説明

有機発光ダイオード表示装置およびその駆動方法

【課題】駆動トランジスタを用いることなく、有機EL素子の駆動電流のピーク値を小さくし、電流密度を低減できる有機発光ダイオード表示装置およびその駆動方法を得る。
【解決手段】データライン31がソース端子に、ゲートライン21がゲート端子に接続された選択トランジスタ51、アノードがドレイン端子に、カソードが定電位の電極に接続された有機EL素子52、ドレイン端子とアノードとの接続点に一端が接続されたキャパシタ53を有する画素回路50と、キャパシタ53の他端に接続されたエミッションコントロールライン41と、エミッションコントロールライン41の電位を、選択トランジスタ51がオン状態の間、有機EL素子52のしきい値電位よりも低い値に保持し、選択トランジスタ51がオフ状態になった後、1V期間かけて所定の電位まで上昇させるエミッションコントロールライン駆動回路40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、有機EL(OEL:Organic Electro Luminescence)素子を用いた画素回路を配列して構成された有機発光ダイオード(OLED:Organic Light Emitting Diode)表示装置およびその駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の有機発光ダイオード表示装置において、複数のゲートラインと複数のデータラインおよび電源ラインとの各交差箇所に形成される複数の画素回路は、それぞれ選択トランジスタ(選択TFT(Thin Film Transistor))、キャパシタ、駆動トランジスタ(駆動TFT)および有機EL素子を有している。
【0003】
このような有機発光ダイオード表示装置においては、まず、ゲートラインが選択されることによって、選択トランジスタがオン状態となり、データラインからのビデオ信号であるデータ電位が電荷としてキャパシタに蓄積される。続いて、キャパシタに蓄積された電荷に基づいて、駆動トランジスタがオン状態となり、電源ラインからの電位が有機EL素子に印加される。
【0004】
ここで、一般的な駆動トランジスタのVg−Id特性(ゲート電位Vgとドレイン電流Idとの関係)を図8に示す。図8において、横軸はゲート電位を示し、縦軸はドレイン電流を示している。また、図8の太線部分は、有機EL素子の駆動電流範囲(縦軸方向)、すなわちビデオ信号であるデータ電位範囲(横軸方向)を示している。
【0005】
なお、OLED材料である有機EL素子の発光効率は年々改善され、小さな電流で有機EL素子を発光させることができるようになってきている。具体的には、近年では、一階調あたりの駆動電流が10nA以下にまで低下している。そのため、有機EL素子の駆動電流範囲が狭くなり、電流制御を実行するのに十分なデータ電位範囲を確保することが困難になってきているという問題があった。また、駆動トランジスタには、しきい値電位のばらつきが生じるので、有機EL素子の駆動電流範囲が狭くなると、さらに電流制御が困難になるという問題もあった。
【0006】
また、一般的な有機EL素子の発光効率と、有機EL素子の消費電力およびTFT基板で消費される電力が全体の消費電力に占める割合との関係を図9に示す。図9において、横軸は有機EL素子の発光効率を示し、縦軸の左側は有機EL素子の消費電力を示し、縦軸の右側はTFT基板での消費電力が全体の消費電力に占める割合を示している。
【0007】
図9より、有機EL素子の発光効率が改善されるほど有機EL素子の消費電力は低下するものの、TFT基板での消費電力が全体の消費電力に占める割合は増加していることが分かる。つまり、有機EL素子の消費電力が低下しているにもかかわらず、TFT基板での消費電力が増大しているという問題があった。
【0008】
これは、一階調あたりのゲート電位Vgs(ソース電位基準)を大きく確保して、ビデオ信号であるデータ電位の電位差を大きくすることにより、有機EL素子の電流制御を容易にするためである。また、有機EL素子の輝度ばらつきを低減する観点から、駆動トランジスタの駆動能力を低く抑え、オン抵抗が大きくなっているためである。すなわち、上述した問題点には、駆動トランジスタの特性が影響を与えていることが分かる。
【0009】
そこで、画素回路から駆動トランジスタを排除した有機発光ダイオード表示装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この有機発光ダイオード表示装置において、複数のゲートラインと複数のデータラインおよび電源ラインとの各交差箇所に形成される複数の画素回路は、それぞれ選択トランジスタ、キャパシタおよび有機EL素子を有する1Tr1C型で構成されている。
【0010】
このような有機発光ダイオード表示装置においては、まず、ゲートラインが選択されることによって、選択トランジスタがオン状態となり、データラインからのビデオ信号であるデータ電位が有機EL素子に印加されるとともに、電荷としてキャパシタに蓄積される。続いて、ゲートラインが非選択の状態になると、キャパシタに蓄積された電荷が有機EL素子に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平8−54836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
特許文献1に記載の有機発光ダイオード表示装置では、選択トランジスタがオン状態の場合にデータ電位が有機EL素子に印加され、短期間に有機EL素子に電流が流れる。そのため、有機EL素子の駆動電流のピーク値が大きくなるとともに電流密度が高くなり、有機EL膜へのダメージが大きくなる。その結果、有機EL素子の劣化が早まり、寿命が短くなるという問題がある。
【0013】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、駆動トランジスタを用いることなく、有機EL素子の駆動電流のピーク値を小さくするとともに、電流密度を低減することができる有機発光ダイオード表示装置およびその駆動方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明に係る有機発光ダイオード表示装置は、データラインとゲートラインとの交差箇所に形成され、データラインがソース端子に接続され、ゲートラインがゲート端子に接続された第1トランジスタ、第1トランジスタのドレイン端子にアノードが接続され、カソードが定電位の電極に接続された有機EL素子、およびドレイン端子とアノードとの接続点に一端が接続された電荷蓄積用のキャパシタ、を有する画素回路と、キャパシタの他端に接続されたエミッションコントロールラインと、第1トランジスタがオン状態の間、エミッションコントロールラインの電位を、有機EL素子に電流が流れない低電位に保持するとともに、第1トランジスタがオフ状態になった後、エミッションコントロールラインの電位を、1垂直走査期間をかけて所定の電位まで上昇させる発光制御部と、を備えたものである。
【0015】
また、この発明に係る有機発光ダイオード表示装置は、データラインとゲートラインとの交差箇所に形成され、データラインがソース端子に接続され、ゲートラインがゲート端子に接続された第1トランジスタ、第1トランジスタのドレイン端子にアノードが接続された有機EL素子、およびドレイン端子とアノードとの接続点に一端が接続され、他端が定電位の電極に接続された電荷蓄積用のキャパシタ、を有する画素回路と、有機EL素子のカソードに接続されたエミッションコントロールラインと、第1トランジスタがオン状態の間、エミッションコントロールラインの電位を初期アノード電位よりも高い値に保持するとともに、第1トランジスタがオフ状態になった後、エミッションコントロールラインの電位を、1垂直走査期間をかけて所定の電位まで下降させる発光制御部と、を備えたものである。
【0016】
また、この発明に係る有機発光ダイオード表示装置の駆動方法は、データラインとゲートラインとの交差箇所に形成され、データラインがソース端子に接続され、ゲートラインがゲート端子に接続された第1トランジスタ、第1トランジスタのドレイン端子にアノードが接続され、カソードが定電位の電極に接続された有機EL素子、およびドレイン端子とアノードとの接続点に一端が接続された電荷蓄積用のキャパシタ、を有する画素回路を配列して構成された有機発光ダイオード表示装置の駆動方法であって、第1トランジスタをオン状態にするとともに、キャパシタの他端の電位を有機EL素子に電流が流れない低電位に保持して、データラインからのデータ電位を電荷としてキャパシタに蓄積する第1ステップと、第1トランジスタをオフ状態にするとともに、キャパシタの他端の電位を、1垂直走査期間をかけて所定の電位まで上昇させることにより、キャパシタに蓄積された電荷を有機EL素子に供給する第2ステップと、を備えたものである。
【0017】
また、この発明に係る有機発光ダイオード表示装置の駆動方法は、データラインとゲートラインとの交差箇所に形成され、データラインがソース端子に接続され、ゲートラインがゲート端子に接続された第1トランジスタ、第1トランジスタのドレイン端子にアノードが接続された有機EL素子、およびドレイン端子とアノードとの接続点に一端が接続され、他端が定電位の電極に接続された電荷蓄積用のキャパシタ、を有する画素回路を配列して構成された有機発光ダイオード表示装置の駆動方法であって、第1トランジスタをオン状態にするとともに、有機EL素子のカソードの電位を、初期アノード電位よりも高い値に保持して、データラインからのデータ電位を電荷としてキャパシタに蓄積する第1ステップと、第1トランジスタをオフ状態にするとともに、有機EL素子のカソードの電位を、1垂直走査期間をかけて所定の電位まで下降させることにより、キャパシタに蓄積された電荷を有機EL素子に供給する第2ステップと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0018】
この発明に係る有機発光ダイオード表示装置およびその駆動方法によれば、第1トランジスタがオン状態の間、キャパシタの他端の電位が有機EL素子に電流が流れない低電位に保持されて、データラインからのデータ電位が電荷としてキャパシタに蓄積されるとともに、第1トランジスタがオフ状態になった後、キャパシタの他端の電位が、1垂直走査期間をかけて所定の電位まで上昇されることにより、キャパシタに蓄積された電荷が有機EL素子に供給される。
また、第1トランジスタがオン状態の間、有機EL素子のカソードの電位が初期アノード電位よりも高い値に保持されて、データラインからのデータ電位が電荷としてキャパシタに蓄積されるとともに、第1トランジスタがオフ状態になった後、有機EL素子のカソードの電位が、1垂直走査期間をかけて所定の電位まで下降されることにより、キャパシタに蓄積された電荷が有機EL素子に供給される。
そのため、駆動トランジスタを用いることなく、有機EL素子の駆動電流のピーク値を小さくするとともに、電流密度を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)、(b)は、この発明の実施の形態1に係る有機発光ダイオード表示装置を示す概略構成図である。
【図2】図1に示した有機発光ダイオード表示装置の画素回路を示す回路図である。
【図3】図2に示した画素回路の動作を示すタイミングチャートである。
【図4】この発明の実施の形態2に係る有機発光ダイオード表示装置の画素回路を示す回路図である。
【図5】図4に示した画素回路の動作を示すタイミングチャートである。
【図6】この発明の実施の形態3に係る有機発光ダイオード表示装置の画素回路を示す回路図である。
【図7】図6に示した画素回路の動作を示すタイミングチャートである。
【図8】従来の有機発光ダイオード表示装置における一般的な駆動トランジスタのVg−Id特性を示す説明図である。
【図9】従来の有機発光ダイオード表示装置における一般的な有機EL素子の発光効率と、有機EL素子の消費電力およびTFT基板で消費される電力が全体の消費電力に占める割合との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明に係る有機発光ダイオード表示装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明するが、各図において同一、または相当する部分については、同一符号を付して説明する。
【0021】
この発明の有機発光ダイオード表示装置は、各画素回路の有機EL素子に対して、1垂直走査期間(1V期間)にわたって一定の電流を流すことにより、有機EL素子での発光に必要な電荷量を確保した上で、駆動電流範囲が狭い場合であっても電流制御が容易で、かつ低消費電力、長寿命化を実現することができる。
【0022】
実施の形態1.
図1(a)および図1(b)は、この発明の実施の形態1に係る有機発光ダイオード表示装置100を示す概略構成図である。図1(a)において、有機発光ダイオード表示装置100は、表示パネル10、ゲートライン駆動回路20、データライン駆動回路30およびエミッションコントロールライン駆動回路40(発光制御部)を備えている。
【0023】
また、図1(b)において、ゲートライン駆動回路20には、複数のゲートライン21が水平方向に接続され、データライン駆動回路30には、複数のデータライン31が垂直方向に接続され、エミッションコントロールライン駆動回路40には、複数のエミッションコントロールライン41が水平方向に接続されている。
【0024】
ゲートライン駆動回路20、データライン駆動回路30およびエミッションコントロールライン駆動回路40は、それぞれゲートライン21、データライン31およびエミッションコントロールライン41の駆動を印加する電位によって制御する。
【0025】
また、複数のゲートライン21と複数のデータライン31との各交差箇所には、複数の画素回路50が形成されている。画素回路50は、赤色、緑色および青色の三原色にそれぞれ対応して形成され、3つの画素回路50が1画素を構成する。ここで、図1(b)では、複数の画素のうち、3画素分を抜粋して示している。
【0026】
図2は、図1に示した有機発光ダイオード表示装置100の画素回路50を示す回路図である。図2において、画素回路50は、選択トランジスタ51(第1トランジスタ)、有機EL素子52およびキャパシタ53を有している。すなわち、画素回路50は、1Tr1C型で構成されている。
【0027】
選択トランジスタ51は、データライン31とゲートライン21との交差箇所に形成されている。また、選択トランジスタ51のソース端子は、データライン31に接続され、ゲート端子はゲートライン21に接続され、ドレイン端子は有機EL素子52のアノードおよびキャパシタ53の一端に接続されている。
【0028】
有機EL素子52のアノードは、選択トランジスタ51のドレイン端子に接続され、カソードは定電位の電極に接続されている。キャパシタ53は、選択トランジスタ51のドレイン端子と有機EL素子52のアノードとの接続点に一端が接続され、他端がエミッションコントロールライン41に接続されている。
【0029】
続いて、図3のタイミングチャートを参照しながら、図2に示した画素回路50の動作について説明する。図3の横軸は、時間を示している。また、図3の縦軸は、ゲートライン21の電位、データライン31の電位、エミッションコントロールライン41の電位、および有機EL素子52に流れる電流Ioledを示している。
【0030】
まず、ゲートライン駆動回路20によってゲートライン21が活性化(“L”)されると、選択トランジスタ51がオン状態となり、データライン31からのビデオ信号であるデータ電位がノードVanoに入力される。このとき、エミッションコントロールライン駆動回路40は、データライン31からのデータ電位が電荷としてキャパシタ53に蓄積されるように、エミッションコントロールライン41の電位を、有機EL素子52に電流が流れない低電位に保持する。
【0031】
すなわち、エミッションコントロールライン駆動回路40は、キャパシタ53に電荷を蓄積する際、キャパシタ53から有機EL素子52に電荷が供給されないように、昇圧前のアノード電位Vanoを、有機EL素子52のカソード電位Vcatとしきい値電位Vtoledとの和(Vcat+Vtold)よりも低い値(Vano<Vcat+Vtold)に保持する。これにより、データライン31からのデータ電位が電荷としてキャパシタ53に蓄積される。
【0032】
ここで、キャパシタ53に蓄積される電荷は、1V期間に有機EL素子52が所望の輝度を発光するのに必要な電荷とする。具体的には、有機EL素子52が所望の輝度を発光するために、キャパシタ53の静電容量は、次式(1)を満たす必要がある。
【0033】
Cp≧Ipeak×fc/Vb ・・・(1)
【0034】
式(1)において、Cpはキャパシタ53の静電容量を示し、Ipeakは有機EL素子52の設定ピーク電流を示し、fcは駆動周波数を示し、Vbはキャパシタ53の両端に印加される電圧を示している。
【0035】
続いて、ゲートライン駆動回路20によってゲートライン21が不活性化(“H”)されると、選択トランジスタ51がオフ状態となり、キャパシタ53への電荷の蓄積が終了する。このとき、エミッションコントロールライン駆動回路40は、エミッションコントロールライン41の電位を、次に選択トランジスタ51がオン状態になるまでの1V期間をかけて、所定の電位まで上昇させる。
【0036】
ここで、所定の電位は、アノード電位Vanoが有機EL素子52のカソード電位としきい値電位との和(Vcat+Vtoled)以上となる電位(Vano≧Vcat+Vtold)であり、キャパシタ53に蓄積された(ほとんど)すべての電荷を有機EL素子52に駆動電流として供給できる電位とする。これにより、キャパシタ53に蓄積された電荷が有機EL素子52で光へと変換され、所望の輝度を発光する。
【0037】
また、エミッションコントロールライン駆動回路40が、1V期間をかけてエミッションコントロールライン41の電位を上昇させ、キャパシタ53に蓄積された電荷を低速度で有機EL素子52に供給することにより、図3に示されるように、有機EL素子52に平準化された駆動電流が流れることとなる。
【0038】
以上のように、実施の形態1によれば、第1トランジスタがオン状態の間、有機EL素子のアノード電位が、有機EL素子のカソード電位としきい値電位との和よりも低い値(Vano<Vcat+Vtoled)に保持されて、データラインからのデータ電位が電荷としてキャパシタに蓄積されるとともに、第1トランジスタがオフ状態になった後、キャパシタの他端の電位が、1V期間をかけて所定の電位まで上昇されることにより、キャパシタに蓄積された電荷が有機EL素子に供給される。
そのため、駆動トランジスタを用いることなく、有機EL素子の駆動電流のピーク値を小さくするとともに、電流密度を低減することができる。
【0039】
また、駆動トランジスタを用いず、駆動電荷をキャパシタに蓄積するので、微少電流制御が不要なので、将来的に有機EL素子の発光効率がさらに向上した場合でも、輝度制御を容易に実現することができる。
また、駆動トランジスタを用いず、オン抵抗による消費電力がないので、TFT基板で消費される電力を低減し、低消費電力を実現することができる。
さらに、有機EL素子に供給する電荷量を制御することで、駆動電流のピーク値を小さくするとともに、電流密度を低減することができ、長寿命化を実現することができる。
【0040】
実施の形態2.
図4は、この発明の実施の形態2に係る有機発光ダイオード表示装置の画素回路50Aを示す回路図である。図4において、画素回路50Aは、選択トランジスタ51、有機EL素子52およびキャパシタ53を有している。
【0041】
有機EL素子52のアノードは、選択トランジスタ51のドレイン端子に接続され、カソードはエミッションコントロールライン41に接続されている。キャパシタ53は、選択トランジスタ51のドレイン端子と有機EL素子52のアノードとの接続点に一端が接続され、他端が定電位の電極に接続されている。なお、その他の構成は、上述した実施の形態1と同様なので、説明を省略する。
【0042】
続いて、図5のタイミングチャートを参照しながら、図4に示した画素回路50Aの動作について説明する。図5の横軸は、時間を示している。また、図5の縦軸は、ゲートライン21の電位、データライン31の電位、エミッションコントロールライン41の電位、および有機EL素子52に流れる電流Ioledを示している。
【0043】
まず、ゲートライン駆動回路20によってゲートライン21が活性化(“L”)されると、選択トランジスタ51がオン状態となり、データライン31からのビデオ信号であるデータ電位がノードVanoに入力される。このとき、エミッションコントロールライン駆動回路40は、データライン31からのデータ電位が電荷としてキャパシタ53に蓄積されるように、エミッションコントロールライン41の電位を、有機EL素子52に電流が流れない高電位に保持する。
【0044】
すなわち、エミッションコントロールライン駆動回路40は、キャパシタ53に電荷を蓄積する際、キャパシタ53から有機EL素子52に電荷が供給されないように、エミッションコントロールライン41の電位Vecを、降圧前のアノード電位Vanoと有機EL素子52のしきい値電位Vtoledとの差(Vano−Vtoled)よりも高い値(Vec>Vano−Vtoled)に保持する。これにより、データライン31からのデータ電位が電荷としてキャパシタ53に蓄積される。
【0045】
ここで、キャパシタ53に蓄積される電荷は、1V期間に有機EL素子52が所望の輝度を発光するのに必要な電荷とする。具体的には、有機EL素子52が所望の輝度を発光するために、キャパシタ53の静電容量は、上述した式(1)を満たす必要がある。
【0046】
続いて、ゲートライン駆動回路20によってゲートライン21が不活性化(“H”)されると、選択トランジスタ51がオフ状態となり、キャパシタ53への電荷の蓄積が終了する。このとき、エミッションコントロールライン駆動回路40は、エミッションコントロールライン41の電位を、1V期間をかけて所定の電位まで下降させる。
【0047】
ここで、所定の電位は、pn接合ダイオードである有機EL素子52が導通する電位(アノード電位Vanoと有機EL素子52のしきい値電位Vtoledとの差(Vano−Vtoled))以下であり、キャパシタ53に蓄積された(ほとんど)すべての電荷を有機EL素子52に駆動電流として供給できる電位とする。これにより、キャパシタ53に蓄積された電荷が有機EL素子52で光へと変換され、所望の輝度を発光する。
【0048】
また、エミッションコントロールライン駆動回路40が、1V期間をかけてエミッションコントロールライン41の電位を下降させ、キャパシタ53に蓄積された電荷を低速度で有機EL素子52に供給することにより、図5に示されるように、有機EL素子52に平準化された駆動電流が流れることとなる。
【0049】
以上のように、実施の形態2によれば、第1トランジスタがオン状態の間、有機EL素子のカソードの電位が、キャパシタのノードVanoから有機EL素子に電流が流れない程度の高い値(降圧前のアノード電位と有機EL素子のしきい値電位との差よりも高い値(Vec>Vano−Vtoled))に保持されて、データラインからのデータ電位が電荷としてキャパシタに蓄積されるとともに、第1トランジスタがオフ状態になった後、有機EL素子のカソードの電位が、1V期間をかけて所定の電位まで下降されることにより、キャパシタに蓄積された電荷が有機EL素子に供給される。
そのため、上述した実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0050】
実施の形態3.
図6は、この発明の実施の形態3に係る有機発光ダイオード表示装置の画素回路50Bを示す回路図である。図6において、画素回路50Bは、選択トランジスタ51、有機EL素子52、キャパシタ53およびスイッチトランジスタ54(第2トランジスタ)を有している。
【0051】
選択トランジスタ51は、データライン31とゲートライン21との交差箇所に形成されている。また、選択トランジスタ51のソース端子は、データライン31に接続され、ゲート端子はゲートライン21に接続され、ドレイン端子はキャパシタ53の一端およびスイッチトランジスタ54のソース端子に接続されている。
【0052】
スイッチトランジスタ54のゲート端子は、エミッションスイッチライン55に接続され、ドレイン端子は有機EL素子52のアノードに接続されている。有機EL素子52のカソードは、エミッションコントロールライン41に接続されている。キャパシタ53は、選択トランジスタ51のドレイン端子とスイッチトランジスタ54のソース端子との接続点に一端が接続され、他端が定電位の電極に接続されている。
【0053】
ここで、エミッションスイッチライン55は、ゲートライン駆動回路20またはエミッションコントロールライン駆動回路40の近傍に設けられ、エミッションスイッチライン55の駆動を印加する電位によって制御するエミッションスイッチライン駆動回路(図示せず)に接続されている。なお、その他の構成は、上述した実施の形態2と同様なので、説明を省略する。
【0054】
続いて、図7のタイミングチャートを参照しながら、図6に示した画素回路50Bの動作について説明する。図7の横軸は、時間を示している。また、図7の縦軸は、ゲートライン21の電位、データライン31の電位、エミッションコントロールライン41の電位、エミッションスイッチライン55の電位、および有機EL素子52に流れる電流Ioledを示している。
【0055】
まず、ゲートライン駆動回路20によってゲートライン21が活性化(“L”)されると、選択トランジスタ51がオン状態となり、データライン31からのビデオ信号であるデータ電位がノードVdataに入力される。このとき、エミッションコントロールライン駆動回路40は、エミッションコントロールライン41の電位を(“H”)にし、初期アノード電位Vanoよりも高い値に保持する。
【0056】
また、エミッションスイッチライン駆動回路は、ゲートライン21が活性化(“L”)されたタイミングで、キャパシタ53と有機EL素子52とを遮断するように、スイッチライン55を不活性化(“H”)させ、スイッチトランジスタ54をオフ状態とする。
【0057】
ここで、キャパシタ53に蓄積される電荷は、1V期間に有機EL素子52が所望の輝度を発光するのに必要な電荷とする。具体的には、有機EL素子52が所望の輝度を発光するために、キャパシタ53の静電容量は、上述した式(1)を満たす必要がある。
【0058】
続いて、ゲートライン駆動回路20によってゲートライン21が不活性化(“H”)されると、選択トランジスタ51がオフ状態となり、キャパシタ53への電荷の蓄積が終了する。このとき、エミッションコントロールライン駆動回路40は、エミッションコントロールライン41の電位を、1V期間をかけて所定の電位まで下降させる。
【0059】
また、エミッションスイッチライン駆動回路は、ゲートライン21が不活性化(“H”)されたタイミングで、キャパシタ53と有機EL素子52とを接続するように、スイッチライン55を活性化(“L”)させ、スイッチトランジスタ54をオン状態とする。
【0060】
ここで、所定の電位は、pn接合ダイオードである有機EL素子52が導通する電位(アノード電位Vanoと有機EL素子52のしきい値電位Vtoledとの差(Vano−Vtoled))以下であり、キャパシタ53に蓄積された(ほとんど)すべての電荷を有機EL素子52に駆動電流として供給できる電位とする。これにより、キャパシタ53に蓄積された電荷が有機EL素子52で光へと変換され、所望の輝度を発光する。
【0061】
また、エミッションコントロールライン駆動回路40が、1V期間をかけてエミッションコントロールライン41の電位を下降させ、キャパシタ53に蓄積された電荷を低速度で有機EL素子52に供給することにより、図7に示されるように、有機EL素子52に平準化された駆動電流が流れることとなる。
【0062】
以上のように、実施の形態3によれば、第1トランジスタがオン状態の間、有機EL素子のカソードの電位が、初期アノード電位Vanoよりも高い値に保持されて、データラインからのデータ電位が電荷としてキャパシタに蓄積されるとともに、第1トランジスタがオフ状態になった後、有機EL素子のカソードの電位が、1V期間をかけて所定の電位まで下降されることにより、キャパシタに蓄積された電荷が有機EL素子に供給される。
また、画素回路は、第1トランジスタのドレイン端子とキャパシタとの接続点と、有機EL素子との間に接続され、第1トランジスタがオン状態の場合にオフ状態となり、第1トランジスタがオフ状態の場合にオン状態となる第2トランジスタを有している。
そのため、上述した実施の形態2と同様の効果を得ることができるとともに、キャパシタに電荷を蓄積する場合に、有機EL素子のしきい値電位のばらつきによって、キャパシタから有機EL素子に電荷が供給されることを防止することができる。
【0063】
なお、上記実施の形態1〜3では、エミッションコントロールライン駆動回路40が、エミッションコントロールライン41の電位を、1V期間かけて所定の電位まで上昇させると説明した。しかしながら、これに限定されず、エミッションコントロールライン駆動回路40は、エミッションコントロールライン41の電位を、1V期間に複数回所定の電位まで上昇させてもよい。
【符号の説明】
【0064】
10 表示パネル、20 ゲートライン駆動回路、21 ゲートライン、30 データライン駆動回路、31 データライン、40 エミッションコントロールライン駆動回路、41 エミッションコントロールライン、50、50A、50B 画素回路、51 選択トランジスタ、52 有機EL素子、53 キャパシタ、54 スイッチトランジスタ、55 エミッションスイッチライン、55 スイッチライン、100 有機発光ダイオード表示装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データラインとゲートラインとの交差箇所に形成され、前記データラインがソース端子に接続され、前記ゲートラインがゲート端子に接続された第1トランジスタ、
前記第1トランジスタのドレイン端子にアノードが接続され、カソードが定電位の電極に接続された有機EL素子、および
前記ドレイン端子と前記アノードとの接続点に一端が接続された電荷蓄積用のキャパシタ、を有する画素回路と、
前記キャパシタの他端に接続されたエミッションコントロールラインと、
前記第1トランジスタがオン状態の間、前記エミッションコントロールラインの電位を、前記有機EL素子に電流が流れない低電位に保持するとともに、前記第1トランジスタがオフ状態になった後、前記エミッションコントロールラインの電位を、1垂直走査期間をかけて所定の電位まで上昇させる発光制御部と、
を備えたことを特徴とする有機発光ダイオード表示装置。
【請求項2】
前記所定の電位は、前記有機EL素子のアノード電位が、前記有機EL素子のカソード電位としきい値電位との和以上になる電位であることを特徴とする請求項1に記載の有機発光ダイオード表示装置。
【請求項3】
前記発行制御部は、前記エミッションコントロールラインの電位を、1垂直走査期間をかけて前記所定の電位まで上昇させる代わりに、1垂直走査期間に複数回前記所定の電位まで上昇させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機発光ダイオード表示装置。
【請求項4】
データラインとゲートラインとの交差箇所に形成され、前記データラインがソース端子に接続され、前記ゲートラインがゲート端子に接続された第1トランジスタ、
前記第1トランジスタのドレイン端子にアノードが接続された有機EL素子、および
前記ドレイン端子と前記アノードとの接続点に一端が接続され、他端が定電位の電極に接続された電荷蓄積用のキャパシタ、を有する画素回路と、
前記有機EL素子のカソードに接続されたエミッションコントロールラインと、
前記第1トランジスタがオン状態の間、前記エミッションコントロールラインの電位を、初期アノード電位よりも高い値に保持するとともに、前記第1トランジスタがオフ状態になった後、前記エミッションコントロールラインの電位を、1垂直走査期間をかけて所定の電位まで下降させる発光制御部と、
を備えたことを特徴とする有機発光ダイオード表示装置。
【請求項5】
前記所定の電位は、前記有機EL素子が導通する電位以下であることを特徴とする請求項4に記載の有機発光ダイオード表示装置。
【請求項6】
前記発行制御部は、前記エミッションコントロールラインの電位を、1垂直走査期間をかけて前記所定の電位まで下降させる代わりに、1垂直走査期間に複数回前記所定の電位まで下降させることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の有機発光ダイオード表示装置。
【請求項7】
前記所定の電位は、前記キャパシタに蓄積されたほとんどすべての電荷を前記有機EL素子に駆動電流として供給できる電位であることを特徴とする請求項1から請求項6までの何れか1項に記載の有機発光ダイオード表示装置。
【請求項8】
前記キャパシタに蓄積される電荷について、次式
Cp≧Ipeak×fc/Vb
(ここで、Cpはキャパシタの静電容量、Ipeakは設定ピーク電流、fcは駆動周波数、Vbはキャパシタの両端に印加される電位)
が成立する
ことを特徴とする請求項1から請求項7までの何れか1項に記載の有機発光ダイオード表示装置。
【請求項9】
前記画素回路は、前記ドレイン端子と前記キャパシタとの接続点と、前記有機EL素子との間に接続され、前記第1トランジスタがオン状態の場合にオフ状態となり、前記第1トランジスタがオフ状態の場合にオン状態となる第2トランジスタをさらに有する
ことを特徴とする請求項1から請求項8までの何れか1項に記載の有機発光ダイオード表示装置。
【請求項10】
データラインとゲートラインとの交差箇所に形成され、前記データラインがソース端子に接続され、前記ゲートラインがゲート端子に接続された第1トランジスタ、
前記第1トランジスタのドレイン端子にアノードが接続され、カソードが定電位の電極に接続された有機EL素子、および
前記ドレイン端子と前記アノードとの接続点に一端が接続された電荷蓄積用のキャパシタ、を有する画素回路を配列して構成された有機発光ダイオード表示装置の駆動方法であって、
前記第1トランジスタをオン状態にするとともに、前記キャパシタの他端の電位を、前記有機EL素子に電流が流れない低電位に保持して、前記データラインからのデータ電位を電荷として前記キャパシタに蓄積する第1ステップと、
前記第1トランジスタをオフ状態にするとともに、前記キャパシタの他端の電位を、1垂直走査期間をかけて所定の電位まで上昇させることにより、前記キャパシタに蓄積された電荷を前記有機EL素子に供給する第2ステップと、
を備えたことを特徴とする有機発光ダイオード表示装置の駆動方法。
【請求項11】
前記所定の電位は、前記有機EL素子のアノード電位が、前記有機EL素子のカソード電位としきい値電位との和以上になる電位であることを特徴とする請求項10に記載の有機発光ダイオード表示装置の駆動方法。
【請求項12】
前記第2ステップは、前記キャパシタの他端の電位を、1垂直走査期間をかけて前記所定の電位まで上昇させる代わりに、1垂直走査期間に複数回前記所定の電位まで上昇させることを特徴とする請求項10または請求項11に記載の有機発光ダイオード表示装置の駆動方法。
【請求項13】
データラインとゲートラインとの交差箇所に形成され、前記データラインがソース端子に接続され、前記ゲートラインがゲート端子に接続された第1トランジスタ、
前記第1トランジスタのドレイン端子にアノードが接続された有機EL素子、および
前記ドレイン端子と前記アノードとの接続点に一端が接続され、他端が定電位の電極に接続された電荷蓄積用のキャパシタ、を有する画素回路を配列して構成された有機発光ダイオード表示装置の駆動方法であって、
前記第1トランジスタをオン状態にするとともに、前記有機EL素子のカソードの電位を、初期アノード電位よりも高い値に保持して、前記データラインからのデータ電位を電荷として前記キャパシタに蓄積する第1ステップと、
前記第1トランジスタをオフ状態にするとともに、前記有機EL素子のカソードの電位を、1垂直走査期間をかけて所定の電位まで下降させることにより、前記キャパシタに蓄積された電荷を前記有機EL素子に供給する第2ステップと、
を備えたことを特徴とする有機発光ダイオード表示装置の駆動方法。
【請求項14】
前記所定の電位は、前記有機EL素子が導通する電位以下であることを特徴とする請求項13に記載の有機発光ダイオード表示装置の駆動方法。
【請求項15】
前記第2ステップは、前記有機EL素子のカソードの電位を、1垂直走査期間をかけて前記所定の電位まで下降させる代わりに、1垂直走査期間に複数回前記所定の電位まで下降させることを特徴とする請求項13または請求項14に記載の有機発光ダイオード表示装置の駆動方法。
【請求項16】
前記所定の電位は、前記キャパシタに蓄積されたほとんどすべての電荷を前記有機EL素子に駆動電流として供給できる電位であることを特徴とする請求項10から請求項15までの何れか1項に記載の有機発光ダイオード表示装置の駆動方法。
【請求項17】
前記キャパシタに蓄積される電荷について、次式
Cp≧Ipeak×fc/Vb
(ここで、Cpはキャパシタの静電容量、Ipeakは設定ピーク電流、fcは駆動周波数、Vbはキャパシタの両端に印加される電位)
が成立する
ことを特徴とする請求項10から請求項16までの何れか1項に記載の有機発光ダイオード表示装置の駆動方法。
【請求項18】
前記画素回路は、前記ドレイン端子と前記キャパシタとの接続点と、前記有機EL素子との間に接続された第2トランジスタをさらに有し、
前記第1ステップは、前記第2トランジスタをオフ状態にするステップを含み、
前記第2ステップは、前記第2トランジスタをオン状態にするステップを含む
ことを特徴とする請求項10から請求項17までの何れか1項に記載の有機発光ダイオード表示装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−133186(P2012−133186A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285936(P2010−285936)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(501426046)エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド (732)
【Fターム(参考)】