説明

有機感光体、有機感光体の製造方法及び画像形成装置

【課題】本発明の目的は、有機感光体の耐摩耗性を改善すると共に、特に高温高湿下における画像流れや画像ボケ及びフィルミングが発生しない、高耐久で且つ高画質の電子写真画像が得られる有機感光体を提供することであり、該有機感光体を用いた画像形成装置を提供することである。
【解決手段】導電性支持体上に感光層と保護層を有する有機感光体において、該保護層が、少なくとも、プラズマ法により生成された金属酸化物微粒子と硬化性化合物とを含有する組成物を反応硬化させた保護層であることを特徴とする有機感光体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真方式の画像形成装置等に用いられる有機感光体、有機感光体の製造方法及び該有機感光体を用いた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真感光体は有機光導電物質を含有する有機電子写真感光体(以下、有機感光体、或いは、単に感光体とも云う)が最も広く用いられている。有機感光体は可視光から赤外光まで各種露光光源に対応した材料を開発しやすいこと、環境汚染のない材料を選択できること、製造コストが安いことなどが他の感光体に対して有利な点であるが、機械的強度が弱く、多数枚の複写やプリント時に感光体表面の劣化や傷が発生しやすく、耐久性が不足しているという課題がある。
【0003】
上記のような有機感光体の耐久性が不足しているという課題に対してクリーニングブレード等の擦過による摩耗を抑制することが強く求められてきた。そのためのアプローチとして、感光体の表面に高強度の保護層を設置するなどの技術が検討されてきた。
【0004】
例えば、感光体の表面層として、コロイダルシリカ含有硬化性シロキサン樹脂を用いることが報告されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、該コロイダルシリカ含有硬化性シロキサン樹脂は、シロキサン結合(Si−O−Si結合)の硬化性樹脂も、コロイダルシリカも吸湿性が高く、表面層の電気抵抗が低下しやすく、画像ボケや画像流れが発生しやすいという残存課題があった。
【0005】
又、別の形態としてアクリロイル基等を有する化合物を用いて光重合させて得られる硬化性樹脂の保護層が提案されている(例えば、特許文献2参照)。該保護層にも硬化性樹脂中に金属酸化物等のフィラーを含有させているが、従来の技術では、硬化性樹脂中にフィラーの分散性が不十分であることと、フィラーと硬化性樹脂との結合は、水素結合やファンデルワールス力等の弱い結合であることから、硬化性樹脂の強度は比較的高いもののフィラーの脱落等が発生するために保護層としての強度が不十分であり、又、画像ボケや画像流れに対しても、尚、十分に解決し得ていない。
【0006】
一方、プラズマ法で製造した金属酸化物微粒子を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。このプラズマ法で製造した金属酸化物微粒子は、粒径が従来のものより小さくかつ均一であり、分散性に優れるという特徴からリークの発生を抑制する効果を有していることが知られている。しかしながら、プラズマ法で製造した金属酸化物微粒子は、その表面の活性が高いために、高温高湿環境下では水分や放電生成物等が吸着し易くなり、画像ボケが発生する問題があった。さらに、従来の技術はバインダー樹脂が比較的強度の低い線状高分子材料を用いており、金属酸化物との強度差が大きいために、強度の低いバインダー樹脂部分で傷が発生し易く、傷を起点にフィルミングが発生する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−275877号公報
【特許文献2】特開2001−125299号公報
【特許文献3】特開2002−229240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、有機感光体の耐摩耗性を改善すると共に、特に高温高湿下における画像流れや画像ボケ及びフィルミングが発生しない、高耐久で且つ高画質の電子写真画像が得られる有機感光体を提供することであり、該有機感光体の製造方法、該有機感光体を用いた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、有機感光体に適用される保護層について、従来の保護層の問題点を洗い出し、種々の改善検討を重ねた結果、プラズマ法により生成された金属酸化物微粒子と硬化性化合物とを含有する組成物を反応硬化させた保護層を用いることで、耐摩耗性が高く、画像流れや画像ボケ及びフィルミングの発生を防止できることを見出し、本願発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、以下のような構成を有することにより達成される。
【0011】
1.導電性支持体上に感光層と保護層を有する有機感光体において、該保護層が、少なくとも、プラズマ法により生成された金属酸化物微粒子と硬化性化合物とを含有する組成物を反応硬化させた保護層であることを特徴とする有機感光体。
【0012】
2.前記金属酸化物微粒子が反応性有機基を有する表面処理剤により表面処理されていることを特徴とする前記1に記載の有機感光体。
【0013】
3.前記反応性有機基の少なくとも1つがラジカル重合性基であることを特徴とする前記1または2に記載の有機感光体。
【0014】
4.前記ラジカル重合性基が炭素−炭素二重結合を有する基であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の有機感光体。
【0015】
5.前記ラジカル重合性基がアクリロイル基又はメタクリロイル基であることを特徴とする前記4に記載の有機感光体。
【0016】
6.前記硬化性化合物が炭素−炭素二重結合を有する化合物であることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の有機感光体。
【0017】
7.前記炭素−炭素二重結合を有する化合物がアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物であることを特徴とする前記6に記載の有機感光体。
【0018】
8.導電性支持体上に感光層と保護層を有する有機感光体の製造方法において、該保護層がプラズマ法により生成された金属酸化物微粒子と硬化性化合物とを含有する組成物を反応硬化させて形成されることを特徴とする有機感光体の製造方法。
【0019】
9.有機感光体の周辺に、少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段を有し、繰り返し画像形成を行う画像形成装置において、該有機感光体が前記1〜7のいずれか1項に記載の有機感光体であることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明の有機感光体を用いることにより、有機感光体の耐摩耗性を改善すると共に、特に高温高湿下における画像流れや画像ボケ及びフィルミングの発生が抑制された、高耐久で且つ高画質の電子写真画像が得られる有機感光体、該有機感光体の製造方法及び該有機感光体を用いた画像形成装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の画像形成装置の機能が組み込まれた概略図である。
【図2】本発明の一実施の形態を示すカラー画像形成装置の断面構成図である。
【図3】本発明の有機感光体を用いたカラー画像形成装置の構成断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、導電性支持体上に感光層と保護層を有する有機感光体、該有機感光体の製造方法及び該有機感光体を用いた画像形成装置に関する。
【0023】
本発明の有機感光体は、前記保護層が、少なくとも、プラズマ法により生成された金属酸化物微粒子と硬化性化合物とを含有する組成物を反応硬化させた保護層であることを特徴とする。
【0024】
本願発明の有機感光体は上記構成を有することにより、感光体表面の摩耗や擦過に対する強度が顕著に改善され、感光体表面の耐摩耗性が改善され、特に高温高湿環境下での画像ボケ及びフィルミングの発生防止等も顕著に改善される。
【0025】
本願発明の効果が得られる理由としては、以下のメカニズムを推定している。
【0026】
プラズマ法により生成された金属酸化物微粒子は、高い分散性に特徴がある。しかしながら、微粒子を分散する固体分散媒として、従来用いられていた高分子バインダーではなく、低分子である硬化性化合物(モノマーまたはオリゴマー)を用いることで、分散の均一性は更に向上する。これは、硬化性化合物の溶液中に、プラズマ法により生成された金属酸化物微粒子を分散した時に、粒子表面を低分子の硬化性化合物が効果的に覆うのではないかと考えている。
【0027】
この現象は、他の製法により生成された金属酸化物粒子を用いた場合よりも有効であり、プラズマ法により生成された金属酸化物微粒子と低分子の硬化性化合物の組み合わせで顕著にみられる。
【0028】
更に、金属酸化物微粒子表面を硬化性化合物が覆うことにより、プラズマ法により生成された金属酸化物微粒子特有の活性が隠蔽され、粒子と硬化性化合物が含有する組成物の塗膜形成後に、これら硬化性化合物が硬化することにより架橋膜を形成することで、保護層内部への不要な吸着が抑制され、画像ボケが改善され、更に、硬化性化合物を硬化して保護層を形成することで、硬化性を有しないバインダーに比べて硬化樹脂の強度が高くなり、表面傷等が発生し難くなり、その結果、フィルミングの発生が大幅に抑制されると推測している。
【0029】
また、前記金属酸化物微粒子と前記硬化性化合物とを反応させて得られる成分を含有する事も耐摩耗性および高温高湿環境下での画像ボケ等も改善される有効な態様である。
【0030】
本願発明に係わるプラズマ法により生成された金属酸化物微粒子について説明する。
【0031】
本願発明の金属酸化物微粒子は遷移金属も含めた金属酸化物粒子であればよく、例えば、シリカ(酸化ケイ素)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉛、アルミナ(酸化アルミニウム)、酸化タンタル、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化イットリウム、酸化コバルト、酸化銅、酸化マンガン、酸化セレン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化ゲルマニウム、酸化錫、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化バナジウム等の金属酸化物粒子が例示されるが、中でも、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、酸化錫の粒子が好ましい。
【0032】
従来の電子写真感光体では、例えば酸化亜鉛、酸化チタンなどの保護層に含まれる金属酸化物微粒子としては、以下のようにして製造されたものを使用している。すなわち、酸化亜鉛については、JIS K1410に記載されているように、大別して間接法(フランス法)、または直接法(アメリカ法)により製造されたものが従来より用いられている。間接法(フランス法)は、金属亜鉛を1000℃に加熱し、亜鉛の蒸気を熱空気によって酸化する。そして、生成した酸化亜鉛を送風機において空気冷却機を通じて冷却し、粒子の大きさによって分別する。直接法(アメリカ法)は、亜鉛鉱石を培焼することによって得られる酸化亜鉛を石炭などで還元し、生じた亜鉛の蒸気を熱空気によって酸化するか、又は、亜鉛鉱石を硫酸で浸出した鉱宰にコークスなどを加えたものを電気炉で亜鉛を溶かして熱空気によって酸化する。これを間接法と同様に処理する。この他、亜鉛の塩酸溶液をアルカリ溶液で沈殿させてできた塩基性炭酸亜鉛を培焼する湿式製法もある。
【0033】
また、酸化チタンは、通常工業生産に使用されている製法として、硫酸法、または塩素法により製造されたものが従来より用いられている。硫酸法は、基本工程として鉱石を硫酸と反応させ硫酸塩溶液を作り、溶液の清澄、加水分解による含水酸化チタンの沈殿、含水酸化チタンの洗浄、焼成、粉砕・表面処理する工程よりなる。また塩素法は、鉱石の塩素化により四塩化チタン液を作製し、その後精留、酸素による燃焼を行い酸化チタンにして粉砕・後処理を加える。この他、酸化チタンの製法として、弗酸法、塩化チタンカリウム法、四塩化チタン水溶液法などがある。
【0034】
しかしながら、上記した方法により生成される従来の金属酸化物微粒子は、粒径が0.2〜0.4μm程度であり、有機感光体の表面層に用いるには粒径がやや大きく、周辺部材(例えばクリーニングブレード等)の損傷が激しく問題がある。
【0035】
これに対し、プラズマ法により生成された金属酸化物微粒子は、平均粒径が従来のものよりも小さく、また粒形が比較的揃った晶癖の微粒子である。
【0036】
本発明の金属酸化物微粒子としては、プラズマ法により生成した金属酸化物微粒子が用いられる。プラズマ法により金属酸化物微粒子を生成する方法としては、直流プラズマアーク法、高周波プラズマ法、プラズマジェット法などの方法が挙げられる。
【0037】
直流プラズマアーク法では、金属原料を消費アノード電極とする。そして、カソード電極からプラズマフレームを発生させる。そして、アノード側の金属原料を加熱、蒸発させ、金属原料の蒸気を酸化、冷却することにより、金属酸化物微粒子を得ることができる。
【0038】
高周波プラズマ法では、大気圧力のもとでガスを高周波誘導放電によって加熱したときに発生する熱プラズマを利用する。このうちプラズマ蒸発法では、不活性ガスプラズマ中心に固体粒子を注入し、プラズマ中を通過する間に蒸発させ、この高温蒸気を急冷凝縮することにより超微粒子を生成することができる。
【0039】
プラズマ法は、不活性ガスのアルゴン、および2原子分子ガスである水素や窒素、酸素雰囲気中でアーク放電すると、アルゴンプラズマ、水素プラズマなどが得られるが、とくに2原子分子ガスが熱解離して生じた水素(窒素、酸素)プラズマは分子状ガスに比べてきわめて反応性に富んでいるので、不活性ガスのプラズマと区別して反応性アークプラズマとも呼ばれている。このうち酸素プラズマ法は金属酸化物微粒子を生成する方法として効果的である。
【0040】
本発明の金属酸化物微粒子の数平均一次粒径は1〜300nmの範囲が好ましい。特に好ましくは3〜100nmである。
【0041】
上記金属酸化物微粒子の数平均一次粒径は、走査型電子顕微鏡(日本電子製)により10000倍の拡大写真を撮影し、ランダムに300個の粒子をスキャナーにより取り込んだ写真画像(凝集粒子は除いた)を自動画像処理解析装置LUZEX AP((株)ニレコ)ソフトウエアバージョン Ver.1.32を使用して数平均一次粒径を算出した。
【0042】
(表面処理剤)
本願のプラズマ法により生成した金属酸化物微粒子は、表面処理を施さなくても効果を示すが、反応性有機基を有する表面処理剤により表面処理することにより、硬化性化合物との結合がより強固になり特に好ましい。
【0043】
次に金属酸化物微粒子の表面処理に用いる表面処理剤について、記載する。
【0044】
上記金属酸化物微粒子の表面処理に用いる表面処理剤としては、金属酸化物微粒子の表面に存在する水酸基等と反応性を有する表面処理剤であればよい。このような、反応性を有する表面処理剤としては、下記に記すような化合物が例示される。
【0045】
S−1 CH=CHSi(CH)(OCH
S−2 CH=CHSi(OCH
S−3 CH=CHSiCl
S−4 CH=CHCOO(CHSi(CH)(OCH
S−5 CH=CHCOO(CHSi(OCH
S−6 CH=CHCOO(CHSi(CH)(OCH
S−7 CH=CHCOO(CHSi(OCH
S−8 CH=CHCOO(CHSi(CH)Cl
S−9 CH=CHCOO(CHSiCl
S−10 CH=CHCOO(CHSi(CH)Cl
S−11 CH=CHCOO(CHSiCl
S−12 CH=C(CH)COO(CHSi(CH)(OCH
S−13 CH=C(CH)COO(CHSi(OCH
S−14 CH=C(CH)COO(CHSi(CH)(OCH
S−15 CH=C(CH)COO(CHSi(OCH
S−16 CH=C(CH)COO(CHSi(CH)Cl
S−17 CH=C(CH)COO(CHSiCl
S−18 CH=C(CH)COO(CHSi(CH)Cl2
S−19 CH=C(CH)COO(CHSiCl
S−20 CH=CHSi(C)(OCH
S−21 CH=C(CH)Si(OCH
S−22 CH=C(CH)Si(OC
S−23 CH=CHSi(OCH
S−24 CH=C(CH)Si(CH)(OCH
S−25 CH=CHSi(CH)Cl
S−26 CH=CHCOOSi(OCH
S−27 CH=CHCOOSi(OC
S−28 CH=C(CH)COOSi(OCH
S−29 CH=C(CH)COOSi(OC
S−30 CH=C(CH)COO(CHSi(OC
【0046】
【化1】

【0047】
【化2】

【0048】
本願の反応性有機基は、少なくとも1つがラジカル重合性基であることが好ましく、ラジカル重合性基が炭素−炭素二重結合を有する基であると更に好ましい。
【0049】
また、ラジカル重合性基がアクリロイル基又はメタクリロイル基であると、保護層の耐摩耗性を、高温高湿下等で発生しやすい画像流れや画像ボケを改善の効果が高く特に好ましい。
【0050】
以下、反応性有機基を有する金属酸化物粒子の製造方法を、酸化チタン粒子を例にして説明する。
【0051】
本発明に係わる反応性有機基を有する酸化チタン粒子は、酸化チタン粒子を、反応性有機基を有するシラン化合物等を用いて表面処理することにより、得ることが出来る。該表面被覆処理するに際、酸化チタン粒子100質量部に対し、シラン化合物を表面処理剤として0.1〜200質量部、溶媒50〜5000質量部を用いて湿式メディア分散型装置を使用して処理することが好ましい。
【0052】
以下に、均一で、しかもより微細にシラン化合物で表面被覆処理された酸化チタン粒子を製造する表面処理方法を述べる。
【0053】
即ち、酸化チタン粒子とシラン化合物の表面処理剤とを含むスラリー(固体粒子の懸濁液)を湿式粉砕することにより、酸化チタン粒子を微細化すると同時に酸化チタン粒子の表面処理が進行する。その後、溶媒を除去して粉体化するので、均一で、しかもより微細なシラン化合物により表面処理された酸化チタン粒子を得ることができる。
【0054】
本発明において用いられる表面処理装置である湿式メディア分散型装置とは、容器内にメディアとしてビーズを充填し、さらに回転軸と垂直に取り付けられた攪拌ディスクを高速回転させることにより、金属酸化物粒子の凝集粒子を砕いて粉砕・分散する工程を有する装置であり、その構成としては、金属酸化物粒子に表面処理を行う際に金属酸化物粒子を十分に分散させ、かつ表面処理できる形式であれば問題なく、たとえば、縦型・横型、連続式・回分式など、種々の様式が採用できる。具体的にはサンドミル、ウルトラビスコミル、パールミル、グレンミル、ダイノミル、アジテータミル、ダイナミックミル等が使用できる。これらの分散型装置は、ボール、ビーズ等の粉砕媒体(メディア)を使用して衝撃圧壊、摩擦、専断、ズリ応力等により微粉砕、分散が行われる。
【0055】
上記サンドグラインダーミルで用いるビーズとしては、ガラス、アルミナ、ジルコン、ジルコニア、スチール、フリント石などを原材料としたボールが使用可能であるが、特にジルコニア製やジルコン製のものが好ましい。また、ビーズの大きさとしては、通常、直径1〜2mm程度のものを使用するが、本発明では0.1〜1.0mm程度のものを用いるのが好ましい。
【0056】
湿式メディア分散型装置に使用するディスクや容器内壁には、ステンレス製、ナイロン製、セラミック製など種々の素材のものが使用できるが、本発明では特にジルコニアまたはシリコンカーバイドといったセラミック製のディスクや容器内壁が好ましい。
【0057】
以上のような湿式処理により、表面処理剤で表面処理された酸化チタン粒子を得ることができる。
【0058】
以上、酸化チタン粒子で説明したが、アルミナ、酸化亜鉛、酸化錫、シリカ等の金属酸化物粒子も、酸化チタンと同様に表面に水酸基を有しているので、酸化チタンと同様に表面処理剤で表面処理された金属酸化物微粒子を得ることができる。
【0059】
(硬化性化合物)
次に、保護層に用いる硬化性化合物について、記載する。
【0060】
上記硬化性化合物は、紫外線や電子線等の活性線照射により重合(硬化)して、ポリスチレン、ポリアクリレート等、一般に感光体のバインダー樹脂として用いられる樹脂となるモノマーが好適であり、特に、スチレン系モノマー、アクリル系モノマー、メタアクリル系モノマー、ビニルトルエン系モノマー、酢酸ビニル系モノマー、N−ビニルピロリドン系モノマーが好ましい。
【0061】
中でも、少ない光量あるいは短い時間での硬化が可能であることからアクリロイル基(CH=CHCO−)またはメタクリロイル基(CH=CCHCO−)を有する硬化性化合物が特に好ましい。
【0062】
本発明においては、これら硬化性化合物は単独で用いても、混合して用いてもよい。
【0063】
以下に硬化性化合物の例を示す。以下にいうAc基数(アクリロイル基数)又はMc基数(メタクリロイル基数)とは、アクリロイル基またはメタクリロイル基の数を表す。
【0064】
【化3】

【0065】
【化4】

【0066】
【化5】

【0067】
【化6】

【0068】
【化7】

【0069】
【化8】

【0070】
【化9】

【0071】
但し、上記においてRは下記で示される。
【0072】
【化10】

【0073】
【化11】

【0074】
【化12】

【0075】
【化13】

【0076】
【化14】

【0077】
【化15】

【0078】
【化16】

【0079】
【化17】

【0080】
但し、上記においてR′は下記で示される。
【0081】
【化18】

【0082】
【化19】

【0083】
また、オキセタン化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0084】
【化20】

【0085】
【化21】

【0086】
エポキシ化合物としては、芳香族エポキシド、脂環式エポキシド及び脂肪族エポキシドを挙げることができる。
【0087】
本発明においては、硬化性化合物は官能基(反応性基のこと)が3以上の化合物を用いることが好ましい。又、硬化性化合物は、2種以上の化合物を併用してもよいが、この場合でも、硬化性化合物は官能基が3以上の化合物を50質量%以上用いることが好ましい。
【0088】
本願発明に用いられる硬化性化合物を反応させる際には、電子線開裂で反応する方法、ラジカル重合開始剤あるいはカチオン重合性開始剤を添加して、光、熱で反応する方法などが用いられる。重合開始剤は光重合開始剤、熱重合開始剤のいずれも使用することができる。また、光、熱の両方の開始剤を併用することもできる。
【0089】
これら光硬化性化合物のラジカル重合開始剤としては、光重合開始剤が好ましく、中でも、アルキルフェノン系化合物、或いはフォスフィンオキサイド系化合物が好ましい。特に、α−ヒドロキシアセトフェノン構造、或いはアシルフォスフィンオキサイド構造を有する化合物が好ましい。また、カチオン重合を開始させる化合物としては、例えば、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウムなどの芳香族オニウム化合物のB(C、PF、AsF、SbF、CFSO塩などのイオン系重合開始剤やスルホン酸を発生するスルホン化物、ハロゲン化水素を発生するハロゲン化物或いは、鉄アレン錯体等の非イオン系重合開始剤を挙げることができる。特に、非イオン系重合開始剤であるスルホン酸を発生するスルホン化物、ハロゲン化水素を発生するハロゲン化物が好ましい。
【0090】
下記に好ましく用いられる光重合開始剤を例示する。
α−アミノアセトフェノン系の例
【0091】
【化22】

【0092】
α−ヒドロキシアセトフェノン系化合物の例
【0093】
【化23】

【0094】
アシルフォスフィンオキサイド系化合物の例
【0095】
【化24】

【0096】
その他のラジカル重合開始剤の例
【0097】
【化25】

【0098】
非イオン系重合開始剤
【0099】
【化26】

【0100】
イオン系重合開始剤
【0101】
【化27】

【0102】
光硬化性樹脂の保護層を形成するには、保護層の塗布液(プラズマ法により生成された金属酸化物微粒子と硬化性化合物とを含有する組成物)を感光層上に塗布した後、塗膜の流動性が無くなる程度まで1次乾燥した後、紫外線を照射して保護層を硬化し、更に塗膜中の揮発性物質の量を規定量にするため2次乾燥を行って作製する方法が好ましい。
【0103】
紫外線を照射する装置としては、紫外線硬化樹脂を硬化させるのに用いられている公知の装置を用いることができる。
【0104】
樹脂を紫外線硬化させる紫外線の量(mJ/cm)は、紫外線照射強度と照射時間で制御することが好ましい。
【0105】
一方、熱重合開始剤としては、ケトンパーオキサイド系化合物、パーオキシケタール系化合物、ハイドロパーオキサイド系化合物、ジアルキルパオキサイド系化合物、ジアシルパーオキサイド系化合物、パーオキシジカーボネート系化合物、パーオキシエステル系化合物等が用いられ、これらの熱重合開始剤は企業の製品カタログ等で公開されている。
【0106】
本願発明には、これらの熱重合開始剤を、前記の光重合開始剤と同様に、プラズマ法により生成された金属酸化物微粒子と硬化性化合物とを含有する組成物と混合して、保護層の塗布液を作製し、該塗布液を感光層の上に塗布後、加熱乾燥して、本発明に係わる保護層を形成する。熱重合開始剤としては、前記その他のラジカル重合開始剤等を用いることができる。
【0107】
又、保護層の塗布方法も、感光体全体を保護層塗布液に浸漬する浸漬塗布は、重合開始剤の下層への拡散を増大させるので、保護層の下の感光層の膜を極力溶解させないため、量規制型(円形スライドホッパー型がその代表例)塗布等の塗布加工方法を用いるのが好ましい。前記円形量規制型塗布については例えば特開昭58−189061号公報に詳細に記載されている。
【0108】
これらの重合開始剤は1種または2種以上を混合して用いてもよい。重合開始剤の含有量は、アクリル系化合物の100質量部に対し0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部である。
【0109】
又、本発明の保護層には、さらに各種の電荷輸送物質や酸化防止剤を含有させることも出来るし、各種の滑剤粒子を加えることができる。例えば、フッ素原子含有樹脂粒子を加えることができる。フッ素原子含有樹脂粒子としては、四フッ化エチレン樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂、六フッ化塩化エチレンプロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、二フッ化二塩化エチレン樹脂、及びこれらの共重合体の中から1種あるいは2種以上を適宜選択するのが好ましいが、特に四フッ化エチレン樹脂及びフッ化ビニリデン樹脂が好ましい。保護層中の滑剤粒子の割合は、アクリル系樹脂100質量部に対して、好ましくは5〜70質量部、より好ましくは10〜60質量%である。滑剤粒子の粒径は、平均一次粒径が0.01μm〜1μmのものが好ましい。特に好ましくは、0.05μm〜0.5μmのものである。樹脂の分子量は適宜選択することができ、特に制限されるものではない。
【0110】
保護層を形成するための溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノール、ベンジルアルコール、トルエン、キシレン、メチレンクロライド、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ピリジン及びジエチルアミン等を挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0111】
本発明の保護層は、塗布後、自然乾燥または熱乾燥を行った後、活性線を照射して反応させることが好ましい。
【0112】
塗布方法は、中間層、感光層と同様の、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ブレードコーティング法、ビームコーティング法、スライドホッパー法などの公知の方法を用いることができる。
【0113】
本発明の感光体は、塗膜に活性線を照射してラジカルを発生して重合し、かつ分子間及び分子内で架橋反応による架橋結合を形成して硬化し、硬化樹脂を生成することが好ましい。活性線としては紫外線や電子線が特に好ましい。
【0114】
紫外線光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、フラッシュ(パルス)キセノン等を用いることができる。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、通常5〜500mJ/cm、好ましくは5〜100mJ/cmである。ランプの電力は、好ましくは0.1kW〜5kWであり、特に好ましくは、0.5kW〜3kWである。
【0115】
電子線源としては、電子線照射装置に格別の制限はなく、一般にはこのような電子線照射用の電子線加速機として、比較的安価で大出力が得られるカーテンビーム方式のものが有効に用いられる。電子線照射の際の加速電圧は、100〜300kVであることが好ましい。吸収線量としては、0.5〜10Mradであることが好ましい。
【0116】
必要な活性線の照射量を得るための照射時間としては、0.1秒〜10分が好ましく、作業効率の観点から0.1秒〜5分がより好ましい。
【0117】
活性線としては、紫外線が使用しやすく特に好ましい。
【0118】
本発明の感光体は、活性線を照射する前後、及び活性線を照射中に乾燥を行うことができ、乾燥を行うタイミングはこれらを組み合わせて適宜選択できる。
【0119】
乾燥の条件は、溶媒の種類、膜厚などのよって適宜選択できる。乾燥温度は、好ましくは室温〜180℃であり、特に好ましくは80℃〜140℃である。乾燥時間は、好ましくは1分〜200分であり、特に好ましくは5分〜100分である。
【0120】
保護層の膜厚は好ましくは0.2〜10μmであり、より好ましくは0.5〜6μmである。
【0121】
以下に、前記保護層以外の有機感光体の構成を記載する。
【0122】
本発明において、有機感光体とは電子写真感光体の構成に必要不可欠な電荷発生機能及び電荷輸送機能の少なくとも一方の機能を有機化合物に持たせて構成された電子写真感光体を意味し、公知の有機電荷発生物質又は有機電荷輸送物質から構成された感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能を高分子錯体で構成した感光体等公知の有機感光体を全て含有する。
【0123】
本発明の有機感光体は、導電性支持体上に、少なくとも感光層と前記したような保護層を順次積層したものであるが、具体的には、以下に示すような層構成を例示することができる。
【0124】
1)導電性支持体上に、中間層、感光層として電荷発生層と電荷輸送層、及び保護層を順次積層した層構成、
2)導電性支持体上に、中間層、感光層として電荷輸送材料と電荷発生材料とを含む単層、及び保護層を順次積層した層構成。
【0125】
上記1)を中心に、本願発明の有機感光体の層構成を記載する。
〔導電性支持体〕
本発明で用いる支持体は導電性を有するものであればいずれのものでもよく、例えば、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛及びステンレスなどの金属をドラムまたはシート状に成形したもの、アルミニウムや銅などの金属箔をプラスチックフィルムにラミネートしたもの、アルミニウム、酸化インジウム及び酸化スズなどをプラスチックフィルムに蒸着したもの、導電性物質を単独またはバインダー樹脂と共に塗布して導電層を設けた金属、プラスチックフィルム及び紙などが挙げられる。
〔中間層〕
本発明においては、導電層と感光層の中間にバリアー機能と接着機能をもつ中間層を設けることもできる。
【0126】
中間層はカゼイン、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース、エチレン−アクリル酸コポリマー、ポリアミド、ポリウレタン及びゼラチンなどのバインダー樹脂を公知の溶媒に溶解し、浸漬塗布などによって形成できる。中でもアルコール可溶性のポリアミド樹脂が好ましい。
【0127】
また、中間層の抵抗調整の目的で各種の導電性微粒子や金属酸化物を含有させることができる。例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス等の各種金属酸化物。スズをドープした酸化インジウム、アンチモンをドープした酸化スズ及び酸化ジルコニウムなどの超微粒子を用いることができる。
【0128】
これら金属酸化物を1種類もしくは2種類以上混合して用いてもよい。2種類以上混合した場合には、固溶体または融着の形をとってもよい。このような金属酸化物の平均粒径は好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.1μm以下である。
【0129】
中間層に使用する溶媒としては、無機粒子を良好に分散し、ポリアミド樹脂を溶解するものが好ましい。具体的には、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノール等の炭素数2〜4のアルコール類が、ポリアミド樹脂の溶解性と塗布性能に優れ好ましい。また、保存性、粒子の分散性を向上するために、前記溶媒と併用し、好ましい効果を得られる助溶媒としては、メタノール、ベンジルアルコール、トルエン、メチレンクロライド、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0130】
バインダー樹脂の濃度は、中間層の膜厚や生産速度に合わせて適宜選択される。
【0131】
無機粒子などを分散したと時のバインダー樹脂に対する無機粒子の混合割合は、バインダー樹脂100質量部に対して無機粒子20〜400質量部が好ましく、さらに好ましくは50〜200部である。
【0132】
無機粒子の分散手段としては、超音波分散機、ボールミル、サンドグラインダー及びホモミキサー等が使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0133】
中間層の乾燥方法は、溶媒の種類、膜厚に応じて適宜選択することができるが、熱乾燥が好ましい。
【0134】
中間層の膜厚は、0.1〜15μmが好ましく、0.3〜10μmがより好ましい。
〔電荷発生層〕
本発明に用いられる電荷発生層は、電荷発生物質とバインダー樹脂を含有し、電荷発生物質をバインダー樹脂溶液中に分散、塗布して形成したものが好ましい。
【0135】
電荷発生物質は、スーダンレッド及びダイアンブルーなどのアゾ原料、ビレンキノン及びアントアントロンなどのキノン顔料、キノシアニン顔料、ペリレン顔料、インジゴ及びチオインジゴなどのインジゴ顔料、フタロシアニン顔料などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの電荷発生物質は単独、もしくは公知の樹脂中に分散する形態で使用することができる。
【0136】
電荷発生層のバインダー樹脂としては、公知の樹脂を用いることができ、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、並びにこれらの樹脂の内2つ以上を含む共重合体樹脂(例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂)及びポリ−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0137】
電荷発生層の形成は、バインダー樹脂を溶剤で溶解した溶液中に分散機を用いて電荷発生物質を分散して塗布液を調製し、塗布液を塗布機で一定の膜厚に塗布し、塗布膜を乾燥して作製することが好ましい。
【0138】
電荷発生層に使用するバインダー樹脂を溶解し塗布するための溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メチレンクロライド、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ピリジン及びジエチルアミン等を挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0139】
電荷発生物質の分散手段としては、超音波分散機、ボールミル、サンドグラインダー及びホモミキサー等が使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0140】
バインダー樹脂に対する電荷発生物質の混合割合は、バインダー樹脂100質量部に対して電荷発生物質1〜600質量部が好ましく、さらに好ましくは50〜500部である。電荷発生層の膜厚は、電荷発生物質の特性、バインダー樹脂の特性及び混合割合等により異なるが好ましくは0.01〜5μm、より好ましくは0.05〜3μmである。なお、電荷発生層用の塗布液は塗布前に異物や凝集物を濾過することで画像欠陥の発生を防ぐことができる。前記顔料を真空蒸着することによって形成すこともできる。
〔電荷輸送層〕
本発明の感光体に用いられる電荷輸送層は、電荷輸送物質(CTM)とバインダー樹脂を含有し、電荷輸送物質をバインダー樹脂溶液中に溶解、塗布して形成される。
【0141】
電荷輸送物質は、例えば、カルバゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリ−1−ビニルピレン及びポリ−9−ビニルアントラセン、トリフェニルアミン誘導体等を2種以上混合して使用してもよい。
【0142】
電荷輸送層用のバインダー樹脂は、公知の樹脂を用いることができ、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリルニトリル共重合体樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂及びスチレン−メタクリル酸エステル共重合体樹脂等が挙げられるが、ポリカーボネートが好ましい。更にはBPA、BPZ、ジメチルBPA、BPA−ジメチルBPA共重合体等が耐クラック、耐磨耗性、帯電特性の点で好ましい。
【0143】
電荷輸送層の形成は、バインダー樹脂と電荷輸送物質を溶解して塗布液を調製し、塗布液を塗布機で一定の膜厚に塗布し、塗布膜を乾燥して作製することが好ましい。
【0144】
上記バインダー樹脂と電荷輸送物質を溶解するための溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メチレンクロライド、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ピリジン及びジエチルアミン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0145】
バインダー樹脂に対する電荷輸送物質の混合割合は、バインダー樹脂100質量部に対して電荷輸送物質10〜500質量部が好ましく、さらに好ましくは20〜100質量部である。
【0146】
電荷輸送層の膜厚は、電荷輸送物質の特性、バインダー樹脂の特性及び混合割合等により異なるが好ましくは5〜40μmで、さらに好ましくは10〜30μmである。
【0147】
電荷輸送層中には酸化防止剤、電子導電剤、安定剤等を添加してもよい。酸化防止剤については特願平11−200135号、電子導電剤は特開昭50−137543号、同58−76483号等に記載のものがよい。
【0148】
次に、本発明の有機感光体を用いた画像形成装置について説明する。
【0149】
図1に示す画像形成装置1は、デジタル方式による画像形成装置であって、画像読取り部A、画像処理部B、画像形成部C、転写紙搬送手段としての転写紙搬送部Dから構成されている。
【0150】
画像読取り部Aの上部には原稿を自動搬送する自動原稿送り手段が設けられていて、原稿載置台11上に載置された原稿は原稿搬送ローラ12によって1枚宛分離搬送され読み取り位置13aにて画像の読み取りが行われる。原稿読み取りが終了した原稿は原稿搬送ローラ12によって原稿排紙皿14上に排出される。
【0151】
一方、プラテンガラス13上に置かれた場合の原稿の画像は走査光学系を構成する照明ランプ及び第1ミラーから成る第1ミラーユニット15の速度vによる読み取り動作と、V字状に位置した第2ミラー及び第3ミラーから成る第2ミラーユニット16の同方向への速度v/2による移動によって読み取られる。
【0152】
読み取られた画像は、投影レンズ17を通してラインセンサである撮像素子CCDの受光面に結像される。撮像素子CCD上に結像されたライン状の光学像は順次電気信号(輝度信号)に光電変換されたのちA/D変換を行い、画像処理部Bにおいて濃度変換、フィルタ処理などの処理が施された後、画像データは一旦メモリに記憶される。
【0153】
画像形成部Cでは、画像形成ユニットとして、像担持体であるドラム状の感光体21と、その外周に、該感光体21を帯電させる帯電手段(帯電工程)22、帯電した感光体の表面電位を検出する電位検出手段220、現像手段(現像工程)23、転写手段(転写工程)である転写搬送ベルト装置45、前記感光体21のクリーニング装置(クリーニング工程)26及び光除電手段(光除電工程)としてのPCL(プレチャージランプ)27が各々動作順に配置されている。また、現像手段23の下流側には感光体21上に現像されたパッチ像の反射濃度を測定する反射濃度検出手段222が設けられている。感光体21には、本発明に係わる有機感光体を使用し、図示の時計方向に駆動回転される。
【0154】
回転する感光体21へは帯電手段22による一様帯電がなされた後、像露光手段(像露光工程)30としての露光光学系により画像処理部Bのメモリから呼び出された画像信号に基づいた像露光が行われる。書き込み手段である像露光手段30としての露光光学系は図示しないレーザダイオードを発光光源とし、回転するポリゴンミラー31、fθレンズ34、シリンドリカルレンズ35を経て反射ミラー32により光路が曲げられ主走査がなされるもので、感光体21に対してAoの位置において像露光が行われ、感光体21の回転(副走査)によって静電潜像が形成される。本実施の形態の一例では文字部に対して露光を行い静電潜像を形成する。
【0155】
本発明の画像形成装置においては、感光体上に静電潜像を形成するに際し、発振波長が350〜500nmの半導体レーザー又は発光ダイオードを像露光光源として用いる。これらの像露光光源を用いて、書込みの主査方向の露光ドット径を10〜50μmに絞り込み、有機感光体上にデジタル露光を行うことにより、600dpi(dpi:2.54cm当たりのドット数)以上から2500dpiの高解像度の電子写真画像をうることができる。
【0156】
前記露光ドット径とは該露光ビームの強度がピーク強度の1/e以上の領域の主走査方向にそった露光ビームの長さ(Ld:長さが最大位置で測定する)を云う。
【0157】
用いられる光ビームとしては半導体レーザーを用いた走査光学系及びLEDの固体スキャナー等があり、光強度分布についてもガウス分布及びローレンツ分布等があるがそれぞれのピーク強度の1/e以上の領域を本発明に係わる露光ドット径とする。
【0158】
感光体21上の静電潜像は現像手段23によって反転現像が行われ、感光体21の表面に可視像のトナー像が形成される。本発明の画像形成方法では、該現像手段に用いられる現像剤には重合トナーを用いることが好ましい。形状や粒度分布が均一な重合トナーを本発明に係わる有機感光体と併用することにより、より鮮鋭性が良好な電子写真画像を得ることができる。
【0159】
〈トナー〉
本発明の有機感光体上に形成された静電潜像は現像によりトナー像として顕像化される。現像に用いられるトナーは、粉砕トナーでも、重合トナーでもよいが、本発明に係わるトナーとしては、安定した粒度分布を得られる観点から、重合法で作製できる重合トナーが好ましい。
【0160】
重合トナーとはトナー用バインダーの樹脂の生成とトナー形状がバインダー樹脂の原料モノマーの重合と、必要によりその後の化学的処理により形成されるトナーを意味する。
【0161】
より具体的には懸濁重合、乳化重合等の重合反応と、必要によりその後に行われる粒子同士の融着工程を経て形成されるトナーを意味する。
【0162】
なお、トナーの体積平均粒径、即ち、上記50%体積粒径(Dv50)は2〜9μm、より好ましくは3〜7μmであることが望ましい。この範囲とすることにより、解像度を高くすることができる。さらに上記の範囲と組み合わせることにより、小粒径トナーでありながら、微細な粒径のトナーの存在量を少なくすることができ、長期に亘ってドット画像の再現性が改善され、鮮鋭性の良好な、安定した画像を形成することができる。
【0163】
〈現像剤〉
本発明に係わるトナーは、一成分現像剤でも二成分現像剤として用いてもよい。
【0164】
一成分現像剤として用いる場合は、非磁性一成分現像剤、あるいはトナー中に0.1〜0.5μm程度の磁性粒子を含有させ磁性一成分現像剤としたものがあげられ、いずれも使用することができる。
【0165】
又、キャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。この場合は、キャリアの磁性粒子として、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来から公知の材料を用いることが出来る。特にフェライト粒子が好ましい。上記磁性粒子は、その体積平均粒径としては15〜100μm、より好ましくは25〜80μmのものがよい。
【0166】
キャリアの体積平均粒径の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0167】
キャリアは、磁性粒子が更に樹脂により被覆されているもの、あるいは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアが好ましい。コーティング用の樹脂組成としては、特に限定は無いが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂或いはフッ素含有重合体系樹脂等が用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
【0168】
転写紙搬送部Dでは、画像形成ユニットの下方に異なるサイズの転写材Pが収納された転写紙収納手段としての給紙ユニット41(A)、41(B)、41(C)が設けられ、また側方には手差し給紙を行う手差し給紙ユニット42が設けられていて、それらの何れかから選択された転写材Pは案内ローラ43によって搬送路40に沿って給紙され、給紙される転写材Pの傾きと偏りの修正を行う対の給紙レジストローラ44によって転写材Pは一時停止を行ったのち再給紙が行われ、搬送路40、転写前ローラ43a、給紙経路46及び進入ガイド板47に案内され、感光体21上のトナー画像が転写位置Boにおいて転写極24及び分離極25、爪分離手段250等によって、転写材P上に転写され、該転写材Pも感光体から分離され、その後、転写材Pは転写搬送ベルト装置45の転写搬送ベルト454に載置搬送され、転写搬送ベルト装置45により定着手段50に搬送される。
【0169】
定着手段50は定着ローラ51と加圧ローラ52とを有しており、転写材Pを定着ローラ51と加圧ローラ52との間を通過させることにより、加熱、加圧によってトナーを定着させる。トナー画像の定着を終えた転写材Pは排紙トレイ64上に排出される。
【0170】
以上は転写紙の片側への画像形成を行う状態を説明したものであるが、両面複写の場合は排紙切換部材170が切り替わり、転写紙案内部177が開放され、転写材Pは破線矢印の方向に搬送される。
【0171】
更に、搬送機構178により転写材Pは下方に搬送され、転写紙反転部179によりスイッチバックさせられ、転写材Pの後端部は先端部となって両面複写用給紙ユニット130内に搬送される。
【0172】
転写材Pは両面複写用給紙ユニット130に設けられた搬送ガイド131を給紙方向に移動し、給紙ローラ132で転写材Pを再給紙し、転写材Pを搬送路40に案内する。
【0173】
再び、上述したように感光体21方向に転写材Pを搬送し、転写材Pの裏面にトナー画像を転写し、定着手段50で定着した後、排紙トレイ64に排紙する。
【0174】
本発明の画像形成装置としては、上述の感光体と、現像器、クリーニング器等の構成要素をプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このユニットを装置本体に対して着脱自在に構成しても良い。又、帯電器、像露光器、現像器、転写又は分離器、及びクリーニング器の少なくとも1つを感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジを形成し、装置本体に着脱自在の単一ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としても良い。
【0175】
図2は、本発明の一実施の形態を示すカラー画像形成装置の断面構成図である。
【0176】
このカラー画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、4組の画像形成部(画像形成ユニット)10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7と、給紙搬送手段21及び定着手段24とから成る。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0177】
イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Yの周囲に配置された帯電手段(帯電工程)2Y、露光手段(露光工程)3Y、現像手段(現像工程)4Y、一次転写手段(一次転写工程)としての一次転写ローラ5Y、クリーニング手段6Yを有する。マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1M、帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、一次転写手段としての一次転写ローラ5M、クリーニング手段6Mを有する。シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1C、帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、一次転写手段としての一次転写ローラ5C、クリーニング手段6Cを有する。黒色画像を形成する画像形成部10Bkは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Bk、帯電手段2Bk、露光手段3Bk、現像手段4Bk、一次転写手段としての一次転写ローラ5Bk、クリーニング手段6Bkを有する。
【0178】
前記4組の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkを中心に、回転する帯電手段2Y、2M、2C、2Bkと、像露光手段3Y、3M、3C、3Bkと、回転する現像手段4Y、4M、4C、4Bk、及び、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkをクリーニングするクリーニング手段5Y、5M、5C、5Bkより構成されている。
【0179】
前記画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体1Y、1M、1C、1Bkにそれぞれ形成するトナー画像の色が異なるだけで、同じ構成であり、画像形成ユニット10Yを例にして詳細に説明する。
【0180】
画像形成ユニット10Yは、像形成体である感光体ドラム1Yの周囲に、帯電手段2Y(以下、単に帯電手段2Y、あるいは、帯電器2Yという)、露光手段3Y、現像手段4Y、クリーニング手段5Y(以下、単にクリーニング手段5Y、あるいは、クリーニングブレード5Yという)を配置し、感光体ドラム1Y上にイエロー(Y)のトナー画像を形成するものである。また、本実施の形態においては、この画像形成ユニット10Yのうち、少なくとも感光体ドラム1Y、帯電手段2Y、現像手段4Y、クリーニング手段5Yを一体化するように設けている。
【0181】
帯電手段2Yは、感光体ドラム1Yに対して一様な電位を与える手段であって、本実施の形態においては、感光体ドラム1Yにコロナ放電型の帯電器2Yが用いられている。
【0182】
像露光手段3Yは、帯電器2Yによって一様な電位を与えられた感光体ドラム1Y上に、画像信号(イエロー)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する手段であって、この露光手段3Yとしては、感光体ドラム1Yの軸方向にアレイ状に発光素子を配列したLEDと結像素子(商品名;セルフォックレンズ)とから構成されるもの、あるいは、レーザー光学系などが用いられる。
【0183】
本発明の画像形成装置としては、上述の感光体と、現像器、クリーニング器等の構成要素をプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)として一体に結合して構成し、この画像形成ユニットを装置本体に対して着脱自在に構成しても良い。又、帯電器、像露光器、現像器、転写又は分離器、及びクリーニング器の少なくとも1つを感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)を形成し、装置本体に着脱自在の単一画像形成ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としても良い。
【0184】
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のローラにより巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体70を有する。
【0185】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkより形成された各色の画像は、一次転写手段としての一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bkにより、回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された転写材(定着された最終画像を担持する支持体:例えば普通紙、透明シート等)としての転写材Pは、給紙手段21により給紙され、複数の中間ローラ22A、22B、22C、22D、レジストローラ23を経て、二次転写手段としての二次転写ローラ5bに搬送され、転写材P上に二次転写してカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された転写材Pは、定着手段24により定着処理され、排紙ローラ25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。ここで、中間転写体や転写材等の感光体上に形成されたトナー画像の転写支持体を総称して転写媒体と云う。
【0186】
一方、二次転写手段としての二次転写ローラ5bにより転写材Pにカラー画像を転写した後、転写材Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6bにより残留トナーが除去される。
【0187】
画像形成処理中、一次転写ローラ5Bkは常時、感光体1Bkに当接している。他の一次転写ローラ5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに当接する。
【0188】
二次転写ローラ5bは、ここを転写材Pが通過して二次転写が行われる時にのみ、無端ベルト状中間転写体70に当接する。
【0189】
また、装置本体Aから筐体8を支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。
【0190】
筐体8は、画像形成部10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とから成る。
【0191】
画像形成部10Y、10M、10C、10Bkは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1C、1Bkの図示左側方には無端ベルト状中間転写体ユニット7が配置されている。無端ベルト状中間転写体ユニット7は、ローラ71、72、73、74を巻回して回動可能な無端ベルト状中間転写体70、一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bk、及びクリーニング手段6bとから成る。
【0192】
次に図3は本発明の有機感光体を用いたカラー画像形成装置(少なくとも有機感光体の周辺に帯電手段、露光手段、複数の現像手段、転写手段、クリーニング手段及び中間転写体を有する複写機あるいはレーザビームプリンタ)の構成断面図である。ベルト状の中間転写体70は中程度の抵抗の弾性体を使用している。
【0193】
1は像形成体として繰り返し使用される回転ドラム型の感光体であり、矢示の反時計方向に所定の周速度をもって回転駆動される。
【0194】
感光体1は回転過程で、帯電手段(帯電工程)2により所定の極性・電位に一様に帯電処理され、次いで不図示の像露光手段(像露光工程)3により画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザビームによる走査露光光等による画像露光を受けることにより目的のカラー画像のイエロー(Y)の色成分像(色情報)に対応した静電潜像が形成される。
【0195】
次いで、その静電潜像がイエロー(Y)の現像手段:現像工程(イエロー色現像器)4Yにより第1色であるイエロートナーにより現像される。この時第2〜第4の現像手段(マゼンタ色現像器、シアン色現像器、ブラック色現像器)4M、4C、4Bkの各現像器は作動オフになっていて感光体1には作用せず、上記第1色目のイエロートナー画像は上記第2〜第4の現像器により影響を受けない。
【0196】
中間転写体70はローラ79a、79b、79c、79d、79eで張架されて時計方向に感光体1と同じ周速度をもって回転駆動されている。
【0197】
感光体1上に形成担持された上記第1色目のイエロートナー画像が、感光体1と中間転写体70とのニップ部を通過する過程で、1次転写ローラ5aから中間転写体70に印加される1次転写バイアスにより形成される電界により、中間転写体70の外周面に順次中間転写(1次転写)されていく。
【0198】
中間転写体70に対応する第1色のイエロートナー画像の転写を終えた感光体1の表面は、クリーニング装置6aにより清掃される。
【0199】
以下、同様に第2色のマゼンタトナー画像、第3色のシアントナー画像、第4色のクロ(ブラック)トナー画像が順次中間転写体70上に重ね合わせて転写され、目的のカラー画像に対応した重ね合わせカラートナー画像が形成される。
【0200】
2次転写ローラ5bで、2次転写対向ローラ79bに対応し平行に軸受させて中間転写体70の下面部に離間可能な状態に配設してある。
【0201】
感光体1から中間転写体70への第1〜第4色のトナー画像の順次重畳転写のための1次転写バイアスはトナーとは逆極性で、バイアス電源から印加される。その印加電圧は、例えば+100V〜+2kVの範囲である。
【0202】
感光体1から中間転写体70への第1〜第3色のトナー画像の1次転写工程において、2次転写ローラ5b及び中間転写体クリーニング手段6bは中間転写体70から離間することも可能である。
【0203】
ベルト状の中間転写体70上に転写された重ね合わせカラートナー画像の第2の画像担持体である転写材Pへの転写は、2次転写ローラ5bが中間転写体70のベルトに当接されると共に、対の給紙レジストローラ23から転写紙ガイドを通って、中間転写体70のベルトに2次転写ローラ5bとの当接ニップに所定のタイミングで転写材Pが給送される。2次転写バイアスがバイアス電源から2次転写ローラ5bに印加される。この2次転写バイアスにより中間転写体70から第2の画像担持体である転写材Pへ重ね合わせカラートナー画像が転写(2次転写)される。トナー画像の転写を受けた転写材Pは定着手段24へ導入され加熱定着される。
【0204】
本発明の画像形成装置は電子写真複写機、レーザプリンター、LEDプリンター及び液晶シャッター式プリンター等の電子写真装置一般に適応するが、更に、電子写真技術を応用したディスプレー、記録、軽印刷、製版及びファクシミリ等の装置にも幅広く適用することができる。
【実施例】
【0205】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明の様態はこれに限定されない。尚、下記文中「部」とは「質量部」を表す。
【0206】
(金属酸化物微粒子1の調製)
数平均一次粒径30nmのプラズマ法により生成された酸化チタン粒子(CIナノテック社製NanoTek)100質量部、表面処理剤としてメチルハイドロジェンポリシロクサンを30質量部、メチルエチルケトン1000質量部を湿式サンドミル(径0.5mmのジルコニアビーズ)に入れ、30℃にて6時間混合、その後、メチルエチルケトンとジルコニアビーズを濾別し、60℃にて乾燥し、「金属酸化物微粒子1を調製した。
【0207】
(感光体1の作製)
下記の様に感光体1を作製した。
【0208】
円筒形アルミニウム支持体の表面を切削加工し、表面粗さRz=1.5(μm)の導電性支持体を用意した。
【0209】
〈中間層〉
下記組成の中間層塗布液を作製した。
ポリアミド樹脂X1010(ダイセルデグサ株式会社製) 1部
酸化チタンSMT500SAS(テイカ社製) 1.1部
エタノール 20部
分散機としてサンドミルを用いて、バッチ式で10時間の分散を行った。
【0210】
上記塗布液を用いて前記支持体上に、110℃で20分乾燥後の膜厚2μmとなるよう浸漬塗布法で塗布した。
【0211】
〈電荷発生層〉
電荷発生物質:チタニルフタロシアニン顔料(Cu−Kα特性X線回折スペクトル測定で少なくとも27.3°の位置に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニン顔料)
20部
ポリビニルブチラール樹脂(#6000−C:電気化学工業社製) 10部
酢酸t−ブチル 700部
4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン 300部
を混合し、サンドミルを用いて10時間分散し、電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を前記中間層の上に浸漬塗布法で塗布し、乾燥膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0212】
〈電荷輸送層〉
電荷輸送物質:CTM(下記化合物A) 150部
バインダー:ポリカーボネート(Z300:三菱ガス化学社製) 300部
酸化防止剤(Irganox1010:BASFジャパン社製) 6部
トルエン/テトラヒドロフラン=1/9体積% 2000部
シリコーンオイル(KF−50:信越化学社製) 1部
を混合し、溶解して電荷輸送層塗布液を調製した。この塗布液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布法を用いて、110℃で60分乾燥後膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
【0213】
【化28】

【0214】
〈保護層〉
金属酸化物微粒子1(プラズマ法により生成された酸化チタン粒子) 100部
硬化性化合物(例示化合物Mc−31) 100部
イソプロピルアルコール 500部
上記成分を、サンドミルを用いて10時間分散した後、
重合開始剤1−6 30部
を加え、遮光下で混合攪拌して溶解し保護層塗布液を作製した(保存中は遮光)。該塗布液を先に電荷輸送層まで作製した感光体上に円形スライドホッパー塗布機を用いて、塗布液を塗布した。塗布後、室温で20分乾燥後(溶媒乾燥工程)、メタルハライドランプ(500W)を用いて100mmの位置で感光体を回転させながら1分間照射して(紫外線硬化工程)、膜厚3μmの保護層を得た。
【0215】
(感光体2〜12の作製)
感光体1の保護層に使用する金属酸化物微粒子、硬化性化合物、硬化条件等を表1に示すように変更し、金属酸化物粒子、溶剤、硬化性化合物を混合した成分を、サンドミルを用いて10時間分散した後、表1の重合開始剤を加え、保護層溶液を作製する以外は、同様にして感光体2〜12を作製した。
硬化条件(光):メタルハライドランプ(500W)より100mmの位置で感光体を回転させながら1分間照射して膜厚3μmの保護層を得た。
硬化条件(熱):140℃で30分間加熱し膜厚3μmの保護層を得た。
【0216】
【表1】

【0217】
〔感光体の評価〕
以上のようにして得た感光体1〜12を基本的に、図2の構成を有する市販のフルカラー複合機bizhub PRO C6500(コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)製;600dpi、780nmの半導体レーザーの露光光を使用)を用いて評価した。尚、上記フルカラー複合機は画像形成ユニットを4組有しているので、それぞれの画像形成ユニットの感光体を同一種類の感光体(例えば、感光体1の場合は、4本の感光体1を用意して)で統一して、評価を行った。各評価は、30℃80%RHの条件で、YMCBk各色印字率2.5%のA4画像を中性紙のA4紙に50万枚の画出し耐刷試験を行い、その後、下記の個別の環境条件下で評価した。
【0218】
(画像ボケ)
環境条件30℃、80%RHでの50万枚の画出し耐刷試験後に、直ぐに実機の主電源を停止した。停止12時間後に電源を入れ画出し可能状態になった後、直ちにA3中性紙全面にハーフトーン画像(マクベス濃度計で相対反射濃度0.4)とA3全面の6dot格子画像を印字した。印字画像の状態を観察し以下の評価を行った。
【0219】
◎:ハーフトーン、格子画像とも画像ボケ発生なし(良好)
○:ハーフトーン画像のみに感光体長軸方向の薄い帯状濃度低下が認められる(実用上問題なし)
×:画像ボケによる格子画像の欠損もしくは線幅の細りが発生(実用上問題有り)。
【0220】
(表面傷)
前記環境条件30℃、80%RHでの50万枚の画出し耐刷試験の前後に評価した。以下のように、感光体の表面状態を観察し傷の状態を評価した。評価した感光体はシアン位置に設置された感光体である。
【0221】
◎:50万枚印字後に表面傷なし(良好)
○:50万枚印字後に表面傷1〜5箇所発生(実用上問題なし)
×:50万枚印字後に表面傷6箇所以上発生(実用上問題有り)。
【0222】
(フィルミング)
環境条件30℃、80%RHでの50万枚の画出し耐刷試験後に、20℃、50%RHの環境条件下に1時間放置し、前記フルカラー複合機bizhub PRO C6500の4組の画像形成ユニットを作動させ、ハーフトーン画像をA4紙に印刷し、下記の基準で評価した。
【0223】
◎:フィルミングによる画像ノイズが認められず良好
○:実用上問題ないレベル
×:フィルミングによる画像ノイズ発生し実用上問題あり。
【0224】
(分散性)
金属酸化物微粒子の分散性評価基準は、分散後一日静置させた場合の沈降性として下記のとおりとした。
【0225】
◎:金属酸化物微粒子の沈降なし
○:沈降した金属酸化物微粒子が多少認められるが実用上問題ないレベル
×:沈降した金属酸化物微粒子が認められ、液の上澄み部分が透明で実用上問題あり
評価結果を下記表2に示す。
【0226】
【表2】

【0227】
表2から明らかなように、本願発明の実施例1〜9は、各評価項目において、実用性のある結果が得られているが、比較例1〜3では何れかの評価項目において、実用性に問題がある結果となっている。
【符号の説明】
【0228】
10Y、10M、10C、10Bk 画像形成ユニット
1Y、1M、1C、1Bk 感光体
2Y、2M、2C、2Bk 帯電手段
3Y、3M、3C、3Bk 露光手段
4Y、4M、4C、4Bk 現像手段
P 転写材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に感光層と保護層を有する有機感光体において、該保護層が、少なくとも、プラズマ法により生成された金属酸化物微粒子と硬化性化合物とを含有する組成物を反応硬化させた保護層であることを特徴とする有機感光体。
【請求項2】
前記金属酸化物微粒子が反応性有機基を有する表面処理剤により表面処理されていることを特徴とする請求項1に記載の有機感光体。
【請求項3】
前記反応性有機基の少なくとも1つがラジカル重合性基であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機感光体。
【請求項4】
前記ラジカル重合性基が炭素−炭素二重結合を有する基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機感光体。
【請求項5】
前記ラジカル重合性基がアクリロイル基又はメタクリロイル基であることを特徴とする請求項4に記載の有機感光体。
【請求項6】
前記硬化性化合物が炭素−炭素二重結合を有する化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機感光体。
【請求項7】
前記炭素−炭素二重結合を有する化合物がアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物であることを特徴とする請求項6に記載の有機感光体。
【請求項8】
導電性支持体上に感光層と保護層を有する有機感光体の製造方法において、該保護層がプラズマ法により生成された金属酸化物微粒子と硬化性化合物とを含有する組成物を反応硬化させて形成されることを特徴とする有機感光体の製造方法。
【請求項9】
有機感光体の周辺に、少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段を有し、繰り返し画像形成を行う画像形成装置において、該有機感光体が請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機感光体であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−59669(P2011−59669A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170181(P2010−170181)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】