説明

有機化合物

効果的な量のインドールカルバメートを含むフレグランス成分およびフレグランス利用品としてのインドールカルバメートの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アントラニル酸塩様の芳香ノートを持つ化合物、化合物のフレグランス成分としての使用、および化合物のフレグランス組成物における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アントラニル酸塩様の芳香ノートを持つ化合物は周知である。この芳香クラスの有名な代表例は、商品において広く使用されているアントラニル酸メチルである。残念なことに、アントラニル酸メチルはUV照射下で発色してしまう。またアルデヒドとともにシッフ塩を形成し、これは必ずしも好ましいとはいえない。
驚くべきことに、あるインドールカルバメート(indole carbamate)は、当該分野において既知のアントラニル酸塩の短所を持たない新規の強力なアントラニル酸塩様の芳香物を構成することが見出された。さらに、アントラニル酸塩と比較して、本発明のあるインドールカルバメートは、水性溶媒中で使用するとき、織物や毛髪などの基質上において持続性がより優れている。
【発明の開示】
【0003】
したがって、本発明は、第一の側面において、式I
【化1】

式中、
は、H;メチル、エチル、プロピル、イソプロピルまたはイソブチルなどのC1−4アルキル;またはビニルまたはイソプロペニルなどのC2−4アルケニルであり;
は、Hまたはメチルであり;
は、メチル、エチル、プロピルまたはイソプロピルなどのC1−3アルキル;アリル;またはイソプロペニルである;
で表される化合物であり、式Iの化合物の総炭素原子数は14またはそれ以下であり、好ましくは10から14の間で、より好ましくは炭素原子数が10、11、12、13または14である化合物のフレグランス成分としての使用について言及する。
【0004】
およびRが独立して、水素またはメチルである式Iの化合物が好ましく、Rが水素またはメチルおよびRが水素である化合物がさらに好ましい。RがC1−3アルキルおよびRが水素である式Iの化合物もまた、好ましい。
【0005】
式Iの化合物は1または2以上のキラル中心を含むことができ、それ自体立体異性体の混合物として存在してもよく、もしくは異性体的に純粋な形に分離してもよい。立体異性体を分離することにより、これらの化合物の製造および精製の複雑性が加わるため、純粋に経済的な理由により、それらの立体異性体の混合物として化合物を使用することが好ましい。しかし、個々の立体異性体の調製することを望む場合には、当該分野において既知の手法、例えば分取HPLCおよびGCにしたがって、または立体選択的な合成により達成してもよい。
【0006】
式Iの化合物は、インドール−1−カルボン酸メチルエステル、インドール−1−カルボン酸エチルエステル、インドール−1−カルボン酸イソプロピルエステル、インドール−1−カルボン酸アリルエステル、7−メチル−インドール−1−カルボン酸メチルエステルおよび5−メチル−インドール−1−カルボン酸メチルエステルからなる群から選択するのが、特に好ましい。
【0007】
本発明にしたがった化合物は、単独で、あるいは、精油、アルコール、アルデヒドおよびケトン、エーテルおよびアセタール、エステルおよびラクトン、大環状分子および複素環状分子などの現在入手し得る広範囲の天然および合成分子から選択される既知の芳香分子との組み合わせで、および/あるいは、フレグランス組成物中の芳香剤と通常組み合わせて使用される1種または2種以上の成分または賦形剤、例えば当該分野で通常使用される担体材料または他の助剤との混和物として使用してもよい。
【0008】
以下のリストは、本発明の化合物と組み合わせてもよい既知の芳香分子の例を含む:
− エーテル油および抽出物、例えばカストリウム、コスタスルートオイル、ゼラニウム油、ジャスミンアブソリュート、パチョリ油、バラ油、白檀油またはイランイラン油;
− アルコール、例えばシトロネロール、Ebanol(商品名)、オイゲノール、ゲラニオール、Super Muguet(商品名)、リナロール、フェニルエチルアルコール、Sandalore(商品名)、テルピネオールまたはTimberol(商品名);
− アルデヒドおよびケトン、例えばα−アミルシナンアルデヒド、Georgywood(商品名)、ヒドロキシシトロネラル、Iso E Super(登録商標)、Isoraldeine(登録商標)、Hedione(登録商標)、マルトール、メチルセドリルケトン、メチルイオノンまたはバニリン;
− エーテルおよびアセタール、例えばAmbrox(商品名)、ゲラニルメチルエステル、ローズオキシドまたはSpirambrene(商品名);
− エステルおよびラクトン、例えば酢酸ベンジル、セドリルアセテート、γ−デカラクトン、Helvetolide(登録商標)、γ-ウンデカラクトンまたはベチベニルアセテート;
- 大環状分子、例えばアンブレトリド、エチレンブラシレートまたはExaltolide(登録商標);
- 複素環状分子、例えばイソブチルキノリン。
【0009】
本発明の化合物は、様々なフレグランス利用品において使用してもよく、例えば香水、日用品、洗濯用品、ボディケア用品および化粧用品などのような、高純度で機能的な香水のあらゆる分野において使用してもよい。特定の利用品および他のフレグランス成分の性質や量に依存して、本発明の化合物を様々な量にて使用することができる。その比率は、典型的には利用品の0.001〜20重量パーセントの範囲である。一態様において、本発明の化合物を、柔軟剤中に0.001〜0.05重量パーセントの範囲の量にて使用してもよい。別の態様において、本発明の化合物を、アルコール液中に0.1〜20重量パーセント、より好ましくは0.1〜5重量パーセントの範囲で使用してもよい。しかし、経験を積んだ香料技術者は、より低いまたはより高い濃度でも効果を達成したり新規の調和を生み出し得るため、これらの値は例として提示したにすぎない。
【0010】
本発明の化合物は、単にそれらを、またはそれらを含むフレグランス組成物を、フレグランス利用品と直接混合することにより、フレグランス利用品に使用してもよく、あるいは初期の段階で、例えばポリマー、カプセル、マイクロカプセルおよびナノカプセル、リポソーム、フィルム形成材、炭素またはゼオライトなどの吸収剤、環状オリゴ糖およびこれらの混合物などの封入物質に封入してもよく、または、光、酵素などの外部刺激を適用するとフレグランスを放出するように適合させた基質に化学的に結合させてもよく、その後に利用品と混合する。
【0011】
したがって、本発明はさらに、式中R、RおよびRは上述した通りである少なくとも1つの式Iの化合物をフレグランス成分として取り込むことを含む、フレグランス利用品の製造方法を提供する。
【0012】
本発明の化合物は、スキーム1で示すように、NaH、有機アミン基、KOtBu、NaOtBuなどの金属アルコラートなどの塩基、または反応中に形成される塩酸を中和することが可能な当業者には既知の他の塩基の存在中で、式IIのインドールとこれに対応するクロロギ酸アルキルの反応を介して調製してもよい。反応は、トルエン、THFまたはアセトニトリルなどの非プロトン性有機溶媒、またはアシル化反応に好適な他の溶媒中において行う。好ましくは、イオン反応を促進するような極性のある共溶剤、例えばN−メチルピロリドン(NMP)、DMPUまたは類似の共溶剤を反応液に添加する。
【化2】

【0013】
本発明について、以下のような非限定的な例に関してさらに記載する。
例1:インドール−1−カルボン酸メチルエステル
水素化ナトリウム(鉱物油中55%の懸濁物を5.23g、0.12mol)をフラスコに入れ、鉱物油をヘキサンで除去し、それからトルエン(50ml)を添加する。トルエン混合物(30ml)およびN−メチルピロリドン(40ml)中のインドール溶液(11.7g、0.10mol)を30分間添加する。得られる混合物を80℃にて90分間加熱し、それから室温まで冷却し、トルエン(30ml)中のクロロギ酸メチル(14.3g、0.15mol)を20分間添加し、適度に氷槽中で冷却しながら10〜20℃の温度に維持する。
懸濁液を、さらに室温で22時間撹拌し、MTBEで希釈して分離フラスコに移す。有機層をHO、6N HClおよび塩水で洗浄し、MgSO上で乾燥させる。粗雑物を0.05mbar/85℃で蒸留し、11.8g(67%)の生成物を無色の油として生じ、これをさらにSiOカラムクロマトグラフィーで精製し、10.2g(58%)の香りのする純粋なインドール−1−カルボン酸メチルエステルが生じる。
【0014】
13C-NMR: 151.4 (br. s), 135.2 (br. s), 130.5 (s), 125.5 (br. d), 124.5 (d), 123.0 (d), 121.0 (d), 115.1 (d), 108.1 (d), 53.8 (q). MS: 175 (90, [M]+), 130 (100), 116 (56), 89 (56), 63 (31).

香りの説明:オレンジ、アントラニル酸塩、ヤラヤラ、オシメン
【0015】
例2〜6
表1に記した化合物を、上述の例1に記載した手順に従って調製した。
【表1】

*:分子イオン;括弧内:100%シグナル
【0016】
例7:フローラルフレグランス組成物の調製
【表2】

*Givaudan SA(スイス、Vernier)より商業的に入手可能
【0017】
この組成物に対して例1のインドール−1−カルボン酸メチルエステルを25重量部添加すると、香水に甘い自然なオレンジ花のノートを加え、全体的なフローラル系のミドルノートおよびドライノートを強調する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

式中、
は、H、C1−4アルキルまたはC2−4アルケニルであり;
は、Hまたはメチルであり;および
は、C1−3アルキル、アリル、またはイソプロピルである;
で表される化合物であり、式Iの化合物の総炭素原子数が14またはそれ以下である化合物のフレグランス成分としての使用。
【請求項2】
インドール−1−カルボン酸メチルエステル、インドール−1−カルボン酸エチルエステル、インドール−1−カルボン酸イソプロピルエステル、インドール−1−カルボン酸アリルエステル、7−メチル−インドール−1−カルボン酸メチルエステルおよび5−メチル−インドール−1−カルボン酸メチルエステルからなる群から選択される化合物のフレグランス成分としての使用。
【請求項3】
請求項1または2に記載の化合物をフレグランス成分として混合することを含む、フレグランス利用品の製造方法。
【請求項4】
フレグランス利用品が、香水、日用品、洗濯用品、ボディケア用品および化粧用品からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。

【公表番号】特表2008−517075(P2008−517075A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535975(P2007−535975)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【国際出願番号】PCT/CH2005/000562
【国際公開番号】WO2006/039822
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(501105842)ジボダン エス エー (158)
【Fターム(参考)】