説明

有機半導体

有機薄膜トランジスタを形成するための可溶性オリゴマー化合物は、2つ以上の縮合したチオフェン残基を含む繰り返し単位を有する。繰り返し単位は構造:式(I)または式(II)を含む。化合物は、溶媒和基を含む2つ以上の末端基を含んでもよい。材料の溶液は、インクジェット印刷によって薄膜トランジスタを形成するために用いることができる。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には有機半導体、特に薄膜トランジスタの部品を形成するための有機半導体に関する。
【背景技術】
【0002】
トランジスタは、2つの主要なタイプ、即ちバイポーラ接合トランジスタと電界効果トランジスタに分けることができる。両方のタイプとも、チャンネル領域においてその間に半導性材料が配置された3つの電極を備える共通の構造を有している。バイポーラ接合トランジスタの3つの電極は、エミッタ、コレクタおよびベースとして知られており、一方、電界効果トランジスタにおいては3つの電極はソース、ドレインおよびゲートとして知られている。バイポーラ接合トランジスタは、エミッタとコレクタとの間の電流がベースとエミッタとの間を流れる電流によって制御されるので、電流作動デバイスと記述することができる。対照的に、電界効果トランジスタは、ソースとドレインとの間を流れる電流がゲートとソースとの間の電圧によって制御されるので、電圧作動デバイスと記述することができる。
【0003】
トランジスタは、陽電荷キャリア(正孔)または陰電荷キャリア(電子)をそれぞれ導く半導性材料を含んでいるかによってp型とn型とに分類することもできる。半導性材料は、電荷を受容し、伝導し、供与する能力によって選択することができる。半導性材料の正孔または電子を受容し、伝導し、供与する能力は、材料をドープすることによって増強することができる。
【0004】
たとえば、p型トランジスタデバイスは、正孔の受容、伝導、および供与の効率が良い半導性材料を選択することと、半導性材料からの正孔の注入および受容の効率が良いソース電極およびドレイン電極のための材料を選択することによって、形成することができる。電極におけるフェルミ準位と半導性材料のHOMO準位とのエネルギー準位の整合を良くすることにより、正孔の注入および受容を増強することができる。対照的に、n型トランジスタデバイスは、電子の受容、伝導、および供与の効率が良い半導性材料を選択することと、半導性材料への電子の注入および半導性材料からの電子の受容の効率が良いソース電極およびドレイン電極のための材料を選択することによって、形成することができる。電極におけるフェルミ準位と半導性材料のLUMO準位とのエネルギー準位の整合を良くすることにより、電子の注入および受容を増強することができる。
【0005】
トランジスタは、薄膜に成分を堆積させて薄膜トランジスタ(TFT)を形成することによって形成することができる。そのようなデバイスにおいて半導性材料として有機材料を用いる場合、それは有機薄膜トランジスタ(OTFT)として知られている。
【0006】
OTFTは、溶液プロセッシング等の低コスト、低温の方法によって製造することができる。さらに、OTFTは可撓性のプラスチック基板との適合性が良く(compatible)、ロールツーロール法(roll-to-roll process)における可撓性基板上でのOTFTの大スケール製造が期待されている。
【0007】
図1を参照すると、ボトムゲート有機薄膜トランジスタ(OTFT)の一般的アーキテクチャは、基板10の上に堆積したゲート電極12を備えている。誘電体材料の絶縁層11はゲート電極12の上に堆積しており、ソース電極13およびドレイン電極14は誘電体材料の絶縁層11の上に堆積している。ソース電極13およびドレイン電極14は互いに離間して、ゲート電極12の上に位置する、それらの間のチャンネル領域を画定している。ソース電極13とドレイン電極14とを接続するために、有機半導体(OSC)材料15はチャンネル領域に堆積している。OSC材料15は少なくとも部分的にソース電極13およびドレイン電極14の上に延在してよい。
【0008】
また、有機薄膜トランジスタの上部にゲート電極を設けて、いわゆるトップゲート有機薄膜トランジスタを形成することが知られている。そのようなアーキテクチャにおいては、ソース電極およびドレイン電極は基板上に堆積し、互いに離間しており、それらの間のチャンネル領域を画定している。有機半導体材料の層はチャンネル領域に堆積してソース電極とドレイン電極とを接続し、少なくとも部分的にソース電極およびドレイン電極の上に延在してよい。誘電体材料の絶縁層は有機半導体材料の上に堆積し、これも少なくとも部分的にソース電極およびドレイン電極の上に延在してよい。ゲート電極は絶縁層の上に堆積し、チャンネル領域の上に位置している。
【0009】
有機薄膜トランジスタは硬質または可撓性基板の上に作成することができる。硬質基板はガラスまたはケイ素から選択してよく、可撓性基板は薄いガラスまたはポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)、ポリカーボネートおよびポリイミド等のプラスチックを含んでよい。
【0010】
本発明の化合物のための例示的な溶媒としては、1つまたは複数のアルキル基またはハロゲン基で置換されたベンゼン、たとえばトルエン、キシレンおよびテトラリンが挙げられる。好ましい溶液堆積技術としては、スピンコーティングおよびインクジェット印刷が挙げられる。他の溶液堆積技術としては、ディップコーティング、ロール印刷およびスクリーン印刷が挙げられる。
【0011】
ソース電極およびドレイン電極の間に画定されるチャンネルの長さは500μmまででよいが、好ましくは長さは200μm未満、より好ましくは100μm未満、最も好ましくは20μm未満である。
【0012】
ゲート電極は広範囲の導電性材料、たとえば金属(たとえば金)または金属化合物(たとえばインジウムスズオキシド)から選択することができる。その代わりに、ゲート電極として導電性ポリマーを堆積させてもよい。そのような導電性ポリマーは、たとえばスピンコーティングまたはインクジェット印刷技術および前述の他の溶液堆積技術を用いて溶液から堆積させることができる。
【0013】
絶縁層は、大きな抵抗を有する絶縁材料から選択される誘電体材料を含む。誘電体の誘電率kは典型的には2〜3程度であるが、高いk値を有する材料が望ましい。というのは、OTFTのために達成可能な静電容量はkに正比例し、ドレイン電流IDは静電容量に正比例するからである。したがって、低い操作電圧で大きなドレイン電流を得るためには、チャンネル領域に薄い誘電体層を有するOTFTが好ましい。
【0014】
誘電体材料は有機または無機であってよい。好ましい無機材料としては、SiO2、SiNxおよびスピンオンガラス(SOG)が挙げられる。好ましい有機材料は一般にポリマーであり、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリレート、およびDow Corningから入手可能なベンゾシクロブタン(BCB)等の絶縁ポリマーが挙げられる。絶縁層は材料のブレンドから形成されるか、または多層構造を含んでもよい。
【0015】
誘電体材料は、熱蒸発、真空プロセッシングまたは当技術で既知のラミネーション技術によって堆積させることができる。または、誘電体材料はたとえばスピンコーティングまたはインクジェット印刷技術および前述の他の溶液堆積技術を用いて溶液から堆積させることができる。
【0016】
誘電体材料を溶液から有機半導体の上に堆積させる場合には、それは有機半導体の溶解をもたらしてはならない。同様に、有機半導体を溶液から誘電体材料の上に堆積させる場合には、誘電体材料は溶解してはならない。そのような溶解を防ぐ技術としては、直交溶媒の使用、たとえば下層を溶解しない、最上層の堆積のための溶媒の使用、および下層の架橋が挙げられる。
【0017】
絶縁層の厚みは好ましくは2μm未満、より好ましくは500nm未満である。
【0018】
有機半導体は、電子の運動を可能にする、広く共役したπ系を有する有機分子の種類である。
【0019】
有機半導体の性能は、典型的にはその「電荷移動度」(cm2-1-1)の測定によって評価される。これは正孔または電子の移動度のいずれかに関連する可能性がある。この測定は、材料を横切る印加電場への電荷キャリアのドリフト速度に関連する。
【0020】
比較的大きな移動度を有する有機半導体は、固体状態においてπ−πスタックを形成することができる化合物を含むものである傾向がある。しかし、化合物にそのようなπ−πスタックを形成させるために必要な共役レベルの増大はまた、半導体のバンドギャップおよび安定性の低下をもたらし、そのため性能が低下し、安定性が悪くなる。さらに、これらの化合物は非常に溶解性が低く、そのため合成において特定の問題を引き起こし、インクジェット印刷等の効率的なトランジスタ製造法におけるそれらの使用を不可能にしている。たとえばSan Miguelら、Org.Lett.2007、9巻、6号、1005〜1008頁を参照のこと。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、改善された移動度および安定性(たとえば大気酸化に対する安定性)と効率的なトランジスタの製造を可能にするために必要な溶解性とを兼ね備える有機半導性材料を提供することによって、これらの問題に対処しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の第1の態様は、有機薄膜トランジスタを形成するための可溶性オリゴマー化合物に関し、該化合物は2つ以上の縮合したチオフェン残基を含む繰り返し単位を有する。
【0023】
繰り返し単位は、たとえば構造
【化1】

を含んでもよく、α位を通じて、またはその代わりにβ位を通じて、オリゴマー骨格に組み込むことができる。
【0024】
好ましくは、化合物は平面状溶媒和基等の溶媒和基を含む2つ以上の末端基を含む。いくつかの実施形態においては、溶媒和基は1〜20個の炭素原子、アルコキシ、アミノ、アミド、シリル、アルケニル、アルキルおよびアルキルシリル、好ましくはアルキルまたはアルキルシリルを有する、任意に置換された直鎖状、分岐状または環状アルキル鎖から選択される。好ましいアルキルシリル可溶化基には、トリアルキルシリルアセチレンが含まれる。
【0025】
これに加えて、またはその代わりに、縮合したチオフェン残基の1つまたは複数は、平面状溶媒和基で置換してもよい。好ましくは、この平面状溶媒和基は上で列挙した群から選択される。
【0026】
好ましくは、半導性化合物は:
【化2】

【化3】

(式中、Rは単独で(上の第1の構造と同様に)、または他の基との組み合わせで(たとえば上の第2の構造で示されたような酸素との組み合わせで)、溶媒和基を形成する。Rは1〜20個の炭素原子、アルコキシ、アミノ、アミド、シリル、アルケニル、アルキルおよびアルキルシリル、好ましくはアルキルまたはアルキルシリルを有する任意に置換された直鎖状、分岐状または環状アルキル鎖から選択される。Rは好ましくはアルキルである)
の1つから選択される構造を含む。
【0027】
第2の態様においては、本発明は本明細書に記載するオリゴマー化合物を含む印刷可能な溶液に関する。
【0028】
好ましくは、溶液はオリゴマー化合物を少なくとも0.05molL-1、好ましくは少なくとも0.5molL-1、最も好ましくは少なくとも1molL-1の濃度で含む。
【0029】
第3の態様においては、本発明は本明細書に記載するオリゴマー化合物を含む有機半導体デバイスに関する。
【0030】
第4の態様においては、本発明は本明細書に記載する半導体材料を含む薄膜トランジスタに関する。
【0031】
第5の態様においては、本発明は本明細書に記載する薄膜トランジスタを含む電子デバイスに関する。
【0032】
第6の態様においては、本発明は本明細書に記載する溶液をインクジェット印刷するステップを含む、薄膜トランジスタを製造する方法に関する。
【0033】
ここで本発明の実施形態を、例のためにのみ、付随する図面を参照して記述する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】先行技術によるボトムゲート有機薄膜トランジスタの一般的アーキテクチャの概略図である。
【図2】本発明の実施形態によって共通の基板の上に作成した有機薄膜トランジスタおよび隣接する有機発光デバイスを含むピクセルの概略図である。
【図3】本発明の実施形態によって有機発光デバイスに積層関係で作成した有機薄膜トランジスタの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下の説明を通して、同様の参照数字は同様の部品を特定するために用いることとする。
【0036】
本発明の実施形態による有機半導体は、以下に記載するように合成することができる。
【0037】
たとえば、以下
【化4】

に示す化合物1、即ちチエノチオフェンの可溶性ダイマーは、以下の方法によって合成することができる。
【0038】
中間体I:
【化5】

【0039】
窒素下、−78℃で、n−ブチルリチウム(51ml、0.14mol、ヘキサン中2.5M)をTHF(310ml)中のチエノチオフェン(20g、0.14mol)の溶液に滴下して加えた。この温度で1時間撹拌した後、オクチルブロミド(24.9ml、0.14mol)を滴下して加え、反応混合物を一夜放置して室温に加温した。次いで混合物を水に注ぎ、ジエチルエーテルで抽出し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮した。粗残留物を蒸留して過剰のブロミドを除去し、残留物をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル、ヘキサン)で精製して、透明なオイルとして生成物を得た(15g、42.5%)。
【0040】
化合物I
【化6】

【0041】
窒素下、0℃で、リチウムジイソプロピルアミド(21.8ml、39.3mmol、テトラヒドロフラン中1.8M)をTHF中の中間体I(9.87g、39.2mmol)の溶液に滴下して加えた。この温度で1時間撹拌した後、塩化銅(II)粉末(5.32g、39.2mmol)を少しずつ加え、反応混合物を一夜放置して室温に加温した。これを水でクエンチし、ジクロロメタンで希釈し、セライトで濾過して銅残渣を除去した。有機相を水およびブラインで洗浄し、乾燥(MgSO4)し、減圧下で濃縮した。カラムクロマトグラフィ(シリカゲル、テトラヒドロフラン)およびそれに続く昇華で精製して、黄色固体として生成物を得た(582mg、5%(10-6Torrで255℃))。
【0042】
たとえば、以下
【化7】

に示す化合物IIおよび化合物IIIは、化合物Iを合成するために用いた同様の方法によって合成することができる。
【0043】
次いで化合物I、IIまたはIIIをトルエン、キシレン、テトラリン、またはクロロホルムに溶解して1〜2molL-1程度の濃度の溶液を形成する。この溶液をインクジェット印刷して、効果的な有機半導体(OSC)を提供することができる。
【0044】
本発明の実施形態による有機半導体は、広範囲の適用の可能性を有する。そのような適用の1つは、有機薄膜トランジスタ(OTFT)に組み込んで光学デバイス、好ましくは有機光学デバイスにおけるピクセルを駆動することである。そのような光学デバイスの例としては、光反応性デバイス、特に光検出器、および発光デバイス、特に有機発光デバイスが挙げられる。OTFTは、アクティブマトリックス有機発光デバイスでの使用、たとえばディスプレイにおける使用に特に適している。
【0045】
図2に、共通の基板104の上に作成した有機薄膜トランジスタ100および隣接する有機発光デバイス(OLED)102を含むピクセルを示す。OTFT100は、ゲート電極106、誘電体層108、ソース電極110およびドレイン電極112、ならびにOSC層114を含む。OLED102は、アノード116、カソード118およびアノード116とカソード118との間に設けられたエレクトロルミネッセンス層120を含む。電荷輸送層、電荷注入層または電荷遮断層等のさらなる層を、アノード116とカソード118との間に位置させてもよい。図2の実施形態においては、カソード材料118の層はOTFT100およびOLED102の両方を横切って延在しており、カソード層118をOSC層114から電気的に絶縁するために絶縁層122が設けられている。OTFT100およびOLED102の活性領域は、基板104の上にフォトレジスト124の層を堆積させ、これをパターン化して基板上にOTFT100およびOLED102の領域を画定することによって形成された共通のバンク材料によって画定される。
【0046】
図2において、有機発光デバイス102を発光状態と非発光状態とで切り替えるため、ドレイン電極112は有機発光デバイス102のアノード116に直接接続される。
【0047】
図3に示す代替の配置においては、有機薄膜トランジスタ200は有機発光デバイス202への積層関係で(in a stacked relationship)作成することができる。そのような実施形態においては、有機薄膜トランジスタ202はトップゲートまたはボトムゲート配置のいずれかで前述のように組み立てられる。図2の実施形態のように、OTFT200およびOLED202の活性領域はフォトレジスト124のパターン化された層によって画定されるが、この積層配置においては、2つの分離されたバンク層(1つはOLED202のため、1つはOTFT200のため)がある。平坦化層204(パッシベーション層としても知られる)は、OTFT200の上に堆積する。例示的なパッシベーション層204としては、BCBおよびパリレンが挙げられる。有機発光デバイス202はパッシベーション層204の上に作成され、有機発光デバイス202のアノード116はパッシベーション層204およびバンク層124を通過する導電性ビア206によってOTFT200のドレイン電極112に電気的に接続されている。
【0048】
OTFTおよび光学活性領域(たとえば発光領域または光検知領域)を含む画素回路(pixel circuit)はさらなる要素を含んでもよいことが認識されよう。特に、図2および図3のOLED画素回路は、典型的には図示されている駆動トランジスタに加えて少なくとも1つのさらなるトランジスタおよび少なくとも1つのコンデンサ(capacitor)を含むことになる。本明細書に記載した有機発光デバイスは、トップ発光デバイスまたはボトム発光デバイスであってよいことが認識されよう。即ち、デバイスはデバイスのアノード側またはカソード側のいずれかを通して発光してよい。透明なデバイスにおいては、アノードとカソードの両方が透明である。透明カソードデバイスは(もちろん完全に透明なデバイスが望ましい場合を除いて)透明なアノードを有する必要はなく、したがってボトム発光デバイスに用いられる透明なアノードは、アルミニウム層等の反射性材料の層で置換または補充することができるということが認識されよう。
【0049】
透明なカソードはアクティブマトリックスデバイスに特に有利である。なぜなら、そのようなデバイスにおける透明なアノードを通る発光は、図3に示す実施形態から見られるように、発光ピクセルの下に位置するOTFT駆動回路によって少なくとも部分的に遮蔽され得るからである。
【0050】
ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極の厚みは5〜200nmの範囲であってよいが、典型的にはたとえば原子間力顕微鏡(AFM)で測定されるように50nmである。
【0051】
デバイスアーキテクチャには他の層が含まれてもよい。たとえば自己組織化単分子層(SAM)をゲート電極、ソース電極またはドレイン電極の上に設けるのに加えて、必要に応じて結晶性を増大させ、接触抵抗を低減し、表面特性を修復し、接着性を増大させるために、基板、絶縁層および有機半導性材料の上に設けてもよい。特にデバイス性能を改善するために、たとえば有機半導体の形態(特にポリマーの配列および結晶性)を改善することおよび特にk値が高い誘電性表面に対して電荷トラップをカバーすることによって、結合領域および有機領域を含む単分子層をチャンネル領域の誘電性表面に設けてもよい。そのような単分子層のための例示的な材料としては、アルキル長鎖を有するクロロ−またはアルコキシ−シラン、たとえばオクタデシルトリクロロシランが挙げられる。
【実施例1】
【0052】
活性層として化合物Iを用いる有機電界効果トランジスタデバイスを、ボトムコンタクトデバイスで作成した。デバイスはクロロベンゼンまたはクロロホルムの2%溶液を用いて作成した。これは0.45μmのフィルターで濾過し、1000rp/sec accで60秒スピンコートし、ホットプレート上で100℃で5分間乾燥し、金属ブロックを用いて1分間冷却した。
【0053】
疑いなく、当業者には他に多くの有効な選択肢が想起されるであろう。本発明は記述した実施形態に限定されず、本明細書に添付した請求項の範囲内に存在する、当業者には明白な改変を包含することを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上の縮合したチオフェン残基を含む繰り返し単位を有する、有機薄膜トランジスタを形成するための可溶性オリゴマー化合物。
【請求項2】
繰り返し単位が構造:
【化1】

を含む、請求項1に記載のオリゴマー化合物。
【請求項3】
繰り返し単位が構造:
【化2】

を含む、請求項1に記載のオリゴマー化合物。
【請求項4】
溶媒和基を含む2つ以上の末端基を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のオリゴマー化合物。
【請求項5】
溶媒和基が1〜20個の炭素原子、アルコキシ、アミノ、アミド、シリル、アルケニル、アルキルおよびアルキルシリル、好ましくはアルキルまたはアルキルシリルを有する任意に置換された直鎖状、分岐状または環状アルキル鎖からなる群から選択され、溶媒和基のそれぞれがさらに任意に置換されていてもよい、請求項4に記載のオリゴマー化合物。
【請求項6】
縮合したチオフェン残基の1つまたは複数が平面状溶媒和基で置換されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のオリゴマー化合物。
【請求項7】
トルエン、キシレン、テトラリンまたは/およびクロロホルム等のモノ−またはポリ−アルキルベンゼンからなる群から選択される溶媒に対して0.05molL-1を超える溶解度を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のオリゴマー化合物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のオリゴマー化合物を含む、印刷可能な溶液。
【請求項9】
オリゴマー化合物が1.0molL-1以上の濃度を有する、請求項8に記載の印刷可能な溶液。
【請求項10】
【化3】

【化4】

(式中、Rは1〜20個の炭素原子、アルコキシ、アミノ、アミド、シリル、アルケニル、アルキルおよびアルキルシリル、好ましくはアルキルまたはアルキルシリルを有する任意に置換された直鎖状、分岐状または環状アルキル鎖から選択される)
から選択される構造を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のオリゴマー化合物を含む有機半導体材料。
【請求項11】
少なくとも10-3cm2-1-1の移動度を有する、請求項10に記載の有機半導体材料。
【請求項12】
請求項10または11に記載の半導体材料を含む薄膜トランジスタ。
【請求項13】
請求項12に記載の薄膜トランジスタを含む電子デバイス。
【請求項14】
請求項8または9に記載の溶液を基板に塗布するステップと、溶液を固化させるステップとを含む、薄膜トランジスタを製造するための方法。
【請求項15】
塗布ステップが溶液を基板にインクジェット印刷するステップを含む、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−510455(P2012−510455A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538047(P2011−538047)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【国際出願番号】PCT/GB2009/002738
【国際公開番号】WO2010/061178
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(597063048)ケンブリッジ ディスプレイ テクノロジー リミテッド (152)
【Fターム(参考)】