説明

有機撮像素子

【課題】有機撮像素子において残像を低減する。
【解決手段】有機撮像素子1は、基板10上に複数の画素部100を有し、基板10の光入射側の表面に、層間絶縁層20を介して形成され、画素部100毎に分離して形成され信号読み出し回路101と電気的に接続された複数の画素電極40と、複数の画素電極40上に連続膜状に配された光機能層50と、光機能層50の上に配された、複数の画素部100に共有される対向電極60と、層間絶縁層20内に、複数の金属配線部分32からなる金属配線層を少なくとも一層含む。光機能層50は、有機材料を含む光電変換層を含み、画素電極40に最も近い金属配線層32Tは、複数の画素電極40下にはそれぞれ金属配線部分32を有し、金属配線部分同士の間隙32wが、画素電極同士の間隙G下に存在するように形成されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撮像素子に関するものであり、特に、画素部に有機材料を含む光電変換層を有する有機光電変換素子を備えてなる撮像素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯電話用カメラ、内視鏡用カメラ等に利用されているイメージセンサとして、CCDセンサやCMOSセンサなどの撮像素子が広く知られている。
【0003】
現在、読出し回路等が形成された基板上に複数の画素電極が二次元状に配列形成され、その上に少なくとも有機材料を含む光電変換層、対向電極が順次設けられてなる積層型の撮像素子が提案されている(特許文献1)。
【0004】
特許文献1に記載の積層型の撮像素子においては、光電変換層は、全画素部に共通に一枚構成としてもよいし、画素部毎に分割されていてもよい。
【0005】
一方で、複数の画素電極上に共通膜状に光電変換層が設けられた構成の撮像素子においては、隣接する画素電極間の間隙上の光電変換層に光が入射した場合にも、画素電極上の光電変換層に光が入射した場合と同様に信号電荷が発生する。これらの信号電荷は画素電極上で発生した信号電荷と同様に画素電極に捕集され、信号電荷として読み出される。その結果、画素電極サイズが画素サイズよりも小さいにもかかわらず、実質的な開口率はほぼ100%となり、高い感度を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−263178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記構成の撮像素子では、特に強い光が照射されて多くの信号電荷が発生した後に、光電変換層中の残留電荷に起因して複数フレームに渡って残像が発生することがあり、実用上問題となっている。
【0008】
このような残像は、有機撮像素子の中でも特に画素電極よりも下層の信号読み出し回路に複数の金属配線層とトランジスタからなるCMOSトランジスタ回路を用いた有機CMOS撮像素子の場合に顕著である。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、有機撮像素子における残像発生の原因となる残留電荷の発生を抑制し、残像の少ない有機撮像素子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の有機撮像素子は、信号読み出し回路が形成された基板上に、複数の画素部を有する有機撮像素子であって、
前記基板の光入射側の表面に、層間絶縁層を介して形成され、前記画素部毎に分離して形成され前記信号読み出し回路と電気的に接続された複数の画素電極と、
該複数の画素電極上および該画素電極間に連続膜状に配された、前記複数の画素部に共有される光機能層と、
該光機能層の上に配された、前記複数の画素部に共有される対向電極と、
前記層間絶縁層内に、複数の金属配線部分からなる金属配線層を少なくとも一層含み、
前記光機能層は、有機材料を含む光電変換層を含むものであり、
前記画素電極に最も近い前記金属配線層は、
前記複数の画素電極下に、それぞれ前記金属配線部分を有し、
隣接する該金属配線部分同士の間隙が、該金属配線部分に対応する前記画素電極同士の間隙下に存在するように形成されてなることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の有機撮像素子において、前記画素電極同士を結ぶ方向の厚み方向断面視において、前記画素電極同士の間隙の中心線と、前記金属配線部分同士の間隙の中心線とが重なっていることが好ましく、また、前記金属配線層が、前記中心線を対称軸として、略線対称に形成されてなることがより好ましく、更に、前記金属配線部分同士の間隙が、前記画素電極同士の間隙よりも大きいことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明者は、複数の画素電極上に共通膜状に有機光電変換層が設けられた構成の撮像素子において生じる残像の主要因が、画素電極間の間隙上の光電変換層中において発生した信号電荷の一部が、画素電極に捕集されるのに時間を要することに起因することを見出した。かかる知見に基づき、鋭意検討を行った結果、本発明者は、有機撮像素子において、層間絶縁層内の最も画素電極に近い金属配線層に関して、画素電極同士の間隙下に間隙を有して形成された構成とすることにより、画素電極同士の間隙上の光機能層内において、画素電極に向かう方向の電界強度を強め、信号電荷が画素電極に捕集されるのに要する時間を短縮し、残像を低減することが可能であることを見出した。
【0013】
本発明によれば、有機撮像素子において、残像発生の原因となる残留電荷の発生を抑制することができるので、残像の少ない有機撮像素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】本発明の実施形態に係る撮像素子の主要部の構成を示す断面模式図
【図1B】図1Aの撮像素子において画素電極の配置を示す平面図
【図2A】画素電極間間隙と残像との関係を示す図(その1)
【図2B】画素電極間間隙と残像との関係を示す図(その2)
【図3A】光機能層内の電界分布を示す断面模式図(その1)
【図3B】光機能層内の電界分布を示す断面模式図(その2)
【図4】光機能層内の電界強度分布を示す図
【図5】光機能層内の電界強度分布の画素電極間の間隙幅依存性を示す図(厚み方向電界強度)
【図6】光機能層内の電界強度分布の画素電極間の間隙幅依存性を示す図(面内方向電界強度)
【図7】図6における電界強度の弱い領域幅の画素電極間間隙幅依存性を示す図
【図8】図6における電界強度の弱い領域幅と残像電子数との関係を示す図
【図9A】実施例における電界強度検討モデルの断面模式図(電界調整用金属配線層間隙なし)
【図9B】実施例における電界強度検討モデルの断面模式図(電界調整用金属配線層間隙あり)
【図10A】実施例における画素電極間間隙の光機能層中の電界強度分布の金属配線層の間隙幅依存性を示す図(面内方向電界強度)
【図10B】図10Aの一部拡大図
【図11】実施例における金属配線層の間隙幅と電界強度の弱い領域幅との関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照して、本発明に係る一実施形態の有機撮像素子について説明する。図1Aは、本実施形態の撮像素子1の主要部の構成を示す断面模式図であり、図1Bは、図1Aの撮像素子1において画素電極の配置を示した平面図である。視認しやすくするために各部の縮尺は適宜変更して示してある。
【0016】
本実施形態の有機撮像素子1は、画素ごとに設けられた信号読み出し回路にて蓄積した信号電荷を電圧に変換するCMOS信号読み出し回路を有する有機CMOS撮像素子であり、図1に示されるように、信号読み出し回路101が形成された基板10上に、複数の画素部100を有し、基板10の光入射側の表面に、層間絶縁層20を介して形成され、画素部100毎に分離して形成された信号読み出し回路101と電気的に接続された複数の画素電極40と、複数の画素電極40上および該画素電極40間に連続膜状に配された、複数の画素部100に共有される光機能層50と、光機能層50の上に配された、複数の画素部100に共有される対向電極60と、層間絶縁層20内に、複数の金属配線部分32からなる金属配線層32を少なくとも一層含み、光機能層50は、有機材料を含む光電変換層52を含むものであり、画素電極40に最も近い金属配線層32Tは、複数の画素電極40下に、それぞれ金属配線部分32Tを有し、隣接する金属配線部分32T同士の間隙(gap)32wが、該金属配線部分に対応する画素電極40同士の間隙(gap)G下に存在するように形成されてなることを特徴としている。
【0017】
複数の画素電極40は、図1Bに示されるように、画素電極間間隙Gを介して2次元配列されている。画素電極40の幅40wは、画素部100よりも小さくなっている。
【0018】
また、対向電極60上には、封止層70と、カラーフィルタ80とが順次積層されている。
「残像発生のメカニズム」
【0019】
まず、本発明者は、有機撮像素子における残像の主要因について検討した。画素部100の幅を3μmに固定し、画素電極間の間隙Gを0.3μm〜1.2μmまで変化させた時の残像電子数について、フレームレート25fpsにて30フレームまで調べた。その結果を図2Aに示す。
【0020】
図2Aに示されるように、画素電極間の間隙Gが大きくなればなるほど残像電子数が大きくなること、つまり、残像を生じやすいことが確認された。また、残像は1フレーム目のみではなく、複数フレームに渡って生じることが確認された。
【0021】
残像と画素電極間の間隙Gとの関係を明らかにするために、消灯後の第3フレーム、第4フレーム、第7フレームについて、残像と画素電極間の間隙Gとの関係を調べた。その結果を図2Bに示す。
【0022】
図2Bには、いずれのフレームにおいても、間隙Gが小さくなるほど残像電子数もリニアに少なくなることが示されている。図2A,Bより、残像と間隙Gとに深い関係があり、間隙Gが残像に対して支配的であることが明らかになった。
【0023】
次に、残像が発生する要因について検討を行った。有機撮像素子では、対向電極に電圧を印加することで光機能層に電界を形成する。電界が形成された状態で光機能層に光が照射されると、光機能層のうちの光電変換層で信号電荷が発生し、発生した信号電荷が画素電極40まで輸送される。すなわち、光機能層中での信号電荷の振る舞いは電界によって支配されている。そこで、電圧印加時の光機能層内の電界強度分布について検討を行った。
【0024】
通常、有機撮像素子では画素電極と信号読出し回路とを接続する接続部(ビアプラグ)を有する。加えて、有機CMOS撮像素子の場合には、駆動部および信号読み出し回路を形成するために画素電極下層の層間絶縁層内部に複数の金属配線層を有するのが特徴である。
【0025】
前述したように、有機撮像素子の中でも、信号読み出し回路にCMOS回路を用いた有機CMOS撮像素子の場合に残像が顕著になる。CMOS回路は画素電極下層の層間絶縁層内部に複数の金属配線層を有するのが特徴であるため、画素電極下層に金属配線層がある場合と無い場合について、光機能層内の電界を検討した。
【0026】
有機撮像素子の好適な態様は、本実施形態の有機撮像素子1のように、複数の画素電極及びその間隙上に連続膜状に配された光機能層50に、電子ブロッキング層51と光電変換層52が含まれる構成であることから、電子ブロッキング層と光電変換層とを考慮した光機能層50中における電界について検討を行った。検討した構造および結果を図3Aおよび図3Bに示す。
【0027】
図3Aが、金属配線層がない場合、図3Bが、金属配線層がある場合である。画素電極40、光機能層50、対向電極60については、図3A、Bで同一の構成とした。光機能層50の厚みは500nm、画素電極間の間隙Gは0.3μmである。図3Aにおける画素電極下の絶縁層の厚みは600nmであり、絶縁層の下に金属配線層が画素電極間の間隙Gの下を全てカバーするように配置されている。各電極の電圧は対向電圧が10V、画素電極が1V、金属配線層が0Vである。
【0028】
画素電極の間隙Gにおける光機能層50内の画素電極40方向(図面上横方向)の電界に注目すると、図3A、B共に、両側の画素電極40の近傍ほど、電界が強くなっている。
【0029】
一方、図面上縦方向の電界については、図3Aの態様では、画素電極間間隙Gの中央部ほど電界が弱くなっている。一方、図3Bに示される、連続膜である金属配線層32を備えた態様においては、全体的に図3Aの態様に比して画素電極間間隙Gにおける縦方向の電界は強く、特に間隙中央部上においては図3Aに比べて強い縦方向の電界が観察される。
【0030】
図4に、図3A及び図3Bにおいて、画素電極40上及び間隙中央部の電界強度の厚み方向の分布を検討した結果を示す。図では、画素電極40上の電界強度を1として規格化してある。図示されるように、画素電極40上においては、金属配線層32の有無にかかわらず、電界強度は略同等であり、光機能層中のいずれの高さ(厚み方向の位置)においても一定である。一方、間隙中央部においては、特に画素電極付近の高さにおいて、金属配線を有するBの方が、Aに比べて劇的に電界強度が強くなっていることが示されている。
【0031】
以上より、層間絶縁層内に金属配線層を備えた有機CMOS撮像素子では、金属配線層のないものに比べて間隙中央部での縦方向の電界強度が強いことが示された。また、横方向の電界強度については金属配線層の有無があまり影響しなかった。有機CMOS撮像素子は金属配線層を有することが他の有機撮像素子との大きな違いであることから、金属配線層がある場合の、このような特徴的な電界強度分布が、有機CMOS撮像素子において顕著に残像が発生する主要因と考えられる。そこで次に、これらの電界強度分布と図2で示した有機CMOS撮像素子における残像との関係について検討を行った。
【0032】
図2に示した残像の原因を明らかにするため、図3Bの態様において、画素電極40間の間隙Gの幅を変えて電界強度分布を検討した。光機能層50の画素電極40上、及び、画素電極間の間隙中央部上における厚み方向の電界強度分布を、縦方向(厚み方向)の電界強度、及び横方向(画素電極に向かう方向)の電界強度に分けて纏めたグラフを図5及び図6に示す。図5及び図6には、画素電極間の間隙Gは0.3μm,0.6μm,1.2μmとした場合の結果のみを示す。図5および図6とも、画素電極上の縦方向と同じ大きさの電界強度を1として規格化した。
【0033】
図5及び図6において、画素電極上においては当然のことながら横方向の電界は0であった。また、縦方向の電界は光機能層50中のあらゆる高さで一定であった。一方、画素電極間の間隙G上においては、縦方向の電界は強く、画素電極上の半分から略同等の電界強度が得られた。しかしながら、画素電極方向に向かう横方向の電界は弱く、特に、画素電極間の間隙Gの中心付近ほど弱いことが示された。
【0034】
また、図5、図6より、間隙が広くなると、縦方向の電界もわずかに弱くなるが、それ以上に横方向の電界が顕著に弱くなることがわかった。横方向の電界が弱いということは、信号電荷が画素電極に向かう力が弱いということを意味しており、残像に強く影響する可能性が高い。そこで、横方向の電界の弱い領域(縦方向の電界強度の1/5以下となる領域)の、画素電極間の間隙幅依存性を図7に、上記横方向の電界強度の弱い領域の幅と第3、第4、第7フレームにおける残像電子数との関係について調べた結果を図8に示す。
【0035】
図7より、画素電極間の間隙幅が広いほど、横方向の電界強度が弱い領域もリニアに広がっていることが分かる。また、図8より、横方向の電界が弱い領域の幅と残像電子数がリニアに相関していることが分かる。したがって、横方向の電界が弱い領域の存在が有機CMOS撮像素子における残像の支配要因であると考えられる。
【0036】
ここまでの検討結果をもとにすると、有機CMOS撮像素子の原因は以下のように考えられる。まず、画素電極上の光機能層では、強い縦方向の電界により光電変換層において信号電荷が発生し、強い縦方向の電界により発生した信号電荷が速やかに画素電極に輸送されるため、残像の原因となる残留電荷は生じない。一方、画素電極間の間隙上の光機能層では、強い縦方向の電界により画素電極上と同様に光電変換層において信号電荷が発生する。しかしながら横方向の電界が弱いため、信号電荷が画素電極まで輸送されるのに長い時間を要し、残留電荷となる。その結果、残像を引き起こしているものと考えられる。
【0037】
以上より、画素電極間の間隙における横方向の電界を強め、画素電極間隙の中央付近上の光電変換層において発生した信号電荷が、より速く画素電極に輸送されるようにすることにより、残留電荷を抑制して残像を少なくできることが見いだされた。
【0038】
「撮像素子の構成」
上記知見を基に、本発明者は、画素電極間の間隙における横方向の電界を強め、残留電荷を抑制する構成として、層間絶縁層内の画素電極に最も近い金属配線層に関して、画素電極間間隙の中央付近に間隙を有して、好ましくは、画素電極間間隙以上の幅の間隙を有する構成を見いだした。
【0039】
かかる構成では、縦方向の電界の強い画素電極間間隙の中央付近の光機能層内において、横方向の電界強度を強めることができるので、画素電極間隙の中央付近上の光電変換層において発生した信号電荷を、より速く画素電極に輸送して、残留電荷を抑制し、その結果、残像を少なくすることができる。
【0040】
すなわち、本実施形態の有機撮像素子1は、画素ごとに設けられた信号読み出し回路にて蓄積した信号電荷を電圧に変換するCMOS撮像素子であり、信号読み出し回路101が形成された基板10上に、複数の画素部100を有し、基板10の光入射側の表面に、層間絶縁層20を介して形成され、画素部100毎に分離して形成された信号読み出し回路101と電気的に接続された複数の画素電極40と、複数の画素電極40上および該画素電極40間に連続膜状に配された、複数の画素部100に共有される、光機能層50と、光機能層50の上に配された、複数の画素部100に共有される対向電極60と、層間絶縁層20内に、複数の金属配線部分32からなる金属配線層32を少なくとも一層含み、光機能層50は、有機材料を含む光電変換層52を含むものであり、画素電極40に最も近い金属配線層32Tは、複数の画素電極40下には、それぞれ金属配線部分32を有し、金属配線部分同士の間隙32wが、画素電極同士の間隙G下に存在するように形成されてなることを特徴としている。
【0041】
画素電極40に最も近い金属配線層32Tは、画素電極40間の間隙Gにおける横方向の電界を強め、残留電荷を抑制する電界調整用金属配線層32Tである。電界調整用金属配線層32Tは、電界調整機能を有するものであるが、電界調整機能を損なわない範囲において電界調整以外の機能を兼ね備えた配線層であってもよい。以下、画素電極40に最も近い金属配線層32Tを電界調整用金属配線層32Tとして表す。
【0042】
電界調整用金属配線層32Tと画素電極40との距離は撮像素子を作製するプロセスのデザインルールによって決まる。近い方が好ましいが、50nm〜2000nm程度である。
【0043】
有機撮像素子1において、画素電極40同士を結ぶ方向の厚み方向断面視(図1A)において、画素電極40同士の間隙の中心線と、隣接する電界調整用金属配線層32T同士の間隙32wの中心線とが重なっていることが好ましく、また、電界調整用金属配線層32Tが、中心線を対称軸として、略対称に形成されてなることがより好ましく、更に、電界調整用金属配線層32T同士の間隙32wが、画素電極40同士の間隙G以上であることが好ましい。電界調整用金属配線層32Tが画素電極40同士の間隙Gの中心線を軸として略対称に形成されていることにより、画素全体にわたって良好に残像を抑制することができる。
【0044】
上記有機撮像素子1によれば、残像発生の原因となる残留電荷の発生を抑制することができるので、残像の少ない高画質な有機撮像素子とすることができる。
【0045】
以下に有機光電変換素子1のその他の層構成について説明する。
【0046】
<基板〜層間絶縁層>
基板10は、CMOSプロセス用のシリコン半導体基板が用いられる。基板10上には、SiO等の公知の絶縁材料からなる層間絶縁層20が形成されている。層間絶縁層20には、表面に複数の画素電極40が形成されている。画素電極40は、例えば、1次元または2次元状に配列される。画素電極については後記する。
【0047】
また、層間絶縁層20には、画素電極40と信号読出し回路101とを接続する接続部31(ビアプラグ)が埋設されている。接続部31は、導電性材料で形成されている。
【0048】
<<信号読み出し回路>>
信号読出し回路101は、基板中に形成されたトランジスタと、層間絶縁層中の金属配線層32からなるCMOSトランジスタ回路(MOSトランジスタ回路も含む)で構成されている。
【0049】
信号読出し回路101は、例えば、図示しない、フローティングディフュージョン、リセットトランジスタ、出力トランジスタ、選択トランジスタなどを備える。リセットトランジスタ、出力トランジスタ、及び選択トランジスタは、それぞれnチャネルMOSトランジスタ(以下、nMOSトランジスタ)で構成される。
【0050】
また、信号読み出し回路101の各トランジスタは、層間絶縁層20内に設けられた遮光層(図示せず)によって遮光されている。信号読み出し回路101は、接続部31を介して画素電極40と接続されており、光機能層で発生した信号電荷を蓄積し、蓄積された信号電荷量に応じた信号電圧を外部に出力する機能を有する。
【0051】
なお、信号読み出し回路101、層間絶縁層20、接続部31、金属配線層32、電界調整用金属配線層32Tは、標準のCMOSプロセスを用いて形成される。
【0052】
<光機能層>
複数の画素電極40を覆うとともに、層間絶縁層20を覆うように、有機材料を含む光電変換層52及び電子ブロッキング層51とを有する光機能層50が形成されている。
【0053】
光機能層50は、電子ブロッキング層51が画素電極40側に形成されており、電子ブロッキング層51上に光電変換層52が形成されている。これらの光機能層50の形成方法は特に制限されないが、真空蒸着法が好ましい。より具体的には、抵抗加熱蒸着法、あるいは電子ビーム加熱蒸着法が好ましい。
【0054】
<<電子ブロッキング層>>
電子ブロッキング層51は、画素電極40から光電変換層52に電子が注入されるのを抑制するための層であり、暗電流を抑制する機能を有する。
【0055】
電子ブロッキング層51は複数の層から構成されていてもよく、例えば、第1ブロッキング層と第2ブロッキング層とから構成されていてもよい。このように、電子ブロッキング層51を複数層にすることにより、第1ブロッキング層と第2ブロッキング層との間に界面が形成され、各層に存在する中間準位に不連続性が生じることで、中間準位を介して電荷担体が移動しにくくなり、暗電流を抑制することができる。なお、電子ブロッキング層51は単層としてもよい。
【0056】
電子ブロッキング層51には、電子供与性有機材料を用いることができる。具体的には、低分子材料では、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)や4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)等の芳香族ジアミン化合物、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、テトラヒドロイミダゾール、ポリアリールアルカン、ブタジエン、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、ポルフィン、テトラフェニルポルフィン銅、フタロシアニン、銅フタロシアニン、チタニウムフタロシアニンオキサイド等のポリフィリン化合物、トリアゾール誘導体、オキサジザゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アニールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体などを用いることができ、高分子材料では、フェニレンビニレン、フルオレン、カルバゾール、インドール、ピレン、ピロール、ピコリン、チオフェン、アセチレン、ジアセチレン等の重合体や、その誘導体を用いることができる。電子供与性化合物でなくとも、充分な正孔輸送性を有する化合物であれば用いることは可能である。
【0057】
電子ブロッキング層51としては無機材料を用いることもできる。一般的に、無機材料は有機材料よりも誘電率が大きいため、電子ブロッキング層51に用いた場合に、光電変換層に電圧が多くかかるようになり、光電変換効率を高くすることができる。電子ブロッキング層51となりうる材料としては、酸化カルシウム、酸化クロム、酸化クロム銅、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化ガリウム銅、酸化ストロンチウム銅、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化インジウム銅、酸化インジウム銀、酸化イリジウム等がある。
【0058】
<<光電変換層>>
光電変換層52は、有機材料を含み、受光した光量に応じた信号電荷を発生する。光電変換層52に有機材料を含むことで、所望の分光感度を容易に得ることが可能である。また、光電変換層52は有機材料の中でも特にp型有機半導体とn型有機半導体とを含む。p型有機半導体とn型有機半導体を接合させてドナ‐アクセプタ界面を形成することにより励起子解離効率を増加させることができる。このために、p型有機半導体とn型有機半導体を接合させた構成の光電変換層52は高い光電変換効率を発現する。特に、p型有機半導体とn型有機半導体を混合した光電変換層52は、接合界面が増大して光電変換効率が向上するので好ましい。
【0059】
p型有機半導体(化合物)は、ドナ性有機半導体であり、主に正孔輸送性有機化合物に代表され、電子を供与しやすい性質がある化合物をいう。さらに詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物をいう。したがって、ドナ性有機半導体としては、電子供与性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。
【0060】
p型半導体としては、特に限定されないが、例えば、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物、ピラゾリン化合物、スチリルアミン化合物、ヒドラゾン化合物、トリフェニルメタン化合物、カルバゾール化合物、ポリシラン化合物、チオフェン化合物、フタロシアニン化合物、シアニン化合物、メロシアニン化合物、オキソノール化合物、ポリアミン化合物、インドール化合物、ピロール化合物、ピラゾール化合物、ポリアリーレン化合物、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体等を用いることができる。なお、これに限らず、上記したように、n型(アクセプタ性)化合物として用いた有機化合物よりもイオン化ポテンシャルの小さい有機化合物であればドナ性有機半導体として用いてよい。
【0061】
n型有機半導体(化合物)は、アクセプタ性半導体であり、主に電子輸送性化合物に代表され、電子を受容しやすい性質がある化合物をいう。さらに詳しくは、n型半導体とは、2つの化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の化合物をいう。したがって、アクセプタ性化合物は、電子受容性のある化合物であればいずれの化合物も使用可能である。
【0062】
n型半導体としては、特に限定されないが、例えば、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含有する5〜7員のヘテロ環化合物(例えばピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、イソキノリン、プテリジン、アクリジン、フェナジン、フェナントロリン、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、トリアゾロピリダジン、トリアゾロピリミジン、テトラザインデン、オキサジアゾール、イミダゾピリジン、ピラリジン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、ジベンズアゼピン、トリベンズアゼピン等)、ポリアリーレン化合物、フルオレン化合物、シクロペンタジエン化合物、シリル化合物、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体などが挙げられる。なお、これに限らず、上記したように、p型(ドナ性)化合物として用いた化合物よりも電子親和力の大きな化合物であればアクセプタ性半導体として用いてよい。
【0063】
p型有機半導体、又はn型有機半導体としては、いかなる有機色素を用いても良いが、好ましくは、シアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、メロシアニン色素(ゼロメチンメロシアニン(シンプルメロシアニン)を含む)、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクアリウム色素、クロコニウム色素、アザメチン色素、クマリン色素、アリーリデン色素、アントラキノン色素、トリフェニルメタン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、スピロ化合物、メタロセン色素、フルオレノン色素、フルギド色素、ペリレン色素、ペリノン色素、フェナジン色素、フェノチアジン色素、キノン色素、ジフェニルメタン色素、ポリエン色素、アクリジン色素、アクリジノン色素、ジフェニルアミン色素、キナクリドン色素、キノフタロン色素、フェノキサジン色素、フタロペリレン色素、ジケトピロロピロール色素、ジオキサン色素、ポルフィリン色素、クロロフィル色素、フタロシアニン色素、金属錯体色素、縮合芳香族炭素環系色素(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)が挙げられる。
【0064】
n型有機半導体として、電子輸送性に優れた、フラーレン又はフラーレン誘導体を用いることが特に好ましい。フラーレンとは、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC80、フラーレンC82、フラーレンC84、フラーレンC90、フラーレンC96、フラーレンC240、フラーレン540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブを表し、フラーレン誘導体とはこれらに置換基が付加された化合物のことを表す。
【0065】
フラーレン誘導体の置換基として好ましくは、アルキル基、アリール基、又は複素環基である。アルキル基として更に好ましくは、炭素数1〜12までのアルキル基であり、アリール基、及び複素環基として好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、ベンズイミダゾール環、イミダゾピリジン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、またはフェナジン環であり、さらに好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピリジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、またはチアゾール環であり、特に好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、またはピリジン環である。これらはさらに置換基を有していてもよく、その置換基は可能な限り結合して環を形成してもよい。なお、複数の置換基を有しても良く、それらは同一であっても異なっていても良い。また、複数の置換基は可能な限り結合して環を形成してもよい。
【0066】
光電変換層52がフラーレン又はフラーレン誘導体を含むことで、フラーレン分子またはフラーレン誘導体分子を経由して、光電変換により発生した電子を画素電極40又は対向電極60まで早く輸送できる。フラーレン分子またはフラーレン誘導体分子が連なった状態になって電子の経路が形成されていると、電子輸送性が向上して光電変換素子の高速応答性が実現可能となる。このためにはフラーレン又はフラーレン誘導体が光電変換層に40%以上含まれていることが好ましい。もっとも、フラーレン又はフラーレン誘導体が多すぎるとp型有機半導体が少なくなって接合界面が小さくなり励起子解離効率が低下してしまう。
【0067】
光電変換層52において、フラーレン又はフラーレン誘導体と共に混合されるp型有機半導体として、特許第4213832号公報等に記載されたトリアリールアミン化合物を用いると光電変換素子の高SN比が発現可能になり、特に好ましい。光電変換層内のフラーレン又はフラーレン誘導体の比率が大きすぎると該トリアリールアミン化合物が少なくなって入射光の吸収量が低下する。これにより光電変換効率が減少するので、光電変換層に含まれるフラーレン又はフラーレン誘導体は85%以下の組成であることが好ましい。
【0068】
<対向電極>
対向電極60は、画素電極40と対向する電極であり、光機能層50を覆うようにして設けられている。画素電極40と対向電極60との間に光電変換層52を含む光機能層50が設けられている。
【0069】
対向電極60は、光電変換層52に光を入射させるため、入射光に対して透明な導電性材料で構成されている。対向電極60は、光電変換層52よりも外側に配置された接続部(不図示)を介して、対向電極60に所定の電圧を印加する対向電極電圧供給部に接続されている(不図示)。
【0070】
対向電極60は、光電変換層52を含む光機能層50に光を入射させるため、透明導電膜で構成されることが好ましく、例えば、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属硼化物、有機導電性化合物、これらの混合物等が挙げられる。具体例としては、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化インジウムタングステン(IWO)、酸化チタン等の導電性金属酸化物、TiN等の金属窒化物、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)等の金属、更にこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物または積層物、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機導電性化合物、これらとITOとの積層物、などが挙げられる。透明導電膜の材料として特に好ましいのは、ITO、IZO、酸化錫、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、弗素ドープ酸化錫(FTO)、酸化亜鉛、アンチモンドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)のいずれかの材料である。
【0071】
対向電極60の面抵抗は、信号読出し回路101がCMOS型の場合は10kΩ/□以下が好ましく、より好ましくは、1kΩ/□以下である。信号読出し回路101がCCD型の場合には1kΩ/□以下が好ましく、より好ましくは、0.1kΩ/□以下である。
【0072】
対向電極60の光透過率は、可視光波長において、60%以上が好ましく、より好ましくは80%以上で、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。
【0073】
光電変換層52で発生した信号電荷のうち、正孔を画素電極40に捕集し、電子を対向電極に捕集するため、対向電極60には画素電極よりも高い電圧が印加される。高い感度と低い暗電流を両立するために、対向電極60に印加される電圧は5V〜20V程度である。
【0074】
<画素電極>
画素電極40は、画素電極40とそれに対向する対向電極60との間にある光電変換層52で発生した電荷を捕集するための電荷捕集用の電極である。画素電極40は、接続部31を介して信号読出し回路101に接続されている。この信号読出し回路101は、複数の画素電極40の各々に対応して基板10に設けられており、対応する画素電極40で捕集された電荷に応じた信号を読出すものである。なお、各画素電極40で捕集された電荷が、対応する各画素の信号読出し回路101で信号となり、複数の画素から取得した信号から画像が合成される。
【0075】
画素電極40は層間絶縁膜20上にスパッタリング法などによって成膜された後、マスクを介してエッチングされ、所定のパターンで形成されたものであり、光機能層50の形成前においては、画素電極40の間に層間絶縁膜が露出している。
【0076】
画素電極40は、一般に電極として用いられている導電材料であれば特に制限はなく、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属硼化物、有機導電性化合物、これらの混合物等が挙げられる。具体例としては、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化インジウムタングステン(IWO)、酸化チタン等の導電性金属酸化物、酸化窒化チタン(TiNxOx)、窒化チタン(TiN)等の金属窒化物、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)等の金属、更にこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物または積層物、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機導電性化合物、これらとITOとの積層物、などが挙げられる。画素電極40の材料として特に好ましいのは、酸化窒化チタン、窒化チタン、窒化モリブデン、窒化タンタル、窒化タングステンのいずれかの材料である。
【0077】
なお、画素電極40のサイズは3μm以下が本発明の効果が顕著で好ましい。より好ましくは2μm以下である。更に好ましくは1.5μm以下である。画素電極40同士の間隙(画素電極間間隙)Gは0.3μm以下が好ましく、より好ましくは0.25μm以下であり、更に好ましくは0.2μm以下である。
【0078】
画素電極40の端部において画素電極40の膜厚に相当する段差が急峻だったり、画素電極40の表面に顕著な凹凸が存在したり、画素電極40上に微小な塵埃が付着したりすると、画素電極40上の層が所望の膜厚より薄くなったり亀裂が生じたりする。そのような状態で層上に対向電極60を形成すると、欠陥部分における画素電極40と対向電極60の接触や電界集中により、暗電流の増大や短絡などの画素不良が発生する。更に、上記の欠陥は、画素電極40とその上の層の密着性の低下などにより製造時の歩留まりを低下させるおそれがある。
【0079】
上記の欠陥を防止して素子の信頼性を向上させるためには、画素電極40の表面平滑性が良好であることが好ましい。また、画素電極40上のパーティクルを除去するため、電子ブロッキング層を形成する前に、半導体製造工程で利用されている一般的な洗浄技術を用いて、画素電極40等を洗浄することが特に好ましい。
【0080】
<封止層>
封止層70は、光機能層50を水分子などの劣化因子から保護するものである。封止層70は、対向電極20を覆うようして形成されている。
【0081】
封止層70としては、次の条件が求められる。
【0082】
第一に、素子の各製造工程において溶液、プラズマなどに含まれる有機の光電変換材料を劣化させる因子の浸入を阻止して光電変換層を保護することが挙げられる。
【0083】
第二に、素子の製造後に、水分子などの有機の光電変換材料を劣化させる因子の浸入を阻止して、長期間の保存/使用にわたって、有機光電変換層の劣化を防止する。
【0084】
第三に、封止層70を形成する際は既に形成された光電変換層を劣化させない。
【0085】
第四に、入射光は封止層70を通じて光電変換層に到達するので、光電変換層で検知する波長の光に対して封止層70は透明でなくてはならない。
【0086】
封止層70は、単一材料からなる薄膜で構成することもできるが、多層構成にして各層に別々の機能を付与することで、封止層70全体の応力緩和、製造工程中の発塵等によるクラック、ピンホールなどの欠陥発生の抑制、材料開発の最適化が容易になることなどの効果が期待できる。封止層70の積層数は、特に限定されるものではなく、例えば、封止層70としては、ALCVD法で形成されたアルミナ膜、CVD法で形成された酸化珪素膜の2層構造である。
【0087】
カラーフィルタ80は、封止層70上の各画素電極40と対向する位置に形成されている。図示していないが、実際は封止層70上のカラーフィルタ80同士の間に、光利用効率を向上させるための隔壁が設けられていてもよい。
以上のように、有機撮像素子1は構成されている。
【0088】
「設計変更」
以上、本発明の有機撮像素子について詳細に説明した。上記実施形態では、金属配線層の最上層のみに画素電極間隙を有する態様について説明したが、最上層以外の金属配線層が、画素電極同士の間隙G下に間隙を有する態様であってもよい。その他の実施形態についても、上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、適宜変更可能である。
【実施例1】
【0089】
本発明の実施例および比較例について説明する。
【0090】
実施例として、画素電極同士の間隙G下において、間隙Gの中心線を軸として対称に分割された電界調整用金属配線層32Tが、間隙32wを有してなる態様(図9B)、比較例として、電界調整用金属配線層32Tが、画素電極同士の間隙G下において間隙を有していない態様(図9A)について、以下の条件で、光電変換層及び電子ブロッキング層を考慮した光機能層50中の電界強度分布の検討を行った。
【0091】
図中に記載の数値は、各金属層における電圧値である。また、層間絶縁膜厚0.6μm、画素電極厚15nm、光機能層厚0.5μm、間隙Gは0.3μmであり、層間絶縁膜20および光機能層50の比誘電率はいずれも4とした。この構成において、図9Bにおける電界調整用金属配線層32Tの間隙32wを0.2μm〜0.6μmまで変化させた場合の光機能層50中の電界強度分布を検討した。
【0092】
検討結果を図10Aおよび図10B(図10Aで丸で囲んだ領域の拡大図)に示す。図10A、Bにおいて凡例で示した数字は電界調整用金属配線層32Tの間隙32wを表している。0が図9Aの場合に対応する。図10A、Bは画素電極間の間隙Gにおける光電変換膜50と層間絶縁膜20の界面での横方向の電界強度をプロットしたグラフである。0が間隙Gの中央に対応し、±0.15umが画素電極端に対応する。
【0093】
図10Bに示されるように、電界調整用金属配線層32Tの離間幅32wが大きくなればなるほど、画素電極40の間隙G上の光機能層50における横方向の電界が強くなることが明らかになった。
【0094】
また、図11に、離間幅32w(制御メタル間space)を変化させた時の、電界が弱い領域(縦方向の電界強度の1/5以下となる電界強度)の幅の変化を示した。図11に示されるように、離間幅32wを広く形成することにより、横方向(画素電極に向かう方向)の電界強度の弱い領域の幅を小さくすることができることが示された。前述したように、この領域が残像の主原因であることから、このような構成により残像を低減することが可能となる。
【符号の説明】
【0095】
1 撮像素子
10 基板
20 層間絶縁層
31 接続部
32 金属配線部分(金属配線層)
32T 画素電極に最も近い金属配線層(電界調整用金属配線層)
40 画素電極
50 光機能層
60 対向電極
70 封止層
80 カラーフィルタ
100 画素部
101 信号読出し部
G 画素電極同士の間隙(画素電極間間隙)
32w 金属配線部分同士の間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号読み出し回路が形成された基板上に、複数の画素部を有する有機撮像素子であって、
前記基板の光入射側の表面に、層間絶縁膜を介して形成され、前記画素部毎に分離して形成され前記信号読み出し回路と電気的に接続された複数の画素電極と、
該複数の画素電極上および該画素電極間に連続膜状に配された、前記複数の画素部に共有される光機能層と、
該光機能層の上に配された、前記複数の画素部に共有される対向電極と、
前記層間絶縁膜内に、複数の金属配線部分からなる金属配線層を少なくとも一層含み、
前記光機能層は、有機材料を含む光電変換層を含むものであり、
前記画素電極に最も近い前記金属配線層は、
前記複数の画素電極下に、それぞれ前記金属配線部分を有し、
隣接する該金属配線部分同士の間隙が、該金属配線部分に対応する前記画素電極同士の間隙下に存在するように形成されてなることを特徴とする有機撮像素子。
【請求項2】
前記画素電極同士を結ぶ方向の厚み方向断面視において、前記画素電極同士の間隙の中心線と、前記金属配線部分同士の間隙の中心線とが重なっていることを特徴とする請求項1に記載の有機撮像素子。
【請求項3】
前記金属配線層が、前記中心線を対称軸として、略線対称に形成されてなることを特徴とする請求項2に記載の有機撮像素子。
【請求項4】
前記金属配線部分同士の間隙が、前記画素電極同士の間隙よりも大きいことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機撮像素子。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−84789(P2013−84789A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223917(P2011−223917)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】