が提案されているが、加熱工程やアミンの塩酸塩の濾過工程を有しており、製造方法が複雑であるという問題点があった。
なお、本発明に関連する従来技術として、上述した文献と共に下記文献が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−103795号公報
【特許文献2】特公昭51−20208号公報
【特許文献3】特表2004−525230号公報
【特許文献4】特開2004−18511号公報
【特許文献5】特開2005−8639号公報
【特許文献6】特開2002−145890号公報
【特許文献7】特開2008−150546号公報
【特許文献8】特開2010−132604号公報
【特許文献9】特許第4571125号公報
【特許文献10】米国特許出願公開第2005/0245754号明細書
【特許文献11】米国特許第6229036号明細書
【特許文献12】米国特許第6414061号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、上記従来技術の問題を解決し、ゴム組成物の硬化物のヒステリシスロスを大幅に低下させると共に、作業性を大幅に向上させることが可能な含硫黄有機ケイ素化合物及びその製造方法、該含硫黄有機ケイ素化合物を含むゴム用配合剤、該ゴム用配合剤を配合してなるゴム組成物並びに該ゴム組成物の硬化物を用いたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、加水分解性シリル基と硫黄−ケイ素結合を有する含硫黄有機ケイ素化合物を容易かつ確実に製造し得、この含硫黄有機ケイ素化合物を主成分とするゴム用配合剤を使用したゴム組成物が、所望の低燃費タイヤ特性を満足し、更に作業性を大幅に向上させることを見出し、本発明をなすに至った。
【0011】
従って、本発明は、下記に示す有機ケイ素化合物及びその製造方法、ゴム用配合剤、ゴム組成物並びにタイヤを提供する。
〔請求項1〕
1個以上のメルカプト基を有する有機ケイ素化合物とクロロシランとを含窒素複素環化合物の存在下に反応させて、硫黄−ケイ素結合を形成することを特徴とする有機ケイ素化合物の製造方法。
〔請求項2〕
1個以上のメルカプト基を有する有機ケイ素化合物が、下記式(i)
【化1】


(式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、R3は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、nは1〜3の整数であり、mは1〜3の整数である。)
で示されるものであり、クロロシランが、下記式(ii)
【化2】


(式中、R2は各々独立した酸素原子、硫黄原子、窒素原子から選ばれるヘテロ原子を間に挟んでもよい一価炭化水素基で、少なくとも一つが炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基又は炭素数2〜10のアルケニル基である。)
で示されるものであり、下記一般式(1)
【化3】


(式中、R1〜R3、n、mは上記の通りである。)
で示される有機ケイ素化合物を得るものである請求項1記載の製造方法。
〔請求項3〕
1個以上のメルカプト基を有する有機ケイ素化合物をアルカリ金属の水酸化物もしくはアルコキシドと反応させ、硫黄−アルカリ金属結合を形成後、該反応物とクロロシランとを反応させて、硫黄−ケイ素結合を形成することを特徴とする有機ケイ素化合物の製造方法。
〔請求項4〕
1個以上のメルカプト基を有する有機ケイ素化合物が、下記式(i)
【化4】


(式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、R3は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、nは1〜3の整数であり、mは1〜3の整数である。)
で示されるものであり、クロロシランが、下記式(ii)
【化5】


(式中、R2は各々独立した酸素原子、硫黄原子、窒素原子から選ばれるヘテロ原子を間に挟んでもよい一価炭化水素基で、少なくとも一つが炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基又は炭素数2〜10のアルケニル基である。)
で示されるものであり、下記一般式(1)
【化6】


(式中、R1〜R3、n、mは上記の通りである。)
で示される有機ケイ素化合物を得るものである請求項3記載の製造方法。
〔請求項5〕
1個以上のメルカプト基を有する有機ケイ素化合物をシラザン化合物と含窒素複素環化合物の存在下に反応させて、硫黄−ケイ素結合を形成することを特徴とする有機ケイ素化合物の製造方法。
〔請求項6〕
1個以上のメルカプト基を有する有機ケイ素化合物が、下記式(i)
【化7】


(式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、R3は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、nは1〜3の整数であり、mは1〜3の整数である。)
で示されるものであり、シラザン化合物が、下記式(iii)
【化8】


(式中、R2は各々独立した酸素原子、硫黄原子、窒素原子から選ばれるヘテロ原子を間に挟んでもよい一価炭化水素基で、少なくとも一つが炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基又は炭素数2〜10のアルケニル基である。)
で示されるものであり、下記一般式(1)
【化9】


(式中、R1〜R3、n、mは上記の通りである。)
で示される有機ケイ素化合物を得るものである請求項5記載の製造方法。
〔請求項7〕
1個以上のポリスルフィド基を有する有機ケイ素化合物に、アルカリ金属、アルカリ土類金属もしくはアルカリ土類金属の強塩基誘導体を反応させた後、該反応物とクロロシランとを反応させ、硫黄−ケイ素結合を形成することを特徴とする有機ケイ素化合物の製造方法。
〔請求項8〕
1個以上のポリスルフィド基を有する有機ケイ素化合物が、下記式(iv)
【化10】


(式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、R3は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、nは1〜3の整数であり、mは1〜3の整数である。)
で示されるものであり、クロロシランが、下記式(ii)
【化11】


(式中、R2は各々独立した酸素原子、硫黄原子、窒素原子から選ばれるヘテロ原子を間に挟んでもよい一価炭化水素基で、少なくとも一つが炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基又は炭素数2〜10のアルケニル基である。)
で示されるものであり、下記一般式(1)
【化12】


(式中、R1〜R3、n、mは上記の通りである。)
で示される有機ケイ素化合物を得るものである請求項7記載の製造方法。
〔請求項9〕
下記一般式(1a)で表される有機ケイ素化合物。
【化13】


(式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、R2は各々独立した酸素原子、硫黄原子、窒素原子から選ばれるヘテロ原子を間に挟んでもよい一価炭化水素基で、少なくとも一つが炭素数4〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基又は炭素数2〜10のアルケニル基であり、R3は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、nは1〜3の整数であり、mは1〜3の整数である。)
〔請求項10〕
下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項9記載の有機ケイ素化合物。
【化14】


(式中、R1、nは上記と同じであり、Meはメチル基であり、R4は各々独立した酸素原子、硫黄原子、窒素原子から選ばれるヘテロ原子を間に挟んでもよい一価炭化水素基で、少なくとも一つが炭素数4〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基又は炭素数2〜10のアルケニル基である。)
〔請求項11〕
下記一般式(3)〜(8)で表されることを特徴とする請求項10記載の有機ケイ素化合物。
【化15】


【化16】


(式中、R1、n、Meは上記と同じであり、Phはフェニル基である。)
〔請求項12〕
1がCH3CH2であることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項記載の有機ケイ素化合物。
〔請求項13〕
請求項9〜12のいずれか1項記載の有機ケイ素化合物を含んでなるゴム用配合剤。
〔請求項14〕
更に、少なくとも1種の粉体(B)を含有してなり、前記有機ケイ素化合物(A)と少なくとも1種の粉体(B)との質量比が、(A)/(B)=70/30〜5/95の割合である請求項13記載のゴム用配合剤。
〔請求項15〕
請求項13又は14記載のゴム用配合剤を配合してなるゴム組成物。
〔請求項16〕
請求項15記載のゴム組成物の硬化物を用いたタイヤ。
【発明の効果】
【0012】
本発明の有機ケイ素化合物は、加水分解性シリル基と硫黄−ケイ素結合を有しており、メルカプト基がシリル基で保護されているため、該化合物を主成分とするゴム用配合剤を使用したゴム組成物の加硫時の低スコーチ性が達成でき、更に作業性を大幅に向上させることができ、該ゴム組成物の硬化物のヒステリシスロスが低い他、所望の低燃費タイヤ特性を満足することができる。
また、本発明に係る有機ケイ素化合物の製造方法によれば、かかる有機ケイ素化合物を容易かつ確実に製造し得る。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について具体的に説明する。なお、本発明において「シランカップリング剤」は「有機ケイ素化合物」に含まれる。
【0014】
[有機ケイ素化合物(シランカップリング剤)]
本発明の製造方法によって得られる有機ケイ素化合物(シランカップリング剤)は、下記一般式(1)で表されるものである。
【化17】


(式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、R2は各々独立した酸素原子、硫黄原子、窒素原子から選ばれるヘテロ原子を間に挟んでもよい一価炭化水素基で、少なくとも一つが炭素数1〜20、特に4〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基又は炭素数2〜10のアルケニル基であり、R3は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、nは1〜3の整数であり、mは1〜3の整数である。)
【0015】
上記一般式(1)で表される本発明の有機ケイ素化合物(シランカップリング剤)の特徴としては、下記構造(i)、(ii)を共に有することが挙げられる。
(i)加水分解性シリル基
(ii)硫黄−ケイ素結合
【0016】
上記式(1)において、R1は、炭素数1〜10、好ましくは1〜6のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基で、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基などが挙げられる。R1として、好ましくはエチル基である。
【0017】
また、R2は酸素原子、硫黄原子、窒素原子から選ばれるヘテロ原子を間に挟んでもよい、炭素数1〜20、好ましくは4〜10の一価炭化水素基であり、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基等が挙げられ、特にアルキル基の場合、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、又は窒素原子(−NH−又は−N(CH3)−)が介在してもよい。具体的には、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、フェニル基、ベンジル基、キシリル基、トリル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ペンテニル基などが挙げられる。
2は少なくとも一つが炭素数1〜20、特に4〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基又は炭素数2〜10のアルケニル基であり、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、フェニル基、ベンジル基、キシリル基、トリル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ペンテニル基などが挙げられる。
【0018】
また、R3の炭素数1〜10、好ましくは1〜6のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基としては、メチル基、エチル基、フェニル基などが挙げられる。
nは1〜3の整数、好ましくは2又は3であり、mは1〜3の整数である。
【0019】
上記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物として、具体的には、下記一般式(2)で示すものを挙げることができる。
【化18】


(式中、R1、nは上記と同じであり、Meはメチル基であり、R4は各々独立した酸素原子、硫黄原子、窒素原子から選ばれるヘテロ原子を間に挟んでもよい一価炭化水素基で、少なくとも一つが炭素数4〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基又は炭素数2〜10のアルケニル基である。)
【0020】
上記式(2)中、R4は酸素原子、硫黄原子、窒素原子から選ばれるヘテロ原子を間に挟んでもよい、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは4〜10の一価炭化水素基であり、具体的には、上記R2で例示した酸素原子、硫黄原子、窒素原子から選ばれるヘテロ原子を間に挟んでもよい一価炭化水素基と同様のものが挙げられる。
4は少なくとも一つがtert−ブチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、フェニル基、キシリル基、ベンジル基、ビニル基などの炭素数4〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基又は炭素数2〜10のアルケニル基である。
【0021】
より具体的には、下記一般式(3)〜(8)で示すものを挙げることができる。
【化19】


【化20】


(式中、R1、n、Meは上記と同じであり、Phはフェニル基である。)
【0022】
本発明の有機ケイ素化合物は、下記の製造方法〔1〕〜〔4〕のいずれかの方法により得ることができる。
【0023】
製造方法〔1〕
1個以上のメルカプト基を有する有機ケイ素化合物とクロロシランとをイミダゾール、ピリジン、それらの誘導体などの含窒素複素環化合物の存在下に反応させて、硫黄−ケイ素結合を形成する。
この場合、1個以上のメルカプト基を有する有機ケイ素化合物として、下記式(i)
【化21】


(式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、R3は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、nは1〜3の整数であり、mは1〜3の整数である。)
で示されるものを使用し、クロロシランとして、下記式(ii)
【化22】


(式中、R2は各々独立した酸素原子、硫黄原子、窒素原子から選ばれるヘテロ原子を間に挟んでもよい一価炭化水素基で、少なくとも一つが炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基又は炭素数2〜10のアルケニル基である。)
で示されるものを使用することにより、上記一般式(1)で示される有機ケイ素化合物を得ることができる。なお、上記式(i)、(ii)において、R1〜R3、n、mの具体例は上述した通りである。
【0024】
ここで、本発明の有機ケイ素化合物製造時に必要とされる原料であるメルカプト基を有する有機ケイ素化合物として、具体的には、α−メルカプトメチルトリメトキシシラン、α−メルカプトメチルメチルジメトキシシラン、α−メルカプトメチルジメチルメトキシシラン、α−メルカプトメチルトリエトキシシラン、α−メルカプトメチルメチルジエトキシシラン、α−メルカプトメチルジメチルエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジメチルエトキシシラン等が挙げられるが、ここに例示されたものに限らない。
【0025】
本発明の有機ケイ素化合物製造時に必要とされる原料であるクロロシランとして、具体的には、トリメチルクロロシラン、エチルジメチルクロロシラン、ジエチルメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、tert−ブチルジメチルクロロシラン、tert−ブチルジフェニルクロロシラン、トリイソプロピルクロロシラン、トリ−n−ブチルクロロシラン、トリイソブチルクロロシラン、クロロジメチルフェニルシラン、ジフェニルメチルクロロシラン、ジメチル−n−オクチルクロロシラン、デシルジメチルクロロシラン、ドデシルジメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、トリフェニルクロロシラン等のトリオルガノクロロシランが挙げられる。これらのクロロシランは、液状のクロロシランの場合はそのまま用いることができ、tert−ブチルジメチルクロロシランのように常温で固体のクロロシランの場合は、固体のまま用いてもよく、またトルエンやテトラヒドロフラン等の溶媒に溶解して溶液として用いてもよい。
【0026】
本発明の有機ケイ素化合物製造時に必要とされる原料であるイミダゾールやピリジン及びその誘導体などの含窒素複素環化合物としては特に限定されず、市販されていて入手容易なものとして、ピリジン、イミダゾール、4−ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネンなどが挙げられるが、ここに例示されたものに限らない。
【0027】
本発明の有機ケイ素化合物を製造するにあたり、メルカプト基を有する有機ケイ素化合物と、イミダゾールやピリジン及びその誘導体などの含窒素複素環化合物との配合比は、反応性、生産性の点から、有機ケイ素化合物中のメルカプト基1モルに対し、含窒素複素環化合物を0.5〜1.5モル、特に0.8〜1.2モルの範囲で反応させることが好ましい。含窒素複素環化合物が少なすぎるとメルカプト基が残存し、ゴム用配合剤として使用した場合、スコーチが発生するおそれがあり、多すぎると過剰の含窒素複素環化合物が残存し、非経済的となることがある。
【0028】
本発明の有機ケイ素化合物を製造するにあたり、メルカプト基を有する有機ケイ素化合物とクロロシランとの配合比は、反応性、生産性の点から、有機ケイ素化合物中のメルカプト基1モルに対し、クロロシランを0.5〜1.5モル、特に0.8〜1.2モルの範囲で反応させることが好ましい。クロロシランが少なすぎるとメルカプト基が残存し、ゴム用配合剤として使用した場合、スコーチが発生するおそれがあり、多すぎると過剰のクロロシランが残存し、非経済的となることがある。
【0029】
本発明の有機ケイ素化合物製造時には、必要に応じて溶媒を使用してもよい。溶媒は上述した原料であるメルカプト基を有する有機ケイ素化合物や、クロロシラン等と非反応性であれば特に限定されないが、具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、デカンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられ、特にテトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒が好ましい。
【0030】
上記有機ケイ素化合物の製造にあたり、メルカプト基を有する有機ケイ素化合物とクロロシランとの反応温度は、0〜120℃であることが好ましく、5〜100℃であることがより好ましく、10〜60℃であることが更に好ましい。反応温度が低すぎると反応速度が遅くなることがあり、高すぎるとクロロシランが揮発することがある。
また、反応時間は、上記反応が終了する時間であれば特に限定されないが、好ましくは10分〜24時間、より好ましくは1〜10時間程度である。
【0031】
製造方法〔2〕
更に、本発明の有機ケイ素化合物は、1個以上のメルカプト基を有する有機ケイ素化合物と、アルカリ金属の水酸化物もしくはアルコキシドとを反応させ、硫黄−アルカリ金属結合を形成後、該反応物にクロロシランを反応させて、硫黄−ケイ素結合を形成することにより得ることができる。
【0032】
ここで、1個以上のメルカプト基を有する有機ケイ素化合物及びクロロシランとしては、上記式(i)、(ii)で示されるものをそれぞれ好適に使用し得、上述した製造方法〔1〕において例示したものと同様のものが例示できる。
【0033】
上記方法による本発明の有機ケイ素化合物製造時に必要とされる原料であるアルカリ金属の水酸化物もしくはアルコキシドとしては特に限定されず、市販されていて入手容易なものとして、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなどが挙げられるが、ここに例示されたものに限らない。
【0034】
上記方法によって本発明の有機ケイ素化合物を製造するにあたり、メルカプト基を有する有機ケイ素化合物と、アルカリ金属の水酸化物もしくはアルコキシドとの配合比は、反応性、生産性の点から、有機ケイ素化合物中のメルカプト基1モルに対し、アルカリ金属の水酸化物もしくはアルコキシドを0.5〜1.5モル、特に0.8〜1.2モルの範囲で反応させることが好ましい。アルカリ金属の水酸化物もしくはアルコキシドが少なすぎるとメルカプト基が残存し、ゴム用配合剤として使用した場合、スコーチが発生するおそれがあり、多すぎると過剰のアルカリ金属の水酸化物もしくはアルコキシドが残存し、非経済的となることがある。
【0035】
また、本発明の有機ケイ素化合物を製造するにあたり、クロロシランの使用量は、反応性、生産性の点から、有機ケイ素化合物中のメルカプト基1モルに対し、0.5〜1.5モル、特に0.8〜1.2モルの範囲であることが好ましい。クロロシランが少なすぎるとメルカプト基が残存し、ゴム用配合剤として使用した場合、スコーチが発生するおそれがあり、多すぎると過剰のクロロシランが残存し、非経済的となることがある。
【0036】
上記方法による本発明の有機ケイ素化合物製造時には、必要に応じて溶媒を使用してもよい。溶媒は上述した原料であるメルカプト基を有する有機ケイ素化合物や、クロロシラン等と非反応性であれば特に限定されないが、具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、デカンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒、メタノールやエタノールなどのアルコール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0037】
上記有機ケイ素化合物の製造にあたり、メルカプト基を有する有機ケイ素化合物と、アルカリ金属の水酸化物もしくはアルコキシドとの反応温度は、0〜140℃であることが好ましく、10〜100℃であることがより好ましく、20〜80℃であることが更に好ましい。反応温度が低すぎると反応速度が遅くなることがあり、高すぎても反応速度の更なる向上はなく、非経済的となることがある。
また、反応時間は、上記反応が終了する時間であれば特に限定されないが、好ましくは10分〜10時間、より好ましくは1〜4時間程度である。
【0038】
また、メルカプト基を有する有機ケイ素化合物とアルカリ金属の水酸化物もしくはアルコキシドとを反応させた化合物と、クロロシランとの反応温度は、0〜100℃であることが好ましく、10〜60℃であることがより好ましい。反応温度が低すぎると反応速度が遅くなることがあり、高すぎるとクロロシランが揮発することがある。
また、反応時間は、上記反応が終了する時間であれば特に限定されないが、好ましくは10分〜10時間、より好ましくは1〜4時間程度である。
【0039】
製造方法〔3〕
更に、本発明の有機ケイ素化合物は、イミダゾールやピリジン及びその誘導体などの含窒素複素環化合物を触媒とし、1個以上のメルカプト基を有する有機ケイ素化合物とシラザン化合物とを反応させて、硫黄−ケイ素結合を形成することにより得ることができる。
【0040】
ここで、イミダゾールやピリジン及びその誘導体などの含窒素複素環化合物及び1個以上のメルカプト基を有する有機ケイ素化合物としては、上述した製造方法〔1〕において例示したものと同様のものが例示できる。
また、シラザン化合物としては、下記式(iii)
【化23】


(式中、R2は上記の通りである。)
で示されるジシラザンが好適に用いられる。
【0041】
かかるシラザン化合物としては、市販されていて入手容易なものとして、ヘキサメチルジシラザン、1,3−ビス(クロロメチル)テトラメチルジシラザン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザンなどが挙げられるが、ここに例示されたものに限らない。
【0042】
上記方法によって本発明の有機ケイ素化合物を製造するにあたり、メルカプト基を有する有機ケイ素化合物とシラザン化合物との反応割合は、反応性、生産性の点から、有機ケイ素化合物中のメルカプト基1モルに対し、シラザン化合物を0.5〜10.0モル、特に1.5〜4.0モルの範囲で反応させることが好ましい。シラザン化合物が少なすぎるとメルカプト基が残存し、ゴム用配合剤として使用した場合、スコーチが発生するおそれがあり、多すぎると過剰のシラザン化合物が残存し、非経済的となることがある。
【0043】
また、本発明の有機ケイ素化合物を製造するにあたり、触媒として用いるイミダゾールやピリジン及びその誘導体などの含窒素複素環化合物の配合量は、反応性、生産性の点から、有機ケイ素化合物中のメルカプト基1モルに対し、0.00001〜0.5モル、特に0.001〜0.1モルの範囲であることが好ましい。触媒の配合量が少なすぎると触媒効果が不十分で反応速度が遅くなることがあり、多すぎても反応速度の更なる向上はなく、非経済的となることがある。
【0044】
上記方法による本発明の有機ケイ素化合物製造時には、必要に応じて溶媒を使用してもよい。溶媒は上述した原料であるメルカプト基を有する有機ケイ素化合物や、シラザン化合物等と非反応性であれば特に限定されないが、具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、デカンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒、メタノールやエタノールなどのアルコール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0045】
上記有機ケイ素化合物の製造にあたり、メルカプト基を有する有機ケイ素化合物と、シラザン化合物との反応温度は、20〜150℃であることが好ましく、40〜120℃であることがより好ましく、60〜120℃であることが更に好ましい。反応温度が低すぎると反応速度が遅くなることがあり、高すぎても更なる反応速度の向上はなく、非経済的となることがある。
また、反応時間は、上記反応が終了する時間であれば特に限定されないが、好ましくは1〜24時間、より好ましくは2〜16時間程度である。
【0046】
製造方法〔4〕
更に、本発明の有機ケイ素化合物は、1個以上のポリスルフィド基を有する有機ケイ素化合物に、アルカリ金属、アルカリ土類金属もしくはアルカリ土類金属の強塩基誘導体を反応させた後、該反応物にクロロシランを反応させて、硫黄−ケイ素結合を形成することにより得ることができる。
【0047】
ここで、クロロシランとしては、上述した製造方法〔1〕において例示したものと同様のものが例示できる。
【0048】
上記方法による本発明の有機ケイ素化合物製造時に必要とされる原料であるポリスルフィド基を有する有機ケイ素化合物としては特に限定されず、ジスルフィド、トリスルフィド、テトラスルフィド等のいずれのものでもよく、市販されていて入手容易なものとして、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィドなどが挙げられるが、ここに例示されたものに限らない。
これらの中では、特に下記式(iv)
【化24】


(式中、R1、R3、n、mは上記の通りである。)
で示されるジスルフィドが好ましい。
【0049】
上記方法による本発明の有機ケイ素化合物製造時に必要とされる原料であるアルカリ金属又はアルカリ土類金属、もしくはアルカリ土類金属の強塩基誘導体としては特に限定されず、リチウム、ナトリウム、カリウム、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなどが挙げられるが、ここに例示されたものに限らない。
【0050】
上記方法によって本発明の有機ケイ素化合物を製造するにあたり、ポリスルフィド基を有する有機ケイ素化合物と、アルカリ金属、アルカリ土類金属もしくはアルカリ土類金属の強塩基誘導体とは、反応性、生産性の点から、有機ケイ素化合物中のポリスルフィド基1モルに対し、アルカリ金属、アルカリ土類金属もしくはアルカリ土類金属の強塩基誘導体を1.0〜10.0モル、特に2.0〜2.5モルの範囲で反応させることが好ましい。アルカリ金属、アルカリ土類金属もしくはアルカリ土類金属の強塩基誘導体が少なすぎるとポリスルフィド基が残存し、ゴム用配合剤として用いた場合、スコーチが発生するおそれがあり、多すぎると未反応の強塩基誘導体が残存し、非経済的となることがある。
【0051】
また、本発明の有機ケイ素化合物を製造するにあたり、クロロシランの使用量は、反応性、生産性の点から、有機ケイ素化合物中のポリスルフィド基1モルに対し、1.0〜10.0モル、特に2.0〜2.5モルの範囲であることが好ましい。クロロシランが少なすぎるとポリスルフィド基が残存し、ゴム用配合剤として用いた場合、スコーチが発生するおそれがあり、多すぎると未反応のクロロシランが残存し、非経済的となることがある。
【0052】
上記方法による本発明の有機ケイ素化合物製造時には、必要に応じて溶媒を使用してもよい。溶媒は上述した原料であるポリスルフィド基を有する有機ケイ素化合物や、クロロシラン等と非反応性であれば特に限定されないが、具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、デカンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0053】
上記有機ケイ素化合物の製造にあたり、ポリスルフィド基を有する有機ケイ素化合物と、アルカリ金属、アルカリ土類金属もしくはアルカリ土類金属の強塩基誘導体との反応温度は、20〜150℃であることが好ましく、40〜140℃であることがより好ましく、60〜120℃であることが更に好ましい。反応温度が低すぎると反応速度が遅くなることがあり、高すぎても更なる反応速度の向上はなく、非経済的となることがある。
また、反応時間は、上記反応が終了する時間であれば特に限定されないが、好ましくは10分〜24時間、より好ましくは30分〜10時間程度である。
【0054】
ポリスルフィド基を有する有機ケイ素化合物とアルカリ金属、アルカリ土類金属もしくはアルカリ土類金属の強塩基誘導体との反応物と、クロロシランとの反応温度は、0〜100℃であることが好ましく、10〜60℃であることがより好ましい。反応温度が低すぎると反応速度が遅くなることがあり、高すぎるとクロロシランが揮発することがある。
また、反応時間は、上記反応が終了する時間であれば特に限定されないが、好ましくは10分〜24時間、より好ましくは1〜10時間程度である。
【0055】
上記各方法において、メルカプト基を有する有機ケイ素化合物とクロロシランもしくはシラザン化合物との反応、又はポリスルフィド基を有する有機ケイ素化合物とクロロシランとの反応により、硫黄−ケイ素結合が形成され、本発明の式(1)で示される有機ケイ素化合物が得られる。
【0056】
本発明のゴム用配合剤は、上記有機ケイ素化合物(A)を含んでなるものである。また、本発明の上記有機ケイ素化合物(A)を予め少なくとも1種の粉体(B)と混合したものをゴム用配合剤として使用することも可能である。粉体(B)としては、各種ゴム組成物でフィラーとして用いるカーボンブラック、タルク、炭酸カルシウム、ステアリン酸、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、水酸化マグネシウム等が挙げられる。補強性の観点からシリカ及び水酸化アルミニウムが好ましく、シリカが特に好ましい。
【0057】
粉体(B)の配合量は、成分(A)/(B)の質量比で70/30〜5/95、更に好ましくは60/40〜10/90の割合である。粉体(B)の量が少なすぎるとゴム用配合剤が液状となり、ゴム混練機への仕込みが困難となる場合がある。粉体(B)の量が多すぎるとゴム用配合剤の有効量に対し、全体量が多くなってしまい輸送費用が高くなる場合がある。
【0058】
本発明のゴム用配合剤は、本発明の目的を損なわない範囲で脂肪酸、脂肪酸塩、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオキシアルキレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体等の有機ポリマーやゴムと混合されたものでもよく、加硫剤、架橋剤、加硫促進剤、架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、充填剤、可塑剤などのタイヤ用、その他一般ゴム用に一般的に配合されている各種添加剤を配合してもよく、その形態として液体状でも固体状でもよく、更に有機溶媒に希釈したものでもよく、またエマルジョン化したものでもよい。
【0059】
本発明のゴム用配合剤はシリカ配合のゴム組成物に対して好適に用いられる。
この場合、上記ゴム用配合剤の添加量は、ゴム組成物に配合されるフィラー(上記粉体(B)を含む全フィラー)100質量部に対して本発明の有機ケイ素化合物を好ましくは0.2〜30質量部、特に好ましくは1〜20質量部添加するのが望ましい。有機ケイ素化合物の添加量が少なすぎると所望のゴム物性が得られないおそれがある。逆に多すぎると添加量に対して効果が飽和し、非経済的である。
【0060】
ここで、本発明にかかるゴム用配合剤を用いるゴム組成物に主成分として配合されるゴムとしては、従来から各種ゴム組成物に一般的に配合されている任意のゴム、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、各種スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、各種ポリブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)などのジエン系ゴムやエチレン−プロピレン共重合体ゴム(EPR,EPDM)などを単独又は任意のブレンドとして使用することができる。また、配合されるフィラーとしてはシリカ、タルク、クレー、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン等が挙げられる。ここで、上記粉体(B)を含む全フィラーの配合量は、上記ゴム100質量部に対し20〜2,000質量部、特に40〜1,000質量部であることが好ましい。
【0061】
本発明にかかるゴム用配合剤を用いるゴム組成物には、前述した必須成分に加えて、加硫剤、架橋剤、加硫促進剤、架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、充填剤、可塑剤などのタイヤ用、その他一般ゴム用に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができる。これら添加剤の配合量も本発明の目的に反しない限り従来の一般的な配合量とすることができる。
【0062】
なお、これらのゴム組成物において、本発明の有機ケイ素化合物は、公知のシランカップリング剤の代わりをなすことも可能であるが、更に他のシランカップリング剤の添加は任意であり、従来からシリカ充填剤と併用される任意のシランカップリング剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加してもよく、それらの典型例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビス−トリエトキシシリルプロピルテトラスルフィド、ビス−トリエトキシシリルプロピルジスルフィド等を挙げることができる。
【0063】
本発明のゴム用配合剤を配合してなるゴム組成物は、一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。なお、加硫は通常の公知の条件でよい。
【0064】
本発明のタイヤは、上記のゴム組成物を用いて製造することを特徴とし、上記のゴム組成物の硬化物がトレッドに用いられていることが好ましい。本発明のタイヤは、転がり抵抗が大幅に低減されていることに加え、耐磨耗性も大幅に向上している。なお、本発明のタイヤは、従来公知の構造で特に限定はなく、通常の方法で製造できる。また、本発明のタイヤが空気入りのタイヤの場合、タイヤ内に充填する気体として通常のあるいは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、下記例中、部は質量部を示し、粘度、比重、屈折率は、25℃において測定した値である。また、NMRは核磁気共鳴分光法の略である。
【0066】
[実施例1]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた2Lセパラブルフラスコに、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製KBE−803)238.4g(1.0mol)を納め、20質量%ナトリウムエトキシドエタノール溶液357.3g(1.05mol)を滴下し、オイルバスにて60℃に加熱した。その後60℃にて2時間加熱撹拌し、トルエン1,000gを滴下した。次いで、オイルバスにて113℃に加熱し、トルエン、エタノールを留去した。留去した溶媒の量は1,000gであり、溶媒はトルエンに完全に置換されていた。次いで、溶液を40℃まで冷却し、トリメチルシリルクロライド(信越化学工業社製KA−31)114.0g(1.05mol)を滴下した。滴下中に溶液が80℃まで昇温した。その後40℃にて1時間撹拌した。次いで、濾過し、濾液をロータリーエバポレーターにて減圧濃縮することで得られた282.9gの反応生成物は無色透明液体であり、1H NMRスペクトルにより反応生成物は下記化学構造式(9)に示す構造を有する生成物であることを確認した。この化合物の1H NMRスペクトルデータは以下の通りである。
【0067】
1H NMR(300MHz,CDCl3,δ(ppm)):0.21(s,9H),
0.70(t,2H),1.89(t,9H),1.63(m,2H),
2.45(t,2H),3.79(t,6H).
【0068】
【化25】


(式中、Meはメチル基、Etはエチル基を示す。以下同じ。)
【0069】
[実施例2]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製KBE−803)238.4g(1.0mol)、イミダゾール68.1g(1.0mol)、テトラヒドロフラン200gを納め、室温にて1時間撹拌した。次いで、トリメチルシリルクロライド(信越化学工業社製KA−31)114.0g(1.05mol)を滴下し、室温にて1時間撹拌した。その後、濾過、ロータリーエバポレーターにて減圧濃縮することで無色透明液体281.1gを得た。1H NMRスペクトルにより反応生成物は前記化学構造式(9)に示す構造を有する生成物であることを確認した。
【0070】
[実施例3]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製KBE−803)238.4g(1.0mol)、イミダゾール3.4g(0.050mol)、ヘキサメチルジシラザン322.8g(2.0mol)を納め、オイルバスにて125℃に加熱した。その後、125℃にて30時間加熱熟成した。その後、ロータリーエバポレーターにて減圧濃縮、濾過することで無色透明液体279.3gを得た。1H NMRスペクトルにより反応生成物は前記化学構造式(9)に示す構造を有する生成物であることを確認した。
【0071】
[実施例4]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた2Lセパラブルフラスコに、トルエン500g及びナトリウム48.3g(2.1mol)を納め、オイルバスにて110℃に加熱した。その後、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド474.8g(1.0mol)を滴下した。その後、トリメチルシリルクロライド(信越化学工業社製KA−31)228.0g(2.1mol)を滴下し、1時間撹拌した。その後、脱イオン水500gを加えて撹拌した後、トルエン溶液を回収した。その後、ロータリーエバポレーターにて減圧濃縮、濾過することで無色透明液体522.8gを得た。1H NMRスペクトルにより反応生成物は前記化学構造式(9)に示す構造を有する生成物であることを確認した。
【0072】
[実施例5]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた2Lセパラブルフラスコに、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製KBE−803)238.4g(1.0mol)を納め、20質量%ナトリウムエトキシドエタノール溶液357.3g(1.05mol)を滴下し、オイルバスにて60℃に加熱した。その後60℃にて2時間加熱撹拌し、トルエン1,000gを滴下した。次いで、オイルバスにて113℃に加熱し、トルエン、エタノールを留去した。留去した溶媒の量は1,000gであり、溶媒はトルエンに完全に置換されていた。次いで、溶液を40℃まで冷却し、ジメチルフェニルクロロシラン(信越化学工業社製LS−2000)179.2g(1.05mol)を滴下した。滴下中に溶液が80℃まで昇温した。その後40℃にて1時間撹拌した。その後濾過し、濾液をロータリーエバポレーターにて減圧濃縮することで無色透明液体331.7gを得た。1H NMRスペクトルにより反応生成物は下記化学構造式(10)に示す構造を有する生成物であることを確認した。この化合物の1H NMRスペクトルデータは以下の通りである。
【0073】
1H NMR(300MHz,CDCl3,δ(ppm)):0.49(s,6H),
0.62(t,2H),1.12(t,9H),1.53(m,2H),
2.31(t,2H),3.72(t,6H),7.30−7.38(m,3H),
7.45−7.52(m,2H).
【0074】
【化26】

【0075】
[実施例6]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製KBE−803)238.4g(1.0mol)、イミダゾール68.1g(1.0mol)、テトラヒドロフラン200gを納め、室温にて1時間撹拌した。次いで、ジメチルフェニルクロロシラン(信越化学工業社製LS−2000)179.2g(1.05mol)を滴下し、室温にて1時間撹拌した。その後、濾過、ロータリーエバポレーターにて減圧濃縮することで無色透明液体321.1gを得た。1H NMRスペクトルにより反応生成物は前記化学構造式(10)に示す構造を有する生成物であることを確認した。
【0076】
[実施例7]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた2Lセパラブルフラスコに、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製KBE−803)238.4g(1.0mol)を納め、20質量%ナトリウムエトキシドエタノール溶液357.3g(1.05mol)を滴下し、オイルバスにて60℃に加熱した。その後60℃にて2時間加熱撹拌し、トルエン1,000gを滴下した。次いで、オイルバスにて113℃に加熱し、トルエン、エタノールを留去した。留去した溶媒の量は1,000gであり、溶媒はトルエンに完全に置換されていた。次いで、溶液を40℃まで冷却し、tert−ブチルジメチルクロロシラン(信越化学工業社製LS−1190)158.2g(1.05mol)を滴下した。滴下中に溶液が80℃まで昇温した。その後40℃にて1時間撹拌した。その後濾過し、濾液をロータリーエバポレーターにて減圧濃縮することで無色透明液体327.0gを得た。1H NMRスペクトルにより反応生成物は下記化学構造式(11)に示す構造を有する生成物であることを確認した。この化合物の1H NMRスペクトルデータは以下の通りである。
【0077】
1H NMR(300MHz,CDCl3,δ(ppm)):0.48(s,6H),
0.65(t,2H),0.83(s,9H),1.12(s,9H),
1.52(m,2H),2.31(t,2H),3.72(t,6H).
【0078】
【化27】

【0079】
[実施例8]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製KBE−803)238.4g(1.0mol)、イミダゾール68.1g(1.0mol)、テトラヒドロフラン200gを納め、室温にて1時間撹拌した。次いで、tert−ブチルジメチルクロロシラン(信越化学工業社製LS−1190)158.2g(1.05mol)を滴下し、室温にて1時間撹拌した。その後、濾過、ロータリーエバポレーターにて減圧濃縮することで無色透明液体319.1gを得た。1H NMRスペクトルにより反応生成物は前記化学構造式(11)に示す構造を有する生成物であることを確認した。
【0080】
[実施例9]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製KBE−803)238.4g(1.0mol)、イミダゾール68.1g(1.0mol)、テトラヒドロフラン200gを納め、室温にて1時間撹拌した。次いで、ジフェニルメチルクロロシラン244.4g(1.05mol)を滴下し、室温にて1時間撹拌した。その後、濾過、ロータリーエバポレーターにて減圧濃縮することで無色透明液体380.7gを得た。1H NMRスペクトルにより反応生成物は下記化学構造式(12)に示す構造を有する生成物であることを確認した。この化合物の1H NMRスペクトルデータは以下の通りである。
【0081】
1H NMR(300MHz,CDCl3,δ(ppm)):0.50(s,3H),
0.61(t,2H),1.12(t,9H),1.53(m,2H),
2.31(t,2H),3.71(t,6H),7.31−7.39(m,6H),
7.43−7.57(m,4H).
【0082】
【化28】

【0083】
[実施例10]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製KBE−803)238.4g(1.0mol)、イミダゾール68.1g(1.0mol)、テトラヒドロフラン200gを納め、室温にて1時間撹拌した。次いで、ジメチルビニルクロロシラン126.7g(1.05mol)を滴下し、室温にて1時間撹拌した。その後、濾過、ロータリーエバポレーターにて減圧濃縮することで無色透明液体275.8gを得た。1H NMRスペクトルにより反応生成物は下記化学構造式(13)に示す構造を有する生成物であることを確認した。この化合物の1H NMRスペクトルデータは以下の通りである。
【0084】
1H NMR(300MHz,CDCl3,δ(ppm)):0.49(s,6H),
0.62(t,2H),1.12(t,9H),1.53(m,2H),
2.31(t,2H),3.72(t,6H),5.66(m,1H),
5.94(m,1H),6.21(m,1H).
【0085】
【化29】

【0086】
[実施例11]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製KBE−803)238.4g(1.0mol)、イミダゾール68.1g(1.0mol)、テトラヒドロフラン200gを納め、室温にて1時間撹拌した。次いで、ジメチル−n−オクチルクロロシラン217.2g(1.05mol)を滴下し、室温にて3時間撹拌した。その後、濾過、ロータリーエバポレーターにて減圧濃縮することで無色透明液体370.1gを得た。1H NMRスペクトルにより反応生成物は下記化学構造式(14)に示す構造を有する生成物であることを確認した。この化合物の1H NMRスペクトルデータは以下の通りである。
【0087】
1H NMR(300MHz,CDCl3,δ(ppm)):0.48(s,6H),
0.52(t,2H),0.63(t,2H),0.88(t,3H),
1.11(s,9H),1.26−1.37(m,12H),
1.52(m,2H),2.31(t,2H),3.72(t,6H).
【0088】
【化30】

【0089】
[実施例12]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製KBE−803)238.4g(1.0mol)、イミダゾール68.1g(1.0mol)、テトラヒドロフラン200gを納め、室温にて1時間撹拌した。次いで、ドデシルジメチルクロロシラン276.1g(1.05mol)を滴下し、室温にて3時間撹拌した。その後、濾過、ロータリーエバポレーターにて減圧濃縮することで無色透明液体405.3gを得た。1H NMRスペクトルにより反応生成物は下記化学構造式(15)に示す構造を有する生成物であることを確認した。この化合物の1H NMRスペクトルデータは以下の通りである。
【0090】
1H NMR(300MHz,CDCl3,δ(ppm)):0.47(s,6H),
0.54(t,2H),0.63(t,2H),0.87(t,3H),
1.11(s,9H),1.23−1.38(m,20H),
1.51(m,2H),2.32(t,2H),3.72(t,6H).
【0091】
【化31】

【0092】
[比較例1]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた2Lセパラブルフラスコに、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製KBE−803)238.4g(1.0mol)、トリエチルアミン116.5g(1.15mol)、トルエン700gを納めた。次いで、トリメチルシリルクロライド(信越化学工業社製KA−31)108.6g(1.0mol)とトルエン250gを混合させた溶液を滴下し、オイルバスにて113℃に加熱し、4時間撹拌した。その後、濾過、ロータリーエバポレーターにて減圧濃縮することで無色透明液体240.0gを得た。1H NMRスペクトルにより前記化学構造式(9)が生成していることは確認できたが、未反応のγ−メルカプトプロピルトリエトキシシランが30モル%残存していた。
【0093】
[実施例13〜19、比較例2〜4]
油展エマルジョン重合SBR(JSR社製#1712)110部、NR(一般的なRSS#3グレード)20部、カーボンブラック(一般的なN234グレード)20部、シリカ(日本シリカ工業社製ニプシルAQ)50部、上記実施例で得られた化学構造式(9)〜(15)で示される有機ケイ素化合物又は下記に示す比較化合物A〜C6.5部、ステアリン酸1部、老化防止剤6C(大内新興化学工業社製ノクラック6C)1部を配合してマスターバッチを調製した。これに亜鉛華3.0部、加硫促進剤DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)0.5部、加硫促進剤NS(N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)1.0部、硫黄1.5部を加えて混練し、ゴム組成物を得た。
次に、ゴム組成物の未加硫又は165℃×30分の条件で加硫した場合の加硫物性を下記の方法で測定した。結果を表1,2に示す。
【0094】
〔未加硫物性〕
(1)ムーニー粘度
JIS K 6300に準拠し、余熱1分、測定4分、温度130℃にて測定し、比較例2を100として指数で表した。指数の値が小さいほど、ムーニー粘度が低く、加工性に優れている。
【0095】
〔加硫物性〕
(2)動的粘弾性
粘弾性測定装置(レオメトリックス社製)を使用し、引張の動歪5%、周波数15Hz、60℃の条件にて測定した。なお、試験片は厚さ0.2cm、幅0.5cmのシートを用い、使用挟み間距離2cmとして初期荷重を160gとした。tanδの値は比較例2を100として指数で表した。指数値が小さいほどヒステリシスロスが小さく低発熱性である。
【0096】
(3)耐磨耗性
JIS K 6264−2:2005に準拠し、ランボーン型磨耗試験機を用いて室温、スリップ率25%の条件で試験を行い、比較例2の磨耗量の逆数を100として指数表示した。指数値が大きいほど、磨耗量が少なく耐磨耗性に優れることを示す。
【0097】
〔比較化合物A〕
【化32】


〔比較化合物B〕
【化33】


〔比較化合物C〕
【化34】

【0098】
【表1】

【0099】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1個以上のメルカプト基を有する有機ケイ素化合物とクロロシランとを含窒素複素環化合物の存在下に反応させて、硫黄−ケイ素結合を形成することを特徴とする有機ケイ素化合物の製造方法。
【請求項2】
1個以上のメルカプト基を有する有機ケイ素化合物が、下記式(i)
【化1】


(式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、R3は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、nは1〜3の整数であり、mは1〜3の整数である。)
で示されるものであり、クロロシランが、下記式(ii)
【化2】


(式中、R2は各々独立した酸素原子、硫黄原子、窒素原子から選ばれるヘテロ原子を間に挟んでもよい一価炭化水素基で、少なくとも一つが炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基又は炭素数2〜10のアルケニル基である。)
で示されるものであり、下記一般式(1)
【化3】


(式中、R1〜R3、n、mは上記の通りである。)
で示される有機ケイ素化合物を得るものである請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
1個以上のメルカプト基を有する有機ケイ素化合物をアルカリ金属の水酸化物もしくはアルコキシドと反応させ、硫黄−アルカリ金属結合を形成後、該反応物とクロロシランとを反応させて、硫黄−ケイ素結合を形成することを特徴とする有機ケイ素化合物の製造方法。
【請求項4】
1個以上のメルカプト基を有する有機ケイ素化合物が、下記式(i)
【化4】


(式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、R3は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、nは1〜3の整数であり、mは1〜3の整数である。)
で示されるものであり、クロロシランが、下記式(ii)
【化5】


(式中、R2は各々独立した酸素原子、硫黄原子、窒素原子から選ばれるヘテロ原子を間に挟んでもよい一価炭化水素基で、少なくとも一つが炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基又は炭素数2〜10のアルケニル基である。)
で示されるものであり、下記一般式(1)
【化6】


(式中、R1〜R3、n、mは上記の通りである。)
で示される有機ケイ素化合物を得るものである請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
1個以上のメルカプト基を有する有機ケイ素化合物をシラザン化合物と含窒素複素環化合物の存在下に反応させて、硫黄−ケイ素結合を形成することを特徴とする有機ケイ素化合物の製造方法。
【請求項6】
1個以上のメルカプト基を有する有機ケイ素化合物が、下記式(i)
【化7】


(式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、R3は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、nは1〜3の整数であり、mは1〜3の整数である。)
で示されるものであり、シラザン化合物が、下記式(iii)
【化8】


(式中、R2は各々独立した酸素原子、硫黄原子、窒素原子から選ばれるヘテロ原子を間に挟んでもよい一価炭化水素基で、少なくとも一つが炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基又は炭素数2〜10のアルケニル基である。)
で示されるものであり、下記一般式(1)
【化9】


(式中、R1〜R3、n、mは上記の通りである。)
で示される有機ケイ素化合物を得るものである請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
1個以上のポリスルフィド基を有する有機ケイ素化合物に、アルカリ金属、アルカリ土類金属もしくはアルカリ土類金属の強塩基誘導体を反応させた後、該反応物とクロロシランとを反応させ、硫黄−ケイ素結合を形成することを特徴とする有機ケイ素化合物の製造方法。
【請求項8】
1個以上のポリスルフィド基を有する有機ケイ素化合物が、下記式(iv)
【化10】


(式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、R3は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、nは1〜3の整数であり、mは1〜3の整数である。)
で示されるものであり、クロロシランが、下記式(ii)
【化11】


(式中、R2は各々独立した酸素原子、硫黄原子、窒素原子から選ばれるヘテロ原子を間に挟んでもよい一価炭化水素基で、少なくとも一つが炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基又は炭素数2〜10のアルケニル基である。)
で示されるものであり、下記一般式(1)
【化12】


(式中、R1〜R3、n、mは上記の通りである。)
で示される有機ケイ素化合物を得るものである請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
下記一般式(1a)で表される有機ケイ素化合物。
【化13】


(式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、R2は各々独立した酸素原子、硫黄原子、窒素原子から選ばれるヘテロ原子を間に挟んでもよい一価炭化水素基で、少なくとも一つが炭素数4〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基又は炭素数2〜10のアルケニル基であり、R3は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、nは1〜3の整数であり、mは1〜3の整数である。)
【請求項10】
下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項9記載の有機ケイ素化合物。
【化14】


(式中、R1、nは上記と同じであり、Meはメチル基であり、R4は各々独立した酸素原子、硫黄原子、窒素原子から選ばれるヘテロ原子を間に挟んでもよい一価炭化水素基で、少なくとも一つが炭素数4〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基又は炭素数2〜10のアルケニル基である。)
【請求項11】
下記一般式(3)〜(8)で表されることを特徴とする請求項10記載の有機ケイ素化合物。
【化15】


【化16】


(式中、R1、n、Meは上記と同じであり、Phはフェニル基である。)
【請求項12】
1がCH3CH2であることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項記載の有機ケイ素化合物。
【請求項13】
請求項9〜12のいずれか1項記載の有機ケイ素化合物を含んでなるゴム用配合剤。
【請求項14】
更に、少なくとも1種の粉体(B)を含有してなり、前記有機ケイ素化合物(A)と少なくとも1種の粉体(B)との質量比が、(A)/(B)=70/30〜5/95の割合である請求項13記載のゴム用配合剤。
【請求項15】
請求項13又は14記載のゴム用配合剤を配合してなるゴム組成物。
【請求項16】
請求項15記載のゴム組成物の硬化物を用いたタイヤ。

【公開番号】特開2012−240927(P2012−240927A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109473(P2011−109473)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】