説明

有機繊維補強樹脂ペレット、その製造方法及び樹脂成形品

【課題】耐衝撃性と強度バランス及び外観品位に優れ、軽量で且つサーマルリサイクルが容易な、車両、建築・土木、機械部品、電子部品などの樹脂成形品を提供すること、また斯様な樹脂成型品を製造することの可能な有機繊維補強樹脂ペレットを提供すること、加えて該有機繊維補強樹脂ペレットの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】有機繊維(A)と樹脂(B)とからなり、有機繊維(A)が、融点150℃以上であって樹脂(B)の融点よりも30℃以上高く、単糸繊度0.1〜20dtex、トータル繊度2000〜700,000dtexで、有機繊維(A)と樹脂(B)の質量比が1:19〜9:1であり、有機繊維(A)の総表面積の65%以上が樹脂(B)と接触しており、有機繊維(A)の繊維軸に交叉する方向に切断した面におけるペレット内の有機繊維(A)が、ほぼ均一に分散されている有機繊維補強樹脂ペレットである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機繊維補強樹脂ペレット、その製造方法、並びにこれから得られた繊維補強樹脂成形品に関するものである。更に詳しくは、耐衝撃性に優れ、車両、建築・土木用材料、機械部品、電子部品などに好適な繊維補強樹脂成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガラス繊維で補強した繊維補強樹脂は、自動車や鉄道車両、機械部品、コンピュータの筐体など種々の構造部品として用いられている。しかしながら、近年、この様なガラス繊維補強樹脂の廃棄が問題となってきている。例えば上記ガラス繊維補強樹脂についてリサイクル、特にサーマルリサイクルを行った場合、ガラス繊維のアッシュ(灰)が産業廃棄物として残るという問題がある。
そこでこの様な問題を解決するために、ガラス繊維を有機繊維で代替しようとする試みがなされている。
【0003】
例えば特許文献1には、ポリオレフィンと有機繊維および無機繊維から構成される長繊維含有樹脂組成物が開示されている。そして該文献1の発明においては、有機繊維と無機繊維を組み合わせることによって、高い機械的強度及び弾性率を有し、耐衝撃性に優れた繊維強化樹脂組成物を得ることが出来るとしている。しかしこの長繊維含有樹脂組成物は無機繊維を含有していることから、前述のようにその廃棄は難しく、サーマルリサイクル後も無機繊維のアッシュが多く残る。
【0004】
特許文献2には、融点が170℃以下のポリオレフィンと無機フィラーの混合物に融点が200℃以上の合成繊維を二軸混練して得られたポリオレフィン樹脂組成物が開示されている。この発明では、例えば無機フィラーをポリオレフィンに添加した後に有機繊維を添加して樹脂組成物を得ており、この樹脂組成物によれば、寸法安定性、表面平滑性、剛性及び硬度を低下させずに衝撃強度と剛性を向上させ、サーマルリサイクル後のアッシュも無機フィラーの分量のみにすることが出来るとしている。しかしながら従来の二軸混練法では繊維の分散状態に偏りがあり、強度ばらつきが大きくなる。そこで分散状態を良くしようと混練時間を長くすれば、有機繊維の熱劣化を引き起こし、製造コストの割に製品の品質が良くない問題点があった。
【0005】
そこで更にこれらの問題を解決する為に、種々の方法が提案されている。
例えば特許文献3には、ポリオレフィン樹脂よりも融点が50℃以上高い有機繊維を補強材として用い、ポリオレフィン系樹脂を融点よりも40℃以上高い温度に加熱して、その浸漬時間が6秒を超えない範囲で有機繊維に含浸を行う技術が開示されている。そして、この技術により、補強繊維の熱劣化を生じず折損も少なく優れた有機繊維補強樹脂組成物を得ることができるとしている。しかしながら有機繊維をポリオレフィン系樹脂の溶融樹脂浴に浸漬後、引き抜くという本方法では、ポリオレフィン系樹脂中の繊維分散性が悪く、繊維の偏りに伴う成形品の強度ばらつきが大きくなり、ひいては外観不良をも引き起こす問題があった。
【0006】
別の方法として、芯部とそれより融点の低い鞘部からなる複合繊維を束ね、非接触ヒーター等で鞘部を溶融して一体化させる方法も考えられる。しかし、束の中心部にまで熱が伝わりにくく、束中心部では鞘成分が融着しないため、チップ状にカットしても綿状となってしまうといった問題がある。また融着させるためにはかなり生産速度を遅くする必要があり、生産性が著しく悪くなる。さらに斯様に遅くした場合でも、撚を加えないと一体化し難く、一体化できたとしても、繊維軸方向にかかる張力によって芯成分からなる繊維部分が中心に集まってしまい、ペレットの中心部に繊維が密集しているような構造(含浸引き抜き法で得られたものと同様の構造)にしかならず、成型品にする際に繊維分散性の劣ったものとなり、これ故に強度が低くなるという課題が解決できない。
【0007】
【特許文献1】特開平4−202545号公報
【特許文献2】特開平6−306216号公報
【特許文献3】特許第3073988号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、サーマルリサイクルを行っても無機物のアッシュが残ることが少なく、強靱、高剛性で外観品位の優れた繊維補強樹脂成形品を製造可能な有機繊維補強樹脂ペレットを提供すること、並びにその製造方法、また上記の如く樹脂成形品を提供することにある。更に詳しくは耐衝撃性等の物理特性に優れ、低コストで且つサーマルリサイクルが容易な繊維補強樹脂成形品を提供することにあり、またガラス繊維補強樹脂成形品分野への置換えが可能で、車両、建築・土木、機械部品、電子部品などに好適な繊維補強樹脂ペレットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明は下記の構成からなる。
1.有機繊維(A)からなる複数の島成分と、樹脂(B)を含むマトリックス成分とからなる有機繊維補強樹脂ペレットであって、前記島成分を構成する有機繊維(A)がペレット長の98〜110%の長さを有し、互いに並行に配列しており、下記(a)〜(d)を満足することを特徴とする有機繊維補強樹脂ペレット。
(a)前記有機繊維(A)の融点が150℃以上であり、前記樹脂(B)の融点よりも30℃以上高い。
(b)前記有機繊維(A)の単糸繊度が0.1〜20dtexで、トータル繊度が2000〜700,000dtexである。
(c)前記有機繊維(A)と前記樹脂(B)の質量比が(1:19)〜(9:1)である。
(d)前記有機繊維(A)の総表面積の65%以上が前記樹脂(B)と接触している。
【0010】
2.有機繊維(A)の繊維軸に交叉する方向に切断した面における該有機繊維(A)の分散が下記式(1)〜(4)を満足することを特徴とする上記1に記載の有機繊維補強樹脂ペレット。
|X−Y|/Z≦0.5 ・・・(1)
X≧0.9Z ・・・(2)
Y≧0.9Z ・・・(3)
W≧0.9Z ・・・(4)
ただし
X:中心付近の島成分の面積割合
Y:表面付近の島成分の面積割合
W:中心付近と表面付近を除いた残りの部分における島成分の面積割合
Z:全体の島成分の面積割合
【0011】
3.前記有機繊維(A)が融点220℃以上のポリエステル繊維であることを特徴とする上記1または2に記載の有機繊維補強樹脂ペレット。
【0012】
4.前記樹脂(B)が融点190℃以下のポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の有機繊維補強樹脂ペレット。
【0013】
5.前記樹脂(B)が融点190℃以下のポリ乳酸樹脂であることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の有機繊維補強樹脂ペレット。
【0014】
6.前記樹脂(B)が融点190℃以下の共重合ポリエステル樹脂であることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の有機繊維補強樹脂ペレット。
【0015】
7.前記有機繊維(A)はその総表面積の85%以上において前記樹脂(B)と接触していることを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載の有機繊維補強樹脂ペレット。
【0016】
8.前記有機繊維補強樹脂ペレットは、テープ状物をロール形状に巻き込んだものであり、
その断面視は、前記樹脂(B)を含むマトリックス成分と、前記有機繊維(A)からなる島成分とからなり、前記テープ状物の偏平度(幅/厚み)が3.5〜450であることを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載の有機繊維補強樹脂ペレット。
【0017】
9.有機繊維補強樹脂ペレットの繊維軸方向に対して交叉する方向に切断した断面で観察される空隙率が20%以下であることを特徴とする上記1〜8のいずれかに記載の有機繊維補強樹脂ペレット。
【0018】
10.有機繊維補強樹脂ペレットのペレット長方向に対し垂直に切断した断面におけるペレットの扁平率(長軸/短軸)が1〜4.5であることを特徴とする上記1〜9のいずれかに記載の有機繊維補強樹脂ペレット。
【0019】
11.有機繊維(A)を芯とし、その周囲を樹脂(B)が鞘状に覆う芯鞘型繊維を集束し、この芯鞘型繊維束を加熱すると共に偏平に押し広げて軟化したテープ状物にした後、このテープ状物の幅方向片側端を内側に巻き込む様に、連続的ロール形状とし、次いでこの連続ロール状物を所望の長さに切断することを特徴とする有機繊維補強樹脂ペレットの製造方法。
【0020】
12.前記芯鞘型繊維束の加熱を、前記樹脂(B)の融点以上で且つ前記有機繊維(A)融点未満に加熱されたホットローラー上に巻き付けて行うことを特徴とする上記11に記載の有機繊維補強樹脂ペレットの製造方法。
【0021】
13.前記ホットローラーから解いた前記テープ状物を加撚することにより、前記連続ロール状物を得ることを特徴とする上記12に記載の有機繊維補強樹脂ペレットの製造方法。
【0022】
14.前記テープ状物を施撚体により加撚し、略円柱状に形成することを特徴とする上記12または13に記載の有機繊維補強樹脂ペレットの製造方法。
【0023】
15.前記施撚体が、2本のベルトで挟み込んで撚りをかけるニップツイスタータイプであることを特徴とする上記14に記載の有機繊維補強樹脂ペレットの製造方法。
【0024】
16.ホットローラー上に巻き付けた前記テープ状物を、該ホットローラーの軸の直交方向に対して角度を付けて引取ることにより、前記連続ロール状物を得ることを特徴とする上記11または12に記載の有機繊維補強樹脂ペレットの製造方法。
【0025】
17.前記テープ状物の引き取りに際してガイドを用いることを特徴とする上記16に記載の有機繊維補強樹脂ペレットの製造方法。
【0026】
18.上記1〜17のいずれかに記載の有機繊維補強樹脂ペレットを質量比で5%以上用いて成形してなることを特徴とする有機繊維補強樹脂成形品。
【0027】
19.有機繊維補強樹脂成形品が自動車用部品であることを特徴とする上記18に記載の有機繊維補強樹脂成形品。
【発明の効果】
【0028】
本発明の有機繊維補強樹脂ペレットによれば、耐衝撃性、強度バランス及び外観品位に優れ、軽量且つサーマルリサイクルが容易な有機繊維補強樹脂成形品を得ることが出来る。また本発明の製造方法によれば斯様な有機繊維補強樹脂ペレットを得ることができる。更に斯様な有機繊維補強樹脂ペレットから成形した本発明の樹脂成形品は、上記の如く耐衝撃性、強度バランス及び外観品位に優れ、軽量且つサーマルリサイクルが容易である。斯様な有機繊維補強樹脂成形品としては、例えば車両(特に自動車用部品)、建築・土木用材料、機械部品、電子部品などが挙げられ、さらに詳細には保温カバー、雨樋、コネクター、コンクリート型枠、コンプレッサ用羽根、コンポジツト圧力容器、シート搬送用転動体、スキー用キャップ、フェンダー、自動車用ドアパネル、自動車用バンパー、運搬用パレット、パイプジョイント、巾木、パラボラアンテナディッシュ、バリア性容器、ドアノブ、プロペラファン、収納用ボックス、窓枠、ルーフレール、ワイパーアーム、椅子等の脚体、管状体、吸遮音材、光ケーブル用スペーサ、光ファイバコード、自動車用エアディフレクター、車止め、ホイールカバー、塗装室用内装板材、電気音響変換器用フレーム、把手部材、複合建材、防水パン、免震構造体が挙げられ、これらに本発明を好適に適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を詳述する。
本発明に係る有機繊維補強樹脂ペレットは、補強繊維として有機繊維(A)のみを用いたものである。本発明でいう有機繊維(A)とは、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維などの有機繊維をいい、より好ましくは融点が220℃以上のポリエステル系繊維、更に好ましくはポリエチレンテレフタレート繊維や、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、等をいう。ポリエチレンテレフタレート繊維は製造方法が確立されており、コスト、性能の両面から最も好ましい。
有機繊維(A)には、耐候性の改善を目的として、耐加水分解性防止剤、耐熱老化防止剤や紫外線劣化防止剤などを添加したものであることがより好ましい。
【0030】
本発明でいう樹脂(B)とは、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂など汎用のエンジニアリングプラスチックが挙げられる。このうちでも、再ペレタイズ(成型品を再びペレットの形に加工すること)後にこれから得られたリユース品に関する物性保持率の観点や、サーマルリサイクル時に炉を傷めない観点から、融点が190℃以下のポリオレフィン系樹脂がより好ましく、更にコストパフォーマンスに優れるポリプロピレン樹脂が好ましい。一方、繊維強化樹脂の強度を高くするためには、繊維との接着性が高い方が良く、この観点から繊維を構成する有機繊維(A)がポリエステル系樹脂の場合、相溶性を考慮すると、樹脂(B)はポリエステル系樹脂が好ましく、このうちでも融点が190℃以下のポリ乳酸樹脂や、融点が190℃以下の共重合ポリエステル樹脂がより好ましい。
【0031】
樹脂(B)には、上記有機繊維(A)の場合と同様に、耐紫外線劣化防止剤や、耐熱老化防止剤などが添加されていることが好ましい。また外観の審美性を目的に顔料などを添加していても何ら問題はない。補強繊維(有機繊維(A))との接着性を改善する目的で酸変性処理などを施しても何ら問題はない。
【0032】
これらの有機繊維(A)及び樹脂(B)は、工程の煩雑さを避けるために通常1種ずつ用いられるが、所望の物性を得る等の目的で2種以上を組合せて用いたとしても、本発明の目的を達成できる範囲のものであればなんら問題はない。
【0033】
有機繊維(A)の融点は150℃以上であり、樹脂(B)の融点よりも30℃以上高いことが好ましい。有機繊維(A)の融点が150℃未満、若しくは樹脂(B)の融点より30℃未満しか高くない場合、成形時の熱の影響を強く受けて補強効果が低くなりやすく、好ましくない。有機繊維(A)の融点としてより好ましくは200℃以上、より一層好ましくは220℃以上350℃以下であり、更に樹脂(B)の融点より50℃以上高いことがより望ましい。なお、ここで言う融点とは公知の差動走査型熱量計(DSC)を用い測定した値をいう。
【0034】
また、有機繊維(A)の単糸繊度は0.1〜20dtex、トータル繊度は2000〜700000dtex、撚り数は100T/m以下であることが好ましい。
成形品補強効果は、補強有機繊維(A)の樹脂(B)中からの引抜き剪断抵抗に依存する部分が大きいため、引抜き剪断抵抗を高くするには単糸繊度は細い方が望ましい。しかし0.1dtex未満の場合、斯様な細い繊維の製造が難しい上、ペレットにおいて均一分散性が得られにくくなるので好ましくない。従って均一分散性が得られる範囲内で細いものを用いると良い。他方、20dtexを越える場合、分散性は良好となるものの、補強効果が低くなるので好ましくない。有機繊維(A)の単糸繊度についてのより好ましい範囲は0.3〜14dtexである、更に好ましい範囲は0.5〜8dtexである。
【0035】
また、有機繊維(A)のトータル繊度が2,000dtex未満である場合、ペレット状とした際の厚み(ペレット長に直交する方向の厚み)が不十分となり、ホッパー詰りを起こしやすくなるため好ましくない。逆に700,000dtexを越える場合にも取扱い性が悪くなるので好ましくない。より好ましい範囲は4,000〜500,000dtex、更に好ましい範囲は6,000〜300,000dtexである。
【0036】
有機繊維(A)の撚り数は上記の如く、100T/m以下であることが好ましい。100T/mを越える場合には、成形時に於ける開繊性が悪くなり、ひいては外観品位の低下、及び品質ばらつきの増大をもたらすので好ましくない。斯様な観点から撚り数は少ない方が好ましく、有機繊維(A)の撚り数として50T/m以下がより好ましく、20T/m以下が更に好ましい。
【0037】
有機繊維(A)と樹脂(B)との質量比は、(1:19)〜(9:1)であることが好ましい。有機繊維(A)の含有比率がこれ未満であると、生産性が非常に悪くなるため好ましくない。逆に有機繊維(A)の含有比率がこの範囲を超える場合には、樹脂(B)成分の融着による接着力が弱くなるため好ましくない。斯様な観点からより好ましい範囲は(1:9)〜(8:2)、更に好ましい範囲は(3:17)〜(7:3)である。なお、質量比の算出方法に関しては、断面写真の観測結果と原料比重より算出される値を用いる。
本発明の有機繊維補強樹脂ペレットにおいて、有機繊維(A)はそのペレット長の98〜110%の長さを有し、互いに並行に配列していることが好ましい。
ここでいう「並行に配列している」とは、それぞれの繊維が完全に平行に配列している場合の他、ほぼ平行ではあるものの若干の傾きがあり完全には平行ではない場合も包含する意味である。また「ペレット長」とは、元ペレットを所定長さに切断してペレットを得る場合における、上記元ペレットの長手方向の長さを言う。なお、一般に短い棒状のペレットとして製造されることが多く、この場合はペレットの長手方向に相当することとなる。
【0038】
有機繊維(A)の長さに関しては、樹脂を補強する点から、ペレット長方向に配された有機繊維(A)の長さがペレット長と同じであることが好ましいが、ペレット中で完全にペレットの長手方向に対し平行に存在できるとは限らず、その製造法上、専ら若干の傾きを持つことが考えられる。そこで、これを勘案して有機繊維(A)の長さをペレット長に対し98〜110%としたものである。好ましくはペレット長に対し98〜105%である。なお、ペレットの長手方向と平行な方向に対して有機繊維(A)が傾いていれば、その繊維長はペレット長に対し長くなることから、通常では100%以上の長さしか存在しないと考えられる。しかし、上記の如く元ペレットを所定の長さに切断してペレットを得るというペレット製造方法の場合、上記切断の際に、その切断面の両側に存在する有機繊維(A)が一方の切断面側に若干引き抜かれ、一方が長く、他方が短くなることがある。これ故、有機繊維(A)がペレット長に対し、若干短くなる場合もあり得ると考えられる。そこで、有機繊維(A)がペレット長に対し若干短い98%を下限として規定したものである。
【0039】
また、有機繊維(A)は、その総表面積の65%以上が樹脂(B)と接触していることが必要である。
本発明において成形品の補強効果は、補強有機繊維(A)の樹脂(B)中からの引抜き剪断抵抗に依存する部分が大きいため、単糸自体が有する総表面積、及びその総表面積中どれだけ樹脂(B)と接触した状態にあるかが重要となり、総表面積が大きい程、また接触面積比率が高い程、剪断抵抗が高くなって補強効果が高くなる。仮に接触面積が65%未満である場合、十分な引抜き剪断抵抗が得られにくく好ましくない。この接触面積についてより好ましくは75%以上、更に好ましくは85%以上である。接触面積は100%に近いことが望ましいが、95%以上であれば、ほぼ有機繊維混入による補強効果が最大限に発揮され得る。
尚、接触面積は、ペレットの断面写真を撮って観測することにより判定される。
【0040】
本発明の有機繊維補強樹脂ペレットは、前記有機繊維(A)の繊維軸に交叉する方向に切断した面における該有機繊維の分散が下記数式(1)〜(4)を満足することが好ましい。
|X−Y|/Z≦0.5 ・・・(1)
X≧0.9Z ・・・(2)
Y≧0.9Z ・・・(3)
W≧0.9Z ・・・(4)
ただし
X:中心付近の島成分の面積割合
Y:表面付近の島成分の面積割合
W:中心付近と表面付近を除いた残りの部分(以下、残り中程部分と称することがある)における島成分の面積割合
Z:全体の島成分の面積割合
尚、上記「有機繊維(A)の繊維軸」とは、有機繊維(A)の平均的配列軸方向の意味である。
【0041】
本発明の有機繊維補強樹脂ペレットは、補強繊維(有機繊維(A))がその繊維軸の交叉方向への分散性に優れていることが特徴であり、従来ペレットのように中心付近に或いは表面付近に偏って補強繊維が存在するということがない。ここでいう「中心付近の島成分の面積割合[X]」とは、ペレットの繊維軸に対して交叉方向にカットした断面における、中心付近領域での有機繊維(A)の占める面積の割合を意味する。「表面付近の島成分の面積割合[Y]」とは、ペレットの繊維軸に対して交叉方向にカットした断面における、表面付近領域での有機繊維(A)の占める面積の割合を意味する。「残り中程部分における島成分の面積割合[W]」とは、ペレットの繊維軸に対して交叉方向にカットした断面における、上記中心付近領域と上記表面付近領域を除いた残りの部分での有機繊維(A)の占める面積の割合を意味する。「全体の島成分の面積割合[Z]」とは、ペレットの繊維軸に対して交叉方向にカットした断面全体における有機繊維(A)の占める面積の割合を意味する。因みに、上記有機繊維(A)の占める面積とは、海成分(マトリックス成分)である樹脂(B)が占める面積と、島成分である有機繊維(A)が占める面積の合計に対する、有機繊維(A)の占める面積の割合であり、いずれの割合も面積比で表す。上記ペレットの切断方向としては繊維軸に垂直な方向が最も望ましいが、繊維軸の斜め方向に切断して求めた値(面積割合)であっても、垂直方向に切断して求めた値とあまり差異がないことから、繊維軸に対して垂直方向に限らず、交叉方向に切断して求めれば良いこととした。なお、上記中心付近領域の範囲は、重心から表面までの長さのうちの重心から3割の長さを占める範囲を言うこととする(図5:本発明の有機繊維補強樹脂ペレット断面における中心付近領域と表面付近領域を説明するための図)。上記表面付近領域の範囲は、表面から重心までの長さのうちの表面から3割の長さを占める範囲を言うこととする(図5)。
中心付近の繊維割合であるXと表面付近の繊維割合であるYとの差の絶対値が、全体の繊維割合であるZに対して小さく(上記式(1))、上記X,Y,WがいずれもZの90%以上(上記式(2)〜(4))ということは、断面全体に有機繊維(A)が満遍なく分散していることを意味する。一般的な含浸法で得られる繊維強化樹脂ペレットは中心部に補強繊維が集中しているので、Xの値が大きく、Yの値は小さく、全体の割合Zで除しても0.5を大きく超える数値となる。より好ましくは式の左辺が0.4以下であり、さらには0.3以下が一層好ましい。またX,Y,Wがいずれも0.95Z以上であることがより好ましい。因みにX,Y,Wがいずれも0.9Z以上(更に0.95Z以上)であれば、相対的にX,Y,Wはいずれも飛び抜けて大きな値になることはなく、即ち、X,Y,WはいずれもZに近い値となる。
【0042】
ところで、有機繊維(A)を芯としてその周囲を樹脂(B)が鞘状に覆う芯鞘型繊維を集束し、樹脂(B)を溶融させて集束糸条とするにあたり、仮に芯鞘型繊維束の外側から加熱する手法により、上記樹脂(B)を融着させて内部まで繊維束を融着固定するとすれば、多くの熱量が必要となり、長時間高温下に曝されることによる物性低下を誘発する可能性がある上、コストの上昇も招く。尤も非常に小さなペレットの場合では、芯鞘型繊維束の内部まで融着され得ると考えられるものの、通常のペレットサイズの場合では上記問題を生じる。
また、仮に簡易的に外側の樹脂(B)のみ融着させて熱固定したとしても、内部繊維が動きやすい状況にあることから、外圧によって容易に外側の接着部が解け、内部の繊維が飛び出し、ばらけ、この為に成型品製造時においてホッパー詰りの原因となる恐れがあった。
【0043】
本発明者らは、以上の状況を鑑み鋭意検討した結果、以下の結論に至った。
つまり、有機繊維(A)を芯、樹脂(B)を鞘とした芯鞘型繊維を多数本集束し、これを一旦テープ状に押し広げると共に加熱軟化させ、このテープ状物を縦ロール状に巻き込めば、所定太さの連続ロール状物を得ることができ、この連続ロール状物においては、その中心部分に至るまで、有機繊維(A)が樹脂(B)に融着固定された状態となる。そしてこの連続ロール状物を所望長さに切断してペレットを形成すると良い。即ち、テープ状にして軟化させたものを巻き込むことで、内部まで十分に熱固定することができる。この得られたペレットは転がり性も良いことから、該ペレットを用いて成型品を製造するに際し、ホッパー詰まりが殆ど生じない。なお、図3は本発明に係る有機繊維補強樹脂ペレットにおける断面形態の全体を写した電子顕微鏡写真の一例であり、図4は本発明に係る有機繊維補強樹脂ペレットにおける断面の一部を拡大した電子顕微鏡写真の一例である。
【0044】
上記の如く方法により得られた本発明に係る有機繊維補強樹脂ペレットは、テープ状物をロール形状に巻き込んだものであり、その断面視は、前記樹脂(B)を含むマトリックス成分と前記有機繊維(A)からなる島成分とからなる。そして前記テープ状物の偏平度(幅/厚み)としては、3.5〜450であることが好ましい。
前記テープ状物の偏平度(幅/厚み)が3.5未満である場合は、ロール形状の形成がスムーズに行われにくいので好ましくない。逆に450を越える場合は、生産性が悪くなり、上記連続ロール状物の中心部に空隙を生じやすい為、好ましくない。故により望ましい範囲としては上記偏平度が5〜350であり、更に好ましくは7〜250である。
【0045】
なお、有機繊維補強樹脂ペレット中の有機繊維(A)の繊維長は0.5〜40mmであることが好ましい。繊維長が0.5mm未満であると、引き抜き抵抗を指標とした場合の補強効果が得られにくくなる。逆に、40mmを越える場合には、該ペレットを用いて成型品を製造するにあたり、ホッパー内での流動性、成形時の流動性に影響を与え、この為に外観品位の低下及び強度ばらつきを増大させる傾向にある。よってより好ましい範囲は2〜20mm、更に好ましい範囲は4〜15mmである。尚、上述の様に本発明における有機繊維(A)はそのペレット長の98〜110%の長さを有することから、ペレット中の有機繊維(A)の繊維長は、ペレットの長さに依存する。
【0046】
また、樹脂成形品としての補強効果を高めるため、切断前に測定される有機繊維(A)の繊維強度は2cN/dtex以上であることが好ましい。この値は高い方がよく、より好ましくは4cN/dtex以上、更に好ましくは5cN/detx以上である。強度は高い方が好ましいが、製造コストとの兼合いで適宜設計すると良い。
【0047】
また、有機繊維補強樹脂ペレットの繊維軸方向に対して交叉する方向に切断したとき、その断面で観察される空隙率の割合は20%以下であることが好ましい。20%を越える場合、成形品の強度がばらつき、外観品位も低下するので好ましくない。この観点からより好ましくは10%以下、更に好ましいくは4%以下である。なお空隙率はペレット断面中における空隙部の比率で求めることとし、具体的には、ペレットの断面写真に方眼紙をあて、空隙部を塗潰して算出する。この際のペレット切断方向としては繊維軸に垂直な方向が最も望ましいが、繊維軸の斜め方向に切断して求めた値であっても、垂直方向に切断して求めた値とあまり差異がないことから、繊維軸の垂直方向に限らず、交叉方向に切断して求めれば良いこととした。
【0048】
また、有機繊維補強樹脂ペレットのペレット長の方向に対し垂直に切断したとき、その断面におけるペレットの扁平率(長軸/短軸)は1〜4.5であることが好ましい。射出成形用として使用される汎用ホッパー内の転がり性を上げるためには、扁平率は1に近いことが好ましいが、鞘成分の融着、固化の過程で多少扁平する傾向がある。故に、好ましくは1〜4.0、更に好ましくは1〜3.5の範囲である。
【0049】
また、以上のようなペレットを製造する方法としては以下の方法が好ましい。
すなわち、有機繊維(A)を芯とし、その周囲を樹脂(B)が鞘状に覆う芯鞘型繊維を集束し、この芯鞘型繊維束を加熱すると共に偏平に押し広げて軟化したテープ状物にした後、このテープ状物の幅方向片側端を内側に巻き込む様に、連続的ロール形状とした連続ロール状物を得、次いで該連続ロール状物を所望の長さに切断する製造方法である。尚、連続的ロール形状とは、テープ状物が重なって螺旋状に巻かれてロール形状を呈したものである。テープ状物は軟化した状態で巻き込まれることから、得られた連続ロール状物はロール状のまま付着、一体化した状態となる。
【0050】
上記方法によりペレットを製造することにより、有機繊維(A)がほぼ均一に分散したペレットが得られ、この繊維の均一分散性に伴う引き抜き強度寄与率の向上が成形品に期待できると共に、外観品位の向上が期待できる。斯様な成型品は、従来から検討されてきた方法、つまり溶融した樹脂浴中に開繊した繊維を浸漬し、その後引き取る方法では得られないものである。
【0051】
更に上記製造方法においては、前記芯鞘型繊維束の加熱を、前記樹脂(B)の融点以上で且つ前記有機繊維(A)融点未満に加熱されたホットローラー上に巻き付けて行うことが好ましい。
【0052】
より具体的な製造方法としては、例えば図1に示すように、ホットローラー11上で扁平に一旦押し広げ鞘成分の樹脂の融点以上の温度まで加熱し、この軟化したテープ状物14を施撚体13を用いて加撚する方法が挙げられる。これにより、全体がロール状に集束されて略円柱状に一体化され、テープ状物14の片側端面が自然と内側に巻き込まれたロール形態(連続ロール状物12)を、連続的に形成させることができる。そして全体を集束させた後、所望の長さに切断してペレットを得ると良い。
【0053】
施撚体13としては、2本のベルトで挟み込んで撚りをかけるニップツイスタータイプのものが好ましく採用できる。
【0054】
また、別の方法としては、例えば図2に示すように、ホットローラー11上に巻き付けることで、芯鞘型繊維束を偏平に一旦押し広げ軟化したテープ状物14にし、その後、ホットローラー11の軸の直交方向に対して角度(θ)をつけて上記テープ状物14を引取るという方法が挙げられる。これにより、テープ状物14の片側端面が自然と内側に巻き込まれたロール形態(連続ロール状物12)を、旋回力を付与せずに連続的に形成することができる。尚、引き取られたテープ状物14は軟化した状態であるので、これが上記の如く巻き込まれることで、ロール状のまま付着して一体化した連続ロール状物12となる。こうして全体を集束させた後、所望の長さに切断してペレットを得ると良い。
【0055】
尚、この方法の場合において、テープ状物の引き取りに際してガイドを用いることが好ましい。このガイドとしては、軸上に複数の円盤体を配列した回転体(いわゆるソロバン状のガイド)が挙げられ、上記円盤体と円盤体の間の溝内に連続ロール状物を挿通させつつ、回転体を連続ロール状物の走行に合わせて回転させることにより、連続ロール状物を円滑に走行させることができる。尚、上記回転体において上記溝を複数有するものを用いれば、各溝に連続ロール状物を挿通させることで、複数本の連続ロール状物を同時にガイドすることもできる。
また回転しないものであっても、ガイドの溝内面が平滑なものであれば良く、このものにおいても、連続ロール状物の円滑な走行が可能である。
加えて、ガイドの溝の断面形状としては、連続ロール状物の形状にほぼ沿った半円状であることが好ましい。連続ロール状物はホットローラーから引き取られてしばらくは軟化した状態であるので、容易に変形する懸念があるが、上記の如く半円状であれば、連続ロール状物の円柱形状を殆ど損なわずに、円滑に走行され得る。
上記の如く円滑な走行により、連続ロール状物は殆ど変形することなく、冷却、固化されることとなる。
【0056】
また、本発明によるペレットを5%以上用いて、通常のマトリックス樹脂と共に成形すると、耐衝撃強度を始めとする物理特性が大きく向上した成型品を得ることができる。5%未満である場合、成型品に混入する補強繊維(有機繊維(A))の量が少なくなる為に補強効果が得られにくいので好ましくない。ペレットの混入量は多い程補強効果が増すが、コストも上昇し、成形性及び外観不良の原因ともなる。よって好ましい範囲は10〜70%、より好ましい範囲は15〜60%である。
尚、こうして得られた成形品の比重は1.2以下であることが好ましい。比重は軽い程、取扱い性が良くなるが、単位重量当りの物理特性との兼合いで適宜設計すると良い。
【0057】
また、成形品におけるJIS K 7052:1999に準じた焼成後の無機充てん材含有率は、0.1%以下であることが好ましい。このことにより、サーマルリサイクルを行なっても無機物のアッシュが残ることが殆どなく、強靱、高剛性で外観品位に優れた成形品とすることができる。
因みに、ガラス繊維等の無機充てん材を使用しなければ無機物のアッシュは理論的に含有率=0%となるが、樹脂を高性能化するために上述の添加剤以外にも結晶核剤などを用いることがあり、工業材料としてその残渣を完全に0にすることは技術的に困難である。
【0058】
また、用途に応じ適宜成形品の衝撃強度と剛性、熱変形温度を向上させる目的で、水酸化物やクレーなどの無機フィラーを充填する等、従来からある方法と併用して用いることも可能である。これによって寸法安定性、表面平滑性及び硬度を低下させずに更に一段と衝撃強度や剛性、熱変形温度を向上させることが出来る。この場合、サーマルリサイクル後の無機物のアッシュはその分増加するが、いずれにせよ本発明によれば従来のガラス繊維補強品や炭素繊維補強品と比較し、格段にサーマルリサイクル後の産業廃棄物を減少させることが可能となる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例によって本発明を説明する。なお、本発明で採用した測定方法は以下のとおりである
(i)融点:
試料を10mg採取し、(株)パーキンエルマージャパン社製パーキンエルマーDSC−7を用いて、20℃/分の昇温速度で300℃まで昇温して測定した。
(ii)有機繊維(A)の長さ:
有機繊維補強樹脂ペレットを構成する樹脂(B)の融点以上、有機繊維(A)の融点未満に加熱された2枚のホットプレート間でペレットをプレスし、樹脂(B)が完全に融着した溶融テープとした後、直ぐに有機繊維のみを幅方向全域でランダムに10点、素早くピンセットで引抜き、同時に周囲に付いた樹脂(B)を拭い取り、個々の繊維長さを計測し、その平均値を使用してペレット長に対する比率を求めた。
(iii)有機繊維と樹脂との接触比率:
有機繊維補強樹脂ペレットの断面(補強繊維軸に垂直な方向の切断面)の写真(倍率1000倍)において、有機繊維(A)と樹脂(B)との接触部分と非接触部分との長さの比率を算出した。この算出は、異なるペレット断面でそれぞれランダムな位置で撮られた5点について行い、この平均値を接触面積の比率とした。
(iv)島成分の割合:
有機繊維補強樹脂ペレットの断面(補強繊維軸に垂直な方向の切断面)の写真(倍率30倍)を撮り、この断面写真において、重心から外周(表面)までの距離のうちの重心から3割の所を線で結んで外形と略相似形を画き(図5参照)、この内側を中心付近領域とした。また重心から7割の所(外周から3割の所)を線で結んで外形と略相似形を画き(図5参照)、この外側を表面付近領域とした。異なるペレットの5つを選定し、上記と同様に2つの外形略相似形の線を画いた。
中心付近の島成分の面積割合(X):上記5つのペレットにおける上記中心付近領域(図5にドットで示した範囲)について、更に拡大写真(倍率1000倍)とし、それぞれ方眼紙を使って有機繊維(A)の占める面積比を求め、これらの平均値を算出し、中心付近の島成分の面積割合(X)とした。
表面付近の島成分の面積割合(Y):上記5つのペレットにおける上記表面付近領域(図5に格子で示した範囲)について、更に拡大写真(倍率1000倍)とし、それぞれ方眼紙を使って有機繊維(A)の占める面積比を求め、これらの平均値を算出し、表面付近の島成分の面積割合(Y)とした。
残り中程部分の島成分の面積割合(W):上記5つのペレットにおける上記2つの外形略相似形の線の間の(図5のペレット断面における白抜きで示した範囲)領域について、更に拡大写真(倍率1000倍)とし、それぞれ方眼紙を使って有機繊維(A)の占める面積比を求め、これらの平均値を算出し、残り中程部分の島成分の面積割合(W)とした。
全体の島成分の面積割合(Z):上記5つの各ペレットについて、上記中心付近領域と表面付近領域,残り中程部分における面積比を綜合して断面全体の面積比を算出し、この5つのペレットにおける面積比の平均を算出して全体の島成分の面積割合(Z)とした。
(v)有機繊維と樹脂との質量比率:
製造工程中での原料投入比率、若しくは上記で求めたZ(全体の島成分の面積割合)に各素材の比重を加味して算出した。
(vi)テープ状物の偏平度:
有機繊維補強樹脂ペレットの断面(補強繊維軸に垂直な方向の切断面)の写真(倍率30倍)を撮り、この断面写真において、ロール形態を成すテープ状物についてランダムに5点選定して厚みを測定し、また中心線(ロールに捲いたテープ状物の厚み方向の中央の線)の長さ(テープ状物の幅に相等)を測定した。上記5点の厚みの平均値と上記中心線の長さから偏平度(幅/厚み)を算出した。これを異なるペレットの3つについて行い、その平均値を偏平度とした。
また、断面写真ではロール形態が分りにくい場合には、生産工程上でのローリング開始直前位置でサンプルを採取し、その幅と厚みを計測して、偏平度(幅/厚み)を求めた。
(vii)ペレットの扁平率:
有機繊維補強樹脂ペレットの断面(ペレット長の方向に対し垂直な方向の切断面)の写真(倍率30倍)を撮り、この断面写真において、長軸と短軸との比(長軸/短軸)を求め、これを異なる5つのペレットについて行い、この平均値をペレットの扁平率とした。
(viii)空隙(ボイド)率:
有機繊維補強樹脂ペレットの断面(補強繊維軸に垂直な方向の切断面)の写真(倍率30倍)を撮り、この断面写真に方眼紙をあて、空隙部を塗潰して切り抜き、ペレットの全体の断面面積に対する空隙部の面積比率を算出し、これを異なるペレットの3つについて行い、この平均値を空隙率とした。
(ix)成形品比重:
JIS K 6911:1995に準拠して測定した。
(x)無機充てん材含有率:
成形品をJIS K 7052:1999に準じて焼成後、残渣質量から算出した。
(xi)繊度:
JIS L 1096:1999に準拠して測定した。
(xii)引張強度:
JIS L 1096:1999に準拠して測定した。
【0060】
<実施例1>
芯が融点265℃のポリエチレンテレフタレート、鞘が融点160℃のポリプロピレン(チッソ(株)製PPレジンCS3300)、質量比が芯:鞘=6:4、単糸繊度6.5dtex、フィラメント数3000本の芯鞘型繊維からなる2成分糸を準備した。この2成分糸を10ケンス分束ね、最大延伸倍率×90%の2.55倍で延伸後、170℃のホットローラー(直径25cm)上で偏平状の軟化した集束テープ形態(テープ状物)とした。次いで、ベルトニップツイスターで30T/Mとなる条件で加撚し、略円柱状に連続的に形成して全体を集束させた後、この連続ロール状物を冷却し、7.5mmの長さに切断して所望の有機繊維補強樹脂ペレットを得た。ちなみに切断前延伸糸の引張強度は4.0cN/dtexであった。
なお、有機繊維補強樹脂ペレット中に於ける有機補強繊維(ポリエチレンテレフタレート繊維)の長さはペレット長の101%、質量比率は60%、補強繊維軸に垂直な方向に断面を切って観察されるボイドの比率は4%、有機繊維(ポリエチレンテレフタレート繊維)と樹脂組成物(ポリプロピレン)との接触比率は96%、テープ状物の偏平度(幅/厚み)は24、ペレットの扁平率(長軸/短軸)は1.5であった。
こうして得られた有機繊維補強樹脂ペレットと融点160℃のポリプロピレン樹脂(チッソ(株)製PPレジンK7730)とを50%ずつ混合し、公知の方法にて射出成形加工を行い、コンクリート型枠を作った所、ペレットのホッパー詰りも無く、工程通過性は極めて良好であった。また成形品は有機補強繊維が全面に渡り均一に分散しており、外観品位も非常に良好で、JIS K 7052:1999に準じた焼成後の無機充てん材含有率も0.03%と低く、成形品の比重も1.05と低く、軽量且つ強度バランスの優れた、サーマルリサイクル可能なコンクリート型枠を得ることが出来た。
【0061】
<実施例2>
芯が融点265℃のポリエチレンテレフタレート、鞘が融点160℃のポリプロピレン(チッソ(株)製PPレジンCS3300)、質量比が芯:鞘=5:5、単糸繊度6.4dtex、フィラメント数3000本の芯鞘型繊維からなる2成分糸を準備した。この2成分糸を10ケンス分束ね、最大延伸倍率×90%の2.55倍で延伸後、170℃のホットローラー(直径25cm)上で偏平状の軟化した集束テープ形態(テープ状物)とした。次いで、耐熱性手袋をつけた手で撚を加えて略円柱状に連続的に形成し、全体を集束させた(連続ロール状物)。この連続ロール状物を冷却し、7.5mmの長さに切断して所望の有機繊維補強樹脂ペレットを得た。ちなみに切断前延伸糸の引張強度は3.9cN/dtexであった。
なお、有機繊維補強樹脂ペレット中に於ける有機補強繊維(ポリエチレンテレフタレート繊維)の長さはペレット長の101%、質量比率は50%、補強繊維軸に垂直な方向に断面を切って観察されるボイドの比率は2%、有機繊維(ポリエチレンテレフタレート繊維)と樹脂組成物(ポリプロピレン)との接触比率は98%、テープ状物の偏平度(幅/厚み)は26、ペレットの扁平率(長軸/短軸)は1.9であった。
こうして得られた有機繊維補強樹脂ペレット50%と融点160℃のポリプロピレン樹脂(チッソ(株)製PPレジンK7730)とを50%ずつ混合し、公知の方法にて射出成形加工を行なってパレットを作製した所、ペレットのホッパー詰りも無く、工程通過性は極めて良好であった。また成形品は有機補強繊維が全面に渡り均一に分散しており、外観品位も非常に良好で、JIS K 7052:1999に準じた焼成後の無機充てん材含有率も0.02%と低く、成形品の比重も1.03と低い、軽量且つ強度バランスの優れた、サーマルリサイクル可能なパレットを得ることが出来た。
【0062】
<実施例3>
実施例1と同じ製法で得た有機繊維補強樹脂ペレットを30%用い、融点160℃のポリプロピレン樹脂(チッソ(株)製PPレジンK7730)を60%、汎用のタルクを10%用いてこれらを攪拌混合した後、公知の方法で射出成形加工を行なって、自動車のホイールカバーを作った。結果、ペレットのホッパー詰りも無く、工程通過性は極めて良好であった。また得られたホイールカバーは有機補強繊維が全面に渡り極めて均一に分散しており、JIS K 7052:1999に準じた焼成後の無機充てん材含有率は10%となったが、ホイールカバーの比重は1.17と低く、曲げ剛性の高い外観品位の非常に優れたホイールカバーが得られた。
【0063】
<実施例4>
芯が融点265℃のポリエチレンテレフタレート、鞘が融点160℃のポリプロピレン(チッソ(株)製PPレジンCS3300)、質量比が芯:鞘=6:4、単糸繊度6.5dtex、フィラメント数3000本の芯鞘型繊維からなる2成分糸を準備した。この2成分糸を10ケンス分束ね、最大延伸倍率×90%の2.55倍で延伸後、190℃のホットローラー(直径15cm)上で偏平状の軟化した集束テープ形態(テープ状物)とした。次いで、3軸フリクションツイスターで30T/Mとなる条件で加撚し、略円柱状に集束させた後、冷却し、7.5mmの長さに切断して所望の有機繊維補強樹脂ペレットを得た。
なお、有機繊維補強樹脂ペレット中に於ける有機補強繊維(ポリエチレンテレフタレート繊維)の長さはペレット長の100%、質量比率は60%、補強繊維軸に垂直な方向に断面を切って観察されるボイドの比率は4%、有機繊維(ポリエチレンテレフタレート繊維)と樹脂組成物(ポリプロピレン)との接触比率は96%、テープ状物の偏平度(幅/厚み)は42であり、ペレットの扁平率(長軸/短軸)は1.6であった。
このペレットを30%用い、融点160℃のポリプロピレン樹脂(チッソ(株)製PPレジンK7730)を70%混合し、公知の方法で射出成形加工を行なって自動車用インナーフェンダーを作った所、軽量且つ強度バランスの優れた、サーマルリサイクル可能な自動車用インナーフェンダーを得ることが出来た。
【0064】
<実施例5>
芯が融点265℃のポリエチレンテレフタレート、鞘が融点160℃のポリプロピレン(チッソ(株)製PPレジンCS3300)、質量比が芯:鞘=6:4、単糸繊度6.5dtex、フィラメント数3000本の芯鞘型繊維からなる2成分糸を準備した。この2成分糸を10ケンス分束ね、最大延伸倍率×90%の2.55倍で延伸後、170℃のホットローラー(直径30cm)上に螺旋状に巻き付け、偏平状の軟化した集束テープ形態(テープ状物)とした。その後、位相をずらし設置されたソロバンガイド(回転ガイド)を介して、ホットローラーの軸の直交方向に対して角度(θ)をつけてテープ状物を引取り、テープ状物の片側端面が内側に巻き込まれたロール形状を、旋回力を付与せず連続的に形成し、こうして全体を集束させた。次いでこの連続ロール状物を冷却し、7.5mmの長さに切断して所望の有機繊維補強樹脂ペレットを得た。ちなみに切断前延伸糸の引張強度は3.9cN/dtexであった。
なお、有機繊維補強樹脂ペレット中に於ける有機補強繊維(ポリエチレンテレフタレート繊維)の長さはペレット長の101%、質量比率は60%、補強繊維軸に垂直な方向に断面を切って観察されるボイドの比率は3%、有機繊維(ポリエチレンテレフタレート繊維)と樹脂組成物(ポリプロピレン)との接触比率は97%、テープ状物の偏平度(幅/厚み)は48、ペレットの扁平率(長軸/短軸)は1.5であった。
こうして得られた有機繊維補強樹脂ペレットと融点160℃のポリプロピレン樹脂(チッソ(株)製PPレジンK7730)とを50%ずつ混合し、公知の方法にて射出成形加工を行い、コンクリート型枠を作った所、ペレットのホッパー詰りも無く、工程通過性は極めて良好であった。また成形品は有機補強繊維が全面に渡り均一に分散しており、外観品位も非常に良好で、JIS K 7052:1999に準じた焼成後の無機充てん材含有率も0.03%と低く、成形品の比重も1.05と低く、軽量且つ強度バランスの優れた、サーマルリサイクル可能なコンクリート型枠を得ることが出来た。
【0065】
<実施例6>
鞘として実施例1における融点160℃のポリプロピレン(チッソ(株)製PPレジンCS3300)の代わりに、融点165℃で、メルトインデックス(190℃)が8g/10minのポリ乳酸を用いた以外は、実施例1に従って有機繊維補強樹脂ペレットを製造した。ちなみに切断前延伸糸の引張強度は3.8cN/dtexであった。
なお、有機繊維補強樹脂ペレット中に於ける有機補強繊維(ポリエチレンテレフタレート繊維)の長さはペレット長の100%、質量比率は60%、補強繊維軸に垂直な方向に断面を切って観察されるボイドの比率は2%、有機繊維(ポリエチレンテレフタレート繊維)と樹脂組成物(ポリ乳酸)との接触比率は97%、テープ状物の偏平度(幅/厚み)は36、ペレットの扁平率(長軸/短軸)は1.4であった。
【0066】
<実施例7>
鞘として実施例1における融点160℃のポリプロピレン(チッソ(株)製PPレジンCS3300)の代わりに、テレフタル酸/イソフタル酸=66/34(モル比)である共重合ポリエステル(融点145℃、固有粘度6.45dl/g)を用いた以外は、実施例1に従って有機繊維補強樹脂ペレットを製造した。ちなみに切断前延伸糸の引張強度は4.1cN/dtexであった。
なお、有機繊維補強樹脂ペレット中に於ける有機補強繊維の長さはペレット長の101%、質量比率は60%、補強繊維軸に垂直な方向に断面を切って観察されるボイドの比率は1%、有機繊維(ポリエチレンテレフタレート繊維)と樹脂組成物(共重合ポリエステル)との接触比率は97%、繊維束テープの偏平度(幅/厚み)は28、ペレットの扁平率(長軸/短軸)は1.4であった。
【0067】
<比較例1>
補強繊維として汎用の高強力ガラス繊維を用い、実施例1と同等の繊度となる様、複数本を引き揃え、これを、220℃に加熱されたポリプロピレン樹脂(チッソ(株)製PPレジンK7730)浴中へ浸漬後、5mmφの円形ダイを通して引取った。この連続ロール状物を、冷却した後、7.5mmの長さに切断してガラス繊維補強樹脂ペレットを得た。
尚、このガラス繊維補強樹脂ペレット中に於けるガラス繊維の長さはペレット長の102%、質量比率は54%、補強繊維軸に垂直な方向に断面を切って観察されるボイドの比率は7%、ガラス繊維と樹脂組成物(ポリプロピレン)との接触比率は55%であった。
こうして得られたガラス繊維補強樹脂ペレットと融点160℃のポリプロピレン樹脂(チッソ(株)製PPレジンK7730)とを50%ずつ混合し、公知の方法にて射出成形加工を行なった所、工程通過性、外観品位共に問題は無かったが、JIS K 7052:1999に準じた焼成後の無機充てん材含有率は27%と高く、成形品の比重も1.37と高く、サーマルリサイクルの困難な重い繊維補強樹脂成形品となった。
【0068】
<比較例2>
融点が265℃の東洋紡エステル(登録商標)(繊度1670dtex、190f、強度9.7cN/dtex)を補強繊維として18本用い、これを予め複数本の開繊バーを通して偏平化させ、十分に開繊させた糸条とした後、比較例1と同様の樹脂浴中へ浸漬した。その後、5mmφの円形ダイを通して引取り、冷却し、7.5mmの長さに切断して有機繊維補強樹脂ペレットを得た。
尚、有機繊維補強樹脂ペレット中に於ける有機繊維の長さはペレット長の100%、質量比率は32%、補強繊維軸に垂直な方向に断面を切って観察されるボイドの比率は5%、有機繊維と樹脂組成物との接触比率は45%であった。
こうして得られた繊維補強樹脂ペレットを100%用い、汎用の方法にて射出成形加工を行なった所、樹脂ペレット中の繊維分散性が悪いため、切断の際の衝撃により樹脂被覆されていない繊維が分離してホッパー詰りの原因となり、この為に成形品サンプルを得ることが出来なかった。
【0069】
<比較例3>
融点が265℃の東洋紡エステル(登録商標)(繊度1670dtex、190f、強度9.7cN/dtex)を補強繊維として18本用い、これに予め50T/mの先撚りを付与したこと以外は、比較例2と同様にして有機繊維補強樹脂ペレットを得た。
有機繊維補強樹脂ペレット中に於ける有機補強繊維の質量比率は33%、補強繊維軸に垂直な方向に断面を切って観察されるボイドの比率は2%、有機繊維と樹脂組成物との接触比率は僅か9%であった。
こうして得られた繊維補強樹脂ペレットを100%用い、汎用の方法にて射出成形加工を行なった所、補強繊維は集束しておりホッパー詰りは無かったが、補強繊維の先撚りの影響により成形加工中の繊維開繊性が悪く、強度ばらつきの大きい外観品位の劣った成形品となった。
本発明の実施例及び比較例の物性値を表1に示す。
【0070】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明に係る有機繊維補強樹脂ペレット及び樹脂成形品は、耐衝撃性等の物理特性に優れ、低コストで且つサーマルリサイクルが容易である。よってガラス繊維補強樹脂成形品分野への置換えが可能であり、車両、建築・土木、機械部品、電子部品など、さらに詳しくは保温カバー、雨樋、コネクター、コンクリート型枠、コンプレッサ用羽根、コンポジツト圧力容器、シート搬送用転動体、スキー用キャップ、フェンダー、自動車用ドアパネル、自動車用バンパー、運搬用パレット、パイプジョイント、巾木、パラボラアンテナディッシュ、バリア性容器、ドアノブ、プロペラファン、収納用ボックス、窓枠、ルーフレール、ワイパーアーム、椅子等の脚体、管状体、吸遮音材、光ケーブル用スペーサ、光ファイバコード、自動車用エアディフレクター、車止め、ホイールカバー、塗装室用内装板材、電気音響変換器用フレーム、把手部材、複合建材、防水パン、免震構造体等、広範囲な用途に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の有機繊維補強樹脂ペレット製造工程の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の有機繊維補強樹脂ペレット製造工程の一例を示す模式図である。
【図3】本発明の有機繊維補強樹脂ペレット断面形態の全体を写した電子顕微鏡写真の一例である。
【図4】本発明の有機繊維補強樹脂ペレット断面の一部を拡大した電子顕微鏡写真の一例である。
【図5】本発明の有機繊維補強樹脂ペレット断面の中心付近領域と表面付近領域を示す模式図である。
【符号の説明】
【0073】
11:ホットローラー
12:連続ロール状物
13:施撚体
14:テープ状物
(A):有機繊維
(B):樹脂組成物



【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機繊維(A)からなる複数の島成分と、樹脂(B)を含むマトリックス成分とからなる有機繊維補強樹脂ペレットであって、
前記島成分を構成する有機繊維(A)がペレット長の98〜110%の長さを有し、互いに並行に配列しており、
下記(a)〜(d)を満足することを特徴とする有機繊維補強樹脂ペレット。
(a)前記有機繊維(A)の融点が150℃以上であり、前記樹脂(B)の融点よりも30℃以上高い。
(b)前記有機繊維(A)の単糸繊度が0.1〜20dtexで、トータル繊度が2000〜700000dtexである。
(c)前記有機繊維(A)と前記樹脂(B)の質量比が(1:19)〜(9:1)である。
(d)前記有機繊維(A)の総表面積の65%以上が前記樹脂(B)と接触している。
【請求項2】
前記有機繊維(A)の繊維軸に交叉する方向に切断した面における該有機繊維(A)の分散が下記式(1)〜(4)を満足することを特徴とする請求項1に記載の有機繊維補強樹脂ペレット。
|X−Y|/Z≦0.5 ・・・(1)
X≧0.9Z ・・・(2)
Y≧0.9Z ・・・(3)
W≧0.9Z ・・・(4)
ただし
X:中心付近の島成分の面積割合
Y:表面付近の島成分の面積割合
W:中心付近と表面付近を除いた残りの部分における島成分の面積割合
Z:全体の島成分の面積割合
【請求項3】
前記有機繊維(A)が融点220℃以上のポリエステル繊維であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機繊維補強樹脂ペレット。
【請求項4】
前記樹脂(B)が融点190℃以下のポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機繊維補強樹脂ペレット。
【請求項5】
前記樹脂(B)が融点190℃以下のポリ乳酸樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機繊維補強樹脂ペレット。
【請求項6】
前記樹脂(B)が融点190℃以下の共重合ポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機繊維補強樹脂ペレット。
【請求項7】
前記有機繊維(A)はその総表面積の85%以上において前記樹脂(B)と接触していることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の有機繊維補強樹脂ペレット。
【請求項8】
前記有機繊維補強樹脂ペレットは、テープ状物をロール形状に巻き込んだものであり、
その断面視は、前記樹脂(B)を含むマトリックス成分と前記有機繊維(A)からなる島成分とからなり、
前記テープ状物の偏平度(幅/厚み)が3.5〜450であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の有機繊維補強樹脂ペレット。
【請求項9】
有機繊維補強樹脂ペレットの繊維軸方向に対して交叉する方向に切断した断面で観察される空隙率が20%以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の有機繊維補強樹脂ペレット。
【請求項10】
有機繊維補強樹脂ペレットのペレット長の方向に対し垂直に切断した断面におけるペレットの扁平率(長軸/短軸)が1〜4.5であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の有機繊維補強樹脂ペレット。
【請求項11】
有機繊維(A)を芯とし、その周囲を樹脂(B)が鞘状に覆う芯鞘型繊維を集束し、
この芯鞘型繊維束を加熱すると共に偏平に押し広げて軟化したテープ状物にした後、
このテープ状物の幅方向片側端を内側に巻き込む様に、連続的ロール形状とし、
次いで、この連続ロール状物を所望の長さに切断することを特徴とする有機繊維補強樹脂ペレットの製造方法。
【請求項12】
前記芯鞘型繊維束の加熱を、前記樹脂(B)の融点以上で且つ前記有機繊維(A)融点未満に加熱されたホットローラー上に巻き付けて行うことを特徴とする請求項11に記載の有機繊維補強樹脂ペレットの製造方法。
【請求項13】
前記ホットローラーから解いた前記テープ状物を加撚することにより、前記連続ロール状物を得ることを特徴とする請求項12に記載の有機繊維補強樹脂ペレットの製造方法。
【請求項14】
前記テープ状物を施撚体により加撚し、略円柱状に形成することを特徴とする請求項12または13に記載の有機繊維補強樹脂ペレットの製造方法。
【請求項15】
前記施撚体が、2本のベルトで挟み込んで撚りをかけるニップツイスタータイプであることを特徴とする請求項14に記載の有機繊維補強樹脂ペレットの製造方法。
【請求項16】
ホットローラー上に巻き付けた前記テープ状物を、該ホットローラーの軸の直交方向に対して角度をつけて引取ることにより、前記連続ロール状物を得ることを特徴とする請求項11または12に記載の有機繊維補強樹脂ペレットの製造方法。
【請求項17】
前記テープ状物の引き取りに際して、ガイドを用いることを特徴とする請求項16に記載の有機繊維補強樹脂ペレットの製造方法。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれかに記載の有機繊維補強樹脂ペレットを質量比で5%以上用いて成形してなることを特徴とする有機繊維補強樹脂成形品。
【請求項19】
有機繊維補強樹脂成形品が自動車用部品であることを特徴とする請求項18に記載の有機繊維補強樹脂成形品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−162015(P2007−162015A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311140(P2006−311140)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】