説明

有機溶剤含有ガス処理システム

【課題】低ランニングコストでVOC含有ガスを処理し省エネルギー化を図ることのできる有機溶剤含有ガス処理システムを提供する。
【解決手段】回転する吸着体に対し揮発性有機溶剤含有ガス中の有機溶剤を吸着部から吸着させ、脱着部にて脱着用空気を吹き付けることにより濃縮された脱着ガスを排出する濃縮装置1と、圧縮機と、この圧縮機によって圧縮された脱着ガスに燃料を混合して燃焼させる燃焼器と、この燃焼器によって発生する燃焼ガスにより駆動するタービンとを有するマイクロガスタービン34と、脱着ガスの一部を圧縮機に供給するための圧縮機用供給路8と、脱着ガスの残部を脱着部の上流側に帰還させるための脱着部用帰還路9とを備え、脱着部の出口部が、筒状吸着体の回転方向において、温度が低い脱着ガスを圧縮機用供給路8に案内するように区画された第1領域と、温度が高い脱着ガスを脱着部用帰還路9に案内するように区画された第2領域とに分割されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性有機溶剤(Volatile Organic Compound)を含むガス、いわゆるVOC含有ガスを低ランニングコストで処理するための有機溶剤含有ガス処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
塗装工場、印刷工場、フィルムのラミネート工場などではトルエン、イソプロピルアルコール(IPA)、キシレン、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチルなどの揮発性有機化合物(VOC)を使用しており、蒸発した上記VOCが工場内の空間に拡散し浮遊すると人体に悪影響を与える。また、VOC含有ガスが処理されることなく大気に放出されると、環境を汚染することになる。
【0003】
そこで、大気汚染防止の観点から、規制対象となる工場ではVOCの排出基準が設けられ、その排出基準を守ることが義務付けされている。
【0004】
VOC含有ガスを分解または除去するガス浄化方法としては、例えばVOC含有ガスを直接、バーナーなどで燃焼する直接燃焼方式、触媒により酸化分解する触媒燃焼方式、蓄熱材で予熱して燃焼させる蓄熱燃焼方式などが知られているが、燃焼時に発生するエネルギーを有効に利用して処理コストを低減させることができる処理システムが要望され、そのためのシステムとしてマイクロガスタービンを用いたVOC含有ガス処理システムが実用化されている。
【0005】
図14は、マイクロガスタービンを用いた一般的なVOC含有ガス処理システム50を示したものである。
【0006】
同図に示す処理システム50は、低濃度VOC含有ガスを原ガス供給管51から濃縮装置52の吸着領域に導入し、この濃縮装置52内の吸着剤によりVOCを取り除き、浄化された空気を浄化空気送出管53から大気に放出するようになっている。
【0007】
濃縮装置52は円筒形をなしており、中心軸54まわりに回転することにより吸着剤は吸着領域と脱着領域を交互に通過するようになっている。
【0008】
脱着領域では脱着用配管55を介して高温の脱着用空気が吸着剤に吹き付けられ、吸着剤に吸着されているVOCが脱着される。このとき、上記原ガス供給管51から供給される空気よりも少ない風量で脱着が行われることにより、VOC濃度が高められ、ガス排出配管56から送り出される。
【0009】
送り出されたVOC含有ガスは燃焼用ガスとしてマイクロガスタービン57に送られ、圧縮機57aで圧縮され、再生器57bにてタービン57cより排出される排ガスと熱交換され、燃焼室57dに送られる。
【0010】
燃焼室57dでは燃焼用ガスと燃料とを混合した混合ガスを燃焼させ、その燃焼ガスでタービン57cを回転させ、そのタービン57cに接続された発電機58を駆動させることにより発電を行なう(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005―61353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記濃縮装置52から排出されるVOC含有ガスは高温空気によって脱着されていることからそのままマイクロガスタービン57に送ることができず、一端、冷却装置59を介して、マイクロガスタービン57を定格出力で運転するのに適した温度まで下げることが望ましい。
【0013】
例えば燃焼用ガス温度が25℃で定格出力285kWが得られるマイクロガスタービン57の場合、燃焼用ガス温度が30℃に上昇すると20kW出力が低下し、35℃に上昇すると40kW出力が低下し、さらに70℃まで上昇すると必要な出力が得られなくなる。
【0014】
したがって、マイクロガスタービン57を用いた従来のVOC含有ガス処理システムでは冷却装置59が必須の構成となるが、この冷却装置59で多量に消費される冷却水はランニングコストを増加させている要因となっている。
【0015】
また、マイクロガスタービン57に供給できる燃焼用ガスの風量は限られているのに対し、工場で発生し処理しなければならないVOC含有ガスは大量にある。それゆえ、VOC含有ガスを確実に処理できるようにするには処理システムが大型化するという問題もある。
【0016】
本発明は、従来のVOC含有ガス処理システムにおける課題を考慮してなされたものであり、低ランニングコストでVOC含有ガスを処理し省エネルギー化を図ることのできる有機溶剤含有ガス処理システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の有機溶剤含有ガス処理システムは、筒状吸着体をその筒軸まわりに回転させ、吸着部を通過する吸着体に低濃度の揮発性有機溶剤を含むガス中の有機溶剤を吸着させ、脱着部を通過する有機溶剤を吸着した吸着体に脱着用空気を吹き付けることにより濃縮された脱着ガスを排出する濃縮装置と、
圧縮機と、この圧縮機によって圧縮された上記脱着ガスに燃料を混合して燃焼させる燃焼器と、この燃焼器によって発生する燃焼ガスにより駆動するタービンとを有するマイクロガスタービンと、
上記脱着ガスの一部を上記圧縮機に供給するための圧縮機用供給路と、
上記脱着ガスの残部を上記脱着部の上流側に帰還させるための脱着部用帰還路とを備え、
上記脱着部の出口部が、上記筒状吸着体の回転方向において、温度が低い脱着ガスを上記圧縮機用供給路に案内するように区画された第1領域と、温度が高い脱着ガスを上記脱着部用帰還路に案内するように区画された第2領域とに分割されていることを要旨とする。
【0018】
本発明において、温度が低い(または高い)とは、単一の領域(分割されていない)で構成されている脱着出口部における平均脱着出口温度に比べて低い(または高い)意味である。
【0019】
本発明において、上記圧縮機用供給路に、脱着ガスを冷却する冷却装置を介設することができる。
【0020】
また、上記マイクロガスタービンから排出される排ガスの熱を回収する排熱回収ボイラを備えることができる。
【0021】
また、上記排熱回収ボイラで発生した蒸気を脱着用空気と熱交換することにより脱着用空気を加熱する熱交換器を備えることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、低ランニングコストでVOC含有ガスを処理し省エネルギー化を図ることのできる有機溶剤含有ガス処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の濃縮装置の原理図である。
【図2】(a)は濃縮装置の脱着特性を示すグラフ、(b)は脱着特性の計測値を示した表である。
【図3】本発明が適用されるディスクロータ式濃縮装置の構成を示す斜視図である。
【図4】(a)は本発明が適用されるシリンダ式濃縮装置の構成を示す斜視図、(b)はその脱着出口部の拡大図である。
【図5】VOC含有ガス処理システムの第一実施形態を示す説明図である。
【図6】VOC含有ガス処理システムの第二実施形態を示す説明図である。
【図7】VOC含有ガス処理システムの第三実施形態を示す説明図である。
【図8】VOC含有ガス処理システムの第四実施形態を示す説明図である。
【図9】(a)〜(d)は吸着体回転数と脱着性能の関係を示したグラフである。
【図10】図1に対応する一般的な濃縮装置を示した説明図である。
【図11】図5に対応する一般的な濃縮システムを示した説明図である。
【図12】図6に対応する一般的な濃縮システムを示した説明図である。
【図13】図7に対応する一般的な濃縮システムを示した説明図である。
【図14】従来のVOC含有ガス処理システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に示した実施形態に基づいて本発明を説明する。
1. 濃縮装置の原理
図1は本発明の有機溶剤含有ガス濃縮装置(以下、濃縮装置と略称する)の原理を示したものである。
【0025】
同図において、大風量・低濃度のVOC含有ガス中の有機溶剤を吸着するための濃縮装置1は、中心軸2まわりに回転可能な円筒形のケース3を有しており、このケース3内にVOCを吸着するためのハニカム構造(連通路を中心軸方向に向けている)からなる吸着剤4が収納され全体として筒状吸着体を構成している。
【0026】
なお、吸着剤4はVOC含有ガスの成分に応じて活性炭素繊維やゼオライトペーパー等が適宜選択される。
【0027】
筒状吸着体が回転する移動経路上には吸着部1aと脱着部1bが区画されており、吸着剤(吸着体)4がそれら吸着部1aと脱着部1bとを交互に通過するようになっている。
【0028】
上記吸着部1aには、例えば工場内で発生したVOC含有ガスを導入するためのVOC含有ガス供給管5と、濃縮装置1の吸着剤4によって浄化された清浄空気を工場へ送り出すための浄化空気送出管6が設けられている。
【0029】
また、脱着部1bには、VOCを吸着した吸着剤4に対し例えば180℃の高温乾燥空気、すなわち脱着用加熱空気を吹き付けるための脱着用空気供給管7が設けられており、脱着用加熱空気の風量がVOC含有ガスの風量の1/2〜1/30程度に設定されていることにより脱着されるガスが濃縮されるようになっている。
【0030】
脱着出口部1cには、筒状回転体の回転方向において、第1管路8と第2管路9がそれぞれ設けられ、第1管路8は脱着部1bにおける処理初期領域(第1領域)から引き出され、第2管路9は脱着部1bにおける処理後期領域(第2領域)から引き出されている。
次に、脱着出口部1cを複数の領域に分割する目的について説明する。
【0031】
2. 濃縮装置の特性
図2(a)は図1に示した濃縮装置1について、脱着部1cにおける脱着入口温度と脱着出口温度と濃度とを計測したグラフであり、同図(b)は計測した各測定値を示している。
【0032】
なお、上記濃縮装置1の吸着部にはVOC含有ガス(MEK、トルエン、MIBK他)を2450ppmCH導入し、脱着部には180℃の脱着用加熱空気を導入した。
【0033】
また、図2(a)において、横軸は経過時間(%)を、左側縦軸は温度(℃)を、右側縦軸はガス濃度(ppmCH)をそれぞれ示している。また、上記経過時間とは、筒状吸着体が脱着部1bの始点(ゼロ%)に到着した時から脱着部1bの終了点(100%)に移動するまでの時間を表しており、脱着部1bにおける円周方向吸着位置を示している。
【0034】
脱着用加熱空気が180℃で導入されると、脱着出口温度は遅れ(経過時間約30%)を伴って上昇し始め、経過時間が100%になると脱着入口温度と同様に概ね180℃となる。
【0035】
一方、脱着部1bから脱着された脱着ガスの濃度は、脱着出口温度の上昇につれて上昇し、経過時間50%で概ねピークとなり、以降減少する。
【0036】
次に、脱着出口部1cを複数の領域(本実施形態では第1および第2領域)に分割した場合の風量、脱着出口温度、脱着出口濃度を測定した結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
表1から分かるように、脱着出口部1cの面積比率を変えて第1および第2領域に分割すると、パターン1の第1領域からは温度が低く且つ濃縮も低い脱着ガスが得られ、第2領域からは温度が高く濃度も高い脱着ガスが得られる。
【0039】
また、パターン2の第1領域からは温度が低く比較的濃度が高い脱着ガスが得られ、第2領域からは温度が高く濃度も高い脱着ガスが得られる。
【0040】
さらにまた、パターン3の第1領域からは温度が高く且つ濃度も高い脱着ガスが得られ、第2領域からは温度が高く濃度が比較的高い脱着ガスが得られる。
【0041】
なお、比較のため、ディスクロータ式の濃縮装置60(図10参照)を比較例として示した。なお、脱着出口温度および濃度は平均値であり、風量は200Nm/minである。
【0042】
パターン1〜3において、濃度が低い(または高い)とは、比較例の脱着部の平均脱着出口濃度に比べて低い(または高い)ことを意味する。
【0043】
上記したように、脱着部1bにおける脱着始点から脱着終了点までの範囲を第1領域と第2領域とに分割すれば、特性の異なる脱着ガスを選択的に得ることができる。
【0044】
本発明は、脱着出口部1cを複数に分割すれば、特性の異なる脱着ガスが得られることに着目し、その特性の異なる脱着ガスを用いた各種VOC含有ガス処理装置を具体化している。
【0045】
3. 濃縮装置における脱着出口部の構成
次に、脱着出口部1cの具体的な構成を、図3に示すディスクロータ式濃縮装置、図4に示すシリンダ式濃縮装置についてそれぞれ説明する。
【0046】
3-1. ディスクロータ式濃縮装置
図3に示すディスクロータ式濃縮装置10は、ハニカム構造の筒状吸着体11を回転軸12まわりに回転させるように構成されており、VOC含有ガスが筒状吸着体11の一方から導入され、他方から浄化された清浄空気が取り出される。
【0047】
筒状吸着体11の両側にはダクト13および14が対向するようにして配置されており、脱着用加熱空気はダクト13からその筒状吸着体11に吹き付けられ、脱着ガスは他方のダクト14から排出されるようになっている。
【0048】
上記ダクト14は、ダクト13に対向しているものの、ダクト13の外周側長さLa>ダクト14の外周側長さLbとなっている。
【0049】
すなわち、破線で示した範囲14′についてダクト14の通路面積がダクト13の通路面積よりも小さく設定されている。
【0050】
このように、上記LaとLbの比率を変えることにより、脱着領域を所望の第1領域と第2領域に分割することができる。
【0051】
それにより、第1領域からの比較的温度の低い(比較例の脱着出口温度90℃に比べ)脱着ガスCは、図1に示した第1管路8に導くことができ、温度の高い脱着ガスDは第2管路9に導くことができる。
【0052】
なお、図中矢印Aは筒状吸着体11の回転方向を示している。
【0053】
3-2. シリンダ式濃縮装置
図4はシリンダ式濃縮装置20の構成を示したものであり、同図(a)は全体の構成を示す外観図、同図(b)は脱着出口部を拡大して示したものである。
【0054】
濃縮装置20は、垂直軸V.Aまわりに回転可能な円筒形の吸着剤21を有し、VOC含有ガスは吸着剤21の外周側からその中心に向けて導入され、浄化された清浄空気は吸着剤21内側の空間から取り出される。
【0055】
VOCを吸着した吸着剤21に対し、脱着用加熱空気はその吸着剤21を挟むようにして配置された一方のダクト、すなわち脱着用空気供給管22から吸着剤21に吹き付けられ、VOCを含有している脱着ガスは他方のダクト、すなわち、脱着出口部23から排出されるようになっている。
【0056】
図4(b)において、上記脱着出口部23は吸着剤21の脱着領域出口部を区画するようにして垂直方向に設けられるダクト部23aと、このダクト部23aの下部から水平方向に分岐して設けられる第1管路23bおよび第2管路23cを備えている。
【0057】
ダクト部23a内には、脱着領域出口部を複数の領域に分割(実施形態では2分割)するための仕切板23dが垂直方向に設けられている。この仕切板23dにはガイド溝23eを通して軸23fが突設されており、この軸23fにはナット23gを締め付けることができるようになっている。それにより、ナット23gを緩めて左右方向(矢印B方向)に移動させ、移動させた位置でナット23gを締め付ければ、仕切板23dを所望の位置で固定することができ、脱着領域の出口部を任意の比率で第1領域、第2領域にそれぞれ分割することができるようになっている。
【0058】
また、仕切板23dを境として第1領域は第1管路23bに連通し、第2領域は第2管路23cに連通している。それにより、脱着領域からの脱着ガスは二つの管路23b,23cに分岐され、脱着ガスCおよび脱着ガスDとして取り出されるようになっている。
【0059】
上記第1領域からの脱着ガスCは図1に示した第1管路8に導くことができ、脱着ガスDは同じく第2管路9に導くことができる。
【0060】
4. VOC含有ガス処理システム
4-1. 第一の処理システム
図5は上記濃縮装置を用いたVOC含有ガス処理システム30の第一実施形態を示したものである。なお、以下の説明において、図1と同じ構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0061】
なお、同図に示す濃縮装置1の脱着出口部は、表1のパターン1に示した第1領域と第2領域に分割されている。また、説明の便宜上、第1領域からの脱着ガス温度を40℃、第2領域からの脱着ガス温度を130℃とする。
【0062】
第1領域は、比較例(単一領域)の濃縮装置の脱着領域に比べ、脱着出口温度が低く(90℃→40℃)、濃度も低い(7,430→2,800ppmCH)。したがって、吸着部用帰還路としての第1管路8を介してVOC含有ガス供給管5に戻し、再度、原ガスとして利用するか、あるいは脱着用空気供給管7に戻して利用する。
【0063】
脱着初期では吸着体が十分に加熱されておらず、脱着濃度が極めて低い。したがって、この脱着効率の悪い脱着ガスCは再度、吸着処理に供給する。また、それによって燃焼装置31に供給する脱着ガスの流量が過剰にならないように調節することができる。
【0064】
一方、第2領域から排出される、温度が高く(130℃)濃度も高い(10,750ppmCH)脱着ガスDは燃焼装置用供給路としての第2管路9を介して燃焼装置31に供給され、VOCは酸化分解される。
【0065】
上記脱着ガスDは、比較例の濃縮装置から排出される脱着ガスの温度(90℃)に比べ、高温であるため、燃料の節約を図ることができる。
【0066】
なお、上記燃焼装置31としては、直接燃焼装置や触媒酸化装置を使用することができる。
【0067】
直接燃焼装置は、可燃ガスを直接火炎に接触させ、700〜850℃の高温雰囲気に所定時間滞留させて酸化分解させるものであり、触媒酸化装置は、可燃性ガスを200〜350℃程度に予熱し、触媒に通すことにより酸化分解するものであり、いずれも公知の装置である。
【0068】
上記燃焼装置31の燃焼によって生じた排ガスは熱交換器32に導入され、脱着用空気を加熱するための熱交換に供せされる。
【0069】
比較例の濃縮装置60(図10参照)を用いてVOC含有ガスを燃焼させる場合、図11に示すように、平均された脱着出口温度の脱着ガス、すなわち、第2領域の脱着出口温度(130℃)よりも低い脱着出口温度(90℃)で脱着ガスが燃焼装置61に供給されるため、燃料節約効果は見込めない。
なお、図11中、62は熱交換器を示している。
【0070】
4-2. 第二の処理システム
図6は上記濃縮装置1を用いたVOC含有ガス処理システムの第二実施形態を示したものである。なお、図5と同じ構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0071】
なお、図6に示す濃縮装置1の脱着出口部も、表1のパターン3に示した第1領域と第2領域に分割されている。また、説明の便宜上、第1領域からの脱着ガス温度を70℃、第2領域からの脱着ガス温度を160℃とする。
【0072】
処理システム40は、濃縮装置1の第1領域から排出された脱着ガスCを冷却するガスクーラ(冷却装置)33と、このガスクーラ33によって冷却されたVOC含有ガスと燃料とを混合した混合ガスを燃焼させて動力を発生するマイクロガスタービン34と、このマイクロガスタービン34から排出される排ガスの熱を回収する排熱回収ボイラ35とを備えている。
【0073】
詳しくは、脱着ガスCは圧縮機用供給路としての第1管路8を介してガスクーラ33に供給され、マイクロガスタービン34の稼働に適した温度である40℃まで下げられる。
【0074】
一方、脱着ガスDは脱着部用帰還路としての第2管路9を介して脱着部上流側に戻される。
【0075】
図12に示すように、濃縮装置60とマイクロガスタービン64とを組み合わせた一般的な処理システムでは、濃縮装置60から排出されるVOC含有ガスを一旦、ガスクーラ63で冷却した後、マイクロガスタービン64に導入し、マイクロガスタービン64で発生した燃焼熱を排熱回収ボイラ65で回収するが、濃縮装置60の脱着出口温度は略90℃まで上昇しているため、この高温の脱着ガスを、ガスクーラ63によってマイクロガスタービンの運転に適した温度40℃まで冷却する必要がある。したがって降温すべき温度差ΔTは50℃となる。
【0076】
一方、本発明の処理システム40によれば、濃縮装置1の第1領域における脱着出口温度は70℃であるため、降温すべき温度差ΔTは30℃となる。すなわち、両温度の差分20℃についてランニングコストの削減が見込まれる。
【0077】
詳しくは、上記温度の差分によって節約される冷却水の量は7m/hとなり、金額に換算すると、年間、約5百万円のランニングコストの削減が見込まれる。同時に、節約される冷却媒体としてLNGの使用量は4m/hとなり、年間2百万円のランニングコストの削減が見込まれる。
【0078】
ただし、冷却水の単価を70円/m、LNGの単価を70円/Nm、処理システムの年間稼働を8,000時間とした場合。
【0079】
4-3. 第三の処理システム
図7は上記濃縮装置1を用いたVOC含有ガス処理システムの第三実施形態を示したものである。
【0080】
なお、同図に示す濃縮装置1の脱着出口部も、表1のパターン3に示した第1領域と第2領域に分割されている。
【0081】
この処理システム50では図6に示した処理システム40と同様に、濃縮装置1の第1領域から排出された脱着ガスCを冷却するガスクーラ33と、このガスクーラ33によって冷却されたVOC含有ガスと燃料とを混合した混合ガスを燃焼させて動力を発生するマイクロガスタービン34と、このマイクロガスタービン34から排出される排ガスの熱を回収する排熱回収ボイラ35とを備えている。
【0082】
脱着ガスCが圧縮機用供給路としての第1管路8を介してガスクーラ33に供給され、マイクロガスタービン34の稼働に適した温度である40℃まで降温される点は図6に示した構成と同じであり、脱着ガスDは燃焼装置31に供給されて燃焼される。それにより、比較的温度の低い脱着ガスCはランニングコストを削減しつつマイクロガスタービン34に供給され、また、温度の高い(160℃)脱着ガスDは燃焼装置用供給路としての第2管路9を介して燃焼装置31に供給されて燃焼を補助するため、それぞれの脱着ガスを効率良く利用することが可能になる。
【0083】
なお、上記燃焼装置31で生じた排ガスは熱交換器32に導入され、脱着用空気を加熱するための熱交換に供せされる。
【0084】
因みに、図13に示すように、濃縮装置60とマイクロガスタービン64と燃焼装置61とを組み合わせた一般的な処理システムでは、90℃の脱着ガスのうち、一部をマイクロガスタービン64に供給し、マイクロガスタービン64で処理しきれない脱着ガスを燃焼装置61に供給するものであるため、マイクロガスタービン64の燃焼に適した温度まで脱着ガスを冷却する過程でロスが発生し、さらに、燃焼装置61に供給する脱着ガスとしては温度が低すぎるため燃焼節約効果を期待することができない。
【0085】
4-4. 第四の処理システム
図8は濃縮装置を複数配置したVOC含有ガス処理システムの第四実施形態を示したものである。
【0086】
VOC含有ガスの風量が例えば1000mを超えるような場合、濃縮装置を2基配置し、VOC含有ガスの50%を第1濃縮装置1Aの吸着部に、残りの50%を第2濃縮装置1Bの吸着部に導入する。
【0087】
ただし、第1濃縮装置1Aは上記した脱着出口部が分割されているもの、第2濃縮装置1Bは脱着出口部が分割されていない従来の濃縮装置である。
【0088】
脱着用加熱空気は分岐されて第1濃縮装置1Aの脱着部と第2濃縮装置1Bの脱着部にそれぞれ導入される。
【0089】
第1濃縮装置1Aの脱着出口部における第1領域から排出された脱着ガスC1は圧縮機用供給路としての第1管路8を介してガスクーラ33に供給され、マイクロガスタービン34の稼働に適した温度である40℃まで降温される。一方、第2領域から排出された脱着ガスD1は燃焼装置用供給路としての第2管路9を介して燃焼装置31に供給される。
【0090】
また、第2濃縮装置1Bから排出された脱着ガスEは、合流路15を通じて脱着ガスD1と合流され燃焼装置31に供給される。すなわち、第1および第2濃縮装置1A,1Bから排出され、マイクロガスタービン34で処理しきれない余剰ガスは燃焼装置31で処理される。
【0091】
上記濃縮装置を複数台配置する処理システムによれば、処理すべきVOC含有ガスの風量が大きくてもVOCを確実に吸着処理することができる。
【0092】
5. 脱着ガスの濃度調整
図9は、脱着入口温度を一定とした場合の、吸着体回転数と濃縮装置の脱着性能との関係を示したものである。
【0093】
同図(a)〜(d)に示すように、吸着体回転数が遅くなるほど脱着出口温度すなわち脱着ガスの温度が高くなることがわかる。
【0094】
また、吸着体回転数が9rphおよび12rphでは処理後半で脱着ガス濃度が十分に低下しており(濃度特性F1およびF2参照)、すなわち脱着が完了していることから脱着性能が良い。
【0095】
これに対し、吸着回転数が15rphまたは20rphでは脱着ガス濃度が十分に低下する前に脱着処理が終了しているため脱着性能が低いことになる(濃度特性F3およびF4参照)。
【0096】
しかしながら、同図(a)〜(d)をわかるように、吸着体回転数を変化させると脱着ガス濃度のピークをシフトさせることができる。したがってこの点を利用すれば、脱着出口部を複数の領域に分割する場合において、その領域における脱着ガス濃度をコントロールすることが可能になる。
【0097】
例えば、脱着出口部を第1領域と第2領域に二分割する場合に、比較的温度の低い第1領域内に脱着ガス濃度のピークをシフトさせたり、また、比較的温度の高い第2領域内に脱着ガス濃度のピークをシフトさせることが可能になる。
【0098】
したがって、脱着出口部を複数領域に分割し、吸着体の回転数を制御することにより、各領域から排出される脱着ガスの特性(温度、または温度と濃度)を、構築される処理システムに配置される要素(マイクロガスタービン、燃焼装置等)が効率良く稼働できるように調節することが可能になる。
【符号の説明】
【0099】
1 濃縮装置
1a 吸着部
1b 脱着部
1c 脱着出口部
2 中心軸
3 ケース
4 吸着剤
5 VOC含有ガス供給管
6 浄化空気送出管
7 脱着用空気供給管
8 第1管路(圧縮機用供給路)
9 第2管路(脱着部用帰還路)
10 ディスクロータ式濃縮装置
11 筒状吸着体
12 回転軸
13 ダクト
14 ダクト
20 シリンダ式濃縮装置
21 吸着剤
22 脱着用空気供給管
23 脱着出口部
23a ダクト部
23b 第1管路
23c 第2管路
23d 仕切板
23e ガイド溝
23f 軸
23g ナット
30 VOC含有ガス処理システム
31 燃焼装置
32 熱交換器
33 ガスクーラ
34 マイクロガスタービン
35 排熱回収ボイラ
40 VOC含有ガス処理システム
60 濃縮装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状吸着体をその筒軸まわりに回転させ、吸着部を通過する吸着体に低濃度の揮発性有機溶剤を含むガス中の有機溶剤を吸着させ、脱着部を通過する有機溶剤を吸着した吸着体に脱着用空気を吹き付けることにより濃縮された脱着ガスを排出する濃縮装置と、
圧縮機と、この圧縮機によって圧縮された上記脱着ガスに燃料を混合して燃焼させる燃焼器と、この燃焼器によって発生する燃焼ガスにより駆動するタービンとを有するマイクロガスタービンと、
上記脱着ガスの一部を上記圧縮機に供給するための圧縮機用供給路と、
上記脱着ガスの残部を上記脱着部の上流側に帰還させるための脱着部用帰還路とを備え、
上記脱着部の出口部が、上記筒状吸着体の回転方向において、温度が低い脱着ガスを上記圧縮機用供給路に案内するように区画された第1領域と、温度が高い脱着ガスを上記脱着部用帰還路に案内するように区画された第2領域とに分割されていることを特徴とする有機溶剤含有ガス処理システム。
【請求項2】
上記圧縮機用供給路に、脱着ガスを冷却する冷却装置が介設されている請求項1記載の有機溶剤含有ガス処理システム。
【請求項3】
上記マイクロガスタービンから排出される排ガスの熱を回収する排熱回収ボイラが備えられている請求項1または2記載の有機溶剤含有ガス処理システム。
【請求項4】
上記排熱回収ボイラで発生した蒸気を脱着用空気と熱交換することにより脱着用空気を加熱する熱交換器が備えられている請求項3記載の有機溶剤含有ガス処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−115833(P2012−115833A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−7347(P2012−7347)
【出願日】平成24年1月17日(2012.1.17)
【分割の表示】特願2007−150371(P2007−150371)の分割
【原出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】