有機繊維粘土複合材及びその製造方法、並びにこの複合材からなるガスケット又はパッキン
【課題】300℃以下の温度条件下においてジョイントシートガスケットと比較して高いシール性を有し、アスベストの代替品としてシール材等に好適に使用することが可能である有機繊維粘土複合材及びその製造方法、並びにこの複合材からなるガスケット又はパッキンを提供すること。
【解決手段】有機繊維と粘土を主要成分とし、有機繊維層に粘土が混合及び/又は積層及び/又は侵入した構造を有することを特徴とする複合材、及びその製造方法、並びにこの複合材からなるガスケット又はパッキンとする。
【解決手段】有機繊維と粘土を主要成分とし、有機繊維層に粘土が混合及び/又は積層及び/又は侵入した構造を有することを特徴とする複合材、及びその製造方法、並びにこの複合材からなるガスケット又はパッキンとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機繊維粘土複合材及びその製造方法、並びにこの複合材からなるガスケット又はパッキンに関するものであり、より詳しくは、300℃以下の温度条件下においてジョイントシートガスケットに比べてガスや液体等の流体に対する遮蔽(シール)性を有する有機繊維粘土複合材及びその製造方法、並びにこの複合材からなるガスケット又はパッキンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発電所や石油産業、石油化学、製紙、製鉄等の配管の接合部等に使用されるガスケット等のシール材、またポンプ、バルブの回転部のシール部にはパッキン等のシール材には、アスベスト製品が広く用いられてきた。しかし、アスベストは健康に甚大な被害を与えることから、アスベストの代替材料からなるシール材の開発が求められている。
【0003】
非アスベスト製のシール材としては、例えばジョイントシートガスケットや膨張黒鉛製ガスケットが知られている。(例えば特許文献1参照)
このうち、ジョイントシートガスケットは、膨張黒鉛製ガスケットよりも安価であるため、300℃以下の温度条件下において広く使用されている。
しかし、ジョイントシートガスケットはシール性や長期耐熱性が十分ではなく、高い気密性や液密性が要求される現場では使用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−16812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した状況に鑑みてなされたものであって、300℃以下の温度条件下においてジョイントシートガスケットと比較して高いシール性を有し、アスベストの代替品としてシール材等に好適に使用することが可能である有機繊維粘土複合材及びその製造方法、並びにこの複合材からなるガスケット又はパッキンを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、有機繊維と粘土を主要成分とし、有機繊維層に粘土が混合及び/又は積層及び/又は侵入した構造を有することを特徴とする複合材に関する。
請求項2に係る発明は、前記有機繊維が、アクリル繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ビニロン、ポリイミド繊維、ポリアミドイミド繊維、ポリベンゾイミダゾール繊維からなる群から選択される一種以上であり、前記粘土が、天然粘土、合成粘土、変性粘土のうちの一種以上からなることを特徴とする請求項1記載の複合材に関する。
請求項3に係る発明は、前記粘土が、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、マガディアイト、アイラライト、カネマイト、イライト、セリサイト、ノントロナイトのうちの一種以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の複合材に関する。
【0007】
請求項4に係る発明は、前記有機繊維がシート及び/又はフィルム、もしくはこれから得られる成形体をなしており、この成型体が粘土により被覆されてなることを特徴とする請求項1又は2記載の複合材に関する。
請求項5に係る発明は、前記変性粘土が、有機カチオンとしてリチウムイオンを含むものであることを特徴とする請求項2記載の複合材に関する。
請求項6に係る発明は、前記変性粘土が、粘土にシリル化剤を反応させたものであることを特徴とする請求項2記載の複合材に関する。
請求項7に係る発明は、前記変性粘土に有機カチオン組成が30重量%未満であることを特徴とする請求項5記載の複合材に関する。
請求項8に係る発明は、前記粘土とシリル化剤に対するシリル化剤の組成が30重量%未満であることを特徴とする請求項6記載の複合材に関する。
【0008】
請求項9に係る発明は、前記有機繊維層及び/又は前記粘土からなる粘土層が二層以上積層してなることを特徴とする請求項1乃至8いずれかに記載の複合材に関する。
請求項10に係る発明は、前記有機繊維からなるシート及び/又はフィルムと、前記粘土を主要成分とするシート及び/又はフィルムとが夫々一層以上積層されてなるシート又はフィルム、もしくはこれらから得られる成形体からなることを特徴とする請求項1記載の複合材に関する。
【0009】
請求項11に係る発明は、請求項1乃至10いずれかに記載の複合材からなることを特徴とするガスケット又はパッキンに関する。
請求項12に係る発明は、耐水コーティングされていることを特徴とする請求項11記載のガスケット又はパッキンに関する。
請求項13に係る発明は、金属薄板を含むことを特徴とする請求項11記載のガスケット又はパッキンに関する。
請求項14に係る発明は、シートガスケットであることを特徴とする請求項11記載のガスケット又はパッキンに関する。
請求項15に係る発明は、グロメット加工されていることを特徴とする請求項11記載のガスケット又はパッキンに関する。
【0010】
請求項16に係る発明は、渦巻きガスケット又はカンプロファイルガスケットであることを特徴とする請求項11記載のガスケット又はパッキンに関する。
請求項17に係る発明は、編組パッキンであることを特徴とする請求項11記載のガスケット又はパッキンに関する。
【0011】
請求項18に係る発明は、粘土粒子を分散させた粘土分散液を、有機繊維のシート又はフィルムもしくはこれらから得られる成形体に対して塗布及び/又は浸漬させることにより、前記有機繊維に粘土を積層及び/又は侵入させることを特徴とする複合材の製造方法に関する。
請求項19に係る発明は、前記粘土分散液が、天然粘土、合成粘土、変性粘土のうちの一種以上を含むことを特徴とする請求項18記載の複合材の製造方法に関する。
請求項20に係る発明は、前記粘土分散液が、水又は有機溶剤を含むことを特徴とする請求項18記載の複合材の製造方法に関する。
【0012】
請求項21に係る発明は、有機繊維のシート及び/又はフィルムと粘土を主要成分とするシート及び/又はフィルムを貼り合わせて積層することを特徴とする複合材の製造方法に関する。
請求項22に係る発明は、貼り合わせを冷間及び/又は熱間プレスで行うことを特徴とする請求項21記載の複合材の製造方法に関する。
請求項23に係る発明は、貼り合わせを圧延ローラで行うことを特徴とする請求項21記載の複合材の製造方法に関する。
請求項24に係る発明は、有機繊維と粘土を水に混合分散し、この分散液を製紙の要領で抄いてシート状又はフィルム状に成形することを特徴とする複合材の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る複合材は、有機繊維と粘土とからなるため、有機繊維のもつ可撓性、絶縁性、耐アルカリ性、耐水性、機械的強度等の種々の優れた特性を活かしつつ、粘土のもつ優れたシール性、耐熱性、絶縁性、可撓性、耐薬品性といった特性を向上させあるいは付与することができる。
そのため、発電所や石油精製、石油化学、製紙、製鉄、その他産業の配管の接合部等に用いられるガスケット、バルブ、ポンプの等の回転部のシールパッキン等のシール部に、300℃以下の温度条件下でシール材として好適に使用できる複合材を得ることができる。
また、本発明に係るガスケット又はパッキンは、上記特性を有する複合材から構成されているため、特に300℃以下の温度条件下においてアスベスト製のガスケット又はパッキンの代替品として好適に使用することが可能である。また、白系のため汚れ、粉落ち等を嫌う分野も含め、あらゆる産業分野に好適に用いることができる。また国産で大量にある資源を利用することができ、かつ有害物質を含まない環境に優しい材料で構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る複合材の第一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】本発明に係る複合材の第二実施形態を示す模式断面図である。
【図3】本発明に係る複合材の第三実施形態を示す模式断面図である。
【図4】本発明に係る複合材の第四実施形態を示す模式断面図である。
【図5】本発明に係る複合材の第五実施形態を示す模式断面図である。
【図6】本発明に係る複合材の第六実施形態を示す模式断面図である。
【図7】本発明に係る複合材の第七実施形態を示す模式断面図である。
【図8】本発明に係る複合材の第八実施形態を示す模式断面図である。
【図9】本発明に係る複合材における有機繊維層の一例であって、(a)は第一乃至第五実施形態の複合材における有機繊維層を構成するシート又はフィルムの例であり、(b)は第六乃至第八実施形態の複合材における有機繊維層を構成するシート又はフィルムの例である。
【図10】本発明に係る複合材における有機繊維層の一例であって、シート又はフィルム形状のものを成形して得られる成形体である。
【図11】本発明に係る複合材の製造方法の第一の例において、冷間プレス及び/又は熱間プレスによる方法を示す概略図である。
【図12】本発明に係る複合材の製造方法の第一の例において、圧延ロールによる方法を示す概略図である。
【図13】本発明に係る複合材の製造方法の第一の例において、接着剤による方法を示す概略図である。
【図14】本発明に係る複合材の製造方法の第三の例を示す概略図である。
【図15】本発明に係る複合材の製造方法の第四の例を示す概略図である。
【図16】本発明に係るガスケット又はパッキンの一例を示す図であって、(a)は外観図、(b)は縦断面図、(c)及び(d)は変更例を示す縦断面図である。
【図17】金属薄板を含むガスケット又はパッキンの一例を示す図であって、(a)は外観図、(b)は縦断面図、(c)及び(d)は変更例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る有機繊維粘土複合材及びその製造方法、並びにこの複合材からなるガスケット又はパッキンの好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
本発明に係る有機繊維粘土複合材(以下、複合材という)は、有機繊維と粘土を主要成分とし、有機繊維に粘土が混合及び/又は積層及び/又は侵入した構造を有するものである。
【0016】
有機繊維としては、アクリル繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ビニロン、ポリイミド繊維、ポリアミドイミド繊維、ポリベンゾイミダゾール繊維からなる群から選択される一種以上の有機繊維を好適に用いることができる。
【0017】
粘土としては、天然粘土、合成粘土、変性粘土のうちの一種以上を用いることができる。
より具体的には、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、スチーブンサイト、マガディサイト、アイラライト、カネマイト、イライト、セリサイト、ノントロナイトのうちの一種以上が好適に用いられる。
【0018】
本発明で用いる変性粘土に用いられる粘土としては、天然あるいは合成物、好適には、例えば、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、スチーブンサイト、マガディサイト、アイラライト、カネマイト、イライト、セリサイト、ノントロナイトのうちの一種以上、さらに好適には、それらの天然あるいは合成物のいずれか或いはそれらの混合物が例示される。
【0019】
本発明で用いられる変性粘土に用いられるカチオンとしては、リチウムイオンを含むもの(例えば、LiNO3)が例示される。リチウムイオンを含むものは耐水性が向上するという理由で好ましい。
リチウムイオンを含むものとする場合、変性粘土中のリチウムイオンの含有量を30重量%未満とする構成を好適に採用することができる。その理由は、リチウムイオンの含有量が30重量%以上であると、耐熱性の低下やガスバリア性の低下が生じるという理由で好ましくないからである。
【0020】
本発明で用いる変性粘土に含まれる有機物としては、第四級アンモニウムカチオン、第四級ホスホニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジウムカチオンが挙げられる。第四級アンモニウムカチオンとしては、特に限定されるものではないが、ジメチルオクタデシルタイプ、ジメチルステアリルベンジルタイプ、トリメチルステアリルタイプが例示される。また、類似の有機物として、第四級ホスホニウムカチオンが例示される。これらの有機物は、原料粘土のイオン交換によって粘土に導入される。
このイオン交換は、たとえば原料粘土を、大過剰の有機物を溶解した水に分散し、一定時間攪拌し、遠心分離或いは濾過により固液分離し、水により洗浄を繰り返すことにより行われる。これらのイオン交換プロセスは1回のみでもよいし、複数回繰り返してもよい。複数回繰り返すことにより、粘土に含まれるナトリウム、カルシウム等の交換性イオンが有機物によって交換される比率が高くなる。用いる有機物及び交換比率によって変性粘土の極性にバリエーションを持たせることができ、異なる極性の変性粘土はそれぞれ好適な添加物及び好適な溶剤が異なる。このとき、第四級アンモニウムカチオンの導入に用いられる試薬として、第四級アンモニウムカチオン塩化物が一般的に用いられる。第四級アンモニウムカチオンの導入と共に混入する塩素は水洗浄にて薄められるが、水洗浄を繰り返してもその濃度を150ppm以下にすることは困難である。しかし、エレクトロニクス、原子力発電用途等では塩素の混入を著しく嫌うものがあり、そのため塩素濃度を150ppm以下に抑えなければならないことがある。そのような場合は、第四級アンモニウム塩化物を用いず、塩素を含まない他の試薬、例えば第四級アンモニウム臭化物、第四級アンモニウムカチオン水酸化物を用いなければならない。
【0021】
本発明で用いられる変性粘土に含まれるシリル化剤としては、特に制限されるものではないが、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシランを例示することができる。粘土へのシリル化剤の導入方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、原料粘土と、原料粘土に対して2重量%のシリル化剤を混合し、それらをボールミルにより一時間ミルすることによって製造される(鬼形昌信、近藤三二、Clay Science、第9巻、第5号、299−310(1995)参照)
【0022】
本発明で用いられる変性粘土は、その処理方法によって種々の極性のものを作製することが可能であり、その極性により粘土分散液を作製するのに適した溶剤が異なる。粘土分散液を作製する際の溶剤としては、アルコール、エーテル、酢酸エチル、トルエン等を例示することができる。
【0023】
図1乃至図5は、夫々本発明に係る複合材の第一乃至第五実施形態を示す模式断面図である。
第一乃至第五実施形態の複合材(1)は、有機繊維層(2)に粘土層(3)が積層及び/又は侵入した構成を有するものである。
有機繊維層(2)は、有機繊維から形成されたフィルムやシート等から構成することができ、例えば有機繊維ペーパーが使用される。
【0024】
図1に示す第一実施形態の複合材(1)は、二層構造の複合材であって、有機繊維層(2)の片面に粘土層(3)が積層された構成を有するものである。
図2及び図3に夫々示す第二及び第三実施形態の複合材(1)は、三層構造の複合材である。第二実施形態の複合材(1)は有機繊維層(2)の両面に粘土層(3)が積層された構成を有するものである。
【0025】
図4に示す第四実施形態の複合材(1)は、四層以上(図示例では四層を示す)の積層構造をもつ複合材であって、有機繊維層(2)と粘土層(3)とが交互に積層された構成を有するものである。
この第四実施形態において、有機繊維層(2)と粘土層(3)の層数は特に限定されず、夫々二層以上の任意の層数に設定することができる。
【0026】
図5に示す第五実施形態の複合材(1)は、有機繊維層(2)の全面が粘土層(3)により被覆された構成を有している。
この第五実施形態においても、有機繊維層(2)と粘土層(3)の層数は特に限定されず、二層以上からなる有機繊維層(2)を一層の粘土層(3)により被覆する構成、一層の有機繊維層(2)を二層以上からなる粘土層(3)により被覆する構成、二層以上からなる有機繊維層(2)を二層以上からなる粘土層(3)により被覆する構成、のいずれも採用することができる。
【0027】
図6は、本発明に係る複合材の第六実施形態を示す模式断面図である。
第六実施形態の複合材(1)は、有機繊維層(2)の内部に粘土粒子(4)が侵入(混合)した構成を有するものである。
【0028】
図7は、本発明に係る複合材の第七実施形態を示す模式断面図である。
第七実施形態の複合材(1)は、上記第一乃至第五実施形態のような有機繊維層(2)と粘土層(3)の積層体において、有機繊維層(2)の内部に粘土粒子(4)が侵入(混合)した構成を有するものである。
尚、図7では、有機繊維層(2)と粘土層(3)との積層体として第一実施形態のものを用いた例を示したが、第二乃至第五実施形態のものを用いることも可能である。例えば、図8は、無機繊維層(2)と粘土層(3)との積層体として第二実施形態(図2参照)のものを用いた場合を示している。図8に示す複合材(第八実施形態の複合材)は、無機繊維層(2)の両面に粘土層(3)が積層された構成を有する複合材において、無機繊維層(2)の内部に粘土粒子(4)が侵入(混合)した構成を有する。
【0029】
上記した第一乃至第五実施形態の複合材(1)において、有機繊維層(2)は、図9(a)に示すような有機繊維のみからなるシート及び/又はフィルム、あるいはこのシート及び/又はフィルムを成形して得られる成形体(例えば図10参照)である。
上記した第六乃至第八実施形態の複合材(1)において、有機繊維層(2)は、図9(b)に示すような、粘土粒子(4)が内部に侵入(混合)した有機繊維のシート及び/又はフィルム、あるいはこのシート及び/又はフィルムを成形して得られる成形体(例えば図10参照)である。
【0030】
有機繊維層(2)を構成するシート又はフィルムは、アクリル繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ビニロン、ポリイミド繊維、ポリアミドイミド繊維、ポリベンゾイミダゾール繊維等の有機繊維を水に分散し、製紙の要領で抄いて成形して可撓性を有するシート状又はフィルム状とする方法等の公知の製法により得ることができる。
図6に示す有機繊維層(2)を構成するシート及び/又はフィルムの内部に粘土粒子(4)が侵入(混合)した複合材(1)は、アクリル繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ビニロン、ポリイミド繊維、ポリアミドイミド繊維、ポリベンゾイミダゾール繊維等の有機繊維と粘土を水に混合分散し、製紙の要領で抄いて成形して可撓性を有するシート状又はフィルム状とする方法等の公知の製法により得ることができる。
【0031】
有機繊維層(2)を構成するシート又はフィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、0.10〜1.0mm程度のものが好適に用いられる。
これは、厚みが0.10mm未満であると充分な強度が得られないおそれがあり、シート又はフィルムが破断するおそれがあり、厚みが1.0mmを超えると連続的に長尺のものを製造することが困難となり、いずれの場合も好ましくないためである。
【0032】
有機繊維層(2)を構成するシート又はフィルムの密度についても、特に限定されるものではない。
【0033】
有機繊維層(2)を構成する成形体(例えば図10参照)は、上記したようなシート及び/又はフィルムを金型に収容して加圧成型する等の任意の方法により得ることができる。
【0034】
上記した第一乃至第五実施形態と第七及び第八実施形態の複合材(1)において、粘土層(3)は、粘土を主要成分とするシート及び/又はフィルムから形成することができる。また、後述するように粘土分散液の塗布及び/又は浸漬により形成することもできる。粘土分散液の塗布方法としてはロールコーター、コンマコーター等のコーター方法又はスクリーン印刷法等があり、浸漬方法としては含浸浸漬等がある。
粘土を主要成分とするシート及び/又はフィルムとしては、粘土からなるシート及び/又はフィルム、もしくは粘土と添加物からなるシート及び/又はフィルムが用いられる。
【0035】
添加物としては、セルロイド、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ユリア樹脂、酢酸セルロース、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレン、ポリウレタン樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、不飽和ポリエステル、ケイ素樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリイミド、ポリスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタラート、ポリエーテルスルホン、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミドのうちの1種以上を用いることができる。
【0036】
以下、粘土を主要成分とするシート又はフィルムの製法の一例を説明する。
先ず、天然もしくは合成スメクタイト、又はこれらの混合物からなる粘土を、水又は水を主要成分とする液体に加え、希薄で均一な粘土分散液を調製する。
粘土中に含まれる固形分の割合は3〜15重量%であることが好ましい。また、粘土分散液の濃度は、好ましくは0.5〜10重量%、より好ましくは1〜3重量%とされる。更に、必要に応じて上記した添加物の1種以上を粘土分散液に添加して、液中に均一分散又は溶解させる。
次いで、粘土分散液を水平に静置して、粘土粒子をゆっくりと沈積させるとともに、分散媒である液体と粘土粒子を固液分離手段によって分離することにより、粘土薄膜を成形する。
最後に、粘土薄膜を110〜300℃の温度条件下で乾燥することにより、本発明において用いられる粘土を主要成分とするシート又はフィルムが得られる。
【0037】
上記製法における固液分離手段としては、遠心分離、濾過、真空乾燥、凍結真空乾燥、加熱蒸発のいずれか、もしくはこれらの手段の組み合わせが採用される。
これらの方法のうち、例えば、加熱蒸発法を用いる場合、真空引きにより予め脱気した粘土分散液を平坦なトレイに注ぎ、水平を保った状態で、強制送風式オーブン中で30〜70℃、好ましくは40〜50℃の温度条件下で、3時間から半日程度、好ましくは3〜5時間乾燥させることにより、粘土を主要成分とするシート又はフィルムを得る。
【0038】
このようにして製造された粘土を主要成分とするシート又はフィルムは、自立膜として利用可能な強度を有し、粘土粒子の積層が高度に配向されたものとなる。
粘土粒子の積層が高度に配向されるとは、粘土粒子の単位構造層(厚さ1nm)を、層面の向きを同一にして重ね、層面に垂直な方向に高い周期性をもたせることを意味している。
このような粘土粒子の配向を得るためには、希薄で均一な粘土分散液を水平に静置し、粘土粒子をゆっくりと沈積させるとともに、例えば、分散媒である液体をゆっくりと蒸発させて膜状に形成する必要がある。
【0039】
このように得られた粘土を主要成分とするシート又はフィルムは、膜厚が3〜100μm、好適には3〜30μmであり、ガスバリア性能は、厚さ30μmで酸素透過度0.1cc/m2・24hr・atm未満、水素透過度0.1cc/m2・24hr・atm未満である。ヘリウム、水素、酸素、窒素、空気の室温におけるガス透過係数は3.2×10−11cm2s−1cmHg−1であって、1000℃で24時間加熱処理後もガスバリア性の低下はみられない。
また、遮水性は、遮水係数が2×10−11cm/s以下であり、光透過性は、可視光(500nm)の透過性が75%以上であり、面積は100×40cm以上に大面積化することが可能であり、高耐熱性を有している。
【0040】
本発明で用いられる粘土を主要成分とするシート及び/又はフィルムは、粘土粒子の積層が高度に配向し、ピンホールが存在しない。また、可撓性に優れ、250℃以上600℃までの高温においても構造変化しないものである。更には、自立膜として用いることが可能であり、250℃を超える高温条件下で使用が可能であり、かつピンホールの存在しない緻密な材料であり、かつ気体・液体のバリアー性に優れたものである。
【0041】
本発明においては、有機繊維層(2)と複合化される粘土層(3)がガスバリア性に優れるため、例えばジョイントシートガスケットに比べてシール性に優れたガスケットを得ることができる。
【0042】
また、有機繊維層(2)は、可撓性、耐薬品性、耐アルカリ性、耐水性、絶縁性、機械的強度においても優れており、一方、粘土層(3)は、シール性(ガスバリア性)、耐熱性、耐食性、耐酸性、絶縁性においても優れている。
そのため、例えば有機繊維層(2)に粘土層(3)が積層された構成を有する第一乃至第五、第七及び第八実施形態の複合材(1)によれば、一方の層が他方の層の弱点を補完し、一方の層材料のみからなるシートでは使用が不可能であった用途への使用が可能となり、非常に高機能・高汎用性の複合材が得られる。
【0043】
例えば、有機繊維層のみでは高いガスバリア性が要求される用途への適用は困難であるが、粘土層を積層することによって、ガスバリア性が大きく高められ、高温で高いガスバリア性が要求される用途への適用が可能となる。
【0044】
更に第五実施形態の複合材によれば、有機繊維層(2)が粘土層(3)により被覆されていることにより、有機繊維層からの繊維粉の離脱を防ぐことが可能となり、複合材の周囲の汚染を防止できる。
【0045】
また、有機繊維層(2)に粘土層(3)が侵入した構成を有する第六乃至第八実施形態の複合材(1)によっても、粘土と有機繊維が互いの弱点を補完するため、一方の材料のみからなるシートでは使用が不可能であった用途への使用が可能となり、非常に高機能・高汎用性の複合材が得られる。
例えば、有機繊維層はガスバリア性が低いという欠点があり、粘土は水に弱いという欠点があるが、有機繊維層に粘土を侵入させた構造とすることによって、両者の欠点が補われた複合材となる。
【0046】
また、粘土粒子の配合率を調整することによって、有機繊維がもつ特性が強く発現される複合材とすることもできるし、粘土がもつ特性が強く発現される複合材とすることもできるため、使用用途に応じて最適な特性を有する複合材を得ることが可能となる。
本発明に係る複合材の製造方法の第一の例としては、上述した有機繊維のシート及び/又はフィルム(有機繊維層(2))と粘土を主要成分とするシート及び/又はフィルム(粘土層(3))を貼り合わせて積層する方法が挙げられる。
この方法によれば、上記第一乃第四実施形態の複合材(図1乃至図4参照)を得ることができる。
【0047】
有機繊維のシート及び/又はフィルム(例えば有機繊維ペーパー)と、粘土を主要成分とするシート及び/又はフィルムを貼り合わせる方法としては、冷間プレス及び/又は熱間プレスによる方法(図11参照)、圧延ロールによる方法(図12参照)、接着剤による方法(図13参照)などを挙げることができる。
【0048】
図11は、有機繊維のシート及び/又はフィルム(有機繊維層(2))と、粘土を主要成分とするシート及び/又はフィルム(粘土層(3))を重ねて、雄型(5)と雌型(6)からなるプレス金型を用いて圧縮することにより一体化している様子を示す概略図である。
【0049】
図12は、有機繊維のシート及び/又はフィルム(有機繊維層(2))と、粘土を主要成分とするシート及び/又はフィルム(粘土層(3))を重ねて圧延ローラ(7)により圧延することにより一体化している様子を示す概略図である。
【0050】
図13は、有機繊維のシート及び/又はフィルム(有機繊維層(2))と、粘土を主要成分とするシート及び/又はフィルム(粘土層(3))を、接着剤(8)を介して接着一体化している様子を示す概略図である。
【0051】
本発明に係る複合材の製造方法の第二の例としては、上述した有機繊維のシート及び/又はフィルムもしくはこれから得られる成型体(有機繊維層(2))に、粘土粒子を分散させた粘土分散液を塗布する方法が挙げられる。
粘土分散液としては、上述したものを使用することができる。
例えば、天然粘土、合成粘土のうちの一種以上を含むものが例示でき、また水又は有機溶剤を含むものが例示できる。
この方法によれば、上記第一及び第二実施形態の複合材(図1及び図2参照)を得ることができる。
【0052】
本発明に係る複合材の製造方法の第三の例としては、上述した有機繊維のシート及び/又はフィルムもしくはこれらから得られる成型体(有機繊維層(2))を、粘土粒子(4)を分散させた粘土分散液(13)に浸漬させる方法が挙げられる(図14参照)。
この方法によれば、上記第五及び第六実施形態の複合材(図5及び図6参照)を得ることができる。
また、上記第七及び第八実施形態の複合材(図7及び図8参照)は、この方法と第一又は第二の例の方法とを組み合わせることによって得ることができる。
【0053】
本発明に係る複合材の製造方法の第四の例としては、有機繊維のシート又はフィルム(2)(例えば有機繊維ペーパー)の表裏面に対して、上記の粘土粒子を分散させた粘土分散液(13)をロールコーター(21)でコートして乾燥することにより、複合材(1)を作成する方法が挙げられる。(図15参照)。
この方法によれば、上記第一実施形態の複合材(図5参照)を得ることができる。
【0054】
また、上記第一乃第八実施形態の複合材に、更に合成樹脂シート、金属シート、セラミックシート等の他の異種素材シートを積層することも可能である。
【0055】
上記した方法により得られたフィルム又はシート状の複合材を、更に金型等を用いて所要形状に成形することにより、ガスケット、パッキン、ヒートシンク等として使用することが可能である。
【0056】
本発明に係るガスケット又はパッキンは、上記した方法により得られたフィルム又はシート状の複合材を、金型等を用いて所定形状に成形することにより得られる。
本発明に係るガスケット又はパッキンの種類は特に限定されないが、ガスケットとしてはシートガスケット、渦巻きガスケット、カンプロファイルガスケット等を例示することができ、パッキンとしては編組パッキン等を例示することができる。
【0057】
図16は、本発明に係るガスケット又はパッキンの一例を示す図であって、(a)は外観図、(b)は縦断面図、(c)及び(d)は変更例を示す縦断面図である。
図示例のガスケット又はパッキンは、上記した方法により得られたフィルム又はシート状の複合材を、金型等を用いて偏平なリング状に成形したものである。
【0058】
図16(c)は、グロメット加工が施されたシートガスケットを示している。
具体的には、断面コ字状に折曲された厚さ0.05〜0.3mmの金属薄板(14)により、シートガスケットの内端面とこれに連続する上下面の一部が被覆された構造を有している。
また、図示していないが、内端面に加えて、外端面とこれに連続する上下面の一部についても金属薄板により被覆する構造を採用してもよい。
このようなグロメット加工を施すことにより、シートガスケットの内端面や外端面を補強することが可能となり、長期間に亘って安定したシール性を維持して、流体の漏洩を防ぐことが可能となる。
【0059】
図16(d)は、表面全体を覆うように耐水性コーティング(15)が施されたガスケット又はパッキンを示している。
耐水性コーティングに用いられるコーティング処理には、フッ素系膜、シリコーン系膜、アクリル樹脂膜、エチレンセルロース樹脂膜、高発水製膜等を例示することが出来る。
【0060】
図17は、本発明に係るガスケット又はパッキンの別の例を示す図であって、(a)は外観図、(b)は縦断面図、(c)乃至(d)は変更例を示す縦断面図である。
図示例のガスケット又はパッキンも、上記した方法により得られたフィルム又はシート状の複合材を、金型等を用いて偏平なリング状に成形したものである。
【0061】
図17は、金属薄板(16)を含むガスケット又はパッキンを示している。
金属薄板(16)は、図示のように、本発明の複合材からなる成形体によってサンドイッチ状に挟まれるように設けてもよいし、該複合材からなる成形体の表面及び/又は裏面に積層してもよい。
金属薄板(16)としては、耐食性に優れたステンレスを用いることが好ましい。
このように金属薄板(16)を含む構成を採用することにより、複合材からなるガスケット又はパッキンの機械的強度を向上させることが可能となる。
【0062】
図17(b)は平面状の金属薄板(16)を含むガスケット又はパッキンを示しており、図17(c)は上下方向に突起を有する金属薄板(16)を含むガスケット又はパッキンを示している。
これらの金属薄板(16)の厚さは0.05〜5mm程度とすることが好ましい。
図17(d)は鋸刃状断面を有する金属薄板(16)を含むガスケット又はパッキンを示している。
金属薄板(16)の厚さは1.0〜2.0mm程度、金属薄板(16)を上下から挟む複合材の厚みは上下夫々0.5〜2.0mm程度とすることが好ましい。
図17(e)は曲線波形断面を有する金属薄板(16)を含むとともに、表裏面が上記したコーティング材(15)により被覆されたガスケット又はパッキンを示している。
この場合、金属薄板(16)の厚さは0.5〜1.5mm程度、金属薄板(16)を上下から挟む複合材の厚みは上下夫々0.5〜1.5mm程度とすることが好ましい。
【0063】
本発明に係るガスケット又はパッキンは、金属薄板(16)を含まないガスケット又はパッキンであってもよい。(図16(a)、(b)参照)
【実施例】
【0064】
以下、本発明に係る複合材に使用される粘土分散液及び本発明に係る複合材からなるシートガスケットの実施例を示すことにより、本発明の効果をより明確なものとする。但し、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0065】
1.粘土分散液の実施例
ベントナイト系粘土(クニミネ工業株式会社製、商品名:クニピアF)を110℃で乾燥後、S330シリル化材を2wt%添加し、混合攪拌した後、LiNO3(0.5N、5wt%)を混合して2時間攪拌を3回繰り返した。更に洗浄30分を3回繰り返し、次に乾燥した粘土(シリル化リチウム粘土)10gを水90mlに混合攪拌し、更にジメチルアセトアミド350mlを加えて混合攪拌した。この混合溶液140gにポリイミド原料を4.3g添加し混合攪拌して粘土分散液を得た。
こうして得られた粘土混合液をPPフィルム又はPTFEフィルムにコートし、100℃で乾燥し、乾燥後PPフィルム又はPTFEフィルムから粘土膜を剥離することにより、ポリイミドシリル化リチウム粘土膜を得た。
得られたポリイミドシリル化リチウム粘土膜(厚さ15μm)の性能を表1に示す。
表1に示すように、得られたポリイミドシリル化リチウム粘土膜は、柔軟性、ガスバリア性、耐水性、耐薬品に優れていた。
【0066】
【表1】
【0067】
2.シートガスケットの実施例1
<試料の作製>
ベントナイト系粘土(クニミネ工業株式会社製、商品名:クニピアF)と、無機充填剤(タルク)と、有機繊維(アクリル繊維)と、有機バインダー(NBR)と、水とを表2に示す割合で配合して図6に示す断面構造を有する、有機繊維層の内部に粘土粒子が侵入(混合)した構成を有する複合材のシートを得た。このシートを成形して、図15(a)(b)に示す形状をもつシートガスケット(外径φ88mm、内径φ43mm、厚さ0.7mm、面積46.3cm2)を製造し、これを実施例のシートガスケットとした。
粘土を使用せずに他の材料は実施例と同じ材料を使用し、これらを表3に示す割合で配合して得たシートを成形して実施例と同じ形状をもつシートガスケットを製造し、これを比較例のシートガスケットとした。
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
<シール性試験>
実施例及び比較例のシートガスケットを、ガスケット試験装置(amtec社製、商品名:TEMES.fl.ai1)を用い、内圧(ヘリウムガス圧力)0.98MPa(10kgf/cm2)を加えた時の締め付け面圧とヘリウムガスの漏れ量を測定した。
実施例及び比較例の結果を表4に示す。
【0071】
【表4】
【0072】
表4から明らかなように、実施例(有機繊維粘土複合材)のガスケットは比較例(有機繊維)のガスケットに比べて、漏れ量が格段に少なく、高いシール性を有することが確認された。
【0073】
3.シートガスケットの実施例2
<試料の作製>
リチウム化粘土(S330シリル化)(クニミネ工業株式会社製、商品名:クニピアM)を、アクリル繊維を水に分散して製紙の要領で抄いて作製したアクリル繊維ペーパーにコーティング塗布した図5に示す断面構造を有する粘土複合材を成形して、図16(a)(b)に示す形状をもつシートガスケット(外径φ88mm、内径φ43mm、厚さ1.6mm、面積46.3cm2)を製造し、これを実施例のシートガスケットとした。
比較例として、実施例と同形状のジョイントシート製ガスケットを用意した。ジョイントシートとしては、アラミド繊維と膨張黒鉛粉末を主体とし、バインダーにゴムを配合した耐熱約300℃対応ジョイントシートを用いた。
【0074】
<シール性試験>
実施例及び比較例のシートガスケットを、ガスケット試験装置(amtec社製、商品名:TEMES.fl.ai1)を用い、内圧(ヘリウムガス圧力)0.98MPa(10kgf/cm2)を加えた時の締め付け面圧とヘリウムガスの漏れ量を測定した。
実施例及び比較例の結果を表5及び表6に示す。
【0075】
【表5】
【0076】
【表6】
*1.70×10−8は、測定限界値
【0077】
表5,6に示すように、実施例のガスケット(有機繊維粘土複合材製ガスケット)は比較例のガスケット(ジョイントシート製ガスケット)と比較して室温及び300℃における漏れ量が小さかった。この結果から、本発明に係るシートガスケットが、室温と高温のいずれにおいても従来のジョントシート製ガスケットよりも優れたシール性を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、発電所や化学プラントの配管の接合部等に用いられるジョイントシート、ガスケット、パッキン等のシール材、放熱シート、電磁波遮蔽材、防音シート等の分野を含む幅広い分野の種々の用途に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 有機繊維粘土複合材
2 有機繊維層
3 粘土層
4 粘土粒子
5 雄型(プレス金型)
6 雌型(プレス金型)
7 圧延ローラ
8 接着剤
9 巻回ローラ
10 有機繊維分散液
11 粘土
12 有機繊維粉末と粘土粒子混合液
13 粘土分散液
14 金属薄板(グロメット加工用)
15 耐水性コーティング
16 金属薄板(強度補強用)
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機繊維粘土複合材及びその製造方法、並びにこの複合材からなるガスケット又はパッキンに関するものであり、より詳しくは、300℃以下の温度条件下においてジョイントシートガスケットに比べてガスや液体等の流体に対する遮蔽(シール)性を有する有機繊維粘土複合材及びその製造方法、並びにこの複合材からなるガスケット又はパッキンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発電所や石油産業、石油化学、製紙、製鉄等の配管の接合部等に使用されるガスケット等のシール材、またポンプ、バルブの回転部のシール部にはパッキン等のシール材には、アスベスト製品が広く用いられてきた。しかし、アスベストは健康に甚大な被害を与えることから、アスベストの代替材料からなるシール材の開発が求められている。
【0003】
非アスベスト製のシール材としては、例えばジョイントシートガスケットや膨張黒鉛製ガスケットが知られている。(例えば特許文献1参照)
このうち、ジョイントシートガスケットは、膨張黒鉛製ガスケットよりも安価であるため、300℃以下の温度条件下において広く使用されている。
しかし、ジョイントシートガスケットはシール性や長期耐熱性が十分ではなく、高い気密性や液密性が要求される現場では使用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−16812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した状況に鑑みてなされたものであって、300℃以下の温度条件下においてジョイントシートガスケットと比較して高いシール性を有し、アスベストの代替品としてシール材等に好適に使用することが可能である有機繊維粘土複合材及びその製造方法、並びにこの複合材からなるガスケット又はパッキンを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、有機繊維と粘土を主要成分とし、有機繊維層に粘土が混合及び/又は積層及び/又は侵入した構造を有することを特徴とする複合材に関する。
請求項2に係る発明は、前記有機繊維が、アクリル繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ビニロン、ポリイミド繊維、ポリアミドイミド繊維、ポリベンゾイミダゾール繊維からなる群から選択される一種以上であり、前記粘土が、天然粘土、合成粘土、変性粘土のうちの一種以上からなることを特徴とする請求項1記載の複合材に関する。
請求項3に係る発明は、前記粘土が、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、マガディアイト、アイラライト、カネマイト、イライト、セリサイト、ノントロナイトのうちの一種以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の複合材に関する。
【0007】
請求項4に係る発明は、前記有機繊維がシート及び/又はフィルム、もしくはこれから得られる成形体をなしており、この成型体が粘土により被覆されてなることを特徴とする請求項1又は2記載の複合材に関する。
請求項5に係る発明は、前記変性粘土が、有機カチオンとしてリチウムイオンを含むものであることを特徴とする請求項2記載の複合材に関する。
請求項6に係る発明は、前記変性粘土が、粘土にシリル化剤を反応させたものであることを特徴とする請求項2記載の複合材に関する。
請求項7に係る発明は、前記変性粘土に有機カチオン組成が30重量%未満であることを特徴とする請求項5記載の複合材に関する。
請求項8に係る発明は、前記粘土とシリル化剤に対するシリル化剤の組成が30重量%未満であることを特徴とする請求項6記載の複合材に関する。
【0008】
請求項9に係る発明は、前記有機繊維層及び/又は前記粘土からなる粘土層が二層以上積層してなることを特徴とする請求項1乃至8いずれかに記載の複合材に関する。
請求項10に係る発明は、前記有機繊維からなるシート及び/又はフィルムと、前記粘土を主要成分とするシート及び/又はフィルムとが夫々一層以上積層されてなるシート又はフィルム、もしくはこれらから得られる成形体からなることを特徴とする請求項1記載の複合材に関する。
【0009】
請求項11に係る発明は、請求項1乃至10いずれかに記載の複合材からなることを特徴とするガスケット又はパッキンに関する。
請求項12に係る発明は、耐水コーティングされていることを特徴とする請求項11記載のガスケット又はパッキンに関する。
請求項13に係る発明は、金属薄板を含むことを特徴とする請求項11記載のガスケット又はパッキンに関する。
請求項14に係る発明は、シートガスケットであることを特徴とする請求項11記載のガスケット又はパッキンに関する。
請求項15に係る発明は、グロメット加工されていることを特徴とする請求項11記載のガスケット又はパッキンに関する。
【0010】
請求項16に係る発明は、渦巻きガスケット又はカンプロファイルガスケットであることを特徴とする請求項11記載のガスケット又はパッキンに関する。
請求項17に係る発明は、編組パッキンであることを特徴とする請求項11記載のガスケット又はパッキンに関する。
【0011】
請求項18に係る発明は、粘土粒子を分散させた粘土分散液を、有機繊維のシート又はフィルムもしくはこれらから得られる成形体に対して塗布及び/又は浸漬させることにより、前記有機繊維に粘土を積層及び/又は侵入させることを特徴とする複合材の製造方法に関する。
請求項19に係る発明は、前記粘土分散液が、天然粘土、合成粘土、変性粘土のうちの一種以上を含むことを特徴とする請求項18記載の複合材の製造方法に関する。
請求項20に係る発明は、前記粘土分散液が、水又は有機溶剤を含むことを特徴とする請求項18記載の複合材の製造方法に関する。
【0012】
請求項21に係る発明は、有機繊維のシート及び/又はフィルムと粘土を主要成分とするシート及び/又はフィルムを貼り合わせて積層することを特徴とする複合材の製造方法に関する。
請求項22に係る発明は、貼り合わせを冷間及び/又は熱間プレスで行うことを特徴とする請求項21記載の複合材の製造方法に関する。
請求項23に係る発明は、貼り合わせを圧延ローラで行うことを特徴とする請求項21記載の複合材の製造方法に関する。
請求項24に係る発明は、有機繊維と粘土を水に混合分散し、この分散液を製紙の要領で抄いてシート状又はフィルム状に成形することを特徴とする複合材の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る複合材は、有機繊維と粘土とからなるため、有機繊維のもつ可撓性、絶縁性、耐アルカリ性、耐水性、機械的強度等の種々の優れた特性を活かしつつ、粘土のもつ優れたシール性、耐熱性、絶縁性、可撓性、耐薬品性といった特性を向上させあるいは付与することができる。
そのため、発電所や石油精製、石油化学、製紙、製鉄、その他産業の配管の接合部等に用いられるガスケット、バルブ、ポンプの等の回転部のシールパッキン等のシール部に、300℃以下の温度条件下でシール材として好適に使用できる複合材を得ることができる。
また、本発明に係るガスケット又はパッキンは、上記特性を有する複合材から構成されているため、特に300℃以下の温度条件下においてアスベスト製のガスケット又はパッキンの代替品として好適に使用することが可能である。また、白系のため汚れ、粉落ち等を嫌う分野も含め、あらゆる産業分野に好適に用いることができる。また国産で大量にある資源を利用することができ、かつ有害物質を含まない環境に優しい材料で構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る複合材の第一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】本発明に係る複合材の第二実施形態を示す模式断面図である。
【図3】本発明に係る複合材の第三実施形態を示す模式断面図である。
【図4】本発明に係る複合材の第四実施形態を示す模式断面図である。
【図5】本発明に係る複合材の第五実施形態を示す模式断面図である。
【図6】本発明に係る複合材の第六実施形態を示す模式断面図である。
【図7】本発明に係る複合材の第七実施形態を示す模式断面図である。
【図8】本発明に係る複合材の第八実施形態を示す模式断面図である。
【図9】本発明に係る複合材における有機繊維層の一例であって、(a)は第一乃至第五実施形態の複合材における有機繊維層を構成するシート又はフィルムの例であり、(b)は第六乃至第八実施形態の複合材における有機繊維層を構成するシート又はフィルムの例である。
【図10】本発明に係る複合材における有機繊維層の一例であって、シート又はフィルム形状のものを成形して得られる成形体である。
【図11】本発明に係る複合材の製造方法の第一の例において、冷間プレス及び/又は熱間プレスによる方法を示す概略図である。
【図12】本発明に係る複合材の製造方法の第一の例において、圧延ロールによる方法を示す概略図である。
【図13】本発明に係る複合材の製造方法の第一の例において、接着剤による方法を示す概略図である。
【図14】本発明に係る複合材の製造方法の第三の例を示す概略図である。
【図15】本発明に係る複合材の製造方法の第四の例を示す概略図である。
【図16】本発明に係るガスケット又はパッキンの一例を示す図であって、(a)は外観図、(b)は縦断面図、(c)及び(d)は変更例を示す縦断面図である。
【図17】金属薄板を含むガスケット又はパッキンの一例を示す図であって、(a)は外観図、(b)は縦断面図、(c)及び(d)は変更例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る有機繊維粘土複合材及びその製造方法、並びにこの複合材からなるガスケット又はパッキンの好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
本発明に係る有機繊維粘土複合材(以下、複合材という)は、有機繊維と粘土を主要成分とし、有機繊維に粘土が混合及び/又は積層及び/又は侵入した構造を有するものである。
【0016】
有機繊維としては、アクリル繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ビニロン、ポリイミド繊維、ポリアミドイミド繊維、ポリベンゾイミダゾール繊維からなる群から選択される一種以上の有機繊維を好適に用いることができる。
【0017】
粘土としては、天然粘土、合成粘土、変性粘土のうちの一種以上を用いることができる。
より具体的には、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、スチーブンサイト、マガディサイト、アイラライト、カネマイト、イライト、セリサイト、ノントロナイトのうちの一種以上が好適に用いられる。
【0018】
本発明で用いる変性粘土に用いられる粘土としては、天然あるいは合成物、好適には、例えば、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、スチーブンサイト、マガディサイト、アイラライト、カネマイト、イライト、セリサイト、ノントロナイトのうちの一種以上、さらに好適には、それらの天然あるいは合成物のいずれか或いはそれらの混合物が例示される。
【0019】
本発明で用いられる変性粘土に用いられるカチオンとしては、リチウムイオンを含むもの(例えば、LiNO3)が例示される。リチウムイオンを含むものは耐水性が向上するという理由で好ましい。
リチウムイオンを含むものとする場合、変性粘土中のリチウムイオンの含有量を30重量%未満とする構成を好適に採用することができる。その理由は、リチウムイオンの含有量が30重量%以上であると、耐熱性の低下やガスバリア性の低下が生じるという理由で好ましくないからである。
【0020】
本発明で用いる変性粘土に含まれる有機物としては、第四級アンモニウムカチオン、第四級ホスホニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジウムカチオンが挙げられる。第四級アンモニウムカチオンとしては、特に限定されるものではないが、ジメチルオクタデシルタイプ、ジメチルステアリルベンジルタイプ、トリメチルステアリルタイプが例示される。また、類似の有機物として、第四級ホスホニウムカチオンが例示される。これらの有機物は、原料粘土のイオン交換によって粘土に導入される。
このイオン交換は、たとえば原料粘土を、大過剰の有機物を溶解した水に分散し、一定時間攪拌し、遠心分離或いは濾過により固液分離し、水により洗浄を繰り返すことにより行われる。これらのイオン交換プロセスは1回のみでもよいし、複数回繰り返してもよい。複数回繰り返すことにより、粘土に含まれるナトリウム、カルシウム等の交換性イオンが有機物によって交換される比率が高くなる。用いる有機物及び交換比率によって変性粘土の極性にバリエーションを持たせることができ、異なる極性の変性粘土はそれぞれ好適な添加物及び好適な溶剤が異なる。このとき、第四級アンモニウムカチオンの導入に用いられる試薬として、第四級アンモニウムカチオン塩化物が一般的に用いられる。第四級アンモニウムカチオンの導入と共に混入する塩素は水洗浄にて薄められるが、水洗浄を繰り返してもその濃度を150ppm以下にすることは困難である。しかし、エレクトロニクス、原子力発電用途等では塩素の混入を著しく嫌うものがあり、そのため塩素濃度を150ppm以下に抑えなければならないことがある。そのような場合は、第四級アンモニウム塩化物を用いず、塩素を含まない他の試薬、例えば第四級アンモニウム臭化物、第四級アンモニウムカチオン水酸化物を用いなければならない。
【0021】
本発明で用いられる変性粘土に含まれるシリル化剤としては、特に制限されるものではないが、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシランを例示することができる。粘土へのシリル化剤の導入方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、原料粘土と、原料粘土に対して2重量%のシリル化剤を混合し、それらをボールミルにより一時間ミルすることによって製造される(鬼形昌信、近藤三二、Clay Science、第9巻、第5号、299−310(1995)参照)
【0022】
本発明で用いられる変性粘土は、その処理方法によって種々の極性のものを作製することが可能であり、その極性により粘土分散液を作製するのに適した溶剤が異なる。粘土分散液を作製する際の溶剤としては、アルコール、エーテル、酢酸エチル、トルエン等を例示することができる。
【0023】
図1乃至図5は、夫々本発明に係る複合材の第一乃至第五実施形態を示す模式断面図である。
第一乃至第五実施形態の複合材(1)は、有機繊維層(2)に粘土層(3)が積層及び/又は侵入した構成を有するものである。
有機繊維層(2)は、有機繊維から形成されたフィルムやシート等から構成することができ、例えば有機繊維ペーパーが使用される。
【0024】
図1に示す第一実施形態の複合材(1)は、二層構造の複合材であって、有機繊維層(2)の片面に粘土層(3)が積層された構成を有するものである。
図2及び図3に夫々示す第二及び第三実施形態の複合材(1)は、三層構造の複合材である。第二実施形態の複合材(1)は有機繊維層(2)の両面に粘土層(3)が積層された構成を有するものである。
【0025】
図4に示す第四実施形態の複合材(1)は、四層以上(図示例では四層を示す)の積層構造をもつ複合材であって、有機繊維層(2)と粘土層(3)とが交互に積層された構成を有するものである。
この第四実施形態において、有機繊維層(2)と粘土層(3)の層数は特に限定されず、夫々二層以上の任意の層数に設定することができる。
【0026】
図5に示す第五実施形態の複合材(1)は、有機繊維層(2)の全面が粘土層(3)により被覆された構成を有している。
この第五実施形態においても、有機繊維層(2)と粘土層(3)の層数は特に限定されず、二層以上からなる有機繊維層(2)を一層の粘土層(3)により被覆する構成、一層の有機繊維層(2)を二層以上からなる粘土層(3)により被覆する構成、二層以上からなる有機繊維層(2)を二層以上からなる粘土層(3)により被覆する構成、のいずれも採用することができる。
【0027】
図6は、本発明に係る複合材の第六実施形態を示す模式断面図である。
第六実施形態の複合材(1)は、有機繊維層(2)の内部に粘土粒子(4)が侵入(混合)した構成を有するものである。
【0028】
図7は、本発明に係る複合材の第七実施形態を示す模式断面図である。
第七実施形態の複合材(1)は、上記第一乃至第五実施形態のような有機繊維層(2)と粘土層(3)の積層体において、有機繊維層(2)の内部に粘土粒子(4)が侵入(混合)した構成を有するものである。
尚、図7では、有機繊維層(2)と粘土層(3)との積層体として第一実施形態のものを用いた例を示したが、第二乃至第五実施形態のものを用いることも可能である。例えば、図8は、無機繊維層(2)と粘土層(3)との積層体として第二実施形態(図2参照)のものを用いた場合を示している。図8に示す複合材(第八実施形態の複合材)は、無機繊維層(2)の両面に粘土層(3)が積層された構成を有する複合材において、無機繊維層(2)の内部に粘土粒子(4)が侵入(混合)した構成を有する。
【0029】
上記した第一乃至第五実施形態の複合材(1)において、有機繊維層(2)は、図9(a)に示すような有機繊維のみからなるシート及び/又はフィルム、あるいはこのシート及び/又はフィルムを成形して得られる成形体(例えば図10参照)である。
上記した第六乃至第八実施形態の複合材(1)において、有機繊維層(2)は、図9(b)に示すような、粘土粒子(4)が内部に侵入(混合)した有機繊維のシート及び/又はフィルム、あるいはこのシート及び/又はフィルムを成形して得られる成形体(例えば図10参照)である。
【0030】
有機繊維層(2)を構成するシート又はフィルムは、アクリル繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ビニロン、ポリイミド繊維、ポリアミドイミド繊維、ポリベンゾイミダゾール繊維等の有機繊維を水に分散し、製紙の要領で抄いて成形して可撓性を有するシート状又はフィルム状とする方法等の公知の製法により得ることができる。
図6に示す有機繊維層(2)を構成するシート及び/又はフィルムの内部に粘土粒子(4)が侵入(混合)した複合材(1)は、アクリル繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ビニロン、ポリイミド繊維、ポリアミドイミド繊維、ポリベンゾイミダゾール繊維等の有機繊維と粘土を水に混合分散し、製紙の要領で抄いて成形して可撓性を有するシート状又はフィルム状とする方法等の公知の製法により得ることができる。
【0031】
有機繊維層(2)を構成するシート又はフィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、0.10〜1.0mm程度のものが好適に用いられる。
これは、厚みが0.10mm未満であると充分な強度が得られないおそれがあり、シート又はフィルムが破断するおそれがあり、厚みが1.0mmを超えると連続的に長尺のものを製造することが困難となり、いずれの場合も好ましくないためである。
【0032】
有機繊維層(2)を構成するシート又はフィルムの密度についても、特に限定されるものではない。
【0033】
有機繊維層(2)を構成する成形体(例えば図10参照)は、上記したようなシート及び/又はフィルムを金型に収容して加圧成型する等の任意の方法により得ることができる。
【0034】
上記した第一乃至第五実施形態と第七及び第八実施形態の複合材(1)において、粘土層(3)は、粘土を主要成分とするシート及び/又はフィルムから形成することができる。また、後述するように粘土分散液の塗布及び/又は浸漬により形成することもできる。粘土分散液の塗布方法としてはロールコーター、コンマコーター等のコーター方法又はスクリーン印刷法等があり、浸漬方法としては含浸浸漬等がある。
粘土を主要成分とするシート及び/又はフィルムとしては、粘土からなるシート及び/又はフィルム、もしくは粘土と添加物からなるシート及び/又はフィルムが用いられる。
【0035】
添加物としては、セルロイド、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ユリア樹脂、酢酸セルロース、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレン、ポリウレタン樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、不飽和ポリエステル、ケイ素樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリイミド、ポリスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタラート、ポリエーテルスルホン、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミドのうちの1種以上を用いることができる。
【0036】
以下、粘土を主要成分とするシート又はフィルムの製法の一例を説明する。
先ず、天然もしくは合成スメクタイト、又はこれらの混合物からなる粘土を、水又は水を主要成分とする液体に加え、希薄で均一な粘土分散液を調製する。
粘土中に含まれる固形分の割合は3〜15重量%であることが好ましい。また、粘土分散液の濃度は、好ましくは0.5〜10重量%、より好ましくは1〜3重量%とされる。更に、必要に応じて上記した添加物の1種以上を粘土分散液に添加して、液中に均一分散又は溶解させる。
次いで、粘土分散液を水平に静置して、粘土粒子をゆっくりと沈積させるとともに、分散媒である液体と粘土粒子を固液分離手段によって分離することにより、粘土薄膜を成形する。
最後に、粘土薄膜を110〜300℃の温度条件下で乾燥することにより、本発明において用いられる粘土を主要成分とするシート又はフィルムが得られる。
【0037】
上記製法における固液分離手段としては、遠心分離、濾過、真空乾燥、凍結真空乾燥、加熱蒸発のいずれか、もしくはこれらの手段の組み合わせが採用される。
これらの方法のうち、例えば、加熱蒸発法を用いる場合、真空引きにより予め脱気した粘土分散液を平坦なトレイに注ぎ、水平を保った状態で、強制送風式オーブン中で30〜70℃、好ましくは40〜50℃の温度条件下で、3時間から半日程度、好ましくは3〜5時間乾燥させることにより、粘土を主要成分とするシート又はフィルムを得る。
【0038】
このようにして製造された粘土を主要成分とするシート又はフィルムは、自立膜として利用可能な強度を有し、粘土粒子の積層が高度に配向されたものとなる。
粘土粒子の積層が高度に配向されるとは、粘土粒子の単位構造層(厚さ1nm)を、層面の向きを同一にして重ね、層面に垂直な方向に高い周期性をもたせることを意味している。
このような粘土粒子の配向を得るためには、希薄で均一な粘土分散液を水平に静置し、粘土粒子をゆっくりと沈積させるとともに、例えば、分散媒である液体をゆっくりと蒸発させて膜状に形成する必要がある。
【0039】
このように得られた粘土を主要成分とするシート又はフィルムは、膜厚が3〜100μm、好適には3〜30μmであり、ガスバリア性能は、厚さ30μmで酸素透過度0.1cc/m2・24hr・atm未満、水素透過度0.1cc/m2・24hr・atm未満である。ヘリウム、水素、酸素、窒素、空気の室温におけるガス透過係数は3.2×10−11cm2s−1cmHg−1であって、1000℃で24時間加熱処理後もガスバリア性の低下はみられない。
また、遮水性は、遮水係数が2×10−11cm/s以下であり、光透過性は、可視光(500nm)の透過性が75%以上であり、面積は100×40cm以上に大面積化することが可能であり、高耐熱性を有している。
【0040】
本発明で用いられる粘土を主要成分とするシート及び/又はフィルムは、粘土粒子の積層が高度に配向し、ピンホールが存在しない。また、可撓性に優れ、250℃以上600℃までの高温においても構造変化しないものである。更には、自立膜として用いることが可能であり、250℃を超える高温条件下で使用が可能であり、かつピンホールの存在しない緻密な材料であり、かつ気体・液体のバリアー性に優れたものである。
【0041】
本発明においては、有機繊維層(2)と複合化される粘土層(3)がガスバリア性に優れるため、例えばジョイントシートガスケットに比べてシール性に優れたガスケットを得ることができる。
【0042】
また、有機繊維層(2)は、可撓性、耐薬品性、耐アルカリ性、耐水性、絶縁性、機械的強度においても優れており、一方、粘土層(3)は、シール性(ガスバリア性)、耐熱性、耐食性、耐酸性、絶縁性においても優れている。
そのため、例えば有機繊維層(2)に粘土層(3)が積層された構成を有する第一乃至第五、第七及び第八実施形態の複合材(1)によれば、一方の層が他方の層の弱点を補完し、一方の層材料のみからなるシートでは使用が不可能であった用途への使用が可能となり、非常に高機能・高汎用性の複合材が得られる。
【0043】
例えば、有機繊維層のみでは高いガスバリア性が要求される用途への適用は困難であるが、粘土層を積層することによって、ガスバリア性が大きく高められ、高温で高いガスバリア性が要求される用途への適用が可能となる。
【0044】
更に第五実施形態の複合材によれば、有機繊維層(2)が粘土層(3)により被覆されていることにより、有機繊維層からの繊維粉の離脱を防ぐことが可能となり、複合材の周囲の汚染を防止できる。
【0045】
また、有機繊維層(2)に粘土層(3)が侵入した構成を有する第六乃至第八実施形態の複合材(1)によっても、粘土と有機繊維が互いの弱点を補完するため、一方の材料のみからなるシートでは使用が不可能であった用途への使用が可能となり、非常に高機能・高汎用性の複合材が得られる。
例えば、有機繊維層はガスバリア性が低いという欠点があり、粘土は水に弱いという欠点があるが、有機繊維層に粘土を侵入させた構造とすることによって、両者の欠点が補われた複合材となる。
【0046】
また、粘土粒子の配合率を調整することによって、有機繊維がもつ特性が強く発現される複合材とすることもできるし、粘土がもつ特性が強く発現される複合材とすることもできるため、使用用途に応じて最適な特性を有する複合材を得ることが可能となる。
本発明に係る複合材の製造方法の第一の例としては、上述した有機繊維のシート及び/又はフィルム(有機繊維層(2))と粘土を主要成分とするシート及び/又はフィルム(粘土層(3))を貼り合わせて積層する方法が挙げられる。
この方法によれば、上記第一乃第四実施形態の複合材(図1乃至図4参照)を得ることができる。
【0047】
有機繊維のシート及び/又はフィルム(例えば有機繊維ペーパー)と、粘土を主要成分とするシート及び/又はフィルムを貼り合わせる方法としては、冷間プレス及び/又は熱間プレスによる方法(図11参照)、圧延ロールによる方法(図12参照)、接着剤による方法(図13参照)などを挙げることができる。
【0048】
図11は、有機繊維のシート及び/又はフィルム(有機繊維層(2))と、粘土を主要成分とするシート及び/又はフィルム(粘土層(3))を重ねて、雄型(5)と雌型(6)からなるプレス金型を用いて圧縮することにより一体化している様子を示す概略図である。
【0049】
図12は、有機繊維のシート及び/又はフィルム(有機繊維層(2))と、粘土を主要成分とするシート及び/又はフィルム(粘土層(3))を重ねて圧延ローラ(7)により圧延することにより一体化している様子を示す概略図である。
【0050】
図13は、有機繊維のシート及び/又はフィルム(有機繊維層(2))と、粘土を主要成分とするシート及び/又はフィルム(粘土層(3))を、接着剤(8)を介して接着一体化している様子を示す概略図である。
【0051】
本発明に係る複合材の製造方法の第二の例としては、上述した有機繊維のシート及び/又はフィルムもしくはこれから得られる成型体(有機繊維層(2))に、粘土粒子を分散させた粘土分散液を塗布する方法が挙げられる。
粘土分散液としては、上述したものを使用することができる。
例えば、天然粘土、合成粘土のうちの一種以上を含むものが例示でき、また水又は有機溶剤を含むものが例示できる。
この方法によれば、上記第一及び第二実施形態の複合材(図1及び図2参照)を得ることができる。
【0052】
本発明に係る複合材の製造方法の第三の例としては、上述した有機繊維のシート及び/又はフィルムもしくはこれらから得られる成型体(有機繊維層(2))を、粘土粒子(4)を分散させた粘土分散液(13)に浸漬させる方法が挙げられる(図14参照)。
この方法によれば、上記第五及び第六実施形態の複合材(図5及び図6参照)を得ることができる。
また、上記第七及び第八実施形態の複合材(図7及び図8参照)は、この方法と第一又は第二の例の方法とを組み合わせることによって得ることができる。
【0053】
本発明に係る複合材の製造方法の第四の例としては、有機繊維のシート又はフィルム(2)(例えば有機繊維ペーパー)の表裏面に対して、上記の粘土粒子を分散させた粘土分散液(13)をロールコーター(21)でコートして乾燥することにより、複合材(1)を作成する方法が挙げられる。(図15参照)。
この方法によれば、上記第一実施形態の複合材(図5参照)を得ることができる。
【0054】
また、上記第一乃第八実施形態の複合材に、更に合成樹脂シート、金属シート、セラミックシート等の他の異種素材シートを積層することも可能である。
【0055】
上記した方法により得られたフィルム又はシート状の複合材を、更に金型等を用いて所要形状に成形することにより、ガスケット、パッキン、ヒートシンク等として使用することが可能である。
【0056】
本発明に係るガスケット又はパッキンは、上記した方法により得られたフィルム又はシート状の複合材を、金型等を用いて所定形状に成形することにより得られる。
本発明に係るガスケット又はパッキンの種類は特に限定されないが、ガスケットとしてはシートガスケット、渦巻きガスケット、カンプロファイルガスケット等を例示することができ、パッキンとしては編組パッキン等を例示することができる。
【0057】
図16は、本発明に係るガスケット又はパッキンの一例を示す図であって、(a)は外観図、(b)は縦断面図、(c)及び(d)は変更例を示す縦断面図である。
図示例のガスケット又はパッキンは、上記した方法により得られたフィルム又はシート状の複合材を、金型等を用いて偏平なリング状に成形したものである。
【0058】
図16(c)は、グロメット加工が施されたシートガスケットを示している。
具体的には、断面コ字状に折曲された厚さ0.05〜0.3mmの金属薄板(14)により、シートガスケットの内端面とこれに連続する上下面の一部が被覆された構造を有している。
また、図示していないが、内端面に加えて、外端面とこれに連続する上下面の一部についても金属薄板により被覆する構造を採用してもよい。
このようなグロメット加工を施すことにより、シートガスケットの内端面や外端面を補強することが可能となり、長期間に亘って安定したシール性を維持して、流体の漏洩を防ぐことが可能となる。
【0059】
図16(d)は、表面全体を覆うように耐水性コーティング(15)が施されたガスケット又はパッキンを示している。
耐水性コーティングに用いられるコーティング処理には、フッ素系膜、シリコーン系膜、アクリル樹脂膜、エチレンセルロース樹脂膜、高発水製膜等を例示することが出来る。
【0060】
図17は、本発明に係るガスケット又はパッキンの別の例を示す図であって、(a)は外観図、(b)は縦断面図、(c)乃至(d)は変更例を示す縦断面図である。
図示例のガスケット又はパッキンも、上記した方法により得られたフィルム又はシート状の複合材を、金型等を用いて偏平なリング状に成形したものである。
【0061】
図17は、金属薄板(16)を含むガスケット又はパッキンを示している。
金属薄板(16)は、図示のように、本発明の複合材からなる成形体によってサンドイッチ状に挟まれるように設けてもよいし、該複合材からなる成形体の表面及び/又は裏面に積層してもよい。
金属薄板(16)としては、耐食性に優れたステンレスを用いることが好ましい。
このように金属薄板(16)を含む構成を採用することにより、複合材からなるガスケット又はパッキンの機械的強度を向上させることが可能となる。
【0062】
図17(b)は平面状の金属薄板(16)を含むガスケット又はパッキンを示しており、図17(c)は上下方向に突起を有する金属薄板(16)を含むガスケット又はパッキンを示している。
これらの金属薄板(16)の厚さは0.05〜5mm程度とすることが好ましい。
図17(d)は鋸刃状断面を有する金属薄板(16)を含むガスケット又はパッキンを示している。
金属薄板(16)の厚さは1.0〜2.0mm程度、金属薄板(16)を上下から挟む複合材の厚みは上下夫々0.5〜2.0mm程度とすることが好ましい。
図17(e)は曲線波形断面を有する金属薄板(16)を含むとともに、表裏面が上記したコーティング材(15)により被覆されたガスケット又はパッキンを示している。
この場合、金属薄板(16)の厚さは0.5〜1.5mm程度、金属薄板(16)を上下から挟む複合材の厚みは上下夫々0.5〜1.5mm程度とすることが好ましい。
【0063】
本発明に係るガスケット又はパッキンは、金属薄板(16)を含まないガスケット又はパッキンであってもよい。(図16(a)、(b)参照)
【実施例】
【0064】
以下、本発明に係る複合材に使用される粘土分散液及び本発明に係る複合材からなるシートガスケットの実施例を示すことにより、本発明の効果をより明確なものとする。但し、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0065】
1.粘土分散液の実施例
ベントナイト系粘土(クニミネ工業株式会社製、商品名:クニピアF)を110℃で乾燥後、S330シリル化材を2wt%添加し、混合攪拌した後、LiNO3(0.5N、5wt%)を混合して2時間攪拌を3回繰り返した。更に洗浄30分を3回繰り返し、次に乾燥した粘土(シリル化リチウム粘土)10gを水90mlに混合攪拌し、更にジメチルアセトアミド350mlを加えて混合攪拌した。この混合溶液140gにポリイミド原料を4.3g添加し混合攪拌して粘土分散液を得た。
こうして得られた粘土混合液をPPフィルム又はPTFEフィルムにコートし、100℃で乾燥し、乾燥後PPフィルム又はPTFEフィルムから粘土膜を剥離することにより、ポリイミドシリル化リチウム粘土膜を得た。
得られたポリイミドシリル化リチウム粘土膜(厚さ15μm)の性能を表1に示す。
表1に示すように、得られたポリイミドシリル化リチウム粘土膜は、柔軟性、ガスバリア性、耐水性、耐薬品に優れていた。
【0066】
【表1】
【0067】
2.シートガスケットの実施例1
<試料の作製>
ベントナイト系粘土(クニミネ工業株式会社製、商品名:クニピアF)と、無機充填剤(タルク)と、有機繊維(アクリル繊維)と、有機バインダー(NBR)と、水とを表2に示す割合で配合して図6に示す断面構造を有する、有機繊維層の内部に粘土粒子が侵入(混合)した構成を有する複合材のシートを得た。このシートを成形して、図15(a)(b)に示す形状をもつシートガスケット(外径φ88mm、内径φ43mm、厚さ0.7mm、面積46.3cm2)を製造し、これを実施例のシートガスケットとした。
粘土を使用せずに他の材料は実施例と同じ材料を使用し、これらを表3に示す割合で配合して得たシートを成形して実施例と同じ形状をもつシートガスケットを製造し、これを比較例のシートガスケットとした。
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
<シール性試験>
実施例及び比較例のシートガスケットを、ガスケット試験装置(amtec社製、商品名:TEMES.fl.ai1)を用い、内圧(ヘリウムガス圧力)0.98MPa(10kgf/cm2)を加えた時の締め付け面圧とヘリウムガスの漏れ量を測定した。
実施例及び比較例の結果を表4に示す。
【0071】
【表4】
【0072】
表4から明らかなように、実施例(有機繊維粘土複合材)のガスケットは比較例(有機繊維)のガスケットに比べて、漏れ量が格段に少なく、高いシール性を有することが確認された。
【0073】
3.シートガスケットの実施例2
<試料の作製>
リチウム化粘土(S330シリル化)(クニミネ工業株式会社製、商品名:クニピアM)を、アクリル繊維を水に分散して製紙の要領で抄いて作製したアクリル繊維ペーパーにコーティング塗布した図5に示す断面構造を有する粘土複合材を成形して、図16(a)(b)に示す形状をもつシートガスケット(外径φ88mm、内径φ43mm、厚さ1.6mm、面積46.3cm2)を製造し、これを実施例のシートガスケットとした。
比較例として、実施例と同形状のジョイントシート製ガスケットを用意した。ジョイントシートとしては、アラミド繊維と膨張黒鉛粉末を主体とし、バインダーにゴムを配合した耐熱約300℃対応ジョイントシートを用いた。
【0074】
<シール性試験>
実施例及び比較例のシートガスケットを、ガスケット試験装置(amtec社製、商品名:TEMES.fl.ai1)を用い、内圧(ヘリウムガス圧力)0.98MPa(10kgf/cm2)を加えた時の締め付け面圧とヘリウムガスの漏れ量を測定した。
実施例及び比較例の結果を表5及び表6に示す。
【0075】
【表5】
【0076】
【表6】
*1.70×10−8は、測定限界値
【0077】
表5,6に示すように、実施例のガスケット(有機繊維粘土複合材製ガスケット)は比較例のガスケット(ジョイントシート製ガスケット)と比較して室温及び300℃における漏れ量が小さかった。この結果から、本発明に係るシートガスケットが、室温と高温のいずれにおいても従来のジョントシート製ガスケットよりも優れたシール性を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、発電所や化学プラントの配管の接合部等に用いられるジョイントシート、ガスケット、パッキン等のシール材、放熱シート、電磁波遮蔽材、防音シート等の分野を含む幅広い分野の種々の用途に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 有機繊維粘土複合材
2 有機繊維層
3 粘土層
4 粘土粒子
5 雄型(プレス金型)
6 雌型(プレス金型)
7 圧延ローラ
8 接着剤
9 巻回ローラ
10 有機繊維分散液
11 粘土
12 有機繊維粉末と粘土粒子混合液
13 粘土分散液
14 金属薄板(グロメット加工用)
15 耐水性コーティング
16 金属薄板(強度補強用)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機繊維と粘土を主要成分とし、有機繊維層に粘土が混合及び/又は積層及び/又は侵入した構造を有することを特徴とする複合材。
【請求項2】
前記有機繊維が、アクリル繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ビニロン、ポリイミド繊維、ポリアミドイミド繊維、ポリベンゾイミダゾール繊維からなる群から選択される一種以上であり、前記粘土が、天然粘土、合成粘土、変性粘土のうちの一種以上からなることを特徴とする請求項1記載の複合材。
【請求項3】
前記粘土が、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、マガディアイト、アイラライト、カネマイト、イライト、セリサイト、ノントロナイトのうちの一種以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の複合材。
【請求項4】
前記有機繊維がシート及び/又はフィルム、もしくはこれから得られる成形体をなしており、この成型体が粘土により被覆されてなることを特徴とする請求項1又は2記載の複合材。
【請求項5】
前記変性粘土が、有機カチオンとしてリチウムイオンを含むものであることを特徴とする請求項2記載の複合材。
【請求項6】
前記変性粘土が、粘土にシリル化剤を反応させたものであることを特徴とする請求項2記載の複合材。
【請求項7】
前記変性粘土に有機カチオン組成が30重量%未満であることを特徴とする請求項5記載の複合材。
【請求項8】
前記粘土とシリル化剤に対するシリル化剤の組成が30重量%未満であることを特徴とする請求項6記載の複合材。
【請求項9】
前記有機繊維層及び/又は前記粘土からなる粘土層が二層以上積層してなることを特徴とする請求項1乃至8いずれかに記載の複合材。
【請求項10】
前記有機繊維からなるシート及び/又はフィルムと、前記粘土を主要成分とするシート及び/又はフィルムとが夫々一層以上積層されてなるシート又はフィルム、もしくはこれらから得られる成形体からなることを特徴とする請求項1記載の複合材。
【請求項11】
請求項1乃至10いずれかに記載の複合材からなることを特徴とするガスケット又はパッキン。
【請求項12】
耐水コーティングされていることを特徴とする請求項11記載のガスケット又はパッキン。
【請求項13】
金属薄板を含むことを特徴とする請求項11記載のガスケット又はパッキン。
【請求項14】
シートガスケットであることを特徴とする請求項11記載のガスケット又はパッキン。
【請求項15】
グロメット加工されていることを特徴とする請求項11記載のガスケット又はパッキン。
【請求項16】
渦巻きガスケット又はカンプロファイルガスケットであることを特徴とする請求項11記載のガスケット又はパッキン。
【請求項17】
編組パッキンであることを特徴とする請求項11記載のガスケット又はパッキン。
【請求項18】
粘土粒子を分散させた粘土分散液を、有機繊維のシート又はフィルムもしくはこれらから得られる成形体に対して塗布及び/又は浸漬させることにより、前記有機繊維に粘土を積層及び/又は侵入させることを特徴とする複合材の製造方法。
【請求項19】
前記粘土分散液が、天然粘土、合成粘土、変性粘土のうちの一種以上を含むことを特徴とする請求項18記載の複合材の製造方法。
【請求項20】
前記粘土分散液が、水又は有機溶剤を含むことを特徴とする請求項19記載の複合材の製造方法。
【請求項21】
有機繊維のシート及び/又はフィルムと粘土を主要成分とするシート及び/又はフィルムを貼り合わせて積層することを特徴とする複合材の製造方法。
【請求項22】
貼り合わせを冷間及び/又は熱間プレスで行うことを特徴とする請求項21記載の複合材の製造方法。
【請求項23】
貼り合わせを圧延ローラで行うことを特徴とする請求項21記載の複合材の製造方法。
【請求項24】
有機繊維と粘土を水に混合分散し、この分散液を製紙の要領で抄いてシート状又はフィルム状に成形することを特徴とする複合材の製造方法。
【請求項1】
有機繊維と粘土を主要成分とし、有機繊維層に粘土が混合及び/又は積層及び/又は侵入した構造を有することを特徴とする複合材。
【請求項2】
前記有機繊維が、アクリル繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ビニロン、ポリイミド繊維、ポリアミドイミド繊維、ポリベンゾイミダゾール繊維からなる群から選択される一種以上であり、前記粘土が、天然粘土、合成粘土、変性粘土のうちの一種以上からなることを特徴とする請求項1記載の複合材。
【請求項3】
前記粘土が、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、マガディアイト、アイラライト、カネマイト、イライト、セリサイト、ノントロナイトのうちの一種以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の複合材。
【請求項4】
前記有機繊維がシート及び/又はフィルム、もしくはこれから得られる成形体をなしており、この成型体が粘土により被覆されてなることを特徴とする請求項1又は2記載の複合材。
【請求項5】
前記変性粘土が、有機カチオンとしてリチウムイオンを含むものであることを特徴とする請求項2記載の複合材。
【請求項6】
前記変性粘土が、粘土にシリル化剤を反応させたものであることを特徴とする請求項2記載の複合材。
【請求項7】
前記変性粘土に有機カチオン組成が30重量%未満であることを特徴とする請求項5記載の複合材。
【請求項8】
前記粘土とシリル化剤に対するシリル化剤の組成が30重量%未満であることを特徴とする請求項6記載の複合材。
【請求項9】
前記有機繊維層及び/又は前記粘土からなる粘土層が二層以上積層してなることを特徴とする請求項1乃至8いずれかに記載の複合材。
【請求項10】
前記有機繊維からなるシート及び/又はフィルムと、前記粘土を主要成分とするシート及び/又はフィルムとが夫々一層以上積層されてなるシート又はフィルム、もしくはこれらから得られる成形体からなることを特徴とする請求項1記載の複合材。
【請求項11】
請求項1乃至10いずれかに記載の複合材からなることを特徴とするガスケット又はパッキン。
【請求項12】
耐水コーティングされていることを特徴とする請求項11記載のガスケット又はパッキン。
【請求項13】
金属薄板を含むことを特徴とする請求項11記載のガスケット又はパッキン。
【請求項14】
シートガスケットであることを特徴とする請求項11記載のガスケット又はパッキン。
【請求項15】
グロメット加工されていることを特徴とする請求項11記載のガスケット又はパッキン。
【請求項16】
渦巻きガスケット又はカンプロファイルガスケットであることを特徴とする請求項11記載のガスケット又はパッキン。
【請求項17】
編組パッキンであることを特徴とする請求項11記載のガスケット又はパッキン。
【請求項18】
粘土粒子を分散させた粘土分散液を、有機繊維のシート又はフィルムもしくはこれらから得られる成形体に対して塗布及び/又は浸漬させることにより、前記有機繊維に粘土を積層及び/又は侵入させることを特徴とする複合材の製造方法。
【請求項19】
前記粘土分散液が、天然粘土、合成粘土、変性粘土のうちの一種以上を含むことを特徴とする請求項18記載の複合材の製造方法。
【請求項20】
前記粘土分散液が、水又は有機溶剤を含むことを特徴とする請求項19記載の複合材の製造方法。
【請求項21】
有機繊維のシート及び/又はフィルムと粘土を主要成分とするシート及び/又はフィルムを貼り合わせて積層することを特徴とする複合材の製造方法。
【請求項22】
貼り合わせを冷間及び/又は熱間プレスで行うことを特徴とする請求項21記載の複合材の製造方法。
【請求項23】
貼り合わせを圧延ローラで行うことを特徴とする請求項21記載の複合材の製造方法。
【請求項24】
有機繊維と粘土を水に混合分散し、この分散液を製紙の要領で抄いてシート状又はフィルム状に成形することを特徴とする複合材の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
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【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−193777(P2012−193777A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56985(P2011−56985)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(390015679)ジャパンマテックス株式会社 (19)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(390015679)ジャパンマテックス株式会社 (19)
【Fターム(参考)】
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