説明

有機化合物

式(I)の化合物、それらの製造方法、ならびに有機基材を染色および/または捺染するためのそれらの使用。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の酸性染料、それらを製造するための方法、および有機基材を染色するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
酸性染料は公知であり、橋架け部を有する染料も同様に公知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、改善された特性を有する酸性染料に対する需要がなおも存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、以下の一般式(I)
【0005】
【化1】

【0006】
[式中、
EはNHまたはOHを表し、
はHまたはスルホ基を表し、
はHまたはスルホ基を表し、RがRと異なっていなければならず、
はH、スルホ基、置換されたC〜Cアルキル基または置換されていないC〜Cアルキル基、置換されたC〜Cアルコキシ基または置換されていないC〜Cアルコキシ基を表し、
はH、置換されたC〜Cアルキル基または置換されていないC〜Cアルキル基、置換されたC〜Cアルコキシ基または置換されていないC〜Cアルコキシ基を表し、
はH、置換されたC〜Cアルキル基または置換されていないC〜Cアルキル基を表し、
はH、置換されたC〜Cアルキル基または置換されていないC〜Cアルキル基、置換されていないアリール基または置換されたアリール基を表すか、あるいは、RおよびRが一緒に5もしくは6員の脂環式環を形成し、前記5もしくは6員環はC〜Cアルキル基によって置換されているか、または前記5もしくは6員環はさらに置換されていない]
で表される化合物を提供する。
【0007】
好ましくは、RおよびRを合わせた炭素原子の合計は少なくとも4個の炭素原子であり、より好ましくは、RおよびRは合わせて少なくとも5個の炭素原子を有する。よりさらに好ましくは、RおよびRを合わせた炭素原子の合計は5または6または7または8または9個の炭素原子である。
【0008】
好ましい式(I)の化合物は、少なくとも1個のアニオン性置換基、好ましくは1または2または3個のアニオン性置換基を有し、そのうち、2個のアニオン性置換基が極めて特に好ましい。好ましくは、少なくとも1個のアニオン性置換基は、置換基RまたはRの一部であるか、あるいは、少なくとも1個のアニオン性置換基はRまたはRから選択される。これは、好ましくはR、R、RまたはRが−SOHを示さず、またR、R、RまたはRが−SOH基を有しないことを意味する。
【0009】
式(I)の化合物における前記の少なくとも1個のアニオン性置換基は、好ましくは、置換基RまたはRの1つに位置し、より好ましくは、前記の少なくとも1個のアニオン性置換基は、置換基Rの1つに位置する。
【0010】
好ましいアニオン性置換基はスルホ基である。
【0011】
前記の置換されたC〜Cアルキル基の好ましい置換基は、以下の置換基から選択される:−OH、−O(C〜C−アルキル)、−SOH、−COOH、−NH(C〜C−アルキル)。前記の置換されたC〜Cアルキル基のより好ましい置換基は、以下の置換基から選択される:−OH、−O(C〜C−アルキル)、−NH(C〜C−アルキル)。前記アルキル基は分岐状または直鎖状である。最も好ましいアルキル基はメチル、エチル、プロピル、イソ−プロピル、ブチル、イソ−ブチル(2−メチルプロピル)、ペンチル、イソ−ペンチル(3−メチルブチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルまたはノニルである。
【0012】
前記の置換されたC〜Cアルコキシ基の好ましい置換基は、以下の置換基から選択される:−OH、−O(C〜C−アルキル)、−NH(C〜C−アルキル)。 前記アルコキシ基は分岐状または直鎖状である。
【0013】
前記の置換されたアリール基の好ましい置換基は、以下の置換基から選択される:−OH、−O(C〜C−アルキル)、−SOH、置換されたC〜Cアルキル基、置換されていないアルキル基、置換されたC〜Cアルコキシ基および置換されていないC〜Cアルコキシ基。好ましいアリール基はフェニル基である。好ましくは、前記アリール基はさらに置換されていないか、またはメチル基によって置換されている。
【0014】
一般式(I)の好ましい化合物において、
EはNHまたはOHを表し、
はHまたはスルホ基を表し、
はHまたはスルホ基を表し、
はH、スルホ基、置換されたC〜Cアルキル基または置換されていないC〜Cアルキル基、置換されたC〜Cアルコキシ基または置換されていないC〜Cアルコキシ基を表し、
はH、置換されたC〜Cアルキル基または置換されていないC〜Cアルキル基、置換されたC〜Cアルコキシ基または置換されていないC〜Cアルコキシ基を表し、
Bは式−CR−を有する基であり、
式中、
はH、置換されていないC〜Cアルキル基、好ましくはHまたは−CHを表し、
は置換されたC〜Cアルキル基または置換されていないC〜Cアルキル基、置換されていないアリール基または置換されたアリール基を表すか、あるいは、RおよびRは一緒に5もしくは6員の脂環式環を形成し、前記5もしくは6員環はC〜Cアルキル基によって置換されているか、または前記5もしくは6員環はさらに置換されていない。
【0015】
一般式(I)のより一層好ましい化合物において、
EはOHを表し、
はHまたはスルホ基を表し、
はHまたはスルホ基を表し、
はH、スルホ基、置換されたC〜Cアルキル基または置換されていないC〜Cアルキル基、置換されたC〜Cアルコキシ基または置換されていないC〜Cアルコキシ基を表し、
はH、置換されたC〜Cアルキル基または置換されていないC〜Cアルキル基、置換されたC〜Cアルコキシ基または置換されていないC〜Cアルコキシ基を表し、
Bは式−SO−、−CR−を有する基であり、
式中、
はH、置換されていないC〜Cアルキル基、好ましくはHまたは−CHを表し、
は置換されたC〜Cアルキル基または置換されていないC〜Cアルキル基、置換されていないアリール基または置換されたアリール基を表すか、あるいは、RおよびRは一緒に5もしくは6員の脂環式環を形成し、前記5もしくは6員環はC〜Cアルキル基によって置換されているか、または前記5もしくは6員環はさらに置換されていない。
【0016】
一般式(I)の最も好ましい化合物において、
EはOHを表し、
はスルホ基を表し、
はHを表し、
はH、スルホ基、置換されたC〜Cアルキル基または置換されていないC〜Cアルキル基、置換されたC〜Cアルコキシ基または置換されていないC〜Cアルコキシ基を表し、
はH、置換されたC〜Cアルキル基または置換されていないC〜Cアルキル基、置換されたC〜Cアルコキシ基または置換されていないC〜Cアルコキシ基を表し、
Bは式−CR−を有する基であり、
式中、
はHを表し、
は置換されたC〜Cアルキル基または置換されていないC〜Cアルキル基、置換されていないフェニル基または置換されたフェニル基を表すか、あるいは、RおよびRは一緒に6員の脂環式環を形成し、前記6員環はさらに置換されていない。
【0017】
好ましい基Rは、置換されていないC〜Cアルキル基、好ましくは−CH、−(CHCH(CH)、−(CH(CHCH)または−C(CHCH)(CHCHCHCH)−または置換されていないフェニル基を表すか、あるいはRは置換されたフェニル、好ましくはパラ−トリル基を表す。好ましい基RはHを表す。
【0018】
本発明はまた、式(I)の化合物を製造する方法を提供する。本発明の式(I)の化合物は、慣用の方法において慣用の条件下で製造することができる。
【0019】
本発明はさらに、式(II)
【0020】
【化2】

【0021】
で表されるジアミンのビスジアゾニウム塩を、1当量の式(III)
【0022】
【化3】

【0023】
で表される化合物と反応させることを含む、式(I)の化合物を製造する方法を提供する(前記置換基は各々上記で定義されるとおりである)。
【0024】
これらの方法では、特定のジアミンが0〜10℃に冷却されるか、または好ましくは0〜5℃に冷却され、ニトロシル硫酸または亜硝酸ナトリウムを添加することにより、ジアゾ化される。その後、ビス−ジアゾ化されたジアミンを化合物(III)と、好ましくは水溶液において反応させる。
【0025】
式(I)の染料は、慣用の方法、例えば、アルカリ金属塩を用いた塩析、ろ過および乾燥(適切な場合には、減圧下および上昇させた温度で)によって、反応媒体から単離することができる。
【0026】
反応および/または単離条件に依存して、式(I)の染料は、遊離酸として、塩としてまたは混合塩(例えば、アルカリ金属イオン、例えば、ナトリウムイオン、またはアンモニウムイオンもしくはアルキルアンモニウムカチオン、例えばモノ−、ジ−もしくはトリメチル−もしくは−エチルアンモニウムカチオンから選択される1種またはそれ以上のカチオンを含む)として得ることができる。前記染料は、慣用の技術により、遊離酸から塩に、または混合塩に、または逆も同様に変換することができ、あるいは1種の塩形態から他のものへ変換することができる。必要に応じて、前記染料は、ダイアフィルトレーションによってさらに精製することができ、その場合、望ましくない塩および合成副生成物は粗製アニオン性染料から分離される。
【0027】
粗製染料溶液からの不要な塩および合成副生成物の除去、ならびに水の部分的除去は、半透膜により、染料が不要な塩および合成副生成物なしで溶液として(そして場合によっては固体として)得られる圧力を適用することによって、慣用の様式で実施される。
【0028】
式(I)の染料およびそれらの塩は、特に、天然または合成ポリアミドからなる繊維状材料の橙色から赤色の色合いの染色または捺染に適している。式(I)の染料およびそれらの塩は、インクジェット印刷インクの製造に、およびこれらのインクジェット印刷インクの、天然または合成ポリアミドまたはセルロースからなる繊維状材料(例えば、紙)への印刷のための使用に適している。
【0029】
本発明は従って、式(I)の染料、それらの塩および混合物の、天然または合成ポリアミドからなる繊維状材料の染色および/または捺染のための使用に関して別の態様を提供する。さらなる態様は、インクジェット印刷インクの製造、ならびに天然または合成ポリアミドからなる繊維状材料への印刷のためのそれらの使用である。
【0030】
染色は公知の方法によって実施される。例えば、「Ullmanns Encyklopaedie der technischen Chemie, 4th Edition, 1982, Volume 22, pages 658−673」またはM. Peter and H.K. Rouetteによる書籍「Grundlagen der Textilveredlung, 13th Edition, 1989, pages 535−556 and 566−574」に記載される染色方法を参照されたい。30〜140℃、より好ましくは80〜120℃、最も好ましくは80〜100℃の温度での、ならびに、3:1〜40:1の範囲の液比での吸尽法における染色が好ましい。
【0031】
染色される基材は、例えば、ヤーン、織物、ループ形成編製物(loop−formingly knitted fabric)またはカーペットの形態で存在することができる。繊細な基材(例えば仔羊のウール、カシミヤ、アルパカおよびモヘアである)に関して、フルファッションの染色が恒久的にさえ可能である。本発明の染料は特に極細繊維(microfibres)の染色に有用である。
【0032】
本発明の染料およびそれらの塩は、公知の酸性染料と極めて相溶性である。従って、式(I)の染料、それらの塩もしくは混合物は、染色もしくは印刷工程で単独で使用することができ、あるいは、同一クラスの他の酸性染料と一緒に、すなわち、同等の染色特性(例えば堅牢特性、および染浴からの基材上への吸尽率)を有する酸性染料と一緒に、組み合わせ色合い(combination shade)の染色または印刷用組成物における成分として使用することができる。本発明の染料は特に、好適な発色団を有する一定の他の染料と一緒に使用することができる。前記染料が組み合わせ色合いの染色または印刷用組成物に存在する比は、得るべき色相によって決定される。
【0033】
上記のように、式(I)の新規染料は、天然および合成ポリアミド、すなわち、ウール、絹および全てのナイロンタイプを染色するために非常に有用であり、染色のそれぞれは高い堅牢度レベルを有し、特に、良好な日光堅牢度および良好な湿潤堅牢度(洗濯、アルカリ、汗)が得られる。式(I)の染料およびそれらの塩は、高い吸尽率を有する。式(I)の染料およびそれらの塩のビルドアップ能力は、同様に非常に良好である。特定の基材上における濃淡染め(on−tone dyeings)は際立った特性である。さらに、全ての染色が人工光下で一定の色相を有する。さらにデカタイジング(decating)および煮沸に対する堅牢度が良好である。
【0034】
前記の新規染料の1つの決定的な利点は、これらが金属不含であり、非常に均一な染色を提供することである。
【0035】
本発明の化合物は、個々の染料として、あるいはそれらの良好な相溶性のために、同等の染色特性(例えば、全般的堅牢度、吸尽値等に関して)を有する同じクラスの他の染料とともに組み合わせ要素として用いることができる。得られた組み合わせ色合いの染色物は、個々の染料を用いた染色物と同様の堅牢度を有する。
【0036】
式(I)の本発明の染料はまた、三色染色もしくは印刷における黄色成分として使用することもできる。三色染色もしくは印刷は、すべての慣用および既知の染色および印刷法、例えば、連続法、吸尽法、泡染色法およびインクジェット法を利用することができる。
【0037】
本発明の方法において使用される三色染料混合物中の個々の染料成分の組成は、所望の色相に依存する。茶色の色相は例えば、好ましくは20〜40重量%の本発明の黄色成分、40〜60重量%の橙色または赤色成分、および10〜20重量%の青色成分を利用する。
【0038】
上記のような黄色成分は、単一成分からなるか、または式(I)に従う異なる橙色の個々の成分の混合物からなることができる。2つのおよび3つの組み合わせが好ましい。
【0039】
特に好ましい赤色および/または青色成分は、国際公開第2002/46318号または国際公開第99/51681号にそれぞれ記載されている。
【0040】
しかしながら、式(II)による新規アミンは、独国特許第399149号、独国特許第505475号、独国特許第1220863号、独国特許第1793020号(英国特許第1129306号)、独国特許第3226889号、独国特許第4014847号に開示される方法によって製造することができ、より正確には、以下の式:
【0041】
【化4】

【0042】
で表されるアルデヒド(RがHであり、RがHとは異なる場合)、またはケトン(RおよびRの両方がHとは異なる場合)のいずれかから出発し、酸性条件下で上昇させた温度および上昇させた圧力において、2当量の以下の式:
【0043】
【化5】

【0044】
で表される芳香族アミンと反応させることにより、式(II)
【0045】
【化6】

【0046】
で表されるジアミンを形成させる。
【0047】
反応混合物は、閉じたオートクレーブ中において120〜250℃、好ましくは140〜200℃、より好ましくは140〜150℃で加熱され、反応混合物はこの温度において3〜8時間、好ましくは4〜5時間維持される。該上昇させた温度が、この閉じられたオートクレーブにおいて、上昇された圧力を生じさせる。あるいは、合成はケトンまたはアルデヒドおよびアミノ化合物−ヒドロクロリドのアミンの溶融物中で、ケト化合物を添加し、上昇させた温度200〜250℃で行うことができ、圧力は大気圧である。
【0048】
以下の実施例はさらに、本発明を説明するのに利用できる。実施例においては、反対の記載がない限り、全ての部および全てのパーセントは重量または容量によるものであり、定められる温度は摂氏温度である。
【実施例】
【0049】
実施例1: (方法A)
106gのベンズアルデヒド、400gのo−アニシジン、450gの塩酸(約30%)および800mlの水を、オートクレーブにおいて120〜140℃で6時間加熱した。
【0050】
該反応混合物を1kgの氷および500gの水酸化ナトリウム溶液(30%)に注いだ。
【0051】
有機層を分離し、過剰のo−アニシジンをトルエンで分離した。残渣をトルエンから再結晶化し、プレスケーキを冷アルコールで洗浄した。式(1)の化合物を得た;収率41%。
【0052】
【化7】

【0053】
ビス−(3−メトキシ−4−アミノフェニル)−フェニルメタン
【0054】
実施例2: (方法B)
780g(6mol)のアニリンヒドロクロリドを1.5Lの反応容器において、窒素下、220℃で溶融させ、100g(1mol)の2−エチルブチルアルデヒドをそこにゆっくりと、4時間にわたって撹拌しながら添加する。
【0055】
還流のため、該溶融物の温度が最初に約200から185℃へ低下する。
【0056】
温度を1時間185℃に維持し、ホットメルトを1.6kgの氷および1.05kgの水酸化ナトリウム溶液(30%)上に注ぐ。
【0057】
有機層を分離し、塩を含まない脱塩水で洗浄する。溶媒およびアニリン過剰のアニリノ−アニシジンを水蒸気蒸留により抽出する。
【0058】
残渣約180gをトルエンから再結晶化し、プレスケーキを冷エタノールで洗浄する。式(2)の化合物が得られた;収率48%。
【0059】
【化8】

【0060】
1,1−ビス−(4−アミノフェニル)−2−エチル−ブタン
【0061】
表1:アルデヒドとともに出発するジアミンの合成
【0062】
【化9】

【0063】
【表1】

【0064】

【0065】

【0066】

【0067】
実施例40: (方法A)
101gのエチル−プロピルケトン、500gのo−アニシジン、500gの塩酸(約30%)および1000mlの水を、オートクレーブにおいて120〜140℃で6時間加熱した。反応混合物を1kgの氷および600gの水酸化ナトリウム溶液(30%)上に注いだ。
【0068】
有機層を分離し、過剰のo−アニシジンをトルエンで抽出した。残渣をトルエンから再結晶化し、プレスケーキを冷アルコールで洗浄した。式(3)の化合物が得られた;収率:33%。
【0069】
【化10】

【0070】
3,3−ビス−(3−メトキシ−4−アミノフェニル)−ヘキサン
【0071】
実施例41: (方法B)
780g(6 mol)のアニリンヒドロクロリドを1Lの反応容器において、窒素下、220℃で溶融させ、86g(1mol)の3−ペンタノンをそこにゆっくりと、3〜4時間にわたって撹拌しながら添加する。
【0072】
還流のため、該溶融物の温度が最初に約200から185℃へ低下する。
【0073】
温度を1時間185℃に維持し、ホットメルトを1.6kgの氷および1.05kgの水酸化ナトリウム溶液(30%)上に注ぐ。
【0074】
有機層を分離し、塩を含まない脱塩水で洗浄する。溶媒およびアニリン過剰を水蒸気蒸留により抽出する。
【0075】
残渣約160gをトルエンから再結晶化し、プレスケーキを冷エタノールで洗浄した。式(4)の化合物が得られた;収率52%。
【0076】
【化11】

【0077】
3,3−ビス−(4−アミノフェニル)−ペンタン
【0078】
表2:ケトンとともに出発するジアミンの合成
【0079】
【化12】

【0080】
【表2】

【0081】

【0082】

【0083】
以下の実施例はさらに、本発明を説明するのに利用できる。実施例においては、反対の記載がない限り、全ての部および全てのパーセントは重量または容量によるものであり、定められる温度は摂氏温度である。
【0084】
実施例68:
250部の水および60部の塩酸(約30%)中、0〜5℃で、33.4部(0.1mol)の3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノトリフェニルメタンを13.8部(0.2mol)の亜硝酸ナトリウムで公知の方法に従ってテトラゾ化する。
【0085】
250部の水に溶解した以下の式
【0086】
【化13】

【0087】
で表される22.4部(0.1mol)の化合物を、氷冷したテトラゾ化溶液に30分にわたって添加する。30%NaOH溶液の添加によりpHを5〜6にすると、以下の式
【0088】
【化14】

【0089】
で表される染料が生じ、当該染料は溶解している。λmax=550nm。
【0090】
前記染料は、減圧下での濃縮により、またはアセトン/アルコールにおける析出により単離することができる。しかしながら、生成物を単離せずに、反応混合物を直接染色に使用することができる。驚くべきことに、前記染料は水中において非常に高い溶解度を有し、非常に良好な堅牢特性をもって赤色の染色をもたらす。
【0091】
実施例69:
200部の水および60部の塩酸(約30%)中、0〜5℃で、30.2部(0.1mol)の3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノトリフェニルメタンを13.8部(0.2mol)の亜硝酸ナトリウムで公知の方法に従ってテトラゾ化する。
【0092】
350部の水に溶解した以下の式
【0093】
【化15】

【0094】
で表される32.3部(0.1mol)の化合物を、氷冷したテトラゾ化溶液に30分にわたって添加する。30%NaOH溶液の添加によりpHを5〜6にすると、以下の式
【0095】
【化16】

【0096】
で表される染料が生じ、当該染料は溶解している。λmax=548nm。
【0097】
前記染料は、減圧下での濃縮により、またはアセトン/アルコールにおける析出により単離することができる。
【0098】
しかしながら、生成物を単離せずに、反応混合物を直接染色に使用することができる。
【0099】
驚くべきことに、前記染料は水中において非常に高い溶解度を有し、非常に良好な堅牢特性をもって赤色の染色をもたらす。
【0100】
実施例70〜87:
表3に示す以下の化合物を、ジアミン
【0101】
【化17】

【0102】
をジアゾ要素として使用して実施例68または69に従って合成し、カップリング要素
【0103】
【化18】

【0104】
と反応させ、以下の式で表される化合物が得られた:
【0105】
【化19】

【0106】
[式中、R、R、R、R、RおよびRは上記で定義されたとおりに定義される]。
【0107】
λmax(ラムダmax)はnmで示す(ナノメートル;1%酢酸溶液で測定)。
【0108】
表3:
【0109】
【表3】

【0110】

【0111】

【0112】
使用例A
2000部の水、1部の弱カチオン活性均染剤(エトキシル化アミノプロピル脂肪酸アミドを基礎とし、染料に対して親和性を有する)、0.25部の製造実施例68の染料からなり、1〜2部の40%酢酸でpH5に調節した40℃の染浴に、100部のナイロン−6繊維を入れる。40℃での10分後に、染浴を1分あたり1℃の速度で98℃に加熱し、その後45〜60分間沸騰させておく。その後、それを70℃に15分かけて冷却する。染色物を当該浴から取り出し、温水およびその後冷水ですすぎ洗いし、乾燥する。得られた結果は、良好な日光堅牢度および湿潤堅牢度を有する赤色のポリアミド染色物である。
【0113】
使用例B
2000部の水、1部の弱カチオン活性均染剤(エトキシル化アミノプロピル脂肪酸アミドを基礎とし、染料に対して親和性を有する)、0.3部の製造実施例68の染料からなり、1〜2部の40%酢酸でpH5.5に調節した40℃の染浴に、100部のナイロン−6,6繊維を入れる。40℃での10分後に、染浴を1分あたり1.5℃の速度で120℃に加熱し、その後15〜25分間この温度にしておく。その後、それを70℃に15分かけて冷却する。染色物を染浴から取り出し、温水およびその後冷水ですすぎ洗いし、乾燥する。得られた結果は、良好な均染性、ならびに良好な日光堅牢度および湿潤堅牢度を有する赤色のポリアミド染色物である。
【0114】
使用例C
4000部の水、1部の弱両性均染剤(硫酸塩化、エトキシル化脂肪酸アミドを基礎とし、染料に対して親和性を有する)、0.4部の製造実施例68の染料からなり、1〜2部の40%酢酸でpH5に調節した40℃の染浴に、100部のウール布帛を入れる。40℃での10分後に、染浴を1分あたり1℃の速度で沸騰まで加熱し、その後40〜60分間沸騰させておく。その後、それを70℃に20分かけて冷却する。染色を当該浴から取り出し、温水およびその後冷水ですすぎ洗いし、乾燥する。得られた結果は、良好な日光堅牢度および湿潤堅牢度を有する赤色の羊毛染色物である。
【0115】
使用例D
100部のナイロン−6織物材料を以下からなる50℃の液でパッドする:
製造実施例68の染料を40部、
尿素を100部、
ブチルジグリコールをベースとする非イオン性可溶化剤を20部、
酢酸(pHを4に調節するための)を15〜20部、
弱カチオン活性均染剤(エトキシル化アミノプロピル脂肪酸アミドを基礎とし、染料に対して親和性を有する)を10部、および
水(1000部のパッド液を調整するための)を810〜815部。
【0116】
そのようにして含浸させた材料を巻き上げ、固着のために飽和蒸気条件下、85〜98℃で3〜6時間、蒸熱チャンバー(steaming chamber)に入れておく。その後、染色物を温水および冷水ですすぎ洗いし、乾燥する。得られた結果は、当該1巻きにおいて良好な均染性を有し、良好な日光堅牢度および湿潤堅牢度を有する赤色のナイロン染色物である。
【0117】
使用例E
ナイロン−6から構成され合成基布を有するカットパイル織物シート材料を、1000部あたり以下を含む液でパッドする:
製造実施例68の染料を1部、
イナゴマメ粉エーテル(carob flour ether)を基礎とする市販の増粘剤を4部、
高級アルキルフェノールの非イオン性エチレンオキシド付加物を2部、
60%酢酸を1部。
【0118】
これに続いて、1000部あたり以下の成分を含むペーストで印刷する:
商業的に入手可能なアルコキシル化脂肪族アルキルアミン(生成物を置換する)を20部、
イナゴマメ粉エーテルを基礎とする商業的に入手可能な増粘剤を20部。
【0119】
該印刷物を飽和水蒸気中において100℃で6分間固着し、すすぎ洗いし、乾燥する。得られた結果は赤と白のパターンを有する均一に染色されたカバー素材である。
【0120】
使用例F
100部のクロムなめしされ且つ合成再なめしされたシェーブモイスト(shave−moist)銀面皮を、300部の水および2部の製造実施例68の染料の浴中において55℃で30分間染色する。4部の60%亜硫酸化魚油乳濁液を添加した後、当該革を45分間乳状加脂する。その後、8.5%のギ酸で酸性化し、10分間縮充する(浴中における最終pH3.5〜4.0)。次いで、当該革をすすぎ洗いし、ドリップドライし、通常のように仕上げる。得られた結果は、良好な堅牢度を有し均一な真赤色色相で染色された革である。
【0121】
使用例A〜Fはまた、染料69〜87を用いて同様な結果を伴って実施される。
【0122】
使用例G
3部の製造実施例68の染料を82部の脱塩水および15部のジエチレングリコールに60℃で溶解する。室温まで冷却すると、紙またはポリアミドおよび羊毛生地上におけるインクジェット印刷のために非常に高度に適している赤色印刷インクがもたらされる。
【0123】
使用例Gはまた、染料69〜87を用いて同様な結果を伴って実施される。
【0124】
使用例H
1000部の水、80部のか焼されたグラウバー塩、1部のニトロベンゼン−3−スルホン酸ナトリウムおよび1部の実施例68からの染料からなる染浴を10分の内に80℃に加熱する。その後、100部のマーセル化された綿を加える。これに続いて80℃で5分間染色を行い、その後15分の内に95℃に加熱する。95℃で10分後、3部の炭酸ナトリウムを添加し、続いて、20分後にさらに7部の炭酸ナトリウム、そして30分後に別の10部の炭酸ナトリウムを95℃で添加する。引き続き染色を95℃で60分間継続する。次いで、染色された材料を染浴から取り出し、流水(脱塩水)中で3分間すすぐ。これに続いて、5000部の沸騰させた脱塩水において10分間2回連続して洗浄し、次いで、流水(脱塩水)中において60℃で3分間すすぎ洗いし、冷たい水道水で1分間すすぐ。乾燥により、良好な堅牢度を有する赤色の綿染色物が得られる。
【0125】
使用例I
0.2部の製造実施例68の染料を100部の熱水に溶解し、溶液を室温に冷却する。この溶液を、ホランダー(Hollander)において2000部の水中で叩解した化学漂白亜硫酸パルプ100部に添加する。当該材料の15分の混合の後に、慣用の方法で、樹脂サイズ剤および硫酸アルミニウムを用いてサイズする。この材料から製造される紙は、良好な湿潤堅牢度を備えた赤色の色合いを有する。
【0126】
使用例HおよびIはまた、染料69〜87を用いて同様な結果を伴って実施することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式(I)
【化1】

[式中、
はHまたはスルホ基を表し、
はHまたはスルホ基を表し、RがRと異なっていなければならず、
はH、スルホ基、置換されたC〜Cアルキル基または置換されていないC〜Cアルキル基、置換されたC〜Cアルコキシ基または置換されていないC〜Cアルコキシ基を表し、
はH、置換されたC〜Cアルキル基または置換されていないC〜Cアルキル基、置換されたC〜Cアルコキシ基または置換されていないC〜Cアルコキシ基を表し、
Bは式−SO−、−NH−CO−NH−、−CR−を表し、式中、
はH、置換されたC〜Cアルキル基または置換されていないC〜Cアルキル基を表し、
は置換されたC〜Cアルキル基または置換されていないC〜Cアルキル基、置換されていないアリール基または置換されたアリール基を表すか、あるいは、RおよびRが一緒に5もしくは6員の脂環式環を形成し、前記5もしくは6員環はC〜Cアルキル基によって置換されているか、または前記5もしくは6員環はさらに置換されておらず、
EはNHまたはOHを表す]
で表される化合物。
【請求項2】
式(I)の化合物が少なくとも1個のアニオン性置換基を有することを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
がHまたはスルホ基を表し、
がHまたはスルホ基を表し、RはRと異なっていなければならず
がH、置換されたC〜Cアルキル基または置換されていないC〜Cアルキル基、置換されたC〜Cアルコキシ基または置換されていないC〜Cアルコキシ基を表し、
がH、置換されたC〜Cアルキル基または置換されていないC〜Cアルキル基、置換されたC〜Cアルコキシ基または置換されていないC〜Cアルコキシ基を表し、
Bが式−CR−を有する基であり、
式中、
はH、置換されていないC〜Cアルキル基を表し、
は置換されたC〜Cアルキル基または置換されていないC〜Cアルキル基、置換されていないアリール基または置換されたアリール基を表すか、あるいは、RおよびRは一緒に5もしくは6員の脂環式環を形成し、前記5もしくは6員環はC〜Cアルキル基によって置換されているか、または前記5もしくは6員環はさらに置換されていない、
ことを特徴とする、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
式(II)
【化2】

で表される化合物のアミン官能基の両方をジアゾ化し、1当量の式(III)
【化3】

で表される化合物に結合させることを特徴とし、前記置換基は各々上記で定義されるとおりである、請求項1記載の式(I)の化合物を製造する方法。
【請求項5】
有機基材を染色および/または捺染するための、請求項1記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項6】
ウール、絹および合成ポリアミド類を染色および/または捺染するための、請求項1記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項7】
インクジェット法用の印刷インクを製造するための、請求項1記載の式(I)の化合物の使用。

【公表番号】特表2012−526868(P2012−526868A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510146(P2012−510146)
【出願日】平成22年5月8日(2010.5.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002840
【国際公開番号】WO2010/130381
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(398056207)クラリアント・ファイナンス・(ビーブイアイ)・リミテッド (182)
【Fターム(参考)】