説明

有機廃棄物の処理装置

【課題】 有機廃棄物の煮熟処理を、より十分に且つ迅速に行うことが出来る有機廃棄物の処理技術を提供する。
【解決手段】 有機廃棄物12が内部に収容される収容体14に、有機廃棄物12を撹拌するための撹拌手段82,90, 92,94, 98を設けると共に、高温高圧加熱蒸気を収容体内に供給する加熱蒸気供給手段68,70,72を設け、更に、かかる加熱蒸気供給手段68,70,72による収容体14内への高温高圧加熱蒸気の供給に先立って、収容体14内を減圧する減圧手段75c,78,80を設けて、減圧状態の収容体14内において、収容体14内に収容された有機廃棄物12を撹拌しつつ、高温高圧加熱蒸気に接触せしめて煮熟処理するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機廃棄物の処理装置及び処理方法に係り、特に、煮熟により有機廃棄物を処理する装置と方法の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
よく知られているように、農業、林業、畜産業、水産業、或いは食品加工業等から排出される産業廃棄物、更には各種の店舗や事業所、一般家庭等から出されるゴミ等には、例えば、野菜屑や糞尿、死魚、アラ、貝殻、食物残等の様々な有機質を含む廃棄物、所謂有機廃棄物が含まれている。
【0003】
これらの有機廃棄物は、従来から、一般に、焼却か、或いは微生物の生分解作用を利用した発酵、分解の何れかによって処理されているが、焼却処理では、有毒ガスやダイオキシン類等の有害物質の発生が問題となっている。一方、発酵、分解処理を行う場合、有機廃棄物の堆肥化や飼料化による有効利用が図られ得るものの、有機廃棄物を堆積して、完全に発酵させるのに多大な時間と労力とが必要となるばかりでなく、嫌気性菌によるメタンガスの発生等による悪臭に起因して環境問題が惹起される。なお、近年では、各種の発酵、分解装置が提案されて、労力負担の軽減が図られているが、そのような装置を用いても、有機廃棄物を完熟肥料とするには数十日以上の極めて長い処理期間が未だ必要とされているのが現状である。
【0004】
かかる状況下、撹拌設備が設けられた収容体を有する処理装置を用いて、この処理装置の収容体に有機廃棄物を収容せしめ、そして、それを撹拌しつつ、そこに高温高圧の飽和水蒸気、つまり高温高圧加熱蒸気を供給して、有機廃棄物を煮熟(蒸煮)処理する技術が、提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0005】
このような有機廃棄物の処理技術にあっては、有機廃棄物を焼却することなく、単に、煮熟するだけであるところから、処理過程で、焼却によって生ずる有毒ガスや有害物質等が、何等発生することがなく、また、発酵処理を行う場合に比して、十分に短い時間と少ない労力負担で処理を完了することが可能となる。しかも、高温・高圧条件下での処理であるために、殺菌、消毒効果があり、処理中における悪臭の発生が効果的に抑制され得るだけでなく、有機廃棄物中に含まれる有害な生物や微生物、更には種子、球根、根茎等が、処理中に完全に死滅せしめられ、更には、有機廃棄物中に含まれる各種の物質(主にタンパク質)の加水分解による低分子量化が促進される。そして、それによって、かかる処理後の有機廃棄物が、植物にとって吸収効率に優れ、その上、植物の生育に有用な微生物の繁殖し易いものとなって、上質な肥料や土壌改良剤として、極めて有利に使用され得ることとなり、また、消化吸収率の高い飼料としても、好適に用いられ得るのである。
【0006】
ところが、かくの如き従来の煮熟による有機廃棄物の処理技術について、本発明者等が種々検討を加えたところ、有機廃棄物が収容された収容体内に、高温高圧加熱蒸気を単に供給するだけの従来技術では、収容体内の温度を、かかる加熱蒸気の温度に対応した、目的とする温度にまで十分に上昇させることが出来ず、そのため、有機廃棄物の十分な煮熟処理を、より短時間に実施することが困難であることが、判明したのである。
【0007】
また、従来の処理技術に用いられる処理装置においては、有機廃棄物が収容される収容体が、その長さ方向の中央に向かうに従って次第に徐々に拡径される横長のドラム体にて構成されて、このドラム体の中心軸上に、撹拌羽根が一体形成された回転軸が設けられているため、収容体全体を有効的に利用しつつ、収容体内の有機廃棄物の全量を十分に撹拌することが難かしく、従って、有機廃棄物の効率的に且つ均一に煮熟処理することが困難であることも、判明した。
【0008】
すなわち、収容体内での有機廃棄物の有効な撹拌を実施するには、撹拌羽根による有機廃棄物の切り返しを十分に行わしめる上で、収容体内の上部に、有機廃棄物が存在しない切返し空間が設けられていることが望ましい。しかしながら、従来の処理装置では、上記の如く、収容体の中央部分が大径部とされている一方、その両側端部部分が小径部とされているところから、かかる小径部内で有機廃棄物を十分に撹拌させようとすると、大径部に過大な切返し空間が必然的に形成されることとなって、収容体全体を有効利用することが出来なくなってしまい、また、それを解消するために、収容体内に多くの有機廃棄物を収容せしめると、今度は、小径部内における切返し空間が過小となって、有機廃棄物の十分な撹拌が困難となってしまうのである。しかも、収容体の底面の中央部が、その両側端部よりも低い位置となるため、有機廃棄物が中央の大径部に集まって圧縮されるようになり、これによっても、有機廃棄物が、十分に撹拌され得なくなる恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−18689号公報
【特許文献2】特開2003−55078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、有機廃棄物の十分な煮熟処理を、より迅速に行うことが出来る有機廃棄物の処理装置と処理方法とを提供することにある。また、有機廃棄物の効率的且つ均一な煮熟処理が可能とされた有機廃棄物の処理装置の新規な構造を提供することをも、その解決課題とするところである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そして、本発明者等は、かかる課題の解決のために、従来における有機廃棄物の煮熟処理技術において、有機廃棄物が投入された収容体内の昇温が不十分となる原因について、様々な角度から種々検討を重ねた。そして、その過程で、有機廃棄物の内部に閉じこめられた空気が、収容体内の温度上昇の妨げとなっているとの予測を得た。そこで、かかる予測を基に更に鋭意研究を重ねた結果、有機廃棄物が投入された収容体内への高温高圧加熱蒸気の供給の前に収容体内を減圧することで、高温高圧加熱蒸気の供給により、有機廃棄物が投入された収容体内の温度を、高温高圧加熱蒸気の温度に対応した、目的とする温度にまで確実に上昇せしめ得ることを見出した。そして、このような知見に基づいて、本発明が完成に至ったのである。
【0012】
以下、本発明の態様を記載する。なお、以下の記載の態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体及び図面に記載されたもの、或いはそれらの記載から当業者が把握することが出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0013】
本発明の第一の態様は、(a)密閉可能な投入口と排出口とを備え、該投入口を通じて有機廃棄物が内部に投入されて収容されると共に、該排出口から処理後の該有機排気物が排出可能とされた収容体と、(b)前記収容体の前記投入口と前記排出口を閉鎖して該収容体内を密閉する密閉手段と、(c)前記収容体内に収容された前記有機廃棄物を撹拌する撹拌手段と、(d)高温高圧加熱蒸気を前記収容体内に供給する加熱蒸気供給手段と、(e)前記密閉手段によって密閉された前記収容体内を減圧する減圧手段と、(f)前記減圧手段により前記収容体内を減圧維持せしめ、かかる減圧状態下で前記加熱蒸気供給手段により高温高圧加熱蒸気を該収容体内に供給せしめると共に前記攪拌手段を作動させて前記有機廃棄物を該収容体内で煮熟処理する装置制御手段とを、有する有機廃棄物の処理装置を、特徴とする。
【0014】
すなわち、このような本態様においては、有機廃棄物が収容された収容体内への高温高圧加熱蒸気の供給に先立って、収容体内が減圧されるようになっているところから、収容体内の減圧後に、高温高圧加熱蒸気が収容体内に供給されることで、収容体内の温度が、目的とする温度にまで確実に上昇せしめられ得る。これは、収容体内の減圧によって、有機廃棄物中に閉じこめられた空気が、かかる有機廃棄物中、更には収容体内から効果的に排出され得ることによるものと考えられる。そして、そのように十分な高温高圧条件の下で、収容体内の有機廃棄物が、撹拌されつつ、十分に且つ確実に煮熟処理され得ることとなる。
【0015】
従って、本態様によれば、有機廃棄物の十分な煮熟処理が、より短時間に実施され得るのである。また、その結果として、煮熟処理された有機廃棄物からなる、植物の生育にとって極めて有用で且つ上質な肥料や土壌改良剤の生産効率の向上が、効果的に実現され得ることとなるのである。
【0016】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係る有機廃棄物の処理装置において、前記収容体が、水平方向に延びる円筒状の胴体部と、該円筒状胴体部の軸方向両側の開口部をそれぞれ閉塞する二つの底部とを一体的に有してなると共に、前記撹拌手段が、該収容体の円筒状胴体部内に、軸方向に延びるように位置せしめられて、該二つの底部のそれぞれに支持された回転軸と、該回転軸に対して、該回転軸と一体回転可能に設けられた撹拌羽根とを含んで構成されていることを、特徴とする。
【0017】
この本態様によれば、有機廃棄物を収容する収容体が、全長に亘って同一径とされるため、中央部が両側端部よりも大径化された収容体を有する従来装置とは異なって、収容体内への有機廃棄物の収容状態下において、収容体の上部に、その全長に亘って、同一大きさの切返し空間が設けられるようになり、それによって、収容体全体を有効的に利用しつつ、収容体内の有機廃棄物の全量を十分に撹拌することが出来る。そして、その結果として、有機廃棄物を、より効率的に且つ均一に煮熟処理することが可能となる。また、収容体の底面が、水平に延びるようになり、これによって、有機廃棄物が収容体内で部分的に偏って、撹拌が困難となるようなことも、有利に回避され得る。
【0018】
本発明の第三の態様は、前記第二の態様に係る有機廃棄物の処理装置において、前記投入口が、前記収容体の前記円筒状胴体部における軸方向一方側の端部に、上方に向かって開口し且つ蓋体にて密閉可能に設けられる一方、前記排出口が、該円筒状胴体部における軸方向他方側の端部に、下方に向かって開口し且つ蓋体にて密閉可能に設けられていることを、特徴とする。このような本態様に従えば、有機廃棄物の収容体内への投入と、収容体内からの排出とが、より容易に行われ得ることとなる。
【0019】
本発明の第四の態様は、前記第三の態様に係る有機廃棄物の処理装置において、前記収容体を、前記円筒状胴体部が水平に延びる位置と、該円筒状胴体部が前記投入口の側から前記排出口の側に向かって下傾する位置とに、任意に位置変更せしめ得る位置変更手段が、更に設けられていることを、特徴とする。
【0020】
このような本態様によれば、収容体内での有機廃棄物の撹拌処理時に、収容体を水平に位置させる一方、収容体内からの有機廃棄物の取出しに際して、収容体を、投入口側から排出口側に向かって下傾させるように為すことが出来る。従って、収容体内での有機廃棄物の十分且つ有効な撹拌を確保しつつ、かかる撹拌処理後における有機廃棄物の収容体内からの取出し操作を、更に一層スムーズに且つ速やかに行うことが可能となる。
【0021】
本発明の第五の態様は、前記第二乃至は第四のうちの何れか一つの態様に係る有機廃棄物の処理装置において、前記撹拌手段の前記回転軸が、前記収容体の前記円筒状胴体部内において、該円筒状胴体部の中心軸よりも下方に偏奇して位置せしめられていることを、特徴とする。
【0022】
この本態様に従えば、収容体の上部に形成される、有機廃棄物の存在しない、前記せる如き切返し空間内に、撹拌羽根の先端が、有機廃棄物から突出することで、かかる撹拌羽根による有機廃棄物の撹拌作用が低下するようなことが未然に防止され得、これによって、撹拌羽根による有機廃棄物の良好な撹拌効率が安定的に確保され得る。
【0023】
本発明の第六の態様は、前記第二乃至は第五のうちの何れか一つの態様に係る有機廃棄物の処理装置において、前記収容体の前記二つの底部のうちの少なくとも何れか一方における前記回転軸の支持部位を少なくとも含む部分が、該胴体部に対して取外し可能に取り付けられた回転軸支持体とされて、かかる回転軸支持体が、該胴体部から取り外されることにより、該回転軸が、該収容体内か離脱せしめられ得るようになっていることを、特徴とする。このような本態様に従えば、撹拌手段の回転軸、更にはかかる回転軸に設けられた撹拌羽根の交換が、容易となる。
【0024】
本発明の第七の態様は、前記第二乃至は第六のうちの何れか一つの態様に係る有機廃棄物の処理装置において、前記撹拌手段における前記撹拌羽根が、前記回転軸に対して着脱可能に設けられていることを、特徴とする。この本態様によれば、撹拌羽根の交換が容易となる。
【0025】
本発明の第八の態様は、前記第一乃至は第七のうちの何れか一つの態様に係る有機廃棄物の処理装置において、前記収容体に対して、該収容体内への人体の少なくとも一部の侵入を許容する透孔が、密閉可能に設けられていることを、特徴とする。この本態様によれば、作業者が、透孔を通じて、手や必要に応じて顔等を収容体の内部に侵入させて、収容体内部のメンテナンス作業、例えば、撹拌羽根の交換作業等を行うことが出来る。、
【0026】
本発明の第九の態様は、前記第一乃至は第八のうちの何れか一つの態様に係る有機廃棄物の処理装置において、前記収容体に、該収容体内に収容されて、前記高温高圧加熱蒸気との接触により煮熟処理された前記有機廃棄物を冷却するための冷却手段が、更に設けられていることを、特徴とする。このような本態様に従えば、高温高圧加熱蒸気によって高温とされた有機廃棄物が、煮熟処理後に速やかに冷却され得て、煮熟処理された有機廃棄物が、収容体内から速やかに且つ安全に取り出され得る。
【0027】
本発明の処理装置によれば、(a)密閉可能な収容体の内部に、有機廃棄物を収容する工程と、(b)前記有機廃棄物が収容されて、密閉状態とされた前記収容体内を減圧する工程と、(c)前記減圧状態の前記収容体内に収容された前記有機廃棄物を撹拌しつつ、該収容体内に高温高圧加熱蒸気を供給して、該有機廃棄物と該高温高圧加熱蒸気とを接触せしめることにより、該有機廃棄物を煮熟処理する工程とを含む有機廃棄物の処理方法の態様が、実施可能となる。
【0028】
このような本態様にあっては、有機廃棄物が収容された収容体内の温度が、高温高圧加熱蒸気の温度に対応した、目的とする温度にまで確実に上昇せしめられた条件の下で、有機廃棄物が撹拌されつつ、十分に煮熟処理されるようになる。
【0029】
従って、本態様によれば、有機廃棄物の十分な煮熟処理が、より速やかに且つ確実に実施され得、その結果として、煮熟処理された有機廃棄物からなる、植物の生育にとって極めて有用で且つ上質な肥料や土壌改良剤が、極めて効率的に生産され得ることとなる。
【0030】
また、このような処理方法の態様では、前記煮熟処理された前記有機廃棄物を前記収容体内から取り出し、その取り出しの際に触れる空気中の微生物を煮熟処理された該有機廃棄物に取り込ませて、該有機廃棄物を完全発酵処理する工程が、更に行われる態様が、実施可能である。
【0031】
このような本態様においては、有機廃棄物が、高温・高圧条件下での煮熟処理により殺菌、消毒されると共に、加水分解により低分子量化されて、微生物が繁殖し易いものとなった上で、微生物により発酵、分解処理されるところから、かかる有機廃棄物に着床して、それを発酵、分解する微生物が、他の有害な微生物等に阻害されることなく、活発に繁殖、活動せしめられ得るようになり、それによって、煮熟処理された有機廃棄物が、極めて迅速に堆肥化され得ることとなる。そして、その結果として、植物の吸収効率において、より優れた特性を発揮する完熟堆肥が、極めて短期間に確実に生産され得るのである。
【0032】
更にまた、上述の如き処理方法の態様では、前記煮熟処理された前記有機廃棄物を前記収容体内から取り出す前に、該有機廃棄物を冷却する工程が、更に行われる態様も、実施可能である。このような本態様に従えば、煮熟処理時に、高温高圧加熱蒸気によって高温とされた有機廃棄物が、収容体内から速やかに且つ安全に取り出され得る。
【発明の効果】
【0033】
上述の説明からも明らかなように、本発明に従う構造とされた有機廃棄物の処理装置においては、有機廃棄物が収容された収容体の減圧後に、高温高圧加熱蒸気が収容体内に供給されることから、十分な高温高圧条件の下で、収容体内の有機廃棄物が、撹拌されつつ、十分に且つ確実に煮熟処理され得る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に従う有機廃棄物の処理装置の一実施形態を示す、一部切欠図を含む正面説明図である。
【図2】図1に示された処理装置の左側面説明図である。
【図3】図1のIII −III 断面における部分拡大説明図である。
【図4】図1に示された処理装置の使用状態を説明するための図であって、収容体内に収容された有機廃棄物を取り出すために、収容体を傾動させた状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0036】
先ず、図1及び図2には、本発明に従う構造を有する有機廃棄物の処理装置の一実施形態が、その正面形態と側面形態とにおいて、それぞれ概略的に示されている。それらの図から明らかなように、本実施形態の処理装置は、基台10と、この基台10に支持されて、内部に有機廃棄物12(図1に二点鎖線で示す)を収容する収容体14とを、有している。
【0037】
より具体的には、基台10は、水平に配置されて、接地された固定フレーム16と、この固定フレーム16上に傾動可能に配置された傾動フレーム18とを、更に有して、構成されている。また、固定フレーム16は、長手矩形状をもって水平に延びる支持枠部20と、この支持枠部20の4個の角部の下面にそれぞれ立設された4個の脚部21とからなっている。更に、かかる固定フレーム16の支持枠部20には、油圧ユニット22が、取付フレーム23を介して取り付けられている。
【0038】
一方、傾動フレーム18は、固定フレーム16の支持枠部20よりも更に長手の矩形状をもって、上下に所定距離を隔てて位置せしめられた状態で、水平に延びる上側支持枠部24と下側支持枠部26と、それらの間に上下方向に延びるように位置せしめられて、それら上側及び下側支持枠部24,26を互いに連結する複数(ここでは6個)の連結支柱部28とからなっている。
【0039】
そして、下側支持枠部26が、長手方向(図1中、左右方向)の一端部側において、固定フレーム16の支持枠部20に載置される一方、他端部において、その下面に設けられた回動機構30を介して、接地されて、傾動フレーム18の全体が、水平に位置せしめられるようになっている。なお、この回動機構30は、下側支持枠部26の長手方向に水平に延びる回動軸32と、かかる回動軸を支持する支持部34と、下側支持枠部26の下面に固着されて、回動軸32に対して回動可能に連結された連結部36とを有している。
【0040】
また、そのような傾動フレーム18の下側支持枠部26における固定フレーム16への載置側の端部に対応する上側支持枠部24の端部と、固定フレーム16の支持枠部20との間には、固定フレーム16に設けられた前記油圧ユニット22によって突出/引込み作動せしめられる油圧シリンダ機構38が、上下方向に延びるように配置されている。そして、この油圧シリンダ機構38は、そのシリンダの下端部が、固定フレームの支持枠部20に対して、その幅方向に水平に延びる回動軸回りに回動可能に取り付けられると共に、シリンダから上方に向かって延び出したピストンロッドの先端部が、傾動フレーム18の上側支持枠部24に固定されている。
【0041】
これにより、傾動フレーム18が、油圧シリンダ機構38の引込状態とされた非作動時には、水平状態が維持される一方、油圧ユニット22による油圧シリンダ機構38の突出作動に伴って、傾動フレーム18の油圧シリンダ機構38側(図1中の左側)が上方に押し上げられる。これにより、傾動フレーム18が、回動機構30の回動軸32回りに回動せしめられて、油圧シリンダ機構38の取付側の端部(図1中、左側端部)から、回動機構30の設置側の端部(図1中、右側端部)に向かって下傾するように傾動せしめられるようになっている(図4参照)。また、そのような状態からの油圧シリンダ機構38の引込み作動により、傾動フレーム18が、傾動前の水平状態に復帰せしめられるようになっている。
【0042】
一方、収容体14は、耐熱製の鋼板を用いて製作された、全体として、横長のタンク形態を呈しており、同一径をもって延びる円筒状の胴体部40と、かかる円筒状の胴体部40における軸方向(図1における左右方向であって、以下からは左右方向と言う)両側の開口部をそれぞれ閉塞する左側及び右側の二つの底部42a,42bとを有している。
【0043】
そして、かかる収容体14にあっては、基台10における傾動フレーム18上に、それと平行に(水平に)位置せしめられて、胴体部40の下部外面に一体形成された二つの脚部41,41により、傾動フレーム18の上側支持枠部24に固定されている。かくして、この収容体14も、油圧シリンダ機構38の引込状態とされた非作動時には、水平状態が維持される一方、油圧シリンダ機構38の突出作動による傾動フレーム18の傾動に伴って、左側底部42aの側から右側底部42bの側に向かって下傾するように、傾動せしめられるようになっている(図4参照)。そして、そのような状態からの油圧シリンダ機構38の引込み作動による傾動フレーム18の水平状態への復帰に伴って、傾動前の水平状態に復帰せしめられるようになっている。
【0044】
そして、このような収容体14は、二つの底部42a,42bのうちの左側底部42aが、胴体部40と一体に形成されているものの、右側底部42bは、胴体部40とは別体とされて、胴体部40に対して着脱可能に取り付けられている。
【0045】
すなわち、ここでは、左側底部42aが一体化された胴体部40の右側開口部の外周縁部に対して、円環板状の外フランジ部43が一体的に周設されている。また、かかる胴体部40とは別体とされた右側底部42bは、浅底の碗形形態を呈しており、この右側底部42bの開口部の外周縁部にも、胴体部40に一体形成される外フランジ部43と同様な円環板状の外フランジ部44が、一体的に周設されている。
【0046】
そして、このような右側底部42bの開口端面及び外フランジ部44と胴体部40の開口端面及び外フランジ部43とが互いに突き合わされることにより、胴体部40の右側開口部が右側底部42bにて覆蓋されている。また、そのような状態下において、外フランジ部44,43同士が互いにボルト固定されることで、右側底部42bが胴体部40に対して取り付けられ、且つかかる取付状態が、高圧条件下で良好に維持され得るようになっている。そしてまた、かかる右側底部42bの胴体部40への取付状態から、外フランジ部44.43同士のボルト固定が解消されることにより、右側底部42bが、胴体部40から容易に取り外され得るようになっているのである。
【0047】
なお、ここでは、外フランジ部44,43の互いの突合せ面同士の間に、図示しない耐熱性のシール部材が介在せしめられており、それによって、右側底部42bの胴体部40への取付状態でのそれら右側底部42bと胴体部40との取付部位における液密性及び気密性が確保されるように構成されている。
【0048】
また、かくの如き構造とされた収容体14の胴体部40においては、左側底部42a側の端部の上部部位に、上方に向かって開口する投入口45が設けられている一方、右側底部42b側の端部の下部部位には、下方に向かって開口する排出口46が設けられている。換言すれば、前記せる如き油圧シリンダ機構38の突出作動による傾動フレーム18の傾動に伴って、収容体14が傾動せしめられた際に、上側に位置せしめられる胴体部40の端部側に、投入口45が設けられており、また、その際に下側に位置せしめられる胴体部40の端部側に、排出口46が設けられている。つまり、油圧シリンダ機構38と傾動フレーム18とによって、収容体14が、水平に延びる位置と、胴体部40が投入口45の側から排出口46の側に向かって下傾する位置とに、任意に位置変更せしめられ得るようになっている。このことから明らかなように、ここでは、油圧シリンダ機構38と傾動フレーム18とにて位置変更手段が構成されているのである。
【0049】
そして、かかる投入口45には、上方に向かって所定高さ延びる投入ダクト48が接続されている。この投入ダクト48においては、その先端に、処理されるべき有機廃棄物12が貯留されるホッパ50が設けられており、また、延出方向の中間部には、投入口45を流体密に閉鎖可能な公知のボールバルブ52が設けられている。一方、排出口46には、下方に向かって所定高さ延びる排出ダクト54が接続されており、この排出ダクト54の延出方向の中間部にも、排出口46を流体密に閉鎖可能な公知のボールバルブ56が設けられている。なお、それら投入ダクト48や排出ダクト54に設けられたボールバルブ52,56は、それらにそれぞれ設けられた回転ハンドル58,60にて、容易に開閉せしめられるようになっている。
【0050】
これによって、ここでは、排出ダクト54のボールバルブ56の閉作動状態下で、投入ダクト48のボールバルブ52が、回転ハンドル58にて開作動せしめられることにより、ホッパ50内に貯留された有機廃棄物12が、投入ダクト48と投入口45を通じて、収容体14内に投入され、収容されるようになっている。また、そのような収容体14内への有機廃棄物12の収容状態下で、排出ダクト54のボールバルブ56が、回転ハンドル60にて開作動せしめられることによって、収容体14内の有機廃棄物12が、排出口46と排出ダクト54とを通じて、収容体14の外部に排出され得るようになっている。そして、その際に、傾動フレーム18が傾動せしめられて、収容体14が投入口45側から排出口46側に向かって下傾するように傾動せしめられることで、収容体14内の有機廃棄物の排出が更に容易となるように構成されている。更にまた、有機廃棄物12が収容されて、投入ダクト48と排出ダクト54の各ボールバルブ52,56が閉作動せしめられた状態下では、かかる収容体14の内部空間が流体密に密閉されて、内圧の増減に対しても十分に耐え得るようになっている。このことから明らかなように、ここでは、投入ダクト48と排出ダクト54にそれぞれ取り付けられた各ボールバルブ52,56にて、投入口45と排出口46とを密閉する蓋体が構成されている。
【0051】
また、かかる収容体14の胴体部40の軸方向の中間部分には、それを貫通する、透孔としてのマンホール62が、設けられている。このマンホール62は、人の上半身が通過可能な大きさの円形形状を有している。そして、胴体部40の外周面におけるマンホール62の開口周縁部には、かかるマンホール62を取り囲む筒部64が、側方に延びるように一体形成されており、また、この筒部64の先端開口部を開閉可能に覆蓋するハッチ66が取り付けられている。
【0052】
これにより、ハッチ66の開閉操作によって、マンホール62が任意に開閉せしめられるようになっており、特に、かかるハッチ66の開放時に、作業者等が、マンホール62を通じて、上半身を収容体14内に侵入せしめて、収容体14内での作業が可能とされている。なお、このハッチ66は、筒部64の先端開口部を覆蓋した状態下で、耐熱性のシール部材(図示せず)を介して、筒部64の開口端面と密接せしめられるようになっており、以て、ハッチ66の閉鎖により、マンホール62が、流体密に密閉され得るように構成されている。また、ハッチ66は、閉鎖状態において、筒部64の開口端面に対してボルト固定されるようになっており、これによって、ハッチ66の閉鎖状態が、収容体14の内圧の増減に対して、確実に維持され得るようになっている。
【0053】
そして、本実施形態においては、特に、蒸気噴射パイプ68が、収容体14の右側底部42bの上部部位に対して、かかる部位を貫通して、取り付けられている。即ち、この蒸気噴射パイプ68は、比較的に短い長さと細い径とを有する円筒管からなり、長さ方向の一端部を収容体14の内部に突入させて、かかる一端部側の開口部を収容体14内において開口せしめる一方、他端部側の開口部を外部に開口させた状態で、位置せしめられている。そして、この蒸気噴射パイプ68の外部への開口側端部に対して、高温高圧の加熱蒸気を発生するボイラ等の蒸気発生装置70が、蒸気流通管路72を介して、接続されている。
【0054】
かくして、蒸気発生装置70で発生せしめられた高温高圧加熱蒸気が、蒸気流通管路72を通じて、蒸気噴射パイプ68に導かれて、この蒸気噴射パイプ68の収容体14内への開口部から、収容体14内に噴射せしめられて、供給されるようになっている。そして、それによって、収容体14内が、高温高圧状態とされるようになっており、また、収容体14内に収容される有機廃棄物12に対して高温高圧加熱蒸気が接触せしめられて、かかる有機廃棄物12が、煮熟(蒸熟)されるようになっている。このことから明らかなように、本実施形態では、蒸気噴射パイプ68と蒸気流通管路72と蒸気発生装置70とにて、加熱蒸気供給手段が構成されている。また、図示されてはいないが、胴体部40には、公知の圧力計と温度計が装着されている。そして、これらの圧力計と温度計により、収容体14の内部の圧力と温度を検出するようになっている。
【0055】
なお、ここでは、かかる収容体14における胴体部40の上部部位に、3本の独立した通気管75a,75b,75cが設けられている。これら3本の通気管75a,75b,75cの内側端部は、何れも、収容体14の内部に開口して連通せしめられている。また、一つの通気管75aの外側開口部には、排気弁77が装着されている。別の通気管75bの外側開口部には、安全弁74が装着されている。更に別の通気管75cの外側開口部には、開閉弁76が装着されている。なお、図面上では、通気管75a,75bが、何れも、安全弁74又は排気弁77を介して、直接に大気中に開口せしめられているが、その開口部には、消音器や消臭器などが装着される。
【0056】
安全弁74は、常時は閉じているが、収容体14の内圧が異常に高圧となった場合には、図示しない圧力センサによる異常信号を受けて安全弁74が開作動することで、収容体14の異常圧力を逃がして安全を確保するようになっている。また、排気弁77は、後述する煮熟処理の進行に伴って開閉操作されるようになっており、排気弁77を閉じた状態で収容体14の内部空間を大気中から遮断して、減圧状態や高圧状態に維持し得る一方、排気弁77を開くことで、収容体14の内部圧力を大気中に逃がして大気圧に復帰させることが出来るようになっている。
【0057】
また、通気管75cには、開閉弁76を介して、吸気管路80が接続されており、この吸気管路80によって、公知の構造を有する真空ポンプ等の減圧ポンプ78が接続されている。これにより、開閉弁76を開いた状態下では、減圧ポンプ78の作動に応じて、収容体14内の空気が、通気管75cと吸気管路80を通じて外部に排出されて、収容体14の内圧が減少せしめられ得るようになっている。このことから明らかなように、本実施形態では、通気管75cと吸気管路80と減圧ポンプ78とを含んで、減圧手段が構成されている。なお、ここでは、減圧ポンプ78の作動による減圧の大きさを、減圧ポンプ78の出力を調節することによって行うことが出来るようになっている。かかる出力調節は、手動で行っても良いが、収容体14内の圧力の検出値に基づいて、予め設定した目標減圧値となるように自動制御するようになっている。また、目標減圧値に達したら、減圧ポンプ78を停止させると共に、開閉弁76を閉じることにより、減圧ポンプ78を収容体14内から遮断する。これにより、その後に高温高圧蒸気を収容体14内に導入するに際して、減圧ポンプ78へのリークを防止する。なお、蒸気発生装置70を収容体14内に接続する管路(蒸気流通管路72や蒸気噴射パイプ68)上にも、必要に応じて開閉弁が装着されて、減圧ポンプ78の作動で収容体14内を減圧する際、この開閉弁を閉じることにより、減圧時において蒸気発生装置70から収容体14内に圧力が入ることを完全に防止し、或いは効率的に減圧出来るようにされる。
【0058】
一方、このような収容体14の内部には、回転軸82が、配置されている。この回転軸82は、収容体14の軸方向で実質的に全長に亘って配設されている。そして、かかる回転軸82が、収容体14の中心軸から下方に所定寸法偏奇した位置において、収容体14内を軸方向に横切って、水平に延出せしめられ、収容体14の左側底部42aと右側底部42bとをそれぞれ貫通して、両側端部をそれぞれ外部に突出させた状態で、それら左側及び右側底部42a,42bに対して各々軸支されている。
【0059】
すなわち、ここでは、左側及び右側底部42a,42bのそれぞれにおける中心よりも下方に所定寸法偏奇した位置に、貫通孔84が設けられている。そして、それら各貫通孔84には、耐熱性のパッキンブッシュ86が挿通固定されている。また、各底部42a,42bの外面には、支持フレーム88が、パッキンブッシュ86を取り囲むようにして、固設されている。そして、回転軸82の各端部が、各パッキンブッシュ86の内孔を摺動可能に挿通せしめられて、各支持フレーム88に対して、ベアリングを介して支持されている。これによって、各底部42a,42bにおける回転軸82の挿通部位における気密性及び液密性と耐圧力性とが十分に確保された状態で、回転軸82が、左側及び右側底部42a,42bに対して回転可能に支持されているのである。
【0060】
また、このように、本実施形態では、回転軸82の一端部が、収容体14の胴体部40に対して着脱可能に取り付けられた右側底部42bに支持されているところから、かかる回転軸82の支持状態で、右側底部42bを胴体部40から取り外すことによって、回転軸82が、右側底部42bと共に、収容体14内から離脱せしめられ得るようになっている。このことから明らかなように、ここでは、右側底部42bにて、回転軸支持体が構成されている。
【0061】
そして、かくして収容体14の左側及び右側底部42a,42bに支持された状態で、それらを貫通して外方に突出せしめられた回転軸82の両端部の先端部位には、平歯車85,85が、それぞれ取り付けられている。また、それら各平歯車85,85は、収容体14の側方において、それと平行に延びるように配置されて、基台10の傾動フレーム18に回転可能に支持された連動回転シャフト87の両端に取り付けられる連動歯車89,89に、それぞれ噛合せしめられている。更に、左側底部42aから外方に突出せしめられた回転軸82の端部の末端には、スプロケット90が取り付けられている。そして、このスプロケット90は、基台10の傾動フレーム18に固定された駆動モータ92の回転軸に対して、チェーン94を介して連結されている。
【0062】
これによって、駆動モータ92の回転駆動に伴って、回転軸82が回転せしめられるようになっている。また、かかる回転軸82の回転時には、その両端の平歯車85,85とそれに噛合する連動歯車89,89とそれが取り付けられる連動回転シャフト87の回転によって、回転軸82が、その両端側から十分な回転トルクが作用せしめられるようになっている。これにより、大きなねじり応力を抑えつつ回転駆動力を回転軸82に伝達せしめ得るようになっている。
【0063】
一方、かかる回転軸82における収容体14内に配置された軸方向中間部分の外周面には、所定長さを有する平板状の取付プレート96の複数が、周方向に互いに90°の位相差を有し且つ軸方向に一定の距離を隔てた位置に、それぞれ径方向外方に突出するようにして、一体的に立設されている。そして、それら各取付プレート96の先端部には、撹拌羽根98が、それぞれ一つずつ、取り付けられている。この撹拌羽根98は、何れも、略三日月状の平板からなり、回転軸82回りの一方向に湾曲して延び出し、且つ回転軸82の軸方向一方側に僅かに捻られて位置せしめられた状態で、長さ方向の一端部において、各取付プレート96の先端部にボルト固定されている。また、各取付プレート96の長さ方向の中間部には、撹拌羽根98を補助する薄肉平板状のフィン99が、各取付プレート96の一方の面に対して、それと板厚方向が直交するように、一体的に立設されている。
【0064】
これによって、各撹拌羽根98が、回転軸82から容易に取外し可能に取り付けられて、前記駆動モータ92の回転駆動に伴って、回転軸82と共に一体回転せしめられるようになっている。そして、後述する如く、収容体14内に有機廃棄物12が収容された状態下で、各フィン99と共に、回転軸82と一体回転せしめられることにより、かかる有機廃棄物12を効率的に且つ確実に撹拌せしめ得るようになっている。このことから明らかなように、ここでは、回転軸82、複数の撹拌羽根98、スプロケット90、チェーン94、及び駆動モータ92にて、撹拌手段が構成されている。
【0065】
而して、かくの如き構造とされた本実施形態の処理装置を用いて、有機廃棄物を処理する際には、例えば、その作業が、以下の如き手順に従って進められることとなる。
【0066】
すなわち、先ず、処理されるべき有機廃棄物12を準備するのであるが、ここでは、例えば、農業、林業、畜産業、水産業、或いは食品加工業等の各種事業を行う工場などから排出される産業廃棄物中や、各種の店舗や事業所、一般家庭等から出されるゴミ等に含まれる、籾殻、わら、い草、木屑、大鋸屑、家畜糞尿、死魚、アラ、貝殻、紙屑、野菜屑、食品廃棄物や、更には廃水等から出る有機性汚泥等が、処理されるべき有機廃棄物12として準備される。
【0067】
そして、有機廃棄物12を準備したら、収容体14を水平に位置せしめた状態で、駆動モータ92の回転駆動により、回転軸82と複数の撹拌羽根98とを一体回転させると共に、投入ダクト48のボールバルブ52の開作動により、投入口45を開放せしめる。このとき、排出ダクト54のボールバルブ56は閉作動のままとして、排出口46を閉鎖しておく。
【0068】
次いで、準備された有機廃棄物12をホッパ50内に投入し、かかるホッパ50から投入口45を通じて、有機廃棄物12を収容体14内に更に投入する。このとき、複数の撹拌羽根98と複数のフィン99の回転によって、収容体14内に投入された有機廃棄物12が、収容体14内を、投入口45側から、それとは反対側に向かって徐々に移動せしめられる。そうして、有機廃棄物12を、収容体14内に、所望の量だけ投入して、収容せしめる。
【0069】
なお、この収容体14内への有機廃棄物12の投入量は、収容体14の容積に応じて適宜に決定されるところではあるが、好ましくは、図1に二点鎖線で示されるように、有機廃棄物12の全量が収容体14内に投入された状態において、各撹拌羽根98が、有機廃棄物12の表面(上面)から突出せしめられることがなく、しかも、かかる有機廃棄物12の表面と収容体14の胴体部40の内面との間に、各撹拌羽根98の回転によって撹拌される有機廃棄物12の切り返しを行なわしめるための切返し空間100が、収容体14の全長に亘って、略同一で且つ十分な大きさをもって形成され得るような量とされていることが、望ましい。
【0070】
そして、有機廃棄物12を収容体14内に所定の量だけ投入したら、投入ダクト48のボールバルブ52を閉作動せしめて、投入口45を閉鎖する。これによって、収容体14内を外部から完全に密閉する。その後、減圧ポンプ78を作動せしめて、開閉弁76を通じて、収容体14内の空気、更には収容体14内に収容された有機廃棄物12内部の空気を吸引して、収容体14内を減圧する。
【0071】
なお、この減圧操作は、収容体14の胴体部40に設置された圧力計による測定値が、好ましくは40〜80Torr、より好ましくは50〜70Torr程度の範囲内の値、更に好ましくは60Torr程度となるまで継続される。そして、収容体14内の圧力が、そのような範囲内の値となったら、その減圧状態が維持される。また、かかる減圧操作中においては、駆動モータ92の駆動による回転軸82と各撹拌羽根98の回転は、必要に応じて停止させても良い。
【0072】
次に、収容体14内を所望の圧力にまで減圧せしめた後、駆動モータ92が継続的に駆動している場合はそのままとし、またそれが停止していたら、再び駆動せしめることにより、回転軸82と共に一体回転せしめられる各撹拌羽根98、更には各フィン99にて、収容体14内の有機廃棄物12を撹拌する。そして、そのような有機廃棄物12の撹拌状態下で、蒸気発生装置70にて発生せしめられる高温高圧の加熱蒸気を、蒸気流通管路72にて収容体14側に導いて、蒸気噴射パイプ68から収容体14内に噴射せしめて、収容体14内を高温で且つ高圧の状態と為すと共に、かかる高温高圧加熱蒸気を撹拌せしめられる有機廃棄物12に接触させる。これによって、収容体14内の有機廃棄物12に対する煮熟処理を行う。
【0073】
なお、かかる有機廃棄物12に対する煮熟処理の実施に際しては、蒸気噴射パイプ68から収容体14内に噴射せしめる高温高圧加熱蒸気の温度が、例えば、好ましくは150〜250℃程度、より好ましくは180〜220℃程度とされる。また、この高温高圧加熱蒸気の噴射によって、収容体14内の圧力が、好ましくは10〜30kgf/cm2 程度、より好ましくは15〜25kgf/cm2 程度、更に好ましくは18〜22kgf/cm2 程度の範囲内の値となるようにされる。更に、このような煮熟処理中に、収容体14内の圧力が必要以上に上昇した場合には、圧力センサの検出値に基づいて自動制御されて安全弁74から加熱蒸気を放出させることにより、収容体14内の圧力が、上記の範囲内の値に維持されるように調節される。この際、安全弁74の大気開放側には、消音器や消臭器が装着されていることから、環境問題が回避されると共に作業の安全性も確保される。
【0074】
そして、このような有機廃棄物12の煮熟処理は、それに先立って行われた収容体14内の減圧操作によって、有機廃棄物12中に閉じ込められた空気が、有機廃棄物12中、更には収容体14内から排出された状態で実施されるため、例えば、かかる減圧操作を行わずに、高温高圧加熱蒸気を収容体14内に噴射させる場合と比べて、収容体14内の温度が、かかる高温高圧加熱蒸気にて効率的に高められる。それによって、有機廃棄物12の煮熟処理が、更に十分に且つ確実に行われ得るようになる。
【0075】
また、ここでは、有機廃棄物12の収容体14内への投入量が適量とされていることに加えて、回転軸82が、収容体14における円筒状の胴体部40の中心よりも下方に偏寄して位置せしめられている。そのため、回転軸82と一体回転せしめられる複数の撹拌羽根98が、有機廃棄物12の表面から突出せしめられることがなく、しかも、収容体14内の上部に、各撹拌羽根98の回転によって撹拌される有機廃棄物12の切り返しを行なわしめるための切返し空間100が、全長に亘って同一で且つ十分な大きさをもって形成されるようになっている。
【0076】
従って、本操作で行われる有機廃棄物12の煮熟処理では、収容体14の全体を有効的に利用しつつ、収容体14内の有機廃棄物12の全量が、回転する複数の撹拌羽根98にて十分に撹拌され得るようになる。また、収容体14が水平に位置せしめられていることで、収容体14の底面となる円筒状の胴体部40の内周面も水平に延びるように配置され、それによって、収容体14内の有機廃棄物12が、複数の撹拌羽根98による撹拌に伴って、収容体14内で部分的に偏るようなことが解消され、以て、それが原因で撹拌が困難となるようなこともない。更に、この有機廃棄物12の煮熟処理は有機廃棄物12を何等焼却するものではないため、かかる処理中に、有毒ガスや、ダイオキシン等の有害物質が発生することがなく、しかも、高温・高圧条件下での処理であって微生物による分解作用を必要としないことから、腐敗菌による悪臭などが発生することもない。
【0077】
そして、この煮熟処理は、一般に30〜60分程度、多くの場合40〜50分程度の間、継続して行われ、かかる時間が経過した時点で、終了せしめられる。なお、煮熟処理時間は、処理対象物の状態や処理温度,湿度等の各種条件によって適宜に調節されるものであり、特に限定されることはない。また、連続して継続的に行う他、断続的乃至は間欠的に処理を実施しても良い。
【0078】
次に、そうして煮熟処理が終了したら、高温高圧加熱蒸気の全量を排気弁77から外部に放出させて、収容体14内を大気圧にまで復帰させる。また、その一方で、必要に応じて、所定時間の間、放置して、収容体14と、その内部に収容されて煮熟処理された有機廃棄物12を冷却する。この冷却操作の間にあっても、好ましくは、撹拌羽根98の回転による有機廃棄物12の撹拌操作が継続される。
【0079】
その後、図4に示されるように、油圧シリンダ機構38を突出作動させて、傾動フレーム18を傾動操作することにより、収容体14を、投入口45側から排出口46側に向かって下傾するように傾動位置せしめる。そして、それに引き続いて、撹拌羽根98を回転させたままの状態で、排出ダクトの54のボールバルブ56を開作動させる。これにより、煮熟処理された有機廃棄物12を、排出口46から外部に排出する。このとき、収容体14が下傾せしめられていることで、有機廃棄物12の排出口46からの排出が、よりスムーズに行われ得る。また、撹拌羽根98を回転させたままにしておけば、収容体14内の有機廃棄物12が、排出口46側に向かって、落差による重力作用により徐々に移動せしめられ、それに伴って、有機廃棄物12が、排出口46から、より容易に取り出され得るようになる。なお、このような有機廃棄物12の取出作動に際しても、好ましくは、撹拌羽根98の回転による有機廃棄物12の撹拌操作が継続される。収容体14を傾斜させた状態下で撹拌羽根98を回させることにより、有機廃棄物12を重力を利用して一層効率的に排出させることが可能となる。
【0080】
かくして、煮熟処理された有機廃棄物12の所定量が確実に得られることとなるのである。そして、このようにして得られた煮熟処理済みの有機廃棄物12は、高温・高圧条件の下で処理されているため、無菌で、しかも種子、球根、根茎等が、処理中に完全に死滅せしめられ、更には、有機廃棄物12に含まれる各種の物質、特にタンパク質が加水分解されて、低分子量化されている。そのため、この煮熟処理済みの有機廃棄物12は、そのまま、上質な肥料や土壌改良剤として、極めて有利に使用され得ることとなり、また、消化吸収率の高い飼料としても、好適に用いられ得るのである。
【0081】
また、このような煮熟処理された有機廃棄物12は、収容体14からの排出時に自ずと触れる大気中に存在する微生物を取り込むこととなり、この大気中の微生物の作用により発酵、分解処理されることとなる。即ち、煮熟処理された有機廃棄物12を、数日間に亘って適当な箇所に堆積させるだけで(必要に応じて切り返しを行っても良い)、空気中から取り入れた微生物の作用で完熟堆肥と為し得るのである。この発酵、分解処理は、大気中に晒して、数日間放置することによって完成されることとなり、他の菌等を投入混合する必要がない。尤も、他の適当な菌等を必要に応じて追加投入等することが、本発明の権利範囲外となるものではない。
【0082】
このような有機廃棄物12の発酵、分解処理では、有機廃棄物12が、煮熟処理によって既に無菌化されているため、酵母菌等の所定の発酵菌が有機廃棄物12に着床すると、その活動を阻害する有害な菌や微生物に邪魔されることなく、一気に繁殖せしめられるようなる。そのため、かかる有機廃棄物12の発酵、分解処理は、例えば、好ましくは数日〜数週間、より好ましくは6〜10日間程度行うだけで良く、そのような短期間で、優れた完熟堆肥が極めて有利に得られるようになるのである。
【0083】
このように、本実施形態においては、有機廃棄物12が収容された状態において、収容体14内を減圧せしめてから、収容体14内に、高温高圧加熱蒸気を噴射させて、有機廃棄物12の煮熟処理が行われるようになっているところから、有機廃棄物12の十分な煮熟処理が、より短時間に実施され得、それによって、上質な肥料や土壌改良剤、或いは吸収効率に優れた飼料等が、生産され得る。
【0084】
従って、かかる本実施形態によれば、煮熟処理された有機廃棄物12からなる、植物の生育にとって極めて有用で且つ上質な肥料や土壌改良剤、更には優れた飼料の生産効率の向上が、効果的に実現され得ることとなるのである。
【0085】
また、かかる本実施形態では、有機廃棄物12の煮熟処理に際して、有機廃棄物12に対する撹拌操作が、収容体14の内部の全体を有効に利用しつつ、極めて確実に且つ効率的に実施され得るようになっており、これによって、有機廃棄物12の煮熟処理が、より均一に且つ更に効率的に行われ得、以て、更に一層上質な肥料や土壌改良剤、優れた飼料の効率的な生産が、より確実に達成され得るのである。
【0086】
さらに、本実施形態においては、煮熟処理された有機廃棄物12に対して、発酵、分解処理を更に行うことで、優れた完熟堆肥が、極めて短い期間で、容易にしかも確実に得られる。従って、優れた完熟堆肥の生産性も、効果的に高められ得るのである。
【0087】
また、本実施形態においては、収容体14内に収容された有機廃棄物12を撹拌する複数の撹拌羽根98が、回転軸82に対して着脱可能に取り付けられていると共に、かかる回転軸82が、収容体14の右側底部42aの取外しによって、かかる右側底部42aと共に、収容体14内から容易に取り出され得るようになっており、その上、収容体14に、作業者が上半身を通過させて、収容体14内での作業を可能と為すマンホール62が設けられている。それ故、撹拌羽根98の交換やその他のメンテナンス作業が、極めて容易に行われ得るのである。
【0088】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約を受けるものではない。
【0089】
例えば、収容体14の周囲に、冷却流体や加熱流体等が流通可能な流体流路を設けても良い。これによって、有機廃棄物12の煮熟処理中に、かかる流体流路内に高温の加熱蒸気を流通せしめることで、収容体14を外部から加熱して、収容体14内の有機廃棄物12の加熱を補助することが出来、また、かかる煮熟処理後における有機廃棄物12の冷却に際して、流体流路内に冷却水等の冷却流体(冷却媒体)等を流通せしめることで、収容体14を外部から冷却して、収容体14内の有機廃棄物12を強制冷却することが出来る。即ち、ここでは、この流体流路にて、冷却手段が構成されるのである。
【0090】
また、処理装置に設けられる収容体、撹拌手段、加熱蒸気供給手段、及び減圧手段のそれぞれの具体的な構造は、前記実施形態に例示されるものに、何等限定されるものでないことは、勿論である。
【0091】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【符号の説明】
【0092】
12 有機廃棄物
14 収容体
38 油圧シリンダ機構
40 胴体部
42 底部
45 投入口
46 排出口
52,56 ボールバルブ
62 マンホール
68 蒸気噴射パイプ
70 蒸気発生装置
72 蒸気流通管路
74 安全弁
75 通気管
76 開閉弁
77 排気弁
78 減圧ポンプ
80 吸気管路
82 回転軸
90 スプロケット
92 駆動モータ
94 チェーン
98 撹拌羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉可能な投入口と排出口とを備え、該投入口を通じて有機廃棄物が内部に投入されて収容されると共に、該排出口から処理後の該有機排気物が排出可能とされた収容体と、
前記収容体の前記投入口と前記排出口を閉鎖して該収容体内を密閉する密閉手段と、
前記収容体内に収容された前記有機廃棄物を撹拌する撹拌手段と、
高温高圧加熱蒸気を前記収容体内に供給する加熱蒸気供給手段と、
前記密閉手段によって密閉された前記収容体内を減圧する減圧手段と、
前記減圧手段により前記収容体内を減圧維持せしめ、かかる減圧状態下で前記加熱蒸気供給手段により高温高圧加熱蒸気を該収容体内に供給せしめると共に前記攪拌手段を作動させて前記有機廃棄物を該収容体内で煮熟処理する装置制御手段と
を、有することを特徴とする有機廃棄物の処理装置。
【請求項2】
前記収容体が、水平方向に延びる円筒状の胴体部と、該円筒状胴体部の軸方向両側の開口部をそれぞれ閉塞する二つの底部とを一体的に有してなると共に、前記撹拌手段が、該収容体の円筒状胴体部内に、軸方向に延びるように位置せしめられて、該二つの底部のそれぞれに支持された回転軸と、該回転軸に対して、該回転軸と一体回転可能に設けられた撹拌羽根とを含んで構成されている請求項1に記載の有機廃棄物の処理装置。
【請求項3】
前記投入口が、前記収容体の前記円筒状胴体部における軸方向一方側の端部に、上方に向かって開口し且つ蓋体にて密閉可能に設けられる一方、前記排出口が、該円筒状胴体部における軸方向他方側の端部に、下方に向かって開口し且つ蓋体にて密閉可能に設けられている請求項2に記載の有機廃棄物の処理装置。
【請求項4】
前記収容体を、前記円筒状胴体部が水平に延びる位置と、該円筒状胴体部が前記投入口の側から前記排出口の側に向かって下傾する位置とに、任意に位置変更せしめ得る位置変更手段が、更に設けられている請求項3に記載の有機廃棄物の処理装置。
【請求項5】
前記撹拌手段の前記回転軸が、前記収容体の前記円筒状胴体部内において、該円筒状胴体部の中心軸よりも下方に偏奇して位置せしめられている請求項2乃至請求項4のうちの何れか1項に記載の有機廃棄物の処理装置。
【請求項6】
前記収容体の前記二つの底部のうちの少なくとも何れか一方における前記回転軸の支持部位を少なくとも含む部分が、該胴体部に対して取外し可能に取り付けられた回転軸支持体とされて、かかる回転軸支持体が、該胴体部から取り外されることにより、該回転軸が、該収容体内から離脱せしめられ得るようになっている請求項2乃至請求項5のうちの何れか1項に記載の有機廃棄物の処理装置。
【請求項7】
前記撹拌手段における前記撹拌羽根が、前記回転軸に対して着脱可能に設けられている請求項2乃至請求項6のうちの何れか1項に記載の有機廃棄物の処理装置。
【請求項8】
前記収容体に対して、該収容体内への人体の少なくとも一部の侵入を許容する透孔が、密閉可能に設けられている請求項1乃至請求項7のうちの何れか1項に記載の有機廃棄物の処理装置。
【請求項9】
前記収容体に、該収容体内に収容されて、前記高温高圧加熱蒸気との接触により煮熟処理された前記有機廃棄物を冷却するための冷却手段が、更に設けられている請求項1乃至請求項8のうちの何れか1項に記載の有機廃棄物の処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−92938(P2011−92938A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280606(P2010−280606)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【分割の表示】特願2005−208765(P2005−208765)の分割
【原出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(505272168)有限会社国友環境プラント (3)
【Fターム(参考)】