説明

有機圧電体、有機圧電材料、超音波振動子および超音波探触子

【課題】本発明の課題は、圧電特性に優れかつ耐熱性に優れた有機圧電体、有機圧電材料および超音波振動子ならびに測定の安定性に優れる超音波探触子を提供することにある。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物、または下記一般式(1)で表される化合物の残基をR1若しくはR2を介して側鎖に有する重合体であることを特徴とする有機圧電体。一般式(1) R1−A1−(L1−A1)n−R2
(式中、A1は、−NHCSNH−、−NHCSO−または−NHCS−を表す。R1およびR2は、各々独立に無置換の芳香族基、アルキル基若しくはアルコキシ基で置換された芳香族基、またはアルキル基若しくはアルコキシ基で置換されたシクロアルキル基を表す。L1は2価の連結基を表し、nは0〜100の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を送信、受信して超音波検査を行う超音波探触子ならびにそれに用いられる超音波振動子、有機圧電材料および有機圧電体に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波探蝕子などのセンサーに用いられる圧電体としては、無機圧電体および有機圧電体が知られている。
【0003】
無機圧電体を用いた無機圧電材料としては、例えば水晶、LiNbO、LiTaO、KNbOなどの単結晶、ZnO、AlNなどの薄膜、Pb(Zr,Ti)O系などの焼結体を分極処理した無機圧電材料が知られている。
【0004】
これら無機材質の圧電材料は、弾性スティフネスが高く、機械的損失係数が高い、密度が高く誘電率も高いなどの性質がある。
【0005】
有機圧電体を用いた有機圧電材料としては、例えば特開2008−171935号公報に記載のフッ化ビニリデンの重合体あるいは共重合体、シアン化ビニリデンの重合体あるいは共重合体を用いた有機圧電材料が知られている。また、特開2006−225565号公報に記載の蒸着重合で得られたポリ尿素膜からなる有機圧電材料、特開2008−36202号公報に記載のポリエステル、ポリウレアなどの非フッソ系樹脂とフッ化ビニリデンの重合体などのフッソ系重合体の微粒子とを含有する有機圧電材料などが知られている。さらに、ウレア基などの特定の基を有する液晶化合物を有機圧電材料として用いることが知られている(特許文献1参照)。
【0006】
有機圧電体は、無機材質の圧電体に対して、薄膜化、大面積化等の加工性に比較的優れ、任意の形状、形態の物が作ることができ、弾性率が低い、誘電率が低い等の特徴を持つため、センサーとしての使用に際しては、適用範囲が広く汎用性が高いなどの特徴を持っている。
【0007】
他方、近年では、超音波探触子から被検体内へ送信された超音波の周波数(基本周波数)成分ではなく、その高調波周波数成分によって被検体内の内部状態の画像を形成するハーモニックイメージング(Harmonic Imaging)技術が研究、開発されている。このハーモニックイメージング技術は、(1)基本周波数成分のレベルに比較してサイドローブレベルが小さく、S/N比(signal to noise ratio)が良くなってコントラスト分解能が向上すること、(2)周波数が高くなることによってビーム幅が細くなって横方向分解能が向上すること、(3)近距離では音圧が小さくて音圧の変動が少ないために多重反射が抑制されること、および、(4)焦点以遠の減衰が基本波並みであり高周波を基本波とする場合に較べて深速度を大きくとれることなどの様々な利点を有しており、高精度な診断を可能としている。
【0008】
そして、有機圧電体は、無機圧電体に比して、高周波特性、広帯域特性を必要とする上記ハーモニックイメージング技術における圧電材料、特に受信用の圧電材料に用いられる圧電体として適している。
【0009】
また、有機圧材料の音響インピーダンスは生体のそれに近いという特徴があり、被検体が生体の場合、音響整合がとりやすいという利点を有している。
【0010】
しかしながら、これらの有機圧電材料を有する素子は、無機圧電材料を有する素子に比べ、圧電特性がまだ不十分である、使用時間が長くなると、構成部材の発熱により圧電特性が低下する場合があるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−16352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題、状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、圧電特性に優れかつ耐熱性に優れた有機圧電体、有機圧電材料および超音波振動子ならびに測定の安定性に優れる超音波探触子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の上記課題は、以下の手段により達成される。
【0014】
1.下記一般式(1)で表される化合物、または下記一般式(1)で表される化合物の残基をR1若しくはR2を介して側鎖に有する重合体であることを特徴とする有機圧電体。
【0015】
一般式(1) R1−A1−(L1−A1)n−R2
(式中、A1は、−NHCSNH−、−NHCSO−または−NHCS−を表す。R1およびR2は、各々独立に無置換の芳香族基、アルキル基若しくはアルコキシ基で置換された芳香族基、またはアルキル基若しくはアルコキシ基で置換されたシクロアルキル基を表す。L1は2価の連結基を表し、nは0〜100の整数を表す。)
2.前記一般式(1)のA1が、−NHCSNH−であることを特徴とする前記1に記載の有機圧電体。
【0016】
3.前記一般式(1)のR1およびR2が、アルコキシ基を有する芳香族基であることを特徴とする前記1または2に記載の有機圧電体。
【0017】
4.前記1から3のいずれか1項に記載の有機圧電体を含有することを特徴とする有機圧電材料。
【0018】
5.前記有機圧電材料が、前記有機圧電体を含有する塗布液を基材上に塗布し、乾燥して得られた有機圧電体膜であることを特徴とする前記4に記載の有機圧電材料。
【0019】
6.前記4または5記載の有機圧電材料と、電極とを有することを特徴とする超音波振動子。
【0020】
7.前記超音波振動子が、受信用超音波振動子であることを特徴とする前記6に記載の超音波振動子。
【0021】
8.前記6または7に記載の超音波振動子を具備することを特徴とする超音波探触子。
【発明の効果】
【0022】
本発明の上記手段により、圧電特性に優れかつ耐熱性に優れた有機圧電体、有機圧電材料および超音波振動子ならびに測定の安定性に優れる超音波探触子が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の超音波振動子の例の模式断面図である。
【図2】本発明の超音波探触子の例の模式断面図である。
【図3】本発明の超音波探触子が用いられる超音波画像検出装置の主要部の構成を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の上記手段により、圧電特性に優れかつ耐熱性に優れた有機圧電体、有機圧電材料および超音波振動子ならびに測定の安定性に優れる超音波探触子が提供できる。
【0025】
本発明は、有機圧電体であって、上記一般式(1)で表される化合物または上記一般式(1)で表される化合物の残基を、R1またはR2を介して側鎖に有する重合体であることを特徴とする。
【0026】
(一般式(1)で表される化合物)
一般式(1)中、R1およびR2は、各々独立に無置換の芳香族基、アルキル基若しくはアルコキシ基で置換された芳香族基、またはアルキル基若しくはアルコキシ基で置換されたシクロアルキル基を表す。R1またはR2における、芳香族基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基等を挙げることができ、シクロアルキル基としては、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等を挙げることができる。芳香族基、シクロアルキル基の置換基であるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。置換基であるアルキル基としては、炭素数5〜20のアルキル基が好ましく、更に炭素数6〜15のアルキル基が好ましい。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。アルコキシ基としては、炭素数が5〜20のアルコキシ基が好ましく、更に炭素数6〜15のアルコキシ基が好ましい。
【0027】
R1およびR2としては、アルコキシ基で置換された芳香族基またはシクロアルキル基が好ましく、特にアルコキシ基で置換された芳香族基が好ましく用いられる。
【0028】
A1は、−NHCSNH−、−NHCSO−または−NHCS−を表すが、特に−NHCSNH−である場合が好ましい態様である。
【0029】
nは、0〜100の整数を表す。
【0030】
好ましくは0〜80であり、更に好ましくは0〜50である。
【0031】
L1は2価の連結基を表す。
【0032】
2価の連結基として、例えば、アルキレン基、アルキレンオキシ基、アリーレン基、アラルキレン基が挙げられる。アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基等が挙げられる。アルキレンオキシ基としては、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、オクチレンオキシ基、ポリエチレンオキシ基等を挙げることができる。アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基等を挙げることができる。アラルキレン基としては、例えば、ベンジレン基、フェネチレン基等を挙げることができる。
【0033】
又、これらの連結基は、複数の連結基の組み合わせで、2価の連結基を形成していても良い。
【0034】
L1として、好ましくは、下記一般式(2)で表される連結基である。
【0035】
一般式(2) −Ar−L2−
一般式(2)において、Arはアリーレン基を表し、アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基等を挙げることができる。L2は、2価の連結基または単なる結合手を表し、2価の連結基としては、一般式(1)のL1で挙げた2価の連結基を挙げることができる。
【0036】
本発明においては、好ましい態様として下記が挙げられる。
【0037】
前記一般式(1)のnが0であることを特徴とする前記手段1に記載の有機圧電体。
【0038】
前記一般式(1)のnが1以上であり、L1が上記一般式(2)であることを特徴とする前記手段1に記載の有機圧電体。
【0039】
(重合体)
本発明に係る、上記一般式(1)で表される化合物の残基を、R1またはR2を介して側鎖に有する重合体は、重合性基を有し、R1またはR2を介して上記一般式(1)で表される化合物の残基を有する化合物を重合させることで得られる。
【0040】
重合性基を有し、R1またはR2を介して上記一般式(1)で表される化合物の残基を有する化合物を作製するために用いられる、重合性基を有する化合物としては、アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体、けい皮酸誘導体、アリル基、ビニル基等の2重結合を有する化合物が挙げられる。
【0041】
これらの化合物に、R1またはR2を介して上記一般式(1)で表される化合物の残基を結合させ、結合させた化合物を、光、重合開始剤、触媒、酸、塩基等を使用することによって重合させることで、本発明に係る重合体が得られる。
【0042】
重合性基を有する化合物としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基を有す得る化合物が好ましく、さらにアクリロイル基、メタクリロイル基を有するアクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体が好ましく、用いられる。
【0043】
重合させる触媒としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン系化合物、ベンジル、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ミヒラーズケトン等のカルボニル化合物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジベンゾイル等のアゾ化合物、ベンゾイルパーオキシド等の過酸化物、α−ジケトンと三級アミンとの混合物などを用いても良く、放射線照射による重合を行っても良い。
【0044】
重合させる温度は、重合する温度であれば如何なる温度でも構わないが、−50〜250℃であることが好ましく、より好ましくは、−50〜200℃である。重合は、溶液重合、蒸着重合または無溶媒下で重合を行っても良いが、溶液重合または無溶媒下での重合が好ましい。重合に用いる溶媒は、反応基質および目的物が良好に溶解する溶媒が好ましく、シクロヘキサン、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類、THF(テトラヒドロフラン)、ジエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、4−メチル−2−ペンタノン等のケトン類、プロピオン酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類などの溶媒であってもよく、これらを混合して用いてもよい。
【0045】
上記のようにして得られた重合体は単離精製を行っても良く、反応溶液をそのまま用いて塗布を行い、膜を形成しても良い。好ましくは、再沈で単離精製を行う方法である。再沈精製は、如何なる手段を用いても良いが、反応液を貧溶媒に滴下して析出させる方法または反応液に貧溶媒を添加して析出させる方法が好ましい。ここで言う貧溶媒とは、一般式(1)で表される化合物の重合物が溶解しない溶媒であれば、如何なる溶媒でも構わないが、シクロヘキサン、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類、プロピオン酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類を挙げることができる。
【0046】
重合体の分子量(重量平均分子量(Mw))は、5000〜100000が好ましく特に40000〜100000が好ましい。重合体の重量平均分子量(Mw)は、下記の要領で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により算出した値である。
【0047】
測定条件は以下の通りである。
【0048】
溶媒 :30mMLiBr in N−メチルピロリドン
装置 :HLC−8220GPC(東ソー(株)製)
カラム :TSKgel SuperAWM−H×2本(東ソー(株)製)
カラム温度:40℃
試料濃度 :1.0g/L
注入量 :40μl
流量 :0.5ml/min
校正曲線 :標準ポリスチレン:PS−1(Polymer Laboratories社製)Mw=580〜2,560,000までの9サンプルによる校正曲線を使用する。
【0049】
一般式(1)で表される化合物は、公知の手法により合成することができる。
【0050】
例えば、特開2006−16352号明細書、Chemische Berichte,34,1901,1945、J.Chem.Soc,125,1924,1704、J.Chem.Soc,1927,440、Chem.Eur.J.1999,5,No.3,1070−1083、J.Am.Chem.Soc.2005,127,2565−2571などに記載の方法を参照して合成することができる。
【0051】
以下に、一般式(1)で表される化合物、下記一般式(1)で表される化合物の残基をR1またはR2を介して側鎖に有する重合体の作製に用いられる重合性化合物または重合体の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0052】
【化1】

【0053】
【化2】

【0054】
【化3】

【0055】
【化4】

【0056】
【化5】

【0057】
【化6】

【0058】
【化7】

【0059】
【化8】

【0060】
【化9】

【0061】
【化10】

【0062】
【化11】

【0063】
【化12】

【0064】
1−78:1−51の重合体(質量平均分子量68000、分子量分布1.8)
1−79:1−55の重合体(質量平均分子量61000、分子量分布1.6)
1−80:1−62の重合体(質量平均分子量57000、分子量分布1.6)
(有機圧電材料)
本発明の有機圧電材料は、本発明の有機圧電体を含有する有機圧電体膜であり、分極処理が施されたものである。
【0065】
有機圧電材料は、延伸処理、アニール処理が施されていてもよい。
【0066】
これらの処理は併用してなされてもよい。
【0067】
有機圧電材料は、本発明の有機圧電体を、高分子材料を母材として、母材中に分散させたものでも、本発明の有機圧電体のみからなるものでもよい。
【0068】
母剤に用いられる高分子材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢ビ共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリフッ化ビニリデン、ポリイソプレン、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、ポリウレア、ポリチオウレア等を挙げることができる。
【0069】
好ましくは、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリウレア、ポリチオウレア、ポリフッ化ビニリデンまたはその共重合体であり、更に好ましくは、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、ポリウレア、ポリチオウレア、ポリフッ化ビニリデンまたはその共重合体である。
【0070】
高分子材料を母材として、一般式(1)で表される化合物を分散させる場合、一般式(1)で表される化合物の含有量は、母材に対して、10質量%〜200質量%が好ましく、更に好ましくは、100質量%〜200質量%である。
【0071】
有機圧電体膜を作製する方法としては、本発明の有機圧電体を溶解含有する塗布液を、基板に塗布し、乾燥する方法または本発明の有機圧電体を含有する有機圧電材料をプレスによって膜を形成する方法が挙げられる。塗布方法として、例えば、スピンコート法、ソルベントキャスト法、メルトキャスト法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、バーコート法などが挙げられる。
【0072】
また、塗布液を用い、成膜し乾燥後、さらにホットプレスで成型する方法を組み合わせ適用してもよい。
【0073】
成膜後の膜の冷却は膜を常温で冷却してもよく、急冷してもよいが、好ましくは急冷である。急冷の方法は如何なる手段を用いてもよく、氷水や液体窒素中に成型した膜を浸すことによって冷却してもよい。
【0074】
基板としてはガラス板、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィンポリマーのようなプラスチック板を用いることができる。
【0075】
塗布液に用いられる溶媒としては、塩化メチレン、ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。乾燥する温度としては、母材のガラス転位温度以下の温度、例えば20℃〜100℃で行うことができ、さらに減圧乾燥を行ってもよい。また、本発明においては、形成された膜に後述する分極処理を行う方法が好ましい。
【0076】
本発明の有機圧電体を用いた超音波振動子が、良好な圧電特性を示し、耐熱性に優れる理由は、明確ではないが、以下のように推測される。
【0077】
一般式(1)で表される化合物は、例えばNHCO部分を含む構造のものに比して、双極子モーメントの大きなNHCS部分を含み、分極処理が施される際、置換基によって一定の方向に配向し易い構造となっており、さらに、膜中において、配向したNHCS硫黄原子と、当該NHCS以外のNHCSの水素原子とが、一種のイオン結合をしており、熱的変化に対して、安定な構造を有しているためと推測される。
【0078】
(分極方法)
分極処理の方法としては、従来公知の直流電圧印加処理、交流電圧印加処理またはコロナ放電処理方法が適用され得る。例えば、コロナ放電処理法による場合には、コロナ放電処理は、市販の高電圧電源と電極からなる装置を使用して処理することができる。放電条件は、機器や処理環境により異なるので適宜条件を選択すればよいが、高電圧電源の電圧としては−1〜−20kV、電流としては1〜80mA、電極間距離としては、1〜10cm、印加電圧としては、0.5〜2.0MV/mである条件が好ましい。
【0079】
分極処理に用いられる電極としては、従来から用いられている針状電極、線状電極(ワイヤー電極)、網状電極を用いることができる。分極処理は、超音波振動子が有する、下述する電極を付す前に行ってもよいし、電極を付した後に、当該電極を使用して分極処理を行ってもよい。
【0080】
延伸処理としては、種々の公知の方法を採用することができる。延伸処理は、所定形状の有機圧電体膜が破壊されない程度に一軸・二軸方向に延伸することができる。延伸倍率としては、2〜10倍、好ましくは2〜6倍の範囲で行うことができる。例えば、本発明の化合物を、溶媒に溶解した液をガラス板などの基板上に流延し、常温にて溶媒を乾燥させ、所望の厚さのフィルムを得て、このフィルムを室温で所定の倍率の長さに延伸する方法などが挙げられる。
【0081】
アニール処理は、加熱処理であり、例えば100℃〜200℃で加熱する方法が挙げられる。アニール処理としては、膜状の有機圧電体を加熱処理することが好ましく、有機圧電体の膜を、膜を担持する基材と共に加熱してもよいし、膜(フィルム状)のみを加熱雰囲気中で加熱してもよい。加熱時間としては、上記温度で1分から60分間加熱する方法が挙げられる。
【0082】
(超音波振動子)
本発明の超音波振動子は、本発明の有機圧電体を含有する有機圧電材料に電極を付したものであるが、対向する一対の電極間に、有機圧電材料を有する態様が好ましい。
【0083】
本発明の有機圧電体は、超音波振動子に用いられる場合、形成された膜の状態で、分極処理が施されて、使用されることが好ましい。
【0084】
(電極)
超音波振動子に付される電極に用いられる材料としては、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)などが挙げられる。
【0085】
圧電材料に電極を付す方法としては、例えば、チタン(Ti)やクロム(Cr)などの下地金属をスパッタ法により0.02〜1.0μmの厚さに形成した後、上記金属元素を主体とする金属およびそれらの合金からなる金属材料、さらには必要に応じ一部絶縁材料をスパッタ法、その他の適当な方法で1〜10μmの厚さに形成する方法が挙げられる。
【0086】
電極形成はスパッタ法以外でも、微粉末の金属粉末と低融点ガラスとを混合した導電ペーストをスクリーン印刷やディッピング法、溶射法で形成することもできる。
【0087】
さらに、圧電材料の膜の両面に形成した電極間に、所定の電圧を供給し、圧電材料の膜を分極処理することができる。
【0088】
超音波振動子は、超音波探触子に用いられる場合、基板と共に用いられることが好ましい。
【0089】
基板としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィンポリマーのようなプラスチック板またはフィルムでもよいし、これらの素材の表面をアルミニウム、金、銅、マグネシウム、珪素等で覆ったものでもよい。
【0090】
またアルミニウム、金、銅、マグネシウム、珪素単体、希土類のハロゲン化物の単結晶の板またはフィルムでもかまわない。
【0091】
本発明に係る超音波振動子は、超音波探触子に用いられる場合、受信用超音波振動子として、または送信用超音波振動子として用いられるが、特に受信用超音波振動子として用いられることが好ましい態様である。
【0092】
図1を用いて、本発明の超音波振動子を説明する。
【0093】
超音波振動子10は、圧電材料1の両側に電極2が配置されている。
【0094】
電極2は、必要に応じ、圧電材料1の全面にわたり配置されてもよいし、有機圧電材料1の一部分に配置されてもよい。
【0095】
(超音波探触子)
本発明の超音波探触子は、本発明の超音波振動子を具備したものである。超音波探触子は、超音波振動子として、送信用超音波振動子と受信用超音波振動子とを具備することが好ましい。
【0096】
本発明の超音波探触子は、送信用超音波振動子および受信用超音波振動子の少なくとも一方が本発明の超音波振動子であることが必要であるが、特に少なくとも受信用超音波振動子が本発明の超音波振動子であることが好ましい。
【0097】
本発明においては、超音波の送受信の両方を一つの振動子で担ってもよいが、より好ましくは、送信用と受信用で振動子は分けて超音波探触子内に構成されることが好ましい。
【0098】
本発明の超音波振動子以外の超音波振動子を用いる場合、それは従来公知のセラミックス無機圧電材料でも、有機圧電材料でもよい。
【0099】
送信用振動子と、受信用振動子の配列としては、各々を上下に配置する配列および並列に配置する配列のどちらでもよいが、上下に配置して積層する構造が好ましい。積層する場合の送信用振動子および受信用振動子の厚さとしては、40〜150μmであることが好ましい。
【0100】
本発明の超音波探触子は、必要に応じバッキング層、音響整合層、音響レンズなどを具備することが好ましい。
【0101】
図2に本発明の超音波探触子の好ましい態様の例を示す。
【0102】
超音波探触子20は、バッキング層6上に、送信用圧電材料5に電極2が付された送信用超音波振動子12を有し、送信用超音波振動子12上に基板7を有し、基板7上に受信用有機圧電材料11に電極2が付された受信用超音波振動子13を有し、さらにその上に音響整合層8および音響レンズ9を有する構成を有する。
【0103】
本発明の超音波探触子は、種々の態様の超音波診断装置に用いることができる。例えば、図3に示すような超音波画像検出装置において好適に使用することができる。図3は、超音波画像検出装置の主要部の構成を示す概念図である。
【0104】
超音波画像検出装置は、例えば、生体などの被検体に対して超音波を送信し、被検体で反射した超音波をエコー信号として受信する超音波振動子が配列されている超音波探触子(プローブ)を備えている。
【0105】
また当該超音波探触子に電気信号を供給して超音波を発生させるとともに、当該超音波探触子の各超音波振動子が受信したエコー信号を受信する送受信回路と、送受信回路の送受信制御を行う送受信制御回路を備えている。
【0106】
さらに、送受信回路が受信したエコー信号を被検体の超音波画像データに変換する画像データ変換回路を備えている。また当該画像データ変換回路によって変換された超音波画像データでモニタを制御して表示する表示制御回路と、超音波画像検出装置全体の制御を行う制御回路を備えている。
【0107】
制御回路には、送受信制御回路、画像データ変換回路、表示制御回路が接続されており、制御回路はこれら各部の動作を制御している。そして、超音波探触子の各超音波振動子に電気信号を印加して被検体に対して超音波を送信し、被検体内部で音響インピーダンスの不整合によって生じる反射波を超音波探触子で受信する。
【実施例】
【0108】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0109】
実施例1
(例示化合物1−1の合成)
シリカゲル63gを硝酸21gに分散させ、ジクロロメタン150mlを加えた。この分散物に、1,2,3−トリドデシロキシベンゼン10gをジクロロメタン30mlに溶解した溶液を加え、15分間攪拌した後、シリカゲルをろ過で除いた。ろ液を減圧濃縮した後、メタノール300mlを加えて攪拌し、析出物をろ取することにより3,4,5−トリドデシロキシニトロベンゼン6.94gを得た。
【0110】
更にこの3,4,5−トリドデシロキシニトロベンゼン5.05gをグラファイト存在下でヒドラジン一水和物3mlにエタノール10mlを加え、24時間加熱還流により還元した。クロロホルム−メタノールの混合溶液で再結晶することにより、3,4,5−トリドデシロキシアニリン3.56gを得た。
【0111】
得られた3,4,5−トリドデシロキシアニリン2.50gをDMF50mlに溶解した後、N,N′−チオカルボニルジイミダゾール0.3g加え、室温で1時間反応させることにより例示化合物1−1を2.0g得た。
【0112】
(有機圧電材料1〜7、超音波振動子1〜7の作製)
ポリスチレン(アルドリッチ社、質量平均分子量28万)を塩化メチレンに溶解し、ポリスチレンに対して70質量%の例示化合物1−1を塩化メチレンに溶解してポリスチレンと例示化合物を含有する塗布液を得た。乾燥後の膜厚が50μmになるように、基材としてガラスを用い、塗布乾燥を行い、例示化合物1−1とポリスチレンを含有する膜を得た。得られた膜を130℃、5MPaの条件でホットプレスを行い、厚み40μmの膜を作製した。
【0113】
次に、作製した膜の表面にアルミ電極を蒸着で取り付けた後、高圧電源装置HARB−20R60(松定プレシジョン(株)製)を用いて、100MV/mの電場を印加した状態で、120℃まで5℃/minの割合で上昇し、120℃で15分間保持した後で電圧は印加したままで室温まで徐冷し、分極処理を施し、有機圧電材料1に電極を有する超音波振動子1を作製した。超音波振動子1と同様にして、下記表に示す本発明の有機圧電体を含有する有機圧電材料2〜7を用いた超音波振動子2〜7を作製した。
【0114】
(有機圧電材料8〜11、超音波振動子8〜11の作製)
例示化合物1−17をDMFに溶解した後、ガラス基板上に乾燥膜厚が40μmになるように塗布乾燥を行った。
【0115】
次に、作製した膜を剥離し、膜の表面にアルミ電極を蒸着で取り付けた後、高圧電源装置HARB−20R60(松定プレシジョン(株)製)を用いて、100MV/mの電場を印加した状態で、120℃まで5℃/minの割合で上昇し、120℃で15分間保持した後で電圧は印加したままで室温まで徐冷し、分極処理を施し、有機圧電材料8に電極を有する超音波振動子8を作製した。
【0116】
超音波振動子8の作製と同様にして、下記表に示す本発明の有機圧電体を含有する有機圧電材料9〜11に電極を有する超音波振動子9〜11を作製した。
【0117】
(有機圧電材料12、13、14超音波振動子12、13、14の作製)
例示化合物1−51、2.0gを脱気したトルエン20mlに溶解し、窒素雰囲気下でα,α′−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNと称す)0.02gを添加した。反応液を60℃で12時間攪拌を行った後、反応液を濃縮後、塩化メチレンに溶解し、メタノールで再沈精製を行い、例示化合物1−51の重合体(1−78)を得た。得られた1−51の重合体を再び塩化メチレンに溶解し、ガラス基板上に乾燥膜厚が40μmになるように塗布乾燥を行った。
【0118】
次に、作製した膜を剥離し、膜の表面にアルミ電極を蒸着で取り付けた後、高圧電源装置HARB−20R60(松定プレシジョン(株)製)を用いて、100MV/mの電場を印加した状態で、120℃まで5℃/minの割合で上昇し、120℃で15分間保持した後で電圧は印加したままで室温まで徐冷し、分極処理を施し、有機圧電材料12に電極を有する超音波振動子12を作製した。
【0119】
超音波振動子12の作製と同様にして、下記表に示す本発明の有機圧電体を含有する有機圧電材料13、14に電極を有する超音波振動子13、14を作製した。
【0120】
(有機圧電材料15、超音波振動子15の作製)
例示化合物1−55を用いて合成した重合体(例示化合物1−79)を塩化メチレンに溶解した。また、1−79に対して30質量%の例示化合物1−1を塩化メチレンに溶解して、例示化合物1−79を含有する溶液と混合し、例示化合物1−1と1−79を含有する塗布液を得た。乾燥後の膜厚が40μmになるように塗布液をガラス基板上に塗布し、塗布乾燥を行い、例示化合物1−1と例示化合物1−79とを含有する膜を得た。
【0121】
次に、作製した膜の表面にアルミ電極を蒸着で取り付けた後、高圧電源装置HARB−20R60(松定プレシジョン(株)製)を用いて、100MV/mの電場を印加した状態で、120℃まで5℃/minの割合で上昇させ、120℃で15分間保持した後で電圧は印加したままで室温まで徐冷し、分極処理を施し、有機圧電材料15に電極を有する超音波振動子15を作製した。
【0122】
(有機圧電材料16〜21、超音波振動子16〜21の作製)
超音波振動子1の作製において、有機圧電体として下記表に記載のものを用いた他は、超音波振動子1と同様にして、超音波振動子16〜21を作製した。
【0123】
(比較例)
(有機圧電体材料比較1、超音波振動子比較1の作製)
上記超音波振動子1の作製において、有機圧電体1の変わりに、下記比較化合物1を用いた他は、超音波振動子1の作製と同様にして、有機圧電体材料比較1に電極を有する超音波振動子比較1を作製した。
【0124】
(有機圧電体材料比較2、超音波振動子比較2の作製)
下記比較化合物、22.0gを脱気したトルエン20mlに溶解し、窒素雰囲気下でAIBN0.02gを添加した。反応液を60℃で12時間攪拌を行った後、反応液を濃縮後、塩化メチレンに溶解し、メタノールで再沈精製を行い、比較化合物2の重合体を得た。得られた比較化合物2の重合体を再び塩化メチレンに溶解し、ガラス基板上に乾燥膜厚が40μmになるように塗布乾燥を行い、有機圧電体の膜を得た。
【0125】
次に、作製した膜を剥離し、膜の表面にアルミ電極を蒸着で取り付けた後、高圧電源装置HARB−20R60(松定プレシジョン(株)製)を用いて、100MV/mの電場を印加した状態で、120℃まで5℃/minの割合で上昇させ、120℃で15分間保持した後で電圧は印加したままで室温まで徐冷し、処理を施し、有機圧電体材料比較2に電極を有する超音波振動子比較2を作製した。(比較化合物2の重合物:Mw=67,000、Mw/Mn=1.8)
【0126】
【化13】

【0127】
(評価)
得られた上記超音波振動子1〜21、比較1、2を、共振法にて、25℃で、圧電定数e31を測定し圧電特性の指標とした。
【0128】
測定には、Rheolograph Solid(東洋精機社製)を用い、上記評価結果の超音波振動子比較1を100としたときの相対値にて表1に示した。
【0129】
また、100℃に加熱したオーブン中に24時間静置し、その後25℃に戻した状態での圧電定数e31(相対値)を求め、上記25℃での圧電定数e31(相対値)対する、低下した割合(低下率(%))を求め、熱安定性の指標とした(低下率が0に近いほど安定である)。
【0130】
【表1】

【0131】
表1に示した結果から明らかなように、本発明の有機圧電体を用いた有機圧電材料を有する超音波振動子は、圧電特性に優れ、耐熱性に優れることが分かる。
【0132】
実施例2
(超音波探触子の作製と評価)
〈送信用超音波振動子を構成する圧電材料の作製〉
成分原料であるCaCO、La、BiとTiO、および副成分原料であるMnOを準備し、成分原料については、成分の最終組成が(Ca0.97La0.03)Bi4.01Ti15となるように秤量した。
【0133】
次に、純水を添加し、純水中でジルコニア製メディアを入れたボールミルにて8時間混合し、十分に乾燥を行い、混合粉体を得た。得られた混合粉体を仮成形し、空気中800℃で2時間仮焼を行い、仮焼物を作製した。
【0134】
次に、得られた仮焼物に純水を添加し、純水中でジルコニア製メディアを入れたボールミルにて微粉砕を行い、乾燥することにより圧電セラミックス原料粉末を作製した。
【0135】
微粉砕においては、微粉砕を行う時間および粉砕条件を変えることにより、それぞれ粒子径100nmの圧電セラミックス原料粉末を得た。
【0136】
それぞれ粒子径の異なる各圧電セラミックス原料粉末にバインダーとして純水を6質量%添加し、プレス成形して、厚み100μmの板状仮成形体とし、この板状仮成形体を真空パックした後、235MPaの圧力でプレスにより成形した。
【0137】
次に上記の成形体を焼成した。最終焼結体の厚さは20μmの焼結体を得た。
【0138】
なお、焼成温度はそれぞれ1100℃であった。1.5×Ec(MV/m)以上の電界を1分間印加して分極処理を施し送信用圧電材料を作製した。
【0139】
〈受信用積層振動子の作製〉
前記実施例1において作製した超音波振動子1と厚さ50μmのポリエステルフィルムを、エポキシ系接着剤にて貼り合わせた受信用積層振動子を作製した。その後、上記と同様に分極処理をした。
【0140】
次に、常法に従って、上記の送信用圧電材料に電極を付した送信用超音波振動子に受信用積層振動子を積層し、且つバッキング層と音響整合層とを設置し、超音波探触子1を作製した。
【0141】
超音波探触子1の作製において、受信用超音波振動子の超音波振動子1の変わりに、超音波振動子2〜21、比較1、2を用いた他は超音波探触子1と同様にして、超音波探触子2〜21、比較1、2を作製した。
【0142】
(測定安定性の評価)
上記のように作製した超音波探触子を用い、25℃での受信感度および、50℃のオーブン中で連続で2時間作動させ25℃に戻した後の受信感度を測定し、受信感度の低下した割合を求め、測定安定性の指標とした。
【0143】
感度の低下が、連続作動前の1%以内のときを◎、1%を超え5%未満を○、5%以上を×として評価した。(実用的には、5%未満が良好なレベルである)
なお、受信感度については、5MHzの基本周波数fを発信させ、受信2次高調波fとして10MHz、3次高調波として15MHz、4次高調波として20MHzを用い受信相対感度を求めた。
【0144】
受信相対感度は、ソノーラメディカルシステム社(Sonora Medical System,Inc:2021Miller Drive Longmont,Colorado(0501 USA))の音響強度測定システムModel805(1〜50MHz)を使用した。
【0145】
結果を表1に示した。
【0146】
表1から、本発明の超音波振動子を具備する超音波探触子は、測定安定性に優れることが分かる。
【符号の説明】
【0147】
1 有機圧電材料
2 電極
5 送信用圧電材料
6 バッキング層
7 基板
8 音響整合層
9 音響レンズ
10 超音波振動子
11 受信用有機圧電材料
12 送信用超音波振動子
13 受信用超音波振動子
20 超音波探触子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物、または下記一般式(1)で表される化合物の残基をR1若しくはR2を介して側鎖に有する重合体であることを特徴とする有機圧電体。
一般式(1) R1−A1−(L1−A1)n−R2
(式中、A1は、−NHCSNH−、−NHCSO−または−NHCS−を表す。R1およびR2は、各々独立に無置換の芳香族基、アルキル基若しくはアルコキシ基で置換された芳香族基、またはアルキル基若しくはアルコキシ基で置換されたシクロアルキル基を表す。L1は2価の連結基を表し、nは0〜100の整数を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)のA1が、−NHCSNH−であることを特徴とする請求項1に記載の有機圧電体。
【請求項3】
前記一般式(1)のR1およびR2が、アルコキシ基を有する芳香族基であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機圧電体。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の有機圧電体を含有することを特徴とする有機圧電材料。
【請求項5】
前記有機圧電材料が、前記有機圧電体を含有する塗布液を基材上に塗布し、乾燥して得られた有機圧電体膜であることを特徴とする請求項4に記載の有機圧電材料。
【請求項6】
請求項4または5記載の有機圧電材料と、電極とを有することを特徴とする超音波振動子。
【請求項7】
前記超音波振動子が、受信用超音波振動子であることを特徴とする請求項6に記載の超音波振動子。
【請求項8】
請求項6または7に記載の超音波振動子を具備することを特徴とする超音波探触子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−165770(P2010−165770A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5557(P2009−5557)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】